○上田稔君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表いたしまして、
総理の
所信表明並びに当面する内外の重要課題について、中曽根
総理ほか
関係閣僚に若干の
質問をいたすものであります。
今回の
中曽根内閣の組閣名簿を拝見いたしますと、これまでの党内派閥均衡による選任の殻を破って、全党的立場から広く人材を選び、
大臣を任命しておられると思うのであります。私は、その人物とポストを吟味すればするほど実によく検討され、適材を適所に登用しておられまして感服をいたすものであります。そこには中曽根
総理の強い信念が貫かれており、かかる
内閣によってこそ今日の重大な危機を突破できるものと確信いたします。
〔
議長退席、副
議長着席〕
私は、新
総理の手腕に絶大の期待を持つものでありますが、
総理は今回の組閣に当たってどのような決意でこれを行ったのか、忌憚のない
所見をお
伺いいたしたいと存ずるのでございます。
さて、今日、
日本を取り巻く内外
情勢がこれほど厳しいときはかつてありません。このきわめて困難なときに
総理は
政権を担当することになられたのであります。新
総理は若いときから首相公選論を発表されて全国を飛び回られたように、絶えず新しい発想によるアイデアをお持ちで、バイタリティーと弁舌に富み、
国民に人気のある大衆
政治家であります。このたび選ばれて国政を担当するからには、この激動と模索の八〇年代のかじ取りに当たっては、挙党一致、政局の安定のもと、あらゆる機会をとらえて国政の展望をわかりやすく
国民に語り、意思の疎通を図ることが
政治に対する協力と信頼につながり、開かれた
政治と
考えるものであります。
申すまでもなく、
政治は創意と指導性をもって
国民に未来を開く戦略を示し、前進するものと
考えます。
総理はこの変動と危機の
時代にいかなる
基本姿勢で
政治に取り組むのか
伺いますとともに、
総理はかつて中産階層国家論をお唱えになられたことがありますが、現在
わが国が進むべき国家目標をいかに
考えておられるか、あわせてお示しを願いたいと存じます。
今日が試練の
時代であればあるほど、これを乗り切るには
政治に対する
国民の信頼の回復がきわめて大事であります。それだけに、
政治に対する
国民の心を取り戻し、
国民とともに歩む
政治を行うためには、
政治倫理を
確立して誠実な
政治を断行することが、新しい
政治の展開に当たっての為政者の責務であると
考えるのでありますが、
総理の御
所見を求めたいのであります。
次は、外交問題でありますが、まず今後の
日米関係についてお
伺いをいたします。
わが国は戦後、自由と
民主主義、自由貿易を
わが国の
基本方針として選択をいたしまして、西側陣営の
一員として、米国との
関係を
わが国外交の基軸としてまいりました。しかるに、最近この基軸である
日米関係がかなり厳しい局面に立ち至っているのではないかと思うのであります。
米
国内には、米国がみずから経済、財政上の困難に直面しているにもかかわらず自由陣営防護努力を行っているのに対して、
西側諸国は十分な努力を行っていないという不満があり、
わが国の
防衛努力に対する取り組み方に厳しい目を向けていると聞いております。また、経済面についても、米国経済の回復のおくれ、高い
失業率を背景として、
日本市場は閉鎖的であるなどとして対日不満が高まっており、まさに先般の米国の中間
選挙戦においてもそのような声が多く聞かれたところであります。
もちろん、米国の不満がすべて理屈のあるものと
考えているわけではありませんが、
わが国にとっての
日米関係の重要性を
考えれば、新
内閣としてこの問題は緊急にして最重点の問題であるということは論をまたないと思います。
総理としては本問題にどのように取り組むおつもりか、その所信をお承りいたしたいと存ずるのであります。
また、
日米関係を見ていく際に、いま述べたような
防衛、経済といった摩擦の側面にのみ両国
国民世論、産業界、言論界の関心が注がれがちの傾向がありますが、
日米関係というのはもっと幅広い分野にわたるものであり、これを全般的な見地から検討していくということが今後の一層緊密な
関係を築き上げていく上で重要であると
考えます。明年一月中旬には
総理が訪米されるようでありますが、どのような方針でお臨みになるのか、
総理のお
考えをお
伺いいたしたいと思うのであります。
次は、経済摩擦の問題であります。
現在、日米間と日欧間に深刻な経済摩擦が生じていることは周知のとおりであります。牛肉、オレンジの完全自由化という米国の要求は依然として根強く、加えて米国は農水産物を中心とする多数の品目の関税引き下げを求めております。欧州諸国も
わが国の市場開放にいまだ不満を
表明し、他方、フランスのポワチエにおけるビデオテープレコーダーの通関
手続といった事実上の輸入制限の例も見られるのであります。
