○佐々木良作君 私は民社党・
国民連合を代表いたしまして、
総理の
所信表明に対し、若干の
質問を行います。
まず、宿願成って
総理・
総裁の地位につかれた中曽根新
総理に対し、友人として心から祝意を表します。(
拍手)
しかし、
総理、あなたを取り巻く
状況はまことに並み並みならぬものであります。
世界の各国が
日本に向けている目はまことに厳しく、
国民のあなたに向けている目もまた冷たく、怒りの色をさえ帯びております。
総理官邸周辺のデモの声も日一日と大きくなっていることにお気づきでございましょう。その上、多くの同僚が指摘いたしましたように、あなたは、
政治倫理を
中心にいたしまして、新
内閣発足に当たって大きなハンディキャップを背負って登場されました。各社の世論調査が示す新
内閣に対する支持、不支持の率も異例の厳しいものであります。
まず、
総理、あなたは
鈴木さんから
自民党内閣を引き継がれましたが、
鈴木さんは何ゆえに政権を投げ出されたのでありましょうか。賢明な
総理が御承知のとおり、それは
政治的、
政策的行き詰まりの結果であります。
しかし、このことはひとり
鈴木内閣にとどまらず、
自民党政治そのものの行き詰まりと言うべきではありますまいか。(
拍手)
昭和の五十年代に入ってから、すでに五回にわたる
総理の交代が行われております。これは異常とも言える状態であります。
自民党という政権政党の中でどのように
総理・
総裁を取りかえてみてもどうにもならなかったことを如実に物語っているものであります。(
拍手)
先日の
所信表明演説で、
総理の「わかりやすい
政治」から「たくましい文化と
福祉の
国日本」をつくる
政治目標も承りました。しかし、中曽根さん、あなたは三木
内閣の「ライフサイクル構想」、福田
内閣の「静かで落ちついた社会」、大平
内閣の「田園都市構想及び
日本型
福祉社会構想」、特にこの大平
内閣の構想は、いま主張しておられるところの「たくましい文化と
福祉の
国日本」というのと大変似ておるように思いますね。これら、さらにまたは
鈴木内閣の最大の
政治公約「
増税なき
財政再建」、これらのいずれもがどんな末路を遂げたか、よく御承知のはずでございましょう。竜頭蛇尾だ。いつの間にか跡形もなく消え去ってしまっておるではございませんか。(
拍手)
三木さんも、福田さんも、大平さんも、そしてまた
鈴木さんも、
総理・
総裁の印綬を帯びてさっそうと登場された当初は、
政治改革にも、また
政策遂行にも満々たる意欲をたぎらせて取り組まれたのでありましょう。けれ
ども、いずれも
自民党という大きな権力集団の中で、つかの間のたらい回しの役割りを果たさせられたという結果に終わらざるを得ませんでした。それは、
自民党自身がもはや新しい時代に対応する政権担当能力も
政策遂行能力も失ってしまっていることを意味するものであります。(
拍手)
このような集団を率いて、
総理、あなたは「たくましい文化と
福祉の
国日本」をつくろうと言明されたのであります。あなたは、本当にそのことを
国民に約束できるのでありましょうか。また、
国民はあなたのそのような公約を信用するとお考えになっているのでありましょうか。私は、決して野党の
責任を回避するものではありませんけれ
ども、あなたの日ごろの
政治改革に関する考えは、このような
自民党一党
政治の惰性を打ち破ろうということではありませんでしたか。
総理の御
所見を承ります。
さらに、中曽根さん、あなたは三木
総裁の幹事長、福田
総裁の総務会長でありました。そして、
鈴木内閣では副
総理格の重要閣僚でございました。あなたは、三木
内閣のライフサイクル構想以下の
自民党内閣の諸構想の自然消滅に対し、なかんずく
鈴木内閣の「
増税なき
財政再建」の崩壊に対し、
責任なしとは言えますまい。政党及び
内閣の連帯
責任という問題について、
総理の御高説を承りたいものでございます。(
拍手)
さらに、
総理の
政治姿勢の中で
国民が疑惑を最も深めている問題は、
