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1983-04-05 第98回国会 衆議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月五日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 原田  憲君    理事 三枝 三郎君 理事 三塚  博君    理事 宮崎 茂一君 理事 湯川  宏君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 中村 正雄君       阿部 文男君    鹿野 道彦君       川崎 二郎君    久間 章生君       佐藤 文生君    志賀  節君       谷  洋一君    近岡理一郎君       浜野  剛君    原田昇左右君       井岡 大治君    沢田  広君       下平 正一君    辻  第一君       四ッ谷光子君    中馬 弘毅君  出席政府委員         運輸政務次官  関谷 勝嗣君         運輸大臣官房長 犬井 圭介君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君  委員外出席者         内閣審議官   吉田 耕三君         日本国有鉄道副         総裁      馬渡 一眞君         日本国有鉄道常         務理事     繩田 國武君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         参  考  人         (慶應義塾大学         教授)     藤井弥太郎君         参  考  人         (サンケイ新聞         論説委員長) 山本雄二郎君         参  考  人         (国学院大学教         授)      雨宮 義直君         参  考  人         (統一戦線促進         労働組合懇談会         代表委員)   遠藤 泰三君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ───────────── 三月三十日  国鉄地方交通線維持に関する陳情書外一件(第一四二号)  九州新幹線早期着工に関する陳情書(第一四三号)  国鉄足尾線及び会津線存続に関する陳情書(第一四四号)  国鉄松浦線存続に関する陳情書(第一四五号)  長崎県における国鉄鮮魚特急列車存続に関する陳情書(第一四六号)  四国における地方空港整備促進に関する陳情書(第一四八号) は本委員会参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案内閣提出、第九十七回国会閣法第三号)      ────◇─────
  2. 原田憲

    原田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案議題といたします。  本日は、本案について参考人からの意見を聴取いたしたいと存じます。  本日御出席参考人は、慶応義塾大学教授藤井弥太郎君、サンケイ新聞論説委員長山本雄二郎君、国学院大学教授雨宮義直君、統一戦線促進労働組合懇談会代表委員遠藤泰三君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、藤井参考人山本参考人雨宮参考人遠藤参考人順序で御意見をお一人十五分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。  それでは、藤井参考人にお願いいたします。
  3. 藤井弥太郎

    藤井参考人 御紹介いただきました藤井でございます。  議題日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する措置法案につきまして、基本的に私は賛成の立場から意見を申し上げたいと思います。  国鉄経営が困難な状況にあることはいまさら申し上げるまでもないところなわけですが、昭和四十年代から赤字を累積して、かつ交通市場で占めていた役割りというものも縮小してきているわけです。そのような状況の打開のために、昭和四十四年以来現在まで、数次にわたって再建計画あるいは経営改善計画が立てられてきたわけですが、御案内のように過去三回の再建計画というのは短期的に破綻を来した。さらに現在の経営改善計画も、六十年までに健全経営の基盤を確立する、六十年度で財政措置を含めて、幹線の損益で収支均衡を図るという収支改善の目的が立てられているわけですが、現在の状況から、なかなか目標の達成も容易でないのではないかというふうに考えられるわけです。  このように、過去、現在の再建計画がいずれも成功していないという原因幾つかあると思うのですが、私は、一番重要なことは交通市場に構造的な変化があった、その変化正面から直面する政策交通政策経営政策が必ずしも十分に行われなかったところに原因があるのではないか、そういうふうに考えているわけです。現在までの計画というのは、いずれもどちらかといいますと当面の緊急な対策というのが中心になっておりまして、長期的な構造変化への対処ということについては若干ウエートが小さかったのではないか。もちろん全く欠いていたと言うことは明らかに言い過ぎでありまして、それぞれの計画には構造的改革必要性というのは指摘されていたわけですけれども、それが適切に十分なウエートを持って作動しなかった。その理由というのは、結局のところ政府国鉄労使もあるいは乗客、ひいては国民も、国鉄公企業としての存在を余りにも前提とし過ぎていたのではないか。  御案内のように、公企業というのは、民営に比べますと明らかにこれは行政責任経営責任分離が相対的に容易でない組織であります。あるいは事業経営の上でもともと制約が多く課せられざるを得ない組織であるわけです。そういうような組織前提にすれば、対応策というのもおのずから限定されざるを得ない。その点で私は現在の状況を打開するためには、従前のような現行制度前提あるいはその手直し程度前提ということでは不十分ではないか。むしろ市場構造変化への正面からの抜本的な対応というものが必要でないかというふうに考えております。それで、監理委員会を設けてそのような検討を行おうという、現在の審議中の法案に賛成する第一の私の意見がその点であります。  それから第二の点は、法案の第一条、「基本方針」のところに、国は臨時行政調査会答申を尊重して国鉄体制を整備するというふうにされております。尊重するということの行政的、法律的な解釈あるいは運用は、私は必ずしもつまびらかにしないわけですけれども、常識的に言いますと、臨調答申基本にして一層詳細な検討に入る、しかし、検討の結果妥当な理由があればそれに対応するという意味のように私は常識的に解釈いたします。  それを前提として申し上げるわけですが、臨調答申内容分割かつ民営という方向についてであります。分割にしましても民営にしましても、あるいは現在の制度を手直しするということにしましても、いずれも万能薬ということは恐らくあり得ないというふうに考えるわけです。しかし、分割につきましては実態としてすでに部分的には動き始めているというふうに私は考えるわけです。  一つは、機能的分割としまして、すでに御案内経営再建促進特別措置法におきまして、輸送密度四千人以下の線区についてはバスに転換することを基本にする。さらに御案内のように二千人以下の特定地方交通線区につきましては、第一次、第二次の選定がすでに行われているわけです。そういう意味では機能的分割というのがすでに動いているわけです。  いま一つには、これは臨調答申の以前、数年前だったと思いますが、国鉄が北海道でダイヤ改正をされたことがあります。その改正は、従来のダイヤ改正青函連絡船との連絡中心にして、つまり函館を中心としてダイヤを組んでいたものを、地域中心札幌中心に全面的に組みかえたという改正になっていたわけです。これは現在のところも高く評価されている改正だったと思いますけれども、言いかえれば、それは全国ネットワークとの連絡というものを重視するかわりに、あるいは言いかえれば中央集権的なネットワークではなくて、むしろ地域を重視した、地域に即応したダイヤへと国鉄自身が切りかえられたというふうに私は理解しているわけです。その意味ではすでに地域分割理念も存在していると言わざるを得ない。  分割につきましては、もちろん輸送技術上の問題もあるわけですけれども、輸送技術上の問題といいますのは、どちらかといいますとこれは価値判断を伴いませんので、かなり客観的な評価が可能だろうと思いますが、したがって、分割に関してより問題となるのは、端的に言えば不採算線区維持をどうするかという点であろうかと思います。この点は民営のところとあわせて申し上げたいと思います。  民営につきましては、逆に反対の方向から、なぜ公社なのかという点から問うてみてもいいのではないかというふうに思うわけです。公企業という経営形態が選ばれるのは、言うまでもなく、これは諸先生方に釈迦に説法みたいなことを申すのでお許しいただきたいのですが、公企業という経営形態を選ぶのは、政策目標を達成するのにそれが有効な手段だという判断があるから選ばれるわけです。言うまでもなく、公企業には民営と比べまして幾つかの問題点があるわけです。たとえば行政責任事業経営責任分離民営に比べてはるかに容易でない、あるいは事業経営の上で民営よりも多くの制約を受けざるを得ない、あるいは能率改善の動機が欠除しているということはしばしば指摘されているわけですが、これらの問題点にもかかわらず公企業が形成されるというのは、言うまてもなく政策目標を、言いかえるならば公共性要請を満たすためにそれが有効な手段だと判断されたからであるというふうに思われるわけです。  しかし、公共性という用語は、よく使われる割りにはどなたもはっきりした定義を示されないことが多い言葉です。そういう意味ではあいまいな言葉なわけですが、なぜそれがあいまいかといいますと、公共性という用語は一連の事柄の総称であるからだと私は判断いたします。つまり、市場に放任すれば社会全体としての利益が損なわれる場合に公共性があるというふうに普通言うわけですが、その場合にはさまざまな内容が含まれてしまうわけです。そうしますと、それはちょうど市場機構欠陥といいますか、病気ということを指して公共性と言うようなもので、病気ということを一般に言ったのではその病気が脳溢血だか脳貧血だかわからない。そういう意味では事態がはっきり説明できませんし、対策も正確な対策が立てられないということになるかと思います。そういう意味で、単に公共性と言うだけではなくて、もう少し具体的に何が問題なのかを指摘しなければならないわけです。  恐らく、民営あるいは分割について関連する国鉄公共性を具体的に意味するものを探すとすれば、一つは不採算なローカル線でもミニマムの要素として維持される必要があるという要請、いま一つは、全国国民だれもが平等に同一の運賃国鉄サービスは利用できるべきだという概念、ここら辺のミニマムとかあるいは平等の理念というのが国鉄公共性国鉄に求められる公共性内容かと思うわけです。  後の方の問題、全国統一運賃の問題は、性質としてはミニマムの問題と同質なので、これを一つにくくって考えることにいたしますと、こういった具体的な意味公共性について、しからば問題は、国鉄政策手段としての有用性がどうかということになるわけです。この有用性内容は、端的に申しますと、内部補助システムとしての有用性ということを言わざるを得ない。つまり新幹線であるとか山手線というような鉄道の特性を発揮できるようなそういう分野で利益を上げて、その利益をもってローカル線線区維持させること、これが国鉄について言われる公共性の最も取り上げられることの多い内容であるというふうに考えられるわけです。この点で、かつては国鉄手段としての有用性を、役割りを十分に果たしてきたというふうに評価できるかと思います。  かつて鉄道は国内の輸送市場を独占しておりましたし、そのことは、言いかえればすべての国民がひとしく国鉄を利用していたということになるわけです。そのような状況のもとで赤字線区維持するために相互補助をするということは公平のように受け取られますし、また実行も可能であった。しかし、先ほど申し上げましたような、交通市場が構造的に変化した事態のもとではどうなのか。明らかに交通機関が発達し、あるいは人々の交通サービスに対する要求が多様化した現在では、国鉄利用者あるいは言いかえれば運賃を支払っている人間国民の中の一部にすぎない。過疎地域の足を守ることは国家的な要請、社会的な要請でありますけれども、そのための費用負担をなぜ一部の国民だけが、山手線のたまたま乗客である人間だけが負担しなければならないのか。これは恐らくその人たちからは不公平だという不満が出てくるに違いない。これは高速道路の場合に、御案内のように、山間部高速道路をつくろうとすれば東名高速道路利用者から不満が出るというのと同じことであります。  また、利益を上げるために割り高運賃というものをつけますと、当然競争機関が出てきた場合には乗客は移動するわけです。したがって、赤字線の欠損を埋めるべき利益自体を上げることができなくなる。すなわち、かつては公平で実行可能であったシステムが、現在の状況では公平でも維持可能でもないという状況があるわけです。  このようにして、全国一本の公企業という組織は、求められる公共性を満たす手段としての有用性を現在は失ってきてしまっているのではないか。その意味で、公共性の反面の欠陥ウエートの方が高くなってきてしまっているわけです。言いかえれば、公共性要請ミニマム維持ということは、もはや公企業システム、あるいは全国一本のシステム内部補助制度を通じて行うということは実行が不可能になっている。その意味では、むしろ内部補助システムではなくて、ほかのシステムによってこの要請を満たさなければならない。端的に申せば、国あるいは自治体による補助ということになるわけですが、内部補助ではなくて、明白な外部補助によって行われなければならない。この場合には、民営でも公営でも条件は同じであります。  率直に申しますと、私自身臨調基本答申に十分に満足しているというつもりはございません。交通政策との関係が必ずしもいま一つ明瞭でないところもありますし、あるいは分割ということについては、投資基準の整合とか輸送技術上の問題もあるかと思います。しかし、一面で臨調の示した分割民営というのは、私が国鉄経営の最大の問題点と考えております行政経営責任分離ということと経営活性化という点について、特に行政責任を明示するという点について、最も端的に要求をするのが民営あるいは分割という形態であります。かつ、そのことが恐らく臨調の各委員方々提案の御趣旨だろうと思うのですが、私自身は、そういう意味で、監理委員会で十分な検討の行われるであろう分割民営というものの提案を通じて、従来のシステムでは明示されてこなかった行政責任の明示、それから経営活性化ということが行われる、それを期待してこの法案に賛成いたす、それが第二の点であります。  以上、簡単でございますけれども、二つの点を申し上げて私の意見といたします。
  4. 原田憲

