○木野晴夫君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
中曽根総理大臣の
所信表明に対しまして、その重要問題につきまして
質問を行うものであります。
中曽根総理は、去る十一月二十五日自由民主党の
総裁に選出せられ、翌二十六日
国会におきまして
総理に指名されたのであります。したがいまして、この
国会は、
総理にとりまして最初の
国会でございます。まことに意義の深いものがあるわけであります。
総理も
所信表明に当たりまして、厳粛な決意を持ってこれに当たることを力強く表明されたところであります。
また、
総理は、
国民に対しまして語りかける
政治を力説されました。私は、この
質問を通じまして、
国民に十二分に語りかけていただきたいことをまずもって念願するものでございます。
なお、この新
内閣ができるに当たりまして一月余の日時を要しておるわけであります。この間、御
承知のとおり、内外きわめて大事なときでございまして、問題が山積いたしておるわけであります。
中曽根総理といたしましては、この問題に速やかに対処することが何よりも緊要の問題であると私は
考えております。とりわけ
景気対策、災害
対策を織り込みましたところの補正予算が提出されておるのでありまして、野党の協力を得て一日も早い成立を心から望んでおるものでございます。
私は、
外交、内政の順に従いまして御
質問をいたしたいと思います。
国際
情勢はきわめて激動いたしております。あるときは非常に平和的な
時代もありますれば、また対立の激化しておる
時代もございます。こういった中にありまして、
わが国の安全と平和を求めていく、これが
外交の基本的
課題でありまして、
総理の最も大きな使命であると思うのでございます。
顧みますると、本年はサンフランシスコ条約が発効いたしまして満三十年に当たるのでございます。皆さんも御
承知のとおり、自由と平和主義が
わが国にようやく定着いたしまして、
わが国は自由主義国家のまさに有力な一員である、このように申せると思います。
外交問題に当たりまして、この地位と、そうして国際社会におきますところの
日本の役割りを果たすことが一番大きな問題でございます。そうして、皆さん方に申し上げたいことは、こういった問題を議論いたす場合に、日米間の問題が何よりもその基礎をなすということでございます。(
拍手)
ところで、皆さんも御
承知のとおり、日米間にはいま貿易摩擦の問題、防衛問題、また
世界を活性化さすためにどのようにしていくか等々、幾多の問題があるわけでございます。
総理は来年の一月早々に
アメリカに行かれますが、私は、両国首脳がこの際胸襟を開いてこの問題につきまして忌憚ない意見を率直に話し合う、まことに時宜に適した
訪米であると思うのでございます。私は、ここに
総理に対しまして、一月
訪米されますが、どういった問題をどのように折衝されますか、そういった問題につきまして、お
考えを聞かしていただきたいと思うのでございます。
次に、防衛問題についてであります。
日米安保条約に基づきますところの安保体制、これは
わが国の安全保障の基盤をなすものであります。これをば円滑に、効率的に運用することが、
わが国の平和だけではなしに、
世界の平和にも私は大きく貢献するものがあると思うのでございます。
したがいまして、先ほど申しました、
世界のGNPの一〇%の力を得た
わが国が、その地位を十分に自覚いたしまして、この防衛問題に対しましては、自主的に、主体性を持って当たっていく必要があると思うのであります。とりわけ五六中業につきましては、早急にこの達成に
努力しなければならないと思うのでありますが、
総理の防衛問題に対する御
見解をお
伺いいたします。
次に、日ソの関係について一言触れたいと思います。
先般、
ソ連におきましては、ブレジネフ書記長が急逝されまして、アンドロポフ書記長の新しい指導に入ったわけでございます。新指導体制はどういった
方向にいくか推測の域をまだ出ないところでございますが、私は、ブレジネフ書記長の後半を
考えてみますると、相当に厳しいものがあったと思うのでございます。北方領土の問題をとりましてもきわめて厳しいものがございました。したがいまして、私は、
外交は継続だとは思うのでございますが、この指導体制がかわったときに、
総理はこの対ソ
外交をどのように展開していくか、この点についてお
伺いいたしたいと思うのでございます。
次に、日中関係についてお
伺いいたします。
日中は国交正常化いたしまして十年でございます。この間、両国の首脳の相互訪問もございました。また、交流、協力、そういった関係は見るべきものがあったと私は思うのでございます。中国は
日本の隣国でございます。この関係をば密接に進めることが
わが国の
外交の基本でなければならないと思うのでありまして、この日中関係をどのように
考えておるか、
総理の御
見解をお聞きしたいところであります。
以上、
外交問題につきまして
質問いたしましたが、私は繰り返し申しますが、
わが国は
世界のGNPの一〇%を占める自由諸国の有力な一員でございます。その他位、その役割りを自覚いたしまして、そうしてこういった問題に取り組んでいくことが一番大事だと思いますので、重ねて
総理の御
見解をお聞きする次第であります。
次に、内政についてお
伺いいたしたいと思います。
内政問題につきましては、
わが国をめぐりますところの諸
情勢はきわめて厳しいものがございます。この内政問題もいろいろ問題ございますが、そのまず第一は
