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1982-12-22 第97回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月二十二日(水曜日)    午後一時三分開会     ─────────────    委員異動  十二月二十一日     辞任         補欠選任      伊藤 郁男君     中村 鋭一君      田渕 哲也君     三治 重信君  十二月二十二日     辞任         補欠選任      馬場  富君     中野  明君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 関口 恵造君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 田代富士男君                 沓脱タケ子君                 中村 鋭一君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 岩崎 純三君                 植木 光教君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                茜ケ久保重光君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 山田  譲君                 吉田 正雄君                 大川 清幸君                 太田 淳夫君                 中野 鉄造君                 佐藤 昭夫君                 三治 重信君                 中山 千夏君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣審議官    林  淳司君        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府恩給局長  和田 善一君        警察庁長官    三井  脩君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁装備局長  木下 博生君        経済企画庁調整        局審議官     横溝 雅夫君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        科学技術庁研究        調整局長     加藤 泰丸君        科学技術庁振興        局長       原田  稔君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        環境庁企画調整        局長       正田 泰央君        国土庁長官官房        長        宮繁  護君        国土庁長官官房        審議官      荒井 紀雄君        国土庁計画・調        整局長      白井 和徳君        国土庁水資源局        長        高秀 秀信君        国土庁大都市圏        整備局長     京須  実君        法務省刑事局長  前田  宏君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       岩崎  隆君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省国際金融        局次長      長岡 聰夫君        文部大臣官房長  高石 邦男君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文化庁次長    浦山 太郎君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生省社会局長  金田 一郎君        厚生省児童家庭        局長       正木  馨君        厚生省年金局長  山口新一郎君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        通商産業大臣官        房審議官     野々内 隆君        通商産業省通商        政策局長     中澤 忠義君        通商産業省貿易        局長       福川 伸次君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        中小企業庁長官  神谷 和男君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省航空局長  松井 和治君        労働省労政局長  関  英夫君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        増田 雅一君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小野 幹雄君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    法制局側        法 制 局 長  浅野 一郎君    説明員        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事中村鋭一君を指名いたします。     ─────────────
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 昭和五十七年度一般会計補正予算昭和五十七年度特別会計補正予算の両案を一括して議題とし、これより佐藤昭夫君の質疑を行います。佐藤君。
  5. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表して、日とともに鮮明になってきた中曽根内閣憲法改悪金権腐敗擁護の姿勢、危険な防衛政策臨調路線国民生活の諸問題について質問をいたします。  まず、中曽根総理太平洋戦争に対する認識についてただしたい。  総理は、衆参本会議でのわが党の不破委員長下田議員質問に対し、国際的に侵略であるとの厳しい批判があることは事実だと述べながらも、自分自身考えについてはついに明らかにしなかったのであります。  重ねて質問いたしますが、あなた自身太平洋戦争をどのように考えているのか、はっきりお答え願いたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 太平洋戦争は国内的にも国際的にもはなはだ遺憾な戦争であったと思います。国内的には多くの国民に惨害をもたらしました。また、国際的には近隣諸国その他世界の国々にも迷惑をかけました。そういう意味におきまして、深くこれを反省し、遺憾な戦争であると思って、再びこのようなことを起こさないように戒慎しなければならぬと思っております。
  7. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 遺憾な戦争であったとは繰り返し言われるわけでありますが、私がお尋ねをしておる侵略戦争考えているのかどうか、この点についてなおお答えがございません。お願いします。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう歴史的評価の問題は、これはいろいろな学者や歴史家判定を下すべき問題であると思いますが、ともかく日本行為につきましては、関係各国あるいは世界歴史家等から侵略行為があったと、侵略的戦争であったという判定をわれわれは受けておる。そのことを深く反省をし、またこれを踏まえてわれわれは再出発しなければならない、このように考えておるわけであります。
  9. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうすると、私が尋ねておる中曽根総理あなた自身としては、あの太平洋戦争侵略戦争であったというふうに考えているというふうにはどうしても言えないというわけですね。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま申し上げたとおりであります。
  11. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 わが党は、新しい総理が誕生をするたびに、戦後政治の原点としてこの侵略戦争に対する認識をただしてまいりましたが、だれも明確に答えられた者はありません。その結果が、アメリカ戦争政策への加担、軍国主義復活政治として進んでまいりました。中曽根総理もこの道を一層進めようとすることがこの問答でもいよいよ明白になったわけであります。  そこで、具体的に総理憲法改悪路線内容についてお尋ねをいたします。  あなたの著書、この「自主憲法基本的性格」には、十四日の衆議院予算委員会でわが党の金子書記局長が問題にいたしました徴兵制以外にも、現憲法の根本に反する重大な主張が数多く含まれています。あなたの改憲案では、現憲法第四条の定めを変えて、天皇を元首とし、宣戦、講和の布告、非常事態宣言及び緊急命令の公布を行わせようとしています。これはいまでも正しい主張とお考えですか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず具体的な項目に関する私の具体的見解は申さない方が適当である、差し控えさしていただきたいと申し上げておるとおりであります。  ただ、ここで一般的に申し上げたいのは、人間は進歩発展していくものであります。憲法問題、あるいは国家問題等に関する私の過去の思想的変遷というものを考えてみますと、戦争直後、特にマッカーサー司令部に占領されておった当時、国会議員として復員して出てまいりまして、やや衝動的な面があったように反省しています。私自体昭和二十二年に登院したときには、海軍の軍服を着て襟章を取って出てきた、あるいは陸軍の軍服を着て襟章を取ってきた国会議員もおりました。そういう情勢下でわれわれは国政に参画したというところもあります。そういう面から見ましてもやや衝動的な面があったと、そして一日も早くアメリカ占領軍を帰して独立したいと非常な強い衝動に駆られておったことも事実である。これは戦争に行った兵士としては当然の考えでしょうし、また海外におる、特にシベリアや南方におるわれわれの戦友を一日も早く帰したい、復員させたい、そういう念願で一生懸命当時は努力をしたつもりであります。そういう事態のもとに、私の考え方もいまから反省すると多分に衝動的なものがあったというふうに反省しています。  昭和三十年代になりまして鳩山内閣が成立いたしましたが、あの当座鳩山内閣憲法改正日ソ交渉を中心に選挙をぶちまして大勝をあのころはしたのであります。それは国民の支持があのころあったんでございましょう、あるいはアメリカ占領政策から脱却して自主独立日本へいきたいという、そういう強い国民の要望もあったんでございましょう。その後憲法調査会ができまして、私も調査会委員として勉強さしていただき発言しました。そして昭和三十年代の半ばごろになりますと、私の考えも非常に落ちついてまいりまして、そしてその戦後の十数年の体験を踏まえて、その歴史的事実の上に立って物を考えるようになってきたように思います。言いかえれば、戦後市民社会の岩盤は非常に強く日本に根を張って出てきたと。それは自由を守り、人権を守ろうとする日本人の強い若い時代の、若い人たちの意欲、戦争体験を踏まえた貴重な経験から来た考えであると思います。そういう現実を無視することはできない、そういう考えに立ちまして、私が個人的に意見を一番表明した当時の集大成というようなものは、憲法調査会におきまして最終結論として私が申し上げたのがあの当座の大体の考えを代弁しておるものだと思っております。  それから、さらにまた安保条約、安保問題もあり、あるいは日米安全保障条約自動延長という問題が一九七〇年代に起きてきて……
  13. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと私の質問に直接答えてください。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういういろんな経験を踏まえまして、また自分考えも切磋琢磨していろいろ変化もあり、私から見れば発展もあったと思います。そういうような考え方は、「新しい保守論理」という私が出しました著作の中に、最近の考えはわりあいにおさめられていると思います。それらがいわば前半においては憲法調査会の取りまとめ、後半においては「新しい保守論理」という著書、これらを私の個人的見解として御参考にしていただければありがたいと思う次第でございます。
  15. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 憲法についての総理見解を長々とお述べになりながら、私が尋ねようとしておる点については具体的な見解は差し控えるということでお答えにならないわけでありますが、しかしそうは言われるものの、あなたは先日徴兵制の問題、主張については取り消されたではありませんか。やはりぐあいが悪いという問題については取り消される。そうなりますと、この問題で答弁を避けられるということは一体なぜですか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 徴兵制を否定している考えは、すでに昭和三十年代の憲法調査会の答申、私の最終的発言の中にその意味のことは込められておりますし、あるいは最近出しました「新しい保守論理」という中における憲法論をお読みいただけば、そういうものは否定している文脈になっていると御理解いただけると思います。さっき申し上げましたように、まだ未熟の時代憲法論であったとお考え願いたいと思います。
  17. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 徴兵制主張についてはまことにぐあいが悪い、こういうことで先日取り消しをなさった。ところが、この問題については答弁を最後まで避けられる。これはどうしても私としては理解のできないことです。というよりも、現憲法が前文で「政府行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」というふうに定め、国会国政最高機関と定めているわけでありますが、これに反して明治憲法と同様に、天皇の名による政府非常事態宣言緊急命令を定めることも、あなたはいまでも正しいと考えているんじゃないかというふうに私は判断せざるを得ない、そういうふうに判断してもいいんですか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昔着ておりまして、もう脱いで蔵の中へしまってある着物を引っ張り出して議論されるというよりも、最近の新しい着物、あるいは脱ぎかかっているかもしれませんが、そういう新しい着物をひとつぜひ御検討を願いたいと思うのであります。
  19. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そう言われるのであれば、もう捨てた、捨てた着物だと言うのであれば、それについても取り消すというふうになぜ明言できないのですか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新しい本が出れば、違っているところは前のものが取り消されたものだと御理解していただいて結構であります。
  21. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 憲法七十六条はどういうふうに書いていますか。総理
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 司法権独立をうたった条文であります。つまり軍事裁判所特別裁判所を設けないという条文でございます。
  23. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなたのこの著書による改憲案では軍事裁判所を設置することとしています。いまもその考えでしょうか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、古い、もうお蔵にしまってある着物を一々論ぜられてもはなはだ迷惑であります。
  25. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなたの改憲案では参議院をどういうふうに定めていますか。大いに関係があります。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もう少し新しい、私が書いた本では、一番新しいものをお考え、御引用なさるとありがたいと思っております。古いものは新しいものによって更新されて、人間は進歩していくものだということを御理解願いたいと思います。
  27. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理の感想を伺っているんじゃありません。ここで参議院をどういうふうにあなたはお書きになっていますかと尋ねています。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げますように、古いものを引っ張り出していつまでも論ぜられるというと、共産党はこの憲法に反対した、この憲法を決めるときに四人の共産党員野坂参三氏以下が反対した、そういうこともいまここで言ったら、あなた迷惑でしょう。昔の、そういう過ぎ去って消したことは消したものとしてお使い願いたいと思います。
  29. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そういう問題のすりかえによってこの問答が進むものじゃありませんよ。このあなたの著書には、参議院については国民選挙によらない推薦制を導入をするんだというふうに書いてあるじゃありませんか。自分の書いたことですから記憶があるでしょう、どうですか。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう昔の脱ぎ去ったものをいま取り上げられることは非科学的だと私は思うんです。アメリカ帝国主義を非常に共産党は攻撃されておるけれども、徳田球一君はマッカーサー司令部の前へ行って、マッカーサー元帥万歳と唱えて謳歌したこともあるんです。そういうことをいま言われても迷惑でしょう。お互いにそういうところは友情を持ってつき合いたいと思います。
  31. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまのお聞きになったような一連の答弁を通して、古い着物だとかなんとか、そういう言葉を使いながら、ぐあいが悪いというのであれば、二度と着ないというのであれば取り消すというふうにこの席上ではっきり言ったらいいのにそれを言わない、このことは、あなたが根底的に重大な憲法改悪思想の持ち主だということをみずから告白をしているものだと思うんです。しかもあなたは、総理の在任中は見解を明らかにしないとして、きばを隠すふりをしながらみずから改憲論者だと公言し、閣僚などの改憲発言は自由だとして、実際は憲法改悪の方向をあふり推進している。私は、こうしたあなたの態度を強く糾弾をするものであります。  次に、政治倫理問題について質問をいたします。  そもそも国会議員外国から賄賂をもらうこと自体総理としてはどう考えておりますか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 賄賂をもらうことは、外国であろうが国内であろうが悪いことであります。
  33. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理は、昭和五十一年八月十六日、田中角榮外為法違反受託収賄罪で起訴をされた際、当時自民党幹事長として談話を発表されていますが、その内容を御記憶ですか。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大分前のことでありますから文章はよく覚えておりませんが、はなはだ遺憾である、そういう趣旨のことを言ったように記憶しております。
  35. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 はなはだ遺憾であるという、そういう言葉ではなくて、たとえば毎日新聞、「誠に不幸な結果になって残念だ。一日も早く無実が晴れる日を心の中で祈っている。」、朝日新聞、「一日も早くそういう事実はなかったとして、疑いが晴れるのを心に祈っている。」と、いわば田中無罪を願っているという談話を発表されているわけでありますが、この考え方はいまも変わりありませんか。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) はなはだ遺憾であるということはたしか言っているように思います。また、不幸な事件であるということも言っていると思います。しかし、当時自民党幹事長といたしまして、自民党の議員――私の場合は特に同期生でございますが、そういう不幸なことに遭遇したということははなはだ残念であって、それが一日も無罪であることを願っていると言うのは人間の自然の感情ではないかと思うのです。
  37. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私が尋ねているのは、その考え方はいまも同じ考えですかと、こう尋ねているのです。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はいま内閣総理大臣の地位にありまして、自民党幹事長とはステータスが、地位が違います。そして日本は三権分立の国でございますから、司法権に介入することは厳に戒めておかなければならぬと思っております。
  39. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理という地位にある現在、中曽根康弘としてはどう思っているかということがなぜ明らかにできないのですか。ですから、あなたの今回の組閣は田中擁護人事だと、こういう批判が集中をしてくるのは当然じゃありませんか。  改めて聞きますが、総理は検察を信頼していますか。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 信頼して、よくやっていると思います。
  41. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 当然のことだと思うんです。国民が願う社会的正義確立のため厳正な審判を期待していると、ここで明言をしていただきたいと思います。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、行政府の長として、三権分立を侵そうという意思はありません。
  43. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまの答弁はしかと承っておきましょう。  次に、総理自身にかかわる金権腐敗の重大な問題である殖産住宅五億円献金疑惑について質問をいたします。  総理は、本会議でのわが党の質問に対し、秘書の名前を勝手に使われたとか、金銭授受があったわけではない、こういう答弁をされておりますが、とんでもないことであります。昭和四十七年十月六日、殖産住宅の東郷氏から、あなたの秘書であった上和田氏名義の口座に、株価操作で得た利ざやから五億円が一たんは振り込まれたということはまぎれもない事実ではありませんか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう事実は後で知りました。
  45. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次の問題は、あなたが国会で証言し、または答弁をしたように、これが東郷氏の独断で勝手にやったことなのか、それともあなたと相談の上、あなたの指示で行ったことなのかと、こういう問題であります。  そこで、最高裁にお尋ねをいたしますが、殖産住宅事件の一審及び控訴審判決は、いま私が触れておるこの点についてはどういう事実認定をしているでしょうか。
  46. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいまお尋ねの件は、被告人東郷民安に関します所得税法違反事件のことであろうかと思います。  その事件の一審、二審いずれもこの点に関しましてはほぼ認定が同じでございますが、多少、用語と申しますか、表現が違う点がございますので、二審の判決に従って概略要旨を申し上げたいと思います。  被告人は、殖産住宅の代表取締役社長の職にあった者でありますが、旧制静岡高校時代の同級生であり、旧知の間柄にある中曽根康弘代議士から、「総裁選に出馬するためには二五億円位必要になると思うので、殖産住宅の株の公開の機会を利用させてほしい。」旨の依頼を受けていたところ、殖産住宅が株式を上場、公開するに際して増資新株九百四十万株を発行することになっていたことから、同人の希望をかなえてやろうという気持ちになって、昭和四十七年の八月ごろに、新日本証券の専務や野村証券の社長らに相談を持ちかけて、その後野村証券の企業部長らの指導によって、野村証券が買い取り引き受けをする一般公募株二百十万株のうち百万株を殖産住宅の親引け株の引き受けの形をとって、殖産住宅の関連会社十社を選定して、その名義で増資新株のうち百万株を引き受けることとし、百万株の引き受け代金などを十月の二日の上場日にこの百万株のほかに二十万株を値つけ株として放出して、この売却代金から銀行の借入金を返済し、その後中曽根代議士に対して、五億円ぐらいお渡しできそうだと話し、その後同人の指示で同人の秘書である上和田義彦名義で三井銀行の預金口座を設定して五億円を入金し、殖産住宅の秘書室長がこの通帳と印鑑を保管した。  その後十一月の十三日ごろに、同月十八日号の週刊新潮に、「絶対騰る要素がないのに騰つている黒い政治銘柄リスト」と題して、この殖産住宅の上場に絡んで一日で二十五億円をP代議士がもうけたという記事が掲載されたことを知って、中曽根代議士と話し合いの上、同人との話は白紙に戻すこととして、預金は翌四十八年の一月八日に解約して、元利合計五億二百二十万一千九百九十八円が被告人の三井銀行口座に戻された。  こういう事実を認定しております。
  47. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 長い引用ではありましたけれども、ただいまありましたように、中曽根氏と相談の上振り込んだというふうに認定をしていることは明白であります。  そこで、昭和五十二年五月の十一日、衆議院ロ特委での東郷氏の証言もいまの判決の事実認定と同じである。こうしますと、東郷氏が勝手にやったと言っているのは中曽根総理あなただけ。あなたの証言は偽証の疑いが濃厚でありますが、それとも、あなたは依然として東郷氏がうそを言っているというふうに言い張られるのでしょうか。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この件は私が国会で証言したとおりで、その事実は、いまのようなことはございません。  前にも申し上げましたように、東郷君と私は旧制静岡高等学校の同級生でありまして、非常に仲のいい間でありました。同級生の会があるたびにみんなから中曽根を応援しろと東郷君が言われておって、当時東郷君は私を余り応援しておりませんでした。野田卯一代議士を応援しておった。そこで、あるときに、木部代議士が政務次官になったお祝いの会が「一条」というところでありまして、大ぜい集まってお祝いしたときに、東郷君も来ましたときに、ともかく、みんなもああ言うから応援してくれ、一朝有事の際は頼む、そういう話をしたのであります。一朝有事とはと後で議院で聞かれましたけれども、それは解散とか、あるいは新党運動とか、あるいは総裁公選とか、そういうことを意味していたと思うと、そう言っておきました。  その後、上場するという話がありましたときに、私のある友人から、その殖産の株を買いたいと、そういう人がいるが東郷君に聞いてくれと、そう言われまして、幾らぐらいだと言ったら、二十億でも三十億でも多々ますます弁ずだと、そう言われまして、そのことを東郷君に伝えたのです。東郷君はしばらく考えて、それはだれだという話で、これこれの人間だと、そう言ったら、それはとんでもない、自分の会社をねらっているやつだ、そういうことでその話はおじゃんになったわけであります。  その後東郷君は、株式上場に当たりまして、われわれ旧制静高の同級生の名義を相当借りまして、その名前で株式の売買を相当やったと思います。私の場合は、私の名義を使わないで、うちの秘書がそういうふうに言われまして、われわれの同級生がそう言うのならいいでしょう、そういうので名義をお貸しした。  それで、その後どういうふうになったか知りませんが、そのうちの私書に対して、その預金か何かがあるから承知しろとかいう話があったとかないとか言っていました。しかし、うちの秘書は貯金通帳も見なければ判こも見ないで、自由におつくりになって、いざというときにあるいは私に政治献金するつもりでおつくりになったのかもしれません。しかし、ともかくそういう事実があったのでありまして、その金はいまのお話のように御破算になりまして、私のところにはもちろん来なかったのでございます。  以上が事実でございまして、この件については私は検事さんから聞かれたこともなければ、裁判所へ行って事情を聞かれたこともございません。私に関する限りの事実は以上のことでございます。
  49. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなたが事情聴取をされたことはないというふうに言われておりますが、あなたと同じ立場の秘書の上和田氏自身は事情聴取をされておるというのははっきりしている。ですから、いまの、あなたいろいろ言われましたけれども、判決の事実認定とは明白に違うわけであります。  参議院法制局長に聞きますが、議院証言法の偽証の公訴時効は何年ですか。
  50. 浅野一郎

    ○法制局長(浅野一郎君) 議院証言法上の偽証罪の公訴の時効は七年でございます。
  51. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まだ時効ではないと。  法制局長、もう一つお尋ねします。  証言法第八条は偽証告発についてどう定めていますか。
  52. 浅野一郎

