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遠藤参考人 私は、この
法案に反対の
立場から、
立場上現場の声を代表するつもりで
幾つか申し上げたいと思います。
第一点は、この
法案は
国鉄の
再建にとっては全く無縁である、解体構想であるということであります。
この
法案は
臨調答申を尊重してというふうになっており、
臨調答申では、五年以内に七ブロック程度に
分割し、
民営にする、そして最終的に
国鉄は解散する、こういうふうになっております。また、「
分割会社は、私鉄と同様に幅広く
事業活動を行うこととし、
政府規制も私鉄に対する規制の程度とする。」となっておりますように、この
法案の目指すものは、
国民の共有財産である
国鉄を財界の
要求どおり解体処分しようとするものであるという
意味で、むしろ犯罪的な行為と言っていいのではないかと思います。御
承知のように、私鉄は鉄軌道そのものよりも、鉄軌道を呼び水に不動産、デパート、遊園地など、沿線に住民を引きつけ、利潤の対象にしていく企業であります。
国鉄も民間企業のもうけ口の分野に広げていこうという意図があるのではないでしょうか。
財界の
要求に従うというふうに私申し上げましたが、昨年の一月二十五日の日本経済新聞に次のように報道をされております。
臨調の
要請を受けた経団連が、八一年の秋から輸送
委員会で、これは菊地庄次郎さんという日本郵船の会長さんが
委員長ですが、十数回にわたって
検討を重ねて、一月二十六日その素案を
臨調に報告した、こういうように報道しております。この素案が第四部会の部会報告の中に盛り込まれております。財界の意図が全く露骨に示されております。
国鉄は、
日本国有鉄道法第一条で公共の福祉の増進を目的にと明記されておりますように、きわめて
公共性の強い国の
事業で、
国民のものであります。七五年十一月当時、公企体等閣僚協専門懇
意見書というのが出されております。これはスト権問題をめぐりまして出された
意見書でありますけれども、その中に「民間企業において自由
競争を通じて行われる効率性の追求をある程度犠牲にしても、」というふうに言っており、「三公社五現業等の業務のうちの相当部分のものが、
国民・住民の「生きる」権利について不可欠のものであり、あるいは、その
事業を民間で行うことは、この
要請をみたし得ない」、こういうふうに言っておりまして、効率性を犠牲にしてまで
公共性の確保を強調しているわけであります。同じ財界の意向が反映した
二つの文書がこのように矛盾しておるところに多くの問題があると思いますし、理解しがたいと思います。
また、この
法案は
再建と言っていますけれども、
答申は解体処分の後解散となっています。その後何が残るのか、
分割された
民営の私鉄であって
再建された
国鉄ではありません。これは法律によって、あるいは国会という国政の場を通じて、
国民をだますことになるのではないか。
第二点であります。
国鉄の危機の
原因を
国民の前に明確にしていく必要があると思います。
今日
国鉄が陥っている危機の根本
原因は何かという問題について、この
法案においても
臨調答申においてもなぜか避けております。一九五七年から始まった三次にわたる
長期計画、六九年から五次にわたる
再建計画、すべて
政府の決定であります。高度成長、田中内閣時代の列島改造論に
国鉄の設備投資
計画が乗せられ、膨大な借金をしょわされながら、設備投資に大企業が群がっております。もうけをそこから引き出しているわけであります。その証拠と言えると思うのですけれども、
国鉄の主な発注先である大企業からの政治献金が急速に増大してきております。自治省の発表によりますと、七六年から八〇年まで五年間、自民党に対して二十八億円余り、民社党に対して二億円余り、新自由クラブに対して三千六百万円余り、こういう
内容について
国民は疑問を多く持っておりますし、やはりうまみがなければこういう献金はないものと私たちは思います。そしてその上今日、東北・上越
新幹線、成田空港駅あるいは青函トンネル、本四架橋など五千億にも近い
赤字をしょわされようとしております。
答申は破産状態だと指摘していますけれども、一方でこのようなむだと浪費、癒着構造がいまの
国鉄の重大な問題ではないか。
昨年の十一月、
ダイヤ改正が実施されましたが、新造車五百両、数百億円に及ぶ雨ざらしということが報道されております。明年二月、当局は貨物輸送についての
合理化を
計画しております。貨物分野についてはほとんど撤退に等しい、こういう
計画でありますが、四月一日の朝日新聞によりますと、機関車七百両、貨車四万五千両、これはくず鉄になる運命だというふうに報道しております。検修部門についていま部外委託が
労使間で協議が進められているわけですけれども、
国鉄の検修部門に携わる重要な部分について、三万人余りの労働者が働いている職場で、三分の一の一万人余りを部外に委託する、こういう