行政改革の問題でございます。
行政改革の問題につきましては、鈴木前
内閣におきまして鋭意
全力を挙げて当たってきたところでありますが、新
内閣におかれましてもこれを引き継ぎ、さらに強力に対処すべきであると私は思うのであります。
高度成長時代には機構は自然膨張しがちでございます。しかしながら、いまや
経済は
高度成長時代から低成長の
時代に入ったわけであります。安定成長の
時代に入ったわけでありますから、おのずから機構につきましても再検討を要することは言うまでもございません。ことに
日本の国は資源エネルギー、そういったものに恵まれておりません。しかも、人口は非常に多く、かつ、高齢社会に向かっておるわけであります。そういったときでありますから、二十一世紀に乗り込んでいくためには、私は、
日本型の活力のある
福祉社会、これが
わが国の
課題であると思うのでございます。(
拍手)
西欧諸国は、いまだ第一次、第二次の
不況から脱し切れておりません。また、皆さんも御
承知のとおり、
福祉は高いが負担もきわめて高く、この点について問題を含んでおるところでございます。私は、
日本におきましては、親、子、孫三代互いに助け合う
日本型の新しい
福祉国家の
建設でなければならないと思うのでございます。
総理は、これをば
日本国民の新しい
政治目標といたしまして、「たくましい
文化と
福祉の国
日本」という表現をされましたが、私は、これこそわれわれの
努力すべき目標であると思うのでございます。(
拍手)
新
内閣におきましては、鈴木
内閣が進められましたこの
行政改革路線を、これをばさらに積極的に実行していくことを心から願ってやみません。
私は、この
行政改革の柱である
国鉄再建問題について一言触れたいと思います。
国鉄再建につきましては、皆さんも御
承知のとおり、私は、
国鉄の果たしてきた役割り、それを無視するものではございません。しかしながら、
国民の間で
国鉄があれでいいのか、非常に心配している声のあることは皆さん御存じのところでございます。輸送体系の変革によりまして、シェアが変遷している、縮小しているということはもちろんでございますが、
国鉄の職場秩序につきまして、あれでいいのかという声もあるのであります。
また、その
財政一点とってみましても、五十七年度末の長期負債は十八兆円を上回っております。単年度の
赤字は二兆円であります。こういった危機的
状態にある
国鉄、この危機を乗り切るためには、体質の徹底した改革、これが必要であることは、私が言うまでもなく、皆さん方御
承知のところでございます。
そのための第一歩が、今回提出になっております
国鉄再建監理委員会でございます。私からこのことにつきましていろいろ申し上げることもございませんが、これが私は
行政改革の試金石である、このように感じますので、この際、
総理の
国鉄改革の実行に対する
所信をお
伺いする次第であります。
次に、
公務員の給与についてお
伺いいたします。
公務員の給与につきましては、
人事院勧告を前
内閣は見送ることを決定されました。先憂後楽という言葉がございます。また、国家
公務員が全体の奉仕者という
立場から、今日の危機的な
財政状態のもとにおいて、
人事院勧告の見送りは万やむを得ない措置であると思うのであります。国家
財政が未曾有の危機的な
状態におきまして、
国民にも負担を願わなければならない
状態にあります。国家
公務員が率先して行うのでなければ、
国民全体の協力は得られないところであります。
新
内閣におきまして、先般の
人事院勧告実施見送りの決定につきましてはこれを堅持すべきであり、さらにまた関係方面との調整も早急に進め、さらにまた地方公共団体に対しましてもその協力を要請すべきであると思いますが、
総理はどのようにお
考えでございますか。
また、前
国会におきまして議決案件として継続審議になりました
仲裁裁定につきましては、現在、本
国会において議決すべく、誠心誠意その交渉が進められておるところでありますが、私は、この問題は慎重を要すべきであると
考えておるところでございます。
次に、
財政再建についてお尋ねいたします。
五十八年度の予算編成に当たりまして、私は、
世界的な
景気の先行き、また税収の不足、そういった
状態を
考えますときに、来年度の予算編成はきわめてむずかしい問題があることは申すまでもございません。鈴木
内閣は、
財政再建を最重要
課題としてこれに
努力してこられたところであります。しかしながら、税収の落ち込みその他からきわめてむずかしい問題に逢着したことも、これまた事実でございます。
私は、この道のりに対しましてどのように
総理は
考えておられるのか、
財政再建は
行政改革とともに
中曽根内閣の絶対に守らなければならぬ重要
課題であると
考えるところでございます。この道のりにつきまして、五十九年度
赤字国債をゼロとする、そういった目的は非常にむずかしい
状態にあることは繰り返し申す必要ございませんが、この
財政再建をどのように
考え、どのように取り組んでいかれるか、
総理の御
方針をお
伺いするところでございます。
私は、この
財政再建に取り組みますときに、経費の節減、
見直しが根本であると思うのであります。
五十八年度予算を編成いたします場合に、五十七年度はゼロシーリングで発足いたしました。五十八年度は
マイナス五%のシーリングでいたわけでありますが、私は、五十八年度予算の実際の編成に当たっては、これではいけないと思うのであります。切り込んでいかなければならぬ、こういった