    ○法制局長(浅野一郎君) 議院証言法八条は、証人が偽証の罪を犯したと認められるときは、議院または委員会等は告発しなければならないと、こういうふうに規定しております。
  53. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理、あなたの御発言のとおりであるならば、東郷氏を偽証で告発をしなくちゃならぬということになると思うんですが、告発を国会に要請をされるお考えはありますか。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 旧制高校の友人というものは青春時代をともに過ごした一番親しみ深い友人同士でありまして、そういう友人の関係というものはお互いに大事にし合っておるのであります。そういう考えはございません。
  55. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなたは告発を要請する自信がないんじゃないですか。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 意思がないのであります。
  57. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 告発ができないのなら、対決尋問に応じてもらいたいと思いますが、どうですか。
  58. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうことを行う意思もございません。
  59. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どちらかが偽証であるのにその決着をつけないというのは、国会としてのこれは怠慢ということになります。対決尋問にどうしても応じてもらう必要があると思います。告発もしない、対決尋問にも応じないというのは、みずからの偽証の露呈をあなたが恐れておるというふうに国民はとらざるを得ない。そういうことでいいんですか。
  60. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事実は私が衆議院の証言で申したとおりでございます。そのように御了承願います。
  61. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 国会の責務に照らして真相を明確にするために、中曽根氏と東郷氏を証人喚問することを私は要求いたしたいと思います。
  62. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 後刻理事会において協議をさせていただきます。
  63. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に、中曽根総理防衛政策について質問をいたしますが、その前に、総理外国人特派員協会会員に配布をされた「私の政治経歴」なるパンフレットに関連して、総理の対米姿勢について質問をいたします。  総理は、ナサニエル・B・セイヤーという人物を御存じですか。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカ大使館に在勤したころからよく知っておりまして、いま彼はアメリカの大学の先生をしております。
  65. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 セイヤー氏とは、いまの「私の政治経歴」なるパンフレットの英文翻訳の一部と編集をしてもらった人ではないでしょうか。
  66. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本人が翻訳した英文はアメリカ人にわからないところや何かありますから、それを直してもらった一人であります。
  67. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 このパンフレットは、あなたの改憲志向を明白に述べたもので、あなたが総理に指名された十一月の二十六日、外国人特派員協会に配布したその以前にパンフレットを配布したところがあるんじゃないでしょうか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) セイヤーさんにも送ったと思いますし、あるいはごく親しい、外へ出さないという条件で、人に二、三お渡ししたことはあるいはあるかもしれません。
  69. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ホワイトハウスの国家安全保障会議――NSC、それとアメリカ国務省に配布したんじゃありませんか。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がそういうことをしたことはございません。
  71. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 このパンフレットを十月、総裁予備選挙のさなかセイヤー氏と協議して配布したんじゃありませんか。十月に配布したんじゃありませんか。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その文書は総裁に就任したそのときに出そうと、そういうことでエンバーゴーをかけて、たしかセイヤー君には一部か二部送ったと思っております。
  73. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いま私が幾つかお尋ねをしたこれら一連の事実は、すべてがわが党がセイヤー氏と独自にインタビューをして、彼自身言葉によって確認をした事柄であります。セイヤー氏は総理と協議して配布したと言っておりますが、しかも十月の段階で、総裁予備選の時期になぜ国家安全保障会議とか、国務省に配布をしたのですか、その目的は何ですか。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) セイヤーさんが何をしたか私よく知りません。しかし、セイヤーさんには英語を直してもらった、そういう人でありますから、最終案はこういうふうになりましたと、そういうのでお送りしたことはあり得ると思います。それ以上相手が何をしたか私は知りませんが、この文書は総裁に就任したときに出しますと、そういうことで相手には話していたと確信しております。
  75. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 セイヤー氏は私どもに、総裁予備選にプラスになるだろうと、こう思ってあなたと協議をしてこのパンフレットを配ったと、こう語っておるわけでありますが、それはあなたが次期総理・総裁としてレーガン政権のお墨つきをもらおうと、こういう対米支持工作では、それが目的であったんじゃないですか。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、その文書をなぜ用意したかといいますと、アメリカあるいは在日特派員の一部には、私に対する間違った、予断を持ったり偏見を持っている人が一部あったわけです。軍国主義者であるとか、核兵器保有論者であるとか、極端な軍備増強論者であるとか、あるいはドゴール主義者、ドゴリストであるとか、そういうような間違った偏見がありましたから、それは払拭する必要があると、そう思ってそういうものはかねて用意しておったのであります。ところが、急に鈴木さんがおやめになりまして、正式のものをつくる時間がなかった。それでいままで用意しておったその素案の素案を急遽使わなきゃならぬということになって、それは英語を知っているアメリカ人に直してもらわないと、日本人の英語ではいかぬと、そういうので急に直していただいたということであります。その趣旨は、先ほど申し上げましたように、ここにおるプレスクラブの諸君、在日外国特派員の皆様方にお配りをして、そうして偏見を直してもらおうと、自分は過去こういうこと、こういうことを言ったと、それはこういう本に載っています、こういうときの演説に載っていますと、そういう出典を全部明らかにして、日本の防衛問題、あるいは憲法問題、あるいは対米関係、あるいは中近東、あるいは日本の重要な政策に関する私の考え方、核拡散防止条約について自分はどういう態度を初め、終わりとってきたかと、そういうことを具体的に説明をして、外人特派員に正しい認識を得ていただこうというのでつくったものでございまして、アメリカ政府に取り入ろうなんて、そんなけちな考えでつくったものではありません。
  77. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなたは答弁をあいまいにされておりますが、注目すべきことは、総理のこのパンフレットが国務省などへ配布された。それにこたえるかのようにシュルツ国務長官が、日本総理防衛庁長官をやった人がいいと、こういうことを日本の財界人などにも述べて、四人の中から中曽根支持を打ち出したのであります。セイヤー氏もこのパンフレットがシュースミスを通してシュルツへ渡ったというふうに言っています。総理のねらいはやっぱりレーガン政権のこうした支持獲得にあったんではありませんか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの話は初耳でありまして、そんなことがあったんですか。
  79. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 本人がそのように語っている。  さらに聞きますが、あなたのパンフレットの編集配布役を務めたセイヤー氏はどんな経歴の人ですか、よく御存じの模様ですが。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 彼は在日アメリカ大使館に長い間勤務しておりまして、私が青年将校と言われた時代からよくつき合っておりました。ずっとつき合いをしてきた者であります。彼は大体民主党員でありまして、共和党員ではないのです。しかし、非常に顔の広い、また日本語も非常にうまい日本の裏表を実によく知っておる人でありました。たしかカーター政権、民主党政権になりましてCIAに入って、極東関係を担当していた人だと聞いてもおりましたし、本人もそう言っておりました。その後共和党政権になって、やめてアメリカの大学の教授になって国際関係をやっておると、そういう方であります。
  81. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと答弁聞き漏らしましたが、CIAに関係のあった人ということですか。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 関係のあったんじゃなくてCIAだったんです。カーター政権のもとにCIAの一つのポストを得て極東関係の仕事をしていたと彼は私に言っておりましたし、そうだと思います。
  83. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いよいよ事柄は重大になってきたと思います。私どももセイヤー氏に直接会って聞いていまのような内容を確かめておりますし、とにかくこの方はずっと一貫した諜報部員であります。アメリカの陸軍士官学校を卒業してから、陸軍の諜報部隊CICに属す国務省の特別情報官、そしていまありましたように、一九六二年から六五年までアメリカの情報庁、そこのプレス担当官として東京に配属をされ、七七年から七九年NSC、さっき言いました安全保障会議、そのもとのインテリジェンス・コミュニティ、すなわちCIA、NSA、INR、DID――DIDというのは国防省の情報担当局、前のは国務省、こういう情報関係を統括をするその東アジア地域の責任者を務めておったわけであります。日本の首相がCIAとも関係の深い人物というよりは、あなたの言葉によればCIAそのものであったその人物を使って、まずアメリカ自分の売り込みを図る、これは一体何たることかというふうに私は言わざるを得ません。この一言をもってしても、総理の対米追随思想が浮き彫りになってきたことと私は思うんであります。  さて、このことを前提にして私は防衛政策について質問をいたしますが、最近一連のアメリカ高官が日本に対して非核三原則、専守防衛方針、武器禁輸三原則等の転換を求める発言を行っております。また二十一日にはアメリカの上院本会議、ここが日本の軍事費増と極東での役割り強化を求める決議を行いました。これに呼応するかのように中曽根総理は新年のアメリカ向けテレビの録画撮りで、われわれは戦後の困難な時代アメリカから助けられたと、アメリカの困難をやわらげるためにいまやわれわれが役割りを果たすときだと述べているのであります。歴代総理の中で最も早く一月に訪米するあなたは、これらの要求に積極的にこたえていこうと、こういう態度なのですか。
  84. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は最近における日米関係を一番憂慮している一人でございます。ここ一年近くの間、日米関係にはややもすると亀裂が深まっていく印象を持っておりました。これは日本人に対する不信感、あるいは日本政治家に対する不信感も片方にはあるように見受けられましたし、また日本側からすれば、アメリカは無理難題を言う国だと、何でもアメリカ全体が合唱して日本に圧力を加えていると、そういう感じを日本人は片方でまた持っております。こういう状態がこのまま続いていくというと、太平洋は風波が強くなってきまして、日米両国、ひいては世界の平和や経済の発展に支障を来す重大な時期にいま来ていると思っておるのであります。これを両方の努力によって速やかに解決したい。何としても日米関係を円滑に、順調に、そして提携を強くしていくということが日本の国策の一番重要なポイントにあると私は考えておりました。この日米関係がぐらぐらで亀裂が生じているような状態では、これは自由世界全体が危機に陥る危険性もございます。何としても、ヨーロッパと日本アメリカというものが、言いかえれば自由世界の三本の大黒柱である。いまヨーロッパとアメリカの間は必ずしもよくありません。また日本とヨーロッパの関係も余りよくない。ここで日本アメリカ関係が悪くなったら自由世界はどうなるか。あなた方共産圏に志向している人とわれわれとは立場が根本的に違うのであります。そういう点からいたしましても、この間の自民党の総裁予備選挙のときには、日米関係の相互の信頼関係を強める、日米関係をさらに改善、強化するということを私は党員の皆さんにお訴えをし、テレビでも国民の皆さんにも申し上げたのであります。それは本当に憂慮しているからであります。  アメリカの上院が全会一致で日本に対して防衛問題に対する決議をいたしましたが、こんなことはいままで例がないことであります。それはそれなりにわれわれはやはりまじめに受け取らなければならない。あの決議をやるについては、背景にはいろいろなものがあると思います。あると思いますけれども、ここ一年間の日米関係の連続的な仕事の上に判定してみますというと、これは両方の努力で打開しなければならぬ重大なときに来ていると思っておるわけであります。そういう考えに立ちまして、アメリカへできるだけ早く行って、レーガン大統領との間にそういう基本的な話し合いをして、そして太平洋だけは平和な、そして友情に満ちた海にしておこうではないかと、また協力してECとの関係もお互い打開していこうではないかと。自由世界の三本の大黒柱がぐらぐらになったら、世界はますます暗たんたるものになり、経済も不況が深刻化して、いまのようなこの相互法案あるいはローカルコンテンツ法案というような利己主義的な法案を各国が用意して実行していけば、世界は大不況になることは明らかであります。これは共産圏に乗ぜられる最大のウイークポイントであると私は考えておるわけであります。そういう考えに立ちまして、真剣に日米関係を憂えて、これを両方の話し合いによって打開していきたいと。何もアメリカに譲るというようなことばかり考えているわけじゃない。向こうの合理的な話には耳を傾ける、しかし、こちらの事情やこちらの主張は向こうにも聞いてもらう、それが自由主義の間の仁義であります。そういうことがあることが自由主義の強みであると。これだけ日本が経済大国になりまして、世界の経済大国であるアメリカとの間に問題がないということはあり得ないんです。必ず問題はあり得る。それをいかに両方が話し合いで解決する方法を持つかということに自由主義陣営の強みがあるのでありまして、それを実践していこうと考えておるのであります。
  85. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 仁義が外交政策かと言わざるを得ないわけでありますが、日米関係円滑化と称しつつ、アメリカの利益のために日本国民の命も生活、これもささげていこうというんじゃないかというふうに思わざるを得ないのでありますが、具体的に一つ一つ明らかにしていきましょう。  総理が七〇年、防衛庁長官として訪米をしたとき、リエントリー、核再持ち込みは事前協議事項として留保するという発言をなさったことは事実ですか。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その事実はありません。それはレアード国防長官と私との対談の中で、その当時秘書官かだれかがつくったメモの中にあったかどうか知りませんが、それを御引用なすって衆議院でも共産党の方が質問なさいましたが、レアード国防長官と私との話し合いは、一つは沖縄返還の問題であったのです。当時は核抜き返還をアメリカは否定しておりました。レアード長官も核抜きなんかとてもできないと言っておったのです。それに対して、私はどうしても核抜きで沖縄は返してもらいたい。核抜きで返さないというならば意味をなさない。これは日本国民にとっては最大重大な関心事であるので、それだけはぜひ実現してもらわなければ日米関係が怪しくなる、日米関係のためにもならぬと、そういうことで核抜き返還を強く国防長官に要請をいたしました。それからあとは日本の防衛問題、日米関係の問題等についていろいろ話をしたのであります。
  87. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そのような発言をした事実はないというふうにおっしゃられようとも、本日私が資料として配布をしておりますように、マル秘資料ということでありますが、あなたの名前によるこの報告書の中にはっきり記載をされておるわけであります。総理は非核三原則を守るというふうに言っておられますが、今日日本への核持ち込みの新しい危険が迫っています。アメリカはB52爆撃機への核巡航ミサイル装備を一九八二年から九〇年にかけて進めようとしておりますし、海上発射核巡航ミサイル、トマホーク、これを一九八四年に太平洋艦隊、第七艦隊へ配備しようとしております。総理は一月の訪米に当たって、これら核積載機、核積載艦船の領海、領空通過、一時寄港などによる核持ち込みも一切認めないというふうに明言し通してきますか。
  88. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ここで何回も申し上げますように、非核三原則を守っていく、核の持ち込みというものは事前協議の対象になっておる。もし相談を受けた場合には断わると、そういうことを申し上げておりますが、そのとおりであります。
  89. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そのように必ず事前協議があるというふうにおっしゃっても、現に昨年ライシャワーやラロック氏が、一時寄港とか、一時通過というのは、事前協議の対象とはアメリカ考えてないというふうに発言をして、あれだけ大問題になったじゃありませんか。核積載の疑わしきは断じて入れない、こういうことを新しい原則としてぜひ打ち立ててもらいたいというふうに思うのですが、どうですか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げたとおりでございまして、一応御意見として承っておきます。
  91. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理が非核三原則を守ると言われても、国民がさらに不安を抱きますのは、あなたがアメリカの核先制使用を認める態度を早くからとってきたということだからであります。先ほど挙げました、きょうも資料のもう一つに入れておりますように、七〇年の中曽根訪米報告書、その中にレアード国防長官に対して「日本に対する如何なる攻撃にも核兵器を含む兵器をもって、米国が守ると約束したことは、現在でも有効であるか。」と、あなたから確認を求めたことが記載をされているのでありますが、これは事実ですか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは質問の形、内容はちょっと違いますが、そういう事実はあったのです。と申しますのは、日米安保条約のもとにおきまして、われわれは核兵器は持たない。しかし、アメリカの核の傘のもとにあって、そして日本の防衛のためにアメリカの力をかりると、そういう基本原則で日米間話し合いができ、防衛政策が進められておるわけであります。そこで、日本侵略があった場合に、アメリカは本当に正直に、文字通り日本を守るのかということは確認しておく必要がある。その話を私がしましたときに、彼は、あらゆる手段をもって日本を守りますと、約束は実行いたしますとこう言った。あらゆる手段をもってという言葉は、英文ではバイ・オール・ミーンズという言葉を使ったと申し上げております。その中には、核兵器を使う場合もあり得ると、日本を守るためには。そういう了解であると考えております。
  93. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 これはいよいよ重大だと思います。公然とあなたはそのような発言をしたというふうにこの国会の席上で申されるわけでありますが、日本防衛と称してアメリカの核兵器使用を認める、すなわち新たな核戦争への共犯者、推進者となることではありませんか、それは。あえてその道を中曽根総理は進もうというわけでありますか。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もう防衛論争の中におきましては、われわれは抑止論の立場をとっておるんです。ソ連が強大なICBMを持ち、核兵器を持っております。一方、やむを得ずアメリカの方も核兵器を開発して、クルーズミサイル、そういうようなものまでやらなきゃならぬ、あるいはMX、B1というような開発までやらざるを得ない。ソ連に追いつこうという努力をしておる。これはその力が均衡して戦争を起こさない、そういうためにやっておるんでしょう。  そこで、均衡したら、両方減らしていこうと、十あるものは五に減らしていこうと、減らすについては、実際減らしたか減らさないか確かめなきゃわからない。だから検証させようと、現場へ行って確認させようと、アメリカ側はそういうことを言って、その検証を現場へ行って確認することを求めておるが、どうもソ連の方がそれに賛成しないのがこの問題のいままでの流れのようです。  実際、本当の意味で軍縮やろうとしたら、手のうちを両方が見せ合うことが一番大事なことであって、それはその相手の国の人に中を見せるということが一番正直な、安心のいくやり方じゃないでしょうか。それを片っ方――両方が隠しておきながら、減らせ減らせと言ったって信用できませんね、そういうのがアメリカ側の態度であり、われわれはそれを支持しておるのであります。だから、口先だけで減らそう減らそうと言ったって平和は生まれるものじゃない。実際にそういう事態を生み出すような方法を編み出すということは大事であると考えておるんです。
  95. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 戦争防止のための核抑止政策だというふうにおっしゃろうとも、それならば絶対に核兵器を使わないというこのことが断言できるのでしょうか。ボタンを押すのはアメリカではありませんか。そのような危険な論をもって、核兵器の重大な惨禍を体験した唯一の被爆国の首相でありながら、今度は新しい核戦争の道へどんどんと突き進んでいくその放火者になろうと、こういうようなことがどうして許されると思いますか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は、核兵器については一番鋭敏な、敏感な国です。広島、長崎の悲惨な体験を持っている国民であります。われわれが一番それは知っておる。この悲惨な戦争はどうしても回避する努力を全力をふるってやらなければならぬと思っているのです。しかし、そのような事態がどうしてつくれるかということを考えてみると、もうすでに持っているということは、両方とも厳然たる事実です。この持っているものをどうするかと、そういう意味においてその具体的方法を両方が模索し合い、あるいは国連軍縮会議を何回か開きまして、その方法を世界じゅうが模索し合っておるのであります。しかし、その方法については納得のいく方法でなければ危ないと、そうも考えておるわけであります。私たちは納得のいく確実な方法を一歩一歩つくり出していこうと、そういう考えに立って、口先だけで宣伝したり演説するという態度を、現実的なものと考えてはいないのであります。
  97. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 核抑止論を幾ら繰り返されようとも、国民はそんな論に賛成できるはずがありません。核兵器使用のボタンを押すのはアメリカじゃありませんか、どうですか。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカじゃありませんかとお聞きになる独断がどこから出てくるのだろうか。アメリカも使いたくないと、ソ連も使いたくないと、実際そうでしょう。レーガンさんだって、アンドロポフさんだって、核兵器を使いたいと思っているような政治家は世界に一人もいないと思いますよ。本当にみんな使いたくないと思っているのです。だから抑制されていままで使わないのじゃないですか。この使いたくないという気持ちが一番崇高なんです。この気持ちをどうして保障していくかという具体的方法を私たちは模索しなけりゃならぬのであります。
  99. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ソ連が使うかもしれないという、そういう言い方で問題の焦点をそらそうとしておられるわけでありますが、言うまでもなくわれわれはどのような国の核兵器使用にも断固として反対をしているわけであります。問題はあなたがアメリカの核兵器使用に対してこれを認める、この態度をとっていることを問題にしているわけであります。このような態度をどうしても撤回をしてもらいたいというふうに思うのですが、どうですか。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あなたは何か誤解していらっしゃるように思うのです。アメリカの大統領は核兵器を使用したがっているように受け取られるのだけれども、とんでもない話でありまして、これはアメリカのレーガンさんも、ソ連のアンドロポフさんも、核兵器は使いたくないと本当に心から念じていると思っておる。世界の首脳部の中で核兵器を使いたいと思っている人は一人もいないでしょう。そんなばかな人類じゃないはずであります。だから両方使いたくない、回避したい、みんな切に願っているからこそ軍縮交渉を行い、あるいはSTARTという戦略核兵器制限交渉も行おうとしておるわけなのであります。この善意をお互いが信じ合って、そうしてその具体的な方法を、安心のできる方法をつかみ出すというのが誠実なやり方だと、それを申し上げておるのであります。
  101. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 角度を変えて質問をいたしますが、五月二十八日の当院における第二回国連軍縮特別総会に関する決議、御存じと思いますが、そこでは核兵器の使用禁止についてどのように決めていますか、この決議では。
  102. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  ただいま委員からお話のございましたように、参議院におきまして五月二十八日に第二回国際連合軍縮特別総会に関する決議が採択されております。その中で、核兵器に関しまして次のように本院はお定めになっております。 一 人頭共通の崇高な目標である世界の恒久平和と安全に到達するため、被爆国日本国民の悲願である核兵器の廃絶を求め、すべての核兵器保有国に対し全面完全軍縮の一環として、核兵器の製造、実験、貯蔵、使用の禁止をめざし、特に、核兵器が二度と使われることのないよう実効ある国際的措置をとることを強く訴えること。 でございます。
  103. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理、ただいまもありましたように、「特に、核兵器が二度と使われることのないよう実効ある国際的措置をとることを強く訴えること。」、政府はこの点について「誠実に努力するよう要請する。」、こういう参議院の決議であります。にもかかわらず、今月十三日の国連本会議での核兵器使用禁止条約に関する決議案、これに日本政府が賛成をしなかったのは国会決議違反じゃありませんか、総理に。
  104. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  実効ある国際的措置という意味合いは、政府といたしましては具体的な裏づけがあるということでございまして、これはすでに前国会におきまして当時の総理からも御説明がございましたように、たとえば米ソ間の軍縮交渉を積極的に推進する、あるいは完全な核実験の禁止を行う、あるいは核不拡散条約の体制の強化を図る、核原材料の生産停止を図る、こういった具体的な措置を一つ一つ積み重ねるということが実効ある国際的措置であるというふうに私どもは理解させていただいております。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 再び使われないようにするということと、実効ある国際的措置ということがやはり大事なポイントであると思います。いま国際連合局長が申し上げたとおりです。
  106. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 冗談じゃないですよ。そういった国会の決議について、外務省とか総理とか、そういう政府の勝手な解釈を国会として許すものでは断じてありません。どのような理由にせよ核兵器の使用は認めない、断固反対する、こういうことを本日国民の前にはっきり明言をしていただきたいと思いますが、どうですか。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会の決議は尊重してまいりたいと思いますし、核兵器というものは地球上からぜひ廃絶したいと思っております。その具体的方法が着実に進むように私たちも努力してまいりたいと思います。
  108. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に人勧問題について質問をいたします。  総理は、思いやりの政治なるものを盛んに唱えていますが、一体だれにどのような思いやりをするのか、まずお尋ねします。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全国民の皆様に対して、また全世界国民の皆様に対して、特にLDCや、あるいは飢餓で悩むアフリカその他の諸国民の皆様に対して、私たちは人類の一員として思いやりの気持ちで相臨みたいと思っております。
  110. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いま一番思いやりが必要なのはお年寄り、障害者、母子家庭など社会的援助が必要な人々だと私は考えるのでありますが、総理はどうでしょうか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 社会の弱者と言われる方々に対して特に心がけるということは大切だと思います。
  112. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その人たちがいま一番望んでいるのは、来年はせめて年金や恩給の引き上げだけでも例年のようにやってほしいということだと思います。ところが、総理は人勧凍結とともに年金、恩給も凍結だとしている。お年寄りに物価が上がった分だけ生活を切り詰めなさいと、こういうふうに言うつもりですか。
  113. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) たびたび申し上げますように、恩給はこれは公務員のベースアップ、これに準拠して一年おくれというような従来ともにそういう慣例があります。年金はこれは物価上昇率にスライドするわけでありますが、これが五%を上回った場合と、これは法律上そうなっておりますので、財政当局としてはその制度をとらざるを得ない。心情的な問題についてはだれしも……
  114. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 心情じゃないですよ、実際に切り詰めにゃならぬ。
  115. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 実際の問題については財政当局としてそのような方法で、方式で臨むと、こういうことであります。
  116. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまのような答弁をされようとも、とにかく明確に年寄りや障害者、母子家庭、これをいじめることになっていくのは明らか。これが一体総理、あなたの言う思いやりですか。――総理総理が思いやりと言っている。
  117. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはこういう厳しいときに当たっては国民全体がその痛みを分ける、そういう心情そのものをお願いすることもまた一つの思いやりであると、このように考えております。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は大蔵大臣は大変いいことを、りっぱなことを言われたと思うのです。ともかく財政がみんな厳しくなってきて、そしてその厳しい中でどういうふうに分かち合うかと、そういう問題に当面しているわけでございます。増税なき財政再建ということを貫こうと思いますれば、結局歳出を切る以外にはないわけです。歳出を切るについてはどういうふうに切っていったらいいかというのがいま当面している問題でありますから、そういう場合には、やはり気の毒な人を大事にしつつ、みんなで痛みを分かち合う。また、いままで受けていたお方であっても、力のある方はこらえていただく。そういうようなやり方でいかに公平にやるか、公正にやるかということがこれから一番大事な問題になってくるのではないかと思うのです。
  119. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなたの答弁を、お年寄りやすべての国民は、思いやりの政治というのがいかに国民をだます偽りのスローガンかということを明瞭に受け取っていることでありましょう。とにかく人勧凍結を解除しない限り年金、恩給も上がらない、こういう今日の政府方針。  そこで、十七日の自民党の最終回答なるものは、党総裁としても、また総理としても承認をなさった上でのことですね。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党総裁として承知さしていただきました。
  121. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 政府としてはどうですか、総理としては。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党がお決めになったことは、政府としてもこれを尊重し、実行するというのが政党政治です。
  123. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 本来わが党は、自民党の二項目回答には同意せず、完全実施の要求を最後まで主張をしたものでありますが、昨日の各党実務者会議の模様を見ても、政府と自民党の凍結方針、国会をペテンにかける態度は全く変わっていません。  そこでお尋ねをいたしますが、自民党回答には、五十七年度人勧については野党の意見を踏まえて誠意をもって検討するとなっています。今年度の人勧の凍結解除もあり得る、こういうふうに理解していいわけですね。
  124. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは各党間において広義の間で議論されることでございますので、何が入っておって、何が除外されておる、こういうことを、基準を決めるような問題では私はないと、誠意をもって御検討をいただく、こういうことを、やっぱり国会でありますから国権の最高機関である、それの結論の推移を見守っておるということになろうかと思います。
  125. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 野党の意見を踏まえ、誠意をもって検討をしていく、野党の意見は完全実施でありますから、この完全実施について誠意をもって検討をするということですね。
  126. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 野党の意見が完全実施であると、私はその断定も私どもがすべきことではない、協議の中において行われるべき問題であると、このように考えます。
  127. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 とにかくその場逃れのごまかしではだめです。凍結解除の用意があるのかどうか、総理にはっきりお尋ねをします。
  128. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 竹下大蔵大臣。
  129. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや、総理総理に尋ねている。
  130. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私が指名されましたので、私からもお答えをいたします。  凍結解除、いま見合わせておる、こういうことでございます。凍結という言葉はフローズンでございますから解けることがある、まあこういうことにもなるわけでありますが、いまは見合わせておるという現実を踏まえて協議をいただいておるわけでございますから、凍結解除があるかないかと、こういう議論よりももっと広範な議論をしていただいておるのを、やはり政府としてはこれを見守っておる、こういうことであろうと思います。
  131. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大蔵大臣と同じであります。
  133. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 結局、先延ばしでごまかして凍結方針を貫くということではありませんか。それじゃ国民が許すはずがない。  ところで、来年の人勧については尊重し実施するとなっていますが、これは完全実施ということですか。
  134. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これも読んで字のごとしでありまして、実施は実施でございます。
  135. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ことしもだめだ、来年はわからぬ、結局。これでは全く話にならぬじゃありませんか。  人事院総裁、いまのこの政府の態度、自民党の態度についてどのようにお思いになりますか。
  136. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) これは累次この席上等でも申し上げておりますように、人勧制度というのは公務員について労働基本権が制約されておるということの代償措置として認められているものでございまして、それだけに大変な私は重みのある制度だというふうに思っております。したがいまして、これは尊重をしていただくということがたてまえでございまして、過去もそういうことで御理解をいただきました結果、四十五年以来完全実施ということで定着した、完熟した取り扱いとして今日まできておるわけであります。そういう点から申しますと、今度の政府の措置というものは人勧制度のたてまえからいって、私としてはやはり大変遺憾至極であるというふうに申さざるを得ないのでありまして、これはいままでもしばしば繰り返して申し上げてきておるところでございます。  ただ、この点については内閣のみならず、国会に対しても勧告を申し上げておるということでございますので、いろいろの角度から御討議をいただいております。慎重に御審議をいただきまして、適切なる判断が示されることを念願をいたすというのが私の立場でございます。
  137. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 とにかく、このような状況では人事院の存在意義というのはもう全くない、二重の憲法違反。わが党としては完全実施をあくまで要求をいたします。
  138. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 関連質疑を許します。沓脱タケ子君。
  139. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 関連して二、三点お伺いをいたします。  経済不況、とりわけ消費不況というのは大変厳しゅうございます。たとえば、大阪の丼池におきましては、人勧凍結の発表が出たとたんに背広の売り上げが一挙にダウンをした。長引く不況の中で景気対策が切実に求められているという中で、人勧凍結は不況を助長する不景気対策、そう言わなきゃならないというところへ来ております。  不況克服のための内需の拡大につきましては、中小企業対策がきわめて重要であるということは政府もお認めになっているところでございます。中小企業の今日の危機を救う上で一つの重要な柱として、官公需の中小企業向けの発注というのを大幅にふやすということ、つまり中小企業への大幅な仕事づくりをするということが大事であります。  本年度の官公需等の総額十兆五千億、そのうちの中小企業向け発注の目標というのは、政府は三七・二%でございます。これを五〇%に引き上げますと、一兆四千億の仕事というのが新たに中小企業の仕事に回ることになって、景気の回復に大変大きく寄与するものであろうと思うわけでございます。  そこで総理、そういう中で中小企業向けの発注を五〇%に引き上げられたらどうだろうかと思うんですが、いかがですか。
  140. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ただいまおっしゃったように、三七・二%まで毎年逐次引き上げてきております。金額にして三兆九千百八十億に達しておりますが、そのようなことを逐次好ましい環境として整備しつつ、さらにその発注率を高めるために努力をいたしますが、一挙に五〇と申しましても、中小企業の製品の質の問題、あるいは適合性の問題等ございますから、全面的な協力を惜しまない、受け入れを待っているという姿勢を持って進めてまいる所存であります。
  141. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 政府の方針はわかった上でお尋ねをしている。わが党は十年前から官公需の中小企業向けの発注率を五〇%に引き上げるように一貫して要求をしてきているわけです。歴代政府は、努力をすると言いながら、ぼつぼつやっている。ところが、やっと目標が三七・二%、ことしね。  行官庁は去る九月に、官公需の中小企業発注に関する行政監察結果というのを発表しておられますね。これは総理がちょうど長官のころです。その中で、通産省初め各省庁がもっと積極的な措置を講ずるように求めているわけですが、私は時間がないから、その中で具体的なケースを一つだけとらえて聞いておきたいと思うんです。  官公需の中小企業向け特定品目九品目というのが決められていますね。こういう品目を中小企業に任せなさいということで九品目決めておりますが、このうちの外衣、下着等制服や白衣、この品目について昭和五十年度と五十六年度の契約の総額、そして中小企業向けの契約額とその比率について厚生省、郵政省、防衛庁、国鉄、電電、この順にお聞かせをいただきたい。とりわけ厚生省は契約比率が大変改善をされているようなので、その理由もあわせてお伺いをしたい。
  142. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 沓脱委員の御質問お答えいたします。  厚生省における外衣、下着類にかかる昭和五十年度の契約総額は約二億六千八百万円でございますが、中小企業向けの契約額は約九百万円でありまして、その比率は三・四%であります。五十六年度の契約総額は約六億二千万円でありますが、そのうち中小企業向け契約額は約五億七千五百万円で、九二%になっております。  どういうことでなったかと、こういうことでございますが、私が思いますのに、いままで中央で発注をしておりましたものを地方の医務局で発注するというふうに発注の体制を変えました。それからもう一つは、厚生省の関係でございますから病院等で使うところのものが非常に多い。私は非常に中小企業になじむところの商品が多いということも一つの原因ではないだろうかと、こういうふうに考えております。
  143. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 郵政省の外衣、下着類の契約額は五十年度が三十億九千二百万円、五十六年度が四十億三千百万円でございますが、そのうち中小企業向け契約額は五十年度六億三千八百万円、五十六年度九億五百万円でございまして、この比率は五十年度二〇・六%、五十六年度二二・五%となっております。
  144. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 防衛庁でございますが、細部にわたっての御質問でございますので、政府委員をもって答弁いたさせます。
  145. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 昭和五十年度外衣及び下着類につきましては、三十四億六千百万円のうち九千万円、二・六%でございましたが、昭和五十六年度には三十四億六千四百万円のうち四億四千七百万円ということで一二・九%まで向上しております。
  146. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 五十年度の数字を申し上げます。  総額が三十四億七百万円、中小企業向け発注額十億九千百万円、比率三二%でございました。五十六年度はそれぞれ四十五億四千三百万円、十七億五千七百万円で、三八・七%ということになっております。
  147. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) 電電公社は五十年度四十三億のうち約二億、四・七%でありましたが、五十六年度四十七億のうち十二億強、二五・四%、今年度五十七年度は四十三億のうち十四億、三一・一%強でございます。五十八年度はもう少しふえます。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後にお願いをしたいんですが、厚生省のように三・四%が九二%というふうに改善をされましたが、特殊性云々じゃなくて、口実をつくらずに中小企業向け発注を高める措置をとればすぐにでもこれは解決できると思うのです。低い発注率の郵政だとか防衛、国鉄――国鉄はやっと政府のベースですが、電電などに引き上げて努力をするようにしてもらいたいと思うんですが、総理、少なくともこの深刻な消費不況の中で、来年度政府目標を五〇%に近づける努力をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中小企業は大事でございますから、その比率を逐年引き上げていくように努力してまいりたいと思います。
  150. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 政府が進める行政改革が福祉や教育の切り捨て、片や軍備大拡張、大企業奉仕にすぎないことを私どもは何回も指摘してまいりましたが、最後に大企業補助金の問題について質問をいたします。  まず電子計算機等開発促進補助金、これはどういうものですか、御設明願いたいと思います。
  151. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 事務当局をして答弁させます。
  152. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答え申し上げます。  お尋ねの新機種補助金でございますけれども、この補助金は昭和四十七年から五十一年度にかけまして五年間にわたって実施したものでございます。背景となりますのは、電子計算機についての自由化措置が講じられた、こういうことから新しい電子計算機を開発しなければいけない、こういう趣旨で行ったものでございまして、五年間に投じられました補助金額は六百八十六億円でございます。
  153. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 補助金が交付された企業名。
  154. 志賀学

