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1982-12-09 第97回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月九日(木曜日)     ─────────────  議事日程 第五号   昭和五十七年十二月九日     午後二時開議  一 国務大臣演説に対する質疑 (前会の続)     ───────────── ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑   (前会の続)  裁判官訴追委員辞職の件  裁判官訴追委員選挙  国土開発幹線自動車道建設審議会委員選挙  国土審議会委員選挙  鉄道建設審議会委員選挙  検査官任命につき事後承認を求めるの件  原子力委員会委員任命につき事後承認を求めるの件  公正取引委員会委員長任命につき事後承認を求めるの件  公害健康被害補償不服審査会委員任命につき事後承認を求めるの件  社会保険審査会委員任命につき事後承認を求めるの件  運輸審議会委員任命につき事後承認を求めるの件  電波監理審議会委員任命につき事後同意を求めるの件  日本放送協会経営委員会委員任命につき事後同意を求めるの件  日本電信電話公社経営委員会委員任命につき事後承認を求めるの件  地方財政審議会委員任命につき事後同意を求めるの件     午後二時三分開議
  2. 福田一

    議長福田一君) これより会議を開きます。      ────◇─────  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)
  3. 福田一

    議長福田一君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。竹入義勝君。     〔竹入義勝登壇
  4. 竹入義勝