政治倫理と
憲法でございますから、特にこの二つについて
総理の御
所見を確かめます。
第一、
政治倫理の
確立は
政策以前の問題でありますが、いまや
わが国政治の最優先
課題であります。新
内閣にとっては格別そうでありましょう。
総理が新
内閣誕生以来の
国民の疑惑を払拭されようとするならば、まず何よりもこの問題についての
姿勢を明確にされることでございます。(
拍手)
それは、
一つは
議院証言法の
改正と
証人喚問について、二つには
政治倫理委員会の
設置について、
総理が従来の議会任せの
態度ではなく、みずからのリーダーシップによって速やかにこれを
実現させることであります。昨日来の御
答弁のように、目下これらは議会で論議中という逃げの
姿勢、あなたが否定されたではございませんか、その逃げの
姿勢ではだめなんです。御
所見を承ります。
第二、
憲法問題についての
総理のこれまでの言動は、いろいろな憶測を生んでおります。この際、この問題についての
総理の真意と
内閣の
方針を明らかにされることを
要求いたします。
ただし、昨日来の
答弁を承りました。問題を一点にしぼりますけれ
ども、
総理は昨日来の御
答弁の中で、新
内閣は
改正問題を
政治日程に上せる考えのないこと、このことは明らかにされました。しかし、
基本的な問題は
総理自身のお考えでございます。したがって、
総理は現行
憲法の
基本理念は高く評価すると言われて、その
基本理念の中で現行
憲法の平和主義をも絶賛されております。けれ
ども、
総理は、従来のこの平和主義と
憲法第九条との関係に
疑念を表明されておられたのではございませんでしたか。今後も
総理は――この
内閣じゃございませんよ、今後も
総理は第九条は
改正の必要なしと考えておられるのか、この点を特に明確にされんことを望みます。(
拍手)
次に、内政の緊急
課題である
財政再建、不況
対策及び
行政改革について順次お伺いいたしますが、それに先立って、これらの
課題に取り組む
政府の
基本態度につき、要望を申し述べまして、
総理の御
所見を伺います。
第一に、この三つの
課題は一応別個の問題ではありますけれ
ども、それらは相互にきわめて深く関連し合っております。その意味では、これらは総合
政策として一体的かつ
計画的に取り組まるべきものでありましょう。
第二には、これら
課題の
政策遂行にはいずれも
国民の大きな犠牲と負担を伴うものであります。したがいまして、その実行に当たっては、特別に
国民の深い理解と協力が必要不可欠でございます。このような二つの
考え方を基礎に、私はこれらの
課題に取り組む
政府に対して、次のような
基本的
態度を
要求いたします。
すなわち、第一に、
国民に忍耐を
要求しようとするならば、その前に、
政府みずからが最も苦しい対応に取り組み、
国民の
期待に沿った成果を上げる
姿勢を明確にすること、これが
行財政改革に取り組む
政府の
基本態度でなければなりません。
第二に、その一番大事な、
国民の目下の最大の不満は、負担の不公平感でございます。まず、この不公平感を払拭する
政策から着手する
態度がとられなければなりません。したがって、
所得税の大幅
減税など税負担の公平化
政策を優先することはもとより、
行財政改革自身が
福祉切り捨てとか、負担の弱者へのしわ寄せなどという、そういう
批判にさらされるような
態度は断じて避けなければなりません。(
拍手)
第三に、同様に、目下の
国民の最大の心配、最大の不安は将来
展望の不透明にあります。なかんずく
経済の先行き不安は
生活に直接結びつく問題でございますから、不安中の最大のものでございます。
政府は、この不安解消に全力を傾ける
政策態度をとらるべきであります。
第四に、
行財政改革は、行政の根本にメスを入れるものでございますから、従来の行政機構の枠組みの中のセクト的
官僚組織に依存しておっては、その実行は不可能であります。
政治そのものがリーダーシップを発揮しなければなりません。
