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-
-
-
-
○
伊藤郁男君 そこでお
伺いをするんですが、五十六年度は確かに四百三十五名とこれらの方々が
死亡ないしは行方不明と、こういうことになっておるわけでありますが、五十五年度を見ましても、
死亡、行方不明は四百四十四人に達しているわけでございます。
このように
海難事故による
死亡、行方不明、こういうものが余り減らない、こういうことについて、その
原因は何とお考えでしょうか。
-
-
-
-
○
伊藤郁男君 いまの御答弁ではちょっと不満足なんですけれ
ども、私は、
不可抗力として片づけられる
原因にはいろいろあると思うんですよ。それはやっぱり、ああいう
北洋のような海に行って
遭難に遭う場合には、船もなくなってしまう、
乗組員のほとん
ども死亡をしてしまう、海底に消え去ってしまうわけですね。したがって、どうして
事故が起こったのか、それが並み外れた
しけによるものなのか、
荷崩れによって
転覆したのか、あるいは
操船ミスによるものか。まあ
不可抗力という
状況の中ではあろうけれ
ども、そういうように船もなくなってしまう、
乗組員もほとんど亡くなってしまう、こういうことで、どこに
一体原因があるのかということが推測の域を出ない。こういうことで、
海難の
事故というのがしばしばミステリーにされてしまっておる、こういうことではないかと思うんですが、一体それでいいのかどうかですね。今後の
対策のこともありますので、その点をお
伺いをしておきたいと思います。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) ただいま
委員の御
指摘のように、
海難というものは非常に非情な
状態で起こって、救難される者は本当にごく少数であるということも事実でございます。こうしたことの
原因究明ということは、同時にまた、われわれの方の
海難救助体制の
強化ということでわれわれは考えざるを得ないわけでございます。御
承知のように、
海上保安庁の
救難救助体制は、全国百四十六ヵ所の
基地に
巡視艇三百四十三隻、
航空機五十三機を配備しております。そして、常時
遭難状態、あるいはまた
情報をキャッチするとともに、気象や海象の
状況、
海上交通の
状況等、こうしたことの予想される
海域にはさらに
巡視艇を派遣するというようなことで
対策をとっておるわけでございます。しかし、最近の
事故はいずれも遠洋で起こっておるわけでございまして、こうしたことに対応するためにはさらに保安庁の
救難能力を増加さしたい。やはり大型のいわゆる
巡視艇やあるいは長距離の
航空機、こうしたものも多数
整備する必要があるというふうに考えておりますが、なかなかそんなことがすぐ実現しないのでございますが、来年度の
予算においては多少でも
強化が図られるようになっております。
そうしたこととともに、特に広域の
哨戒体制の
整備にわれわれ力点を置くとともに、
海洋情報システムの確立ということも来年度の
予算でその緒につくわけでございますが、こうしたような物的な
体制とともに、さらに
漁船あるいは
船舶に対する
救難用具の
整備あるいは訓練、こうしたものも幅広く指導して
対策を講じてまいりたいというふうに思っております。
-
-
-
○
伊藤郁男君 それは、せっかく
地元の
要望にこたえて
検討を急いでいただきたいと思います。いま
配置している岩国その他のところからでは
かなり距離が長いですから、
八戸に
配置をされれば
北洋で
遭難があったときに
かなり早く
現場に行けると、こういうことになりますので、御
検討をいただきたいと思います。
そこで、先ほどの
漁船海難事故の問題で、
不可抗力として片づけるためにしたがって
原因も追求されない、こういう結果になっておると私は思うんですね。これではやっぱり
海難の
再発防止対策は生まれてこないのではないか、こういうように思いますし、
運輸省も農水省もそして
水産会社にも、あの低気圧の墓場、魔の
海域と恐れられておる
ベーリング海などの
事故では、あそこで
事故が起きたらもうやむを得ないんだと、
最初から助かる見込みがないといってあきらめる空気があるのではないか。これではどうしてもこれからの
対策が進まないと思うんですが、それでいいとお思いかどうか、
運輸大臣、もう一回お
伺いをしておきます。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) 先般起こりました
ベーリング海での
遭難でございますが、私も
就任早々のことであったのですが、どうしてあそこまでわが方の
救援飛行機なりあるいは艦艇が行けないんだということを聞きましたら、その
能力がないんだということであります。あそこまでは非常に遠いし、あの
海域がいわゆる
アメリカサイドと申しますか、そこのいわゆるコーストガードの範囲に入っているというようなことで、一種のポケットになっているようでございます。しかし私は、いま
委係員の御
指摘のように、そうしたことがあっても、もしもわが方に少なくとも六千トン級あるいは一万トン級のものがあれば、間に合わなくても
現場に急行できるだろうし、さらに、もっと大きな四発の
偵察機があれば、
現場の確認ぐらいはできるはずではないかと思うのでありますが、そうしたようなことを考えて、
就任早々であったのでありますが、あの事件は大変残念なことだと思っております。
-
-
-
-
○
政府委員(
野口節君)
先生ただいまお話しのありました
イマージョンスーツ、これは冷たい
海域に大変有効だということで世界的に関心が高まっておりまして、五十三年以降
IMCOで
性能要件の
基準をつくっておったわけでございます。幸いにしましてことしの二月でございますが、この
性能要件がまとまりまして、近く条約の中に取り入れられるという見込みになってございます。私
ども、国内におきましてもこの
イマージョンスーツにつきましては、かねてからその有効性を認めていろいろ研究
開発してきたわけでございますが、なかなか
IMCOの
基準に合うような、しかも
日本人に適するようなスーツの
開発というのがまだできておりませんので、五十七年から大体一、二年ぐらいをめどに急ぎ
開発に取りかかるという予定にしてございます。
-
○
伊藤郁男君 もう一つお
伺いをしておくんですが、あのあけぼの丸の
遭難の際に、海員組合から関係各省庁に重大
海難の続発に伴う根本的安全策を確立するために
事故再発防止のための官労使による協議機関の
設置を
要望しておるはずです。二月二十二日に第一回の懇談会が開かれたと聞いておりますけれ
ども、これは一回で終わりですか。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) 二月二十二日に省内において懇談会を開催いたしましたが、結論を申し上げますと、今後も必要に応じて継続的に審査をしてまいりたい。
その中で議題になりましたのは、
船舶の復原性とかあるいは
救助施設及び耐水防寒衣の技術
開発、気象通報のあり方、
救助対策等が幅広く論議されました。非常に有益な懇談会であるというふうに認識をいたしております。
-
○
伊藤郁男君 ぜひこれは永続的な会議として積極的にやっていただきたいと、このように思います。
それでは、次に捕鯨の問題に入りたいと思いますも
御
承知のように、昨年、国際捕鯨
委員会——IWCですね、この年次総会においては、わが国もマッコウクジラの捕鯨全面禁止という瀬戸際まで追い込められたことは御
承知のところであります。これは、反捕鯨国のまさに理不尽な圧力によることも御
承知だと思うんですが、農水
大臣はこのIWCの現況についてどのように認識されておるかお
伺いします。
-
○
国務大臣(田澤吉郎君) 国際捕鯨
委員会がいま開かれようとしておるわけでございますが、いわゆる反捕鯨運動を背景にして、必ずしも科学的な根拠に基づかない立場の国々が新規に加入いたしまして、ただいまこの加盟国が三十五カ国あるわけでございますが、その中で捕鯨国は九カ国で非捕鯨国が二十六カ国という
状況にございまして、そこで、そういう国々によってマッコウクジラの捕鯨の全面禁止をしようということでございまして、資源論というものを無視いたしまして、数で、この一つの提案をしようというような
状況にございます。
-
○
伊藤郁男君 そこで、そういう数で、しかも資産家が票を買ってでも、反捕鯨国が票を買ってIWCに加盟をさせるという、そういうことも
指摘をされているわけでありまして、したがって、今月の二十四、五とブライトンにおきまして特別会議が開かれるわけですね。そして七月の年次総会が開かれると、こういうことになりまして、いま御
指摘のようにもう三分の二以上を反捕鯨国が占めるという
状況になりますと、まさにきわめて前途は暗い
状況ではないかと思うんですが、かつて捕鯨母船七隻を有したわが国の捕鯨産業でありますけれ
ども、いまはもう母船一隻しかない。縮小に縮小を重ねてきておるわけでありますが、この捕鯨産業についての政府の基本的な考え方ですね、これを育成をしていくのか、あるいはやむを得ないと考えるのか、その辺の基本的な姿勢を総理
大臣にお
伺いします。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君)
日本の捕鯨業は非常に歴史も古く、また、
日本の食生活に占めておるウエートも大きい産業でございます。私は、いま
伊藤さんからも御
指摘があり、農水
大臣からも御答弁を申し上げましたように、最近、捕鯨に対しまして、自然保護団体その他を中心として反捕鯨の連動が非常に世界的に広がりを見せておるわけであります。こういう中で国際捕鯨
委員会が、いまもお話しがありましたように、全然捕鯨に関係のない内陸国家のような国がたくさんこの国際捕鯨
委員会に加盟をしておる。そして、自然保護といいますか、むしろ感情論の上に立って反捕鯨の態度をとり、そういう非科学的な政策を押しつけようとしておる。現在科学小
委員会等もありまして、学問的にこの程度の規制をすれば数年後には、あるいは十年後にはこういう資源はむしろ現状よりもふえていくと、安定していくということがはっきり立証されておるにかかわらず、それを無視して、数でもってこれを禁止の方向に持っていこうとしておる、こういうことはまことに遺憾なことであります。
基本的には私は国際捕鯨
委員会のあり方そのもの、構成そのものにも問題があると思います。しかし、いま直ちにそのことを問題にいたしましても問題の解決にはならない。そこで、できるだけ捕鯨国に対しましても、十分資源論の面から合理的な結論が出るようにお互いに横の連絡をとりながら、捕鯨
委員会での正しい意見が通るように働きかけておる。また、非捕鯨国のメンバーに対しましても、いろいろPR等積極的な外交も進めてやっておるところでございます。
今後とも政府といたしましては、この捕鯨業の保護育成につきましては従来にも増して努力をしてまいりたいと、こう考えております。
-
○
伊藤郁男君 総理お話しのように、まさにIWCの国際調査によりましてもマッコウクジラは二十一万頭最低おるだろうと言われておるわけでありまして、これは科学的に立証されておるわけですね。したがって、その中でわが国の割り当てが八百九十頭、こういうことですから、資源論からいったら全然問題にはならない、こういうように私も認識をしているわけであります。
そこで、もう三月に、二十四、五と開かれるわけでありまして、したがって、事前の対外折衝きわめて重要だと思うんです、緊急を要すると思うんですが、特に反捕鯨国の旗頭である
アメリカとの交渉がきわめて重要だと思うんですけれ
ども、この点についてはどのように進展しておりますか。
-
○
政府委員(松浦昭君) お答えを申し上げます。
ただいま総理からも御答弁ございましたように、捕鯨国に対しましての協調、これを求めていくことと、それから反捕鯨国に対しましても非捕鯨国に対しましても、わが方の立場を科学的な根拠に基づいて十分に話をするということが、三月二十四、二十五の
対策につながっていくというふうに考えておりまして、実は、すでに私
どもの方からも水産庁あるいは関係業界ともにミッション等を派遣いたしまして、
アメリカその他の非捕鯨国に十分な話し合いを行いつつあります。また同時に、外務省の方も大変協力をしていただいておりまして、各在外公館を通じまして各国の首脳に働きかけていただくということもいたしておりますし、また、来日いたしました関係の要人に対しましてもその接触をいたしておる次第でございます。
かようなことで、最大の努力を目下尽くしているというところでございます。
-
○
伊藤郁男君 これは外務
大臣に見解をお
伺いをしておくわけですが、仮に七月のIWCの総会においてマッコウクジラが全面禁止ということになりますと、これはもう
日本沿岸二百海里以内でほとんどとっておるわけですから、これがだめになりますと、わが国二百海里以内の主権が侵害をされるということになるし、それが国際会議で認められる、決定される、こういう結果にもなると思うんですが、この点についてどのように外務
大臣としてはお考えになっておりますか。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) 大変遺憾なことでございますが、資源保存のための条約が領海や二百海里経済水域内に及ぶということは、ほかの事例からいたしましてもこれはやむを得ないということになると思うんです。
そもそも、この国際捕鯨取締条約の目的は、ただいま総理からお話しがございましたように、科学的根拠に基づきクジラ資源の保存と最適利用をどうするかという、そういう目的からいっておりますから、だから、その目的の中での領海や経済水域ということであるならば、それはやむを得ないのではないか。現に陸上の鯨体処理場まで適用されておるという、そういう面からお考えいただきましても、いま御質問の領海や経済水域がどうということについては、資源保存の上からはそれは適用をされるということでやむを得ないことじゃないかと思うんです。
-
○
伊藤郁男君 政府の中には、捕鯨問題を
アメリカの二百海里内の魚の問題、これは重大な問題になっておるんですが、この問題と絡ませて、そういうような消極的な考え方を持っておると聞くんですが、まさに捕鯨はあくまでも資源論、科学論の次元で論ずるべきものであって、全然話が違うと思うんです。切り離して積極的に対処すべきであると思うんですが、この点についてもう一度お
伺いをしておきます。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) 御質問のようなそういう動きと申しましょうか、そういう考えを持って外務省の関係の者が動くということはちょっと私考えられないのでありますが、あくまでも先ほど申し上げましたような純粋な資源保存といったてまえからの論議については、これは国際場裏において
日本としてもそういう正論については大いに論議をし、また、それに伴う期制はやむを得ないと、こういうことだと思うんです。
-
○
伊藤郁男君 差し迫った問題でございますので、この捕鯨の問題につきましてはさらに対外折衝を積極的にやっていただきたいと、このことを
要望をしておきたいと思います。
それでは、国鉄の問題に入っていきたいと思うんですが、一昨日の名市屋駅構内の衝突
事故、私はこれはもうきわめて重大な問題だと思うんですね。国会でも臨調でも、国鉄をどうするかということでいま盛んに議論をし、国民の関心も国鉄に集中しておる、こういう段階でこういう
事故が起こったということはきわめて重要な問題であると思いますし、まさにこれは何たることかと、こういうように言わざるを得ないわけです。もし私が国鉄総裁ならば早速現地へ飛んで行って、あるいは本社役員を現地に派遣をして実情を調査する、こういうように即刻対応をしたと思うんですが、どのように国鉄本社は今度の問題につきまして対応されましたか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 今回の
事故につきましては、常識では考えられない
事故でございまして、まことに申しわけなく考えております。
対応方につきましては、現在比較的この
原因その他がはっきりしておるわけでございますので、
現場の
管理局長を中心にしてもろもろの
対策を立てておりますし、むしろ私
どもとしましては、こうした時期に同種同様のことがあってはならないということで、全国的な規模で注意を喚起する、そのために具体的な
対策を立てるということを東京では中心にしていま対応策をとっておるところでございます。
-
○
伊藤郁男君 常識では考えられない。したがって、これは単なる特異なケースとして片づけてしまうような問題では私はないと思うんですね。
三年前にも東海道線と中央線で同じような
事故が起こっているわけです。あれ以来国鉄は、酒を飲むのはやめようじゃないかと、自粛指導をしておるわけですね。
かなりきめ細かい自粛指導をしておる。にもかかわらず、今度のような同じような
事故が起こる。こういうことでございますから、一体このようなたるみ
事故が起こる
原因はどこにあるとお思いですか。
-
○
説明員(高木
文雄君) ただいまもお触れになりましたように、五十二年の十一月に一度類似といいますか、飲酒を起因とするトラブルがございました。その当時、全国の運転区、機関区につきまして、一つは、作業指図をする当面助役が乗務員に対して十分何といいますか健康
状態なり、まあ飲酒ということはまずないわけでございますけれ
ども、それを把握するような形で当直助役が作業を管理監督することを中心とし、それからまた、諦め所等の管理等につきましても
かなり細かい指導をいたしたわけでございますが、それが今日のような事態になったということは、ややその後、その師の管理が緩んでおるということであろうかと思います。
何と申しましても、この種逆転
事故につきましては、乗務員の一人一人に対して乗務前に指導といいますか伝達をいたします点呼時における管理監督というものが非常に重要であると考えておるわけでございまして、今回もまずこの点呼をきちっとやるということを中心に、いろいろ前にすでに指導の
基準は決まっておりますので、それを励行するように繰り返し指導をいたしておるということでございます。
-
○
伊藤郁男君 総裁、
事故の後で
現場に駆けつけた警察官が、あの
事故を起こした機関士が酒のにおいをぷんぷんさせていたということを感じているわけですね。その前に点呼は恐らく二度行われることになっていると私は理解しておるんですが、その点呼そのものが行われていなかったのではないか、正常な形で。したがって、その助役さんが、汽車に乗務する前に本人のところに駆けつけていったところが、かぎがないとかなんとか言っているだけで、酒を飲んでいたということがわからなかったということは、正席な点呼を行っていないということになると思うんですが、その辺はどうなんでしょう。
-
○
説明員(高木
文雄君) 私
どももその点を最も問題点と考えております。
点呼は、私
ども調べております現段階では行われてはおるわけでございますけれ
ども、それがきちっとした形で行われていない。いわば形式的なものになっておったのではないかというふうに考えられます。
いま御
指摘のように、わかったはずではないかということを、われわれもどうもそういう感じを持っておるわけでございまして、そこで当面、本件に限らず
一般的に点呼をなおざりにしないようにということを全国的にいま指示しているのもそういうところから来ているわけでございまして、点呼をきちっとやるということが基本であるということは御
指摘のとおりでありますし、私
どももそれをきちっとやらせるようにすることが
事故防止にとってまず大事なことだと考えております。
-
○
伊藤郁男君 ブレーキを踏み忘れたとか信号を見忘れたとかいういわゆるたるみ
事故というのは、年間どのくらいあるんですか。
-
○
説明員(坪内
享嗣君) 私
どもは、
事故の種別を運転
事故と阻害というふうに分けております。
運転
事故と申しますのは、列車脱線、衝突、それから火災、それから踏切というふうになっておりまして、その中でいま私
どもの職員の責任によるものというものが大体年間二十件から三十件ということでございまして、大体この五年間を見てみますと、横ばいないし減少方向ということでございます。
-
○
伊藤郁男君 年間三十回くらいはある、こういうことだと思うんですが、結局そのツケは総理、国民にまた回ってくるわけですね。こういう
事故が続発をする。そしてツケは最終的には国民に回ってくる。こういうことをどう思いますか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 国鉄の職場規律の乱れ、また労使の
現場における信頼関係また適正な管理、そして国鉄全体を流れておる国家、国民に対する責任感の欠如、こういう問題が
指摘をされておったわけでありますが、そのことが今回の
事故としてあらわれてきたというように、私は非常にその点を残念に思い、また政府の責任者といたしまして遺憾にたえないところでございます。
このことは、特に乗り物でありますから安全性の確保ということが最大の眼目でなければならないわけでありまして、そういう中で飲酒運転というようなことは全く考えられない事態でありまして、根本的にこの点は反省の上に、思い切った改革をひとつやってもらいたいと、このように考えております。
運輸大臣からも、国鉄の首脳部に対してこの点は厳重に注意をされたということを私は報告を受けておるところでございます。
-
-
○
説明員(高木
文雄君)
一般にやみ協定と言っておりますのは、本社と組合の本部との間で結んでおりますところの正規の協定、あるいは組合の地方本部と各管理局の間において結ばれておりますところの正規の協定、協約、それを逸脱して
現場においていろいろな慣行みたいなものができておる。必ずしもこれは要式行為であるとは限りませんけれ
ども、その種のものをやみ協定、やみ協約というふうに呼んでおります。
-
○
伊藤郁男君 それでは、いま職場総点検をやっておられるそうですけれ
ども、当局が今日現在把握されているやみ協定と称するものは一体どのくらいの種類に上りますか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 多種多様でございまして、なかなか分類して何種類というふうには申し上げにくいわけでございます。たとえば昔からの慣行、いわゆる悪慣行としてお盆の時期に決められました休暇以外の休みがあるというような問題だとか、それから今度はお正月前後、あるいはお花見の時期といったようなときにそういうものがあるとか、いろいろございますので、この分類のしようによってもあるわけでございまして、むしろ何種類と申し上げるよりは、はなはだ多種多様にわたっておると申し上げる方がよろしいかと存じます。
-
○
伊藤郁男君 それは数はわからないんですか。多種多様だけれ
ども、全体として……。
-
○
説明員(高木
文雄君)
現場の数が大体五千ぐらいあるわけでございます。それで、そのうちでそういう種類のものがあると懸念されるものが仮に一割と考えますと、五百ヵ所というようなことになるわけでございまして、それをその個所ごとにどういうものがあるかと、これは決してわかっておって始末をしていないわけじゃないものでございますから、いわばやみに隠れておるわけでございますので、なかなかその数を勘定せいと言われてもちょっと困るわけでございまして、むしろそういう場所がどのぐらいあるかということになれば、まあ私
どもの感じでは五千カ所の中で一割以上のものがある心配をいたしております。
-
○
伊藤郁男君 それで
運輸大臣にお
伺いするんですが、ポカ休、ブラ日勤、ブラ休、やみ超勤、やみ給与、やみ専従、やみ休憩等々われわれには耳なれないやみ協定があるわけですね。しかも、一つの
現場でこうしたやみ協定、悪慣行というのは五十から六十にも及ぶというように
指摘されているわけですよ。そうして、このことが国鉄を半身不随にした
原因だと、こう
指摘する向きがあるわけですが、
運輸大臣はどう思いますか。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) いまのやみ給与であるとかやみ協定であるとか、実は三月四日に国鉄総裁に対しまして、こうした悪慣行と申しますか、
一般では常識にないような慣行が平然と行われていることの実態の調査、それの対応策、こうしたものを今月いっぱいに出すということを要求しておるわけでございまして、いまそうしたことの調査が進んでいるところであります。その中には、いま総裁も答えられないようなやみと称するものが現実にどういうもので何があるかということも調査項目に入っていると私は聞いておりますが、こうしたことを調べ上げるとともに、やはりこうした事態がいわゆる国鉄の全体の機構の運営の中で最大のがんになっているということだけははっきり言えると思います。経営体になっておらぬということになるのではないかと思いますが、こうしたことを改めることがきわめて重要であるし、またいまの国鉄問題の第一歩はそこをまず正常化するということではないかというふうに考えておるところです。
-
○
伊藤郁男君
運輸大臣、これは総裁に聞いてもお答えができないと思いますので私は
大臣にお
伺いするのですが、
原因があるから結果が出てくるわけですね。だから、
原因がわからずして
対策の立てようがないと思うんですが、そこでこうしたやみ協定、悪慣行というものが一体横行してきている
原因はどこにあるとお思いですか。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) 決して国鉄のいまのような体質、あるいは赤字体質というものはきょうきのうに始まったことではないので、十年来の問題であると私は認識しております。そうしたことの根本
原因は何かということでございますが、いろいろな識者が
指摘しているマル生運動の問題とかということも一つであると思いますが、私はそうしたことは確かにきっかけであったと思いますけれ
ども、一番根本的に言うならば、やはり国鉄の労使がともに公共性とかあるいは公益性ということに、余りそれに乗りかかり過ぎて、大きな自分らの持つ使命感とかあるいは組織としての活力とか、こうしたものが非常にゆがめられてしまったという点にあると思うのであります。
きのうも実は総理が御答弁なさいましたが、一種の、最も求められるものは国鉄労使の意識革命ではないかという大変強い御発言を承ったのでありますが、私もそのように思っておりまして、こうしたことを
