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1983-03-25 第98回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十五日(金曜日)    午前十時五分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上  泉君 理事 北山 愛郎君    理事 渡辺  朗君       石原慎太郎君    奥田 敬和君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    玉沢徳一郎君       中山 正暉君    松本 十郎君       河上 民雄君    八木  昇君       大橋 敏雄君    渡部 一郎君       林  保夫君    中路 雅弘君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務政務次官  石川 要三君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    市岡 克博君         外務大臣官房外         務参事官    野村 忠清君         大蔵省主税局国         際租税課長   河原 康之君         国税庁長官官房         企画官     西崎  毅君         自治省税務局企         画課長     丸山 高満君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ───────────── 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   北村 義和君     小山 長規君   玉沢徳一郎君     佐藤 文生君   松本 十郎君     箕輪  登君   土井たか子君     勝間田清一君   林  保夫君     和田 耕作君   中路 雅弘君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   小山 長規君     北村 義和君   佐藤 文生君     玉沢徳一郎君   箕輪  登君     松本 十郎君   勝間田清一君     土井たか子君   和田 耕作君     林  保夫君   三浦  久君     中路 雅弘君 同月二十三日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   三浦  久君     中路 雅弘君 同月二十四日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     赤城 宗徳君   北村 義和君     谷垣 專一君   玉沢徳一郎君     石井  一君   松本 十郎君     渡辺 紘三君   林  保夫君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     玉沢徳一郎君   谷垣 專一君     北村 義和君   渡辺 紘三君     松本 十郎君   西田 八郎君     林  保夫君 同月二十五日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君   渡辺 一郎君     大橋 敏雄君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     赤城 宗徳君   大橋 敏雄君     渡部 一郎君     ───────────── 三月十八日  千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件(条約第七号)  商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件(条約第八号)  領事関係に関するウィーン条約及び紛争義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件(条約第九号)(予) 同月二十二日  核兵器持ち込み反対等に関する請願栗田翠紹介)(第一七八三号)  核兵器全面禁止使用禁止国際協定締結促進等に関する請願安藤巖紹介)(第一七八四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件(条約第一号)  所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件(条約第二号)  千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件(条約第七号)  商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件(条約第八号)      ────◇─────
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、この租税条約二件について御質問申し上げるわけでありますが、その前に、安倍外務大臣日本西側一員としてということをよく言われるわけでありますが、スウェーデン西ドイツ、ともに西側一員として位置づけておるのかどうか、その点、大臣に。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 スウェーデン西ドイツ、ともに西側一員というふうにわれわれは判断しております。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 その西側一員ということの西側というのは何を指して西側というのですか。日本日本という自主独立のりっぱな国だが、日本の国が西側一員とはどういうことですか。西側とはどういうことですか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 一般的に東西ということで仕分けをしておるわけですが、われわれは西側と言えば、やはり自由主義民主主義共通価値観を持っておる国々、そういうことを総合的に判断いたしまして西側、こういうふうに称しておると考えております。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 そういうことでは明確でないですが、西側というのは、いわゆる自主独立日本の国というものを踏まえて、日本の西の方に別にドイツがあるわけでもなし、まあ地球は丸いのですからどっちを指して西と言っていいか東と言っていいかわからぬけれども、私は日本西側一員としてという立場外交をするのではなしに、やはり日本という自主独立した国というもの、これをもとに置いた諸外国との外交関係というものを持つのが外交本来の姿でないか。それを西側一員だとか、かつては――これは外交上そういう西側一員とかいうような言葉が出たのはいつでしょうか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はその歴史的な経緯というのはよく承知しませんが、しかし第二次大戦が終わって、東側西側というふうな一つの勢力に対するそういう呼び方が始まったというふうに考えておりますし、西側と言えば自由主義民主主義という共通価値観を持っておる国々の集まりだ、こういうふうにわれわれは踏まえて、そういう考えのもとに西側ということを全体的に総称しているわけであります。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう西側とか西側一員とかいうようなことを言いますと、日本が特定のグループの中に存在しておるような言い方で、私はこれは正しくないと思います。あなたの身近な岸総理が言っておる言葉でも、西側というようなことは言ってないですよ。「アジア諸国との善隣友好と、自由諸国との協調とともに、わが外交の三大原則一つ国際連合の支持」と、こういうふうにして、昭和三十二年にそういうことを言われておるし、さらにはまた、同じく岸総理は「このような国際情勢に臨むわが国外交は、国際連合中心とし、自由諸国との協調をはかり、アジアの一国としての立場を堅持するという三原則を貫くことは」云々、こういうことであって、自由諸国との協調とかあるいはアジア善隣友好、こういうふうなこと、日中友好わが国外交の非常に大事ななにだ、アメリカとはわが国外交の中での基本とすべきことだとか、いろいろよく言われるわけですが、ここらあたりで、そういう西側という語源は安倍大臣が出した言葉ではないと私は思うわけですけれども、いつの間にやら安倍大臣西側という形の中へ日本の国を包み込んでしまって、日本の国という自主独立国家としての存在を世界的にぼやかして、アメリカのいわば従属国的な印象を与えるような、本当に自主独立平和外交基軸としてやっていく、そういう外交の大方針というものからだんだん日本が狭められてきておるような感じをするわけですが、もう西側諸国一員だという言葉をやめたらどうですか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん日本はれっきとした独立国家でありますし、同時にアジアの一国であることも間違いないわけでありますが、同時に、いまお話がありました自由国家自由主義国家ということになりますと、欧米国家とともに日本がそのいわゆる自由国家群の中に入るわけでございます。そして、サミット等最近行われておりますが、そういう中において欧米諸国とともに日本参加をする、そういう形をいわば総称して西側と言っておるわけでございまして、西の方に位するから西側ということではなくて、日本はいわゆる自由国家群の有力な一員であるという立場から西側一員というふうにとらえておるわけでございます。したがって、私は、いま総称の中で、東側西側と言われるそういう状況の中で日本西側一員である、そしてまた同時にこれは自由国家群の有力な一員であるということでありますから、西側一員であるということを日本が言っても、これが日本独立であるとかあるいは日本のよって立っておるところのアジア一員である、そういうものとそうぶつかる問題ではないのじゃないか、こういうふうに思います。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 ぶつかる問題ではないけれども、わが国外交基調は、歴代総理大臣あるいは外務大臣が、アジアとの関係、そして自由諸国との関係あるいは国連中心、こういうことをわが国外交の三大方針としておる。日本では、西側と言うと国民は惑うわけですよ。アメリカ日本の東やろうか西やろうか、西ドイツ日本の東やろうか西やろうか、こう思うと、一体日本西側とはどういうことでこんな言葉を使ってやっておるのだろう、こういうことで、これは別に安倍外務大臣が言い出した言葉でもなければ、なおさらこういう誤解を招くような言葉――誤解を招くじゃない、誤解を受ける、私自身がそういうふうに、一体西側とは何を指して言うのだろう、こう思うわけですから、これは外務官僚の方で、外務省事務当局でこういう言葉については整理されたらどうでしょう。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 東側がありますから西側があるわけですね。東側といえばソ連東欧圏。これが東側。そういうことになれば、やはり西側ということになれば欧米、さらに自由国家群アジアにおける有力な一員である日本、これらを含めていわゆる西側、こういうことになるのではないか。むしろ私は、日本がこの西側一員というのは、日本世界的な役割りといいますか、国際的なウエートが非常に大きくなった証拠ではないだろうか、自由国家群の中においてそれだけ日本地位が高くなった、欧米諸国日本を無視しては何もできないというやはり国際的地位の向上を示すことではないか、こういうふうに思うわけです。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、外務大臣ユーゴ西側ですか、東側ですか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、非同盟諸国一員だ、われわれはこういうふうにとらえております。ソ連、それから東欧諸国、これはいわば東側と言っておるわけですが、地理的な問題は別にして、ユーゴはやはり独特な非同盟政策をとっておりますからいわゆる非同盟諸国一員だ、こういうふうなとらえ方をしております。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 その西側という呼称、それから東側という呼称、こういう中で、世界の各国々のいわゆる国家群といいますか、国家の間には、いま言われるような非同盟の中に入っていない国もあるし、それから非同盟の中に入っておる国もあるし、それが外務大臣の言う西側でも東側でもない、自由諸国群という言葉ならある程度の理解ができるわけですけれども、東側社会主義圏であって西側自由主義圏であるというような国の分け方をして外交をすることは、日本外交自主性を喪失するもとではないか。そこで、俗に言う非同盟関係国というものもかなり多いわけですが、そういう非同盟国家群との関係等を考えた場合に、日本外交基軸はやはり、あなたの最も身近な岸総理も言っておったようなアジア諸国との善隣友好関係、そしてまた自由主義国家群国連中心、こういうことが外交基本として今日の日本外交を貫いてきておる流れではないか、そういうことを考えてみますと、やはり西側という言葉にはつっかえるものがあるわけです。それは、別に西側という言葉はあなたはつっかえないからそれを使うことにいわば何ら抵抗を感じない、こういうことだけれども、そもそも西側という用語日本外交用語の中でいつ出てきたか、いろいろ調べてみますけれども、そういうことは全く出ていないわけですから、私はあえて、これは外務大臣の創造した言葉であるのかどうか、その点もう一回承っておきたいと思います。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろんこれは、こだわる必要はないと私は思います。私が言っている意味も、日本自由国家群一員である、同時にまた、日本アジアの一国である、こういう立場外交を進めていかなければならぬということを言っておりますから、私の言う意味といいますかその内容は、おっしゃるように西側一員自由国家群一員、同時にまた日本アジアの一国であるという立場外交を進めるという基本方針は変わっておるわけではないわけでございます。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 このことで時間をとると後の審議に影響するわけでありますけれども、私はやはり、西側一員というと、そこには何かいわゆる運命共同体的な、いわば西側一家というようなことになって、せっかく日本アジアとの善隣友好関係日本外交基調だ、こう歴代総理大臣外務大臣も言ってきておったので、これを、西側一員という形で一つの枠組みの中へ日本を当てはめてやるというようなことは日本外交としてやるべきことではないのじゃないかと私は思うわけです。  これは外務省事務当局にお尋ねするわけですが、この西側という用語はいつから出だしたのですか。
  18. 田中義具

    田中(義)政府委員 はっきりいつごろからということではございませんが、結局戦後の東西関係対立というのが西側自由主義陣営とそれから東側社会主義陣営という形で対立が出て、それを西側東側という形で呼んでいるので、必ずしも地理的な概念だけではなくて、ある程度政治的な内容の入った概念として使われてきているわけなんです。それで、そういうことがあるところから最近における国際関係の緊張の高まりということを反映して、西側一員というような側面が再びクローズアップされてきているということだと理解しております。そしてこれは、ソ連軍備増強あるいはアフガン、ポーランドというような最近の一連の国際的な事件を反映して、こういう西側一員というような側面が強調されているということだと理解しております。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 ことだと理解するだとかいうようなあいまいな表現ではなしに、外交用語ですから、運命共同体だとかあるいは不沈空母だとかいうその言葉の持つ意味というのは非常に大きいわけだから、そういう点で東西関係対立と言いましても、その当時は中国関係はいわゆる東側と位置づけておったでしょう。ところが今日では中国はそういうふうな位置づけの仕方をしていないし、その当時言っておった東西関係というものは非常に変わってきておる。日本を取り巻く国際環境というものは非常に変わってきておる。その中で西側という言葉を使用するということは、日本外交方針としてこれはまことにあいまいな印象を与え、そしていつの間にやら日本の国がそういう西側の一族になってしまったのか、西側右向け日本も右向かなければいかぬというような日本自主性というものを失った外交の姿にだんだんなってきておる。そのなってきておる姿の表現西側ということになっておるではないか。  私が調べたところによりますと、スウェーデン西側ということではないはずです。これはいわゆる非同盟、第三世界の国に属するというように理解しておるわけですけれども、これはあくまでもそういうことではなしに、スウェーデンはいわゆる西側といいますか、あなた方の言われる西側一員理解をしておるのでしょうか。
  20. 田中義具

