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1982-12-22 第97回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月二十二日(水曜日)     午後七時一分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君 理事 和田 耕作君       伊藤宗一郎君    石橋 一弥君       今枝 敬雄君    木村武千代君       熊川 次男君    小泉純一郎君       古賀  誠君    笹山 登生君       玉沢徳一郎君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       佐藤 観樹君    塚田 庄平君       戸田 菊雄君    野口 幸一君       堀  昌雄君    柴田  弘君       渡部 一郎君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君       小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    横溝 雅夫君         経済企画庁総合         計画局審議官  及川 昭伍君         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁次長   酒井 健三君         国税庁税部長 角 晨一郎君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  八木 俊道君         参  考  人 三重野 康君         (日本銀行理事)         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員異動 十二月二十日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     綿貫 民輔君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     麻生 太郎君 同月二十二日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     古賀  誠君   椎名 素夫君     高村 正彦君   塩川正十郎君     玉沢徳一郎君   田澤 吉郎君     熊川 次男君   毛利 松平君     石橋 一弥君 同日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     毛利 松平君   古賀  誠君     麻生 太郎君   高村 正彦君     椎名 素夫君   玉沢徳一郎君     塩川正十郎君     ───────────── 十二月十五日  所得減税に関する請願大原亨紹介)(第一〇三三号)  増税反対所得税減税等に関する請願瀬崎博義紹介)(第一〇三四号)  同(辻第一君紹介)(第一〇三五号)  同(中路雅弘紹介)(第一〇三六号)  一兆円所得減税に関する請願中路雅弘紹介)(第一〇三七号)  所得税減税等に関する請願蓑輪幸代紹介)(第一〇三八号)  みなし法人課税制度期限延長に関する請願田村元紹介)(第一〇三九号)  同(水平豊彦紹介)(第一〇四〇号)  大幅減税申告納税制度改悪反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一〇四一号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ等に関する請願石川要三紹介)(第一〇四二号)  同(石原慎太郎紹介)(第一〇四三号)  同(越智通雄紹介)(第一〇四四号)  同(長田武士紹介)(第一〇四五号)  同(小坂徳三郎紹介)(第一〇四六号)  同(中村靖紹介)(第一〇四七号)  同(鳩山邦夫紹介)(第一〇四八号)  同(浜野剛紹介)(第一〇四九号)  同(依田実紹介)(第一〇五〇号)  大企業優遇税制是正等に関する請願蓑輪幸代紹介)(第一〇五一号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願野呂恭一紹介)(第一〇五二号)  同(山田耻目君紹介)(第一〇五三号) 同月十六日  申告納税制度改悪反対等に関する請願浦井洋紹介)(第一二一三号)  同(正森成二君紹介)(第一二一四号)  同(安藤巖紹介)(第一三九九号)  同(浦井洋紹介)(第一四〇〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一四〇一号)  医業税制の確立に関する請願外一件(浦井洋紹介)(第一二一五号)  同(草川昭三紹介)(第一二一六号)  同(榊利夫紹介)(第一二一七号)  同(玉置一弥紹介)(第一二一八号)  同(野間友一紹介)(第一二一九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一二二〇号)  同(正森成二君紹介)(第一二二一号)  同(渡辺貢紹介)(第一二二二号)  同(安藤巖紹介)(第一四〇二号)  同(草川昭三紹介)(第一四〇三号)  同(山原健二郎紹介)(第一四〇四号)  みなし法人課税制度期限延長に関する請願佐藤守良紹介)(第一二二三号)  同(玉城栄一紹介)(第一二二四号)  同(伊藤公介紹介)(第一四〇五号)  同外一件(小川平二紹介)(第一四〇六号)  同外一件(大内啓伍紹介)(第一四〇七号)  同(金子岩三紹介)(第一四〇八号)  同外一件(岸田文武紹介)(第一四〇九号)  同(野田毅紹介)(第一四一〇号)  同外三件(浜野剛紹介)(第一四一一号)  同(越智伊平紹介)(第一五〇一号)  同外二件(高村正彦紹介)(第一五〇二号)  同外二件(斉藤滋与史君紹介)(第一五〇三号)  大幅減税申告納税制度改悪反対等に関する請願榊利夫紹介)(第一二二五号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一二二六号)  同(寺前巖紹介)(第一二二七号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ等に関する請願岩佐恵美紹介)(第一二二八号)  同外一件(金子満広紹介)(第一二二九号)  同(小林政子紹介)(第一二三〇号)  同外二件(榊利夫紹介)(第一二三一号)  同(鈴切康雄紹介)(第一二三二号)  同(中島武敏紹介)(第一二三三号)  同(不破哲三紹介)(第一二三四号)  同(松本善明紹介)(第一二三五号)  同(天野公義紹介)(第一四一二号)  同(伊藤公介紹介)(第一四一三号)  同(大内啓伍紹介)(第一四一四号)  同(小澤潔紹介)(第一四一五号)  同(粕谷茂紹介)(第一四一六号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第一四一七号)  大企業優遇税制是正等に関する請願瀬崎博義紹介)(第一二三六号)  同(辻第一君紹介)(第一二三七号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一二三八号)  同(山原健二郎紹介)(第一四一八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一五〇五号)  同(三浦久紹介)(第一五〇六号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願宇野宗佑紹介)(第一四一九号)  同(佐藤文生紹介)(第一四二〇号)  同(山崎拓紹介)(第一四二一号)  同(相沢英之紹介)(第一四二二号)  同(佐藤隆紹介)(第一五〇七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案内閣提出第一号)      ────◇─────
  2. 森喜朗

    森委員長 これより会議を開きます。  まず、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  先刻の理事会で協議いたしましたとおり、十六名よりなる減税問題に関する特別小委員会を設置することとし、小委員及び小委員長委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  なお、委員異動に伴う小委員及び小委員長補欠選任並びに小委員及び小委員長辞任の許可、それに伴う補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  5. 森喜朗

    森委員長 昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案を議題といたします。  この際、本案について、本日参考人として日本銀行理事三重野康君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  7. 森喜朗

    森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  8. 沢田広

    沢田委員 今回の法案提出するに至った最大の原因は、大蔵省当局歳入見込みに著しく相違を来した、しかも今国会を顧みまするならば、与党を含めまして、大蔵委員会見識が問われている法案であるとも言えると思うのであります。  そういう立場に立って、少なくともこの提案を、竹下大蔵大臣はそのときいないからということでずっこけることは可能かもわかりませんけれども、党の主要な幹部を務めていたわけでありますから、少なくともこの予算編成に当たった当事者は、提案に当たって大蔵委員会に対して、こういうような事態を迎えてまことに申しわけなかったということの陳弁はまずあるべきだと思うのでありますが、この編成に当たったそれぞれの担当者から、一言ずつひとつお答えをいただきたいと思います。
  9. 梅澤節男

    梅澤政府委員 今回の補正予算におきまして、五十七年度当初見積もりました税収見積額に対しまして六兆一千四百六十億円の減額を御審議願うことにしておるわけでございます。この六兆一千四百六十億円のうち、法人税が約二兆八千九百五十億円でございます。所得税も加えますと、所得課税で六兆一千四百六十億円のうちおよそ五兆一千五十億円は法人税所得税によって占められておるということでございます。  このような減額を生じましたことにつきましては、御案内のとおり、五十六年度の決算におきまして、補正後約二兆八千八百億円の減収額を生じたわけでございますが、五十七年度の当初予算税収見積額は、五十六年度の補正後の予算見積額土台といたしまして、当時、編成いたしました当時の課税実績その他の資料を織り込みまして見込んだものでございますが、五十六年度における土台の減、それからそれの底にございます五十六年後半から五十七年初めにかけましての急速な経済の停滞を反映いたしまして、結果的に六兆一千四百六十億円の減額を生じたわけでございます。  私どもといたしましては、経済実態に即しまして税収を見積もるということに努めてまいったわけでございますが、いかんせん実体経済の急速な変化ということに見積もりがついていけなかったという実態につきましては、結果的にこのような狂いを生じたこと、大変遺憾に存じておりますし、私どもは、弁解ではございませんけれども、今回のいろいろな経験反省材料にいたしまして、今後とも適正な税収見積もりに努めてまいる所存でございます。
  10. 沢田広

    沢田委員 私は言いわけを聞こうとしたのではないのであります。少なくとも今日このような事態を迎えたという責任を感じているかどうか、そのことが問題なんでありまして、確かにこれは間違えました、結果的にとにかく間違えました、そして今度の臨時国会を開く最大の理由はそこにあったわけでありますし、当時もわれわれは、これは見込みが大き過ぎるではないかと、この委員会でも再三にわたって忠告もし意見も述べた。それに耳をかさないで、こういう結果を招来して、言いわけで済むという問題ではない。  しかも、この大蔵委員会見識がいま問われようとしている。われわれも、審議に携わった者あるいは与党皆さんもそうでありますけれども大蔵委員会のいわゆる中身の審査が十分でなかったから、あるいはこういう状態になったとも言えるのであります。あるいは、われわれの意見を十分に尊重してもらわなかったから、こういう事態を迎えたということにもなるのであります。  そんな言いわけを聞こうと思っているのではない。こういう恥ずかしい提案をするに至ったそのそれぞれの担当者は、大蔵委員会皆さんに申しわけありませんでした、そのぐらいの言葉は出ても悪くないでしょう。どうですか。
  11. 梅澤節男

    梅澤政府委員 再び弁解ではないのでございますが、事実問題としての御説明を申し上げたいと思うのでございますが、委員指摘のとおり、五十七年度の本予算審議過程におきまして、五十六年度の税収動向なり五十七年度の税収見積額につきまして、当委員会におきまして各種の議論が行われたことは御指摘のとおりでございます。ただ、先ほど私が申し上げました実体経済の急速な変化といいますものは、税収面で申しますと、五十七年の二月末の税収から顕著にその動向があらわれてきたわけでございます。  と申しますのは、ちょうど五十七年度の予算編成いたしました時点から、国会提出を申し上げまして本予算議論されておりますまでの判明しておりました税収は、実は前年の同期に比べましてかなりのいい水準で走っておったわけでございますが、二月の税収が判明いたしました、つまり四月ごろの時点に入りまして、実績が急速に落ちてまいったわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、結果的には見積もり実態がそごを来したわけでございますので、先ほど私申し上げましたように、今回のこの苦い経験反省材料といたしまして、今後とも的確なる税収見積もりに努めてまいりたいということを申し上げました。何とぞ御了承を賜りたいと存じます。
  12. 沢田広

    沢田委員 私は、そういう言いわけを聞こうとしているのではない。  当時の中期計画でいっても、いわゆる税収一四・何%かの伸びになっていかなければ、とてもじゃないけれどもこの中期計画は達成できない、そういうことはもう出された当時から言われてきておるし、予算委員会でも言われてきておるし、この委員会でも言ってきているわけです。もしこの中期計画を達成するとすれば、五十九年まで収入を一四%の伸びいかなかったなら、とてもじゃないけれどもこれは達成できないんだから無理だということを言ってきているのに、それに耳をかさないで謝ろうという気はない。あなた方が謝ったからといったって事が済む問題ではないんだけれども、そういうふてぶてしい態度がこういう間違いを起こすんだよ。だから、われわれの意見もやはりきちんと聞いていくという考慮の余地、自民党の言うことだけ聞いているからこういう結果になったのかもわからぬけれども、とにかく、そういう配慮がなければ、この審議を進めたってしようがないんですよ。  もちろん、反省はしながら、今後のことと言ったって、このこと自身が間違ったということを認めなければ、なぜ大蔵委員会にこういう法案提出するような事態になったのか。洗いざらいの金を集めなければ補てんできないという事態を生んだのはだれの責任ですか。盛んにそのときは大丈夫です、大丈夫ですと言ってきたのじゃないですか。そして、どうもいまになったらどうにもならない。そして謝らない。そんなばかな話ありますか。このぐらいのことは、幾ら事務当局で謝ったから首になるわけじゃないんだから、とにかく、きちんとその部分は大蔵委員会に対して、これは皆さんに申しわけなかったと一言言ったって悪くないでしょう。
  13. 梅澤節男

    梅澤政府委員 大変言葉足らずであれでございますが、私ども気持ちといたしましては、先ほど来私が申し上げておりますことは、きわめて遺憾な結果であったということにつきまして、当委員会委員皆様方にその遺憾の意を酌んでいただけるようにお話を申し上げたつもりでございますが、大変言葉足らずで失礼をいたしたわけでございます。
  14. 沢田広

    沢田委員 いまのは謝っているうちじゃないんだよ。謝っているうちに入らないんで、そんなに謝ることが嫌ならば、この後大蔵大臣に言わざるを得ないんだけれども、もっと率直に、とにかくあれだけ議論をして、これは無理だという発言の中からこういう結果を生じて、またそれのほころびを直す提案をするんだから、どうも前は申しわけありませんでしたが、ひとつよろしくお願いをいたします、社会の常識でいけばそう言うのがあたりまえじゃないですか。それが前提とならなければこれは審議に入れないですよ。
  15. 梅澤節男

    梅澤政府委員 大変遺憾な結果でございました。今後ともひとつよろしくお願い申し上げます。
  16. 沢田広

    沢田委員 遺憾だと言って言を左右にしておりますけれども、これは後の問題にもなりますが、大蔵大臣、いままでのこの質疑を経過して、再びこういうことのないようにということもありましたけれども、また同じ結果を招来するようなことがないことを私たちも期待をするのでありますが、新大臣として、これから後だんだん詰めていきますが、いままでのこの質疑の中から、新大臣の就任に当たっての気持ちを含めて一言簡潔に、時間がありませんからお答えをいただきたいと思います。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 いま沢田委員の御意見を交えた御質問の中に、経済見通しが狂ったということには、われわれも審議過程でその追及が足りなかったという、ある種の反省を感じておる、これが一番謙虚な態度であると私も思えました。  私は、たまたまそのときは大蔵大臣ではございませんけれども、とにかく、その前、五十四年、五十五年にわたっては私が大蔵大臣でございましたので、政策の継続性の中で、私も沢田委員反省と同じように、そういうもろもろの注意に対して気を払いつつも、その結果がこのようになったということについては心から遺憾の意を表してしかるべきだ、こういうふうに思います。
  18. 沢田広

    沢田委員 夜分にわたりまして、最初に、こんな時間にこの委員会を開くということになったのは、職員やその他の方に大変御迷惑だったと思います。しかし、これはわれわれの責任ではないのでありまして、念のためにこの点は申し添えておきたいと思います。大変遅くまで御苦労さまであります。  続いて、国債をいまはたくさん出して、いまは百兆円にもなろうとしているのでありますが、これは大臣、簡単にひとつお答えいただきたいのですが、この国債というのは何なんですか。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 国債の定義、私は法律上の正確な言葉を聞き出そうと思いましたが、社会通念上と同じ、国の借金、こういうことであるようでございます。
  20. 沢田広

    沢田委員 借金は払うものだと思うのですね。それはいかがですか。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 借金は払うべきものと心得ております。
  22. 沢田広

    沢田委員 この法律ができました経緯を考えますと、八十年で当初考えた、それからその後六十年で考えた。そもそも借金を返すためにはやはり借金の担保、要するに国民信頼感安心感、そういうものが前提になければならぬということになると思うのでありますが、その点はいかがお考えになっておりましょう。
  23. 竹下登

    竹下国務大臣 まさにこの制度そのものができましたときは、当時は建設国債発行状態下におきましたとはいえ、御説のとおりであると思います。
  24. 沢田広

    沢田委員 そうすれば、この今年度の措置というのは、その分だけ政府信用国債信用を落とす。必ずしも同額ということではありませんけれども、要するに政府もずいぶん苦しくなってどうにもならなくなってきたな、日本株式会社も危なくなったのかな、こういうように信用度を落としていく役割りになっているという意味に解することができると思うのでありますが、その点はいかがですか。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、まさに五十七年度の困難な財政事情からとった措置でございますので、減債制度そのものを廃止するというものではございませんだけに、審議場等を通じて、国民にもまた安心感を与えるようにわれわれも努めなければならぬというふうに思っております。
  26. 沢田広

    沢田委員 じゃ、ちょっとあっちこっちいくようでありますが、今年度六兆円の減収である。じゃ来年もゼロシーリングでいくと仮定をして、やっぱりその程度減収、今年度程度以上にはなかなか見込めない。まあ二・七%程度というふうに一般の観測はしているようでありますが、そうしますと、同じような減収が出てくる。加えまして、六十年にいけば借金の返済の方が大きくなっていくわけでありますから、これまた二兆、三兆の歳出増が生まれてくる。現状のままの水準でいくと仮定しても九兆円は出てくる。さらに加えてその他の一般的なものも若干、二・七であろうとなかろうと上がっていくわけでありますから、それに伴う制度を加えますと減収はさらに大きくなる。  予算委員会でも盛んに言われていたことなんでありますが、この向こう二年なり三年ぐらいの見通しとして、いまのベースでいったと仮定をすれば、三年目に赤字国債をなくすという約束はもうほごになったとしても、五十九年度ではどういう状態になるのかということが、歳入の問題だけをとらえてみますと、いま言ったように物すごく減ってくる。十兆円ぐらい減ってくるのではないかというふうに、歳出をそのまま固定をすればそうならざるを得ないというふうに考えられるわけでありますが、その点は、今後計画は出す出さないという議論のままで来ておりますけれども、われわれ歳入を扱っている者としては、そういう危険性がある、そういうふうに思うのでありますが、その点はいかが御解釈なさっておられるでしょう。
  27. 窪田弘