原因の追及よりも前に、やはり現状の認識をまず改めてもらうということ、本当の意味での公益性というものに対するもっと厳しい自己対処の方法、考え方、身の処し方というものが労使ともに求められているのではないかと思うのでございます。
-
○
伊藤郁男君 私は
現場協議制度というのは必ずしも否定をしないし、これはいい制度だと思っているんですよ。しかし問題は、いま御
指摘のあるように、マル生以後この
現場協議の中身が組合側の嫌がらせ、つるし上げ、理不尽な要求の提出の場になってしまって、
現場管理者がその圧力に屈してやみ協定、悪慣行をつくり上げてきてしまったと、こう私は思っておるのですが、その点はどうでしょうか。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) 私も長年の経営の体験から申しますと、
現場協議というものは大変重要なことであるという認識は持っておりますが、現在行われております国鉄の
現場協議というものの実態を私はよくまだ知らないわけでございます。言われているところが本当だとすれば、これは大変なことだと思います。
問題は、やはりこうした中で、いま三月四日の指令に基づいて調査しているのは、一件について何時間の協議がなされたとか、どういう内容であるとかということが克明に現在報告をされることになっておりますので、実態が明らかになりますれば、
現場協議制なるものの実態が何であるかということもおのずから明確になると思います。
それからもう一つ申し上げたいことは、やはりこうしたことが起こる一番の大きな
原因は、余り巨大な組織であり過ぎるということでもあるかと思うのでございまして、こうしたことがもう少し、各管理局あるいはその他それぞれの、多くとも千人科度の組織体の中で明確に処理できるような組織体に変更していくということも非常に重要なファクターではないかと現在思っておるところであります。
-
○
伊藤郁男君 総裁、先ほどいわゆるやみ協定についてお
伺いをしたんですが、本社も知らない、管理局も知らない、そういう協定が現に埋もれて暗やみの中にあると、こういうことですが、
現場長の権限外の事項について取り決めたいかなる確認事項イコールやみ協定、このやみ協定はすべて無効であるとこの場で宣言できますか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 本来、協定に反しておるわけでございますので、そういう協定はなきものと考えざるを得ないというふうに考えております。
-
○
伊藤郁男君 そこでお
伺いをするんですが、
昭和四十六年、国鉄当局がいわゆる生産性向上運動を中止するに当たって、国労との間で中央、地方で結びましたいわゆる紛対覚書、これは労使間協定ですか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 形式的には正規の労使間協定でございます。ただ、実質は一過性といいますか、そのときの処理に当たっての、紛争処理のための処理方について定められておるわけでございますから、その部分は、実際は何といいますかもうすでに過ぎ去ったことでございまして、ごく一部の部分についてなお協議、協定を続けるというようなことが書かれてわりますが、その部分は有効であると考えざるを得ないと思います。しかし、総体としてどうも非常に古い時期のそうしたものが、しかも実効性のある部分はほとんどないというようなものが今日残っておったということは大変まずいことであったと私も反省をいたしておるわけでございまして、過日の
衆議院の段階におきまして御
指摘がございました。よく考えました上で、いまそれを改めようということで交渉を始めております。
-
○
伊藤郁男君 そうするとこの覚書は、実体的には、もう中身的には余り有効性のあるものではない、ただし一部有効性がある。したがって、その問題について、これを改めるために協議を続けようとしているのだ、こう理解してよろしゅうございますか。
-
○
説明員(高木
文雄君) そのとおりでございまして、近いうちに残っている部分ということについてだけ何かきちっとしたものを定めまして、あとについては今後は継続しないということにいたしたい。と思っております。
-
○
伊藤郁男君 総裁、残っている部分というのはどういう部分を言うんでしょうか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 残っている部分といいますのは、昇給あるいは職員の組合活動に従事する場合の協約といったようなものを処理しようということだったわけですが、これは全部整理がつきましてルールが確立をいたしております。残っておりますのが昇職、昇格の
基準に関する問題でございまして、これにつきましてなかなか多種多様でございますので、なお協議をしようなお協議をしようと今日まで来ております。これも一挙にはとても解決つきませんが、この部分だけは形式的にはいわゆる紛対の協定の中にあるものでございますから、これだけは何らかの形で今後の問題として残していく、あとは全部もう継続しないということにいたしたいと考えております。
-
○
伊藤郁男君 総裁、給与に関しては別の協定がつくられたわけですね。
そこで、いま御
指摘の昇格、昇職等についてはまだ残っておる、こういうことですが、これも給与と同じように別の協定にし出していきたいというように国鉄当局は考えておられるわけですか。
-
-
○
伊藤郁男君 そこで、
運輸大臣にお
伺いをしておくわけでありますが、これは国鉄当局でいいですが、五十六年度の運輸収入はどの程度になると予測をされておりますか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 先般御審議いただきました五十六年度の補正
予算で、当初
予算に比べて約八百億余り収入減を織り込んでいただいたわけでございますが、それは四月から九月、上半期の収入動向に応じて補正方をお願いいたしたわけでございますが、その後も必ずしも、特に貨物を中心にして成績がよくないわけでございまして、現在のところ補正
予算の計上額に対して約八百億円程度の減収が出るのではないかと考えております。
これは、旅客の方は大体において前年度の九九%といいますか一〇〇%ぐらいの輸送量になっております。運賃改定の関係もありまして
かなり増収になっておるのでございますけれ
ども、貨物の方は前年度に比べましても輸送量で約一割弱落ちておるということでございまして、これが大変国鉄の収入全体に響いてきております。
-
○
伊藤郁男君 それではもう一つお
伺いをしますが、五十六年度一万二千名を減員する計画を、経営改善計画で年度別に計画を立てまして、そうすると五十六年度というのはあと十五日足らずですね、二週間足らずしか残っていないわけですが、今日現在における減員の達成程度ですね、どのくらいになっておりますか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 本年度内に一万二千人ネットで減員をするということで交渉していろわけでございますが、その中身は増と減とあるわけでございまして、増の部分もございますので、減の部分としては大体一万六千人ぐらいの
配置人員の減ということを計画をいたしております。それに対して、今日の
状況というのは正確にはちょっとまだわかりませんけれ
ども、大体半分をやっと超えるか超えないかというところでございまして、進捗
状況はいつもの減員計画に比べますと、必ずしも進捗率はよくないということでございます。
ただ、それには事情がございまして、今年の減員の要素というものは、一つは新しい機器類あるいは信号といったようなものの設備をすることによりまして人手が減るという部分でありますとか、あるいは直営でやっておりましたものを民間の方にお願いをする、請負にする、というようなことがありました。そうしたことは切りかえが年度の始まりあるいは終わりのときの切りかえということになる部分が非常に多いものでございますから、そういう意味でおくれておりますが、私
どもの見方では、そうしたものの中身から見ましてますます目標は達成可能であるということでいま日夜交渉といいますか努力といいますか、続けている次第でございます。
-
○
伊藤郁男君 その達成見通しがはっきりするのはいつごろになりますか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 四月の上旬には明確になると思います。三月三十一日までにし遂げたいわけでございますが、多少ずれもありますので、四月の十日ごろには明確にできるだろうというふうに考えております。
-
○
伊藤郁男君 もう一つ、特定地方線のバス等への転換の問題ですね。地方自治体とかその他の団体で協議機関を設けてやろうということになっておるのですが、この話し合いですね、協議機関というのは一体どの程度できたんでしょうか。
-
○
説明員(高木
文雄君) 大体いまお願いをいたしておりますのが四十線区弱でございますけれ
ども、そのうち十四、五線については協議会が発足しておりますが、まだ発足してない方が多いわけでございます。
その事情は、今回の対象線区が北海道と北九州に非常に集中をいたしておるわけでございますが、この両地域ともパックグラウンドになかなかむずかしい問題がございまして、協議会に応じていただけない形でありますし、いま両地域とも道会なり県会が開かれていろというふうな関係もございまして、何とかその後、そうした議会が開かれ終了しました後、年度内にお願いしたいということでいまこれも鋭意折衝中であるということでございます。
-
○
伊藤郁男君 それではもう一点だけお
伺いしますが、六十年度に貨物駅を八百駅にするという計画だったものを、これを前倒ししてことしの十一月までに八百駅にしていこう、こういうことを発表されておりますけれ
ども、これによって貨物は一体立ち破るのかどうか、見通しはどうでしょう。
-
○
説明員(高木
文雄君) 八百駅程度に縮小さしていただきたいという計画は、経常改善計画で織り込んでおったものでございまして、ただ、それを五十九年度までに到達しようというのを、いま急遽繰り上げて五十七年の秋までにやりたいということを言っておるわけでございますが、それは五十四年、五十五年当時の貨物の輸送
状況を前提とした計画でございましたが、その後貨物の輸送量の落ちが非常に多いものでございますから、私
どもとしてはいま当面はその五十九年度計画を五十七年度に繰り上げるということで臨みたいと思いますけれ
ども、なお、それだけでは不十分ではないかということで、さらに新しい貨物の輸送方についての新しい計画の組み直しということを作業いたしております。
-
○
伊藤郁男君 そこで
運輸大臣、お
伺いするのですが、いまお聞きのように、経営改善計画の中で三十五万人
体制にしていこうというのが一つなんですが、これはいま言うように、減員計画というのは四月の半ばころにははっきりするのですが、いま五〇%の進捗率である、こういうことです。
もう一つは、幹線を百億円ぐらいの黒字
体制に持っていこうというんですが、もうすでに八百億円の減収が初年度から見込まれておる、こういう
状況であります。
それから、特定地方線のバスへの転換の問題がありますね。これについてもまだ十四、五線ぐらいしか話し合いが始まっていない。
こういうことで、この国鉄の再建計画というものは、
最初が四十四年ですね。そして、今回で六回目なわけですね。過去五回ももう計画は立てたけれ
どもすぐつぶれてきているというこの繰り返しをやってきて、今回はもう後のない計画だと、こういうことで出発をしてきたわけでありますが、今回も過去五回と同様に、当初から大きな狂いが生じておるように私は思うわけでありますが、この
運輸省が承認をいたしました経営改善計画について、この時点において見直しをするお考えがあるかどうか、お
伺いをしておきます。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) 経営改善計画につきましてはもう皆様方に御了承をいただいてあるわけでございますし、いまこれが達成が多少スタートにおいてぎくしゃくしていることは私も否定いたしません。しかし、ただいま総裁が申しましたような貨物線のいわゆる合理化と申しますか、これをことしの十一月のダイヤ改正のときに断行していくということは、一つの改善計画への非常な前倒しになると思っております。
またもう一つは、ただいまも、そしてまた今度の国会においても、国鉄問題についてこれだけ赤裸々な議論が集中されたことは私は初めてではないかと思うのでありますが、こうした国民的な関心というものが、当然今日までいろいろな計画が生煮えのまま達成できないというような客観情勢、そういう国鉄内部の情勢に対しましては非常に私は大きな刺激になっていると思います。
また、現在やっておりますいろいろなやみ協定であるとか、あるいはまたやみ賃金であるとか、ポカ休であるとかということの実態調査、これについても克明な調査がいま進んでおるところでありまして、さらに実態が明確になってくると。私は、やはりこうしたところから一つの再建への意欲と申しますか責任感、こうしたものが国鉄の中に芽生えてくるということを背景にするならば、現在掲げております改善計画もいまこの時点で見直す必要はない。むしろこれをさらに深度を深めていくということをわれわれは期待をしておるわけでございますし、また、深度を深める方向への努力を
運輸省としては傾けてまいりたいと思っておるところであります。
-
○
伊藤郁男君 最後に大蔵
大臣、資金運用部資金法の第一条によりますと、資金は確実、有利な方法で運用する、こうありますね。これは、もちろん郵便貯金、年金などの性格で余裕金を流用しているわけですから当然だと思うのですが、国鉄に対する財投は約八兆円の残高になっておって、これからさらにこれがふくらんでいくと思うんですよ。
-
-
○
伊藤郁男君 一体大蔵省は、国鉄を確実、有利な運用先と考えて運用をしておるのか、国鉄に対する融資を行ってきておるのか。もし、これが返される見込みがないものを融資してきたということになれば、最終的にはどうしようと考えておられますか、それをお
伺いして終わります。
-
○
国務大臣(
渡辺美智雄君) 御
指摘のように、国鉄に対する融資が確実、有利であるかどうか、これは非常に大問題でございますが、もうやむにやまれずずるずると融資をしちゃったというのが私は実態ではないかと思います。
いずれにいたしましても、収入三兆円で人件費が二兆五千億、八割以上かかっているわけですから。それと、金利が一兆円以上かかっている。この
状態では、両面から見て、このままではいずれにしてもやっていけるわけがない。結局、政府が保証したり、政府が
一般会計から利息払うように補助金をやって運用部で返してもらっておるわけですから、運用部で貸した金の利息は何ということはない、国民の税金で払っているというような
状態があることは間違いありません。したがって、これはいずれにせよ、抜本改革をいま臨調でも考えておるようでございますし、
運輸省、国鉄とも一体になってこの健全化はやっていかなきゃならぬ、そう思っております。
-
-
-
○野末陳平君 行政改革それからグリーンカード、補助金などについて質問します。
まず、特殊法人の統廃合ですが、昨年度において三件という話を聞いております。行管の方から、具体的にどことどこが一緒になってどういう新しいものになったか、それをお答え願います。
-
○
政府委員(佐倉尚君) お尋ねの特殊法人の統廃合の話でございますが、現在の特殊法人の統廃合、私
どもの持っております計画は、五十五年計画というのと五十六年計画というふうに言っております。これは五十四年の年末の閣議決定のものと、五十五年の年末の閣議決定のものをそういうふうに呼んでおるわけでございます。
それで、五十四年の閣議決定で十八法人の縮減を計画したわけでございます。それで、現在済んでいるのが七つ済んでおります。この年度末までにあと三つ済むことになっております。そのあとは五十七年度以降に実施していくという計画にしております。
-
○野末陳平君 去年の実現した三つは。
-
○
政府委員(佐倉尚君) 昨年の三つは、建設業退職金共済組合、それから清酒製造業退職金共済組合、これの統合が去年の十月でございます。
それから
日本住宅公団と宅地
開発公団、これの統合がやはり五十六年の十月でございます。
それからもう一つ、
日本蚕糸事業団と糖価安定事業団、これがやはり十月に統合しております。
去年の分はいま申し上げました三件とも二つずつ統合したということでございます。
-
○野末陳平君 その中で一番規模の大きい
日本住宅公団と宅地
開発公団が統合されて新しくできた住宅・都市
整備公団ですね、これについて取り上げてみたいと思うのですが、行革の成果がどういうふうに上がりつつあるかということですね。もちろん先になりますけれ
ども、とりあえず職員数というか、人的面でどうなりました。
-
○
政府委員(豊蔵一君) お答えをいたします。
日本住宅公団と宅地
開発公団とが昨年の十月に統合されまして住宅・都市
整備公団となったわけでございますが、その際の職員の数につきましては、旧両公団の合計が職員の数が五千四百六十一名でございまして、この公団を統合いたしました際に、都市の機能更新を行うための再
開発事業、あるいはまた都市公園の
整備事業といったようなものが新しく加わりました。そういった面に職員約六十名を充当するということで、結果的にはトータル同じ数が戻しのまま新公団に移行されております。
-
○野末陳平君 それから、この統合によって建物とか支店とか営業所とか、そういうような規模ではどういうふうにこれから成果が上がりそうですか。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 両公団の統合によりまして、建物につきましては本社の事務所が一つになりました。また、
日本化宅公団の関西支社と宅地
開発公団の関西支所、これが一本化されました。そういったような意味におきまして、建物につきましてはその点の合理化が行われております。また、支店といいますか、地方の支分部局につきましても、いま申しましたような実際の仕事がそのまま新公団に引き継がれておりますので、必要な事務所等はそのまま存置しておりまして、いまの支社の統合ということになっております。
-
○野末陳平君 職員の数は減っていないという話でしたが、役員の数ですね、これはまあ当然減っているように思いますが、これはいかがですか。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 役員の数につきましては、旧
日本住宅公団が十四名、宅地
開発公団が十名、計二十四名であったわけでございますが、新公団に統合いたします際に新しく都市公園部門の
整備ということで一名の実質増がありましたので、差し引きまして五名の減、計十九名の組織となっております。
-
○野末陳平君 五千四百六十一人の職員数に対して役員十九人は多いように私は感じるわけですが、ほかの公団で役員が十九名というようなところはあるでしょうか。たとえば
日本道路公団のようなところも
かなり規模が大きいですが。
-
○
政府委員(佐倉尚君) お話の十九名ぐらいのものを言いますと、国鉄の十八人、これは株式会社でございますが、
日本航空の二十人というようなところだと思います。
-
○野末陳平君 道路公団は。
-
○
政府委員(佐倉尚君) 建設省の方からお答えいたします。
-
○
政府委員(
渡辺修自君) 道路公団は総裁一名、副総裁一名、理事七名、監事二名、計十一名でございます。
-
○野末陳平君 役員の数が多い少ないは仕事にもよりますから一概に言うのじゃありませんが、何となく道路公団の場合と比較すればちょっと多いように私は思う。それから電電公社な
ども役員の数は十三人だと聞きますし、そこでこの新公団の役員の十九人ですが、乙の内訳ですね、肩書きとそれぞれの人数と、それから参考までに月額の給料な
どもちょっと教えてほしいのですが。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 新公団におきますところの役員につきましては、総裁一名、それから副総裁が二名おりますが、それは総務関係と住宅建設部門担当の副総裁と都市
整備部門担当の副総裁とに分かれております。理事につきましては、総務人事関係、それから経理関係、企画調整関係、住宅計画・都市再
開発関係、それから管理……
-
○野末陳平君 理事は何名。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 理事は十四名でございまして、いまその内訳を順次申し上げておりますが、住宅の管理、それから住宅の建築、それから都市
開発の計画及び用地、それから都市
開発の事業関係、それから技術の管理関係、関連の公共施設の関係、それから交通関係、それから公園緑地関係、それから東京支社長、関西支社長、首都圏都市
開発本部長、これが理事の担当でございます。なお、監事二名は別途おります。
それから役員の給与でございますが、現在の役員の俸給月額は、総裁が百四万一千円、副総裁が八十五万五千円、理事七十一万五千円、監事六十二万五千円と、このようになっております。
-
○野末陳平君 何か役割りまで聞くと、多いのか少ないのかさっぱりわからなくなるぐらいに複雑ですが、ちょっと理事さん十四人なんというのは、ほかの公団と比べて多いように思いますしね。それから副総裁お二人、役割りが違っているけれ
ども、あの国鉄でも副総裁は一人ですから、ちょっと二人というのは多いと、そんなふうに思いまして、そこでこの副総裁の二名ですが、これは当然減らしてもいいのじゃないか。つまり、副総裁を一人に減らし、同時に役員ももうちょっと減らすというところまでやらなければ、行政改革という名に値しないのではないかと私は思うわけですよ。どうなんでしょうね。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 住宅・都市
整備公団につきましては、従来住宅公団と宅地
開発公団が行っておりました住宅の建設管理の分野と、それからまた宅地
開発関係、それに加うるに新しく都市の再
開発、あるいはまた根幹的な都市公園の
整備といったような広範多岐にわたる業務を担当いたしておりますので、私
どもといたしましては、副総裁二名がそれぞれ分担をいたしまして総裁を補佐するということが適当であろうかと考えておるところでございます。
また、経緯を申し上げますと、旧
日本住宅公団は、四十一年に宅地
開発関係の業務が非常に重要で量もふえてくるというところから、副総裁を二名にいたしまして、
昭和五十年の九月に宅地
開発公団が新しく設立されますときにこれを一名に減らした経緯等もございますので、いま申しましたような経緯を考えますと、現状といたしましての副総裁二名は妥当なところではなかろうかというふうに考えているところでございます。
-
○野末陳平君 じゃ、建設
大臣にも重ねてお聞きしますが、要するに縮小計画などなくてこのままでいこうと、こういうことでいいですか。
-
○
国務大臣(
始関伊平君) お答えをいたします。
ただいま住宅
局長が申しましたとおり、住宅・都市
整備公団は、その担当いたしております業務の範囲がきわめて複雑多岐でございますので、それぞれの仕事別に理事なんかを置きますと、こういったようなことになって、他の公団と、たとえば道路公団などと単純に比較するわけにもまいらぬ要素があると思います。それから、何しろ昨年の十月に新発足いたしたばかりでございますので、現段階におきまして役員の数を減らすということは、現段階では考えておりません。
-
○野末陳平君 私は別にこの統合についてあれこれ水を差すのじゃありませんで、これからもこの形、幾らでも統廃合が中央省庁にまで及ぶわけですから、いまのうちにいい見本を示しておかなきゃという、そんな気がして質問をしているわけですね。
では、役員の十九人のうち旧住宅公団、それから宅地
開発公団ですか、そこから新公団に横滑りした人はどのくらいになりますか。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 旧
日本住宅公団及び宅地
開発公団の役員であった方が新公団の役員になられました方は十六名と
承知しております。
-
○野末陳平君 皆さんいわゆる天下りの高級官僚と言われる人たちであろうと思うのですが、さて、このいまの横滑りした十六人ですかの役員の方ですが、旧公団におりまして、そして今度一日も休みがなくてすぐ翌日から新公団というか、もうつながっているわけですね。ですから私は横滑りだと言ったのですが、この横滑りの役員さんが旧公団をやめて新公団に即日移るに際し退職金が
かなり支払われているということですが、その事実関係について
説明してください。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 両公団を統合いたします際に、
一般の職員につきましてはその雇用関係を継続するものというふうに法律上規定されておりますが、役員につきましては、両公団の廃止に伴いまして当然にその身分を失うという形でございましたので、その段階におきましてそれぞれ所要の退職金を支払っております。
-
○野末陳平君 そこがちょっとね。職員は退職金はない、しかし役員は身分を失うといったって翌日から新しい身分になっているわけで、ちょっとその辺の理屈がわからないのですが、具体的にお聞きをしましょう。
新公団の総裁それから副総裁がお二人と、とりあえず上の方、この三人に払われた退職金とそれから在職年月、これをちょっと教えてくれますか。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 旧両公団から新公団に新しく役員となられました総裁、副総裁二名につきましては、総裁につきましては前の公団におきます在職年数は六年一カ月、副総裁がお二人おられますが、お一人は四年、お一人は一年二カ月というふうになっております。
いま申し上げましたように、退職金につきましては旧
日本住宅公団役員退職手当規程、また、旧宅地
開発公団の役員退職手当の規程に基づきましてそれぞれ支払われておるわけでございますが、個々の、個人の方の退職手当につきましての金額はプライバシーに属する事項でもありますので、回答を差し控えさせていただきたいと思います。
-
○野末陳平君 民間人じゃないのだから、ちょっとプライバシーと言われてもね。もらった額、堂々たるお金ならば別に構わぬと思うので、そういうふまじめな答弁はちょっと困るのですね。どうです。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 申し上げますと、総裁につきましては約三千三百万円、副総裁につきましてお一人が一千七百八十万円、もう一方が四百三十万円というふうになっております。