    ○竹入義勝君 私は、公明党・国民会議を代表して、中曽根総理政治姿勢並びに当面の重要課題に対する取り組みに対し、重点的に問題をしぼって質問をいたします。  まず、総理、今回の自民党政変劇中曽根内閣の誕生に、国民の多くが強い懸念を抱いていることを御存じでしょうか。景気停滞が日増しに深刻化する中で、四十日間を超えた政治空白に対し、強い憤りの声さえ起こっているのであります。総理は、「政治を支えるもの、それは、国民信頼」であると強調されましたが、それでは、今回の人事組閣をして、国民信頼にこたえ得るものと考えておられるのでありましょうか。信頼はもとより、期待感もそこにはなく、むしろわが国政治の将来に大きな憂慮と危険を感じているというのが国民の偽らざる心情であると私は思います。  そこで、私は、最初に中曽根総理政治姿勢についてお尋ねをいたします。  総理は、所信表明において、「わかりやすい政治」、「話しかける政治」の実現に心がける、こう強調されました。  それならば、今日わが国が置かれているまことに厳しい状況、すなわち、経済停滞とそれによる企業倒産、失業の増大、また、五十六年度における二兆五千億円の歳入欠陥、五十七年度の六兆円にも上る税収不足によって明らかとなった財政の破綻、貿易摩擦への対応のまずさなどは、自民党政権失政そのものであります。この自民党政権失政について、総理はどのように認識されておられるのか。  特に、鈴木内閣当時はその閣僚として、また、たびたび総理大臣代理という重要な立場を担ってきたお一人として、鈴木政治失政をどう反省され、どう改めようとされるのか、総理の御所見を伺っておきたいと思います。  また、四十日間の政治空白をつくり出した自民党の責任はきわめて重大であります。この責任についても、態度を明らかにされたいのであります。  私は、現下の時局において、総理が果たすべき条件として、少なくとも次の三点を挙げたいのであります。  すなわち、第一に、民主主義の原点ともいうべき政治倫理確立すること、第二に、法治国家最高法規である憲法を遵守すること、第三には、戦争を否定し、平和をあくまでも追求することであります。  これらの条件に照らし、私は、遺憾ながら中曽根総理姿勢懸念を抱かざるを得ないのであります。  第一の政治倫理確立について、国民は、総理が行われた党の人事組閣に対し厳しい目を向けております。  それは、すなわちロッキード事件を風化させようとしているのではないか。また、ロッキード判決への対策人事ではないかとの率直な疑問と危惧の念を持っておるのであります。総理はこのような国民の疑問に何と答えられるのか、ここで明確にお答えをいただきたいのであります。  同時に、総理政治倫理確立、清潔な政治を約束するというのであれば、かねて懸案となっている政治倫理委員会の設置、議院証言法改正証人喚問実施などには積極的に臨まなければならないはずであります。  また、自民党の反対によって衆議院への上程が阻まれたロッキード裁判において有罪判決を受けた現職国会議員に対する辞職勧告決議案を速やかに成立させるべきでありますが、それぞれについて、総理の見解を伺いたいのであります。  もし、鈴木総理のように、みずからの指導性を欠く後退姿勢をとるならば、国民中曽根内閣に対する疑念と不信がさらに強まることは必至であります。  加えて、政治腐敗を根絶するためには、具体策を講ずることが急務であります。  この際、私は、中曽根総理に対し、政治資金の規制を強化するために、政治資金規正法改正を提案するものであります。  政治倫理確立は、政治家自身の自覚にまつところ大でありますが、しかし、政治権力の中枢にある政権党の率先した努力なくしては不可能であります。  以上の諸点に対し、総理自身方針とその決意を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)  次に、第二番目の問題である憲法に関する総理姿勢にも、私は強い疑念を持たざるを得ません。  総理は、総裁就任後の記者会見で、憲法の原理、憲法が果たした歴史的役割り、意義を高く評価する一方、どんな制度、法律にも完全なものはないとして、戦後の経験をよく見て見直し、よりよき憲法にしていく努力は正しい態度であると発言をされておるのであります。  この発言は、憲法改正は当然との姿勢を示したものと受けとめざるを得ず、事は重大であります。さらに、改憲は自民党の政綱にあり進めるべきだが、党と内閣は別の立場であるとも言っておられます。  総理は、中曽根内閣として、また自民党総裁として、憲法改正への具体的動きを考えておられるのかどうか。それとも、総理・総裁として憲法擁護をこの場所において明言できるのか、私は特に明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  なお、かつて自民党が導入しようとした衆議院選挙区制が、さきの参議院全国制改悪に続いて再び画策されるのではないかと強く懸念をいたしております。私は、小選挙区制が持つ多くの欠陥がすでに指摘され尽くされていることからしても、その導入には断固として反対であります。この問題に対する総理所見をしかと承っておきたいと思います。  さて、第三番目の問題、すなわち戦争を否定し、あくまでも平和を追求するとの視点から、当面する外交、防衛問題について伺うものであります。  ソ連におきましては、新指導部の誕生によってその内外政策の動向がきわめて注目されております。私は、今回のソ連の政権交代を一つの契機として、世界の潮流が国際緊張の緩和へと動き出すことを念願いたす一人であります。  すでに米ソ関係を中心として続いてきた国際緊張は、軍拡競争をますます拡大し、きわめて憂慮すべき事態にあると思うのでありますが、総理は今日の国際情勢をいかに認識され、いかなる基本的な外交方針で臨まれようとされるのか、この際明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  私は、また、米ソ関係の改善、デタントの構築をわが国が積極的に呼びかけるべきであると思うのであります。さらに、反核、軍縮をわが国外交の重要な柱の一つとし、その実現のために間断なき努力を払うべきであります。そのために、第三国の国連軍縮特別総会開催を目指し、わが国がそのイニシアチブをとるべきであると思うのでありますが、総理の御見解を伺いたいと思います。  総理は、所信表明において、まず日米関係重要性を述べられました。私も、重要という点については全く同感であります。しかし、日米関係が重要であればあるほど、米側要求に言いなりになることではなくして、わが国として言うべきことは率直に言い、その上で相互理解を図っていくべきであると申し上げたいのであります。  わが国に対する米側の性急かつ過剰な防衛力増強要求は、国民の軍拡への不安、対米不信、ひいては日米関係に深刻な悪影響を及ぼしかねないことを米側に明確に伝えるべきであると私は思うのであります。  そこで、日米関係のあり方、防衛力増強要求に対する考え方を、これまたしかと承っておきたいと思います。  また、緊急な課題となっている日米、日欧間の貿易摩擦問題にどのように取り組む所存であるか。政府は、新しい市場開放策を考えていると言われておりますが、どのような内容を盛り込もうとしておられるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。  総理は、また、国の安全を確保することを政治目標の第一に掲げ、その基本姿勢を「日米安保体制を維持し、自衛のための必要な限度において質の高い防衛力を図っていくことにある」と述べておられますが、これは日米安保体制に基づく軍事力強化をことさら強調したものと私は受けとめております。  これまでも政府は、財政再建を強く訴える中で、福祉文教等の施策の後退を図る一方、五十六年度、五十七年度と防衛費特別枠扱いを強行し、その伸び率を突出させてきました。昭和五十六年度には、ついに防衛費伸び率福祉伸び率を上回り、今年度の防衛費一般会計に占める比率が前年度を上回ったのであります。しかも、本年七月に決定を見た五六中業により、防衛費の対GNP一%枠は、早ければ五十九年度中にも突破するのではないかとも言われております。  この対GNP一%枠が、昭和五十一年十一月の国防会議閣議決定によることは総理も御承知でありましょうが、それはわが国軍事大国への傾斜を防ぐ歯どめという意味では重要な政策であります。一たびこの歯どめを失うならば、際限のない軍事力増強の道を暴走する危険性があることを私は強く指摘せざるを得ません。  総理は、組閣後初の記者会見において、西側の結束のための協力は必要であると言われ、さらに、防衛費の対GNP一%枠については弾力的と受け取れる発言をされましたが、まず、この対GNP一%枠を厳守されるのかどうか、総理の明確な答弁を求めるものであります。  さて、五六中業の主要装備は、一千海里シーレーン防衛を中心にしたものであります。シーレーン防衛に関しては、日米両国間に考え方の相違もあり、国民のコンセンサスも形成されているとは全く言えない状況にあります。  特に危惧されることは、憲法の精神を逸脱し、集団的自衛権の行使に踏み出すおそれがきわめて強く、専守防衛という従来の政府方針からも大きく踏み出す結果となるのであります。  また、見過ごしにできないことは、シーレーン防衛という考え自体が、北西太平洋における米軍肩がわりを意味し、米極東核戦略体制日本がさらに濃密に組み込まれることになることであります。しかも、シーレーン防衛に名をかりて、今後一層装備の拡大と強化米側から要求されてくることは目に見えており、すでに五六中業でさえ、シーレーン防衛には不十分という米側の指摘も聞かれているのであります。  特に、第二次世界大戦での苦い記憶の消え去らぬ東南アジア諸国、すなわちフィリピンのマルコス大統領、インドネシアのスハルト大統領を初め、東南アジア諸国が一様に日本軍事大国化を危惧し、警戒心を強めているのであります。  総理は、一千海里シーレーン防衛に対するこれら内外からの批判について、どのように受けとめておられるのか、お尋ねをしたい。また、シーレーン防衛は新たな軍拡路線と受けとめざるを得ないと私は思いますが、かつてマラッカ海峡防衛論を展開された総理の御所見をしかと承りたいのであります。  総理は、来年一月十七日訪米し、日米首脳会談を行う予定と伝えられております。日米安保条約を足場にした防衛力増強軍事技術の対米供与問題、市場開放問題が中心課題のようでありますが、特に防衛力強化武器輸出三原則を事実上崩壊させる軍事技術供与問題については、レーガン大統領に追随する約束をすべきではないと申し上げておきたいのであります。  そこで、日米首脳会談に臨まれる総理基本姿勢をこの際明確にされたいのであります。  さて、内政における重要課題について、まず行政改革について伺いたいのであります。  総理は、所信表明においてその推進の決意を述べられました。しかし、政府自民党内の行革に対する風当たりが一段と強まり、官僚内部にも抵抗の姿勢が露骨になってきております。第二臨調の三次にわたる答申に対する政府姿勢は、つまみ食い的行革であり、国民本位行財政改革からはほど遠いものがあると言わざるを得ません。  総理は、臨調答申の断行について具体的にどう進めるつもりなのか、また、来年三月には臨調の役目が終わるわけでありますが、その後どのような展望のもとに行政改革を推進していく方針であるのか、明確にお答えをいただきたいのであります。  特に、中央省庁機構改革地方出先機関の統廃合が一向に進展していないことに関し、国民政府の行革に対する熱意のなさを厳しく指摘しております。  総理は、中央省庁等整理統合についてどう進める方針であるのか、また、官僚の強い抵抗に対し、どのように対処するおつもりなのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。  私どもは、行政改革の名のもとに福祉文教予算が後退するようなことは断じて認めることはできません。(拍手)もしそうであれば、わが党は断固として対決をしていかなければならないことを明らかにしておきたいと思います。(拍手)  総理、あたたは所信表明の中で「福祉国日本」を訴えられました。その具体像と実現へのプロセスをどのように考えておられるのか。第二臨調の言う「活力ある福祉社会」とはどこがどう違うのか、さらに「福祉国日本」構想の中では福祉文教予算はどのように位置づけられておるのか、あわせてお伺いをしたいと思います。  さて次には、行政改革とも関連する問題として、三公社五現業の仲裁裁定問題と公務員給与の凍結問題について伺いたいのであります。  三公社五現業の仲裁裁定完全実施の回避については、ILOに提訴され、その不当性が認められました。財政再建期間中であり、厳しい状況下にあることはだれしも否定するところではありません。しかし、公務員や三公社現業職員の給与の凍結ないし見送りはきわめて不当な措置と言わざるを得ません。それは、労働基本権の制約の代償措置として設けられた人事院勧告制度仲裁裁定制度を形骸化させるものと言うべきであります。また、民間給与などへの影響も必至であります。  私は、仲裁裁定完全実施は当然であり、人事院勧告についても、公務員業務遂行効率を高めることを前提として、その完全実施を図るべきと考えます。十二月七日の与野党国会対策委員長会談の合意を踏まえ、改めて総理の率直な御所見を伺いたいと思います。(拍手)  次に、財政再建問題について伺います。  鈴木内閣失政に対しては、われわればかりでなく、内外経済市場からもいわば不信任を突きつけられていたのであります。国債価格の下落、円相場の混乱も、政府財政非常事態を強調しながら、具体的な再建計画を示さなかったところにその原因があることは明白であります。したがって、わが国財政経済の展望を明確にすることがきわめて重要であり、中曽根内閣は速やかに財政再建計画を策定し、内外にこれを明示すべきであります。  言うまでもなく、その計画はこれまでの財政の帳じり合わせ的なものではなくて、財政再建の指標、目標年次行政改革及び経済計画との整合性などについて、国民に希望と自信を与え得ることが重要でありますが、総理は、財政再建計画をいつ出されるのか。また、政府公約であった五十九年度赤字国債脱却方針を見直しするとのことでありますが、その場合、いつまでに赤字国債からの脱却をしようとするのか。それぞれについて明確に御答弁をいただきたいのであります。  総理は、所信表明において、五十八年度予算編成の総括的な方針を述べることとあわせて、「歳入についても、増税なき財政再建基本理念に沿いつつ、その見直しを行う」としておられます。しかし、私は、この発言をもって「増税なき財政再建」の確約と受け取ることはとてもできません。この際、明確な答弁を求めます。  さて、「思いやりの心」を政治基本に据え、政治の光を家庭に当てると申されるからには、よもや財政再建に名をかりた大衆増税福祉後退の強権、強圧的な姿勢は出てこないものと思いますが、きわめて心配とするところであります。総理増税福祉後退はあり得ないということを、ここで明確にお答えをいただきたい。  いずれにせよ、私は、財政再建については、着実かつ慎重な計画のもとに、さきに指摘した行政改革と並んで、安定成長による税収確保及び不公平税制の是正を三本柱にして取り組むよう強く主張するものであります。  そこで、所得税などの減税問題について伺いたいのであります。  所得税は、課税最低限度額をすでにこの五年間据え置かれたままにあります。他の納税者との間に不公平が拡大するとともに、勤労者の生活を圧迫しており、負担の不公平の是正、生活防衛景気対策などから、大幅減税実施要求はいまや切実な国民的要求となっております。  最近では、五十七年の内需を支えてきた唯一の個人消費についてもかげりが見られることや、すでに地方財政では生活保護費住民税課税最低限を上回っており、国の財政についても、このまま課税最低限を据え置くならば、近い将来、生活保護費がそれを上回ることは必至であり、もはや国民に納税を義務化する許容範囲をはるかに超えていると言わなければなりません。  また、私どもの要求の結果設けられた本院の減税問題に関する特別小委員会でも、所得税減税必要性については与野党の意見が一致したと中間報告がなされております。総理、残る障壁はただ一つ、あなた、総理の決断のみであります。減税小委員会の結論を待つまでもなく、五十七年度内に減税実施することをここに強く要求するものであります。  同時に、所得税減税は、五十八年度予算編成において財政再建行財政改革とあわせて考えるにしても、政策選択優先順位は第一位とすべきであります。私は、総理大幅所得税減税を実行する英断を求めるものでありますが、しかとお答えをいただきたいと思います。(拍手)  さらに、不公平税制の是正は、所得税減税財政再建から見ても必須の要件であります。政府は、利子所得等の不公平を是正するための、昭和五十五年第九十一国会で、自民党の賛成をもってグリーンカード制度の導入を決めました。その後、グリーンカード制度をやめ、かわって少額貯蓄者を保護するいわゆるマル優制度の撤廃が議論されているようでありますが、これら二つの問題に対する政府の態度、また総理としての御所見をお伺いしたいと思います。  さらに、長年の懸案である業種別所得捕捉率の格差是正問題が放置されることは、国民の間では、やがて一般消費税など大型間接税が導入されるのではないかとの脅威にすらなっております。私は、一般消費税などの導入に強く反対することを申し上げ、これらの問題について総理所見対策をお示し願いたいのであります。  最後に、景気対策について伺うものであります。  五十七年度の実質経済成長率は、政府の当初見通し五・二%が三・四%と大幅下方に修正され、また、下方修正した成長見通し三・四%にっいても、その達成を民間経済研究機関のほとんどが不可能と見ております。  総理実質成長率三・四%というのは、失業者を増大させたり、あるいは学校は出たけれども職がないといった雇用不安をもうこれ以上に拡大しないというぎりぎりの数値ではないでしょうか。総理は本当にこのままで三・四%の達成が可能と考えておられるのかどうか、具体的に御所見を承りたいのであります。  私は、わが国経済を縮小再生産させたり雇用不安を拡大させないためにも、いま政府がとるべき施策は、さきに述べた大幅所得税減税投資効率のよい公共事業の追加、中小企業に対する投資減税公定歩合引き下げ実施することであると考えます。直ちに実行されんことを強く求めるものであります。  さらに、最近の為替相場は、新内閣に対する期待も含めてか、円高傾向を強めつつあります。このまま円高基調が落ちつくとすれば、公定歩合引き下げも可能だと判断するものでありますが、これらの点もあわせて総理の御所見を伺いたいのであります。  景気停滞が続く状況下で、いまや中小企業は苦境を強いられております。年末を控え、仕事もなく、資金繰りにも苦しむ中小企業の声を、総理はどれだけ感じておられるか。中小企業仕事の確保のため、中小企業向け官公需を大幅に拡大するとともに、政府系中小企業金融三機関の貸出金利引き下げ返済期間の延長を実施すべきであります。また、倒産防止対策下請企業対策強化拡充が必要と考えますが、具体策をぜひ明らかにされたいのであります。  また、懸案となっている中小企業事業承継税制確立についてはどう取り組まれるのか、この点についても総理の見解を伺うものであります。  以上、私は、きわめて重点項目にしぼって質問を申し上げましたが、総理の誠意ある答弁を求め、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
