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1982-12-10 第97回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月十日(金曜日)    午前十時三分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第五号   昭和五十七年十二月十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、国家公務員等任命に関する件  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 徳永正利

    議長徳永正利君) これより会議を開きます。  この際、国家公務員等任命に関する件についてお諮りいたします。  内閣から、検査官辻敬一君を、  原子力委員会委員向坊隆君を、  公正取引委員会委員長高橋元君を、  公害健康被害補償不服審査会委員及川冨士雄君、榊孝悌君、中島二郎君を、  社会保険審査会委員月橋得郎君を、  運輸審議会委員亀山信郎君を、  電波監理審議会委員菊池稔君を、  日本放送協会経営委員会委員磯田一郎君を、  日本電信電話公社経営委員会委員松井政吉君を、  地方財政審議会委員石川一郎君、木村元一君、立田清士君、知野虎雄君、松島五郎君を 任命したことについて、それぞれ本院の承認または同意を求めてまいりました。  まず、検査官日本放送協会経営委員会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  3. 徳永正利

    議長徳永正利君) 過半数と認めます。  よって、いずれも承認または同意することに決しました。  次に、原子力委員会委員公正取引委員会委員長運輸審議会委員電波監理審議会委員及び公害健康被害補償不服審査会委員のうち中島二郎君、地方財政審議会委員のうち石川一郎君、木村元一君、立田清士君、松島五郎君の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  4. 徳永正利

    議長徳永正利君) 過半数と認めます。  よって、いずれも承認または同意することに決しました。  次に、公害健康被害補償不服審査会委員のうち及川冨士雄君、榊孝悌君、地方財政審議会委員のうち知野虎雄君の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 徳永正利

    議長徳永正利君) 過半数と認めます。  よって、いずれも承認または同意することに決しました。  次に、社会保険審査会委員日本電信電話公社経営委員会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  6. 徳永正利

    議長徳永正利君) 総員起立と認めます。  よって、全会一致をもっていずれも承認することに決しました。      ─────・─────
  7. 徳永正利

    議長徳永正利君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。原田立君。    〔原田立登壇拍手
  8. 原田立

    原田立君 私は、公明党・国民会議を代表して、さきの所信表明演説に対し、総理並びに関係大臣に若干の質問を行います。  第一に、中曽根政権発足に当たっては、山積する内外の諸問題を放置したまま、四十数日間に及ぶ国民不在派閥抗争を繰り広げ、政治空白をもたらし、国民政治不信を大きくしたのであります。その上、先日行われた総理所信表明を伺うに、「わかりやすい政治」「思いやりの心」「幸せの基盤である家庭」等と美辞麗句は並べておりますが、具体的方策が何ら示されておらず、国民にとってまことにわかりにくい政治になっており、期待の持てない政権と、不信の念はさらに高まっております。  総理所信表明で、「政治を支えるもの、それは国民信頼である」と言っております。それならば総理みずからが、今日緊急の課題となっている証人喚問議員辞職勧告などに対し、政治倫理の確立にリーダーシップをとることではありませんか。国会にゆだねるというのではなく、自民党総裁としても積極的に努力すべきだと思いますが、所見をお伺いいたします。  第二に、五十五年の衆参同時選挙以来、自民党内には「政治は力なり、力は金なり」というおごりが色濃くなっております。すなわち、五十一年に施行された政治資金規正法附則八条には、発足後五年を経過した段階で見直すことになっているにもかかわらず、それ以後二年に及ぶ間、全く放置しておくばかりでなく、逆に企業献金制限緩和の方向に進んでいるのがその端的な姿であります。したがって、国民信頼を取り戻すための政府の最優先課題は、金権腐敗の病根を断つための政治資金規制強化が急務であると考えますが、総理、いかがですか。  第三に、総理は、現行憲法について一定の評価を与えている半面、「時代や国民意識の変化に伴い憲法を見直す」との考えを明らかにし、あわせて自民党内の改憲運動は是認する旨の発言をしておりますが、その真意は那辺にあるのですか。どの条文見直し、どのように改めようと考えているのか、具体的に答弁願いたいと思います。  次に、外交防衛について伺います。  第一に、総理は、アメリカわが国にとって最も重要なパートナーとして日米関係を重視すると述べ、新年早々レーガン大統領との首脳会談を予定しているようでありますが、会談に臨む総理基本的な案件について明らかにしていただきたい。  第二に、昨年五月訪米した鈴木総理は、シーレーン防衛問題をめぐって国民の強い批判を浴びたことは周知のとおりであります。にもかかわらず、九月三十日に行われた日米防衛首脳定期協議では、三沢基地強化策を決め、またシーレーン防衛をめぐる共同研究軍事技術協力日米合同訓練についての協議、取り決めなどをあわせ考えるとき、専守防衛を掲げている政府の主張は、アメリカ軍事戦略のもとでなし崩し的に崩れようとしており、国民は強い危惧の念を抱かざるを得なくなっております。総理のお考えをお伺いしたい。  第三に、さらに安全保障に関する基本姿勢の中で、総理は「軍事大国にならず」と明言しておりますが、今日、世界百六十五カ国の中で第八位の防衛費を持つに至っております。総理の言う「軍事大国」とはいかなる定義を言うのか、具体的に説明願いたい。  第四に、総理はまた、近隣諸国軍事的脅威を与えることのないよう配慮するとも述べていますが、現にインドネシア、フィリピンなどのASEAN諸国首脳は、わが国防衛力強化、なかんずくシーレーン防衛について脅威となる旨の発言をし、危惧の念を明らかにしていますが、総理見解はどうですか。  第五に、貿易摩擦問題は、貿易立国として進まざるを得ないわが国にとってきわめて関心の強いところであります。日米首脳会談の際、農産物輸入等の対米貿易摩擦問題に対してどう対処されますか。また、対EOとの貿易摩擦問題への対応策も、この際あわせて御説明願います。  次に、行政改革についてお伺いします。  総理は、就任以来、行政改革の遂行を内閣最大課題と位置づけておりますが、国鉄電電専売公社民営化、省庁の統廃合など、どれ一つをとっても関係方面から抵抗の強い難問題ばかりであります。果たして総理は、政治生命をかけて勇断をふるう決意があるのかどうか、今後の行政改革の実施について説明願いたい。  次に、経済財政問題についてお伺いいたします。  第一に、鈴木内閣国民に対し、「あと半年たてば景気がよくなる」「一年たてば財政はよくなる」と再三にわたり国民に約束してきましたが、すべて空手形に終わっております。政府は、当初実現不可能な五・二%の成長率をようやく撤回し、三・四%に下方修正しましたが、この三・四%すら実現できないというのが大方の見方であり、政府部内ですら目標達成が危ぶまれております。景気不況のあおりを受け、中小企業を初め関係産業経営の悪化により、新規学卒者就職難や、史上二番目の二・四八%の失業率を記録するなど、きわめて厳しい状況下にあります。政府は、これらの問題に対してどう対処されるのか伺いたい。  第二に、政府は去る十月八日経済対策閣僚会議を開き、公共事業の上期繰り上げ発注の反動や輸出の減少から下期に景気が落ち込むのを最小限に食いとめるため、総事業規模二兆七百億円の公共投資拡大を柱にした総合経済対策を決定しました。しかし、その中身は、予算の先食い、地方へのツケ回し水増し見積もりなど数字の魔術を駆使して粉飾しており、早くも年度内効果が疑問視されています。いま政府がなすべきことは、幻と化した鈴木内閣の「五十九年度までに赤字国債ゼロ」「増税なき財政再建」という二大公約について、早急に国民理解協力を得るための努力が先決です。すなわち、経済安定成長を確保しながら財政健全化をどのような手順、日程、手段で進めていくのかという中期的政策路線を明示することではないでしょうか。所見をお伺いします。  第三に、いま政府策定中の新経済五カ年計画は、その見通しの判断の基礎となるきわめて重要な計画であることは申すまでもございません。この新経済五カ年計画における基本的姿勢はいかなるものか、また、いままでの新経済社会七カ年計画とはいかなる点が異なるのか、示していただきたいのであります。  第四に、政府景気対策の一環として、住宅建設促進のため公庫の融資枠を三万戸追加し、自己資金分を含めた水増し見積もりで三千億円の事業規模拡大を図るとしております。しかし、住宅取得能力が低下し、今後も可処分所得が増加することが期待できず、しかも住宅ローン控除拡大も盛り込めなかったことから、早くも「これでは住宅不況は解消しない」との声が聞かれる状況です。政府年度内新規住宅着工戸数見通しはどの程度としていますか、伺います。  また、こうした住宅不況の事態の中で、十月から住宅金融公庫融資段階金利制を導入したのを初め、土地投機再燃につながるおそれのある土地譲渡税緩和方針を打ち出すなど、建設促進に逆行するような姿勢を見せていることには賛成できません。この際、高過ぎる住宅価格、また、買い手の所得伸び悩みという住宅不況根本課題に抜本的に施策の見直しを図るべきだと思いますが、どうですか。  さらに、今年度下期の中小建設業界の景況は、今回の追加公共投資規模から見て、引き続き受注の落ち込み、完工高減少資材価格の上昇などから収益性の低迷が長期化し、きわめて厳しい状況となっています。したがって、分割発注促進など受注機会の確保、拡大に努めるべきだと思いますが、いかがですか。  関連して、公共事業の配分に当たっては、用地購入費がほとんどかからない危険河川の改修、すでに工事に取りかかっている準備工事の不要な事業用地手当て済み事業、橋やトンネルなど用地補償比率が低く波及効果が大きな事業新興商業都市街路整備など民間投資誘発期待できる事業を優先すべきではないかと考えますが、いかがですか。  次に、財政再建問題ですが、五十六年度三兆三千億円の歳入不足に続いてことしも六兆円を超える大幅税収不足によって、鈴木内閣の五十九年度赤字国債脱却財政再建路線は完全に破綻しています。政府予算国債依存度で見ると、当初ベースでは着実な低下が見られるものの、決算ベースでは五十一年度補正以来三割依存が続き、全く再建が進んでいないことが明らかであります。来年度以降、安易な増税による財政再建構想新聞等で報じられ、国民は非常に不安の念を強くしています。財政再建に対する政府基本姿勢具体策をお伺いいたします。  また、国債発行の増大により、その発行残高は今回の補正予算で九十七兆円になり、国民一人当たり八十八万円、四人家族の標準世帯で三百五十二万円の借金をしていることであります。これからさらに国債発行減額はきわめて厳しい現状であります。昭和六十年以降急増する赤字国債の償還について、国債の借りかえは行わないと確約できるのかどうか、今後の国債管理政策について総理考えをお聞きしたい。  次に、五十七年度補正予算についてお伺いいたします。  第一に、補正の内容は政府税収過大見積もり穴埋め補正であります。すなわち三兆九千二百四十億円もの公債増発地方交付税減額国債定率繰り入れ停止、さらには公務員給与凍結などの歳出圧縮が柱となっており、当初における政府税収過大見積もり穴埋めだけに終わっています。深刻な不況のてこ入れは、国庫債務負担行為五千億円の約束手形の振り出しにすぎません。さらに、地方交付税補正予算のおくれからその交付が延期されておりますが、地方行財政の円滑な執行のための措置はどう講じられ、万全が期せられているのか、お伺いします。  第二に、国債定率繰り入れ停止は、健全財政の枠組みを後退させ、国債管理政策への国民の不安を高め、中長期的に見ても国債依存からの脱却困難なわが国財政の運営にとって、近いうちに悪い影響が出ることは必至であります。定率繰り入れ停止について納得できる説明を求めます。  次に、当面の課題である人勧問題について伺います。  人事院勧告完全凍結によって、当初に計上した一%分の六百七十億円の給与改善費も取り崩されていますが、公共企業体仲裁裁定議決案件の速やかな決定とともに、単に勧告財政難だけの観点で判断せず、労使関係の安定、労働三権の憲法保障の点から政府の再考を強く求めます。  公務員給与凍結が来年春闘の民間賃金の抑制にまで悪用され、国民生活景気観点から縮小再生産の危険があり、ひいては税収減につながることはだれが見ても明らかであります。私は、政府勇断をもって、人事院勧告凍結早期撤回を強く求めるものであります。政府見解をお聞きしたい。  最後に、減税公共料金問題についてお伺いします。  第一に、五十二年から昨年までの家計所得伸びは二一%程度ですが、所得税額伸び率は七〇・三%にもなっています。加えて物価は所得伸びを上回って二一・八%にも上昇しています。これでは国民生活が苦しくなるのは当然であります。国民税負担を軽減し、消費拡大景気回復を図り、財政再建を進める上からも、わが党が繰り返し主張してきた一兆円所得税減税を即刻実施すべきです。いかがですか。  第二に、財政再建との絡みで、来年度は国鉄運賃を初め、たばこ、消費者米麦価等公共料金の値上げがメジロ押しであります。所得の増加が望めない中で家計はますます苦しくなるばかりです。政府はこれらの問題についてどう対処されるのか、具体策を伺います。  以上、各方面からお聞きしましたが、中曽根総理に対して多くの国民期待を持つとともに大きな不安を抱いております。総理、言葉のみでなく、行動をもって国民信頼する政治を実現されんことを要望し、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原田議員にお答えを申し上げます。  まず最初に、自民党総裁公選を機に約四十日間の政治空白が生じまして、国民皆様方にいろいろ御迷惑をおかけいたしましたことにつきましては、心から遺憾の意を表する次第でございます。政府といたしましてこれから実績を上げまして、これを取り返してまいりたいと思います。  証人喚問及び議員辞職問題等について御質問がございました。  いずれもこれらは国会議員の規律や身分に関する国会としての重要問題でございまして、各党において御協議をいただいておるところであり、その推移を見たいと思っております。私は行政府の長といたしまして、このような国会の事項につきましていろいろ意見を申し上げる立場ではございませんので、各党意見が一致いたしまして早期にそれが実現することを期待しておるものでございます。  なお、議員辞職の問題でございますが、国権最高機関である国会議員と、これを選出する主権者たる国民とのきずなを断ち切るということは、よほど慎重を要するものであると考えております。国会国権最高機関でございまして、いわば主権を構成する重要な機能の一部を持っておるところであり、選挙はこの主権を構成するための非常に重要な一つ場面でございます。そういう関係を通じて議員は選出されておりますので、議員選挙民関係を断ち切るという点については慎重でなければならぬとかねがね考えておったところでございます。これらの問題は本人みずからが判断すべきことが適当であると考えております。  次に、政治資金規正法の問題について御質問がございました。  政治資金につきまして、これを清潔、浄化していくということは御指摘のとおりきわめて大事であり、民主主義の根幹に触れる問題であるとも考えております。しかし、政治資金の問題は一面におきまして選挙制度あり方等の問題とも関係もあり、また各党のよって立つ財政基盤にも関係しているところでございまして、今後の各党政治活動そのものにも影響してくる重大な問題であります。したがいまして、各党間で十分論議を尽くして合意を形成していただくことが重要ではないかと考えております。  憲法問題について御質問がございました。  私は、先般来申し上げますように、戦前と戦後の日本を比べてみます場合に、現憲法が果たした大きな歴史的役割りを評価しておる者の一人でございます。しかし、いかなる制度あるいは法律等におきましても完全というものはないのでございまして、常によりよきものへ志向して勉強し、検討し、研究するということは、これは正しい態度であると考えておるのであります。私は、憲法改正問題を現内閣政治日程にのせない、そういうことを申しておるのでございまして、個々の条文についての具体的意見内閣総理大臣といたしまして差し控えたいと考える次第でございます。  日米会談基本的案件条件等について御質問がございました。  一月に予定しておりまする訪米の際は、微妙に変化しつつある国際情勢あるいは日米間の諸問題等々につきましてレーガン大統領と隔意なき懇談を遂げまして、相互理解を深め、かつ日米間の信頼をさらに強化するという努力をしてみたいと考えておるところでございます。  その中で、日米防衛協力問題等について御質問がございましたが、私は、前から申し上げますように、日本防衛基本は、まず第一にみずからの国はみずから守るということ、第二番目に、足りないところは友好国と安全保障体系を結成いたしまして協力して守るということ、第三番目は、これにふさわしい環境を整備すること、たとえば備蓄の問題もあり、あるいは平和外交、軍縮問題、国際世論の喚起等々もございます。いわゆる総合的安全保障政策と言われる部分でございましょう。これらの組み合わせによりまして日本安全保持をやっていきたいと思っておるわけでございますが、アメリカは、第二番目に当たります日米安全保障体系の重要な相手方でありまして、この日本アメリカの間に信頼性を強めていくということは政治家として心得べきことであると考えておるのであります。いずれにしても、われわれは平和憲法のもとに専守防衛に徹する、そういう基本的防衛政策に徹しまして推進してまいりたいと考えるわけでございます。  軍事大国とはいかんという御質問でございましたが、わが国は、専守防衛のもとに非核三原則を堅持して、自衛のために必要最小限度範囲内で節度ある防衛力整備するという方針でございます。この範囲を超えまして他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持することになれば、それはいわゆる軍事大国ではないかと思います。わが国はこのようなものを目指しているものでないことはもとよりのことでございます。  近隣諸国の懸念について御質問がございました。  いわゆるシーレーンの問題は、わが国防衛力整備一つ部分といたしまして輸送航路帯等を検討しておるわけでございます。いずれもこれらは先ほど申し上げました専守防衛範囲内において考えておるものでございまして、近隣諸国に何ら脅威を与える性格のものではございません。  なお、これらの諸国の一部に若干の反応はございましたが、外交当局努力いたしまして、事情を御説明申し上げまして御理解をいただいたと聞いております。なお今後とも誤解が生じないように努力してまいるつもりでございます。  貿易摩擦、特に農業問題について御質問がございましたが、いままでわが国は数次にわたりまして農産物等についても自由化あるいは規制解除等を行ってきておるわけでございます。わが国の農業にはわが国特有特異性がございます。そういう事情もよく相手方説明をし、また相手方意見も十分よく聞いて、そうして相互理解を得る妥当な結論を得るように努力してまいりたいと思っております。  行政改革につきましては、行政改革は現下の最大政治課題一つでありまして、政府は一体となって取り組む考えでございます。当面の具体的政策は、九月二十四日に決めました行政改革大綱を順次実現していくということでございます。  具体的には、今国会に御提案申し上げました国鉄再建臨時措置法案を成立させること、次期通常国会を目途に提出をいま準備して努力しておりまする四共済年金の統合問題、それから公社の改革問題、電電専売国鉄に関する問題でございます。それから予算編成その他において立案ないし調整すべきものといたしまして、国鉄再建緊急対策項目推進国民医療費適正化対策、それから食管等財政負担軽減対策、それから補助金等整理等の問題を来年度予算編成とあわせまして努力してまいるつもりでございます。  景気対策について御質問がございました。  経済現状先進諸国に比べますれば比較的日本は良好であると思いますが、景気の足取りは力強さを欠いております。したがいまして、公共投資推進住宅建設促進中小企業対策災害対策不況産業対策、内需の拡大及び雇用対策等中心とする総合経済対策を先般決定いたしまして、その一部として今回補正予算にも項目を計上しておる次第でございます。  政府は、経済成長率につきましては、五十七年度の実質成長率を三・四%に改定いたしました。この三・四%程度は可能であると考えております。今後とも内外経済動向を注目しながら機動的な対策をとるべく考えておるところでございます。  財政再建につきましては、五十九年度赤字公債脱却という考え方は最近の数字を見まして著しく困難になってきたと考えております。したがいまして、経済七カ年計画に対しまして新しい新五カ年計画をいま策定中でございます。この五カ年計画と見合いまして財政再建の新しい計画策定すべくいま準備努力しておる最中でございます。  最近の情勢が第二次石油危機を経まして非常な世界経済冷却化と同時に、わが国財政収入の落ち込みが顕著に出てまいりました。そういう場面も踏まえまして、経済計画につきましては、より着実な現実的な観点を取り入れる。それと同時に、将来に対する展望あるいは未来に対する希望も持てるような経済計画でなければならぬと思っておりまして、それらについてせっかく経済企画庁を中心にしてつくっていただいておる最中でございます。  それから財政再建具体的方策につきましては、今後とも重要な課題といたしまして、歳出見直し合理化の徹底、それから五十八年度予算編成におきましても一般歳出を前年度同額に圧縮する意気込みで努力して、この歳出構造につきまして検討を加えます。それと同時に、歳入構造につきましても、増税なき財政再建基本線を維持しつつ、歳入構造見直しを行いたいと考えております。  国債処理につきまして御質問がございましたが、これは大蔵大臣に答弁をお願いいたしたいと思っております。  地方交付税交付繰り延べに対する措置につきましては、地方交付税の十一月交付分につきましてはすでにその一部を実施しております。残余の額は、交付税特別会計において資金運用部から借り入れる必要がありますために、その根拠法となる地方交付税法等の一部を改正する法律案の成立を待ちまして、可及的速やかに地方団体に交付する予定でおります。  仲裁裁定につきましてはすでに申し上げましたとおり、与野党間でその取り扱いに関し合意が成立いたしまして、国会の御判断に従う考え方でございます。与野党間の合意は、十二月七日に、仲裁裁定については今国会中に裁定どおり議決いたしますということであります。  人事院勧告につきましては、労働基本権の制約、良好な労使関係の維持等に配慮しつつ検討しておるところでございますが、未曾有の危機的な財政事情のもとにおきまして公務員の皆様方にも痛みを分かち合っていただかなければならない、まことにやむを得ざる残念な措置として、そして特例の異例の措置として給与改定の見送りを決定した次第でございます。  減税問題につきましては、衆議院大蔵委員会の小委員会におきまして、財源を模索しつつ、いまその具体的方途を策定中でございます。この与野党の合意が得られましたならば、これを尊重して実施いたしたいと考えております。  財政再建推進を図りつつ、景気の着実な回復を図り雇用の安定を確保するために、先般、内需の拡大あるいは不況対策等の総合経済対策を決定いたしましたが、これらの経済対策を一面に推進すると同時に、御趣旨に沿いまして政治の倫理の向上、国民生活に密着した政治のあり方を探求しつつ懸命の努力をいたしたいと思っております。  以上で御答弁を終わりにいたします。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  10. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) お答えをいたします。  最近、とみに激しくなってまいりました日米経済摩擦、さらに日欧の経済摩擦に対してどう対処すべきかというお尋ねでございますが、欧米におきましては、御承知のように失業問題の悪化等の非常に困難な経済状況のもとにおきまして、わが国との経済摩擦は日々厳しくなっておるわけでございます。こうした中にあって、農産物を含む日米間の諸問題については、わが国の実情や、あるいはまたこれまでとってまいりました市場開放措置等を十分米国側に説明する一方、わが国といたしましても欧米との友好関係及び自由貿易体制の維持強化を図る、こういう観点から一層の市場開放へ向けてのできるだけの努力を行う必要があると考えておるわけでございます。  また、ECとの間では、現在東京で貿易協議が進行中でございますが、基本的には米国に対応するのと同様の精神で対処してまいりたいと考えておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣塩崎潤君登壇拍手
  11. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 原田議員の御質問にお答え申し上げます。  まず第一は、新経済五カ年計画の問題でございます。  この計画は、現行の経済社会七カ年計画について、昭和五十四年八月の計画策定後に生じました顕著な経済的、社会的な変化を取り入れて抜本的な見直しをしようとするものであります。顕著な変化とは、まず第一に、第二次石油危機の影響によって世界貿易あるいは経済成長率計画の想定を下回って低下していることであります。第二は、エレクトロニクスを中心とした技術革新の進展でございます。第三には、女子労働力の進出といった労働市場の構造変化などであります。  新計画基本的な方向は、このような変化に対応しながら、まず第一に、国際経済摩擦の解消を図りながら自由貿易体制を維持することを基本として世界経済の発展に積極的に貢献していくこと、第二は、来るべき高齢社会に備えるとともに、生活の質的向上を実現して安定した福祉社会を築いていくこと、第三には、技術開発等を中心として積極的に経済社会の活力を維持形成していくこと等でありまして、これらをねらいとして経済審議会で各界の御意見を伺いながら鋭意検討してまいりたいと存じます。  次に、公共料金に関する御質問にお答え申し上げます。  まず、物価の安定は国民生活基本であり、他の商品などの自由な価格と違って、公共料金政府みずからが決定しあるいはコントロールする価格でございますので、経済企画庁としては、いかなる場合においても公共料金につきまして十分監視、厳正に取り扱いたいと思います。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  12. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問財政再建基本姿勢につきましては総理からお答えがありました。したがって、特に国債管理政策中心とする御質問に対してお答えをいたします。  まず、昭和六十年度以降赤字国債の償還が急増していく、そのとおりであります。したがいまして、当面はとにかく特例公債の発行そのものの縮減に全力を挙げていく、これが基本でありまして、公債償還の問題につきましては、それこそ今後幅広く検討していく課題であると、このように考えております。  そして、この国債管理政策ということになりますと、とにかく財政負担の軽減を図りながら国債の発行、消化、流通、償還の各局面にわたりまして、国民経済国債が円滑に受け入れられるような配慮をすることがまず必要であります。したがって、今日までもいろいろ工夫をしてまいりました。五年割引国債の創設でありますとか中期利付国債の発行でありますとか、その多様化を図ってきたことでございますが、今後とも市場の動向あるいは投資家のニーズ等を勘案しながら国債の種類の多様化を図るなど国債管理政策の適時適切な運営に努力をしてまいりたい、このように考えておるところであります。  そうして、このたびのいわゆる定率繰り入れの問題につきましては、まさにこの財政事情等から考えますとやむを得ざる措置としてお許しをいただこうと、こういう措置でございます。しかし公債の償還に支障を生ずることはない、こういう前提に立っておることを申し上げておきます。  さらに、予算委員会のたびごとにお示しいたしておりますいわゆる財政の中期展望、こういうような問題につきましても、新経済計画の検討状況とか五十八年度予算編成状況等を見きわめながらその作成について検討をしてまいりたい。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣内海英男君登壇拍手
  13. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) お答えいたします。  昭和五十七年度内新規住宅着工戸数見通しにつきましては、昭和五十七年四月から十月までの建設戸数は約七十一万戸、前年同期に比べまして約一万戸の減となっております。しかし、最近四カ月間連続して前年同月を上回っておりまして、本年度におきましてはほぼ前年度並みの百十四万戸前後に達するものと考えております。  次に、今後の住宅対策につきましては、政府においては、昭和五十七年度に住宅金融公庫を中心とした公的住宅金融の拡充、住宅・土地税制の大幅な改正等の諸施策を講ずるとともに、十月八日の総合経済対策において住宅金融公庫の貸付枠の追加、住宅改良貸し付けの貸付限度額の引き上げを行うなど総合的な対策を講じているところであります。今後とも、国民の居住水準の向上を図るとともに、住宅投資の拡大による経済の安定的発展に資するため、住宅建設促進、既存ストックの有効活用等について適切な対応を行ってまいりたいと考えております。  次に、公共事業分割発注促進等により受注機会の確保の拡大に努めるべきではないかとの御質問でございますが、この点につきましては、建設業の大半を占める中小建設業の振興を図るとともに、景気刺激効果を末端に浸透させるためにも、公共工事について地元建設業者等中小建設業者の受注機会の確保が緊要であると考えております。  このため建設省においては、かねてより所管事業の執行に当たりましては、事業の効率的施工に配慮しつつ、一、分割発注推進、二、発注標準の遵守、三、共同請負制度の活用等の手段により、地元建設業者等中小建設業者の受注機会の確保に努めているところでありますが、今後とも同様の措置を講じてまいりたいと考えております。  次に、用地補償比率が低く、経済波及効果の大きな事業に優先配分すべきではないかという御質問でございましたが、公共事業は、各公共施設の整備状況、地域住民の要請等を踏まえ、地域の実情に即して計画的に実施することが必要であります。しかしながら、現在のような経済情勢のもとにおきましては、景気の維持拡大に資するという配慮も必要であると考えております。公共事業の執行に当たりましては、今後とも御指摘の点につきまして十分配慮をしてまいりたいと考えております。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  14. 徳永正利

