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1982-12-09 第97回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月九日(木曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第四号   昭和五十七年十二月九日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員裁判官訴追委員及び同予備員辞任の件  一、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員裁判官訴追委員、同予備員検察官適格審査会委員予備委員国土開発幹線自動車道建設審議会委員北海道開発審議会委員及び日本ユネスコ国内委員会委員選挙  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 徳永正利

    議長徳永正利君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  運輸委員長桑名義治君から常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  よって、許可することに決しました。      ─────・─────
  4. 徳永正利

    議長徳永正利君) つきましては、この際、欠員となりました運輸委員長選挙を行います。
  5. 藤原房雄

    藤原房雄君 運輸委員長選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  6. 大木浩

    大木浩君 私は、ただいまの藤原君の動議に賛成いたします。
  7. 徳永正利

    議長徳永正利君) 藤原君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、運輸委員長矢追秀彦君を指名いたします。    〔拍手〕      ─────・─────
  9. 徳永正利

    議長徳永正利君) この際、お諮りいたします。  鈴木正一君、円山雅也君から裁判官弾劾裁判所裁判員予備員を、増田盛君から裁判官訴追委員を、前田勲男君から同予備員を、それぞれ辞任いたしたいとの申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  よって、いずれも許可することに決しました。      ─────・─────
  11. 徳永正利

  12. 大木浩

    大木浩君 各種委員選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員裁判官訴追委員予備員職務を行う順序は、これを議長に一任することの動議を提出いたします。
  13. 野田哲

    野田哲君 私は、ただいまの大木君の動議に賛成いたします。
  14. 徳永正利

    議長徳永正利君) 大木君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員杉山令肇君、宮澤弘君を、  裁判官訴追委員古賀雷四郎君を、  同予備員藤井孝男君を、  検察官適格審査会委員予備委員大城眞順君を、  国土開発幹線自動車道建設審議会委員井上孝君を、  北海道開発審議会委員北修二君を、  日本ユネスコ国内委員会委員後藤正夫君、田沢智治君を、 それぞれ指名いたします。  なお、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員職務を行う順序は、杉山令肇君を第一順位宮澤弘君を第二順位とし、また、裁判官訴追委員予備員職務を行う順序は、藤井孝男君を第二順位とし、第二順位予備員である三浦八水君を第一順位といたします。      ─────・─────
  16. 徳永正利

    議長徳永正利君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る三日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。宮之原貞光君。    〔宮之原貞光君登壇、拍手
  17. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、日本社会党を代表して、中曽根総理大臣所信表明演説に対し、われわれの見解を明らかにいたしながら若干の質問を行います。  本来、新政権誕生のときは、未知数なるものへの期待感もあって、国民の新政権に対する支持率は高いのが常識であります。ところが、中曽根内閣支持率は、歴代内閣誕生時におけるそれと比べましてきわめて低い方で、その上、国民の批判もまだ何もしていないうちからまことに手厳しいものがあります。このことは当事者の総理自身もよもや否定されないと思うのであります。その理由については、昨日わが党の飛鳥田委員長質問の中で指摘をされていますのであえて重複を避けますが、総理、あなたがどんなに美しい言葉をたくさん並べて演説をされましても、実は国民は、それをそらぞらしく、かつ、むなしい気持ちで受けとめておるのであります。  そこで、具体的にお聞きいたしますが、総理所信表明で、「政治を支えるもの、それは、国民の信頼であります。私は、各党各会派そして議員各位の協力のもと、政治倫理確立し、清潔で効率的な政治を目指します。」と述べられたのでありますが、そのためには具体的にどうなされるというのですか、はっきり表明をしていただきたいと思うのであります。  政府及び与党かなめの地位に平然と灰色高官を置き、金権汚職とかかわる刑事被告人に率いられる派閥から大量の入閣を強行されていて、政治倫理確立し、清潔で効率的な政治を目指すとは一体どういうことなんですか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。私は、総理に、政治倫理確立のための国民へのあかしとして、灰色高官と言われている現職大臣与党自民党かなめにある人の国会証人喚問実現に努力なされる意思があるのかどうか、また、佐藤孝行議員辞職勧告決議案に賛成をされるのかどうか、はっきりお答えをいただきたいと思います。  また、総理は、「思いやりの心」と「責任ある実行」を政治基本に据えると言われましたが、問題は、その思いやりや心配りが、どういう順序で、どちらを向いているかであります。一億国民の方を真っすぐ向いておられるなら結構であります。しかし、端的に言わせていただくならば、それは、一が目白で、二がワシントン、三が警察、四が裁判所という順序ではないかと世間一般は案じておるのでございます。もし総理が、いやそんなことはないと胸を張っておっしゃるならば、政治倫理確立にかかわるさきの私の質問に、「それは国会の問題だから」とお逃げにならないで、明確にお答え願いたいのであります。  また、政治はたくましい文化福祉に奉仕するものであり、「思いやりの心」と「責任ある実行」はその政治基本に据えるというのであれば、あなたの今後の政治姿勢は、行革財政再建に籍口したところの教育福祉予算への切り込みではなく、名実ともに備わった教育福祉最優先の政策でなければならないと思うのでありますが、そのことをお約束できるでしょうか。  四十一年前のあの十二月八日、日本国民はラジオの臨時ニュースによって、わが国米英両国戦争状態に入ったことを突如として知らされました。自来三年八カ月、国民にとっては苦難の歳月が続き、ついに一九四五年の八月、惨めな敗戦の日を迎えたのであります。日本のいわゆる十五年戦争はここで終止符を打たれたのでありますが、実に三百有余万の同胞が心ならずも命を失う結果となり、広島、長崎を初め全国の主要都市が無残な焼土と化しました。  われわれは、日本国民のみならず近隣諸国をもその意に反して巻き込んだこの戦争を、過去の出来事として安易に忘れ去ってはならないと思います。一体だれが、なぜ、このような大義名分のない戦争考え、向こう見ずな決断をしたのか、また、どうして政治も外交もこの絶望的な戦争を制止することも収拾することもできなかったのか、深く反省する必要があると思います。  特に、中国に対する侵攻の過程で行われた日本の軍隊による非道な行為は、わが民族歴史に残された汚点としてぬぐい去ることはできないのであります。例の外交問題にまで発展をした教科書問題は、文部省が、わが国の過去における植民地統治侵略戦争を美化し、好ましからざることをできる限り隠蔽して、都合の悪い事実を教えまいとしていることがはしなくも露呈いたしました。たとえば、「侵略」を「進出」という字に置きかえることで罪悪感を少しでも薄めようとすることなどは見えすいた小手先細工であります。  しかも、外交問題化してあわてて文部省をして対応させた肝心の教科用図書検定調査審議会答申や、それにかかわる文部広報は、「これまでの検定は正しかった」と言いつつ、「国際理解国際協調の見地から配慮する」と、無理なつじつま合わせの手法で糊塗し、その本心はいささかも従前と変わっておらないのであります。これは明らかに「政府責任において是正する」云々の前官房長官談話とも異なるのであります。  一体このようなこそくなやり方で、総理の言う「アジア諸国との一層の相互理解友好関係の強化」とか、「わかりやすい政治」の実現が果たせるとお考えでしょうか。