-
○野末陳平君 六年勤められた総裁が約三千三百万ですか。それから一年ちょっとの副総裁が四百三十万ですか。それから四年の方が千七百万ですか、千八百万ですか。
-
○
政府委員(豊蔵一君) もうお一方の方は、四年在職で千七百八十万円というふうになっております。
-
○野末陳平君 なかなかの額ですが、ちなみに横滑りしてそのときに一千万円以上の退職金が支払われたという方はほかにもまだいるのですか、何人か。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 新しい公団へお移りになられた方での退職金を支払われた方のうち、一千万円以上の退職金を受領した役員は五名となっております。
-
○野末陳平君 人様のふところを余りあれこむ言うのも不本意なんですが、一応全部いま新公団ができるに際して役員が受け取ったという退職金は、総合計ではどのくらいになりますか。
-
○
政府委員(豊蔵一君) 新公団の方に彩られました役員についての退職金の総額は、約一億五千二百万円余となっております。
-
○野末陳平君 住宅公団と宅地
開発公団、そこらだけを何となくやり玉に上げるようなのも気がひけるので、昨年度統合された新しいものに対して、ほかの例もひとつ参考までにお聞きしたいわけですよ。農水省関係だと思うのですが、
日本蚕糸事業団と糖価安定事業団という、ここが一つになりましたですね。この場合、やはり横滑りなさった役員はどの程度の退職金になっているか、これを参考までに。
-
○
政府委員(小島和義君) 蚕糸・砂糖類価格安定事業団に横滑りいたしました役員は、旧糖価安定事業団の理事長が新事業団の理事長に、それから同じく旧糖価安定事業団の監事が新事業団の監事に新任されております。お二方につきましての退職金は、理事長であった方が在職年数が三年七カ月、千四百三十八万円余りでございます。監事でありました者は、在職年数が二年四カ月でありまして五百六十八万円、かような退職金を支払っております。
-
○野末陳平君 特殊法人はどこも役員の方は退職金は規程が大体右へならえですから、額も似たようなものなのですがね。
退職金なんですが、役員の方は横滑りしただけで、実際には退職していないわけだな。民間の常識では、普通退職するというのは仕事がなくなってやめることですから、だけれ
ども、この役員さんたちは一日の空白もなくて勤務して、給料ももちろん八十万とか百万とか、そういう保障があって、そのほかに天下りの高級官僚としては共済年金も
かなりあるわけですから、そこに退職金と、こういうふうになると、何か退職金をもらう意味が常識で考えてよくわからない。決まりは決まりでしょうがね。そこで、この公団役員に対する何千万という退職金の性格、これは何ですか。これは建設
大臣にお聞きしたい。建設
大臣にひとつ。
-
○
政府委員(松下康雄君) 公社公団等の役員は、民間の企業で申しますと、民間の企業役員に相当する地位の者という制度でございます。
一般職の国家公務員等とは若干違っております。それはどういう点からそうなっておるかと申しますと、一定の任期期間内につきまして、その公社公団等の経営の責任を負っている、そういう地位にあるということでございます。また同時に、これは国家公務員から就任する方もおりますけれ
ども、広くまた
一般に民間からの人材も求めていきたい、こういう趣旨もあるわけでございます。したがいまして、役員の退職金は民間の企業の役員退職金と同じように、在職期間中の功労に報いる等の意味のある給付であると考えております。
-
○野末陳平君 民間との比較はちょっと待ってくださいね。
いまの
説明だと、責任をとるような地位にいて、それなりの仕事をしたその功労に報いると言うのだけれ
どもね、そんなに評価できる功労かどうか、それは別ですよ。住宅公団の場合はあなた、空き地、空き家があって、金利がかさんで第二の国鉄とか言われるくらいなもので問題は多いわけですから。だけれ
ども、功労であるからそれは決まりと言うなら、そこまでは目をつぶりますが、民間と比べると言うけれ
ども、大蔵省に聞きたいんだけれ
ども、民間にも役員の慰労退職金のようなものは確かにありますよ、大きなところでは。だけれ
ども、じゃ民間と比べて公団が決して高くないぞと、そういうデータは出せますか。ありますか。
-
○
政府委員(松下康雄君) 特殊法人の役員の退職金の算定の仕方でございますが、これは退職時の俸給月額に役員の在職の月数を掛けまして、これに支給率として現在では〇・三六を掛けて総額を計算をしているところでございます。問題は、この〇・三六を掛けるという点が高いか安いかということでございまして、この〇・三六を決めますに当たりましては、人事院が御調査になっております民間役員の退職金の支給
基準というものを念頭に置きながら決めているわけでございます。現在のO・三六は、
昭和五十三年の四月からそれまでの〇・四五を二割引き下げて定められたものでございますけれ
ども、これに相応します民間の調査の月数は〇・三七八でございました。
昭和五十五年度に人事院がやはり民間の役員の退職規程を調査いたしましたが、これに基づきます民間の支給率は〇・三七六でございましたので、この〇・三六を変える必要はないということで、現在据え置きになっているわけでございます。
-
○野末陳平君 いまのお答え、一つだけ勘違いがあるのは、決まりについてはそうで、それがどこと比べていいの悪いのということはなかなか言いにくいのですが、一つ、民間は企業利益の中からお金を出すわけね。その場合、公社公団などの役員の退職金がそれと同じなんだと、あるいはそれに準じて計算するんだというのは、ぼくはちょっとおかしいのじゃないかと思う。というのは、行政改革という至上命題のもとでのこれは話ですから、何かおかしいという感じを持つわけなんですよ。
総理、お聞きしますが、どうでしょうね、いまの在職年数に比較して退職金は少し高過ぎるのじゃないか。甘いという感じを私は持ちます。総理はどういう感じをお持ちですか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) ただいま大蔵省の主計
局長から御
説明申し上げたのでございますが、かねてからそういう野末さんの言われるような御意見が各方面にございまして、そしてやはり民間に準拠して、民間にならってやったらどうかと、こういうような観点から
昭和五十二年、五十五年でございましたか、人事院が民間の役員の退職金等を調査をいたしまして、その結果、いま御
説明があったような額に改善をしたわけでございます。したがって、ベースとしては私は民間より高いということにはなってないわけでございますが、民間の場合は、御
指摘のように、企業成績によって役員の退職に当たっての功労その他評価されると、こういうことでありますが、公団等におきましては、経営が黒であるとか業績がどうとかいうことでなしに、
一般的に勤務年限その他によって計算をされると、そういう違いは確かにございます。
ただ、ここで私は野末さんに御理解を願いたいのは、国家公務員の高級官僚等の天下りというようなことを前提にして考えますとまさにそういう御議論がなされるわけでありますが、民間からこの特殊法人の役員を起用するということになりますと、なかなか人材が得られないというのもこれも現実でございます。そういう場合に、特にお願いをしてそれについていただく。具体的なことを申し上げて本当に恐縮でございますが、現在の電電公社の総裁等はまさに電電公社の合理化、改善のために、改革のために特にお願いをしたと、こういうことでございますが、そういう民間から登用した場合におきましてはやはり民間の役員と似たような処遇ということを考えるのが私は自然なことではないかと、このように考えておるわけでございます。
-
○野末陳平君 総理、余り驚かれているようでないのでちょっと意外ですが、やはりこういう、まあ民間と比べてどうというようなことは抜きにしても、確かに
かなりのキャリアを積まれた方で仕事もなさっているのだけれ
ども、短期間でこれだけの類と、たとえば一年ちょっとで何百万とか二年いけば何千万とか、こういう額に驚かなくなってしまうと、これはもう世間の常識というか、国民の気持ちとかけ離れてくるわけですね。こういうことがあるようじゃ、行政改革なんかやろうとしてもなかなかできないのじゃないかという気がしているわけですよ。ですから、規程はそのとおりだし、それから総理の
説明もそれなりに的を射ているとは思うのです。だけれ
ども、だからといって行政改革をやる際に、せっかくこうやって統廃合を一つ一つやっていくのに際して、ここら辺で、この行革の裏ではやっぱり役員は横滑りして何千万退職金をもらっている、これは行革太りじゃないかと、こういうような気持ちを持たせることそのものがぼくはだめなので、ここに政治家もやはり何かを感じなきゃいけない。国会に長くいるとどうしてもここだけの狭い世界の決まりでこれ以上出れないのだけれ
ども、そこがちょっと
指摘したいところなんですよ。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 私がただいま御答弁申し上げたのは、この特殊法人の役員の退職金の算定の
基準、これが民間に比べてどうかと、こういうお尋ねでございましたので、そのような御答弁を申し上げたわけでありますが、先ほどの事例等によりまして、統合等がございましてそのまま移行するというような場合等は、これは行革の趣旨に沿って工夫改善をする余地は多分にあると私も御
指摘のように感じております。今後十分研究したいと思います。
-
○野末陳平君 それをひとつ実行に移してほしいのですが、こればかりやっていられませんが、中曽根
長官に重ねて、やはり行革に一番取り組んでおられるので、この行政改革、特殊法人の統合がこれからまだあるようですが、やはり実を上げるというためには役員の数を減らすとか、それから退職金の算定根拠な
どもさっき
説明が大蔵省からあったけれ
ども、百分の三十六だと言うのだけれ
ども、それが妥当かどうかという実は余り根拠はないんですよね、人事院がと言っているけれ
ども。だから、そういうところまでメスを入れていくという、根本的なところまで行革のメスが入らなければ、ぼくはいい見本がつくられていかない、結果的には腰砕けになると、そういう気がしてならないから、まだ答えを出すには早いでしょう、この行革の成果がどこまで上がったかと、この特殊法人の統廃合ですよ。でも、いまのうちからやはりいまの私の
指摘な
ども頭に入れてやってほしいと、総理もそういうような御決意がありましたけれ
ども、
長官に重ねてお聞きしたいと思うのです。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 野末さんのお話をいま傾聴しておりましたが、恐らく大多数の国民の皆さんの声を代弁していらっしゃると私は思いました。
そこで、いま特殊法人の問題につきましては、現状はいま申し上げたとおりでございます。しかし、この間の、昨年の八月の行革によりまして特殊法人の役員を五十九年度末までに二割減らすと、それはいま進行中でございます。
それから、いま住宅・都市
整備公団の話がございましたが、あれは五十五年行革で十八法人を減らしたその一環として行われました。それに一つ追加されて、いま十九法人になって、ことしの年度末までに大体十法人を減らすという計画がいま進行しております。その一環として行われましたもので、あの当時宇野君がやったのですけれ
ども、減らすだけでも非常に大きな騒ぎでありました。いまの国民の皆さんがこれだけ熱しているような空気では、それほどでもなかったわけです。それで、ともかく減らして合体させるということに全力を注いで、そして合体させるためにはある程度の妥協もやむを得なかった。私は後でその努力を聞きまして、私も当初、副総裁二人とは多過ぎるじゃないか、二十四人が十九人になったというのは、まあ十二、三人でいいのじゃないかと私は率直にそう思ったのです。しかし聞いてみると、ともかく非常な困難があって、合体させるだけでもむずかしかったと、それをそこまで持っていくので努力したのだということでありました。それでわれわれは甘んじているものではございません。いまのこの大きな内外の情勢の変化に応じてさらに改革は加えられていくべきものであると。そこで、特殊法人につきましても、いま第二臨調で専門的に調査が進められております。たとえば、変な話ですが、総裁という名前は官尊民卑じゃないかと。総裁なんというのは
日本銀行総裁一人だけでたくさんじゃないか、あとは理事長でどうだとか、たとえばそういうような議論まで実は行われておりまして、私は思い切った改革案がさらに出てくることを期待しております。それはいまの給与の問題についてもそうでありまして、たとえば新日鉄あたりで、常務が二十年ぐらい勤めて約二千万円ぐらいだということを聞いておりました。そういう点考えてみると、何か変なところがあるなという気がするのです、いまのような三年や四年で横へ移ってもらっているという場合に。会社によってはみんな違いまして、重役の期間の月給を割ってみまして平均にして、それに月数を掛けて、それに〇・三六掛けるとか三七掛けるとか、そういう数字であるのと、それから最終月給でやる場合と、いろいろ変化があるわけです。いまの特殊法人の場合は最終月給でやるわけですから、
かなり値が高いわけですね。しかし、その全体の総トータルボリュームにおいてあるいはどうなっているのか、そういう点も精査する必要がありますし、またやる場合にしても、たとえば鉄道関係ならば私鉄の例がどうであるか。その私鉄と比べて、じゃ国家的なものはどうなんであろうかとか、同種の商売はどう動いているかということも、公平の観念から考えてみる必要もあるわけです。そういうあらゆる面で、ここで総ざらいに洗ってもらいまして、来年の三月までの答申で出してもらって、そうしてそれを実行しようと、そう考えているところであります。もうしばらくお待ちを願いたいと思っております。
-
○野末陳平君 私の真意がわかっていただけたようで心強い限りですが、ひとつこの問題には、行政改革と精力的になお取り組んでいただきたいということを、重ねて総理にもお願いしておきます。
じゃ、午前中はこの辺でやめます。
-
○
委員長(
植木光教君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時
委員会を再開し、野末君の質疑を続けます。
これにて休憩いたします。
午前十一時五十五分休憩
—————・—————
午後一時三分開会
-
-
○野末陳平君
最初に自治
大臣にちょっとお
伺いしておきます。
非常に小さい問題でお恥ずかしいようなものですが、午前中も行政改革に触れまして、もちろん行政改革というのは当然お金の問題だけではありませんで、姿勢の問題その他いろいろありますが、地方公務員のことでちょっとお聞きしたいんです。
たまたま確定申告が終わったばかりで、いわゆる税金関係の
資料が各家庭に市民サービスのために配られたわけですが、この印刷物がミスが多いのなんの。税金の
資料で数字が違うなんというのは余りに初歩的ではかばかしいんですが、これは中野区役所のものですが、「申告書の手びき」というのですが、このミスが、たとえば五十六年とすべきところが五十五年、それから、医療費控除は二百万円が上限なんですが、これは二十万、老年者控除は二十一万というところが二万一千円、ゼロ違うのね、落っこっちゃっているわけですね。こんな初歩的なミス、どう考えてもこれはたるみとしか思えないわけですよ。なおかつ、「申告書の手びき正誤表」というのがついてくるわけですね。ここには「申告書の手びきに誤りがありますので」「読み替えてください。」恥ずかしくないのかというんですね。こういう、だれがやったか別として、これはたまたま一枚で、ほかにもほとんどあるんですよ。毎年のようにこういう正誤表つきのミスプリントが税務
資料として配られる。実に情けないというか、こういうたるみについて自治省はもっと何か厳しく言ってほしいと常々苦々しく思っているんですが、どうですか。
-
○
国務大臣(
世耕政隆君) お答えいたします。
ただいま御
指摘のあれは、印刷の前の
資料のミスか、それとも印刷の上のミスか、どこかでミスが起こっているのだと思いますのですが、大変申しわけないと思っております。公務員というものは全体への奉仕者としての役割りと、それから公共の利益を図るという不変の役割りと両方持っているのが公務員意識の中心になるのでございますが、この点においていろいろ欠けているところがあるということをときどき
指摘を受けるわけでございます。そこで、最近、職務に怠慢な人が一部にある、それから汚職とか争議行為とかいろんなことをする公務員の一部の人たちが
指摘されているところでございますが、そういうことがないように、われわれの方は折に触れていろいろ服務規律の一層の徹底を図るように進言していっているわけでございます。御注意の点いろいろこれからもまた
検討いたしまして、早速今後の公務員意識の高揚について指導、助言に努めてまいる所存でございます。
-
○野末陳平君 一つお願いがあるのですね。これは新聞などの投書でもしょっちゅう出てくることなんですが、地方公務員の窓口がお昼休みをほんのちょっとでも過ぎるともうだめ、午後出直して来いなんていうのがいまだにある。ちょっと融通きかすぐらいのことはしてくれてもいいんじゃないかと。これがサービス精神の欠如だとしか思えないわけでして、ここまで自治省は指導できるかどうか知りませんが、何かお昼休みの窓口、せっかく来た人には融通をきかすというように、庁に対して何かその程度の指導ぐらいはしてほしいのですが、お願いなんですがどうですか。
-
○
国務大臣(
世耕政隆君) 自治省といたしましては、そういう点に対しては各都道府県を通じていろいろ指導、助言を今後とも行っていく所存でございます。
-
○野末陳平君 それではグリーンカードのことで、新聞にも大きく出たりするわりに、国民の間に正しい理解が行われていないというふうに私思いますので、このグリーンカードに時間を割きたいと思うのです。
まず、グリーンカードの意義を再確認しておきたいんですが、何か不安とか誤解が先走って、ともすれば不公平を正すという本質が薄れがちである。ここでグリーンカード制度というのは、まず第一に、マル優をきっちり管理するということですね。それから二番目は、いわゆる資産家と言われるような人たちのマル優を超える預貯金の利子あるいは配当、そういうものを総合課税で勤労所得並みの税金をきちっと払ってもらうんだと。大ざっぱに言えば、この二点がわれわれがこれを国会で審議したときのグリーンカードの役割りだったと思うわけですが、この基本的な理解で大蔵
大臣よろしいですね。
-
-
○野末陳平君 ところが、いまやあちこちでこのグリーンカード反対あるいは廃止の声があるようで、まだ実施の前にですね。
そこで恐縮ですが、中曽根さん、先ほどいいお答えいただきましたので非常にうれしいので、改めてまた中曽根
大臣に、グリーンカードにつきましてもし反対とか見直せとかいう御意見がありましたならばお聞かせ願いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) それは法律でいま決まっておることでございまして、閣僚として意見を発表することは差し控えたいと思います。
-
○野末陳平君 まあ当然そうなんですが、何かあちこちで非常にこの動きが激しいということを聞いたのであえてお聞きしたわけですがね。じゃやはりあれですか、安倍
大臣、河本
大臣な
どもいまのお答えと似たようなものでしょうか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 閣僚としては、いまの中曽根
大臣と同じことでありますが、私が党の政調会長をしておりました際に、このグリーンカード制に対して国民のいろいろな批判が出ておりました。自民党の党内でもいろいろと問題が出ていまして、いろいろと
検討をしまして、グリーンカード実施によって預金が減るとか、あるいはまた物にかわるとか、海外に流出するとか、そういうことで、せっかくの自由主義経済のいい面がなくなっていくのじゃないか。いわゆるこのグリーンカード制が背番号ということで、国民の金融資産が白日のもとにさらされるんじゃないか、こういうことで、これは相当経済関係の中でも問題が出ておりまして、多くの陳情を受けました。そういう中でいろいろと党内でも
検討いたしまして、相当な政令等の実施をする段階において中身を手直しをいたしました。実施をするという大前提のもとで手直しをして、一応その基本的な方針のもとで現在進んでおるわけでございますが、しかし、これがさらに実施までの間に、このグリーンカード制実施ということによって非常に異常な事態が出るということについては考えなければならない、こういう声が各方面にあることもこれは事実であります。
-
○野末陳平君 それではいろいろな角度からグリーンカードの影響などを質問してみたいと思うんです。初歩の質問で、ちょっとくどくなると思うんですが、それはお許しいただくとしまして、いろいろと問題があるだけにやむを得ないと思うんですが。
この
一般サラリーマンといいますか、あるいは庶民家庭というか平均的な、こういう場合ですね、このグリーンカード制度によって何か困ることが起きるか。たとえば預貯金の利子の税金が高くなるというような、これはどうですか。
-
○
政府委員(福田幸弘君) お答えします。
税金がかからない枠は、金融機関について三百万円、それから国債について三百万円、さらに郵便貯金が三百万円、それからサラリーマンの場合は財産形成貯蓄ということで五百万円、一千四百万の枠があるわけであります。
一般のサラリーマン世帯の場合、これは五十五年でございますが、平均の貯蓄額が約四百七十万であります。定期性預金が問題でございますが、約二百三十万、一世帯当たり。そういうことでございますので、先ほど申しました枠から見ますと、影響がないというふうに考えます。
-
○野末陳平君 まあまだ非課税の枠が余っていて、要するに利息にかかる税金の面では影響がないんだということなんでしょうが、ただ、プライバシーの面で問題は起きないかどうか。たとえば、何百万円にしろその預貯金の
状況が税務署に知られて気分が悪いとか、そういうようなことはどうなんですか。
-
○
政府委員(
小山昭蔵君) お答えいたします。
コンピューターに入力されます内容は、カードの交付をお受けになられます方の住所、氏名等と、その交付をお受けになられました方が金融機関あるいは証券会社に設定されましたマル優あるいは特優の限度額だけでございます。
なお、若干執行に当たります立場から付言させていただきますならば、所得税法上も、このカードの交付に当たります国税職員につきましては、格別厳しい守秘義務が所得税法上課せられておりますし、私
どもといたしましては、これらの内容が外部に漏れることのないよう万全の
対策を講じる所存でございます。
-
○野末陳平君 要するにコンピューターに入るのは限度額であって、つまりマル優の枠であって、預貯金の残高ではないというようなことだと思いますけれ
ども、しかし、いま大蔵省から答えがありました一世帯でまだまだ非課税枠が余っていると、事実マル優三百万、それから郵便貯金三百万、国債も使えば三百万で、合わせて九百万、こういう以内で、ほとんどの
一般家庭はおさまっているとは思うんですが、ただ年金で暮らそうというようなお年寄りも当然いるわけですね。多分退職金をためたとか、あるいは不動産か何か売ったとか、まとまった金がある、その預貯金から生ずる利息で老後の経済計画を立てている、こういう場合ですね、年金収入のほかにどのくらいの定期預金があっても利子の税金を心配しないで暮らしていけるか、このあたりどうでしょうか。
-
○
政府委員(福田幸弘君) たとえば月に十万円という年金と貯蓄の利息とで生活をしておられる御夫婦、御主人六十五歳ということで想定いたしますと、この御夫婦の場合、約二千三百万円までの貯蓄の利子につきましては所得税が課税されないということになります。それから奥様が非課税貯蓄を別個におやりになっておるということでございますと、さらに九百万加わりますので三千二百万までの貯蓄の利息には所得税は課税されない。計算課程は、その非課税貯蓄の枠を超える預貯金の利子を二年物の定期預金ということで、利率を六%としまして年間八十一万入るわけでございますが、基礎控除が二十九万、配偶者控除が二十九万、それから老年者控除が二十三万ということで、六十五歳以上はそれができますので、したがって、この諸控除によって課税されないという結果になります。さらに奥様が七十歳以上というような老夫婦になりますと、さらにこれは老年者配偶者控除というので、さらに六万円が加わるわけで、約百万円がさらにふえるという関係であります。
-
○野末陳平君 そうすると、大ざっぱに言いますと、年金で暮らす六十五歳以上の老夫婦の場合に、年金のほかに預貯金が二千万、三千万ぐらいあっても——これは恵まれていますね、
かなり。平均以上かもしれませんが、こういう人たちですらグリーンカードによる税負担はきつくなることがない、まあ非課税と、こういうことでいいわけですね。ただし、中には源泉で二〇%取られた場合に、もうそれで終わったと思って、もう税金取られっぱなしで、そのままにして、やっぱり税金がかかっていると、こう思う人だっているんじゃないですか。そういう場合どうしますか。
-
○
政府委員(福田幸弘君) お答えします。
課税貯蓄の場合二〇%の源泉ございますので、申告されると還付されるということであります。
-
○野末陳平君 ですから、やはりそういうところ、確定申告すれば、源泉で取られた利子の税金も還付されるというような知識がなければ、やはりグリーンカードなんか困るというふうになってくると思うんですね。だから、大体においてこのグリーンカードの問題については、つくった大蔵省も非常に細かいところでPRが足りないというか、なまけている感じがしてならないんですが、まあいいでしょう。
そこで、いまのところでは、
かなりの額の預貯金があっても、利子の税金の心配がないということなんですが、じゃ課税されるほどたくさんの預金を持っているというのはどの程度であるか、グリーンカード導入によって従来よりも税負担がきつくなる層というのは、いまの年金収入のほかにどのぐらいの預金があればという、この辺はどうなんでしょう、定期性の預金でいいんですが。
-
○
政府委員(福田幸弘君) 年金で生活している老人の場合で幾ら以上の定期性預貯金があれば負担増となるか、分離課税の対象になるかという負担増だろうと思いますが、たとえば月十万円の年金という前の例で、貯蓄の利息等で生活しておられる御主人が六十五歳という御夫婦の場合、これを考えますと、これは約八千九百万までの預貯金であれば総合課税になりましてもいまよりは税負担が重くならないという計算になります。