    政府委員(志賀学君) 新機種の補助金は、メーンとなりますのが電子計算機の本体についての補助金でございます。それで、本体の補助金につきましては三つの技術研究組合に対して交付されておりまして、その一つは超高性能コンピュータ開発技術研究組合でございます。それから二番目が新コンピュータ・シリーズ技術研究組合、三番目が超高性能電子計算機技術研究組合でございます。
  155. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この補助金によって新しい電算機が開発をされ、現在売り出されているわけですね。大臣、この点はわかるでしょう。
  156. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答えいたします。  この三つの研究組合で開発いたしましたのは、一つは富士通・日立グループによりますMシリーズでございます。それから二番目が日電・東芝グループのACOSシリーズでございます。それから三番目が三菱・沖電のCOSMOシリーズでございます。現在も確かに販売されておりますけれども、ただし当時のアーキテクチャーに比べますと、現在販売されておりますのはかなり大幅に変えられているというふうに承知しております。
  157. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 このような新しい商品開発には、収益納付制度というものが適用されていますが、それはどういう内容ですか。
  158. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 通産省関係では、技術開発などその開発リスクは大きい、しかし開発が成功した場合には相当の収益が生じる、そういう事業につきましては原則として収益納付制度というものを設けております。
  159. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その納付制度の具体的な仕組み、内容
  160. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) お答え申し上げます。  補助金の交付が終了いたしましてから一定の期間内に収益が上がりました場合には、定められた比率で国庫は納付するという制度でございます。
  161. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この電算機開発補助金の収益納付期間は八一年度で終了というふうに承知をしているのですが、幾ら今日まで納付されていますか。
  162. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答えいたします。  この新機種補助金の納付期間は、先生御指摘のように五十六年度まででございます。それで、現在までに納付されておりますのは五十五年度分までに発生した収益についての納付金が納付されているわけでございまして、金額は八億五千七百万円でございます。
  163. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 昭和五十五年度末で八億五千万円、したがって補助金の約一・三五%というわずかな額、メーカーはこれで新商品開発をして利益を上げているわけでありますが、さらに追っかけて収益納付をさせるわけですか。
  164. 志賀学

    政府委員(志賀学君) 新機種の補助金につきましてあと一年、五十六年度分の収益についての納付がこれから行われるわけでございます。
  165. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あと一年でびっくりするほどの額が納付をされるということは、これはあり得ない。そうしますと、もうこの程度をもって打ち切り、こういうことになるわけでありますが、期限が、さらに五十七年度以降は納付はないわけですね。
  166. 志賀学

    政府委員(志賀学君) 五十六年度の収益から発生します納付金の後はございません。
  167. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 結局国民の税金を使って新製品を開発し、もうけは全部企業のふところの中に入る仕組みになっている。本年二月二十五日、わが党の追及に対して、衆議院の予算委員会で、政府は収益納付期間を見直すと、こういう答弁をいたしましたし、当時行管庁長官として中曽根総理も同席をなさっておったからこのことは御記憶と思いますが、実際に見直しをなさったのですか。
  168. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは収益が発生し始めてから五年間にわたって五分の一ずつという方式に大体中心としてそろえたということで、さらに将来いまおっしゃいましたような、多分渡辺大蔵大臣時代ですか、政府答弁の大蔵省の趣旨としてやはり開発利益についての補助金の部分に対する回収の仕方等については検討を進める方向でいきたいというような答弁があったようでありますし、また私自身もそれを受けて、現在この制度を固定的なものにするか、あるいはまた見通し等をきちっと立ててこれをそれに適合した年数に見合うものにするか、そこらは検討中ということでございます。
  169. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 とにかく本日時点でこういう見直しをやるということの結論を得ていますという答弁はできないわけですね。
  170. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 御説明申し上げます。  納付制度の中のポイントはやはり納付期間の問題であろうかと思いますが、納付期間につきましては現在の技術革新が非常に激しい状態では技術のライフサイクルが短い、あるいはまた技術と収益の因果関係、こういうものを長期にわたって確定するというような困難性、いろいろございまして、現在個々の補助金ごとにケース・バイ・ケースで検討いたしていくという態度をとっております。
  171. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 結論を得ているかと聞いているのです。
  172. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 検討中だということは結論を得るために検討中でありますから、結論はまだ出ていないということであります。
  173. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 結論を得ていない。  さらに具体的に聞きましょう。東芝電気への通産省の補助金、これは幾らか年度別に明らかにしていただきたいと思います。
  174. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 先ほど志賀局長から御説明申し上げましたように、補助金、委託費と申しますものは公益法人とか研究組合に交付されておりまして、御指摘の東芝に直接的に交付されてないというものが多うございますので、厳密な意味で特定の企業にどれだけいったかというのは困難があるかと思います。したがって現在数字を持ち合わせておりません。
  175. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 数字的に算定することがむずかしいということでありますので、私の方で試算をいたしました。  資料、最後から二枚目のペーパーをごらんいただきたいと思いますが、各種補助金、委託費、これの額を補助金が交付されております団体を構成する企業、これで割り算をして、その平均受取額でもってこの数字を試算をいたしました。もちろん実額とは違いましてもトレンドは余り違わないはずでありますが、この数字については通産省と突き合わせをしてまいりましたが、間違いありませんね。
  176. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 補助事業に参画した企業の数で頭割りにするという方法がいいかどうかということを別にいたしまして、そういう前提で計算をするとしますと、私実は一つ一つの数字をチェックいたしておりませんが、おおむねこのとおりかと思います。
  177. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 総理、ちょっと総理もペーパーごらんください。一番下の数字に出ていますように、これだけ国民向けの予算は削りながら、大企業補助金というのは……
  178. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 佐藤君、時間が参りました。
  179. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 年々こういうふうに増大をしておる……
  180. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 佐藤君、時間でございます。
  181. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 東芝というのは土光さんのどういう役目をしておられる会社ですか、総理
  182. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 佐藤君、時間でございます。
  183. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 はいはい、わかっています。  総理答弁をしてください。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 土光さんはずっと前に東芝の社長か会長をしておられたと思いますが、いまはお引きになっております。
  185. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で佐藤昭夫君の質疑は終了いたしました。
  186. 佐藤昭夫

  187. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 時間ですから。
  188. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まだ少しぐらいいいじゃないですか。
  189. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 認めません、厳しくやっておりますから。
  190. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それではやめましょう。
  191. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御協力ありがとうございます。     ─────────────
  192. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、三治重信君の質疑を行います。三治君。
  193. 三治重信

    三治重信君 民社党を代表いたしまして御質問をさしていただきます。  まず、中曽根内閣の性格の問題ですけれども、総理は人材本位の組閣をした、そして仕事を第一にやる内閣である、こういうふうに言っておられますが、まさに現内閣は行革、財政再建等問題が山積をしていると思います。こういう中で内閣を新しく組織されたわけですから、新内閣としては任期いっぱいしっかり仕事をやる覚悟が欲しいと思うのですが、それに対してきのう、きょう、大変解散風の風評の新聞が出ておるのですが、それに対してどういうふうに考えておられますか。
  194. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三治さんがおっしゃるように、ちゃんと任期というものがあるわけでございますから、任期いっぱい精の続く限り努力するというのが常道であると思います。私もこいねがわくばそういう形でいけたら結構だろうと思いますが、何しろ政界は一寸先は闇と言われておりますからどうなるかわかりません。しかし私の基本的な考え方は、解散というようなことは軽々にやるべきことではない、それで私の方から挑戦的に解散をするというような姿勢はできるだけとらないのがいいんだ、しかし野党の方からどうしてもという形でくれば受けざるを得ない、しかしそういうことは国政に空白を呼びますし、これだけ問題が山積しているときでありますから、両方が自重なすった方がいい、そう思っております。
  195. 三治重信

    三治重信君 私も衆議院が内閣のかわるたびに解散解散というのははなはだ非能率の内閣が続くということになろうかと思うのですが、と申しますのは、中曽根内閣も自民党内閣であります。政権がかわっての新しい内閣、今度の西ドイツの内閣のように与野党が入れかわっての新しい内閣ならば、新しく国民に信を問う、こういうことも、総理の解散というのも意義があろうかと思うわけなんですが、いま総理がおっしゃったように、総理大臣みずから解散を挑むようなことはない、したくはない、こういう気持ちは中曽根内閣任期いっぱいひとつぜひ続けていただきたい。どうしても総理の解散権を利用する、こういう場合はやはり不信任案が成立するとか、もしもまた国会の運営上非常に不都合が生じて政府みずから信任案を提出する、それが否決された、こういうようなときは別といたしまして、ひとつすぐもう補正予算が危なくなってきたら解散だ、来年の予算を一月に出したら冒頭解散だとか、四月に解散だとか、いま新聞であちこち、一月、四月、またはダブル選挙、こういうようなので毎日書かれておって、これでは野党議員も与党議員も国政を本当になってやろうという気にならぬじゃないかと思うのですが、それについてどういうふうにお考えですか。
  196. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原則的に解散というようなことは政府側が挑んでやるべきことではない、その点はあくまでも慎重にやるべきことである、こう考えておりますし、いまあなたがおっしゃったことにつきましては原則的に私は賛成でございます。しかし幾らがまんしてもこれ以上がまんできぬというときにはそれは解散はあり得るのでありまして、いまのところそんなことはまるきり考えてないですから、どうぞ御安心なすってください。
  197. 三治重信

    三治重信君 それからもう一つ念を押しておきたいと思うのですが、ダブル選挙、この前のときには大平内閣で、偶然の一致であれはダブル選挙になったと思うんです。ところが今度のダブル選挙をやろうというと、総理みずからの結局やろうという気以外はこれはもう参議院の方が決まっているからできない。しかも参議院は昨年九十五日も国会を延長してまで参議院選挙法を改正して、新しく参議院選挙国民の信を問うということが決まっているわけなんですから、それに衆議院を乗っけるとどうしても衆議院の方がやはり主導権を持ってしまう。これは参議院がせっかく選挙法を改正したのに対して、非常にこのダブル選挙というのはそれを無にするし、むしろもうこんなダブル選挙ダブル選挙ならもう参議院は要らぬじゃないか、一院制にせい、こういう議論が出てくると思うんですが、そういうことでダブル選挙は絶対に避ける、こういうふうな考え方をひとつお示し願いたいと思うんですが、いかがですか。
  198. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ダブル選挙というものの効用はプラスとマイナスがありますが、選挙費が安く済む、節約させられるという点においてはプラスがあると思いますけれども、それからまた一面においては、いまおっしゃるように参議院というものの鮮明度が失われていく、そういうマイナス面もあると思います。しかし衆議院の解散というものと参議院というものを故意に結びつけるということは必ずしも私は正しいとは思いません。衆議院は衆議院、参議院参議院の独自性があり、憲法上の機能を持っておる、そう考えております。しかしたまたま一致するということはないとは言えない。しかし原則論から言えばあなたのおっしゃるとおりが正しいと思っております。
  199. 三治重信

    三治重信君 そのおっしゃることをひとつ実行していただいて、仕事に専念して、選挙はひとつ頭から離してやってもらって、われわれ参議院の方がしっかり、去年大変苦労して参議院選挙法を改正したのですから、その実効を見た上でまた解散は考えられたらどうか、こういうことで特にこの御真意を伺った次第でございます。  次に、財政問題でございますが、この中期の財政見積もり、ことに私は、一言にして言えば毎年の四、五兆にわたる増収益の半分の二兆円を国債を減額して、あとの二兆円を自然増に使って、そうして五十九年には赤字国債をゼロにするという成長型のめでたい財政計画だったのですが、これはみごとに失敗したと思いますが、それについての御見解と、こういうふうに中期計画が五十九年がだめだと、こういうことになると、新しくやはり新五カ年計画をつくる、こういうことですから、これに見合った財政計画、こういうものはひとつぜひ、何と申しますか、こういう自然増を当てにしない財政計画、こういうふうにお願いをしたいと思います。ことに成長率の見積もりによって歳入がえらい違ってくる。ことしなんかは六兆一千億、いままでの中期見通しだと来年は十兆円も違う、こういうふうなことになるわけですから、ひとつ新五カ年計画について、来年度五十八年度の予算審議では必ずそれが政府見解として提示できるようにお答え願いたいと思うんですが、いかがですか。
  200. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる中期財政見積もり、私どもが五十六年度予算編成の際から手がかりとし、そして国会に御審議をいただく参考に供するためにつくっておりますのは財政中期展望と、こういう言葉を使っておることは御案内のとおりでございます。したがって、いま新経済計画につきまして経済審議会におきまして今後のわが国の経済社会が向かうべき姿を明らかにすべく慎重な審議が行われておるというさなかでございます。財政再建は中長期的展望に立って進めていかなければならないことは言うまでもないことでありますが、従来から中期的視点に立った財政運営を進めていく上での検討の手がかりを示すために、毎年度財政の中期展望、これを作成しておるところであります。  新しい財政の中期展望につきましては、五十八年度予算編成の状況とともに、新経済計画の検討状況をも見きわめながらその作成についていま検討をしておる、こういう段階でございます。五十八年度予算審議をいただくまでには、場合によっては、成長率のお話もございましたが、あるいはケースAとかケースBとかいうようなことにもなろうかと思いますが、鋭意その内容について検討を始めておる現状でございます。
  201. 三治重信