総理の存念をしかとお伺いをいたしたいのでございます。  なお重大なことは、このような戦前の時代感覚から少しも抜け切れない官僚が、文部行政の中枢にあって教科書検定に実質的に当たっているという事実であります。これでは次の時代を担う国民歴史の真実を教えることはできません。過去の歴史を正確に教えることを怠れば、はかり知れない多くの犠牲を生じた戦争の教訓を次の時代に生かすこともできなくなるのであります。国内の学者や識者の意見には全く耳をかさずにいて、外国から指摘されて国際問題になってから、あわてふためいて弁明をするなどはまことに不見識のきわみであります。  戦争は何となく始まったというものでは決してありません。厳しく回顧し反省されなければならない重要な問題であります。日中戦争から太平洋戦争へと多大の犠牲を払いながら、わずか三、四十年後の今日、もうその原因なり経過、責任等が次第に風化し、あいまいのまま推移していく感のあることを私は残念に思うものであります。戦争の追憶よりも戦争責任についての反省こそ今日大事なことと思いますが、教科書あり方とともに、太平洋戦争を含むいわゆる十五年戦争に対する認識について、総理の御見解を承りたいと存ずるのであります。  次に、中曽根内閣鈴木内閣から引き継いだ大きな問題の一つに、一千海里シーレーン防衛問題があります。これは、アメリカの強い要請によることは周知のとおりでありますが、日本列島とグアム島以西、フィリピン以北を結ぶ広大な海域を何のために、だれから、どうやって守るのか、アメリカ側とどういう合意ができているのか、まずお聞きいたしたいと思うのであります。  シーレーン防衛とか五六中業という言葉は、国民にとってなじみの薄い言葉であります。国民が気づかないうちにアメリカ側の強い要請に押されて簡単に引き受けてよいものかどうか、憲法上も、総理の言う日本の安全を確保するという面からも大変な問題であるのであります。  一口に一千海里と言っても約二千キロに近い距離で、その面積は日本の何倍にも及ぶ大海原であります。もしここを守備範囲とするのだということになれば、その目的は明瞭であります。F16戦闘機米軍三沢基地に対する配備とともに、日本自衛隊アメリカ対ソ戦略の一翼を明確に担うということであり、具体的には、海上自衛隊アメリカ海軍の持ちごまの一つになることを意味するものと言わなければなりません。そしてそれは、対馬、津軽、宗谷の三海峡封鎖の任務をも分担することにまで発展することは明白であります。これでは専守防衛の枠を完全に突き破り、憲法を全く踏み越えた集団自衛権構想と言わざるを得ないのであります。きわめて危険な選択であります。  また、シーレーン防衛アメリカの満足するような形で実行しようとするならば、現在の海上自衛隊の力量をもってしてはとうてい及ぶところでないことは、かつて海軍に身を置いたことのある総理ならよくおわかりのはずでございます。旧帝国海軍の数倍もの戦力が求められることは必至であります。これでは何と弁明をしようと現行憲法は完全に空文化し、非核三原則の消滅も必然の結果となりましょう。また、アメリカから強く求められている対米軍事技術供与のために、これまで掲げてきた武器輸出禁止原則も御破算となることは時間の問題だと思うのであります。もちろん、そのための防衛予算のGNPの一%突破も同様であります。  総理総理の言う「質の高い防衛力整備」ということは、このような将来展望に立つ防衛力整備としか受け取れないのでございますが、そのように理解してよいのかどうか、総理の御見解を承りたいと思います。  そして、このことと、総理の言う日本は「軍事大国にならず、近隣諸国軍事的脅威を与えることのないよう配意いたします。」ということは、どういう関係になりましょうか、篤と御見解を承りたいと存じます。  次に、憲法問題についてお聞きをいたしたいと思います。  総理は、所信表明では、注意深く憲法問題には直接触れないように回り道をなされました。しかし、総理の言うアメリカとの固いきずなを強調されればされるほど、先ほど来指摘してきたように憲法問題は避けて通れない問題となりましょう。伝えられているようなアメリカ軍事力要請の高まりと、総理の言う質の高い防衛力整備が相乗していけば、当然憲法の壁に突き当たってくるのは必然性があるのであります。加えて、総理改憲論者であることもこの課題に拍車をかけてまいりましょう。  総理の昨日の衆議院本会議における御答弁も、現行憲法平和主義人権主義民主主義を評価しながらも、一方では国民意識の変化に伴う改憲への可能性を示唆して、その本音をのぞかせておられるのであります。一体、態法のどこが不都合なのか、どんな理由で改める必要があるか、総理本音をこの際あえてお聞かせをいただきたいと思うのであります。  総理日本国民の七割を超える圧倒的多数は反対であるのであります、憲法改正に対しては。そして憲法第九十九条は国務大臣憲法尊重義務を明確に規定しておるのであります。それをあえて改憲可能性を示唆しなければならない理由をお聞かせいただきたいと思うのであります。  押しつけ憲法だから民族のプライドが許さないというならば、押しつけ安保条約はどうなるのか、押しつけの再軍備はどうなるのかということも当然考えなければならないはずであります。押しつけられた軍備は他国のための戦争準備ということになりかねません。平和と軍縮という国民の願いに逆行して危険な火遊びに加担することになれば、総理の言うたくましい文化福祉も夢物語に終わるでしょう。むしろこの際思い切って対立する米ソの仲介の役割りを果たし、巨大な軍事予算の重圧を回避する道を真剣に求めるべき時期じゃないでしょうか。いかがでしょうか、総理。  総理行革の推進に一層の努力を傾ける決意であることを強調されました。しかし、行革中身は具体的に何なのか、国民にはよくわからないのであります。中曽根内閣ができてからはギョウカクに別な漢字を当てはめる向きもありますが、いわゆる行革、行財政の改革は何のためにどういうことをするのか、その結果国民にどういう影響を及ぼすのか、いたずらに幻想を抱かせることなく十分に吟味をする必要があると思うのであります。  わが党は、基本答申の百九ページにわたる長文の中身をまるのみにするわけにはまいりません。特に三公社の経営形態変更等は、まかり間違えば国有財産合法的つまみ食いを許すためのお墨つきに利用される可能性を持っておるのであります。あとの大部分は具体的にどうするか不明確であります。ちょうど長過ぎる念仏のように、聞き流し、読み流しされておるのでございます。中身がなくて衣の厚いてんぷらは第二臨調総理演説だと言われております。総理演説臨調答申は衣の厚い点ではよく似ておるのでございます。  臨調答申の中で具体的に法案として上程をされたのが国鉄再建監理委員会法でありますが、国鉄問題の処理のため、なぜこんな機構が必要か全く不可解であります。  まず、この法案臨調答申を尊重してとなっておりますが、答申そのものが大切なところで間違っておるのでございます。たとえば国鉄累積債務赤字の内容が全く把握されておらないのであります。数次にわたる今日までの国鉄再建計画運賃値上げは当然のことながら、その都度政府計画し提案をしてきたものであって、時としてはわれわれ野党反対強行採決で押し切ってきたこともありました。今日までの数次にわたる計画に対し、政策的にも計数的にも目標達成が困難であることは強くわが党が指摘してきたところでございます。採算に合わないことを承知で借金に依存する投資をすれば、累積赤字がふくれ上がることはだれが考えてもわかることであります。それをあえて続けてきた政府政治責任には一切触れず、赤字責任国鉄の労使に転嫁しようとするがごときは断じて許されないのであります。  要するに、国鉄財政破綻内科疾患に比すべきものであるにもかかわらず、臨調診断外科的所見にとどまり、診断書処方せんも、したがって狂っておるのであります。それはちょうど胃腸や心臓の悪い患者に足の切断を進言するような、にせ医者を信用せよと言うのに等しいのでございます。再建監理委員会法案はまさにこのように間違った処方せんであります。行政簡素化ではなく複雑化をもたらし、行革の趣旨に逆行するものであります。総裁の上にまた総裁を置き、大臣を何人も配置する感があります。屋上屋を重ねるというか、屋根の上にまた屋根を乗せ、そのまた屋根の上に風見鶏を乗せるようなものでございます。  総理、あなたが臨調答申をあくまでも尊重したいと思われるなら、答申の骨格となっている国鉄分割民営北海道九州四国から実行するプランを立ててみていただきたいと思うのであります。ただし、それは運賃値上げをせず、補助金の交付も受けず、列車の削減は行わず、ローカル線の廃止も行わないで分割経営をするというものでなければなりません。しかし、そんな手品のようなことがだれでもできないことは明白であるのであります。  青函トンネルは、貫通を間近に控えて、一銭の収益も上げないうち、六千八百九十億円の巨額の費用をかけ、完成後は年間約七百億円の借損料を払わなければならないのでありますが、分割民営となれば一体どこがこの費用を引き受けるのでしょうか。また、上越新幹線が一兆七千億円、東北新幹線二兆八千億円と、民間企業では手の出ない莫大な投資借金で賄わなければならないのでありますが、このことは、たとえ土光さんが総裁をお引き受けになっても、たちどころに赤字で首が回らなくなることは目に見えているのであります。そして、これらの地域赤字路線区を整理しようと思えば全部鉄道を廃止しなければならないのであります。