  5. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 竹入議員お答え申し上げます。  まず、先般の自民党総裁公選等によりまして政治空白が起きましたことにつきましては、遺憾の意を表する次第でございます。  また、組閣に際しまして種々の御批判をいただきましたことは、私に対する戒めとして心にとめて研さんしていきたいと思っております。(拍手)  確かに、この間におきまして、景気停滞財政の困難、貿易摩擦等わが国を取り巻く内外情勢はきわめて厳しくなっております。しかし、その原因はおのおの根の深いものもあり、また国際的要因が絡んでいるものもありまして、一朝一夕に解決することはむずかしいと思います。私といたしましては、前内閣努力の後を引き継ぎまして、この四十日間の空白を取り戻すべく、一生懸命問題の解決に努力いたしたいと考えております。  さらに、組閣につきまして御質問をいただきましたが、今回の組閣は、仕事を重視いたしましたことは前から申し上げました。それは、行政改革財政再建、それから対米関係信頼強化、さらに景気対策等を重要視いたしまして適材を配置した考え方でございます。いままで批判を受けました派閥均衡人事とか、派閥順送り人事をできるだけ回避いたしまして、その仕事に向く人材を派閥を超越して配置いたしたと考えておる次第であります。(拍手)いろいろの御批判につきましては、今後の実行の中でこたえていく所存でありますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  さらに、竹入議員、三点お挙げになりました。  政治倫理の問題、憲法遵守の問題、それから戦争反対平和確保の問題、この三つの御提言については私も原則的に同感であります。  さらに、政治倫理委員会あるいは証人喚問等の問題につきまして御質問がございました。政治倫理確立して政界浄化を図り、政治に対する国民信頼確保することは、議会制民主主義を守っていく上の基礎であると考えております。政治倫理委員会設置議院証言法改正証人喚問実施及び国会議員に対する辞職勧告決議等の問題は、いずれも国会議員の規律や身分に関する国会としての重要事項でございまして、国会の御判断を注視しておるところでございます。  議院運営委員会等におきまして、あるいは議会制度協議会等におきまして、各党におきまして十分御協議を願いたいと思っており、行政府の長といたしましてこれを指図するごとき立場には毛頭ございません。早期にこれが解決することを希望しておる次第でございます。  政治資金規正法の問題について御質問がございました。  政治資金制度は、一面選挙制度のあり方の問題と密接に関係がございますと同時に、各党のよって立つ財政基盤がそれぞれ異なるので、今後の各党の政治活動そのものに直接関係してくる大きな問題でもあります。したがいまして、まず各党間で十分に論議を尽くして合意を形成していただくようにお願いもし、努力もいたしてまいりたいと思う次第でございます。  憲法問題に関して御質問がございました。  前にも申し上げましたように、現行憲法民主主義、平和主義、基本的人権の尊重あるいは国際協調主義等の理念はすぐれた理念でございまして、これが戦前と戦後を分かつ大きな政治原理になっていることは明らかであり、これを将来にわたってもわれわれは護持すべきであると考えております。  また、私は、憲法第九十九条の憲法遵守の義務も知っております。一方におきましては、憲法第九十六条におきまして憲法改正手続の規定もございます。憲法改正の問題につきましては、これをさらによりよいものにするために、いろいろな立場から議論し、研究し、検討することは、何ら憲法に抵触するものではないと考えております。私は、自由民主党の総裁といたしまして、わが党が党の政綱に定めておる自主憲法制定という基本方針に基づきまして、よりよき憲法を目指して研究し、調査していることは、政党として当然のことであると考えております。(拍手)しかし、現内閣におきまして、憲法問題を政治日程にのせる考えはございません。  衆議院の小選挙区制について御質問がございましたが、衆議院選挙区制の問題は、選挙基本的なルールづくりの問題でございまして、各党間で十分な論議を願い、その動向を踏まえながら結論を出すべきものであると考えております。  現下の国際情勢に対する御質問がございました。  米ソを中心にする世界の緊張状態は、依然として同じような情勢が続いて、大きな変化はないと心得ております。最近、中ソ関係におきまして会談が進められておりますけれども、その動向はわれわれも慎重に見守っておりますが、基本的な大きな変化はないと考えております。中国側がソ連側に三つの障害の除去を言っております。第一はアフガンからの撤退、第二はカンボジア問題の解決、第三は中ソ国境にわたるソ連軍の撤退、この三つの要求を出しております。この三つの要求に対してソ連がどのような対応をするか、中国がそれに対してどのような態度に出るか、これらのことを考えてみますと、そう急激な変化が起こるというふうには考えません。しかし、アンドロポフ政権、新しい体制がソ連に出てきたわけでございますから、どのような世界政策に出るか、深甚の注意をもって見守ってまいりたいと思っておるところでございます。  わが国といたしましては、先進民主主義諸国との連帯と協調のもとに、より安定した国際環境をつくるべく、わが国立場からも努力してまいりたいと考えております。  軍縮問題について御質問がございました。  わが国は、平和外交の重要な柱として、核軍縮中心とする軍縮の促進に従来同様積極的に取り組む所存であります。  第三回国連軍縮特別総会の開催時期は明年の国連総会で決定されることになっており、わが国としても開催へ向けて真剣な努力を払ってまいりたいと思います。  日米関係についてお尋ねがございました。  私は、一月に予定されておりまするレーガン大統領との会見におきましては、世界情勢、東西関係、南北関係あるいは世界経済の活性化の問題等々、及び二国間の関係、日米貿易摩擦問題あるいは安全保障上の諸問題等々について、率直な意見の交換を行い、相手側の意見も聞き、われわれの意見も言うべきことは言い、そして真の友情に満ちた協力関係、信頼関係に基礎を置いた両国関係というものを構築するように、さらに積極的に努力してまいりたいと思っております。  次に、貿易問題、経済問題について御質問がございました。  世界経済停滞を背景として、欧米諸国を中心に保護貿易主義が高まってきておることは非常に注意を要するところであります。自由貿易秩序の維持は、世界経済の繁栄のためにも、またわが国のためにも不可欠の条件でございまして、この保護主義的傾向については、われわれは断固として阻止する義務があると内閣は考えております。  世界経済の再活性化を図るべく、わが国としても市場開放をさらに進め、貿易の拡大均衡に努める一方、内需中心経済成長を目指すことが必要であると考え、政府は、さきに総合経済対策決定いたしまして、今回の補正予算においてもその政策が計上されておるわけでございます。今後とも内外面にわたるこれらの対策の着実な実施に努めるとともに、対外経済摩擦の解消に向けて一層の努力を払いたいと思います。  防衛費GNP一%について御質問がございましたが、防衛費GNP一%に関する五十一年の閣議決定を現在のところ変える必要はないと考えております。わが国といたしましては、非核専守防衛国家、軍事大国にならない、そういう基本原則は厳然として守ってまいりたいと思っております。  シーレーンの問題について御質問がございました。  有事の際の海上交通保護のための防衛力の整備は、憲法及び基本的防衛政策に従い、わが国を防衛するための必要最小限度の範囲のものであります。したがって、近隣諸国に何ら脅威を与える性格のものではございません。ASEAN諸国の一部からこれに対する懸念の声が出ましたけれども外交当局が現地によく説明をいたしまして、大体解消したと聞いております。なお一層これらの諸国につきましては、わが国の防衛努力について真の理解を得るように努力してまいりたいと思っております。  このシーレーンの問題は、有事に際して航路帯を設けようという考え方でございます。これは南東方面、南西方面約一千海里程度の輸送ルートをつくろう、輸送通路を確保しよう、そういう考え方に基づくものでございまして、これは引き続き検討してまいるつもりでおります。  マラッカ海峡防衛論に言及されましたが、私がそういう発言をしたことはございません。  さらに、今回の訪米に際しましては、長期かつ全般的な見地から、日米関係信頼関係の強化のために参りますが、レーガン大統領との間におきまして、自主的に、わが国立場は、また述ぶべきものは述べたいと思っております。  軍事技術の交流問題につきましても、もちろんこれは重要な問題であると考えておりますが、一方においては三原則もあり、統一見解もございます。また一方においては、日米安全保障体制もございます。この間の調整を図るべく、いま関係当局において鋭意検討しておるところでございます。  臨時行政調査会の答申について御質問がございました。  行政改革は、現在の政治課題の最大課題一つであると考えております。そうして、政府は、臨時行政調査会の答申を最大限に尊重して、逐次これを実施に移すという方針を決めております。当面の問題といたしましては、九月二十四日に決定いたしました行革大綱を具体化していく考えでございます。来年三月の臨調任務終了後の行革推進体制につきましては、臨調最終答申を待って適切に対処したいと考えております。  中央省庁等の統廃合について御質問がございましたが、行政組織の整理再編成につきましては、時代の要請にこたえて、積極的に簡素合理化していく考え方でございます。中央行政機構、地方出先機関ともに同様でありまして、いま臨時行政調査会において具体案が進められておりますが、その審議状況を注目しつつ検討を進めてまいるつもりであります。  福祉国家日本の構想について御質問がございました。  日本的な充実した家庭を中心にした福祉政策経済的基盤の上に、心の触れ合う礼節と愛情に富んだ社会の建設、あるいは神仏に祈る心を持った敬虔な人格を形成するということ、こういうような考え方基本的に持っておる次第でございます。  政府国民が手を携えて、特に幸福の基盤となる家庭を日本社会の原単位として大切にしてまいりたいという考えであります。臨調の「活力ある福祉社会」とは基本的に一致いたします。が、特に家庭の役割りの重視及び自由と創造力、生きがいといった精神的要素、あるいは「思いやりの心」を私は特に強調しておるわけであります。  福祉文教予算につきましては、このような基本方針のもとに、将来に向けてバランスのとれた、効率的な安定した社会保障及び充実した教育、学術、文化の推進を図っていくべく、できるだけ努力をしてまいりたいと思っております。  仲裁裁定の取り扱いにつきましては、与野党間でその取り扱いに対して合意が成立いたしました。すなわち、十二月七日の国対委員長会談におきまして、「仲裁裁定については、今国会中に裁定通り議決致します。」この点をわれわれは尊重いたしてまいりたいと思います。  人事院勧告につきましては、国会及び内閣に対して同時になされたものと心得ております。内閣におきましても、国家公務員法の内容等を見まして、極力公務員の待遇については配慮しなければならないと思っております。勧告制度尊重という基本的たてまえに立って検討してまいったところでございます。  しかし、危機的な財政事情のもとにおきまして、公務員が今回率先して行財政改革にも協力していただく必要もあり、いろいろな点を総合的に勘案いたしまして、異例の措置として給与改定の見送りを行わざるを得なかったことはまことに残念であります。これは人事院勧告の意義、役割り、制度の否定を意味するものではございません。  次に、財政再建の方途について御質問がありました。  財政再建行政改革とともに現下の最重要政治課題であります。その基本は、まず、社会経済情勢の変化に応じた歳出の見直し、合理化を徹底することであります。このため、当面、昭和五十八年度予算におきましても、一般歳出を前年度同額にまで圧縮する意気込みで、また、これに合わせて歳入につきましても、「増税なき財政再建」の基本線を守りながら編成してまいりたいと考えております。  次に、「増税なき財政再建」について重ねて御質問がございましたが、先ほど申し上げましたとおり、この基本線は守っていくつもりでおります。歳入面につきましても、「増税なき財政再建」の理念に沿いつつ、歳入構造全般の見直しを検討してまいりたいと思います。  また、今後の受益と負担の関係をどうするかという大きな問題がございます。これは国民の合意と選択にゆだぬべき問題であると考えております。  さらに、「増税なき財政再建」は行財政改革基本理念でありまして、安易に増税を念頭に置くことなく、まず行政の簡素効率化、制度施策の見直し、合理化を徹底するということであると考えております。  社会保障につきましては、自立自助、連帯と相互扶助の精神による日本的な充実した福祉を求める立場に立ちまして、諸施策が今後とも長期的に安定して有効に機能するよう、給付と費用負担両面にわたって見直しを行う必要があると考えております。  所得税減税につきましては、もし財政上それが可能ならば、できるだけ実行してあげたい項目でございます。衆議院大蔵委員会減税問題に関する特別小委員会で検討していただいておりますが、財源問題を含めて与野党合意の結論が得られれば、これを尊重して実行いたしたいと思います。  なお、税負担の公平確保の観点から、租税特別措置につきましてはこれまでも改善措置を講じてまいりました。今後とも社会経済情勢の変化に対応して必要な見直しを行っていくつもりであります。  グリーンカード制につきましては、実施を五年間延期する法案が議員提出として提出され、継続審議されているところであり、その成り行きを注目しております。  最近、マル優等の非課税貯蓄について各種の論議がなされております。このマル優等の制度につきましては、一部の弊害もありますが、しかし、きわめて意義のあった点も認めざるを得ません。この問題は多くの国民に関係する問題でありますので、今後各方面の意見を聞いて検討してまいりたいと思っております。  さらに、税務執行上の公平確保につきまして、政府としては従来から公平な課税を確保するため、納税環境の整備、税務調査の充実等にできる限りの努力を重ねてまいりましたが、今後も一層努力するつもりでございます。  今後の間接税のあり方につきまして御質問がありました。  「増税なき財政再建」ということを言っておりまして、安易に増税を念頭に置くということでなく、まず行政の簡素効率化、制度施策の見直し、削減に努力を集中すべきであり、歳入面につきましても、また税制につきましても、すべての問題、歳入構造全般を見直す、検討するという考え方に立って洗ってみたいと思っておるところでございます。  なお、受益と負担の関係につきましても、国民の合意と選択にゆだぬべき問題であると考えております。  次に、経済成長三・四%は可能であるかという御質問でございます。  政府といたしましては、先般総合経済対策決定いたしまして鋭意努力しておるところでございまして、わが国経済は三・四%程度の実質成長を達成することは可能であると考えております。政府経済見通しは民間の予測とは性格が異なりまして、また円レートや想定された経済対策の内容等の前提条件が民間の調査との差異がありますために、若干計数のずれもありまして、これを単純に比較することは困難でございます。  次に、投資効率のよい公共事業の追加を御発言になりました。  先般の総合経済対策におきましても、公共投資等について総額二兆円強の事業規模を追加いたしまして着実に実行してまいるつもりであります。なお、公共事業につきましては、効率性を重視して推進してまいるつもりであります。  中小企業投資減税につきましては、これにつきまして、景気との関連からこれを実施すべしという有力な意見があることも知っておりまして、私といたしましても関心を持っておるところでございます。この問題については一方、その効果の程度はどうか、また厳しい財政事情のもとで財源をどうするかという問題がございまして、今後引き続いて検討してまいりたいと思います。  公定歩合の問題は日本銀行の所管でございまして、金融政策全般の運営は内外状況を慎重に見守りながら、引き続き適切かつ機動的に対処すべきものであると考えております。  中小企業景気対策につきましては、官公需の拡大、下請取引の適正化、倒産防止対策の機動的運用等を図り、さらに年末に備えまして中小企業金融機関貸出金利に特段の配慮を加え、その他きめ細かな対策実施してまいりたいと思っております。  中小企業者の相続税の問題につきましては、課税の実情、相続税の性格、負担の公平等の見地から検討すべき課題であると思っております。そして、相続財産の評価は、実態に即した評価を心がけていくように指導したいと思います。  しかしまた、取引相場のない株式の評価方法、たとえば同族会社等のものにつきましては、政府の税制調査会で目下検討中でありまして、その審議の結果を踏まえて適切に対処していくつもりでございます。(拍手)     ─────────────
  6. 福田一