    三治重信君 ぜひひとつ五十八年度の予算審議には新財政五カ年計画のもとで審議ができるように御配慮願いたいと思います。  次に、今年度のいま出されておる補正予算で六兆一千億の減額をした、その結果を見るとそれでも対前年五・三%の税収増と、こういうふうになっておりますが、九月―十月ではその増収率が対前年に対して二・三ないし三・二%と、こういうふうになっておる。このままでいくというと六千億から九千億、約一兆円近くも赤字がまたさらに出るのじゃないかと、こういうふうな計算もできるわけですが、こういうふうに赤字が出た場合には、昨年と同じようにまた国債整理基金を使うより道はないと考えておられるかどうか。
  202. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまの御審議いただいておるこれまでの補正予算の編成に当たりましては、課税実績や改定されましたいわゆる五・二を三・四、経済見通しにおける諸指標、そしてまた大法人に対する聞き取り調査の結果等を基礎といたしまして、個別的にこの税目ごとに積み上げて見直しを行った結果、ただいま御指摘のように減収が避けられないということで、あわせて六兆一千四百六十億円、そういう減額補正を計上したものでございますので、いまの段階で私どもは所要の税収は確保されるものであるという前提に立って御審議をいただいておるわけであります。
  203. 三治重信

    三治重信君 次に、財政の規模の問題であります。すなわち租税負担率の問題、国税、地方税、社会保険料、これを合わせていわゆる租税負担率と言っておりますが、これを相対として高からしめぬでやっていこう、こういうのが政府の態度でもあるかと思うわけなんですが、しかしいまのそういうことを前提にしていった場合に、直間比率の改正、こういうふうなことが税の相対的な負担を上げない範囲内でやる意思があるかどうか。
  204. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) わが国の租税及び社会保険負担の水準を国民所得に対する負担で見ますと、確かに主要諸外国に比べてはかなり低い、こういうことになっております。しかし、現在の歳出との水準と対比してみますと、これは大変な収支ギャップを抱えておる状況でございます。そうして私どもが増税なき財政再建という言葉の中にも、臨調答申において現行の租税負担率という問題が一つの目安として示されておる。したがって、私どもは直間比率の見直しというのは、三年前でございますと直間比率の見直しという言葉を使っただけでいわゆる一般消費税(仮称)の手法というふうに直線的に結びついたが、今日は直間比率の見直しというものは税制調査会等々公の場で議論されておる状況にもかんがみまして、租税負担率というものをどうとるかという問題はございますが、その中で直間比率の見直しということも当然検討していくべき課題であるというふうに考えております。
  205. 三治重信

    三治重信君 その問題につきまして、後で不公平税制の改革、改善の問題のところでまたさらに討論を深めたいと思います。  次に、国債の発行の問題でございますが、これはいまのままでいくととめどもない国債の発行量になろうかと思うわけでございます。その中で一番まず真っ先にくるのが国債の利子の支払いの対前年増加、毎年の増加額がいわゆる税収の増よりかオーバーすると利払いのための公債をさらに発行するという事態がもう来年からでも起きそうな空気だと思うのですが、そういうものの歯どめをどうお考えになっておりますか。
  206. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のように、そもそも国債、いわゆる公債政策というものは、バランスシートを見てみますと、その年次年次償還と発行を比べたら、相対的に建設国債であれあるいは赤字国債であれ結局償還のための財源としての公債を発行しておる、こういう姿に受けとめられるのが、本質的にそういうものであると私も思うのであります。  いま御指摘になりました償還を国債で行うというようなそういう見方が財政放漫を招くということは事実でございますので、そこで公債発行に依存いたしますと、まず国債費の累増によっての財政の硬直化、それからクラウディングアウトあるいは財政インフレのおそれ、世代間の負担の不公正、財政支出に対するコスト負担感の希薄化等大変弊害がございますので、やっぱり公債発行額の縮減がまず現下の急務である、一応この公債政策というものに建設国債の発行があり、そして赤字国債に踏み切ってからそれなりの効果はありましたものの、いまはそれの負担にたえかねておるという状態でございますので、何よりもまず減額ということを念頭に置いて五十八年度予算の編成にも当たっていきたいと、このように考えております。
  207. 三治重信

    三治重信君 国債の発行量を極力減額するという御答弁は、これはもうそのとおりで結構ですが、私の質問は利払いの増加がいまの調子だと毎年一兆円近く増加する、その一兆円増加に対して自然増や税収がそんなにない場合にはさらに超えた三千億なり五千億というものを公債で払うようになるのじゃないか、そういうふうになるととめどがないんじゃないかと、こういう質問でございますので、ひとつよろしく。
  208. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 五十八年度予算におきましてはとにかく歳出規模を極力抑制いたしまして、一般歳出を五十七年度同額以下に抑制することに最大限の努力をまず払う、そういうことでございますが、いわゆる公債の発行額を五十七年度のいま考えておりますのは、五十八年度の当初に対しての減額ということは残念ながら考えられない、したがって五十七年度の補正後の予算額に対して極力抑制をしていこうと、そういう考え方で公債依存度を引き下げていこうという基本的な考えであります。そうしていまいわゆる歳出の中にある国債費という問題の利払いという問題が年々増加してまいるわけでございますので、それらをも勘案しつつ国債管理政策、発行を含む管理政策には厳正な態度で当たらなければならないと思っております。
  209. 三治重信

    三治重信君 この国債の累積残高の問題でございますが、これは非常に四十八年ぐらいまではまだ、四十年から建設国債が発行されたのですが、四十年代の終わりのころまでは、まだ日本国民一人当たりの発行残高が少なかったのでございますが、現在になると日本が一番多くなってしまって、九十万円も超して、先進国の中で一人当たりの国債の負担が断然多くなっております。  こういうふうになりますと、国債累積残高をもうこれ以上伸ばしたらもちろんインフレになる、これ以上は国債を発行しないと、長期的には。ということのめどが、GNPの一年分とか、あるいは国家予算の何倍というようなその範囲内で抑えるという、この中長期での努力が必要かと思うわけなのですが、来年度、いまの新聞報道だと五十兆円の予算。そうすると五十八年度末でもう百兆円を超す。そうすると国家予算の二年分を超える累積残高が五十八年度末にはできる。こういうようなことになってくると、今度の五カ年計画ではこういう問題もしっかり国民の注意を喚起するような計画にしてほしいと思うのです。
  210. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のとおりでございまして、公債依存度というところからのいわゆる目安というものも一つの考え方であろうと思いますし、その公債依存度で見ましても、まさにアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス等に比べれば、一番高い西ドイツの倍と、こういうことになるわけです。そして国の予算規模から見込みましても、この長期政府債務残高、こういうことになりますと、二・三五倍とかいうことで、これも高い水準にございますし、そして対GNP比から見た長期政府債務残高、これを見ましても、これはイギリスよりも若干低うございますけれども、四一・九%、こういうことになっておりますので、これらのどの指標が一つの目安になるかということについては、私はいろいろな議論のあるところではあると思います。  しかしながら、いずれにしても、高い水準にあるということは事実でございますので、それがゆえにこそ財政再建という問題が急務であるという考え方に基づきまして、いま御指摘の総予算対比、GNP対比、あるいは予算規模対比、あるいは公債依存度、そういうような点から、いろんな角度からそれを見て、その適正なもの、それに対してどういうふうな目標で進んでいくかということは、真剣に検討する課題であるというふうに私どもも理解をしております。
  211. 三治重信

    三治重信君 私がこの租税の負担率、それから財政の中長期の計画、さらに国債の累積残高というものについて御質問したのは、結局それを相当国民的に認識さしていただかないと、これから次に質問します行政改革をやろうとして相当な大手術をやる場合に、一方的に予算を切るというふうに各利益集団が被害妄想になると、大変うまくいかないことになるわけですから、その大枠はこれ以上そんなに――大枠はこうなんだと、こういうことの国民的コンセンサスを得るためにしっかり努力をしていただきたいと、こういう意味で御質問したことを御理解願って、ひとつよろしくお願い申し上げます。  次に、三番目に行政改革の問題を御質問いたします。  わが党は、こういうような非常事態の中で、政府の行政改革について全面的に支持をする基本的態度を持っております。したがって、臨調答申についてできる限り政府はひとつ、中曽根内閣は仕事本位内閣だから、ひとつしっかり万難を排してやってもらいたいと思うわけなのであります。  ところが、前内閣では、この臨調答申の具体案が二、三報道されると、三人の閣僚が、おれはこういうことは絶対反対だと言ってわめいたわけなんですが、今度中曽根内閣でこの臨調に基づく行政改革をやるについて、各論的におれの省のやつはここだけはだめだと、こういうような閣僚が出たら、総理大臣、何とおっしゃいますか。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう不心得な閣僚は選んだ覚えがありません。  最初の閣議のときに、そういう前内閣の経験にかんがみまして、私から特に発言をいたしまして、閣議で決めたこと、あるいは了解したこと、それらを私に直接意見を言うのはいいけれども、外へ出ていって、新聞記者とかあるいはそのほかの一般の人方に批判がましいこと、異議がましいことは一切言っては困ると、さよう心得られたいということを諸君に申し上げまして、皆さんも賛成してくれたから、そういう不心得者はいないと確信しております。
  213. 三治重信

    三治重信君 本当に確かに、行革の各論に入ったときに見苦しい態度を大臣がとると、これは非常に意気が阻喪されていきますから、ひとつその点は、総理の力量であるわけですから、しっかりしていただきたいと思います。  それで、臨調の答申の実施でございますが、今日まで発表されたのだけでも、これをやるには大変なことだ、さらに大変な大きな行革の答申が出るだろうと思うのですが、これの実施をどういうふうに政府としては手なずけるか、ベテランの齋藤長官、抱負経綸をひとつここで述べていただきたい。実施計画が私は必要じゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  214. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 行革の重要性についてはいまさら申し上げる必要はないと思うのですが、臨調ができまして今日まで、御承知のように、三回の答申が出まして、第一次答申は昨年の秋の臨時国会で行革関連法案ということで御協力をいただいて成立をさせました。第二次答申は、ことしの春の通常国会において許認可事項を中心とした法律ということでこれを実行したわけでございます。  そこで、ことしの七月に第三次答申が出ましたので、前内閣当時でございましたが、これを実施するための対応を決めようというので、九月の末でございましたか、行政改革大綱というものを決めたわけでございます。この行政改革大綱には、政府が第三次答申を受けて、これをどういうふうな手順で実施していくか、どういうふうな順序で実施していくか、そういうふうな抱括的なプランも、この行政改革大綱の中に決められておるわけでございます。  そのまず第一の順序としましては、一番問題になっておりますのが国鉄でございますので、国鉄再建監理委員会の設置を内容とした法律を急いで出そうということで、今度の臨時国会に提案をすでにいたしてございます。できるだけ早く成立さしていただくようにお願いをしたいと、こんなふうに考えております。  なお、電電等はつきましては、臨調の趣旨を踏まえまして、各方面のコンセンサスを得て、できるだけ早く法律として次の通常国会に出せるようにしたいと、こんなふうに考えております。  それからまた一つ大きな問題は、御承知の公的年金の統合の問題でございますが、それもなかなか大変な年金でございますので、まず第一に国家公務員と三公社の職員の共済組合、これを統合していこうということで成案の準備を進めまして、来年の通常国会中に国会に提案したい。さらにまた一つの大きな問題は、厚生年金、国民年金、その他の問題がございますので、こういう問題につきましても、五十八年度中に一応の成案を得ようと、こういう順序まで改革大綱で決めておるわけでございますので、そういうふうな順序に従い、手順を追うて関係各省の御協力によって第三次答申を実行していく、こういうふうにしたいと考えております。それから、これで終わりませんので、また今度は第四次答申というのでございますか、これが来年の三月の中ごろに最終答申が出ますから、その答申が出ました段階において政府としてまたこれの対応を図っていく。まあなかなか大変な事柄でございますが、やはりこれは国民的な重要な課題だと理解しまして、順を追うて逐次実行に移していくと、こんなふうに考えておる次第でございます。
  215. 三治重信

    三治重信君 これを何年間ぐらいで大体のめどをつけようという腹づもりでございますか。
  216. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 国鉄の再建につきましては、御承知のように、国鉄再建監理委員会が通りますれば、この法律が通りますれば、五年以内に全体的な構想が実行できるようにしようというのが一つの構想になっております。  それから年金等につきましては、なかなかそう六十年度までというふうになりますかどうか、順を追うて大体五十八年度中に大体の成案を得ると、こんなふうなことでございます。
  217. 三治重信

    三治重信君 こういう非常に困難なことをやるのも非常に財政窮迫が大きな原因であるわけですが、そこで政府がまず第一弾としてとったのが人勧凍結という非常にショックなやり方でございます。ことに鈴木内閣は、自分がやめるようになってからぽっと言って責任を負わぬ閣議決定をやって、しかも中曽根内閣はそれを背負うと、こういうことでございますが、こういうことであるためにこの人勧凍結の公務員並びにそれの関連の影響を受ける外郭団体の職員、そういうものに対する説明、真意というものが徹底しないで閣議決定の人勧凍結というだけが行き渡ってしまった。こういうやり方というのは労使関係、職員管理の問題からいって非常に不手際だと思うのですが、こういうことについて二度と再びこういう不手際が、これはもう利害関係者が全部、何十万人、何百万人とおるわけなんですから、こういう人たちによく趣旨を徹底しないといけない。民間の労使関係は企業組合と言われますけれども、やはり企業は相当団体交渉の前にでも、会社の事情なり意図というものを相手の労働組合の幹部には事前に根回しをしてきちんと協議をして最終的な団交に入っていくわけですから、政府としてもこういうやはり手厚い手続をとるべきだと思うのですが、これに対してどう思いますか。
  218. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点につきましては、総務長官のところにおきまして若干関係者に対して了解をいただくような努力はした由承っておりますが、しかし必ずしも万全でなかったと。特に各官公庁等におきましてそれぞれの向きに対する根回しという点において必ずしも十全でなかったように反省をいたしておりまして、今後いまの御助言を最大限に生かすように努力してまいりたいと思います。
  219. 三治重信

    三治重信君 この今年の人勧凍結につきましては、きのうですか、おとといからか各党の代表者の協議の結果にゆだねられていると、こういうことでございますから具体的な答弁は求めませんけれども、五十七年度の人勧凍結については。しかし五十八年度の予算には、やはり大蔵大臣のいままでの答弁を聞いていると五十八年度もゼロだと。そうすると、結局五十七年度の予算に定期昇給の、従来からいくと二、三%ですか、定期昇給分だけを上乗せして予算を組むんだと、五十八年度ですね、こういうふうな考えのようですが、しかしこれだと、来年さらにことしみたいな財政事情からいって歳入欠陥が出たら、もう処置なしになって、また二年間凍結と、こういうことになるわけだから、どうしても五十八年度の当初予算で、衆議院のやつでは五十八年度は実施すると、こういうことになっているわけだから、せめて五十七年度で人勧でアップされた分ぐらいは、この五十八年の人勧の適用のためにも、この予算で組むべきだと、こういうふうに思うのですが、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  220. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる給与改善費をあらかじめ五十八年度予算に計上すべきであると、こういう御議論であります。事実私も昭和四十二年以来の経緯を見てみますと、当時は高度経済成長期にあったといたしましても、五%という一つの義務勧告というふうに申しましょうか、その基準に対応して五%を組んだ経緯が、委員御承知のとおり、あるわけです。そして財政状態の中でそれが二・五%になり、二%になり、一%になった、そういう経過をたどっておる。したがって、この補正予算においては減額補正をお願いしておるわけでございますが、五十八年度厳しい予算情勢の中においては、あらかじめ従来取ってきた給与改善費、これは説明書の中に書いてある言葉でございますが、これを組むだけの財政的余裕のある環境にあるかといえば、はなはだむつかしい環境にある。しかしながら、この組んだ経過からすれば、それはいろいろな工夫をしても、それを念頭に置かずして予算編成に当たるわけにもいかないということで、いま部内で鋭意検討しておるさなかでございますので、いま三治委員の御指摘になりました点が、このいわゆる額は別といたしまして、予算編成の過程において検討すべき課題として念頭に置いておるということは、今日の段階では言えるのではなかろうか。ただ、非常に環境は厳しいということも素直に申し上げておくべきではないかというふうに思ったわけであります。
  221. 三治重信

    三治重信君 従来の一、二%、ことにことしは一%対前年の給与改善費をやっていたやつまで切っちゃったわけなんですから、ゼロになっちゃっている。従来はその年の人勧を実施した上で給与改善費として五%から一%までことしなったわけです。ことしゼロにしちゃったわけですから、この五十七年の人勧の分ぐらいはやはりアップしとかぬと、五十八年の財政歳入欠陥になると処置なしと、こういうことになろうかと思うわけなんで、これはぜひひとつ確保してやって予算編成上考慮してほしいものだと思います。そうしないと、人事院があっても、これは大したことはないわ、言わしとけと、こういうことになっちゃうわけなんですが、人事院勧告制度について今後とも尊重をしていくお考えでございますか。
  222. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 人事院勧告制度そのものについては、私は、長い歴史がございますが、昭和四十五年以来とってきたそういう取り組み方の姿勢というものは、政府の一員として当然守るべきものであるというふうに考えております。
  223. 三治重信

    三治重信君 人事院勧告は、国家公務員に対する給与改善として行われておりますが、実際政府がやっているところは、政府の外郭団体の給与もみんなこれで決めて一律にやっちゃっているわけなんです。今度の閣議決定でも人勧凍結というと、国家公務員だけみたいに世間は取っているけれども、政府の外郭団体――公社、公団、公庫、その他特殊法人も全部一律に大蔵省の指図で、今年はゼロと、こういうふうなことをやっているから、陰に隠れた労使紛争が政府の外郭団体すべてにわたってうつぼつとして大変な混乱を来していることは御承知だろうと思うのですけれども、この政府の外郭団体は、三公社五現業よりもっと自由な、民間と同様な労組法の適用になっているわけなんですが、これは政府の一方的な人勧凍結だから、びた一文給料上げちゃいかぬと、こういうことになっているから、従来はせめて人勧ぐらいはやってもらえると思ってのんびり、と言っちゃ語弊があるかもしらぬけれども、労使関係が年一年と改善されてきたところでありますが、ここで一遍にゼロと、こういうことになると、また公益法人その他からも全部これはゼロとなると大変な労使紛争が渦巻く素地をつくったことになるわけなんですが、それに対して大蔵大臣はどういうふうに思われるか。
  224. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは御指摘のとおり、「公務員の給与に関する取扱いについて」昭和五十七年九月二十四日閣議決定、それの五項の三に、「公庫、公団等の職員の給与については、これまでの経緯等にかんがみ、国家公務員の例に準じて措置されるよう対処する。」ということが決定されておるわけであります。御指摘のようにいわゆる労働三権があるということも私も承知しております。しかしながら、この特殊法人はその業務が公共的公益的性格を有して国の財政と密接不可分と、こういう関係を有しておりますところから、これまで国家公務員に準じた取り扱いをやってきた。これは特殊法人の給与政定については、国権の最高機関たる国会の承認を受け、客観的妥当性を有する国家公務員の給与改定に準じて行うことが国民の理解を得るために適当である、こういう基本的考え方に立っておるわけでございます。したがって、その閣議決定の中で、いま、これまでの経緯等にかんがみて対処するというような方針のもとに対処されておると、こうお答えせざるを得ないというふうに思います。
  225. 三治重信

    三治重信君 これは平常のときにはそれでもう百点、私も了承します。しかし、この財政緊急事態だから国家公務員はがまんしてくれ、模範を示すためにがまんしてくれと、こう言うんですが、外郭団体は民間に準じて労使関係を許されておるんだし、それから財政非常事態にならぬ、もう財政負担をそんなに伴わないいわゆる一般会計、税金を食ってない外郭団体もたくさんあるわけなのだから、そんなものまで平常と同じように、給与水準を合わすという一つのいままでの基本理念はいいわけなんですが、こういうふうになって財政で特別抑えるんだというやつは最小限度に抑えるというのが、政府の職員に対する配慮であってしかるべきじゃないかと、財政に直接響かぬ団体、いわゆる自主財源があるところについてはぜひひとつ解除をしてもらいたい。そしてこういう団体がせっかく、ことに一例を申し上げますれば、社会保険診療報酬支払基金の労組等を初めとする全官公労組なんかはそういうことで努力してきたのです。こういうのが一遍で水泡に、一方的な大蔵省の内示通達で問答無用になるということになってくると、君たちは一体何をやってきたんだと、こういうことになって非常に労働組合の幹部は憂慮をしているわけなんです。こういうところもひとつ御配慮して、財政の不如意、緊急事態というのは大蔵の一般会計だけで、または特別会計でも税金でやるものはとにかく相当の支配力が必要なんでしょうけれども、ひとつそうでなくて自前で稼ぐような外郭団体についてはこのひもは緩めてもらわぬと、これは何でも公権力で一律的に規制をする、こういうことについてはひとつ厳に戒めて、先ほど総理お答えになったように気を使った配慮をぜひひとつやってほしいと要望しておきます。  ところで、人勧がこういうふうになりますというと、政府関係、そういうようなところで出先機関の長が、一般的な俗な言葉でいくと、やはり人勧凍結について職員組合からおまえたちも人勧凍結解除にするように所長も努力せいと、こういうふうないわゆるつるし上げまでにいかぬにしても、相当強いことで第一線が職員団体から突き上げられる、こういう事態が出てくることが必然でございます。したがって、こういうふうな末端における労使関係で、職員団体管理の中で給与改善、こういうような問題が朝から晩まで毎日続くということは、またさらに職員管理がルーズに流れるもとだと思うんですが、こういう問題についての今後の職員管理体制という問題をどういうふうにお考えになりますか。
  226. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに、私も大蔵大臣になってからではございませんが、官房長官をしておりました当時、いわゆる政府関係機関労働組合の方と何度かお会いをいたしたことがございます。給与財源を自前収入によって賄っておるというような御議論について、自前とはいえ公的資金と言えるようなものではないかというような議論もしてみたことがございますし、また政府からの出資とか、あるいは当該業務そのものがいわゆる独占権を付与されておるというようなこと等でいろんな議論をいたしたことがございます。このことがたまたま臨調において、特殊法人職員の給与に関して「使用者の当事者能力、国の関与の在り方については、今後当調査会において更に検討を続ける。その際、特殊法人は多種多様にわたることから、その企業的色彩、国家財政への依存の度合いを基準として、より自主性を認めるものと国家公務員との均衡を強めるもの等に区分して検討する。」と、そういうことがなされておるわけでございますので、これはこの臨調のみならず私ども政府といたしましても、そのことは、臨調で御関心をお持ちになったことについては、その実態はそれなりに理解できるところもございます。が、さて具体化ということになるとなかなか容易な問題でないなという感じもいたしますが、いまの御提言の趣旨等を踏まえてやはり私どもも検討すべき課題ではあるというふうには考えております。
  227. 三治重信