    田中(義)政府委員 外務大臣も御説明されたように西側一員と言うときには、われわれは自由と民主主義という価値観を共有している国家群という意味でとらえるとき、スウェーデンも自由と民主主義基本として国家をつくっている国でして、そういう意味で当然西側の中に入ると考えます。ただ、スウェーデン外交政策として中立政策をとっておりまして、たとえば非同盟会議等にもゲストとして招かれるということで、非同盟諸国と非常に緊密な関係をとっている側面はございますけれども、そういう基本的な価値観という点で日本その他の欧米諸国と同じグループに入っているというふうに考えます。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 それはそういうふうに解釈してないということはこれはあなたが解釈しておることで、そんな解釈は間違いだと言ったところで考えておる以上はしょうがない問題ですから、あえてそのことはここではもう触れませんけれども、スウェーデンパルメ氏が委員長となって軍縮問題全般について討議したいわゆるパルメ委員会最終報告が昨年出されたわけです。これは国連軍縮特別総会において勧告ということで出されてきたのですが、政府はその最終報告をどう受けとめておるのか、大臣の御見解を承りたいと思います。
  22. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  パルメ委員会軍縮安全保障に関する独立委員会でございまして、首相あるいは閣僚経験者のような世界的に非常にりっぱな方々の参加により、二年余にわたりまして問題の研究が行われた結果、昨年の第二回軍縮特総の前に報告書が出されたのでございます。そしてこれは、安全保障を損なうことなく軍縮軍備管理を進めるためにはどういう具体策があるかということについてのいろいろな提言が行われているのでございます。その提言はいずれも示唆に富むものでございまして、今後国連あるいはジュネーブの軍縮委員会の場におきまして、軍縮問題を検討する上での参考として活用されるべきものというふうに見られております。それで昨年の国連総会におきましても、このパルメ委員会報告書参考資料として今後研究を進めるべきであるという趣旨の決議が採択されたという経緯がございます。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 それで大臣は、パルメ委員会のそういう勧告に対して日本をどういうふうに持っていこうとしておるのですか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま国連局長からお話をいたしましたように、パルメ委員会が長い間の検討の結果、世界軍縮に対して一つのユニークな案を出されたわけでありまして、これは国連等においてもこれから検討もいたしていくわけでありますが、わが国としてもこれからの軍縮を進める上における一つの課題として検討をすべきである、こういうふうに考えます。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 パルメ委員会が出されてから大分経過しておるわけですから、またこれには日本から外務次官をされておった森という外交官参加しておるわけでありますし、こういうふうな委員会で幅広く討議をした中で採択されたものについては、やはり日本外交としても積極的に取り上げてやるべきではないか。別に国が大きいから小さいからということで国の価値が変わるわけではないのですけれども、スウェーデンといういわば非常に小さいと言われる国の総理が、核兵器化学兵器を使わないようにという平和への提言をこれだけ積極的にやっておられることは高く評価をすべきではないか。そういうスウェーデンとの租税条約については私はもちろん賛成をするわけでありますが、租税条約そのものができたからどうということではなしに、こういうスウェーデンという国の歩み方というもの、こういうものとは貿易関係を通じて、そしていろいろな経済活動を通じて積極的な友好関係を推進していくことは大事なことではないか、こういうふうに私は思ったわけですが、この間、スウェーデン関係のことで外務省関係者の方の意見を聞く中で、スウェーデン語というのはどんな言葉で、スウェーデン語はどれくらいしゃべれるかというて問うたことですが、外務省にはこのスウェーデン語担当者はどのくらいおるのですか。
  26. 田中義具

    田中(義)政府委員 私の承知している限り、五名おります。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 その五名がスウェーデンの向こうの方にもおり、そして外務省本省には何人おるのですか。
  28. 田中義具

    田中(義)政府委員 本省には二人でございます。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 英語とかドイツ語、フランス語の堪能者はそれは外務省にはたくさんおるでしょう。ところが、その他の諸国言葉についてはそれの熟練者が非常に少ないということ、私はそういうような点から考えましても、もっとやはり日本外交官というものはそれぞれの国に精通した者、たとえば一昨年私がイラクとかあるいはサウジとかへ行ったときに、あのような言葉を語れる人は一人か二人しかいない。全体にアラブの言葉の言える者は五十人しかいないとかいうような話を聞いたわけですが、そういうふうなことから考えても、もっと日本外交を積極的に――アメリカだけが日本の一番の大事な相手国のようなことを考えておるわけですが、アメリカとの関係においては、いわゆる安保条約アメリカ日本とが戦争するということはない。アメリカがいろいろ戦争行為を起こすようなことを盛んにやっておる、そういうようなことに日本が巻き込まれないように、日本があらゆる国々との外交関係というものを――よく外務省防衛論議に非常に積極的に深入りする、そのことは外務省本来の姿勢として誤っておるのではないか、やはり外交というものを通じて国際紛争というものを平和的に解決をしていく、そのことがどれだけ価値ある役所としての使命を果たすことになるかもわからない。ことしも防衛二法の改正で、自衛官は千何百人も増員をされたわけですが、本当に日本紛争に巻き込まれないような平和な外交関係を樹立するための平素の外交体制というものについてはきわめて貧弱なものではないか、私はかように指摘せざるを得ないわけですが、いまのスウェーデンの話でもないけれども、スウェーデンの国は小さいからそれは五人おれば結構事足りると、こういうふうな解釈かもしれませんけれども、スウェーデンの映画とかスウェーデンの文化というものもかなり入ってきておるし、そして日本もかなりスウェーデンの方へ物を出しておる。そういう中で、スウェーデン語十分話のできるような外務省の定員の構成というものがあるかと考えてみますと、日本にはたった二人しかいない、一人が病気すれば一人になる。こういうことではお寒いことでありますが、こういうように、いま各国に配置しておる外交官の数というもの、あるいは本省の中における外交官の数とかいうようなものが今日十分機能を果たすだけのものを持っておるのか、本当に平和外交というものを積極的に進めるならば、私は自衛隊員を千人ふやすより外交官を百人ふやす方が、それがよりもっと日本国家にとっては安全な外交関係をつくり上げるもとではないか、こういうように思うわけですけれども、大臣、どうですか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、いまのわが国外交の実施体制を見ますと、非常に応援をいただいておりますが、まだまだ諸外国に比して弱いわけであります。人員についてもそうですし、あるいは予算の面においてもそうであります。特にいまの、その国の語学を達者にしゃべれるというふうな人たちも非常に限られておる。私たちも各国回ってみまして、やはりその国の言葉が自由にしゃべれる外交官が少ないことを痛感することもあるわけでございます。先般もビルマに行きましたが、ビルマなんかでも、日本とあれだけ深い関係にあるのですが、ビルマ語の自由に話せる日本外交官というものは非常に限られておるということを痛感いたしております。こういう点は外務省としてもこれから大いに努めていかなければならぬし、また応援をしていただかなければならぬ問題である、こういうように考えます。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 私自身、それは英語もいけない、それから日本語もいわば方言が強うて十分じゃない育ちですけれども、一国の総理大臣の中曽根総理アメリカで英語であいさつしたけれども、あの中曽根総理の英語は、あんな英語ではお粗末千万だという批評がされたわけですが、やはりその国の言葉をマスターするのは大変だと思うのです。しかし、日本外交方針平和外交というものを日本外交基軸として位置づけてやるならば、それらの国々との関係を深めていくために、まず外交の第一線にある外務省の中にそういう言葉が通じ合うような人員構成というものを考えていかないと、英語だけ、ドイツ語だけ、フランス語だけとかいうようなことでは、私はこれからの広範な国際関係を円満に進めていくためには不十分だと思うわけで、そういう点については外務大臣も――なおこれは自衛隊の定員をふやすよりはもっと簡単ですから、これは通りますから、反対討論もしませんので、こういうことについてはどうお考えですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 自衛隊とはこれは話は別ですけれども、外務省でももう少し人員を充足して、世界各国の外国語に精通する技術者といいますか職員を拡充していくということは、これから日本平和外交を推進していく上においては欠くことのできない課題であろう、私もそういうふうに思います。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 本来、スウェーデン関係について質問したいことをたくさん持っておりましたけれども、それはもう省略して、次のドイツ関係に移りたいと思うわけですが、先週の週刊朝日をあけてみますと、菊の御紋章の入った日本の大使館がドイツにそのまま残って、これは国辱の象徴だというようなことが写真掲載をされておったわけです。その中を読んでみますと、やっと百万円の調査費であれをどうするかという話をされて、西ドイツへ行かれる日本外務大臣なり外交関係者にはいつも、この建物は一体どうするつもりだろう、こういうような話をされるそうですが、これは一体どうなっておるのですか。
  34. 田中義具

    田中(義)政府委員 ベルリンにございます旧帝国大使館の跡は、これまでのところ最低限の維持のために必要な措置がとられているだけで、御指摘のように、まだ破壊されたような形で残されております。これは何とかしなければいけないということで、ドイツ側の意向も組み入れながら対策を検討中でございます。ついせんだっても有識者に集まっていただきまして、どのような形であれを復旧して活用していくのが一番適当かというようなことを御意見をいろいろ伺いながら案を立てている段階でございます。そのための調査費も御指摘のように本年度百万円、それから来年度についても新しい予算で同じ程度の調査費をお願いしているという状況でございます。ただ、これは実際に補修、再建して活用するためには非常にたくさんの経費がかかりまして、いまの厳しい外務省の予算の中でどこまでそれができるのかという問題が大きな問題としてあるわけでございまして、調査費についても、年間百万円というのは必ずしも満足のいく金額ではないのですけれども、いまの厳しい財政状況のもとでは、限られた予算の中で最大限の努力をして、本件、何とか少しでも早くはっきりした再建計画を打ち出したいというふうに努力している次第でございます。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 厳しい予算の中で最大限に努力するだとか、鋭意検討中だとかいう言葉は、これはもう日本の頭のいい優秀な官僚の常の用語ですね。大臣、建物をごらんになったのですか。なったとすればどういう印象を受けられたのか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もかつてベルリンに参りまして、旧大日本帝国時代の大使館が無残な姿で横たわっておる、草がぼうぼうと生え茂っておる状況を見まして、こんなことでいいのかなということを強く感じたわけで、恐らく日本人で西ベルリンを訪問してあの大使館の廃墟を見ると、みんなそう思われるんじゃないかと思います。したがって、政府もこれは何とかしなければならぬ、国会でもいろいろと御論議にもなっておる、こういうことで、ようやく百万円というふうなわずかな調査費もつけたわけでありますが、調査費をつけた以上は、これは前向きにどういう形で処分をするか、またどういう形にしていくかというふうなこと等も、設計図をつくってもらって、そしてこれに対処をしていかなければならぬ。まず、どうしたらいいかということ、その対応策を早急に有識者の委員の皆さんにお集まりを願って、とりあえずそうした設計図だけでもつくってもらいたい、こういうふうに考えております。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 これは戦後三十七年たったわけですから、戦後三十七年たって、この建物が話題になってからもずいぶん久しいわけで、私自身も先週の週刊朝日を見て、まだこれはこのままおいてあるのだろうか、こういうふうにびっくりしたわけです。しかも、それは確かに日本の軍国主義の象徴的な建物で、西ドイツに、ベルリンにつくってあるわけですから。これは、百万円というのは五十七年の予算ですか、五十八年の予算ですか。これはどうなっているのですか。
  38. 田中義具