それは本州にしても同様で、人口密度の高い関東、関西等地域黒字経営が可能だが、人口密度の低い地域経営が成り立たないのでございます。  したがって、国鉄を分割して地域ごと独立採算制をとるならば、北海道九州四国はもちろん、本州でも日本海寄りの各県及び東北地方などは現行運賃の少なくとも二倍以上を利用者は覚悟しなければならないのであります。このような結果が表面化したとき、政府はその場合はまたぞろ臨調にその責任を転嫁するりもりでしょうか。僻地住民から鉄道やバスのような公共交通機関採算が合わないという理由で取り上げるようなことは、総理の強調されている「思いやりの心」の政治あり方とどうつり合いがとれるのでありましょうか。地方財政も国の赤字のしわ寄せを受ける状況のもとで、だれが過疎地域住民の足を守るのか、総理のお考えを篤と伺いたいのであります。  次は経済問題ですが、前内閣経済運営を完全に誤ったと言わざるを得ません。そのことは、前内閣時代の副総理格をお務めになったあなたの責任も逃れるわけにはまいらないのでございます。経済見通しは五十七年度五・二%の見込みが閣議で三・四%に修正をされております。政府の当初経済見通しをわが党は前国会で、民間見通しに比して高過ぎること、さらに経済停滞を脱却する政策の用意がないことを指摘して経済政策の転換を求めましたが、何らの対策もなく、なすところなく今日に及んでおるのであります。激動する世界の情勢の中で、甘い見通し希望的観測は禁物であります。新内閣は正しい野党指摘経済運営の提言を謙虚に受け入れるべきだと思うのですが、いかがでしょう。  この臨時国会に提出されている補正予算案では、六兆一千億に上る税収不足を補うため、三兆九千億の赤字国債の発行と二兆一千億の歳出削減が余儀なくされておるのでありますが、この巨額な税収不足は明らかに深刻な不況の反映と見なければなりません。今日、不況の木枯らしが日本国じゅうを吹きまくっておるのでありますが、それに拍車をかけるように、人事院勧告を凍結し、公務員の給与を抑えるということは全く理不尽な措置と言わなければならないのであります。  人事院勧告仲裁裁定は公の約束に等しいもので、勝手に値切ったり人質にとって他の法案を成立させるための道具にすべきものではないのであります。ところが、遺憾ながらおくめんもなく今日までこの種の恥ずべき措置が行われております。そもそも人事院勧告仲裁裁定の制度は憲法の保障する勤労者ストライキ権代償措置であります。したがって、政府が当然尊重し、完全に実施しなければならない義務であります。このような当然政府が守らなければならない義務さえ守らないようでは、所信表明の美辞麗句もとても信用することができないのであります。総理並びに大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。  景気停滞失業率を高め、就職難を惹起していますが、雇用対策景気の浮揚、不況対策は一連の問題であります。また、六兆円という税収不足はなぜ生じたのか、内需の停滞中小企業に大きく影響し、不況に輪をかけているところの事実をどう認識されておるのか。人勧凍結公務員地方公務員のみならず、恩給、年金生活者に連動し、民間賃金抑制の有力なてこに利用されることを想定すれば、それは景気の回復どころか、一億総不況時代を迎えることになるおそれがあると思うのであります。  前内閣景気対策の誤り、税収の過大な見積もり、そして財政再建公約破綻は、結局弱い者いじめの形をとって庶民大衆を苦しめる結果となっておるのでありますが、中曽根新内閣所得減税等懸案事項を含めどう対処されるか、具体的にお伺いをいたしたいと思います。  長年叫ばれている不公平税制の是正についても検討が行われておるならば、国民が納得できるような具体案を示していただきたいと思うのであります。  何となく立ち消えになってしまった感のあるグリーンカード制は一体どうなったのでしょうか。五十九年度の赤字国債からの脱却とか、増税なき財政再建という看板と同様に、いつの間にか納屋にしまわれた感がないではございません。これからの増税政策の有無を含めて、財政再建についての大蔵大臣所見伺いたいと思うのであります。  最後に、外交問題に関連してお伺いをいたしますが、総理臨時国会が終わり次第、一月早々アメリカを訪問する計画とお聞きいたしております。そのことは日米関係を重視する政治姿勢のよってしからしめるところでしょうが、外交問題で西側諸国一員であることを強調する余り、アジア一員であることを忘れては困るのであります。  国際情勢は流動的であり、ソビエトにおける指導者の交代、中ソ両国の和解の傾向等々と常に新しい局面が展開されておるのであります。この中でアメリカと何を話し合い、何を決めるかについては慎重の上にも慎重でなければならないと思うのであります。一つ間違えば、時として日本国民に背負い切れない重い荷物を負わせることになりかねないのであります。レーガン大統領の振り回すタクトに合わせて下手な歌を歌うことだけは厳に慎んでいただきたいと思うのであります。  貿易摩擦や防衛費等めんどうな問題がたくさんあることは承知をしておりますが、アメリカ政策の失敗のしわ寄せをわれわれが買って出る必要は毛頭ないのであります。アメリカ日本に要求すると想定されるところの問題は、日本国民生活に直接影響することばかりでございます。農産物自由化の問題もそうでございます。一たび言われるままに扉を開けば遠慮なくアメリカの農産物が流れ込み、オレンジや牛肉だけでなく、日本農業の最後のとりでである米までがねらわれる可能性があるのであります。そうなれば、単に日本の農業の分野にとどまらず、食糧の自給体制そのものが脅かされるのであります。  特に防衛費の問題は、歯どめを外されるようなことになれば、経済的負担だけでなく、日本の安全に重大な影響の生ずることを銘記していただきたいと思うのであります。中国、朝鮮を初めアジアの諸国は、すでに世界第八位と称せられる日本軍備に深い関心と警戒の目を向けているのであります。  重ねて申し上げますが、日本西側諸国一員である前にアジアの一国であるということでございます。軍事大国にはならない、近隣諸国に脅威を与えないという平和外交の方針をかたく守っていただきたいということを強く要望申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手
  18. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 宮之原議員の御質問にお答えいたします。  まず、政治姿勢の問題でございますが、組閣に当たりまして種々の御批判がありましたことはよく承知しております。謙虚にこれらの御批判を受けとめまして、私の心の戒めといたしたいと思います。  さて、政治倫理の問題につきましては、国会は国権の最高機関でございまして、これを構成する国会議員の使命、地位はきわめて重いものと考えております。したがいまして、国民の代表としてふさわしい行動が要求され、一般国民以上の倫理性が要求されていると考えております。特に、具体的問題といたしましては、政治資金の取り扱い、あるいは選挙の公正な行動、あるいは身辺の清潔維持等につきまして、われわれは大いに戒心してまいらなければならないと思っております。  政治が一部の意見あるいは外部の力で動くという御批判がございましたが、いま政党政治が行われておるのでございまして、自由民主党の中におきましても、政策や人事はすべて機関中心で行われておりまして、一部の人の意見によって左右されることはございません。また、日本は三権分立をとっておるところでございまして、行政権が司法に介入することはあり得ませんし、いたしません。  さらに、議院証言法等について御質問がございました  議院証言法につきましては、国会における真剣な御検討をお願いしておりまして、これが推移を見守っておるところでございます。  佐藤議員の進退について御質問がございました。  私は、終局的にはこれは個人、本人が決定すべきものであると考えております。私は前にも行管長官当時御答弁申し上げましたが、国権の最高機関を構成する議員の地位というものは非常に重要であると考えております。選挙民と議員の関係は主権を構成するという非常に大きな機能の一部を分担しておるわけでございます。この主権を構成するという重大な機能を議員と選挙民が持っているわけでございますが、この関係を切断するということは非常に慎重に考えなければならない。終局的にはこれは個人が決定すべきものである。外部からの強制というようなことでやることは好ましくもないし、また第三者がそのようなことについて介入することも好ましくない。議員の地位というものは、そういう意味におきまして非常に重大な職分を持っていると考えております。  さて、教育福祉の問題について、行革においてこれが無視されるのではないかという御質問がございましたが、そのようなことはございません。行革はもちろんこれを行うについて聖域は設けておりません。しかし、当内閣といたしましては、やはり教育とか福祉という問題はできる限り尊重して扱うべきものである、このように考えております。  現行憲法について御質問がございました。  これは私は第二次世界大戦にも出まして戦争の悲惨さを一番知っておる一人でございます。戦前と戦後の日本を比べてみますと、画然と違ったいい日本になっていると私は思っております。それは基本的人権の擁護尊重、あるいは平和主義あるいは国際協調主義あるいは民主主義、あるいは福祉国家の理念、こういう点において非常に輝くものがあると思っておるのであります。