以上、四点を特に要望いたしまして、これに対する
総理の御
所見を伺います。
具体的問題に入って、
財政再建から伺います。
第一、
総理はこの問題に関する
鈴木内閣の二つの公約のうちで、五十九年度
赤字国債脱却の
方針はこれを見直すことを言明されました。事実上、不可能となったのでありますから、一応やむを得ないことでございましょう。しかし、
総理は、その前
内閣の
方針が不可能になったのは何ゆえなのか、その主たる
原因はどこにあったと考えておられるのか、御
所見を承ります。
ただし、
所信表明において、
総理は、国際環境の変化をその理由に挙げられましたけれ
ども、その弁解だけでは私は納得いたしません。厳しい国際環境は突如としてあらわれたものではありません。これを見込んだ
経済方針も可能でありましたでしょうし、環境変化に即応した
経済運営や
計画変更が、もっと早く行われなければならなかったことも事実であります。
それを怠ったのはまさに
政府自身であります。したがって、私は、
計画破綻の
原因は明らかに
政府の
経済運営の失敗にありと断じます。(
拍手)これを他に求めようとするのは、まさに
責任回避の
態度であると言わざるを得ません。私は、この反省の上に立たない限り、いかなる
再建計画も成功する見込みがなかろうと存じます。
総理の御
所見を伺います。
同時に、五十九年度を放棄されましたのでありますが、それにかわって立てられようとする
計画の新
目標年次をどの辺に大体考えておられるのか、明らかにされたいと思います。
第二、
総理は、「
増税なき
財政再建」
方針はこれを引き継ぐ、こう言われる。先ほど来御
答弁があったとおりでございます。しかし、その引き継ぐと言われながら、
所信表明の中で、先ほ
どもお述べのように、その
基本理念に沿いつつ、その見直しを行うと表現されました。この表現の微妙な変化は、具体的に何を念頭に置かれているものか、重ねてその真意を明らかにされたいと思います。
それは、
大型間接税の
導入を否定しながら、直間比率の見直しという名のもとに、物品税、酒税、揮発油税、印紙税など、既存税制の大幅
増税を考慮してのことなのか。もし直間比率の見直しを行うというのでありまするならば、先ほど私が述べました
方針に従って、
所得税など
減税政策を最優先させる方向で着手すべきであります。この点を
中心に、
総理の認識される「
増税なき」という意味、
増税なしという意味、それは新税によるものだけではなくて、既存税制による大幅も含めておると考えるのでありますけれ
ども、そのことを明確にされたいと存じます。
第三、従来の「
財政の中期
展望」にわおる新しい
財政中期
計画の策定は、今後の
政策方向を中期的に
展望するため欠くべからざるものであります。いまや
財政問題は、単年度
計画よりも中期的
展望の方がはるかに重要になったからであります。しかしながら、この新中期
計画の策定は、いま
政府の中で、なかなかもやもやした感じに私
ども受け取っておりますが、現在の進展
状況を明らかにされることを望みます。あわせまして、予算案との同時提出をここに
要求して、所信を求めます。
次に
経済運営、不況
対策について伺います。
現在、不況は、多くの同僚が述べられましたように、倒産、
失業という社会問題に発展しながら、一段と深刻の度を深めております。前
内閣の手で
決定された、先日来の、先ほど述べられておりますとおりの総額二兆七百億円の総合
経済対策は、私
どもの見るところでは、
財政当局の主張に傾斜した内容となっておりますために、有効需要を生む効果にはなかなか結びつきそうにありません。その上、
人事院勧告凍結問題が地方
公務員や恩給、年金などにまで発展すれば、それらの抑制金額は一兆数千億円にも達し、これに基づく消費支出の抑制は、先刻の総合
対策を完全に帳消しにしてしまいそうであります。
新
内閣は、この不況問題に今後どう対処されていく
方針なのか。
情勢を見守りながら慎重に対処するという意味の昨日来の