    議長徳永正利君) 下田京子君。    〔下田京子君登壇拍手
  15. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、総理質問いたします。  総理、あなたは家庭を大切にする政治を行うとおっしゃいました。しかし、どれほど本気でお考えでしょうか。  昨年、北炭夕張で保安無視のためとうとい命を奪われた九十三名の御遺族の皆さん、そしてことし首を切られた二千名を超える労働者とその家族の皆さんが、いまこの厳しい北海道での冬をどんな思いで過ごされているか、総理は御存じでしょうか。  「お父さんは、もう帰ってこない。わが家もシーンとしている。お父さんが「ただいま」って帰ってきたらなあ」――父親を失った夕張の子供の詩です。  総理、あなたのおっしゃる家庭の団らんをこの子供から奪ったのはだれですか。働きたくとも働く場所がない、働いても暮らしが成り立たない、このまま行ったらわれわれの暮らしはどうなるのか。これは、労働者はもちろん商店や農家の皆さんの共通の不安であり、訴えであります。総理、いま国民が求めているのは、あなたのおっしゃるそらぞらしい言葉ではありません。国民の不安にしっかりと目を向け、耳を傾ける政治をこそ願っております。  そこで、お尋ねします。  総理、あなたは、「政治を支えるもの、それは国民信頼である」と言われました。ところがどうですか。あなたは、自民党のかなめである幹事長にロッキード資金を受け取った二階堂氏を再任し、内閣のかなめ、官房長官には、事もあろうに田中角榮のふところ刀と言われる後藤田氏を据えました。さらに法務大臣には、田中弁護団とうり二つの発言国会で展開し、指揮権発動は当然だと言い放っている秦野氏を起用しました。これで一体、国民信頼を得られるとお考えですか。まさに国民への挑戦ではありませんか。重ねて納得のいく説明を求めます。  次に、総理、あなた自身にかかわる疑惑も重大です。  札束が乱れ飛んだと言われる十年前の総裁選挙、この選挙に絡む殖産住宅の五億円献金問題について、あなたは、あの金は東郷民安氏が独断で取り計らったものと国会で証言されました。ところが、この事件について一審はもちろん八〇年七月の東京高裁の判決でも、はっきりと、あなたの依頼に基づいて東郷氏が株の操作で調達したと認定しているではありませんか。一体どちらが本当ですか。東京高裁の判決が間違っているとでもおっしゃりたいのでしょうか。  また、あなたは、七六年の政治資金のでたらめ報告事件の際、将来間違いを繰り返さないと約束しておきながら、またしても七九年、八〇年と、引き続き違法献金事件を引き起こしているではありませんか。  さらにあなたは、ロッキード事件についても児玉からの電話を受けたことはないと国会で証言されておりますが、その後、証拠として採用されたコーチャン調書でもあなたとのかかわりが明確に述べられており、依然として疑惑は晴れておりません。これでどうしてあなたの弁明を信用できるでしょうか。明確な答弁を求めます。  第二番目は暮らしの問題です。  総理は、日本は豊かになった、これからは心の問題だと、国民に自立自助の精神と忍耐を求め、福祉、教育切り捨て、国民いじめの臨調答申を最大限に尊重すると強調されました。とんでもない話です。  以下、五点にわたって具体的にお聞きいたします。  一つ。臨調答申に基づいて政府公務員給与凍結を打ち出した途端、財界の総理と言われる稲山経団連会長は、「民間労働者も賃金引き上げをゼロにすべきだ」と言い出しました。これを聞いた中小企業、商店の皆さんは、これじゃますます売り上げが落ち込んで景気はよくならぬと頭を抱え込んでおります。総理、あなたは、公務員労働者や民間労働者のふところを寒くすることが消費不況に一層拍車をかけるとはお考えにならないのでしょうか。私は、政府の責任において、人事院勧告と仲裁裁定の完全実施を直ちに行うべきであることを強く主張するものであります。  二つ。軍人恩給や年金でやっと生活されているお年寄りや障害者、母子家族の皆さんは、次に削られるのは私たちかと不安を訴えております。総理、この声を無視して来年度物価スライドまでやめるようなことはしないと、はっきり約束されますか。  三つ。臨調は、「日本の大学進学率は高過ぎる、今後十年、進学率を引き下げるべきだ」との立場から、私学助成の切り下げ、国立大学の定員抑制を主張しておりますが、あなたはこのような考え方にやはり同調されるのですか。  四つ。前内閣は私の質問に対して、農産物の輸入自由化、枠拡大は行わないと言いながら、実際には譲歩を重ねてまいりました。しかも、臨調答申が市場開放を求めているため農家の皆さんの不安は一層深刻です。あなたは一月に訪米されるそうですが、レーガン大統領に会って、まさか農産物の輸入自由化、枠拡大を約束されるようなことはないでしょうね。  五つ。鈴木総理は、「増税なき財政再建」に「政治生命をかける」と言っておりました。ところが、あなたはそれを単なる基本理念の一つに引き下げました。そして竹下大蔵大臣は、すでに大型間接税、つまり悪名高い一般消費税の導入を真剣に検討すべきと述べております。総理も同じお考えですか。それとも大蔵大臣発言取り消しを指示されますか。  以上、具体的な総理の答弁を求めます。  総理わが国経済現状は力強さを欠いているなどというなまやさしいものではありません。二十六年ぶりの高い失業率中小企業の倒産もふえています。五年連続の所得税減税の見送りと公共料金の相次ぐ値上げで、どこの家庭も家計簿が悲鳴を上げております。この上、臨調だ、行革だといって大企業奉仕、軍備増強のために国民に犠牲を押しつけてきたら、国民の暮らしは一体どうなると思いますか。もしあなたに国民に対する思いやりの心が一片でも残されているなら、国民いじめのにせ行革をやめて、本当の意味での国民奉仕の行政改革を進めるべきではないでしょうか。  第三番目は、戦争か平和か、一体どちらの道を選ぶのかという問題です。  まず最初に、総理訪米に際し具体的対応についてお聞きします。  周知のように、アメリカ政府、議会関係者は、わが国防衛政策の根本的な転換を繰り返し迫っています。平和憲法、非核三原則、専守防衛などの日本の特殊性は認めないというのです。総理訪米の際にも同様のことが求められると思います。  そこで、まず非核三原則についてお伺いいたします。アメリカ軍の三沢基地への核兵器を積めるF16戦闘爆撃機の配備や、アメリカ第七艦隊への核弾頭つきトマホークミサイル配備が迫っている中で、あなたは非核三原則をあくまで厳守し、疑わしきは入れずの立場をしっかりとられるのかどうか。  また、訪米みやげに軍事技術協力を約束すると伝えられていることは重大です。総理憲法の精神、原則と国会決議、武器輸出三原則及び従来の政政方針を踏みにじってまで安保条約を優先させ、アメリカに対する軍事技術供与を行うのかどうか、この際はっきりとお答えください。  さらに、今日の事態の重大性は、こうした基本政策の転換がすでに始まっていることです。かつて政府は、「憲法上、日本防衛義務は日本領土内に限られている、それを出てやることは憲法違反だ」と明確に述べておりました。ところが、鈴木総理は昨年の日米首脳会談で、「日本の庭先である周辺海域を自分で守るのは当然」と述べ、いわゆる一千海里シーレーン防衛を約束しました。これは、日本防衛対象区域を領土、領海、領空に限った従来の領域防衛から、周辺一千海里にも及ぶ領域外防衛へと拡大した大転換ではありませんか。総理、あなたは、鈴木総理のこの約束を継承して領域外防衛に乗り出すつもりか、明確な答弁を求めます。  最後に、私は、中曽根総理憲法観、太平洋戦争に対する認識についてお尋ねします。  あなたは、昨日わが党の不破委員長も示した、総理就任当日に外国人特派員に渡した経歴紹介の中で、「私は自分たちの手でつくった新しい憲法をいまでも実現したいと思っている。しかし私はこの問題で日本社会を引き裂きたくはない」と述べています。これは総理としてのあなたの見解です。あなたのおっしゃる日本社会を引き裂きかねない新しい憲法とは一体どんな内容なのか、お示しください。  また、あなたは四年前、「総理になったら憲法問題をテーマに解散、総選挙をするか」と問われて、「そのための準備をする」と明言しています。一体あなたは、だれに、どこで、いつ、何を準備させるおつもりですか、具体的にお聞かせ願います。  総理、あなたは昨日の答弁で、太平洋戦争を「まことに遺憾な戦争であり、あの戦争での日本の行為について、国際的に「侵略である」という厳しい批判があることは事実だ」と述べています。伺いますが、あなた自身、あの戦争を世界の批判どおりに侵略戦争とお認めになるのかどうか、あなた御自身のお考えをはっきりお答えください。  あなたは、拓殖大学総長就任の際、講演で「われわれが東南アジア諸国に行くと、民衆はわれわれに大東亜戦争のおかげで独立できたとお世辞を言ってくれる。しかし、政治家の方は、うっかりそんなことを言うと日本からの賠償金を減らされるから言わない」などと得意げに話されております。あなたは、今後ともこのような侮辱的な認識でもってアジア諸国民に対応するおつもりですか。過去の戦争を事実に基づき厳粛に侵略であったと認めることこそ、わが国とアジア諸国民の友好の第一歩であるとはお考えになりませんか。明確な答弁を求めます。  日本共産党は、党創立以来この六十年間、平和と民主主義国民の暮らしを守って歩み続けてまいりました。私はいま、多くの国民の皆さんと御一緒に、戦争と政治反動を許さず、国民生活向上のためにより一層奮闘することを表明して、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 下田議員にお答え申し上げます。  北炭の夕張の事故について御指摘がございましたが、多くの従業員の皆さんが職を失うに至ったことはまことに痛ましく、残念に思う次第でございます。政府といたしましては、保安の確保等万全を期することにより、二度とこうした事故を繰り返さないように戒めたいと思います。  家庭の問題について御質問がございましたが、私は、日本のたくましい文化と福祉の国をつくる上について家庭は大事な原単位であると考えておるのであります。しかし、現実には多くの母子家庭あるいは失業に苦しむ家庭等もあることは十分承知しております。さればこそ、このような家庭一つ一つを大事にして政治の光を当てようというのが私の考え方なのであります。  組閣についていろいろ御批判をいただきましたが、わが内閣は、行政改革財政再建日米関係信頼強化、景気対策等を当面の重大な任務と考えておりまして、これらの仕事をやり得る人物本位の組閣をやったと考えており、いままでのような順送りとかあるいは派閥にとらわれた考え方から脱却いたしまして、派閥を超えた人材の簡抜を行ったと考えております。このような趣旨は、これからの仕事と実績において国民の皆さんに見ていただきたいと考えております。  殖産住宅に関する問題について御質問がございましたが、これは昭和五十二年四月十三日の国会の証言で申し上げたとおりでありまして、東郷社長は私と旧制静高の同窓生でございますが、株式上場に際しまして同級生あるいは友人等の名義を借りまして、そして株式の売買をやった。会社防衛の意味もあったと思います。しかし、私の場合は、私の名前を借りるということをしないで私の秘書の名前をお使いになった。そういうことで、金銭の授受があったわけでもございませんし、名前をわれわれは使われたということであると思っております。  次に、政治資金規正法の問題でございますが、衆議院選挙に際しまして選挙区における届け出についてずさんな点がありましたことはまことに遺憾でありまして、これは訂正をいたしました。  なお、ロッキード事件についての御質問がありますが、これも先ほどの証言で申し上げたとおり、児玉電話なるものはございません。  次に、仲裁裁定の取り扱いでございますが、先ほど申し上げましたように、仲裁裁定については与野党間でその取り扱いに関し合意が成立して、われわれはこの仲裁裁定の取り扱いについて国会の判断に従うと申し上げておるところでございます。  人事院勧告の扱いは、勧告制度尊重という基本的たてまえに立っております。しかしながら、現在の危機的な財政事情のもとにおきまして、やむを得ず異例の措置として今回は公務員給与改定の見送りを行った次第でございます。  公務員給与の改定の見送り自体は、所得伸びの低下を通じまして個人消費に多少影響することは事実であると思います。しかし、給与改定を行うとした場合に、財源をどう調達するかということによって経済にいろいろな反応も出てまいります。増税で財源を調達するという場合は景気にマイナスの作用もあります。赤字公債で行うという場合には、情勢によっては物価に影響することもございます。そういう意味におきまして、この問題は中長期的な財政の対応力の回復という点から考慮する必要があると私たちは考えておるのであります。  しかし、民間賃金の決定問題は、これは労使間の自主的な話し合いで決定すべきものであるということは当然でございます。  恩給、年金の改善につきましては、先ほど来申し上げましたような財政状況等も考えますと、この問題の処理は厳しい情勢にあると申し上げざるを得ません。  臨時行政調査会の私学助成、国立大学定員の抑制問題について御質問がございましたが、第二次臨時行政調査会の第三次答申については、政府としては八月十日の閣議におきまして最大限尊重する旨を決めました。現内閣におきましても、この方針に沿いつつ、しかしわが国高等教育の振興には遺憾なきを対処してまいりたいと思っております。  農産物貿易問題につきましては、関係国との友好関係に留意しつつ、国内農産物の需給動向等を踏まえ、食糧の安定供給の上で重要な役割りを果たしているわが国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的であります。これが市場開放に対するわれわれの考え方でございます。  一月に予定されている訪米に際しましては、わが国の農業の実情やこれまでの市場開放措置等をアメリカ側にも十分説明いたしまして、その理解を得ながら適切に対処してまいるつもりであります。  増税なき財政再建基本方針は堅持してまいります。まず、行政の簡素効率化、制度、施策の見直し歳出削減に努力を集中する考え方であります。歳入面についても増税なき財政再建の理念に沿いつつ、歳入構造見直しを行いたいと思っておる次第であります。  行政改革は、国民に奉仕する行政改革であることはもとよりであります。この行政改革は、過去のひずみを直すという面もありますが、国の将来に明るい展望を開くための行政改革でもあります。政府といたしましては、既存の行財政のあらゆる分野にわたって聖域のない見直しを行い、簡素にして効率的な行政を実現する方針であります。今後とも国民各界各層の理解協力を得つつ、行政改革を進めるつもりでおります。  非核三原則は、今後ともこれを維持していく方針であります。  日米防衛技術交流の問題につきましては、先般来申し上げますように、武器輸出三原則、政府の統一見解、それと日米安保条約等に基づく日米協力関係の問題がございます。この二つの要素を念頭に置きつついま慎重に検討を加え、関係各省においてその処理を練っていただいておるところでございます。  いわゆるシーレーンの問題につきましては、わが国の周辺海域数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度まで自衛の範囲内において海上交通保護を行い得ることを目標に防衛力整備するという考え方であります。この場合、航路帯といたしまして、いまのところ南東方面、南西方面の二つのルートを検討しておるところでございます。鈴木総理の米国での御発言はこのような従来からの政府考え方を説明したものであり、われわれといたしましては専守防衛の精神のもとに、今後とも海上防衛防衛力整備努力してまいりたいと思っております。  さて、外国特派員に渡しました私の文書についてでございますが、憲法につきましては、かねがね申し上げておるように、私は現憲法歴史的役割りを高く評価している一人でございますが、しかし、常によりよきものへ志向して、制度、法律と同じく、一般的にこれを見直し、研究することは正しいことであると考えております。この新しい憲法というのは、そのような観点に立って自主的に制定するよりよき憲法という一般的意味を申し上げておるのであります。その具体的内容につきましては、総理大臣としては差し控えたいと思っております。  さて、私と竹村さんとの対談の中で解散問題と憲法の問題をとらえて御質問になりましたが、私のこのときの答弁は、調べてみますと、内外情勢に基づいて準備をする、つまりすぐ解散するとか政治課題にするという意味じゃなくして、国民的コンセンサスを得るためにまず準備をすることが大事だ、そして正しい事態を国民に知らせることが第一であります、そう答えておるのであります。御理解をいただきたいと思います。  戦前のわが国の行為について御質問がありましたが、過去の大戦におきまして、わが国の行為がアジアの国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚しております。私の過去の発言についてお言葉がございましたが、私の青雲塾綱領の中にも、アジア復興につきましては謙虚な立場に立って奉仕する、そういう文章もあるのでございます。  また、戦前のわが国の行為につきまして、昨日も答弁申したとおり、国際的には侵略であるという厳しい批判を受けていることは事実であり、この事実は政府としても十分認識をし、そして第二次大戦は遺憾な戦争であったと申し上げておるのであります。  アジアに対する認識について御質問がありましたが、アジア諸国わが国にとり平和と繁栄を分かち合う重大な隣人でございます。この地域の平和と繁栄のために積極的役割りを果たしていくことは、わが国外交の最重要課題一つでございます。私は、総理大臣就任早々ASEAN諸国の首脳部の皆さんに電話をいたしましたのも、そういう精神に基づいて行ったのであります。この認識に基づきまして、アジア諸国との一層の相互理解と友好関係の強化のために努力いたしたいと思います。(拍手)     ─────────────
  17. 徳永正利