わが国としては、農産物の輸入自由化等受け入れがたきものは明白に断るのは当然でありますが、譲るべきものは譲り、世界貿易が保護主義的傾向に走らないよう全力を尽くすと同時に、産業協力、先端技術協力などを推進して事態の打開を図り、経済摩擦が
わが国と
西側諸国との
友好関係の阻害要因にならないように配慮をしていかなければならないと思うのであります。また、西欧諸国が米国に比し、
わが国にとって依然遠い国である現況にかんがみまして、これら諸国とのコミュニケーションギャップの克服に一層意を用いるべきであると思うのであります。経済摩擦に対する
総理のお
考えを承りたいと存じます。
次に、中ソ
関係についてお
伺いいたします。
最近の中
ソ両国間には種々の動きが見られております。先般北京におきまして約三年ぶりに次官レベルでの会談が再開され、また、故ブレジネフ書記長の葬儀に際しては、中国側から黄華外相が出席されまして、グロムイコ・ソ連外相との会談を行っておられます。このような動きを見ておりますと、中ソ間で何か具体的な話し合いが行われているのではないかという印象を受けます。また、貿易、
文化交流等実務
関係についても拡大の傾向が見られるのであります。
このような状況を踏まえまして、私は
総理の現下の中ソ
関係に対する
基本的認識をお
伺いいたしますと同時に、今後のいわゆる中ソ接近の
見通しについての御意見を承りたいと存ずるのであります。
さらに、中ソ
関係の動向は、
わが国の安全保障を含む極東
情勢にも影響を与え得るものと
考えられますが、
わが国としていかに対処すべきか、その点につきまして
総理及び外務
大臣のお
考えをお尋ねいたします。
次に、
防衛問題についてお
伺いをいたします。
わが国が、かくも世界のGNPの一割を占めるという経済大国となることができました大きな
理由の
一つは、第二次大戦後、
アメリカとの間の安全保障条約によって
わが国の安全と平和が脅かされることなく、その持てる力を経済復興に、また国家建設に専念することができたからであります。それは、往時の米国の力によって支えられた国際環境によるものであります。しかしながら、これまで世界に君臨していた米国の軍事、経済上の地位が低下いたしました今日、その変わりつつある立場、環境、これを十分に理解して、自国の安全保障について
国民的コンセンサスを得ながら自衛力の
整備充実を図る必要があります。
目を転じて、
わが国周辺の極東におけるソ連軍事基地では、長距離爆撃機バックファイア、中距離核ミサイルSS20、大型航空母艦ミンスクが配備されており、われわれに対して強い潜在的脅威を与えております。過日も戦域核搭載可能なバックファイア十一機が石川県輪島沖まで飛来しておりまして、
自衛隊機による緊急発進数は年ごとに増加をたどっております。昨年度は実に約千回を数うるに至っております。
われわれは、この現実的な事実をただ潜在的な脅威として受けとめるのではなくて、相手がその気になれば、いつでも
侵略が可能であるという認識で問題をとらえるべきであると
考えます。いまこそわれわれは、この国際的な軍事
情勢を分析して、西側の
一員としての責務と自国の平和と安全のための自主的努力を全うすべきだと
考えるのであります。
マイナスシーリングの
財政再建下ではありますが、
総理は
防衛力整備についてどのような
基本姿勢をおとりになるのか、お
伺いいたしますとともに、デタント
時代の限定的な小規模
侵略に対応して策定された
防衛大綱はこの際見直すべきだと思いますが、あわせて御答弁をお願いいたします。
次に、
行政改革についてお
伺いをいたします。
私は、今回の党
総裁予備
選挙で
総理が圧倒的支持を得られた大きな原因の
一つは、
行政改革をやり遂げてほしいという
国民大多数の声を、党員、党友が率直に反映させたことにあると思います。
行政改革の推進こそ
政治主導でやらなければならない最大の課題であり、
国民の盛り上がる強い声にこたえるときは、いまをおいてないのではありませんか。これを果たすことは自由民主党の
責任であると思います。
特にこの際申し述べたいことは、あらゆる役職をお断りになり、八十六歳という高齢にむちうち
行革に取り組んでおられる土光会長を初め、
臨調委員各位のこれまでの昼夜兼行の御苦労には謝意を表したいのであります。
臨調ではこれまで三次にわたる
答申を出され、いよいよ来年三月に向かって中央省庁、地方出先機関、特殊法人などの再編整理について最終取りまとめ作業に入っているわけでありますが、まず
臨調答申を
実行する決意を承っておきたいと存じます。
総理の申されている鈴木
政治の継承とは
臨調答申を最大限尊重して
実行することであり、
総理として改めて
政治生命をかけるという強い姿勢であると受け取ってよいのか、確認しておきたいと存じます。
最終
答申の審議テーマがいよいよ各省庁の行
政権益や機構の核心に触れてまいりますにつれて、