    原田委員長 どうもありがとうございました。  次に、山本参考人にお願いいたします。
  5. 山本雄二郎

    山本参考人 山本でございます。  それでは、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案につきまして若干の意見を申し述べ、今後の御審議参考に供したいと思います。  国鉄現状につきましては、御承知のとおり財政的に破局的な状態にありまして、これを放置することが許されないのは改めて申し上げるまでもありません。早急に対策が必要なことにつきましてはどなたも異存のないところだろうと思います。それにもかかわらず、これまでの国鉄再建試み、たとえば昭和四十四年の第一次国鉄再建十カ年計画を初め、そういったすべての試みが途中で挫折をいたしまして、どれ一つ成功することがなかったわけであります。これは、従来の国鉄再建方式に問題があるのではないかというふうに考えざるを得ません。  そこで、いま一番必要なことは、従来の国鉄再建方式から脱却をいたしまして、新しい視点国鉄改革に取り組むことだろうと私は思います。別の言い方をいたしますと、これまで長い間国鉄再建には三つの柱があるとされてきました。その三つの柱といいますと、第一は国の適切な援助、第二は適正な利用者負担、第三は国鉄経営努力であります。そういうことが三つの柱と言われておりましたけれども、現在のこの財政難のもとでは、国の適切な援助といいましても、これ以上助成金をふやすことはできませんし、また、適正な利用者負担といいましても、運賃をこれ以上値上げいたしますと国鉄離れが加速される、こういうことになろうかと思います。ここへ来まして、この三つの柱を中心とする国鉄再建方式というのが破綻をしたというふうに言ってよかろうかと思います。そういう認識のもとに、そういう状況から一歩前進しましたのが現在の国鉄経営改善計画だろうと思います。しかし、その経営改善計画でも、先ほど藤井参考人も言っておられましたように、六十年度に目標達成することは非常にむずかしそうだという状況になってまいりますと、どうしても新しい再建方式を必要とするというふうに考えるべきだと思います。  いま申し上げましたこれまでの国鉄再建と区別する意味で、これから行われるべき国鉄再建を私は国鉄改革、こういうふうに呼びたいと思っております。そこで、その国鉄改革をどういうふうに進めるべきか、基本的な考え方を申し上げたいと思います。  いま申し上げましたように、国鉄改革にとって必要なことは、国鉄についてまず第一に過去の清算、第二に現状打破、第三に将来の展望、そういったことを明確にいたしまして、それを実現するための体制日程確立することだと考えます。  第一の過去の清算といいますのは、巨額な累積赤字あるいは長期債務特定人件費、そういった問題の処理を言います。第二の現状打破といいますのは、現在以上に赤字あるいは債務をふやさないように措置することでありまして、また、労使が意欲的に改革に取り組むことを言います。その意味で、合理化効率化あるいは職場規律確立というものはこの範疇に入ると思います。第三の将来の展望といいますのは、経営形態のあり方を含めまして国鉄のあるべき姿を明らかにすることだと私は考えております。これらの三つの点を実現するのは容易なことではありませんが、そのうちのどれか一つが欠けましても国鉄改革は不可能であるというふうに考えられます。と同時に、それを実現するための体制を固め、それを実現していく手順とスケジュールをはっきりさせることが不可欠だろうと思います。  以上が国鉄改革基本的な考え方でありますが、この点につきまして鮮烈な問題提起をいたしましたのがさき臨調答申であったと思います。臨調答申は、国鉄現状について鋭く分析した上に、国鉄分割民営化中心に、「緊急にとるべき措置」、「経営形態の変更」、「新形態移行に際して解決すべき諸問題」、「改革推進体制及び手順」といった点につきまして具体的な方向を示しております。もちろん、臨調答申国鉄についてのすべての問題について論議を尽くしているということではありませんで、その意味では残された問題も多々あると思いますが、さきに申し上げましたように、過去の清算現状打破、将来の展望、こういう私の考え方と軌を一にしておりまして、当面、国鉄改革はこの臨調路線に沿って進めるのが最善の道だと考えます。  次に法案内容についてでありますが、いま申し上げましたような基本的な考え方をほぼ充足するものだというふうに私は考えます。  第一条で臨調答申の尊重をうたっておりまして、第二条で、必要な施策を講ずるものとしまして、第一に国鉄の「効率的な経営形態確立及び当該経営形態の下における適正な運営の確保」を挙げておりまして、また、第二に「長期の資金に係る債務償還等に関すること」を挙げております。この第一点は私の言う将来の展望、第二点は過去の清算と解することができると思います。同時に、第三条に言います「緊急に講ずべき措置」につきましては、現状打破意味するものと言ってよかろうかと思います。  第四条から第十四条までの国鉄再建監理委員会に関する規定は、私が申し上げるまでもなく、この法案の最も特徴的な部分でありまして、この法案通称国鉄再建監理委員会設置法案と言われるのもうなずけるところであります。この監理委員会では、効率的な経営形態とそのもとにおける適正な運営あるいは長期債務償還等重要事項について委員会みずからが企画し、審議し、決定し、その決定に基づいて内閣総理大臣意見を述べる、こういうことが第五条で決められております。また、第六条では、内閣総理大臣は「これを尊重しなければならない。」こういうふうにされております。  この再建監理委員会につきましては、そのほかにも詳細な規定があるわけでありますが、要は国鉄再建を実現するための体制づくりでありまして、この監理委員会におきまして改革日程を定めることにしたことの意義は私は非常に大きいと思います。これによりまして、初めて政府全体が具体的な形で国鉄改革と取り組むことができるようになるわけでありまして、法案の一日も早い成立が望まれるゆえんであります。  再び基本的な考え方に戻りますけれども、最後に強調したいことは、国鉄改革の成否は時間との競争にいかに打ちかっていくかということにあるというふうに私は考えております。  従来の国鉄再建がいずれも途中で挫折いたしましたのは、何事を行うにも時間がかかり過ぎてしまったからだと言っても決して過言ではないと思います。ましてこの法案では、第十五条で「施策は、昭和六十二年七月三十一日までに講ぜられるものとする。」こういうふうに具体的に期限が限られておりますから、この法案成立が早ければ早いほどいいわけでありまして、逆に遅くなればなるほど国鉄改革は時間との競争に敗れ、その実現が困難になるおそれがあるというふうに考えます。その意味で、本法案につきまして十分に御審議の上、一日も早く英明な御判断が下されることを期待いたしまして、私の公述を終わります。
  6. 原田憲