    窪田政府委員 その点につきましては、ことしの五十七年度予算審議の御参考にいたしました中期展望、その後御指摘のような大きな歳入欠陥がありましたので、かなり狂ってきております。  そこで、いまの段階ではそれがどうなるかということを的確にお示しできませんけれども、五十八年度予算を御審議いただくときまでにはそういった計算をしてお示ししたいと思っておりますが、ただ、いずれにいたしましても、いま御指摘のような大きな不足が生ずることは確かであろうと思います。
  28. 沢田広

    沢田委員 いま言われたように、そのぐらいの大きな不足が生ずる。  では、これはどうするつもりなんですか。十兆円に近い赤字が出てきてしまうだろう。歳出をもしそのままで、その水準を保つと仮定すればそうなってしまう。どうしようというのか。大型税はかけないとか、予算委員会答弁では、現段階では考えてないという答弁なんで、これはごまかしですね。十兆円要ると、十兆円どこか削らなければならない。削るという方向でいくのですか。それともその十兆円は何かで得ようとしているのですか。そのどちらを選択されるのか、お答えいただきたい。
  29. 窪田弘

    窪田政府委員 これは、ことしの予算で六兆円という大きな穴があきまして、今度お願いしている法案は、さしあたりそれを修復するための一つの手段としてお願いを申し上げているわけです。  さらに、その次どうするかということは、これだけの大けがをしたわけでございますから、いまの段階で的確に歯切れのいいことをとうてい申し上げられないわけでございまして、今度、中期展望をお示しいたしまして要調整額をどうするかということは、歳出を削るあるいは負担をどうするかという大きな国民の選択の問題として御審議を願う、こういうことになるのではなかろうかと思っております。
  30. 沢田広

    沢田委員 そこが不明なんですね。これも、法案提案しておいて、いまはとりあえずほころびを直すのだ。もっとでかいほころびになるかもしれぬ。くずの洋服を着ているようなものだ。一つ直せば、また次にほころびる。それに対する対応策はない。ないままでこれを審議しろというのは、これもずいぶんむちゃくちゃな話だと思う。とりあえずほころびを直すという提案だということは、それはそれなりに受けとめて結構ですよ。では、その後の展望はあるのかと言ったら、ないのだ。ないで審議しろといったって、これはどうしようもないでしょう。もう少しきちんとした歳入に対する展望なり見通しなりというものを、きちんと大蔵委員会の方に言えるような姿勢で持ってきてもらわなければ、これは国民の選択というような言葉を使われましたけれども、では投票でもして決めるのですか。どうなんですか、その点は。
  31. 窪田弘

    窪田政府委員 私どもも、ことしの措置につきましては、財政制度審議会に御意見を伺いまして、審議会の検討の結果でも、ことしはこういう非常の事態であるから、こういう異例のこともやむを得なかろう、こういう御答申をいただいておりまして、将来につきましては、中長期的になお検討せよ、五十八年度予算の問題についても、いまなお財政審で御検討いただいております。  したがいまして、現在これをこうするということはなかなか言えない段階でございますが、将来、五十八年度予算あるいはその先の問題として国会の御審議を経まして、将来の方向をだんだん選択していただく、こういうことではなかろうかと思っております。
  32. 沢田広

    沢田委員 大臣、どうですか、いままでのこの問題は。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 率直に申しまして、私が五十五年度の予算編成をしたときには、初めに一兆円の減額ありきということで、それこそ神様、民間様とでも申しましょうか、とにかくわずか四百八十四億でございましたか、いわゆる剰余金の出るような状態のときでありました。そうして五十六年度にこれが入ってまいりまして、確かに世界的な不透明な経済状態の中で、このような状態が生じた。そこで、五十七年度予算に際してお示ししておりました中期展望、読み直してみましても、まさに大変なさま変わりの結論が出ておるわけです。  私どもといたしましては、いま主計局次長から申しましたように、中期展望というものを少なくとも通常国会の再開明けの時点では提出しなければならぬ。その際に、私自身も、率直に言って、従来、五十六年、五十七年に使ってまいりました中期展望というものが、それと同じ形であったら信用しないと言われるのじゃないか。したがって、それまでやっておりました財政収支試算、あの二つをもう一遍検討し直してみて、直ちにこれがこのような長期見通しにつながりますと言えるものでなくとも、あるいはケースAとかケースBとか、そういう形の中ででもお示しするだけの努力はしなければならぬ。したがって、きわめて短期間に、中期展望について整々たる将来が見通せるというものを出す自信はない、素直にそう申し上げるべきではないかと思っております。
  34. 沢田広

    沢田委員 これは、この前の予算委員会の質問でも、この法案に伴ってやはりこの国会にその展望を出すべきだという意見が強かったわけですね。しかも、言うならば、国債信用を回復するといいますか、信用を落としていくことをとめるための、要すれば措置なんでありますから、これからの経済の方向なり財政の方向はこうだということを示すことが必要だということが、再三予算委員会でも言われておりましたが、言を左右にしながら――通常国会の冒頭というふうに聞いていいのですか。冒頭には出します、こういうふうにいま言われたと思いますけれども、それを少なくともそこに至っては出す、大蔵委員会なりどこであるかわからぬけれども、少なくとも出す、そういうことは約束できるというふうに解してよろしいですか。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 通常国会は二十八日に召集されるわけでございますので、再開国会まで、こういうふうに申し上げたわけであります。
  36. 沢田広

    沢田委員 再開国会までというのは、どういう意味ですか。
  37. 竹下登

    竹下国務大臣 結局、予算案等が提出される、すなわち、提出の終了行為とは、個々の議員さんのロッカーにことんと音がして落ちたときというように考えます。
  38. 沢田広

    沢田委員 四十二年のときの法改正、堀先生やその他大変質問をされておりまして、当時、水田さんが大蔵大臣で、この定率繰り入れはとにかく国債の歯どめである。六十年じゃ歯どめにはならないのじゃないか、各野党の、平林先生や広瀬先生、堀先生等も、当時の速記録を見ますると、いろいろ言われております。これは国債の歯どめなんだということを、大臣初め政府委員は一生懸命強調をしておりました。  ここにもあるのでありますが、それから見て、今年度だけの措置だというふうに言っても、やはりその精神を変えるということが、政治の信頼感という立場から見ると、きわめて問題が多いのじゃないかと思うのですね。いや、これだけは、たとえば残業でも二割五分払いますよということを約束して、働く人に残業をさせるわけでありますが、それが今度は金がないから、残業をやっても手当はゼロだよということになったのでは、やはり働く人は信用しなくなると思うのですね。  ですから、少なくともこの整理基金の特別会計への積み立てということは、国民に対する公約である。これが随時必要によってやめられたりなんかすることは、きわめて不安感を増大させる。だから、その歯どめなんだ。これを積むことによって、国債を出すことをとめていくための措置なんだというふうに、当時政府提出をしているのですね、理由は。ですから、これをとめるということは、国債がさらに出ていくことをより一層精神的に可能ならしめる。ですから、これはやはりここに積んでいかなければならないのだ。六十年だなんということですから、夢みたいな話ですが、しかし、六十年の金であっても積んでいくのだ、だから、そうすると、積んでいくことによって国債にブレーキをかけようというのがこの法律の精神なんですね。その精神を一年であっても破るということは、これは人間というのは不思議なもので、一回欠勤すると欠勤の癖が出る、遅刻をすると遅刻の癖が出るものなんです。これは不思議なものです。そういうようなものなので、政府もこれを一年やめると来年もまたやめたくなっちゃう、そういうようなものになる可能性が強いのですね。次の歯どめがない。  そういう点から見ると、これは何とかほかの歳出を詰めるなり何かして、定率繰り入れはきちんとしておく。苦しかろうが何しようが、それをやっておく。それが歳入をあずかる者の使命だ、国債を扱う者の使命だと私は思うのですね。これが対社会的な責任を明らかにするという意味に通ずるのだと私は思うのでありますが、あえてその点お答えをいただきたい、このように思います。
  39. 窪田弘

    窪田政府委員 確かに御指摘のように、四十二年度からこのいまの仕組みになりましたが、それを始めるときの財政制度審議会の答申にも、この制度が財政の膨張ひいては国債残高の累増に対する間接的な歯どめになる、こういう意義を述べております。またその当時の国会の御審議でも、そういった点が指摘されております。  したがってこういう定率繰り入れをとめざるを得ない事態に至りましたことは大変残念でございますが、ただ、ことしの補正予算に限って申しますれば、この一兆一千九百八十四億の定率繰り入れをとめずに入れるといたしますと、結果的にはそれだけの国債をよけいに出さなければならない事態でございます。したがって、特例公債の発行をできるだけ抑えていこうという大きな見地からいたしますと、やはりこの際一時的にとめるのもやむを得ないのではなかろうかと考えます。また、今回の財政審にお諮りしたときも、そういう見地からいってもやむを得ないのではなかろうかという御意見をいただいている次第でございます。
  40. 沢田広

    沢田委員 それは、泥棒をして、これじゃ少なかったからよけいもっと泥棒した方が得だ、どうせ罪になるのなら同じだという論と同じなんですね。そこを赤字国債だというふうにきめつけてしまうところに安易さがあるのですよ。定率は入れる分は入れて、歯を食いしばって何でそれを捻出するか、その努力なくして、両方とも安易な道を選んでいったらば、結果的にはどうにもならないですよ。それは泥棒の三分の理屈というやつなんですよ。片方、国債を出すよりはこの方がいいでしょうと言う。両方とも悪いのだ。  大蔵当局としての知恵のあるエリートが集まっていて、もっと違う道を選ぶということが出てこないことが哀れだと言わざるを得ないですね。その点はそういう解釈でしょう。どっちも悪いのでしょう。赤字国債を出すことも悪い、これもいけない。もっとほかに知恵がなかったのか。どうも金がないから心中しようというのと同じことなのだ。それじゃあなた方、せっかく集まっていてもう少し歳出をどうかする方法はないのか。あるいはどうせ余ってくる金がいっぱいあるのですよ、不用額が出てくる分が。後で聞こうと思っていますが、不用額もたくさん出てくることはわかっておるわけです。そういうようなものもちゃんと審査をしてきちんとやれば、こんなことをしなくても済むのだろうと私は思うのです。もう一回お答えいただきたい。
  41. 窪田弘

    窪田政府委員 その点につきましては、私どもも既定経費の節減に大変努力をしたつもりでございまして、今度の補正予算でも三千二百五十四億円の既定経費の節減をしております。これはいわゆる経常的な経費も、いままで節約といいましても五%が限度であると言われておりましたが、ことしはあえて一〇%の節約を各省にお願いいたしましたし、また現在の時点で不用額を最大限捻出していただきまして、二千五百五十二億円の不用を現在見込んだところでございます。昨年の補正ではこの十分の一の二百四、五十億でございましたから、例年の十倍ぐらいのそういった努力はしておりますが、何しろあいた穴が大き過ぎまして、とてもそれでは間尺に合いませんものですから、やむを得ずこういう措置をとらせていただいた次第でございます。
  42. 沢田広

    沢田委員 それでは、いまのお答えがありましたが、不用額はこれ以上はもう出ないぎりぎりまで詰めた。もし出たらどうしますか。
  43. 窪田弘

    窪田政府委員 これは不用と申しましても、最後にやってみて五月の末くらいに出る額でございますから、絶対に出ないとは申せないわけですが、五十七年度予算はもともと非常に厳しい編成でございますし、途中でかなり無理をして不用を出させておりますので、例年のようには出ないということは間違いないと思っております。
  44. 沢田広

    沢田委員 そんなことないので、大体不用額が出てくる一番最大の理由は、用地買収にひっかかっている問題ばかりですよ。だから、用地買収の関係にひっかかってどうにもならないのは、大体年度末へ来てどうにもならない。それを繰越明許とか継続事業とか、継続事業は余りないですが、繰越明許とかそういう形で何とか温存していこうというのが縦割り行政の一番の悪いところなんですよ。その結果はどうにもならないに決まっているのです。それを何とか温存しているので、本当にあなた方が真剣に各省の分を当たったら、こんなものは山と出てくるよ。問題は、そこへあなた方が立ち入られないのか、立ち入ろうとしないのか、あるいは相手の言い分をまるのみにしているのか、そういうところにあるのですよ。あなた方の姿勢なのだ。  だから、さっき言ったように、これを削ることによって安易な道を選ぶのだということになるのはそこだと言うのです。今度洗ってみなさい、みんな用地買収にひっかかっているものばかりですよ。そういうものだけが皆残って、実際には残らないが、不用額になるものを不用額にしないで済ましていっている。そんなものはあきらめたらいいのだ、どうせ用地買収がだめならば。それを残しておいて、片一方ももっと値をつり上げようと思うからまとまらないのです。あきらめれば、今度は金が欲しい人は売るのですから、まとまってくる。  これは一つの卑近な例だけれども、そこまで立ち入った調査をやったのかどうかということなのです。そういうものに手をつけたのかどうかということをちょっと聞きたい。
  45. 窪田弘

    窪田政府委員 確かにその辺は予算の一つのポイントでございまして、私どもも、ことしは、現在の時点で執行の見込みがないもの、はっきりしないもの、すべて出していただくということでやりました。  ただ、いま御指摘の用地買収その他になりますと公共事業費の系統が多いわけでございますが、公共事業費をずっと横ばいにしておりますので、方々にいろいろきしみが出ておりまして、そこは方々融通したりいろいろな事情が生じております。そういうものはやむを得ないとしまして、たとえば最近工事費の値上がりが鎮静化しておりますので安く上がったとか、そういうものまですべて今回は洗い出しているつもりでございます。
  46. 沢田広

    沢田委員 この法案は、三月三十一日、さらに詳しく言えば会計閉鎖期の五月三十一日時点までに成立すればいいわけですね。何もいまここであわててこれをとめるのだということは、安心感を大蔵当局に与えるという役割りをするだけであって、財政運営その他の上から見たら、それほど特別に急がなければならぬ理由はないと思いますが、いかがですか。
  47. 窪田弘

    窪田政府委員 理屈としてはそういう理屈もあり得るかもしれませんが、しかし、これはこの間御議決をいただきました補正予算と一体のものでございまして、その裏づけ法案でございます。予算の円滑な執行のためにも、一日も早く御議決をいただきたいと存じております。
  48. 沢田広

    沢田委員 気持ちはわかりますが、実害は伴わないということについてはそのとおりでしょう。
  49. 窪田弘

    窪田政府委員 実害と申しましても、法律が通ってないとやはり安心して予算を執行できないという意味では非常に害がございますので、一日も早く安心をさせていただきたいと思います。
  50. 沢田広

    沢田委員 そこで、その言葉の背景となることを若干、ほかのこともあるのですが、大臣、こういうことが行われるということは、国債信頼感がなくなるということをさっき私は言ったのでありますが、恐らく来年もこういうようなかっこうをやらざるを得なくなってくるのじゃないかと思うのです。まだ間に合います、まだ間に合います、だから来年もいいのですということになって、言うならば、自民党多数の背景にある政治権力に対する信用度、こういうものが頭の中にあるから、私はこういうことができるんだろうと思うのですね。  もし国民が、いつ逆転して、そして国債がどうなるかわからぬという状態になったとしたら、担保がなかったら国債を買う銀行もなくなるだろうと思うのですよ。やはりそのために、政治の、自民党の多数ということが背景にあるから、ある意味においては無謀なといいますか、担保能力を落とすような形が行われることを許してるんだろうと思うのですね。  ですから、今度はいろいろうわさがありますけれども、単純な経理計算からいくならば、やはり整然として担保として蓄えていくという努力をしていかなければならないという義務を背負っているんだろうと思うのですね。その点をおろそかにするということは、国民の信頼というものを、国債に対する信頼感を落としていくということに通ずるんだろうと私は思うのです。これは案外に目に見えない背景だと私は思うのですけれども、その点は、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  51. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる国債政策というものの基本が、その国債に対する国民の信頼、これを落とさないことにあるというふうに、私も基本的に認識しております。  したがって、当時私は――佐藤内閣の当時であありまして、水田さんが大蔵大臣でありましたと思いますが、この制度そのものがたしか一年おくだったと思うのであります。建設国債の発行、オリンピック後の戦後最大の不況と言われた際に財政が対応する手段として選ばれた建設国債、しかし建設国債については、当時の議論を思い出してみましても、これには何としても歯どめが必要である。したがって、その歯どめというもので、安易な国債政策の惰性に陥らないようにという意味でこの制度もつくられたというふうに認識をいたしておりますし、何はともあれ、国債というものが国民の信頼を落とすようなことがあってはならぬ。また、そういう政策をたびたび続けていけは、いわゆる国会でマジョリティーを持つということが信頼の一つのバロメーターといたしましても、マジョリティーを失うことだってあり得る、それぐらいやはり緊張した態度で対応しなきゃならぬ問題であるというふうに考えております。
  52. 沢田広