国民行革の理念を忘れて、一部官僚の中には不協和音が目立つどころか、公然たる反抗を示しているようでもありますが、このような形で
行政改革が挫折することがありとすれば、
国民の
政治に対する信頼は失墜するばかりか、新しい
時代への脱皮は不可能と思うのでありますが、
総理はこの点どう受けとめておられるのか、お
伺いいたしたいと存じます。
次に、
人事院勧告の問題でありますが、危機的な財政事情及び五%未満の勧告ということで本年度は見送るということが閣議で決定されております。しかしながら、恩給、年金受給者には定期昇給という制度がないために別途配慮があってしかるべきだという意見がございますが、御
見解を承りたいと存じます。
いま、
行政改革に対する
国民的期待の高いこのときを外しては、二十一世紀まで二度とこのような機会は到来しないと存じます。どうか中曽根
総理には、国家百年の大計であるこの
国民的課題の解決のために勇をふるって対処していただきたいと存じます。
次に、経済問題についてお
伺いをいたします。
本年に入れば
景気はよくなるだろうと思っていたのでありますが、
アメリカの高金利による円安も加わって、個人消費は伸び悩みました。また、
中小企業の設備
投資はふるわず、輸出は減少ぎみ、雇用
情勢は厳しく、
景気は総じて足踏み、低迷が続いております。五十六年度の経済成長率は二・八%となったほか、本年度の
見通しも五・二%から三・四%へと下方修正をしなければならない状況となっております。この結果、
国民は経済の前途に強い不安を抱いております。このような先行き不安を払拭することが重要で、そのためには
景気回復のための環境づくりを積極的に行うことが必要であります。
政府では、今年度上半期に公共事業の七七%以上を前倒しして発注し、下半期には総事業費二兆七百億円の公共
投資を中心とする総合経済
対策を講ずることとしておられます。すでに一部は実施に移しておられるところでありますが、総合経済
対策の柱は災害復旧等の公共事業でありまして、そのためには補正予算の早期成立が何より必要であります。
補正予算の成立による財政
措置の速やかな実施により、在庫調整が進み、近き将来この効果が実体経済面に顕著にあらわれてくることと思うのでありますが、
政府は
景気の現状をどう見ておられるのか。また、民間研究機関では本年度の経済成長率
見通しは三%を下回っておりますが、
経済見通しについて経済企画庁長官より
見解を承りたいのであります。
また、年初以来円安化を招いている
アメリカの高金利も最近低下して、為替レートは一転強含みに推移しております。
日本の金融
政策を縛ってきた条件が変わった今日、
政府は
景気対策の環境づくりを進める意味で、この際、機に応じた積極的な金融
政策を期待いたすものであり、特に
中小企業に対する年末金融につきましては格段の配慮をお願いしたいのでありますが、
政府のお
考えをお
伺いしたいのであります。
次に、経済問題に関連して雇用問題についてお
伺いをいたします。
二度にわたるオイルショックとこれに伴う
不況の長期化によって、遺憾ながら労働力の過剰、失業の増大といった事態を招いております。今後もこれまでのような低成長が続けば、企業活動の低迷、企業の雇用抑制の態度はますます強まり、単に残業時間の
削減、採用の抑制にとどまらず、一層強い雇用調整策が実施されることが懸念されます。このためには、雇用の安定が確保されるよう適正な経済の運営を図ることが緊要であるとともに、業種や労働者の実態に応じ機動的な手厚い
雇用対策を実施していくことが重要と
考えますが、
政府は雇用の現状と
見通し及びこれらに応じた
対策についてどのように
考えているか、お
伺いをいたしたいと存じます。
次に、新しい経済
計画についてお
伺いをいたします。
五十四年度から六十年度までの現行新経済社会七カ年
計画は、これまで三回のフォローアップによりまして部分見直しが行われておりますが、その後の内外
情勢の変化により、
計画策定時に想定いたしました条件、指標等は実績と大きく乖離しておることにより、このたび抜本的見直しを行うことで現在経済審議会へ諮問中であります。
計画期間中の経済成長率の平均伸び率五・一%が、すでにこれをかなり下回っていることでわかるように、激動の
時代における予測はむずかしいとは存じますけれども、少なくとも経済の
基本計画としての権威を
確立するためにも、現実性を持った具体的な制度、
政策、また手法を盛り込んだものとすべきと
考えるのであります。新しい経済
計画の構想をどう描いているのか、また経済成長率の見込み及び
財政再建のための新しい財政展望をどう
考えているのか、お示し願いたいのであります。
次に、財政問題について
伺います。
わが国は、第一次石油ショック後の
景気低迷を反映して財政は巨額の歳入欠陥を生じ、その結果、五十年度以降、財政が