    原田委員長 どうもありがとうございました。  それでは次に、雨宮参考人にお願いいたします。
  7. 雨宮義直

    雨宮参考人 国学院大学教授雨宮であります。今回提出されました国鉄再建臨時措置法案につきまして、主として交通政策視点に立って批判と疑問を提出するという立場から私の意見を述べさせていただきます。  今回のこの法案の骨子は、法案を読んでみますと、臨時行政調査会答申を尊重して、国鉄再建監理委員会を設置して国鉄再建推進するということ、こういうことになるかと思うのです。つまり、今回の法案一つの柱は、臨調答申を尊重するということですし、もう一つの柱は、国鉄再建監理委員会を設置すること、こうだと思います。この二つにつきまして、私の意見を述べます。  最初の臨時行政調査会答申を尊重するということですが、これは具体的には法案では効率的な経営形態確立、こうなっておりますが、分割民営化意味することは、これは明らかだと考えます。私は、国鉄再建問題といいますのは、労使の協力による自主再建基本である、こう考えておりまして、国鉄再建問題にいきなり経営形態の変更を持ち込んで、それを前提として取り組むということには基本的に反対であります。  臨調基本答申を尊重するというこの分割ですけれども、この分割につきまして、臨調答申は「地域分割基本とし、」ということを提言しております。私交通政策を専攻しているわけですが、交通手段といいますのは、ネットワークという考え方にどうしても立たざるを得ないわけですね。これは鉄道ばかりではありません。道路にしても航空路にしてもネットワークという考え方に立たざるを得ないわけです。国鉄は、言うまでもなく全国的には幹線鉄道としてのネットワークを持っておりますし、地域的には他の交通手段とともに地域社会のネットワークを形成しているわけですね。そこで、分割するというのですが、地域分割をする、臨調答申では具体的に七分割提案しておりますが、この七分割ネットワークの関連を考えますと、ネットワークの形成というのは相互乗り入れという考え方対応できるじゃないかという回答がなされるのですけれども、地域的に、部分的に相互乗り入れというのは可能だと思うのですね。ただ、全国的に、全面的に相互乗り入れをするというのは大変むずかしいことになってきますし、かえってこれは鉄道の効率を害する、こう言わざるを得ません。ですから、臨調で主張される効率化に反する提案がこの分割化の提案だ、こう言わせていただきたいと思います。したがいまして、この分割という意味地域分割という意味では、私は賛成できないのであります。  ただ、この分割という意味を機能的な分割、つまり機能的な分権化、たとえば国有鉄道の中に事業部制を導入するということには賛成ですし、現行の国鉄の余りにも中央集権的な管理機構を地方分権化するということには賛成であります。つまり、鉄道管理局や現場に権限を委譲して、それこそ活性化を図るという方向での分権化、これには賛成ですが、地域分割という臨調答申に見られる方向は疑問を投げかけざるを得ないのであります。  次に、臨調答申に見られる民営化の問題であります。民営化が果たして可能なのか、そして果たして妥当なのか、臨調答申はわれわれに十分説明しておらない、こう言っていいだろうと思うのです。臨調答申を見ますと、従来の国有鉄道経営につきまして、公共性の観点が強調され過ぎて企業性を発揮できずにいた、こう指摘しております。公企業といえども効率性を無視することはできません。したがって、民営的手法、これを効率的な手法と言うならば、そういう意味での民営的手法を取り入れることには私も賛成であります。ただ、臨調答申を見ますと、民営化するということについて、持ち株を公開し、民営化を図る、こういうのですが、果たしてこういうことが可能なのか妥当なのか、大いに疑問とするところであります。先進資本主義国の鉄道の例はわが国にも参考になるのですが、西ヨーロッパ、ドイツ、フランス、イギリスを見ましても、両大戦間から第二次世界大戦後にかけて国有化がなされて現在に至っておりますが、たとえば西ドイツの鉄道は連邦鉄道ですし、フランスの国鉄は昨年末まで官民合併の公私混合企業方式ですけれども、ことしからは国の全株式の保有による方式に変わっておるはずです。それから、イギリスの鉄道は、イギリス鉄道公社で公共企業体方式であります。そこで、日本の国鉄も、公社形態のままで国鉄に自主性を与える方向再建を考えるべきだ、こう考えます。ただ、民営化という意味を読みかえまして、先ほど言いましたように効率化する、さらに政治のしがらみを絶っていくということ、それから使用者側に当事者能力を与えて労使が協力して再建に当たれるようにする、あるいは兼業による利益や開発利益を吸収できるようにする、こういう意味民営化という言葉を使うならばそれは賛成ですけれども、そうであるならば別に民営化しなくても、公社に民営的手法を導入すればよいのであって、あえて民営化して再建を考えるということを主張しなくてもいいと思うのですね。現実の問題としましても、経営形態の変更といいますのはそれぞれの組織内にかなりの混乱を生じさせます。したがって、そのために損失が発生する、こう言われておるわけですね。それほどの犠牲を払う必要があるのか、公社を活性化するには公社のままで対応できるのではないかというのが私の意見です。ですから、臨調が主張します活性化は、むしろ現行の公社制度に自主性と自由化を導入することによって可能となる、こういう見解であります。  西ヨーロッパの鉄道の経験を見ましてもそうなんですが、国鉄には企業性の発揮を求めた上でなお、どうしても公共性視点から採算を超えて維持しなければならない役割りがあるのです、これは後でも触れますけれども。西ヨーロッパの鉄道でも国有、国営あるいは公社方式の枠の中で企業性と公共性を求めるのが現状であります。したがいまして、日本の国鉄も公社形態の中に企業性の導入を図って公共性を確保する、こういう基本的な方向をとるべきであると私は考えます。  次に、今回の法案の、国鉄再建監理委員会を設置することについてであります。  この国鉄再建監理委員会といいますのは、法案を読みましても性格がはなはだ不明確であります。国家行政組織法上限りなく三条に近い八条委員会と言われているのですが、発足してみませんとその役割りが明確でないというのでは疑問を呈さざるを得ないのであります。私が解釈しますに、三条委員会ほどの権限は持たせないで、内閣総理大臣国鉄再建に関して意見を述べることができる八条委員会ということだろうと思うのです。つまり、内閣総理大臣の国有鉄道再建に関する調査機関あるいは諮問機関と理解していいと思うのですけれども、こういう委員会さきに見ましたような臨調答申を尊重して国鉄再建を企画し、審議し、決定することに疑問を持たざるを得ないのであります。  そのことの理由づけを二つほど述べさせていただきますが、一つは先ほど述べましたように、国鉄再建という課題は労使の協力なしにはできるものではありません。これは民間の会社再建でも全く同じであります。現在でも当事者能力がないと言われる国鉄なんですが、その国鉄に対してこういう監理委員会を設置して、いわば屋上屋を重ねるのですが、こういうことの意味については大変疑問を持つのであります。むしろ、国鉄に自主性を与える方向での責任ある強力な委員会の設置の方が望ましいと私は考えるのであります。それから、理由の第二は、昭和五十五年に成立しました現行の国鉄再建法との関連でありますが、この再建法で昭和六十年度を目がけて三十五万人体制の実現に向けて再建がスタートしていま行われているわけです。先ほども参考人の指摘がありましたが、幾つか具体化された姿が見られつつあるわけです。たとえば、地元の反対がありますけれども、地方交通線対策協議会の開催及びその後の推移があります。あるいは合理化もかなり進んでおるようです。要員削減についてはかなり急ピッチだという判断をせざるを得ないような状況があります。といいますのは、五十七年度当初一万四千三百人の予定だった要員削減ですけれども、五十七年度末これを八千三百人上回る二万二千六百人の要員削減ということですから、かなり急ピッチに進んでいると判断してもよろしいかと思うのです。それから貨物のダイヤ改正がありますし、ヤードの廃止計画も進んでおるようであります。さらに、臨調問題点として指摘しました緊急十一項目につきましても取り組みが進められているところです。いわば国鉄再建法が深度化している中で、しかも三十五万人体制、三十二万人体制、二十八万人体制ということが語られる中で、臨調答申を尊重して性格の余りはっきりしない監理委員会を設置することに疑問を持つのであります。  以上が、今回の国鉄再建臨時措置法の二つの柱について、つまり臨調答申を尊重するという分割民営化方向と、国鉄再建監理委員会の設置についての私の見解であります。  まだ時間がありますので、もう少し意見を補足させていただきます。  問題は、今後の再建方向をどのように考えるべきかということだろうと思うのです。年間実質二兆円に近い赤字を生んでおりますし、長期債務で二十兆円近くにもなるという状況ですから、国鉄のこの危機的状況臨調答申がなくても当然国民的課題として浮上してきたものだ、こう言わざるを得ないのであります。また、こういった国鉄の危機的状況は実は日本独自の問題ではなくて、先進資本主義国共通の問題でもあったわけです。そこで、先進資本主義国の事例が参考になろうと思うのです。  第二次世界大戦後の西ヨーロッパの国有鉄道を見てまいりますと、西ドイツ、フランス、イギリスを対象に見てまいりますと、各国鉄いずれもいいときはなかったと言っていいくらい危機的状況に直面しておったわけです。この危機的状況に直面しておるというのは二つありまして、一つは財政危機ということです。どの国の鉄道も毎年巨額の赤字を生んでおりました。もう一つは輸送構造の変化への対応ということですね。西ヨーロッパでも自動車や航空機が発達しますし、それを受けて鉄道のシェアが低下していったわけです。したがって、輸送構造の変化への対応が危機的状況内容として指摘されるかと思うのです。  こういった二つの点は、西ヨーロッパの交通政策の転換を迫るものだったわけです。いろいろ紆余曲折はありますけれども、どういう方向鉄道再建がなされたかといいますと、何といいましても鉄道に対して自主性と自由化を与えることで企業性を発揮させるという方向で進んでおります。これはいわば臨調と同じ路線を踏んでいると言っていいかと思うのです。具体的には運賃を自由化しておりますし、鉄道の公共運送人としての義務からの解放ということを行っています。こういう方向は現在でも堅持されているわけです。  ただ、こういう方向国鉄再建を考えているわけですが、経験を踏んでいく中で、企業性の発揮のみで鉄道の危機というものが克服できないということは、ヨーロッパにおきましても他方で要求される鉄道公共性のゆえであります。こういった危機を克服する対策の中で、不採算にもかかわらず社会的に必要な鉄道維持していくという考え方が生まれてきましたし、財政危機克服の過程でこういう考え方が生まれてきたということは大変大事だと思うのです。つまりこういう考え方実行するには民営ではやれないのであります。たとえば、最近のイギリスの鉄道公社の年報を見ておりますと、営利的鉄道と社会的鉄道という区分をしております。営利的鉄道といいますのは利益を上げ得ると期待できる路線でありますし、社会的鉄道といいますのは不採算にもかかわらず財政補助をして維持していかなければならない鉄道という意味ですね。つまり、企業性を発揮し得る鉄道路線と公共性のゆえに企業性が発揮できない、しかも維持していかなければならない路線と、この二つに区分しているわけです。  臨調答申が問題になりますのは、おしなべて従来の国鉄を、公共性の観点が強調され過ぎて企業性を発揮できなかったとしているところですね。したがって、分割民営化を導き出すのでありますが、今後の国鉄は、企業性を発揮し得る鉄道公共性のゆえに維持していく鉄道とに区分する必要があるのです。ですから、今後の国鉄のあり方としては、前者、つまり企業性を発揮し得る鉄道というのは、独立採算制を貫く考え方を当然持ち込むべきでしょうし、後者、公共性のゆえに維持していく鉄道につきましては赤字でもやむを得ない、赤字であっても当然という考え方に立つべきであろうと思うのです。このことは、一方では公共性があるがゆえに国の責任を明らかにしていくということであるとともに、他方で企業性のゆえに国鉄経営者と労働者に企業意識を植えつけることになると私は考えるわけです。従来大変希薄であったと言われるコスト意識なんですけれども、いまのような区分をすることによって経営の中にコスト意識を持ち込んで、しかもその上に自主再建の意欲を招来して今後の国鉄再建を考えるべきである、こう私は考えます。  以上が私の意見です。
  8. 原田憲

