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1982-03-10 第96回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月十日(水曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  二月十七日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     上田耕一郎君      伊藤 郁男君     柳澤 錬造君      秦   豊君     野末 陳平君  二月十八日     辞任         補欠選任      中西 一郎君     上田  稔君      岡部 三郎君     亀長 友義君      仲川 幸男君     山崎 竜男君      山田  譲君     片岡 勝治君      山田  勇君     喜屋武眞榮君  二月二十日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     下田 京子君      田渕 哲也君     中村 鋭一君  二月二十四日     辞任         補欠選任      下田 京子君     上田耕一郎君  二月二十五日     辞任         補欠選任      中村 鋭一君     田渕 哲也君  三月一日     辞任         補欠選任      上田  稔君     中西 一郎君  三月二日     辞任         補欠選任      山崎  昇君     山田  譲君  三月九日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     村上 正邦君      上田耕一郎君     小笠原貞子君  三月十日    辞任          補欠選任      和泉 照雄君     中野 鉄造君     —————————————  出席者は左のとおり。     委員長         植木 光教君     理 事                 井上 吉夫君                 岩崎 純三君                 土屋 義彦君                 松尾 官平君                 竹田 四郎君                 矢田部 理君                 田代富士男君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君     委 員                 岩動 道行君                 板垣  正君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 藏内 修治君                 源田  実君                 古賀雷四郎君                 下条進一郎君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 玉置 和郎君                 中西 一郎君                 藤井 孝男君                 堀江 正夫君                 宮田  輝君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                 山崎 竜男君                 片岡 勝治君                 片山 甚市君                 志苫  裕君                 寺田 熊雄君                 丸谷 金保君                 安恒 良一君                 山田  譲君                 大川 清幸君                 太田 淳夫君                 中野 鉄造君                 三木 忠雄君                 小笠原貞子君                 田渕 哲也君                 野末 陳平君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   鈴木 善幸君        法 務 大 臣  坂田 道太君        外 務 大 臣  櫻内 義雄君        大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君        文 部 大 臣  小川 平二君        厚 生 大 臣  森下 元晴君        農林水産大臣   田澤 吉郎君        通商産業大臣   安倍晋太郎君        運 輸 大 臣  小坂徳三郎君        郵 政 大 臣  箕輪  登君        労 働 大 臣  初村滝一郎君        建 設 大 臣  始関 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    世耕 政隆君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       田邉 國男君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       中曽根康弘君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  松野 幸泰君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  原 文兵衛君    政府委員        内閣官房長官  池田 行彦君        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   石川  周君        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        