    沢田委員 若干、時間の関係でほかの問題も聞いておきたいと思います。  実はグリーンカードの問題なんでありますが、もう日も旬日を経ずして年を越すわけであります。法律は成立をいたしているわけでありますから、当然不公平税制という立場から実行されることを、しかも大蔵大臣のときにこれは御提案なさった法律でありますから、いまさら何か考えようという気は毛頭あるはずはないし、竹下大蔵大臣の政治生命をかけての問題であると思います。  ところが、この間新聞に、大蔵省は行政措置でこのカードの交付をサボタージュしようとかブレーキをかけようとかというような、これは報道の間違いだろうと思いますけれども、そういうような部分が言われておりました。まさか立法府を越えて行政府がそういうことに支障を与えたり障害を与えたり、あるいはブレーキをかけたりするなんということはできるはずもないし、するはずもないと思っているわけであります。  しかし、念のためでありますから、煙の問題と同じように、どこかにそういうことがあったから、そういう報道にもなったんじゃないかという一抹の不安を持ちますから、ここで改めて、来年の、一日は銀行は休みでありますから、金融機関は休みでありますから、四日からは、カードの請求があれば当然これは支給されるものである、また、国民としては当然カードの請求の権利を保有するものである、こういうふうに解釈をいたしますけれども、これは大臣以外の方で結構でありますが、そのとおりの解釈で間違いがないかどうか、念のためお伺いをいたしておきたいと思います。
  53. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま沢田委員が御指摘になりました新聞の報道でございますが、私どもその記事を承知しておりますけれども、あの記事そのものは私どもの関知しないことでございます。これはぜひ御理解を願いたいと思います。  ただ、このグリーンカードの問題につきましては、与党である自由民主党の議員提案という形で、この夏に五年延期するという法案提案されまして、当時、大蔵省といたしましては、与党提案であるだけに、これは非常に重大に受けとめざるを得ないということを世間にも申し上げたわけでございます。ただ、法律の理屈といたしますと、現在の延期法案が仮に年内に立法府で成立しないということになりますと、五十五年、五十六年、二回にわたりまして所得税法等の改正ということでお願いいたしておりまして、現在の、五十八年一月一日以降想定いたしております事態ということになりますと、五十八年一月一日以降はいわゆるグリーンカードの申請があり、当然それに対して交付するという法律状態になるわけでございます。
  54. 沢田広

    沢田委員 理屈で言えばというと、理屈でないことがあるのですか。
  55. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これも大変舌足らずでございました。  先ほど申しましたような議員提案の経緯もございまして、仮にこの法案が成立しないという事態になりますと、民間の預金者、金融機関等、相当な混乱が生じるということは懸念されるわけでございまして、そういうことを考えますと相当混乱が懸念されますけれども法律状態としては、五十五年改正法の法令がそのまま実施されるということになりますれば、理屈の問題といいますより、当然のこととして、申請があれば交付するということにもちろんなるわけでございます。
  56. 沢田広

    沢田委員 混乱とか、ればとか、そういうことを言うことはずいぶん不見識だね。何が混乱なんですか。混乱だとか、ればとか、そういうことはあなた方が言う権利はないですよ、立法府がつくった法律を忠実に実行する義務があるだけで。そんなよけいなことを考えること自身があなたの間違いなんですよ。  混乱というのは何を言うのですか。法律をつくって、そのとおり実行していくことがあなた方公務員の任務でしょう。そうだとすればとか、いかにも国会議員が言うようなことを言っているのだけれども、立法府が言うようなことをあなたは言っているのだけれども、そんなことは訂正しなさい、混乱だとか、ればなんて。ちゃんと法を実行する立場で、遵法精神に基づいて実行に当たります、そう答弁するのがあたりまえじゃないですか。何を言っているんですか。
  57. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは先ほど申し上げましたように、この法案提案された時点におきまして、与党提案でございますから重大に受けとめざるを得ないと申し上げましたのは、この法律が立法府で成立する事態というものは、当然それも予想しておかなければならないものでございますから、二つの対応をいろいろ考えていかなければならないということを申し上げたわけでございます。
  58. 沢田広

    沢田委員 混乱とか、それだけは取り消しておきなさいよ。これはあなたのために言うんだ。法ができちゃってから、もしカードを取りにいったら混乱が起きるでしょうなんて、穏やかでないですよ、少なくとも大蔵省の主要な幹部が。こういうことは、とにかくこれは政府じゃなく立法府で考えることなんであって、あなた方が、混乱が起きる、起きない――混乱が起きないように全力を尽くしますというのが答弁じゃないですか。混乱が起きるかもしれません、何か扇動しているみたいではないか。どっちがあれだかわかりゃしない。これだけはとにかく不穏当な表現だと思うので取り消しておいてください。
  59. 梅澤節男

    梅澤政府委員 私の混乱という言葉、あるいは不適当であったかと思います。  申し上げました真意は、そういうことで世の中の預金者あるいは金融機関等も、与党提案法律でございますから、成立しました場合に五十八年一月一日以降のグリーンカード制度は実施されない事態になるのかもしれないという予測は一方に流れておるわけでございまして、そういう非常に不安定な状態を私申し上げたわけで、混乱という言葉が不適当でございましたら取り消しをいたします。
  60. 沢田広

    沢田委員 与党国会の上にあるんじゃないのだよ。与党国会の下にあるのですよ。そういうことを与党が何か行ったから法律が崩れたり動いたりするものじゃないのだよ。あなたのうちは子供がおやじを殴るのかもしれぬけれども、世間はそうは通らないのだよ。  だから、そういうことじゃなくて、現在の法律のもとにおいてはそのとおり実行します、公務員としては当然です、そういうことで何もあとのことを言うことはないのだよ。
  61. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま委員の御指摘になったとおりでございます。
  62. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、五十八年度予算の年内編成ということを政府が決めたようでありますが、年内編成ということは三十一日まであるわけでありますけれども、現段階においてはどの程度の進捗なんですか。
  63. 竹下登

    竹下国務大臣 これは詳しくは窪田次長からお話しした方が正確だと思うのでありますが、率直に申しまして、いま国会が開かれておる、その国会の中の推移を予測して予算編成のもろもろの作業を行うということは行政府として非礼であるという立場から、各種審議会等も可能な限り国会審議に迷惑をかけない形のところへ設定して、場合によっては複数の設定時間帯をとったり、そういうことで今日進めてきております。これは手続の面においてであります。  それから内容的な面におきましては、歳入の問題、歳出の問題等につきますその基礎になりますいわゆる五十八年度の経済見通しということについては、経済企画庁を中心にしていま議論を詰めつつあるところでございますので、これは、私は予算年内編成作業可能な範囲に確実に合意してできるものだと思っております。  そこで、これからの手順ということを考えますと、予算編成大綱、それからそれに伴う大蔵原案、そして内示、復活折衝というような手順を考えてみますと、いまのところ、個別個別においては逐次詰まりつつあるというふうに理解しておりますので、年内編成という方針はいま崩さないで、それに時間帯を工夫しながらもまっしぐらに進んでおる、こういう状態でございます。
  64. 沢田広

    沢田委員 年内編成は可能であるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  65. 竹下登

    竹下国務大臣 よろしゅうございます。
  66. 沢田広

    沢田委員 まさかその五十八年度の年内編成の中には、国債整理基金の特別会計に繰り入れないなんてことはないのでしょうね。
  67. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、どのように扱うかにつきましては、例の五十六年度国債整理基金からの繰り入れ、それの問題と一緒にいま検討しておるところでございます。
  68. 沢田広

    沢田委員 じゃ、次に時間の関係で移ります。  いま所得税の減税小委員会をつくっているわけでありますが、いままでの答弁は、所得税減税はその委員会が合意に達すれば実施をするという答弁で終始をされておりますが、現在二百一万五千円という課税最低限は少なくとも低い、近く生活保護費の方が超えてしまう、こういうことで、ひとしく課税最低限というものは見直さなければならぬ、こういうことの情勢は政府自身も考えられていることだと思うのですが、その点がどうなっているのかということが第一。  第二は、いままで前の大蔵大臣等が七五は高過ぎる、税率をもっと緩和する必要があるということを言われておりました。上が下がれば下へずっとなだらかになるわけですから下も下がる、こういうことにわれわれは理解しているわけでありますが、その累進税率の言うならばカーブの関係については、いわゆる幅についてはどのように当局としては考えておるか。  それから第三点は、五十八年度予算編成については所得税減税を考えていないと報道では言われているわけでありますが、その点はどういう理解をしてそういうことを言われているのか。  以上、お答えいただきたいと思います。
  69. 竹下登

    竹下国務大臣 まず最初の課税最低限の問題でございますが、国際比較等からすれば高いところに位置づけがされておる、この議論もございます。しかしながら、何分こうしてずっとそのまま据え置かれておりますところに、いわゆる納税者の不満と、そしてある種の期待感と両方があるということは十分承知いたしておるところであります。御指摘のように、恐らく生活保護は東京の四人世帯で百七十八万ぐらいに今年度はなるんじゃないかと私も思うのでございます。これが考え方、一つであります。  それから、次のいわゆる累進税率の問題でありますが、これについても、各方面におかれましての意見としては独身貴族に熟年地獄とかあるいは若年天国、熟年地獄とか、いろいろな表現がなされて、税制調査会等においてもそういう議論が出ておることも事実でございますが、いずれにいたしましても、これらの問題につきましては、すべて税制調査会の答申というものを得た上で本格的な作業に入るわけでございますので、その答申前に私の方から予見を持って申し上げるわけにはまいりません。  ただ、所得税減税そのものの問題は、従来まで国会答弁しておりますのは、財政再建の一つのめどが立って、しかもこれにかわるべき財源が見つかった場合に所得税減税に着手いたしますという答弁は、そのまま継続するほどの厳しい環境にあるというふうに理解をいたしておるところであります。  なお、減税小委員会に対する態度というものは何回も申し述べ、いま沢田委員の御指摘のとおりでございます。
  70. 沢田広

    沢田委員 そうすると、政府自身としての意思表示としては、経済情勢が、財政が厳しいから当面の意思表示は差し控える、しかし税制調査会なり減税小委員会なりからの答申があればそれは遵守いたします、尊重します、こういうことだというふうに理解してよろしいですか。
  71. 竹下登

    竹下国務大臣 当然のこととして小委員会の問題はそのとおりでありますが、税制調査会はいままさに審議中でございますので、その答申については尊重すべきものであるというふうに思っておりますが、減税小委員会の場合には答申に対しては当然のこととして尊重いたします、こういうふうな答弁をしておるわけでございますので、政府税調というものと国会というものとの比較論をするわけじゃございませんが、若干のトーンの違いはあるというふうに考えております。
  72. 沢田広

    沢田委員 これはまた後の他の委員から詰めてもらうことにいたしまして、せっかく呼んでおりますから、経済企画庁は、いままでの議論を通じまして、これもいままでの答弁はさっぱり何もなし、不透明な答弁に尽きているわけでありますが、景気を回復していくためにどのような、政策も必要でしょうけれども、考え方に立っているのか、その点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  73. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 わが国経済の現状でございますが、先進諸国の経済情勢が非常に厳しゅうございまして、アメリカの成長率もことしはマイナスが予想されておりますし、ヨーロッパでも特に西ドイツあたりがマイナスという厳しい状況、失業率も相当高い、そういうことの中で比較すれば比較的良好でございますけれども、こういう先進国を中心とする世界経済の停滞の影響を受けまして、輸出が非常に鈍化しております。これもありまして、景気の足取りは現状力強さを欠いておるわけでございます。  それで、景気回復の方策をどう考えておるかという御設問でございますが、これは先般十月八日の経済対策閣僚会議におきまして、内需を中心とした景気の着実な回復を図り、雇用の安定を確保するために公共投資等の推進、住宅建設の促進等々の総合経済対策を決定したところでございますが、これの着実な実施に努めることによりまして、また、今後とも内外の景気動向を注視しながら機動的な政策運営を図ってまいりたいと考えております。
  74. 沢田広

    沢田委員 文章としてはそれはよくできている文章だと思いますが、中身がない。そういう答弁を期待しているわけじゃないんだから。まだちょっといてください。  続いて、行革の方の推進として行革の答申が次に出てきますが、これから国民生活は、いまの大蔵大臣の説明ではないが、非常な耐乏生活を強いられていくという状況だ。少なくとも五十八年度は相当な厳しい条件にある。五十九年度も、もしその方針を踏襲するとすれば、これまた厳しい耐乏生活に入ってくる。さらに、行革はいつごろになって終わるのか。行革をやっている間はまさか別の方策を講ずるわけにはいかないのだろうと思うのですね。  そうしますと、行政管理庁としては、どの程度の年次までにこの行政改革を終わらせようと考えているのか。効果があるかないかは、これは別問題ですから、われわれの方とは意見が違うのですから、一応考えている年次のめどはどういう計画でいくのか、ちょっとお示しいただきたい。
  75. 八木俊道

    ○八木説明員 行政改革につきましては、昨年七月の第一次の臨調答申、ことしの二月十日の第二次の答申、そしてことしの七月三十日の第三次答申、いろいろ改革のテーマが出てきておりまして、ある程度政府部内で結論を得て実施に移しているというところでございますが、範囲が何分広範でございますので、事項によりまして、どういったタイムテーブルで進めていくか、さまざまでございます。  たとえば、昨年の秋の行革臨時国会におきまして御議決をいただきました行革関連特例法、これは三年間の歳出の削減合理化措置でございます。それから昨年の九月にスタートいたしました第六次の定員削減計画、五年五%でございますが、これは五十七年度から五年間ということでございます。あるいはまた、ついことしの九月の二十四日に決めましたいわゆる行革大綱でございますが、これによりますと、たとえば三公社の改革につきましても、国鉄につきましてはその経営改革を五年間に実施する。さらに年金等の問題につきましては、第一次の着手は当面公企体共済と国家公務員の共済との統合、これは大蔵省でおまとめいただくべく目下御調整いただいておるわけでございますが、このほか抜本的な年金制度の、全体の公的年金制度のあり方の検討とその一本化、こういう問題につきましては相当な期間をかけて取り組んでいく。  事項によりまして若干さまざまでございますけれども、これらにつきましては、内外経済の情勢とかあるいは財政構造の改善のピッチとかに合わせまして、整合的に計画して進めていかなければいけないというふうに考えております。
  76. 沢田広

    沢田委員 大臣、そうしますと、一方で行革をやりながら、これはとにかく小さな政府、経費の節減、こういうようなことを目標にしておられるわけでありますが、一方には、国民は耐乏生活でがまんしてくださいという状況の中でいく限り、いわゆる増税をして賄うとかそういうことは論理的に考えられない。一応終了した状態においてのスタイルからスタートしなければならないのじゃないのか。とにかく当面、中身のいい悪いは別として行政改革は五年かかる。それが終わらなければ次の発想というものは出てこないんじゃないか。  同時にまた、国民の耐乏生活も、その分ぐらいは大分厳しく続いていくというかっこうになる。世界の中で突然異変でも起きない限りいまの状態が続くとすれば、きわめて憂慮すべき状況になっていくことは、少なくとも歳入の方は間違いないだろう、あるいは歳出の方も同じように厳しくなっていかざるを得ないだろう、こういうふうに考えられるわけでありますが、この点は、いわゆる五年後という、五年ぐらいはかかるだろうと言っている状態を見ますと、五年間は余りいじらないでいく。一方で増税をやったり、一方で行革をやって、一方で耐乏生活をやる、こういうわけにはいかないだろうと思うのでありますが、この三つだけを一応関連させて志向する方向はどこなのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  77. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる行政改革、そしてまた財政再建という問題は、この行政改革というものはまさに効率的な政府をつくることであって、財政再建とはそもそもは別の問題であるのではないか。しかしながら、別の問題ではあるけれども、行政改革の一部としての大きな役割りは財政再建にもある、そういう考え方に立ってまいりますときに、行政改革のある種の年次目標と財政再建の一つのめどというものは、必ずしもこれが一致するものではないではないかというふうに私は思っております。  そもそも行政改革は、先般の地域特例等を縮減する時限立法という問題は、五十九年を一つの財政再建のめどとして考えておった、その年度に合わしたものであると思いますし、そして定員削減等はまた別の五年計画である。だから、行政改革そのものも、きちんとしたすべての計画でこれで終わったという時期のあるものではないではないか。しかし、それなりに計画は立てやすい課題である。  ところが、いま財政計画ということになりますと、いわゆる経済計画というものがございます。いまこの新五カ年計画というものの作業を経済企画庁中心で進めていただいているわけでありますが、これとて、これほど世界経済が不透明なときに、成長率を幾らに見るかとか、あるいは租税負担率、それに伴う公共事業費の総枠、なかなかむずかしい問題で、時間のかかる問題であろうと思うのであります。  一方、この財政運営の問題は、先ほど来中期展望というような問題については触れておりますが、実際問題として計画というものが立つものであるかどうか。これは、そもそもが自由経済体制というものの中に、経済運営そのものに計画経済の要素を導入するという意味においては、計画化するということは必ずしもなじまない問題ではないかというような感じもいたしますので、それぞれ関連性があるけれども、一つ一つがきちんと計画の上で関連性をつけていくというのは非常にむずかしい問題じゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。
  78. 沢田広