    田中(義)政府委員 五十七年度の予算で百万円計上されました。それから来年度の、五十八年度の予算要求についても百万円計上して、現在、国会で御審議いただいているという状況でございます。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 それじゃ、事務的にこれはいつ結論が出るのですか。いままでの三十七年の流れを見ると、まだ十年ばかり先ですか、それとも今年度中あたりにどうするかという結論を出せますか。
  40. 田中義具

    田中(義)政府委員 本件について調査費が計上されたのが、この五十七年度に初めて計上されまして、それも百万円ということで、必ずしも十分な調査はできないので、来年度もさらに計上させていただいているわけですが、有識者を集めての正式の会合というのも先般初めて開催されて作業が始まったという段階ですので、いまの段階ではいつ成案が得られるのかということについてはまだはっきりした見通しは立っておりません。われわれとしてはできるだけ早く努力するということ以上にいまの段階でははっきりしたことはまだお約束できないような状況でございます。
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 それは予算がないからできないとか、調査費が計上されたばかりだからいつどうなるかわからないとかいうようなことで、これをまた五年、六年、十年あるいは二十年というような年数を経過するようなことにしますというと、まさに日本の国辱の象徴の建物がベルリンに厳然と存在をするということになるわけなので、そこらあたりは、いわゆる外務省事務当局で作業を進めるというだけではなしに、やはり大臣もひとつ、おれの任期中にはこれについての方向を決定づけよう、こういうぐらいの決断をして、安倍外相の存在を高めてもらいたいと思うわけですが、どうでしょう。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりベルリンなんかに行った人はみんな、このままでいいのかという感じを持って帰られているわけでありますし、いま調査費もついているわけですし、また、いまの有識者の会合も持たれたわけでありますから、一日も早くこの有識者から、どうしたらいいかという案を出していただく。せっかく五十八年度も予算をいただく、こういうことになりますれば、ことしじゅうにでもこの有識者からの答申を得て、それを踏まえて政府はこれからの方向を決めてまいりたい。ことしじゅうにでもこの有識者の答申を得たい、こういうふうに思います。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 これは本来の租税条約との関係はないかもしれませんけれども、やはり日本西ドイツとの関係を友好裏に発展をさせていくためには、西ドイツの国民はナチス時代のものについては非常な抵抗心を感じておるわけですから、そういうような日本の軍国主義の象徴のような建物をベルリンに存在をさすということは、日本平和外交の真意が疑われるわけですから、これは事務当局のように、せっかく予算がついたからこれをこうします、ああしますというような形でやりますと、これは百万円ぐらいの調査費ですから、委員が何人でどういう構成か知らぬけれども、仮に四、五人の方が一遍行って、あそこを厳密に調査してみようじゃないかということで行けば、それだけでもう百万やそこらの金じゃ足らないわけでしょう。百万ぐらの予算じゃどうにもならぬわけなんだから、その点について、私は、調査をどうやって早く完了するのか、そういう努力をしないと、これはいま大臣が、五十八年中にでも結論を出して、こういうことを言われたけれども、これは単なる願望に終わりはしないかと思うのですが、これを願望に終わらせないようにするだけの大臣としてのお気持ちがあるのかどうか、この際承っておきたい。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 具体的にどうするかということになりますと、これは予算措置等その他いろいろと厄介な問題も起こるわけですが、とにかく諮問委員の皆さんに、これをどういう方向へ持っていくかというプランぐらいはやはり早く出してもらうことが必要じゃないか、こういうふうに思いますので、調査がどれだけかかるかわかりませんが、しかし調査といいましてももう大体わかっていることですから、これをどういうふうにこれから活用しようかということでありますので、それについての意見を早くまとめていただいて、そうして私の手元に出していただきたい。これは早速事務当局に指示をいたしまして、そうして諮問の委員会を今後何回か開いてもらって、皆さんの衆知を集めた形で、ことしじゅうにでも答申を私が得て、そして今後の方向づけに持っていきたい、こういうふうに思います。
  45. 井上泉

    井上(泉)委員 最後に、この条約締結によって日本国民が西ドイツとの関係で受ける租税上の利益といいますか、それはおよそどれぐらいのものの利益を受けるのか、その点をひとつ御回答願って私の質問を終わりたいと思います。
  46. 河原康之

    ○河原説明員 今般改正することになりましたコンテナリース料につきましては、ドイツ側は日本のコンテナ専門業者に対して課税を行っていない現状でございますので、日本側としてのメリットというか、お金の面からだけ見ますとそれは現状と変わらない。逆に日本の方は課税するたてまえとなっておりまして、これがどれぐらいあるかということにつきましては、コンテナリースの専門業者が西ドイツ海運企業に貸しておりますコンテナの数量からはじく以外に推計方法がないけれども、これは非常に小さな金額になろうかと思います。推計方法は、一個のコンテナが大体一日二ドルと考えて、それを三百六十五日としまして、それを日本円に換算しますと大体四千万円程度になる。したがって、源泉税として一〇%ということでございますから、四百万円ぐらいの減収になる、こういうふうに試算されると思います。ただ、この関係では租税以外の問題のメリットが非常に大きいのじゃないかと考えております。
  47. 井上泉

    井上(泉)委員 もう質問を終わりますけれども、最近一番日本と飛躍的に経済関係が発展をしてきた、増大してきた中国との関係のこの種の租税条約というのは、これは前のときにも私は質問を申し上げたわけですが、これがいまどういう状態にあるか、ごく簡単にこの際承って私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。
  48. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 中国との間の租税条約交渉でございますが、これは昭和五十五年の末に日中の閣僚会議で話が出まして、自来四回の会議を重ねております。本年一月に行われた交渉で大枠についてかなりの意見の一致を見まして、実質面での進展がございましたので、次回は六月以降ということで予定しておりますけれども、今後かなり具体的な進展をわれわれとしては期待しております。いつごろ条約がまとまるかということは、交渉でございますので、現段階では明確に申し上げられませんけれども、進展のテンポがかなり進んできたということを御報告申し上げられると思います。
  49. 井上泉

    井上(泉)委員 終わります。
  50. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡部一郎君。
  51. 渡部一郎

    渡部(一)委員 日本国ドイツ連邦との間の協定を修正補足する第二議定書についてお尋ねをしたいのでありますが、いま同僚の井上議員からも御質問がございましたように、この議定書で修正される免税の範囲はおよそ四百万円という試算をお述べになりました。ということは、はなはだ小さい金額を取り扱った議定書であります。ということは、日本西ドイツとの関係において四百万円規模の修正まで丁寧に行われるということは、それだけ両国関係が安定しており、両国関係がそれほど小さいものまで調整をする段階に至ったというならば、はなはだ穏当なものであろうと思います。しかし現実は、四百万円規模のものを取り扱う段階ではなくて、数千万円規模あるいは数億円規模の紛争が両国間には発生しているのに、こうしたものまで扱わなければならないという政治的理由が介在するのではないかと思われるわけであります。その理由は何かを伺いたい。  なぜかというと、ここのところEC議会と日本国との間の貿易摩擦の問題は、一次的に非常に過激化をいたしまして、その中において日本と同等の経済的実力を持つドイツ連邦共和国に対しまして、ECの中で少なくとも日本立場を擁護できる実力を持った同国政府が好意的な発言をすることを求めて交渉が行われていたということは事実でございますが、それを配慮する余りにこうした問題を取り上げられたのかなとも想像できるわけであります。  しかし、こうした規模のものでドイツ連邦共和国側の好意を得ようとするのであるならば、余りにもこそくの手段に過ぎるのではなかろうかと思われるわけでございます。要するに、私の言わんとするところは、このような手段において同国との関係を律しようとする政治行動、それから外交交渉の態度はどこに起因するものであり、何を意図されているものであるか、お尋ねをしたいと存じます。
  52. 田中義具

    田中(義)政府委員 御指摘のとおり、この協定によって対象とされている税の金額そのものは大きくございませんけれども、この問題は日本と西独のコンテナリース業界にとっては関心事でございまして、両者に対する課税上の不均衡がドイツ日本との間に存在していた、それを西独側は大臣のレベルまで上げて関心を示した、これは何か西独に対する差別的な措置を日本がとっているのではないかというような形で、大臣レベルで問題を取り上げて日本側にその改善を要請してきたということがございましたので、日本側としては、これはあくまでも技術的な、単なる両国の税制上の違いから生じている全く技術的な問題であるということで、したがって、それほど西独側が改善を希望されるのであればそれに対しては前向きに対処していくということで、具体的な租税交渉を行いまして、今回この改定を国会にお願いするということになった次第でございます。
  53. 渡部一郎

    渡部(一)委員 二月の八日付の「ハンブルグ七日時事」の報道によりますと、西独経済研究所は七日、欧州共同体の方が日本以上に保護主義的であると分析結果を発表し、欧州の対日批判に反論した。「この分析はECと日本の関税、非関税障壁を細かく比較したうえで、日本市場に対するECの閉鎖性非難は「温室の中に座りながら相手に石を投げつけているようなもの」ときめつけている。」と記してあります。これを扱ったのは「ハンブルグ経済研究所の通商問題専門研究員のマンフレッド・ホルツス氏。七日発行された同経済研の英文月刊誌「インタエコノックス」記載の論文の中で同氏は、関税貿易一般協定(ガット)が公式に「障壁」と規定しているものを基準にとると、ECは完成品輸入の五・四彩がこの対象になっているが、日本は三・一%にすぎないと指摘、また、非関税障壁ではECの輸入商品のうち二二%がその対象になっているのに対し、日本は五・二%にとどまっていると述べている。」その後にドイツのことが言及されていまして、「非関税障壁の中には、ドイツ工業規格(DIN)のように日本よりもはるかにひどいものが含まれており、さらに問題なのはこれらの措置が日本をはじめとする特定の一部の国を対象にした「差別的性格」をもっていることだと強調している。」このように記されているわけであります。  そうすると、こういうことになるわけですね。こちら、さきほどの田中議官のせっかくの御答弁でありますが、田中議官は、大臣のレベルに上がった問題だからという理由を一つ挙げられた。第二は、この問題については純粋に技術的な問題で、だからやったのだと述べられた。そうしたら、わが方の大臣は、これだけ大きな貿易差別というものが行われるのにどうしてそれに対して関心を示されないのか。日本外務大臣、通産大臣はどうして関心を示されないのか。それからDINの規格のごときはまさに技術的問題であり、その技術的問題についてどうしてわが省は、わが日本政府は関心を持たれないのか。同じ言葉で反論ができるのであります。どうして日本はそのように、みずからの貿易摩擦について攻撃されるのを耐えて耐えて耐えるというふうにはなさっておられるけれども、ドイツ政府がわずか四百万円の問題でも大問題とされるのに、日本政府側はひたすら耐えておられるのか。NHKの家康のドラマにあてられたのかもしれないが、忍耐が美徳だなんというのは私はうそだと思っておる。それは理由のあるときだけしか美徳ではない。何を気取っておられるのか。はなはだ理解に苦しむ外交姿勢と言わざるを得ない。これについて、答えにくいでしょうが御答弁を願いたい。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちは、ECの諸国と貿易問題についていろいろ論議をする場合はEC諸国の保護政策、保護主義的な状況等についても指摘をいたしておるわけでありまして、日本だけが攻撃をされる理由はないのだ、関税等については日本世界で最も低いレベルにある、日本の市場もこういうふうに開放したのだということを説明するとともに、具体的にフランスであるとか、あるいはドイツであるとかイギリスの非関税障壁等についても指摘もしておるわけであります。しかし、何分にもEC諸国に対する日本の貿易が非常に出超であるというところに非常な問題があるわけでございまして、これは自由貿易主義をとる以上はいい品物が出ていくのは当然のことであろうと思いますし、また自由貿易体制というものをお互いに守っていかなければならぬということは基本的には同じような考えを持つわけですが、ヨーロッパの経済が悪い、そして日本からの貿易が、輸出が非常に伸びておる、こういうことで、ドイツ側あるいはフランス側からの言い分もやはりある程度は聞いて、自由貿易体制というものを堅持していく以上は日本の市場開放を日本自身がみずから積極的にやる、やることによって、諸外国の保護主義的な対策、姿勢に対してもこれを改めさせていくという姿勢で取り組んでおるわけです。  私は、ヨーロッパの中では西ドイツが一番自由貿易体制を堅持しておる、市場の開放という面については一番日本と同じような積極性を持っておるというふうに見ておるわけでございます。したがって、今回こうした措置を日本としてもとるわけでございますので、今後とも、日本ドイツの間でいろいろと貿易問題あるいはNTBの問題等について協議をする場合は、いま西ドイツみずからが指摘しているような西ドイツのNTB等の問題についても日本からも積極的にこれが改善というものは求めていくべきであろう、こういうふうに考えて、今後ともそうした基本的な姿勢で対応してまいりたいと思います。
  55. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣、御答弁の趣旨がちょっと違いますですな。それはいま別のことを丁寧にお答えになりまして、その御答弁には敬意を表します。  ただ、貿易摩擦の問題について市場開放をますます両国が進めなければならぬのはわかっておりますが、その中で先方の非関税障壁を容認する形で日本の貿易出超というものを解決しようという姿勢であっては、それはおかしなことになります。明らかにここの場合にテーマに挙げておりますのは、先ほどの電報で読み上げた部分は、ドイツの工業規格DINというものの貿易に対する障壁性というものについて日本政府は関心を示すという姿勢が同時になければカウンターバランスがとれないという感じがするわけであります。そうでないと、言わざるものは承認したという外交原則によってわが方ばかりが悪い。それで先年外務大臣もEC等をお回りになって非常な御苦労をされたがゆえに私はあえて言うわけでございますが、ともかく担当大臣がひたすら謝らせられ文句を言われながら通り抜けるというようなやり方を繰り返すのではなくて、常時こうした先方の不合理については不合理として指摘する姿勢、それが必要ではないかと提起をしておるわけでございます。その点は、今後そうした態度をおとりになるようにお勧めしたいと思うのですが、いかがでございますか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くそのとおりであろうと思います。わが国自身がこうした非関税障壁等の撤廃に努めておるわけでありますから、諸外国が同時にいま残っておるところの非関税障壁の撤廃のために努力する。それに対して日本が強くこれを主張するということはまた当然であろうと思いますし、今後最大の努力を注がなければならぬと考えます。
  57. 渡部一郎

