○西村(康)
政府委員 わが国は海洋国家でございますし、また、世界有数の海運国であります以上、海洋の汚染の
防止につきましては、これは各国と協調しあるいは各国以上に熱心に取り組むべき課題だと思います。しかし、いま御指摘のように、まず
最初の千九百五十四年の油による海水の汚濁の
防止のための国際条約につきましては、御指摘のとおり採択されてから十三年、そして発効されてから九年後の
昭和四十二年にようやく条約を締結し、そして
国内法の整備をしたわけでございますが、この
国内法の整備につきましては、実際には
国内法令をどのようにつくるか、あるいは廃油処理施設というものをどのように整備するか等、具体的な諸問題を検討するのに時間がかかった、あるいは処理施設を実際に整備していくのに時間がかかったということが言えるわけでございますが、正直のところ、戦後復興してわが国が海洋国家としてあるいは海運国として乗り出していったその過程では、十分にまだ
海洋汚染防止という意識が形成されていなかったということも言えようかと思います。
しかし、このような
国内法の体制が悪かったということは、その後徐々に改められておりまして、たとえば
昭和四十五年には
海洋汚染防止法が制定されたわけでございますが、この
海洋汚染防止法は、それまでの油による海水の汚濁の
防止のための国際条約がその後
改正されておりますが、それらの
改正条約の内容を受けております。これは条約の採択直後に、締結に先立ってその内容を
国内法化したことと、その当時は世界的に、陸上からの廃棄物を積み込んでこれを海へ捨てるという行為についてはまだ国際的に取り上げられておらず、そのような条約がなかったけれ
ども、わが国は世界に先駆けて、
海洋汚染の
防止のためにはそのような廃棄物の
規制をしなければいかぬということで、わが国独自の法制として
海洋汚染防止をやったわけでございます。
その後、いま御指摘のような廃棄物その他の物の投棄による
海洋汚染防止条約、いわゆるダンピング条約ができたわけでございますが、わが国の現行法制と多少考え方のずれがございましたし、新たな義務の点をどう受け入れるかということで多少手間取りました。そういうことが条約ができてから八年後、そして発効されてから五年後というような形になったわけでございますが、それでもこの場合につきましては、実質的にはかなりの
規制をしていた。前回の場合は、航空機による汚染とか、いろいろなものが加えられましたので、なかなかこれを
国内法化するいろいろな問題もございましたので、おくれたわけでございます。
今回また、条約がようやくことしの十月二日に発効するという
段階を前にしていまお願いしているわけでございますが、これは可能ならば昨年の通常国会にもお願いしたいと思っていたわけでございますが、
国内の受け入れ施設、特に新しいケミカル、有害液体物質等の問題も出てまいりました。あるいは軽質油の問題も出てまいりました。そのようなものが、わが国がまた世界有数の海運国であるために、非常に各地各港でそのような問題が生ずるわけでございます。全海域ほとんどのところでそういう問題があるわけで、体制の整備に非常に時間を要したという事情もございまして、心ならずも今国会にお願いするというような次第になったわけでございますが、
海洋汚染の
防止に取り組む
政府の姿勢としましては、決してこれをなおざりにするということではなくて、今後誠実に、そして重要な課題としてこれに取り組んでまいりたいと考えております。