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伊藤茂君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
昭和五十七
年度における
国債整理基金に充てるべき
資金の繰入れの
特例に関する
法律案について、
総理並びに
関係大臣に質問いたします。
私は、まず
最初に、このような
法案を提出するに至った
政府の
財政政策の行き詰まり、失政の積み重ねの
政治責任を厳しく指摘するものであります。
本
法案は、五十七
年度予算における六兆一千四百六十億に及ぶ
巨額の
歳入欠陥への
対応策の一つとして
提案されております。しかし、昨
年度、本
年度と相次いで発生した
巨額の
財政赤字の
最大の原因は、あなた
方政府ができるはずのない過大な
経済成長率、
税収伸び率をもって
予算を編成したことにあることは明々白々な事実であります。言うならば、みずからつくった
粉飾予算の破綻がここに露呈したのであります。その
政治責任は重大であります。
しかるに、
国会に提出された本
法案の
提案理由には「
財政の困難な
状況等にかんがみ、」とだけ書かれています。さらに、
補正予算案の
説明には、「
世界経済の
停滞等を反映して」
税収が大幅に下回ったのでと書かれています。とんでもないことであります。これでは
政府に
責任の一かけらもないという
態度であります。今
国会における
総理の
発言にも、
鈴木内閣の
主要閣僚として、また現
総理としての
反省と
責任感は見られないのであります。
総理、私はまずあなたに、このような
事態に至らしめた深刻な
反省と真剣な
責任感がおありなのでしょうか、それを伺いたいのであります。明白な事実に基づいた
反省と
責任、そしてこの失敗を絶対に繰り返さないためにどのような
具体策をとる
決意なのか、率直にお答え願いたいのであります。
次に、本
法案に関連する今後の
公債政策について伺います。
本
法案によって骨抜きにされ、崩壊させられようとしている
減債制度は、
昭和四十二年に
制度として法定化されたものでありますが、その前提となった
財政制度審議会の
報告書には、「
公債政策の健全な
運用が重要であり、
国民の
信頼と理解を得るためにこれを
制度として法定化することとし、これによって
公債累増に対する歯どめとなる」と指摘をいたしております。この
制度を停止することは、
公債政策をさらに不健全なものにし、
信頼性と歯どめを失わせ、一層の乱発につながるものになるのではありませんか。
本
法案は、今日の
減債制度を法制化したときのあなた
方自身の
提案や
説明と全く逆のことをやろうとしているのであります。これでは担保も保証もなしに
巨額の借金を続けることになります。こんなことは世間に通用する話ではありません。
総理、今日の
状態は、危機というよりは破局に近づいていると言うべき
状態であります。この
重大時局に当たっての
公債政策の
基本をどう認識され、どうお考えなのか、お答えください。
さらに、
政府の今後の
対応策を見ると、より深刻な
事態に引き込もうとしているのではないかと憂慮せざるを得ないのであります。いま
政府が進めている五十八
年度予算編成の中で、
明年度も
定率繰り入れ措置を停止する
態度であると伝えられ、また、
財政制度審議会の
桜田会長も、
財政再建まで
定率繰り入れ停止はやむを得ないと語っております。
政府は、
特例法の形で提出した本
法案と同様のことを五十八
年度予算でも繰り返すつもりなのでしょうか。さらに、
償還政策の
全面見直しの意図なのでしょうか。
粉飾をやめて
真実を語る
決意があるならば、明確にお答え願いたいのであります。
また、大蔵省の方針として、あるいは
財政制度審議会の方向として、
赤字国債の借りかえを実施する予定であると報道されています。また、
資金運用部保有の
国債の
日銀売却など、事実上の
日銀引き受けも不可避であるとの声も出ております。これらは、戦後一貫して維持されてきた
公債制度の原則が根底から崩されることであり、
財政法の
基本精神を覆すことになりますが、どう考えているのでしょうか。これらについて
大蔵大臣の見解を伺いたいのであります。
次に、
財政再建の方途について伺います。
総理、あなたは、五十九
年度赤字国債脱却の目標は現実的にむずかしくなっており、現在策定中の新
経済五カ年計画と絡めて見直すと表明されています。しかし、その
内容も骨格も何ら明らかにされておりません。いま
国民はその
内容がどうなるのかを注目をしているのであります。
鈴木前
総理は、「
財政非常事態宣言」なるものを発表しました。しかし、
昭和五十九年
赤字国債脱却の公約は完全に行き詰まり、結局は
鈴木総理御
自身の立場の
非常事態宣言に終わったのでありますが、あなたはどういう
決意ですか。
今日まで各界から指摘されてきたのは、当面する