    議長福田一君) 佐々木良作君。     〔佐々木良作君登壇
  7. 佐々木良作

    ○佐々木良作君 私は民社党・国民連合を代表いたしまして、総理所信表明に対し、若干の質問を行います。  まず、宿願成って総理総裁の地位につかれた中曽根新総理に対し、友人として心から祝意を表します。(拍手)  しかし、総理、あなたを取り巻く状況はまことに並み並みならぬものであります。世界の各国が日本に向けている目はまことに厳しく、国民のあなたに向けている目もまた冷たく、怒りの色をさえ帯びております。総理官邸周辺のデモの声も日一日と大きくなっていることにお気づきでございましょう。その上、多くの同僚が指摘いたしましたように、あなたは、政治倫理中心にいたしまして、新内閣発足に当たって大きなハンディキャップを背負って登場されました。各社の世論調査が示す新内閣に対する支持、不支持の率も異例の厳しいものであります。  まず、総理、あなたは鈴木さんから自民党内閣を引き継がれましたが、鈴木さんは何ゆえに政権を投げ出されたのでありましょうか。賢明な総理が御承知のとおり、それは政治的、政策的行き詰まりの結果であります。  しかし、このことはひとり鈴木内閣にとどまらず、自民党政治そのものの行き詰まりと言うべきではありますまいか。(拍手昭和の五十年代に入ってから、すでに五回にわたる総理の交代が行われております。これは異常とも言える状態であります。自民党という政権政党の中でどのように総理総裁を取りかえてみてもどうにもならなかったことを如実に物語っているものであります。(拍手)  先日の所信表明演説で、総理の「わかりやすい政治」から「たくましい文化と福祉国日本」をつくる政治目標も承りました。しかし、中曽根さん、あなたは三木内閣の「ライフサイクル構想」、福田内閣の「静かで落ちついた社会」、大平内閣の「田園都市構想及び日本福祉社会構想」、特にこの大平内閣の構想は、いま主張しておられるところの「たくましい文化と福祉国日本」というのと大変似ておるように思いますね。これら、さらにまたは鈴木内閣の最大の政治公約「増税なき財政再建」、これらのいずれもがどんな末路を遂げたか、よく御承知のはずでございましょう。竜頭蛇尾だ。いつの間にか跡形もなく消え去ってしまっておるではございませんか。(拍手)  三木さんも、福田さんも、大平さんも、そしてまた鈴木さんも、総理総裁の印綬を帯びてさっそうと登場された当初は、政治改革にも、また政策遂行にも満々たる意欲をたぎらせて取り組まれたのでありましょう。けれども、いずれも自民党という大きな権力集団の中で、つかの間のたらい回しの役割りを果たさせられたという結果に終わらざるを得ませんでした。それは、自民党自身がもはや新しい時代に対応する政権担当能力も政策遂行能力も失ってしまっていることを意味するものであります。(拍手)  このような集団を率いて、総理、あなたは「たくましい文化と福祉国日本」をつくろうと言明されたのであります。あなたは、本当にそのことを国民に約束できるのでありましょうか。また、国民はあなたのそのような公約を信用するとお考えになっているのでありましょうか。私は、決して野党の責任を回避するものではありませんけれども、あなたの日ごろの政治改革に関する考えは、このような自民党一党政治の惰性を打ち破ろうということではありませんでしたか。総理の御所見を承ります。  さらに、中曽根さん、あなたは三木総裁の幹事長、福田総裁の総務会長でありました。そして、鈴木内閣では副総理格の重要閣僚でございました。あなたは、三木内閣のライフサイクル構想以下の自民党内閣の諸構想の自然消滅に対し、なかんずく鈴木内閣の「増税なき財政再建」の崩壊に対し、責任なしとは言えますまい。政党及び内閣の連帯責任という問題について、総理の御高説を承りたいものでございます。(拍手)  さらに、総理政治姿勢の中で国民が疑惑を最も深めている問題は、政治倫理憲法でございますから、特にこの二つについて総理の御所見を確かめます。  第一、政治倫理確立政策以前の問題でありますが、いまやわが国政治の最優先課題であります。新内閣にとっては格別そうでありましょう。総理が新内閣誕生以来の国民の疑惑を払拭されようとするならば、まず何よりもこの問題についての姿勢を明確にされることでございます。(拍手)  それは、一つ議院証言法改正証人喚問について、二つには政治倫理委員会設置について、総理が従来の議会任せの態度ではなく、みずからのリーダーシップによって速やかにこれを実現させることであります。昨日来の御答弁のように、目下これらは議会で論議中という逃げの姿勢、あなたが否定されたではございませんか、その逃げの姿勢ではだめなんです。御所見を承ります。  第二、憲法問題についての総理のこれまでの言動は、いろいろな憶測を生んでおります。この際、この問題についての総理の真意と内閣方針を明らかにされることを要求いたします。  ただし、昨日来の答弁を承りました。問題を一点にしぼりますけれども総理は昨日来の御答弁の中で、新内閣改正問題を政治日程に上せる考えのないこと、このことは明らかにされました。しかし、基本的な問題は総理自身のお考えでございます。したがって、総理は現行憲法基本理念は高く評価すると言われて、その基本理念の中で現行憲法の平和主義をも絶賛されております。けれども総理は、従来のこの平和主義と憲法第九条との関係に疑念を表明されておられたのではございませんでしたか。今後も総理は――この内閣じゃございませんよ、今後も総理は第九条は改正の必要なしと考えておられるのか、この点を特に明確にされんことを望みます。(拍手)  次に、内政の緊急課題である財政再建、不況対策及び行政改革について順次お伺いいたしますが、それに先立って、これらの課題に取り組む政府基本態度につき、要望を申し述べまして、総理の御所見を伺います。  第一に、この三つの課題は一応別個の問題ではありますけれども、それらは相互にきわめて深く関連し合っております。その意味では、これらは総合政策として一体的かつ計画的に取り組まるべきものでありましょう。  第二には、これら課題政策遂行にはいずれも国民の大きな犠牲と負担を伴うものであります。したがいまして、その実行に当たっては、特別に国民の深い理解と協力が必要不可欠でございます。このような二つの考え方を基礎に、私はこれらの課題に取り組む政府に対して、次のような基本態度要求いたします。  すなわち、第一に、国民に忍耐を要求しようとするならば、その前に、政府みずからが最も苦しい対応に取り組み、国民期待に沿った成果を上げる姿勢を明確にすること、これが行財政改革に取り組む政府基本態度でなければなりません。  第二に、その一番大事な、国民の目下の最大の不満は、負担の不公平感でございます。まず、この不公平感を払拭する政策から着手する態度がとられなければなりません。したがって、所得税の大幅減税など税負担の公平化政策を優先することはもとより、行財政改革自身が福祉切り捨てとか、負担の弱者へのしわ寄せなどという、そういう批判にさらされるような態度は断じて避けなければなりません。(拍手)  第三に、同様に、目下の国民の最大の心配、最大の不安は将来展望の不透明にあります。なかんずく経済の先行き不安は生活に直接結びつく問題でございますから、不安中の最大のものでございます。政府は、この不安解消に全力を傾ける政策態度をとらるべきであります。  第四に、行財政改革は、行政の根本にメスを入れるものでございますから、従来の行政機構の枠組みの中のセクト的官僚組織に依存しておっては、その実行は不可能であります。政治そのものがリーダーシップを発揮しなければなりません。  以上、四点を特に要望いたしまして、これに対する総理の御所見を伺います。  具体的問題に入って、財政再建から伺います。  第一、総理はこの問題に関する鈴木内閣の二つの公約のうちで、五十九年度赤字国債脱却方針はこれを見直すことを言明されました。事実上、不可能となったのでありますから、一応やむを得ないことでございましょう。しかし、総理は、その前内閣方針が不可能になったのは何ゆえなのか、その主たる原因はどこにあったと考えておられるのか、御所見を承ります。  ただし、所信表明において、総理は、国際環境の変化をその理由に挙げられましたけれども、その弁解だけでは私は納得いたしません。厳しい国際環境は突如としてあらわれたものではありません。これを見込んだ経済方針も可能でありましたでしょうし、環境変化に即応した経済運営や計画変更が、もっと早く行われなければならなかったことも事実であります。  それを怠ったのはまさに政府自身であります。したがって、私は、計画破綻の原因は明らかに政府経済運営の失敗にありと断じます。(拍手)これを他に求めようとするのは、まさに責任回避の態度であると言わざるを得ません。私は、この反省の上に立たない限り、いかなる再建計画も成功する見込みがなかろうと存じます。総理の御所見を伺います。  同時に、五十九年度を放棄されましたのでありますが、それにかわって立てられようとする計画の新目標年次をどの辺に大体考えておられるのか、明らかにされたいと思います。  第二、総理は、「増税なき財政再建方針はこれを引き継ぐ、こう言われる。先ほど来御答弁があったとおりでございます。しかし、その引き継ぐと言われながら、所信表明の中で、先ほどもお述べのように、その基本理念に沿いつつ、その見直しを行うと表現されました。この表現の微妙な変化は、具体的に何を念頭に置かれているものか、重ねてその真意を明らかにされたいと思います。  それは、大型間接税導入を否定しながら、直間比率の見直しという名のもとに、物品税、酒税、揮発油税、印紙税など、既存税制の大幅増税を考慮してのことなのか。もし直間比率の見直しを行うというのでありまするならば、先ほど私が述べました方針に従って、所得税など減税政策を最優先させる方向で着手すべきであります。この点を中心に、総理の認識される「増税なき」という意味、増税なしという意味、それは新税によるものだけではなくて、既存税制による大幅も含めておると考えるのでありますけれども、そのことを明確にされたいと存じます。  第三、従来の「財政の中期展望」にわおる新しい財政中期計画の策定は、今後の政策方向を中期的に展望するため欠くべからざるものであります。いまや財政問題は、単年度計画よりも中期的展望の方がはるかに重要になったからであります。しかしながら、この新中期計画の策定は、いま政府の中で、なかなかもやもやした感じに私ども受け取っておりますが、現在の進展状況を明らかにされることを望みます。あわせまして、予算案との同時提出をここに要求して、所信を求めます。  次に経済運営、不況対策について伺います。  現在、不況は、多くの同僚が述べられましたように、倒産、失業という社会問題に発展しながら、一段と深刻の度を深めております。前内閣の手で決定された、先日来の、先ほど述べられておりますとおりの総額二兆七百億円の総合経済対策は、私どもの見るところでは、財政当局の主張に傾斜した内容となっておりますために、有効需要を生む効果にはなかなか結びつきそうにありません。その上、人事院勧告凍結問題が地方公務員や恩給、年金などにまで発展すれば、それらの抑制金額は一兆数千億円にも達し、これに基づく消費支出の抑制は、先刻の総合対策を完全に帳消しにしてしまいそうであります。  新内閣は、この不況問題に今後どう対処されていく方針なのか。情勢を見守りながら慎重に対処するという意味の昨日来の答弁が繰り返されております。これでは答弁になりません。御答弁の中にもありました機動的対応とは、一体どのような、内容を持っての対応なのであるか、公定歩合の問題も含めながら、そのことについて明らかにされることを要求いたします。  さらに、鈴木内閣財政再建路線が崩壊し、その経済的な総合対策も不透明となった現状では、まさに経済政策の指針が失われたままの状態であります。それが国民に、言い知れない一層の不安感を与えておるのであります。この不安感の解消が何よりも大事だということは先ほど申し上げたとおりでありますから、したがって、政府は、その要望にこたえるためにも、いま経済政策の全体的な構図をちゃんと描いて、将来への展望を明らかにすることを急がれるべきであります。それが新しい経済五カ年計画の策定だと思います。しかしながら、その作業もなかなか――私どもは進捗状況について心配して見ております。その内容がどんなものであるか、方針を承りたいと思います。  わが党は、今後、内需拡大を中心に四、五%程度の中成長を安定的にもたらす、こういう構図を描きながら、その路線の上で行革財政再建も行うという考え方に立っておるのであります。  どうか、政府の新五カ年計画策定の構図をわれわれに、特に想定さるべき成長率などとともに、方針を明らかにされたいと思います。あわせまして、この作業の進展状況を重ねて伺います。それは、同時にまた、同じように来年度予算編成に間に合うようにされなければならないことを特に要望いたしておきます。  次に、行政改革について、その第一点として、行革の目的及びその進め方について伺います。  臨調基本答申は、このことについて、第一に「活力ある福祉社会の建設」、第二に「国際社会に対する積極的貢献」の二つの大きな目標を掲げております。しかも、この目標はほぼ国民の合意を得たかに見えます。したがって、行革の取り組みに当たっては、まず、この二大目標に沿った理想的将来像を描き、その実現に向かって政府国民とが一丸となって協力する体制を整えることから始めらるべきであります。  しかるに、政府は、そのような総合的行革の準備を怠り、いたずらに大蔵省的歳出削減や福祉切り捨てのみを先行させようといたしました。その結果、このような近視眼的歳出削減のみが行革の目的であるかのような錯覚を生ぜしめております。年金など福祉の根幹を守り、発展させるためにこそ、行政のむだを省き、機構の簡素化を行うことが行革の本旨であったはずであります。(拍手)  行革本来の行革を着実に進めるためには、政府は総合的な行革実行プランを提示し、国民に明らかにするとともに、われわれ議員に対しても明確にその方針を示すべきであると考えます。総理の所信いかん。  さらに、この際、人事院勧告仲裁裁定問題につきまして、行革との関連において総理見解を重ねてただします。  御承知のとおり、この制度公務員労働基本権制約の代償として設けられたものであり、公務員給与決定に関する基本的ルールであります。したがって、政府が単に財政事情を理由にこの基本ルールを根本的に覆すとすれば、それはまさに本末転倒であります。そのような暴挙は公務員ストに対する違法性の根拠を失わしめ、一方、行革路線に従って合理化に協力してきた関係労組の努力を逆なでするものでもあります。(拍手)かくては、行政における労使関係を混乱に陥れる結果と相なりましょう。  臨調答申も、その最初に、人事院勧告制度、仲裁制度は維持され、尊重さるべきであると明記しております。そして最後に、人事院勧告などの実施に伴う総経費の膨張は、新規採用の抑制、事務事業の整理、民間委託、定員削減などによって極力抑制すべきであると締めくくっておるのであります。  総理にお伺いいたしたいのでありますが、政府は、このような答申後段に述べられているような総経費抑制措置をいかほど行ったのでありましょうか。総理の長官在職の二年間に、何人の新規採用が抑制されたでありましょうか。わが党の調べによりますと、五十六年度も五十七年度も、新規採用人員の正確な数字すら不明ということでございました。  政府としてまずなすべきことは、臨調答申のとおり、総経費抑制に全力を挙げることであります。すでにILOの勧告も行われている点も考慮して、政府は速やかに凍結方針を撤回すべきであります。総理責任ある答弁を求めます。(拍手)  次に、対外関係に移ります。  総理は、先ほどの御答弁の中で、国際情勢基本的には変わっておらないと言われました。まさに、私も現下の国際情勢はきわめて不透明であると考えますが、しかしながら、一つの転機を迎えているとも見えます。中ソ和解への新たな模索が進められておりますし、米ソの対話も偶発核戦争防止策などを中心に、積極化の兆しもございます。米ソ対話は、米欧の関係修復を基底に、対ソ経済制裁の緩和へと発展することも予想されます。その原因でありましたアフガニスタン問題やポーランド問題も変化の徴候を見せております。これらいずれも緊張激化の方向ではございません。  アンドロポフ新政権が生まれましても、ソ連の平和は不敗のソ連軍の存在によってのみ築かれる、こういう考えの基本戦略や、米レーガン政権の強いアメリカ志向の基本方針は変わりますまい。しかしながら、世界各国の軍拡の負担と戦争の恐怖から少しでも遠ざかりたいという願望とその方向への模索は、次第に高まっております。ここに、私は、一つの転機とも見える国際政治の枠組みの流動化を感じるのであります。  いまや、わが国におきましても、経済大国としての国際責任が強く叫ばれております。私は、この内外政治的タイミングをとらえ、わが国世界政治の対話路線推進に向かって積極的な平和戦略に着手すべきであると考えるのであります。この立場から、私は、わが党の「政争は水際まで」との党是に従いまして、平和戦略への五つの提言を行いたいと存じます。  その第一は、世界の最大の関心事である核軍縮中心に、米ソの対話路線推進のため、日本が積極的な提案と行動を展開することであります。私が従来から主張しておりました、米ソ首脳会談へ向けて両超大国に働きかけることなどの行動がそれでございます。  第二は、日米関係の改善修復でありまして、今回の総理の訪米はまさにその第一着手でなければなりますまい。  第三は、ソ連新政権の誕生に対応し、積極的に日ソ関係の打開に努めることであります。新外相の訪ソや、総理自身の訪ソも考慮すべきでございましょう。  第四は、いわゆる南北問題的観点に立って、アジア・太平洋地域の平和と繁栄のためわが日本が主導的役割りを果たすことであり、第五は、世界経済の根幹を揺るがす保護貿易主義の台頭を排し、自由貿易を守り抜くためのあらゆる努力を重ねることであります。  以上の五つが私の平和戦略への提言でございますが、これについての御所見を伺います。  あわせて、総理は現在の国際情勢をどのように認識されておられるのか、その中でわが国の果たすべき国際的責任についていかなる方針で臨まれようとされるのか、総理の御所見を承りたいと存じます。  次に、今回の総理の訪米に関連して、若干の具体的問題につき伺います。  第一、アメリカの日本に対する防衛努力への要望は、わが国においてはそのまま軍事大国化への危険に通じ、国民不安につながりかねません。したがって、この問題の対米交渉に当たっては、その前提として、政府が、わが国軍事大国にならないための歯どめ的防衛原則を明確に国民に示すことが必要であります。(拍手)  歯どめ原則の一つであったところの防衛費GNP一%枠につきまして、きのうからきょうまでの総理の御答弁で、必ず「現在のところ」という文句をつけられまして、現在のところこれを変更する必要はないと考えると繰り返して述べられております。その意味は、総理、五六中業実施と一%枠との矛盾が遠からず避けられない情勢であるにもかかわらず、その場合も一%枠を守るという方針に変わりはない、こういう意味なのか。