    原田委員長 どうもありがとうございました。  次に、遠藤参考人にお願いいたします。
  9. 遠藤泰三

    遠藤参考人 私は、この法案に反対の立場から、立場上現場の声を代表するつもりで幾つか申し上げたいと思います。  第一点は、この法案国鉄再建にとっては全く無縁である、解体構想であるということであります。  この法案臨調答申を尊重してというふうになっており、臨調答申では、五年以内に七ブロック程度に分割し、民営にする、そして最終的に国鉄は解散する、こういうふうになっております。また、「分割会社は、私鉄と同様に幅広く事業活動を行うこととし、政府規制も私鉄に対する規制の程度とする。」となっておりますように、この法案の目指すものは、国民の共有財産である国鉄を財界の要求どおり解体処分しようとするものであるという意味で、むしろ犯罪的な行為と言っていいのではないかと思います。御承知のように、私鉄は鉄軌道そのものよりも、鉄軌道を呼び水に不動産、デパート、遊園地など、沿線に住民を引きつけ、利潤の対象にしていく企業であります。国鉄も民間企業のもうけ口の分野に広げていこうという意図があるのではないでしょうか。  財界の要求に従うというふうに私申し上げましたが、昨年の一月二十五日の日本経済新聞に次のように報道をされております。臨調要請を受けた経団連が、八一年の秋から輸送委員会で、これは菊地庄次郎さんという日本郵船の会長さんが委員長ですが、十数回にわたって検討を重ねて、一月二十六日その素案を臨調に報告した、こういうように報道しております。この素案が第四部会の部会報告の中に盛り込まれております。財界の意図が全く露骨に示されております。  国鉄は、日本国有鉄道法第一条で公共の福祉の増進を目的にと明記されておりますように、きわめて公共性の強い国の事業で、国民のものであります。七五年十一月当時、公企体等閣僚協専門懇意見書というのが出されております。これはスト権問題をめぐりまして出された意見書でありますけれども、その中に「民間企業において自由競争を通じて行われる効率性の追求をある程度犠牲にしても、」というふうに言っており、「三公社五現業等の業務のうちの相当部分のものが、国民・住民の「生きる」権利について不可欠のものであり、あるいは、その事業を民間で行うことは、この要請をみたし得ない」、こういうふうに言っておりまして、効率性を犠牲にしてまで公共性の確保を強調しているわけであります。同じ財界の意向が反映した二つの文書がこのように矛盾しておるところに多くの問題があると思いますし、理解しがたいと思います。  また、この法案再建と言っていますけれども、答申は解体処分の後解散となっています。その後何が残るのか、分割された民営の私鉄であって再建された国鉄ではありません。これは法律によって、あるいは国会という国政の場を通じて、国民をだますことになるのではないか。  第二点であります。国鉄の危機の原因国民の前に明確にしていく必要があると思います。  今日国鉄が陥っている危機の根本原因は何かという問題について、この法案においても臨調答申においてもなぜか避けております。一九五七年から始まった三次にわたる長期計画、六九年から五次にわたる再建計画、すべて政府の決定であります。高度成長、田中内閣時代の列島改造論に国鉄の設備投資計画が乗せられ、膨大な借金をしょわされながら、設備投資に大企業が群がっております。もうけをそこから引き出しているわけであります。その証拠と言えると思うのですけれども、国鉄の主な発注先である大企業からの政治献金が急速に増大してきております。自治省の発表によりますと、七六年から八〇年まで五年間、自民党に対して二十八億円余り、民社党に対して二億円余り、新自由クラブに対して三千六百万円余り、こういう内容について国民は疑問を多く持っておりますし、やはりうまみがなければこういう献金はないものと私たちは思います。そしてその上今日、東北・上越新幹線、成田空港駅あるいは青函トンネル、本四架橋など五千億にも近い赤字をしょわされようとしております。答申は破産状態だと指摘していますけれども、一方でこのようなむだと浪費、癒着構造がいまの国鉄の重大な問題ではないか。  昨年の十一月、ダイヤ改正が実施されましたが、新造車五百両、数百億円に及ぶ雨ざらしということが報道されております。明年二月、当局は貨物輸送についての合理化計画しております。貨物分野についてはほとんど撤退に等しい、こういう計画でありますが、四月一日の朝日新聞によりますと、機関車七百両、貨車四万五千両、これはくず鉄になる運命だというふうに報道しております。検修部門についていま部外委託が労使間で協議が進められているわけですけれども、国鉄の検修部門に携わる重要な部分について、三万人余りの労働者が働いている職場で、三分の一の一万人余りを部外に委託する、こういう計画が進んでおります。いま当局の合理化計画というのは、先に減量経営ありきという態度でありまして、安全輸送、安全運転を守っていく、そういう点から日夜苦心をして仕事をしている国鉄労働者にとってはきわめて危惧すべき事態が生まれてきております。なぜこのような、まだまだ有効に使って国民の利用しやすい国鉄にしていくことのできる車両、これを放置して不便な国鉄にしようとしてきているのか、そこに大きな問題があるのではないでしょうか。  現在、再建法に基づく経営改善計画がありますけれども、六十年までに三十五万人体制にする、こういう計画になっております。しかし、現実に当局の目安というのは三十五万人を割り、三十二万人を割り込む、こういう方向でいわゆる前倒し前倒しということが当局の口から出てくる、こういった事態であります。国鉄から国民の足としての使命を損なうような、安全運転、安全輸送を損なうようなこういう計画に対して、国鉄の労働者、労働組合が国民的な立場から断固闘うのは当然であります。  三つ目の問題ですが、国鉄労働者は、現在こういう困難な状況の中で国民的な立場から真剣に将来について考え、がんばっているということを申し上げたいと思います。  昨年の春から国鉄労働者攻撃が執拗に展開されました。しかし、これは本質をぼかす意図的なものであったというふうに私たちは思っております。三百職種にわたり、四千五百の全国の職場で二万一千キロにわたる営業キロ、二万五千本の列車を四十万の国鉄労働者が、正月もなく、親の死に目にも遭えない、社会的な常識、つき合い、こういうこともがまんしなければならない、子供の入学、一緒に学校に行けない、そういう困難な条件の中で働いているわけであります。いま職場では、労働組合として一切扱わない。職場では長い間の慣行、合意事項というのがあるわけですけれども、全く問答無用式の職場ファッショ的な事態が生まれております。こういった攻撃と、検修部外委託、貨物縮小、ローカル線廃止、また、駅の無人化、無料乗車証の廃止、新採ストップ、兼職禁止などの攻撃が、仲裁裁定の不完全実施、共済年金攻撃とともに総攻撃がかかっているのであります。これらの攻撃に対して労働者として、労働組合ならば毅然として闘っていくのが公企体で働く労働者として、国民的な期待にこたえていく立場ではないでしょうか。そのことを申し上げておきたいと思います。  次に、四点目に移るわけですが、この法案は廃案にし、本当の意味での再建国民的な立場で行うべきであるということを申し上げたいと思います。  先ほど来申し上げているわけですけれども、今日、国鉄のこういう危機を迎えている政治的な癒着構造あるいは大企業奉仕型のそういった根本原因というものを全面的に国民の前に明らかにする必要があると思います。  二つ目の問題ですが、いま進めております労働組合無視の労務管理、これを直ちに中止させ、そして職場で憲法、労働組合法に基づいた正しい労使関係というものを確立をし、公企体で働く、国鉄で働く労働者が、生活条件、労働条件、権利において、公共機関の役割りを果たすにふさわしい条件を備えるように、国民に対して十分サービスを徹底することのできるような、そういう保障を与える必要があると思います。  三つ目の問題として、その上に立って、真に国民のための福祉を貫く新しい国鉄国民が便利に、そして正確に、安全である交通機関として利用できるような、そういう国鉄に変えていく。大企業奉仕という側面は、今日公企体の場合に強いわけですけれども、日鉄法第一条に掲げられておりますように、そういう国民福祉の立場をいま一度見直していく時期に差しかかってきているのではないか。国鉄国民の共有財産であり、効率よく、むだなく、安全で正確で行き届いたサービスが確保できるような、そうして全国どこでも公共交通機関として利用できるような、そういう機関にしていくように私は望みたいと思います。  私たちはこのような国民的な要求にこたえて、国民奉仕の立場から、国鉄労働者としてみずから業務の改善に積極的に取り組むと同時に、国鉄労働者の任務を十分果たしていくような労働条件、生活条件を一体のものとして取り組んでまいりたいと思います。そういう点から、今日起きている幾つかの合理化問題につきましても、国民的な立場から見てどうなのか、こういう点から一体のものとして私たち取り組んでまいりたいと思います。  今日、日本の経済は、経済大国というふうに言われております。国民福祉の一つである国鉄維持できないはずがありません。膨大な軍事費を削減し、大企業奉仕への優遇策を国民向けに転換していくならば、また、日本の平和と安全、非同盟中立の立場から日米安保条約を廃棄していく、そういう方向と一体のものとして私たちは国鉄の問題があるということを申し上げて、発言にかえたいと思います。
  10. 原田憲

    原田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。    ─────────────
  11. 原田憲

    原田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  12. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 本日は参考人方々、それぞれのお立場からりっぱな御意見を御開陳くださいまして、本当に私どもありがたいと思っております。御苦労さんでございます。  実は藤井参考人山本参考人本案に賛成の立場でございます。また、遠藤参考人は反対の立場からお話を伺ったわけでございますが、私は雨宮参考人にお伺いをいたしたいと思っておるわけでございます。  雨宮参考人は、臨調の案を尊重して云々ということに関しまして、国鉄分割民営ということについて非常に意義のある御示唆をいただいたと考えておりますが、なおまた、この委員会の性格がちょっと不明確だというお話もございました。私どもは、いままでの計画その他が失敗をいたしておりますし、そしてまた、りっぱな臨調答申ができ上がりましたので、これに向かってこの委員会で、内閣総理大臣のもとで総力を挙げてひとつ審議をしていただきたい、審議した後で、いろいろな非常に微妙な分割とか民営とかその辺の結論も出して、立法化して進みたい、こういうふうに考えております。雨宮参考人の御意見は余り変わらないように思いますが、この法案を進めていいというふうに理解をしていいものでしょうか。その一点だけお伺いをいたしたいと思います。
  13. 雨宮義直

    雨宮参考人 国鉄再建監理委員会についてどう考えるかという御質問かと思います。  私は先ほどの意見の中でるる申し上げたわけですけれども、この監理委員会なるものが実はよくわからないというふうに表現したわけですね。基本的にこういうことを言う背景は、先ほど言いましたように、国有鉄道再建というのは、これは公社のみならず会社の場合もそうですけれども、労使の協力なしにはなし得ないのですね。それで、国鉄監理委員会というのは一体労使意見を十分聞いてその支持と協力を得る委員会なのかどうか、これは全然私には判断のしようがない、法案の段階ではそうですね。この法案は手続法ということですから、監理委員会をつくるための法律案なんですね。ですから、監理委員会が何をするかは今後ということですか、となると、私の基本的な考え方からしまして、国鉄再建基本軸からどうも外れているというふうに表現せざるを得ないのであります。
  14. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 この監理委員会法案は手続法だから、実体がよくわからないからどうも賛成しがたいというふうなお話に承りますが、この実体は大体こういうようなことになるというふうに明確にするとかあるいは論議の方向とか、つまり次に出てくる法律案、この監理委員会の中から出てくる法律案が国鉄再建改革に資するものであればいいのではないか、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。いかがなものですか。もう一回ひとつお願いします。
  15. 雨宮義直

    雨宮参考人 私が先ほど申し上げましたのは、この監理委員会の性格の不明確さということを申し上げたのですけれども、つまり限りなく三条に近い八条委員会というふうに私どもは理解せざるを得ないのです。そうしますと、この委員会と実際に国鉄再建に携わっていく労使とがどう関係するのか、同じことの繰り返しになりますけれども、国民としては判断のしようがないわけですね。実体法が出てくる。なるほど実体法が出てこなければ具体化しないでしょうから実体法が出てくるのでしょうけれども、その段階で実体法をめぐってこの監理委員会労使とのかかわり合いがどうなされるのか、全く私には不明なのであります。その辺明らかにしていただければ大変答弁しやすいのであります。
  16. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 終わります。
  17. 原田憲

    原田委員長 それでは次に、沢田広君。
  18. 沢田広

    ○沢田委員 社会党の沢田です。  諸先生には大変お忙しいところ御苦労さまです。時間がきわめて限られておりますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。  まず山本参考人から、再建とはどういうふうにお考えになっているか、簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  19. 山本雄二郎

    山本参考人 端的にお答えするのは大変むずかしいかと思いますけれども、一言で言えば、国鉄がどのような形になるか別にいたしましても、自立経営ができること、その自立経営を通じて鉄道輸送の使命を果たしていくことだ、そういうことが実現されることを私は再建と考えております。
  20. 沢田広

    ○沢田委員 では藤井参考人にお伺いしますが、藤井参考人再建とはどう考えておられるのですか。
  21. 藤井弥太郎

    藤井参考人 私の意見基本的には山本参考人の御意見とほぼ同じであります。国のシステムの中で鉄道の果たすべき役割り国鉄の果たすべき役割りはそのときどきの社会が決めるものであって、その社会の要請に最も的確にこたえるのが再建内容だというふうに考えております。
  22. 沢田広

    ○沢田委員 では青函トンネルができたり本四橋ができまして、あるいは上越新幹線、信越新幹線、相当な赤字を生んでいることは御承知だと思うのでありますが、これらについてはどこが負担をするのが妥当だと思っておられますか。藤井参考人にお尋ねいたします。
  23. 藤井弥太郎

    藤井参考人 これは一つは需要予測いかんにかかっている問題であります。需要予測がどの程度厳密に行われるか次第ですけれども、それ次第で利用者負担、それから公共が負担すべき部分が決まるわけです。  さらにいま一つ申し上げれば、現在の国鉄あるいは一般に通路施設を所有する経営組織が持っている会計制度、あるいは資金調達制度、これにもひとつ考慮する余地がございます。たとえば、本州四国連絡橋の場合には連絡橋公団の償還の仕方と鉄道の償還の仕方とは現在違うやり方です。どちらの方に整合をとるかというのも一つの問題だろうと思います。
  24. 沢田広

