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原田(憲)
委員 よくわかりました。
そこで次に、私は政治倫理の問題についてお尋ねしていきたいと思うのでございますが、この問題は実は国会の問題でございますから、
総理大臣に聞くことはどうかと思う点もございますし、議院運営
委員会で議論をされておる問題でございますから、私の
考え方も交えながらお尋ねをしていきたいと思うのでございます。
御承知のように、ロッキード問題については五十一年十二月の第七十九国会から五十四年十二月まで続いた、本院に設けられた航空機輸入に関する調査特別
委員会におきましてすでに一応の決着がつけられ、今日においては司法の判断にゆだねられている問題なので、裁判が進行中なのでございます。私は、こうした状況下にあって、政治家としては三権分立の精神を厳正に守り、裁判所の審理を見守っていくということが大切である、こう
考えておるのでございます。その
立場に立って、現在継続されておる議員辞職勧告決議案、このものについて意見を述べ、お尋ねもしてまいりたいと思うのでございます。
すなわち、国権の最高機関である国
会議員は、厳しい倫理を要求されることは言をまちません。しかし、その身分は、法によって最高権威機関の議員というものは明確にされておるものでございます。憲法第五十五条は、両院は、「議員の資格に關する爭訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、
出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。」五十八条で、両議院は、「その會議その他の手續及び内部の規律に關する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、
出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。」こうございます。これらを受けまして国会法において議員の辞職、退職、
補欠及び資格争訟の規定があり、また懲罰規定も別に定められております。懲罰
委員会も常設されております。
このような議員の資格の中で、いまだ本院においては個人の議員に対する辞職勧告決議なるものは前例がないのでございます。もちろん、院において争訟が行われて懲罰
委員会が開かれて懲罰にかかったというような事例はございます。これは院内の問題でございます。しかし、その場合でも、仮に三分の二以上で除名にされた、こういう方がありましても、この方が選挙によって再び議席を得た、すなわち主権者である
国民の裁判を受けて当選をしてきた、こういう場合には、その人を、再び議席を奪うことができない、このように定めてあるわけであります。
いまの辞職勧告決議というものはそういう手続ではないのですね。だから、道徳的、倫理的な
立場に立って、現在一審を受けた、有罪である、佐藤議員は執行猶予ですか、こういうことであるけれども、そういうことはどうか、こういうことで辞職を勧告をしようというのでございますが、これはまだ刑の定まっておらない人に対するところの辞職勧告でございます。これは一体どういうことか。
これに対して、議院運営
委員会で
参考人を呼んで
審議をされております。それを読ましていただくと、林修三元
内閣法制局長官、それから慶谷淑夫東京工大助教授がそれぞれ、この決議案が可決されたならば、第一番に、法的拘束力はないものの、政治的にまた社会的に圧力は相当強い、第二番目に、憲法、国会法、公職選挙法で議員の身分を奪う要件は厳格に定められている、三番として、その見合いから、相当重大な理由がなければ軽々に議決すべきではない、佐藤議員は控訴中で二審判決は未定である、仮に無罪になった場合、名誉回復の措置が非常にむずかしい、五番目に、辞職勧告決議に従わない場合は国会の権威にかかわるなどの理由を挙げて、決議案を議決することは不適当だ、これは林さんの見解ですね。
それから、すぐれて政治問題であり、
法律問題として論ずるのが適当かどうか、これは疑問だとしながらも、議員が身分を失う場合には憲法や
法律によってきわめて限定されておると指摘して、さらに決議案の議決については、憲法、
法律の趣旨からして妥当かどうか、問題が生じる余地があると助教授さんは述べて、慎重に
審議すべきだと見解を示しておられます。
私は、非常に具体的な事例として、私の大阪の選挙区で、これは二人とも他界されておりますから申し上げたいと思いますが、いわゆる汚職事件の渦中で、一人は
国民の審判を受けて、いわゆる
国民の裁判ですね、そして政界から姿を消したまま再びここにあらわれてくることがなく他界をされました。もう一人は、
国民の審判を受けて堂々当選された。その後、彼が世を去ったときには、社会党推薦の市長さんは、こんなりっぱな人はないというので市葬をもってしたい、こういうことで、これは自民党の代議士でありますから、私どもの自民党府連と一緒になって合同葬を行ったという事実が存在するのでございます。
法によって守られておる人権という上に立っても、みだりに、議席を得ている
国民の代表に政治的に辞職せよと勧告することはどうでありましょうか。刑法は裁判所で、政治裁判は任命者の
国民の手で選挙によるべきだと私は思うのでございますが、このことについても
総理は質問を受けて答弁をなさっておりますが、これも重要なことでございますので、先ほど申し上げましたように、このことは
総理大臣にただすべきことかどうかという点もありますけれども、まあひとつお答えを願いたいと思います。