このようなことになりましたのは、やはりいまの憲法が機能しているところも非常に大きいのでございまして、そういう意味においていまの憲法の果たしている歴史役割りはこれを高く評価しており、これらの大事な原則は守っていかなければならないと思っておるのであります。  しかし、一般の法律あるいは制度と同じく、どのものにつきましても完全というものはないのでありまして、常によりよきものへ心がけまして、常にこれを勉強し、研究し、検討することは差し支えないと考えておる次第で、憲法もその中に入ると考えておるのであります。  さて、第二次世界大戦に関する問題でございます。  私は、第二次世界大戦はまことに遺憾な戦争であったと考えております。そして、この戦争の間におきまして、わが国の行為について国際的に侵略であるという厳しい批判を受けていることも事実でございます。この事実は政府としても十分認識する必要があると考えております。われわれといたしましては、このようなことを再び起こさないように心がけてまいらなければならないと考えております。  さらに、歴史教科書につきましては、その記述が、広く受け入れられている学説あるいは研究成果に基づいて、客観的で、公正かつ適切な教育的配慮が施されておるものでなければならないと思っております。また、近隣諸国との友好関係保持につきましても慎重な配慮を行う必要がある、このように考えております。  シーレーン防衛と米国との関係でございますけれども、わが国にとりまして、有事の際に海上交通の安全を確保することはきわめて必要であります。従来から、周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域で、自衛の範囲内において海上交通保護を行うことを目標に海上防衛力整備に努力してまいりました。米国は、このようなわが国考えに基づくことについて、なお一層の防衛努力を期待していることは事実でございます。しかし、わが国防衛力整備はあくまでわが国の自主的判断によって行うべきものであります。もちろん、米国との間におきましては日米安全保障条約がありまして、日米相互協力について常に協議して改善していくべきものであると考えております。  防衛費のGNP一%の問題でございますが、われわれは、防衛計画の大綱の水準を可及的速やかに達成して、質の高い防衛力を保持する必要があると考えております。しかしながら、防衛につきましては、非核三原則を守るということと、専守防衛に徹するという考え方は変えてはならないと思っております。わが国にとりまして、有事に海上交通の安全を確保することは、貿易国家といたしましてきわめて重要であります。従来から周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域で、自衛の範囲内において海上交通の保護を行うことを目標に海上防衛力整備してまいりました。この防衛費のGNP一%に関する五十一年の閣議決定は、現在のところ変える必要はないと考えております。  このシーレーン、いわゆる航路帯の問題につきましては、研究段階といたしまして、当面、南西、南東の二ルートを研究いたしております。もしこのようなルートを設ける、これは輸送ルートでございますが、それにつきましても日米間の相互協力についていま慎重に検討しておる状態でございます。千海里と申しましても、全面的海域について全部千海里にわたって考える、そういう問題ではないのであります。  行政改革につきましては、これは過去の行政のひずみを直すという点もございますが、むしろ時代の変化に即応した新しい政府行政あり方いかんということを中心に検討していただいておるものでございます。  そして、国鉄問題につきましていろいろ御意見を拝聴いたしました。  国鉄経営の危機的状況にかんがみまして、臨調答申における提言は妥当なものであるとわれわれは考えております。政府といたしましては、この臨調答申を最大限に尊重して所要の施策を講じていくこととしております。その一つといたしまして、今回、国鉄再建臨時措置法案を提出しておるのでございまして、十分な御理解を賜りたいと思います。この臨時措置法案に基づく監理委員会をつくりまして、この監理委員会が具体的にどのような計画を行ってくるか、われわれはこれを注目してみたいと思っておるのでございます。  なお、地域住民の足の確保の問題につきましては、新しい交通手段の出現、あるいは新しい交通体系の整備等も踏まえまして、従来からいろいろ足の確保については配慮してきたところでございましたが、今後とも慎重に配慮してまいりたいと考えております。  さて、経済政策の問題でございます。  五十七年度の経済見通しにつきましては、世界経済の回復のおくれによりまして五十六年度の経済成長率が低下したため、五十七年度経済が当初の見込みより低い水準からスタートいたしました。このため、総合経済対策の効果を織り込んでみましても、五十七年度の実質成長率は三・四%程度の見込みと修正した次第なのでございます。当面、総合経済対策を着実に実施いたしまして、今後とも内外の経済動向を注視し、機動的政策運営を心がけたいと考えております。  人事院勧告につきましては、国家公務員法の趣旨に基づきまして人事院勧告は十分尊重すべきものであり、公務員のベースアップにつきましても、われわれはできるだけ配慮しなければならないと考えておる次第でございます。人事院勧告の取り扱いは、勧告制度を尊重するという基本的たてまえで処理してまいりたいと思っておるのでございます。  しかしながら、現在の危機的な財政事情のもとにおきまして、国家公務員が率先して行財政改革に協力する姿勢が必要であること等も考えまして、異例の措置としてこの給与の改定の見送りを決定いたしました前内閣の方針は、現内閣においても踏襲してまいるつもりでございます。  仲裁裁定につきましては、与野党間でこの取り扱いに関して合意が成立いたしました。十二月七日の与野党国対委員長会談におきましては、仲裁裁定については今国会中に裁定どおり議決いたしますと、このように約束いたしまして、これを尊重してまいるつもりでございます。  さらに、景気対策でございますが、日本経済の現状は欧米諸国に比べますれば良好ではございますが、景気の足取りはまだ重く低迷している状態でございます。この景気の着実な回復を図り雇用の安定を確保するために、先般来、公共事業あるいは住宅建設、あるいは中小企業対策不況産業対策雇用対策、災害対策等を兼ねまして総合経済対策を決定いたしました。当面、これらの諸対策を着実に実施いたします。そして、今後とも内外の経済動向を注視いたしまして、機動的な政策運営を心がけてまいりたいと思います。  グリーンカードにつきましては、国会の立法を見守っておるところでございます。  所得税減税の問題につきましては、衆議院大蔵委員会減税問題に関する特別小委員会におきまして検討中でございます。政府としましては、財源問題を含めて与野党合意の結論が得られれば、これを尊重する考えでございます。  私の訪米に関しまして御質問がございましたが、この訪米につきましては、長期的かつ全般的な見地から日米両国間の信頼関係を一層強化することを考えてまいるつもりでございます。  世界的な国際緊張はいまだ緩和されているとは思いません。アフガン問題あるいはポーランド問題その他を考えてみましても、世界は昔と同じような状況にあるように考えております。しかし、ソ連にアンドロポフ政権が出現いたしまして、この新しい体制がどのような世界政策に出てくるか、対日政策に出てくるか、これは慎重に注目してまいりたいと思っております。また、わが国アジア地域一員でございまして、アジア地域一員として果たしていくべき役割りについても十分認識いたしまして、以上を踏まえまして平和外交を徹底して進める考えでまいりたいと思っております。  また、米国との関係におきましては、貿易問題等を中心に非常にむずかしい段階に来ております。アメリカ国内及び議会筋の中におきましては相当な保護主義的傾向が台頭していることは事実でございまして、貿易国家の日本といたしましてはどうしてもこれを阻止しなければならないと考えております。これらの問題を踏まえまして、アメリカへ参りましてレーガン大統領とよく相談もし、わが国の主張も述べてまいるつもりでおります。  以上で答弁を終わらせていただきます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手
  19. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問に対してお答えをいたします。  まず、人事院勧告等の取り扱いにつきましては総理からも御答弁がすでにございましたが、いま議員御指摘のような諸点を踏まえまして、去る九月二十四日、公務員給与に関する取り扱いについての閣議決定をいたしたところであります。御指摘にありましたとおり、労働基本権の制約、良好な労使関係の維持などに配慮をしながらも検討を進めました結果、未曾有の危機的財政状況のもとにおきまして、国民的課題であります行財政改革を担う公務員の方が率先してこれに御協力をいただく、その必要性があることを思いまして、また官民格差がいわゆる五%未満であるというようなことなどの事情をまさに総合的に判断をいたしましてその改定を見送ることとした、このような次第であります。したがって、方針を変える考えはございません。  そして、仲裁裁定につきましては、御答弁がございましたように、国会マターで話し合いが進んでおると承知いたしております。  次に、総理からグリーンカード問題あるいは減税問題等々についてお答えがありましたが、いずれにいたしましても財政再建は目下の急務であります。そして増税なき財政再建という理念を念頭に置きながら、まさに安易な増税等を念頭に置いてはならない。まず行政の簡素効率化、制度、施策の見直し、そして総理からも中曽根内閣初閣議において説示がございましたように、歳出の構造の見直しあるいは税外収入の確保等に対する努力、そしてまた負担と受益の関係、いわゆる歳入歳出両面にわたりましてその合理化、整合化、これを念願に置いて進めていきたいと考えております。  以上でお答えを終わります。(拍手)     ─────────────