これは、私は一月の代表質問で同じように聞いているわけですけれども、抽象的に逃げばかりの答弁でございます。明確な答弁を求めます。(拍手)  さらに、来年度防衛予算につきまして、昨日以来繰り返して、防衛予算についてそれを聖域にはしないという意味の御答弁がございますが、現在の概算要求は明らかに他諸経費に比しまして突出でありますが、これをどうさばかれるおつもりか、伺います。  あわせて、アメリカは恐らく今年度程度の伸び率を求めるでありましょうが、これにはどう対処される方針かも明らかにされたいと存じます。  第二、軍事技術協力問題につきまして、総理は、昨日からきょうにかけての御答弁で、武器輸出三原則と安保条約の両方を念頭に置きながら妥当な結論を出す、こういう御答弁を繰り返しておられます。これを両立させ得るような妥当な結論が導き出せなかったために二年近くも進展のない交渉が続いていたのではございませんか。そのことを私どもは聞いておるのであります。  たびたび私が指摘しておりますように、アメリカはこの問題につきましては、この問題がわが国の三原則に抵触することを十分承知の上で迫っているのであります。したがって、わが国の対応は、従来どおり三原則を厳守するか、アメリカをその適用枠から外すかの二者択一であります。総理はいずれを選択されようとされるのか。同時に、総理は今回の首脳会談において、この決着を明らかにつけられる御方針か、あわせて承りたいと存じます。このことは、特にわが国の防衛方針の今後につきまして一つの岐路ともなる重要な選択でございますから、私は問題を逃げずに、訪米に当たっては、その前にわが国民代表のこの議会に対して、相当にはっきりした態度を明らかにされながら対処されることを望みます。  第三、わが国の市場開放問題につきまして、アメリカはECと共同要求の形で早期かつ具体的な対応を求めておりますけれども、新内閣のこの問題に対する方針も明らかにされることを望みます。  時間が参りましたが、最後に私は二つの要望を申し上げ、重ねて総理の御所信を伺います。  第一、現在の日米摩擦の原因の中では、歴代内閣の先送り的不決断がその責任の相当部分を負わなければなりますまい。その意味では、歴代自民党内閣責任はまことに重大であります。この反省の上に立って、今回の総理の訪米は決断されたものと私は思います。私はその決断に賛意を表するものではありますが、この際、特に申し上げたいのは、歴代首相をして諸懸案の決断をちゅうちょさせたのは、それは優柔不断ということの前に、根本的にはアメリカの要求日本にとって過大であったからであります。  それにはわが国経済的エゴイズムに基づく部分もあったでしょうが、両国の立国の基本的相違によるものもあったはずであります。防衛摩擦はその象徴的なものでありましょう。したがって、これらの問題についての総理の決断に際しては、総理があくまでも現行平和憲法の精神を踏まえ、慎重に対処されんことを要望するものであります。(拍手)  第二、いまや国民政治不信は頂点に達したかに見えます。その根底にあるものは政治腐敗であります。しかも、この腐敗の構造は、ひとり政界にとどまらず、役人、教師から医師、警察官に及び、日本社会全体を覆うかに見えるのであります。かくて、まじめな国民をして心の底からの憂えを深からしめておるのであります。そして、国民は、この風潮の一掃をまず政界からと、これを政治倫理確立に求めておるのであります。(拍手)  政治は最高の道徳でなければなりません。総理が、みずからの施政のためにも、わが国家民族のためにも、この問題に対し確固たる決意をもって立ち向かわれんことを重ねて重ねて要望申し、総理の御所見を求めて質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  8. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 佐々木議員の御質問お答えを申し上げます。  まず、私の就任に対して御祝辞をいただきまして、感謝申し上げる次第でございます。(拍手)  歴代の自民党政策及び自民党内閣政策について種々御批判をいただきました。  私は、歴代自民党内閣はそのときどきの重大問題をかなり適切に解決して時代に対応してきたと考えております。自民党のこの政権担当能力について国民の御信頼が継続しているから政権は維持されてきているのではないかと思っております。(拍手)よく、政治評論家は言っておりましたが、自民党政権交代については絶妙なタイミングを知っている、この時局に対応するについて非常に適切なバネの力を持っておる、そういうことを評論家から言われておりましたが、私たちがこういうことを申し上げるのは僣越でございますけれども、しかし、国政を維持し発展させていくために、歴代自民党員及び内閣が懸命の努力をして時代に即応するようにしてきたことは事実であります。(拍手)  私も、与党自民党の一致した御支援をいただき、かつ野党の御協力をいただきまして、清潔にして効率的な政治実現努力してまいりたいと思っております。そして、問題から逃げずに、むしろその問題の解決に立ち向かうという勇気を持って前進してまいりたいと思う次第でございます。(拍手)  さて、議院証言法等々の御質問がございましたが、議院証言法改正証人喚問問題、政治倫理委員会設置問題等々、いずれもこれは国会議員の規律に関するものでございまして、国会としての重要事項でございます。これらの問題につきましては、議院運営委員会や議会制度協議会等におきまして各党間で十分御協議をしていただいておる問題でありまして、その推移を見たいと思うのであります。行政府の長といたしまして、指図する立場にはございませんが、各党の一致した御意見につきましては、早期にそれを実現するように心がけてまいるべきものであると考えております。  憲法問題につきまして御質問がございました。  現行憲法民主主義、平和主義あるいは基本的人権の尊重、国際協調主義等は、すぐれた理念であって、今後も堅持していくべきであると昨日も申し上げたとおりでございます。  また、憲法九十六条におきましては改正手続もあり、あるいはさらに憲法につきましては遵守の義務も規定されておりますが、いずれにせよ、よりよきものにするために議論し、研究し、あるいは勉強し検討することは、これは当然のことであると考えております。しかし、昨日来申し上げますように、憲法改正政治日程にのせる考えは目下のところありません。  九条改正に関する私の考えを御質問になりましたが、このような個々の問題について個人的意見を申し上げることは今日差し控えたいと思っております。(拍手発言する者あり)  行政改革財政再建経済安定に対する基本態度について御質問がございました。  政府といたしましては、国政の当面する最も重要な課題といたしまして、行政改革財政再建経済の安定及び対米関係、この四つを挙げておる次第でございます。当面の情勢は難問が山積しております。しかし、この打開のためには、国民各層の御理解と御協力をいただきまして全力を尽くしてまいるつもりなのでございます。  そして、行政改革につきまして筋の通ったことをやれという御趣旨でございましたが、私も行管長官時代以来、やはり行政改革については道義の通ったやり方が根本に必要である、そういう意味におきまして、やはり痛みを受けるのは第一に政治家であろう、先憂後楽の精神に基づいて、政治家、それから公務員、それから最後に国民が痛みを受ける、こういう順序が筋として正しいということも申し上げてきた次第なのであります。  政府といたしましては、行政の徹底した効率化、簡素化を行い、行財政の対応力の回復に努めてまいります。そして、現在の厳しい情勢につきまして国民の皆様方の一層の御理解をいただき、御協力をいただきたいと思っております。  行政改革は過去に向かってやるものではなくして、将来、新しい時代を踏まえまして、それに対応し得る展望力を持った政府をつくる、あるいは行政をつくるという希望を持った改革が行政改革であるということを強調したいのであります。そして、各般の具体的課題につきましては、時代の変化と国民一般の要請にこたえ得るような正しい政策方針を設定して、機動的かつきめの細かい政策達成努力してまいりたいと思っております。  中央諸官庁の整理統合地方出先機関整理統合等について御指摘をいただきました。  これらにつきましては、現在、臨調におきまして鋭意検討中でございまして、その答申をいただき次第、尊重して実行してまいる覚悟でございます。  さらに、五十九年度特例公債脱却問題について御質問がございました。  何ゆえこういうふうになってきたかという御質問でございますが、やはり第二次石油危機を契機とする世界経済の低迷、わが国財政を取り巻く環境の大きな変化が一つありました。しかし、一面において、そういう大きな忍び寄る変化があるにかかわらず、税収等について従来の惰性のままの見解で行政を行ってきたという結果もやはり否定するわけにはまいりません。その結果、五十九年度特例公債依存体質からの脱却はきわめてむずかしくなったということを率直に申し上げておるわけでございます。  今後の財政再建の進め方につきましては、五十八年度予算を厳しい歳出削減を中心にして編成いたしますとともに、この予算編成も踏まえまして、今後慎重に対処してまいるつもりでございます。  経済計画財政再建について御質問でございましたが、これらについては後で御答弁申し上げます。  「増税なき財政再建」の基本方針は、これは堅持してまいります。安易に増税を念頭に置くということではなく、まず行政の簡素効率化、制度施策の見直し、削減に努力を集中するということでございます。  また、歳入面につきましても、「増税なき財政再建」の理念に沿いつつ、全般的に見直しを行いたいと思っております。  所得減税について再三御質問がございましたが、実際、私も所得減税を財源上可能ならばできるだけ実施したいという念願を持っております。これらにつきましては、大蔵委員会小委員会において検討中でございますので、その結果を見守りたいと思っておる次第でございます。  さらに、財政の中期計画について御質問がございました。  財政再建は中長期の計画に従って実行すべきことは当然でございまして、従来から中期的視点に立った財政運営を進めてまいりました。毎年度「財政の中期展望」を作成しておりますが、新しい「財政の中期展望」につきましては、新経済計画の検討状況、五十八年度予算編成状況等を見きわめつつ、その作成について検討してまいりたいと思っております。  予算編成時にこの新しい展望経済計画を提出せよという御趣旨でございましたけれども努力はしてみますが、目下のところそれは困難ではないかと考えております。  不況対策について御質問がございました。  不況対策につきましては、過般、総合経済対策を行いまして、今次の補正予算につきましても、その費用について御審議を願っておるところでございます。今後とも情勢をよく見きわめまして、機動的な政策運営を考えてまいるつもりでございます。  公定歩合の問題は、もとよりこれは日本銀行の所管でございます。金融政策全般の運営は、内外情勢を慎重に見守りながら、引き続き適切かつ機動的に対処していくべきものであると考えております。  新経済政策につきましては、内外の諸情勢の変化に対応して、現実的基盤に立脚しながら、活力ある、展望力のある経済社会、充実した国民生活実現するという新計画を目指しております。  財政再建はこの計画においても重要な課題でございまして、この新計画につきましては、経済審議会の場でいま各界から御意見を伺い、十分な検討を行って、よりよい計画の作成を念じております。  さらに、総合的な行革実行プランいかんというお話でございます。  われわれが目指す行政改革は、国の将来に明るい展望を開き、時代の変化に対応し得る政府や行政をつくるための行政改革でございます。それを実行するためには、一面において、行政の徹底した合理化、簡素化あるいは歳出の厳しい見直し等々、時代の要請に即応し得るような行財政の改革をやって、その対応力を回復するということが第一なのでございます。  行政改革は、もとより、これは立法、司法、行政と三権に分かれておりまする中の、この統治権の中の行政分野の大改革でありまして、財政改革だけではございません。文教も外交福祉も防衛もみんなこの行政改革の中に入るわけでございます。したがって、行政改革すなわち財政再建と考えることは間違いでありまして、行政改革の方はさらに幅の広い、底の深い問題であります。  しかし、この財政再建ということが機縁になりまして、行政改革がいま促進されつつあることも厳然たる事実でありまして、ある意味におきましては、両方は車の両輪のような関係で進められている現状である。しかし、考え方としては、行政改革財政再建とは別のものである。そのように考えております。  人事院勧告につきまして御質問がございました。  国家公務員法の趣旨から見ましても、公務員給与については、政府といたしましても、最大限の努力をすべきものと考えております。しかしながら、現在の財政状況等を考えてみますと、まことに遺憾であり、残念でございますが、先ほど申し上げましたような見送りの措置を講ずなければならなくなったのでございます。  総人件費の抑制という問題につきましては、従来からこれも努力しておりまして、今後とも厳しい定員管理を行って、人件費の累増を抑制していきたいと思っております。  五十七年度におきましては、私、行管長官をやっておりましたが、国家公務員等におきまして千人の実質的縮減をやっております。これは、いま国立医科大学が各県にできておりまして、一つの医科大学ができて病院をつくると、三百人以上の人間が要るのでございます。そういうような事態がいま錯綜しておる折に、千人の実質的削減をやるということは、かなりの努力であったのであります。  ILOにつきましては、今回の措置について理解を得られるよう、政府としても努力してまいります。  仲裁裁定につきましては、与野党間でその取り扱いに関して合意がなされましたことを承知しております。先ほど朗読したとおりでございます。  国際情勢の認識につきましては、ソ連指導部の交代、中ソの話し合いの開始等の動きが見られますけれども、米ソ間の緊張が緩和しているということはないと思います。また、激化しているという状態でもないと思います。そういう意味において、現在の状態が過渡期の状態であるのか、あるいは引き続いてこの緊張が持続するのであるか、これは慎重に見きわめる必要があると思っております。  相互依存関係の深まった今日の国際社会におきましては、いかなる国も、永続的な世界の平和と繁栄なくしては自国の平和はありません。わが国といたしましても、その経済発展、国力の増大に伴い、果たすべき国際責任と役割りが増大していることも十分認識する必要がありますし、さらに、日米関係をその外交の基軸とし、政治経済上の基本理念を共有する西側先進民主主義諸国との連帯と協調を図るとともに、近隣アジア諸国を初め各国との間の友好協力関係を維持発展させ、また、わが国立場から政治的、経済的役割りを果たすことによって、世界の平和と繁栄に積極的に貢献してまいりたいと思っております。  対ソ関係を重視するお話がいまございましたが、日本ソ連との関係におきまして懸案を抱えております。どっちかと言えば、ソ連は非常に手ごわい相手であると思っております。しかし、その一番手ごわい相手と対話のルートを持ち、常に対話を持続しておくということは、平和維持のためにも非常に大事な点でございまして、その点につきましては、今後も努力してまいるつもりであります。  平和戦略について五つの御提言がございました。これらの御提言につきましては非常に共感する点もあり、貴重な御意見として参考にさせていただきたいと思っております。  防衛費の問題につきましては、GNP一%の歯どめを御主張、この問題について御言及いただきました。  防衛の問題は、みずから自分の国を守るということが第一義でございまして、第二義が、先ほど申し上げましたように、友好国と安全保障体制を結んでそれを補完していく、第三番目に、その国際的環境づくりを行う、あるいは備蓄、そのほか総合安全保障を展開するということを申し上げました。  日本の防衛問題について、アメリカからいろいろな期待や意見が寄せられておりますが、私はこれは圧力であるとは思っておりません。日米両国の相互関係、信頼関係等を考えてみれば、これは協議であり相談であって、お互いが日本の防衛のためによりよき方法を発見するための努力のあらわれである、私はそのように考えておるのであります。(拍手)  「防衛計画の大綱」の水準を目標として、財政事情、国民世論等を考慮しつつ、今後も着実にかつ節度のある防衛力を整備してまいるつもりであります。  防衛費GNP一%に関する昭和五十一年の閣議決定は、現在のところ変える必要はございません。この「現在のところ」という意味に御言及がございましたが、これは、日本経済の成長力あるいは物価の関係あるいは防衛費の枠の構成ぐあい等々によりまして変動する要因でございまして、いつ、どのようになるかということは、これを的確に明言することは困難でございます。(拍手)  さらに、五十八年度の予算編成における防衛費の取り扱いの問題でございますが、厳しい財政状況にかんがみまして、防衛費を必ずしも聖域とせずに同じく厳しく検討してまいるつもりである、しかし、一面において国際関係も考慮しなければならない、このように考えております。  さらに、日米防衛技術交流の問題について御質問がございました。  武器輸出三原則、それから政府の統一見解日米安保体制、この関係をどういうふうに処理するかという厳しい御質問でございました。これらにつきましては、専門的な技術的な問題がございます。また、条約の解釈の問題等もございまして、いま関係各省におきまして鋭意検討中でありますので、答弁は差し控えさせていただきます。  さらに、市場開放問題について御質問がございました。  いま日本にとって一番緊要なことは、保護貿易の台頭を抑えて、自由貿易秩序を継続するとともに、世界経済の再活性化を実現することに全力を注ぐことであると考えております。このため、昨年来一連の市場開放対策決定して、逐次実現しております。さらに、内需中心の総合経済対策もいま実行すべく進行中でございます。今後これらの政策を着実に進めまして、問題の解決に努力してまいりたいと思います。  最後に、佐々木議員からは、いままで政策の先送り、不決断の問題があったと申されました。私は、非常にむずかしい、重大な問題の累積の今日でありますから、必ずしも先送りと考えるわけにはまいらぬものがあると思います。また、問題によりましては、先方の日本に対する理解の不足の問題もあって、この理解を得るためにかなり時間と労力を要したという問題もあると思います。  しかし、防衛問題等については、日本の過去において防衛努力が必ずしも十分ではなかった点もあると私は考えなければならぬと思っております。  さらに政治不信、綱紀の粛正、これらの問題につきましては全く同感でございまして、私自身、政治家としてみずから戒めまして精進し、また、政界全体の問題としても努力してまいりたいと思う次第でございます。(拍手)     ─────────────
  9. 福田一