    議長徳永正利君) 柳澤錬造君。    〔柳澤錬造君登壇拍手
  18. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私は、民社党・国民連合を代表して、さきの中曽根内閣総理大臣所信表明に対して質問を行います。  総理、いま国民不況のどん底にあってどんなに苦しんでいるか、御存じでしょうか。それをこの不況下に、自民党は後継総裁をめぐって現職閣僚が四人も立候補して、総裁争いで一カ月半もの政治空白をつくりました。これほど国民のことを忘れた自民党政権の本質を見せてくれたものはありません。    〔議長退席、副議長着席〕 しかも、それについて総理からは一言の反省の言葉も聞かれませんでした。総理国民は、このような中曽根総理姿勢に不満を持ち不安を感じているのです。  私は、当面の重要な課題は次の三点にあると思っております。一つは、政治倫理を確立して議会制民主主義の機能を向上させ、自由と民主主義体制を堅持すること。二つとして、行政改革財政再建を両立させ、景気回復を図るとともに開放経済体制を維持すること。三つとして、世界国民総生産の一〇%を占める日本として、平和戦略をもって国際連帯の役割りを果たすこと。以上の三本柱を中心にしてこれより質問をしてまいります。  まず第一に、政治倫理と社会倫理についてであります。  総理、今日の政治不信というのは、実は政治家不信なのです。社会的地位の高い政治家は、金や利権で動くのではなく、道義的倫理規範に従って行動することによって国民は尊敬もすれば信頼もしてくれるのであります。しかるに総理は、この重要な政治倫理について、所信表明ではたった一行触れただけでした。これほど中曽根総理の性格を浮き彫りにしたものはありません。これでは次の通常国会で、この一行も削ってしまうのではないでしょうか。  総理わが国は過去五年間に汚職が三千七百四十二件もありました。これは氷山の一角であり、実際はこの何倍あるかわかりません。しかも汚職をした者がいばっており、全くの汚職天国と言えましょう、このような国が近代国家の中でどこにありますか。  そこで総理に申し上げたい。汚職、選挙違反、賭博などで裁判となり、たとえ第一審でも有罪となったら、そのような人は政府の政務次官、国会の常任委員長はもちろんのこと、党の役員にもつけないと、国民の前に明確にしてみずから範を示していただきたい。あわせて、国会政治倫理委員会を設置して、国民の疑惑に対して解明することを総理の勇気ある決断によって実現されたい。  次に、総理の家庭観についてでありますが、総理のお説は余りにも現実離れをしており、無知にも等しいと言わざるを得ません。総理は「親子三代」と言われましたが、三代が住めるような住宅事情ではなく、むしろ住宅ローンの返済で共働きを余儀なくされ、子供はかぎっ子となっていくのです。いまや家庭にまで暴力、覚せい剤が入り込んできて、親子関係もおかしくなってしまい、子供が親を殺す、親が子供を殺すなど、それにサラ金地獄と、戦前では考えられないような家庭の破壊が広がっているのを総理はどう見ておられますか。  さらに暴力は大学から高校へ、中学へと拡大して、生徒が先生を殴る、授業で教科書を使わない、その上生徒のシンナー遊びは蔓延をして悪の温床となっています。教育がこれほど荒廃したことがありましょうか。この教育の実態こそあすの日本の国の姿を示しています。  総理、この荒廃した教育、家庭をどうしたらよろしいとお考えですか。私はその責任がすべて政府にあるとは言いません。ただ、全国の家庭でお母さん方がどんなに困っているか考えてみてあげてください。このような家庭に希望を与えるのが政治ではないですか。いまこそ道義を基盤とした政治倫理とともに社会倫理も確立することが急務であると思うのですが、総理の御所見を承ります。  第二には、行政改革財政再建についてであります。  いまや行政改革国民の総意となっています。総理も臨調答申を最大限に尊重すると言っていました。しかるに、昨日の衆議院本会議でわが党佐々木委員長が「行革をどう進めるか具体的プランを示せ」と質問したのに対し、総理は「行革は将来に向かって希望を持ってやるものだ」との一言で、具体的な答弁をしていません。行政改革推進のわが党に対しまことに失礼な態度と言わざるを得ません。再度、行革推進の具体的プログラムをお示しをいただきたいと思います。  また、昨年十一月に成立した行革特例法案による予算削減が五百億円であるのに、本年度の補助金は昨年よりも二千億もふえています。これはどういうことなのですか、御説明をいただきたい。  この際、今後五年間公務員の新規採用を半減して総人件費の抑制を図ると公約すべきであると思うのですが、いかがですか。お約束できますか。  また、政府は、人事院勧告凍結し、仲裁裁定にも従わないというのはなぜですか。これは政府みずからがルールを破ったのであります。政府は公務員の労使関係をどのようにしようと考えているのですか。これでは従来から法を守り行政改革にも協力しようとしている良識ある公務員労働組合の誠意を踏みにじるものであります。政府は決められたルールを守るのか、それともスト権など労働基本権を組合に返還するのか、総理はどちらをとるのか、この際玉虫色ではなく明確なる決断をお示しいただきたい。  次に経済問題ですが、政府は、経済成長率を実質五・二%で予算を組みながら、その後三・四%と修正しました。民間機関では二%台と予測をしています。これでは不況は深刻化するばかりであり、景気は回復をいたしません。特に、今日の日本経済を築き上げてきた鉄鋼を初め多くの基幹産業までも軒並み不況で苦しんでいるのを政府はどう責任をとるつもりですか。総理は仕事のできる内閣をつくったと言われました。だったら景気回復のために、先ほども三・四%可能であると答弁されましたが、それに甘んじるのではなくて、計画の五・二%を達成させると決意し、その努力を責任をもってすべきであって、総理の御決意のほどをお聞きしたいです。  また、国税庁の調査によると、昨年度の平均年収の伸び率は過去二十三年間の最低で四・九%であり、所得税負担率は五・八%となっています。したがって、サラリーマンの九一・五%が税金を納めているのです。しかるに政府は、みずからの失政による税収不足には手当てをしても、減税には応じようとしません。これほど国民の意思を無視した態度はありません。政府の責任ある答弁を求めます。  わが民社党は、発想の転換をして、行政改革財政再建の両立を目指す新財政再建五カ年計画を提唱しています。これは四ないし五%程度の中成長は実現すべきであり、それを可能としているものであります。  その骨子は、大幅減税を断行して個人消費を伸ばすこと、公共投資拡大し、住宅対策、都市再開発、防災対策計画的に進めること、中小企業投資減税中小企業承継税制を確立すること、公務員の定数削減、補助金の徹底整理をすること、不公平税制を是正することなどで日本経済を活性化し、景気回復を図ることこそ当面の緊急課題であると思うのですが、総理の御見解をお聞きしたい。  第三に、国際連帯についてであります。  いまや国内外情勢は激動の一語に尽きます。特にソ連の新政権誕生によって、米ソ関係、中ソ関係、米中関係はどのような変化を生じていくのか。朝鮮半島、ベトナム、アフガニスタンなどアジアの国々はどう動くのかです。これらはこれからの日本の進路に重大な影響を持つものでありますが、去る三日の総理所信表明では何ら解明されておりません。総理はいかなる分析をし、どのような展望を持っているのか、明確にしていただきたい。それなくして従来の参勤交代的なアメリカ訪問をするのであれば、それはお金の浪費です。  総理、いまやわが国は全世界国民総生産の一〇%を生み出す経済大国となりました。しかし、そのためにエネルギーの八五%、食糧の六七%、鉄鉱石など鉱物資源のほぼ一〇〇%を世界の国々から輸入し、技術加工して輸出をする貿易立国です。したがって、世界の国々との協調なくしてこれだけの経済力を維持していくことはできません。しかるに、政府開発援助は先進国十七カ国の中で十四番目という低さです。  また、南北問題も、日本を含めた北側先進国が世界の人口の四分の一で、世界の総所得の八〇%を占めており、残りの二〇%を南側の三十億の人々が分け合って生活しているのです。その結果、第二次大戦後、戦争によって死んだ人々が一千万人であるのに対し、飢餓で死んだ人々は六千万人と言われています。この南北問題の現実に対して総理は胸が痛みませんか。いかなるお考えをお持ちでしょうか、どうやってわが国の責任を果たすおつもりでしょうか、明確な態度を示されたい。  さらに難民問題についてですが、昨年ようやく難民条約を批准しました。これは条約発効後二十七年目であり、八十二番目の批准国であります。その後も難民の認定は全く冷たく、せっかく出頭した人々を難民と認めず国外退去をさせているのはなぜですか。わが国の司法行政は弱きをくじき強さを助けるのを本領としているのでしょうか。この人々は、家を捨て、職を捨て、国家をも捨てて、自由を求めて命がけで脱出してきた人々であって、なぜ思いやりの心をもって人間らしい扱いをしてあげないのですか。総理の言う「思いやりの心」とは演説の飾り文句だったのでしょうか。  本年九月末の難民定住受け入れの人数は、アメリカの四十八万を初め、フランス八万五千、カナダ八万四千、豪州六万九千、西ドイツ二万であるのに対し、最も近いわが日本はわずかに千九百九十八名であります。総理世界国民総生産の一〇%を占める日本として恥ずかしくないですか。
  19. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 柳澤君、時間を超過しておりますので簡単に願います。
  20. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君(続) これでも経済大国と言えましょうか。総理にも良心はありましょう。速やかに政府の態度を改めるようにしていただきたい。  最後に、日本世界から求める時代は終わりました。東西関係を見ましても、南北問題にしましても、日本はその真ん中に位置して、どちらに対しても発言のできる立場にあります。いまこそ真剣になって、この世界に対する平和戦略を持ってリーダーシップを発揮すべきであり、その絶好のチャンスです。その責任を果たすことが二十一世紀に向けてわが日本が生きていく戦略であり、使命であると考えるものです。中曽根総理の誠実にして内容の充実した権威ある御答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 柳澤議員の御質問にお答え申し上げます。  まず、内外多難の折に、自由民主党の内部事情から四十日間にわたる政治空白の時期を生じさせましたことは、国民皆様方にまことに申しわけない事態であると思っております。そのおくれを取り戻すために全力を投入してまいりたいと思っております。  また、一審でも有罪となった人は役職につけるなというお言葉でございます。御提言はしかと承っておきたいと思います。  政治倫理委員会の設置の問題等について御質問がございました。  この問題は国会議員の規律に関する問題で、先般来申し上げますように、国会としての重要事項であると思いまして、各党間で十分御協議願いたいと考えております。  現在の家庭環境をどのように認識して対策を講ずるかという御質問でございます。  わが国の家庭環境につきましては、現実におきましては一部において御指摘のような状態でさまざまの問題を持っておることを承知しております。特に暴力問題、覚せい剤問題等は重要な問題であります。このような問題を解決していくためにも政治の光を家庭に当てる必要がある、家庭の場を充実していく必要がある、そういう考えに立った次第なのでございます。したがいまして、日本社会を支える原単位としてこの家庭をいかに充実させていくかということに今後政治の力を集中してまいりたいと考えております。  政治倫理と社会倫理の確立について御質問がございました。  御質問の趣旨については非常に同感でございます。それにはまず政治家自身が自粛自戒をし、国民の模範になるような進退をすることが大事であると心得ており、また公務員の綱紀の粛正についても一層の努力徹底を図る必要があると思っております。  また、社会倫理の確立のためには健全な明るい礼節と愛情に富んだ家庭が基礎になる、そういう意味におきまして、家庭の充実という点につきましても先ほど来申し上げるように努力してまいりたいと思っておるところございます。  臨時行政調査会を中心にする行革の進め方につきましては、臨調答申を最大限に尊重してこれを実行するということはわが内閣基本的姿勢でございます。  改革の具体的方策は、当面は九月二十四日の閣議決定を逐次実行していくということでございまして、具体的なプランは、今臨時国会におきまして国鉄再建臨時措置法案を提出して、これを速やかに御成立を願いたいと思っております。そして、できるだけ早期にこの臨時措置法案による委員会の人事の任命国会の御協力を得て行って、作業に入っていただいて、国鉄に対する包括的なかつ具体的なプランを作成していただきたいと考えております。  次に、次期通常国会に提出すべく目下それを目途に準備している問題といたしましては、四共済年金の統合関係でございます。それから公社の改革問題、電電専売の問題が主となってまいります。  それから五十八年金予算その他において立案ないし調整すべきものとして、国鉄再建緊急対策項目推進国民医療費適正化対策食管等財政負担軽減対策、それから補助金カットの問題、このように考えております。  五十七年度の補助金について御質問、御言及がございました。  五十七年度におきましては、臨調の第一次答申を最大限に尊重して補助金整理合理化にも努力を払ったところでございまして、行革特例法案による補助金の削減額は約二千五百億円でございます。そして対前年度の増額、御指摘の分は、これも相当な努力をいたしましたのでございますが、若干増加をいたしました。しかし、増加額、伸び率ともに近年で最も低い水準を示しております。前年度におきまして補助金の増加額は六千五百億円でございましたが、五十七年度におきましてはこれを二千六百億円に抑えてきたので、さらにこの努力を継続してまいりたいと思っております。  新規採用の半減につきまして、定員削減には従来からも非常に努力しております。しかし、国家公務員の仕事の中には大学教育の問題、特に各県に医科大学が一つずつできまして相当の定員増が要求されてきております。国立病院、療養所の充実の問題、あるいは外交機能の確保、あるいは登記、税務の増強の必要性、あるいは海上保安関係、こういう問題がございまして、新規採用を半減せよということはかなり困難の状態であります。しかし、その御趣旨は十分尊重してやりたいと思います。  今後とも、人件費の累増を抑制するために、いまやっております第六次定員削減計画を強力に推進して、厳しい定員管理に努めていくつもりでございます。五十七年度におきましては、ネットで千四百人縮減をいたしました。来年度につきましても相当の成果を上げるように、予算編成の際、努力してまいるつもりであります。  人事院勧告の扱いにつきましては、人事院勧告尊重という基本的たてまえに立って検討しておる次第でございますが、危機的な財政事情のもとに、異例の措置として給与改定の見送りを行わなければならないのははなはだ残念な次第でございます。  仲裁裁定につきましては、与野党間でその取り扱いに関して合意が成立いたしました。これを守ってまいりたいと思います。  労働基本権の問題の提起がございましたが、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度、公労委の仲裁制度を今後とも維持尊重していく考えには変わりはございません。したがって、労働基本権については現行制度によって対処していくという考えでございます。  経済成長率について、五・二%を目途にせよという御指摘でございますが、最近の国際的な経済情勢の冷え込みからいたしまして、三・四%に改定せざるを得ない状況でございます。政府総合経済対策を決めまして、今度の補正予算にも若干の項目でお願いをしておる次第でございますが、懸命の努力を払いまして、景気が上向くように努力してまいりたいと思っております。  所得税の減税につきましては、先ほど来申し上げますように、財源を得て、そして減税小委員会で与野党の合意をつくろうと努力しておるところでございます。この結論が得られれば、これを尊重してまいりたいと思っております。  財政再建五カ年計画経済計画について御質問がございました。  民社党が去る十月に新財政再建五カ年計画をお出しになりましたことは私も承知しておりまして、その内容も拝見いたしましたが、このような御努力を的確におやりになっていることに敬意を表しておる次第でございます。しかしながら、財政の実態、現況を見ますと、必ずしも民社党のおっしゃるとおりにやることには困難な面もあるのでございます。しかし、この御意見は重要な参考の資料といたしまして、今後とも財政再建の方策を探求してまいりたいと思っております。  国際情勢につきまして御質問がございましたが、米ソ間の状況は緊張が緩和される方向にいまあるとは考えておりません。しかしながら、ソ連に新しい体制が出現いたしまして、これがどういう方向に世界政策を打って出るか重大な関心を持って見守っております。昨日ソ連大使が私のところへ表敬に参りまして、アンドロポフ新政権の政策について私も若干質問をしてまいりましたが、大体従来のいわゆる平和政策を述べた程度で、特に顕著なことはございませんでした。  相互依存関係の深まった今日の国際社会においては、いかなる国も永続的な世界の平和と繁栄なくして自国の平和と繁栄はございません。特に日本はそのような条件にある国であります。それと同時に、国力の発展に伴って日本の果たすべき国際責任と役割りは非常に大きくなっていると考えております。  さらに南北問題について御質問がありましたが、わが国は自由世界第二位の大きな経済力を有する国といたしまして、この経済力等を通じて世界経済の調和ある発展及び世界の平和と安定に貢献すべき役割りを持っていると思います。このような考え方から、所信表明演説で申し上げましたように、新中期目標のもとで開発途上国に対する経済、技術面での協力に一層力を注ぐ方針でございます。また、国連等の場を通じて南北対話を促進し、南北問題の解決に積極的に貢献するという態度を堅持してまいりたいと思います。  難民問題について御質問がございました。  難民には二つの種類がございまして、いわゆる政治的亡命者とベトナム難民と二つ性格がございます。しかし、難民認定に当たりましては、庇護を求める外国人に対する人道的配慮のもとに、難民条約にのっとり、迫害の有無について慎重に審査をしております。難民と認定されなかった者につきましても、一律に在留を否定することはなく、個々の事情を検討して在留の許否を決定しております。インドシナ難民のわが国への定住受け入れにつきましては、今後とも国内の受け入れ体制を整備して努力してまいりたいと思います。  私は、行管長官当時、このベトナム難民の処理について非常に心を砕きまして、いま宗教団体や赤十字に委託してめんどうを見ていただいておるのが大部分でございますが、それではいけない、みずから政府は責任を持つべきであると、そういう考えに立ちまして今回大いに新しい難民センターを建設することを決め、約七百二十名の収容力を持つ快適な難民センターをこれからつくる予定で、すでに予備費から二十億円の予算をいただきましてその設計に入っておるところでございます。今後とも難民問題については人道上の問題として力を入れたいと思います。  わが国外交基本につきましては、先ほど来申し上げましたように、果たすべき国際責任とその役割りが増大していることも十分認識するとともに、東西関係、南北関係等につきまして、日本の果たしている重要な位置と役割りについても認識を新たにして積極的に努力していく所存でございます。(拍手)    〔国務大臣瀬戸山三男君登壇拍手
  22. 瀬戸山三男