-
○野末陳平君 八千九百万という預貯金はごく少数の人だろうと思うので、このあたりは税負担がきつくなってもやむを得ないと思いますね。大部分の国民が困らなければ私はいいと思う。ただし、このグリーンカードの問題は、こういう税金が高くなる、どうだというだけではありませんで、大体何千万円という預貯金を持っておるお金持ちは、税金も嫌でしょうけれ
ども、やっぱり税務署に知られるのが嫌だと、これがやはり一番微妙なところですね。いわゆるプライバシーの問題ですね。
そこで質問しますけれ
ども、いまマル優扱いの預金とそれから分離課税の預金とそれぞれどのくらいあるのか、これを聞きたいんですが。
-
○
政府委員(福田幸弘君) お答えします。
五十六年末の個人預貯金は二百二十九兆でございますが、このうち分離課税の対象となっています預貯金分、これは五十五年中の源泉分離課税の対象となる利子支払い額から推計するしかないわけでありますが、二百二十九兆の中で約十四兆弱と、こう思われます。したがって、個人預貯金総額に占めます分離課税という優遇を受けています者の割合は約六%ということになります。
あと御質問……
-
○野末陳平君 マル優。
-
○
政府委員(福田幸弘君) マル優の利用額ということでございますと、五十六年三月末で約百三兆でございます。
もう一度数字を整理して申し上げますと、個人預貯金が二百二十九兆円、五十六年十二月末でございますが、郵便貯金が六十七兆というのが別にございます。それからマル優が百三兆、分離課税が先ほどの十四兆、それから要求払い預金というようなものが二十二兆という内訳になっております。
-
○野末陳平君 いまの数字はちょっと置いておきまして、マル優預金の中にも
かなりの不正利用というか、まあ故意とは思えない部分も含めてあるだろうと思うのですね。
そこで、私よく聞くのは、妻子名義の定期預金があると、この妻子名義の定期預金がグリーンカードによってどうなっちゃうのだと、こういう不安がありますね。これについてはどうですか、ケースごとにこうだとお答えください。
-
○
政府委員(福田幸弘君) グリーンカード制度が実施されますと、家族名義も非課税預貯金について贈与税が課税されるのではないかという懸念が一部にございますが、家族名義も預貯金につきましては、これは一年間に六十万円ということで贈与をずっとやってこられておるということででき上がったものでありましたら、贈与税は課税にならないのは当然でございます。この限度を超えた分につきましても、その名義を本人名義に戻すということをいたしますならば、そこでさらに贈与ということはございませんで、修復できるということを考えておるわけであります。
-
○野末陳平君 贈与した人が贈与税の対象なら、これはやむを得ませんけれ
どもね。しかし、マル優の中の話ですから、そんなに額も多くないと思うのですが。
さて、分離課税の中身に入りたいのですがね。さっき分離課税は十四兆あると言いましたけれ
ども、二千万円以上の預貯金を持っている人というのはどのくらいいるものでしょうね。まあ二千万円という線を引いたのは、ここら以上の預貯金のある人が——もっとも郵貯の部分がちょっと数字としてはっきりしていませんけれ
ども、一応二千万円以上の預金がある人はグリーンカードで何がしかの影響を受けるんじゃないかと私は個人的に判断しているわけなんですが、どうでしょう、二千万円以上の預貯金がある、こういう人数、どのぐらいいるものでしょうかね。
-
○
政府委員(福田幸弘君) 定期性預金でマル優込みで二千万以上持っている人はということでございますが、これは統計上直ちに出ません。しかし、総理府の貯蓄動向調査等を参考にしまして、貯蓄残高というものは年間収入とほぼ見合ったという数字が従来ございます。したがって、そういう前提を置きまして考えますと、貯蓄残高が二千万円以上の人は約十二万三千人と推定されます。これは納税者数が約三千八百九十万人でありますので、その〇・三%、すなわち三百人について一人ぐらいという割合であります。
-
○野末陳平君 いまのはやっぱり年間所得と大体預貯金が同じだというような前提なんで、ほかの
資料もないと、それだけで三百人に一人ぐらいだろうと言われても、ちょっと余り説得力ないように思いますが、ほかにはないですか。
-
○
政府委員(福田幸弘君) これも直接の
資料じゃございませんが、相続税課税の事績で見ますと、現金預金で二千万以上の方というのは約千五百人ございます。そういうことで見ますと、年間の
死亡者のうち四十歳以上の男子をとりますと三十五万人でありますので、ほほ二百五十人に一人というのもサイトチェックとしては出てまいります。
-
○野末陳平君 二百五十人か三百人に一人がグリーンカードの影響を受けるぐらいに、
かなりの、二千万円以上の預貯金がある、こんなような感じなんですが、現在分離課税を選んでいれば申告不要なわけですから、税務署には当然わかりませんよね、いま。だけれ
ども、これからグリーンカードになると利子の支払い調書が当然税務署に金融機関から行くわけですから、ここでいままでは税務署に捕捉されなかった金が新たに捕捉される、それだけでも何となく嫌だと、プライバシーを侵されたんだと、こう思う人も世の中にはいると思うのですな。こういう場合、私は別にプライバシーを侵したとは思っていませんけれ
ども、こう感じる人もいる。それに対してはどういうふうな
説明をしたらいいでしょうかね。もちろんこれは、このお金はまじめな表金であるとしてですよ。
-
○
国務大臣(
渡辺美智雄君) これはもう気分の問題ですから、法律の問題ではありませんからね。やはりしんぼう強く理解をしてもらうということなんです。もともとお金というのは暗いところに入る習性がありまして、たんすの中とか金庫の中とか人の見えないところとか。ですから、そういうような気持ちはみんな持っているのです、だれでも。しかしながら、グリーンカードというのはそうこわいものではないのだということを知ってもらうということが一番大事なことじゃないか。ですから、やはりあなたがおっしゃるように、これは大いにPRをもつとする必要があるということはそう考えております。
-
○野末陳平君 こういうふうに見できますと、私はやっぱり一番グリーンカードで始末が悪くなっちゃうのは裏金だろうと思うんですね。架空名義で分離課税を選択している人とか、あるいはマル優の不正使用をしている人とか、そのあたりはやはり非常に困る。このブラックマネーがどのくらいあるか、これもやはりいろいろと聞いてみないと、さっき安倍
大臣が言われましたけれ
ども、経済にいろんな問題があるといっても、このブラックマネー、これはどうですか、わかりますか。
-
○
国務大臣(
渡辺美智雄君) これはわからないからブラックマネーになっているのでありまして、わかればもっと別な名前がつくわけですから、だから正確なことはわからない。大体それは大ざっぱにこれぐらいかなという、余り責任持てませんがね、数字はあります。
-
○野末陳平君 大ざっぱに。
-
○
政府委員(福田幸弘君) お尋ねでありますが、ブラックマネーがわかっておれば課税いたすわけでございまして、本当の推定でございますが、まあ分離課税やっているからブラックとは言えません、それは。したがって、半分というような感じでいきますと、残高が、分離が十四兆としますと、五十一年に九兆ございましたのが五十五年に十四兆と、約五兆ふえておりますけれ
ども、その根っこの方は別にしまして、五兆の半分の二・五と、こう考えていいのか。これはまた根っこの部分を含めて十四兆のどのくらいか。言われるような大きなブラックマネーがあるということは、いままで課税が適正にされておるということを前提にすれば考えられない。また、そのブラックマネーを温存することを前提にしていろんなことを議論するということはまたおかしな議論であろうと、こう思います。
-
○野末陳平君 じゃ、角度を変えましょうね。
だからこの裏金が、こういうブラックマネーがグリーンカードになって預金したままでずっといくとこれはどういうことが起きるのでしょうか、今度、個人の税務上の問題として。
-
-
○野末陳平君 だから、この裏金は預金したままでおいて、分離課税のままでいて、今後グリーンカードになったらば、税務問題としてどういうことになっていくのか。
-
○
政府委員(福田幸弘君) それは、本人の確認ということを、グリーンカードもしくはほかの公的証明書で本人が確認されるということですと、いままで三五%で分離になっておるのが総合課税になるということで、本来の課税を受けるということでございます。たとえば、三千万円ということでいままで分離——これはブラックマネーとは考えないで税制上の問題で考えますと、分離ですと約千五十万円でございますが、本来の総合課税と、勤労所得と同じ課税をいたしますと千四百万円ということで三百五十万円だけふえる、これは二五%ふえる、これは本来の税率に戻るということであります。
-
○野末陳平君 でも、ブラックマネーだったらそれでいいわけですか。
いまのはだからあれでしょう、表金のようなものでしょう。ブラックマネーだったらば申告上の問題は起きないわけですか。じゃ、それも問題なく認めてくれるのですか。
-
○
政府委員(福田幸弘君) 御質問は、根っこの問題であろうと思いますが、時効になっていなければその所得源について調査を受けるということは当然あるわけであります。
-
○野末陳平君 その辺で、多分、私が思うには、そういう裏金を持っている人が、根っこの部分かどうかはともかく、調査を受ける、税務申告あれこれやられると、そこが嫌だというのが
かなりあるのじゃないかと思うんですね。やはり、当然架空名義その他でもって申告をごまかして残した金だから、これは追及を受けてもやむを得ないと思うので、そこまでもプライバシーだというならば、これは何をか言わんやだと思うのだ。これについてはどうですか、大蔵
大臣。
-
○
政府委員(福田幸弘君) グリーンカード制というものがプライバシーの権利や財産権の侵害ではないかということが、いまの所得の発生源のところの調査に絡んで実際心配している方が多いという意味でございましょう。
これは、まず
最初の非課税限度のところは
最初の御質問のとおりで、これは枠内の問題ですから国民大衆にはほとんど影響ない。今度は課税貯蓄のところで問題になってくるわけでありますが、いずれにしましてもまずその非課税貯蓄のところで、さきの御質問にありましたのに答えましたように、金融機関等から税務署に通知されますのはいままでと同じでございまして、非課税の枠だけが通知されるので、預貯金の残高やその出入りというものは、これは通知されない。ここが一つ誤解がある点でありますが、この枠の管理をするということで、その金融機関から、私のところの枠は幾らですということで、その枠の管理をきっちりやってもらうということです。したがって、預貯金の個々の出入りとか残高でプライバシーということはこの制度からは出ません。課税貯蓄につきましても本人確認はいたしますが、金の出入りとか、そういう残高とか、本当の個人に密着する金の出入りまでこのカードがチェックするということじゃなくて、本人が限度を管理しており、本人の預金であるかということを見るという意味でありますので、その辺のプライバシーの問題はないわけであります。
あと、先ほど次長が申しましたように、法律上グリーンカードの交付専務に携わる国税職員の守秘義務違反については、
一般の公務員の守秘義務違反より重い罰則を設けております。さらにカード及びその記載事項について国税に関する事務以外の目的に利用することは禁止されておるということを、法律上明確にこれは規定されておるわけでありまして、そういう意味でのプライバシーの問題もありません。しかし、本来納税すべき金が納税されていないというブラックマネーに対して、これを調査し、その実態を明らかにして納税をしていただくということは、題法上の納税義務から見ましても当然の税法上の執行の問題であろうと、こう考えます。
-
○野末陳平君 参考までに法制局にもいまのプライバシーの問題、ちょっと見解を聞いておきたいんですよ。憲法第二十九条でしたか、国民の財産権というのがありますね、守ると。このグリーンカード反対論の一つは、確かにグリーンカードで財産権が侵害される、プライバシーが侵されると、こういうようなことになっていろわけですが、法制局はどういうふうに見解を持っていますか。
-
○
政府委員(
角田禮次郎君) 結論だけ先に申し上げれば、グリーンカード制度が憲法に違反をするなどということは全く考えられないと思います。無論財産に関するプライバシーというものはそれなりに尊重されなければならないことは当然だと思いますが、しかし憲法はそういうものを生の形で一〇〇%認めなければならないと、そこまで要求しているものではないので、無論合理的な理由があり、合理的な範囲内においては、そういう場合についてはプライバシーというものについてもある程度の制約を受けるということを憲法は当然予定していると思います。
グリーンカードについての制度の理由、あるいはそのやり方については、先ほど来大蔵省からの
説明があったとおりだと、それは当然憲法の許す範囲内のものであると、私
どもはそう考えております。
-
○野末陳平君 大蔵
大臣、いまの大蔵省とそれから法制局のプライバシーに関する見解ですが、それを私流にさっきしゃべった中で言いますと、要するに、きちっとしたお金ならばやや税の負担がきつくなるたくさんの預金者もいるけれ
ども、しかしブラックマネー、裏金についてはこれはプライバシーという問題はないのだ、極端に。そう思っているわけで、そういう理解でもいいですか、いまの両方総合しますと。裏金にはプライバシーはないとはっきり言っている。
-
○
国務大臣(
渡辺美智雄君) 憲法上納税義務は国民にあるわけですから、法律に基づいてね。今度のグリーンカードという問題は、いろいろ言っているけれ
ども、結論は九百万円の無税の貯金を恩恵的に認めます、しかしそれは、それをオーバーする人があっては乱用されますから、オーバーしないようにそこのところだけははっきり捕捉をいたしますということが一つです、これは。もう一つは、架空名義の定期をなくしましょうと。ですから、定期性の預金については本人を確認する、免許証とかそれから何か、学生証でもいいですよ。住民票とか。要するに本人であるようにしましょうと。ですから、本人の名前になればいいわけです。架空名義にはできないということですね。だから普通預金については、これは金利も低いし、そういう煩瑣な手続はありません。ただ源泉だけでございます。そういうことですから、そうむずかしく考える必要はないのです。
ただ問題は、総合課税にするというのが原則ですから、税率が、外国も総合課税なんだから、
日本も総合課税するのだから、最高税率の区分というのが累計九三%で妥当かどうかというのは、これは全然別な問題の議論になります。したがって、要するに九百万円を超えて貯金を持っているという人は、いま三五%分離課税払えばいいということでございますが、それは七百十万超というものについては、これはもう少し、住民税と両方合わせますから、多少納税額がふえるかもわからないというだけであります。
-
○野末陳平君 基本の枠組みは大体出たと思うのですが、しかし幾ら基本がよくても、その影響するところが誤解や不安に基づいて大きくなっては困るわけですね。反対という学者などあるいは評論家の
先生などがいて、グリーンカード反対の根拠を聞いてみますと、不健全な資産に国民の金が流れる、なかんずく海外に流出するんだとかあるいは貯蓄性向が衰えるとか、いろいろあるわけです。こういう懸念が現実のものとなったらいけませんから、ならないようにあらゆる手は打たなければいかぬと思います。しかし、現実にいまのところ見る限り、果たしてそういう傾向がもう出ているのかどうか、ここはやはり気になるところですね。その一つに、新聞などで騒がれた、ゼロクーポン債で
かなり海外へ流出したんだと言われるのですが、去年からことしで幾ら出て、その中でグリーンカードを嫌ったと思われる金はどのくらいと推定されるのか、その辺は大蔵省わかるのですか。
-
○
政府委員(福田幸弘君) ゼロクーポン債の購入のため海外に支払われました金額は把握できませんが、昨年四月からことし二月までの国内における販売額から見ますと約二千六百億であります。二千六百億ということの金額の大きさでありますが、五十六年中の個人の金融資産の増加額は三十五・三兆円でありますので約〇・七%にすぎないということでありますが、金(きん)も大体同じようなパーセントでありますが、いずれにしましても、個人の金融資産の残高で見ますと三百三十八兆、約三百四十兆が五十六年末の数字であります。そういうことでありますから、全体の金融資産の大きさの中での約二千六百億程度というもの、またその増加の三十五兆の中におけるいまの二千六百億、〇・七%というものが国民経済にどういう影響を与えたかという点についてはおのずから常識的な判断があろうかと思います。
また、ゼロクーポン購入がグリーンカード
対策として買われたかどうか、これはなかなか見方があるところで、そういういろいろな不安がございましてそっちに動いた面もあろうかと思いますが、これは証券局から御
説明すべきでありましょうが、このゼロクーポン債というのは去年の四月ごろから売り出された新しい商品で、高金利で、米国でございますので利回りが非常にいい、しかもそれが最後に償還される形のディープディスカウントということで、四分の一ぐらい払い込んでおけば十年先には一〇〇%入ってくるというような仕組みになっております。
アメリカの税制におきましては、発行します法人は支払い利息としてそれを損金に落とせるといううまみがある。ところがそれを言います
アメリカ人の立場で言いますと、これは利子所得が課税を受けまして、途中で売りますとキャピタルゲイン課税されるということで、
アメリカで売るというよりも外で売れる。
日本の場合は、最後まで持っておりましたら雑所得で償還差益に総合課税がされますが、途中で売られますとこれはキャピタルゲインは非課税ですからその分は課税されないというようなことで、税制上の差、そこに
アメリカ国内と
日本の税制の差があるというので国際商品として
日本で買われると。これはヨーロッパでもキャピタルゲインを課税していません国々については同じ問題が起きておるわけです。したがって、そういう利回りの面からと、それに関しまして税制上の違いが国際的であるということがこれが売られた
原因であろうと思います。
税制上は今後これに対して適切な対応をいたそうと思っておりますが、いずれにしましても、最後まで持っていてそれが償還されるかという点についてのギャランティーがない、保証がない商品でございますし、途中で売ろうと思いましてもそのマーケットがない、売りたたかれてその値段が崩れる、また為替の円安が今度は円高に進めばそれは損になる、いろいろなむずかしい問題を含んだリスキーな商品であるということを知らずに買ったと。また、売る方もそれをグリーンカード逃れだとか、非常に有利なものであるという売り方をした点も問題であろうと思うのですが、この辺は証券行政の問題として現在指導されておるということで、税制の対応を合わせましてこれは鎮静すべきものであろう、こう思います。
-
○野末陳平君 私はゼロクーポンが確かに異常に売れたのは、グリーンカードを嫌う金が
かなりの部分いったと思うのですよ。というのは、証券会社のセールスの仕方がそうだったからそうだと思うのです。いま大蔵省の
説明にあったような内容をもっと露骨に言うと、要するに節税商品である、税金は大丈夫だし、これを十年たって現金化したときにはもうそれは裏金でも時効になって大丈夫だしとか、とにかくいろいろなことを言った。この辺がやはり裏金がどうも集中したような気がする。これは裏返せば、グリーンカードを利用して証券会社が営業活動に励んだというけれ
ども、やっぱり大蔵省もちゃんとしていないわけですよ。グリーンカード関係のどういう一体宣伝をしていますか。ほとんどしていないような、国民のふところに直接関係のあるような新しい法律で、しかもどんな法律も新しく施行されるときはぎくしゃくいろいろ抵抗もあるわけでしょう。それがわかるのに、やっていないうちに何となく業者にやられちゃったと。この辺が
かなり不安をかき立てた
原因だと思うのですよ。ですから、遅まきながらゼロクーポンには手を打たれたから恐らくグリーンカードを嫌う金は余りこれ以上流れないのじゃないか、もし流れれば高金利で誘われた金は流れる、これはあたりまえだと、そういうふうに思うので、どうでしょう大蔵
大臣、ゼロクーポンあるいは金(きん)その他海外に国民の金(かね)が流出していって経済上問題が起きるというような懸念今後ありやなしや、いかがですか。
-
○
国務大臣(
渡辺美智雄君) 金(きん)が確かに
かなり入った、五千億円ぐらい一年に買われた。そのうち半分ぐらいが隠退蔵用じゃないかと、二千五百億。ゼロクーポンの方も二千五、六百億ですかね、十一億ドルですから。しかし、国民の去年一年間にためた金融資産というのは三十五兆円ぐらいあるわけですから、全体の両方を足してもそれはわずかなものですね、一・四%か幾らか。その程度のことですから、国民経済全体から見れば大きな次元じゃないと私は思っておるんです。特に
日本は金(きん)が少ないから、輸入の拡大にもなって、私は金を買ったからといって別に悪いとは思っておらないわけです。問題は高金利志向、百ドル出せば十年たったら四百ドル、四倍になるなんて言うとそれは乗りますよ、みんな欲があるんだがら。だけれ
ども、それは欲の深い人はひっかかるかもしれない、私は詐欺には同情しません。結局はそのゼロクーポンの会社がつぶれるかどうか、そんなことはだれも保証しないわけですから。ですからそれは、いいところばかり聞いていては、十年たったら金が返ってこなかったということもあるわけですよ。そういうリスクもある。ですから、そういうことをよく知った上で販売してくださいよと、一方的にいいところだけ
説明しちゃって危ないところは黙っちゃうと国民をだましたことになるから、だからそういう点は証券会社に注意をして、そういうことをさせないようにするということを申し上げているわけです。税法上うまい抜け穴を見つけたと思ってもそうはなかなか簡単に問屋は即さないわけです。それは外国との取引の場合は証券会社と契約するわけですから、その契約を洗われれば、莫大な金が動けば出資者はだれかということはわかるわけです。そんなたくさんな数じゃないから。だから、なかなか、ずるいことをやろうと思ってもそうは簡単にいきませんということも事実でございます。大体大した影響はない。
-
○野末陳平君 しかし、ゼロクーポンというのは買うのにも四、五百万円以上なければとりあえず買えないし、
一般の人には縁もゆかりもないというのが実情ですからそれはそれでいいんで、私心配するのは、やはり大多数の国民がこれによって動揺したり、あるいはその結果まずい問題が起きたら困るわけです。その一つに貯蓄性向がこれで衰えてという、こういう不安な見方もされているようなんですね。
そこで大蔵省にお聞きしますけれ
ども、個人の預貯金
状況が最近どうなっているか。特にグリーンカードが決まった前と後とで何か変化があるかとか、その辺の
資料というのはありますかね。
-
○
政府委員(福田幸弘君) 国民の貯蓄性向への影響ということが、グリーンカード制度の実施が決まったのが五十五年でございますから、それの前後でどういうふうに影響があるかということを貯蓄率で見てみますと、五十五年が一九・五でございまして、その前の五十四年、議論されておった五十四年では一八・五、決まってからも一九・五と。これはもう実施を前提にした法律が決まっておりますから、その前提で貯蓄されたということを見ますと、そこに変化がないというのが貯蓄率から出てまいります。
それから、先ほど申しましたように、相当の金額、九百万ないし一千四百万の非課税の枠が今後とも続くわけでございますので、またそれを続けるためにこれをやるわけでありますから、そういう意味でその非課税枠内の貯蓄が影響を受けないというのは当然考えていいと思います。それが乱用されておるという問題から来る影響、これはわれわれはむしろ正確にやるべきだということで考えるべきで、正直な貯蓄の方が影響を受けることはない、貯蓄率全体も動いていないということが言えます。
個人預貯金の伸び率自体を見ますと、五十六年中に一一・四伸びておりまして、これは同年中の賃金の伸びよりもいいわけであります。また、最近の都地銀の個人預金の伸び率は一月一一・八、二月速報で一一・七ということでありますので、この金融機関の個人預金の伸びを見ましても、グリーンカードの問題が金融機関への預金を阻害しておるということは言えないということが読み取れるわけであります。
-
○野末陳平君 貯蓄性向は逆に言えば衰えてもいいかもしれないとも思いますね、ある時期は。貯蓄ばかりに回って消費が減退しても困るわけだし、貯蓄性向の衰えイコール悪ということは言えないので、これはしかしお金は生き物ですから、今後おかしな流れになってきたときに機敏に対処するかどうかということを常に念頭に大蔵省は置いておいてほしいと、そう思うんです。
それで総理にどうしてもお聞きしたいのです。きのう総理はこの制度を予定どおりというお答えであったのですが、何しろ、国会で論議を尽くして成立した法律ですから、実施前にちょっと様子がおかしいといって安易に変えられるというのはこれは見識がなさ過ぎますからね。これは政治不信というか、こういう異例中の異例を勝手にやることは僕は反対なんです。
伝え聞くところによると、自民党の
先生方の中にグリーンカードは見直せだの反対だの廃止という声があるようですが、総理としてはそういうものは抑えるべきだと思いますね。抑えて、要するにそういう廃止を叫ぶ前にグリーンカードに対する正しい理解を、あるいは不安を取り除くようなことを国民に対してするのが政治家の任務だという当然のことをやはり言っていただかないと非常に困るのです。総理の一両があれば多分自民党内の動きもおさまるであろうと期待するわけですよ。改めてそういう動きに対しての総理の御見解をお聞きしたいのです。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 課税の公正確保というような見地から、国会でこういう法律の改正がなされたわけでございます。いろいろ誤解あるいは不安というようなものがあるようなことがあってはいけないわけでありまして、グリーンカード制の採用についてのPRを十分やってもらいたいと、このように考えておりますし、
衆議院及び参議院の
予算委員会等を通じましても、私はせっかくそういう目的で議決をされておるこのグリーンカード制はこれは今後とも政府としてはあくまで実行してまいると、こういうことを明らかにいたしておるわけでございます。