    ○沢田委員 それでは藤井参考人にお伺いしますが、道路の場合は五兆六千億ぐらいの道路、これにかかわる交通事故の比較は、人命尊重の立場ではどちらがプラスとお考えですか。あるいはこれは必要悪と考えておられますか。御見解いただきたいと思います。
  25. 藤井弥太郎

    藤井参考人 大変微妙なあるいはむずかしい御発言だと思います。  元来人間の命というのは貨幣額では換算ができないもので、どこまでが適当なのかと言われても、これは私にはお答えのしようがございません。安全の問題というのを私は金額と比較して云々するのは適切でないというふうに思っております。
  26. 沢田広

    ○沢田委員 これは逃げられたようですが、雨宮先生この点について、交通事故による死亡者、それに要する警察官、それから道路の維持管理、それに要する信号、特にまた揮発油税その他の財源をもって充当している現状、そういう状況から考えて、目に見えない損害というものを国民は、四千二百万台を超えるこの自動車の社会になって、これは今後さらにふえていくであろうと予想されます。そういう場合に、国民の安全を見た立場に立ってのこの公社方式と、中身を改善することはもちろんこれはまた別の立場でありますが、その点だけの比較について先生はどうお考えになっておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  27. 雨宮義直

    雨宮参考人 大変大きな問題で大事な問題であるわけですが、基本的に考えまして、私は戦後日本の交通体系はかなりゆがめられてきたという判断を持ったのです。これは何といいましても東京を見てもわかりますし、事実がそうだったわけですけれども、道路優先、自動車に傾斜した交通体系づくりがなされてきたと思うのです。もとより国民のニーズがあるのですから、自動車への傾斜というのはやむを得ないと思うのですけれども、そのバランスが全然とれなかった。これは古くさい言葉としてよく使われるのかもしれませんけれども、日本の交通体系がどうあるべきか、総合交通体系というのはどうあるべきか。つまり基本的な交通体系として日本の交通体系はどうあったらいいかという論議が十分なされなかったことの反映だと思うのですね。このことが自動車の生む社会的費用の問題をも惹起してきますし、鉄道の余りにもドラスチックな破壊が見られてきた、こういうことだと思うのですね。ですからこれは国の政策の問題として私はとらえておるわけです。
  28. 沢田広

    ○沢田委員 山本参考人にもお伺いしますが、自民党は整備五線といって、臨調では、関西新空港もあるいはこれからの新幹線増も、いま藤井参考人が言われましたが、需給関係を考えてつくるべきである、こういうふうに言われて、法律にはそうなっているわけでありますが、青函トンネルも本四橋も上越も信越も、あるいはこれから行われるであろうと予想されますが、整備五線なども赤字になることは必至だと思うのですね。われわれ素人が考えても、これからもしつくるとすれば赤字になる、そういうものをいま進めようとしている政党もあるし、そういう力もある。そういう状況の中で、これは来るべき赤字は必至なんじゃないかと思うのです。会社の運営をなさっておられる、運営まではなさっておられるかどうかはわかりませんが、そういう立場に立って、果たしてどのようにこれを進めるべきと考えるべきですか。それともそういう赤字が予想されるものを進めることは邪道だとお考えになっておられますか、いかがですか。
  29. 山本雄二郎

    山本参考人 いま整備新幹線あるいは関西新空港、つまりこれから着工をするあるいはするかもしれないプロジェクトと、それから現にでき上がった青函トンネルあるいは上越・東北新幹線、こういったプロジェクトについてのお尋ねであったと思いますが、一言で申し上げまして、これから行おうとするプロジェクト、これにつきましては、その採算性なり需要なりあるいは資金の調達、償還、そういったことについて十分に見きわめをつけた上でやることが必要であろうと思います。それが赤字であるかどうか、いまここで断定的なことを申し上げることはできないと思いますが、そういったことが一体どういうことになるかの見通しを見きわめた上で着工することが、着工するならする、あるいはしないならしないということの見きわめが必要だろうと思います。  それから、現にできている青函トンネル、上越あるいは東北新幹線、こういったもののいわゆる赤字をどうするかというのは、先ほど申し上げましたこれから着手するであろうプロジェクトの赤字とはやや性質を異にせざるを得ないような感じがいたします。そういう意味で、青函トンネルを例に申しますと、現在その利用方法などについて運輸大臣の諮問機関がつくられて、検討が進められているようでありますけれども、私は、現在の国鉄再建ということ等を絡めて言いますと、これまでの国鉄の経理方式あるいは資金の調達、償還、そういったことが現在の仕組みであったならば、青函トンネルを例にとりましても年間八百億円と言われているような償還はとても不可能であろうと思います。そういう意味では何らかの方法を考えることがどうしても必要になってくると思いますので、先ほど申し上げましたように、これから着手するであろうプロジェクトの問題とは分けて考えていくべき段階だろう、こんなふうに思います。
  30. 沢田広

    ○沢田委員 そうしますと、国鉄赤字が三十九年から始まったわけでありますが、三十九年から始まりましたこの赤字に何回か再建計画ができてきたわけですが、みんな失敗に終わった。その責任が全然問われていない。この点は、藤井参考人山本参考人雨宮参考人、三十九年から今日に至るまで、今日になってこういう法律を出したということには、政府なりそれぞれの責任者は腹を切るくらいな気持ちで法案を提出しなければならぬのじゃないかというふうな気がするのでありますが、その点どのようにお考えになっているか、これも簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。藤井参考人から雨宮参考人までお願いいたします。
  31. 藤井弥太郎

    藤井参考人 責任というお話ですが、私、先ほどから行政というふうに申しておりますが、行政の中には、何も政府という狭い意味ではなくて、国会ということを含んでいるというふうにお考えいただきたいと思うのです。そういう意味で、私は国会あるいは政府あるいは経営労使、それから国民、どこに責任があるかというその所在を明らかにするというのが、果たして今後の問題に絡んでどれほどの意味があるのか、若干わからない点があります。そういう意味では私の意見は不十分ですけれども、どれか一つ責任を特定しろと言われましても、私にはちょっといたしかねるというのが私の答えです。
  32. 山本雄二郎

    山本参考人 沢田委員がどういう意味責任という言葉をお使いになっているかは別にいたしまして、ごく一般的な常識といたしまして、私は国鉄の問題が今日のこの状況に至ったのにつきましては、政府はもちろんのこと、国鉄当局、それから国鉄の職員、さらには国民の側にも責任があると思います。場合によっては立法府にもあるかもしれないとさえ思います。
  33. 雨宮義直

    雨宮参考人 責任を単一に決めることは、これはもう困難だと思うのです。何といいましても政治のしがらみがあったことは事実ですし、国鉄に対して、言葉はよくないのですけれども、あらゆる側面からたかりがあったとは思いますね。つまり政府もそうですし、企業もそうですし、国鉄労使もそうでしょうし、国民もそうだと思うのですね。政治のしがらみというのが大きいんだと思うのですけれども、国有鉄道が交通手段として純化していればそれなりにしようもあったと思うのです。ところが、そういう純化した交通手段ではない。もとより私は純化することを希望しているのじゃありませんけれども、つまり私鉄のように純化した交通手段ではなくて、まさに国有鉄道として存在したことが過去から現在までの経緯だろうと思うのですね。一体、こういうことがいつまで許されるのか、そこで論議が始まっているのだと思うのですけれども、その中で先ほど私が述べました意見に沿って、国鉄再建というのは労使の協力なしには得られないのですから、その方向再建を図っていく、こういうほか方法はないんじゃなかろうかと私は考えます。
  34. 沢田広

    ○沢田委員 遠藤参考人は、いままでの議論を通じて一言でこの国鉄再建法案は反対だ、こういうことでありますから、若干いま言われた点について、責任の所在について、いままでの参考人意見を踏まえて一言お答えいただきたいと思います。この今日の事態を生んだ責任は果たしてどこにあるのかということであります。
  35. 遠藤泰三

    遠藤参考人 先ほど意見で申し上げましたように、政府、当局、財界が責任があると思います。
  36. 沢田広

    ○沢田委員 それからさっき藤井参考人が公社という言葉を言われました。現在でも日本国有鉄道と、こういうことになっているのですが、公社になった原因というものをどういうふうに受けとめておられるのか、ちょっと何か誤解があったような気もいたしますので、お答えいただきたいと思います。
  37. 藤井弥太郎

    藤井参考人 いまの公社というのが日本国有鉄道のことというふうに解釈しますと、御案内のように、わが国で最初に国有鉄道ができましたいきさつは、若干経済的な条件下でできてきたものではないということが、昭和二十四年の当時はそうであります。あくまでもその当時は占領軍がおりましたわけです。その状況一つ考えられなければなりません。しかし、たしかその当時の国鉄は、現在のような独立採算が必ずしも要求されていなかったように記憶しておりますが、その後二十年代の後半に現状のような企業形態ができたんだというふうに考えております。  一言申し上げてみますのは、要するに、その当時に適切な組織であった公企業であっても、その後の環境条件が変化すれば、それに対応していかなければならないというその点であります。
  38. 沢田広

    ○沢田委員 そうです。これは政令二百一号で、だから労使関係については公社という形態をとられた、経営形態については従来の日本国有鉄道が継承される、こういう仕組みの中で投資がオーバーヒートを起こし、そして今日累積赤字がたまってきた、こういうことだと思うのであります。  累積赤字について、山本参考人はどういう解決が、これは監理委員会がということを言われるかもしれませんが、せっかくおいでをいただいておりますので、累積赤字というものは高度成長の一つの産物なんでありますが、もし経営的な立場で考えられたならば、どういう解決方法がよろしいとお考えになっておられますか。
  39. 山本雄二郎

    山本参考人 まことに申しわけありませんが、私は経営者ではありませんし、また、この累積赤字をこうしたらいいということを簡単に申し上げられるほどの知恵を持ち合わせておりません。もし私がここでこういうふうにすれば累積赤字が解消するであろうというようなことを言えるぐらいであれば、すでにどなたかがそういうことを言われて、それが実行に移されているのではないかと思います。そういうことができないために今日の状況に立ち至っているわけでありまして、この点は沢田委員がすでに御指摘のように、それこそ監理委員会検討を進めていっていただくほかはないと考えざるを得ないわけです。
  40. 沢田広

    ○沢田委員 雨宮参考人にこの点、フランスなりイギリスなりドイツなりの例等を考えまして、こういう累積赤字等の解決方法というものはこういう法案をつくることによって解決できるものではない、もっと別途の方法で政府責任を明らかにすべきだ、これはまあ意見が入りましたが、そう私は思っておりますが、先生の御意見はいかがでありましょうか。
  41. 雨宮義直

    雨宮参考人 いま手元に細かいデータは持っておりませんけれども、西ヨーロッパの鉄道国鉄財政上赤字が出た場合には、単年度処理というのが通常の方法ですね。ですから、日本のように赤字が出てそれを借金で埋める、したがって金利が累積していくという意味での累積赤字の処理方法ではないわけです。ですから日本の国鉄赤字の処理は、国際的に見ればヨーロッパ諸国とは違った赤字の処理をしてきた、そのことの累積がいまに至っている、私はこう理解しております。
  42. 沢田広

    ○沢田委員 先生に、続いてですが、運輸大臣の権限があり、それから国鉄総裁の権限がある、経営はともかく政府と運輸大臣、それから国鉄総裁がそれぞれ担うものである、ですからこれは屋上屋であって、さもなければ総裁の首でも切って新たな経営者をつくるなり、あるいは運輸大臣の首を切ってでもまたやるというのが筋道なんであって、こういう違ったような、こぶみたいなものをつくってやっていくという方法は再建方式としては邪道である、言うならば自民党の政権政党の逃避であり責任転嫁であると考えられるわけでありますが、その点は先生はどのようにお考えになっておられましょうか。
  43. 雨宮義直