    三治重信君 ぜひひとつ、行政改革の重大な一環として、大蔵省がもう全部給与の関係を抑え込むと、こういうような関係から手を離して、ひとつ業務を縮小してもらう、こういうことをお願いしておきます。  そこで労働大臣、いまお聞きのとおり、大蔵大臣は外郭団体までみんな抑えちゃっているわけなんですが、ひとつこれに輪をかけて、民間の中小団体それから中小企業者も、政府の公務員が給与凍結になったからうちの方も財政苦しいから全部凍結だと、こういうふうなことにならぬように、ひとつ政府は特殊事態に対しての対応だからというふうなことをここでしっかり言明しておいてほしいと思うんですが、いかがですか、労働大臣。
  228. 大野明

    国務大臣(大野明君) いずれにいたしましても、賃金というものは労使双方の自主的な話し合いによって円満に解決するものと考えております。
  229. 三治重信

    三治重信君 労働省はぜひそういうふうな、余り民間が人勧に便乗しないように、どの程度便乗があるか、ひとつ調査をしておいてほしいと思います。  それから、この行革をやっていく場合には、やはり職員管理体制が非常に必要だと思うんですが、これにも、一般で言う信賞必罰、汚職に対する厳正な態度、こういうことが必要であることは御案内のとおりでございますが、最近の大阪府警の汚職は、非常に汚職に対する取り締まり当局であるにもかかわらず大変な失態だと思うわけなのですが、こういうふうな警察官の汚職について、ひとつどういうふうな方針を持って臨まれるか、お尋ねをいたします。
  230. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 今回の事件はまことに遺憾な事件でありまして、これによって警察が国民の信頼を著しく失ったということは厳しく反省をしなければならぬところだと存じております。私どもといたしましては、多くの警察官は真剣に日夜治安維持に当たっておるわけでございまして、私はそういう警察官の心情を思うと、この事件は大変に残念だと思います。ただいま大阪府警で極力事案の全貌を解明するべく努力中でございます。  いずれにいたしましても、やはり人事管理を改善をする、あるいは警察教養の徹底をさらに図っていくなどいたしまして、警察のような組織はやはり規律ということが生命でございますから、さような点を大いに改めまして、国民の信頼を一日も早く回復するように今後とも努めたいと、かように思っておるところでございます。事案の内容その他につきましては、警察庁長官以下からまた御答弁をいたします。
  231. 三治重信

    三治重信君 関連質問をさせていただきます。
  232. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 関連質疑を許します。中村鋭一君。
  233. 中村鋭一

    中村鋭一君 総理は、行革三昧と行管庁長官当時おっしゃいました。総理におなりになっても、ひとつ行革だけは徹底的にやっていただきたく思います。  しかし、仮に公務員の数が多いから少し減らそうじゃないかということで、その場合は当然少数精鋭ということになりますけれども、その質が悪ければ幾らお役人の数を減らしたって何にもなりはしませんよ。まして警察官、国民の財産と安全を担って日夜一生懸命やっていらっしゃるわけですね、大多数の警察官は。にもかかわらず、今回の大阪府警の不祥事は、二十数万の現場の警察官の士気をこれ以上阻喪させるものはないと思います。  まず、お伺いいたしますが、現在の捜査状況、事件の経緯を簡潔に御説明をお願い申し上げます。
  234. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。  今回の事件につきましては、現在大阪府警察におきまして、本年の十一月一日に曽根崎警察署の防犯課員、これを逮捕いたしました。ゲームセンターの経営者から賭博の取り締まりに当たって現金を受け取ったと、こういう事案で逮捕しました。それを初めといたしまして、現在までに収賄被疑者としまして現職警察官三名、退職しました警察官二名、それに贈賄被疑者といたしましてゲーム機の販売リース業十名、合計十五名を逮捕して現在捜査中でございます。
  235. 中村鋭一

    中村鋭一君 最初この事件は大阪地検が着手をしたと思いますが、それから大阪府警に移管といいますか、担当がかわりました。その大阪府警の中でも曽根崎署、南警察署がこの事犯を担当したと思いますが、現在、刑事部の捜査第二課、捜査第四課が事件を担当しているわけでございます。地検から所轄の警察署、現在は二課、四課、そのようにだんだんと担当がかわっていきました経緯並びにその理由について御説明をお願いいたします。
  236. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。  この事件につきましては、当初大阪府警察と大阪地方検察庁の双方が、それぞれ情報を入手いたしまして捜査をしておったわけでございますが、本年の十月末になりまして両者協議をした上で警察が捜査をするということに決めたわけでございます。  それと、捜査二課、防犯課の話がございましたが、捜査二課におきましては警察官の贈収賄の事件を中心といたしまして捜査をやっておりますし、また、それと並行いたしましてゲーム機を利用しました賭博につきましては防犯課、それからまた暴力団が関連をいたしております賭博事犯につきましてはこれは捜査四課ということで、現在府警本部の総力を挙げて捜査をやっておるところでございます。
  237. 中村鋭一

    中村鋭一君 伝えられるところでは、最初地検がやっていたのに、府警の方から、身内の恥は身内でそそぎたい、こういう申し出があって、それならおまえやれ、というわけで防犯にやらせたところが、どうも防犯は腰が引けて思い切ってやらない。だから、それならばわれわれがやろうじゃないかということでもう一遍地検に引き揚げようか、それとも二課、四課が乗り出そうか、四課というのは昔から大変厳しい捜査をすることで定評のある課であります。だからしたがって、そういうふうに担当が徐々に重点が変わっていったと伝えられておりますが、府警の方から、身内の恥は身内でそそぎたいからわれわれの方に事件をもらいたい、こういう申し入れは地検に対してあったんでしょうか、法務省。
  238. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 先ほど警察庁の方からお答えがございましたように、この事件につきましては、本格的な捜査をするに当たりまして大阪地検と府警とが十分協議をいたしまして、この事件を究明するにはどういう体制で臨むのが一番適当か、こういう観点から十分な協議をいたしまして、そして、いま申し上げましたように、第一次的には府警が捜査に当たる、しかしそれも警察だけではなくて地検と随時密接な連絡をしながらやるということで捜査をし、現在に至っておるというふうに承知しております。  なお、事件の進展とか性質に応じましてそれぞれ専門といいますか、得意な部局があるわけでございますから、そういうものが随時投入されていったと、こういうふうに理解しております。
  239. 中村鋭一

    中村鋭一君 大阪の地検の方でどうも府警の方はもう一つしっかりやらないから、少しわれわれもハッパをかけなければいかぬと、こういうような声は上がってきておりますか。
  240. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 先ほどもお答え申し上げましたように、この事件は大変重大なことでございますから、それをどういうふうにやるのが一番適当かということで、先ほど申し上げたような体制で臨んでおるわけでございまして、検察庁といたしまして、府警がやる気がないとかそういうようなことを考えておるとは聞いておりません。
  241. 中村鋭一

    中村鋭一君 いやいや、そういう声が出てきているかどうかお伺いしている。まあいいです。  大阪ではこれまで現職を含む警官五人が捕逮されております。現職警官一名は自殺、前府警本部長も大変不幸なことでございますがみずから命をお絶ちになりました。こういうことは本当に現場の警察官にすれば痛憤やる方ない思いでいっぱいだと思うんです。  これまでに逮捕されたのは、そういう言い方をしては非常に失礼ではございますけれど、いわば下っ端といいますか、比較的上級の警察官には事情聴取その他のことは行われていないようでございますが、巷間伝えられるところでは、もうすでに事件は山を越した、いよいよ幕引きの段階だと、このように伝えられておりますが、警察庁、そのような動きはあるのでしょうか。事件は、捜査は終局に向かっているのですか。またはその方針なのでありますか。
  242. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 警察といたしましては、いままでも徹底的に捜査をやってきたつもりでございますし、これからも徹底した捜査をやりまして事件の全貌を解明したい、こういうふうに考えております。
  243. 中村鋭一

    中村鋭一君 非常におざなりな答弁でございますが、いま、徹底的にこれまでもやってきたしこれからもやるとおっしゃいますので、一、二、事例に徴しましてお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に総理お尋ねいたしますが、総理は、総理大臣就任最初の記者会見で、秦野章法務大臣について記者団の質問お答えになって、見ておりまして秦野章新法務大臣は現代の遠山の金さんだと思ったと、こう記者会見でおっしゃっておりますが、おっしゃいましたですか。
  244. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その趣旨のことは申し上げました。
  245. 中村鋭一

    中村鋭一君 恐れ入りますが総理、じゃ、総理の持っておられます遠山の金さん像といいますか、秦野法務大臣が遠山の金さんだとおっしゃることは、遠山の金さんについての総理の一つの人間像といいますか、どういう人物でありたということがあると思いますので、お聞かせ願いたいと思います。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 余り勉強したこともありませんが、私の印象では、なかなか人情深くて庶民性に富んで、酸いも甘いもかみ分けた、しかしいざというときには間髪を入れず大事なことはやり抜く、血も涙もあるお奉行様と申しますか、そういう方ではないかと思います。
  247. 中村鋭一

    中村鋭一君 ということは、秦野章法務大臣についても、酸いも甘いもかみ分けた大変人情味のある、それでいていざというときには市民の先頭に立って国民のために正義を実現することにやぶさかではない人物であると、依然として秦野法務大臣をそのように理解しておられますか。
  248. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、秦野さんの議会行動や平生を見ておりまして、自分を裏切らない人だ、自分の良心に忠実な人だ、そういう点では非常に勇気のある人である、そう思ってかねがね敬意を表しておるところです。
  249. 中村鋭一

    中村鋭一君 先ほど共産党佐藤委員質問に対して、総理は、日本は三権分立の国である、こうおっしゃいました。当然ながら秦野法務大臣は行政府であります法務省の長官でございます。検察は当然ながら不覊独立の存在であるべきです。ということは、いま総理が遠山の金さんであるとおっしゃる以上は、秦野法務大臣が正義を具体的に実現するに当たって、三権分立の一つである司法権にかりそめにも介入をするようなことは絶対にあり得ない、このように理解をしておられるわけでございますね。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはもとより当然のことであります。ただその場合、司法権という意味がわりあいにあいまいに使われておるのです。立法、司法、行政という場合の司法権、それから法務省が担当している検察事務もやや司法権という場合で使われる場合もあるわけです。これはしかし、いわゆる立法、司法、行政という意味における三権分立、裁判所を中心にするそれに密着しているから、検察事務というものは。そして、密着不可分の関係があるがゆえに独立性を行政府の中においても認められておる。しかし、終局的には行政府の中にありまして法務大臣の指揮監督を受けておる、そういう立場にあるという意味におきましてお答え申し上げる次第であります。
  251. 中村鋭一

    中村鋭一君 法務大臣、正義を具現するに当たっては、いま総理のおっしゃったような御方針に従って、たとえば具体的に申し上げれば、指揮権をかりそめにも発動するようなことはあり得ないといま御言明をお願いできますでしょうか。
  252. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) お尋ねの件でございますけれども、検察は、純然たる意味では司法権というよりも行政の分野でございます。しかし、いま総理がおっしゃったように、司法に準じて独立の地位を与えられている。それは司法と大変密着した仕事をするからであるし、またこれが、曲げてこの権力が用いられることは大変まずい危険なことでございます。そういう意味において準独立といいますかね、司法権に準じて独立の地位が与えられている。しかしながら、準独立の地位が与えられても、やっぱり広い意味では行政でございます。これはやはり議会制民主主義の中でそういう準独立の地位は与えられながらも、なおやはり行政の中で一定の地位を保っている。その一定の地位というのが国会がおつくりになった検察庁法という法律でその筋道が書いてある。これは権限として。その検察庁法十四条を簡単に申し上げますと、検察官に対する一般的指揮監督権がある。それから、具体的事件については検事総長を通じてだけ事件の指揮ができると、こう書いてあるわけでございます。そういうような仕組み、そういうような仕組みがきわめて議会制民主主義の中の言うならば民主的な基盤を与えられた検察行政だと、そういうふうに理解をしておるわけでございまして、私もその立場の上に立って責任を遂行する。そして、その責任を遂行するということは、正義の実現とおっしゃいますけれども、確かに正義の味方でなくちゃならぬと思います。ただ、考えなくちゃいかぬのは、やはり司法権が、裁判権というものが一番中心の、言うならば正義の実現と言ってもいいかもしれませんね。やはりそれ以外のものは、正義の実現というよりも、私は言葉意味においては正義の味方なんだ、あくまで正義の味方として努力するんだと。自分が正義そのものになってしまうといったような意識を持つとかえって危ないという感じもいたします。その辺のところは運用の上において、国民のための検察でございます、十分配意していかなければならぬと、こう考えております。
  253. 中村鋭一

    中村鋭一君 その十分に体してやらなければならないというところをしっかりと承っておきたいと思います。  お手元に資料一を配付させていただきました。これは俗に千社札と言われているシールでございます。裏をはがして張りつけることができます。「南町奉行加地」とあります。私は個人の名前を挙げてあげつらうのが目的ではございませんけれども、最も端的に綱紀の紊乱をあらわしております資料でございますから皆さんに御提示を申し上げました。これは現職の大阪府警察本部南警察署長加地重夫氏が作製したシールでございます。  加地南署長は、昨年の暮れに前任の署長が、府下南署管内におよそ七千軒の飲食店がございますが、この中でバカラ賭博が行われているという情報に基づきまして捜査を指示いたしました。前任の署長であります。この春に加地氏が南署長に新任として参りまして、新任として来られた直後から、どういうわけですか、管内のバカラ賭博に対する捜査は中断されました。そして、今回の地検の着手によります遊技機汚職の捜査がいわば再開された形で南署においては始まったわけであります。  さらにまた、この加地重夫氏は、御子息、現に警察官でございますが、警察上級職で、福岡県の課長をしていらっしゃいます。この子息の結婚式に三百人近いお客さんをお招きになりました。その席に暴力団の組員、現に恐喝罪で服役中でございます、この組員を兄に持つ人物を招待をしております。お相撲さんだって、横綱の結婚式に暴力団関係者が出ただけで親方が首になっているじゃないですか。暴力団関係者が御子息の結婚式に出ておりますし、それから風俗営業関係、遊技機関係の業者の一団がその結婚式に招かれていることも判明をしております。  さらに、このシールであります。(資料を示す)「南町奉行加地」というようなふざけたシールをつくって、夜々管内の高級クラブに出没して、ボトルにこんなものを張り回しているんです。ほかにも私二、三資料を持っておりますけれども、個人攻撃をするのが目的じゃございませんから、一例を徴します。  こういったことを現職の署長がやっているのですから、これは本当にゆるがせにできない問題であると思います。下ばっかり調べたってだめです。根本にさかのぼらなければ綱紀の粛正ということはなし得ません。最後にこのことにつきまして、すなわち公務員の綱紀の粛正、上が身を正しくしなければ下だってだめなんだということについて、総理国家公安委員長、法務大臣、警察庁長官の御見解を伺いまして、私の質問を終わります。
  254. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 公務員全体の綱紀粛正という問題ももちろんございますが、警察のような組織は規律は厳しく厳粛でなければならない。いまお話いろいろ承りましたが、今後心を引き締めて規律の振粛にひとつ努力をすべきものであろう、かように存じます。
  255. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 今回の大阪の事件につきましては、多くの警察官が日々厳しくなる治安情勢のもとで懸命に努力しておるのに対しまして、同僚を裏切りかつ国民の信頼を裏切ったという意味におきまして全く遺憾であり、申しわけないことだと思っております。  警察における規律の問題、また士気高く警察官が職務に尽瘁をするというのが警察官のあり方でございます。高い規律を維持し士気を維持するためには、ます警察官一人一人がその職責を自覚し、かつその幹部が指導監督を適確に行う。それでもなおかつ非行に走るとか適確な、適切な措置を、行動をしないという者に対してはいわゆる信賞必罰の必罰をもって臨むということであろうと思います。  そういう意味におきまして、今回の事件を契機といたしましてこれを適切に処理してまいりたいと考えておる次第でございます。
  256. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) お説の問題は、下上にならうというようなこともございますので、十分注意していかなきゃならぬと思います。
  257. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公務員の綱紀の粛正につきましては、さらに格段の努力をいたしたいと思います。
  258. 三治重信

    三治重信君 時間がなくなりましたので、最後、一、二だけ御質問します。  総理は、所信表明で日本型福祉社会と、こういうことを高らかに……
  259. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 三治君、時間になりました。申しわけありません。  以上で三治君の質疑は終了いたしました。  暫時休憩いたします。    午後三時五十五分休憩      ─────・─────    午後四時五十二分開会
  260. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十七年度補正予算二案を議題とし、これより林寛子君の質疑を行います。林寛子君。
  261. 林寛子

    ○林寛子君 若干いままでの質問とダブる部分がございますので省略さしていただいて、なるべく簡潔に皆さん方に伺わしていただきたいと思いますけれども、まず、総理が所信表明の中でおっしゃった「わかりやすい政治」、そして国民の皆さんに「話しかける政治」の実現を目指すという、私は大賛成でございますし、いま一般国民政治を見るときに、国民政治の間に距離ができているということは、まさにわかりやすい政治を行わないからということを、私は一つの勉強の材料にしておりますので、総理のこのわかりやすい政治ということに対しては大賛成でございます。そしてまた、私はその姿勢を貫いていただきたい。とかく、永田町だけの論理に終わらないようにしていただきたいというのが総理に対する要望でございますので、それに関しては、これからもその姿勢を崩さないでいっていただきたいと思います。  それからその次に、総理がやはり所信表明の中で、たくましい文化と福祉の国家を建設したいというお話でございました。私は、総理が文化国家という言葉に対して大変御理解のある総理ができたと、誕生したと喜んでおる一人でございますので、ぜひ私はこのたくましい文化というものの内容というもの、抽象的な言葉でございますので、総理が文化国家というものをどう定義するかという御意見を聞かしていただければ幸いだと思います。
  262. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たくましい文化、たくましい福祉ということを「たくましい文化と福祉」という言葉で表現しているわけでございますが、「たくましい文化」の文化とは一体どういうことであるかと考えてみますと、やはりこれは創造力と申しますか、生命力と申しますか、それがあるいは文字になり、あるいは演劇になり、あるいは原子力になると。そういう人間の持っておる創造力、生命力というものが文化の根源であり、文化そのものであると私は思うのです。それでできてきたものが、あるいは結果的に大学になったり、あるいはノーベル賞になったり、あるいは偉大な建築物になったりしていきます。その過去の蓄積の上に立って、さらにまた生命力と創造力をつけ加えていって、人類の今日までの文明ができている。むしろ文化そのものは、その創造力そのものを文化というべきじゃないかと。つくられたものというものはこれはもう結果である、もうすでに過去のものである。本当の意味の文化というものは、そういう生命の燃えたぎっているものそのものが文化というものではないだろうか。それが萎縮したときは文化が萎縮したときである、それが旺盛なときは文化が旺盛なときである。それが最もたくましいものであることが望ましい。  私、戦前教育を受けた人間ですが、青白いインテリという言葉が大嫌いだったわけです。インテリというと、何か文化的な人間のようなそういう感じがしますが、青白いインテリというものがわれわれの理想像ではなかった。剣道も強いけれども、しかしまた音楽やらいわゆる文化に対して関心を持っておる、水泳も強いがまたそういう外国文明についても目を開いていると。そういうような全人的な力を持った人間像というものにわれわれはあこがれたのでございます。そういう意味のことを「たくましい文化」という意味で言いました。それは都会にも出るでしょうし、むしろ地方にたくましく出てくると。日本の演劇なんか、扇先生大先輩でございますが、大体大阪でまず出てきて、そうして大阪で受けたものが東京へ前進してくると。やっぱり大阪というものは非常に物すごいバイタリティーのある社会でございますね。そういうような感じでその文明やら人間の営みというものを見詰めていきたい。  それから福祉にいたしましても、やはり自立自助というものを中心にして物を考えて、そして、むしろそのおくれている人はたくましいものに育て上げていくためにみんなで助け合うと。単にお金を上げてそれで事が済むというものじゃないんだ。むしろその生命力を拡充して、そしてさらに強いものにみんなで協力し合っていこう。リハビリテーションという言葉がありますが、一たん病気で疲れた人をもっと強いたくましいものに回復させようというのがリハビリテーションですが、そういう、人間が持っておるそういうものを、たとえ弱い人であっても、みんなの力でたくましく、戦列に復帰してもらおう、また前進してもらおう、先頭に立っていただこう、それがたくましい福祉というものの精神ではないかと思うんです。そういうことを夢見て申し上げたわけです。
  263. 林寛子

    ○林寛子君 重ねて、それでは総理に具体的な例として私が申し上げたいと思いますのは、いまの失礼でございますけれども閣僚の皆さん方は、幼少のころに大変文化に親しむ機会がなくお育ちになっただろうと思います。それで私は、そういう国家的な事情というものは加味しなければいけませんし、私も含めまして戦時中に育ちましたから、大変不幸な子供時代を育ってきてまいりました。けれども私は、いまの子供たちに、総理がおっしゃるたくましい文化というものを将来の日本人間に植えつけるためには、少なくとも日ごろから、私どもが恵まれなかった子供のときと違って、いまの子供に文化に親しむという、そういう環境をぜひ私は総理が率先して行っていただきたい。たとえば閣僚全部そろって一度ぐらいは国立劇場に行ってみるとか、第二国立劇場の建設をしようとしておりますけれども、第一国立劇場すら見たことないという閣僚が、失礼ですけれども大ぜいいらっしゃいます。そういう意味で私は、中曽根総理であればぜひこういうことを率先して実行していただけるだろうと思いますし、またできれば一つの例として、大蔵大臣は渋い顔なさるかもしれませんけれども、一年間の入場税の総額というものは五十六年度で六十一億、五十七年度で約七十億を予定しております。入場税の撤廃というようなものをして、少なくとも若年層には入場税撤廃したものをするんだというぐらいな何か施策を中曽根総理時代にとっていただければ、私は大変いまの「たくましい文化」とおっしゃったお言葉が実を結んで花開くと思いますので、念頭に置いていただきたいと思いますし、御意見がございましたら言っていただきたいと思います。
  264. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も全く同感でございます。ただ、財政事情という問題もございますので、努力したいと思います。  しかし、いま国立劇場のお話が出ましたが、国立劇場へ座ってみたからといって私は文化人であるとは思わない。いま、子供の教育の話が出ましたが、私はいま現代の子供を見て非常にかわいそうだと思っておるんです。というのは、人間にとって、私たちの経験から見ますと、一番大事なのは幼児のときの原体験が一番大事なんです。これは都会でも農村でも、子供に一番大事なものは原っぱだと思うんです。原っぱへ行って石けりをしたとか、カエルを追っかけたとか、あるいは入道雲を見ておっかなくなって泣いてうちへ帰ったとか、あるいは原っぱだとか、土塀だとか、小川だとか、ともかく自然の中でみんなで戯れて一緒になって遊び、そういうところに原体験がありまして、それが大きくなってから何かの創造力の源泉になるんです。その子供のときに見た入道雲のこわさとか、あるいは山に沈む日の美しさとかいったものが何か入っておって、それが将来絵かきになった場合に梅原龍三郎先生みたいになるとか、あるいは中村鴈治郎先生みたいになるとか、そういうような、必ず子供のときに植えつけられる。文化勲章をもらった方々は恐らくみんなそういう子供のときのものが根にあると思うんですね。それはむしろたくましい原っぱとか、土塀とか、小川とか、カエルとか、入道雲とか、夕立とか、そういうもので育てられてきていると思うんです。いまの子供たちを見ると、アスファルトとコンクリートでございますから、原っぱがないですね、隠れんぼうをするにもそういう場所がないです。私がこう言うのはあるいは古い人間であるのかもしれません。いまはもう漫画とか、あるいはコンピュータを使うゲームとかいう世界に入っておりますから、また新しいものが芽生えておるのかもしれません。しかし、われわれに関する限りは、やっぱり原っぱというのは、人間の原体験というものを尊重すべきだと、そういうふうに感じておる次第です。
  265. 林寛子