    沢田委員 わかったようなわからないようなんですが、やはり行革はとにかく一方で進めよう、それで行政改革は少なくともいまの財政再建に寄与させよう、こういうことなんでありますから、離れているようでいて、一方は、国民生活は大変厳しい生活になってきますよ、負担も増大していきますよ、さらにその間に財政再建をやっていくんです、こういうことが、それぞれが別個の問題でありながら、やはり一つの統合化したものが、これが政治だと思うのですね。  そうすると、行革がある程度効果を示すのか示さないのか。効果が出てこないんじゃ、ただ血を流すだけ、出血をするだけであったのでは、これは意味をなさないのですね。また同時に、国民に犠牲を押しつける以上、犠牲だけでは意味をなさないわけですね。ですから、行政改革がある程度終了をして、まあ耐乏は若干続くのでありますが、そして、その状況の中で財政再建というものが考えられていく、そういうことでないと、それぞれ別個のもので独立に歩んでいくのだという話にはならないのじゃないか、政治は生きているわけでありますから。  そういうことで、行政改革が終了の時点というものはやはり一定の整理統合みたいなものがあるかもしれませんが、一つの形を整える、その形を整えて効果を上げさせて、国民の生活を引き上げる、こういうことにならなければ財政再建というものは進んでいかないだろうと思うのですね。  ですから、うわさに聞く五十九年度六兆円の穴埋めは増税でやるというようなこと、あるいはまたさらに三兆円ある、さらにこの前の国会でいわゆる食い散らかした年金やその他の金も払わなくちゃならないというようなことを考えてくると、この行革の効果というものが問われていくことになる。あるいは行革というものは捨ておいて、とりあえず財政再建の方の問題だけに全力投球する方がいいことになるのじゃないかということにもなりかねない。片一方は相当な長期に時間がかかっていくわけですから、効果の出るのも遠くなるわけですね。いまそれを待っていられる時期かどうかということです。景気は悪い、失業者は出てくる、そういう現実的な対応で、いまのんびりと行政改革からそのうちよくなるだんべという形で政治を動かしていって果たしていいのかどうかということが問われているのじゃないかと思うのですね。  だから、行政改革、行政改革と言うけれども、行政改革で金の卵が生まれてくるわけじゃないのですね。にじみ出るものなのですね、これは。ですから、いまの失業やいまの国民生活やあるいはいまの財政再建というものは、行革をするしないの問題と別の次元の問題としてとらえていくことが必要なんじゃないのか。だから、余り行革ということが何かすべての特効薬だというふうに思い込むこと自身に、私は基本的な問題があるのじゃなかろうかという気がするのですね。いまの総理はもう行革総理みたいで、「ぎょうかく」というのは角を迎えるとも言うそうでありますから、角榮さんを迎える迎角かもわかりませんけれども、それはさておいても、二兎を追う者は一兎も得ずという言葉がありますが、いまの政府がやろうとしていることは、行革もやります、財政再建もやります、こういう形でいっているのですが、これは失敗するのじゃないかと私は思うのですね。  これは大蔵大臣の見解をここではっきりして、行革はずっと十年なら十年計画でやる、そんな急いでやらぬ、そのかわり財政再建なり国民生活の安定なり、そういうところに重点を置いて、当面はやはり国民生活の安定のために努力するというのが基本じゃないかという気がするのでありますが、その点はどっちともつかないという返事だろうと思うのですね。返事は大体そんなものだろうと思うけれども、あえて言うならば、私は行革にこだわり過ぎているのじゃないかという気がしてなりません。かえって角を矯めて牛を殺すことになりかねない。政治というものは、もっと別なところから解決していかなければならぬのじゃないか。民力を活用するなら民力を活用する方法がもっとあってしかるべきだというふうに思いますが、その点御見解を承りたい。
  79. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的な認識が一致しておりますのは、行政改革、財政再建、そして国民生活、それを織りまぜた中にいわゆる政治というものが存在しておる、これは私も基本的な認識としては一致でございます。  そこで、行革と財政再建と、そしてそれに伴う国民生活というものに順位をつけるというのは、率直に言ってむずかしいことであると思っております。行政改革の理念を追求してみましても、場合によっては、いわゆる雇用人口の増加等々から考えた場合に、本当に政府として行政でやる範囲、あるいは民間でやる範囲、個人の自力でやる範囲、そういう分野というものが徐々に構成されながら、安価にして効率ある政府というものがつくられていって、沢田委員指摘のように、そこににじみ出てくるものがあるというふうに私も思います。  財政再建というのは、これは確かに当面の重要な課題であると私は思っております。その財政再建について、私なりに最近の考え方をまとめてみますと、結局、従来いろんな歳出構造の中におきましても、かつては、アメリカに追いつこうとかあるいはヨーロッパを追い越そうとか、それは、ある角度から見たら、すべてその目標は達成されたとも言えるのではないか。むしろ先進国病等に悩むあんな国にならないように、いまぜい肉を落としておくことが必要ではないかというような、大きな発想の転換をして取りかからなければ容易なことではないではないかというふうに私は考えておるわけであります。  したがって、国民皆さん方に痛みを分けるとかあるいは耐乏をお願いするとかいう立場に立っても、まず政府のやるべきところから、みずからが歳出削減等々、またそうして歳入の適正化、公平化というような問題でもって理解を示していく、まずその姿勢が必要ではないか、こういうふうに考えております。
  80. 沢田広

    沢田委員 その姿勢が人勧の凍結というような形であらわれているということが問題なんでして、この問題には大蔵省の抵抗が一番強い、こういうふうに言われているわけであります。今度の五十八年度の予算編成も、一律五%とか一律一〇%とか、政策の選択についてきわめて甘いといいますか、それぞれががまんしてもらおうという意味なんでしょうが、もっと政策の選択というものを厳しくしていく。どれは生かし、どれは削る、そういうものがいま必要になってきているときじゃないかと思うのですね。  あえて私の意見として、いまは貿易もだめだ。住宅もそう問題を大きくするわけにはいかない。設備投資もそう望めるわけにはいかない。とすれば、やはり社会資本の充実に重点を置かなければいかぬだろう。下水であるとか河川であるとか、この前の台風でも大変被害を受けたわけでありますが、いわゆる国土の社会資本というものを充実をしていく方向で景気の回復、雇用の安定、こういうものを考えていく当面の時期ではないか。  そういうことから考えていきますと、人勧などを尊重しないで抑えつけていって、そして耐乏生活、何でもがまんしろ、がまんしろ。平均的に菜つぱか何かを押し漬けにしているようなつもりでやられているような政治の運営というものは、果たしていかがなものだろうか。もっと活力を出そうというのには、やはり希望を与えることですね。希望を与えるには、抑えて希望を与えられるものじゃないですよ。よく働いてくれ、がんばってくれ、そう言いながら、やはり給与も上げるものは上げながら、いま言ったような方向で社会資本の充実を図る。自民党がいま五十八年度の予算編成で考えている方向は、どうも目がどっちかに向きかかっている。言えば、真っ正面を向いていない、斜視みたいなものだなというふうに思わざるを得ないのでありますが、いわゆる見当違いを進んでいるような気がしてならないのであります。  でありますから、この整理基金の問題もそうであるけれども、何とか国民生活の安定へ堅実な歩みを続けていくためには、大蔵省が公務員をいじめることによって財政再建を図ろうという方向は間違いだというふうに思わざるを得ないのです。これは中曽根さんががんばっているのか竹下さんががんばっているのかわかりませんけれども大蔵大臣としてはここは目を刮して活力をつくる、内需を拡大する、そういう方向で予算編成もしてもらいたいし、行政府としての責任を果たしてもらいたい。  これは私の意見も若干入りましたけれども、その点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  81. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに世界の先進国の中ではずば抜けて優等生、こう言われます。しかし、じゃ、だれしも本当に優等生なのであろうか。そして失業率一つ見ても仮に二・四%としても百三十六万人ぐらいでございますが、一〇%を超すような先進国の状態である今日、その先進国側からその数字を見る限りにおいてはまるで天国、こういうような感じを持つ国も多いようでございます。しかしながら、われわれとしては、少なくともかつての高度経済成長のときから見れば、失業者の数でも見られるごとく、それがある種の不況感としてそのままわれわれの生活実感の中に入っていると思うのであります。  したがって、何もかにも世界の中では一番いいからがまんしてくれと言うだけではいけないというので、景気対策としては先に決めまして、そして今度の補正予算にも大いに関係のあるところでございますが、総合経済対策というものを立てた。その柱を見ましても、いま御指摘のように、社会資本の充実というようなところへもそれをも含めて二兆七百億円という公共投資があります。その中には社会資本の充実というべき範疇に入るかどうか、単なる公共事業としての範疇ではとらえ得ることはできますけれども、災害復旧もあることは事実でございます。それが景気支えの一つのてこになるというふうに期待しておるわけであります。そうして全体のそういう中において消費を刺激していくことも可能であろうという考え方に立っておるわけであります。  いま直ちに消費の刺激をすることが、ベアによってこれをやっていく、これは私は消費を刺激する大きな要素であるとは思っておりますが、それをやることそのものによる消費の刺激によって景気の波及効果をもたらしていくというよりも、幸いにして物価が世界一安定しておる今日でございますので、消費は広範な角度の景気の下支えの中にそれを期待していって、別の角度から、人事院勧告の見送りにつきましては、諸般の情勢を考えた上で、まことに申しわけありませんがとにかく忍んでいただきたい、こういう姿勢でお願いしておるというのが今日の実情であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  82. 沢田広

    沢田委員 時間が厳しくなりましたが、人勧問題はいまの国会の一つの大きな焦点であるし、日本の経済の方向へのまた一つの指針にもなるものであります。これはいま実務者会談でやっておりますから、ここで多くを申し上げることは差し控えますが、でき得るならばそういう方向で大臣として御努力をいただきたい、こういうふうに思います。そのとおり実施しろと言っているわけじゃありませんが、やはりそういうものへの期待感を満たしてやることによる活力の方が打撃よりも大きいということを十分に配慮してやっていただきたい。これは意見だけにとどめておきたいと思います。  続いて最後の問題であります。これも金融関係でありますが、これはよけいなことですが、ちょっとこれだけ念を押しておきたいのです。これはレクチュアで言ってありますから簡単に言いますが、銀行の借り入れを行う場合に建物を物件としてやっているときに、約款には預金があった場合に非拘束性のものを銀行は随時必要に応じて拘束することが可能であるという契約になっているそうです。いわゆる相殺規定というのがあるのだそうであります。  これは明治以来の規定らしいのでありまして、これは金融資本擁護の立場に立っているわけでありますから、今日の段階になれば、これはもう必要のないことだというふうに思うのであります。一方で担保をとって金を貸して、そして預金をしておけばそれはいつでも相殺して取り上げることが可能である、こういう契約がまかり通っているということなのだそうでありますが、これは大臣なんかは知らないでしょうけれども、銀行局の局長は知っているのかどうか、知っていたら、こういう旧態依然の契約が果たしていいのかどうか、改める意思はあるのかどうか、その点だけお答えいただきたいと思います。
  83. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 先生御指摘のとおり銀行取引約定書というのがございまして、これに基づきまして金融機関と借入者とが契約をいたしているわけでございますが、その中に相殺権というものが実は規定されております。内容は先生がいまおっしゃったとおりでございます。  これは、金融機関といいますのは国民大衆から預金を受け入れておりまして、これを安全確実に運用する責任を有しているわけでございますので、不測の事態というものをできるだけ――そういうふうな債権保全に支障を来すことのないようにした最終的な担保の規定でございます。したがいまして、これ自体を改める必要はないのではないかと思いますけれども、ただ、これの運用に当たりましては、取引者の方の権利が失われることのないように十分慎重な運用の仕方が必要でございますし、また金融界の方といたしましても、業界の中でいろいろこれの取り扱いの方法みたいなものを決めておりまして、実務上の注意点というようなものを決めておりまして、十分慎重な対応をしておるということでございまして、この規定自体をここでもって改めるのは問題ではないかという気がいたします。
  84. 沢田広

    沢田委員 これは、一つには憲法に公共の福祉に反しない限り個人の所有権というものは保護されるという基本的な原則があって、民事契約で、わからないところにこんなものが書いてあるんだよね。あなたも見たことないでしょう。あなたは金を借りてないと言えばそれまでだが。とにかくわれわれも見たことがないぐらいな条文だ。細かくてどうにもならない。言うならば借りる人に全然わからないような条項なんです。それで指揮権発動みたいに、これがいざとなったときにはいつでも発動できるような仕組みになっている。これはきわめて銀行、金融資本擁護の立場です。一方で物件を担保にしておきながら、必要に応じて預金を拘束できる。これは自分の預金だからあっちへ返そう、税金を納めよう、これは国税庁にも聞きたいのだが、と思っても、その前に拘束しちゃうことが可能なんです。そういう規定だね。法律を無視しての規定だから、返済請求することはできるのだろうと思うのだけれども、とにかくいまの規定は借りる側にとっては一方的過ぎるよ。  だから、借りた銀行には預金するなということが、これからの宣伝文句になってくる。借りたところに預金しておいたら、いつその預金が担保にとられちゃうかわからぬ、こういう不安感をつくる規定だね、これは。だから借りた銀行で預金はするな。しておいたらば、払えなくなりそうなときにはその預金がすぐ担保になっちゃう、いわゆる拘束性預金になってしまう。こういうことで、個人の所有権がきわめて厳しく制限されるという契約だね。判こを押した人も、そういうことを知らないでいる人が多い。だから、これはもう少しでっかく表に印刷してください、裏の方に小さくじゃなくて。どうですか。あなたの預金がなくなるときもありますよ、こういうことをきちんと教えてやる。わけのわからないところに小さい字で、虫めがねでなければ見えないようなところへ書いておいて、いざとなったときにはそれが相殺される。  恐らくここにおられる大蔵の人たちも、半分ぐらいは初めて聞くというかっこうの人もいるだろうと思う。そういう銀行側寄りの一方的な契約というのは――無条件でわれわれ判こを押しちゃっているのだけれども、判こを押しちゃって、ああしまったと後になって文句が出る、こういうことはちょっといかがなものかというふうに思います。では、わかるようにまず答弁することはできますか。それから、銀行側のこの相殺規定というものをある程度事前通告するとか、あるいは苦情処理機関みたいなものを設けてするとか、債権者会議の中でやるとかする。倒産のときには、税金よりも先に取ってしまうのだからずるいですよ。こういう場合に国税庁はどうなんですか、ひとつお答えいただきます。
  85. 梅澤節男

    梅澤政府委員 国税庁の徴収の担当者が来ておりませんけれども、私ども聞いております範囲では、民法上の相殺適状の状態になりました場合は、貸付債権の到来期後に、国税の方が国税徴収権というものをもっても民事上の相殺適状の方に対抗できないということだそうでございます。
  86. 沢田広

    沢田委員 だとすれば国税よりも権威が高い、こういうことになるわけであります。こんなことは法治国家としても許されていくべきものではない。税金の方が当然優先順位が高くなければならぬだろう。これが、公共の福祉に反せざる限りという憲法の条文の意味だと私は思うのです。  ですから、こういう銀行側の一方的な行為というものはある程度緩和して、事前通告なり相談するなり合意を得るなり、あるいは本人のこれで何を払おうと思っていた意思を抹殺させることになるわけですから、若干御検討をいただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  87. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 先生御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、銀行自体も、こういうものの規定を行使いたしますときには十分債務者との間で事前に話し合いをする、あるいは了承のもとにやっておるのではないかと思いますけれども、具体的にもし問題がございますれば、また十分指導してまいりたいと思います。
  88. 沢田広

    沢田委員 大体時間がないそうでありますから、整理基金の将来に当たっては、かかる不始末を二度と起こさないように、大臣、聞いておいてください。それからほかの官僚も、少しぐらいの罰則を与えてもこういう間違いを、大蔵委員会の名誉を傷つけるようなことはないことを心から念願して、私の質問は終わりたいと思います。
  89. 森喜朗

