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渡部(一)
委員 私は、今度はこの
租税条約の背景になることについてきょうは問題をちょっと指摘しておきたいと思います。それは
アメリカ政府による最近の各種の域外適用、米国法の域外適用という問題についてであります。
域外適用は、
アメリカ側に基礎的な背景として
アメリカ式の
民主主義、
アメリカ式の法律というものは
世界で最高のものであって普遍法だというニュアンスの感覚があるのでしょうか、
租税の分野を含めて輸出管理法とか独禁法とか証券取引法とかアンチボイコット法とか等々におきまして、自国内の法律というものを対外的に、国際的に執行していくというやり方というものがきわめて多いわけであります。
今回、
世界じゅうで大体問題になったわけでございますが、たとえばソビエトに対して対ソ制裁措置を強化するということで、輸出管理法施行規則改正において、昨年の六月十八日
アメリカは
国家安全保障会議の決定によりまして、ポーランド情勢との関連におきまして、石油、ガス関連機材の輸出に関する制裁というものを打ち上げた。そういう形によりまして、外国企業の生産するものを外国企業が米国から輸出する場合にも制裁の対象にしたといういきさつがございました。また最近は、トヨタ自動車のトヨタ販売とトヨタ自動車工業との合併におきまして、両会社の合併についてはこれを届けさすということが行われたわけでございます。
〔
委員長退席、浜田
委員長代理着席〕
また最近におきましては、米司法省は、
日本の自動車会社のトヨタを相手といたしまして資料の提出を求める判決を請求した。現在、ロサンゼルス連邦地裁において議論が続けられているわけであります。
これは米国の内国歳入庁、これは向こうの国税庁のようなものだそうでございますが、
日本の自動車会社が在米子会社に対する自動車輸出価格を引き上げたのは、要するに
アメリカで販売する価格を引き上げたのは、それによって在米子会社の利益を人為的に圧縮して、圧縮することによって今度は
アメリカの税務当局に対する支払いを少なくし、実質上、税法上の
脱税を行ったのではないかという理屈によりまして、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研の三社に対して、一九七五年から七八年におけるこれらの会社の
日本国内における販売や生産費について、また原価コスト等について資料提出を求めたということでございます。
一つの会社の収益に対して
関係当局が資料提出を求めるということは、
日本国内では当然あることでございますし、またそれについて会社がオープンにするということはあり得るわけではございますけれども、少なくとも米国法に基づいて米国行政当局がいきなりそれを指図する、これは一国の法律が一国のバリアを越えて他国に波及するという点では全くいかがなものか。いまの
国際情勢の中におきましてはそういうルールはないのでありまして、こういうルールをやるというんだったら、
国連におきましてすべての国が合意をしてある程度の前進を見なければならないテーマであります。
ところがこの命令に対してどういう反応が起こったかというと、本田技研並びに日産自動車側は、これはもうどうせ泣く子と地頭には勝てぬというやり方で直ちにそれに応じた、そういうやり方で問題を糊塗した。トヨタ自動車側はこれに対して反論を行い、この資料の提出を拒否した。それに対して司法省は、ロサンゼルス連邦地裁に提訴し、内国歳入法四百八十二条に基づいて
日本親会社と在米子会社間の取引価格が人為的で不適当だと判断したときは、同庁は在米子会社に追加的利益を割り当てる、つまり追加
課税をする、こういうやり方で現在論争が続いているようでございます。
これは本来米国系多国籍企業のトランスファープライスに対するところの
脱税を
防止するための措置であると見られてきたものでありますが、それが広く運用されて
日本側の企業に対する
課税として考えられておるわけであります。もちろんこれは連結決算の問題の進行等とも相まって非常にめんどうな一面を含んでおりますけれども、これに対する扱いが不適切であると私は思います。
結論をどんどん言ってしまいますが、というのは、
日本の
外務省はこれに対してどういう措置をとったかというと、
外交ルートを通してこれはけしからぬよと、こうしたものについては
外務省かち私の方に出していただいたペーパーでございますが、
政府としては、米内国歳入庁が
日本法人であるトヨタ自動車に対し、同社が
わが国に保有する資料の提出を求めた八月四日付資料提出命令は確立された国際法の
原則に合致せず、したがって右提出命令の効果は
わが国国内にある文書に及ばない旨の
わが国政府の考え方を先般米側に対し
外交ルートを通じて申し入れたというペーパーを事前にちょうだいしました。ところが、これはトヨタ自動車に対してはこう言った。しかし本田と日産に対しては、もう自分で出してしまったのだからしようがないやということになっておる。私の知るところによれば、このように類似の例が多数ございまして、
日本政府はときどき申し入れに来る、そしてときどきはそれを全部すっぽかすというやり方で対応に非常にばらつきがある、ばらつきがあるだけではなくて、
日本政府はなるべく
アメリカ政府の御無理ごもっともとそのままほおかぶりをして、知らぬ顔をして布団をかぶって寝ておる、ときどきこたつの中から片目を出して、困るよと言う、また布団をかぶって寝ておる、こういうふうに見えるわけであります。これで
日本国内の各企業を
防衛するだけの責務を果たしておるのか、私はこれははなはだ不満であります。
さて、私ばかり演説しているとお役所の言い分がわかりませんから、この辺で非常に困っておられる御回答をお願いしたいと思います。