  20. 徳永正利

    議長徳永正利君) 上田稔君。    〔上田稔君登壇、拍手
  21. 上田稔

    ○上田稔君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、総理所信表明並びに当面する内外の重要課題について、中曽根総理ほか関係閣僚に若干の質問をいたすものであります。  今回の中曽根内閣の組閣名簿を拝見いたしますと、これまでの党内派閥均衡による選任の殻を破って、全党的立場から広く人材を選び、大臣を任命しておられると思うのであります。私は、その人物とポストを吟味すればするほど実によく検討され、適材を適所に登用しておられまして感服をいたすものであります。そこには中曽根総理の強い信念が貫かれており、かかる内閣によってこそ今日の重大な危機を突破できるものと確信いたします。    〔議長退席、副議長着席〕  私は、新総理の手腕に絶大の期待を持つものでありますが、総理は今回の組閣に当たってどのような決意でこれを行ったのか、忌憚のない所見をお伺いいたしたいと存ずるのでございます。  さて、今日、日本を取り巻く内外情勢がこれほど厳しいときはかつてありません。このきわめて困難なときに総理政権を担当することになられたのであります。新総理は若いときから首相公選論を発表されて全国を飛び回られたように、絶えず新しい発想によるアイデアをお持ちで、バイタリティーと弁舌に富み、国民に人気のある大衆政治家であります。このたび選ばれて国政を担当するからには、この激動と模索の八〇年代のかじ取りに当たっては、挙党一致、政局の安定のもと、あらゆる機会をとらえて国政の展望をわかりやすく国民に語り、意思の疎通を図ることが政治に対する協力と信頼につながり、開かれた政治考えるものであります。  申すまでもなく、政治は創意と指導性をもって国民に未来を開く戦略を示し、前進するものと考えます。総理はこの変動と危機の時代にいかなる基本姿勢で政治に取り組むのか伺いますとともに、総理はかつて中産階層国家論をお唱えになられたことがありますが、現在わが国が進むべき国家目標をいかに考えておられるか、あわせてお示しを願いたいと存じます。  今日が試練の時代であればあるほど、これを乗り切るには政治に対する国民の信頼の回復がきわめて大事であります。それだけに、政治に対する国民の心を取り戻し、国民とともに歩む政治を行うためには、政治倫理確立して誠実な政治を断行することが、新しい政治の展開に当たっての為政者の責務であると考えるのでありますが、総理の御所見を求めたいのであります。  次は、外交問題でありますが、まず今後の日米関係についてお伺いをいたします。  わが国は戦後、自由と民主主義、自由貿易をわが国基本方針として選択をいたしまして、西側陣営の一員として、米国との関係わが国外交の基軸としてまいりました。しかるに、最近この基軸である日米関係がかなり厳しい局面に立ち至っているのではないかと思うのであります。  米国内には、米国がみずから経済、財政上の困難に直面しているにもかかわらず自由陣営防護努力を行っているのに対して、西側諸国は十分な努力を行っていないという不満があり、わが国防衛努力に対する取り組み方に厳しい目を向けていると聞いております。また、経済面についても、米国経済の回復のおくれ、高い失業率を背景として、日本市場は閉鎖的であるなどとして対日不満が高まっており、まさに先般の米国の中間選挙戦においてもそのような声が多く聞かれたところであります。  もちろん、米国の不満がすべて理屈のあるものと考えているわけではありませんが、わが国にとっての日米関係の重要性を考えれば、新内閣としてこの問題は緊急にして最重点の問題であるということは論をまたないと思います。総理としては本問題にどのように取り組むおつもりか、その所信をお承りいたしたいと存ずるのであります。  また、日米関係を見ていく際に、いま述べたような防衛、経済といった摩擦の側面にのみ両国国民世論、産業界、言論界の関心が注がれがちの傾向がありますが、日米関係というのはもっと幅広い分野にわたるものであり、これを全般的な見地から検討していくということが今後の一層緊密な関係を築き上げていく上で重要であると考えます。明年一月中旬には総理が訪米されるようでありますが、どのような方針でお臨みになるのか、総理のお考えをお伺いいたしたいと思うのであります。  次は、経済摩擦の問題であります。  現在、日米間と日欧間に深刻な経済摩擦が生じていることは周知のとおりであります。牛肉、オレンジの完全自由化という米国の要求は依然として根強く、加えて米国は農水産物を中心とする多数の品目の関税引き下げを求めております。欧州諸国もわが国の市場開放にいまだ不満を表明し、他方、フランスのポワチエにおけるビデオテープレコーダーの通関手続といった事実上の輸入制限の例も見られるのであります。  わが国としては、農産物の輸入自由化等受け入れがたきものは明白に断るのは当然でありますが、譲るべきものは譲り、世界貿易が保護主義的傾向に走らないよう全力を尽くすと同時に、産業協力、先端技術協力などを推進して事態の打開を図り、経済摩擦がわが国西側諸国との友好関係の阻害要因にならないように配慮をしていかなければならないと思うのであります。また、西欧諸国が米国に比し、わが国にとって依然遠い国である現況にかんがみまして、これら諸国とのコミュニケーションギャップの克服に一層意を用いるべきであると思うのであります。経済摩擦に対する総理のお考えを承りたいと存じます。  次に、中ソ関係についてお伺いいたします。  最近の中ソ両国間には種々の動きが見られております。先般北京におきまして約三年ぶりに次官レベルでの会談が再開され、また、故ブレジネフ書記長の葬儀に際しては、中国側から黄華外相が出席されまして、グロムイコ・ソ連外相との会談を行っておられます。このような動きを見ておりますと、中ソ間で何か具体的な話し合いが行われているのではないかという印象を受けます。また、貿易、文化交流等実務関係についても拡大の傾向が見られるのであります。  このような状況を踏まえまして、私は総理の現下の中ソ関係に対する基本的認識をお伺いいたしますと同時に、今後のいわゆる中ソ接近の見通しについての御意見を承りたいと存ずるのであります。  さらに、中ソ関係の動向は、わが国の安全保障を含む極東情勢にも影響を与え得るものと考えられますが、わが国としていかに対処すべきか、その点につきまして総理及び外務大臣のお考えをお尋ねいたします。  次に、防衛問題についてお伺いをいたします。  わが国が、かくも世界のGNPの一割を占めるという経済大国となることができました大きな理由一つは、第二次大戦後、アメリカとの間の安全保障条約によってわが国の安全と平和が脅かされることなく、その持てる力を経済復興に、また国家建設に専念することができたからであります。それは、往時の米国の力によって支えられた国際環境によるものであります。しかしながら、これまで世界に君臨していた米国の軍事、経済上の地位が低下いたしました今日、その変わりつつある立場、環境、これを十分に理解して、自国の安全保障について国民的コンセンサスを得ながら自衛力の整備充実を図る必要があります。  目を転じて、わが国周辺の極東におけるソ連軍事基地では、長距離爆撃機バックファイア、中距離核ミサイルSS20、大型航空母艦ミンスクが配備されており、われわれに対して強い潜在的脅威を与えております。過日も戦域核搭載可能なバックファイア十一機が石川県輪島沖まで飛来しておりまして、自衛隊機による緊急発進数は年ごとに増加をたどっております。昨年度は実に約千回を数うるに至っております。  われわれは、この現実的な事実をただ潜在的な脅威として受けとめるのではなくて、相手がその気になれば、いつでも侵略が可能であるという認識で問題をとらえるべきであると考えます。いまこそわれわれは、この国際的な軍事情勢を分析して、西側の一員としての責務と自国の平和と安全のための自主的努力を全うすべきだと考えるのであります。  マイナスシーリングの財政再建下ではありますが、総理防衛力整備についてどのような基本姿勢をおとりになるのか、お伺いいたしますとともに、デタント時代の限定的な小規模侵略に対応して策定された防衛大綱はこの際見直すべきだと思いますが、あわせて御答弁をお願いいたします。  次に、行政改革についてお伺いをいたします。  私は、今回の党総裁予備選挙総理が圧倒的支持を得られた大きな原因の一つは、行政改革をやり遂げてほしいという国民大多数の声を、党員、党友が率直に反映させたことにあると思います。行政改革の推進こそ政治主導でやらなければならない最大の課題であり、国民の盛り上がる強い声にこたえるときは、いまをおいてないのではありませんか。