    議長福田一君) 不破哲三君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔不破哲三君登壇
  10. 不破哲三

    ○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、中曽根首相に質問するものであります。  今回の政権交代は、鈴木前首相が、国民不信の声の高まりの中で、みずからも政策の前途に見通しを失い、政権を投げ出すという異例の形で行われました。その後を受けた中曽根首相が、破綻した鈴木政治の継承を無反省に唱えること自体、きわめて理解しがたいものがあります。  しかし、多くの国民が、総理の言動や新内閣の構成から、より強い危惧を抱いているのは、この内閣が、国民の希望と利益に反する一層反動的な方向で、自民党政治の危機に対処しようとしているのではないか、この点であります。この危惧は、内閣への不支持が発足直後としては空前の高率を示した一連の世論調査に示されています。  私は、こうした見地から、問題を内外政策基本点にしぼって、総理政治姿勢をただしたいと思います。  第一の問題は、政治道義の問題であります。  中曽根内閣への最大の不信が、ロッキード裁判への備えを最優先にした人事だという疑惑にあることは、総理も十分御承知のことと思います。私は、それを知りながら、あえて党・内閣人事を構成した総理の所信をまずただしたいと思います。  まず、灰色高官の問題であります。灰色高官とは、疑惑ありという言葉ではありません。総理が幹事長だった一九七六年九月に自民党が発表した見解にも明記されているように、ロッキード事件の金品を受領した事実はあるが、時効のために犯罪は成立しても不起訴となるとか、職務権限の関係から現行法規では刑法上の罪にならないとか、これが灰色高官の定義であります。二階堂、加藤両議員が、この定義による灰色高官に属することは、当時の内閣が検察側の捜査結果に基づいて国会に報告したことであり、本年六月のロッキード全日空ルート裁判の判決文にも、公式に記載されたことであります。  総理が、この認定に根拠なしとして、これらの人物を党と内閣の要職につけたのであるならば、当然国民の前にそのことを立証する責任があったはずであります。この認定は事実であっても、時がたったから不問に付したというのであるならば、これは当時自民党自身が天下に公約した、政治的道義的責任の解明とか浄化作用の発揮などの言明を、みずから投げ捨てたことであります。  いずれにしても、これは、総理所信表明で一行とはいえ触れざるを得なかった政治倫理確立や清潔な政治と相入れないことは明瞭ではありませんか。責任ある所信をただすものであります。(拍手)  次に、法務大臣の問題ですが、秦野議員は、これまで国会ロッキード事件弁護団と同じ趣旨の被告弁護の質問を行ったばかりか、ロッキード事件の捜査経過を直接取り上げて、法務大臣は指揮権発動を行うべきだったとする見解を公然と表明してきた人物であります。来年は、ロッキード裁判丸紅ルートの求刑、判決が予想される年ですが、こうした時期の内閣人事として、ロッキード捜査への法務大臣の介入を是とする人物をことさら法相に起用した真意はどこにあるのか、明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  また、この問題で国会での試金石となっているのは、一つ、現行証言法のもとでの二階堂、加藤両議員証人喚問。二つ、有罪判決を受けた佐藤孝行議員への辞職勧告決議。三つ、国会における航空機調査特別委員会の復活。この三点を直ちに実現することであります。国会を構成している第一党の総裁としての見解を問いたいと思うものであります。(拍手)  第二の問題は、日米安保条約下の軍備拡大と核兵器の問題であります。  総理は早くも来年一月の訪米を予定しており、日米会談では同盟関係の再確認が主題の一つになると報じられています。今日の日米間で同盟関係なる言葉が特別の意味合いを持っていることは周知であります。アメリカの軍政首脳部は、最近では、安保条約は日本有事、すなわち日本が他国から攻撃される危険に備えたものだという安保発足以来のごまかしの議論をもはや問題にしておりません。本年三月の米国議会でも、政府や軍の高官たちは、日本が単独で外国から攻撃される危険はないに等しい、問題は、世界の他の地域で米ソ対決が起こったときの対応であるということを口をそろえて証言しました。在日米軍のドネリー司令官に至っては、最近の対談で、「日本が中立でいられるような米ソの対立は存在しない」とか「全同盟国軍の軍事力を合わせる必要がある」とか、日本の参戦を頭から当然視する言明を行っています。すなわち、アメリカは、ヨーロッパであれ中東であれ、世界のどこで対決が始まろうと、日本が同盟国として参戦することを当然のこととし、その前提のもとで、三海峡封鎖とか一千海里シーレーン防衛などの作戦分担を日本に割り当て、その青写真に基づいた日米共同作戦や軍備拡大、兵器購入などをきわめて具体的に求めているのであります。対潜哨戒機P3Cなどの大量購入によって、日本が西太平洋ではアメリカ以上の対潜水艦兵力を持つことを求められているのも、この青写真の具体化にほかなりません。  アメリカの同盟国として、日本の国土と国民を対外戦争、第三国の戦争に参加させる今日の日米共同作戦とそのための軍備拡大を容認するかどうか、ここに日本の平和と安全と主権のために国政が問われている今日の最大の問題があります。(拍手日本国民に真に責任を負う立場に立つならば、アメリカの持ち出す青写真に無批判に従うことをやめ、それに基づく現在の軍備拡大計画などを中止し、根本から批判的な検討を加えるのが当然であります。その意思があるかどうか、総理所見を求めるものであります。(拍手)  次に、核兵器の問題であります。  レーガン政権が、アジアやヨーロッパを戦場とする限定核戦争の構想を唱え、みずから先に核兵器を使うことを辞せず、こういう先制核使用の宣言をしていることは、世界の諸国民を深く憂慮させています。それだけに、安保条約下にアメリカの極東最大の前線基地となっている日本で、政府首相が核兵器と核戦争の問題でどんな見解を持っているかは国際的にもきわめて重大な問題であります。  総理は、十二年前、佐藤内閣の防衛庁長官として訪米したとき、アメリカのレアード国防長官との会談で、核問題について幾つかの重大な言明を行いました。  その一つは、非核三原則の問題について、個人的見解と言いながら、核武装はしないが、米国の核兵器の導入、つまり持ち込みについては選択の可能性を残して留保しておくことが賢明であると提言したことであります。この提言は、核持ち込みについては事前協議があっても常にノーだという従来の政府見解を覆すものでした。当時、佐藤首相は私の質問に対して、これは内閣総理も関知しない中曽根個人の見解だといって逃げましたが、その中曽根個人がいまや総理となった以上、あいまいにすることは許されない問題であります。(拍手総理は、核持ち込みには選択の道をあけておく方が賢明だというこの見解をいまでも持ち続けているのか、それとも、あれはアメリカ側に調子を合わせたその場限りの発言だったのか、しかと伺いたいのであります。(拍手)  いま一つは、同じ会談で総理が、日本に対するいかなる攻撃にも米国が核兵器を含む兵器をもって対処するよう確認を求めたことであります。いかなる攻撃に対しても核兵器をということは、アメリカ側に核兵器の先制使用、言いかえれば核戦争の放火者、火つけ人となることを求めることにほかなりません。この地上に広島、長崎を再び繰り返させるなという被爆日本国民の声に共感する気持ちが少しでもあるならば、アメリカであれ、その他のどの国のものであれ、先制核使用といった計画や構想に対しては反対の声を上げるのが道理であります。それを日本の側から核の先制使用を求めるなどはもってのほかのことと考えますが、この点でも総理の考えは十二年前と変わっていないのかどうか、お聞きしたいのであります。(拍手)  いま指摘した会談の内容は、すべて総理自身の署名のある訪米報告書に記録されていることであります。昨年私がこの問題をただしたとき、総理は、報告書をつくった記憶もないし、そういう発言をした覚えもないと答弁しましたが、この報告書の第四節「総合成果と所見」では、総理自身を「私」と一人称で呼びながら、国務、国防両省ともリエントリー、つまり再導入、持ち込みについて事前協議事項として留保したいという私の考え方を歓迎したと、その提言を成果の一つに数え上げてさえいるのであります。記憶がないといった、すでに陳腐となった逃げ口上に訴えることなく、総理らしい責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)  関連して伺いたいのは、核兵器使用禁止条約に対する態度の問題であります。  去る十一月二十三日、国連第一委員会でこの条約促進の決議が賛成百三、反対十七、棄権九という圧倒的多数で採択されました。しかし、日本代表は、従来の反対を棄権に変えただけで、賛成の国々には加わりませんでした。これは、「核兵器が二度と使われることのないよう実効ある国際的措置をとること」を国連で強く訴えよとした本年五月の国会決議と全く相入れない態度であります。核不使用のとの決議案は、あすにも国連総会本会議に上程される予定になっています。総理は、日本国民の願いを踏みにじったこの態度をも鈴木政治から継承するつもりなのかどうか、国連総会本会議に臨む態度をただすものであります。(拍手)  第二の問題は、行政改革国民生活の問題であります。  総理はこれまで二年間、行政管理庁長官として、臨調行革推進の衝に当たってきました。この臨調行革は、国民に痛みと犠牲を求めることだけに急で、国民批判の目を向けてきた国政上の多くの浪費、放漫は全く不問に付してきたと言わざるを得ません。  たとえば、急増の一途をたどる軍事費をとってみましょう。後年度負担も入れると、軍事費は八〇年度予算の三兆五千億円から八二年度の四兆三千億円へ、さらに八三年度要求の五兆二千億円へと、文字どおり突出した異常な膨張ぶりを示しています。しかも、さきに述べたとおり、これは日本の防衛とは無線の、他国の戦争への参戦の費用であります。国民にとっては、まさに国費の犯罪的な浪費と断ぜざるを得ないものであります。(拍手)世論調査でも、国民の多くが削減すべき予算項目の第一に挙げているのは、福祉や教育の予算ではなく、この軍事費であります。  総理、戦前、軍国主義が公認の国策とされていた時代でさえ、軍部を抑えて、軍縮財政危機解決の道を求めようとした内閣があったではありませんか。国民立場に立って行政改革財政再建に取り組もうというのであるならば、軍縮を国際舞台での外交上の一片の言葉にとどめることなく、現実に国内の施策の第一の柱とすべきではありませんか。見解を求めるものであります。(拍手)  大企業に対する巨額の補助金も、臨調は聖域としてついに手をつけませんでした。これらの補助金が特定の大企業だけでなく、日本経済全体に役立っているなどといった政府のこれまでの弁明は、事実の前には全く空疎であります。実際、私たちが通産省提出の資料から試算してみますと、一九七八年から今年度までの五年間に、技術開発の名目で大企業が受け取った補助金は、通産省所管分だけでも、三菱重工二百八十三億円、日立製作所二百十三億円、川崎重工百六十一億円、東芝百三十八億円、石川島播磨百十一億円に上ります。中これに対して中小企業への技術開発補助金は、同じ期間にわずかに総計百五十一億円であります。しかも、中小企業の場合には全額の返還が義務づけられているのに、大企業の場合はいろいろの理由づけで返還が免除されているのが普通であります。いま挙げた五大企業には、臨調会長の関係する企業が二社も含まれていますが、大企業一社への補助金が、日本の工業生産の過半を担う中小企業への補助金総額と同じか、その二倍に近いといった不公正は、まさに言語道断のものであります。(拍手)私は経済民主主義の上からも、大企業奉仕のこうした補助金政策に、量と質の両面からメスを入れることを強く求めるものであります。  臨調答申はまた、エネルギー対策、科学技術、国際協力などを国政の重点に位置づけていますが、これらの部分にこそ国策最優先の名のもとに常軌を逸した浪費が放任されていることも指摘されなければならない点であります。科学的にも産業的にもほとんど意義を失った二十年前の計画に、いまなお千二百億円を超える国費を投じ続けつつある原子力船「むつ」は、そうした浪費を示す氷山の一角というべきであります。  これらを野放しにしたまま社会保障、社会福祉の切り捨てや勤労者生活圧迫が行革の本旨だとするのならば、こうした行革国民の抗議と批判が集中するのは当然のことであります。私は、国民本位のむだと腐敗のない効率的な行政という本来の趣旨に立ち返って、行政行革基本方向の根本的な転換を行うべきことを、ここで強く提唱するものであります。(拍手)  臨調は、昨年の第一次答申の中で、長年にわたって定着した意識や制度の変革という方針を大きく打ち出しました。私たちはこれを、これまで国民生活の一定の支えとして働いてきた諸制度を一挙に廃棄しようとする企てとして、早くからその危険性を警告してきましたが、人勧凍結と仲裁裁定の棚上げは、老人医療の有料化に続いて臨調行革の危険な手法をまざまざと示したものであります。  法によって定められた人事院勧告制度などを無法に覆すこの暴挙を許すならば、第二、第三の攻撃が、同じ口実で国民生活の他の分野に及んでくることは必至であります。人勧凍結自体をとっても、その攻撃は恩給・年金生活者の全体を直接脅かしているし、さらに経団連首脳部は、これを民間の賃金抑制に連動させようと言明しています。日本では、賃金労働者は労働力人口の三分の二を占めています。この三分の二の所得が全体として凍結、抑制されるならば、政府経済白書でさえ消費不況の現実を認めざるを得ないでいる今日、その被害が中小企業・業者を含めた日本経済全体を覆うことは明瞭であります。(拍手) 私は、勤労者生活の防衛という見地からも、日本経済の民主的な立て直しという見地からも、こうした暴挙を直ちに撤回し、人事院勧告仲裁裁定完全実施措置をとることを求めるものであります。(拍手)  国鉄問題にも全く同じ性格の問題があります。臨調は、さき答申で国鉄の現状を分析したとしていますが、ついに触れなかったのは、国鉄の赤字の最大の原因一つが、いわゆる「日本列島改造論」に基づく採算無視の過大な設備投資計画にあったという事実であります。七〇年代の初めに、政府は、十五年後の一九八五年には工業生産も貨物輸送も四倍になる、それを賄うために新幹線を全国に張りめぐらして乗客は主にここに吸収し、在来線は貨物に充てるという全く空想的な計画を立て、設備投資計画を、それまでの十年間三兆七千億円から十兆五千億円に一挙に三倍近くふくれ上がらせました。その結果はどうだったでしょうか。貨物輸送四倍増という見通しは全く外れました。しかし、新幹線などの建設だけは強行されました。その否定的な典型が、一兆七千億円の巨費を投じ、土建業界の食い物にはなったが、政府の関係者からも未来永劫赤字と診断されている上越新幹線であります。国鉄当局の試算でも、年間一千億円の赤字が長期に続くと予定されています。  総理、各地の住民から足を奪おうとしているローカル線の廃止計画、これは確定した四十線全部合わせても赤字は百五十六億円、上越新幹線の赤字の六分の一ではありませんか。こういう不合理をそのままにして臨調答申をうのみにした分割民営化計画は潔く撤回すべきであります。(拍手)そして、いかなる人物や金脈が関係していようと恐れずに、赤字の根源を正面からついた再建計画を、勇気を持って練り直すべきであります。(拍手)  次に、税金の問題ですが、総理所信表明は大変抽象的でしたので、明確な見解をここで求めたいと思います。  まず、大型減税は、今日、圧倒的多数の国民の切実な要求となっています。実際、所得税の免税点はこの五年間、四人家族二百一万五千円で据え置きですが、物価上昇を考えると、今日ではこれを五十二万円引き上げて、ようやく五年前と同じ水準になるのであります。そもそも毎年の物価上昇を無視して減税をこの間放置してきたのは、歴代政府の許しがたい怠慢であります。懸案の今年度の減税に直ちに取り組むことを初め、来年度には、少なくとも一兆円を超える本格的な減税を確実に実行すべきであります。(拍手)  また、新内閣の閣僚の言動を見ると、一般消費税の名前こそ避けているが、大型間接税導入に道を開こうとする意向が強くうかがわれ、国民の間に不安を引き起こしています。この不安を解消するためにも、来年度予算だけの一時逃れの言明ではなく、少なくとも総理の在任期間中、大型間接税導入はしないことを明言していただきたい。総理見解をただすものであります。(拍手)  最後に、戦争観、憲法観の問題について伺いたい。  鈴木内閣のとき、教科書問題が国内的にも国際的にも大きな問題となりました。最大の焦点となったのは、太平洋戦争に対する評価の問題でした。日本とアジアの諸国民に惨害をもたらしたあの戦争に対して、侵略戦争としての明確な批判と反省の立場に立つかどうかは、過去の歴史の評価の問題にとどまらず、憲法前文に明記された、「政府の行為によつて再び戦争の慘禍が起ることのないやうにする」決意にかかわる今日の政治姿勢の問題であります。  