総理府人事局長  山地  進君        総理府恩給局長  島村 史郎君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  和田  裕君        防衛施設庁労務        部長       木梨 一雄君        経済企画庁調整        局長       井川  博君        法務省民事局長  中島 一郎君        法務省訟務局長  柳川 俊一君        法務省入国管理        局長       大鷹  弘君        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       矢澤富太郎君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局長  松下 康雄君        文部省初等中等        教育局長     三角 哲生君        文部省管理局長  柳川 覺治君        厚生大臣官房総        務審議官     正木  馨君        厚生大臣官房会        計課長      坂本 龍彦君        厚生省年金局長  山口新一郎君        厚生省援護局長  北村 和男君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        通商産業省貿易        局長       中澤 忠義君        中小企業庁長官  勝谷  保君        運輸省鉄道監督        局長       杉浦 喬也君        運輸省航空局長  松井 和治君        郵政省電波監理        局長       田中眞三郎君        労働省労政局長  吉本  実君        労働省労働基準        局長       石井 甲二君        労働省職業安定        局長       関  英夫君        建設省住宅局長  豊蔵  一君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○派遣委員報告     —————————————
  2. 植木光教

    委員長植木光教君) 予算委員会開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事柳澤錬造君を指名いたします。     —————————————
  4. 植木光教

    委員長植木光教君) 昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  5. 植木光教

    委員長植木光教君) まず、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十七年度総予算案審査のため、来る三月二十三日に公聴会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、総括質疑に関する理事会協議決定事項について御報告をいたします。  総括質疑は七日間分とすること、質疑割り当て時間は九百八十一分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党・自由国民会議及び日本社会党それぞれ三百四分、公明党・国民会議百六十九分、日本共産党及び民社党・国民連合それぞれ六十八分、新政クラブ及び第二院クラブそれぞれ三十四分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定どおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  10. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十七年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  13. 植木光教

    委員長植木光教君) それでは、これより総括質疑を行います。竹田四郎君。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は社会党を代表して、これから総括質疑に入りたいと思いますけれども、その前に、衆議院議長見解によって、衆議院の方の減税問題が一応こちらへ来たわけでありますけれども、何かこの衆議院議長見解を見ますと、参議院予算成立したならば直ちに衆議院大蔵委員会に小委員会をつくってそこで検討をすると、こういう趣旨になっていると思うんですけれども、私ども設計書に基づいてこれから三十日間家を建てていくわけでありますけれども、この設計書に基づいて家を建てるということになった途端に、インテリアはうんと変えるという条件づきで予算審議しなくちゃならぬということになりますと、初めから壊されることを覚悟の上で私ども審議に入るということは、どうもしっくりしないんです。これは衆議院を別に責めるものでなくて、その改造にはわれわれも一緒に加わるんだということになりますれば、この審議も私ども進めることができるわけでありますけれども、この点について野党の皆さんと相談したところが、その点をひとつ委員長に明確にしてほしい、こういうことでありますので、委員長としては、この衆議院議長見解を受けて参議院ではどのように進めていくつもりなのか。これは政府じゃなくてむしろ予算委員長に、どのようにされるおつもりなのか、お聞きをいたしたいと思うんです。
  15. 植木光教

    委員長植木光教君) 所得税減税問題についての衆議院議長見解は、衆議院における本問題の取り扱いを示したものと考えます。  本院での予算審査に当たりまして、参議院予算委員長といたしましては、次のように取り計らいたいと存じます。  所得税減税問題については、本委員会審議を通じ十分に御論議をいただきますようにお願いをいたします。  また、今回初めて実施されます委嘱審査の際に、本院大蔵委員会において御論議があるものと考えられます。  なお、必要に応じ、本委員会理事会の御協議を得てこの問題の善処方参議院議長に申し入れたいと考えております。  以上でございます。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 それでは、その都度都度この問題については理事会協議をしていきたいと思いますけれども、ひとつ適当な時期においてこれに対する対処方を委員長に特にお願いをしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  17. 植木光教