    森委員長 柴田弘君。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  90. 柴田弘

    ○柴田委員 御苦労さまです。  国債整理基金定率繰り入れ停止の問題は、いまいろいろ議論があったわけですが、この一兆一千九百八十四億円に及ぶ繰り入れ停止は、財政法の形骸化、つまり財政運営というものの節度から見てきわめて問題がある、こういうぐあいに思うわけであります。  そこで、まず四点についてお聞きしていきたいわけでありますが、今回の租税印紙収入の減収六兆一千四百六十億円、これはいわば歳入欠陥でありますが、前年度、五十六年度のように大幅な歳入欠陥が出たわけでありますね。果たして年度内にこういった歳入欠陥は出ないかどうか、税収見通しというのは一体どういうふうに立てていらっしゃるかという点が一つ。  それから第二点は、聞くところによりますと、予算編成が今年いっぱいということでありますが、そろそろ内示されるということですが、五十八年度で、五十六年度のいわゆる国債整理基金から借りた分の二兆五千億、これはきちっと返済することができるかどうかですね。  第三点は、五十八年度に二度と再び、いまのお話がありましたが、国債整理基金の定率繰り入れの停止というのは行われないかどうか、これは特別措置だということでありますが、その辺はどうか。  それから第四点は、今後の赤字国債償還の借りかえは絶対行わないかどうか。  この四点をまずお聞きをしたい、このように思います。
  91. 梅澤節男

    梅澤政府委員 それでは、まず最初に御指摘がございました税収見積もりの手法につきましてお答え申し上げます。  この問題は、先ほど沢田議員からも大変厳しい御指摘をいただいたわけでございます。今回の見積もりと結果の大きな乖離を通じまして、私ども痛感いたしておりますことは、経済の激変期におきましては、特に早く現実の実体経済の情報を的確につかむ、それを見積もりの手法に取り入れていくという方法でございまして、私ども今回の補正見積もりに当たりましては、歳入見積もり担当者と、民間の各種の経済調査機関がございますが、それとの定期的な接触を非常に頻繁にさせまして、見積もりに当たって実体経済の姿を感覚的に身につける、あるいは相互に情報を交換するというようなことを頻繁に最近はやっております。  それから、特に問題は法人税でございまして、法人税見積もりが非常に狂うわけでございます。五十年度もそのようでございました。したがいまして、法人税見積もりに当たりましては、大法人につきましては、相当のカバレージで個々の企業のヒヤリングを一応積み上げるという手法を従来からもとっておりますが、今回はその手法をさらに密にやるというふうに努めております。  同時に、中小法人につきましてなかなか情報がとりにくいわけでございますが、今回試みといたしまして、東京国税局管内でサンプリングの手法でございますが、中小法人の実態等も参考にしながら積み上げるということでございます。  いずれにいたしましても、五十六年度、五十七年度を通じまして、見積もり額と実体が非常に乖離したということを苦い経験といたしまして、今後とも的確な税収見積もりに努めたいというふうに考えております。
  92. 窪田弘

    窪田政府委員 第二点の国債整理基金への繰り戻しでございますが、これは法律に五十八年度までに返すという規定がございます。したがいまして、その規定に沿って努力をしたいと考えております。  第三点の五十八年度定率繰り入れの問題でございますが、これは現在歳入歳出いろいろ両面から検討しておりますし、また予算編成のあり方について財政審にも意見を伺っているところであります。なお、この五十八年度編成過程で結論を得たいと思っております。  赤字国債の借りかえは、それぞれ法律特例公債の発行をお許しいただくときでも借りかえをしない、こういう規定が法律に入っておりますので、その規定を尊重してまいりたいと思っております。
  93. 柴田弘

    ○柴田委員 第二点の国債整理基金からの借り入れ、これを返済するというのはわかりました。  ところが、第一点と第三点と第四点、これは主税局長は努めたいとおっしゃっているわけなんですね。いまお話がありましたように、五十六年度は苦い経験をしました。だから、今回は絶対あってはいけないというふうに私は思います。あなたに確固たる確信がなければならないが、それがない。  それから第三点も、財政審の意見を聞いて、そして五十八年度予算編成過程でやっていくのだ、決めていくのだ。もう予算は内示される段階に来ているわけです。だから私が言いたいのは、今回のこの措置はいわゆる特別な措置じゃない、私はそう思いますよ。恐らくなし崩しで五十八年度もこの繰り入れ停止が行われる、私はこういうふうに考えております。  それから、第四点のいわゆる借りかえ、これでも、それは将来のことかもしれません。法律で決められているでしょう。ですから、やはりそのときにどうなるかわからない。今回のこの特別措置がそうですからね。これだって法律で決められておったのです。それを特例措置を認めるわけでしょう。  つまり大臣、これからは大臣に聞いていきたいと思いますが、要するに、あなたたちの財政運営、そして経済政策、特に財政運営はそのときそのときの行き当たりばったりである。将来の確たる展望というものもなくて、そして今回こういった結果を招いた、こういうふうに言わざるを得ないと私は思います。五十三年度には法人税の年度区分の変更をいたしました。その前の五十年度には赤字国債を発行いたしました。それから五十六年度の措置ということですね。やはり財政法の趣旨というものが形骸化してきたわけではないですか、私はそのように思うわけであります。また、赤字国債の償還も、恐らくこれはまた借りかえというふうになるわけであります。だから、いまの答弁を聞いて私は絶対に今回の措置は納得できないわけなんですが、大臣、どうなんでしょうか。
  94. 竹下登

    竹下国務大臣 第一のお答えでございますが、いま主税局長からかなり詳しく御説明申し上げましたように、いわゆる経済成長率等を見直し、そしてその税収につきましてはもろもろのデータに基づいて積み上げ方式をやっております。したがって、それを土台にした補正予算は本院においては通過をいたしましたものの、いま参議院において審議中でございますが、それが達成されるという前提のもとに御審議をいただいておるところでございます。  それから第二番目の問題については、法律に定められておるとおり、五十八年度にこれを返済します、こう申しております。  したがって、第三番目の問題で、五十八年度は同じような措置をとるのか、こういう御質問につきましては、法律に基づいてこのものは返す、さればやはりいろいろな形の中でそれをも含めた財源というものを考えていかなければならないので、五十八年度も、これをいま直ちに二度と再びこのような措置はとりませんと言える状態のものではない。まさに内示直前じゃないかとおっしゃいますが、そのとおりでございます。私どもも夜中にいろいろ協議をしておりますが、財政審の答申もまだいただいていない今日でございますが、それに沿って編成段階において結論を出さなければならぬ問題であるというふうに考えておるところであります。  いずれにいたしましても、いま柴田さんの御指摘は、とにかく財政運営が拙劣であったから、これだけ見通しが狂ったのではないか、私は、その指摘は甘んじて受けなければならないと思っております。ただ、OECD等の経済見通しの下方修正を見ましても、世界全体がこれほど不透明な状態においてはやむを得なかった、これはある意味においてはみずからを慰めておるということでございますけれども、そのような認識のもとに、不透明な中にあっても財政運営というものの将来の中期の展望に対して狂いがないような定め方をして運営の衝に当たらなければならぬという御忠告として、それを承りたいと思います。
  95. 柴田弘

    ○柴田委員 いま大臣が私の指摘に対して、財政運営に問題があった、私は確たる展望がない、こういうことを申しましたが、それをお認めいただきましたので、その次の質問に移りたいと思います。  大臣、これは大臣のために私は表をつくりました。御検討ください。おもしろい表です。こういう結果であったわけですね。いまお認めになりましたから、それ以上言いません。ですから、大臣、財政運営の失敗、これの根本は経済失政と言っても私はいいと思います。つまり、あなたたちは内需拡大をとるということをおっしゃっておって、今回総合経済対策も出されましたが、これだって鈴木さんからの継承であると私は思いますよ。本当に財政再建をやっていくんだ、そういうような決意があれば、過去のデータから見まして、どうしてもここで、もう外需がゼロ%、輸出の伸びがゼロ%、三・四に下方修正した、この三・四というのはみんな内需でしょう。輸出がだめだという場合には内需拡大の政策というものを、いままでのものではなく、より一歩推し進めていくという政策転換、これを私は竹下大蔵大臣に申し上げたいわけであります。とにかく現在の段階は、そこにもありますように、国民生活から見れば、税金がふえて失業と借金がふえた。国民は一体どうなるのですか。いつもいつも政府に裏切られてきた。そうして生活に苦しんでいる。いままさに、より一層の内需拡大を中心とした政策転換というものが必要ではないか、私はこういうふうに思うわけであります。  それには、いまの中曽根内閣は、憲法の問題とか、私は改正論者ですよとか、あるいは防衛費はGNP一%を五十九年度でどうも突破する、それからまた増税なき財政再建の問題だって、大臣は、もう五十九年度にいわゆる仮称一般消費税でなければ、いわゆる消費に広く着目した大型間接税であればいいんだ、国民生活のサイドから見れば夢も希望もないじゃありませんか。どうなんですか。
  96. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいま柴田委員おっしゃっておりましたが、確かに五十七年度は見通しに大変な狂いが生じました。これは世界経済の不透明感と、これが予期せざるほど低迷したということに尽きると率直に思います。  ただ、私は考えてみますと、昭和五十四年の経済運営がよかったよかった、よくこう言われるのであります。私は、たまたま当時大蔵大臣でありました。ところが、そのこと自身を考えてみると、結局これはあのとき勇気を鼓して、五十年からのいわゆる特例公債の発行というものが結果として民需を刺激して、その結果が、建設国債の効果ももとよりですが、五十四年度に出てきたんじゃないか。そして、五十五年に公共事業等の繰り延べもやるぐらいな状態でありました。したがって、五十五年がどうやら初めに一兆円の減額ありきと言いながらとんとんの結果に終わった。しかしながら、そのときはもうすでにいわゆる財政が景気の下支えになるだけの対応力そのものを失ってきておったのじゃないか。だから、私がたまたまやっておったときは、まさに財政の対応力が積み重なった一番いいときにやっておったのじゃないか、こういう感じがするわけであります。  したがって、その後確かに二兆円の減額ありきと言ってみたものの、決算ベースで言えばそうはいかなかった。そして、この五十七年度を見ますならば、また一兆八千億の減額ありきという姿勢でいったものの、結果としては増発になっている。これはやはり財政のてこによって経済を支えていくという限界というものが、五十四年、五十五年で息が切れたというふうに理解するならば、もう一度今度は対応力を回復するための、伸びるために縮んだ姿というのが今日の経済、それに対応する財政のあるべき姿じゃないかなと、こういうふうな印象を持っておるわけであります。といいますと何だかこう暗いような感じばかりいたしますが、その中にあっても工夫をしながらもろもろの政策の選択をしていかなきゃならぬというのが政治ではないかなと、こういうふうに考えております。
  97. 柴田弘

    ○柴田委員 いまの五十四年度の問題ですけれども、やはりこれは五十二、五十三の公共投資にあったと私は思うのですよ。それで、たまたまいま大臣がおっしゃったように、五十四年度に赤字国債の大幅な減額を年度内にすることができた、これはもう税の自然増収があったわけだから。  ですから私が言うのは、やはりいままでの継承ではいけない、だから、ここで思い切った政策転換というものをしていかなければならない。それは見通しということもあって、いま私は見通しの甘さを追及いたしましたが、日本経済というものを考えた場合、まだまだ潜在的な成長力もある、民間の経済の活力もある、そういったものを政策によって、政治によってどう引き出していくかというのが政治の課題ではないか、こういう意味で私は申し上げているわけなんですね。だから、景気対策にもっと積極的に取り組みなさい、建設国債を発行して生活関連の公共投資をやりなさい、一兆円ぐらいやったらどうだ。所得税減税だってやろうと思えば財源があるじゃないですか。補助貨幣回収準備資金一兆三千億、外為会計の特別会計からの一般剰余金ですか、これだって三千億から五千億あるんじゃないですか。  要は、そういった政策の選択というものを、どう国民生活サイドに立って、しかもそれを財政再建にどうつなげていくか、税の自然増収をどう図っていくか、こういった発想の転換というものがいま必要ではないか、私はこんなふうに思って、これはいろいろ言い方がきつい言い方で恐縮でございまして、何かきつく聞こえるかもしれませんが、二度といままでの轍を踏まないように、国民のためにどうかということを言っているということを私は理解していただきたい、こう思いますよ。  私どもは、もう三%の成長でなくて四%の経済成長というものをやっていかなければならない。所得税減税もやりなさい、あるいは中小企業の投資減税もやって、中小企業の体質改善とそして中小企業のいわゆる設備投資ができるようにやりなさい。もういまは、大企業でもだんだん設備投資が落ち込んでいるのじゃないですかね。こういったことがいま政策転換として求められているのではないか。私はこういうことで申しているわけであります。  それから大臣、財政再建に関連して財政再建計画、これはかつてあなたにも質問いたしました。その結果出てきたのが「財政の中期展望」、これはいまもいろいろありましたね。今度何かAとBと出される、こういうことでありますが、財政再建を進めていく上においては、やはり国民のコンセンサスというものを得なければならない。どうしてもそういった財政再建計画というものも出していかなければならない。どうでしょうか、私の考え方は。
  98. 竹下登

    竹下国務大臣 いま最初ちょっと言葉の中で一つ訂正しておかなければなりませんのは、いわゆる中期展望に当たってケースAとかケースBとか申しましたが、そういうこともあり得るのかなと、これは私が勉強しているだけの話でありまして、A、B、C、Dを出すということを確定して申し上げたわけではありません。私の勉強の一つの考え方を申し上げただけであります。  そこで私は、やはり財政運営は中期的な展望の上に立って進められなければならない、これは私も当然だと思うのであります。ただ先ほども申し上げましたように、本当にこの経済運営の重要な柱である財政を長期にわたって計画化していくということにつきましては、いわばわが国のような自由経済体制というものを基本としておる国柄におきましては、それは必ずしもなじまない問題ではないかというふうに考えております。やはり現行の、いま行っている制度とかそういうもの、施策を前提としてこれを将来にわたって投影していくという、いわゆる後年度負担額推計というような形にならざるを得ない。まあ五十六年から出させていただいておりますね。そして、たびたび当時から収支見通しの問題等につきましても計画を出せ、計画を出せという累次にわたっての御指摘でございますが、元来私は、そうしたいわゆる規範性を持った計画を出すというのはなじまないではないか、しかし、やはり財政再建の手がかりとしての中期展望というものは苦心して出すべきだ、それで、毎年必ずしもお気に入らぬものを出して批判されながら今日も続いておりますが、それができるだけまた審議の糧にもなるようなものに工夫していく努力は続けていきたい、このように思っておるわけであります。
  99. 柴田弘

    ○柴田委員 いずれにいたしましても、私の言っているのは、財政再建というのは経済再建だということです。だから景気対策をしっかりやりなさい、そして、その財政再建の計画国民のコンセンサスを得られるものを出してやっていかれたらどうだ、こういう御提言をいたしているわけでございますから、よく御理解をいただきたいと思う。  最後に、時間がありませんので一点だけ。これは私も非常に矛盾を感じている問題ですが、婦人パートの非課税限度額の問題についてお聞かせをいただきたい。  現在、これは七十九万ですね。これは七十万が七十九万になったわけでありますが、現在の社会構造、産業構造を見ても、これでいいのか、こういうことが言えます。これはもう大臣も御承知のように、七十九万を超えますと、だんなさんは配偶者控除を受けられなくなるのですね、本人も七十九万を超えますと所得税を払わなければならぬわけだ。だから七十九万と八十万のこの一万円で、これは大蔵省の方で計算してもらったのですが、そうなると配偶者控除の適用をなくすわけですから、所得税が四万六百円の住民税が二万四千二百円、合計六万四千八百円。それから奥さんに保険料がかかってきますよ。もう社会保険が適用されませんから、これは国民健康保険です。これが四万二千円です。それから、たとえば扶養手当、奥さんに月に一万二千円あるとすると、これは年額十四万四千円になります。これも七十九万を超えるとカットされる。それから奥さん、パートの本人の税負担が所得税、住民税が千円と四百円、合計千四百円。ですから、これを計算いたしますと二十五万二千二百円。七十九万を超えて八十万になると、こういうふうに一家の収入が減るというのかこれだけの負担になってくる、こういうことになるわけですね。  だから、いまの社会情勢、産業構造の変化、パートを雇う方も雇われる方も、七十九万、それまでは働く、限界すれすれまでは。ところが、雇う方も何とかパートの人にやってもらいたいと思っても、それまでしか働かぬものだからだめだ。そういったいろいろな矛盾がいま起こっているわけです。だから、これは税制の問題だけで考えられることもいいわけですが、やはり労働省等の関係省庁とも一遍よく連携をとって、現在の実態面に合わせて適当かどうかということを私はしっかりと検討していただきたい。これが一点。  それから次は内職の問題です。内職はいま事業所得でしょう。そうですね。だから控除が受けられないわけです。経費なんですね。ところが内職というのは大した経費じゃないのですよ。内職をやられる方は、だんなさんの収入が非常に安いからやむを得ずやっているわけです。これはまた非常に一つの問題があるわけです。だから、これはいまこうするとかああするとかということでなくて、そういった矛盾点を大蔵大臣大蔵省当局もよく勉強して研究して、やはりこういった問題を解決をしていくという方向で進めていただきたい。これはまた一つの提案として申しておきます。  あと一分しかありませんから、それを御検討するのかどうか、それだけの答弁大臣から伺って、私は質問を終わります。
  100. 梅澤節男