    渡部(一)委員 EC間のほかの国はもっとひどい状況があるのもわかりますが、ドイツとの関係、もっと言うべきことはお互いに言い合って前進するという姿勢を、本条約締結、本協定締結がそのきっかけになることを私は望みたいと思います。日本側だけがかっこうよく言う、向こう側のエラーについては全部目をつぶるという姿勢では前進しない。日本はこの程度譲っているのにおまえの方はもうちょっと直さぬかということが当然交渉の部面で出るべきである。交渉の面でそういうバランスがとれないと、後々もっとひどい状況というのが累加されてくる。その意味では、日本外交のPR下手というか、パブリシティーを利用するやり方が下手というか、この条約の決定においても、こんなところまで日本側が配慮しているのに先方は配慮してくれないと後から言ってもへの突っ張りにもならない、私はそう思います。だから、その点は十分の御配慮をお願いしたいと思います。大臣もうなずかれておられますから、答弁は要らないことにいたしまして、次に行きたいと思います。  その次でございますが、スウェーデンの方に取りかかりたいと存じます。  国際交流基金年報の五十七年版によりますと、五十六年中に空手とか日本棋院の専門棋士等が一、二カ月スウェーデンを訪れ、空手や囲碁の指導をするとともにデモンストレーションを行っておりますが、これらは十七条1の後段の規定によりまして租税を免除される対象と考えられるものでありますかどうか。またスウェーデンとの間で、芸能、スポーツ関係でも今日までいろいろな交流の実績があると思いますが、そうしたものを増強されるおつもりがあるのかどうか。それで、同国と日本との関係というのはいま非常に薄い。先方の人口の少なさもあるので、非常に規模が小さいということが言えると思いますが、こうした規定について、実際の運用の上からどうなのかをお答えいただきたいと思います。
  58. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  スウェーデンとの条約の十七条一項に関連する点につきまして私の方からお答えさせていただきまして、あと実態につきましてはまた別にお答えすることにいたしたいと思います。  御指摘のように、新条約締結によりまして、十七条一項におきまして、政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づいて行われる人的交流、文化交流等におきましては、当該活動によって生ずる所得についてもスウェーデンにおいて免税されるという新たな合意が規定されたわけでございます。ただ、先生が先ほど御指摘になられました五十六年度におけるスウェーデンに派遣された空手専門家その他の専門家につきましては、これは国際交流基金が派遣経費の全額を負担して派遣したものでございますから、現地におきまして所得が生ずるという事例ではなかったわけでございますので、もともとそういう課税の問題がなかったというふうに御理解いただきたいと思います。ですから今後、そういう課税の問題が起こらないような文化交流については適用がないわけでございますけれども、現地においてたとえば所得を上げるような芸術活動であるとか人的交流の結果の役務提供であるとかいうものが起こりました場合に、この十七条一項に規定されるような政府間の合意に基づくものについては新条約の規定に従いまして相手国において課税を免除されるということによって交流の促進を図るという事態になるわけでございます。
  59. 市岡克博

    ○市岡説明員 ただいま先生の方から御指摘ございました点の、スウェーデンとの文化交流の現状という方につきまして御説明を加えさせていただきます。  わが国スウェーデンとの間ではこれまで人的交流、日本語普及事業、各種の催し物、展示とか公演とかいうものでございますが、そういうものを中心とする芸術交流など種々の分野で文化交流を行っておるわけでございます。このうちで特に申し上げていいかと思いますのは国際交流基金の事業でございます。これの公演、展示事業におきましては、五十五年度にはオオノカズオ舞踏団あるいはアンサンブルデルフォニック・ジャパンの公演、女流陶芸家の展覧会の開催、五十六年におきましては早稲田小劇場の公演、それから北欧地域に和紙の展覧会を巡回するということなど、わが国の伝統的芸能と申しますか、それから現代芸能を含めましてこれを紹介するということを行っておるわけでございます。  このほか、文化人、学者等の交流、留学生の交流、青少年の交流の分野におきましても着実に進展していると申し上げていいかと思いますが、まだまだ数字的には多くのものが出る状態にはなっておりません。今後、事業計画をつくる際には、予算の関係ももちろんございますが、他の国とのバランスとかそういうことも考慮する点はございますが、できる限り進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  60. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、今度はこの租税条約の背景になることについてきょうは問題をちょっと指摘しておきたいと思います。それはアメリカ政府による最近の各種の域外適用、米国法の域外適用という問題についてであります。  域外適用は、アメリカ側に基礎的な背景としてアメリカ式の民主主義アメリカ式の法律というものは世界で最高のものであって普遍法だというニュアンスの感覚があるのでしょうか、租税の分野を含めて輸出管理法とか独禁法とか証券取引法とかアンチボイコット法とか等々におきまして、自国内の法律というものを対外的に、国際的に執行していくというやり方というものがきわめて多いわけであります。  今回、世界じゅうで大体問題になったわけでございますが、たとえばソビエトに対して対ソ制裁措置を強化するということで、輸出管理法施行規則改正において、昨年の六月十八日アメリカ国家安全保障会議の決定によりまして、ポーランド情勢との関連におきまして、石油、ガス関連機材の輸出に関する制裁というものを打ち上げた。そういう形によりまして、外国企業の生産するものを外国企業が米国から輸出する場合にも制裁の対象にしたといういきさつがございました。また最近は、トヨタ自動車のトヨタ販売とトヨタ自動車工業との合併におきまして、両会社の合併についてはこれを届けさすということが行われたわけでございます。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 また最近におきましては、米司法省は、日本の自動車会社のトヨタを相手といたしまして資料の提出を求める判決を請求した。現在、ロサンゼルス連邦地裁において議論が続けられているわけであります。  これは米国の内国歳入庁、これは向こうの国税庁のようなものだそうでございますが、日本の自動車会社が在米子会社に対する自動車輸出価格を引き上げたのは、要するにアメリカで販売する価格を引き上げたのは、それによって在米子会社の利益を人為的に圧縮して、圧縮することによって今度はアメリカの税務当局に対する支払いを少なくし、実質上、税法上の脱税を行ったのではないかという理屈によりまして、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研の三社に対して、一九七五年から七八年におけるこれらの会社の日本国内における販売や生産費について、また原価コスト等について資料提出を求めたということでございます。  一つの会社の収益に対して関係当局が資料提出を求めるということは、日本国内では当然あることでございますし、またそれについて会社がオープンにするということはあり得るわけではございますけれども、少なくとも米国法に基づいて米国行政当局がいきなりそれを指図する、これは一国の法律が一国のバリアを越えて他国に波及するという点では全くいかがなものか。いまの国際情勢の中におきましてはそういうルールはないのでありまして、こういうルールをやるというんだったら、国連におきましてすべての国が合意をしてある程度の前進を見なければならないテーマであります。  ところがこの命令に対してどういう反応が起こったかというと、本田技研並びに日産自動車側は、これはもうどうせ泣く子と地頭には勝てぬというやり方で直ちにそれに応じた、そういうやり方で問題を糊塗した。トヨタ自動車側はこれに対して反論を行い、この資料の提出を拒否した。それに対して司法省は、ロサンゼルス連邦地裁に提訴し、内国歳入法四百八十二条に基づいて日本親会社と在米子会社間の取引価格が人為的で不適当だと判断したときは、同庁は在米子会社に追加的利益を割り当てる、つまり追加課税をする、こういうやり方で現在論争が続いているようでございます。  これは本来米国系多国籍企業のトランスファープライスに対するところの脱税防止するための措置であると見られてきたものでありますが、それが広く運用されて日本側の企業に対する課税として考えられておるわけであります。もちろんこれは連結決算の問題の進行等とも相まって非常にめんどうな一面を含んでおりますけれども、これに対する扱いが不適切であると私は思います。  結論をどんどん言ってしまいますが、というのは、日本外務省はこれに対してどういう措置をとったかというと、外交ルートを通してこれはけしからぬよと、こうしたものについては外務省かち私の方に出していただいたペーパーでございますが、政府としては、米内国歳入庁が日本法人であるトヨタ自動車に対し、同社がわが国に保有する資料の提出を求めた八月四日付資料提出命令は確立された国際法の原則に合致せず、したがって右提出命令の効果はわが国国内にある文書に及ばない旨のわが国政府の考え方を先般米側に対し外交ルートを通じて申し入れたというペーパーを事前にちょうだいしました。ところが、これはトヨタ自動車に対してはこう言った。しかし本田と日産に対しては、もう自分で出してしまったのだからしようがないやということになっておる。私の知るところによれば、このように類似の例が多数ございまして、日本政府はときどき申し入れに来る、そしてときどきはそれを全部すっぽかすというやり方で対応に非常にばらつきがある、ばらつきがあるだけではなくて、日本政府はなるべくアメリカ政府の御無理ごもっともとそのままほおかぶりをして、知らぬ顔をして布団をかぶって寝ておる、ときどきこたつの中から片目を出して、困るよと言う、また布団をかぶって寝ておる、こういうふうに見えるわけであります。これで日本国内の各企業を防衛するだけの責務を果たしておるのか、私はこれははなはだ不満であります。  さて、私ばかり演説しているとお役所の言い分がわかりませんから、この辺で非常に困っておられる御回答をお願いしたいと思います。
  61. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 お答え申し上げます。  トヨタ自動車にかかわります件でございますが、事実関係はまさに先生が御指摘のとおりでございます。この件につきまして私どもといたしましては、確かにこの資料提出の命令は実質的に外国検察官による証拠書類の押収に等しいと考えておりまして、このような国際的な司法手続に類することに関しまして司法共助取り決めとかあるいはわが国の事前の同意を得ないで直接文書の提出を強制するということは、日本国内における米国の権利行使にほかならない、こう考えられるわけでございます。そこで、このようなアメリカ側の文書提出命令は国際法の原則には合致しないと考えますので、米国に対しましては、先ほど御指摘ございましたように、今月初めに口上書をもって申し入れを行った次第でございます。
  62. 渡部一郎