    雨宮参考人 私の考え方は先ほどの意見の中で述べてしまったわけですが、いまのような国鉄状況をどうにかしなければならぬということは、これは国民も皆そう思っていると思うのですね。ただ、そうなんですけれども、基本的な解決方法というのは、私は何遍も繰り返しましたように、国鉄に自主性と自由化を与えて企業としてすっきりさせる、その上で公共的なものについては国がめんどうを見ていく、こういう方式しかないと思うのです。そういう方式しかない中で監理委員会、私は本当に理解しにくいのですけれども、こういうものをつくって一体どれほどのことができるのか。先ほど言いましたように、この監理委員会なるものが何をするのかよくわかりませんから答えようがないのですけれども、私が参考人意見として触れたように、まさに屋上屋を重ねる委員会としか考えられないわけです。  ただ、私が参考人としての意見の中で、責任ある強力な委員会の設置なら望ましいということを言ったわけですけれども、これは、国鉄当局をもしのぐような権限を持った、政治から独立した委員会でもできて、この委員会労使と協議して国鉄再建を図っていく、そういう強力な委員会でもつくるのならまた話は別なんでしょうけれども、そうでもない委員会が今度の委員会なわけですね。つまり、限りなく三条に近い八条委員会というのですけれども、よくわからない委員会をつくって一体何をしようとするのか、私には疑問に思えるというのが私の見解であります。
  44. 沢田広

    ○沢田委員 時間ですから終わります。どうもありがとうございました。
  45. 原田憲

    原田委員長 次に、西中清君。
  46. 西中清

    ○西中委員 きょうは参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。  先ほどから貴重な御意見を伺っておるわけでございますけれども、いまも同僚委員から国鉄の今日の危機的状況というものについての責任の問題が出ておりました。それぞれの立場でお答えをいただいたわけでございますけれども、これから再建に取り組もうといたしておるわけでありますから、本来ですとどういう企業であれ、こういう破局的状況になった場合にはだれかが責任をとるというのはあたりまえのことでございます。いま一般にそれぞれの立場からいろいろな意味責任を問うておるわけですね。政府責任があるんだとか国鉄当局にあるんだとか労使にあるんだとか、それから国民要求が非常に強過ぎるのだとか、さらにはまた政治的な背景が非常にあって、政治路線等が大きな問題なのだとか、いろいろ意見が分かれる。そうすると責任は一体だれにあるのかということは、国民すべて、また、政府を含めてすべてにあるんだという非常にあいまいな形になっておる。その上で巨大な累積赤字長期債務を抱えている、これを結局は運賃と税金で処理をしていかなければならぬ。こういう非常に漠然とした形で、この問題の責任が明確にならないということは非常に不幸なことだと私は思っております。  責任についてはいまお話がございましたから重ねて問うつもりはございませんけれども、ちょっと角度を変えまして、この赤字の最大原因はどういうところにあったのか、これを分析しておかなければ、再建の本当の意味基本となる問題でございますから、最大原因は何にあったのか、この辺のところをまず藤井参考人雨宮参考人に伺っておきたいと私は思います。
  47. 藤井弥太郎

    藤井参考人 非常に広範な内容にわたる御質問かと思いますが、赤字原因はもちろん単一ではないわけで、一つ組織上の問題、先ほどから申し上げておりますような交通市場の構造に対応できるような組織でない。その一番端的な点が、市場変化に対して公企業というのは非常に硬直的な部分を持たざるを得ない。これはたとえば兼業を規制されているというような観点もあるわけですが、そういう意味事業の足が縛られていると申しますか、運賃の方でも縛られている、制約されるというような法定主義が長い間とられてきたという面。それから制度上の問題はひいては経営ないしはそこの労務関係の方にも影響があるわけです。そこら辺で、それがどの程度のウエート赤字原因の中を占めているかというのはちょっとお答えいたしかねます。  最後に、交通構造の需要予測の失敗、それは特に貨物についてであったかと思います。これはどこの責任かというと、これもまたむずかしいわけですが、恐らく国鉄経営者以外の方がおやりになっても需要予測はかなり間違えたのではないかと私は思っております。
  48. 雨宮義直

    雨宮参考人 赤字の最大原因は何か、何か単一の原因を示すように御質問なさっているのかもしれませんけれども、赤字原因はまさに複合しておりまして、一つではとてもこれが赤字の最大の原因だということは言い切れないと私は思うのですね。ただ、基本的には、これは日本の鉄道ばかりじゃなくて、先進資本主義国の鉄道がそうですけれども、財政危機を招いた最大の背景は、何といっても輸送構造の変化への対応がやはりおくれたということだと思うのですね。経済は生き物ですから、産業構造も変化しますし、産業構造の変化につれて輸送構造も変化するわけですね。この輸送構造の変化の中で先進資本主義国の鉄道は必ずしも十分な対応ができなかった。なぜできなかったかといいますと、日本の場合は大変政治のしがらみが強かった、こう言わざるを得ないわけですね。そうですから、もう少し国鉄に自主性を与えるという方向基本的には出てくるので、今後の国鉄再建方向もそれしかない、私が先ほどから言っているのはその意味であります。
  49. 西中清

    ○西中委員 引き続いて雨宮藤井参考人にお伺いしたいのですが、ただいまも経営の自主性ということが言われておりました。これは将来どういう経営形態になっていくかということは別問題として、経営健全化のためには非常に必要な問題だということを私はかねてから訴えておるわけでございますけれども、私の考えるところ、公社制度のままではまず現状改革は非常にむずかしかろう。とりわけ公社の制度をそのまま維持すれば、行政や政治の介入ということはどうしても避けがたい、こういう要素も非常に強いと思います。したがって、自主的な経営といっても公社制度のままでは非常に困難である。いま雨宮参考人ですか、公社制度のままで自主性を持たせ、こういうお話もあるのですけれども、どうもその辺のところは非常にむずかしい話ではないかというように判断を実はいたしております。したがいまして、この経営の自主性、これについて現状、それからこれからどういう改革をしたらいいか、お考えがあれば両参考人にお伺いをいたしたいと思います。
  50. 藤井弥太郎

    藤井参考人 国鉄経営について、自主性を与える方向が必要だということについては恐らく余り異論がないのだと思うのです。その自主性をどこまで与えるか、それに従ってまた経営形態としてどういう形態を選択するか、そこら辺で意見がおのおの若干ずつ違うという形かと思います。  私は、先ほどから申しましたように、また、いま御意見もございましたように、一番端的な形は、民営という形が自主性を与える最大の形になる。私は何も民営が直ちに望ましいと言っているんではなくて、そういう議論を通じて行政責任、先ほどから責任ということの分離がむずかしいというお話がありますが、それは結局行政のあるいは政府責任事業経営責任が明確になっていないからそういうことになるので、一番明確になるのは民営の場合ですので、ひとつここを監理委員会で議論をしていただけば、どの辺まで自主性を与えるべきかというみんなの意見が収斂してくるのではないか、そういうことを期待しているわけでございます。
  51. 雨宮義直

    雨宮参考人 公社制度のままでは経営の自主性はむずかしいのではないかという御指摘かと思うのですね。経営の自主性という言葉が何ですかかなりクローズアップされてしまって、大事なことが落ちてしまっているのですけれども、先ほど来私がいろいろ例を引いております西ヨーロッパ鉄道の場合を見ましても、なるほど基本的には経営の自主性の方向をとっているのですね。これはいまでも堅持しているのです。ただ、鉄道といいますのは、単にその鉄道が持っている経済的価値を上回る存在価値があるのですね。ですから、経営の自主性というのはコスト計算をして、収支均衡で独立採算制を貫くという方向での政策ですけれども、ただそれだけでは鉄道というのは処理できないというのがヨーロッパの貴重な経験です。ですから、西ドイツでもイギリスでもフランスでも民営化ということは考えておりません。先ほど来、経営の自主性というのは民営化しなければ与えられないんじゃないかと言いますけれども、そうではなくて、西ヨーロッパの例で見るように、公社制度のままで責任を明確化して、経営の自主性を与えていくという方向は十分成り立ち得るわけです。  私が最初の参考人意見として述べましたように、経営形態をドラスチックに変更するということは決して得策ではないのです。これは組織上大変混乱をもたらしますし、大きな犠牲を伴うのです。それに伴う経済的な費用もあるわけです。ですから、公社制度のままで活性化を図るという意味での経営の自主性を考えていますし、さらに国鉄というのは、単に経営の自主性だけで処理できるものではなくて、先ほど言いましたように、それに加えて、どうしても鉄道維持しなければならないという役割りがあるものですから、その役割りを果たすためには、民営でなくて公社制度の方が好ましい、そういう意味であります。
  52. 西中清

    ○西中委員 現行の国鉄経営改善計画によって国鉄経営の健全化を図ろう、こういうことでまいったわけでありますけれども、これは、目標を達成することはもうほぼ無理だということは大方の意見でございます。したがって、国鉄ではこの計画の見直しということを考えているようでありますけれども、皆さん方に、当面の緊急措置としてのこの計画ですね、次から次へいままでも破綻をしてきたわけですけれども、当面この再建に取りかかっておる計画、こういうものをごらんになりまして、どういうところに欠陥があるのか、御意見がありましたら伺っておきたいと思います。雨宮山本参考人にちょっと伺っておきたいと思います。
  53. 山本雄二郎

    山本参考人 現在進められております国鉄経営改善計画、これは私が申し上げるまでもなく、昭和六十年度に幹線系線区において収支均衡を図る、こういうことが目的になっておりますけれども、いま御指摘のように、目標年次にその目的を達成することは非常に困難な状況にあることは事実だと思います。  それは、これもすでに御承知のことと思いますけれども、特に問題がありましたのは輸送量の減退、特に貨物の輸送量が減ったことに原因があろうかと思います。そういう意味で、この経営改善計画目標実現はなかなかむずかしいと思いますけれども、やはり問題点は、これまでの多くの再建計画がそうでありましたように、需要見通し、これはなかなかむずかしいということ、今度の改善計画では決して私は過大な見積もりをしたとは思いませんけれども、しかし、それでもなおかつ、それが結果的に過大な需要見通しをしたのと似たような状況になってきたということは、いまの国鉄の置かれておる状況が想像以上に厳しいということを示していると思います。したがいまして、これからこの計画をどういうふうに改定するか、あるいは遂行していくかは今後の問題でありますけれども、いま申し上げました国鉄の置かれている状態が残念ながら想像以上に厳しいという点に立脚しないと、仮に計画を改定しても再びあるいは三たび同じ過ちを犯すのではないか、そのことを懸念いたしております。
  54. 雨宮義直