これを果たすことは自由民主党の責任であると思います。  特にこの際申し述べたいことは、あらゆる役職をお断りになり、八十六歳という高齢にむちうち行革に取り組んでおられる土光会長を初め、臨調委員各位のこれまでの昼夜兼行の御苦労には謝意を表したいのであります。  臨調ではこれまで三次にわたる答申を出され、いよいよ来年三月に向かって中央省庁、地方出先機関、特殊法人などの再編整理について最終取りまとめ作業に入っているわけでありますが、まず臨調答申実行する決意を承っておきたいと存じます。総理の申されている鈴木政治の継承とは臨調答申を最大限尊重して実行することであり、総理として改めて政治生命をかけるという強い姿勢であると受け取ってよいのか、確認しておきたいと存じます。  最終答申の審議テーマがいよいよ各省庁の行政権益や機構の核心に触れてまいりますにつれて、国民行革の理念を忘れて、一部官僚の中には不協和音が目立つどころか、公然たる反抗を示しているようでもありますが、このような形で行政改革が挫折することがありとすれば、国民政治に対する信頼は失墜するばかりか、新しい時代への脱皮は不可能と思うのでありますが、総理はこの点どう受けとめておられるのか、お伺いいたしたいと存じます。  次に、人事院勧告の問題でありますが、危機的な財政事情及び五%未満の勧告ということで本年度は見送るということが閣議で決定されております。しかしながら、恩給、年金受給者には定期昇給という制度がないために別途配慮があってしかるべきだという意見がございますが、御見解を承りたいと存じます。  いま、行政改革に対する国民的期待の高いこのときを外しては、二十一世紀まで二度とこのような機会は到来しないと存じます。どうか中曽根総理には、国家百年の大計であるこの国民的課題の解決のために勇をふるって対処していただきたいと存じます。  次に、経済問題についてお伺いをいたします。  本年に入れば景気はよくなるだろうと思っていたのでありますが、アメリカの高金利による円安も加わって、個人消費は伸び悩みました。また、中小企業の設備投資はふるわず、輸出は減少ぎみ、雇用情勢は厳しく、景気は総じて足踏み、低迷が続いております。五十六年度の経済成長率は二・八%となったほか、本年度の見通しも五・二%から三・四%へと下方修正をしなければならない状況となっております。この結果、国民は経済の前途に強い不安を抱いております。このような先行き不安を払拭することが重要で、そのためには景気回復のための環境づくりを積極的に行うことが必要であります。  政府では、今年度上半期に公共事業の七七%以上を前倒しして発注し、下半期には総事業費二兆七百億円の公共投資を中心とする総合経済対策を講ずることとしておられます。すでに一部は実施に移しておられるところでありますが、総合経済対策の柱は災害復旧等の公共事業でありまして、そのためには補正予算の早期成立が何より必要であります。  補正予算の成立による財政措置の速やかな実施により、在庫調整が進み、近き将来この効果が実体経済面に顕著にあらわれてくることと思うのでありますが、政府景気の現状をどう見ておられるのか。また、民間研究機関では本年度の経済成長率見通しは三%を下回っておりますが、経済見通しについて経済企画庁長官より見解を承りたいのであります。  また、年初以来円安化を招いているアメリカの高金利も最近低下して、為替レートは一転強含みに推移しております。日本の金融政策を縛ってきた条件が変わった今日、政府景気対策の環境づくりを進める意味で、この際、機に応じた積極的な金融政策を期待いたすものであり、特に中小企業に対する年末金融につきましては格段の配慮をお願いしたいのでありますが、政府のお考えをお伺いしたいのであります。  次に、経済問題に関連して雇用問題についてお伺いをいたします。  二度にわたるオイルショックとこれに伴う不況の長期化によって、遺憾ながら労働力の過剰、失業の増大といった事態を招いております。今後もこれまでのような低成長が続けば、企業活動の低迷、企業の雇用抑制の態度はますます強まり、単に残業時間の削減、採用の抑制にとどまらず、一層強い雇用調整策が実施されることが懸念されます。このためには、雇用の安定が確保されるよう適正な経済の運営を図ることが緊要であるとともに、業種や労働者の実態に応じ機動的な手厚い雇用対策を実施していくことが重要と考えますが、政府は雇用の現状と見通し及びこれらに応じた対策についてどのように考えているか、お伺いをいたしたいと存じます。  次に、新しい経済計画についてお伺いをいたします。  五十四年度から六十年度までの現行新経済社会七カ年計画は、これまで三回のフォローアップによりまして部分見直しが行われておりますが、その後の内外情勢の変化により、計画策定時に想定いたしました条件、指標等は実績と大きく乖離しておることにより、このたび抜本的見直しを行うことで現在経済審議会へ諮問中であります。  計画期間中の経済成長率の平均伸び率五・一%が、すでにこれをかなり下回っていることでわかるように、激動の時代における予測はむずかしいとは存じますけれども、少なくとも経済の基本計画としての権威を確立するためにも、現実性を持った具体的な制度、政策、また手法を盛り込んだものとすべきと考えるのであります。新しい経済計画の構想をどう描いているのか、また経済成長率の見込み及び財政再建のための新しい財政展望をどう考えているのか、お示し願いたいのであります。  次に、財政問題について伺います。  わが国は、第一次石油ショック後の景気低迷を反映して財政は巨額の歳入欠陥を生じ、その結果、五十年度以降、財政が犠牲になって経済を救うといういわゆる公債依存財政を積極的に導入してきたところであります。しかしながら、昨年来より引き続く景気の低迷は巨額の税収不足を来し、五十九年度に赤字公債より脱却するという当初目標の財政再建の柱が大きく揺らぐ状況になっております。  すなわち、五十七年度も六兆千五百億円の不足が予想されておりますほか、五十八年度も財政計画に比し八兆円の税収不足とも言われておりまして、きわめて厳しい財政事情となることは明らかであります。これではいかに歳出抑制を行い経費の節減を図っても、財政の中期展望による五十九年度赤字公債の脱却は困難となっておりまして、二、三年先に繰り延べせざるを得ないと考えるのでありますが、これに関しての政府の認識と対応をお示し願いたいと存じます。  さて、国債の累積残高が百兆円の大台に乗るのは時間の問題と言われております。利払い、償還費の国債費は昭和六十五年度には国の歳出予算の三〇%近くになることが予想されており、このままではやがては国家財政の破綻は必定でありましょう。その意味からも財政の再建は急務であり、そのための現実的対応は増税しかないという意見がありますが、一方で行政改革を行いながら、片方で歳出削減、歳出構造に手をつけずに安易に増税に頼ることはもってのほかでありまして、増税なき財政再建基本姿勢は断じて崩すべきでないと考えるのであります。いかがでございましょうか。  何と申しましても財政再建のかぎは、高度成長時代につくられた歳出構造を低成長時代税収に対応して徹底的に見直すことが先決であります。確かに、日本政治的風土の中で既定の経費をカットすることは大変な反撃をこうむり、現実的に困難と存じますが、増税を行う前にまず歳出削減に大なたをふるうべきであると考えますが、これについての政府見解をお伺いしたいと存じます。  わが国の税体系は、経済動向や景気変動に直ちに影響を受ける所得税や法人税を中心とする直接税にウエートが置かれ過ぎております。今回の歳入欠陥の主なるものが景気低迷による法人税の減収によるものだけに、経済の好不況の影響を直接受けない長期に安定した税源の確保が必要であろうと存じます。その意味で、現行七対三の直間比率はこの際改め、臨調答申の方策により間接税による増収を図るべきだと考えますが、いかがでありましょうか、所見をお伺いしたいと存じます。  次は、減税問題であります。  かねてより国民的課題となりておりました減税問題につきましては、五十二年度以降所得税の減税が行われなかったことによる実質可処分所得の二年連続減少もあって、われわれとしても税の累進構造及び税負担の軽減の見地から、この際低所得者に対する減税が必要と思うのであります。ただ、財政再建下の減税でありますので、財源については、衆議院減税小委員会の報告どおり、赤字国債によるべきではないと思うのでありますが、減税についての政府見解をお伺いをいたします。  最後に、災害対策についてお伺いをいたします。  わが国土は、本来的に災害に対して脆弱な構造を有しているため、例年災害によりとうとい人命と莫大な財産を失っていることはきわめて遺憾であります。ことしも長崎豪雨を初めとして多くの台風災害により、昭和三十四年の伊勢湾台風以来の大惨事を招きました。不幸にして亡くなられた方及び行方不明の方は五百七十五名、また公共土木及び農林水産施設の被害額は実に一兆五千億に達するに至っております。  わが党としては、災害発生後、対策本部を設置し、政府と連携のもと、災害復旧の促進を図っているところでありますが、復旧に当たって再度災害を受けないよう改良復旧を図る必要があります。今回の補正予算による災害対策費の計上により復旧事業の進捗はどの程度になるのか、また改良復旧促進のお考えについてお伺いをいたしたいと存じます。  申すまでもなく、防災の基本は事前対策が重要であります。そのためには、治山治水事業を初めとする国土保全事業の推進、災害に強い都市づくりを計画的に行うことが大切でありますが、政府としての防災対策基本的姿勢をお伺いいたしたいと存じます。  終わりに、いまわれわれは一九八〇年代へと大きく歩を踏み出しております。やがて迎える新世代が平和にして繁栄、活力ある社会であるためには、この八〇年代の十年間の基盤づくり、国づくりがきわめて大切であります。このためには、当面する行政の改革、財政の再建、政治倫理確立は、われわれが乗り越えねばならぬ重要課題であります。中曽根総理におかれましては、わが国の確かな未来の創造のためには、国民にはたとえ不人気で言いにくいことであっても、国民に真実を語り、謙虚に意見を聞き、苦しみをともに分かち合い、果敢な決断のもとに信念を持って国政を担当されんことを希望いたしまして、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手