総理は、かつて大学総長当時、青年を前に、大東亜戦争をどう見るかは日本人の根本問題だと言って、その評価を論じたことがあります。その論旨は、これが誤算によって敗北を招き、領土を失った暴走だったという点では国民史的な判決は出ているが、世界史的な判決はまだ早いというものでした。そしてあなたは、この戦争日本軍閥がやった侵略戦争だとする見方をアメリカから持ち込まれた太平洋戦争史観だとして退けつつ、あの戦争の産物としてアジア諸国が独立したではないか、アジアに黎明をもたらしたことも事実だなどと述べた上で、大東亜戦争やわれわれの昔の歴史にばりざんぼうを浴びせるがごときはもってのほかであると断じたのであります。  大東亜戦争という名称自体、戦犯東條内閣が真珠湾攻撃の四日後に、日本を盟主とする大東亜新秩序建設を目的とする戦争という意味で命名したものであります。名称まで侵略戦争時のこの呼称に固執しつつ、それへの批判を排撃する、この戦争観が一私人のものでなく、日本総理となった人物の戦争観であるがゆえに事は重大であります。  昨日は十二月八日、日本が中国侵略の戦争から太平洋全域に戦火を拡大した四十一周年に当たる日でした。太平洋戦争へのあなたの反省は、総理となった今日、なお、誤算と敗北によって領土を失ったから失敗だったというにとどまっているのか、それともあの侵略の歴史に真剣な反省を加えているのか、あなた自身の責任ある見解の表明を強く求めるものであります。(拍手)  こうした戦争観は、総理憲法観とも不可分のものであります。総理は、一九五〇年代の中ごろに独自の憲法改定要綱を発表したことがありますが、そこでは、軍隊の保持にとどまらず、徴兵制も可能にするように第九条を改定せよということが中心問題の一つとして含まれていました。  しかも、首相就任の日にあなたが外国人特派員協会会員に送ったあなたの政治信条についての文書の中でも、総理は、特に改憲の必要性という一項目を立て、憲法をできるだけ早く改定して安保を対等の軍事同盟に変えたいという当時のみずからの主張を引用して、この立場はいまも変わっていないこと、改憲が私の終局の目標であることをことさらに強調しているのであります。  総理は、憲法改定は党の仕事政府憲法に手をつけないといった党と政府の使い分けや、研究は自由だといった弁明で問題を取りつくろおうとしていますが、国民が恐れているのは、改憲論を堅持している中曽根総理のもとで、国民の意思とは無関係に憲法改悪の準備と計画が進行し、暴走することであります。  特に私が重視せざるを得ないのは、総理行政改革重要性を強調するとき、しばしばこれを第三憲政なるものの実現と結びつけていることであります。第三憲政とは、あなたが塾長をやっている青雲塾の綱領的文書によれば、現憲法下の日本を第二憲政の時代と位置づけた上で、これに取ってかわる新日本国民憲法を創定しようというスローガン、戦前昭和維新を唱えたいわゆる革新将校の再現を思わせる昭和革新運動なるものの行動スローガンではありませんか。  総理は、去る九月の青雲塾三十五周年の集会では、行政改革は救国政治断行の呼び水であるとし、青雲塾の綱領、原理等こそ、この救国政治を導く原動力となるべきだとまで宣言しました。  本来、国民のためにむだのない効率的な行政を築くべき行政改革を、政治体制の反動的な再編、なかんずく憲法改悪を目指す第三憲政運動なるものなどと結びつけることは、国民として断じて認めるわけにいかないことであります。(拍手)  総理は、政府と党の使い分けといった形式論理に逃げるのでなく、今日の日本政治責任を負う総理総裁として、自分みずからも、また自民党も、反動的な改憲キャンペーンと手を切ることを厳粛にこの国会で表明すべきであります。(拍手)  以上、私は、中曽根首相の政治姿勢についてただしてきましたが、これらはいずれも日本国民の前途、日本の民主政治の命運にかかわる重大問題であります。  私は、新内閣国民の利益と民主主義の道理、日本の平和と安全を無視して反動的な路線を歩むならば、日本国民の間で、この内閣とともに自民党政治の存続をも終わらせようとする革新の運動が、国民的規模で必ず成長発展するであろうこと、わが党は、非同盟・中立の日本、革新・民主の日本の旗を掲げてその闘いの先頭に立つことを表明して、質問を終わるものであります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  11. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 不破議員の御質問お答えをいたします。  いま一番最後の場面で、第三憲政とか、あるいは青雲塾のお話がございましたが、非常な誤解がありますので、まずこの点から申し上げてみたいと思います。  まず第一に、三十年ほど前に、私が憲法改正論を述べましたときに、徴兵制度について論じたことはあります。しかしこの際、徴兵制度をとるべしとする考えは全く持っていないことを明確にしておきたいと思います。  それから、外人向けのパンフレットを出したことは事実でございますが、このパンフレットは何で出したかというと、私が従来、外人から誤解されている点がありまして、やれ、右翼であるとか、あるいはゴーリストであるとか、あるいは軍国主義者であるとか、そういう誤解がありましたので、私が言動いたしました出典等を明らかにいたしまして、そういうものでないということを論証したのが、このパンフレットであるのであります。したがいまして、パンフレットで憲法改正をいまでも主張している、そういうようなことを言っていることはないのです。昔、こういう議論を持った、あるいは首相公選論はこういう環境のもとに唱えた、そういう説明を加えたのが外人パンフレットの内容なのでありまして、その点は誤解が及びますから、申し上げておきます。  さらに、いわゆる第三憲政論につきましてお説がございましたが、青雲塾を御紹介いただきまして、まことにありがとうございます。日本は自由主義の国家でございまして、言論の自由下にあります。個人としていろいろな政治理念を述べることは自由でありまして、共産主義を言うことも自由であれば、第三憲政を言うことも自由であると思っております。(拍手)しかし、内閣総理大臣としての立場はまたおのずから別でございまして、内閣総理大臣立場に立てばまた別の考えと立場をとるということを申し上げておきます。  さて、初めに戻りまして、まず二階堂議員あるいは加藤議員に関する御質問がございました。今回の組閣は、重ねて申し上げますように、仕事本位、人材本位で、派閥を超越して人材を簡抜したわけでございます。いままで順送り人事であるとかあるいは派閥均衡人事であるとか、厳しい批判をいただいておりました。そこで、これこれの仕事をやるために、これこれの人を充てた、そういうことを明確にしておるわけであります。  加藤議員と二階堂議員は、国会議員として長年にわたって誠心誠意、献身的に努力をしており、また、選挙民のたび重なる支持を得まして連続当選をしておる、有能な人材であります。また、自由民主党のためにも懸命に働いていただいておるわけでございます。そして、両議員につきましては、検察当局においていずれも刑事責任は追及できないものとされて、司法的にはすでに決着済みの問題であると承知しておるものでございます。特に、加藤議員のような若い、そして精励な、まじめな努力をしておる議員につきましては、一回チャンスを与えてあげて、そしてその能力や人物を見ていただく場所を与えるということも、政党政治を行う者の心がけの一つではないかと考えておるわけであります。  次に、秦野法務大臣の起用について御質問がございました。私は、秦野君につきましては従来から目をつけておりまして、この秦野君は、昔、子供のころは新聞配達をして苦学をしてきた人でありまして、新聞配達をしていたころ、警察官の職務質問があって、けんかして留置場に入れられた経験があるわけであります。そして、苦学をして私学を出て警視総監になるぐらいの人物でありまして、警視総監といたしまして、第一線の警察官に一番人気のあった警視総監の一人であります。そういうような世の苦労をなめ尽くした人にして初めて人権の擁護と法の番人としての資格もある、そう考えて選んだ次第でございます。(拍手発言する者あり)  秦野議員ロッキード事件につきまして国会等で発言しましたことは、これは法の適正な運用という面から、純粋な法理論的立場から発言をしておるのでありまして、具体的な事件について指揮権を発動せよなどとは言っておらないということを明らかにしておきます。  次に、議院証言法あるいは辞職勧告の問題等について申し上げます。  十二月七日の与野党国対委員長会談におきまして、自由民主党は、議院証言法については議会制度協議会におろして直ちに各党協議に入る、佐藤議員辞職勧告決議案、航空特別委員会設置問題については議運委員会において引き続き誠意をもって協議する、こういう態度を表明した次第でございまして、自由民主党総裁といたしましても、このような論議が進められることを希望しておる次第でございます。  次に、防衛政策基本について申し上げます。  わが国の防衛は、日米安保体制を堅持しつつ、平和憲法のもとに専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にならずに、非核三原則を堅持しつつ、自衛のため必要最小限度防衛力を整備するというものでございます。同盟国から参戦を要求されるというようなお言葉がございましたが、現憲法下、そのようなことは全くあり得ないことであると申し上げておきます。  次に、核問題について申し上げます。  この問題について、私とレアード国防長官との対話を引用なされましたが、あの私とレアードとの会談について報告書なるものは全く存在いたしません。(発言する者あり)これは重ねて明らかにしておきます。  レアード長官との対話におきまして、私が核兵器の導入を認めるような発言をしたことは全くありません。私は、当時、沖縄返還が重要な段階にありまして、日米友好親善のためにも、沖縄については核抜き返還をしなさいと勧告したのであります。核抜き返還でなければ日本国民の共感は得られないと強く迫ったのであります。それに対してレアード国防長官は、それはむずかしいと答弁したのが当時の状態でありました。また、日米安全保障条約の適用について、アメリカはいざというときに日本を守る決意があるのかと確認したのであります。そうしたときに、あらゆる手段を用いても日本を守る、英語でバイ・オール・ミーンズという言葉を使いまして、よく覚えておりますが、そういう答弁があったということであります。  われわれは非核三原則を堅持して、また、安保条約のもとで核の持ち込みについての事前協議が行われた場合には、政府としてはいままでのようにこれを否定する考え方に立っておるのであります。米国は有効な抑止力の確保との観点より核兵器を保有しておるものと理解しております。抑止の目的は、核、通常兵器を問わず、およそ武力紛争の発生自体を抑止することにあります。わが国としましては、かかる抑止力を確保し、もってわが国の平和と安全を確保すべく日米安保体制も保持しておるわけであります。  次に、核不使用決議に賛成しないのかということでございます。  従来、政府といたしましては、核不使用という約束については、核兵器の削減といった具体的軍縮措置のない限り、特に、存在を検証するという具体的措置を伴わない、そういう実効性のない状態のもとにおきましては、これは国際的な安全保障上問題があるという基本態度を持ってきたわけであります。このような問題のある核不使用決議についてわれわれはいままでは賛成し得ないと判断してきたのでございます。  しかし、御指摘の決議につきましては、国連総会第一委員会において今回は棄権いたしました。  それは、内容が少し変わってきたからであります。インド提案によりますと、その内容は、いままで不適当であるとわれわれが指摘していた部分が弱められた情勢になったのでございます。そういう観点から今回は棄権したということなのであります。  国連の本会議における態度は、表決に付される決議案の具体的な内容を見た上で最終的に決定いたしたいと思います。  さて、防衛費の取り扱いでございますが、現下の厳しい財政事情にかんがみまして、防衛費も聖域とせずに厳しく検討してまいる所存であります。防衛力整備の基本的な考え方に従い、わが国防衛のための必要最小限の経費を計上しておるわけでございます。  国を守るということは、やはり独立国家、わが文化を保持するためにも第一義の大事なことであると私は考えております。必要最小限の経費を計上することはやむを得ないと思っています。これを否定する考え自体が私は正しい考えでないと思っておるのであります。(拍手)  次に、企業補助金と行政改革の問題でございます。  先端的技術の開発につきましては、長期間にわたり多額の資金を要し、リスクが大きいところから、諸外国も同様に、企業の行う技術開発について支援措置を講じております。たとえば石炭液化の問題であるとか、国によっては航空機の開発の問題であるとか、コンコルドなんかもいい例でございますけれども、みんなそのように開発補助をしております。日本の場合でも開発補助をしておりますけれども、しかし同額以上の自己負担もまた要求しておるわけなのであります。  技術開発は、わが国経済社会の安定的発展と世界経済の活性化にとって不可欠であると考えます。臨時行政調査会におきましても、現在、これらを含む補助金のあり方について、多方面の識者によって幅広い観点から審議されております。公正かつ適正な答申がなされるものと確信しております。  次に、行革に聖域ありやという問題でございますが、政府といたしましては、既存の行財政のあらゆる分野にわたって聖域を置かない見直しを行い、簡素にして効率的な行政を実現する方針であります。  各般の政策運営に当たりましては、時代の要請と国民多数の要望にこたえるべく、従来からそれぞれ適切な配慮も講じてきておりますことを御理解願いたいと思います。  人事院勧告の扱いにつきましては、先般来申し上げるとおりでございまして、国家公務員法等考えますと、この勧告に従いたいという念願、またこれに対する努力を十分しなければならないということはいっぱいでございますけれども、しかし、現下の危機的財政状況等のもとにおきまして、公務員の皆さんにも率先して行財政改革に一面協力していただく姿勢も必要であると考えまして、総合的に勘案して、異例の措置として今回給与改定の見送りを行った次第でございます。  仲裁裁定の取り扱いにつきましては、与野党間で取り扱いに関して合意が成立いたしました。これを守ってまいりたいと思っております。  さらに、国鉄の問題について御質問がございましたが、臨調答申における国鉄改革の方向は、この提言は妥当な方向にあると考えております。臨調答申尊重の方針のもとに国鉄再建監理委員会を設置して、経営形態も含め、抜本的な検討をお願いをし、適切な再建方策の確立期待しております。今回、国会に国鉄再建推進臨時措置法案を提出いたしましたのも、この理由に基づくものでございます。  さらに、減税問題につきましては、衆議院大蔵委員会小委員会におきまして与野党合意の結論が得られれば、これを尊重してまいる所存でございます。  今後の間接税のあり方につきましては、「増税なき財政再建」という基本方針を堅持してまいります。安易に増税を念頭に置くということなく、まず行政の簡素効率化、制度施策の見直し、削減に努力を集中し、歳入面につきましても、この趣旨に沿って歳入構造の全般的な見直しを行いたいと考えておる次第であります。  さらに、第二次世界大戦についての評価の問題でございますが、先ほど申し上げましたが、太平洋戦争は遺憾な戦争であったと私は申し上げておるのであります。太平洋戦争についての私の考えは先ほど来いろいろ申し上げましたけれども、ともかく戦争の悲惨さを体験したのは、やはり出征した者でなければよくわかりませんし、あるいはあの当時空襲を受けた国民の皆さんでなければよくわかりません。これらを経験したわれわれの世代は、もう戦争はこりごりだ、どんなことがあっても戦争は回避しなければならないという念願に満ちていると思っております。私もその一人であります。  また、戦前、戦中のわが国の行為については、国際的に侵略であるという厳しい批判を受けていることも事実でありまして、この事実は、政府としても十分認識する必要があると考えております。われわれは、このような事実を踏まえて、再びこのようなことを起こさないように心がけなければならないと思います。  憲法問題につきましては、現行憲法民主主義、平和主義、基本的人権の尊重、国際協調主義等のすぐれた理念はあくまで堅持すべきであり、また、この憲法が出現いたしました歴史的意義についても高く評価すると私は申し上げたとおりであります。  憲法九十六条は改正手続を規定しており、また、憲法遵守の義務を規定されておる条章もございます。われわれは、それらをすべて踏まえましても、政党や個人等がいろいろな立場から議論し、研究し、そして勉強をし、検討をすることは、何ら憲法に反するものではないと考えておる次第でございます。(拍手)     ─────────────
  12. 岡田春夫