答弁が繰り返されております。これでは
答弁になりません。御
答弁の中にもありました機動的対応とは、一体どのような、内容を持っての対応なのであるか、
公定歩合の問題も含めながら、そのことについて明らかにされることを
要求いたします。
さらに、
鈴木内閣の
財政再建路線が崩壊し、その
経済的な総合
対策も不透明となった現状では、まさに
経済政策の指針が失われたままの状態であります。それが
国民に、言い知れない一層の不安感を与えておるのであります。この不安感の解消が何よりも大事だということは先ほど申し上げたとおりでありますから、したがって、
政府は、その要望にこたえるためにも、いま
経済政策の全体的な構図をちゃんと描いて、将来への
展望を明らかにすることを急がれるべきであります。それが新しい
経済五カ年
計画の策定だと思います。しかしながら、その作業もなかなか――私
どもは進捗
状況について心配して見ております。その内容がどんなものであるか、
方針を承りたいと思います。
わが党は、今後、内需拡大を
中心に四、五%程度の中成長を安定的にもたらす、こういう構図を描きながら、その路線の上で
行革も
財政再建も行うという
考え方に立っておるのであります。
どうか、
政府の新五カ年
計画策定の構図をわれわれに、特に想定さるべき成長率などとともに、
方針を明らかにされたいと思います。あわせまして、この作業の進展
状況を重ねて伺います。それは、同時にまた、同じように来年度
予算編成に間に合うようにされなければならないことを特に要望いたしておきます。
次に、
行政改革について、その第一点として、
行革の目的及びその進め方について伺います。
臨調の
基本答申は、このことについて、第一に「活力ある
福祉社会の建設」、第二に「国際社会に対する積極的貢献」の二つの大きな目標を掲げております。しかも、この目標はほぼ
国民の合意を得たかに見えます。したがって、
行革の取り組みに当たっては、まず、この二大目標に沿った理想的将来像を描き、その
実現に向かって
政府と
国民とが一丸となって協力する体制を整えることから始めらるべきであります。
しかるに、
政府は、そのような総合的
行革の準備を怠り、いたずらに大蔵省的歳出削減や
福祉切り捨てのみを先行させようといたしました。その結果、このような近視眼的歳出削減のみが
行革の目的であるかのような錯覚を生ぜしめております。年金など
福祉の根幹を守り、発展させるためにこそ、行政のむだを省き、機構の簡素化を行うことが
行革の本旨であったはずであります。(
拍手)
行革本来の
行革を着実に進めるためには、
政府は総合的な
行革実行プランを提示し、
国民に明らかにするとともに、われわれ
議員に対しても明確にその
方針を示すべきであると考えます。
総理の所信いかん。
さらに、この際、
人事院勧告、
仲裁裁定問題につきまして、
行革との関連において
総理の
見解を重ねてただします。
御承知のとおり、この
制度は
公務員の
労働基本権制約の代償として設けられたものであり、
公務員給与決定に関する
基本的ルールであります。したがって、
政府が単に
財政事情を理由にこの
基本ルールを根本的に覆すとすれば、それはまさに本末転倒であります。そのような暴挙は
公務員ストに対する違法性の根拠を失わしめ、一方、
行革路線に従って合理化に協力してきた関係労組の
努力を逆なでするものでもあります。(
拍手)かくては、行政における労使関係を混乱に陥れる結果と相なりましょう。
臨調答申も、その最初に、
人事院勧告制度、仲裁
制度は維持され、尊重さるべきであると明記しております。そして最後に、
人事院勧告などの
実施に伴う総経費の膨張は、新規採用の抑制、事務事業の整理、民間委託、定員削減などによって極力抑制すべきであると締めくくっておるのであります。
総理にお伺いいたしたいのでありますが、
政府は、このような
答申後段に述べられているような総経費抑制
措置をいかほど行ったのでありましょうか。