なお、自由民主党の政調会長に対しましては、この問題は慎重にひとつ扱ってもらいたいということもよく指示をいたしております。
-
○野末陳平君 じゃ、大蔵
大臣にだめ押しでもう一つお答えいただきたいのですが、伝え聞くところによると、どうも分離課税をこのまま延長したらどうかとか、グリーンカード実施を二、三年延期したらどうかとかという意見もあるやに聞きますが、こういうことをちょっとやったらもう不公平税制の是正なんというのはもとのもくあみで、まるでほごですね。これだけは、こういうことは絶対にしないという約束をこの場でしてほしいですね。分離課税をいまのままで少しは延長しよう、あるいはグリーンカードの実施も延期しようと。これはしないという約束をお願いできますか。
-
○
国務大臣(
渡辺美智雄君) 九百万円という三つ合わせての非課税の枠を認める以上それが乱用されることは困るわけですから、したがってそれに対する、無税の部分に対するグリーンカードは実行せざるを得ないと私は思いますね。それで、要するに抜け穴、いろいろ知恵をしぼったらいろいろな抜け穴がいっぱいできちゃうのじゃないかとか、それは抜け穴はふさがなければいけない、平等にいかなければいかぬ、そう思っております。
-
○野末陳平君 ですから、それで分離課税を現行のままで延長しようとかグリーンカードの実施の延期とかいう、こういう説は絶対にとらないで、それはしないという約束をしていただきたいと、こう言っているんです。
-
-
○野末陳平君 さて、補助金に入りたいのですけれ
ども、もう時間がないので総理からひとつ基本的なことでお答えをいただいておきたいのです。
補助金の削減というかカットの問題が非常に議論されているけれ
どもなかなか実効が上がらない。これはむずかしいのはよくわかっているのです。しかし私は、補助金をカットしようとなったならば、やはり一番補助金が出ているところがねらい目である。正直言って補助金の聖域御三家、これは農水と文教と福祉ですね。福祉がいかぬとか文教がいかぬとか、そういうことじゃありません。そういう中に時代おくれのものとか行き過ぎのものとかいうものもあるはずだし、しかも総額の大きいところをやらなければ実効は上がらないとこういうふうに考えておりますので、
一般質問のときに具体的に補助金を幾つもやりたいんです。だけれ
ども、基本方針として聖域には手をつけないというようなことではいかないんで、聖域といえ
ども、文教、農水、福祉、これを見直す……
-
-
○野末陳平君 特に総理
大臣は農水の専門家ですからこの基本方針というのを堅持して、今後の
予算編成に取り組んでほしいと思うのですが、いかがですか。それを最後に。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 補助金制度は一定の政策目的を達するためにとってきたものでございますが、御
指摘のように、もうすでにその政策目的はおおむね達したとか、あるいは非常に効率が低いとか、所期の成果を上げていないとか、そういうようなものは、常に時代の推移に即してこの補助金制度というのは見直しを絶えずしなければいけない、こう思っております。そしていま、御三家というような御
指摘がございましたが、そういう分野につきましても聖域というものを私
どもは考えておるわけではございません。各分野にわたりまして補助金制度全体を洗い直しをして適正なものにしてまいる、こういう方針をとってまいりたい、こう思っております。
-
-
-
○
喜屋武眞榮君 私、総括の最後ということになっておりますので、本論に入ります前に注文をつけておきたいことがございます。と申しますのは、これまで一貫して総括のやりとりを聞いておりますが、私の受けとめるところ明快に歯切れよく御回答もございますが、あいまいもことして一体何を意味しておるのか理解に苦しむようなことがたくさん私はあったと受けとめております。ましてや
一般国民大衆が、本当に何を言っておるのかわからぬようなことがたくさんあるのではないか、こう思いますので、私はきょうは政府の基本的な問題を主にして、後に
一般質問が控えておりますので、詳しいことはそのときにいたしたいと思いますが、どうかひとつ国民にわかりやすくはっきりと答えていただきたい、こういうことを注文をつけて申し上げます。
まず第一点は、民主政治の基本的な問題にかかわる公職選挙法の問題についてであります。
いま公職選挙法改正に関して、参議院全国区比例代表制を導入しようというような動きがあるわけでありますが、われわれ第二院クラブのような無所属の個人は全国区に立候補できないような、こういう立場に置かれる心配があるわけなんです。また、有権者も自分の選びたい候補者に面接投票することができなくなるという。そうしますと、参政権の平等を侵害し憲法違反の疑いもあるやに、こういった疑惑もいっぱいあるわけなんです。そこで、全国区への投票は政党にしか結局できない、参議院の存在の意義を問われる重大な問題であると私は思うのであります。私を含めて、二院クラブとしてもこの参議院全国区比例代表制には断固反対をいたすものでございますが、これは二院制の存立にもかかわる重大な問題であると、こう思います。総理の御所見をまず承りたいと思います。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 選挙制度を私
ども考えます場合におきまして、政界の浄化というような点からいたしましても、金のかからない選挙制度、これをまず考えなければならない。さらに、参議院の全国区制度をわれわれ考えます場合に、いまや全国区制度は金がかかり過ぎる。これはかけるからではないかという反論があろうかと思いますが、客観的に見ましても政見あるいは自分の経歴、これを仮に最小限度百万人の有権者にPRをするという場合でも一回六千万円ぐらいのお金がかかる、三回出しますと二億に近い金がかかる、こういうことが言われております。そういうようなことで、この制度の見直しがかねてから各方面から
指摘をされておったところでございます。また一面、全国区に立候補をされましても、大変肉体的にも選挙運動に大変な労力がかかる。全国の有権者に直接お会いになって呼びかけるというようなことも事実上不可能に近いような時間と労力を要することに相なります。また、候補者の人柄なり政見なりをよく吟味して有権者が投票をするということについても、それだけに不徹底な、不十分な面が出てくるわけであります。いま喜屋武さんがおっしゃった無所属におられる方、こういう方はもう本当に特別な方でございまして、新聞その他の面から言っても、もう天下に名の通った有名人であるというような方々、まあそういう方がございますが、私は、百名の議員さんの全国区の皆さんをそういうぐあいにはなかなか考えられない。いま参議院の実情は、政党政治の時代に入っておりまして、実際問題として国政は政党を中心にして政策の立案なり政策の主張なり、あるいは国会における立法活動なり、そういうものが行われておるということも現実でございます。私は、個人の力というものを政党にこれを結集をして、そして能率的な有効な政治活動をおやりになっておるということが、これが今日の姿であろう、こう思うわけでございます。
そういうようなことからいたしまして、この全国区制に対する改善の要求というものに対しまして、各党各会派がいろいろ御
検討をいまいただいておると思います。自由民主党におきましても、憲法上の疑義その他の問題につきましても十分解明をいたしまして、そして御提案を申し上げております。また、社会党さんにおきましても独自の案を策定をされて、これを近く御提示になるということも伺っておるわけでありますが、どうかひとつ、各党各会派の方々がこの全国区制の改正の問題につきまして十分案を出し合い、意見を尽くし、そして御審議をして合意を得られるようにお願いをしたい、このように思っております。
-
○
喜屋武眞榮君 いま総理から金がかかり過ぎるという言葉がありましたが、そういうことをよく聞くのであります。ところが、金はかけない方法もある。法定選挙費用というものが一体何のためにあるのか。もしそれ以上に要るならばその法を改正すればよろしい。それを逸脱してかけるところに問題があるわけなんです。亡くなりました市川房枝
先生、あるいは私の友人の青島幸男議員、山田議員も、金をかけない選挙をして堂々と圧勝しておる事実は何を物語るかということなんです。このことを私は国民大衆も望んでおると心から信じております。そのことを申し上げて次に移ります。
次に、いま国際情勢は米ソの軍拡競争をめぐって果てしないエスカレートを続けておる。ところがその反面、反核の運動の叫びが全地球的な規模をもって燎原の火のようにいま広がりつつある。いわゆるパルメ運動とも言いましょう。こういった情勢の中で、六月の国連軍縮特別総会に向けて全世界の注目をいま集めつつあるわけであります。
ところで、そういう情勢の中で、一方沖縄では、
アメリカ海兵隊の辺野古
基地を中心として陸戦用核兵器の貯蔵、供給、
整備、この部隊があります。万が一核戦争にもなった場合に、最
前線基地であります沖縄は、いままでかなめ石と言われておった沖縄
基地が捨て石に落とされることは、これは火を見るよりも明らかであります。そこで沖縄では、平和をつくる百人
委員会というグループが中心になって、沖縄非核地域宣言決議運動という運動が盛り上がり、この運動は本土の草の根運動として、各組織団体が点から線へ線から面へと、こう広がりつつあることは総理も御存じだと思います。ところで、事もあろうに、世界唯一の被爆国である
日本が、国連の核不使用決議に対して反対票を投じて、
アメリカの対ソ核戦略を積極的に支持しておられる、このことに私は矛盾を感じます。
そこで総理に
伺いたい。核の均衡論や抑止論に立つこれまでの対米従属的核政策を改めなさる用意があるのかないのか、お聞きしたい。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) 本
委員会を通じましてしばしば政府の態度を明白に申し上げておるところでございます。
近年、国際情勢がきわめて厳しいということにつきましては、皆様とともに同じ見地に立っておるわけでありますが、国際の平和と安全を確保していくためには、力の均衡を維持しつつ、その水準をできる限り引き下げていくために、核軍縮を中心とする軍縮の促進の必要がある。そしてそのために努力をしておるわけでございまして、現実の世界の情勢からいたしまして、私
どもはこのような見解をとっていくことがしかるべきである、このように思っておる次第でございます。
-
○
喜屋武眞榮君 いま櫻内外相の見解は聞きました。総理に対して、私の申し上げました核政策を改める用意があるのかないのか。イエスかノーか、答えははっきり言っていただければ結構です。総理に。
-
-
○
喜屋武眞榮君 それでは、沖縄を初めとする非核地域
設置宣言運動が広範囲の反核運動に広がりつつあるわけですが、この運動に対してどのようにこたえていただけるんですか。総理にお尋ねします。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) 喜屋武
委員はよく御
承知のように、わが国は非核三原則を堅持しておるのでございまして、そういう立場からいたしますならば、改めて非核地域の宣言は必要がないものと判断いたします。
-
○
喜屋武眞榮君 どうもこのあたりが、私が冒頭にお聞きしました答えには、「はい」と「いいえ」、あるいは「ノー」と「イエス」しかない、あるいは「できる」「できぬ」「考慮中」、こういったことを明確に言ってもらえば国民も納得すると思うのですが、あいまいもことして一体真意は何なのかと、こう思わせるようなことがいっぱいあるからあえて念を押すわけなんです。私はいままでの御回答に対しては納得いかない点があるわけであります。私は思うのです、いまも話がありましたとおり、平和憲法、非核三原則あるいは世界唯一の被爆国、そうしたとうとうたる反核への世論の波、これにこたえるべく、いまこそ
日本の総理である
鈴木総理は国連の場でリーダーシップをとって立ち上がっていただくべきこの時をおいてないと、そのようなことを私は思うのですが、総理もう一遍そういった意思がありますか、ないですか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 政府といたしましては核の廃絶、これを含むところの核軍縮、軍備管理、この究極の目標に向かいまして、あらゆる努力を重ねてまいる所存でございます。来るべき六月の国連の軍縮総会におきましても、私は出発に当たりまして国民各層各界の御意見も十分拝聴いたします。また各政党の代表にもお日にかかって御意見もちょうだいをして、全国民的な基盤の上に立って、いま申し上げた核廃絶を究極の目標としての核軍縮に最大限の努力を払う決意でございます。
-
○
喜屋武眞榮君 重ねて申し上げます。
国民的
要望にこたえたこういう視野をさらに拡大して、人類の名において平和を望み、戦争に反対し、命を大事にする、この反核の人類のとうとうたる世論にこたえるべく、
鈴木総理
大臣に最高の私は責任を感じていただきたい、こういうことを重ねて
要望申し上げて次に移ります。
次に、
日本は経済大国であると
指摘して、
アメリカ初めヨーロッパ諸国でも、いま
日本に対する非常に大きな不信感と申しますか、欲求不満と申しますか、そういった動きがあるわけでありますが、それで総理に
伺いたい。今日のようにわが国が経済大国、先進国と言われた
アメリカを初め諸外国におきましても、
日本が驚くべき経済大国であると、こう世界的な優位の経済大国になった大きな
原因はどこにあると理解しておられますか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) これは、
日本は非常に小さな国土、資源も貧困である、そして一億一千万に及ぶ多くの人口を抱えておる、そして敗戦後三十余年、いろいろな悪条件を克服をして乗り越えて、今日の世界のGNPの一〇%——一割国家にまでなったということは、何と言っても国民の皆さんの英知とたゆまない努力の結果でございます。私は、この点を深く感謝をいたしておりますと同時に、今後あくまで世界の平和と安定、その中において
日本の平和と繁栄を築いて、そして国民の福祉の向上を確保するために努力をしていかなければならない。私は、
日本の今日あるのは、まさに世界が戦後三十年にわたって平和であったということ、これが一番
日本に与えられた恵まれた条件であったと、このように考えます。今後におきましても、世界の平和と安定の中に
日本の平和と繁栄を求めつつ、平和外交を基調として進めてまいりたいと、こう思っております。
-
○
喜屋武眞榮君 そうしますと、いまの総理の御答弁を集約しますと、結局、戦後の
日本は民生安定に金をかけて防衛に金をかけることを少なくした、それが経済繁栄のあらわれであると、こう理解してよろしゅうございますか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 私は、それだけではないと考えております。各主権国家、独立国家にはそれぞれ国の方針なり政策なりがございます。わが国は国力、国情にふさわしい平和国家としての立場、そういう面から国際の平和と安定に協力しておるわけでございます。ただ、平和を他力本願にゆだねて、それを享受しておるのではない。われわれは、
日本は
日本なりに国際の平和と安定のためにも十分寄与していく。今後もそういうつもりでやってまいるつもりでございます。
-
○
喜屋武眞榮君 そうしますと、総理、いまのお言葉の中にもうかがわれますが、これまでの、またやりとりの中でもたびたび総理の口から漏れましたお言葉の中に、必要最小限度とかあるいは抑止力としてとか、適切な防衛費、こういった言葉が絶えず受けとめられました。
それならばお聞きしますが、総理がおっしゃる必要最小限度というそのめどは、具体的に何を、幾らを指すのですか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) これは御
承知のように、平和憲法のもとに、わが国は経済大国にはなっても軍事大国にはならない、近隣諸国に脅威を与えるような軍事力は持たない、非核三原則を堅持していく、専守防衛に徹する、こういうことを防衛政策の基本に据えておりますことは御
承知のとおりでございます。そういう政策の基本の上に立った防衛力、それを私は申し上げておるところでございます。
-
○
喜屋武眞榮君 軍事大国になるとかならぬとかいうことは、これは相対的なものでありまして、客観的にこうだから
日本は軍事大国ではないという、この物差しがなければいかぬと思います。それを示していただきたい。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 先ほ
ども申し上げましたように、近隣諸国に脅威を与えるような軍事力は持たないと、こういうことを申し上げておる。でありますから、
日本の近隣諸国から見て、
日本の今日保有しておる自衛隊の防衛力が脅威というぐあいに私は映っておるとは思いません。ASEAN諸国も、私は昨年歴訪いたしましたが、いずれの国も
日本の平和的な防衛政策というものを評価をいたしております。
-
○
喜屋武眞榮君 その脅威を与える与えぬということも、これもまた相対的なもので、すでに脅威論も出ておるけれ
ども、逆にソ連の脅威論もあるようでありますが、
日本に対する脅威論もちらほらなきにしもあらずであります。
それはまた後日にいたしまして、そうすると、いまおっしゃった総理のその御見解は、将来とも不動のものとして受けとめてよろしゅうございますか。
-
-
○
喜屋武眞榮君 私は思うんです。これは総理と見解の相違になると思いますがやむを得ません。力の平和はあり得ない、これは軍拡へエスカレートする宿命を持っておる、そして、それは必然戦争へ発展しておる、これは世界の歴史の教えるところでありますということを申し上げて、次に移ります。
次に、先日
アメリカの下院の本会議で、
日本の防衛問題に関する特別審議でオハイオ州選出のレギュラ議員ですか、外二十名そこそこの議員がごもごも発言をしておられるようでありますが、その発言を集約しますと、
日本が防衛に費やすべき費用を経済につき込んだために米国の経済を
日本がしのぐようになったのだと、こういう見解が出ております。いわゆる「安保・防衛ただ乗り論」だと私は思うのであります。
そこでお聞きしたい。総理はこの安保ただ乗り論についてどのようにお考えでしょうか。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君)
日本の防衛は戦後、憲法のもとで自主的にやってまいったわけでございます。その防衛のあり方が
アメリカから見で、ただいま御
指摘のような批判が出る。それは日米安保
体制を結んでおる。
日本の防衛のためには戦後そういう選択をいたしました。また、
日本は一方において専守防衛である、他国に脅威を与えないと、こういうことを世界に誓ってまいっておるわけでございますから、そういうような経緯の上から単純に安保ただ乗り論と言うのは私はいかがなものであるか、敗戦後の
日本自身がどう防衛していくか、それで安保
体制を形成しておると。そういう中に
日本の防衛というものが限られてきておったわけであります。また、国際的にもそういう姿が認められてきたものと思うのであります。それが現在に至りましてからいろいろ批判が出てくるというごとにつきましては、私
どもとしてはそれは批判としては受けとめますけれ
ども、単純にただ乗り論で
日本がけしからぬと、そういうことはいかがかと思うのであります。
-
○
喜屋武眞榮君 ただ乗りどころではない。大きな負担と犠牲を払っておると、こうはお感じになっておりませんか、総理。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) これは安保
体制でございますから、恐らく喜屋武
委員もおっしゃりたいところでございましょうが、この安保
体制の中では
日本は施設を提供しておると、そういう事実がございますから、そういう施設の提供ということは
日本としてはそれなりの負担を負っておると、こういうことは言うまでもございません。
-
-
○
政府委員(
吉野実君) 例として五十六年度の
予算について申し上げますと、駐留軍に係る
予算の数字は千六百二十億ということになっております。これに
基地、国有地を駐留軍のために提供していますから」、それを借料等で換算をいたしますと、いうところの十億ドルという数字になるわけでございます。
-
○
喜屋武眞榮君 いまの程度では納得いたしませんが、これは後にも続きますので……。
過去十年の年次別の防衛費、いわゆる
基地提供の費用の年次別の
資料を求めたいんですが、私がここで確認しておきたいことは、現在程度の、いま報告の程度の負担で
アメリカを納得させることができるのであるかどうか、
防衛庁長官あるいは外務
大臣。
-
○
政府委員(
吉野実君)
日本と
アメリカとのハワイ会談等あるいは
大臣レベルの会談等で、駐留軍の経費の負担を少なくするように努力をいたしてもらいたいという期待があるし、
日本の方もそれについては理解を示しておるわけでございまして、われわれとしてもそういうふうに努力をしてまいりました。
しかし、法律上といいますか条約上の——地位協定ですが、限度がありますので、労務費の負担につきましてはこれ以上項目をふやすというわけにはまいりませんけれ
ども、
アメリカ側が満足するかどうかは別にいたしまして、
基地整備つまり施設の
整備費につきましては、条約といいますか地位協定の範囲の中でできるだけ、しかもわが国の財政をにらみながら努力をしていかなければならないと、こういうふうに考えておるわけであります。
-
○
喜屋武眞榮君 どうも私が気になりますことは、日米の間において安保をめぐっていわゆる防衛費の突出問題がいま重大な問題になっておるわけでありますが、このような情勢の中で果たして今後、防衛費の突出という形の中で、枠の中で
基地提供をめぐる費用がぐんぐん増してくるんじゃないか、こういう懸念がされるからであります。その点に対する
防衛庁長官のきちっとした一つの考え方を示してもらいたい。
-
○
政府委員(
吉野実君) 米軍の方からいろいろ
基地の使用の仕方に頻度を増すとか、あるいは大規模な演習をするとか、そういう
要望も一方にありますし、同時にまた、駐留経費の負担の軽減を求めるというような期待があることは御存じのとおりですが、先ほど来申し上げておりますように、わが方といたしましては地位協定がありますので、その範囲内でやるということでございまして、おのずから限度はあろうかと思います。
-
-
○
国務大臣(
伊藤宗一郎君) いま
政府委員からお答えを申し上げましたように、安保条約その他の関連取り決め、そういう枠の範囲内で、また財政の範囲内、また大事なことはやはり日米安保条約というものの信頼性というものを不断に維持をしていかなければなりませんので、そういうことも念頭に置きながら、また反面、国民の世論というものもしっかり防衛行政の中で取り入れながら、米軍の要求に対しましてはそういう方針で今後臨んでまいりたいと思っております。
-
○
喜屋武眞榮君 最後の金庫は大蔵
大臣が握っておられますので、大蔵
大臣の一つの御意思を聞きたいと思います。
-
○
国務大臣(
渡辺美智雄君) 防衛の問題については、
日本の防衛力の
整備ということについては一挙にはできません。しかしながら、
日本は独立国としてやはり分に応じたある程度のことはやらなければならない。そういうような意味において、一挙にふえるということはありませんが、必要最小限度の防衛力というものは、これは
整備をしていかなければなるまいと考えております。
-
○
喜屋武眞榮君 次に移ります。
鈴木総理はこれまで一貫して政治生命をかけると、こういう厳しい姿勢で、表現を変えれば鳴り物入りで行政改革、財政再建、これを国民に公約された。ところが、次第次第にそれがぼけて、実際には福祉切り捨て、防衛費突出、そして公約違反と、こう厳しく評価せざるを得ません。しかも、沖縄が復帰して十年の節目を迎えます。そして、いち早く
鈴木総理も沖縄を訪ねておられます。五三%の軍事
基地、日米両政府の核戦略の
体制の中では、このような情勢の動きの中から当然見通されることは、この防衛費突出のしわ寄せが具体的に、現実的にあらわれてくるのは沖縄
基地であることは間違いないと私は信じております。
逆に、沖縄の軍事
基地強化政策を緩めれば、やめれば、沖縄県民の民生安定と
日本の平和と安全に寄与するばかりではなく、国民の防衛費負担も軽減することはこれは必然のことであります。いわゆる沖縄問題と言われるこの問題は、日米安保条約の問題であり、防衛問題であるからであります。その意味で、
日本国民全体の問題であると私は思います。
そこで、総理、この点についてどのような御所見をお持ちですか、お
伺いいたします。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 沖縄県が復帰いたしましてから十年になります。私は、その復帰後十年の沖縄の今日の姿、現状をつぶさに視察をしたい、こういうことで先般訪問したわけでございますが、沖縄県民の皆さんの御努力、そして国民の理解のもとに沖縄
開発振興計画も着実に実施されまして、相当おくれておりましたところの公共の施設、その他文教、福祉、各般の施設もだんだん改善
整備が見られておるところでございます。
ただしかし、御
承知のように水資源とそれから電力、これが地勢上の関係もございまして十分でございません。第二次産業が計画どおりに進展をしてないということも事実でございます。本土との間の格差、これもまた十分解消されていないのが実情でございます。そういうようなことから、先般、この沖縄の振興計画というものをさらに十年間延長するということを政府として方針を決めまして国会の御承認をいただいて、今後も具体的にその計画を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
沖縄の本島の
基地が相当広い面積にわたりまして
基地に使用されておるわけでございますが、これは
日本の平和と安全、そして極東の平和確保の上に果たしております役割りというものは非常に大きいわけでございまして、私
どもはこの重要な平和への貢献、役割りを果たしております
地元沖縄の県民の方々の御協力に心から感謝を表しておるところでございます。
-
○
喜屋武眞榮君
鈴木総理も三月十一日の
衆議院沖特委で、それから櫻内外務
大臣は二月二日の
衆議院沖特
委員会で大体同じ意味のことを述べておられます。