    梅澤政府委員 控除対象の配偶者の所得限度の問題は、五十六年度の所得税法の改正で二十万から二十九万に上げていただきまして、いま御承知のとおり、給与収入ベースで直しますと七十九万という限度になっています。これは現在の所得税の控除体系の中では、バランスを考えますとぎりぎりの引き上げ幅であったわけでございまして、長期的な問題としてはともかく、現行の所得税の人的控除の諸体系の中ではぎりぎりの限度であるということをぜひ御理解願いたいと思います。  それから内職の問題は、五十六年度の所得税法改正のときに、委員が御指摘のような問題になりました。結局、この事業所得の経費の認定の問題、につきましては、国税庁が執行面で通達でかなり改善を図る努力をしておりますが、なお引き続き実態に即した執行を心がけるように考えていきたいと思います。
  101. 柴田弘

    ○柴田委員 これはどうも納得できませんね。結局は所得税減税なんです。減税なんです。これは財政当局の立場から言えばそうかもしれませんが、やはりいまの実態というものをもっともっと労働省と話し合いなさい。そして本当に、大臣、思いやりのある政治でしょう、あなたの政治姿勢は。中曽根内閣はそうじゃないですか。大蔵省という財政当局だけのそういう考え方でなくて、やはりもっともっと実態面というものをよく勉強して、よく調査をして、こういった問題に対応していかなければいけない。だから私は、今後検討しなさい、研究しなさい、調査しなさい、こういう意味で検討しなさいということを言っているわけなんです。どうですか。
  102. 竹下登

    竹下国務大臣 この国権の最高機関たる国会、なかんずく歳入委員会と言われる大蔵委員会、そこで出たもろもろの質疑に対しましては、当然整理して、いわゆる税制調査会等に御報告する慣習も成り立っておるわけであります。したがって、委員の過去のその発言等が議題に供されたこともある。きょうおっしゃいましたような問題が当然のこととして報告され、結局は所得税体系全体の中で恐らく議論される問題ではないかというふうに考えておりますので、単なる聞きっ放しでおるという考えは全くございません。
  103. 柴田弘

    ○柴田委員 そうすれば、こういう議論があったということを税制調査会に報告をし、そしてでき得るならば税制調査会の検討の対象にしていただくように大臣は取り計らっていただけるかどうか、その点だけ確認したいと思います。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 これは恐らくいろいろな御報告を整理して報告をいたします。それがいわゆる所得税体系全体の中で議論される課題ではないかと思って、私がいま判断したわけでございますから、そういう方向で、そういう御意見が出たことが報告され、それをインクルードしたものが所得税体系全体の中で議論されるようになるであろう。私が指示するわけにはまいりませんが、そのようになる必然性があるというふうに御理解いただいていいのじゃないかと思います。
  105. 柴田弘

    ○柴田委員 必然性があるという再度の答弁でしたので、また時間も超過しましたので、これで終わります。  それから国税庁、どうも済みませんでした。時間が超過しましたので、また次の機会に質問します。
  106. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 和田耕作君。
  107. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大蔵大臣、御苦労さまです。大変むずかしい内閣の大蔵大臣ということで、いろいろ同情にたえぬのでありますけれども大蔵大臣、いまの日本の景気の状態をどのようにごらんになっておられるのか、停滞をしているということはだれでも認めているわけですが、下向きで停滞をしておるのか、あるいは上向きで停滞をしておるのか、中曽根総理の答弁なんかでもちょっとわからない点があるのですけれども、どういう判断をなさっておられるのでしょうか。
  108. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはりいろいろな見方があろうかと思うのでありますが、御指摘のように輸出の停滞の影響等もこれあり、生産、出荷が伸び悩むなど足踏み状態の分野も見られますので、景気の足取りは力強さを欠いておると言わざるを得ないと思うのであります。  結局、四―六の指標がわれわれが思ったよりよかった。だが七―九はかなり悲観的ではないかというような見方をしておったわけですが、そう大きな相違のない見方になったわけです。それで、第三・四半期というのは、いま現在でございますのでにわかに断定できませんが、物価の安定ということから、内需を中心として緩やかに上向きと申しますか回復の方向に向かっておるではないか、こういうように一応認識しております。  それにしても、このままでいけば成長率が恐らく二・七%ぐらいになろう、それを総合経済対策にかけて、この補正予算の中でも御審議いただいたもので三・四%にまで押し上げていこう、そういうことから考えれば、緩やかながら、いわば回復基調にあるというふうに見れるのではなかろうかなと、経済見通しのことでございますから、そういうふうに申し上げておこうと思ったわけであります。
  109. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 日銀の前川さんは、この一年間、やはりいま大蔵大臣がおっしゃったような緩やかな回復過程ということを言ってきたのですけれども、この数カ月停滞している、そして何か下向きのような印象を与える発言をなさっておるように思うのですけれども、日本銀行は、いまの状態、現在の経済に対する見通し、あるいは今後の、つまり下向いているか上向いているか、あるいはこれからしばらく横ばいになるのかということについて、どういう見解を持っておられるのか。
  110. 三重野康

    三重野参考人 景気は足踏みというよりは、ここに来てやや停滞色を強めているというふうに思います。私どもが三カ月ごとに企業からアンケートをとります短期経済観測によりましても、十一月は三カ月前に比べて企業の業況判断はやや悪化しているというふうになっております。  こういうふうに、やや停滞色が強まっております最大の原因は、やはり世界経済の停滞に伴うわが国輸出の減退、それに加うるに年初来の円安というものが、企業の収益、特に素材産業の収益を圧迫したということかと思います。この企業収益を圧迫しました円安は、先生御高承のとおり、ここに来て円安修正局面に入っておりますから、これは将来に対する明るい材料だと思います。  肝心の輸出でございますが、これも現地在庫の調整が進んできたのに伴いまして、ようやくここに来て下げ渋りつつあるという感じを受けております。もっとも、下げ渋りがこの後急速に増大に転ずるのは、世界の景気が来年はよくなると思いますけれども、そう大きな期待はできませんので、そう大きな期待は持てませんが、それでも輸出はようやく下げ渋ったというふうに考えます。  肝心の企業収益がここに来てぱっといたしませんけれども、それでも過去の合理化、減量の効果もありまして、そこそこのところを維持しておりますし、金融も十分に緩んでおりますので、私どもとしましては、ここにきて景気がさらに落ち込むというふうには考えておりません。むしろ、言うならばゆっくりとした回復過程に依然あるのではないか、こういうふうに判断いたしております。
  111. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私も、中曽根さんという方はなかなか運のいい人だという感じを持ったのです。  たとえば、この内閣ができたころから円はかなり強くなってきた、そして石油価格は安くなってきたという大事な要素が変わってきているという面があるのですけれども、しかし、これは逆にアメリカの状態が予想以上に悪いということの裏返しみたいなものがあって、そして石油価格が安くなるということは、アラブ諸国の産油国の方の購買力がなくなるということを意味するわけであって、なかなか一方的に喜ぶわけにはいかないという面があるわけであります。  また、昨年、一昨年来の経済見通しというものが、つまり歳入欠陥の問題も、大蔵省の税収見積もり等の問題、先ほど沢田君が言ったような問題もありますけれども、やはり経済見通しという問題が何だか楽観的過ぎるというよりは、悪口言う人は粉飾決算だと言う人があるほど誇大な予想を立てたという面も確かにあると思うのです。  経済企画庁の方、いらっしゃいますね。いまの景気の問題と今後の見通しについて、企画庁のごく最近の判断を出していただきたい。と申しますのは、いま出ておる法案が今後悪い面を露呈しないでいくのかどうかという一番大事な問題は今後の景気の問題だと思いますので、特にいまの景気判断というのは大事な問題だと私は思います。経済企画庁のお答えをいただきたい。
  112. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 景気の見方につきましては、ただいま大蔵大臣三重野日銀理事のお話しになったとおりと思いますが、要するに個人消費は、ならして見ますと、四―六とか七―九とか期によって多少のでこぼこはございますけれども、賃金が五%台上昇しておりまして、物価が三%ぐらいと非常に落ちついておりますので、実質賃金が二%台の上昇、これに雇用の増加等が加わりまして、実質国民経済全体としては、私ども見通しでは四%台の上昇を今年度見ております。とにかく去年は消費が実質でマイナスという期がかなりあったわけでございますけれども、ことしは物価の落ちつきもありまして消費がある程度ふえておるということが一つございます。  それから住宅投資、これは政策的な下支えもありまして、低水準ながら少しずつふえている。水準は低いのでございますが……。  設備投資は、大企業は合理化投資等で堅調でございますが、中小企業はマイナス、全体をならして横ばいかややプラスというような状況なんですが、そこに、先ほど来お話がありますアメリカの経済が去年の暮れからことしの初めにかけて非常に大きな落ち込みを示しまして、ヨーロッパ経済も低滞しているというようなことを背景に、輸出が去年の秋から非常に大きな落ち込みを示し初めた。これが足を引っ張りまして、全体としては非常に緩やかな回復、力強さに欠ける状態であったわけでございます。それで先般十月の初めに、公共事業等二兆七百億円その他を含む総合経済対策を決定したわけでございますが、他方では、いまお話がありましたように輸出もそろそろ下げ渋り、アメリカの景気も、回復ははかばかしくございませんが、去年の暮れからことしの初めにかけてのようなどかどかと落ちる状況ではなくなってきております。  そういう世界経済の状況、円安の修正、アメリカの高金利の是正、それから今回の景気対策、そういうものがありますので、緩やかな回復基調というのは今後も維持できるのではないかと思いますが、来年度の経済見通しにつきましては、そういう海外関係の明るい面もございますが、いろいろ経済指標、予算編成方針等あわせて、まだでき上がっておりませんが現在検討中でございます。  大体そういった状況かと存じます。
  113. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 五十七年度の、つまり五・二%の問題のときに、河本さんは、これは公共事業も大幅に前倒しをやる、あるいは住宅建設もとても促進する手を打っておるので上向いてくるんだということで、ただ政府だけが楽観的な主張をしてきた実績があるのです。  当時は、政府の五・二に対して、大概の経済機関は三%台の予想を出しておった。今度は企画庁は三・四%ですかの見通しを出したので、まあ五・二%のときほどの間違いはないように思うのですけれども、しかし、なお少し高過ぎはしないかという見方をする人がかなりあるということなんです。  この問題を私最初に御質問申し上げたのは、いまの国債整理基金特例法案、つまり定率の整理基金を出していくということをストップするというこの法案は、今後景気がよくなっていくということがあればまずい面はかなりカバーされるけれども、もし景気がこれ以上に悪くなっていく、つまり、政府の政策としていま景気政策らしいものは一つも打ってないのですね。この前と違って、ほとんど打ってないと私は思う。そういう場合にこの法案が出てくると、結局残るのは大幅の赤字国債だけが躍り出てくるという感じがするのです。大幅な赤字国債だけが出てくるという感じがする、悪くすればですね。  大蔵大臣、これはとても警戒しなければならない問題ではないかと思うのです。竹下大臣が前の大平さんのときの大蔵大臣のときは、五十四年、五年ですか、あのときがちょうどいまの問題をずっと出してきたもとの状態なんですね。つまり、赤字国債の発行も予算のあれからいうと三〇%をうんと超しておるということで、これではいかぬというので大平さんは決断をして、大型消費税というものを打ち出してきた。この当時に心ある人のほとんど大部分の人は、大平さんよくやられると、こう思ったと思うのです。ところが国会では、あるいは財界も中小企業者も一般のあれも、猛然とこれに反対をした。したがって、増税という形の財政対策というのはすっかり挫折してしまったわけです。  そのとき私どもも強く唱えたのは行政改革です。とにかく行政改革を思い切ってやって、国民がこれ以上はだめだという納得の上でなければ増税まかりならぬという主張が一般的な世論になってきたのですね。そういうふうな形で行政改革が出てきた。  と同時に、五十九年までに赤字国債から脱却するという名前の財政再建というものができ、大蔵省も中期見通しという線を立てて取りかかってきた。ところが、その場合の財政再建、五十九年までに赤字国債をなくするというのは、これはあえなく失敗してしまったわけです。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  これは、大蔵省もとにかく一生懸命にゼロシーリングとかいろいろなことはやりながらも、しかし景気がずっと落ち込んできて、世界の景気が悪くなってきて、そしてこの大きな歳入欠陥になってきた。五十六年は三兆三千億ですか、本年が六兆一千億という赤字を出してくる。  そういう形で、つまり財政再建、赤字国債をなくするという政策がもうほとんど完全に失敗してしまったということになるわけですね。いまは、やはりそれを目指してというような言葉をまだ言っておりますけれども、完全に失敗してしまった。残っているのは赤字国債だけなんですね。今度また増税なき財政再建と言っておりますから、増税の道に向くことはできない。そしてまた、大型増税ではなくて小型のいろいろな増税の問題も、来年の選挙含みの問題もあって一つ一つ崩れてしまっておる。ということになりますと、赤字国債だけが頼りになる。それを頼りにしなければ五十八年度の予算は組めない、そういうことに追い込められつつあるのじゃないでしょうか。  私がいままで申し上げた一つの大きな流れみたいなものはどうなんでしょう。
  114. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、いまの和田委員の一つの流れという表現は間違っていないと思っております。  先ほどもちょっと申し上げましたが、要するにオリンピックの翌年、戦後最大の不況というところに建設国債が始まった。これは大きな一つの効果があったと思うのであります。そうして昭和四十六年、いわゆるドルショックによって見通しが立たなくなったときに、また建設国債の増発からして公共投資を刺激して内需を拡大して、世界では一番早く切り抜けた、それには効果があったと思うのであります。そうして石油ショックが来て、四十八年の暮れでありましたか、しかもたまたまそのときは福祉元年、政府はこういう政策課題を掲げておった。ここに赤字国債の増発に踏み切っていくわけでございますが、それも私は、あの第一次、第二次石油ショックを脱却する過程においては財政が果たした一つの役割りではなかったか。  それで、いまおっしゃったとおり、昭和五十四年の一月でございます、初めて五十九年度脱却ということを大平さんがおっしゃったわけでございますけれども、確かにそのとき、五十四年度当初予算で見たらまさに公債依存度が三九%とかいうようなところまで来た。振り返ってみたら、公債依存度の一番高かった昭和二十年の四二%に続くというようなこと。それで、これは大変というところで、いわゆる赤字国債減額というその目標年次も五十九年に定まった。その中にいわゆる一般消費税(仮称)というものが、ある種の想定の中には私はあったと思うのであります。選挙の結果、本院の決議もあって、財政再建のためにその手法はとってはならぬ、まず歳入歳出を徹底的に厳しく抑制して、そして初めて国民の理解を得て各般にわたって検討すべき課題である、そういうふうに移ってきた。  しかしながら、考えようによると、五十一年、二年というような下支えが五十四年はまさに結果として――結果としてでございます、初めから減額したのじゃなくして、結果として自然増収に支えられて一兆八千億でございましたか出さなくて済んだ。決算ベースで言えば減額した。五十五年はそれの惰性でそこに一兆円の減額枠というのがどうやら五十五年は貫けた。そこへもってきて、目標年次を断念せざるを得ませんということを明確にいたさなければならなかったのは、やはり世界経済の不透明感から来る予期せざる停滞ということにあったと思うのであります。  そこで、今度のいま税制調査会等でいろいろ御議論いただいておる問題でありますが、既存の税目の中における増収措置とでも申しましょうか、それに対しても、選挙絡みという問題は別といたしまして、いろいろな意見があって、当初報道されたようなものがすべて生きてきておるという状態ではなかろうと私も思います、まだ答申を最終的にいただいたわけではございませんけれども。しかし、そういう中に工夫して、結局やはり五十八年度予算編成というものをスタート台として、これをまさに一般歳出伸びを前年度以下に抑えていくという構えでもって、国民皆さん方になお既存の施策なりを継続するためにはこれだけのものが必要であるというときに、初めて受益と負担との原則に立って、さてということで国民皆さん方の選択、選挙という意味じゃございませんが、選択に問わなければならない、そういう経過をたどってくると思うのであります。  増税なき財政再建という言葉の中でいろいろやってみますと、臨調さんの答申の中には、いわば当面の租税負担率ということが書かれてありますが、この租税負担率を一体どれを当面とすべきか。あるいは、かつて経済社会七カ年計画に掲げた二六・五というものもございますし、いま恐らく、分母、分子が違ってきますが二四%ぐらいかもしれません。そういう中で直間比率の見直しというものも、直間比率の見直し即いわゆる一般消費税(仮称)というふうには受けとめられないだけの土壌はかつてなくできつつあるのじゃないかというようなところで、国会の問答を通じたり各方面の意見を聞いて再建の方途を見出していかなければならぬ。だから、五十八年度予算編成というのが、ある意味においてそのスタート台だとというふうに認識すべきではないかな。  私も、さま変わりのときに二年留守、留守じゃございません、別に私の母屋じゃございませんが、二年ぶりに帰ってきてさま変わりの状態で、一つだけ、いま運がいいとおっしゃいましたが、いわゆる円安基調が是正されつつあるということだけが何かほのぼのとした明かりだなという感じがしておるという素直な私の感想を、少し時間をかけまして申しわけありませんが申し述べてみたわけであります。
  115. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これはお答えになりにくいかもわかりませんけれど、土光さんのおっしゃる行政改革をきちんとやって切り捨てれば二兆円や三兆円は浮くのだという考え方、これは現実的じゃないのでしょうね。つまり、行政改革によって財政再建に直接役に立つという考え方が成り立つでしょうか。これは大臣お答えにくかったら事務当局でもいいのですが……。
  116. 窪田弘