    ○副議長(岡田春夫君) 田川誠一君。     〔田川誠一君登壇
  13. 田川誠一

    ○田川誠一君 私は、新自由クラブ・民主連合を代表して、中曽根総理所信表明に対し、特に政治基本にかかわる問題にしぼって質問をいたします。  政治基本は、申すまでもなく国民信頼であります。総理自身さき所信表明演説の冒頭で「わかりやすい政治」、国民に「話しかける政治」の実現を目指すと強調され、また、政治を支えるものは国民信頼であると言われました。でありますから、私は、特にここで政治基本について中曽根総理大臣の所信をどうしてもただしておかなければならないのであります。  国民信頼は言葉によって得られるものではありません。まして、真実を覆い隠そうとするような言葉や真実と全く違った言葉は、いやしくも政治家として一また一国を統率する政治家として最も慎むべきことであることは言うまでもありません。失礼ながら、あなたはその基本をしっかりとわきまえておられるかどうか、私はそこに重大な疑念を持たざるを得ないのであります。  たとえば、近年あなたはしばしば松村謙三先生の名前を引き合いに出しておられます。  松村先生は、日中国交正常化にその半生をささげられた私たちの大先輩であります。また、金権政治を排し、反骨、清貧、高潔の政治家として、いまなお多くの人々から崇敬を念を持って語られている政治家であります。  あなたが松村先生に指導を受けたのも事実でありましょう。また、尊敬する政治家としてその名をあなたが挙げられることは、あなたの御自由であります。しかし、あなたが近ごろ松村先生の名前を挙げ、ことさらに松村先生への尊敬の念を表明されるときは、決まってあなた自身の身辺の疑惑、田中元総理との関係などを問われたときであります。(拍手)  五年前、あなたは衆議院におけるロッキード問題に関する調査特別委員会に証人として喚問されました。そのときに、昭和四十七年の第一次角福戦争、つまり、自民党の後継総裁をめぐる田中角榮氏と福田赳夫氏の決戦の際のあなたが田中支持の行動をとった理由について、あなたは次のようなことを言われております。松村先生に対する御恩返しの一つとして日中国交回復をやろうという一念に燃えてやったことである、このように言われておりました。  この間の組閣の当日、総理大臣として初めて国民に語りかけるべき記者会見の場でも、あなたは重ねて同じようなことを言われております。  当時、私も自民党で中曽根派に籍を置いておりましたが、その事実を振り返ってみますと、これほど真実にほど遠い話はありません。(拍手)田中支持の理由が日中復交のためとか、松村先生への恩義に報いるためとか、そんな話は一回もありませんでした。  当時の中曽根派は総裁候補を選ぶ判断の基準を、もっぱらどっちについたら得か損かということに重点が置かれて、政策目標などはほとんど問題にされませんでした。それを裏づけるような芳しくない動きさえ総裁選挙のさなかにあったことは、私の当事のメモからも明らかであります。  むしろ、当時の中曽根派は、台湾を擁護する人々も少なくなく、中曽根派の中で中国問題を論議しようとすれば派閥が空中分解しかねない、そういうおそれもあったために、この問題は論議するのがタブーであったではないでしょうか。  百歩譲って、もしあなたが、あくまで心の中で日中国交回復を願っていたと言うならば、どうしてあなたは、台湾擁護で固まり、日中復交に反対していた佐藤内閣に対して、批判勢力として一貫した姿勢を貫いていかなかったのでしょうか。  日中関係のあの厳しかったころ、自民党の中で容共のレッテルを張られながらも日中間の細いパイプを守り続けていた松村先生を、あなたは一度でも支援したことがありますでしょうか。私の知る限りでは、そんなことは一回もなかった。そう言いますと、あなたは、あのとき四派の政策協定の中で日中復交をうたったと、そう言われるでしょうけれども、あの四十七年の前後は、ニクソン訪中などで日本の頭越しをしたあの状態の中で、あなたならずとも、自民党内は少数の台湾擁護派を除いて、ほとんど日中復交に傾いていたのであります。  私は、松村先生の秘書を務めて、国会議員になってからも、先生が亡くなるまでそばで薫陶を受けた者として、松村先生の名前を引き合いに出してのあなたの話は、全く事実と遠いものであるということを言わざるを得ない。(拍手)だからこそ、ことさらにあなたが松村先生のことを語るのは、反骨、清貧、高潔の先輩政治家のイメージを掲げて、あなたの不利な立場を覆い隠そうという意図としか思われないのです。(拍手)  あえて、重ねて申し上げます。政治基本国民信頼であり、その信頼は真実を語ることから出発をするのです。どんなにわかりやすい言葉で語ろうと、その中身が真実から遠いようでは、絶対に国民信頼は得られません。この点について中曽根総理の感想をお聞きしたい。(拍手)  私たちは、この夏から、政治倫理確立には国民の協力がどうしても必要であると思いまして、全国遊説を進めております。その反響は、正直申しまして予想以上でありました。なぜこんなに反響が大きいのでありましょうか。それは、国民がいまの中央の政治が余りにも異常過ぎると、確かな目で見抜いているからであります。しかも、その異常さをみずから正そうという気力が政界に見られないから、私たちの訴えに支援と共鳴とが起こっているわけであります。  私は、これまでの遊説やその反響を見まして、これほど永田町、政界と国民の感覚とのずれが大きくなっているときはないと思っているのです。この感覚のずれを縮めていく努力をしないで、どうして国民信頼や協力を得られますでしょうか。  中曽根さん、一般の国民の気持ちは、政界というところは善と悪との区別をなぜできないのだろうか、こういう素朴な疑問を抱いているのです。悪いことをやった人が責任をとらないでまかり通っているところに怒りを感じているのです。(拍手)  政治倫理というと、何か理想論やきれいごとを並べることのように言う人がいますけれども、私たちはそんなむずかしいことを求めているのじゃないのです。一般社会でもちゃんと行われていることを政界はなぜやらないのかということなんです。一般のサラリーマンがもし刑事事件で逮捕されたり起訴されたならば、責任をとらされるか、あるいは会社をやめさせられるでしょう。公務員が収賄の罪に問われたりすれば、法律で免職や解雇される場合が多いです。そこに至らなくても、大抵の場合は責任をとってやめてしまうのが通常じゃないですか。  それがどうです。政治世界では刑事被告人が議員をやめるどころか、政治の中枢で大きな影響力を与えている。(拍手有罪判決を受けてもやめようとはしない。国民よりも一段と高い責任が求められている国会議員がどうして責任をとらないのですか。(拍手)  中曽根さんは、本人の問題と言っています。また、選挙の洗礼を受けているとか苦し紛れに言う人がいますけれども、とんでもないことです。国会議員選挙区から選ばれているには違いありませんが、国民全体に責任を負っているのではありませんか。(拍手)有罪議員責任が本人の問題と言うならば、あなたは一般公務員との関係で一体この問題をどういうふうに見ているのでしょうか。  かつて、大きな選挙違反で一審と二審で有罪判決を受けながら議員を辞職せず、昭和四十四年の明治百年恩赦を待って最高裁への上告を取り下げて議員を辞職し、特赦によってすぐ復権を果たした人物がおりました。ことしの六月、ロッキード疑獄で有罪判決を受けた佐藤孝行議員その人であります。特赦の申請に当たり佐藤議員は、党の指示に従った、こういう談話を発表しました。政府はそれを受けて閣議で特赦の決定をしたのであります。佐藤議員は、当時も現在も、中曽根さん、あなたの派の議員であります。  一審判決でやめる必要はないとか、本人の問題とか中曽根総理は言われておりますけれども、まさか同じような姿勢でロッキード被告の復権に手をかそうとしているのではないでしょうね。そのようなことがあれば国民政治不信は頂点に達するでありましょう。  再び議会史上にこうした汚点を残さぬためにも、総理を初め自民党の皆さんに考えていただきたい。総理は、本人の問題などと言い逃れないで、佐藤議員が正しい判断をされるように、自民党総裁として、また同志、友人として、佐藤議員が直ちに責任をとるよう勧める意思があるのかどうか。そのことが国会信頼を保っていく道であり、真の同志としての愛情であると私は思いますが、どうですか。明確にお答えをいただきたい。(拍手)  人事院の年次報告書を見ましても、昨年の国家公務員の犯罪のうち、収賄等は前年度に比べほぼ二倍に近い増加を示しております。地方自治体の汚職事件も増加の一途をたどり、ことしは史上最高の件数になることが確定しています。また、少年少女の非行も小学生にまで広がり、さらに、家庭婦人の刑法犯が急増しているとも聞いております。私は、このような事態を見るにつけて、日本民族の美徳であった責任感や倫理感の強さがこの社会から失われつつあることに深い悲しみを持っております。(拍手)  私どもは、かねてから教育立国を主張しております。教育現場であるいは家庭で、どんなに道徳や倫理を説きましても、それを教える立場の先生や教育委員会の汚職が表ざたになり、また、それらを取り締まる警察官までもが業者の賄賂を受け取るようでは、教育はむなしいものになってしまいます。(拍子)  公務員の綱紀の弛緩が、国家にとりましてどれだけ深刻な影響を生んでいくかは歴史の証明するところであります。この意味からも、政治倫理確立は一日も猶予できない緊急の課題ではないでしょうか。総理見解を求めます。  あなたは、就任以来、またきのうの答弁でも、盛んに仕事をする内閣と強調されております。その口ぶりは、私に言わせれば、仕事さえやれば政治倫理なんかどうでもいいとしか聞こえない。仮にそういう気持ちがあるのであれば、とんでもないことです。確かに国の内外には問題が山積しています。とりわけ、財政再建行政改革の断行は最大の政策課題であり、何としても実現させていかなければなりません。  行政改革はわれわれが早くから唱えてきたものであり、行革の推進には私たちも全力を挙げて協力することにはやぶさかではありません。ただ問題は、公約や姿勢にあるのではなぐ、要は実行であります。理念をうたうことではなく、具体的方策を示すことにあるのです。  前の内閣は、臨時行政調査会の答申を忠実に実行すると約束されながら、政治的に困難な問題は避けて通り、手をつけないまま辞職されました。  そこで、中曽根さんにお伺いしますが、中曽根内閣は、たとえば、非効率であり、むだの象徴とも言える三K、つまり国鉄、健保、米の食管会計、この問題にどう取り組まれますか。お伺いをしたい。  国鉄については、再建監理委員会だけ設置して、それで終わりという世評も聞いておりますが、この世評に反論する意味においても、監理委員会の意見は意見として、経営形態、つまり民営化について、また達成目標について、最高責任者としての総理見解を承りたい。  また、四兆円を超える医療関係の国庫補助は、すべて有効に活用されているとあなたはお考えでしょうか。私ども臨調の指摘のとおり、むだがあるとお考えであれば、いかにして合理化するつもりでありますか。具体的にお答えをいただきたいと思います。  課題が山積している行政改革であります。改革は繁急を要します。次期通常国会から改革に着手されようとなさる課題は一体何でしょうか。総理決意として具体的にお答えをいただきたい。  財政再建行政改革は、逆に言えば、いかにして国民の皆さんに平等の犠牲と負担を求めるかということであります。そう考えれば、その実現を図る大前提は、政治に対して国民の皆さんが信頼を取り戻す、そういうことであります。  その意味で、あなたがなすべき第一の仕事は、口先だけでなく、たとえば衆参両院における航空機輸入問題調査特別委員会の復活、あるいはいわゆる灰色高官の証人喚問実現、こういった政治倫理確立のための具体的行動を示すことであります。  私は、与えられた時間のほとんどを割いて、質問の重複を避けながら総理政治姿勢にかかわる問題をただしてきました。  国民信頼を失いつつあるわが国政治をこのまま放置していくことは、将来、民主主義、議会政治への危機につながっていくことを心配しております。政治国民信頼を取り戻せるかどうかは、中曽根内閣の命運よりもはるかに重大な問題であり、日本の自由と民主主義、政党政治の死活にかかわっているのであります。(拍手)     〔副議長退席、議長着席〕  中曽根総理、あなたはいま日本政治の最高責任者です。かけがえのない国民信頼を取り戻せるかどうか、それは、以上の私の質問にあなたがどう答えるか、そしてきょう以降のあなたの行動にかかっております。このことを強調して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  14. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 田川議員の御質問お答えを申し上げます。  まず、松村謙三先生との関係について御質問がございまたが、松村先生は、私が最も尊敬している政治家でございます。松村先生は高橋達之助先生とともに、日中関係の打開に生涯を使われた方でございます。  その前は高崎先生がおられ、それから松村先生が引き継いだのでございますが、私は、高崎先生のころから先生に非常にかわいがられ、また松村先生からも引き続いてかわいがられた一人でございます。そして先生が老躯を押して日中の国交打開に全生涯をお使いになりました姿を横で拝見いたしまして、本当に尊敬しており、御協力しなければならぬと考えておったのであります。  そして、あの田中内閣ができる当座のお話がございましたが、われわれはあなたからも日中関係の情報をお聞きいたしましたし、それ以外の方からも日中関係の情報はよく聞いておったわけでございます。そして、あのときに日中関係のために田中内閣を支持しよう、田中内閣を出現させよう、そう考えまして、櫻内代議士、大石武一代議士あるいは野田武夫先生や中村梅吉先生等とは、かなり早い時期から首脳部の間で相談をしておったのでございます。そして、いよいよ七月の改選の時期になりまして、私たちの同志は打って一丸となって田中政権を実現させたのです。  松村先生の御意図はどこにあったかといいますと、松村先生は、中曽根派をある程度強化しておいて、いざというときにこの集団の力を日中のために役立てようというお考えでございました。ですから、中曽根派に田川さんも入れと松村先生がおっしゃって入れてくださったし、そちらにおる片岡代議士も、松村先生がわざわざ砂防会館につえを引いて引き連れてまいりまして、中曽根君、片岡君を入れるから頼むと言われたのでございます。それは、ある程度の数を確保させておいて、いざというときに集団で日中を実現させるために松村先生がそういう御配慮をしてくださったと私は考えて、そのように行動したのでございます。  当時、その間に中傷的な雑誌の記事が出ましたけれども、この問題につきましては訴訟を提起いたしまして、その雑誌及び全国紙に釈明の謝罪文を出したことは、皆さんも御存じではないかと思います。  ともかく、日中国交回復というものを中心に、われわれがまじめに松村先生の御意思をいただきまして行動したことは厳然たる事実でございまして、これを明らかにしておく次第でございます。(拍手)  さて、政治の倫理性についてお話がございました。あらゆる面におきまして倫理性の高い社会の実現に努めることは当然でございますが、特に政治家、公務員につきましては、その地位にかんがみまして一般の国民の皆様以上の厳しい倫理性が要求されていると心得ております。行政府内の綱紀の粛正につきましては、機会あるごとにこれを正すとともに、国会内における政治倫理確立につきましても、党総裁として積極的に努力してまいる所存でございます。  佐藤孝行君の辞任問題について御質問がございました。  私は、この国権の最高機関を構成する国会議員の地位を非常に重要視しているものなのでございます。この国権の最高機関である国会を構成するということは、いわば主権を構成する一つの機能でございます。この主権を構成する一つの重要な機能が、候補者と選挙民の間に選挙を通じて行われるわけであります。この主権を構成するという厳粛な選挙を通じて行われるこの行為、これを法律によらずして第三者が強制的に切断する力があるかどうか、私は非常に疑問に思うのであります。(拍手)このような厳粛な関係は、これは本人の決断にまつべきものではないかと思っておるのであります。これが私の考え方であります。  行政改革実施、特に三K対策について御質問がございました。  三Kは行政改革の重要な目玉の一つであると心得ております。国鉄改革につきましては、全体構想の設定とその実現のために国鉄再建臨時措置法案を今回提出して、その成立を願っておりますし、医療費の適正化対策強化と医療保険制度の合理化についてもこれを検討しておるところでございます。また、米の需給均衡化対策の推進と食糧管理制度に係る財政負担の縮減合理化等についても現在取り組んでおるところでございます。今後も臨調答申尊重の基本方針のもとに、諸改革の責任ある実行に努める考え方であります。農業関係の補助金合理化についても御質問がございましたが、農業関係の補助金につきましては、臨調の第一次答申に対応して、従来から適正な整理合理化に格段の努力を払っておるところでございます。農林省におきましても、千二百ばかりありました補助金を六百にこの間まとめましたけれども、さらにこれが合理化について努力をしておるところでございます。  次に、国鉄再建問題について具体的な御質問がございましたが、国鉄再建監理委員会を設置いたしまして、これを国鉄改革の第一歩といたしたいと思います。そして、この効率的な全般的な経営形態を企画、審議、決定させていただきまして、適切な結論が得られるものと期待しており、五年以内に国鉄再建についての所要の施策を講ずる所存でございます。法案の速やかな成立をお願いいたしたいと思っております。  また、医療保険制度の問題につきましては、医療保険制度の普及によりまして国民の健康や医療に大きな成果が上げられておることは事実でございます。しかし、医療費は人口の高齢化、医療の高度化等によりまして増高しております。これに伴いまして国庫負担も五十七年度には約四兆円に及んでおります。この厳しい経済財政状況のもとで国民の医療費の負担を適正な範囲内にとどめるとともに、将来にわたりまして医療保険制度の安定した運営を確保するため、厚生省においても医療の需給両面にあたる総合的な政策を推進中でございます。  また、行革につきまして、次期通常国会に臨む方針について御質問がございましたが、行革大綱、九月二十四日に閣議決定しました、これを逐次具体化していくということでございます。  改革の課題は、三公社、年金制度を初め広い範囲にわたりますが、まず当面の問題といたしまして国鉄再建臨時措置法案をぜひとも御審議願い、成立を願い、逐次それ以下の法案、施策につきましても国会に御提案を申し上げるべく準備してまいる所存でございます。(拍手
  15. 福田一

    議長福田一君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────  裁判官訴追委員辞職の件
  16. 福田一

    議長福田一君) お諮りいたします。  裁判官訴追委員佐野嘉吉君及び後藤田正晴君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 福田一

    議長福田一君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。     ─────────────  裁判官訴追委員選挙  国土開発幹線自動車道建設審議会委員選挙  国土審議会委員選挙  鉄道建設審議会委員選挙
  18. 福田一

    議長福田一君) つきましては、裁判官訴追委員選挙を行うのでありますが、すでに国土開発幹線自動車道建設審議会委員国土審議会委員及び鉄道建設審議会委員に欠員がありますので、この際、あわせてその選挙を行います。
  19. 保利耕輔

    ○保利耕輔君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  20. 福田一

    議長福田一君) 保利耕輔君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 福田一

    議長福田一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  議長は、裁判官訴追委員に       鯨岡 兵輔君 及び 片岡 清一君 を指名いたします。  次に、国土開発幹線自動車道建設審議会委員に       細田 吉藏君 及び 中尾 栄一君 を指名いたします。  次に、国土審議会委員に       大西 正男君 及び 薮仲 義彦君 を指名いたします。  次に、鉄道建設審議会委員に細田吉藏君を指名いたします。      ────◇─────  検査官任命につき事後承認を求めるの件  原子力委員会委員任命につき事後承認を求めるの件  公正取引委員会委員長任命につき事後承認を求めるの件  公害健康被害補償不服審査会委員任命につき事後承認を求めるの件  社会保険審査会委員任命につき事後承認を求めるの件  運輸審議会委員任命につき事後承認を求めるの件  電波監理審議会委員任命につき事後同意を求めるの件  日本放送協会経営委員会委員任命につき事後同意を求めるの件  日本電信電話公社経営委員会委員任命につき事後承認を求めるの件  地方財政審議会委員任命につき事後同意を求めるの件
  22. 福田一

    議長福田一君) お諮りいたします。  内閣から、  検査官に辻敬一君を、  原子力委員会委員に向坊隆君を、  公正取引委員会委員長に高橋元君を、  公害健康被害補償不服審査会委員に及川冨士雄君、榊孝悌君及び中島二郎君を、  社会保険審査会委員に月橋得郎君を、  運輸審議会委員に亀山信郎君を、  電波監理審議会委員に菊池稔君を、  日本放送協会経営委員会委員に磯田一郎君を、  日本電信電話公社経営委員会委員に松井政吉君を、  地方財政審議会委員に石川一郎君、木村元一君、立田清士君、知野虎雄君及び松島五郎君を任命したので、それぞれその事後の承認または同意を得たいとの申し出があります。  まず、検査官、原子力委員会委員、公正取引委員会委員長、公害健康被害補償不服審査会委員、運輸審議会委員、電波監理審議会委員、日本放送協会経営委員会委員及び地方財政審議会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認または同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  23. 福田一

    議長福田一君) 起立多数。よって、いずれも承認または同意を与えるに決しました。  次に、社会保険審査会委員及び日本電信電話公社経営委員会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 福田一

    議長福田一君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも承認を与えるに決しました。      ────◇─────
  25. 福田一

    議長福田一君) 御報告いたすことがあります。  永年在職議員として表彰された元議員赤松勇君は、去る八月三十日逝去せられました。  永年在職議員として表彰された元議員福永一臣君は、去る八月三十日逝去せられました。  まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  赤松勇君に対する弔詞は、去る九月十八日、福永一臣君に対する弔詞は、去る九月二十七日、議長においてそれぞれ贈呈いたしました。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもつてその功労を表彰され さきに労働委員長の要職にあたられた従三位勲一等赤松勇君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます     …………………………………  衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもつてその功労を表彰され さきに水産委員長建設委員長体育振興に関する特別委員長の要職にあたられた従三位勲一等福永一臣君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます      ────◇─────
  26. 福田一

    議長福田一君) 本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会