    委員長植木光教君) そのように取り計らいます。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 減税問題は、国民が大変大きく期待をしていたにもかかわらず、議長見解という形で衆議院大蔵委員会に小委員会を置いてそこで減税問題を検討するんだと、こういうことであります。しかも、参議院予算成立直後にやるということでありまして、その意味では先ほどの問題があったわけでありますけれども、これについては五十七年にするのか、五十八年にするのかということが必ずしも明確でないようでありますけれども大蔵委員会、これは私どもの方も、恐らく参議院も参加することになるだろうと思いますけれども、そうした中で結論が出たならば、五十七年度中でもこれはいつでも実施をすると、こういうことになっているんですかどうなんですか、これは政府の方にお聞きしたいと思います。
  19. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) われわれは、議長見解は文字どおり受け取っておるわけでございます。  なお、政府としては、これまで減税問題についての条件としてかねて申し上げておることは、歳出、歳入両面にわたる徹底した見直しによって、五十九年度特例公債脱却の明白なめどをつけること、それとともに、所得税減税の適切な財源の手当てが可能であることということを申し上げており、いまでもその考えでございます。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは、いまのは大蔵省あるいは政府見解だと思うんですけれども衆議院大蔵委員会あるいは参議院のそれに似たようなところで結論が出れば、その結論には従うんですか、従わないんですか。
  21. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 政府といたしましては、政府意見は申し上げまして御理解と御協力を得たいという努力をいたします。  それと同時に、それらの審議等について可能な限りいろいろな資料の提供その他最大限の御協力はいたしたい、さように思っております。  結論に従うかと、それは、国会国権最高機関でございますから、憲法も変えることができるし法律も変えることができます。したがって、国会でもし決まれば、従うも従わないもないわけでございます。われわれは、穏当な実現可能な結論が出るように、われわれとしては意見は申し上げてまいりたい、そう思っております。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵省というのは、ときどきそういうことでいいかけんな資料を出してくる、あるいは妨害するための資料を出してくる、そういうようなコミットは今度は一切してもらっては困る、純粋に、国権最高機関である院の決定に従うようにしてもらわないと困ると思うんです。それと同時に、私はいろいろな諸情勢から考えて五十七年度中にはこれをやっていただかないと、五十八年度になれば遅過ぎる、こういうふうな気持ちでいっぱいであります。この点は鈴木総理にひとつ伺いたいと思いますが、できる限り五十七年度にやると、こういうことをはっきり明言してほしい。
  23. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) もうすでに御承知のように、衆議院予算委員会での審議の過程におきまして、この所得税減税の問題につきましては各党党首会談も行われ、また、党を代表して政策担当者、また幹事長書記長レベルの御折衝、そういうような協議を踏まえて、そして衆議院議長見解というものが出されたわけでございます。それを、各党がその見解を了承をされて、五十七年度予算成立を見た段階においては速やかに大蔵委員会に小委員会を設けて、そして、所得税減税をやるとすれば税制をどうするか、あるいは適切な財源等についての御検討をいただくと、こういうことに相なっておるわけでございます。  私は、この議長見解というものを素直に受けとめておるわけでございまして、したがいまして、五十七年、五十八年、五十九年というようなものは、全然あの見解の中にはうたっておりません。五十七年度予算成立したならば、できるだけ早く大蔵委員会の小委員会を設置して審議をすると、こういうことでございますから、私は、審議の結果につきまして、できるだけこれを尊重してまいる考えでございます。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 十分な答弁だとは思いませんけれども、ぜひひとつ、これだけ大きな国民の要望でありますので、五十七年度なるべく早い時期にひとつ減税を実施するように強く要望しておきます。  次に、総理政治姿勢でありますけれども総理は一体、信念に基づいていろいろな発言をしておられるのかどうなのか、これは私ども非常に疑問に思っております。最初は何か国民向けのようなお話をされるけれども、いざ決断という段になると、自民党の体質に呼応してそちらの方に流されていく、こういう感じが非常にいたします。したがって、国民にとっては一体どこまで信頼していいのか、どうもいつも不安でしようがない。言っていることとやっていることがどうも言行一致していないということであります。そういう意味では、一億一千四百万の国民を統括する宰相としては、どうもあなたは性格がちょっと違うんじゃないか。私もあなたと似たような性格だものですから非常によくわかりますけれども、将としての器よりもむしろ知恵袋としての器のような気が私はするんです。これはあなたがですよ。そういう意味でどうも私は、たとえば防衛費の問題、あるいは去年あなたがASEANの国々を歩いたときのあなたの発言、あるいは昨年八月の六日、広島原爆記念日に初めてあなたは参拝をされたそのときの発言と、国連総会におけるところの核問題に対する日本の対応、こういうところを見ましても、あなたというのは、言っていることとやっていることが違う、この感じが非常にします。そばで騒がれるとついそっちへ行っちゃう。これが私は国民をリードする、そういうあなたの立場というのがどうも国民から信頼をされていないから、最近のあなたの人気は落ちてしまって三一・七%ということになっていると思うんです。  あなたは去年、広島平和式典に参加されたときにどういうことを御発言になったか覚えておりますか。