    ○林寛子君 それでは続きまして防衛問題に移らしていただきたいと思います。  もともと私は防衛問題に関しまして、内閣委員会で五年間いろんな方の御意見も聞き、私なりに見詰めてまいりました。けれども、現在の私どものわが国の平和と独立を維持し、そして国の安定を確保することは、申すまでもなく国政の最重要課題の一つでございます。そして、私どもは近年、この厳しい国際情勢の中で防衛問題に対する国民の関心と理解というもの、その広まりが自衛隊も支持率がだんだん上がってきたということに対して、私は大変国民の理解度が高まってきたと、大変喜ぶ一人でございます。けれども、わが国は憲法に基づきまして、もともと国際紛争は平和的手段によって解決することとしておりますし、また歴史、文化、社会体制を異にする主権国家で構成される今日の国際社会におきましては、平和が諸国間の力の均衡によって保たれていることもまた厳然たる事実でございます。わが国が今後とも適切な規模の防衛力を保持するとともに、米国との安全保障体制を堅持し、西側陣営の一員として引き続き世界の平和と安定に貢献してまいらなければなりません。  最近、日米両国間において防衛摩擦ということが言われておりますけれども、米国が自由世界第二位の経済力を有するわが国に抱く期待は相当大きいものがございますし、わが国の防衛努力はあくまでみずからの判断により、また自主的にこれを行うことはもとよりでございます。わが国にとっては、とりわけ財政再建が目下の緊急課題であることは申すまでもございませんけれども、私はわが国と同様に厳しい経済事情にある米国が、ソ連の一貫した軍事力増強を前に、自由世界の安定を確保するために並々ならぬ努力、あるいは犠牲を忍んででも国防に多大な努力を傾注していることを考えれば、わが国としても防衛計画の大綱の水準を速やかに達成するために、わが国に課せられた最大の努力を行い、そしてわが国に課せられた国際的な責任という点からも必要であると思うのは当然のことでございます。そういう意味で、なお最近、わが国の周辺諸国の一部から、わが国の防衛努力に対して懸念の表明があった。そういう意味で、私はわが国の防衛力は決して他国に脅威を与えるものではなく、これらの諸国に十分説明することによって誤解は解けるものと考えている次第でございます。そういう意味で、私はこの予算委員会、先ほどもいろいろ聞いておりましたら、GNPの一%をめぐって異なった立場からのいろいろな論議が行われております。けれども、私はこのGNPの一%問題、これは五十一年の閣議決定のときの当面一%を、これをいつまでも固定した考え方であるということには私は疑問を持つ一人でございます。一%論争というよりも、むしろ私は防衛構想を基本的に立てて、そして近隣諸国にも不安を与えないという、その日本防衛政策というものを内外に明らかにした上で所要の防衛力を算定してはどうだろうかと思う一人でございます。そういう意味で、私は一%だけにこだわっているということに対して、むしろそれを達成すれば日本が軍事大国になるというような言論がちまたにあるということは私は大変不思議な論争である。軍事大国という言葉は一体どこを指すのであろうか。私は総理にお伺いしたいと思いますけれども、いま世界で軍事大国と言えるのはどこの国だとお思いでしょうか。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 軍事大国という意味をどういうふうにとるかでありますが、やはりアメリカ、ソ連等は軍事大国だと思います。それは攻撃的な兵器、恐るべき攻撃的兵器を持っている国と、そういう意味においてそうではないかと思います。
  267. 林寛子

    ○林寛子君 防衛庁長官世界で軍事大国というのはどこだとお思いになりますか。同じ質問をさしてください。
  268. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま総理が御答弁なられましたように、総合的にあらゆる力を持っておって、その力をもってほかの国に大きな脅威を与えることのできる能力を持った国、その中で特に大きなところが軍事大国で、あえて固有名詞を挙げるということになりますと、やはり二つの超大国の名前を挙げざるを得ない、こういう感じだと思います。
  269. 林寛子

    ○林寛子君 私も同じ気持ちでございます。やはり名前を挙げると言われれば、世界の中で軍事大国というのはアメリカとソ連と言わざるを得ないだろうと思います。けれども、国会論議を伺っておりまして本当に不思議だな、また国民がそれを知らないで聞きますと私は大変誤解を得る。日本が軍事大国への道を歩んでいる、歩み始めた、それらのことが国会論議の中で議論されることすら私は不思議でならないんです。そういう意味で、私は総理が「わかりやすい政治」をとおっしゃいましたので、私はあえてここで日本が果たして軍事大国になり得るのかどうか事例を挙げて総理に御感想を伺いたいと思いますので、ちょっとお聞きいただきたいと思います。  ちなみに、五十六年度の競馬の売上高、約二兆一千六百億でございます。競馬でございます。そして日本人が一年間のたばこを買った金額、たばこの売上高、約二兆七千億でございます。昨年度の国防費約二兆六千億でございます。よく煙にまくという言葉がございます。日本の防衛費約二兆六千億。それを上回る日本人の一年間のたばこの購買が二兆七千億でございます。たばこの煙より少ない国防費で軍事大国になれるとお思いでしょうか。御感想を伺いたいと思います。
  270. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) たばこの売上高等のお話もございましたが、もう一点私の方からつけ加えさしていただきますが、防衛庁費の中には人件費、糧食費も含まれておりまして、そのパーセンテージは石油ショックの直後は一番多い年は五六%、防衛庁費の実に六割は人糧費でございました。最近になりまして、その意味ではそちらのパーセンテージを少々下げながら装備の方へ努力いたしておりまして、その金額だけで申しますると決して大きな金額ではございません。その点だけはあえてつけ加えさしていただきたいと存じます。
  271. 林寛子

    ○林寛子君 それからもう一つ、私はこれは趣味だからといって済ましてもいいんですけれども、一応皆さん方に私は聞いていただきたいと思います。  毎年自衛隊の中では川柳大会というものが行われております。ことしもやはり十月の二十一日にこの川柳の選考が決定されました。私はその川柳の入選作を全部拝見いたしました。その中に幾つかございますので発表させていただきたいと思います。「シーレーン オイル守る オイルなし」「燃料(アブラ)なく 訓練不足で あぶら汗」「補充なく 士長になっても 新隊員」「大演習 想定立て々も 場所はなし」「敵よりも まずマスコミが 気にか々り」。(笑声)いま失笑が出ましたけれども、私が申し上げたいのは、これが現自衛隊員の正直な私は川柳であろうと、川柳に託した自衛隊員の正直な心であろうと思います。私はわずかながらも彼らが精いっぱいがんばっている、この日本の自衛隊員、これだけわびしい思いをしながら、整備あるいは装備の不足の中で精いっぱいがんばって、憲法違反だとかなんとか言われながらもがんばっている彼らのこの士気を高めるためにも、私はぜひこれをいま失笑なすった皆さん方の御意見を聞きたいところでございますけれども、まず、じゃ防衛庁長官から、これをお聞きになってどうお思いになりますか。
  272. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 特に二つ目に御紹介をいただきました「燃料(アブラ)なく訓練不足で あぶら汗」、これは航空自衛隊員の作なんでございますが、一点だけ先生にお伝えさせていただきたいと思います。  実は、兵器の近代化というものは常に相対的なものでございまして、これに努力をしなきゃならない。そうしますと、特に飛行機のごときは当然エネルギーの消費は上がるわけなんです。新型の飛行機ということになりますとそうなってくるんでございますが、これで金額がそれほど伸びないという苦労が一つございます。もう一つはさらに油そのものの代金がどんどん国際的に上がってくると、こういう問題もございます。さらにまた、円ドル関係で円安ということが起こりますと、これはまことに驚くべきわれわれにとっては苦しいことになるわけでございまして、そういうものを全部足し加えてみましても、現在の自衛隊員は大変制限された中で必死になって国の防衛に携わってくれておる。その中でわれわれは、特にこの川柳の中で訓練という言葉が出てきておりますけれども、本当にある飛行機で練度を高めるためにうんと油を使って訓練をしたいけれどもその油がないと、こういうような悲壮な中で努力をしておるということは御理解いただきたいと存じます。  さらに、隊員の生活環境については御存じのとおりでございますが、われわれは先ほど申し上げましたような理由から、正面の装備に重点を置いているために、隊舎の建設などは全部後送りいたしております。その中で彼らはこの寒い中でも、あるいは北海道で、あるいは海の上で努力をしてくれておることでございまして、ひとつよろしく御理解を心からお願いを申し上げる次第でございます。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が十三年前、防衛庁長官をやっているときの川柳の一等は、「たまに射つ 弾がないのが 玉にきず」というものでした。これもそのときの窮状をあらわしていると思います。しかし、いまの川柳の中で、敵よりもマスコミが気にかかるというのは、これは必ずしも悪いことではない。それはマスコミが気にかかるように、マスコミだって監視しているんだし、国民の代表でもありますから、それは気にかかって一生懸命注意深くやらなければならぬ、そういう意味で、それは半分はまじめに聞くべき要素もあると、そう思っております。
  274. 林寛子

    ○林寛子君 引き続きまして、先ほど防衛庁長官がおっしゃいましたけれども、その正面装備のためにというお言葉がございましたけれども、私は続いてやはり防衛力整備について、もともと皆さん御存じのとおりに、もちろん総理防衛庁長官経験者ですから、いまさら言う必要もございませんけれども、発注から完成して手渡しまでにそれだけの時差があるわけですね、時差と申し上げた方がいいか時間をと言った方がいいか。そういう関係からいわゆる単年度の予算、その単年度予算主義というものの中で、国庫の債務負担行為による次年度以降にまたがっている、そういうときの毎年度の予算編成時にそれを単に決めているだけにすぎないんだと。だから、私はそういうときに国のこれは本当に存立にかかわる防衛計画の実行は、あらかじめ、あらかじめですね、年次計画によって着実に整備していくべきだと、そういう意味で私は単次ではなくて、年次的なもう一度大きな見直しをするべき時期ではないかと思うんですけれども、その辺の御意見は長官いかがですか。
  275. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 正確ではございませんが、少なくとも四次防まではいま先生が御指摘のような傾向で予算というものをつくってまいりました。しかしながら、五十一年に防衛大綱を決定をいたすころから、やはりある程度の中長期――長期までいきませんでも中期の期間を枠を決めて、その中でそのときどきの経済情勢、あるいは社会的な諸般の事情、あるいは財政その他を勘案しながら、その年々に決めていく方がよかろうという形で現在の予算の決定方式はなっております。私は、どうも後者の方がここ当分とるべき姿ではなかろうかと、こう考えておりますが、何と申しましても防衛大綱の水準に一年でも早く近づける、これが最大の目標でございまして、ただいま手がけておりますのは五六中業と呼ばれるこの中身の達成でございます。  これでお答えとさせていただきたいと思います。
  276. 林寛子

    ○林寛子君 総理は、来年早々訪米なさるということを先ほどからも聞いておりますけれども、日米首脳会談で防衛問題をどういうふうにお話し合いになるおつもりなのか。また、私は揺れると言うとオーバーかもしれませんけれども、日米の同盟関係を確固たるものにするためには、防衛予算や、あるいは軍事技術の協力問題など個別の問題よりも、私はむしろ日米安保条約に基づく共同対処の戦略とか、戦術とか、そういうものを可及的速やかに両国で合意を見て話し合う方が、長期的な日本のためには大事なことだろうと思いますので、その辺の首脳会議での軍事問題、あるいは日米の同盟問題についての御所見を伺わせていただきたいと思います。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先生のお考えに私も同感でございます。そのほか、やはり国際情勢の分析や認識、あるいはさらに経済問題もございましょうし、あるいは発展途上国に対する対策等もございましょうし、そういう総合的な問題を基本的に話し合うと、個別的な数字やなんかにわたる話はしたくないと、こう思っております。
  278. 林寛子

    ○林寛子君 ぜひいまおっしゃった線で、私は長期的な、あるいは大局的な見方をしていただきたい。御成功を祈っておる一人でございます。  重ねて私は、総理が首脳会談をなすったときに、日本にレーガン大統領を招請なさるおつもりはありや否や。私は、やはりレーガン大統領に訪日していただいて、現在の日本というものをよく見ていただければ、日米の話し合いというものは大変これからお互いに理解しやすくなると思いますので、首脳会談の中でレーガン大統領の訪日を招請なさるかどうか、その辺のところもお気持ちとして伺わせてください。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レーガン大統領は日本にはすでに二、三回おいでになっていると思います。しかし、大統領としてはまだおいでになったことはございませんので、その話し合いの中身におきまして、レーガン大統領、もし日本へおいでいただけば大歓迎したいと申し上げたいと思います。
  280. 林寛子

    ○林寛子君 それから、最後に一言防衛庁長官に、けさ自由民主党の安保合同会議で、私どもは五十八年度の予算編成に関する決議をいたしました。それは、総理が首脳会談においでになる、その中にいらっしゃるお立場が、有意義と言うと語弊があるかもしれませんけれども、日米間で対等にお話し合いができるような立場で行っていただきたい。そのためにも私どもは、少なくとも防衛予算は対前年度比の七・三四六%増という概算要求の枠を必ず達成していただきたい、そういうことを御要望申し上げたところでございます。これでも、総理アメリカでお話し合いになるときには、少ないという声が出るかもしれませんけれども、少なくとも首脳会談で対等に話し合える土壌だけはつくって差し上げたい。そういう意味防衛庁長官にもあるいは大蔵省にも、この予算達成、概算要求の達成というものを要望申し上げたところなんですけれども、まず防衛庁長官と竹下大蔵大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  281. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 先ほど、最初に先生は、日米に防衛摩擦があるという御発言がございましたが、私の理解するところでは、摩擦はなくて、少なくとも防衛に関するテンポ、スピードといいますか、これについての認識の差があるかもしれないと、こう考えておるわけでございます。というのは、まさに国際情勢が変化を遂げてきて、われわれが考えるより以上に極東におけるソ連軍の配備、配置、こういったもののペースが早まってきているという認識があるいは彼我の間に差があるのかもしれません。  それからもう一点は、わが方といたしましては、こうやっていろいろ財政再建の中で努力をいたしておるわけでございますが、防衛庁費の立て方から、先ほど先生の御指摘のあったようなところで、非常に私どもの言葉を使わしていただきますと義務的経費がパーセンテージが高いものでございますから、なかなかうまいぐあいに防衛庁の予算というのは落ちつきにくいところもあるのでございますけれども、しかし一面、これまたアメリカの特に議会の、政府とは申しませんが、議会の筋から見ますと、そういうことについてやはり何となくいらいらが生まれつつあるんじゃなかろうかと思われる点もございます。ただ、私といたしましては、五十八年度予算については二点だけ、特に心を置いて大蔵折衝においてはお願いしてみたいと思っていることは、第一点が五十八年度の予算は五六中業の初年度に当たること、これが第一点でございます。それから第二点は、ただいまもょうちょう申し上げましたように、日米関係において非常に重大な年であるのじゃなかろうかと。この二点から主張するものは主張して、大蔵大臣とのお話し合いをさしていただきたい、こう考えておる次第でございます。
  282. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 予算編成に当たりましては、これは聖域を設けるわけにはまいりません。これは何回もここで申し上げておるとおりであります。そして、防衛予算の中には、いま防衛庁長官からの御発言にもございましたように、いわゆる国際取り決めに基づく義務的支出というようなものが存在しておるということ。そして、最初の御答弁にありましたように、人件費部分が大変な比重を持っておると。それらのところに十分注意もしながら、他の予算との調和を考慮しつつ編成作業に臨みたいと申し上げておきます。
  283. 林寛子

    ○林寛子君 次に、行政改革でございますけれども、すでに質問が出ている部分もございますので、一、二点だけお伺いしておきたいと思います。  いま、私ども見ておりまして一番問題になるなと思われますことは、昨年の七月の第一次答申からすでに第三次答申までが発表されております。来年の三月の最終答申へ向かって作業が行われていると言われているんですけれども、いままでどの問題の処理を終わり、また現在どの問題を処理しているか、また残る問題は何か、それが国民の前にわかりにくいという点が一番問題だろうと思いますので、その点お答えいただければ。
  284. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 今日まで臨調から三回の答申が出たわけでございます。第一回の答申は昨年出まして、昨年の秋の臨時国会において行革関連法案という形で成立をいたしまして実行いたしました。これは予算の削減、行政の合理化、それを中心とした法律でございます。それからことしの春に答申が出ましたのは第二次答申でございますが、これは許認可が中心でございまして、その法律も春の国会で成立をいたしました。いよいよ今度は第三次答申、これが七月に答申が出まして、これに対応する政府の方針は九月の末に行革大綱ということで決まりまして、それに基づいていま実施の段階に入ったと。その実施に入ろうとしておる第一の大きな問題は国鉄の再建、この国鉄再建に関する監理委員会をつくるということを内容とする法律をいまの臨時国会にこれは提案をしております。それから続いてやらなければなりませんのは、三公社のうちの電電とたばこ、これが問題でございまして、できるだけ速やかに成案を得るようにしたい。それから第三番目に申し上げたいのは公的年金、すなわち国家公務員の共済組合と三公社の共済組合の統合をやっていこう。これは大体いま大蔵省を中心として案を練っておりますから、次の通常国会に提案をするようにしたい、こんなふうに順序を立てて進めております。  そこで問題は、残っておるのは何かということでございまして、これは第四次答申と申しますか、最終の答申になるわけですが、これは行政機構が中心になります。各省庁の内部部局の問題、それから地方の出先機関の整理の問題、特殊法人の問題、こういう問題はいま臨調の各部会で真剣に検討をしていただきまして、近く部会から臨調の本委員会の方にこの案が提出される。それを審議していただいて、来年の三月の中ごろ最終答申が出る。それが出たら、今度は政府がそれを実施する、こういうことでございます。  私どもは、あくまでも今日まで第一次、第二次と臨調答申を最大限に尊重する、こういう決意で実行してまいりましたから、今後ともそういうつもりで努力をしていきたい、こんなふうに考えております。
  285. 林寛子

    ○林寛子君 重ねてもう一点、これは総理にも伺いたいと思いますけれども、一部に行革の熱が冷めたのではないかという声が起こっていることでございます。それは、土光さんがどうしていらっしゃるんだろうか、土光さんおかわいそうではないか、あるいは鉄は熱いうちに打てと言うけれども、もう冷めてしまったのではないか、そういうことが世間でうわさされているんでございます。  私はその原因というものをここでもう一度考えてみなければいけないと思います。これは少なくとも政府が臨調をこれからどう応援していくのか、そしてまた臨調の答申を尊重し、それを実行するためにはどう進めていくかという、私は中曽根総理になられてもう一度はっきり国民の前に、やはり政治生命をかけると行管庁長官のときにおっしゃっていた言葉をいま国民はもう一度聞きたいんだろうと思いますし、またその行革の熱が冷めているのではないかと言われる中に、一般の受け取り方としては、人勧の凍結あるいは仲裁裁定、そういうものの働きを、人勧の凍結は危ないんじゃないか、やっぱりお役人は別だなという国民感情が私は行革の熱が冷めたと感じる何かであろうと思います。そういう意味で、私はやはりみずからの身を切って、あるいは血を流し、そしてそれらの覚悟がなくては国民の協力も理解も得られないと思いますので、いま一度中曽根総理から行革に対する御決意のほどを伺わしていただきたいと思います。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行革につきましては、以前以上の熱意を持ちまして、全身全力を傾倒してやる決意でおります。  私、組閣に際しまして、閣僚候補一人一人、官邸においでいただきましたときに、皆さんに、一人一人に、あなたは行革に協力してくれますか、臨調答申の基本線に沿って実行してくださいますか、それを一人一人に確認いたしまして、そして御賛成をいただきまして閣僚になっていただいたと。これは閣僚になるときの決意が非常に大事だ、そのときの約束が大事だ、そう思いましたから、失礼なようなことではございますけれども、そういうことをやった次第でございますし、それから初閣議におきましても同様のことも申し上げ、先ほどここで申し上げましたように、閣議決定や閣議了解について外で批判がましいことは言わないでもらいたい、私に直接言うことは差し支えございませんと、そういうことも念のために確認してきておるところでございます。  いま行革の熱が冷めたようだと言われておりますが、そういう事実はないので、実は九月二十四日に行政改革大綱を決めまして、いまそれを実現していくための第一過程に入っております。それから次の第四次答申と言われるものをつくるために臨調は全力をふるって、いま行管長官が御答弁になりましたように、機構問題等々の問題にいま入っておるわけでございまして、いずれ早晩その部会報告やら何かが出てくると思います。そうすれば相当世の中はまた騒ぐんではないかと、そう思います。いまそういう一番中に入って検討が進められている時期でございますので、冷めたということは全く当たらないと確信しております。
  287. 林寛子

    ○林寛子君 いまの御決意が国民にそのまま理解され、伝わることを私も願う一人でございます。がんばっていただきたいと思います。  ただ一点、いま人事院の勧告の話を私いたしましたので、引き続きまして人事院に伺いたいんですけれども、私は人事院の勧告をするまでの調査方法を一度総裁から簡単に御説明いただければと思います。
  288. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 事務的、手続的で非常に細かいことにわたる問題でございますので、この席上ではごく簡単に道筋だけを申し上げたいと存じます。  われわれの民間企業の実態調査でございますが、これは御承知のように、企業規模が百人で事業所規模は五十人以上というものに該当する企業を対象に調べます。これが全国で約四万件ございます。その四万件の中について全部が全部こちらが出向いて調べるわけにもまいりませんので、その中から統計的に非常に精度の高い方法として層化無差別抽出法というのがございます。それでもって規模別、段階別にアトランダムに取り出しましたものが七千六百程度。七千六百については直接にこちらが参りまして調べてまいるわけでございます。それで約四万の事業所は全部調べたと同じような結果が出ます。それにつきまして毎年四月一日現在で実際に支払われた給与というものを調べてまいりまして、それと公務員と対応いたしまして同じような職種、同じような年齢、同じような職務の内容というものを照らし合わせまして、それが現実にどういう差額が出るかということを全部詳細に調べて結果を出す。その結果に従いまして、出てきた較差がございますればその較差はやはり埋めていただきたいという方針を、これは三十九年以来ずっと連続的に同じような方針でもって今日まで来ておるというのが調査の実態でございます。
  289. 林寛子