  22. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 上田議員にお答え申し上げます。  私の組閣に当たっての決意を御質問でございますが、時局は内外ともきわめて重大でございます。この難局を乗り切るためには、いわゆる派閥均衡の人事や、あるいは順送り人事ではとても乗り切れません。そういう意味におきまして、今回は、派閥を超えて仕事本位に徹しまして人材を選んで、強力な実行内閣をつくった考え方でございます。どうぞ全党的な御支援をお願い申し上げ、各党各派の御協力もお願い申し上げる次第でございます。  また、いろいろ諸種の御批判がございますけれども、それは厳粛に私の戒めとして考えさせていただくと同時に、今後の実行の中でこれに対してお答え申し上げていく考え方でございます。  さて、私の政治基本姿勢でございますが、所信表明におきまして申し上げましたとおり、内外における平和の維持と民主主義の健全な発展を図り、その基礎の上にたくましい文化福祉の国をつくるということでございます。いま御質問になりました、中産階層の充実した国をつくるということも全く同感でございます。さらに、家庭を大切にする政治ということも申し上げておるところでございます。このために、開かれた政治、わかりやすい政治国民に密着した政治を心がけまして、国民の御信頼を得るように努力いたしたいと思います。  政治倫理の問題でございますが、御指摘のとおり、政治倫理確立政治に携わる者のすべてが常時厳しく自戒すべきことであると考えております。  また、日米関係に対する考え方でございますが、日米安保体制あるいは日米貿易関係、あるいは日米文化その他諸般の関係等を踏まえまして、日米関係を非常に大事にしてまいりたいと考えておるものでございます。この日米関係を基軸にして、そして自由世界と連帯を緊密に行いながら諸般の外交を展開していくというのが基本姿勢でございます。現在の日米関係におきましては、経済や防衛の問題について幾つかの問題があることは事実でございます。しかし、これらの問題もお互いに隔意なき懇談を行い、あるいは討議を行いまして、そして相互信頼の精神に立ってこれを着実に解決してまいりたいと考えております。  一月に予定されておりまする訪米につきまして御質問がございましたが、世界情勢あるいは二国間の問題等につきまして率直に話し合いまして、懸案を解決する努力を継続していくと同時に、日米相互の信頼関係をさらに強化していくということに努めたいと思っております。  経済摩擦の問題につきましては、近来、世界経済の停滞等を背景といたしまして欧米諸国を中心に保護貿易主義の高まり等が盛んになってまいりまして、また、わが国に対しましては一連の市場開放の要求が強まってきております。自由貿易秩序を維持するということはわが国の重大な国策でございまして、保護貿易主義の台頭を阻止するということは、私たちが懸命にこれから努力し、いま努力もしておるところでございます。このためには、世界経済の再活性化を図るべく一層の市場開放をわが国としても進め、貿易の拡大均衡に努める一方、内需中心の経済成長を進めていくことが重要であると考えます。  昨年来、一連の市場開放政策を決定いたしまして、関税率の引き下げ、あるいは輸入検査手続等の改善、あるいはそのほか先進各国とも協力いたしまして産業協力や先端技術協力も推進しておるところであり、さらに十月には総合経済対策を決定して、現在これを進めておる状態でございます。今後、内外両面にわたるこれらの対策の着実な実施に努めるとともに、対外経済摩擦の解消に向けてさらに一層の努力を行いたいと思っております。  中ソ関係について御質問がございましたが、最近、中ソ会談の進展等で、皆さん及び全世界が非常に関心を集めておる問題であることは承知しております。しかし、基本的にはさほどの変化はないと考えております。中国側がソ連側に要求しておりますものの中に三つの大きな問題がございます。三つの障害の除去と称して会談しておるようでございますが、アフガニスタンからの撤兵、カンボジア問題の解決、それから中ソ国境にわたる膨大なソ連軍の撤兵、これを基本的な要求として掲げております。これらの状況を見ますと、急にさほどの変化が起こるとは考えられないのでございます。しかし、ソ連に新しい体制が出てまいりまして、どのような対策政策に出てくるか、これは深甚の関心を持って見守ってまいる次第でございます。  次に、防衛力整備の問題について御質問がございました。  わが国は、国際社会の責任ある一員といたしまして、日米安保体制を堅持し、自衛のため必要最小限度において質の高い防衛力整備するというのが基本方針でございます。現状では防衛計画の大綱に定めておりまする防衛力の水準をできるだけ早期に達成するということが目標でございます。現在、防衛計画の大綱の改正は考えておりません。  行政改革はまた、わが国の将来に明るい展望を開くために不可欠のものでございます。行政改革をややもすると後ろ向きの改革と考える向きがございますが、必ずしもそうではございません。過去のひずみを直すという面もございますが、未来にわたって新しい政府あり方行政あり方時代の変化に適合する機動的な体制をいかにつくっていくかという点も重大な要点でございます。現内閣は、前内閣以来の方針を継承発展させまして、国政上最重要の課題の一つとしてこれを位置づけ、臨時行政調査会の答申を最大限に尊重するという基本方針のもとに、諸改革の責任ある実行に努めてまいるつもりでおります。  いまや行革は、各党、国民の御理解、協力とあわせて、政府部内が一体となって実現していく段階になっております。政府部内の意識統一といたしましては、すでに九月二十四日閣議決定されました行革大綱がございます。加えて、新内閣発足に当たりましては、特に各閣僚に私から指示いたしまして、行革の推進について全面的協力を求めた次第でございます。  公務員の給与、年金、恩給等の御質問がございました。  公務員の給与改定の見送りは、まことに残念な措置でございますが、厳しい財政状況のもとで異例の措置としてお考えおき願いたいと思います。恩給、年金受給者は、退職するまでは毎年定昇で昇給していったわけでございますが、退職後は昇給という制度はないわけでございます。したがいまして、退職後に定昇分、当然その給与が上がるということは考えられないものであると思います。  金融につきまして御質問がございました。  金融政策の運営につきましては、従来同様、景気や金融の動向のほか、内外金利関係、外国為替相場の状況等を慎重に見守りながら、引き続き適切かつ機動的に対処していく必要がございます。  年末中小企業金融対策につきましては、さきの総合経済対策に盛り込みました所要の対策を推進してまいります。なお、政府中小企業金融三機関の年末貸付資金枠といたしまして約二兆円を確保して、信用補完制度等をあわせて一層の配慮をしてまいりたいと思っております。  雇用の情勢は、労働力の需給の緩和、失業の増加等で厳しい状況に次第になりつつあると思います。政府は、内需を中心とした景気の着実な回復と雇用の安定を確保するために、先般、公共投資等の推進による内需の拡大、不況産業対策雇用対策を柱とする総合経済対策を決定いたしました。特に、雇用対策といたしましては、不況業種や不況地域における雇用安定対策、新規学卒者対策等も強化することといたしております。  今後は、これらの対策の効果の浸透により、雇用失業情勢の一層の悪化の回避及び緩やかな改善を期待してまいりたいと思います。今後とも内外の経済動向を注視しつつ、適切かつ機動的な経済運営及び業種や地域の動向、労働者の実態に即応した雇用対策の推進に努めてまいります。  財政再建について御質問がございましたが、財政再建は緊要な課題であり、前内閣におきましていろいろ御施策がございましたが、五十九年度に特例公債依存の体質から脱却することを目標にやってまいりましたが、この五十九年度特例公債脱却ということは現実的にはきわめて困難になってきていると考えております。  今後の財政再建の進め方につきましては、まず五十八年度予算を厳しい歳出削減を中心に編成するとともに、この予算編成をも踏まえて今後慎重に財政再建の方策について考えてまいりたいと思います。  増税なき財政再建、この基本原則は守ってまいるつもりであります。基本線を維持すると前から言っておるところでございます。安易に増税を念頭に置くことなく、まず行政の簡素効率化、制度、施策の見直し、合理化に努力してまいります。このため、五十八年度予算におきましてはいわゆる一般歳出を前年度同額まで圧縮する意気込みで努力したいと考えております。  