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国務大臣(
鈴木善幸君) 今回私は、
国会のお許しを得まして、ベルサイユ・サミット、第二回国連軍縮総会、そしてその後引き続きペルー及びブラジルの、南米の最も重要な二カ国、そして帰途ホノルルにおきまして「太平洋時代の到来」という、それを締めくくった所信を述べる演説をいたしたわけでございます。
いま岩崎さんから御
指摘がございましたように、ことしのサミットは厳しい国際情勢、さらに諸困難を抱えておる世界経済の真っただ中に開かれたサミットでございますので、
関係諸国はもとより、東西を問わず、あるいは南北を問わず、世界各国から大きな関心と注目を集めたサミットであると、このように
考えております。そこで、このサミットはどうしても西側の先進諸国が協調と団結をして、そして世界経済の再活性化、世界の平和と安定、そういう大きな目標に向かって力を合わせて
努力する、そういうことで意見の一致を見る。いやしくもそれぞれの国の利害だけを前面に押し出して、足の引っ張り合いをするというようなことがあってはいけない、こういう
考え方で取り組んだわけでございますが、各国の首脳の共通の認識も私は全く同じであったと。非常にいろんなむずかしい問題があったにもかかわらず、とにかく首脳間の相互の
理解、協力の上に立ちまして、今回のサミットが、あの共同宣言に表明されたように、むずかしい中にも私は大きな成果を見出すことができたと、こう思います。
私はこの中におきまして、世界経済の問題については出発前に、昨年の暮れから
国会の御鞭撻を得ながら、
国民の方々の御協力のもとに第一次第二次の市場開放対策を進めました。これはとにかく
日本だけが率先をして東京ラウンドの二年間関税の前倒しをやるとか、あるいはさらに重要な鉱工業製品については、あるものは関税をゼロにするというぐらいの思い切った措置を講じたわけでございますが、このことは私は各国の首脳から大変
日本の誠意と、そのまた
努力というものを評価していただいたと自負いたしております。したがいまして、今日の世界経済の停滞の中で、
日本がひとり
日本のことだけを
考えて、利己的な行動をやっているというような批判はいずれからも出ません。
日本はGNP世界第二位の経済力を持つに至ったわけでございますから、それだけに国際的な役割り、
責任というものをわきまえて、今後国際社会に貢献をしていかなければならないと、このように
考えておるところでございます。
一番問題になりましたのは、やはりアメリカの高金利の問題、それに起因するところの通貨の問題、こういう為替相場の乱高下というようなことが各国の経済に大きなやはり影を落としておるというようなことでございまして、これをいかに改善の措置を講ずるかということが一つの大きな問題であったわけでございます。この点につきましては、相当アメリカとその他の国との間にはいろんな意見の隔りがございましたけれ
ども、大局的な
立場に立って、随時積極的に各国の
財政当局、通貨
当局等で緊密な
連絡をとりながら、
協議をしながら措置していこうということに相なったわけでございます。
それからもう一つは対ソ信用供与の問題。これは共同宣言の中にも出ておるわけでございます。この点につきましては、やはりいままでのアフガニスタンあるいはポーランドの問題等の経過から見まして、西独、フランス、イタリー等々の西側諸国はもう大きなやはり関心を寄せておる。これがそれぞれの国の今後の経済にも大きく影響をいたすわけでございます。この問題につきましては、
日本もサハリンの開発の問題等も抱えておりますが、それ以上に大きな問題をやはり西独その他は抱えておるという問題もございます。この問題の調整につきましては苦心の存するところが大きかったわけでございますが、これも大局的な
立場に立ちまして相互の
理解は相当進んだと、こう思っておりますが、最終的な措置につきましては、今後なお調整を要する点があるのではないかと、このように
考えるものでございます。
それから私は、そのほかにアジア・太平洋から出ております唯一のサミット参加国の代表でございます、そういう
観点から、出発前に豪州のフレーザー首相を初め、中国の趙紫陽首相にもお目にかかっておりますし、ASEANの国々にも在外公館等を通じまして御意見、御要望を私はお聞きをいたしました。そしてアジア・太平洋地域からただひとり出ておる
立場に立ちまして、これをサミットの場に反映させる、主張するということに
努力をいたしたわけでございます。そういう点につきましては、首脳の間におきましても、私のアジア・太平洋地域におけるいろいろの政治、経済、諸般の情勢報告、あるいは
日本の
考え方というものにつきましては非常な関心を持ち、また
日本の
努力に対してはそれなりの評価をしてもらったと、このように
考えておるものでございます。サミットにつきましては、そのような
状況でございます。