    雨宮参考人 現在の再建計画が必ずしもうまくいっていないではないかという御指摘かと思うのですけれども、また、その原因は何かという御質問かと思いますが、昭和五十五年度にこの法案成立しましたときに、私はこの再建法に関する参考人としてここへ来た記憶があるのですけれども、あの再建計画で六十年度に財政再建ができるとはあの時点でだれも思わなかったと思うのです。つまり、財政収支が再建計画に見られるような形で均衡をするというような意味での再建が六十年度にできるとはだれも思わなかったと思うのです。最後の再建計画ということが言われたわけですけれども、それが現実をもって示された、こう考えるわけです。  ただ、先ほど私が参考人意見の中で申し上げましたように、いまこの現行再建法に沿ってかなり計画が進められていることもまた事実であります。先ほど述べましたけれども、地元の反対があるとはいえ、地方交通線対策協議会が開催されて論議が進められていますね。地方交通線対策協議会でいろいろ問題があるということは、ある意味ではその地元で鉄道に対してニーズがあるということですね。したがって鉄道をどうしていくのか、これはまさに地元との関連で今後処理していかなければならない問題だと思います。それから合理化の問題につきましては、私が先ほど数字を示しましたように、ある意味ではかなり急ピッチに、予定以上に進められていると評価してもいいのではないか、こう考えております。それから貨物につきましても、ダイヤの改定、ヤードの廃止計画がなされているわけですね。  そう言いますと、何か私が再建計画に賛成してこれを推進することがよろしいというように聞こえるかもしれませんけれども、貨物の問題に関してだけここで話をさせていただきますと、いま国鉄がとっている貨物対策というのはまさに縮小合理化、つまり貨物輸送を切っていく政策をとっているのだと思います。先ほど来参考人の中から需要予測が狂ったということを指摘しているのですけれども、需要予測が狂うも狂わないも、需要に対応し得ないような貨物輸送体系を実は考えようとしているわけです。そういう意味再建計画が狂わざるを得ないのでしょう。ですから再建計画、個々的にはかなり進んでいるわけですけれども、中にはその進み方の中にずれができてしまって現在のような状況を示しているわけですね。ですから、私は再建法に沿って、いまとなってはこの再建法を深度化する中で労使に自主性と自由化を与えて、労使協力のもとに再建を図る方向を模索するほかないのじゃないかという考えで、先ほど来意見を申し述べているわけであります。
  55. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  56. 原田憲

    原田委員長 それでは次に、四ッ谷光子君。
  57. 四ツ谷光子

    ○四ッ谷委員 参考人の皆さん、きょうは大変御苦労さまでございました。  まず初めに、私は山本参考人にお伺いをしたいと思います。  山本参考人は、この膨大な国鉄長期債務に対しまして、この解決策、何か具体的なお考えをお持ちなのかどうか。と申しますのは、先ほど山本参考人国鉄改革の方法として、基本的な考え方として、過去の債務清算現状打破、それから将来の展望、この三つに分けて述べられましたけれども、臨調基本答申は、この三つ方向がほぼ最善の道として述べられている。そしてこの法案はその基本答申を尊重するという立場から、この三つ方向がほぼ充足をされている、このように述べられたのでございますけれども、この法案は、いま国鉄が抱えている膨大な長期債務をどうするかというふうなことについては具体的な方向が何も示されておりません。また、いままですでに国会で質疑が行われているわけですけれども、いままで政府並びに国鉄の答弁を聞いておりましても、監理委員会ができて一体どういうふうになるのか、分割民営化方向なのかという御質問に対しましては、分割民営化の方針で検討はされるだろうけれども、特段の理由あるいは合理的な理由があれば分割民営化以外の方法も出てくるかもわからない、こういうふうなことを言っておりますし、もっと積極的な御意見としては、監理委員会分割民営方向を出されたとしても、運輸省並びに国鉄でもう一度これを検討することもあるかもわからない、こんな御答弁まで出ているわけでございます。そういたしますと、この法案は決してこの長期債務、いま国鉄赤字の問題で、国鉄再建についてはこの膨大な長期債務だとか特定人件費をいかに身軽にするかというのがまず第一にあると思うのですけれども、この法案では何一つ具体的な方向が示されておりません。先ほど参考人は、一刻も早く急ぐのだというふうなことをおっしゃいましたが、そんなに急ぐとおっしゃるならば、こんなどうなるかわからぬ監理委員会設置法案に任せるよりも、いますぐ何か長期債務の解決方法について、参考人が具体的な御意見をお持ちではないかと私は期待するわけですが、いかがでございますか。
  58. 山本雄二郎

    山本参考人 いま御指摘の長期債務の点でありますが、これは先ほどの御質問で、累積赤字についてどうするかという御質問がありましたときにお答えしたと同じことになりますが、私はいまここで、こういうふうにすれば右から左へ長期債務の問題が解決するというほど簡単なものでもないと思いますし、また、私自身にも、大変申しわけありませんけれどもそういう知恵を持ち合わせておりません。ただ一つ、はっきり言えますことは、現在の国鉄の窮状を打開していくためには、累積赤字特定人件費あるいは長期債務といったいわゆる過去のしがらみというものを断ち切らない限り、新しい国鉄の再生というものはあり得ないと思います。そういう意味で、抽象的なことになって恐縮ですけれども、この長期債務を初め、そういった私の言う過去の清算ということをこれまでと違った形で行うことがどうしても必要だろうと思います。その場合に、ある場合には一時的に国の財政負担が多くなるということもあり得るかもしれません。そういった点については監理委員会検討の上、その具体化については恐らく法案という形で国会に提出されると思いますので、そういう際に国権の最高機関としての御良識のある御判断をお願いいたしたいと思います。  それから分割民営のことにつきまして、果たしてそういうふうになるやらならぬやらわからないという政府答弁がこれまでの審議であったということでありますが、この点については私は次のように考えます。  分割民営化ということが臨調答申で打ち出されたのは事実でありますけれども、私はこの分割民営化というのは手段であって目的ではないと思っております。つまり目的とするところは、いまの国鉄再建すること、私の言葉で言えば改革するということでありまして、それによってよりよき交通手段を確保すると同時に、これまでありましたような、いわれのない不当な負担を国民が強いられることのないようにするということにあろうかと思います。その手段としての分割民営化だと思いますので、今後検討の過程で分割民営化よりもすぐれた方法がもしあれば、それをとることは私は差し支えないと思います。現に先ほど雨宮参考人も言っておられましたけれども、現在の経営改善計画の中でも要員の縮減その他はかなりのテンポで進んでいる事実もあるわけでありまして、非常に極端なことを言えば、六十二年七月までに、監理委員会検討する以前の段階で、現在の形態の中で国鉄改革が実現するということもあり得ないことではないと思います。そういう仮定のことをここで申し上げても仕方がないと思いますが、いずれにしましても、繰り返して申し上げますと、分割民営化というのは手段であって目的ではない、しかし、現在の時点では一応その方向国鉄改革にアプローチしていくことが最も早道であろう、こういうふうに私は考えているということを申し上げておきます。
  59. 四ツ谷光子

    ○四ッ谷委員 いま山本参考人は、分割民営化手段である、そしていわれなき不当な負担を国民から取り除くのだ、こうおっしゃいました。そういたしますと、そのいわれなき負担を生み出したその真の原因山本参考人はどう思われるか、ちょっとお伺いしたいと思います。  十年ほど前に列島改造計画が出まして、それまで十年間で三兆七千億でよかった設備投資、これを一挙に三倍にふやしました。十兆五千億です。そして、しかも初めは国の金をつぎ込む予定であったのが、途中でどうなったかわかりませんけれども、ほとんど借金に次ぐ借金でこれをやってまいりました。そしてこの中で膨大な利益が、これを進めてきた政府・自民党、高級官僚の皆さん方のふところにも相当転がり込んでいるはずであります。こういうふうな本当に赤字をつくり出した、赤字たれ流しの責任、言われなき不当な負担を国民に負わせているその一番の根本、先ほど労使の関係だとか国民責任もあるなどとおっしゃったけれども、一番種をまいた政府・自民党の責任について山本参考人はどのようにお考えですか。
  60. 山本雄二郎

    山本参考人 この赤字を生んだ原因につきましては、先ほどお答えしたことは基本的な私の考えでございますけれども、いまお話しのように、では政府あるいは自民党に責任がないかと言えば、私は責任があると思います。ただ、同じことを繰り返して大変恐縮ですが、政府・自民党に責任があると同時に、いろんな意味で、新線の建設を要求したというような意味で言えば、その地域の選挙民にも責任があったかもしれませんし、また、それにこたえた政治家の皆さんの方にも責任があったかもしれないということで言えば、やはりこれだけが一つの最大の原因であるというふうにその赤字原因を特定することは困難でないか、そういうふうに私は考えます。
  61. 四ツ谷光子

    ○四ッ谷委員 それでは、時間がありませんから遠藤参考人に御質問をしたいと思います。  ただいま国鉄の問題が国民の非常に大きな関心になっているのは、先ほどからも赤字原因がだれにあるのか、その責任はどこにあるのかというふうなことが論議をされているわけですけれども、やはり国鉄赤字が余りにも巨額であるために国民の関心がそこに集まっている、このように考えられます。政府も、それから自民党も国鉄当局も、国鉄赤字を最大の理由に地方ローカル線の切り捨て、それから国鉄労働者の人減らし、また、赤字国鉄がということで職員パスも廃止する、あるいは憲法違反の疑いまである兼職議員、こんなものも禁止するというぐあいに、すべてもとを正せば国鉄赤字だから、こういうふうなことではないかと思うのです。  先ほども言いましたように、今日の赤字原因はだれがつくったのか、これは遠藤参考人もおっしゃいましたし、私もいま少し述べたところでございますけれども、その原因責任を明確にすることが、今日の赤字原因である国鉄の重大な病を治す根本ではないかというふうに思います。赤字だからといってローカル線利用者にしわ寄せをする、また、赤字だからといって国鉄労働者にしわ寄せをする、こういうふうな態度は、赤字をつくり出した人が本当にそのことを考えているのかどうかということが大きな問題だと思います。最大の赤字原因とその責任を不問に付したまま、いま国鉄再建を考えるということは、国民立場から誤っているのではないかと思いますが、国鉄赤字原因がすべて国鉄労働者にあるかのごとき主張や宣伝が行われておりますけれども、国鉄労働者の代表の一人として、遠藤参考人はこのような問題にどのような感想をお持ちでしょうか、お伺いしたいと思います。
  62. 遠藤泰三

    遠藤参考人 国鉄赤字が出る原因については先ほど申し上げたとおりであります。国鉄の労働者に責任があるかという意見もないわけじゃありませんけれども、しかし、国鉄の労働者は直接その経営の決定に参加しておりませんし、与えられた結果に基づいて苦しめられているというのが現状であります。もしその点で具体的に意見を聞かれるあるいは取り入れるという形態でもあれば、はっきり申し上げてこのような経営計画というものには賛成しないと思います。また、いまここに国鉄あり方懇、北海道のあり方懇が行ったアンケート調査というのがあるわけですけれども、現実に国鉄は乗りづらい、接続が悪い、利用しづらい、高い。改善は、接続だとか列車本数をふやしてほしい、こういうふうに国鉄が変わっていけばどんどん利用したい、アンケートの結果ではこういう住民の意見が三分の二を占めております。  私たちは、そういう点からこの赤字原因を明確にするということは、国鉄を根本的に改革していく場合に国民がそれを理解し協力してもらえる、そういう前提条件になると思うのです。国鉄労働者も、そういう点でこの問題についてどういうふうに自覚をしていくのかというポイントがそこにあると思うのです。実際に国鉄の職場で働いている者として、そのことは特にこの国鉄改革問題で審議していく場合に、十分時間をかけて審議してほしい、明確にしてほしい、これが国民の声だと思っております。
  63. 四ツ谷光子