総理の長官在職の二年間に、何人の新規採用が抑制されたでありましょうか。わが党の調べによりますと、五十六年度も五十七年度も、新規採用人員の正確な数字すら不明ということでございました。
政府としてまずなすべきことは、
臨調答申のとおり、総経費抑制に全力を挙げることであります。すでにILOの勧告も行われている点も考慮して、
政府は速やかに凍結
方針を撤回すべきであります。
総理の
責任ある
答弁を求めます。(
拍手)
次に、対外関係に移ります。
総理は、先ほどの御
答弁の中で、
国際情勢は
基本的には変わっておらないと言われました。まさに、私も現下の
国際情勢はきわめて不透明であると考えますが、しかしながら、
一つの転機を迎えているとも見えます。中ソ和解への新たな模索が進められておりますし、米ソの対話も偶発核
戦争防止策などを
中心に、積極化の兆しもございます。米ソ対話は、米欧の関係修復を基底に、対ソ
経済制裁の緩和へと発展することも予想されます。その
原因でありましたアフガニスタン問題やポーランド問題も変化の徴候を見せております。これらいずれも緊張激化の方向ではございません。
アンドロポフ新政権が生まれましても、
ソ連の平和は不敗の
ソ連軍の存在によってのみ築かれる、こういう考えの
基本戦略や、米レーガン政権の強いアメリカ志向の
基本方針は変わりますまい。しかしながら、
世界各国の
軍拡の負担と
戦争の恐怖から少しでも遠ざかりたいという願望とその方向への模索は、次第に高まっております。ここに、私は、
一つの転機とも見える国際
政治の枠組みの流動化を感じるのであります。
いまや、
わが国におきましても、
経済大国としての国際
責任が強く叫ばれております。私は、この
内外の
政治的タイミングをとらえ、
わが国が
世界政治の対話路線推進に向かって積極的な平和戦略に着手すべきであると考えるのであります。この
立場から、私は、わが党の「政争は水際まで」との党是に従いまして、平和戦略への五つの提言を行いたいと存じます。
その第一は、
世界の最大の関心事である核
軍縮を
中心に、米ソの対話路線推進のため、
日本が積極的な提案と行動を展開することであります。私が従来から主張しておりました、米ソ首脳会談へ向けて両超大国に働きかけることなどの行動がそれでございます。
第二は、
日米関係の改善修復でありまして、今回の
総理の訪米はまさにその第一着手でなければなりますまい。
第三は、
ソ連新政権の
誕生に対応し、積極的に日ソ関係の打開に努めることであります。新外相の訪ソや、
総理自身の訪ソも考慮すべきでございましょう。
第四は、いわゆる南北問題的観点に立って、アジア・太平洋地域の平和と繁栄のためわが
日本が主導的役割りを果たすことであり、第五は、
世界経済の根幹を揺るがす保護貿易主義の台頭を排し、自由貿易を守り抜くためのあらゆる
努力を重ねることであります。
以上の五つが私の平和戦略への提言でございますが、これについての御
所見を伺います。
あわせて、
総理は現在の
国際情勢をどのように認識されておられるのか、その中で
わが国の果たすべき国際的
責任についていかなる
方針で臨まれようとされるのか、
総理の御
所見を承りたいと存じます。
次に、今回の
総理の訪米に関連して、若干の具体的問題につき伺います。
第一、アメリカの
日本に対する防衛
努力への要望は、
わが国においてはそのまま
軍事大国化への危険に通じ、
国民不安につながりかねません。したがって、この問題の対米交渉に当たっては、その前提として、
政府が、
わが国が
軍事大国にならないための歯どめ的防衛原則を明確に
国民に示すことが必要であります。(
拍手)
歯どめ原則の
一つであったところの
防衛費の
GNP一%枠につきまして、きのうからきょうまでの
総理の御
答弁で、必ず「現在のところ」という文句をつけられまして、現在のところこれを変更する必要はないと考えると繰り返して述べられております。その意味は、
総理、五六
中業の
実施と一%枠との矛盾が遠からず避けられない