    国務大臣(瀬戸山三男君) 柳澤さんの御質問のうちで私の所管に関する部分だけをお答えしておきます。  わが国の学校教育は、関係者の努力によりましてこれまで着実な発展を遂げていると考えておりますが、柳澤さんがおっしゃったとおりに、今日、非行や校内暴力あるいはシンナー遊び等の増加、一部に見られるような適切を欠く学校運営などの問題が指摘されていることはまことに遺憾であります。これらの問題を解決して、知・徳・体の調和のとれた人間性豊かな児童生徒を育成することは今日の大きな課題であると思っております。  このため文部省としては、新しい学習指導要領の趣旨を生かした教育活動によりまして、ゆとりの趣旨を生かした教育活動によりまして、ゆとりのある充実した学校生活の実現が図られるよう指導しているところであります。また、教員が児童生徒を十分に理解して愛情と使命感を持って指導に当たることが大切であり、さらに学校における真剣な取り組みはもとより、家庭や地域社会との連携を一層深め、これらが一体となってこの問題に対処していく必要があると考えております。このような努力を続けることによりまして、公教育の信頼を確立することのできるよう最善を尽くしたいと思っております。  以上お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  23. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 国家公務員の定員の削減につきましては、すでに総理大臣からもお答えがございましたが、私からもお答え申し上げておきます。  国家公務員の定員の削減につきましては、昭和四十三年度から厳しく進めてきたところでございますが、さらにこれを強化いたしまして、昨年の九月第六次定員削減計画策定し、昭和五十七年度以降五年間で五%、数字で申しますと、八十九万人に対し約四万五千人削減するという計画を立てたわけでございますので、今後はそうした計画に基づいて厳しく取り組んでいく考えでございます。  しかし、また一方、それぞれの省庁におきましては新しい緊要な行政需要があるわけでございます。先ほど総理からもお述べになりましたように、医学教育の問題あるいは国立病院、療養所等々の緊要な行政需要等もありますので、こうした問題を踏まえて定員の管理を行っている実情でありますので、一律に新規採用を抑制するとか半減するとかということは、その気持ちは私は十分理解できますが、現実的には適当ではないであろうと、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  24. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる補助金問題につきましては総理からかなり詳しくお答えがありました。  補助金は、御承知のように十四兆七千六百五十八億円、これをたとえば厚生省、文部省、農水省、建設省、その形でくくってみますと八三・三%、また社会保障、文教、公共事業、この形で見てみますと七九%、そして法律補助か予算補助か、法律補助というくくり方をしますと八二・二、しかも交付先が地方公共団体に対する交付、こういうことになりますと、これが七八・八、いずれの側面からくくってみましても八〇%という数字が出てまいるわけであります。  いま御指摘にありましたように、さきの行政改革国会と言われた国会におきまして、地域特例等についての御審議をいただぎました。これがいわゆる削減の一つの根拠となったことも事実であります。そういたしまして、その他の問題につきましては、国の施策を実現するための重要な政策手段という機能を持つことはもとよりでありますけれども、これが既得権化したり、あるいは惰性的な運用で硬直化しやすい。これらを除去いたしまして、まさに財政資金の効率的使用、そして行政運営の能率化、この観点に立って整理をし、そこで、総理からもお答えがありましたように、とにかく五十三年以来の伸び率を見てみますと、一八・四%が逐年減少され、五十七年度はまさに一・八%と、いわゆる地方交付税国債費を除く一般歳出と同じにまでこれが削減せられた。また、年次的にも件数別にも金額的にも、五十七年度予算にはそれが画期的な数字となっております。引き続き御趣旨を体して努力をする所存であります。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 私に対する御質問の第一は、ソ連に新政権が生まれまして、世界情勢にどういう変化があるのか展望をし、また分析したことがあるのか、こういうお尋ねでございますが、すでに総理からもお答えをいたしましたように、ソ連のアンドロポフ新政権が生まれました後に、中ソ関係で確かに話し合いが始まる等の動きが見られるわけでありますが、しかし、米ソ関係中心とする東西関係を初め、現下の厳しい国際情勢には基本的な変化はないと、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。わが国といたしましては、今後ともこのような動きが御指摘の諸関係及び諸地域の情勢にどうした影響をもたらすのか、冷静かつ慎重にその推移を見守ってまいりたいと考えております。  第二に、政府開発援助の問題でございますが、わが国が平和国家であり、また自由世界第二位の経済力を有する国であり、かつ対外経済依存度の高いわが国が国際社会において果たすべき責任であるとともに、援助を通じて世界経済の発展並びに世界の平和と安定に貢献することは、ひいてはわが国の平和と安定にも資するものであると考えておるわけであります。こうした観点から、わが国は援助の拡充に努めておることは事実であります。  わが国の八一年の政府開発援助実績は、絶対額では先進国中第四位でありますが、政府開発援助の国民一人当たりの負担額及び対GNP比では、先ほど御指摘がございましたようにいずれも第十四位というふうになっております。したがって、わが国としましては、総理所信表明演説で述べられましたように、新中期目標のもとで政府開発援助の拡充を着実に図っていきたいと考えております。(拍手
  26. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) これにて午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時十二分開議
  27. 徳永正利

    議長徳永正利君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。大森昭君。    〔大森昭君登壇拍手
  28. 大森昭

    ○大森昭君 私は、日本社会党を代表して、総理並びに関係閣僚に、国民の身近な諸問題について若干角度を変えまして質問したいと思います。  まず、総理にどうしても最初にただしておかなければならないことは、政治姿勢の根底にある政治倫理の問題であります。  総理、世の中では新内閣中曽根政権と素直に言う人というのは少ないのでありまして、多くは直角だとか、あるいは純角だとか、角防だとか、傾角だとか、まあひどいのになりますと田中・曽根政権などと言っております。  総理、世論は、あなたの「わかりやすい」政治という趣旨に反しまして、わかりにくい政権ということを言われております。その最大の理由が、つかみどころのない政治姿勢によるものであり、とりわけ政治倫理の欠如にあるのではないでしょうか。  そこで、私は、政治倫理について一つだけあなたにただします。  それは、裁判で有罪判決を受けた国会議員は、みずからどう国民に対処すべきかということであります。総理、あなたは政治の最高責任者として、「最終的に本人が判断すること」だということを繰り返しております。しかし、繰り返しの答弁でありますが、それでは済まないのではありませんか。仮に私がそのような立場にあれば、直ちに私は辞職をいたします。まことに失礼でありますが、仮にあなたが当事者となった場合にはいかがされる所存でありますか。私は、国民信頼を不可欠とする公的な立場にある政治家としての倫理観をただしておきたいと思うのであります。  次に、私は景気対策についてお尋ねいたします。  自民党国会で絶対多数を占めてからすでに二年六カ月を経過しましたが、この間、自民党経済運営は完全に失敗であったと言わざるを得ません。深刻な財政危機、不況からの回復のおくれ、失業の増大、中小企業経営の不振、所得の格差や地域ごとの格差が拡大するなど、いずれも政府自民党が適切な対応を誤ったからであります。  特に、ここで私が問題にしたいことは、われわれが主張しておりました一兆円減税や内需拡大を実行することなく、いまだに個人消費を低迷させている政府自民党の責任についてであります。現在のように景気が悪くなれば個人の所得伸び悩み、それに伴って購買力は低下し、生産高は減少し、そのことが不況国民の生活不安を一層深刻にさせているという悪循環をつくり出していることであります。総理、あなたは、私どもはそういう主張をしておりますが、どういう具体的な打開策をお持ちになっているか、お伺いしたいと思うのであります。  所得税は、減税がないと自然に増税される仕組みになっております。景気回復のかぎと言われる個人消費を低迷させている最大の理由は、可処分所得減少にあることは明らかであります。加えて、スト権、団交権を剥奪され、その代償としての仲裁裁定、人事院勧告の完全実施は当然のことであるにもかかわらず、これを渋っているなどということは、さらに景気回復をおくらすものとして絶対に容認できません。現在、野党が一致してこの完全実施を要求しているのもその意味合いからであります。  所得減税について、総理、あなたは与野党で財源を見つけてもらいたいとか、あるいは特別小委員会で一致したらということを言っておりますが、一国の首相として余りにも不見識ではないでしょうか。すでに野党の方は一兆円減税の具体的な案を提示をしているのであります。いま問題は政府・与党の決断にあり、あなたが決断すべき時ではないでしょうか。明確にお答えをしていただきたいと思うのであります。  また、五年連続の課税最低限度の据え置きによって国民生活の上に税金が重くのしかかってきております。とりわけ課税最低限度の是正は、政府の怠慢によるものと言わざるを得ません。税の不公平感を一層増幅するものでありますので、いま直ちに実行してもらいたいと思うのでありますが、大蔵大臣所見はいかがでしょうか。  次に、中小企業対策について質問いたします。  景気動向の指数は昨年十月に五〇%を超えたものの、それ以降ずっと五〇%を割り、景気は収縮過程にあり、この中で中小企業の苦しさは一段と深刻なものとなっております。企業倒産件数も千五百件を超えた十月の実情からしても、効果的な対策を打ち出すべきであると思います。さきの総理の答弁では、貸付金を用意するとか、総合的対策を講ずるということであり、そのことも必要でしょうが、それが当面を糊塗する一時しのぎの中小企業対策であってはならないと考えているところであります。  たとえば、中小企業向けの官公需は直接に中小企業の仕事に結びつくものとして、その役割り、期待には大きなものがあります。毎年閣議決定によって決められ、その割合も少しずつではありますが、ふえております。しかし、ことし九月の行政管理庁から出された報告書によりますと、大企業と中小企業の定義や区分に誤りのあったことが指摘されております。本来中小企業発注すべきものを大企業に発注したり、発注の区分を不正確にして、中小企業受注がしにくくなるようなことがあること自体大変な問題であります。総理及び通産大臣に見解を伺いたいと思います。  次に、農産物の自由化などについても再三質問が出ておりますが、恐らくレーガン大統領との会談において、あなたは農産物の自由化、輸入枠の拡大について強く要請を受けると思うのでありますが、あなたは具体的にこの会談の中でどのような回答あるいは約束をする所存でありますか。この点についても明確な御答弁をいただきたいと思うのであります。  あわせて減反政策についても、政府の変更について明らかにしていただきたいと思うわけであります。  次に、深刻化しつつある雇用問題についてお伺いをいたします。  雇用情勢が好転したら景気の回復は本物だとよく言われますが、昨今の雇用情勢昭和三十一年以降二十六年ぶりの悪い水準にあります。それは特定業種ということではなく、全業種に、しかも全国的に広がり、十月現在で百三十九万人の失業者を出しております。うち四十六万人が男子世帯主であります。五万人が女子世帯主であるなど、これまでにない異常な事態が続いております。諸外国と比べればというお話でありますが、そういうことではこれは今日の雇用の状態というのはゆるがせにできないと思います。  雇用の確保と創出のためには、何といっても早急に景気の回復を図ることが必要であると思うわけであります。その際わが国がとるべき経済政策は、国内需要を適切に引き上げ、これに見合った経済構造に改革し、経済の分権化を図るなど社会システムの転換を図り、福祉型成長を実現する方向を目指すべきであると思います。  そしてまた、このような景気回復と産業構造の転換の方向の上に、私は、第一には、構造不況下にある素材産業の急激な転換を避けるために、企業グループの社会的責任と地域産業育成を可能にする緩やかな転換を図っていく必要があると思います。第二に、今後雇用に大きな影響を及ぼすロボットやオフィスオートメーションの導入について、雇用問題を生じさせないように一定の社会的規制を加えていく必要があると考えるものであります。以上、当面する雇用対策について労働大臣の御所見を伺いたいと思います。  さらに、閉山に追い込まれた北炭夕張新炭鉱の再開発について総理所見を伺いたいと思います。  今日の石炭鉱業は深刻な経営実態を露呈し、政府の適切な措置なくしては第七次政策の二千万トン体制に甚大な打撃を受けることは明らかであります。政府の責任は重大であります。今後、夕張新炭鉱は、労務賃の早期支払い、雇用対策、地域経済等の緊急課題とともに、特に安倍前通産大臣の基本方針として出された、山の再開発の実現のため新会社設立に最大限努力するとの見解が表明されましたが、これが早期実現のために総理の確固たる御答弁を求めるものであります。  次に、婦人問題について申し上げます。  現在、婦人労働者は千三百九十一万人となっております。総労働者数の三四・五%を占めるに至りましたが、このうち低賃金や不安定な労働環境に置かれておるパート、臨時雇いなどは実に二百六十六万人に上っているのであります。  以上の実態に思いをはせるとき、まず第一に、婦人労働者に多いパートの課税最低限度を現行の七十九万円から百二十万円に引き上げること。第二に、健康保険、厚生年金、雇用保険などへの加入を常用労働者と差別なく実施すること。第三に、家内労働者の工賃は地域最低賃金を下回らないことなどは早急に改善すべきだと思うわけであります。あわせて、家内労働手帳を完全に交付するよう指導を強めるべきだと考えます。  政府は、一九八五年までに婦人差別撤廃条約を批准する義務を国際的に負っておりますが、早期完全批准についてどう考えているのか、あわせて御見解を賜りたいと思います。  また、優生保護法について厚生大臣は、同法改正に慎重な態度をとると表明しておられますが、この点、総理考え方をお伺いしたいと思います。  最後に、法務大臣に一言お尋ねいたします。あなたが問題のゲーム機製造業者らの協会の顧問をしていたことについていろいろ新聞報道がされておりますが、中身は私にはよくわかりませんが、いろいろな記事の中で今日あるわけでありますが、正直にひとつ御見解、弁明などをいただきたいと思います。  以上をもって私の代表質問を終わりますが、ただいま申し上げました質問事項はいずれも国民にとってきわめて重要な関心事でありますので、総理初め関係大臣は、いままで三日間を通じましていろいろ答弁を聞いておりますが、率直に申し上げまして少し答弁に誠意がないのじゃないか、あるいは具体性がないのじゃないかというふうに感じられますので、切に、私の質問に対しましては誠意をもって御答弁していただくことをお願いいたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大森議員の御質問にお答え申し上げます。  まず、政治倫理の問題でございますが、ただいま組閣に関しましていろいろ御批判をいただきました。厳粛に受けとめまして戒めの言葉といたしたいと思います。  なお、ただいま仮に私が当事者になった場合にどうするかという御質問がございましたが、私は常に政治家として良心に従い、厳に身を処するよう心がけてまいりたいと思っております。  景気対策について次に御質問がございました。  景気現状は、先進諸国に比ぶれば良好ではございますが、景気の足取りは力強さを欠いておるところでございます。政府といたしまして総合経済対策を先ほど決定いたしまして、前に申し上げましたとおり、補正予算にもその費目を計上しておるところでございますが、これらの対策推進してまいりたいと思っております。それと同時に、内外経済動向を注視いたしまして、機動的な政策運営にも心がけてまいりたいと思っております。  所得税の減税につきまして御質問がございました。  衆議院大蔵委員会減税問題に関する小委員会は、野党の一兆円減税要求が出されたことにも関係し、それを踏まえて与野党の合意に基づく衆議院議長見解により設置されたものでございます。したがいまして、この減税小委員会で財源を含めて与野党合意を形成するように努力が行われておりますが、その結論が得られればこれを尊重いたしたいと申し上げる次第でございます。  中小企業対策及び官公需対策について御質問がございました。  中小企業を取り巻く経済情勢は厳しいものがございます。官公需につきましては、従来から中小企業者の受注機会の増大に最大限の努力を払うように政府としても努力をしてまいったところでございます。しかしながら、御指摘のように、先般の行政監察の結果に見られますように、本施策についてもなお改革の余地が十分あるように見受けられます。今後におきましても、本監察結果を踏まえまして、政府全体として本施策の一層の改善に最大限の努力を尽くしてまいりたいと思います。  農産物貿易問題につきましては、農産物の市場開放について、関係各国との友好関係にも留意しつつ、国内農産物の需給動向を踏まえ、食糧の安定供給の上で重要な役割りを果たしているわが国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に重要であると考えております。一月に予定されております訪米に際しましては、わが国の農業のこれらの実情やこれまでの市場開放措置等も十分相手側に説明もし、その理解を得ながら適切に対処してまいる考えでございます。  減反政策の変更に関しまして御質問がございました。  米の潜在生産力は需要を大幅に上回っており、今後とも転作の着実かつ的確な実施が必要であると考えております。しかしながら、三年連続の不作という実情と米の政府在庫水準が著しく低下しておるこういう実情にもかんがみまして、五十八年度につきましては、第二期の転作等目標面積から七万七千ヘクタールを軽減いたしまして、六十万ヘクタールにいたしましたところでございます。  また、夕張新鉱の再開発につきましては、大澤管財人の提示した構想につきまして、石炭協会の中で、保安の確保と安定経営の可能性を判断基準として現在鋭意検討がなされていると承知しております。政府といたしましても、今後この大澤構想が関係方面理解協力を得て実現されることとなるよう期待をしております。  なお、そのほか労務債問題、あるいは雇用問題、地域経済問題等夕張新鉱をめぐる諸問題につきまして、政府としてもこれまで所要の措置を講じてまいりましたが、今後とも適切に対処してまいるつもりでございます。  パートの所得限度の問題について御質問がございました。  昭和五十六年度の税制改正におきまして、控除対象配偶者等の所得限度額を二十万円から二十九万円に引き上げた結果、現在では給与所得控除の最低保障額五十万円と合わせて七十九万円までの収入について配偶者控除が適用されております。この七十九万円をさらに引き上げるという問題につきましては、配偶者に所得のない世帯との税負担のバランスが著しく崩れるという問題もございまして、必ずしも適当であるとは考えておりません。  さらに、健康保険などへの加入差別撤廃につきましては、パートタイマーについても、就労の実態がその事業所の同種の常用的な就労者に準ずる場合はすでにこれを適用しているところでございます。  また、家内労働者の工賃につきまして、家内労働者の労働条件の改善を図るために、最低工賃については、都道府県ごとに設置されている公労使三者構成の審議会におきまして、同一地域における類似業務に従事する労働者に適用される最低賃金との均衡を考慮して決定されております。今後とも適正な水準の確保に努力してまいります。  婦人差別撤廃条約、これにつきましては、批准のため国内法制等諸条件の整備に努めることは、国連婦人の十年国内行動計画後半期の重点課題となっております。政府といたしましても、できるだけ速やかに本条約を批准すべく目下作業中でございます。  優生保護法の改正問題について御質問がございました。  優生保護法に規定する人工妊娠中絶制度についてはいろいろな御意見もございます。国民のコンセンサスが得られる形となるよう目下関係当局において検討中でございまして、その検討結果をまって対処いたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  30. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問、特に所得税減税の総体的な問題については総理からお答えがありました。したがって、いわゆる課税最低限度の据え置きが国民生活に重負担を課して税の不公平感を増幅しておるという御指摘に対する考え方をお答えいたします。  総理からお答えがございましたように、減税問題そのものにつきましては、まさに各党の合意に基づくいわゆる議長見解によりまして小委員会が設けられ、中間報告をいただいておる、やはり原則的にはこれを見守るという姿勢をとるべきであると思っております。  そこで、課税最低限の問題でございますが、この議論も巷間いろいろなされております。言葉の中には、若年天国、熟年地獄という言葉もまたございます。そして課税最低限そのものを他の先進国に比べてみますならば最低限は高く、最低税率は低く、最高税率また高く、税率の刻みは最も多いというのがわが国所得税の体系そのものでございますので、それらを勘案いたしまして、今日にわかに私は、御指摘の課税最低限の据え置きそのものが国民生活に重負担を課しておるという印象のすべてではないというふうに認識をいたしております。  次に、パートの問題でございますが、これは総理から詳しくお答えがありました。五十四年、五十五年の両年にわたりまして、本院の本会議場におきましてもまた委員会におきましても強い要求がありました。五十六年度税制で改正をいたしたところでありますが、確かに配偶者に所得のない世帯との税負担のバランスを考えてみますと、おおむねこの五十万プラス二十九万というのがバランス上の限界点ではないか、このように認識をいたしております。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  31. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 総理からおいしいところは全部答弁がございましたので、私は事務的な答弁になるかと思いますが、御指摘のように年末金融二兆円の確保。そうしてまた、逐年増加していることも御指摘のとおりでございまして、現在は三兆九千百八十億円の枠になり、あるいはそのシェア、率は三七・二%まで向上いたしております。しかし、行政監察の御指摘のありましたお話しの点等も踏まえながら、なお分割発注あるいは大中小の線引き等の問題について、所轄官庁として取りまとめのためにより努力を続けるつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣大野明君登壇拍手
  32. 大野明