    ○四ッ谷委員 重ねて遠藤参考人にお伺いいたします。  国鉄は本来公共の福祉に奉仕するものでございますから、経営者も、政府も、そしてそこで働く労働者も国民に奉仕するという立場、私はこの間NHKの討論会では、親方日の丸じゃなくて、親方国民立場国鉄経営をやってほしい、こういうふうに申しましたけれども、先ほど参考人のお話の中に、国民奉仕の立場から業務の改善などに積極的に取り組んでいきたいということを述べておられますけれども、どのような取り組みがなされているのか、幾つかの例をお聞かせいただきたいと思います。  もう一点続けてお伺いいたしますけれども、どんどんと合理化が進んでまいりまして、人減らしが進んでまいります。そうすると、住民や利用者サービスだとか、安全輸送の確保という面で非常に大きな支障が出てきているのではないかと思うのです。そういう点でどのような問題が生じているのか、具体的な例がありましたら、続けてお聞かせ願いたいと思います。
  64. 遠藤泰三

    遠藤参考人 全動労が私の所属の労働組合なわけですけれども、昨年の大会におきまして、これまでの労働組合運動の中で、合理化反対闘争についても抜本的に見直しを行う、その上で国鉄のような公企体の置かれている条件についても抜本的に見直しを行う、こういう議論をいたしまして、公企体というのが日鉄法第一条で明記されているように、国民福祉の立場に立つという大前提があるにかかわらず、全体としては大企業奉仕、国民軽視、そういう経営側面が強くなってきておる。したがって、そういう面の改革が必要であると同時に、国民福祉を十分に貫くような公共交通機関にしていく、そういう立場から業務の改善については積極的に要求を出していく、利用者から意見を聞いていく、また、そういった意見に基づいた交渉も展開していくというような取り組みをすることになってきております。同時に、そういった国民奉仕の立場から、公企体を維持発展させていく立場からも、サービス、安全運転についても十分保証できるようなそういう労働条件などの問題についても一体のものとして取り組んでいく、こういう立場に立っているわけです。  昨年六月、北海道の石北線で特急「オホーツク」が、外託に伴う業務の内容の結果として脱線転覆事故が発生する、こういう事件が発生してきております。車両が近代化され、高速化され、また、重要な運転、安全にかかわる分野が直接責任のない部外企業によって作業が行われていく、こういう関係は、国鉄が発生して今日まで百十年以上たっているわけですけれども、最近急速に進行している。そういう中で国鉄の多くの労働者は、このままではいま言った石北線のような事故が頻発するのではないか、そういう心配をしているというような現状であります。  幾つか申し上げたい点があるわけですけれども、時間の関係もありますので一応申し上げておきたいと思います。
  65. 四ツ谷光子

    ○四ッ谷委員 これで私の質問は終わらせていただきます。どうも御苦労さまでございました。
  66. 原田憲

    原田委員長 それでは次は、中馬弘毅君。
  67. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それぞれの参考人方々、それぞれのお立場からの御意見ありがとうございました。  まず、雨宮参考人にお伺いいたします。  雨宮さんがおっしゃったこと、私たちがかねてから思っておりますこととほとんど一緒でございまして、臨調答申分割民営化をうたっておりますけれども、私ども分割することがいいのかどうか若干疑問に思っております。むしろ、おっしゃるとおりに交通体系、ネットワークが第一義でございますので、やはり管理体制事業部制でやる、これはもちろん管理体制として必要でございますが、分割することがいいかどうか私たちも疑問に思っております。また、委員会の権限が弱いという御意見でございますが、これも私たちと同様でございます。しかし、やはりこれは手続法でございまして、委員会がどういう結論を出してくるにしろ、最終的に実施に移す場合にはわれわれ国会として一つの法律を決めていくわけでございますから、いまお出しになっている与党の立場方々の中にも、分割よりもやはり一本化の方がいいんじゃないか、単一形態の方がいいんじゃないかという御意見の方もかなりございます。だから、これに反対だというのではなくて、入口で反対してしまうのではなくて、まずは動かしてみて、その案が出てくる、それに対して国会として一つの、国民の意思を代表して、修正をつけるならつけて実施に移していく、こういうことで、別に反対されることもないのじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  68. 雨宮義直

    雨宮参考人 私の先ほどの発言の意図を十分酌み取っていただけなかったのではないかと思うのですけれども、監理委員会で何をするかということを私は問うたわけです。その中で、国鉄再建を今後進めていくには、繰り返しますけれども、何でも国鉄労使の協力なしにはできないわけですね。労使の協力なしに頭ごなしに、こういう方針でいくというようなことで再建など絶対にできないわけです。そうしますと、監理委員会国鉄労使との関連が一体どうなっていくのか。実体法で大変重要な問題が論議されて、それが国会にも出されるのでしょうけれども、それと関連して、この監理委員会と実際再建に当たろうとしておる労使との関連は一体どうなるのか、全く不明確ですね。つまり、監理委員会で種々論議をして内閣総理大臣に諮問をして、法案が出て、それを国会で論議する、そういう道筋では私は再建というのはできないんだと思うのです。ですから、国鉄労使との関連が十分考えられる監理委員会でなければならないし、そうであるとすると、今回出されたような限りなく三条に近い八条委員会というものでなくて、むしろ強力な委員会ならばそういうことができるのかもしれませんね。私、その辺はよくわからない面もあるんですけれども、今回出されたような監理委員会では一体何ができるのかも疑問ですし、何もできないだろうというふうに、また、再建に沿っての具体的な進め方に大変疑問を持つ、そういうことであります。
  69. 中馬弘毅

    ○中馬委員 委員会の権限が確かに弱いこと、私たちも少し危惧をいたしております。しかし、委員会というのはそれを主宰する人物にかなり影響されるものでして、非常に強力な権限を与えられている委員会であっても、その長たる人がどうもあいまいな人であるならばあやふやなものが出てくるかもしれませんし、逆に、弱い委員会であったとしても、かなり各界に評価のある、そして実力をお持ちの方が委員長になられましたならば、それが全体の世論を動かしていくことすらできる、行政を動かすことすらできるわけでございまして、そういう意味におきまして委員の人選というものは非常に大事になってくると思いますが、賛成の立場山本参考人、どういう人選の基準でいったらいいか、それを御意見がありましたら聞かせてくださいませんか。
  70. 山本雄二郎

    山本参考人 ただいま中馬委員御指摘のとおり、監理委員会が発足したといたしまして、その具体的な人選をどうするかということは非常に重要な問題だと思います。現に臨時行政調査会が土光会長をその長としたことによりまして、その性格なりあるいは審議方向がかなり大きく影響を受けたということを見てもおわかりのように、委員の人選というのは非常に大事なことだと思います。そういう意味で、今度の監理委員会臨時行政調査会答申を受けまして、かなり具体的な検討を進めていく場になるわけでありますから、具体的にこういう人選が基準として望ましいということを申し上げにくいわけですが、私の希望といたしましては、交通の問題について非常にお詳しい方、あるいはこの問題を進めていくに当たっては労使関係の問題がかなり大きなウエートを占めると思われますので、そういう方面にお詳しい方、さらに列車のオペレーションといいますか、全体の連行なりそういった技術的な問題も入ってくると思われますので、そういう点にお詳しい方、そういう方が参画されることが必要ではないかと思います。
  71. 中馬弘毅

    ○中馬委員 遠藤参考人にお尋ねいたします。  国鉄の使命は効率化を若干犠牲にしても公共性維持すべし、私たちもそうは思っております。しかし、日本発送電も、これは一つの国営の電気事業でございまして、これを民営化いたしました。この電力が民営化したことによって非常に公共性が悪くなったとは私たちは思ってないです。春になったらストで電気がとまることも、民営化になってからは、少なくとも最近はございませんし、あるいはサービスもいい。山間僻地までも電気が通じている。民営にしたら公共性が損われるとは私どもは思わないのですけれども、その点についてはいかがお考えでございますか。
  72. 遠藤泰三

    遠藤参考人 電力と比較されるとは思わなかったわけですけれども、しかし、確かに便利さはよいとはいいながら、利用者にとっては決して割り安ではないと思います。ですからそういった点から、問題は、電力九分割の時点でどういう政治的な意図で、どういった背景のもとにあれがなされていたのかということも歴史的に解明される問題があると思います。何をおいても戦後の民主化の中で日本における労働組合運動の分断、これが大きな役割りがあったと思いますし、当時の朝鮮戦争を初め日本の再軍備という方向の中で、電力における再分割というものが政治的になされていった。また、いまの国鉄が直接、そういった関連は、違う立場から見なければならないかもしれませんけれども、そういった問題もあわせて見る必要があるのではないか、こういうふうに思います。
  73. 中馬弘毅

    ○中馬委員 続いて、同じく遠藤さんにお尋ねします。  政治の駆け引きに利用され、そして政治に食い物にされたと、こうおっしゃっておられましたけれども、だからこそ民営化しなければならないんじゃなかろうか。公社制度というお話も雨宮さんからございましたけれども、公社というもの自体、たとえば専売公社にしても、いま表面的には利益が出ているようでございますけれども、葉たばこの強制買い入れをさせられておって一兆円も葉たばこの在庫がある、こういうことになってくるわけでして、いずれにしてもいまの時代におきましては民営化して、そしてそれぞれのニーズに合った、また、それぞれの企業経営の効率に基づいて行動する、その方が全体的に効率があり、また、民生の安定になりあるいはそれぞれのニーズにこたえ得るサービスになってくるのではないかと思うのですけれども、その点は遠藤参考人はどのようにお考えでございますか。
  74. 遠藤泰三

    遠藤参考人 民営にすれば効率もよく、サービスも行き届くのではないか、こういうふうな考え方もないとは言えませんけれども、そういう点からいけば、現在民営化されている私鉄の関係とは国鉄は根本的に違うと思いますね。日本の場合、北から南まで三千キロにわたって何回か乗りかえなければならない、こういう状況の中に暮らしているわけですが、そういった点から分割し、民営化されていった場合に、全国ダイヤが分断化される、また、運賃にも段差が生まれてくる、地方ローカル線はもちろんですけれども、収支が伴わなければ切られていくという、そういう私鉄では国民はたまったものではないと思うのです。ですから、そういった点からいきまして、全国一元的な交通政策といいましょうか、そういうものを確立していくという立場から、公共交通機関というものを抜本的に見直していくということが必要ではないか。その点からいきましても、たとえば北海道の場合三〇%近くの路線が取り払われようとしているわけです。大正時代に引き戻される、こういう状況にいまあるわけですけれども、それは取っ払うのは簡単ですけれども、しかしそれをまたレールを敷くということは大変な問題が起きてくると思うのですね。ですから、そういった時代に、何といいましてもいまの路線を維持し、発展させる、それが政治の責任ではないのか、また、そういった点で責任を持った財政措置をしてサービスを守っていくというのが本当の意味での政治のあり方ではないか、その点を考えております。
  75. 中馬弘毅

    ○中馬委員 立場が違いますので食い違うことをここで議論するつもりもございませんが、確かにいま国鉄で一生懸命働いていらっしゃいます。しかし、その働いていらっしゃったその成果の配分もなされないあるいは将来に展望もないというままで、本当に国鉄の労働者の方々もお気の毒だという気がいたしております。民営にし、そしてそれぞれの意思が反映されて、その成果が十分労働者の方々にも配分される形の方が私たちはいいと思っていますことを一つつけ加えまして、私の質問を終わらせていただきます。
  76. 原田憲

    原田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。  次回は、明六日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十三分散会