    渡部(一)委員 しかし、その口頭による申し入れ、トヨタ自動車に関しては、トヨタ自動車という大きな企業ですから日本政府にもお願いして口頭申し入れまでなったと思いますけれども、文書提出命令だけではなくて、今度は地裁で判決が行われたらどうするか、判決が行われて執行命令が出たらどうするのか、そのときは口上書では済まないのであります。そのときはわが方はわが方の根拠法を用意して米国政府と正式交渉をしなければならぬ立場にあります。しかし、わが方には根拠法がこれにはございません。根拠法はない。行政指導のたぐいが多少あるだけ。そして、その口上書があるだけにすぎない。その意味では、これに対して日本政府はもっと抜本的な交渉をなすべきではないか。そうでなければ、わが国の企業はアメリカに対してまたヨーロッパに対して、先方の網の目をかいくぐって、見つかったらしようがないから料金を払う、まるで昔の山賊に遭った商人のようにチップを払いながら突撃していく、こういうやり方になるでありましょう。日本政府はそれを許容しているように見える点がある。ですから、対抗立法をちゃんとつくるのか。こうした問題について対抗立法をとるのか。課税に関して対抗立法をとるのか。課税のみならずこうした諸問題について域外適用しようとする法律の運用に対して対抗立法をもってする、一つ原則でありましょう。  そうでなかったら、こうした問題についてはトヨタ自動車の問題に関してのみしか口上書は提出されていない。トヨタ自動車に対してのみではなくて日本全体の各企業の諸活動に対して網をかぶせた申し入れを同国政府に対して行い、そしてこうした問題について同じようなことをする諸外国に対しても、わが国日本系企業のみならず、同国のこうした域外適用に対する法律執行上の不備に対して注意を喚起するとか明瞭な方策が要るのではないか。また、当該裁判所におけるこうした訴訟事件についての一般的な司法的立場を法務省とも協議して決めるべきではないのか。また、通産省、大蔵省とも協議されて、またそれら以外の諸省庁とも協議して、日本政府立場を協議するようにまとめていくのが外務省としてやるべきことではないのかと思うのでありますが、お答えやすいところからどうぞお答えいただきたい。
  63. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 お答えいたします。  無論、政府といたしましても、アメリカが管轄権の域外適用につきましてしばしば国際法上正当化し得ないようなこと、そういうことを行うことは十分認識している次第であります。かつまた、先生御指摘のとおりこのような問題に関しましてかなり広い分野にわたりましてやっていることもございますので、その辺いかに対応するかにつきまして、今後政府部内で十分相談してまいりたいと思っております。
  64. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そのくらいが無難な御答弁だろうと思いますけれども、これはどうしても参事官ではなく大臣にお答えをいただかなければならぬと思います。  というのは、この問題、余りにも問題が大きくて、まだ協議されていないテーマだから、余り私がきょう一気に答えを求めるということも残酷に過ぎるかもしれない。しかし、問題点のあることを放置はできないことは明らかでありますから、大臣としては関係各省庁とも協議の上、これに対して適切な御判断、そして対策をおとりになるよう確約をしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も最近アメリカの態度を見ておりますと、域外適用等についていまお話しのような国際法に反するようなことを平気でやっている。昨年も御承知のようなエネルギー危機をめぐっての、商務省令を改正して、そして域外適用する。そこで大変ヨーロッパ諸国も怒ってしまって国内法を新しく立法したということも聞いておるわけでありまして、いまトヨタ自動車の件についても口頭で抗議をしておるわけであります。しかし、そういうことでこのまま済ますわけにもいかないだろう。これからの日米関係を考え、それにはやはりきちっと言うことも言わなければならぬし、間違いは正していくというのが本当の日米関係であろうと思いますので、いまお話しのような点は私も最近非常に感じておるわけでございますので、各省庁で相談をいたしまして、こうしたいわば無法とも言うべき措置が今後拡大していかないように、日本日本なりの対抗措置を場合によってはとる、そのための検討は大いにして結論を出すように努力をすべきである、こういうふうに考えておりますので、そういう立場で各省庁とも相談をしたい、こういうふうに思います。
  66. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題に対する結論は、可及的速やかにまた徹底的に協議を行われまして、当委員会あるいは関係委員会におきまして御報告あることを求めます。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 できるだけ早く関係省庁で話し合いまして、また報告をさせていただきます。
  68. 渡部一郎

    渡部(一)委員 最後に一つ申し上げたいのですが、最近、国際情勢が複雑化しつつありますのに、外務省の御担当の分野というものは非常に広がっております。たとえばいまの質問でも明らかなように、関係するのは大蔵省であり、法務省であり、国税庁であり、そして外務省であり、経済協力局であり、通産省であり、いろいろなところに広がっていく。それに対して外務省のプロパーの職員というものは、その調整のためにも非常に大きな労力を払わなければならない。しかも外務省の役人は、これは先ほど外務省の方が配付をされているのをちょっと拝借してきたのでありますが、他国と比べましても非常に人数が少ない。わが国の在外公館の館員数は、各国の在日大使館員数に比べておよそ半分。アメリカ日本に置いているのは二百十九人なのに日本側がアメリカに置いているのは七十九人、韓国においては百七十二人対三十七人、中国は百十一人対四十九人、フランスでは八十六人対四十人、ソ連では八十一人対四十人、こういうように少ない。また、外務省の定員というのは大幅に少なくなっておりまして、戦前五千六百三十七が最高であったのに現在は三千六百三十二、これは五十七年度現在でございますが、少ない。  私は、多角化する外交機能というものを広げるためには、プロパーの職員をふやすだけでなくて、関連するグループからこうした職員をもっとコンバートしていいとは思いますけれども、ともかく枠が小さ過ぎる。実際には質の高い外交交渉というものは余りにも定員が少ないということで望めない。総定員法の枠によって縛られ、また、最近の行政改革のいろいろな重みというものは当然理解しなければならないのでありますけれども、平和国家としての日本が今後とも活動を続けていくためには、現在の定員では余りにも少な過ぎるのではないかと思われるわけであります。外務省はその点どう考えておられるか、そしてこの問題にどう対処しようとされているのか、私はまず伺いたいと思います。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるようにいま外務省の定員では、国際的にわが国立場というのは非常に重くなっておりますが、そういう重い責任を果たす外交というのはとうていできないと私は思います。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、外務省が目標にいたしております少なくとも五千人の定員には何としてもこぎつけなければならぬ。ところが、最近の行財政改革の時代でありますから、なかなか困難でありまして、五十八年度も多くの皆さんの御支援によって辛うじて七十七名の純増ということになったわけでございます。このペースでいきますと、六十年にはとうてい五千人には及ばないということでありますが、しかし、これからの外交の需要というのはますます大きくなってきますし、外交の責任というのはますます重くなってくるわけでございます。われわれとしても皆様方の御支援も得ながら、この定員の充足、定員の充実、さらにまたこれに伴う予算措置等も、財政困難の中ではございますが、予算の充実といった面についてこれからも努力をしていかなければならぬ。そうしないと本当に世界の中の日本としての国際的役割りを果たすことができないと私は考えております。
  70. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題につきまして、ただいまおっしゃいましたが、三千七百人のレベルを五千人のレベルに上げるのに一年間で七十人づついきますと、西暦二十二世紀あたりまでかかるんじゃないでしょうか。これはもう論議の余地のないほどのレベルの低さ、努力の貧しさ、結論の哀れさというものがあるわけであります。私はこれは一外務省の扱うべきテーマを越えておると思うのでございまして、国会全体の問題として扱うのが至当ではないか。したがって、定員は七十人規模で増大するのではなくて、千人規模で増大しなければならない。少なくとも五百名ずつ四カ年にわたって増強すれば五千人規模にようやく到達するわけであります。これは抜本的な問題であります。したがって、委員長にお願いするのでございますが、この問題につきまして当外務委員会におきまして御討議の中に加えていただき、同僚議員の御協力を得まして、外務委員会の意思を表示されることを求めたいと存じます。委員長並びに理事会の皆様方におかれましては、この問題について討議されるようにお願いしたいと存じますので、よろしくお願いします。
  71. 竹内黎一

    竹内委員長 ただいまの渡部委員の発言の件につきましては、理事会において十分協議いたしたいと思います。
  72. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ありがとうございました。
  73. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡辺朗君。
  74. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この租税に関しての二つの条約を議論さしていただきますが、関連して幾つかまずお尋ねをしたいと思います。  このスウェーデンとの条約、これは古いいままでの条約を新しくつくり直した。それは、基本的にOECDのモデルに従ってつくり直した。西独との条約の方は、OECDのモデルに沿ってつくったものはいままであった。しかしながら、国際運輸に使用されるコンテナ等のリース料の取り扱いに関する規定を修正補足しなければならなかった、だから、これがいまここで審議されている、こういうふうに理解をするわけであります。  そうすると、ドイツとの条約を見る場合に、OECDのモデルではいま国際商取引状況からいって必ずしも適合しない問題がいろいろ発生してきているんだというふうに理解することができると思いますが、そうなんでしょうか。まず、私自身幾つか確かめたいものですから、お尋ねをさしていただきます。
  75. 河原康之

    ○河原説明員 お答えいたします。  OECDのモデルづくりといいますのは非常に古くから始まっておりまして、六三年に第一回のモデル条約ができております。それ以降また、時代の変遷、状況の変化を加味して、一九七七年に新しいモデル条約ができております。しかしながら、コンテナ問題というのは、当時の七七年の議論においては、そもそも国際運輸業者がコンテナを持つ形というのが頭の中にあって、コンテナ専門業者というのが頭の中になかったということでございます。したがって、現在OECDの作業部会におきましては、コンテナリース業というものをどう考えるかということで議論が続いております。  そのほかの問題についても絶えずモデル条約の条項というのは検討が行われておりまして、それが集大成されたときにまた新しいモデル条約が出るということでございますが、モデル条約自体がわりあい安定性を要するものですから、そうたびたび変えるというものではございませんで、十年とか十五年がかりで作業しておるというのがいまのOECDの検討の中身でございます。
  76. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうすると、いまのドイツとの条約に見られるように、いまあるOECDのモデル、これから逸脱するとかあるいは適合しないような問題が起こってくる事例はこれからも多々起こり得る。しかしながら、しばらくは続けて、何年か後にはもう一遍見直しをするというふうな考え方に立っている。そうすると、ほかにも矛盾するような問題点であるとか検討しなければならぬところとか、まだたくさん問題があるわけですね。あったら具体的に幾つか挙げてみてください。
  77. 河原康之

    ○河原説明員 その前に一言御説明申し上げたいのですけれども、OECDモデルにおきましては使用料条項がありまして、ここに専門業者が行うコンテナリース料というのが入るわけですけれども、このOECDモデルにおける使用料条項といいますのは、制限税率ゼロ%ということになっております。これは源泉地国において課税しない、そういうモデル条約になっておるわけです。ところが日本側は使用料に対しては一〇%の課税をするということで、これに留保を課しておるわけです。したがって、コンテナリース料につきましてもその関係で、西ドイツ条約、これは日本側の強い希望で一〇%という制限税率になっておるわけですけれども、それの関係でかかってくる、いわばモデル条約の中身というより、日本のそのモデル条約に対するリザーベーションの中身から生じている問題だということだと思います。  それから、現在検討されておりますのは、人的交流が非常に盛んになりまして、いわばあっちこっちめぐっていくような人がふえておるわけです。これはヨーロッパの国においては非常に深刻でして、三カ月ごとに住居を変えて、どこの国でも所得税を払わないとかそういった細かい問題がありまして、それについて条項的にどういうふうにやればそういったものを防げるのであろうかとかいうことで、従来二重課税の排除という面が非常に強かった議論が、最近ではいわば脱税防止とかいった穴をふさごうとする議論が多分に起こっておるということでございます。
  78. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまおっしゃったOECDのモデルについてもわが国は幾つかの条項についてあるいは項目について留保を置いている。いま一〇%のところも留保のところだとおっしゃいました。ほかにはどんな留保を置いてありますか。それはなぜですか。
  79. 河原康之