情勢であるにもかかわらず、その場合も一%枠を守るという
方針に変わりはない、こういう意味なのか。これは、私は一月の代表
質問で同じように聞いているわけですけれ
ども、抽象的に逃げばかりの
答弁でございます。明確な
答弁を求めます。(
拍手)
さらに、来年度防衛予算につきまして、昨日以来繰り返して、防衛予算についてそれを聖域にはしないという意味の御
答弁がございますが、現在の概算
要求は明らかに他諸経費に比しまして突出でありますが、これをどうさばかれるおつもりか、伺います。
あわせて、アメリカは恐らく今年度程度の
伸び率を求めるでありましょうが、これにはどう対処される
方針かも明らかにされたいと存じます。
第二、
軍事技術協力問題につきまして、
総理は、昨日からきょうにかけての御
答弁で、
武器輸出三原則と安保条約の両方を念頭に置きながら妥当な結論を出す、こういう御
答弁を繰り返しておられます。これを両立させ得るような妥当な結論が導き出せなかったために二年近くも進展のない交渉が続いていたのではございませんか。そのことを私
どもは聞いておるのであります。
たびたび私が指摘しておりますように、アメリカはこの問題につきましては、この問題が
わが国の三原則に抵触することを十分承知の上で迫っているのであります。したがって、
わが国の対応は、従来どおり三原則を厳守するか、アメリカをその適用枠から外すかの二者択一であります。
総理はいずれを選択されようとされるのか。同時に、
総理は今回の首脳会談において、この決着を明らかにつけられる御
方針か、あわせて承りたいと存じます。このことは、特に
わが国の防衛
方針の今後につきまして
一つの岐路ともなる重要な選択でございますから、私は問題を逃げずに、訪米に当たっては、その前に
わが国民代表のこの議会に対して、相当にはっきりした
態度を明らかにされながら対処されることを望みます。
第三、
わが国の市場開放問題につきまして、アメリカはECと共同
要求の形で早期かつ具体的な対応を求めておりますけれ
ども、新
内閣のこの問題に対する
方針も明らかにされることを望みます。
時間が参りましたが、最後に私は二つの要望を申し上げ、重ねて
総理の御所信を伺います。
第一、現在の
日米摩擦の
原因の中では、歴代
内閣の先送り的不決断がその
責任の相当部分を負わなければなりますまい。その意味では、歴代
自民党内閣の
責任はまことに重大であります。この反省の上に立って、今回の
総理の訪米は決断されたものと私は思います。私はその決断に賛意を表するものではありますが、この際、特に申し上げたいのは、歴代首相をして諸
懸案の決断をちゅうちょさせたのは、それは優柔不断ということの前に、根本的にはアメリカの
要求が
日本にとって過大であったからであります。
それには
わが国の
経済的エゴイズムに基づく部分もあったでしょうが、両国の立国の
基本的相違によるものもあったはずであります。防衛摩擦はその象徴的なものでありましょう。したがって、これらの問題についての
総理の決断に際しては、
総理があくまでも現行平和
憲法の精神を踏まえ、慎重に対処されんことを要望するものであります。(
拍手)
第二、いまや
国民の
政治不信は頂点に達したかに見えます。その根底にあるものは
政治腐敗であります。しかも、この腐敗の構造は、ひとり政界にとどまらず、役人、教師から医師、警察官に及び、
日本社会全体を覆うかに見えるのであります。かくて、まじめな
国民をして心の底からの憂えを深からしめておるのであります。そして、
国民は、この風潮の一掃をまず政界からと、これを
政治倫理の
確立に求めておるのであります。(
拍手)
政治は最高の道徳でなければなりません。
総理が、みずからの施政のためにも、
わが国家民族のためにも、この問題に対し確固たる
決意をもって立ち向かわれんことを重ねて重ねて要望申し、
総理の御
所見を求めて
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