○高平公友君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表して、
総理の
所信表明演説に対し
総理ほか
関係大臣に
質問をいたします。
まず、
総理の
政治姿勢について伺います。
中曽根総理、あなたは
国会議員として在職すること実に三十五年余、この間、
政府及びわが党の要職を歴任されました。文字どおり議会人としての
政治に対する卓越した感覚は衆目のひとしく認めるところでありまして、新
総理の誕生はまさしく
国民的
期待をもって迎えられております。そしてこの時が
内外ともに重要懸案事項が山積するという時期であるだけに、私が
総理に強く申し上げたいことは、事に処しては勇気と決断を持って信念を貫き、強いリーダーシップを発揮していただきたいことであります。
政権を担当するに当たって、ときには
国民世論の醸成とかあるいはコンセンサスを待つことも必要かとは存じますが、むしろ問題の本質とその方向、手順な
国民に率直に訴えて、そして
理解の中で進むべき方策を果敢に示すことが、この難局を乗り切るためのとるべき
政治姿勢であると思うのでありますが、
総理の
所見をお聞かせいただきたいのであります。
以下、昨日の同僚上田
議員の
質問事項との重複を避け、数点お伺いしますので、どうか
国民に
理解していただけるよう明確な答弁をお願いします。
質問の第一点は
外交問題で、なかんずく北方領土問題と対ソ政策についてであります。
まず、北方領土返還問題については、御案内のように、
昭和四十八年に当時の田中
総理が訪ソしまして平和条約締結交渉を行ったところであります。その際、発出された共同声明には、「第二次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが、両国間の真の善隣友好
関係の確立に寄与するものである」と、こういう趣旨がうたわれております。この共同声明中にある未解決の諸問題に北方四島の問題が入っていることは、ブレジネフ書記長との
会談において確認され、明らかでありました。
このような経緯があるにもかかわらず、ソ連は
昭和五十年ごろから
わが国の北方領土返還運動を指して、一部の者の根拠のない要求であるとか、外部からの教唆によるものである、こういう主張を行いまして、最近では、領土問題は解決済みであり、存在しないとのかたくなな
姿勢をとってきております。また、これに加えて、
昭和五十三年ごろからソ連は、北方領土において
軍事力の配備増強を行うという、北方領土問題の平和的解決の精神に逆行するような行動をとっておりますことはきわめて遺憾であります。
この間、このようなソ連の態度に対し、
国会においても北方領土問題に関する決議が行われたほか、四島の
早期返還を求める
国民世論は大きく盛り上がりを見せておりますが、かかる
国民の悲願を背景に、新
内閣としては今後どのようにこの問題の解決を図っていくつもりか伺いますとともに、このほかアフガン問題等、日ソ
関係は厳しい局面を迎えておりますが、今後の対ソ
外交の
基本方針、特にソ連のアンドロポフ体制下の新指導部に対してどのような
姿勢で臨むつもりか、あわせてお伺いしたいと思います。
次いで、私は、
防衛問題についてお伺いをします。
国の独立と平和を守る
安全保障政策は国策の重要な柱であります。近年、ソ連の
軍事力の異常な増強という厳しい
国際情勢の中で、
防衛問題に対する
国民的関心が高まり、自衛隊も高い支持率を得るに至りましたことは、こうした異常な事態を敏感に反応した
国民世論のあらわれとも言えると思います。申すまでもなく、自国の
防衛はあくまでも自主的に決定すべきは当然であり、これとあわせて
日本をめぐる国際軍
事情勢を的確に分析して、西側の一員としての国際的責任も十分に考慮すべきであると思います。
こうした
観点から、
防衛費とGNP一%について、私の
意見を交え
質問いたします。
昨日の衆議院の本
会議におきまして、民社党の佐々木委員長に対する答弁もありました。しかし私の
意見を申し上げたいと思う次第でありますが、御承知のように、
政府は
昭和五十一年十一月に、当面の
防衛費をGNPの一%以内とするとの閣議決定を行っております。私は、この決定の背景には、同時期に作成された
防衛計画の大綱に基づく
防衛力整備を進めていくに当たっては、何らかの形で
国民に経費のめどを示す必要があったということで、このような決定になったと
理解をしております。しかしながら、この決定にある「当面」の解釈は、何ら固定的な期限を予定したものではなく、
経済状況など
内外の
情勢の変化に伴い、必要がある場合には改めて検討さるべきものと受けとめております。
すなわち、この決定の前提となったものは、当時の五十年代前期
経済計画で示した
経済成長率、年平均一三・三%を見込んだものでありますが、その後実質
経済成長率は当初の見込みと大きく乖離したため、五十七年度のGNP一 %、約二兆六千億は、五十一年当時の見込みで言うならば一兆円近く下回っております。つまり、最近問題となっている