それで、お二人に次のことをただしたいと思います。いま総理おっしゃったとおりに、沖縄と本土との格差是正のために努力したい、ところがその次に、日米安保条約の円滑な運用のため、沖縄の
基地は必要であると強調をしておられます。
鈴木総理も櫻内
大臣も、大体同じ意味のことを言っておられます。そこで沖縄復帰の公約は、核抜き本土並みの
基地にするということであった。そして
衆議院本会議で
基地縮小に関する決議が行われたことも思い出していただきたいのでありますが、この二つを寄せ合わせたときに、うらはらを感じてなりません。一体、
基地の重要性、安保の必要性は強調されるが、いまだかつて
日本の総理初め、責任ある人から沖縄に百十万のれっきとした命ある
日本人がおるというこのとらえ方において、百十万県民の生命、財産はだれが、どのように安全に守るのか、このことについていまだかって聞いたことはございません。きょう、このことについて、はっきり
鈴木総理に答えていただきたい。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) 沖縄県民の皆様の生命、安全を確保することは、これは政府の当然の任務であると言わなければなりません。しかしながら、現在、日米安保条約がございまして、その安保条約によってわが国の平和と安全、ひいては極東の平和と安全にその条約が有効に働いておるわけでございます。その安保条約に基づく沖縄県にございます米軍施設区域が、円滑にかつ安定的に使用を確保することはこの安保条約の目的達成の上に必要なことであると思うのであります。恐らく喜屋武
委員のおっしゃりたいことは、そういう
基地のあることによって沖縄県民にいろいろ影響がある、また現実に問題もあると、そういうことから、一体県民の安全、県民の民生というものが十分なのかどうかと、こういうことではないかと思いますが、しかし、私
どもはそういう重要な安保
体制の中における沖縄
基地ということを考え、また戦後の
状況を考えまして、先ほど総理の御
説明もありましたように、沖縄振興の特別措置法を講じながら、また不幸にして問題が起きましたときは、それについて誠心誠意この解決に努力をしておるというそういう
状況にあるわけでございます。
-
-
○
喜屋武眞榮君 十年の締めくくりをして、第一次振が、今度は第二次振にあと十年の基礎づくりに発展するわけでありますが、そこで政府はこの十年間に一兆二千億円余の沖縄振興
開発事業費を投じておりますね。ところが結果は、その格差是正は、結論的に申し上げますと——もう過程を抜きます、失敗に終わっておるということを私は
指摘いたさざるを得ません。失敗に終わっておる。なぜか、第一次振興
開発計画の格差是正の目標は、県民所得は、本土全国平均八〇%の目標がまだ六八・一%にしか達しておらぬ。失業率は、まさに本土の二%に対して二倍半、そして県民の生活の、そして
開発の泉である命の水、この水資源の窮乏、去年の七月から雨降らず、水たまらず、二十時間隔日給水ということがこれは想像もできない地獄のさたと言いたい生活を続けておるのが沖縄の現状である、もはやもう言葉を絶しておるわけであります。まさに人道問題である。為政者は、水を治める者は国を治めるといった、軍国主義では、海を制する者は世界を制するという言葉もあった。ところがその水を、今の水を治めることにさえもまだ手が届かないというところに私は問題があると言わざるを得ません。
そこで、第二次振に向けてということになりますが、結局あらゆる部面から切り囲いていってみたところで突き当たる壁は一つなんですよ。
基地の縮小、整理を強力に施策として実施しない限り、二次振の十年後の結論もまた空振りであるということを私はいまから予言いたしておきたいのであります。その展望は開かれてこないと私は断定いたしたいのであります。
そこで総理に、十年後の沖縄
基地をどうするのか、総理の非常に甘い幻想的なことも聞きようによっては受けるのでありますが、私は十年後の先を見通して、二次振の結論もいまのような情勢ではもうわかるふうな気がするんです。総理、いかがですか。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) 沖縄県における米軍施設区域の整理統合、その実施につきましては、政府としてはでき得る限りの努力を続けてまいっておるつもりでございます。今後ともこの整理統合計画の残余の部分の遂行につきまして、これを県
去る一月八日に三年ぶりで日米安全保障協議
委員会をいたしましたことは御
承知であろうと思いますが、その協議
委員会の四つの議題の中で、この
基地の整理統合を重要な課題として協議を進めたわけでございまして、今後もその努力を続けてまいる考えでございます。
-
○
喜屋武眞榮君 えてして本土の物差しや次元で沖縄を見る嫌いがある。厳しい沖縄の現状を本当に肌で感じ、同じ星のもとに生まれた
日本国民であるという、同じ憲法のもとに平等な権利を享有する沖縄県民であるという、こういう感覚で受けとめていただくとするならば、私は、いかなる美辞麗句を並べるよりもまず事実は何よりの真実だから、行動をもって、態度をもって示していただきたい。
その態度づくりに……。全県士の
基地の実態は一一%、全国平均は〇・四%でしょう。第二位の愛知県が三・七%でしょう。沖縄本島に集中しておる。しかも、市町村単位にすると八〇%の
基地の接収があるのが現状ですよ。残された二〇%にひしめいておる。しかも、そういう情勢の中で
日本全体の五二・六%の
基地が狭い沖縄に面に広がっておる。そして、核抜き本土並み返還、
基地整理縮小のこの公約がほごにされておるとあえて断言したいほど、私は不信感を持たざるを得ません。しかも、返還
基地はいまだに戦後一一・五四%でしょう、返されたパーセントが。しかも、細切れ返還でしょう、跡地利用の計画も立たないような細切れ返還。しかも、復帰の目玉と言われておる那覇空港、伊江島射爆場、これは復帰の目玉になっておったんですよ、それが居座ってそのままになっておるというこの公約違反は何たることだと私は言いたいんです。
そして沖縄の現状は、
基地は機能再編
強化、米軍演習は多く、自然破壊、爆音が激しくなる。演習による山火事は頻発、実弾破片は人家に落下、県道百四号線は封鎖、落下傘降下部隊は
基地の外に落ちておる。照明弾も人家に落下しておる。不発弾処理のその爆風で人家の壁にひびが入っておる。全く戦場さながらと言いたい
状態でしょう。ですから、県民感情はもはや不安感から危機感へ、危機感から恐怖感にとこのようにエスカレートしておるということを御存じでしょうか。こういった沖縄の現状をどう認識しておられるか。私はそのことを、わが身をつねって人の痛さを知れ、わがものと思えば軽し傘の雪、こういった人間的な一つの愛情でとらえるならば、もっともっと、後十年を待たず、同じ星のもとに、同じ平和憲法のもとに喜びも苦しみも悲しみもともにしていけるという、こういう政治がなぜできないのかということを私は言いたいんです。総理、いかがですか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 喜屋武さんの、沖縄における
基地の存在、それから起こるいろいろの事情につきましてお訴えがございました。
私も、沖縄のそういう特殊な事情と
状況下において、復帰後の沖縄の県民の皆さんがどのように復興と再建のために御努力を願っておるか、また沖縄県民の日常の生活ぶりにも接したい、こういうことで、私が復帰後初めて総理として沖縄を訪問して県民の皆さんの生の声を直接お聞き取りをいたしたわけでございます。
私は、
基地をすぐに縮小するとか撤去するとか、そういうようなことが現実の問題として非常にむずかしい事情にございますことを前提といたしまして、いかにして沖縄の
開発振興を図り、県民の所得を向上させ福祉を向上さしていくか、そういうことを国政の責任において推進をしなければならない、このように考えておるわけでございます。今後さらに十年、私
どもは、厳しい財政事情にはございますけれ
ども、沖縄県の置かれておる特殊な事情というものを十分
承知をいたしておりますから、最善の努力をいたしたい、こう考えております。
-
○
喜屋武眞榮君 恵みではなく償いの精神をもって、ひとつ一日も早く、名実ともに格差を完全に是正、解消してもらう努力を
要望いたします。
次に、戦後処理の問題として、私は、いま中国孤児の問題あるいは台湾の
日本軍人軍属の訴訟の問題は心ある
日本国民の胸を痛めておる。実に涙なくしては聞けない、読めないこの実情。私は戦後処理の問題に対しては
昭和四十五年国会に初参加以来、一貫して訴え続けてきておる一人でありますが、常に私はこう言っておるんです。なぜこのような異常なことが起こったか——これは自損行為は別ですよ、なぜこのような異常な事態が起こったのか。それは戦争という悪魔がしでかしたことである、その戦争はだれが一体やらかしたのか、それは国がやったのである、ならば一切のその補償の責任は国にあるのだと、こういう論法で私は迫っておりますが、私のこの考え方は当たっておりますか、間違いですか、総理ひとつ判断を下していただきたいと思います。
-
○国書
大臣(
鈴木善幸君) 戦争の惨禍は私も身をもって体験をした一人でございます。二度と戦争というようなことを繰り返してはならない、こういう気持ちで
日本国民は平和憲法のもとに努力を今日まで続けておるところでございますが、そういう中で、戦争の直接的な犠牲者の方々に対する救済あるいは援護、補償、そういう措置につきましてはできるだけのことを今日までやってまいったわけでございます。戦争の犠牲を受けた者、これは国民ほとんど全部でございますが、その国民が直接被害を受けた方々に対してみんなで戦後の苦しい中から今日まで努力をしてきたと、こういうことでございます。私は、今日までの努力によっておおむねそういう面における戦後処理というものは終わったと、このように考えております。
-
○
喜屋武眞榮君 どうも回答がぴんときませんが、これはまた後日に譲ります。
そこで、私は戦後処理の国内、国外を結んで、いわゆる戦争という悪魔の引き起こしたもろもろの問題を含めて、厚生省あるいは総理府あるいは外務省、法務省、
開発庁といろいろそれぞれ問題を抱えておられると思うのですが、ところが一つ一つについてきょうここでやりとりする時間がありませんので、まず厚生省、中国孤児の問題、総理府、台湾人の元軍人、軍属に対する問題、それから外務、法務、サハリンの韓国人の帰還問題、それから朝鮮原爆被爆者の救援の問題、在外資産補償の問題、この問題についてそれぞれの関係省、現時点でどう取り組んでおられるか御回答願いたい。
-
○
国務大臣(森下
元晴君) 中国残留孤児の問題につきましては、テレビほか報道機関を通じまして全国民心から感動を覚え、また同情の気持ちを禁じ得なかったわけでございます。そういうことで、厚生省といたしましては、総理
大臣の御指示もございまして、孤児の肉親捜しにつきましてはこれら孤児の積年の願いでもあり、また肉親や関係者などの高齢化をも考慮いたしまして、早期解決を図らなければならないと考えております。また、これら孤児が中国から帰国した場合には、一日も早く
日本の社会生活に溶け込んで幸せな日常生活が営まれるよう、援護施策の充実を図ってまいりたいと考えております。これまでこれらの問題の解決に努力を重ねてまいりましたが、近く中国残留
日本人孤児問題懇談会を開催して、広く有識者の意見を聞きながら早期解決のための具体的方策について
検討を進めたい。
なお、この月の二十二日に厚生省事務次官を北京に派遣いたしまして、孤児に対する御礼、また今後のお願いに派遣する予定でございます。
以上でございます。
-
○
国務大臣(田邉國男君) お答えをいたします。
いま戦後処理の問題に関連しまして台湾人の旧
日本兵士の救済問題等のお尋ねがございました。戦後処理の問題につきましてどう考えるべきか、これを
検討するために私の諮問機関として懇談会を設けることにいたしております。その中でいろいろな問題が提起されると思いますが、求められればいろいろ御
説明をいたしたいと思います。しかし、私
どもからこれとこれが問題であると、こういうようなことを申し上げることは適当ではない、大変に困難な問題ではございますけれ
ども、慎重に対処をしてまいりたい、かように考えております。
-
○
国務大臣(櫻内義雄君) 私にはサハリン在住韓国人に対する問題のお尋ねであったと思います。この問題は本
委員会でも取り上げられておりますが、まことに遺憾なことに、ソ連政府に対し帰還希望者の実情調査などを依頼しておりますが、ソ連政府はこういう問題は
日本と話し合う問題でないという立場をとり続けておるわけであります。現在までにソ連、わが方公館を通じて帰還の申請を行った者が百三十七世帯四百三十八名ございます。わが国が入国を許可いたしたのでありますが、現実にはほとんど帰還しておりません。そこでこの申請の行われた者につきましてはソ連から出国ができるようソ連政府の理解と協力を求めておるという実情でございます。
-
-
○
国務大臣(坂田
道太君) 中国残留
日本人孤児は、仮に中国側から中国人として把握されていたとしても、ほとんどの場合は
日本国籍を喪失していないというふうに思われますので、
日本人の親が見つかれば出生胴により、
日本人の親が見つからなければ家庭裁判所による就籍の審判によりまして戸籍をつくるということに相なるわけでございます。また、仮に
日本人の親も見つからずまた立証がなかなか十分できないというために就籍も認められなかったといたしましても、孤児証明が、そうして養い親等の供述によりまして少なくとも片親が
日本人であると推認される孤児につきましては、
日本人の子に準じて帰化で処理をするということも
検討いたしたいと。この帰化につきましてはできる限りの配慮をいたすつもりでおります。
-
○
政府委員(
海老原義彦君) 在外財産、引揚者の問題について御
説明申し上げます。
在外財産問題につきまして、第三次の在外財産問題審議会答申がございましたのが
昭和四十一年でございます。この答申では、在外財産の喪失について国に法律的な補償義務はないということをまず申しまして、しかし政策的な配慮に基づく特別措置として、引揚者に特別交付金を支給することによって在外財産問題に終止符を打つことが適切であるという答申でございました。この趣旨にのっとりまして、
昭和四十二年の六月に、引揚者等に対して特別交付金の支給措置を講ずるということ、またこのことによってこの問題の最終的な解決を図るということを閣議決定いたしております。引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律がこの年できました。この法律に従って措置してまいったところでございます。したがって、政府といたしましては、引揚者に対する措置は完全に終了したものと考えておる次第でございます。
なお、いま審議会の答申で申しましたところの在外財産の喪失について国に法律上の補償義務がないということにつきましては、最高裁判所の判決でも支持されているところでございます。
-
○
喜屋武眞榮君 いまの在外財産の問題を議員立法で推進することに、その方向に動きつつあるわけであり、私もその一人でありますが、要するにいままで答えていただいたすべてをまとめて私申し上げたいことは、法的にどうあれ、道義的立場からもまた経済大国
日本というメンツからも、私は許せない、ほっておけない問題であると、こう思うのです。しかもこの受益者は、関係者はもう老齢化して、戦後三十七年、老齢化して、そのことを思い詰めつつ病に倒れあるいは物故し、そしていま期待しておるという、こういう
状況であります。一日も早く速やかに解決してもらいたい。
そこで総理に提案したい。このように多岐にわたっておりますというとなかなかどこが窓口であるか、責任のなすり合いがあったり、あるいは受けとめ方が、熱意が、距離が遠くなったりして、こういったいろいろとなかなか問題がまとまって前進しない。こういううらみがありますので、私は、そういったすべての問題を含めて戦後処理の問題という枠でそれを取り上げて研究、討議し、話し合う、その窓口一本化をしてほしいと、こういうことを提案いたしたいのですが、総理いかがですか。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 喜屋武さんから御提起がございましたそれぞれの案件につきましては、所管
大臣から先ほど御答弁を申し上げましたように、従来からいろいろいきさつのある問題でございます。担当省庁におきましては、多年のそういう経緯、
資料等を踏まえていろいろ研究をいたし、また必要に応じて関係各省庁とも連絡をとり協議をしておると、こういうことでやっておるわけでありまして、行政改革の折でもございまして、新たに一つの窓口を設けるというようなことは考えておりません。
-
○
喜屋武眞榮君 要は、いずれにしても速やかに解決していただく。特に私は戦争体験生き残りという立場から、戦後処理の問題を聞くにつけ、しかも中国孤児の問題を中心に聞くにつけ、読むにつけ胸痛むのです。そういう気持ちから切実に訴えるのです。
そこで、時間も参りましたので、私は最後に総理に
要望いたして終わりたいと思います。
総括質問を通じて感じた点を率直に言わしていただくならば、第一に、二十一世紀に向けての
日本の明るい展望というよりも、鉛のように暗く、重く、
日本の将来は一体どうなるであろうかという不安と危機感に閉ざされておるということが私の実感であります。綱紀の乱れといい、政官業の癒着といい、まさに乱脈そのものだ。
鈴木総理が和の精神をモットーとし……
-
-
○
喜屋武眞榮君 政治生命をかけると言われた行革と財政再建も日暮れて道遠しの感を抱くものであります。総理の所見を伺って私の質問を終わります。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 喜屋武
先生の憂国の至情は私もよく理解するところでございます。御意見として拝聴しておきます。
-
-
○
委員長(
植木光教君) 次に、一昨日保留されました山田譲君の質疑を行います。山田君。
-
○山田譲君 この前、防衛費に関連しまして、国庫債務負担行為、継続費、これにつきまして一体どういうものを国庫債務負担行為でやるのだ、あるいはどういうものを継続費でやる、こういった具体的な
基準を示していただくようにと、こういうことをお願いしました。そうしましたら、いまお手元に渡っていると思いますが、こういったものが出てまいりまして、これはどういうものが国庫債務負担行為であり、どういうことを継続費というかという解釈は
かなりこれで明確になったわけであります。しかし、私が実際に聞きたいのは、この解釈だけじゃなくて、この解釈を前提として具体的に防衛費あるいは軍艦をつくるあるいは戦車を買うというふうな場合についての歯どめ的なものとしての
基準が何か必要じゃないか、それを示してほしいというふうにお願いをしたわけでございます。しかし、もう時間もありませんから、ここで、この前の繰り返しになりますけれ
ども、継続費というものの制度ができないきさつからしても、これは本来的に軍備に使うべきではないと大蔵
大臣池田さんも言っておりますように、これはあくまでも関門トンネルであるとか大ダムであるとかというものをつくるときにこれを使うのですと、こういうことを再三繰り返し言っておられます。
-
-
○山田譲君 はい。
現に、そういうことにつきまして、ひとつ防衛費——今後、国庫債務負担行為なり継続費でもって軍備を、物を買うときに一体どういう考え方でこれでいこうとしておるか、その考え方をはっきりとお示しをいただきたいと思うのです。これは全体的にまたがる問題でありますから、総理
大臣にひとつお願いしたいと思います。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) 継続費、国庫債務負担行為、これを防衛費に使うということについては、過去の経緯からいって、この取り扱いは慎重にすべきではないかという御趣旨のことと拝聴したわけでありますが、私
どもも、この継続費なりあるいは債務負担行為ということによりまして、防衛
予算が後年度にわたってこれが膨張していく、そういうようなことはどうしてもこれは避けなければいけない。節度を持ってこれをやらなければならない。
ただ、るる御
説明を申し上げましたように、継続的に数年間にわたってやらなければならないものもございます。そういう点はひとつ御理解をいただきたいと思いますが、いま申し上げましたように節度を持ってやってまいるということを申し上げておきたいと思います。
-
○山田譲君 終わります。(拍手)
-
-
○
委員長(
植木光教君) 次に、昨日保留されました矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
-
○矢田部理君 まず
防衛庁から
説明をいただきたいと思います。
-
○
政府委員(和田裕君) きのう御質問のありましたF4EJ改修経費のうち改修用搭載品経費につきまして御
説明申し上げます。
一、F4EJ改修搭載品経費約五十七億円の内訳は次のとおりでございます。
初度改修費約二十五億円、搭載品費、二セット分でございますが、二セット分約二十五億円、支援器材費約七億円。その御
説明若干いたしますと、第一に初度改修費とは、他機種の搭載品をF4EJに搭載するための形状変更、各機器間の連接等のために要する改修設計費、試験費等でございます。それから搭載品の二セット分は、
航空機搭載用と地上試験用各一セットずつでございます。それから上記経費のうち、初度改修費約二十五億円及び支援器材費約七億円は量産のときには発生しないと、そういったたぐいの経費でございます。
二、搭載品費ワンセット分の経費に占める機器別の割合はおおむね次のとおりでございます。
(1)レーダー約七〇%、(2)レーダーディスプレー約三%、(3)ヘッドアップディスプレー、HUDと言っておりますヘッドアップディスプレー約五%、(4)セントラルコンピューター約三%、(5)慣性航法装置、普通INSと言っているものでございます。慣性航法装置約五%、(6)その他といたしまして約一四%ということでございます。
なお、FCS、ファイヤーコントロールシステムといいますか、射撃管制装置はいま申し上げたうち(1)レーダーと(2)のレーダーディスプレーにかかりますので、合計いたしますと約七三%になると、こういった
状況でございます。
また御質問がありましたら後で御質問に応じたいと思います。
-
○矢田部理君 きのうの私の要求にこたえた
資料ではないわけでありますが、この二の搭載品賢一セット分の経費、割合ではなくて金額で出してください。
-
○
政府委員(和田裕君) 昨日も申し上げたことでございますが、こういった個別の品目につきまして具体的な金額をお出しするということは、これから御
予算を認めていただいた後でメーカーの方等と商議、商談といいますか、それを行うわけでございますが、こういった
予算の積算の根拠といいますものは、これから私
どもの調達実施本部がつくりますところの予定価格の一つのベースになる、そういったものでございますので、いわば予定価格を、これを申し上げますと予定価格を申し上げることにつながることでございますので、そういったことは——他の装備品の場合もそうでございますが、遠慮さしていただきたいと、そういうふうに考えております。
-
○矢田部理君 余りいいかげんなことを言ってもらっちゃ困るんですよ。二十五億円かかる。その約七〇%だったらおのずから算術計算で出るじゃありませんか。わかりやすくするためにそう言っている。
-
○
政府委員(和田裕君) パーセンテージで御
説明さしていただきましたのは、実は具体的な金額を出すことにつきましては、さっき申し上げましたような非常に制約要因がございますために私
どもとしてぎりぎりの努力をいたしまして、約このくらいの割合であるということであらわさしていただいたわけでございますから、何とぞその点につきましては御了承をお願いいただきたいと思っております。
-
○矢田部理君 数字を出してください。
-
○
政府委員(和田裕君) 先ほど来申し上げておりますように、そういった装備品の個々の中身を申し上げるということになりますと、どうしてもこれからの、私
どもなるべく安く買いたいというふうに思っておりまして、そのために厳密な原価の積算をいたします。それで予定価格というものをつくりまして、それをふところにいたしましてそれで交渉するわけでございます。そういうこともございますので、そういった中身を教えてしまいますと、どうしても業者の方といたしましてはそういったような価格以下でおりるということは非常にむずかしくなります。そういったような事情にございますので、そういったことにつきましてはぜひとも私
ども国損、そういうことを申し上げますといわば国損を与えるということにもつながりかねないということがございますので、その点につきましては御容赦を願いたい、そういうふうに考えております。
-
○矢田部理君 余りこの同じ問題をめんどうなことにしないでほしいんです。二十五億の約七〇%ということになれば十七億五千万円。二セット分ならば八億七千五百万円なんでありまして、私のきのうの議論とのかみ合わせをするために数字を出してくださいと言っているだけの話です。いいから出してください。
-
○
政府委員(和田裕君) 私
どもの方から数字を申し上げまして、いまおっしゃいましたように何億何千何百万円というようなことになりますと、まさに私
どもはそういったことは申し上げるべきでないという立場に立っております。ただ大体の割合でこういうことを申し上げて、それによって
先生がある数字を積算されて、それによって御質問されるということでありましたならば、おおよその、大体の何といいますか、めどとしてそれでも議論はできると思いますので、私
どもはその細かい、これに単純にいま申し上げましたようなこのパーセンテージをもとの二十五億円にお掛けになりましてやった数字につきまして、私
どもはこの場で肯定することはできませんけれ
ども、しかし、御議論には十分参両できるのじゃないか、御質問には十分お答えできるのではないか、そういうふうに考えております。
-
○矢田部理君 行ったり来たりした質問はしたくないのでありますが、総体の金額出してその何%だということになれば、その掛け算の答えは出さないというばかなことはないのであります。そのくらいのことは出したっていいじゃありませんか。
-
○
政府委員(和田裕君) 私
どもの申し上げておりますのはあくまで約でございまして、約三%と言った場合に、それがあるいは三・何%であるか、あるいは二・何%であるか、それは申し上げてないわけでございます。そこまで申し上げるべきでないというのが私
どもの立場でございますので、その点につきましては、理由は繰り返して申し上げませんけれ