    国務大臣(大野明君) 大森議員質問の雇用問題についてお答え申し上げます。  最近の雇用失業情勢は、景気の低迷を反映して労働力需給の緩和、失業者の増加等厳しい状況でございます。このため政府としては、内需を中心とした景気の着実な回復と雇用の安定を確保するため、先般、公共投資推進等による内需の拡大不況産業対策及び雇用対策を柱とする総合経済対策を決定し、特に雇用対策としては、不況業種や不況地域における雇用安定対策新規学卒者対策等を強化することとしたところでございます。今後とも雇用の安定を図るためには、適切かつ機動的な経済運営に努めることが重要と考え、これらを推進するに際しましては、産業構造の変化、国民のニーズの多様化等諸環境の変化にも十分配意し、国民の福祉向上につながるようにしていくことが必要と考えております。  次に、基礎素材産業等構造不況業種の構造転換を進めるに当たりましては、関係企業及び地域の労働者の雇用の安定に十分配慮しつつ実施されることが必要であると考え、労働省といたしましては、これら構造不況業種に関する雇用対策について、特定不況業種離職者臨時措置法等に基づき、関係労働者の失業の予防、再就職の促進等雇用の安定のための諸施策を講じているところでございます。今後とも関係省庁とも十分連絡をとりつつ、失業の予防を初めとするこれらの諸施策を積極的に推進することとし、関係労働者の雇用の安定が図られるよう諸対策整備充実に努めてまいりたいと考えております。  次に、今後マイクロエレクトロニクス技術を中心とした技術革新が一層進展すると、その雇用に及ぼす影響について楽観は許せないと考えております。しかし、技術革新はわが国経済の発展にとっては不可欠のものでありまして、したがいまして、今後の対応の方向としては、マイクロエレクトロニクス技術の進展に伴い生ずるところの摩擦を政労使の努力によりでき得る限り事前に回避、克服して、その成果を経済の発展、国民福祉の向上に生かしていくことが肝要であると考えております。こうした観点に立って、これらの技術革新が雇用に及ぼす影響等について現在総合的な調査研究を進めるとともに、雇用問題政策会議等の場を通じ、労使の意思疎通の促進や能力開発の促進等の対策を進めているところであります。今後、調査研究の成果も踏まえ、適切に対応してまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣秦野章君登壇拍手
  33. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 御質問のあった日本アミューズメントマシン工業協会の顧問には、同協会が日本遊園協会と名のっていた昭和五十五年ごろに就任したと記憶しております。しかし、法務大臣に就任した際に一切の営利事業関係から役職をやめましたので、その際この協会からもやめております。  この協会は、遊園地等にございます遊園機器、大きな子供が遊ぶ機械とか、それからあとはマイクロコンピューターを導入したいわば文化娯楽という機械工業産業でございまして、いま一兆円産業と言われておりまするが、中には輸出産業にもなっております。健全な娯楽ということの育成ということで、実はこの中の優秀な企業が、東京の企業の工場が神奈川県にございまして、昭和五十五年といえば参議院選挙でございますが、そんなときに私も応援を受けたので、顧問になってくれということでなりました。しかし、顧問というのは定款を見ても理事会の諮問機関でございまして、私は役員会とか全体の会合とかに一遍も出席したことはございません。ただ、晴海でもって展示会があったときに、外国人もいっぱい来るし、あいさつしてくれぬかということで、昨年と一昨年、二回テープカットとあいさつをいたしました。七十二人のメンバーですけれども、この中から悪いのが出て私も大変恐縮し、驚いておるわけでございますが、娯楽機といってコンピューターまで導入していますけれども、やはりもろ刃の剣だ、マージャンや馬券でもばくちをやるということもあるんだと、しかし悪いやつがやればやっぱり悪いこともするんだということで、私は大変驚いたと同時に、きわめて残念に思っております。しかし、もうやめておりますので、さよう御了承を願います。(拍手)     ─────────────
  34. 徳永正利