    ○河原説明員 ほかにも幾つか留保があるわけですけれども、その中の重要項目を申し上げますと、ちょうどいま起こっております移転価格の問題がございます。これは特殊関連企業条項といいますか、特殊関連のある企業間の取引についてその価格が適正でない場合、その価格を適正化することができるという項目がございます。それが第一項でございますけれども、第二項目に、一方の締約国が適正価格を是正した場合、他方の国はそれに合わすようにすべきである、そういう条項がございますが、その条項については日本側は留保を付しております。この考え方は、自動的に適正価格の調整が行われるということは、課税当局の意見の相違があるときに問題の解決にならないという趣旨で留保をしているわけでございます。
  80. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 どうなんですかね、そういう留保をつけておいて不都合は全然起こりませんか、重ねて。
  81. 河原康之

    ○河原説明員 これはむしろ留保を付しておかないと、条約交渉をしているときにOECDモデルに対して準拠するということに勧告がなされておりますので、その点に関する日本側の主張が相手国に対してできないという問題がございまして、日本側の主張と違うところはぜひ留保を付しておくということになっておるわけでございます。
  82. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 さて国連の経済社会理事会、ここにおいて数年来新しいモデルの条約ということを検討してきて、それはすでに作成されたのですか、そこら辺いかがでございますか。ずっと検討をしておりましたのですが、作成されましたか。
  83. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  一九六三年に初めのOECDモデル条約ができました後、この条約のモデルにつきまして開発途上国側から、これは先進国側の間の交流には役立つかもしれないけれども、開発途上国側に対しては必ずしも満足できない面があるという指摘がございまして、そういうこともございまして、国連の経済社会理事会におきまして、開発途上国と先進国との間に適用されるべきモデルというのはどういうものであるべきだろうかという観点から、一九六八年以降専門家グループが開設されまして、これを検討していったわけでございます。その結果、いろいろと議論を重ねまして、一九七九年に至りまして国連モデル条約というものを採択したという経緯がございます。そういうことで、現在国連モデル条約というのは経済社会理事会において採択されているものでございます。
  84. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そこでお尋ねをしたいのですが、そうするとOECDモデルと、今度国連の経済社会理事会、ECOSOCですか、そこにおいて専門家がつくったモデルと、その間の整合性といいますか、違いだとかあるいは矛盾するところだとかいうような問題点はどういうものがあるのでしょうか。私はそれを聞きたいと思いますが、それに先立って、この作成に当たって日本は専門家の中に参加をしているのですか。
  85. 河原康之

    ○河原説明員 お答え申し上げます。  当初から国連の専門家グループには、租税の専門家ということで国際租税課長が出席しているのが実情でございます。それで七回開かれたわけですけれども、これは国連から専門家を招聘するという形で行われておりまして、国連のお金で出張するというかっこうをとって出席しております。
  86. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 後でもうちょっと、いまの国連の方でつくった新しいモデル、これの特徴をひとつ教えていただきたいのです。  ですが、その前にもう一遍ちょっと確かめておきたいのですけれども、外務大臣、これはどうもOECDのモデルの方は途上国の方から不満があった。それは途上国にとっては余りプラスにならない。OECDモデルというのは先進国同士の相互主義、これを前面に押し出したものだということで、新しいものをいまつくろうとしている。やはり日本が途上国に対して、あるいは南北問題に対して積極的であるということであるならば、そういうものに対してもうちょっと積極的姿勢で臨むべきではなかったかと思いますが、そういう前提で、どのような特徴を持ったモデルでございましょうか、どうぞ特徴を教えてください。特にOECDとの違いを言ってください。
  87. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 簡単に特徴を御説明申し上げたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、OECDモデル条約というのは、大体経済力が同じOECDのいわば隣国同士のようなヨーロッパ諸国を念頭に置いてつくられたモデル条約でございますので、相互に経済交流が大体同規模において行われるという前提に立っておりますので、そういう意味で源泉地国においてはできるだけ免税として、居住国において税金を取るという形になっておるわけでございます。源泉地国において税金を取る場合には、そこに恒久的施設というものを置いてある場合に税金を取るという形で二重課税防止のメカニズムをつくっておるわけでございます。それから、たとえば国際運輸業務から生ずる所得につきましては、お互いに飛行機が乗り入れていたり船舶が行き交っていたりするものですから、それについては源泉地国においては免税にしようという形になっておるわけでございます。  これを開発途上国との間で当てはめますと、開発途上国から先進国に対してそういう経済的な進出というものは余りない場合がございます。それから飛行機、船舶についてもその実態において非常に片寄った形の交流が行われている場合が多いわけでございます。たとえばスリランカとの間では、飛行機は日本には乗り入れていない、日本側から乗り入れるというふうなことがあるとしますと、そのような場合に、実体的な効果としまして、開発途上国側の課税の権限を制限するという形でこれが働いてくるという実体的な効果が生ずることがあるものでございますから、たとえばOECDモデル条約からは少し離れますけれども、恒久的な施設のという概念を少し広げて、途上国側において課税をよりしやすくするという配慮をするとか、それから国際運輸業務所得につきましても、たとえば船舶につきましては半額だけは途上国側で課税してもいいというような例外を設けるとかというような形で途上国側との取り決めを行っていくというふうに配慮しているわけでございます。  そういう意味で、たとえば国際運輸業務に例をとりますと、OECDモデルでは源泉地所得は免税になっておりますけれども、途上国の間では選択をすることができる、課税をしてもいいし、課税をしなくてもいいという形に選択をするということができるという形になっておりまして、たとえば、日本はスリランカとの間では国際運輸業務につきまして半額源泉地国において課税してもいいという形になっておりますし、タイ、インド、マレーシア等につきましては飛行機は相互乗り入れておりますので、船舶については課税をしてもいいという形にするとか、そういうような配慮をしているわけでございます。そういうような実体的な効果が生ずるような差異をこの国連のモデル条約というものは盛り込んでおりまして、そういう意味で、開発途上側の実体的な利益をも配慮した形になっている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  88. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、いま二つのそういうモデルがある、これは先般も大臣はビルマに行ってこられたのですけれども、ASEANあるいは東南アジアそういう国々に対しての重要性というものはもう大きくお持ちであろうと思います。特に、ことしの一月二十四日第九十八回国会における外務大臣外交演説なんか見ましても、やはりアジア諸国あるいはアフリカ諸国そういうところにおける経済発展への努力、これに対してできる限り協力していくということをはっきりとおっしゃっておられるし、積極的に日本は貢献する、そして「「わかり易い外交」を展開する」、これはかぎ括弧でちゃんと書いてあります。  そういう意味で、こういう二つのモデルが出ている。私ども大臣にお聞きしたいのは、日本はどっちのモデルで、これからどっちのモデルを重視して、またそちらを積極的に推し進めながらいこうとしておられるのか、私はASEANなんかに対してはそれは非常に重要なことだと思いますが、その姿勢をひとつお示しいただきたいと思います。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国にとりまして、やはり開発途上国を大事にしていくということは、われわれ外交を進める上において非常に大事なことであろうと思います。そうした意味におきましても、いろいろと特恵関税もやりますし、あるいはまた経済協力等もODAという形で進めておるわけでありますが、租税条約等につきましても、やはり十分開発途上国の立場を配慮したことが必要である。したがって、そういう立場に立って基本的にはOECDモデル条約に沿って租税条約締結をするわけでございますが、開発途上国とのこの条約締結交渉に当たっては、基本的にOECDモデル条約に沿いつつも、やはりしかるべく先方の開発途上国としての立場に配慮した規定をも取り入れてきているところであるし、今後とも具体的な租税条約締結交渉に当たっては、国連モデル条約が策定された趣旨も念頭に置きながらいまのような方針で臨んでまいりたいと考えております。
  90. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それじゃさらに具体的にお聞きいたしますが、これから先、現行の条約あるいはこれから新しく結ばねばならぬと思われるような条約租税問題について、どうなんでしょうか、ことし一年の展望をした場合、どういう予定でおられますか。
  91. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  現在、租税条約につきましては、御案内のようにソ連中国、アルゼンチン等と交渉を進めているわけでございますけれども、それぞれの相手国との間の交渉の具体的な見通しについて確定的な見通しを得るに至っておりませんので、いま申し上げられますのは、今後とも精力的に相手側と話を詰めていって、できるだけ早い機会に交渉を妥結したいというのが、現在申し上げられる私どもの立場であろうと思います。
  92. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 関連してもう一遍。その中で、途上国とはどうなんですか。途上国とは余り積極的に進めないという状態のように見受けられますけれども、どうなんですか。
  93. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 現在わが国締結しております三十四の租税条約のうち、そのうち十が途上国との間の条約になっております。そのうちスリランカから一定の内容につきまして改定の申し入れが来ておりますので、これについて現在、その内容につきまして検討中でございます。
  94. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまも申し上げましたように、やはり日本は南北問題を重視して、途上国の発展のために日本が何ができるのか、そういう観点は常に強く持ちながら進めていただきたいというふうにお願いをいたします。  さて、話は違いまして、これは二重課税防止するということでの条約でございますけれども、この二重課税だけではなくて、やはり問題になるのは、日本の企業なんかでもそうなんですが、タックスヘーブンの問題があります。これについて私は、いまの海外進出企業、日本の大手企業なんかで海外に進出しているもの、あるいは子会社で海外で活動しているもの、そういうものに対しての税務調査というのはきちっと行われているのであろうか、どう掌握しておられるのであろうか、まず概括的なことを聞かしていただきたいと思います。
  95. 西崎毅

    ○西崎説明員 お答え申し上げます。  わが国の企業がいろいろな意味で非常に海外進出をやっておりまして、経済交流も非常に活発化しておるわけでございます。したがいまして、われわれ税務を担当しておる部面から見ましても、いろいろ問題が多くなっております。したがいまして、国税庁の税務行政の中で海外取引に関する調査を充実して行うということは、これは非常に大きな柱でございます。したがいまして、非常に力を入れてやっておるというように御理解いただいていいかと思います。  それから、ただいまお話のございましたタックスヘーブンに関する関係でございますが、これは御案内のとおり五十三年でございましたか、タックスヘーブンにございます日本の企業の子会社に対する課税を充実する法律ができまして、その法律に基づきます申告が出、われわれがそれに基づく調査をやっておるわけでございます。  それに基づきますわれわれが持っております一番最近の状況での数字を申し上げますと、これは五十六年四月から五十七年三月までの決算期のものでございますが、こういうタックスヘーブンに子会社を持っている親会社の数、これは申告状況でございますが、全部で三百六十五社ということでございます。それからこれらの会社が持っております外国の子会社、これは税法上特定外国子会社と申しておりますが、これの数が千五百二十四社、こういうことになってございます。
  96. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 たしか昭和五十六年の何月でしたか、十一月ぐらいに国税庁の発表した数字がありましたね。そのときには二百九十九社で子会社は千三百七十六社、そして脱税あるいは申告漏れ、無申告、そういうふうなものが摘発されて三十社で七億円という数字が出ておりますが、いまの一番新しいデータではどうなんですか。
  97. 西崎毅