減税問題につきましては、ただいま衆議院大蔵委員会の小委員会におきまして検討しておりまして、与野党合意の結論が得られますならばこれを尊重してまいりたいと思います。ただ、減税財源を赤字国債によるべきでないという小委員会の中間報告には同感であります。  災害対策について御質問がございましたが、国土及び国民の生命、身体、財産を災害から守って国民生活の安全性を高めることは国政の基本でございます。私は過般の予備選中に、安心、安全、安定ということを申し上げましたが、この安全の中には地震や災害に対する被害から国民を守るという考え方が基本にあったのでございます。このため、治山治水事業を初めとする国土保全事業の推進、都市の防災性の向上、防災組織体制の確立、防災に対する科学技術の研究の推進などに重点を置いて、施策の計画的な推進に一層努力いたしたいと思います。  自余の御質問関係閣僚から答弁していただきます。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 上田議員から最近の中ソ関係情勢について御質問がございました。すでに総理から答弁をいたしておるわけでありますが、私からも関連してお答えを申し上げます。  中ソ両国間には、お話がございましたように、両国外務次官の対話の再開、さらには故ブレジネフ書記長の葬儀に際しての中ソ外相会談など新しい動きが見られ、加えて貿易、文化交流等実務関係も維持拡大されていくことも予想されるわけでございます。もっとも、両国間には依然として基本的な立場の相違もあるわけでございまして、形はともかくも、実質では直ちに関係が大幅に進展するとは見ておりません。  いずれにいたしましても、わが国といたしましては、中ソ関係の動向いかんはわが国を含む極東情勢に影響を与え得るところがありますので、両国の意図を的確に把握すべく努めるとともに、冷静かつ慎重にその推移を見守ってまいりたいと存じております。(拍手)    〔国務大臣塩崎潤君登壇、拍手
  24. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 経済問題に関します上田議員の御質問にお答え申し上げたいと思います。  まず第一は、わが国の経済の現状と、ここ当面の経済見通しをどのように考えるかという問題でございます。  まず、わが国の経済の現状は一言で申せばなお足踏み的状態にある、このように言えるかと思うのでございます。確かに、中小企業の設備投資、輸出、雇用の面等に伸び悩みや大変厳しいものがあることは御案内のとおりでございます。しかし一面、個人消費は回復しつつあるように見えますし、さらにまた大企業の設備投資は底がたく見えるのでございます。住宅着工はこのところやや増加しているような状態でございます。この点も事実でございます。このような当面の厳しい情勢でございますから、これからの経済見通しは楽観を許さないことはもちろんでございますし、私どもは厳しく受けとめてまいりたいと思います。  また、本年度の経済見通しにつきましても、いろいろの見方があることは御案内のとおりでございます。しかしながら、私どもは先般修正されました三・四%の成長率は達成可能と考え、全力を挙げてその実現を図りたいと考えているところでございます。特に、去る十月八日、厳しい財政事情という限られた選択の幅の中で政府が決定いたしました二兆七百億円余の公共投資を中心といたしますところの総合経済対策は、この達成に大きく寄与するものと考えるものでございます。このような意味から、補正予算の早期成立を心からお願い申し上げたいと思います。  さらに、最近におきますところのアメリカの金利の低下、円高の傾向、そしてわが国におきますところの長期金利の低下の動きは、将来にわたって明るい見通しを与えるものと考えまして、私どもはこの点を政策的に活用、推進したいと考えるものでございます。  なお、お気づきのように、民間の経済見通し政府見通しよりはるかに低いではないか、こういう御指摘がございました。しかしながら、政府のつくります経済見通しと民間のそれとは、その性格あるいはねらいが異なっておりますし、その前提となりますところの条件、たとえば円レートあるいは政策手段等に差異がございますので、単純な計数の比較は困難と考えるのでございます。  最後は、新しい経済五カ年計画の問題でございます。  現在、経済審議会におきまして鋭意御検討を煩わしているところでございます。いま御指摘のように、最近の厳しい経済情勢あるいは財政事情を十分に勘案いたしまして、現実を重視した新計画をつくってまいりたいと考えているところでございます。計画の構想につきましては、国際経済摩擦の解消を図って、自由貿易体制を維持することを基本として、世界経済の発展に積極的に貢献する、このような点を中心といたしまして新しい計画を適切につくってまいりたいと思います。  なお、お尋ねの経済成長率の見通しでございます。この点につきましては現在検討中でございますが、政府の経済計画策定の趣旨に基づきまして、最近の経済情勢を十分に加味しながら、実現可能で、かつ望ましい姿を明らかにするような見通しを慎重に検討してまいりたいと思っております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手
  25. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問にお答えをいたします。  ただいま新経済計画の問題については経済企画庁長官から詳しく御答弁がありました。これに関連する財政再建のための新しい財政運営、こういうことにつきましては、新経済計画というものが財政再建には重要な課題となる、こういう考え方でその策定につきましては十分な検討が必要であると、このように考えております。  次は、いわゆる直間比率の見直し等の問題についての御質問でありました。  臨調答申は、「中長期的観点に立って」、そして「現行の直接税、間接税の比率等税制上問題のある重要課題につき検討すべきである。」と、こうお述べになっております。そうして税制調査会の中期答申、これもわが国の間接税のあり方につきまして、わが国の間接税の負担割合が主要諸外国に比して低く、しかも長期的に低下傾向をたどっているのはバランスのとれた税体系の観点から問題がある、今後、財政に対応して安定的な税収を確保するという見地から必ずしも適当でない、今後は個別品目に対する課税だけでなく、課税ベースの広い間接税についても検討していくことが必要である等の指摘が行われておるわけであります。  大蔵省といたしましては、臨調答申も税調答申に述べられた中長期的な税制のあり方の検討の方向に沿ったものと受けとめておりますが、いずれにいたしましても、この問題は国民の合意と選択の問題、このような考え方でとらまえまして、今後十分各方面の意見を聞いてまいりたい、このように考えております。(拍手)    〔国務大臣加藤六月君登壇、拍手
  26. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 私に対する御質問に対してお答え申し上げます。  本年は、災害により大きな被害を受け、すでに五百名に上る死者、行方不明者が出ており、特に七月の長崎豪雨災害では二百九十九名の犠牲者を出しました。この長崎豪雨を初め、台風第十号、十三号、十八号などの災害による被害額は、すでに一兆七千億円に達せんとしており、史上最大の規模となっております。  政府としましても、非常災害対策本部を設置し、応急対策に万全を期してきたところであります。国民の生命、財産を再度の災害から守り、国民生活の安定を図るためには被災施設の早期復旧が急務でありますので、補正予算において五千二百二十二億円の災害復旧費を追加計上したところであり、一日も早い成立を希望するものでございます。これにより、ことし発生した災害に係る公共土木施設、農林水産業施設については、既定予算及び予備費の措置を含め、今年度中においておおむね七〇%の進捗を確保することができました。  また、施設の復旧に当たっては、災害復旧事業とあわせ災害関連事業、災害助成事業を実施し、施設の強化等の改良復旧を推進しているところでありますが、今後とも災害の未然防止のため復旧事業の実施には十分配慮してまいる所存でございます。  次に、総理がすでにお答えになったところでありますが、わが国は地理的、気象的条件により、台風、豪雨、地震等に見舞われることが多く、また、近年における社会経済活動の発展により国土の高密度な利用が進んだことから、災害が発生した場合には大きな被害を受けやすくなっております。国土及び国民の生命、身体、財産を災害から守り、国民生活の安全性を高めることは国政の基本であり、その責務はますます増大しているものと考えます。  政府としましては、この責務を果たすため、総合的かつ長期的視点に立って防災対策の一層の推進を計画的に図っていくことといたしています。このため、治山治水事業を初めとする国土保全事業の推進、建築物の耐震不燃化、防災施設の整備等の都市構造の防災化、地震予知等の科学技術研究の推進、災害予警報の迅速かつ的確な伝達等の防災組織体制の確立などの事前対策を重点課題として、災害の未然防止に取り組んでいきたいと考えておるところでございます。  以上お答え申し上げます。(拍手
  27. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十七分散会