    ○林寛子君 ただ、私は人事院に正直に国民の声もやはりもう一度聞いていただきたいと思います。私が聞いておりますと、人事院の勧告はやはり高過ぎるのではないか。もともと人事院が勧告をするまでの調査というものは、中小企業あるいは零細企業、もっと底辺の幅広いものを入れないからあれだけになるんじゃないか。やっぱり一般の中小企業とか零細企業者から見れば、人事院の勧告自体がうらやましい、やっぱり親方日の丸なんだとか、あるいは終身雇用であるとか、なおかつ退職金がいただけるとか、そういうことで一般の零細企業者あるいは中小企業者から見れば人事院の勧告自体が大変うらやましいというようなふうに映っております。ですから、いま総裁がおっしゃいましたように、八千件の中から厳正な調査を勧告するまでになすっていらっしゃるというお答えをいただきましたけれども、現在の調査方法というものをもう少し手直しするか、あるいは幅広くするか、何らかの形で見直そうという人事院の御姿勢があるのかないのか、伺わしていただきたいと思います。
  290. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 現在の調査方法は、いま申し上げましたように三十九年以来踏襲してやっておりますが、これによってカバーいたしまする民間企業の従業者、労働者というものを調べますと、これが全従業員の約六割に当たっております。ほぼいいところの線じゃないかというふうに私自身はいままでは考えておったわけであります。  ただ、先生も御指摘になりましたように、やはりもっと国民の側から言えば小さなところで大変苦心してやっておる、しかも業績が上がらないといったところもあるんだと、どうもやはり公務員の場合はいいところばかりとっているんじゃないかというような声がございます。私たちにもそれは直接間接にいろいろ耳に入っております。十分それは心してやっているつもりでございますが、ただ結果的に言って、いままでこの調査が結局そのまま公務員の給与にはね返ってくるものですから、一つのやはり労働条件と申しますか、そういうことで形成されてきておるという点が実績としてございます。それと、六割程度を反映しているというのは、それほどひどい基準ではないんではなかろうかという点が一つ。もう一点は、これは三十九年に実は三公社五現業、仲裁裁定のところで百人という基準が出たわけでございまして、それとの対比ということでこちらも直したという過去の実績がございます。  そういう点で今日まで来ておるわけでございますが、いま御指摘になりましたような点も十分頭に入れまして、今後検討は加えてまいりたいと思っております。臨調でももう少し職種によっては小規模のものも調査対象にしてはいかがであろうかと、そういう点も含めてひとつ検討してもらいたいという線が出ておりますので、われわれといたしましても、その点は虚心に受け入れて十分に調査に値するものかどうか、うまくいくのかどうかということについては検討を加えてまいりたいというふうに考えております。
  291. 林寛子

    ○林寛子君 続きまして、十八年後、二十一世紀を迎えますときは私自身も六十五歳以上の老人の仲間入りをしております。少なくとも私どもは、この二十一世紀を迎えますときに、わが国が高齢化社会を迎えてどの程度になっているのかということを私はここではっきりと国民に理解してもらわなければいけない。また、政治家としても、あるいは国民の一人としても、二十一世紀の日本の姿というものを確実に理解するように私どもも努力しなきゃいけないと考えている一人でございます。  御存じのとおり、人口問題に比例してまいりますから、私どものこの地球上の人口というものが一八三〇年から一九三〇年、百年かかって十億になり、そして一九三〇年から一九六〇年のわずか三十年間で倍の二十億、そして一九六〇年から七五年のわずか十五年間で四十億、ことしは四十五億になんなんと言われます。これが二十一世紀を迎えるときには六十二億から六十五億と言われます。果たしてそのようにふえるか、あるいは人口の増がだんだん下がってくるか、その辺のところは予測できませんけれども、少なくとも単純計算をいたしましても、本年四十二億から四十五億と言われる人口の中で、わが日本の中では少なくとも九人に一人は六十五歳以上の老人、それが私が冒頭に申しました二十一世紀には、私の時代には四人に一人の老人になるわけでございます。経済大国ではございますけれども、福祉国家とは言えない。総理の演説にはあったけれども、現実には福祉国家と言えないこの日本の中で、いま九人に一人でも福祉国家と言えない日本の国が、私が老人になった四人に一人のときには――二十一世紀を迎えたときには、果たしてこのままでいったらどうなるのか。四人に一人の老人になった場合には、厚生大臣、恐縮ですけれども、あとの三人は働いたお金を全部税金に納めても一人の老人が養い切れない高齢化社会を迎えるのではないでしょうか。
  292. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 林議員にお答えを申し上げます。  御指摘のように、いま急速な高齢化社会になっている、こういうことでございます。もう先生よく御承知のとおりでございますし、私はいまこれから十八年間やっていく間におきまして、日本の高齢化というのは非常に進んでいくだろうと思います。それは一つには、わが国がいままで果たしてまいりました福祉というか、医療というか、そういったものの私は影響もあるんだろうと思うんです。非常にいい結果だと思いますけれども、お年寄りまで長生きができるということである、現在世界最高の平均寿命を持っておりますし、それから乳幼児の死亡率も非常に少なくなってきている、子供が産まれなくなってきている。それからもう一つ申しますと、夫婦に子供が産まれるということ、これが非常に少なくなってきていると、こういうことでございますが、私はそういったときにこそいろんな点でお年寄りの社会というものを考えていかなければならない。現在九人に一人とこういうことでありますし、先ほど四人に一人ということが二十一世紀の時代にはあると、こういうふうなお話でございましたけれども、そういった社会にこそ、われわれはいろんな形でのこの福祉社会というものを維持し、また発展させていかなければならない。これは現在から考えていかなければならない問題ではないかというふうに考えております。  先ほど先生のお言葉にありまして、まだ福祉社会、福祉国家とは言えないと、こう言っておられましたけれども、私は必ずしも思わない。いろんな医療の問題にいたしましても、ほぼ西欧先進国並みの水準までは達しておるし、年金の問題にいたしましても、大体先進国のところまでは水準としては私は追いついてきていると思いますし、その他福祉万般につきましても大体よくやってきているのじゃないかと、こういうふうに考えておるところでございます。さらにこれを一層進めていくためには、先ほど総理から御答弁がございましたたくましい福祉の国日本をつくると、こういうことでありまして、自立精神を持った国民をつくっていく、生きがいを持った老人をつくっていく。単に病院に入って寝転んでいるのじゃなくて、本当にリハビリテーションその他を通じて、社会復帰ができるような社会をつくっていく、こういったことを私たちは考えてやらなければならない、こういうふうに考えております。
  293. 林寛子

    ○林寛子君 いま大ざっぱに伺っていて、よくわかるんですけれども、重ねていまの年金制度、いまいろいろ年金制度が問題になっておりますけれども、このままでいきますと、年金制度が確実に破産すると思われるんですね。その点について長期的な観点から、厚生省で何か具体的なことをお考えになっているかどうか、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  294. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  まさに御指摘のとおりでございまして、いまからこれはやっていかなければならない。現在は標準報酬、平たく申しますとサラリーの五・三%を負担をしてもらう、会社の方が同じように負担をする。それから国民年金につきましては五千二百二十円という負担をしておりますが、それでやっておりますが、高齢化社会になりますと、その辺が非常な大きな負担をしなければならない。厚生年金におきましては本人負担が一七・五%。それから国民年金の方は一万五千七百円の負担をしなければならないという計算、これは五十五年度の価格で申してそういうことでありますし、五十五年に年金の計算をいたしましたときに、そういうことになっておりますが、そういった負担に一体耐えられるかどうだろうか、そこをどういうふうにしてやっていくかということを、これから、現在真剣に検討していかなければならない、こういうことでございますし、臨調の方からも御指摘がありましたように、年金の統合化というのをやる、五十九年度には法案を出せるような形で準備をしていくということでございますから、現在いろんな形におきましてこの準備をしているところでございます。これは世代間の負担、こういうことでございますから、広く意見を聞いていかなければならない。いろいろな審議会もありましてやっておりますが、そのほかにも広く有識者に二十一世紀の年金について考えるというアンケートを出しまして御意見をいま聞いているところでございます。一生懸命やりたいと思います。
  295. 林寛子

    ○林寛子君 あと一点厚生大臣にお伺いしたいと思いますけれども、先日、私新潟で相談を受けましたといいますか、意見を言われて、私もびっくりしたんでございますけれども、農家にお嫁に行った方が、御主人が飲んだくれて働いてくれない、嫁に行ったそのお嫁さんは子供二人を抱えて亭主の働く分まで働いて、もう耐え切れなくなって、ある日子供を連れて隣村の実家へ帰ったわけでございます。そして自分は、自分の母親と自分と子供二人と四人で生活保護を受けるようになった。そうしたらその四人家族で、彼女の言うにはたしか十二万五千円の生活扶助を受けているんだと。私が嫁に行って、主人が働かないで、その分仕事をしながら十二万五千円稼ごうと思ったら大変だった。そして飲んだくれの亭主と別れてよかった。私は生活保護を受けて前よりもずっと裕福で、そして働かないで十二万五千円もらえてうれしいという話を聞いた。そうしましたら、その飲んだくれて別れた御主人が別れた女房のところへ見に来まして、日本の国はこういう国なのか、働いているより働かないで、別れて、女房が子供を連れて帰った方が裕福で、働かない方が裕福に暮らせるんだなと言って、その別れた亭主は復縁を申し込んだと、こう言うんですね。  私、その話を聞きまして、本来の生活保護行政というものは真に恵まれない、あるいは本当に保護しなければいけないという人にあるべき生活保護行政というものが、私は確実に、それらの機能、本来の機能というものが間違ったふうにといいますか、間違ったというと語弊があるかもしれませんけれども、生活保護によってかえって怠け者を助長さすというようなふうに一部行われているとしたら、私は大変な問題だと思いますし、本当に恵まれてない人にはもっと高額な保護をしてもいいと思いますので、その辺のところを厚生大臣の御意見があれば伺いたいと思います。
  296. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 林議員の御指摘よくわかるんです。生活保護というのは、憲法で保障されていますところの生存権、健康で文化的な生活を営む権利を有するというところのものに基づきまして生活保護を行っておるわけでございますが、これはその人の持っているところの資産の状況であるとか、そういったものを非常に精査いたしましてやる、こういうことでございます。しかし、もう飲んだくれてというような形になったのでは非常に困りますから、むしろ勤労意欲をやっぱり喚起していくということは私は大切だと思いますし、現在でも、制度といたしましては、就労した場合には収入の額に応じて一定の控除を認めることであるとか、あるいは技能訓練を行わせるというような形でやっております。  ただ、新潟のお話ということでございまして、まあそういったところの事情その他もいろいろあるんだろうと思います。たとえば農家の方では現金収入が非常に少ないということもあります、現物の収入がありますから少ないということもあって、比較してみるとどうも収入があるからと、こういうふうなこともあるだろうと思います。そういった点は十分に気をつけまして、いやしくも御指摘のあるようなことが起こらないように、これからも努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  297. 林寛子

    ○林寛子君 かつて予算委員会の一般質問で、私はベビーホテルというものを質問したことがございます。そのベビーホテルに関して、私はその後、労働省あるいは厚生省でそのベビーホテルの是正――ベビーホテルをあえて私はベビーホテル産業と申し上げたんですけれども、その当時ベビーホテル産業と言わざるを得ないようなベビーホテルの現状でございました。そしてベビーホテルというものは許認可の保育所と違いまして夜間営業、二十四時間営業をし、あるいは預けっ放しである、何日も母親が取りに来ない、父親も来ない。また、臨時、短期、長期にわたって無制限に預けるということで、ベビーホテル問題を行政指導はできないまでも、地方自治体にも及んでいますので、厚生省あるいは労働省で調べてくださいといって質問したことがあるのですけれども、その後の、厚生省、労働省どちらからでも結構ですけれども、ベビーホテル状況について調査結果を簡単に、それから現状を御報告いただきたいと思います。
  298. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 林議員御指摘のありましたベビーホテルの問題でございますが、御指摘に基づいたと思いますが、五十六年の一月に全国調査をいたしました。  五百六十四カ所の存在が確認されまして、その児童数は約一万人でありました。その内容につきましては大変問題があると考えられまして、ただ、その当時は立入検査をするという権限もなかったわけでございますから、消防署等の協力を得まして一斉点検を行いました。調べてみましたならば、すべてのベビーホテルで保健衛生面や防災面に関して問題がいろいろとあるということがわかったのでございまして、とりあえず行政指導をしたところでございます。その後、五十六年の六月に児童福祉法が改正になりまして、はっきりした立入検査権限というものを認める、こういうことになりましたので立入検査を行い、また、改善勧告等を行うということにいたしたところであります。  私は思いますのに、ベビーホテルというのはけしからぬとこうおっしゃって、いろいろ改善をしていかなければならない。しかしながら保育所というようなものがあるわけでございますから、保育所の機能というものをやはり社会の実態、そういった需要に合うように変えていくということが必要でございまして、たとえば保育所の延長保育、夜七時まで保育時間を延長するとか、夜間保育をいたします、夜の十時ごろまでの保育所を開設いたしますというような施策をとってきておるところでございます。
  299. 林寛子

    ○林寛子君 労働省も。
  300. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答え申し上げます。  厚生省の方では施設のサイドから調査をなさいましたので、労働省の方はその施設に預けておられる母親の方々の調査をいたしました。これは昭和五十六年の十月から十二月、つまり昨年でございます。全国の婦人少年室を通じまして調査をいたしました。ベビーホテル、先生御存じのように夜間保育と、宿泊を伴う保育と、または一時預かり、この三種類を対象にいたしまして母親約二千人を対象にしていたしました。  その調査の内容でございますが、利用している母親の年齢は二十五歳から三十四歳が四分の三を占めており、ほとんどが働いております。それからその職業はサービス職種が四割強と、これは非常に目立って多うございます。それから事務、販売、専門職の割合も二割前後ございました。世帯の構成は、母子世帯等夫のいない世帯がほぼ四分の一と、これもこの割合は高いと思われます。それから、預け始めたときの子供の年齢がゼロ歳が半数と、これが大変高いと思われます。現在、預けられている子供の年齢は、二歳以下が六割強という状態でございます。それから、週間保育日数は六日間が多うございます。また、保育時間は、六時間以上十時間未満のものがほぼ半数を占めております。  以上でございます。
  301. 林寛子

    ○林寛子君 続きまして難民問題なんですけれども、いまベビーホテル問題を伺いまして、まだまだ改善の余地があると思いますけれども、残念ながら私は、過日難民問題で総理が本会議場でお答えになりました、十一月十九日の閣議決定で、東京都品川の大井埠頭の国鉄用地の利用、そしてそれに対して四万平方メートルで七百二十名の収容施設を建設するための予備費として二十億七千万円をお認めになったということで、私は自由民主党の難民問題小委員会の委員として大変喜んでおりましたし、私自身もアフガン難民、そしてベトナム難民、カンボジア難民、ラオス難民と、難民施設を全部回ってまいりました。けれども、けさ新聞に載っておりました事件をごらんになったと思いますけれども、総理がせっかく前向きに難民の施設に対して閣議決定までなすったその直後のけさの新聞でベトナム難民の事件を知りまして、私は大変悲しいことを目にしてしまったという気がいたしました。  そういう意味で私は、せっかく政府が前向きの姿勢で難民問題にこれから本格的に取り組んでいこう、そして難民で定住希望者が安心して日本を定住国として選んでくれるようにというそういう施策をおとりになったにもかかわらず、またとりつつあるところでございますけれども、けさの難民の殺人事件というものが起こったことを私は大変悲しいと思いますので、これは現在難民の定住、就職の希望者数、あるいは難民の数とそして就職をする職種などについて、簡単で結構でございますけれども、けさの事件が起こったベトナム難民の定住指導、そのときのこの難民の成績などが把握されているようであれば、外務省の担当官から御報告いただければありがたいと思います。
  302. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 林委員御指摘のとおり、けさの朝刊にはベトナム難民の大変不幸な事件が報道されております。  その実態については目下警察で取り調べておりまして、どういう原因か、この加害者が極度の興奮状態にあるためにまだ判明いたしておりません。この加害者のディンはトラック組み立て工場に勤めておりまして約十八万円の収入があり、またその妻もパートで十五万円ぐらいの収入があるということで、とりわけ生活には困窮しておるとは思われませんが、何分異郷の地におきまして、文化、風土、気候、それから社会制度等々きわめて違う環境に生活しておるということからくるストレスというものが多いわけでございます。  やはり、いろいろな諸施策が講じられておりますけれども、より根本的には相談相手がいない。よろず相談所とか、そういった江戸時代で申せば駆け込み寺といったようなそういうソフトの面の努力が遺憾ながら不十分であるという点はあるかと思います。林委員御指摘のとおり、その点につきましてさらに考えてまいりたいと思います。
  303. 林寛子

    ○林寛子君 いま御報告の中ですでに、ソフト面での欠落していた部分の指導をこれからしていきたいというお言葉がございましたので、そのとおりにがんばっていただきたい。幾ら器をつくっても魂入れずでは何にもなりませんので、その点をよろしくお願い申し上げたいと思います。  それから、文部大臣にお伺いしたいと思いますけれども、戦後のこの六・三・三制の教育問題、基本的な六・三・三制というものを私は一人の母親としても、少なくとも見直していかなければいけないというような声が一般の母親の中にも起こっているということを文部大臣に認識していただきたい。少なくとも現状の、いまの学校制度を見ますときに、中学校は高校の予備校、高校は大学の予備校として私は本来の学校の機能というものが損なわれていると思われます。そしてまた、自由民主党の中にも教科書問題については有償論、無償論、両方ございます。けれども、私は一自由民主党の国会議員としても、また一母親としても、少なくともいまの教科書というもの、私は今度かわりましたけれども、当選してまいりましたときは全国区で当選してまいりました。全国を歩いておりますけれども、義務教育の生徒をお持ちのお父さん、お母さん、会場においでになった皆さん方に、教科書を見たことのある人手を挙げてくださいとお願い申し上げて、残念ながら教科書を読んだことがあると、手を挙げてくださる方は〇・一%しかございません。しかもその教科書を読んだことのあるという〇・一%の方は学校の先生でございます。私はそういう現状を見まして、いかにいまの母親が子供の教科書を見たこともない、教科書問題がどうのこうのと言っても、私たちは教科書を知らないのだ、見たこともないというのがいまの現状でございます。私はそういう意味で教科書というもの、古いと言われるかもしれませんけれども、私など小さいときは、母親に、教科書代を持っていらっしゃいと先生に言われたのよと言えば、母親は封筒にお金を入れて何年何組、何野何子と書いて子供にその教科書代を渡してくれました。そして子供は、その教科書代を翌日学校へ持っていって先生に渡すと教科書を渡される。家へ帰って、お母さん、この教科書をもらってきたのよと言うと、母親はぱらぱらとでも見たのでございます。けれども、いまの母親はいつ教科書を学校でもらったのかもだれも知りません。見たこともない。教科書がいつ配られたかも知らない。なぜか、全部無償だからでございます。私はそういう意味で、全国のお母さん方にお集まりいただいたときに皆さん方に、教科書代は幾らか御存じですか――みんな知らないとおっしゃいます。ちなみに、大臣も御存じだろうと思いますけれども、少なくともいまの日本国民の一人当たりの貯蓄額は約五百万だとも言われております。そして私どもは一年間に平均の国民一人の収入というものは三百九万一千円でございます。その中で所得税額――平均サラリーマンが納めている所得税額は十七万二千円でございます。十七万二千円平均サラリーマンが所得税を納めていただいて、少なくとも国と地方とで生徒一人に対しては平均で義務教育費というものを約五十万かけているわけでございます。その中で小学校の生徒の教科書代は一体幾らなのか、小学生の一年間の教科書代は二千百三十三円でございます。中学生の教科書代は一年間三千二百四十一円でございます。そしてお集まりいただいたお母さん方に、小学校の生徒をお持ちのお母さん、一年間に二千百三十三円のお金が払えませんか、中学生の生徒をお持ちのお母さん、一年間の教科書代三千二百四十一円が払えませんかと言ったら、お母さん方が何とおっしゃるか。扇さん、わずかそんなお金だったの、一度美容室に行くのがまんしたら一年間の教科書代って出るのね、これが私が全国回っておりまして母親から聞く言葉でございます。私は教科書無償というのはありがたいことだということはわかっておりますけれども、少なくとも高齢化社会を迎え、そして日本国民の一人一人がこれから先行き、日本の経済も危ないと言われる中で受益者負担というものがどこまで広がっていくのか、国民一人一人が不安に感じていると思います。そういう意味において、私は少なくとも親のない子供、身寄りのない子供、生活保護を受けている子供は無償で結構だけれども、払えるとおっしゃるお母さん方が大半を占めて、美容室に一回行くのをがまんして一年間の子供の教科書代が出るのであれば、国民が負担し得る金額であると私は思う一人でございます。そして私は根本的に、無償論の皆さん方ともお話しいたしますと、これを有償にすると営利的な教科書会社が競争して教科書の値段を上るだろうとおっしゃる、そういう意見もございます。けれども、私の経験からいたしますと、お母さん方に話を聞きますと、扇さん、少なくとも、子供が小学校に入ってまだ学校になじまないときにやむなく転校したときに、各県各県行く県が、県をまたがれば教科書が違うというのは何とかならないのですかという声も聞きます。少なくとも、古いと言われようと、新しいと逆に言われるかもしれませんけれども、義務教育というものは私は国定教科書であっていいという意見の一人でございます。国定教科書にすると軍国主義につながる教育をするという声がありますけれども、私はとんでもない話だと思います。義務教育は、国定教科書にして自由主義を堅守し、そしてみんなで責任を持った平和というものを進めていく、義務教育はどこの県に転校しても同じ教科書で生徒が迷わないで教育を受けられる、そしてその国定教科書は、国が小学校は幾ら、中学校は幾らというふうに決めて初めて私は親が安心して値段の決まった教科書代を払えるんだろうと思います。そういう意味で私は文部大臣に、六・三・三制、いまの中学が高校の予備校と化し、高校が大学の予備校と化している現状の打開と、あるいは将来的な日本の教育制度の根幹にかかわる教科書の平和的――あるいは国民の幼い、いたいけな子供が教育で迷わないように、学校でさびしい思いをしないためにも、全国義務教育は国定教科書にするというような御意見が心の隅にもありやなしや、伺わしていただきたいと思います。
  304. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 林さんが学校教育について非常に熱心に御検討をしていただいておりますことを感謝いたします。  二つの問題があったと思いますが、一つは六・三・三制のこの学制制度を何とかならないかと、これは御承知のとおり、終戦間もなく実施されて、もうすでに三十年以上たちました。この六・三・三制については、いろいろ問題があることを各方面で指摘をされておりますが、さてどういうそれじゃ制度にした方がいいかという、なかなか具体の問題がまだ確たるものは出ておりません。と同時に、教育制度を根本的に改革するということは、これは本当に国の基本の問題、大変な問題でありますから、そうまた軽々に結論を出すわけにもいかない、こういうことでありますから、中教審等、そういうことでじっくり各方面の意見を聞きながらこれは検討すべき大問題であると、かように現在考えております。  それから教科書の問題、これもいろいろ議論があるわけでありますが、いまわが国の教育は申し上げるまでもなくわが憲法及び教育基本法の精神に基づいてやっておるわけでございますが、国民は義務教育を受けさせなきゃならないという憲法二十六条の規定、それが教育基本法の規定によって続けております。そこで義務教育は無償ということで憲法にも書いてありますが、そういう精神を受けて御承知のとおり教科書無償の法律も義務教育ではあるわけでありまして、これが最近いろいろ林さんのような議論もあることは承知しておりますが、いわゆる人間の平等、それから平等の扱いをするということと、教育の機会均等を与えることが大事だということで、そういう精神から来ておると私は解しておりますが、これはやはり守るべき一つの大きな教育の原則であろうと思います。ただ、この問題については、中教審のこの問題についての答申等もありますから、現在臨調の答申等もありますから、中教審で教科書のあり方あるいは有償無償のあり方等も検討してもらっておりますので、その結論を持って対処したいと、かように考えておるわけでございます。
  305. 林寛子