    議長徳永正利君) 高平公友君。    〔高平公友君登壇拍手
  35. 高平公友

    ○高平公友君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、総理所信表明演説に対し総理ほか関係大臣質問をいたします。  まず、総理政治姿勢について伺います。  中曽根総理、あなたは国会議員として在職すること実に三十五年余、この間、政府及びわが党の要職を歴任されました。文字どおり議会人としての政治に対する卓越した感覚は衆目のひとしく認めるところでありまして、新総理の誕生はまさしく国民期待をもって迎えられております。そしてこの時が内外ともに重要懸案事項が山積するという時期であるだけに、私が総理に強く申し上げたいことは、事に処しては勇気と決断を持って信念を貫き、強いリーダーシップを発揮していただきたいことであります。  政権を担当するに当たって、ときには国民世論の醸成とかあるいはコンセンサスを待つことも必要かとは存じますが、むしろ問題の本質とその方向、手順な国民に率直に訴えて、そして理解の中で進むべき方策を果敢に示すことが、この難局を乗り切るためのとるべき政治姿勢であると思うのでありますが、総理所見をお聞かせいただきたいのであります。  以下、昨日の同僚上田議員質問事項との重複を避け、数点お伺いしますので、どうか国民理解していただけるよう明確な答弁をお願いします。  質問の第一点は外交問題で、なかんずく北方領土問題と対ソ政策についてであります。  まず、北方領土返還問題については、御案内のように、昭和四十八年に当時の田中総理が訪ソしまして平和条約締結交渉を行ったところであります。その際、発出された共同声明には、「第二次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが、両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与するものである」と、こういう趣旨がうたわれております。この共同声明中にある未解決の諸問題に北方四島の問題が入っていることは、ブレジネフ書記長との会談において確認され、明らかでありました。  このような経緯があるにもかかわらず、ソ連は昭和五十年ごろからわが国の北方領土返還運動を指して、一部の者の根拠のない要求であるとか、外部からの教唆によるものである、こういう主張を行いまして、最近では、領土問題は解決済みであり、存在しないとのかたくなな姿勢をとってきております。また、これに加えて、昭和五十三年ごろからソ連は、北方領土において軍事力の配備増強を行うという、北方領土問題の平和的解決の精神に逆行するような行動をとっておりますことはきわめて遺憾であります。  この間、このようなソ連の態度に対し、国会においても北方領土問題に関する決議が行われたほか、四島の早期返還を求める国民世論は大きく盛り上がりを見せておりますが、かかる国民の悲願を背景に、新内閣としては今後どのようにこの問題の解決を図っていくつもりか伺いますとともに、このほかアフガン問題等、日ソ関係は厳しい局面を迎えておりますが、今後の対ソ外交基本方針、特にソ連のアンドロポフ体制下の新指導部に対してどのような姿勢で臨むつもりか、あわせてお伺いしたいと思います。  次いで、私は、防衛問題についてお伺いをします。  国の独立と平和を守る安全保障政策は国策の重要な柱であります。近年、ソ連の軍事力の異常な増強という厳しい国際情勢の中で、防衛問題に対する国民的関心が高まり、自衛隊も高い支持率を得るに至りましたことは、こうした異常な事態を敏感に反応した国民世論のあらわれとも言えると思います。申すまでもなく、自国の防衛はあくまでも自主的に決定すべきは当然であり、これとあわせて日本をめぐる国際軍事情勢を的確に分析して、西側の一員としての国際的責任も十分に考慮すべきであると思います。  こうした観点から、防衛費とGNP一%について、私の意見を交え質問いたします。  昨日の衆議院の本会議におきまして、民社党の佐々木委員長に対する答弁もありました。しかし私の意見を申し上げたいと思う次第でありますが、御承知のように、政府昭和五十一年十一月に、当面の防衛費をGNPの一%以内とするとの閣議決定を行っております。私は、この決定の背景には、同時期に作成された防衛計画の大綱に基づく防衛力整備を進めていくに当たっては、何らかの形で国民に経費のめどを示す必要があったということで、このような決定になったと理解をしております。しかしながら、この決定にある「当面」の解釈は、何ら固定的な期限を予定したものではなく、経済状況など内外情勢の変化に伴い、必要がある場合には改めて検討さるべきものと受けとめております。  すなわち、この決定の前提となったものは、当時の五十年代前期経済計画で示した経済成長率、年平均一三・三%を見込んだものでありますが、その後実質経済成長率は当初の見込みと大きく乖離したため、五十七年度のGNP一 %、約二兆六千億は、五十一年当時の見込みで言うならば一兆円近く下回っております。つまり、最近問題となっている防衛関係費とGNP一%との接近は、もっぱら経済成長の鈍化が一つの原因と言えると思うのでありますが、私は元来、GNP一%の問題は平和時の防衛力の歯どめとしてはそれなりの意義を評価するとしても、今日の世界的緊張、危機にあっては、国家存立の基盤である防衛力が変動性の高い経済指標の枠の中で固定されることは、脅威、危機に備えるための防衛の目的が果たせないと思うのであります。  私は、現下の厳しい財政事情に照らして、防衛費を急激に増すことには賛成しかねます。しかしながら、少なくもさきに述べた自国の防衛と国際的責任を考えた場合には、防衛費を引き続きGNPの一%以下に抑えておくことはもはや適当でないのじゃないか、そういう考えもする次第でありまして、総理の明確な所見を承りたいと思うのであります。  次いで、私は、中小企業対策についてお伺いします。  いまも社会党の大森議員のお話がありました。最近の中小企業の景況というのはまことに惨たんたるもので、二番底の底をはっているとも言われております。たとえば、本年十月の企業倒産件数は千五百件の危機ラインを突破し、本年の最悪記録をなしております。また、中小企業の生産活動を見ても、本年一―三月期には前期比減少に転じたのに引き続き、四―六月期も一・八%とさらに大幅なマイナスとなり、在庫量の増大など中小企業関係者の憂色はきわめて濃いものがあります。  こうした景気の低迷に対処するため、政府は十月八日の総合経済対策において、公共投資の追加等と並んで、中小公庫、国民公庫の貸付限度額の引き上げなど五項目中小企業対策を決定したところでありますけれども、この対策の中には、かねてより中小企業者が広く待ち望んでおりました中小企業設備投資減税の創設が見送られることになりました。今日、大企業の設備投資は堅調に推移しております。にもかかわらず中小企業の設備投資、それが低迷しているという現状からするならば、中小企業に活力を与えるためにも、また、せっかく大企業と中小企業の格差が狭まってきたいま、再び大企業との格差が大きく開いていくということが大変懸念される次第でありまして、本制度の創設が何より望ましいと考えるが、所見をお伺いしたいのであります。  第二点は、中小企業者の強い要望である中小企業承継税制についてであります。中小企業経営者の三割以上が六十歳を超えているということから、遠からず経営者の交代期が一斉に迫ってまいります。また、法人企業である中小企業の場合には、自社株式の六割以上を所有する経営者が約半分もおります。そのために、地価の高騰を背景として、現行の純資産価額方式による株式評価額が上昇しまして、将来後継者に相続税の高負担問題が発生することは当然予想されるところであります。後継者が安心して事業が継続できるように、特に問題となる純資産価額方式を改めて、収益還元方式の導入を期待したいのでありますが、政府所見を求める次第であります。  次に、私は、構造不況対策についてお伺いをいたします。  わが国の産業の中でも自動車を初めとする各種加工組み立て産業は、その国際競争力を背景にむしろ欧米諸国と通商摩擦を引き起こすほどの力がありますけれども、一方で、アルミ製錬、石油化学等の基礎素材産業については、石油価格の高騰を契機に、国際競争力の著しい低下により輸出の急減、輸入の急増が日増しに強まっておりますほか、石油化学製品価格の上昇によって、国内需要の減少等から国内生産は最盛期の数分の一という著しい低迷を余儀なくされております。もしこのままの現状を放置するならば、わが国の基礎素材産業は、その存立基盤は喪失すると言っても過言でありません。御案内のように、基礎素材産業は出荷額で全産業の約三割を占めているほか、コンビナート体制をとっているものが多いために、関連地域の生産活動、雇用状態に直接つながっているだけに、その経済的影響の大きさというのははかり知れないものがあります。  このように、産業活動及び国民生活にとって重要な基礎素材産業が今日経営的危機に陥っているわけでありますけれども、もはや市場メカニズムによる民間の企業努力だけでは再起は不可能となっております。これら構造不況業種に対してどのような対策を講ずる所存でありますか、政府所見をお伺いしたいと思います。  次に、農業問題について二、三点お伺いを申し上げます。  今日、日本の農業はかつてない試練のときを迎えております。米価を初め各種農産物価格が、経済成長の鈍化、食糧需要の停滞等を反映して、これまでにない低水準で推移しております。また、先ほどもお話しありましたけれども、東北地方の三年続きの冷害、不作も手伝って、農家の経営というのはきわめて厳しいものがある次第であります。それに加えて、内にあっては行財政改革の波、外にあっては米国の牛肉、オレンジ等の自由化要求に代表される国際化の波にさらされているという厳しい状況下にあります。このような中で、農業に従事する者は自分たちの将来に、また農業の未来に大きな不安を抱きながらも、懸命に父祖伝来の田畑を守り続けております。  こうした情勢を踏まえ、以下数点、四点でありますけれども、お伺いします。  まず第一点は、いまこそ農民が安心して農業をやれるような農政の展望を農民に明らかに示すべきであると思うが、これは一体どうでしょうか。  第二点に、臨調基本答申に見られるように、農業の分野においても効率性の追求は重要ではありますけれども、ただ、農業に関しては経済合理性だけでは律し切れない面があり、食糧の安定供給という農業の持つ重要な使命、自然的、社会的に不利な条件にあるわが国農業の特殊性等を踏まえる必要があると考えますが、これについての基本的な考え方を承りたい。  第三点に、米国を初め諸外国の農産物に対する自由化要求は非常に厳しいものもありますけれども、むしろ日本世界有数の農産物輸入国であり、農産物市場は十分過ぎるほど開放されていると思います。各国との交渉に際しては、この点を明確にし、厳正に対処すべきだと思いますが、いままでお答えもありましたが、改めてこの自由化問題につきまして所信をお伺いしたいと思います。  最後に、林業問題であります。近年、木材需要の低迷に加えまして、外材が国内生産材を圧迫しまして、七・三ぐらいの比率です。外材七割、国内産三割ぐらいです。林業経営費の増高等により経営意欲が著しく低下しておるほか、労働力の高齢化等によりまして伐採、造林等の各種の林業活動はほとんど停滞しておると申し上げていいと思うのであります。こうした厳しい状況の中で、今後林業の広域的機能、これはぜひ確保せねばならぬ。これを確保しつつ林業の振興をどのように図っていくか、以上四点につきまして、総理及び農林水産大臣の所見を求める次第であります。  次いで、高齢化における社会保障についてお伺いします。  わが国はいま、世界に例を見ないスピードで高齢化社会に移行いたしております。厚生省の推計によれば、総人口に占める六十五歳以上の老齢人口は、昭和五十五年の九%から、三十年後にはその比率は二〇%を超え、四、五人に一人は老人だろうということに相なるわけであります。いまや高齢化社会への対応というのは国家的課題であり、いまからこれに対処する基盤づくりが必要であると考えるのであります。  すなわち、高齢者をめぐる医療保障や年金などの所得保障は、わが国経済が高度成長のときであればまあどうにか賄えることが可能であったと思いますが、今日のように財源に余裕のない安定成長時代にあっては、現行の制度をこのままでこれを維持し充実させることは不可能に近いことであります。  われわれが目指すべき日本型福祉社会は西欧型の高福祉高負担でなく、健康で生きがいのある老後生活が過ごせるように、自立性と連帯感を持った活力ある日本独自の福祉社会をつくるべきであると考えます。総理は、来るべき高齢化社会に向かって、これまでの社会保障、社会福祉政策のあり方を今後どう改め、対処されるか、基本考え方をお示し願いたい。  私はこの際、長期的、総合的展望に立った高齢者対策を早急に検討の上成案を得べきであって、そのためには国それから地方公共団体、民間が一体となった研究機関を内閣の主体のもとに設置して、医療、年金、雇用等、将来の高齢化に伴う総合的施策を網羅した基本法を制定すべきであると考えますが、総理いかがでありましょうか、お答えを賜りたいと思います。  終わりになりましたが、私は、これは要望であります。靖国神社公式参拝の問題について要望いたします。  およそ政治に携わる者は、その歴史を知り、現在を見定め、将来を開くことにあると思うのであります。今日、わが国は、幾多の諸問題があるとは申しながら、高い文化国家を築き、自由世界第二の経済大国になっております。しかし、われわれは瞬時たりとも忘れてならないことは、過ぐる大戦において祖国のために身命をささげ、戦場であるいは職域で、また異郷の地で倒れられた幾百万同胞のとうとい犠牲によるものであるということであります。洋の東西、その国の政治形態いかんを問わず、とうとい生命をささげた方々に対しては国家としてその遺徳をたたえ、霊を永遠に祭っております。  しかるに、わが国の場合、国家のために殉じ、散華した二百五十万英霊が祭られている靖国神社へは、公的地位にある人及び国賓がその資格において表敬の儀礼がまだ尽くせないことは、英霊に対してまことに申しわけない気持ちでいっぱいであります。私は、総理の言う「礼節と愛情の社会」に照らしても、靖国神社の公式参拝を実現することが英霊に対する政治の思いやりであり、そしてそれこそが真の平和に通ずる道であることを確信するものであります。  以上、私の心情を強く訴え、代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 高平議員にお答え申し上げます。  現在は問題山積の世の中でございまして、経済社会国民生活も何となしの不安の中にあるというのが実態ではないかと思います。このような中におきましては、御指摘のとおり政治がまず方向性を示して、国民理解を得るように努力をすることが必要であり、そして政治が責任を持って政策を断行していく時代に入っていると思います。  私は、先般の予備選におきましても、困難から逃げないで勇気を持って立ち向かう政治を行いたい、こう申し上げてまいりましたが、このように心がけてまいりたいと思っております。  北方領土問題と対ソ政策について御質問がございました。  田中・ブレジネフ会談におきまして、未解決の諸問題の中には北方領土問題があると、このように確認いたしましたが、私たちもそのとおりに考えております。政府といたしましては、わが国の重要な隣国の一つであるソ連との間で、この北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを基本課題として努力してまいりたいと思っています。  先般ソ連におきましては新しい体制が出現いたしましたが、いかなる政策に出るか重要な関心を持って見守り、かつ懸案解決につきまして今後もソ連側と粘り強く話し合っていく考え方でございます。  昨日ソ連邦の駐日大使が表敬に参りましたが、そのときも私は駐日大使に対して、日本の首相は三回、外務大臣はたしか四回にわたってソ連を訪問しておるけれども、ソ連の首相は来たことがないし、またソ連のグロムイコ外務大臣が最近しばらくの間来ておらない、できるだけ早期に訪日されたいと強く要望しておいた次第でございます。  防衛費に関して、GNP一%をめぐる問題について御質問がございました。  防衛費のGNP一%に関する昭和五十一年の閣議決定は、現在のところ変える必要はないと考えております。  中小企業の投資減税と承継税制について御質問がございました。  この二つの問題につきましては、私は従来から非常な関心を持っておるところであります。中小企業の投資減税につきましては、いかにして財源を確保するかという問題がございまして、引き続いてこれを検討しておるところでございます。承継税制の問題につきましても、これはぜひ早目に前向きに解決したい、そのように考えて検討しておるところでございます。これらについては関係大臣から御答弁があると考えます。  農政の展望でございますが、私は従来、農は国のもと、農業は生命産業である、そういうことを言ってまいりました。生命産業という意味は、工場の中でロボットで自動車をつくるというような仕事と農業は違って、稲を育てるのでも牛を育てるのでも、命を育てるという産業である。しかも日本の場合は、家族労働を中心にする集約的な産業になっております。そういう特殊性を十分考えなければ日本農業は衰退する、そういう考えに基づくものでございます。この考えはいまでも変わっておりません。  農業に従事する人たちが将来に明るい希望を持って農業に取り組むことができるよう、先般、農政審議会で農業の長期展望と農政の進むべき方向を提示いたしました。今後はこの報告に即して施策の充実を図り、農業の健全な発展に努力してまいりたいと思っております。  高齢化社会に向けての社会保障政策のあり方につきましては、社会保障の役割りは、高齢者、障害者、母子世帯等を含む国民すべてが充実した家庭を基盤として、連帯と相互扶助の精神のもとに健康で生きがいのある幸せな生活を送れるようにすることにあると考えます。今後の社会保障のあり方としましては、保健、医療、年金、福祉等各種施策の有機的な連携を図るなど施策の総合化を進めるとともに、国民の将来の負担が過重とならないように限られた資源の効率的活用を図り、高齢化社会に対応する有効で安定した社会保障制度を確立することが目的でございます。その場合、国民の自立自助、それから連帯、相互扶助の精神を尊重しつつ、特に、幸せの基盤となる家庭を日本社会の原単位として充実するようなものにしてまいりたいと考えております。  高齢者対策につきましてお答え申し上げます。  高齢者が長年住みなれた家庭や地域社会の中で健康で生きがいのある生活を送れるように、長期的展望に立ちまして各種の対策を総合的に、かつ整合性を持って進めるということは御指摘のとおりであります。  高齢者のための保健医療、年金、雇用等各種施策の実施に当たりましては、社会保障研究所等の各種研究機関がございます。この上さらに新たな研究機関をつくる考えはいまのところ持っておりません。  高齢者対策のための基本法制定問題につきましても、現行の各種の施策を総合的に、かつ整合性を持って強力に推進することで対応いたしたいと思います。  最後に、靖国神社の公式参拝に対する御見解を拝聴いたしました。謹んで耳を傾けて拝聴した次第であります。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  37. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 中小企業の投資減税の問題については、ただいま総理からお話がございましたが、なお私どもとしては、昨年行いましたエネルギー関係に限っての特債か、税額控除かの選択制度をやりましたが、それの効果がどう出たかについて実際にやってみました。その結果において意外と好ましい結果が出ておりますので、投資減税を論ずる場合において、その制度がなくてもやっていたかもしれない人がどう判断できるのかとかいろいろなむずかしい反論と、一番大きなのはやはり財源がないという総理の言われたことに尽きますので、そこらで、将来に備えてでもありますが、もう少し詳細な分析をして、日本経済への貢献度というようなものを見ながら景気、設備投資の浮揚に資していきたいと考えております。  なお、承継税制の問題は政府の方も来年度の税制で決着をつけようという意見で一致しておりますので、政府税調、それから党の税調等もこれを受けとめて作業をいたしておりますが、中身についていろいろ考え方がございます。  まず、非上場会社の株式の評価の問題、あるいはまた土地の値上がりに着目してばかり課税をされると、自分の住んでいる場所、店を半分売って相続をしなければならぬという事態になってしまいますし、ことにこの問題が浮かび上がった背景が、戦後瓦れきの中に商店街等が発達していって、いまやその苦難に打ちかった人々が老齢期に差しかかって、自分たちの子供たちに代がわりをしようとしているときに起こってくるのが相続税である。こういう切実なる問題が背景にありますから、事業所あるいは居住部分の配慮、それに対する税の配慮等によって事業に係る分は何とかめんどうが見れないかというようなことでいまいろいろと詰めておりますので、これは本来大蔵大臣の最終決断によるものではありますが、通産大臣としては、そのような代がわりの時代に当然起こるべくして起こった要望ということで、しっかりと受けとめて進めてまいりたいと存じます。  次は、基礎素材産業の構造不況の問題について。きのう産業構造審議会の圓城寺会長さんより私は意見具申と申しますか、答申をいただきました。それは主として八業種について特定不況業種として位置づけて、それを国が財政、税制、金融でめんどうを見てやらなければならない必要があるというものでございましたが、さらに一方においては、独禁法との問題の存在することもみずから認めた答申でございました。  これは国の方で予算折衝とも関連をしながら法律化していく問題でありまして、その中身についての税、財政、金融の問題は別個のまたケースといたしまして、問題は、その八業種そのものも結果的に異論はないのですが、時の流れによってやむなく生きていけなくなる産業もあります。八業種の中にはありませんが、たとえばアルミ産業は、もうアメリカ中心に低電力の国と競争できなくなったから日本からアルミ産業は全部なくなっていいという見解は、ちょっと総合安全保障上の見地からもとれないだろうと思うのです。  しかし、かといって、国の政策をここにつくったことによってめんどうを見てあげると言えば、本来の時の流れならばその規模とかその形態ではとてもやっていけないはずのものが、国に甘えてそれで生き延びようとする。過去に、やや辛らつな表現でありますが、政府におんぶにだっこという表現をしていいような過去のものがあったように私は思いますので、そういうことのないように、まず自助努力である、みずからが助かるためのみずからの努力。企業の合同にしても、あるいは企業が集約をするにしても、いろいろなケースがありますけれども、いずれにしてもその自助努力というものが先決であって、政府におんぶにだっこは困るということをはっきりと申し上げておきました。  その上に立って、さてそれを積極的に行います場合に、対大蔵等との相談はこれからのことでございますから、しかしながら一方、既存の独立して職権を行使する公取委員会のもとにある独禁法の抵触の問題は、カルテルの問題と合併等の企業のシェアの問題でございます。これらの問題を、ぜひとも話し合いによって生存させなければならない国家的な視点に立った企業であるので、独禁法の運用の上において配慮さるべぎものであると私は思っておりますし、また、その独禁法との調整は可能であると信じておりますので、私どもの努力が実を結ぶように、そしてこの基礎素材産業の構造不況が活性化に向かうように御支援のほどをお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣金子岩三君登壇拍手
  38. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 高平議員にお答えいたします。  今後の農政の方向についてであります。  わが国農業は、食糧の安定供給を初め、健全な地域社会の形成、国土、自然環境の保全などの重要な役割りを果たしております。自然的、社会的に厳しい条件にあることを十分配慮しつつ、この役割りが今後とも着実かつ効率的に果たされるようにする必要があると考えています。  次に、農産物輸入の問題についてであります。  農産物の輸入の問題については、国内農産物の需給動向等を踏まえ、わが国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に重要であると考えています。かかる観点から、今後の日米協議等においては、わが国農業の実情やこれまでの農産物の市場開放措置を米側に十分説明し、その理解を得ながら適切に対処してまいります。  次に、林業振興についてであります。  森林は、木材の供給のみならず、国土保全、水源の涵養等公益的機能を有するものであり、これを守り育てていくことは国家百年の大計であると考えています。このために、造林、林道等の林業生産基盤整備、林業構造の改善、間伐、保育等適正な森林管理の推進、国産材の安定供給体制の整備、活力ある山村の育成と林業の担い手の確保等々、各般の施策を国民理解協力のもとに推進してまいる所存であります。(拍手)     ─────────────
  39. 徳永正利