防衛関係費とGNP一%との接近は、もっぱら
経済成長の鈍化が
一つの原因と言えると思うのでありますが、私は元来、GNP一%の問題は平和時の
防衛力の歯どめとしてはそれなりの意義を評価するとしても、今日の
世界的緊張、危機にあっては、国家存立の
基盤である
防衛力が変動性の高い
経済指標の枠の中で固定されることは、
脅威、危機に備えるための
防衛の目的が果たせないと思うのであります。
私は、現下の厳しい
財政事情に照らして、
防衛費を急激に増すことには
賛成しかねます。しかしながら、少なくもさきに述べた自国の
防衛と国際的責任を
考えた場合には、
防衛費を引き続きGNPの一%以下に抑えておくことはもはや適当でないのじゃないか、そういう
考えもする次第でありまして、
総理の明確な
所見を承りたいと思うのであります。
次いで、私は、
中小企業対策についてお伺いします。
いまも社会党の大森
議員のお話がありました。最近の
中小企業の景況というのはまことに惨たんたるもので、二番底の底をはっているとも言われております。たとえば、本年十月の企業倒産件数は千五百件の危機ラインを突破し、本年の最悪記録をなしております。また、
中小企業の生産活動を見ても、本年一―三月期には前期比
減少に転じたのに引き続き、四―六月期も一・八%とさらに大幅なマイナスとなり、在庫量の増大など
中小企業関係者の憂色はきわめて濃いものがあります。
こうした
景気の低迷に対処するため、
政府は十月八日の
総合経済対策において、
公共投資の追加等と並んで、中小公庫、
国民公庫の貸付限度額の引き上げなど五
項目の
中小企業対策を決定したところでありますけれども、この
対策の中には、かねてより
中小企業者が広く待ち望んでおりました
中小企業設備投資
減税の創設が見送られることになりました。今日、大企業の設備投資は堅調に推移しております。にもかかわらず
中小企業の設備投資、それが低迷しているという
現状からするならば、
中小企業に活力を与えるためにも、また、せっかく大企業と
中小企業の格差が狭まってきたいま、再び大企業との格差が大きく開いていくということが大変懸念される次第でありまして、本
制度の創設が何より望ましいと
考えるが、
所見をお伺いしたいのであります。
第二点は、
中小企業者の強い要望である
中小企業承継税制についてであります。
中小企業経営者の三割以上が六十歳を超えているということから、遠からず
経営者の交代期が一斉に迫ってまいります。また、法人企業である
中小企業の場合には、自社株式の六割以上を所有する
経営者が約半分もおります。そのために、地価の高騰を背景として、現行の純資産価額方式による株式評価額が上昇しまして、将来後継者に相続税の高負担問題が発生することは当然予想されるところであります。後継者が安心して
事業が継続できるように、特に問題となる純資産価額方式を改めて、収益還元方式の導入を
期待したいのでありますが、
政府の
所見を求める次第であります。
次に、私は、構造
不況対策についてお伺いをいたします。
わが国の産業の中でも自動車を初めとする各種加工組み立て産業は、その国際競争力を背景にむしろ欧米
諸国と通商摩擦を引き起こすほどの力がありますけれども、一方で、アルミ製錬、石油化学等の基礎素材産業については、石油価格の高騰を契機に、国際競争力の著しい低下により輸出の急減、輸入の急増が日増しに強まっておりますほか、石油化学製品価格の上昇によって、国内需要の
減少等から国内生産は最盛期の数分の一という著しい低迷を余儀なくされております。もしこのままの
現状を放置するならば、
わが国の基礎素材産業は、その存立
基盤は喪失すると言っても過言でありません。御案内のように、基礎素材産業は出荷額で全産業の約三割を占めているほか、コンビナート体制をとっているものが多いために、関連地域の生産活動、雇用状態に直接つながっているだけに、その
経済的影響の大きさというのははかり知れないものがあります。
このように、産業活動及び
国民生活にとって重要な基礎素材産業が今日
経営的危機に陥っているわけでありますけれども、もはや市場メカニズムによる民間の企業
努力だけでは再起は不可能となっております。これら構造
不況業種に対してどのような
対策を講ずる所存でありますか、
政府の
所見をお伺いしたいと思います。
次に、農業問題について二、三点お伺いを申し上げます。
今日、
日本の農業はかつてない試練のときを迎えております。米価を初め各種農産物価格が、
経済成長の鈍化、食糧需要の停滞等を反映して、これまでにない低水準で推移しております。また、先ほどもお話しありましたけれども、東北
地方の三年続きの冷害、不作も手伝って、農家の
経営というのはきわめて厳しいものがある次第であります。それに加えて、内にあっては行
財政改革の波、外にあっては米国の牛肉、オレンジ等の