  25. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 広島原爆記念日というそういう席に出席をさしていただきましたので、原爆の惨禍を思い起こし、このようなことが再びあってはいけない、われわれは、核軍縮、核の廃絶を目指して世界の平和と人類の福祉のために努力しなければいけない、そういう趣旨のことを申し上げたところでございます。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 こう言っていますね。「私は、戦争と核兵器の脅威から人類を解放し、恒久の平和と人類共存の道をひらくため、たとえ前途にどのような困難があろうとも、更に一層の努力を傾けてまいることをお誓いいたします」と、こうおっしゃっていますね。みたまの前ですよ。それなのにあなたは去年の十二月、国連総会の核不使用、不配備、こういう決議については反対していますね、あなたの下僚が日本政府を代表して。どういうことですか、この関係は。
  27. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 核兵器の不使用決議の問題に対するわが国のこれに対しての投票が、私が広島で申し上げたことと違うのではないか、こういう竹田さんの御指摘であろうかと、こう思うのであります。御承知のように、いま国際の平和と安定というのは、核戦力を含む力の均衡の上に保持されておるということが一つの厳しい現実であるわけでございます。われわれは、核兵器廃絶究極においてそれを目指して核軍縮を効果的に現実的にそれに向かって進めていかなければならない、このように考えるものでありますが、国連の場においていろいろ決議が出てまいります、その決議の内容、また、その決議案を提案をした国々の意図、また、それを取り巻く国際情勢、そういうようなものを総合判断をして、そして、私ども究極の平和とそして核軍縮、核の廃絶ということが現実的に具体的にできるような方向で、そのときどきの投票態度というものを決めてまいると、こういう方針でおります。竹田さんのお考えは、恐らくそういうようなことは抜きにして、もう一本やりで核の廃絶なりに突き進むべきだ、こういう御意見かもしれませんが、現実国際政治の中におきましては、私どもはそういう態度をとらざるを得ないということを御理解を願いたいのであります。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは後の核問題でさらに追及しますけれども、あなたはきれいな政治政治家の倫理ということを片っ方では去年あたりは盛んに言いました。しかし、その後になりますと、ロッキード裁判ロッキード関係灰色高官と言われている人、ここの席でもこの前、前田刑事局長でございましたか、矢田部質問のときに、金をもらったということは明らかだということをこの席で前田刑事局長はおっしゃっていた。そういう人を国政の中で非常に重要な地位を占める幹事長、こういうところに置いているというようなことも、私は、国民が素直にあなたの発言理解できない一つの問題点だろうと思うんです。  ごく近くロッキード裁判の橋本、佐藤、この二人の一審判決が出るということでありますけれども、もし有罪ということになりましたら、たとえば佐藤孝行に対してはあなたはどういうふうな処置を講ずることになりますか。
  29. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、いま進行中の裁判の問題でございますから、それに対して予断をもってこういう場合はこうだというようなことを申し上げることは適当でないと、こうまず思っております。  それから、佐藤さんのことにつきましてお触れになりましたが、佐藤さんは現在、無所属の国会議員として議席を持っておられます。私は、佐藤さん御自身が御自身の問題としてこれを御判断なさるということでございまして、行政府の長である私がそれに対して国会議員の身分についてお指図をする立場にはない、このように考えております。  しかし、私どもはお互いに政治家として国民に信頼をされるということがやはり民主政治を守る原点であるということを肝に銘じて、常に政治姿勢を正し、常に反省をしながら、国民に信頼されるような政治行動をとっていかなければならないということは、これは常に心していかなければならない問題である、こう思っています。
  30. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう一つ伺っておきたいと思いますけれども、最近新聞紙上に談合問題が非常ににぎやかに掲載されております。しかし、この談合問題の大部分の責任というのは、高級官僚の天下りにその端を発している場合というのが非常に多い。しかし、政府の方は、どういう入札をするかというところに何か重点を置いて、中央建設業審議会ですか、そこの答申を待っているという形でございますけれども、しかし、官僚におみやげを持たして、そして天下りをさせている、こういうことがどんどんどんどん出てきているわけです。これは、行政府の最高責任者としての総理のあり方でこの問題は規制できるはずだ。入札の仕方についてはあるいは建設業審議会の意見も必要であろう、しかし、内部の粛正の問題はこれはできるはずです。いままでそれについて総理の強い指導というものあるいは総理の強い綱紀の粛正という考え方、そういうものは余り聞かれていないわけです。私は、きょうはこれ以上触れませんけれども、今後はひとつ、これは集中審議の中で参考人も来ていただき、必要に応じては証人も呼ぶような形でこの問題を明らかにするわけでありますけれども、とにかく総理のリーダーシップという問題がこの問題では私は非常に大きいと思う。これについてはどうお考えですか。