ども、それ以上申し上げますと予定価格をいわば申し上げるというようなことでございまして、私
どもこの席におりまして、かねてから談合の話等で予定価格を教えるということになって非常にこの点につきましていろいろ問題になっているというふうに
承知している折でもございますので、ぜひともその点につきましては御理解を賜りたいと、こう思っております。
-
○矢田部理君 単価を厳密に出せなどと言っていません。パーセンテージを約で出したら、単価も約で出しなさい。
-
○
政府委員(和田裕君) 個別的な単価につきましては、これは出しますことは国損に通ずるということにつきましては、もうるる申し上げました。
三%というふうに、私
ども約三%と申し上げております。約三%というのは、たとえば二・七%かもしれませず、三・三%かもしれません。そういうことになりますと、幅といたしましては二割ぐらいの幅が実はあるわけでございます。そういうことを私
ども余り言う立場にございませんけれ
ども、強いて詰められますとそういうことになるわけでございまして、われわれとしては商議に悪い影響を与えないある幅のぎりぎりのところで
先生の御質問にもお答えするように誠心誠意
資料を出したつもりでございますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
-
○矢田部理君 いまの答えじゃだめですよ。
-
-
-
○
政府委員(和田裕君) たっての御要請でございますので、約二%ということでございますので、その三%を単純に頭の二十五億にいわば掛けさせていただきまして、計算機のかわりを務めるという意味で掛けさせていただきまして、その数字を申し上げますが、ただそれにたまたま百万円とか五十万円という端数がついておりましても、それは頭に約というのがかかってきて、それで計算したと、こういう意味であるということを御了解いただけるという前提でいま計算をさしていただきます。
搭載品費二セット分でございますので、一セットで計算した数字がたまたま手元に——一セットで計算いたしました。その結果二十五億を二で割りますと十二億五千万円になります。これに七〇%を掛けますと八億七千五百万円になります。それから三%を描けますと三千七百五十万円になります。同じように五%につきましては六千二百五十万円になる。最後にその他が一四%でございますが、一四%を掛けますと一億七千五百万円になると、こういうことに一応計算上はなりますが、これはいずれも三%というものを単純に計算したということでございますので、そのように御理解いただきたいということでございます。
-
○矢田部理君 簡単にやってもらえばどんどん進むんですが、この金額は約で結構なんでありますが、本来の量産価格プラス特注価格が入っているようにうかがわれるわけですが、その量産価格が幾らで、特注価格がどのぐらいかということを御
説明ください。
-
○
政府委員(和田裕君) 量産につきましては、まさに試改修をこれから
予算でいま審議をお願いしているところでございまして、これからの問題でございます。したがいまして、これにつきましては私
どもでごく大まかな現時点におけるめどしかないということでございます。これは実際には価格というものは、
先生もよく御存じかと思いますが、実際に本当に買うという段階になりまして本当に交渉のテーブルを挟みまして、そこでいろいろな条件を設定いたしまして、その上でいろいろ交渉といいますか、折衝といいますか、そういうものをしませんと出ないものでございますし、またその上にそういうことでいろいろな数字をはじき出した上におきましても、また
防衛庁内部、また大蔵省の方に御相談するような場合、いろいろその手続もございますので、そういったようなことがまだ全くいまの段階ではそういう段階になっておらないということでございますので、量産価格についてはちょっと申し上げるのはいかがかというふうに思っております。ただいまの特注価格ということにつきましては、仮に七〇%を掛けますと八億七千五百万円になるということで申し上げた、その数字の前後であるというふうに御推察いただけると思います。
-
○矢田部理君 同じ質問を繰り返したくないのですがね、もともとの値段があるわけでしょう、それに特注するわけですからある程度のプラスがつくと、もともとの値段は幾らぐらいに踏んでいるのかと聞いているんです。
-
○
政府委員(和田裕君) このレーダーにつきましての御質問でございますが、これはF16に採用されておりますレーダーでございますが、F16につきましては、私
どもこれは
昭和五十一年当時に
検討はいたしましたけれ
ども、結局F15を買うことにしたということになっておりますので、そういった関係で、その中身につきまして詳しくその積算内容を聞くという機会に恵まれておりません。したがいまして、現在私
どもが入手しておりますところの一応基礎にしておりますのは、もともとのF16のレーダーのAPG66に、こういったF4の試改修ということを踏まえまして、試改修に必要な改修といいますか、改修設計でございますね、そういったような改修設計費、そういったものを入れまして、それで向こうから基礎になるデータをとり、それを精査の上決めていると、こういうことでございますので、いわば裸のAPG66が幾らかということにつきましては数字を持ち合わせておりません。
-
○矢田部理君 もとの値段がわからずに特注の値段がわかるという話はないでしょう。
-
○
政府委員(和田裕君) 確かに
先生おっしゃいますように、メーカーの方はもともとの価格は御存じかと思いますけれ
ども、いわばそれは製造原価であるということで、必ずしも販売の価格になるかどうか別にいたしまして、そういう製造原価はお持ちだと思いますが、私
どもは実際に向こうから買いますのは、こういうようなF4の目的のためにAPG66に所定の改造といいますか改修を加えたものを向こうから特注品として二セット買うという前提でございますから、それにつきまして向こう側から大体の価格
資料等を取り寄せ、それに妥当な精査を加えましてある価格、先ほど申しましたような単純な価格をいまつかんでいると、こういうことでございます。
-
-
-
○
政府委員(和田裕君) 先ほど来るる申し上げておりますように、私
どもが試改修のために購入いたしますレーダーはこれはいわば特注品でございまして、特別のものを買ってくるわけでございます。その際に、
一般の値段がわからないか、こういう御質問でございますが、こういった原価というものはこれはメーカーの方としてはいわば非常に大きな企業上の秘密といいますか、大変企業として大事にしなければいけないものでございますから、私
どもはAPG66を裸で買うということを言えば向こうはあるいは教えるかと思いますけれ
ども、しかし、そういうことを私
ども言える立場にございません。たとえばF15につきましては、それは確かに私
どもはいろいろ買っておりますから、それについての内容は分析しておりますけれ
ども、F16というのはもともと全体としてはわれわれが採用しなかったそういう機種でもございますし、それのレーダーにつきまして私
どもが買うのは特注品でございますから、向こうのメーカーとしてはその特注品の価格について値段を言い、
説明をすればそれで十分だと考えるのは私は根拠があるというふうに考えております。
-
○矢田部理君 なぜ私がそういうことを聞くかというと、きのう私が伺ったときには、五十四年のF15の価格、これは五十四年の三月三十日契約でありますから五十三年度価格と言ってもいいでしょうが、それは私が申し上げた数値がおおむねそのとおりだというふうに答えているわけですよ。ところが、それとの比較で見ますと、たとえばこのFCSについては、F15の関係で言えば八割アップしているのですね、金額的に。それからヘッドアップディスプレーこれは二割強アップです。これはわからないわけではないんですが、セントラルコンピューターは七割アップ、慣性航法装置に至っては八倍以上の値段の数値を示しているのですよ。おかしいじゃないかと。大体あの計算の根拠が過大見積もりじゃないかということを
指摘したいわけなんでありますが、その点が非常に疑問だから実は聞いているわけです。
-
○
政府委員(和田裕君) きのう御質問がございましたのは、F15の、
先生たちが五十四年度とおっしゃったかと思いますが、それの価格について四億六千万ではないかというお尋ねがございまして、それに対しまして私の方は大体五、六億円というふうに申し上げた次第でございます。それは速記録に載っているかと存じます。いまの御質問の関連で恐らく言われておるのは、それではF15の五十七年度価格がどうかという御趣旨ではないかと思います。何となれば、F4につきましてはるる申し上げますように、今度特注品を初めて買わせていただくということでもございますし、それからF4の量産につきましては今後の問題でございますから、正確な価格についてはまだ申し上げられる立場にないということは御
説明したわけでございます。したがいまして、F15の問題だと思いますので、特に御質問ございましたので、
一般的には個々の機材について数字を申し上げるのは控えさしていただきたいと思いますけれ
ども、特に値上がり等の関連で御質問ございましたので、レーダーについて申し上げますと、五十三年度価格は約五億円でございます。五十五年度価格が約六億円、それから五十七年度価格について言いますと約九億円というようなことでございます。
それから、御質問にあるいはなかったかと思いますが、この五十七年度の約九億円というのとそれからF4試改修のレーダー、さっき申しました八億七千五百万円と、これがいわば比較される金額でございます。
-
○矢田部理君 F15の価格がたまたま出ましたけれ
ども、五十三年、四年の段階では五億前後の金額が九億にもなっているわけですよ。九億強になっているのですよ。慣性航法装置は七百六十万円だ。それがF15より安いと言っているのが今度は六千二百五十万円、一けた違うのですよ、八倍以上。これはどんな計算からこういうことが出てくるのかというのが全く納得がいかないのです。
-
○
政府委員(和田裕君) 価格の値上がりの要因についてのお尋ねでございますが、基本的にはこれはこういったレーダー類につきましては、
アメリカからの技術の開示というのが必ずしも十分に行われてないとわれわれ考えている品物に属するものでございまして、したがいまして、国産能率が必ずしも高こうございません。多くの部分を輸入していると、こういう
状況になっております。したがいまして、
アメリカのいま大変なインフレというものを背景にいたしまして、
アメリカから買ってくる物は非常にいま上がっていること、これはほかの席でも御
説明済みでございますが、こういった背景で上がって
一般的に
アメリカのものの部品、材料の値上がりというものを反映している、これがまず第一点でございます。そのほかに製造会社におきますところの生産規模が低下しているというようなこととか、生産のリードタイムというものが長期化して、それによりまして加工費が増加しているとか、それからレーダー関係の技術者、熟練工というものが不足いたしまして、それによりまして賃金が上昇していると、こういうようなことで値上がりしているというふうに
承知しております。
なお、
先生が慣性航法装置につきまして約十倍とおっしゃいましたでしょうか、大変値上がりしているということでございますが、私
どもの持っております数字によりますと、五十二年のF15の慣性航法装置と五十七年度のそれとを割合で申し上げますと、値上がり率は約五〇%と、こういうことでございまして、決して十倍とかそういうような大きな数字ではございません。
-
○矢田部理君 どうも答弁の数値がきのうときょうとでまた違うんですね。きのう私は七百五十九万円、約七百六十万円という数字で申し上げたらおおむねそのとおりだと、今度、きょうの出した慣性航法装置の値段は先ほどのパーセンテージで言うと六千二百五十万円、五〇%なんていうものじゃないんです。きのうはおおむねそのとおりだと言っておりながら、きょうはまた別の数字を出す。これじゃちょっとこの論議は話になりませんのでね、数字の問題ですから。きのうの議事録ときょうの答弁と私の問題提起をもう一回整合性を明確にして、どこが違うのか、どこがおかしいのかを明らかにしてしれは質問をしないと、混線するだけで問題点が明確になりませんよ、これでは。その日その日で違うわけですから。
-
○
政府委員(和田裕君) 私、
先生がおっしゃったことを正確に聞いたつもりでございますし、またほかの場でもこういったレーダー以外のものについて御
説明いたしました。これについて私たしか二度申し上げたと思いますが、こういった搭載機器につきましてはレーダーが非常に大きな割合を占めているのだということを二度以上私は言ったと記憶しております。一度はたしか大半と言いましたか七割と言いましたか、そういう言い方をいたしましたし、一度はこれは大きな目玉であるということを言っております。それからまた、セントラルコンピューターとか慣性航法装置については数千万円のオーダーで、私は概数で申し上げたというふうに記憶しております。したがいまして、
先生がおっしゃいましたように、それがこういったものが何億円のオーダーであるというようなことについて私は肯定した記憶はございません。
-
○矢田部理君 これは議事録をとった上で明確にして、もう一度これは質問をし直したいと思います。したがって、経費の問題については少しく質問を留保いたしますが、私が問題点として出したいのは、もともと
予算書を見ても試改修費というのは出てこない。実際洗い出して十三億とか八十五億というものが出てきたら、その積算根拠すら明確でない。こういうことで改修が行われたりいろんな
航空機が買われたりということになったのでは、一体軍事
予算とは何なのかということを改めて問い直したいために一つは申し上げた。それから、こんなことで大変重要な試改修が隠密裏にやられたらたまったものじゃないということがもう一つの実は問題点なのでありまして、いずれにしましても数値についてはきのう言ったことときょう言ったことが違う。私の方に
防衛庁が何度か
説明をしてきたことが幾つかあります。たとえば五十七億のうち二十五億はもともとのレーダーとかセントラルコンピューターの値段ですと、それを合わせると二十五億になります、二セット分で。後の二十五億はそれを特注品にするための値段だと、こういうふうに
説明しておったのでありますが、今度は違ってきまして、
最初の二十五億の中に特注価格も入っておると。後の二十五億は何かということになると初度改修費だと。初度改修費というのは何かということになると、ここでも幾つかまだ問題点があるわけでありますが、ここの(注1)に
説明されているような
説明になる。これもどうも二重計上の疑いが幾つかあるわけでありまして、いずれにいたしましても、もう少し数字を整理をして改めてこの問題は追及をしていきたいというふうに考えております。この試改修
予算の内訳の問題はきょうはこの程度で質問を一応終わりまして、後の問題点、内容等については留保をして次に進みたいと思います。
前日も若干触れてきたわけでありますが、F4改修のねらいということについて伺っていきたいと思いますが、F4ファントムというのはもともと艦載機です。そして戦闘爆撃機として
アメリカで
開発をされたものというふうに
承知しておるわけでありますが、その点はよろしいでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) 戦闘爆撃機という名称ではなくて、
一般的に多用途機といわれる範疇に属するものであるというふうに理解しております。戦闘機でありますけれ
ども多用途機というふうに言われております。
-
○矢田部理君 これは議事録によって、少し混線している部分もありますが、要するに爆撃機能を非常に備えた飛行機として
開発をされたというふうに伺ってよろしいでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) 戦闘機の中で爆撃機能が比較的重視された飛行機であることは御
指摘のとおりであります。
-
○矢田部理君 ところが、
日本では爆撃機能の高いものを持つことは問題があるということで、要撃
能力に着目をして、言うならば爆撃機能をずっと減殺をして、いわば要撃機として採用をしたというのが事の経過だろうと思いますが、そのとおりでよろしいでしょうか。
-
-
○矢田部理君 このたびの試改修で一たん落とした爆撃機能を、言うならば爆撃装置の復活ということで試改修を行うとすれば、従来のやっぱり爆撃機能を重視した飛行機になるというふうにとれるわけでありますが、戻しのとおりでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) 一たん落とした爆撃機能を復活すればというお尋ねでございますが、しばしば申し上げておりますように、爆撃装置を落とした後の現在のF4が、パイロットの目視によるところの水平爆撃なり降下爆撃ができるというのをコンピューターの計算によってできるようになるという意味においては、今回の試改修によってそういう爆撃機能が付加されますけれ
ども、それはあくまでも限定的なものでございまして、落とす前のといいますか、原型機であるF4の機能とは大幅に異なっておりまして、そのことをもって直ちにもとの多用途機に戻るというふうには私
どもは考えていないわけです。
-
○矢田部理君 もとのF4は爆撃機能といわば要撃機能と両方持っておった、別々に機器を備えておったという点ではそのとおりかもしれませんけれ
ども、今度のセントラルコンピューターあるいはFCS等を備えると、一つの機器で両方の機能を持つということにはなるわけでありますけれ
ども、結局やっぱり爆撃機能の復活という点では従来と同じことになるのじゃありませんか。
-
○
政府委員(塩田章君) 結局もとのF4が一体何を落としたかと、今度一体何をつけようとしておるのかということになるわけでありますが、繰り返して言うようでございますけれ
ども、もとのF4の原型機から何を落としたかといいますと、一つは核爆撃装置を落とした、これは御
承知のとおりでございます。それから二つは、ブルパップという対地誘導弾攻撃の装置を落としたということ、それから専用の爆撃計算装置を落としたということでございます。そのうちの今度復活といいますか、今度の試改修によってつくことになりますものは最後に申し上げました爆撃計算機能のうち、同じものをつけるわけではありませんけれ
ども、今度はF15と同じものをつけるわけですが、F15と同じものを、コンピューターをつけることによって第三番目の爆撃計算機能のうち先ほ
ども申し上げました水平爆撃なり降下爆撃の際に使える——爆撃で使えるといいますか、その際の爆撃計算を今度のセントラルコンピューターがすることになるということでございまして、きのうも御
説明いたしましたが、三つの爆撃形態のうちのトス爆撃につきましては今後ともできないということでございまして、その点はもとのファントムとやはり異なるというふうに御理解賜りたいと思います。
-
○矢田部理君 F4の本来持っておった爆撃機能とF15が持っている爆撃機能とを比較すると、どちらが精度その他が高いでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) お尋ねはF4の原型機のことだと思いますが、F4の原型機とF15とを比較してみますと、まず核攻撃装置とブルパップがF4にあってF15にない、これがまず違う点でございます。
〔
委員長退席、理事
土屋義彦君着席〕
それから通常爆弾による爆撃機能を比較してみました場合に、昨日来申し上げておりますように三つの爆撃機能のうちF4の原型機は三つとも機能を持っておりますが、F15は水平爆撃なり降下爆撃の機能しか持っていないという点においては異なっておりますが、ただもしお尋ねの点が同じ水平爆撃及び降下爆撃について精度といいますか、そういう点でのお尋ねであれば、それはF15の方が新しいだけに命中精度等はすぐれておるということは言えると思います。
-
○矢田部理君 ここに米空軍の実用試験といいますか、
アメリカの実用試験がありますが、たとえばF15は十ミルだ、F4は平均二十ミルだというようなことで精度が二倍ぐらいF15は高いというふうに言われておりますが、そのとおりでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) ちょっといま私手元に正確な精度のあれを持っておりませんけれ
ども、F15の方がすぐれておることは事実でございます。
-
○矢田部理君 このたびの試改修はこのF15のセントラル、コンピューターとF16のFCS等とを組み合わせることになるわけでありますが、F16は要撃機でしょうか、それとも先ほど言った多目的機でしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) F16はどちらに分類するかということになりますと、F15とF4の原型機との中間的な感じでございまして、要撃機はもちろん要撃機でございますが、地上攻撃
能力もF15よりは
かなり強いということは言えるのではないかというふうに思います。
-
○矢田部理君 ここにジェーン航空年鑑があるわけでありますが、マルチロールファイターということでF16が記載をされてわりまして、しかもその爆撃
能力、空対地の役割りについていわばこの要撃
能力と同等の重理性を持つように拡大をさせたというような記載もあるのですが、そのとおりと受けとめてよろしいでしょうか。
-
-
○矢田部理君 そういうことになってまいりますと、従来持っておったF4の本来の爆撃機能、それから今回試改修でねらうところのF15ないしF16を組み合わせた爆撃機能、いま
局長が言われたように核
能力とかその他は違いますけれ
ども、全体としてこの精度その他は大畑にアップをする、とりわけF15よりも対艦攻撃機能等を持つようになるということになれば、単にもう要撃戦闘機というよりは少なくとも爆撃機能も大幅に
能力アップをしたF4を超えろ精度その他を持つ爆撃戦闘機あるいは空対地の役割りを持つ戦闘機というふうに受けとめるのが当然ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
〔理事
土屋義彦君退席、
委員長着席〕
-
○
政府委員(塩田章君) 今回確かにF16のレーダーを採用しようとしておるわけでございますが、このレーダーを採用するということが別にF16の持っておる対地攻撃
能力を採用することにはならないわけでございまして、その点は今度F15のコンピューターを採用することによって先ほど来申し上げているような対地攻撃
能力が付与されることは事実でございますが、そのこととF16の持っておる対地攻撃
能力がF16のレーダーを採用することによって結びつくものではないというふうに申し上げたいと思います。
-
○矢田部理君 もともと爆撃装置というのは確実に当たるかどうか、ねらったところに命中するかどうかというところにポイントがあるわけですね。そういうものは少しく侵略的であり攻撃的だということでかつて外したわけでありますから、これを従来の精度以上のものを復活するということになれば、もうそれは要撃
能力のアップに付随した対地支援攻撃
能力だということではなくて、むしろそれ自体にやはり大きな爆撃機能を付与したものというふうに考えてもおかしくはない。現にこの生出日発言などを見ても、両方の機能を、試改修した後のF4機は持つ、その割合はイコールだというふうに言っておるわけなんでありまして、
防衛庁の見解と違う。付随的だ、限定的だという議論はおかしいというふうに思うわけでありますが、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) お言葉を返すようですけれ
ども、もちろん爆撃をする以上は正確に当たることをわれわれは期待して爆撃をするわけでございますが、正確に当たることが他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるということにはならないと思うのです。それは爆撃する以上は当たらなければ意味がないのでございまして、そのことは、やはり他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるかということとは別なことでございまして、わが国に侵略してくる部隊に対してやはり爆撃する以上は正確に当たるようにしたいというふうに私
どもは思います。したがいまして、先ほど来
先生の御
指摘の点はその点においては私は見解を異にするわけでございまして、やはり私
どもが付随的であり限定的であると申し上げておることも従来から申し上げているとおりでございますし、生田目発言と私
どもの見解とも異なるとは思わないわけであります。
-
○矢田部理君 正確に当たるような機能を持つことは攻撃的であり侵略的であるというのは、後で問題にしたいと思います。増田氏の当時の議事録における発言です。だからそういうものを持つわけにはいかぬのだということを引用しているわけでありまして、特段素人的に問題を出したわけではないのであります。
いずれにいたしましても、F4が持っていた爆撃装置を外した、今度はF15レベルのものを復活をする。あれから相当年月もたっておりますからいろんなコンピューターシステムもやっぱり向上をした、精度はかつての倍ぐらいの力を持つということになってきますと、従来の爆撃装置を外したことを従来以上のレベルで復活をするということになるわけでありますから、もうこれは要撃戦闘機だというわけにはいかない。少なくともあなた方の言う多用途戦闘機、多目的戦闘機というふうな位置づけにならざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) 今度の試改修を指しまして、いま
先生のお言葉では、従来以上のレベルに復活するのではないかという御
指摘でございますが、先ほど来私からも御
説明いたしましたように、命中精度がよくなるという意味においては確かにその御
指摘は当たろうかと思いますが、その点こそまさに先般来私
どもがお答えいたしておりますように、その後のいろいろな軍事技術の発達といったようなことを相対的に考えた場合に、もはやそのことをもってかつてのような他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものではないというふうに判断されるに至ったということを申し上げているわけですが、確かに命中精度がよくなったということを踏まえても私
どもはそういうことが言えるのではないかというふうに今回の判断をいたしたわけでございます。