自由化要求に代表される国際化の波にさらされているという厳しい
状況下にあります。このような中で、農業に従事する者は自分たちの将来に、また農業の未来に大きな不安を抱きながらも、懸命に父祖伝来の田畑を守り続けております。
こうした
情勢を踏まえ、以下数点、四点でありますけれども、お伺いします。
まず第一点は、いまこそ農民が安心して農業をやれるような農政の展望を農民に明らかに示すべきであると思うが、これは一体どうでしょうか。
第二点に、臨調
基本答申に見られるように、農業の分野においても効率性の追求は重要ではありますけれども、ただ、農業に関しては
経済合理性だけでは律し切れない面があり、食糧の安定供給という農業の持つ重要な使命、自然的、社会的に不利な条件にある
わが国農業の特殊性等を踏まえる必要があると
考えますが、これについての
基本的な
考え方を承りたい。
第三点に、米国を初め諸外国の農産物に対する
自由化要求は非常に厳しいものもありますけれども、むしろ
日本は
世界有数の農産物輸入国であり、農産物市場は十分過ぎるほど開放されていると思います。各国との交渉に際しては、この点を明確にし、厳正に対処すべきだと思いますが、いままでお答えもありましたが、改めてこの
自由化問題につきまして所信をお伺いしたいと思います。
最後に、林業問題であります。近年、木材需要の低迷に加えまして、外材が国内生産材を圧迫しまして、七・三ぐらいの比率です。外材七割、国内産三割ぐらいです。林業
経営費の増高等により
経営意欲が著しく低下しておるほか、労働力の高齢化等によりまして伐採、造林等の各種の林業活動はほとんど停滞しておると申し上げていいと思うのであります。こうした厳しい
状況の中で、今後林業の広域的機能、これはぜひ確保せねばならぬ。これを確保しつつ林業の振興をどのように図っていくか、以上四点につきまして、
総理及び農林水産大臣の
所見を求める次第であります。
次いで、高齢化における社会保障についてお伺いします。
わが国はいま、
世界に例を見ないスピードで高齢化社会に移行いたしております。厚生省の推計によれば、総人口に占める六十五歳以上の老齢人口は、
昭和五十五年の九%から、三十年後にはその比率は二〇%を超え、四、五人に一人は老人だろうということに相なるわけであります。いまや高齢化社会への対応というのは国家的
課題であり、いまからこれに対処する
基盤づくりが必要であると
考えるのであります。
すなわち、高齢者をめぐる医療保障や年金などの
所得保障は、
わが国経済が高度成長のときであればまあどうにか賄えることが可能であったと思いますが、今日のように財源に余裕のない
安定成長時代にあっては、現行の
制度をこのままでこれを維持し充実させることは不可能に近いことであります。
われわれが目指すべき
日本型福祉社会は西欧型の高福祉高負担でなく、健康で生きがいのある老後生活が過ごせるように、自立性と連帯感を持った活力ある
日本独自の福祉社会をつくるべきであると
考えます。
総理は、来るべき高齢化社会に向かって、これまでの社会保障、社会福祉政策のあり方を今後どう改め、対処されるか、
基本的
考え方をお示し願いたい。
私はこの際、長期的、総合的展望に立った高齢者
対策を早急に検討の上成案を得べきであって、そのためには国それから
地方公共団体、民間が一体となった研究機関を
内閣の主体のもとに設置して、医療、年金、雇用等、将来の高齢化に伴う総合的施策を網羅した
基本法を制定すべきであると
考えますが、
総理いかがでありましょうか、お答えを賜りたいと思います。
終わりになりましたが、私は、これは要望であります。靖国神社公式参拝の問題について要望いたします。
およそ
政治に携わる者は、その歴史を知り、現在を見定め、将来を開くことにあると思うのであります。今日、
わが国は、幾多の諸問題があるとは申しながら、高い文化国家を築き、自由
世界第二の
経済大国になっております。しかし、われわれは瞬時たりとも忘れてならないことは、過ぐる大戦において祖国のために身命をささげ、戦場であるいは職域で、また異郷の地で倒れられた幾百万同胞のとうとい犠牲によるものであるということであります。洋の東西、その国の
政治形態いかんを問わず、とうとい生命をささげた方々に対しては国家としてその遺徳をたたえ、霊を永遠に祭っております。
しかるに、
わが国の場合、国家のために殉じ、散華した二百五十万英霊が祭られている靖国神社へは、公的地位にある人及び国賓がその資格において表敬の儀礼がまだ尽くせないことは、英霊に対してまことに申しわけない気持ちでいっぱいであります。私は、
総理の言う「礼節と愛情の社会」に照らしても、靖国神社の公式参拝を実現することが英霊に対する
政治の思いやりであり、そしてそれこそが真の平和に通ずる道であることを確信するものであります。
以上、私の心情を強く訴え、代表
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