  31. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 高級官僚の民間企業への天下りの問題、あるいは退任後の特殊法人等に対する再就職の問題、こういう問題につきましてはいろいろ御批判を受けるような問題が過去においてあったということで、この天下り等の問題については自粛と規制が必要であるということで、閣議におきましてもこれを申し合わせをし、また、各省庁にその励行を指示してきておるところでございます。  また、人事院におきましても、そういう点につきましても十分配意しながら管理、監督をいたしておるというのが実情でございますが、まあ十分じゃないというようなおしかりをこうむる点があるかもしれません。最近における談合その他の問題等もございます。私どもはさらに心を引き締めて、そういう点を十分強化をしてまいりたいと、こう思っております。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理、これ本当に談合をなくして競争入札でやらせるということになりますと二割は安くなるというのですね。いま、政府関係の公共事業費というのは一年にどのくらいあるか御存じですか。その二割といったら大変なものです。約三兆になるのです、本当にそのとおりの計算でいけばですよ。そうすればあなたの言っている財政再建などもこれまたかなりカバーできるのですよ。だから、もう少し綱紀粛正してほしいと思うのですよ、わかるように。政治献金になったり、飲み食いに国民の税金が使われているのじゃたまらない。これは本当に心を入れかえてひとつやっていただきたい、このように私は強く要望しておきます。  それから、これは外務省にお聞きをするわけでありますけれども核兵器の不使用に対する国連決議趣旨とそれに対する日本政府態度、それからその理由、これをひとつ一九六一年から核兵器使用禁止あるいは不使用、不配備の決議、そういうものに対してどういう理由でどういう態度をとってきたか、一つ一つ明らかにしてほしい。——わかる人でいいです。
  33. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  国連におきましては、一九六一年からいわゆる核の不使用に関する決議が上程されております。昨八一年の秋の総会までに通算いたしまして十本の決議案が出ております。内容的には大同小異のものでございまして、要するに、核兵器使用しないようにという目標を揚げまして、そのような核兵器使用しないというような体制をつくるために必要な手続問題、これをあわせ取り上げているのでございます。  六一年の決議案につきましては、決議の主要な部分が、先ほど申し上げましたように、核の惨禍を二度と繰り返さないということをいろいろな表現で述べております。それで最後に、このような核を使用しないという事態をつくるために、国際条約に署名する特別の会議を開くことについて、事務総長に対して加盟国の意見を徴するという要請を行っているのでございます。  わが国は、この決議案に対しましては、決議の主体部分でございますところの核の兵器を使用しないという点に着目いたしまして、決議全体には賛成をいたしたのでございます。ただし、手続問題、つまりそのような核を使用しないという国際条約に署名するための会議を開くことについて事務総長に各国の意見を徴せしめるという点につきましては、実効性の点に着目いたしまして、棄権をいたしたのでございます。  続きまして、六二年以降も同様の決議案が出てまいったのでございますが、これら決議案におきましては、手続の面、つまり核不使用国際条約に署名するような会議を開くために必要な措置をどうするか。たとえば各国間で協議をするとか、場合によりましては安全保障理事会意見を求めるとか、あるいはジュネーブの軍縮委員会にこれを語るとか等々いろいろな決議案が出てまいったのでございますが、いずれも手続面に重点を置いたもので、言いかえますと実効性の点、つまり核を使用しないと申しましても、有効な国際管理のもとにおける保障がない限りは実効性がないという点に着目しまして、わが国はずっと棄権をいたしてまいっております。  八〇年に至りまして再び同様の決議が出てまいったわけでございますが、御承知いただいておりますように、ちょうど前年の終わりにアフガニスタンに対するソ連の侵入という事態がございまして、これは国際情勢に大きな影響を与えたわけでございます。先ほど総理からもおっしゃられましたように、国際の平和と安全というものが軍事力のバランスに大きく依存をしており、その軍事力における核の抑止力というものの意味合い、これを十分認識する必要が生じたわけでございます。このような関連からわが国は反対の投票を行ったのでございます。  昨八一年も同じ決議案が出てまいったわけでございますが、同じ理由により反対をいたしたのでございます。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 中性子爆弾の製造とか核兵器の不配備についてはどうですか。
  35. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  中性子爆弾の使用禁止に関します決議案につきましては、先ほども申し上げましたように、現下の国際間の平和と安全は軍事力のバランスの上に立っていると考えられます。軍事力と申します場合には、核兵器、通常兵器を含みます各種の兵器体系から成り立つ軍事力でございます。その各種の兵器体系のうちから一つのタイプを取り出しまして、その兵器の開発、生産、貯蔵、配備等を禁止するということは、バランスに影響を及ぼし、これが安定に好ましくない結果をもたらすという判断がございまして、かかる見地から、この中性子爆弾の開発、生産、配備等を禁止する決議案に反対をいたしたのでございます。  また、核の不配備に関する決議案につきましても、この目的といたしますところは、核兵器の展開に対して一定の制限を加えるということで、先ほども申し上げていますような軍事力のバランスに好ましくない影響を与えるということで同じく反対をいたしたのでございます。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、何か核のバランスが必要なんだということを盛んに言いますと、ますますこれは核兵器の競争、こういうところに日本政府は踏み込まざるを得なくなる、このように私は考えざるを得ません。賛成したときも、有効な国際管理を伴わなければ効果がないということは、一番最初の賛成のときも挙げているわけですよ。いまも同じでありますね。そうじゃありませんか。その点は終始変わっていないんじゃないですか。