    ○西崎説明員 お答え申し上げます。  先生から御指摘のございました数字は、ただいま直前に私が申し上げた時期のちょうど一年前の数字でございまして、私がいま申し上げた数字が目下一番新しい数字でございます。  なお、ついでに追加して御説明申し上げますと、この三百六十五の親会社から出てまいりました千五百二十四社の子会社の留保所得金額これは結局合算して申告する数字でございますが、これが百八十八億円ということで申告が出てまいっております。  それから、この申告に基づきましてわれわれが調査いたしておるわけでございますが、その調査対象は親会社が三百三十一社、子会社が千二百六十七社でございまして、この調査をした結果、申告漏れであるということで課税対象にいたしました金額が三十八億円、こういうような数字になっております。
  98. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いま財源がないとかいろいろ言われている状況ですから、こういう問題はやはりきちっとしないといけないのではなかろうかと思いますので、ひとつしっかりやってください。  さて、先ほどから問題になっております外務省の定員増問題、これは臨調、行政改革、いろいろ関連がありましょうけれども、私も最後に一言見解を言わせていただきたいと思いますが、世界の中の日本という言葉が言われているように、日本はこれから非常に多角的な活動をしなければならない。その中で外務省役割りというのは非常に大きいと思います。そういう観点からいって五十八年度の定員が三千七百十二名、これではどうもいままでのお話をいろいろ聞いておりましても不足していることは明瞭であります。したがいまして、私は、この外務委員会においても討議をし、定員増を図るというような方向を強化していくべきであろう、活動を強化すべきであろうというふうに思います。  特に関連して外務大臣に私お尋ねをしたいのですが、たとえば民間からレーバーアタッシェなんかは大いに採用すべきではないか。よその国では、アメリカでもイギリスでも西ドイツでもそういう形で民間からレーバーアタッシェなんかが活動しておられる。日本でも一名ですか、いまできておりますが、もっともっと拡大すべきではなかろうか。お役人の方の定員増も私は決して反対いたしません。外務省に限って言えば大いに拡大すべきだと思います。しかし、同時に民間からの力あるいは民間からの人材も大いにくみ上げるべきだ。そういう意味でいまのレーバーアタッシェ問題についてさらにふやすお考えはないのか、そこら辺をお尋ねいたしたいと思います。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま外務省の定員につきまして激励をいただきましてありがとうございました。当委員会でもひとつ今後とも御支援のほどをお願い申し上げたいと思います。  何分にも定員が限られておりますから、民間の優秀な人材を登用するということも必要でありますし、これまでもやってきておりますが、まだまだ十分でないというふうにも思っておるわけでございまして、これからの外交を総合的に多角的に積極的に進めていくという立場からすれば、やはり民間からの活力を注入していくということも大事であろうと思いまして、今後ともの一つの課題として検討させていただきたいと思います。
  100. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 以上をもって終わります。ありがとうございました。
  101. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、中路雅弘君。
  102. 中路雅弘

    中路委員 租税条約についてお尋ねするわけですが、その前に一問だけ、先日の三月八日の衆議院予算委員会締めくくりの総括質問で取り上げました問題についてですけれども、米軍の大和田通信基地ですね、B52に核攻撃を指令するジャイアント・トーク・ステーションの一つですが、ここの施設内に掲示板の警告文が大量に出されまして、アメリカの国内法、治安立法であります安全保障法で日本人を罰するという大変不当な掲示が出された問題について、外務大臣から、実態を調査して日米合同委員会で取り上げて善処するというお約束をいただきました。当時は実態がわからなかったかと思いますが、北米局長は米軍人など米国人向けの掲示ではないかという答弁もありました。しかし、米軍は区域内に一人も住んでいないという施設庁の話もあって調査をされたと思いますが、後で調べてみますと、施設庁は私の質問中に国会から現地に電話を入れて、夜までに米軍と一緒になって全部外してしまったのですね。不当な掲示だということはすでにお認めになっているのですが、改めてこの問題について、どういう経過だったのか、どこの責任だったのか明確にしていただきたい。
  103. 北村汎

    北村(汎)政府委員 事実関係から私から答弁させていただきますが、在日米空軍は、いま委員が御指摘なさいました大和田通信所に立てた警告表示は誤ったものが掲示されておったということで、三月八日、このような警告表示を直ちに撤去するように横田にあります第四七五航空基地団から命令が発出されまして、もうすでに撤去されたものと承知しております。  米側の説明によりますと、この大和田通信所に掲げられた警告表示は、通常米国の国内にあります軍の基地の中で使用されておるアメリカ人向けのものでございまして、本来わが国にある施設、区域内で使用されるべきものではないわけでございましたのが、米軍の不手際によって同通信所の警告表示をかえる場合に誤って表示されてしまった、こういうことでございます。そこで米軍の方は、この三月八日に米軍のスポークスマンから、こういう誤ったことをしてまことに遺憾であるということを表明いたしております。  また私どもの方も、そういう表明が私どもにも伝えられましたけれども、念のため、日米合同委員会の事務局長に対してこの事実の確認をいたしました。そして事務局長から先ほどの米軍のスポークスマンの表明と同じ趣旨の回答を受け取っております。  以上でございます。
  104. 中路雅弘

    中路委員 いま御答弁ありましたように全く誤った掲示であり、日本国民をアメリカの法律によって罰するという途方もない掲示だったわけです。本来こうした掲示は施設庁や外務省、在日米軍と協議なしにできないと私は思いますけれども、いまのお話ですと横田の在日空軍司令官ですか、掲示もその司令官の許可なくということになっていますからその責任だと思うのですが、いま釈明をされたと言われていますけれども、現地の人たちは全然わからないわけですね、一夜のうちに全部外されたというだけですから。やはり埼玉県民なり東京都民にこの掲示が誤っていたということを何かの形で責任の所在も明確にすべきではないか、現地からもそういう声が強く出ているわけですが、その点について善処をしていただけますか。
  105. 北村汎

    北村(汎)政府委員 私どもの方に米軍から伝えてまいりましたところによりますと、この八日に米軍のスポークスマンがプレスリリースでもう公表しております。その中でまことに遺憾であったということを、そこの言葉は口頭で言ったんだろうと思いますが、米空軍としてはこの誤りを心から遺憾とするものであるという趣旨のことを公表しておりますので、これで一般にその趣旨は伝わっておるというように考えております。
  106. 中路雅弘

    中路委員 これはひとつ外務大臣にお願いしておきたいのですが、明確に謝罪をしているわけですから、やはり対象になった日本国民にそのことが明らかにされるということが重要なんで、どういう方法かそのことを、やはり五百人からの日本国民がそこには住んでいるわけですから、その人たちに掲示が間違っていたんだということが明確になるような処置をひとつとっていただきたい、このことだけお願いをしておきたいのです。関係施設庁とも、在日米軍とも相談をしていただければありがたいと思うのですが、いかがですか。これでこの質問は終わりますけれども、ひとつ協議をしていただきたい。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米軍側の措置は誤りであった、心から遺憾であるということをはっきりとスポークスマンを通じまして発表いたしておりますので、それでもっていま北米局長の言っておりますように関係方面には明らかになった、こういうふうに私は思っておりますが、こういうことが二度とないようにわれわれとしても米軍に対してもまた何らかの機会に申し入れなければならぬ、こういうふうに思います。
  108. 中路雅弘

    中路委員 いまの点は、東京都民も一部入っておりますが、埼玉県民、東京都民に関係の、その所在についてもぜひ明確にされるように改めて要請をしておきたいと思います。  限られた時間ですので簡潔に質問いたします。  先ほども御質問ありましたが、この租税条約については、OECDのモデル条約に対比して先進国と発展途上国との間のものとして一九七九年のいわゆる国連モデル条約があるわけですが、この国連モデル条約の成立経緯、目的、簡潔にひとつお答え願いたいと思います。
  109. 野村忠清

    ○野村説明員 お答えいたします。  租税条約国連モデルの成立の経緯、概要でございますけれども、この作成の発端になりましたのは、一九六七年の国連の経済社会理事会におきまして、先進国と開発途上国との間で結ばれる租税条約が、開発途上国の経済発展に役立つ資本の流れを促進するものになるように、先進国、開発途上国双方に受け入れ可能なようなガイドラインをつくろうということで、アドホックな専門家のグループをつくることを国連の事務総長に要請するという趣旨の決議が採択されたところでございます。これが発端でございますが、これを受けまして、国連の事務総長は一九六八年に先進国、途上国双方の租税の専門家から成りますグループをつくりまして、そこで検討を取り進めまして、一九七七年の専門家グループの第七回の会合でモデル条約ができた。それで、七九年になりますけれども、第八回目の専門家の会合でこのモデル条約を採択したという経緯がございます。  このモデルは七章に分かれておりまして、全部で二十九条になっておりますが、条約の適用範囲でございますとか用語の定義、所得に対する課税原則、財産に対する課税原則、二重課税排除の方法あるいは課税について疑いのある場合の相互協議などを含めた規定が置かれております。
  110. 中路雅弘

    中路委員 いまの国連モデル条約内容についてですが、OECDのモデルと対比して、あるいは日本が結んでいる途上国との条約と比べてみて、具体的な項目についてちょっとお尋ねします。  三点ですが、一つは、支店や工場などのいわゆる恒久的施設の定義あるいは事業所得の範囲、この点についてどこに特徴があるのか。二番目は、船舶や航空機の国際運輸業の所得に対する課税権の問題、三番目に、配当や利子、使用料の投資所得に対する課税権、限度税率、こういった点について対比してみて、どういう点に特徴があるのか、お答え願いたい。
  111. 河原康之

    ○河原説明員 いまお尋ねの件につきましては、まず恒久的施設の定義でございますが、これは、発展途上国側からいたしますとできるだけ恒久的施設の範囲を広げたいという要望がございます。これは恒久的施設がなければ課税しないというのが事業所得課税原則でございまして、したがって、恒久的施設の範囲を狭くしますと課税権が縮小されるという関係になりますので、その関係で広げたい。たとえば建設工事などがPEになるわけですけれども、これはOECDの場合には十二カ月以上続かないとPEにならない、こういうふうに規定されておりますが、国連モデル条約では六カ月超ということで短くなって、建設工事のPEの範囲が広がっておるということでございます。たとえばこのような六カ月超のPE概念というものを持っておる条約といいますのは、わが国が結んでおります開発途上国との条約の中の大半を占めておりまして、この点では国連モデルに従って開発途上国と結んでおるということが言えようかと思います。そのほか、コンサルタントの役務提供をPEにするとか、それから、在庫引き渡し代理人という定義を持っているわけですけれども、こういったものをPEに含めるとかいうことで、範囲が広がっておるわけです。  それから、事業所得課税原則につきましては、OECDモデルが帰属主義というのをとっております。これは、その恒久的施設に帰属する所得についてのみ課税するという原則でございますけれども、国連モデルにおきましては、類似の行為が帰属しないということで行われる、たとえば支店が当然やるべき行為を本店が直接やるということによって支店に帰属させないということが起こるじゃないかということで、そういった類似の取引については帰属したものとみなすというようなかっこうの規定を設けまして、国連モデルでは事業所得条項を広げているという特徴がございます。これをとっております条約は比較的少ない国々でございまして、たとえばフィリピンとか、韓国――これは少しまた課税方式が、総合主義といいまして恒久的施設があれば国内源泉所得をすべて課税するという方式でございます。それとタイ、パキスタンなどが挙げられます。それ以外の国々はおおむねOECDモデルに沿って結ばれております。  それから国際運輸業につきましては、これは先ほど条約局の参事官から御説明がありましたけれども、そういったことで、課税権を確保したいという要望が出ております。  それから投資所得については、これは制限税率が一番問題になるわけですけれども、この点については国連モデルは制限税率を掲げておりませんで、二国間の交渉マターであるというふうにして問題を解決しておるわけでございます。
  112. 中路雅弘