したがいまして、これをもってもはや要撃戦闘機ではなくて多用途、少なくとも多用途機ではないかという御
指摘でございますが、F15のときの議論にもございましたけれ
ども、わが国のように必ずしも十分な要撃戦闘機あるいは支援戦闘機を持っていない場合におきまして、侵略の
状況に応じまして適宜、いろいろな形で使用できるということをかんがみました場合に、要撃戦闘機にある程度の地上攻撃
能力をあわせて持っておきたいというのは私
どもの念願でございまして、そういう意味からいきましてもこの程度の、この程度のと申しますのはF15とも同じような内容になるわけでございますが、そういった程度の対地攻撃
能力を持つことをもって直ちにそれはもう要撃戦闘機ではないというふうにおっしゃるのは即断ではないかというふうに考えるわけであります。
-
○矢田部理君 全く即断ではないのでありまして、その機能や役割りから見てもうこれは要撃戦闘機だと、付随的機能だと言うのは事実の上で間違っている。それは生田目さんだって正直に物を言ってるわけですよ、両方の機能はイコールだと。それをあなた方はごまかそうとしている。特にこの点はまたいろいろ問題にしたいと思いますけれ
ども、時間がたってきておりますので問題点だけ幾つか出しておきたいと思います。
もう一点は、増田見解なるものが従来からありました。増田元
防衛庁長官の見解でありますが、
防衛庁はこの見解をどういうふうに受けとめているのでしょうか。
-
○
国務大臣(
伊藤宗一郎君) 増田元
防衛庁長官の御発言の御趣旨は、わが国は他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるような装備は持たないというふうに理解をし、またその観点に立ちながら、当時の軍事技術の水準等諸般の情勢を考慮して、次期戦闘機には他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるものとの誤解を生じかねないような爆撃装置は施さない旨を述べたものと理解をしております。
-
○矢田部理君 四十三年に、増田さんの時代にF4から爆撃装置を外して導入をしました。そのときの議事録をずっと読んでみますが、いま
防衛庁長官が述べられたような見解にはなっていない。四十七年にF1を採用するときにまたこの議論が出た。そのとき統一見解が出されるのでありますが、統一見解は重大なすりかえが行われている。つまり内容的に申しますと、増田さんは他国に攻撃的、侵略的な脅威を与えるものとして爆撃装置を外された、憲法上の問題も出てこれを外したのでありますが、この四十七年の統一見解を見てみますと、増田さんが言ったのは、侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものは持たないと言っただけであって、即爆撃装置が侵略的、攻撃的であると認定はしていないのだと、ただ当時、そうではないけれ
ども、誤解を与えちゃいかぬということでこれを外したのだと、こういうすりかえになっているわけであります。誤解論というすりかえをしているわけでありますが、当時の議事録を読んでも、侵略的脅威を与えるようなものとして誤解されるかもしらぬから外すのだというような
説明をしたところはあるんでしょうか。私が見た限りはない。念のために内閣の調査室にも全部調べてもらいましたが、その誤解論に基づいて外したなどという議事録にはなっていないわけであります。その点とうなっているのでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) 四十七年の見解を指して、すりかえであるという御
指摘のようでございますが、私
どもは増田発言、確かに長い期間にわたりましていろいろな質疑応答がございまして、いろいろな発言をされておりますけれ
ども、通じて見ました場合、やはり増田発言の何を言わんとしているかということは、結局、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるものとの誤解を生じかねないものであるということで、あの時点におきましてはあの爆撃装置を外した、それは他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるものとして誤解を生じかねないということで外したということでございまして、増田発言については、単に爆撃装置の有無だけを問題にすべきではなくて、その爆撃装置が他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるものとの誤解を生ずるようなものであるかないかということを全体として考えるべきものであるというふうに私
どもは理解をいたしておりまして、先ほど
大臣がお答えしたような見解に立っておるわけでございます。
-
○矢田部理君 あなた方もそこは少しくやましくて、統一見解のときの文案を見ましても「他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないとの配慮のもとに、同装置を施さない旨を申し述べたものと考える。」考えると言って、断定してないんです。今回、
衆議院でこの問題の統一見解といいますか、最終的な
説明が
防衛庁長官からなされたのでありますが、この点も、誤解を生じかねないような爆撃装置は施さない旨述べたものと理解していると、あなた方のすりかえた判断がここに入ってこういう結論になっているわけでありますが、誤解論で爆撃装置を外したということであれば、いつのどういう議事録にそうなっているか、
説明してください。
-
○
政府委員(塩田章君) 先ほ
ども申し上げましたように、増田発言といいますものはずいぶん長い期間にわたっていろんな議論がございます。したがいまして、どの言葉でどうというふうに私はいま申し上げているわけじゃございませんで、全体を通じて増田発言の趣旨というものはそういう点にあるのではないか、先ほど私が申し上げたような点にあるのではないかというふうに判断をし、そのことを四十七年の統一見解でも取り上げ、私
どもも同様な見解に立っておるということを申し上げているわけでございます。
-
○矢田部理君 全然だめですよ。誤解に基づいて——誤解を受けるかもしらぬから爆撃装置を外したのだなどということには全くなっていないのです、増田発言は。そういうことを言うのなら、その根拠を示しなさいよ。単なる政府の一方的な解釈や受けとめ方でそうされては困るのでありまして、その点でこれは、統一見解は間違っているのです、四十七年の。
-
○
国務大臣(
伊藤宗一郎君) 先ほど
先生も御
指摘のありましたけれ
ども、四十七年の十一月七日、
衆議院の
予算委員会で当時の増原
大臣が増田発言につきましてこのように述べております。「他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないとの配慮のもとに、同装置を施さない旨を申し述べたものと考える。」となっております。
-
○矢田部理君 その見解が間違っておると言うのです。そのもとになるような増田さんの答弁は全然ないということですよ。
-
○
政府委員(塩田章君) 四十二年、四十三年のころの塩川発言の盛んに行われておりました時点のことでございますが、四十三年十二月十四日の、当時の佐藤総理の答弁がございます。御参考までに読んでみますと、「私は、ファントムが全部いま
アメリカで持っているような
状態だと、いかに憲法がありましても、他国で心配されるものがあるだろうと思います。しかし、私は
日本にはこの憲法があり、同時にその爆撃装置などについてくふうがこらされれば、他に心配は要らない。爆撃装置、これをはずすということによりまして、その心配は要らない。」というふうに述べておりまして、やはりこの爆撃装置が他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるという心配を与えるかどうかということが問題になっているということを当時の佐藤総理も述べておられます。こういった事柄をもちまして、当時の増田発言を含めまして政府の全体の姿勢が先ほど来申し上げているような考え方に立ったものであり、それを四十七年の統一見解は示したものであるというふうに私
どもは受けとめているわけであります。
-
○矢田部理君 大変
局長苦心の中からそういう文言を出してきましたが、心配と誤解というのは全然違いますよ。その点で私はこの統一見解なるものがその前提を欠いている、誤解論はないということは一つ
指摘をしておきたいし、この点の論議をもう少し当時の議事録に即して詰めなきゃならぬと思っておりますが、もう一点は、これはまだまだF4についてはあるわけでありますが、F15の採用のときに、非常に爆撃
能力を過小評価している。要撃戦闘機だ、要撃戦闘機だと言って採用してきた経過がありますが、その辺のいきさつはどうなっておりますでしょうか。
-
○
政府委員(塩田章君) F15の採用のときにも当時いろいろな議論がございまして、確かに
先生の御
指摘のように、要撃戦闘機であるということで、政府としてはその点を強調した点は確かにございますけれ
ども、別にF15が持っております爆撃
能力につきまして過小評価したとか、あるいはことさらに低く言ったということではございませんで、当時の政府の統一見解にもございますけれ
ども、F15の持っております対地攻撃
能力につきましては、十分政府もこれを認めた文言が中に入っております。決して特に過小評価したというわけではないというふうに私は考えております。
-
○矢田部理君 これは簡単に
指摘だけしておきますと、F15の爆撃機能というのは、F4ファントムがベトナム戦における経験などを十分に生かして、対地攻撃
能力も第一級の攻撃機だというふうに
指摘をされておるし、
アメリカのA7という攻撃機がありますが、これともやっぱり対等ぐらいのレベルを持っているという
状況なんでありまして、この点も過小評価してきたわけです。そういう点で、時間がありますからつづめて申しますと、どうも増田見解をねじ曲げ、F15の対地攻撃
能力は小さいんだと言ってこれをクリアして、今度はそのレベルにF4改修を持っていこうと、こういう意図が実はありありと見受けられるのでありまして、その点
防衛庁の態度はきわめてけしからぬというふうに思っております。
そこで、最後になりますが、そのほかにシビリアンコントロールの問題とか、F1後継機の問題など、さまざまな問題をこのF4改修は抱えております。これらの論議を尽くさなければなりません。その点でわれわれはもっともっとやっぱり審議をしたいと思うのでありますが、政府は何かこの総括が終わると、いまにも執行停止を解除して、契約に走るという動きになっておろうかと思いますが、いかがでしょう。まだ決めていないと言っておりますが、それならば、参議院の集中審議等も月末には予定をしているわけでありますが、審議が尽くされるまではそれをしないという約束ができますか。
-
○
国務大臣(
宮澤喜一君) 本件につきましては、先日来申し上げておりますとおり、
委員長のごあっせんの経緯もございますので、そして、過日の報道について
委員長が懸念を表明されたことも存じておりますので、そのことは十分に大切に考えております。しかしながら同時に、総理
大臣からも申し上げましたように、政府としてはできるだけ速やかに執行をいたしたい、年度末も迫っておることでもございますので、この点も御審議を進められる上において御賢察をお願いいたしたいと存じます。
-
○矢田部理君 明確になってないんですよね。少なくともやっぱり参議院の集中審議が尽くされるまでは待つと約束してもらわなければ困ると思うのです。(拍手)
-
-
○
委員長(
植木光教君) 次に、一昨日保留されました安恒良一渦の質疑を行います。安恒君。
-
○安恒良一君 まず、公共交通問題で保留された
運輸省、環境庁それぞれ御答弁願います。
-
○
国務大臣(
小坂徳三郎君) 御質問は、公共交通の維持のための財源の確保に関することであったと思いますが、昨日御答弁申し上げたとおり、財源措置については十分いろいろと努力をいたしておりますが、しかしなお
運輸省といたしましては、公共交通の重要性をよく認識いたしまして、さらにこの財源措置につきましては運政審の答申もございますように、あるいは軽油に対するもの、自家用自動車に対する場合、あるいは事務所に対する場合、さらにはまた交通機関全般の利用者に対する場合等々に対して、こうした安定的な財源措置を図るための何らかの措置を具体的に今後考えてまいりたい、そのように考えております。
-
○
政府委員(飯島篤君) 全国の自動車保有台数が現状の四千万台から六千万台になったとした場合に、大都市におけるバスの表定速度はどうなるかという御質問だったと思いますが、バスの表定速度は、道路交通量、道路
整備の
状況、交通規制、軌道の撤去、地下鉄の
整備等いろいろな要因によって変化するものでございまして、なかなか将来の予測をすることはむずかしいのでございます。しかし、過去のデータをもとにいたしまして、十都市について四十七年から五十五年までの自動車保有台数の伸びとバスの表定速度の低下との相関関係から、壁来回帰式を使いまして、将来を推定できないかという
検討をいたしてみたのでございます。その結果、東京、大阪、川崎につきましては、自動車保有台数と表定速度との相関関係がある程度認められますので、将来のバスの表定速度をとりあえず試算してみました。そういたしますと、東京で五十五年度十二キロが十一・四キロ、川崎で五十五年度十三・九キロが十二・八キロ、大阪で十一・三キロが十・八キロに落ち込むおそれがあるという結果が得られました。その他の都市につきましては、過去におきまして自動車の保有台数が一貫して増加しているにもかかわりませず、横浜、京都、神戸など表定速度が逆に上昇に転じているというものもございまして、自動車保有台数と表定速度の間に統計的に意味のある相関関係が認められませんでしたので、推計は困難でございます。これらの都市では軌道の撤去、バス路線の大幅な再編成、あるいはバス専用レーンの拡大、都心部駐車禁止等の交通規制面での要因が顕著に作用したものと考えられます。
-
○
国務大臣(原文兵衛君) 環境庁としては自動車の増加による交通公害に対して自動車排出ガス及び騒音の規制を行うとともに、関係省庁の協力を得て、地域の実情に応じ都市総合交通規制等の交通管理、大量公共輸送機関の充実、物流の合理化、環境の保全に配慮したバイパス等の
整備、道路構造の改善、沿道の
整備等の施策を総合的に推進することによりまして、自動車交通公害の防止、軽減に努めてまいりたいと思っております。
-
○安恒良一君 いま公共交通の維持、
整備とモータリゼーション
対策についての保留点について御答弁がありましたが、これ以上これを議論する時間がありませんから、これはまた改めて
一般等で議論を深めたい、こう思います。
次に、総理並びに中曽根
長官にお
伺いしますが、閣内不統一の御意見ございまして、あえて私は反乱軍などということを申し上げたのですが、この問題についての意思統一をどのようにしていただいたでしょうか、総理並びに
長官からお
伺いします。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 先日は大変失礼いたしました。その後政府内部で再調査し、調整をいたしました。答弁の中で不用意なものがございまして、安恒
委員に御迷惑をおかけしまして遺憾の意を表する次第でございます。この件は
内閣官房が各省を統轄して、その監督のもとに各特殊法人の業績を見ているわけでございまして、
官房長官から統一した御見解が表明されると思います。
-
○
国務大臣(
宮澤喜一君) 特殊法人の役付職員の構成につきましては、各法人の業務の内容及び規模、設立の沿革、設立後の経過年数その他種々の事情がございますので、これを一律に規律することは困難でございますけれ
ども、できる限りの円部登用の促進、民間活力の導入に段階的に努めてまいる必要がある、こういうふうに考えております。
-
○安恒良一君 総理にお聞きしたいのですが、昨年、植民地化大事については、まじめに働いた人たちの士気にかかわる。私も肝に銘じ
検討させますと、こう答弁をされたんですね。その趣旨で御統一されたと思いますが、そう承っていいでしょうか。
-
-
○安恒良一君 そこでひとつ、念のために総理、ちょっと
資料を見ていただきたいのですが、私は前回は管理職、今回は役付職員まで拡大して特殊法人の実態を調べました。驚きましたことには、ほとんどの特殊法人が上位の役職は官庁出身者、天下り及び出向で占めています。いわゆる内部登用、プロパーは下位の役職に押し込んであるのであります。これは配付した表を見ていただきますと、たとえば雇用促進事業団、公害健康被害補償協会等々例はたくさんあります。
そこで、私はこの感想をまず総理にお聞きをしたいことと同時に、次の
大臣にお聞きします、労働
大臣、
環境庁長官、自治
大臣、文部
大臣。何ゆえプロパーが責任ある仕事につかれないのか、士気の高揚をどう図るのか、以上のことについて、いま指名を申し上げた
大臣から二つのことについてお答えをください。
-
○
国務大臣(初
村滝一郎君) お答えをいたします。
プロパー職員の役付職員への登用については、従来の方針と、それから今後の方針について申し上げてみたいと思います。
いままでの方針は、プロパー職員の役付職員への登用については、従来から適材適所、それから
能力に応じ進めてきており、特に近年、組織の大きい法人を重点に内部登用に努力してきたところであります。したがって、統計を見ますと、
昭和五十三年度と五十五年度を比較して、労働省関係特殊法人全体でプロパー比率が六二%から六五%へ増加しております。
今後の方針は、プロパー職員の内部登用を急激にふやすことは、現在のプロパー職員の構成やポスト新設の困難化等によりむずかしい面がありますが、先国会以来総理の答弁にも沿って、今後さらに出向職員の縮減や、新設ポストへの内部登用を図ることにより、役付職員のプロパー比率の改善に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
-
○
国務大臣(原文兵衛君) 環境庁に関係する特殊法人は二つでございますが、いずれもまだ日が浅いというような理由もあるわけでございますけれ
ども、私
どもといたしましては、内部職員の士気を上げるために、二つの特殊法人をいろいろ指導しているところでございます。
公害防止事業団につきましては、官庁出身者以外の役付職員の占める割合が、
昭和四十五年度末の約三一%から五十五年度末には約四〇%と、まあそう一遍ではございませんけれ
ども、年々高まってきているところでございます。
昭和五十七年度以降も内部職員の士気が低下しないようにするために、従来にも増して内部登用の促進を図るよう、事業団を指導してまいりたいと思っております。
また、公害健康被害補償協会におきましては、これは
昭和四十九年の設立でございます。そして、設立当初はすべて官庁出身者で占められておりましたが、
昭和五十五年度末には内部登用の役付職員が約二三%となってきております。
昭和五十七年度以降も内部職員の士気が低下しないようにするため、こちらにおきましても従来にも増して内部登用の促進を図るよう協会を指導するようにいたしたいと思います。なお、五十七年度中におきましても、必ず内部登用が行われるというふうに私
どもは指導し、見込んでおるところでございます。
-
○
国務大臣(小川平二君) 文部省所管の特殊法人の役付職員の構成につきましては、事業内容に応じまして適切かつ有機的なものといたしております。特殊法人の事業の継続的な充実発展を図っていきまする上で、プロパーの職員を登用していくということは重要なことと考えております。現在、文部省所管の特殊法人全体では、役付職員に占めるプロパーの比率は九三%に達しておりますが、その業務の性格上、プロパーの比率の低い所管二法人、これは国立教育会館と
日本学術振興会でございますが、これについても適材適所の観点から五十七年度以降引き続きプロパーの登用を図りますように努力してまいるつもりでございます。
-
○
国務大臣(
世耕政隆君) 士気の高揚を図ることは、業務を円滑にしたりいろんな担当職務に責任を持たせたりする上できわめて必要なことでございますが、自治省関係の特殊法人は四つありまして、そのほとんどが、大体役付職員数が五〇%以上のところが三つございます。プロパー出身の五〇%以上のところが三つございまして、一つだけ公営企業金融公庫がプロパーが役付の中の八%でございまして少ないのでございますが、これはちょっと特殊な事情がありまして、地方債などのためのいろんな起債のために資金の貸し付けなどを担当する部署で、きわめて計算その他で専門的な業務に精通した人を必要とするので、そういう関係で従来関係官庁の人たちをいろいろなふうに採用しながらやってきたのが実情でございます。しかもまだ、その歴史がちょっと浅くなっておりまして、そういった関係で業務が非常に細かい専門的なことを必要とする関係からプロパーの方は大体タイピストとか自動車の運転関係とかそういう人が主体になっていて専門家が少ないと、こういうことの事情によるものだと思われる次第でございます。
-
○安恒良一君 総理、感想を、この表を見て。
-
○
国務大臣(
鈴木善幸君) ただいま関係の
大臣から御報告を申し上げましたように、設立後の沿革でありますとか、年限でありますとか、いろいろ仕事の性質でありますとか、また主管官庁との関係でありますとか、いろんな事情から特殊法人いま御
説明申し上げた中にも内部職員の役付登用が相当進んでおるものとそうでないものとございます。しかし、いま御答弁がありましたように、関係閣僚も安恒さんの御
指摘の御趣旨を踏まえていまおくれておるところは努力をしておると、こういう熱意を持って当たっておりますことは御理解をいただけたと思います。
-
○安恒良一君 実は総理、いま私は何人かの
大臣に答弁していただきましたが、内閣の方に、総理並びに中曽根
長官の答弁の趣旨を踏まえて閣内を統一し各省ごとに
資料を一覧表にして読みやすく出してくれと、こう言ってお願いしておったんですが、きょうの十二時半になって出ませんから、催促しましたら十二時四十五分にこれが来たんです。とてもこれを私が一つ一つ読み上げて各省の
官房長と中身を精査する時間がなかったわけです。でありますから、やむを得ず二、三の
大臣に言っていただきましたが、たとえば労働
大臣はああいうことを言われましたが、労働省の中でも雇用促進事業団なんかを見ますと、設立をしましてすでに、三十六年設立でありますが、官庁出身者が七十五、プロパー七十一でありますが、プロパーでは
課長四と班長六十一だけです。あとは全部いわゆる上の方は官庁出身者で占められているわけです。でありますから、どうか私は、このことを
官房長官にお尋ねし、ひとつ
官房長官の方で整理をしてもらいたいと思いますが、まず、この表はとても一々見るのには見るにたえません。ですから、やはりこの表を整理をして見やすいように出していただきたい。私もたくさんの公庫公団を調べたのを、そういう一覧表に面して総理以下関係
大臣にお配りしたようにしておりますから、中身をひとつ整理していただきたい。これが一つ。
二つ目には、総理の趣旨を体して前向きに取り組んでいるところもあります。そうでないところもございますから、どうぞ総理それから行管
長官の趣旨を体して、私の質問に対してお答えになった趣旨を体して各省がさらに努力をするように
官房長官のところでひとつ御尽力をいただきたい。これが二つ目です。
そして三つ目。これからお願いをいたしますことについて、次の私が質問をいたしますまでに、この
予算審議の中で私はさらに何回か質問に立つ予定でありますが、それまでの間に内閣の方針をひとつお示しを願いたい。
まず一つは、プロパーと官庁出身の役付職員の比率を五十対五十にする計画をつくっていただきたい。これが一つ。
二つ目は、管理職一人当たりの職員数をふやしてもらいたい。
三つ目は、官庁からの出向者についての最低の在職年数をひとつ決めていただきたい。
四つ目は、いわゆる管理職対職員の比率を、若干増減があって結構だと思いますが、ひとつ幅を決めていただきたい。
それから、内部登用をやっておるやっておると言われますが、これは最後は
資料要求でありますが……
-
-
○安恒良一君 百九の特殊法人全部について、最近十カ年の各機関別の人の採用及び昇級昇格等の
資料をいただきたい。それに基づいて、さらに次回私の持ち時間の中で問題の追及をしていきたいと思いますから、そういう点を
宮澤長官にお願いをして私の質問を終わりたいと思いますが、よろしゅうございますか。
-
○
国務大臣(
宮澤喜一君) まず第一の点は、先ほど内閣としてどう考えるかということについてはお答えをいたしました。この内閣の考え方が各所管の
大臣によく徹底するようにということ、これは当然にそうでございますから、その努力をいたします。
それから第二には、何か書類が見にくいから整理をしろということでございます。各省ともできるだけの努力をいたしまして提出を申し上げたものと思いますが、ごらんになりやすいように、ちょっと時間をいただきましたら整理をさせてみていただきます。ただ、先ほど申しましたように、各省の事情がみんなばらばらで一緒ではございませんので、共通点をどういうふうに整理できますか、ちょっといろいろ工夫をさせてみていただきたいと思います。
第三には、これはたとえばプロパーの者と外から来た者と役付を五十・五十にせよということ、以下数点にわたってお話がございましたけれ
ども、これはおのおのの特殊法人がそれぞれの性格を持っておるということは先ほど申し上げました。また、それは
一般的に主務
大臣の監督には服しますけれ
ども、そのようなことまで主務
大臣が干渉をし得るものであるかどうか、大変に具体的なことを言われましたので、そこまでいけますかどうかということには
検討の余地があろうと思います。基本的に内閣の方針は先ほど申し上げたとおりでございますので、その方に進んでいきますように、関係
大臣には御考慮を願うようにいたしたいと思います。
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○安恒良一君 いや、きょう返事をもらうというのじゃなくて、方針を示していただきたいということですから、次回方針を、こういう方針、ああいう方針と示していただけばいいわけです。
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○
委員長(
植木光教君) 以上、安恒良一君の質疑をもって
総括質疑はすべて終了いたしました。
明日は午前十時に
委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時五十分散会