    ○林寛子君 これはぜひ今後の課題として、議員、閣僚あるいは皆さん方の御意見も聞きながら、私は今後の日本の大きな問題として今後も研究していきたいと思いますし、また機会があれば文部大臣にも伺いたいと思います。  次に科学技術振興に関して、大変時間が押し迫っておりますし、午後から続いておりますのでお疲れだろうと思いますが、続いて質問をいたしますので、科学技術庁長官、恐縮でございますけれども、ちょっと乱暴な質問をいたしますけれども、まとめて簡単に後でお答えいただければありがたいと思います。  御存じのとおり、わが国の繁栄が科学技術の進歩発展に負うところが大であるということは周知の事実でございます。ところで、二十一世紀に向かってこの繁栄を続けているかどうかもひとえにこの科学技術の振興にかかっていると私は思っておりますし、また私は科学技術政務次官という要職を賜りまして、拝命いたしまして、私は大変いい勉強をさせていただいたわけでございますけれども、これからの科学技術の振興というものが果たしてどこまでいくか。また、御存じのとおりの財政状況の厳しいことについても私も勉強してきたつもりではございますけれども、このようなときにこそ将来を見据えて、本当にわが国として行うべきことは必ず断行すると、そういうことが何よりも肝要だろうと思います。そういう意味で、目先のことにとらわれてその対症療法にとどまることを一番私はおそれるところでございます。一歩前進二歩後退では、科学技術に関してはこれは通用いたしません。そういう意味で、私は科学技術の振興策というものは決して後退してはならない。そう信じている者の一人でございますし、科学技術庁長官もその気持ちはよくおわかりであろうと思いますので、この財政状況の厳しい折りから、果たしてどのように科学技術振興をお図りになるのか。  また、先般、新しい科学技術白書が公表されましたけれども、そこで私は、「創造性豊かな科学技術を求めて」というサブタイトルがつけられておりましたので、まさにその創造性に富んだ科学技術を育てるための方策を積極的に講じることこそ、私は二十一世紀へのわが国の繁栄の礎だろうと信じております。そういう意味で私は、この創造性に富んだ科学技術育成方法についてどういうことをお考えになっているか、端的にお答えいただければありがたいと思います。  また、いまを去る二十数年前にわが国は原子力開発に手を染めました。そして、総理はその事情を一番御存じの方なんですけれども、それがこれまでの粘り強い研究開発の努力によりましてわが国は原子力の先進国の一員となったわけでございます。  原子力はいまや総発電規模の一割を超えるようになっておりますけれども、宇宙についてもそしてまた成果は目覚ましいものがございます。十数年前に米国がアポロ計画によって人類を月に送ったわけでございますけれども、まさにそのときにわが国の宇宙開発が始められたわけでございます。そしていま、赤道上空三万六千キロメートルの位置に人工衛星をみずからの力で、そしてみずからの手で打ち上げ、静止することができるように現在なっているわけでございます。御存じのとおり、これも目先のことにとらわれないで長期的な視野に立って取り組んできたその成果があらわれたんだろうと私も信じている一人でございます。  そこで、科学技術庁長官もいままでの育ててきた原子力あるいは宇宙開発、また、それらを今後どのように持っていきたいのか、すべて科学技術行政というものにまとめてこれはお答えいただきたいと思いますし、お時間もございませんし、失礼ですけれども、簡単に長官お答えいただければありがたいと思います。
  306. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) お答えに入る前に、前政務次官として本当にすばらしい実績を残していただきました。庁を明るくしていただきました。先生が去るに当たって、庁の職員一同そろって涙を流しながら見送ったその形、影を私は見守っておりました。深甚の敬意を表したいと思います。  その次に、お答えになるわけでありますが、いわゆる財政の厳しい中で科学技術を後退させたらいけないよと、お話のとおりでございます。私が通産政務次官のときに、いまの総理、通産大臣でございました。資源は有限であるよと、人類は無限であるよと、いまの世代は有限の資源に対し無限の人類は挑戦をする時代に入ったのだから、ひとつ科学技術の振興に力をいたすべきであるよと、こういうことを諭されました。いまもその心を放していないわけであります。だからして、われわれは本当に廃墟の中から今日の大国をなし得たもの、これは平和であったこと、これは当然でありますけれども、科学技術に負うこと非常に大きいと、こういうことで、科学技術立国と、この精神を手から放さない、そういうことを国是として国の命運をかけて今後とも力をいたしていくと、こういうことでございます。  それから、次にお話の出ましたのは、先般白書を出しました。これも先生御存じでしょうが、私たちは勉強をよくしました。江崎先生、いわゆる大先生をお呼びしまして、そのときにこういうことをおっしゃいました。日本の科学技術振興は、上水道にたとえれば、とにかくいままでは貯水池から導水管を、そうして家庭への水道管をと、いまの日本はそれではいけないのだ、いままでは途中の導水管の水を取ってそれに日本の知恵をつけてやってきたのだと、これからは貯水池をどうつくるかと、こういう科学立国にならなければならないよと、こういう諭しを受けたわけであります。したがって、創造性、未知の世界、そういう本当に未知の世界に挑戦する科学技術の振興、独創的なもの、創造的なものをやろう、こういうことに力をいたして、今後とも、先生御存じのとおり二つの柱を中心にやっていきたい。  原子力はよく御存じのとおりでございますから、ひとつ国民の合意を得るように誠心誠意努めてまいりますから、よろしくお願いいたします。  そして宇宙開発、これも申したいことたくさんございますが、時間がないそうでございますから、とにかく先生おっしゃいましたとおり、われわれはたゆまない努力をやる、本当にたゆまない努力をやる。そして、原子力の問題につきましては、私どもは本当に人類は原子力と共存するのですよ、同居するのですよ、そういう気持ちでひとつ今後ともやらせていただく。  時間がございませんで、そういうことでひとつお許しをいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  307. 林寛子

    ○林寛子君 大変前向きに長官が御努力いただいておりますことに敬意を表し、今後とも科学技術振興のためにわが国の力を挙げて、総力を挙げて科学技術振興に御努力賜りたいと思います。  続きまして国土庁長官にお伺いいたしたいと思います。  昭和五十二年に策定されました第三次全国総合開発計画におきまして、大都市への人口と産業の集中を抑制し、また一方、地方を振興して過密過疎問題に対処しながら、全国土の利用の均衡を図りつつ、人間の居住あるいは環境、そういう総合的な形成を図るということをねらいとして定住構想の推進をうたっております。  私は、定住構想のその後の進捗状況見ておりますと、その柱となる定住圏の整備につきましては、人口の地方定住に先導的な役割りが期待される地域をモデル定住圏として計画の策定、整備の推進が図られましたし、また全国的な見地から、均衡のとれた国土の発展を図り、そして各地域に定住条件を形成していくための施策が展開されるなど、さまざまな努力が行われていることは敬意を表する次第でございます。  しかしながら、昨今の経済社会の情勢を見てまいりますと、三全総策定時の想定を超えるあるいは想定とは異なる動きというものが私は生じてきつつあるのではないかと憂う一人でございます。  そういう意味で、その第一は、人口動向の変化でございます。出生率が三全総の想定とは異なって、御存じのとおり低下しつつありますし、将来人口が三全総の想定を下回ることはもうすでにほぼ確実視されております。たとえば、昨年の発表されました厚生省の人口問題研究所の中位推計によりますと、昭和六十五年度の人口は一億二千二百八十万人、そういうふうに推計され、三全総の推計でございます一億二千八百三十万人を五百五十万人も下回る見込みが提示されております。また、出生率の低下に伴いまして、人口構造の高齢化、そういう問題が一層急ピッチで、先ほど申しましたように、進行しているわけでございますので、この人口の地域的展開を見ておりますと、三大都市圏への人口集中がようやく鎮静化しつつございますし、また人口の地方定住の兆しが見えてきたのではないかと思われております。  そういう意味で、第二は、産業就業動向の変化でございますし、第三次産業が予想を上回る勢いでいま伸びつつあるところでございます。この就業者は、全就業者の五五・四%と、すでに三全総の想定を上回っている反面、工業の地方分散はおくれがちであると言わざるを得ないと思います。  そういう意味で、次の第三点というのは、国民の価値観の変化、生活様式の変化でございます。ゆとりや文化を求める志向が増大し、都市的な生活様式が農村においても一般化しつつあります。こうした情勢変化をどのように認識し、また今後どのように対処なさろうとしていらっしゃるのか、国土庁長官の御意見を簡潔に伺いたいと思います。
  308. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 先ほど来、扇先生の愛国、憂党のいろいろ御意見を承っておりまして、身の引き締まる思いをしながら承っておりました。先生御指摘のとおり、三全総策定後におきまして、先ほどの人口や産業、あるいは就業の動向あるいは国民の価値観、あるいは生活様式に注目すべき変化が生じておるのは御指摘のとおりでございます。  そこで、昨年九月から国土審議会において三全総のフォローアップ作業を行っているところでございまして、そしてことし六月に中間的な経過報告が取りまとめられたわけでございますが、おっしゃるとおり、その中の指摘によりますと、高齢化の急進展、先ほど議論されておりました高齢化の急進展や人口移動の鎮静化の傾向というものがはっきりしてきております。そういう中で、活力ある定住社会をつくっていく方途を探る必要がある。産業構造がどの地域でも急速に変わってきておる。この動きに対応して、いかに地域の産業を興していくかということを中心に地域経済活性化を図ることが大切であるという点。あるいは都市化の傾向が全国的に強まってきておる、この動きに対応して都市農山漁村の計画的な居住環境整備を図っていく必要がある。それからまた、忘れがちでありますが、森林などの重要な国土資源の管理主体が老齢化、高齢化したり、あるいは過疎の結果失われつつある。こういう問題として、都市住民の目に触れにくい問題であっても鋭意取り組んでいく必要がある。こういう点の指摘をいただき、ここら辺の長期視点に立って、国土の基盤の整備の重要性が指摘されておるわけであります。現在、これらの対応への方向を来春を目途に国土審議会で検討しているところでございまして、この中には三全総の計画期間を超える長期的課題等も多くございますので、私たちはこれまでの検討の成果を継承しまして、二十一世紀に向かって活力ある定住社会の実現を目指す第四次の全国総合開発計画が必要になってきておると考えておるところですが、第四次の全国総合開発計画の基本的方向につきましては、計画の編成過程そのものが国民的合意形成の場となるわけでございますので、今後時間をかけて国土審議会や関係機関、各界の御意見、御提案等をいただき、それを練り上げていきたいと考えておるところでございます。
  309. 林寛子

    ○林寛子君 次に、水の問題でございます。  私たちが健康で快適な生活を送るために、どうしても日常生活上なくてはならないもの、それが水でございます。あるいはまた、産業活動を支えていくためにも欠かすことができない水でございます。そういう意味で、特に飲み水は真に命の源でございます。そういう意味で、あらゆるものに優先してその水資源の確保というものを図る必要があるであろうと思います。また私ども主婦にとりましても、家庭における洗濯、入浴、調理等に必要な水も、ぜひこれは確保されなければなりません。そういう意味で、私自身は神戸の出身でございますので、私の出身地の阪神地区について申し上げますと、この大切な水の確保につきましては、ずいぶん苦労があるということも私も承知しております。そういう意味で、ことしの春に延長されました琵琶湖の総合開発特別措置法に基づいての事業が進められておりますけれども、この琵琶湖の湖を水がめとして早く活用できるようにしなければならないと思います。聞くところによりますと、これからまだかなりの時間がかかるというふうに聞いているわけでございますけれども、琵琶湖開発のほか、ダムの建設も進めていかなければならないと存じますし、国土庁として、こういう水資源の開発を進める前提となる将来の水需要の見通しについて、あるいはまた御存じのとおり、まとめてお聞きいたしたいと思いますけれども、首都圏につきまして、昭和五十五年の国勢調査によりますと、あるいは東京都、埼玉県、神奈川県及び千葉県の一都三県の人口は約二千八百万人でございます。世界に類例を見ない巨大な都市圏がこの一都三県で形成されているわけでございますけれども、このために都内ではもはや一戸建ての住宅を持てないと言われるように、住宅の宅地問題も厳しくなっておりますし、また勤労者の通勤距離がますます遠隔化し、朝夕の通勤電車の混雑度は著しいものになっております。さらに地震などで災害が発生した場合には、人命、財産が大被害をこうむるということが必至の状態でございます。このような中にあって、わが国の最大の都市圏である首都圏について思い切った施策を講じる必要があるのではないかと思いますし、これも国土庁としては、今後のこういう大都市圏というものに対しての対策というものをどういうふうにおとりになるのか。また引き続きまして、先ほど申しました近畿圏につきましても、首都圏とは逆に人口、産業が伸び悩み、あるいは減少しておりますし、また大企業の本社も次々に東京に移転をするなどの近畿圏の相対的な地位の低下が指摘されております。そういう意味で、これを数字の上で申し上げますれば、たとえば工業出荷額の全国に占める割合が、昭和三十五年の二七・六%から昭和五十四年には二二・一%に低下しております。これらは第三次全国総合開発計画で、近畿圏の全国に対する比率を低下させるという目標レベルに十年以上も早く到達してしまっていることを示していると思われます。こうした近畿圏の地盤沈下に対しまして、私は兵庫県出身者として座視するにこれは忍びがたいところでございます。言うまでもなく、近畿圏はわが国第二の大都市圏でございます。そういう意味で、産業のみならず文化の一大中心地でございます。したがって、こうした状況を放置しておいたのでは近畿圏のみならず、わが国の将来にきわめてゆゆしい問題を投げかけることは必定でございますので、国土庁としましてもこの近畿圏の発展、向上にどのように取り組んでいかれるのか、その点も重ねてお伺いしておきたいと思います。  そういうことでございますので、わが国は御存じのとおり環太平洋地震帯に属しますし、これまでに数多くの地震に見舞われたことは、日本人が歴史的に一番よく知っていることでございます。その被害につきましても、地理的条件や市街地の構造を反映して地震動により直接生じます被害に加えて、津波あるいは災害等による被害をあわせて受けてきたわけでございます。また、近年における人口及び産業の都市への集中、あるいは都市機能の高度化に伴い地震による被害も多様化しておりますので、特に東京を代表とする大都市におきましても、人口、産業が集中し、そして可燃性の建築物の密集あるいは交通のふくそう等、防災上多くの問題を生じてきておりますので、そこに大規模な地震が発生した場合には火災等の二次災害の発生を考慮するときに、その受ける被害は甚大かつ広範なものとなるおそれがございます。私は、地震対策につきましては発生以前の事前の対策を十分に行っておくことが必要であり、たとえば避難地、避難路の整備等の都市の防災化を進めるとともに、発生時に迅速かつ適切な災害対策をとれるように防災体制を強化しておく必要があるだろうと存じております。東京等の大都市における大規模地震が発生した場合の被害の対策について、大まかな大臣の所見を伺いたいと思いますけれども、総理が官邸にお移りになったということでございますので、いままでのお住まいと違いまして、官邸では地震の場合どこに避難するのか御存じでしょうか、一言伺います。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まことに申しわけありませんが、そこまでまだ勉強しておりません。
  311. 林寛子

    ○林寛子君 国土庁は総理の御身お大事なところから、どうぞ避難場所を確実にお教えし、御家族にも御指導賜らなければ、万が一のときには総理がどこに行っていいかもわからないようでは大変だろうと思いますので、国土庁長官からも国土庁に、迅速に総理に対して避難所を御指示賜らんことを重ねてお願い申し上げたいと思いますし、総理も御家族と一緒に避難所を明確に御承知おきいただきたいと思います。国土庁長官、簡潔に。
  312. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 大変たくさんな御質問でございましたので、どれどれお答えしてよろしいかわかりませんが、中曽根総理の広域避難地は、耐火建物になっておるので、残留するか、それでなかったら丸の内周辺に退避していただく。もとの家の場合でしたら、明大八幡山グラウンドに退避していただくようになっておるようでございます。  水の問題、先生おっしゃったとおりこれこそまさにわれわれの命でございます。われわれの生活、経済活動にはなくてはならないものでございます。国土庁は、昭和五十三年に策定した長期水需給計画に基づきまして水資源の開発及び水使用の合理化を推進してきたところでございますけれども、最近の経済情勢の変化等によりまして水需要の動向に変化が見られておるわけでありますが、そうしてまた、ダムの建設に要する期間が非常に長期化しております。そういう観点から、現在長期水需給計画を見直して新しい観点からの水需給計画を立てる必要があると考えております。  具体的には、先ほど御説明申し上げました新しい全国総合開発計画と一緒に作業を進めたいわけでありますが、当面の水の長期的な需給の見通しにつきましては、その取りまとめを事務当局に急がしておるところでございまして、近日中に、ごく近いうちに明らかにする予定でございます。
  313. 林寛子

    ○林寛子君 近畿圏の問題。
  314. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 近畿圏ですか。近畿圏はもう先生御指摘のとおりでございまして、先ほど中曽根総理もおっしゃいましたが、有史以来わが国の文化の中心であり、また豊かな文化的遺産が継承されておる、そして、知恵と才覚、自由な精神と実質をとうとぶ経済的風土を近畿圏は有しておるわけであります。こういう近畿の多様で創造的な、そして真摯な取り組みを必要とするわが国の発展に大きく寄与するものと考えておりますので、新近畿創生計画を本年度から五カ年計画でつくり上げまして、やっていきたいということでございます。そして、近畿圏内の幅広い言論界、経済界、労働界、学界等の皆さんの代表約百名の方にお集まりいただきまして、御意見を伺う懇談会を発足させたい。そして、近畿圏の将来の発展に寄与するような計画を策定すべくやっていきたい。先生もおっしゃったように、地元出身の議員としてぜひ全面的に御指導、御支援をいただきたいということで答弁にかえさしていただきます。
  315. 林寛子

    ○林寛子君 ありがとうございました。ぜひ、都市集中型といういまの都市構造というものを、関西の地盤沈下が、一方的に都市集中型から地方への拡散あるいは過疎という問題が、関西が第二の過疎地になるというようなことのないように、国土庁長官のいまの関西構想というものを推し進めていただきたいと思いますので、ぜひ強力に推進していただきたいと思います。  関西の問題が出ましたついでに、ついでと言っては大変失礼でございますけれども、ぜひ環境庁長官にお伺いいたしておきたいと思います。  関西の国際新空港の建設問題でございます。その計画と環境問題について環境庁長官にお伺いしたいのですけれども、わが国の経済は世界の各国との緊密な国際関係が保持されてこそその成長が確保されるということは言うまでもございません。そういう意味で、私どもは、国際関係を支える人的交流というものは、四方が海に囲まれましたわが国の地理的条件からは、ほぼ一〇〇%現在では空に依存するという形になっているわけでございます。また物的交流につきましても、近年航空輸送のウエートが大変高まりつつある、そして国際交流はまさに空の時代を迎えたと言えると思います。こうした状況の中で、大阪湾の泉州沖に計画されております関西国際空港こそ、私は二十一世紀に向かってわが国の将来を担う最重要なプロジェクトであると考えております。  ただし、現在進められております関西国際空港の計画の最近の状況を眺めておりますと、まず運輸省は、昭和五十一年度から今年度までに約百四十億円の調査費をつぎ込み、来年度予算には実施設計調査費を概算要求を出しているのは御存じのとおりでございます。  また、運輸省が昨年五月より進めております地元三府県との協議につきましても、現在のところは大阪府、和歌山県からの最終回答もすでに出されております。あとは兵庫県を残すのみとなっておりますけれども、御存じのとおり兵庫県は、これに基本的に反対するというのではなく、現在の国の財政事情に基づいて、泉州沖を完成するまでには余りにも長期な期間がかかるであろうから、それまで暫定的に神戸沖にももう一つできないだろうかというのが兵庫県の要望であることも御存じのとおりでございます。兵庫県がまだ要望が完成してないということは、反対のために最終回答が遅れているという意味でないことも運輸大臣は御了解賜りたいと思います。  またさらに、去る十二月十三日の衆議院の予算委員会の席上におきまして、中曽根総理大臣の答弁の中で、この財政的に厳しいときだが、予算上にも希望の灯を消さないように配慮をしたいという御見解を私は示されておりますので、このような背景を踏まえまして、本当に関西国際空港計画につきましては、まさに機は熟したと言っても私は過言ではないと思っております。しかしながら、御存じのとおり、今回のプロジェクトは大阪湾内に大規模な埋め立てを伴う計画となっておりますので、環境保全上の検討も大変重要なものであると痛感しておりますので、運輸省の空港計画案、環境アセスメントの報告書等を作成し、現在関係方面との意見交換を進めていると聞いておりますけれども、環境庁におかれましても関西国際空港における環境問題について検討をなされていると思いますので、環境庁においてこの問題について……
  316. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 時間がまいりました。
  317. 林寛子

    ○林寛子君 どのように取り組んでいらっしゃるか、お答えいただければありがたいと思います。
  318. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) お話の大部分は私の所管じゃございませんが、後、お話しになりました環境関係、これはいまお話しのとおり、御承知のあの三点セット、これは昨年の六月運輸省の方から私の方に参っておりまして、現在内容の検討を進めておるところでございますが、いま林委員お話しのとおり、兵庫県まだ協議が調っておりません。それからまた、推し進めていきます手順も決まっていない、こういう段階でございますので、環境庁としましてはその推移をいま見守っておると、こういう段階でございます。しかし政府といたしまして、この空港計画について最終的に具体的な意思決定が行われると、こういうことになりましたら、それまでには環境庁といたしましての考え方は、これはもうはっきりしなきゃならぬ、かように考えておる段階でございます。必要性は、私も兵庫県でございますから、あなたと同じ気持ちでおるわけでございます。  以上でございます。
  319. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で林寛子君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十二分散会