計画が進んでおります。いま当局の
合理化計画というのは、先に減量
経営ありきという態度でありまして、安全輸送、安全運転を守っていく、そういう点から日夜苦心をして仕事をしている
国鉄労働者にとってはきわめて危惧すべき
事態が生まれてきております。なぜこのような、まだまだ有効に使って
国民の利用しやすい
国鉄にしていくことのできる車両、これを放置して不便な
国鉄にしようとしてきているのか、そこに大きな問題があるのではないでしょうか。
現在、
再建法に基づく
経営改善計画がありますけれども、六十年までに三十五万人
体制にする、こういう
計画になっております。しかし、現実に当局の目安というのは三十五万人を
割り、三十二万人を
割り込む、こういう
方向でいわゆる前倒し前倒しということが当局の口から出てくる、こういった
事態であります。
国鉄から
国民の足としての使命を損なうような、安全運転、安全輸送を損なうようなこういう
計画に対して、
国鉄の労働者、労働組合が
国民的な
立場から断固闘うのは当然であります。
三つ目の問題ですが、
国鉄労働者は、現在こういう困難な
状況の中で
国民的な
立場から真剣に将来について考え、がんばっているということを申し上げたいと思います。
昨年の春から
国鉄労働者攻撃が執拗に展開されました。しかし、これは本質をぼかす意図的なものであったというふうに私たちは思っております。三百職種にわたり、四千五百の
全国の職場で二万一千キロにわたる営業キロ、二万五千本の列車を四十万の
国鉄労働者が、正月もなく、親の死に目にも遭えない、社会的な常識、つき合い、こういうこともがまんしなければならない、子供の入学、一緒に学校に行けない、そういう困難な条件の中で働いているわけであります。いま職場では、労働組合として一切扱わない。職場では長い間の慣行、合意事項というのがあるわけですけれども、全く問答無用式の職場ファッショ的な
事態が生まれております。こういった攻撃と、検修部外委託、貨物縮小、
ローカル線廃止、また、駅の無人化、無料乗車証の廃止、新採ストップ、兼職禁止などの攻撃が、仲裁裁定の不完全実施、共済年金攻撃とともに総攻撃がかかっているのであります。これらの攻撃に対して労働者として、労働組合ならば毅然として闘っていくのが公企体で働く労働者として、
国民的な期待にこたえていく
立場ではないでしょうか。そのことを申し上げておきたいと思います。
次に、四点目に移るわけですが、この
法案は廃案にし、本当の
意味での
再建を
国民的な
立場で行うべきであるということを申し上げたいと思います。
先ほど来申し上げているわけですけれども、今日、
国鉄のこういう危機を迎えている政治的な癒着構造あるいは大企業奉仕型のそういった根本
原因というものを全面的に
国民の前に明らかにする必要があると思います。
二つ目の問題ですが、いま進めております労働組合無視の労務管理、これを直ちに中止させ、そして職場で憲法、労働組合法に基づいた正しい
労使関係というものを
確立をし、公企体で働く、
国鉄で働く労働者が、生活条件、労働条件、権利において、公共機関の
役割りを果たすにふさわしい条件を備えるように、
国民に対して十分
サービスを徹底することのできるような、そういう保障を与える必要があると思います。
三つ目の問題として、その上に立って、真に
国民のための福祉を貫く新しい
国鉄、
国民が便利に、そして正確に、安全である
交通機関として利用できるような、そういう
国鉄に変えていく。大企業奉仕という側面は、今日公企体の場合に強いわけですけれども、日鉄法第一条に掲げられておりますように、そういう
国民福祉の
立場をいま一度見直していく時期に差しかかってきているのではないか。
国鉄は
国民の共有財産であり、効率よく、むだなく、安全で正確で行き届いた
サービスが確保できるような、そうして
全国どこでも公共
交通機関として利用できるような、そういう機関にしていくように私は望みたいと思います。
私たちはこのような
国民的な
要求にこたえて、
国民奉仕の
立場から、
国鉄労働者としてみずから業務の改善に積極的に取り組むと同時に、
国鉄労働者の任務を十分果たしていくような労働条件、生活条件を一体のものとして取り組んでまいりたいと思います。そういう点から、今日起きている
幾つかの
合理化問題につきましても、
国民的な
立場から見てどうなのか、こういう点から一体のものとして私たち取り組んでまいりたいと思います。
今日、日本の経済は、経済大国というふうに言われております。
国民福祉の
一つである
国鉄を
維持できないはずがありません。膨大な軍事費を削減し、大企業奉仕への優遇策を
国民向けに転換していくならば、また、日本の平和と安全、非同盟中立の
立場から日米安保条約を廃棄していく、そういう
方向と一体のものとして私たちは
国鉄の問題があるということを申し上げて、発言にかえたいと思います。