    議長徳永正利君) 佐藤三吾君。    〔議長退席、副議長着席〕    〔佐藤三吾君登壇拍手
  40. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 私は、日本社会党を代表しまして、総理並びに関係大臣に対し、われわれの見解を明らかにしながら、主として地方行財政中心質問をしたいと思います。  七〇年代後半から「地方の時代」が喧伝され、今後の社会、経済全般にわたる改革のキーポリシーは「地方分権」であるとされています。  しかし、歴代自民党政府の政策を見ますと、特に田園都市構想を掲げた大平内閣以来今日まで、口でこそ地方分権を唱えていますが、実態は似て非なるものであります。とりわけ総理が行管庁長官として第二臨調を舞台に進めてきた行政改革は、自治体と住民の自主的努力の上に築かれるべき自治政治に対し、やれオーバー福祉だとか、やれオーバー賃金だと介入し、これを罪悪視する一方、自立自助の名のもとに国から自治体、そして住民へと、新たな負担転嫁と中央支配の構造をつくり上げようとするもので、歴史的キーポリシーとしての地方分権に真っ向から挑戦するものであります。  とりわけ中曽根内閣は、総理自身が旧内務官僚出身であり、官房長官、法務大臣、自治大臣、国家公安委員長に旧内務警察官僚で固め、加えて所信表明地方分権に一言たりとも言及していない総理でありますから、その自治観がいかなるものか、言うまでもないと思います。  今日、地方分権の意味するものは、地方自治の強化を主たる柱としつつも、既存の政治経済、社会、文化のシステムを地域社会を基軸として転換し、活性化するところにあります。それゆえに、わが国のみでなく世界的にも歴史的キーポリシーとなっているのであります。その意味が総理に正しく認識され、今後の施策の中心軸とされるように強く期待したいと思います。地方行財政の具体的問題の前提として総理のお考えを聞いておきたいと思います。  さて、今回の補正予算において、公務員給与の見送りに加え、さらに重要なことは地方財政を徹底的に犠牲にしていることであります。  すなわち、歳入欠陥六兆一千四百六十億円は政府経済政策の失敗の結果生まれたものであることは御承知のとおりであります。しかるに、赤字国債の追加発行に加え、地方交付税を一兆六千九百五十七億円カットすることで穴埋めしているのであります。しかも、国税三税の減収を理由とするこの地方交付税のカットは、マイナス補正額二兆一千百八十七億円の八〇%に相当し、地方財政の犠牲がいかに大きいかは言うまでもありません。私は、これまでに地方財政に多々影響を持つ予算を審議してまいりましたが、このような膨大な犠牲を強要した補正予算をかつて見たことがございません。また、そうした内容を平気で提出する無責任な内閣も見たことはないのであります。  本年度地方財政計画策定に当たって、政府地方財政の収支は均衡したと称し、千百三十九億円の借り上げも含め約二千四百億円を国に協力援助させておるのであります。これに対し、わが党は、このような政府地方財政対策は過大な経済見通しによる上げ底財政であり、暴挙であるとして厳しく批判してまいりました。政府もまた、「政府が責任を持って策定した地方財政計画であり、自治体には一切迷惑をかけない」と約束をしてきたのであります。その舌の根も乾かぬうちに地方税で一兆二千九十二億円、地方交付税のカットを加えて実に二兆九千四十九億円の歳入減が生じたから、これを自治体の借金で補てんせよということは一体どういうことなのか。  政府の絶対権限において策定された地方財政計画について、歳入の約六・二%に相当する歳入欠陥を政府はどう責任をとろうとしているのか、総理並びに大蔵、自治両大臣の明快な答弁をいただきたいところであります。  次に、今回の減収補てん措置についてお尋ねいたします。  まず、地方税の減収補てんとして一兆二千九十二億円の全額を地方債発行で賄おうとしており、特に都道府県、大都市については政府資金では一切手当てをしないことになっておりますが、赤字国債が約三兆四千億円追加発行される中で、この地方債消化に十分な見通しがあるのか、できない場合どう手当てするのか、政府見解を示していただきたいと思います。  第二に、私は、今回政府が講じようとしておる地方交付税補てん措置等について、明らかに地方交付税法違反であると指摘せざるを得ません。政府は、地方交付税減額分のうち、給与改善費、老人医療費など千五百二十四億円の需要額をカットし、一兆五千四百三十三億円を資金運用部資金から借り入れて賄おうとしています。地方財政計画に示された歳入歳出はあくまでも収支見込みであり、その収支の差として交付されるのが地方交付税であります。政府の都合によってカットすることは、地方財政平衡交付金以来制度史上初めてのことで、地方交付税基本的な趣旨に違反することは明らかであります。その責任は重大でありす。  そうしてまた、法律上明記されておる地方交付税の十一月交付を、地方交付税法十六条2を根拠に十二月に繰り延べることは、これまた法律違反であります。年度当初見込んだ地方交付税は、法律どおり十一月に交付すべきであり、補正予算成立後、地方交付税総額に変更があった時点で初めて再算定すべきであります。これが地方の固有財源である地方交付税制度の根幹であります。この根幹を政府の都合で需要をカットしたり繰り延べたりすることは、地方財政を崩壊させるものであります。総理並びに自治大臣の責任ある見解を承りたいと思います。  次に、来年度以降の地方財政基本問題についてお尋ねいたします。  本年度このような膨大な財源不足が生じた以上、来年度地方財政対策においては、当然地方交付税法に基づき税率の引き上げか、あるいは制度の変更が行われるべきであると考えますが、政府考えはいかがでありましょうか、お尋ねしておきたいと思います。  なお、総理は、前内閣の公約である「五十九年度赤字国債発行ゼロ」は困難であると見通しについて言及しておりますが、前閣僚としての責任をどう考えておるのか、また、その原因は何か。その場合、当然のことだが、地方財政に国の財政赤字のしわ寄せをすることは許されないことである以上、今後の財政再建については膨大な地方財政の借金償還も含めて考えるべきであります。そのためには、地方財政についても今後五年程度を目途とする地方財政中期見通し策定すべきであると考えますが、総理並びに自治大臣の見解をいただきたいと考えます。  次に、総理は本年四月、行管庁長官として自治体の情報公開に積極的な姿勢を示すとともに、プライバシー保護についても「重要な問題である」と答えております。また、所信表明でも、国民にわかりやすい政治を強調しております。わが党もすでに情報公開法を提出しておりますが、総理見解をいただきたいと存じます。  また、この際、臨調答申を待つことなく、国民のプライバシー保護について、政府みずからが情報化時代に積極的に対応するための法制定を図るべきだと思いますが、総理見解をいただきたいと思います。  次に、警察学校長の自殺まで引き起こした大阪府警の賭博遊技機汚職事件は、警察と業者の長期にわたる腐敗の実態を露呈し、国民に大きなショックを与えております。しかし、この事件は内部監査の甘さもありますが、許認可権を持つ役所と警察OBの天下りを通じて業者と癒着して引き起こしたもので、これは単に警察だけの問題じゃなく、全省庁、全警察にかかわる問題でもあります。国民信頼回復と再発防止に向けて、監督官庁の企業への天下りを含めて真剣な対策が必要であると思うが、総理並びに国家公安委員長の見解をいただきたいところであります。  なお、業界の顧問でありました秦野法務大臣から先ほどお答えがありましたが、どうも私が聞きますところでは、反省も責任も感じてないような御答弁だったと思います。総理は、閣僚の一員としてこのような事態が起こったことに対してどのように受けとめているのか、あわせてお伺いしておきたいと思います。  次に、教科書問題について一点だけお伺いします。  昨日、わが党宮之原議員質問に対し、木で鼻をくくったような答弁に聞こえたのでございますが、事は外交問題にまで発展したことであります。明確にしていただきたいと思います。  「政府の責任で是正する」との政府見解で決着したのですから、それに基づいた執筆者の正誤訂正申請をなぜ窓口で却下するのか。国民にわかる政治を説く総理が、なぜ検定公開を阻むのか、明確な答弁をいただきたいと思います。  さて、最後に総理並びに中曽根内閣政治倫理についてお伺いいたします。  総理、あなたは昨日来、人材と仕事本位の内閣だと繰り返し強調しております。しかし、どなたも信用しておりません。恐らく大多数の国民も不安と疑惑の目で見守っていると思います。余り肩を張らずに真実を語ったらいかがですか。真実こそが政治信頼への第一歩だと思うのですが、いかがでありますか。  総理、あなたはかつて造船疑獄の際予算委員会で、「司直の手が伸び、司直の手によって判断を受けるまで政治を継続なさる、その考えが私は今日の国家の災いをなしている考えだと思います。一体政治は道義であるとか、倫理で動いておらなければ国民の指導ができないはずです。政治家は党利党略で金ほしさに財界と結託して収賄ばかりし、それが判明したら隠そう隠そう、逃げ切ろうとしておる。財界は金もうけに狂奔しており、声のない大衆はどうしたらよいのか。その人たちの声も聞かずに、司直の手が伸びるまで政治がまかり通るなら、革命以外にない」。これは総理昭和二十九年、造船疑獄事件の政治倫理の追及を行った要旨なんであります。覚えていますか。  国民信頼のない政府が「思いやりの心」とか「責任ある実行」「仕事本位」と説いてみても、目白のやみ将軍に向けての言葉に聞こえるのは当然であります。ますます疑惑と警戒を増すのであります。総理、あなたの派に属する佐藤孝行君に、先輩として、派の長としてなぜ決断ができないのですか。灰色高官の証人喚問に議院証言法改正が遷延するならば、先例もありますように現行法でなぜ決断しないのですか。倫理委員会の設置、議院証言法の改正、いずれも自民党総裁であるあなたの決断で直ちに実行できるのであります。総理の率直な御答弁をいただきたいと存じます。  あわせて、証人喚問に応じたいと強く要求されている加藤国務大臣見解もいただきたいと思います。  また、加藤大臣は十二月十九日、大臣就任祝いを地元笠岡市で予定しているようでありますが、その主催団体に笠岡市、笠岡市議会が入っておると聞いています。そのため市職員も動員されるとのことであります。公正を求められている公共団体であるだけに問題があると思いますが、自治大臣の見解をあわせていただきたいと思います。  以上、私は幾つか申し上げましたが、総理の率直かつ正直な答弁を期待して質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 佐藤議員にお答えいたします。  地方自治の問題でございますが、憲法にも「地方自治の本旨」という言葉がございまして、地方自治は憲法に基づく民主政治基盤であると心得ております。国と地方公共団体はそれぞれ役割りを踏まえつつ、相協力して国民の福祉向上に努力すべきものであると考えます。したがいまして、地方自治制度のあり方の検討に当たりましては、地方公共団体の自主性と自律性の発揮に十分配慮して行わなければならないと思います。また、住民生活に密着する行政は、できるだけ住民の身近なところで執行することが必要であると考えます。今後、行政改革を進めるに当たりましては、国、地方を通ずる行財政の簡素効率化及び地方自治の尊重という観点に立って対処いたしたいと思います。  次に、五十七年度の地方税、地方交付税減額に対する政府の責任について御質問がございました。  昭和五十七年度の地方税、地方交付税地方財政計画策定時における経済見通しや国の予算等を基礎として見積もったものでございます。がしかし、その後の経済停滞の影響から地方税、国税三税について当初見込み額を確保することが困難な情勢になって減額した次第でございます。なお、地方税の減収及び地方交付税の減に対しましては、地方財政の運営に支障を生ずることのないように措置いたしております。  地方交付税減額に対しましては、公務員の給与改定の見送り等による地方団体の財政需要の減少分を除いてその全額を特別会計借入金で補てんし、地方財政の運営に支障を生じさせないよう所要の措置を講じたものでございます。  なお、交付税率引き上げ等の問題は、国、地方間の財源配分の基本をなす重大問題でありまして、慎重に検討を要する問題であると思います。  五十九年度特例公債脱却の問題について御質問がございましたが、財政再建は緊要な課題であり、前内閣におきまして五十九年度特例公債、赤字公債脱却を目途に政策を進めてきたことは事実でございます。これによりまして歳出の抑制等相当な効果があったと思います。しかし、第二次石油危機を契機とする世界経済の低迷、わが国財政を取り巻く環境は大きく変わりまして、五十九年度特例公債依存体質からの脱却はきわめて困難になったと思います。  今後の財政再建の進め方につきましては、まず第一に五十八年度予算編成について厳しい歳出カットを行って予算編成を行う、そして歳入構造につきましてもこれを一応洗ってみる、そういう考えに立って編成してまいりたいと思っております。  御指摘の地方財政中期見通し策定せよということは、策定することは望ましいと思いますが、技術的に検討すべき点が非常に多いと思いますので、自治省において研究させたいと思います。  情報公開、プライバシーの問題につきましては、二つとも私は行管長官在任中から前向きに取り組んで、積極的意見をいまでも持っております。  情報公開の問題につきましては、神奈川県を初め各地方公共団体等におきましてすでに実施し、またはせんとしているものが相次いでおります。これらの実施の経過等も踏まえまして、さらに臨時行政調査会でもまだ検討中でございますので、それらの答申も待って積極的に対処していきたいと考えます。  プライバシー保護の問題につきましても、研究会の報告が提出されまして、さらにまた臨時行政調査会におきましてもただいま審議されておるところでございまして、両々相まってこれらの対策を決めてまいりたいと思っております。  公務員の綱紀粛正について御質問がございました。  公務員の綱紀の粛正につきましては、今後一層の徹底を図り、行政の適正な執行に遺憾なきを期したいと思っております。  秦野法務大臣の顧問就任の問題で御質問がございましたが、すでにやめておったことでございますので、問題はないと思います。しかし、政治家といたしまして、国会議員にせよあるいは国務大臣にせよ、顧問就任という問題につきましては良識を持って慎重に行う必要があると考える次第でございます。  教科書検定問題につきましては、このたび検定基準を改正して、今後の検定において教科書の記述がより適切なものとなるよう道を開いたところでありまして、正誤訂正の手続によりその記述を修正することは考えておりません。  個々の教科書に関する検定の具体的な過程や内容を公表することは、教科書の採択の公正を害するおそれがありますので、従来から差し控えることにいたしております。  最後に、現行の証言法による喚問、あるいは辞職勧告、倫理委員会の設置等について御質問がございました。  いずれも重大な問題でございまして、各党論議を重ねておるところでございます。いずれにせよ、政治基本には国民信頼がなければできません。信頼政治の倫理性及び道義性に根差して出てくると思っております。その意味におきまして大いに自粛自戒をいたし、国民の皆さんの範たるようにみずから戒めてまいりたいと思っております。  以上で答弁を終わらせていただきます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  42. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 総理から御答弁がそれぞれございましたが、五十七年度の税収につきましての世界経済停滞の影響と、それらの経済情勢の変化に伴う御説明はすでにございました。したがいまして、地方交付税交付金は国税三税の三二%分を地方に財源譲与するためのものでございますので、経済情勢の変化に伴い国税三税の収入見込み額が減少いたしましたならば地方交付税交付金も当然減額される、こういうことになるわけであります。  したがって、その結果生ずるいわゆる地方財源不足の問題であります。今回の補正におきまして、各地方団体の財政運営に支障が生じないよう所要の交付税総額を確保するため交付税特別会計資金運用部資金からの借入金をいたしまして補てんすることとしております。そうして、この借入金の元利償還につきましては、年度途中の措置でもございますので、昭和五十三年度以来の当分の間の措置として、償還元本の二分の一と五十七年度の利子全額を国が肩がわり負担をいたしまして、将来の地方財政の運営にも配慮したところでございます。  今回の補正予算に伴います地方財政補正措置では、現在の国の財政状況のもとで地方団体の財政運営に支障が生じないよう限度いっぱいの配慮をしておりますので、地方財政を犠牲にしたと、こういう考え方は全く持っておりません。  そうして、この税収入の落ち込み等に対する保証という観点からの御質疑でございましたが、補正予算編成に当たりましては、課税実績や改定されました経済見通しにおけるもろもろの指標、さらには大法人に対する聞き取り調査の結果などを基礎といたしまして、個別税目ごとに積み上げて見直しを行った結果が六兆一千四百六十億円の補正減額を行ったものでございますから、所要の税収は確保されるものと考えております。(拍手)    〔国務大臣山本幸雄君登壇拍手
  43. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) ただいま総理から大筋のお答えがあり、さらに大蔵大臣からも国家財政との関連においてお答えがございましたが、私からも補足して御答弁を申し上げます。  本年の地方交付税ないし地方税の大幅な欠陥につきましては、先ほど来お答えのあったとおりでございまして、景気の停滞の影響による国税三税の落ち込みということからまことにやむを得ないことであったと存じます。しかしながら、これの補てんにつきましては、借金ではありますけれども、これが補てんの措置は十分に講ぜられたものと考えております。  次に、地方税の減収補てんを地方債で措置するということになっておりますが、赤字国債の発行という市場の中で地方債消化の見込みがどうであろうかというお尋ねでございます。  この減収補てん債につきましては、資金調達力を考えまして、一般市町村に係るものは政府資金で措置をする、残余は民間資金によって措置をするということにいたしております。これらの引受消化につきましては、国債の追加発行が相当ございますけれども、最近の国内資金の需給状況考えてみまして特に問題はないものと考えております。しかしながら、なお状況に応じては自治、大蔵両省の間に民間資金債の円滑な消化に努めるということを申し合わせております。  次に、地方交付税の補てん措置について、特に十一月交付時期を繰り延べをしたということについてでございます。  昭和五十七年度の地方交付税につきましては、今回の国税三税の減額によりまして一兆六千九百五十七億円という大きな落ち込みを生ずることとなったわけでございますが、これに対しまして給与改善費あるいは老人医療費などの事情による地方団体の財政需要に一定の減少が見込まれることを考慮いたしまして、交付税特別会計借入金を一兆五千四百三十三億増額することによりまして、その所要額を確保したようなことでございます。  また、今回の地方交付税補正措置に際しまして、十一月交付分につきまして交付時期の特例を設けたのでございますが、これは、所要借り入れを行うためには特別会計の借入限度額を引き上げる必要があるということ、さらにもう一つは、普通交付税の再算定によって各団体の当初決定額を変更する必要があったということなどの事情を踏まえまして、先ほど御指摘のように、地方交付税法第十六条第二項の規定によるところの特例措置をやったわけでございます。いずれにいたしましても、この財政措置によりまして地方団体の財政運営にはまず支障のないように措置をいたしたと、こう考えておるところでございます。  さらに、五年程度を目途とする地方財政中期見通し策定すべきではないかという御提案がございます。  この問題は、地方財政中期見通しのこと、これはなかなか困難な事情もございます。まず、何といいましても、地方財政は、三千数百というたくさんの地方団体がそれぞれの自主的な判断に基づいて財政運営をやっております。また、地方財政は、地方交付税ということ、あるいは国庫支出金といったような国の資金との関連が非常に多いわけであります。  したがいまして、国の計画との整合性を図らなければならない。同時に、多様な地方団体固有の施策を織り込んだ地方財政収支見通し策定いたしますことについては容易でないと考えられますが、しかしながら、地方団体の財政運営に資する参考資料として何らかの形で中期的な見通しを出すということは、私は意義のあることだと考えております。御提案にかんがみまして、また午前中大蔵大臣からも国の中期財政見通しのお話もございましたので、国の財政中期見通しとの関連も配慮をしながら、今後十分検討をさせていただきたいと存じます。  さらに、加藤長官の就任祝賀会のお話がございました。  私どもも詳しい事情は承知いたしておりません。承知はいたしておりませんが、これは地元出身の政治家の待望久しかった大臣への就任ということで、市民の皆様が純粋に私はお祝いをされるものであろう、そういう意図に基づいておやりになるものであろうと、かように推察をする次第でございます。  最後に、警察の事案につきまして御指摘がございまして、最近警察官による不祥事案が発生をいたしまして、警察に対する国民信頼を失っておりますることはまことに遺憾でございます。ただ、まじめに治安維持に当たっておりまする大多数の警察官の心情を思いますと一層残念でありますとともに、一日も早く国民信頼を回復するように努力をしなければならないと、かように存ずるところでございます。  目下、大阪府警におきましては、警察関係者五名を含む被疑者十五名を逮捕するなど事案の全容の解明に鋭意努力をしておるところでございます。今後かかる事案の生じませんように厳しく反省をいたしますとともに、御指摘のような面もございますから、人事管理の面でメスを入れる必要があろうかと思いますと同時に、一層警察教養を徹底させまして、いわゆる職場倫理を確立していかなければならない。厳正な規律というのは私は警察の組織の生命であると、かように存じます。そういう厳正な規律をもとに、国民信頼を回復するように今後とも努めてまいる所存でございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣加藤六月君登壇拍手
  44. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 佐藤議員にお答えいたします。  私は、いまは内閣の一員でありますので、国会において議院証言法の取り扱いが各党間で真剣に協議されている現段階では、この点についての発言は差し控えるべきものと考えており、最終的には国会の御決定、御判断に従いたいと思っております。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  45. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 田代富士男君。    〔田代富士男君登壇拍手
  46. 田代富士男