    中路委員 いま若干対比してお答え願ったのですが、これは先進国から途上国へ資本や技術が一方的な流れになっている実態を踏まえて、途上国の課税権を擁護していく、税収を確保するためのものであると思います。これは外務大臣にお聞きしたいのですが、途上国は長い間の教訓からこうした提案をしているわけですが、今後発展途上国との租税条約締結の際には、少なくともこの国連モデルをひとつ指針として臨むべきではないかと考えるわけですが、外務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 途上国との租税条約締結に当たりましては、おっしゃるようにOECDモデル条約というものに基づいてやるわけでありますけれども、しかし、国連モデル条約というものの趣旨を念頭に置いて、途上国の立場も踏まえながらこれを結んでいくという考え方であります。
  114. 中路雅弘

    中路委員 途上国との真の平等互恵の関係を築いていくという点では、やはり明確にこの国連のモデルをひとつ指針にしてやっていく。いまのお話ですと、基本はOECDのモデルを中心にしながら配慮するというお話ですが、この点については途上国の要求、方向、基調というものがはっきりとこの中に見解が出ているわけですから、ひとつこれに沿って今後検討していくというふうに明確にすべきだと私は思いますが、もう一度いかがでしょうか。
  115. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 国連モデル条約基本的にはOECDモデル条約の中の一定部分を開発途上国の要請に合うようにしたものでございます。そういう意味基本的にOECDモデル条約というものが租税条約基本的パターンになっているという事実がございますので、基本的にOECDモデル条約に従いつつも、この国連モデル条約に盛られております開発途上国側の要請というものは十分配慮して開発途上国側との租税交渉に当たっていくというのが基本原則だろうと思います。これは大臣が御説明したとおりであります。
  116. 中路雅弘

    中路委員 いまの問題と関連するわけですが、もう一点、一九七四年十二月の第二十九回国連総会の決議で諸国家の権利義務憲章がありますが、これは新国際経済秩序に関する憲章とも言われておりますが、日本政府はこれに棄権しているわけですね。賛成をしなかった。途上国との経済関係基本はこの新国際経済秩序を認めるかどうかという問題にあると思いますが、これを支持しなくて途上国との公正な関係を発展させるということは大変障害も大きいと思います。世界の大勢が一つは非同盟運動の前進も反映して新国際経済秩序が当然求められる方向になっているわけですが、この憲章に対して、棄権されたわけですが、この際改めて日本政府の今後の態度を見直していくというお考えはございませんか。
  117. 野村忠清

    ○野村説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、この国連の権利義務憲章の採択が行われました一九七四年の国連総会でございますけれども、この総会におきましてはわが国は棄権をいたしております。ほかの多くの先進主要国と一緒に棄権したわけでございますが、その際の事情と申しますか考え方は、わが国は、この憲章は開発途上国と先進国との経済関係を含めまして世界国々の間の経済関係の健全な発展を促進するものであるべきだという考えを持っておったわけでございますけれども、実際にでき上がってまいりました憲章の中に開発途上国の主張が大幅に取り入れられた結果、果たしてこの憲章が実際に先ほど申しました国家の間の経済関係の健全な発展に役立つであろうかどうかという点に疑問が生じてまいりました。その辺を考慮いたしましてわが国としては棄権したという経緯がございます。  しかしながら、わが国といたしましては、現在の国際社会で開発途上国が非常に多数を占めておるという事実でございますとか、さらには、世界経済の流れの中で開発途上国が一つの流れを動かす要因として重要性を増してきておるというところを認識いたしておりまして、この権利義務憲章というのはまさに開発途上国のほぼ一致した要望、世論をいわば反映したものであるということで、この憲章を真剣に受けとめていく必要があるというふうに考えておりまして、わが国の国益と両立し得ない部分についてはもちろんわが国立場をはっきりさせる必要がございますが、そのような部分についてはわが国立場をはっきりさせながらも、国際協調という観点からできるだけこの憲章に対して理解ある態度をとってまいりたいと考えております。以上がわが国基本的な考え方になっております。
  118. 中路雅弘

    中路委員 さっきの租税国連モデル条約にしてもこれも、基調をなしているものは途上国の経済主権の確立の方向だと思うのです。大きく言って、いまの新しい国際経済秩序の流れであろうと思いますけれども、政府がやはり途上国との平等、公正な関係を今後築いていく意味でも、この途上国の要求を十分配慮して、それに沿ってひとつ今後解決をしていっていただくことを改めて強く要望しておきたいと思います。  あと一、二点お聞きしたいのですが、途上国との租税条約に関してですが、いわゆるみなし税額控除、タックススペアリングの問題があるわけです。これはたしか昨年の四月の本委員会で同僚の東中委員が質問しました。そのときの答えで、昭和五十三事務年度のみなし税額控除の総額が資本金百億円以上の企業で約七十七億円と答弁されています。総額が出ているわけですから内訳もあると思いますけれども、当時各国別は差し控えたいと言っておられますが、少なくともこの答弁の中でも大口として韓国、ブラジル、シンガポールが挙げられていますが、この大口については明らかにしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  119. 河原康之

    ○河原説明員 現在外国税額控除の方式といたしまして日本は一括限度額方式というものをとっております。これは、外国所得というものを一本として見て、外国税というものをまた一本として見て、国別の結びつきを考えない簡便法でございまして、税務統計上、どこの国にどれだけの外国税額控除というのがわからないような方式になっておるわけでございます。したがって、この五十三事務年度分についての調査に当たりましては、原資料を一枚一枚めくりつつ作業した結果でございます。それが約七十七億円というお答えを申し上げたところでございます。  それで国別内訳につきましては、これは非常に問題が大きくございまして、というのは、集計上そういった手作業をした関係で、国別の集計というのはとれるわけですけれども、全体がそういったサンプル調査というような意味合いもありますし、それから条約相手国が、自分の分のタックススペアリングはどうなっておるのかということのほかに、他国のものはどうだというような質問をよこすケースが多分にあるわけです。それを各国別に数字を明らかにするということになりますと、これはタックススペアリングの制度そのものが日本相手国にとって非常に狭い範囲しか与えていないのではないか、もっと広げる必要があるのじゃないか、たとえばブラジルに比べてわが方のタックススペアリングは小さいから結果的にこういう数字になるのではないかというようないろいろな思惑が出てくるおそれがございまして、今後の租税条約交渉に非常に問題が多いということで、その点国別の数字については御容赦いただきたいということでございます。
  120. 中路雅弘

    中路委員 私はこの制度そのものが、払ってもいない税金を払ったことにするということで大変問題がある制度だと思いますけれども、いまお答えがありましたが、今度はスウェーデン西ドイツですけれども、個別の条約というのは個別的な関係ですね。そこから数字も変わるわけですし、実態も違うわけです。今後この個別の条約の審議の際に、その国の実態も出せないということで所管の委員会条約を審議しろということはとんでもないことなんで、そういう意味で、私は、所管の委員会ですからまた個別にそういう条約についてこれから審議をしていくわけですから、その国の実態がどうなっているかを明らかにされないで審議をしていくということはできないわけです。そういう意味でも、きょうすぐということは言いませんが、少なくともいまおっしゃったように整理すれば国別にとれるわけですから、大口の三国だけでも明らかにしてほしいということを要請しているのですが、いかがですか。そうしないと、今後こういう条約の審議というのは、個別の条約ですからできないじゃないですか。
  121. 河原康之

    ○河原説明員 これは先ほども御説明申し上げましたように、特殊な作業としてやった結果のあれでございまして、ルーチンな統計としてとれるといったようなものではございません。  それから、五十三事務年度分については処理可能な枚数であったわけですけれども、現在、外国税額が総体として非常に大きな額になってきております。したがって、個別の資料につきましても細かい資料がたくさんあるという状況で、このために作業するとなりますと非常な事務量になるということもございまして、制度的に一括限度額方式をとっている関係で統計上の数字が出てこないという欠陥を持っているわけでございます。それから、個別の国際収支統計等につきましても国別の数字がなかなかつかめない。たとえば使用料とかそれから投資収益についてもなかなか国別の数字がつかめないという――これは一つは資本とか貿易の自由化ということで一々チェックできる機能が失われているということもございますが、そういった関係で、私たちが条約交渉をしておりましても、国別の数字はどうして求めていこうかという悩みに陥っているところでございます。
  122. 中路雅弘

    中路委員 時間がもう迫っていますので、私は委員長にお願いしておきたいのですが、この委員会での条約というのは個別の関係の問題ですから、その実態が明らかにされて審議をしていくということが委員会の当然の責任でもありますから、一度この問題は理事会の機会でも個別のこうした資料がとれるかどうかという問題について御検討願いたいと思いますが、いかがですか。
  123. 竹内黎一

    竹内委員長 ただいま御発言の件につきましては、理事会において協議させていただきます。
  124. 中路雅弘

    中路委員 時間が来ていますのでもう一問で終わりますが、国際運輸業の所得に対しては源泉地国の相互免除になっておるわけですが、仮にこの相互免除を認めたにしても、私は、法人税や所得税は別にして、固定資産税、事業税など地方税まで拡大するというのは納得いかないわけです。たとえばスカンジナビア航空の日本支店なども免除するわけですね。いま地方自治体の財政難の折、地方税など、これらの地方税の条約による免除は実際どれくらいになっておるのかということを一度条約締結後、国別だとかあるいは自治体別にどれくらい減収になるのかわかればと思っておるわけです。膨大な調査も必要ではないかというお話も聞いていますので、最後に提案ですが、たとえばどこかの都市をモデル的に、例示的に、神戸市とかそういう都市を挙げて、いま西ドイツが問題になっていますから、どこかの国も特定して、税についても固定資産税についてとか何かそういう限定された点で一度調査をしていただきたいということを最後にお願いしたいわけですが、御答弁いただいて質問を終わりたいと思います。
  125. 丸山高満

    ○丸山説明員 地方税につきましては私ども減収額の調査をいたしておりません。国際条約上非課税とされておりますものについて、申告納税が主体になっております地方の税制の上で、その所得を地方団体が別個に調査し把握することは事実上非常に困難でございますので、お許しをいただきたいと思います。
  126. 中路雅弘

    中路委員 時間が超過していますので、いまの問題、改めてまた機会を見て御質問することにして、終わりたいと思います。
  127. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  128. 竹内黎一

    竹内委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  129. 竹内黎一

    竹内委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  130. 竹内黎一

    竹内委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  132. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件及び商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより両件について政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣安倍晋太郎君。     ─────────────  千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件  商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この議定書は、船舶による海洋汚染防止及び規制の増進を図ることを目的として昭和五十三年二月にロンドンで作成されたものであり、いまだ効力発生に至っていない千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約を所要の修正及び追加をした上で実施することを定めております。  わが国がこの議定書締結することは、海洋環境の保全及びそのための国際協力の促進に資するものと認められます。  なお、千九百七十三年の条約附属書Iについては国際海事機関海洋環境保護委員会が同委員会の作成した改正案の実施を勧告しており、また、同条約附属書IIについては同委員会がその改正案を作成し同条約附属書Iについてと同様の勧告をすることが予定されていることにかんがみ、わが国としては、その勧告するところによりこれらの附属書を実施することとしております。  よって、ここに、この議定書を所要の留保を付して締結することについて御承認を求める次第であります。  次に、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、商船における乗組員の安全、社会保障、居住施設等に関する国際的な最低基準を定めることにより船舶の安全を確保し、乗組員の労働条件の改善を図ることを目的としており、昭和五十一年十月に国際労働機関の第六十二回総会で採択されたものであります。わが国商船は、船員法等の関係法令によりこの条約に規定される最低基準を充足するものでありますが、世界有数の海運国であるわが国がこの条約締結することは、船舶における最低基準の実現のための国際協力に寄与する観点から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  134. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十一分散会