    窪田政府委員 前の渡辺大臣がしばしばおっしゃっていましたように、一般歳出三十二兆六千億ございますが、これを分解して、社会保障九兆円、公共投資六兆円、こう分けて、ではそのどこが削れるか、そういう発想に立ちますと、実際に非常にむずかしいことは確かでございます。  ただ、いま大臣がおっしゃいましたように、できるところまでぎりぎり切り詰めてみようという作業をいまやっております。しかし、そこでどうしてもぶつかるのが制度の壁、いまの仕組みを変えていかざるを得ない。そこを変えない限りむずかしいことは御指摘のとおりでございます。  ただ、そこは一つの選択の問題でございまして、負担をふやすか、たとえば年金の仕組みを変えて年金の水準が下がってもしようがないかという、そこのところにいま私どもはぶつかりつつございますが、いままでの手法は、その総枠を圧縮することによってそういう問題を浮き彫りにするという問題意識のもとに、いろいろな天下の声を伺ってそういうものの検討を進めていく、そういうことではなかろうかと思っております。
  117. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私が非常に心配するし、うちの民社党の方も心配するのは、定率繰り入れのこの制度の根幹を揺るがすようなと言ったらいいか、結局なくするようなことになるわけですね。この五十六年度の二兆三千億ですか、借り入れて、そして、五十八年度にはこれを返さなければならぬ。しかし、これを返すことができないか法律でもって返さないでもいいようにするということと、今度の五十七年度のストップということをあわせて考えますと、いままでの財政制度審議会のいろいろな答申なんかを読んでみますと、結局ここらで大蔵省としては、あの制度そのものをなくするということは言えないから凍結するというふうに読めるのだけれども、そういうふうに判断していいのでしょう。
  118. 窪田弘

    窪田政府委員 二兆二千五百億、昨年お借りしました分は返さないとは申してないわけです。その返すものも、法律には返すと書いてございます。それから、五十八年度の定率繰り入れ等の問題もございます。こういうものを総合的に勘案して、どうするかという最後の決断をこれからするところでございます。  ただ、そこでどうしても私どもの選択としてジレンマにぶつかるのは、それを仮にやりますと、それだけどうしても特例公債の増発になってしまうということでございます。ですから、そこはどう判断するか、予算の最終段階の姿をどうつくるかという問題であると思います。
  119. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私が先ほど申し上げたように、赤字国債だけが頼みになってこれが躍り出してしまう。増税にしても、五十九年ということでいっても、五十九年に大型増税をすることは政治的にできないでしょう。五十八年は恐らくもうできませんね。そしてまた、今年あるいはそれ以上の歳入欠陥というようなことが出てきますと、これは大臣赤字国債への依存というものが、ちょっと抑えが効かなくなるようなおそれがあると私は思うのですけれども、その場合に定率繰り入れというものがあれば、片一方で赤字国債を出しながら何兆円もの金を、これは矛盾じゃないかと言えば確かに矛盾だけれども、そういうことがあって初めて赤字国債への歯どめという役割りを果たしているという感じがするのです。  そういう場合に、制度そのものに対して余り軽はずみな発言はいけないと思います。やはりこれはその年その年でぎりぎりのあれになって、必要があればその年その年の法律案でやっていくというようなことにでもしないと、制度そのものを、外国にはないのだからこんなものという考えになると、僕は一直線だと思うのですね、何ともならない赤字国債という状態は。この問題はぜひとも御注意になっていただきたいと思います。  もう時間もなくなりましたけれども、日銀の方にもう一点、大蔵省主計局にもあわせてお伺いします。一、二、三で約四兆円という赤字国債を消化しなければなりませんね。これはスムーズにできる見通しを立てておりますか。
  120. 窪田弘

    窪田政府委員 これは理財局の担当でございまして、直接私のあれではございませんが、大変ではございますが何とかいけるのではなかろうか、こういう感じのようでございます。
  121. 三重野康

    三重野参考人 一―三月にそれだけの国債を消化いたしますのは、もちろんたやすいことではございませんが、発行条件が市場の実勢を尊重して決められる限り、何とかできるのではないかというふうに私は見ております。
  122. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 何とかと言えば、たとえば日銀のオペレーションで政府の持っているものを買い上げて、その金で半分あるいはそれ以上のものを消化するというような形も考えておりますか。
  123. 三重野康

    三重野参考人 先生御高承のとおり、財政法の五条で直接の日銀引き受けは禁じられておりますが、その精神は、日銀信用を直接政府に供与した場合、それが通貨の増発、インフレを招く、そういうことをしないようにという趣旨だと思います。私どもとしましては、この財政法の趣旨を十分踏まえていきたいと考えておりますので、いま先生がおっしゃいましたようなことを一―三月に行う考えはございません。
  124. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今度中曽根さんもアメリカへ行くので、防衛の問題については精いっぱい、できるだけアメリカとの協力ができるような体制をとるべきだと私どもは思います。それがあるだけに、大臣、これはなかなかむずかしいですよ。私はそれはとるべきだと思います。この問題で余りふらふらしてはいけない。しかし、それだけにやはり増税という問題は当然日程に上ってくると思うのです。将来、いつかわかりませんが、日程に上ってくるという見通しは持っておられますか。それだけでもう終わります。
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの場合、増税なき財政再建、その基準の中でわれわれは現行の租税負担率の中で直間比率等を見直していこう、そしてやるだけやって国民の理解が得られて、国民自身が受益と負担の問題を考えるようになるということで初めてそういう議論はできるのであって、したがって、五十八年度予算編成がスタート台であり、いま軽々に私が増税をかくかくしかじかな条件のもとに志向しておりますと言うわけにはいかないのじゃなかろうかと思っております。
  126. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 とにかく景気がずっとよくなってくれば、いろいろ心配の大事な面が氷解するわけですから。しかし私が残念なのは、去年と比べて、いまのしばらくのあれで景気刺激の政策がほとんどとれない、とっていないということがかなり気になりますね。  以上で終わります。
  127. 森喜朗

  128. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 大蔵大臣、御就任後初めて私は質問をさせていただくわけでございますので、法案に関連しながら財政政策上の若干の問題についてもお尋ねをしたいというふうに思います。  今回の国債整理基金の定率繰り入れ停止措置というのは、財政法が企図しております二つの基本的な点、一つは財政の民主化、もう一つは財政の健全性、特に財政の健全性という点で大きな問題点があるというふうに思っているわけです。健全財政を確立して国民生活を安定させるということが財政上非常に重要な役割りですけれども、それをどうやってやっていくかという点について、財政法ができて間もなくのころ、大蔵省の方が書かれた本の中にもありますように、まず第一に赤字財政であってはならない。その点から言えば、財政法四条に違反して赤字国債特例国債を毎年毎年発行している現状というのは実に異常で、ここでもって健全性を著しく侵害していると言えるわけです。そこへもう一つ加えて、健全財政のために必要な公債政策、その裏づけとして完全な減債制度の確立ということが言われているわけです。ところが、この減債制度にとって非常に重要な柱とされております定率繰り入れが今回停止されるということになれば、財政の健全性は一層後退していくということで、公債政策に対する国民の理解と信頼を得るための定率繰り入れと言われておりますけれども、それから考えてみても、今回の措置というのは絶対にしてはならない許されない措置ではないかというふうに思うのです。  大臣は、こういう御時世だから当然の措置というふうにお考えか、それともこのような許されない措置という方向でお考えなのか、基本的な姿勢をお聞きしたいと思います。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のように、この財政法第四条、いわゆる公債発行の禁止の原則と特例的な場合の建設公債の原則というものが書かれております。  そこで、先ほど申しましたが、オリンピックの翌年の戦後最大の不況のときに建設国債を発行した。そのときもまあ大変な議論がございました。しかし、やはり財政の健全性の中において、それを扱うに当たって、いわゆる資産が残るという意味における、何と申しましょうか、みずからを許すというか、そういう気持ちがまだあったと私は思うのです。しかしその際も、翌年でございましたか、この定率繰り入れの制度というものがつくられた。そうして赤字国債の発行に至って、これはもろもろの議論があって、したがってこそ毎年毎年出していこうということをしておりますゆえんのものも、イージーに流れちゃいかぬから、少なくとも毎年出すことによって一つの反省の糧にしよう、これが毎年毎年出していく法律そのもの、まあ事の趣旨であるというふうに私も理解しておるわけであります。  したがって、大幅な税収の減少に対処するための措置として当然のことであるなどとは全く考えておりませんで、異例の手だてを尽くし、経費の徹底した抑制、節減合理化を行って公債の追加発行額の減少に努めた、そして定率繰り入れの停止という措置は、公債発行額の増大をもたらすものではなく、逆に当初予定していた繰り入れ相当額だけその縮減に寄与するもの、こういう考え方でこれに対応したというふうに御理解をいただきたい。  いずれにいたしましても、特例公債依存の体質から脱却いたしまして、財政の対応力を回復するということがまさに財政再建の課題であるという認識は、決して変化はいたしておりません。
  130. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 もともと特例公債を発行するに当たって、定率繰り入れが百分の一・六などということは現実離れをしているということを、かねてから私ども指摘をしてきたことでございます。そしてまた、異例、特例措置と言われながら、仮に毎年毎年やるといたしましても、それが恒常化している特例公債の現状、これを考えてみますと、今後もこの定率繰り入れ停止も、ことし限りことし限りというようなことが毎年繰り返されるのではないかという不安はどうしてもぬぐえないわけですね。こんな措置をとらざるを得ないというところに至った大きな原因の一つというか、重大な原因は、税収不足見積もりの違いというところにあったことは明らかです。六兆円も超えるような税収不足が今年度起こるなどというようなことはわからなかったということでは済まされないというふうに私どもは思うわけです。  なぜなら、日本共産党は、すでにことしの一月二十六日に、共産党議員団の名前でもって税収見積もりについて発表しているわけです。そして、五十六年度の税収不足について、税収伸び率を九・八%が今後も続くと仮定した場合で、税収欠陥補正後二兆三千三百億円。そしてもう一つ別の試算で税収伸びが徐々に低下していることを考えて、七%の伸びにとどまるとした場合で不足額は補正後二兆七千億円にも上ると言っているわけで、今回の補正後二兆二千八百億という五十六年度の税収欠陥などというものは、まさにこの共産党の予測とほとんどぴったりというような状態になっているわけですね。そしてこの問題については、予算委員会などでもさんざん質問をし、いろいろと追及をしてきたところですけれども、何とかなるだろうというような答弁でその場を糊塗してきたというのが現状だというふうに思うのです。  大蔵省というところは、かねてから、税の専門家、その点に関するプロという誇りを持っておられるはずですのに、こんな税収見積もりの違いが出てくるなどということは、まことに信じがたいことだというふうに思うわけです。恥ずかしいことだと言わなければならないのではないかと思います。そして、それがわからなかったというのなら恥ずかしいで済みますけれども、わかっていて、わかっていながらこれをその場逃れで先へ先へと送ってきたのなら、これは国会を軽視し、非常にゆゆしい問題だというふうに私どもは思います。  そこで、このような重大な事態に立ち至った責任というものをどのようにとらえておられるのか。前にも御質問がございましたけれども大臣から一言お聞きして次に進みます。
  131. 竹下登

    竹下国務大臣 予見しがたい経済情勢の変化、こういうことであろうと思うのであります。なかんずく、これはいわゆる世界経済の停滞、それに起因する、しかし、だから免責されるとは私は思っておりません。
  132. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 世界経済の停滞ということで言われますけれども、それらも予見し得ることであるし、そして共産党が現にこういう試算を出しまして、そのあげく、五十七年度の税収欠陥問題についても、成長率が仮に民間の調査機関の六%成長にとどまる場合では税収欠陥五十七年度三兆八千億円と、これでも非常に低く見積もっているような状態なんですね。だから、見積もれなかった、国際経済の停滞だというようなことはもう責任逃れだとしか言いようがない、私はそう思わざるを得ません。  すでに本会議におきましても、ことしの三月九日、一般会計予算の反対理由の中で、これは歳入欠陥確実の粉飾予算にほかならないということを明確に指摘してきているわけです。それにもかかわらず、ずるずると今日までそれをやり過ごしてきた責任、これは厳しく問われなければならないというふうに私は思います。それで、その場逃れのいいかげんな答弁ということを繰り返していくことは、今後は絶対に許されないと思います。  そこで、国債の元利の償還問題については、こういう定率繰り入れを停止してしまえばだんだん先細り、償還財源がなくなっていくわけです。将来どうするのかという点については非常に不安が広がっています。一体国債というのはこれから先どうなるのか、私どももいろいろ質問されます。そういう不安が広がっている中で、赤字国債の本格的な償還が始まる六十年代に入ってなくなってしまうということが起こるわけで、元利合わせて十兆円を超える年々の国債費を確保できるだけの税収が果たして見込めるのかどうか、これが非常に重要な問題になってくると思います。これからの見通しについてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  133. 窪田弘

    窪田政府委員 将来の公債費の負担は、御指摘のように大変な問題でございます。そのためにも、できるだけ早く特例公債から脱却して、早く財政の体質を改善したいという努力をしているわけでございます。公債というのはいわば税金の先取りでございますから、その償還期が来たときに一体どうやるか、財政上大きな選択を求められる時期が六十年代に来るだろう、こう考えております。
  134. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 余り見通しの明るい話でもないような、何だか先の見通しが全然立たないような御答弁で、不安が少しも解消されないわけですけれども、やはり私どもは今後大変厳しい状況が続くだろうと思わざるを得ない。そうなると、税収がどんどん増加していって事が自然解決するなどということは見込めないだろうというふうに思うわけです。そんな中で、大蔵省としては今後の財政運営あるいは予算編成に当たって歳出を切り詰めるというような方向がかなり強く出されてきているわけです。そういう中で、私どもとしては、この解決はやはり大企業に対して特別に優遇税制をとっていることを改めるとかあるいは特別の補助金を削るとか、いわゆる不要不急の経費を節減する、歳出を削減するということがどうしても必要だというふうに思います。  竹下さんが前に大蔵大臣のときにレールを敷かれたと言われておりますこの財政再建路線というようなものが、今日ずっとこの財政の困難な状況のもとで結果としては福祉や教育などに大変なしわ寄せが起こってきているということで、国民の家計は著しく緊迫の度を加えているわけです。そんな中で、やはり財政運営の基本を国民生活の安定というところに置いていただかなければなりませんので、歳出削減に当たっての基本的な姿勢というものについて、私は何点かお尋ねしたいと思うわけです。  財政非常事態宣言というものを政府が先ごろ出されまして、人勧の凍結という方針を出され、人勧を実施しないのはきわめて不当であるということで、連日国会請願デモが行われていることも御承知のとおりだと思います。人勧問題については、すでに、憲法で保障された労働基本権を奪って、その代償措置として政府みずからが裁判所やILOに対して、この措置があるから憲法違反ではないのだというふうに言い続けてきたことから見ても、この人事院勧告を完全実施しないというようなことは、二重の憲法違反を犯すということになってしまうわけです。その実際の被害というものは、国や地方の公務員労働者だけではなくて、さらにそこから波及する消費不況の問題も重大な影響があると思います。  そんな中で、人勧実施についていま国会でいろいろと折衝が進められておりますけれども大蔵大臣として、この人勧の実施問題についての御見解、今年度、来年度どういうふうにすべきとお考えか、お聞かせいただけたらと思います。
  135. 竹下登