事態の深刻さと同時に、それ以上に見通しが不透明でわからないという点であります。もし、あなたが、濃霧の海に海図も持たないまま船出を強行する
無責任船長のようなものではないというのならば、あなたの考える
基本方向、その大綱、その骨格を示していただきたいと思うのであります。
私がこの点を強調するのは、その方向いかんが
国民生活、
国民経済にとってきわめて重要な影響をもたらすからであります。今日まで
政府は財界主導の臨調路線を推し進め、福祉、文教など
国民生活向け
予算を削減し、逆に
軍事費を大幅に拡大してきました。今回の補正
予算でも、当初
予算に計上していた公務員給与改善費すらも削って、人事院勧告を凍結し、年金や恩給の受給者など約二千八百万人もの人々に犠牲を押しつけようとしています。
財政危機を
最大の理由にして人勧凍結という理不尽な主張をしながら、また大きな犠牲を強要しながら、みずからの
責任である
財政危機打開の計画は何ら明らかでないという無
責任さは断じて容認できないのであります。(
拍手)
総理、あなたはいまどういう柱で
財政再建を進める
決意ですか。目標年次を含め、その計画を一日も早く策定する
責任があると思いますが、いかがですか。
さらに、あなたが
責任者となって、
関係大臣も含め広く
国民の意見を求める特別の仕組みをつくって、あなたが中心となって
責任ある取り組みをすべきではないでしょうか。明確な答弁を求めます。
さらに、私は、
財政再建にかかわる主要な点について見解を伺います。
その第一は、
経済見通しについてであります。今日の破綻の原因が、不確実性の時代を象徴するかのような無
責任な
政府経済見通し、
税収見積もりにあったことは明白であり、いま重要なことは、その過ちを繰り返さない、確度の高い
経済計画を策定することであります。
そういう立場から今日の内外の
経済状況を見た場合、今後の実質成長率、
税収伸び率を的確に推定することが必要であると思います。現在策定作業中の新
経済五カ年計画は
財政再建計画と深いかかわりを持つものでありますが、
経済企画庁長官の見解を伺います。
第二は、税制改革であります。現在の
状況は、税に対する
国民の関心はかつてなく大きく高まっていると同時に、税に対する
国民の不信が大きく渦巻いていることであろうと思います。いま必要なのは、税の不公平を抜本的に是正し、税の公平を
国民的合意となし得るような対策を緊急にとることだと思います。これが重要な前提であります。そのためには、自主的な能力も
信頼感もない現在の
政府税制調査会を改革して、各界各層の意見を十分に吸収し得るような仕組みにするなど、抜本的な対策が必要であると思いますが、いかがでしょうか。
また、
総理は昨日の
予算委員会でも「増税なき
財政再建」の
基本線を守り、いわゆる大型間接税を念頭に置かないと言われておりますが、同じ昨日、大蔵省首脳は、
国会決議で否定されたいわゆる一般消費税以外ならば、大型間接税は可能であると言っています。とんでもない話であります。
政府税調は直間比率の見直しを提起して、新型消費税の検討を表明し、大蔵省からは、直間比率を当面六、四にするのが適当であるとの
発言がなされてきました。これは明白な矛盾であります。直間比率を六、四とするならば、数兆円の間接税の拡大となるのであります。これは一体どういうことでしょうか。
総理、
大蔵大臣の見解を求めます。
また、所得税減税についても、
政府は、大蔵委員会減税特別小委員会の結論を尊重すると繰り返し答えておりますが、余りにもおざなりで、
政府みずからの
責任を回避している
態度と言わなければなりません。
これは本来
政府の
責任であります。税の不公平是正における中心的な問題であります。税制改革の
基本問題として
政府自身がどう認識し、どうするつもりなのかを伺いたいのであります。
大蔵大臣に答弁を求めます。
私は、最後に中曽根
総理に強い要望を込めて伺いたい。
あなたは、
軍事費について、聖域ではないが特別の配慮をしなければならないという
趣旨の答弁をされてきました。そうして間もなく訪米してレーガン大統領と会談しようとしています。その結果、
軍事費負担がさらに大きく押しつけられることを多くの
国民が憂慮をいたしております。
総理、
世界の現状を見てください。米ソ超大国から発展途上国まで、至るところで巨大な
軍事費負担に悩み、
経済危機が広がっているのであります。いま必要なことは、平和共存、軍縮の
経済を積極的にアメリカにもソ連にも
提案して、
世界経済の再活性化に貢献することではないでしょうか。このような国際的な視点が日本の
財政再建にも不可欠になっているのが今日の時代ではないでしょうか。
以上本
法案に関連して質問をいたしました。今日の
事態は日本の
財政史においても例のない重大な局面であります。これに誤りなく対処することを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣中曽根康弘君
登壇〕