    ○田代富士男君 私は、公明党・国民会議を代表して、政治姿勢外交及び内政の重要課題について、すでに多くの方から質問もございましたので、重複を避けて、中曽根総理並びに関係各大臣に若干の質問をいたします。  いま国民は、中曽根総理政治経歴から、総理自民党の派閥力学を巧みに応用、機敏に身をこなすことに大変危惧の念を抱いています。それはすでに組閣人事、政治倫理についての所信表明、改憲発言などに端的にあらわれています。私どもは、中曽根内閣の前途に厳しい目を向けていることをまず申し上げ、質問に移ります。  まず初めに、政治の最も根本である政治倫理についてであります。  私は、政治倫理が確立されたならば政治の目標の半ばは達せられたものと思います。特に、一国の最高指導者の倫理観は国家と国民を映す鏡であり、政治倫理が曇れば政治の光が国民に届かなくなります。そこで、総理政治における倫理観並びに国会の権威と議会制民主主義の発展のための規範となる政治倫理綱領の制定について、総理の御所見をまずお伺いしたい。  次に、外交問題についてであります。  外交基本は、互いに相手の国をよく知ることです。われわれ日本人は、異文化や多民族国家への理解と認識のために、単一民族でできた同質社会の目を改め、言語、歴史、宗教など万般にわたる違いを見詰めるよう努力しなければなりません。これは裏を返せば、諸外国から見てわが国もまた異文化の国であるということです。私は、日本の国をよりよく知ってもらう努力もまた大切なことではないかと思いますが、総理の御所見を伺いたい。  次に、総理は一月十七日にアメリカ訪問に出発されます。日米基軸外交のあらわれでありましょう。しかし、その総理もかつては「日米関係は重要だが追随する必要はない」と主張されました。機を見るに敏な総理の面目躍如たるものがあります。この訪米に際して、私は、日本とアジアと世界の平和のために、恒久平和主義と、一つには領土、主権相互尊重、二つには相互不可侵、三つには内政不干渉、四つには平等互恵、五つには平和的共存等の平和五原則に基づく日本の自由、平和外交基本とすべきであると思いますが、総理の御所見を伺いたい。  また、総理訪米の目的について日米間に食い違いがあると指摘されています。憲法財政、農業などの事情から日米間で未調整の貿易摩擦の解消策、日米軍事技術供与問題、シーレーン防衛問題などについて、この機会に米側から早期決着を求められることになるおそれがあります。現に、総理訪米は米大統領にとって最も多忙な時期に当たるだけに、わざわざ両首脳が会見する以上、相当の決意で臨むのではないかと伝えられています。総理は対米最重視の姿勢の単なる意見交換のつもりでおられるとしても、米国には日本の具体的な約束ととられることになりかねません。火中にクリを拾うような訪米になるのではないかと危惧されるのであります。総理の御所見を伺いたい。  さて、既定の方針となった訪米のこの機会に、私は二つの提案をしたいと思います。  一つは、この機会に、世界平和実現のために反核・軍縮について総理みずから具体的な行動をとるべきではないかと思います。  すなわち、さきの第二回国連軍縮特別総会において、公明党は一千万人を超える反核署名簿を国連に提出し、核軍縮に対する社会的世論を大きく盛り上げることに微力ながら貢献いたしました。しかし、この第二回国連軍縮特別総会は核兵器廃絶へのいわばスタートにすぎず、第三回国連軍縮特別総会を早期に開催し、全世界の反核・軍縮のうねりを一層大きく盛り上げていくべきと思います。総理は、米大統領との会見において、第三回国連軍縮特別総会開催について真摯に話し合うとともに、国連本部のデクエヤル事務総長に対しても総会開催の申し入れをされてはどうかと思います。  二つには、世界の飢餓問題についても米大統領と話し合われてはいかがですか。  十一月初め、中部アフリカ、ルワンダ共和国において、将来ある子供たちに食糧をと、口減らしのため年老いた難民数十人が集団自殺したニュースに私どもは言い知れぬやり切れなさを味わいました。ルワンダのような政治的難民は、この地球上に約一千百万人以上、またアフリカや南アジアを中心にその六十倍の七億近くの人々が貧困のゆえに飢餓に苦しんでいます。ユニセフの世界子供白書は、「毎日子供が四万人死に、毎晩一億人が腹をすかせて床につき、一千万人が物も言わずに心身に障害を負い、六歳から十一歳の子供二億人が学校に行っていない」と報告しています。世界の穀物売買総量は年間十三億トンであり、四十四億の全人口が食べてまだ一割が余ると言われています。それにもかかわらず飢餓が発生するのは、全く貧困に由来しているからにほかなりません。政治的難民と貧困の世界の飢餓問題にどう取り組み、世界の安定にどう貢献するかについても、米大統領と率直な話し合いをされてはどうかと思います。  以上、二点についてあわせて御所見を伺いたい。  次に、アジア外交についてであります。  総理は、所信表明において、「アジア諸国との一層の相互理解と友好関係の強化が重要である」と述べられましたが、何ら具体策は示されませんでした。福田元総理にはいわゆる福田ドクトリン、大平元総理には環太平洋構想、そして鈴木総理にはバンコク・スピーチと、それぞれ歴代総理はアジア外交に力点を置かれていました。そこで、中曽根総理のアジア外交のビジョンは一体何か、まずお伺いしたい。  あわせて、この際、アジア外交の一環としての留学制度についてお尋ねしたい。  経済大国となったわが国がいま海外でひんしゅくを買っているのは、経済力を誇示する余り、アジア人の心を忘れている点にあります。むしろアジアの経済大国として、アジア諸国民に真に喜ばれる道を選ぶべきであり、その一つが留学制度の拡充ではないでしょうか。かつてのアジア諸国からのわが国への留学生は、いまやそれぞれの国の枢要な立場で活躍をしています。そしてこの実績は何物にもかえがたいわが国の喜びであり、アジア人の心にいつまでもともる光となっています。  現在、わが国には七千人以上の留学生が滞在しています。しかし、そのうちの七八%までが私費留学生であり、国費留学生はわずか二二%にすぎません。私は、国費留学生をせめて五〇%にまで拡大し、その内容を充実するならば、日本とアジア諸国との関係が心と心の触れ合うよりよい関係とすることができると思います。留学制度拡充についての総理の決意と具体策を伺いたい。  次に、中小企業についてであります。  一つは、中小企業の大企業との格差是正についてであります。  中小企業日本経済に占める役割りはきわめて大きいが、その地位は大企業に比べて相当に低いと言わなければなりません。特に生産性の低さ、資本力のなさがひいては賃金に及ぼす影響も大きく、労働時間においても長時間労働を強いられるなど、中小企業の体質の弱さは否定できません。そこで、この体質の弱い中小企業の格差是正のため、わが国の産業全体の将来展望の上からどう考えるべきかが大きな問題です。中小企業の適正規模はその業種により異なることは当然として、中小企業の育成のためには、有効な投資をさせることは重要な施策の一つと思量されます。政府は、将来の産業構造とその中での中小企業にふさわしい分野とその規模についてどう考え、また、そのために有効な投資の誘導及び知識集約化と付加価値の向上のための中小企業の質的転換にいかに取り組むつもりか、政府方針を伺いたい。  二つは、当面する中小企業経営危機対策についてであります。  中小企業は内需不振、輸出の伸び悩み、公共事業の抑制など経営環境の悪化により、一層厳しさを増しています。中小企業経営基盤を確立し、中小企業の活力を再生することは目下の急務であり、国民生活安定のためにも不可欠です。そのため、まず政府中小企業金融三機関による融資の拡充強化と信用補完制度の充実並びに中小企業倒産防止共済制度など、倒産防止策の強化を促進するとともに、中小企業向け設備投資減税、また中小企業に対する官公需の増大等を実施すべきです。政府の対応を伺いたい。  次に、婦人問題についてであります。  去る五十五年十月の参議院本会議において、私は、男女雇用平等法の制定、パートタイマーと寡婦雇用及び母子保健法の改正について取り上げました。その後、政府はどのように取り組み、実施に移されたのか、また今後どう推進するのか、まず伺いたい。  次に、近年自立した婦人の社会進出がふえているにもかかわらず、婦人の管理職、責任職への登用は男性に比べるときわめて少なく、また本年の新卒者の雇用不安の中でも、特に影響を受けている女子の大学、短大の新規採用についても促進が図られなければなりません。  さらに、景気の長期低迷の中で、家計を守るため働く婦人が急速にふえつつあります。しかし、雇用の実態は常識を超えた低額な時間給と、社会保険の適用もなく健康障害の不安など、婦人の人権を無視する不当な事例も少なくありません。  加えて、わが国の女性の人権の確立と地位の向上のためにも男女雇用平等法並びに寡婦雇用促進法の制定を図るべきです。また、労働基準法の母性保護規定実施により、働く女性の健康の確保を増進すべきと思いますが、以上三点について政府の施策を伺いたい。  国連婦人の十年の最終年は三年後です。あらゆる形態の男女差別撤廃条約の批准に向けてわが国の施策を急がねばなりません。総理の決意を伺いたい。  また、総理は家庭を大事にすると盛んに強調されていますが、女性を家庭に縛りつけ、それによって福祉予算を肩がわりさせようとする意図はありませんか、念のために伺っておきたい。  最後に、補正予算に関連して災害対策についてであります。  わが国は、広域的視点に立った社会資本の整備が大変おくれており、人口、産業の大都市集中や乱開発の放置など、自然災害や人的災害に対しきわめて脆弱な構造となっており、本年夏の風水害では九州を初め全国各地に一兆五千億円に及ぶ甚大な被害をもたらしました。被災地においては一日も早い救済を待っているにもかかわらず、自民党の総裁予備選のため国会開会が大幅におくれ、一層対策がおくれたことはまことに遺憾です。政府は被災地の早期復旧を図るためにも、災害復旧事業について決定した本年度に七〇%を前倒しし、国、地方合わせて総額七千五百億円の追加補正年度内発注を完全実施すべきです。関係大臣の決意を伺います。  続いて、治山治水事業の充実強化及び急傾斜地危険区域の再度総点検と防護工事早期実施を図り、あわせて国土の保全と生命、財産の安全を確保するため、わが党がかねてより主張してきた国土ナショナルミニマムの設定、生活基盤整備、人間優先の国土開発に改めるべきと思いますが、政府見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  47. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 田代議員の御質問にお答えをいたします。  政治倫理の問題について冒頭御発言がございました。  政治の基礎は国民信頼の上に立っておりまして、信頼を獲得するためには倫理観や道義観に満ちた政治及び政治行動が必要であると考えております。  公明党が、先日、全国大会におきまして政治倫理の確立に関する決議を行い、政治倫理綱領の制定等に努力されていることにつきましては敬意を表する次第でございます。わが党といたしましても、一昨年の臨時党大会におきまして倫理憲章を決定し、党員はこれを踏まえて精進努力することを誓っておる次第でございますが、国会において政治倫理綱領を制定することにつきましては、議員の規律に関する国会の重要事項でございますので、各党間で十分御協議をお願いいたしたいと思っております。  さて、外交基本的な課題は諸外国との相互理解の増進にございます。政府といたしましても、諸外国におけるわが国理解促進のために諸国との広報、文化活動を推進してきておりますが、まだ必ずしも十分でないと思っております。今後ともその拡充に努力していきたいと思います。  わが国外交基本は、日米関係外交の基軸としつつ、西側先進民主主義諸国との連帯と協調を図るとともに、近隣アジア諸国を初め各国との間に相互理解と友好協力関係を発展させて、またわが国の立場から政治的、経済的役割りを果たすことによって、世界の平和と繁栄に積極的に貢献していくことでございます。訪米に際しましても、右の基本方針に基づきましてレーガン大統領との会談に臨みたいと思っております。  日米間におきましては懸案事項が幾つかございます。経済的摩擦の問題あるいは防衛問題等種々の問題がございますが、一月予定のこの訪米に際しましては、レーガン大統領とこのような二国間の問題を初め世界情勢全般にわたる真摯、率直な意見の交換を行いたいと思っております。  平和五原則を基準にせよという御提言がございましたが、この平和五原則自体は私は前からりっぱな原則であると考えておりまして、われわれもこの基準に従って行動することについては異論はございません。  また、国際関係につきましていろいろ微妙な時期にも当たっております。レーガン大統領との関係におきましては、今回は実務的訪問を主といたしまして、実際問題について具体的な話し合いと、それから全世界にわたる共通的な問題についての話し合いと、ともに真摯に行いまして、相互理解を深め、信頼関係をさらに強化していきたいと考えております。  第三回国連軍縮特別総会の開催につきましては、明年の国連総会で決定されることになっておりますが、わが国といたしましても、御趣旨に沿って右開催へ向けて真摯な努力をいたしたいと思います。  世界における飢餓問題について御発言ございました。  ルワンダの話も承りまして、実に痛ましいことであると考えます。食糧問題の根本的解決のためには、これらの諸国における食糧増産、さらには農村、農業開発が重大でございます。わが国といたしましても、かかる方向での援助を強化して、かつまた深刻な飢餓の問題を抱えている貧困な国に対しましては、食糧援助のため二国間及び多国間協力が重要であり、わが国も引き続いてできる限りの協力を行っていく方針でございます。  この食糧問題等についてアメリカ大統領とも話をせよという御趣旨でございましたが、機会があらばできるだけ趣旨に沿ってやりたいと思っております。  アジア外交につきましては、わが国外交の対象として最も重要視しているところでございます。先般、総理就任早々ASEAN諸国近隣諸国の首脳部に直接電話をいたしまして、ごあいさつをいたしましたのもその趣旨に基づくものでございます。この地域の平和と繁栄のために積極的な役割りを果たしていくことが、わが国外交の最重要課題一つでございます。私は、この認識に基づきまして、これらの諸国との一層の理解と友好を深めたいと思います。  特に、たとえば最近マレーシア等におきましては、マハティール首相が先導いたしまして、ルック・イーストという政策を考えられて唱道しておられます。東を見ろという言葉は、実は日本に学べというふうに意訳してよろしいようでございます。こういうような形で日本に対する期待がふえてきておりますことを考えますと、わが国の責任もきわめて重大であり、これらの諸国との親善友好、提携関係を強めていくことは、まさに時宜に適した重要課題であると考えております。マレーシアのマハティール首相も訪日の強い御希望がございまして、できるだけ御期待に沿うように努力いたしたいと思っております。  留学制度の拡充につきましては全く同感でございます。やはり若い学生の時代に受けた感化、イメージというものは終生その人に残るものでございまして、日本に対するイメージというものを考えますと、留学生を大事にし、りっぱに勉強していただくということが非常に外交の基軸にもなるくらいな大事な問題であると具体的に考えております。  国費による留学生の受け入れにつきましては、主としてアジア諸国中心に人材養成に協力する等の観点から年々拡充を図ってきております。財政の許す限り最大限努力いたしまして、アジア諸国からの留学生受け入れの充実に努めてまいりたいと思っております。  なお、婦人差別撤廃条約につきましては、本条約批准のため国内法制等諸条件の整備に努めることは、国連婦人の十年国内行動計画後半期の重点課題となっております。政府としましては、本条約批准に向けて目下鋭意準備中でありまして、できる限り速やかに批准する所存でございます。  なお、家庭を大事にする政策は、婦人を家庭に縛りつけて社会保障経費を少なくしようという考えではないかという御質問がございましたが、そのようなことはございません。日本の国家の単位として、社会の単位として家庭を充実させるということが、日本の社会基盤を強固にする最も大事な政策の一つであると考えております。そのような考えに立ちまして、まじめに家庭の充実に努力してまいりたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  48. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) わが国中小企業は御指摘のような体質のもとに置かれておりますが、しかし一方、輸出の三割を占めるような力もある。しかしながら、よくよく見れば賃金格差あるいはまた労働生産性あるいは装備資本率の低さ、そういうようなもので悲観的な見方もできる。  しかも、このように産業界の変化が急でありますと、ある意味では小回りのきくといいますか、中小企業のそういう利点を利用しながら、技術革新の先頭に立ってまた新しい道を切り開いていくであろう。しかし、その体質の面で、五三%もの中小企業は赤字企業である実態から見れば、先ほど来内容は申しましたから繰り返しませんが、たとえば投資減税を行うと、こう一言で言いますけれども、納税をしていない企業者に減税を行うことはできないわけでありまして、そこらもいろいろと考えてやっておりますが、要するに中小企業政策の決め手は何だろう、基本的には私は税と金融しかないと思うのです。  これをうまく組み合わせて、日本の地域なり業種なりの中小企業の特殊性、そして優秀性、こういうものを押し上げてあげる、あるいは側面から手を伸ばしてあげるというのが中小企業政策に対する今後の政府の心構えとして、具体的な問題、信用保証とか政府の官公需の受注率の向上とかいろいろなこともありますが、そういうことをやりながら、やっぱり基本はそこに置いて税と金融で対処してあげたならば、これもまたある程度自主努力によって自分たちの未来の開拓ということをされるわけでありますから、そういうふうに力を信じ、ときには体質の弱さを憂え、そしてそれに対するお手助けを何かでしていく場合に投資減税等も考えてみたい、そのように考えております。(拍手)    〔国務大臣大野明君登壇拍手
  49. 大野明

    国務大臣(大野明君) 田代議員の御質問の中で婦人問題についてお答え申し上げます。  従来から雇用における男女の機会の均等と待遇の平等の実現を図り、婦人差別撤廃条約批准のための条件整備を進めているところでございますが、現在、婦人少年問題審議会におきまして、男女平等を確保するための諸方策について法的整備を含め審議されているところでございます。その審議結果を待って適切に対処してまいる所存でございます。  また、寡婦の雇用促進につきましては、雇用の障害となっている職業経験、職業技能の不足等を取り除くことが先決であり、法律によって雇用を義務づけるよりも、職業相談、職業訓練の充実強化等により雇用が容易になる環境条件の整備に努めることが必要であると考えております。  なお、労働基準法の女子保護規定につきましては、監督指導によりその履行確保に努めているところでございます。  次に、パートタイム労働者につきましては、従前よりその労働条件の確保を図ってきたところでありますが、今後においても雇い入れ時における労働条件の明示の徹底を図るほか、現行の最低賃金の遵守、健康診断の励行について適切な監督指導に努めてまいる所存でございます。  次に、昭和五十八年三月大学及び短大卒業者の女子に対する採用計画は、五十七年三月に比較して減少しておる状況でございます。大学卒業者については大学が直接職業紹介を実施しておりますが、労働省といたしましても、学生職業センターを通じ女子大学卒業者等に対する求人情報の提供等に努めているところでございます。  また、女子が女子であるということだけで雇用機会が閉ざされているという状況は好ましいことではなく、労働省といたしましては、大卒女子の就職が円滑に進むよう女子大生及び使用者に対する啓発指導等を積極的に推進する所存でございます。(拍手)    〔国務大臣林義郎君登壇拍手
  50. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 田代議員の御質問の中で、母子保健施策の問題につきまして私からお答え申し上げます。  昭和五十五年十月に当院本会議で母子保健法の改正問題につきまして御質問がありました。当時の園田厚生大臣が御答弁になっておりましたことはよく承知をいたしております。その後、昨年十二月に家庭保健基本問題検討委員会から母子保健施策の基本的方向につきまして報告を得ましたので、本年二月、中央児童福祉審議会にその具体的施策につきまして御検討を願っているところでございます。私も、最近の出生率の低下、これがやはり社会の急速な高齢化という状況一つの原因になっている、こういったことにかんがみまして、母子の健康の確保はきわめて重要な課題であり、長期的視野に立った母子保健施策を推進していく必要があると考えております。  母子保健法の改正問題を含む今後の母子保健施策の進め方につきましては、先ほど申しました中央児童福祉審議会の審議結果を得た上で適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣内海英男君登壇拍手
  51. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) お答えいたします。  政府の決定した本年度の災害復旧事業の追加補正年度内発注で完全実施を図るべきではないか、こういう御質問でございますが、本年の災害はきわめて激甚であり、早期復旧を望む声が大きいことは十分承知いたしております。補正予算の執行につきましては、事務手続等の準備を進めており、年度内発注に万全を期するよう努力をいたしておるところでございます。  次に、治水事業の充実強化及び急傾斜地崩壊危険個所の再総点検を行うとともに、防止工事早期実施を図るべきではないかという点につきましては、国土を保全し、災害を未然に防止するため、治水事業につきましては本年度から第六次治水事業五カ年計画策定し、計画的にその促進を図っているところであり、また急傾斜地崩壊対策事業につきましては、現在危険度の高い個所より崩壊防止工事を実施しているところでございます。昭和五十七年度に実施した急傾斜地崩壊危険個所の再点検の結果に基づいて、災害防止のため今後順次所要の対策計画的に講じていく所存でございます。  次に、国土ナショナルミニマムの制定を図るとともに、生活基盤重視の社会資本整備を図るべきではないかという御質問でございましたが、わが国は元来災害の発生しやすい自然条件下にあることに加え、最近における都市化の進展等により災害発生の危険性が高まっております。また、身近な生活環境の面においては依然欧米先進国に大きく立ちおくれており、その向上に対する国民ニーズにはきわめて強いものがあります。  したがいまして、建設省といたしましては、治水、公園、下水道、道路等社会資本に関し、わが国の国土条件や欧米先進国の整備水準等を勘案して、国土が最低限備えるべき安全性及びナショナルミニマムとしての居住環境の快適性を確保するために必要な長期的な整備目標水準を設定して、これに向けて整備促進を図っているところであります。財政事情が厳しい中ではありますが、今後ともこのような目標を目指し、社会資本整備の着実な推進を図ってまいる所存でございます。  以上でございます。(拍手
  52. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会