    竹下国務大臣 まず最初おっしゃいました私の時代に財政再建のレールを敷いた、そのようにはうぬぼれておりません。財政再建元年とでも言ってみたいという気持ちがありましたが、自己採点をいたしまして財政再建の前の晩というぐらいなところまでしか自己採点ができなかったわけであります。したがいまして、むしろ私は、まさに五十八年度予算編成、これがスタート台になるな、こういう認識で臨まなければならないと思っておるところであります。  さて、そこで、人事院勧告に対する私の見解を求められたわけでありますが、いま国会において代表者会議あるいは実務者会議、本日も本委員会が終了しました後で与党の実務者の方から出席を要請されておるところでございますが、そういうものがいま行われておる、その際、私が予見をもっていろいろなことを申し上げるわけにはいかないと思います。ただ、このたび五十七年度の人事院勧告を見送ったということは、従来、私も内閣官房に長らくおりましたので、これが九月実施、八月実施、七月実施、六月実施、そしてぽんと飛び越して四月実施というときに、それのいわば政府との連絡役等をしておりました。昭和四十五年からの完全実施でございまして、そのときの精神というものはやはり失ってはならぬということは、しかと酌みとめておるつもりであります。  しかしながら、このたびの閣議決定の経過をつまびらかにいたしてみますと、そういうことをし、そしてあらゆる手段を講じ、なお財政再建の折から公務員の方にも率先してその痛みを分かち合っていただこう、こういうことで見送りが決定した、その方針を私は今日財政当局の責任者として貫いておるわけであります。そうして、実務者会議とかそういうものに対してその推移を見守っておるわけでございますが、しいて現在の心境を言えとおっしゃいますならば、私どもが考えておると同じ結論が出ることを期待しておりますという表現が、私の申し上げる限界ではなかろうかというふうに思っております。
  136. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 大臣が考えておられるような結論が出ることを期待しておられるということは、実施の方向というふうにも伺えないわけで、そこのところが、この際公務員の方々にはがまんしていただきたいというところにウエートがあるように承るのですが、そういう趣旨でしょうか。
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 そういうことでございます。
  138. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 それはとうてい納得のできないことで、財政全般を見たときに、まず公務員が犠牲をしょわなければならないというふうに言える状況ではないし、削減すべき問題というのはまだほかにずいぶんあるのに手がつけられていない。もちろん軍事費の問題もありますし、大企業補助金の問題もありますし、それらの問題は放置されながら、勤労者に犠牲をしわ寄せするというのはとうてい納得できないということを申し上げておきたいと思います。  それから、人勧の凍結というのは、単に公務員の給料だけじゃなくて、それが当然民間の労働者の来春闘の賃金にも影響するということは常識になっておりますし、特に稲山経団連会長などがそのことを明らかに言っておられます。人勧凍結というのは、そういう意味では、財界にとっては来年度の春闘の賃金を抑えることがねらいであったということは明らかじゃないかと私どもは思うわけです。  来年度予算について考えてみますと、社会保障の問題、それから教育の問題、いろいろ問題だらけだというふうに思います。人勧凍結と絡ませて年金、恩給の据え置きという問題が大変大きな心配になっております。それから、社会保険の事務費の全額国庫負担を半額国庫負担にするとか、国民健康保険の臨時財政調整交付金を全廃するというような福祉の切り捨てで国民に臨もうとしているのは、非常に許しがたいことだというふうに思うのです。生活保護基準についての見直しなどとも言われておりますけれども、この大変厳しい年の暮れ、不況の中で、これはひどい仕打ちと言わなければなりません。  それから教育の問題についても、私どもは同じようなことが言えるだろうと思います。私学助成の問題で一割削減というようなことが報じられておりますけれども、先日もこの席で大蔵大臣に直接お願いを申し上げましたように、一千百万人余りの署名をもって私学助成を充実させてほしいという強い要求があるということ、そういう中で、これはとても納得できない問題だし、また国立大学の入学金の引き上げとか育英奨学金の有利子化とか義務教育の教科書の有償化とか、これらも本当に教育の一つ一つに攻撃を加えるもので、とうてい許されないというふうに思うのです。また、臨調の方から補助金カットというようなことが言われておりまして、その一貫で学校給食の補助金までやり玉に上げて、これを削る。この金額たるや、国の財政全般の中から考えてみますとほんのわずかなもので、子供たちの給食の補助金まで削ってしまうというのは何というひどいことだというふうに、私は強く抗議をせざるを得ません。  最近、特に交通遺児の家庭の問題で年末緊急生活調査というのが行われまして、これは報道されました。その中で、月収十万円末満の家庭が六割もあるというようなことで大変生活が厳しい。特に子供の教育費の捻出が大変だということが言われております。子供たちが志望校を変えたとか、あるいは受験費用がなかったとか受験勉強に打ち込めなかったということで、半数以上が進学、勉強に影響を受けているというような報道もされておる中で、教育問題についてこのような冷たい仕打ちは絶対にしてはならないのではないかというふうに思います。  一方、減税問題ですけれども所得税減税の問題、これは昨年から私は、この大蔵委員会でたびたび所得税減税の実施を求めて質問してきましたけれども、これからまた見送るというような動きも強まっていまして、これは課税最低限が五年間据え置かれて、今度六年続くなどということになったら、勤労者は、とてもじゃないけれども政府不信が広がるというふうに言わなければならない。可処分所得が減ってきていますので、とてもこのままでは生活できない、何とかしてほしいというのはいつもいつも聞くことなんです。  こういうふうにして、減税もせず、福祉や教育も削るというようなことでは、とても不況問題を解決することもできないだろう。消費不況で町の商店街も年末とはいえ思うような収入が上がらないという状況を考えてみますと、このような中でやはり一兆円規模の減税というのは思い切ってすることが、今後の税収を好転させる大きな道でないかと私は思います。  そして、一方、防衛関係費と言われております軍事費ですけれども、概算要求で二兆七千七百六十一億円と七・三%の増、大蔵省も四%は認めるというような報道がされておりますけれども、防衛庁や外務省それから自民党が増額を要求して、その上、アメリカの上院で決議をして、軍事費をふやせなどというような、まさに内政干渉にもわたるようなこのような決議がされている中で、一方、財政危機はもう後がないという状態にまで来ております。  こんな中で軍事費ばかり伸ばすというようなことについて、一体国民はどう見ているかという点で見ますと、十一月一日の読売新聞のアンケートで、削るなら防衛費を削れ、特に厳しく削ってもやむを得ない二項目を選んだときに、防衛が断然トップで六一%強を占め、昨年調査の五二%から一段とふえている。自民党支持者でさえ削るなら防衛というのが五四%だということが言われており、特に削減すべきでない項目では、社会保障五四%、教育三九%が飛び抜けて多い、しかもこの福祉・文教を切るなという数字は昨年よりふえている、こういう国民の率直な気持ちが出されているこの段階で、軍事費を削って福祉や教育、暮らしに回せという運動が進んでおりますけれども、この問題について大蔵大臣の御見解を最後に伺って終わりたいと思います。
  139. 竹下登

    竹下国務大臣 微に入り細をうがった主観を交えた御鞭撻でございます。  予算というものは、あくまでもその政策の優先順位というものはもろもろの関係を調和をしながら進めていくべきものでありまして、どれをふやしてならない、どれを削ってはならないというような性格のものではない、総合的に考えて真剣に国民生活の実態を勘案しつつ予算編成作業に鋭意取り組みつつある、こういうことを申し上げて、お答えといたします。
  140. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 主観を交えてというふうなおっしゃり方でしたけれども、具体的な事実に基づいて申し上げておりますので、その辺はぜひ客観的な事実ということで受けとめていただきたいと思います。
  141. 森喜朗

    森委員長 小杉隆君。
  142. 小杉隆

    ○小杉委員 時間が限られておりますので、単刀直入に伺います。  今度補正予算で三兆九千億円の国債を発行いたしますと、大体国債の残高はどのくらいになるのか、それから一般会計における国債の依存度はどの程度になるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  143. 窪田弘

    窪田政府委員 国債残高は今年度末で約九十七兆でございます。国債依存度は三〇・二%でございます。
  144. 小杉隆

    ○小杉委員 今年度末で九十七兆円ということは、来年度五十八年度末では恐らく百兆円を超えるだろうと言われております。  いままでずっと国債の残高がGNPに対してどのくらいふえてきたかというと、これはもう非常に増高の一途をたどっているわけなんですが、外国の経済学者の中には、この国債残高がGNPの六〇%までは許容限度だという学説を唱えている人もおりますけれども、この点については、国債残高の許容限度というものを対GNP比でどの程度を考えられておられるのか。  それから、いわゆる年度年度の一般会計に対する国債依存度が、いまのお答えにありますように三〇%を超えたわけです。当初予算ではこの国債依存度が二一%程度であったのが、一〇%も上がってしまったということで、一体国債の依存度というものをどの程度を一つの限度と考えておられるのか、今後のためにお聞かせいただきたいと思います。
  145. 窪田弘

    窪田政府委員 経済全体の中での国債の限度というものは、これは定説はございませんが、結局国債の利払い費が財政にどういう圧迫を加えるかということが問題なわけでございますから、国債残高の利払いに及ぼす影響、全体経済の中の財政の大きさ、こういうものによって、国によって非常に違うわけでございます。いまの百兆にもなりGNPの五割に近づくということは、決して好ましい姿ではないと思っております。  依存度につきましては、過去三九%になった年がありますが、昨年の財政審の答申では、大体一〇%程度までできるだけ早く下げるのが適当である、こういう答申をいただいております。
  146. 小杉隆

    ○小杉委員 大蔵大臣に伺いますけれども、いまのお答えを聞いていますと、何か国債残高についての限度額というのはその国によって違うのだ、その状況によって違うのだというような大変あいまいな答弁ですけれども、いままでの傾向を考えますと、国債費というのはどんどん一般会計の中でふえていきつつあるわけですね。たとえば、昭和五十三年までは大体一〇%以下であった一般会計における国債費の割合が、もう五十四年度は一〇・六%、五十五年度一二・五%、五十六年度一四・二%、五十七年度一五・八%と、こういうことで全然歯どめなしにふえていきつつあるわけです。こういう傾向はこれからも続くだろう、しかも、二十一世紀に入ると、高齢化社会で年金その他保険、医療、たくさんの財政需要を抱えておりますし、また、諸外国との貿易摩擦で余り外需に期待もできない、おまけに防衛費についても外国からの圧力がますます強まるというようなことを考えますと、いまこの辺で国債費、国債についての歯どめ策というものをやっぱりきちんと政府で持っていなければいけないのじゃないでしょうかね。  そこで、大蔵大臣にお伺いをするのですが、公債残高がもう百兆円も超えるということが明らかになってきた以上は、たとえば公債残高というのはGNP対比で何%が限度だ、あるいは国債費、つまり返済の国債金あるいは利払い費も含めた国債費が、一般会計の中でいまみたいにたれ流しのようにどんどんふえていくのではなくて、これは何%までが限度なんだという歯どめをこの辺でつくりませんと、財政運営の健全性なんというのは全く失われてしまうということなんで、当初予算ではたとえば一般会計に対する公債依存度も二〇%だったのが、三〇%にふえちゃった、こういうことでは、そのときどきの経済状況によって全くぐらぐらしてしまうということで、ひとつ非常にキャリアの豊富な竹下大蔵大臣に、ぜひこの辺の公債に対する歯どめ策についてのお考えを聞かしていただきたいと思うのです。
  147. 竹下登

    竹下国務大臣 そもそも公債のいわゆる予算に対する依存度という問題につきましては、建設国債発行に踏み切った当時からこれはいろいろ議論をされて、当初は、一けた、こういうことを言っておりました。いまでも私は、財政審等の結論というよりも意見の中にもあるごとく、まあ一〇%というのが好ましい姿ではなかろうかな、それはいつでも財政が経済を支えるための対応力として出動する能力がそれだけならまだあり得るのじゃないかなということで、これは確たる学説に基づくものでも何でもございません。  それから、いまおっしゃいました対GNP比、それから総予算歳出規模に対する利払い費の比率、そういうものが新しい問題として提起されておることも事実であります。いまGNP比に対する長期政府債務残高四一・九、これだけはまだ先進国の中で一カ国だけ日本より高いところもありましたけれども、これとて六〇%という学説があるという話も、私もそういう人がおることも知っておりますが、いま対GNP比で決めるべきものか、あるいはあくまでも歳出規模と利払い費の比率で決めるべきものか、また、従来一番議論されたのはいわゆる公債依存度の問題、その辺は、これからこういう問答を通じながらも勉強さしていただかなければならぬ問題だ、ただ野放しでおいてはいけないという共通した観念は私にもありますが、いまこれが確たるものだと言うだけの自信はございませんので、意見を体して十分部内でも、そしてもっと広範にも勉強さしていただく課題であるというふうに考えております。
  148. 小杉隆

    ○小杉委員 竹下大蔵大臣だから、もう少し定見のあるお答えをいただけるのかと思ったのですが、いままでの傾向をずっとたどっていきますと、これは本当に歯どめなしに国債費が一般会計の中でふくらんでいってしまう一方だし、公債残高もGNP対比で本当にふえる一方だということで、恐らくこれから中期展望の見直しあるいは新経済社会七カ年計画の見直しというような作業の中で、やはりこういった公債に対するしっかりした歯どめ策といいますか、限度枠というものを設けていく考えがあるかどうか。いまこれを持っていないと大変なことになる。まあ防衛費についてはずっとGNP対比一%という枠、最近また外しそうになっておりますけれども、やはりそういうのが一つの歯どめ策として有効であると思うのです。  ですから、これからの検討の中でこういう枠を考えていくべきだと思いますが、そういう用意があるかどうかお答えいただきたいと思います。
  149. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる新経済五カ年計画、それが仮に、時間がかかると思いますが、いろいろな数値を予測したものとして出てきたといたしましょう。そうすると、その中で果たすべき財政の役割りというようなものが当然議論されなければならぬ。その中で、言ってみれば新たなる項目になるわけですね、数値としてそれを提起いたしますから。この点につきましては、私にももう少し勉強さしていただきたい課題であるというふうに思います。(私語する者あり)
  150. 森喜朗

    森委員長 静粛に願います。
  151. 小杉隆

    ○小杉委員 これはこれから勉強するということでございますが、ぜひこういう点についての将来の歯どめ策というものをしっかりと出していただくことを要望して、もう一点、五十六年度末の決算処理に伴って、国債整理基金の二兆二千五百億円を取り崩しているわけですね。  これは、法律によりますと五十八年度中に返済をしなければいけないという性格になっておりますが、これに対してはどうされるおつもりですか。
  152. 竹下登

    竹下国務大臣 予算編成過程で考えることでございますが、法律に基づいて返済するという方向で対処したいというふうに思っております。
  153. 小杉隆

    ○小杉委員 返済するということですね。
  154. 竹下登

    竹下国務大臣 はい。
  155. 小杉隆

    ○小杉委員 時間が参りましたが、最後に一点だけ伺いたいのですが、今度の補正歳出削減にどれだけ努力をしたのかという点を見まして、私は、残念ながら努力が足りないのではないか歳入の方は六兆円も落ち込んでいる、つまり見込んだ三十六兆円のうち六分の一も落ち込んでいるのにかかわらず、今度の歳出削減が三千億ちょっとということでは、非常に片手落ちではないかというふうに思うのですが、どのような削減の努力をされたのか、そして当初予算に比べて何%ぐらいの削減になっているのか、もしこれを数字で示すことができれば示していただきたいと思うのです。  それで、特に私申し上げたいのは、この前の委員会でも申し上げたのですが、もう過ぎ去ったことですけれども、五十六年度も三兆円の歳入欠陥があったのにかかわらず、歳出の方はそのまま目いっぱい使ってしまったという前歴、前科があるわけですよ。  だから、少なくとも五十七年度は、やはり歳入欠陥が明らかにとにかく六兆円にもなった以上は、思い切った削減をしなさいということを申し上げたはずですが、そういうことから考えますと、私は非常に努力不足じゃないかと思いますが、その辺の経過をお知らせいただきたいと思います。
  156. 窪田弘

    窪田政府委員 五十七年度の補正では、従来最大の節約は五%でございましたが、これを一〇%ということでいたしました。  ただ、予算の中には国債費ですとか地方交付税とか人件費とか、そういうものは節約できませんので、そういうものを除いた後のいわゆる経常的な節約対象経費の一〇%、従来は五%でございましたが、そのほかに、現在時点で不用が見込まれるもの、去年は二百五十四億円ぐらいしか出ませんでしたが、ことしは二千五百億円、執行の見込みがないあやふやなものはこの際全部出していただくということで、極力節減には努力したつもりでございます。
  157. 小杉隆

    ○小杉委員 これは議論を展開すると時間を食いますから、まあ数字的なことはわかりましたが、年度途中だから政策的なカットはしなかった、既定経費の中でカットしたということですが、私は、公務員の人勧まで凍結するぐらいなんだから、年度当初に決めた当初予算の中でも政策的にやはりおかしいと思うものは、途中、補正の性格とは違うかもしれないけれども、やはり政策的な面のカットもやるべきじゃなかったか、これは私見ですが申し上げて、質問は一応終わります。  ありがとうございました。
  158. 森喜朗

    森委員長 次回は、明二十三日午後五時三十分理事会、午後六時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時十七分散会