状態にあるわけでございます。したがいまして、いわゆる聖域というものにつきましてどのように
考えておられるか、この点につきまして
総理のお
考えをお
伺いする次第であります。
また、納税者の負担と受益との関係、これについても
考えていかなければなりません。今後
わが国は予想される高齢化社会に向かうわけでありますが、その施策を充実するために
国民がどの程度この経費を持つか、また、
制度を守っていくためにはどの程度国と
国民とが持ち合うか、そういった点につきまして真剣な考察が必要でございます。
中曽根総理のこの
国民負担についての
考え方をお
伺いする次第であります。
次に、私は、この
国会に提出されております五十七年度の補正予算につきましてお
伺いいたしたいと思います。
五十七年度予算は、先日大蔵大臣の話にありましたとおり、歳入欠陥六兆一千四百六十億円であります。それに対しまして、安易に国債の追加発行によることなく、経費の節約、そういったものを極力図ったわけでございます。それとともに、災害と
景気復興
対策を織り込んだのがこの予算でございます。したがいまして、私は、一日も早い補正予算の通過を心から望んでおるところでございます。
なお、災害につきまして一言お話し申しますと、実は本年は災害の非常に多い年でありまして、全国各地で大きな被害を受けました。不幸にも災害に遭われて亡くなった方は四百九十二名でございます。その被害総額は一兆五千億の多額に上っております。私は、自由民主党を代表いたしまして、亡くなられた方に対しまして心から哀悼の意を表しますとともに、被害を受けられた方に対しましてお見舞いを申し上げる次第であります。
今回の補正予算にこの災害
対策が織り込まれておるのでありますから、野党の諸君に対しましても、深い御理解を賜ることを私も心からお願いいたす次第でございます。
次に、
景気の
対策につきまして
国民はひとしく希望を抱き、また
総理から聞きたい、こういう声が強いわけでございます。先般二兆七百億円の
総合経済対策が出されましたが、新
内閣は
景気対策に対しましてどのように対処されますか。
ことに私は申し上げたいことは、
中小企業についてでございます。本年も年末になりまして、
中小企業は日夜その経営に苦労いたしておるのであります。
中小企業のために年末金融をどのように
考えているか、その
対策をお示し願いたいと思うのでございます。
さらにまた、
財政面からの
景気浮揚はもちろんでございますが、金融面から公定歩合の引き下げ、金利
対策等々の
対策は
考えられないか、この点につきましても
総理の御
答弁をお願いいたしたいところでございます。
次に、五十八年度を起点といたしますところの新
経済五カ年
計画を現在検討を開始したと聞いておるわけであります。
世界経済全体が非常に低迷しております。この中にありまして、
日本経済の展望はどうなるのか、中曽根新
内閣の新しい
経済政策の展望はどうかということでございます。この新
経済五カ年
計画をどのように
考えておられるか、誤ることのないようにお願いいたしたいと思う次第でございます。
また、
財政再建につきましても、この新
計画との関連におきまして、どのように
考えておるか、これまた明確にお示し願いたいと思う次第でございます。
私は、非常に厳しい
経済のさなかにありまして、実は
国民の中におきまして、
所得税減税の声のあることは皆様も十分御
承知のところでございます。この
所得税減税につきましては、先般、大蔵委員会におきまして、
議長に答申をされたところでございます。
勤労者に対する
所得税減税につきまして、どのように
総理はお
考えか、その
見解をお示し願いたいと思う次第でございます。
また、相続が起こりますと、
中小企業におきましては、その後の事業ができないということが言われております。したがいまして、私は、
中小企業の承継税制、これにつきましても、
総理の御
見解をお聞きしたいと思うのでございます。
以上、私は、
わが国の
外交、内政にわたって重要な問題につきまして、
総理の
見解をお聞きしてまいりました。
時局はまさに、きわめて厳しいものがございます。これらの諸問題を解決するためには、
国民の活力を十分に引き出しまして、
国民と手を携えて進む
政治が必要であります。
中曽根総理は、
国会の冒頭におきまして、この問題に触れたわけでございます。すなわち、「話しかける
政治」、「わかりやすい
政治」の実現がそれであります。礼節、愛情に富んだ
政治、これがそれであります。私は、この厳しい
時代に生きる
政治家の一人といたしまして、精神的な触れ合いのある社会を念頭に置いて
政治を行いたい、このように
考えておるものでございます。
そのためには、
総理も言われましたが、まず、指導者たる
政治家がおのれを正し、厳しい
政治倫理に徹し、清潔な
政治を行い、
国民に語りかけ、
国民の気持ちを酌んで、ともに進んでいくことが何よりも必要でございます。
信頼が何よりも大事であると思うのであります。
私は、この
質問を終わるに当たりまして、
中曽根総理に対しまして、
総裁として挙党一致事に当たるとともに、
国会の運営に当たりましては、野党の皆さんとも十分に誠意を尽くして、円満な
国会の運営を図られることを重ねてお願いいたしまして、私の代表
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