犠牲になって経済を救うといういわゆる公債依存財政を積極的に導入してきたところであります。しかしながら、昨年来より引き続く
景気の低迷は巨額の
税収不足を来し、五十九年度に
赤字公債より脱却するという当初目標の
財政再建の柱が大きく揺らぐ状況になっております。
すなわち、五十七年度も六兆千五百億円の不足が予想されておりますほか、五十八年度も財政
計画に比し八兆円の
税収不足とも言われておりまして、きわめて厳しい財政事情となることは明らかであります。これではいかに歳出抑制を行い経費の節減を図っても、財政の中期展望による五十九年度
赤字公債の脱却は困難となっておりまして、二、三年先に繰り延べせざるを得ないと
考えるのでありますが、これに関しての
政府の認識と対応をお示し願いたいと存じます。
さて、国債の累積残高が百兆円の大台に乗るのは時間の問題と言われております。利払い、償還費の国債費は
昭和六十五年度には国の歳出予算の三〇%近くになることが予想されており、このままではやがては国家財政の
破綻は必定でありましょう。その意味からも財政の再建は急務であり、そのための現実的対応は
増税しかないという意見がありますが、一方で
行政改革を行いながら、片方で
歳出削減、歳出構造に手をつけずに安易に
増税に頼ることはもってのほかでありまして、
増税なき
財政再建の
基本姿勢は断じて崩すべきでないと
考えるのであります。いかがでございましょうか。
何と申しましても
財政再建のかぎは、高度成長
時代につくられた歳出構造を低成長
時代の
税収に対応して徹底的に見直すことが先決であります。確かに、
日本の
政治的風土の中で既定の経費をカットすることは大変な反撃をこうむり、現実的に困難と存じますが、
増税を行う前にまず
歳出削減に大なたをふるうべきであると
考えますが、これについての
政府の
見解をお
伺いしたいと存じます。
わが国の税体系は、経済動向や
景気変動に直ちに影響を受ける所得税や法人税を中心とする直接税にウエートが置かれ過ぎております。今回の歳入欠陥の主なるものが
景気低迷による法人税の減収によるものだけに、経済の好
不況の影響を直接受けない長期に安定した税源の確保が必要であろうと存じます。その意味で、現行七対三の直間比率はこの際改め、
臨調答申の方策により間接税による増収を図るべきだと
考えますが、いかがでありましょうか、
所見をお
伺いしたいと存じます。
次は、減税問題であります。
かねてより
国民的課題となりておりました減税問題につきましては、五十二年度以降所得税の減税が行われなかったことによる実質可処分所得の二年連続減少もあって、われわれとしても税の累進構造及び税負担の軽減の見地から、この際低所得者に対する減税が必要と思うのであります。ただ、
財政再建下の減税でありますので、財源については、衆議院減税小委員会の報告どおり、
赤字国債によるべきではないと思うのでありますが、減税についての
政府の
見解をお
伺いをいたします。
最後に、災害
対策についてお
伺いをいたします。
わが国土は、本来的に災害に対して脆弱な構造を有しているため、例年災害によりとうとい人命と莫大な財産を失っていることはきわめて遺憾であります。ことしも長崎豪雨を初めとして多くの台風災害により、
昭和三十四年の伊勢湾台風以来の大惨事を招きました。不幸にして亡くなられた方及び行方不明の方は五百七十五名、また公共土木及び農林水産施設の被害額は実に一兆五千億に達するに至っております。
わが党としては、災害発生後、
対策本部を設置し、
政府と連携のもと、災害復旧の促進を図っているところでありますが、復旧に当たって再度災害を受けないよう改良復旧を図る必要があります。今回の補正予算による災害
対策費の計上により復旧事業の進捗はどの程度になるのか、また改良復旧促進のお
考えについてお
伺いをいたしたいと存じます。
申すまでもなく、防災の
基本は事前
対策が重要であります。そのためには、治山治水事業を初めとする国土保全事業の推進、災害に強い都市づくりを
計画的に行うことが大切でありますが、
政府としての防災
対策の
基本的姿勢をお
伺いいたしたいと存じます。
終わりに、いまわれわれは一九八〇年代へと大きく歩を踏み出しております。やがて迎える新世代が平和にして繁栄、活力ある社会であるためには、この八〇年代の十年間の基盤づくり、国づくりがきわめて大切であります。このためには、当面する
行政の改革、財政の再建、
政治倫理の
確立は、われわれが乗り越えねばならぬ重要課題であります。中曽根
総理におかれましては、
わが国の確かな未来の創造のためには、
国民にはたとえ不人気で言いにくいことであっても、
国民に真実を語り、謙虚に意見を聞き、苦しみをともに分かち合い、果敢な決断のもとに信念を持って国政を担当されんことを希望いたしまして、私の代表
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君登壇、
拍手〕