○竹田
四郎君 私は
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
昭和五十七年度
予算三案について反対の討論を行います。
和をモットーとして発足した
鈴木内閣は、日に日に核戦争への道を突き進んでいます。
人間の命を守ろうという自然な簡明率直な反核運動は、欧州に始まり全
世界を覆い、いまや米国議会内にも深くしみわたってきました。
鈴木内閣は、常軌を逸した
レーガン政権におもねって、
防衛費を突出させ、反核運動の足を引っ張るなど、再び国民を核戦争の惨禍に陥れる政治行動に踏み出しました。
防衛費への傾斜とは全く反対に、
鈴木内閣は、安らかな生活を願う国民の気持ちをじゅうりんするの挙に出ております。昨年度もわが党は、国民生活を守り
経済発展を図るため大幅な所得減税を要求してきましたが、
政府・与党はミニ減税でお茶を濁したのです。調整され過ぎた低い雇用所得とあわせて勤労者世帯の生活は苦しくなってきました。実質収入はやっと横ばいなのに所得税等の控除のため、可処分所得は五十五年、五十六年と引き続いてマイナス一%以上を記録しております。国民生活を犠牲にする五十七年度
予算に反対せざるを得ないのであります。
政府の景気判断の誤りと無為無策は内需を低迷させ、中小企業の倒産と経営悪化を招き、大企業の輸出ドライブによる
貿易摩擦、円安などは
政府の
経済政策の失敗の結果であります。われわれの
主張にもかかわらず、本年度も是正する勇気を持っていないのであります。
他方、
鈴木内閣の公約である財政再建も失敗することは明らかです。五十六年度赤字国債二兆円減額も崩れ去り、五十六年度税収欠陥と並んで五十七年度税収にも大きな狂いを生じ、建設国債の大量追加発行など、補正は必至であり、増税なき財政再建の公約は全く偽りそのものとなってしまいました。
以下、
予算に即して反対の理由を述べます。
反対の第一は、不公平税制を温存し、勤労者に過酷な負担を強い続け、所得減税をしないことです。過去所得減税をサボり続けてきたことが今日の内需不足、
貿易摩擦、税収欠陥を招いた大きな原因であります。五十六年の名目収入の伸びが約五%に対して、勤労所得税の伸びは二二・九%、実に二・六倍の伸びであります。
反対の第二の理由は、
防衛費の突出です。国民の声よりも
レーガン政権の要求に唯々諾々とこたえ、社会保障費、文教費を犠牲にし
防衛費を七・八%も伸ばし、
経済協力費も紛争周辺国に集中させるなど、広島の核の惨禍や、
平和憲法の精神を忘れた暴挙と言わざるを得ません。さらに、シーレーン
防衛や、多額の後年度負担額を背負い込み、やがてGNP一%以下の歯どめをも外させるでありましょう。また昨年、本年とわが党が
指摘したように、
防衛費の
内容は、F4試改修にも見られるように、
予算書等だけでは全く
内容を知ることができず、
国会のシビリアンコントロールは全く形骸となり、
防衛予算の聖域化がひとり歩きをし始めたことに特に強く警告しておくところであります。
反対の第三は、社会保障の切り捨てです。
日本型福祉社会と称して受益者負担を前面に押し出してきました。また、
日本の社会保障も国際的水準に来たといって福祉の切り捨ても図っております。
日本の福祉の環境が十分にでき上がったというのでしょうか。受給する年金額とモデル計算上の年金額とは余りにもかけ離れ過ぎております。もし病気をしたらという不安は消え去っていません。定年退職後のことが心配でたまらないのです。だから消費を詰めて貯金をしないわけにはいかないのであります。財政機能の大きな一つは所得再分配です。社会保障の仕事にコスト論を持ち込んでくることを許すわけにはいきません。本
予算についても、厚生年金等の支給額改定時期を一カ月おくらせ、高額医療費自己負担限度額を一挙に五万一千円まで引き上げることも許すわけにはいきません。
反対の第四は、文教費の切り下げです。今日の
世界じゅうの国々で、一学級編制は四十人以下が圧倒的であります。
わが国でも、わが党の
主張によって最近四十人学級への計画がスタートしたばかりであるのに、行財政改革を口実にこの計画の
凍結を行おうとしていることであり、また、危険度の高い文教施設の改増築をカットしたことであります。今日、学校暴力など、教師と生徒との心の触れ合う機会やあり方を厳しく問われております。子供たちは行財政改革を待ってくれないのであります。
世界の中でその行動を厳しく問われている
日本の次の世代の国民の健全な育成に対して、その費用を惜しんだり、時を延ばしたりしてはならないと思うのであります。
反対の第五は、見せかけの財政再建に終始していることです。
相も変わるぬツケの後年度回しによるつじつま合わせ、国民に負担を転嫁するだけの財政再建であることを
指摘せざるを得ません。国民に負担を求めるものとして、さきに述べた高額医療費自己負担限度額の引き上げのほか、老人保健法による老人の新規負担、国鉄の運賃値上げ、消費者米価三・九%引き上げによる食管会計における六百六十億円にも上る増収措置など、枚挙にいとまがありません。また、年度所属区分の変更を歳出面にも応用し、国民健康保険に対する国庫補助金を五十七年度では十一カ月分の歳出で済まそうとしております。また、厚生年金についても三年間国庫負担額を原則四分の一減額し、後年度補給しようとするものなどであります。
最後に、私は五十七年度
予算に関連し、暫定
予算の提出を怠った
政府に対して反省を促すものであります。今日五十七年度が開始され、五日を過ぎたにもかかわらず
予算が成立しておらず、
予算の空白が生じております。このやみの状態が長期化すれば、国民生活に重大な支障が生ずるため、
予算の早期成立を迫られ、
予算委員会の審議権が大きく制約されてまいりました。かかる状態が近年恒常化していることはまことに遺憾であります。今後参議院においても充実した審議を行うことができるように
予算の年度内成立が困難と予想された時点で暫定
予算を提出するよう強く要求いたします。
また、所得税、住民税については、この後で減税決議をする
予定になっておりますが、これは国民的な要望であります。不公平税制の改正の問題、内需拡大の問題として本院も最大限の努力をいたしますが、
政府も早期に減税が実現できるように、みずから検討し、実現のできるよう最大限の努力をすべきであることを付言して、私の反対討論を終わります。(拍手)