  37. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  平和と安全の維持のためには軍事力のバランスに依存するところが大きい点につきましては、従来とも政府の認識には変わりございません。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 それで核不使用について、まあ私、ソ連が好きだという意味じゃございません。ソ連の核使用を抑止する体制が必要であることは、これはもちろんでありますけれども、ソ連もしかし核不使用あるいは核不配備には賛成しているんですね。だから、ソ連の核を使用させないためには、ソ連にこの決議を守らせていくということがむしろ日本の核廃絶という国是じゃないでしょうか。いまのやり方はそういう日本の国是と矛盾をしている、こういうふうに私は思えてしようがありません。アメリカの方こそ逆に核を恫喝に使っている。でありますから、私は日本のこの核政策、アメリカの政策に何も加担する必要はないし、特に日本は被爆国でありますから、そういう意味ではいろんな問題もあるでしょうが、積極的に私は賛成していくべきだと、こういうふうに思います、不使用についてですよ。あるいは不配備について、あるいは製造、実験禁止について。外務大臣どうですか。
  39. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 核兵器の生産禁止あるいは実験禁止とか、核不拡散体制を広めていくとか、そういうことについては、日本政府は終始一貫国際場裏でそういう態度をとってきておるわけであります。ところが現実の面において、御承知のように、デタントと言いながらその間に非常な核兵器の拡張に努めてきたという、そういう実績をソ連は持っておると思うんですね。そしてこれはソ連側に言わすと、ヨーロッパにおいては東西核兵器は均衡がとれているということを盛んに言いますけれども、しかし現実には相当の懸隔がある、そして、その懸隔を背景にして、遺憾ながら一昨年のアフガニスタンの問題、あるいは昨年来のポーランドに対する圧力と、こういうことを考えていきますと、これは核の均衡、軍事力のバランスということを考えなければならないというようなことから、ただ単にその使用禁止と、そういうことでなく、ただいま最初に申し上げたような貯蔵の削減もしてもらいたい、核兵器の製造もやめてもらいたい、核実験、その前提になる実験もやめてもらいたいと、そういうことを繰り返し申しておるのでありますが、ただ、この使用禁止の点につきましては、先ほど国連局長の御説明を申し上げたとおり、その時々の情勢に伴って賛成、棄権、反対、こういう態度をとったと、こういうことでございます。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理、あなたはうちの方の武藤さんが衆議院で言ったときに、核兵器は必要悪か絶対悪かと聞かれたときあなたは、絶対悪だと、こう答えていますね。絶対悪なものをいまのようなことにどうしてなるんですか、核兵器のバランスというようなことにどうしてなるんですか。  もう一つ伺いますけれども、あなたは、三月十日はどういう日ですか知っていますか。
  41. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は衆議院予算委員会の際におきまして、武藤さんとの核の問題についての質疑応答の中で、人道的な観点から、核はこれは絶対悪であるということを申し上げました。私はいまでもそのように考えております。この考えは変わっておりません。ただ、これは国連の場といい、また国際的ないろいろな会議等の場におきましても、今日、このアメリカ、ソ連を中心とする東西間の核戦力の削減交渉その他にいたしましても、非常に深刻な計算と力のバランスということを考えながらこれが行われておりますことは、ここで論議するまでもない事態であるわけでございます。  たとえば、アメリカが欧州における戦域核の問題で、ゼロオプションを提案をしておる、こういう問題も核の廃絶という方向から見れば、これは私は大きな前進であり、そういう意味での大きな画期的な提案だと、こう思っております。私はそういう意味で、このゼロオプション、これを支持するものでございます。  そういうことでありますが、これもまたソ連の側から言いますと、それは現在ソ連が配備しておるSS2〇であるとか、そういうようなものを撤去することを前提とするということで、これは権衝を失するものであるといって反対をする。すべてがそういうような計算といろいろな思惑の上に行われておるこの国際場裏の折衝、こういうことを原子核兵器は絶対悪であるというような立場だけで、学問的な学者のようなそういう立場だけでやっていけないということも、これは政治をつかさどるわれわれとしては現実の問題として残念ながらそれに対処していかなければいけない、このように考えます。
  42. 竹田四郎

    竹田四郎君 三月十日。——総理、三月十日は何の日だと聞いたのですが。
  43. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 三月十日の大空襲、このことは私も銘記しております。
  44. 竹田四郎

    竹田四郎君 私も、この三月十日の東京の下町の大空襲の数日後、東京を通ったことがあります。まさに死体は累々、山のように積まれている。そして、まだ川の中では死体を探している。千葉へ行けばもう体じゅうをやけどで包帯した人たちが旅館にいた。あの何十倍、何百倍かの被害がこれから起きる。しかも、それは日本はそういう意味では経験をした国です。いまあなたの言うことを言えば、ソ連はこうするだろう、アメリカはこうするだろう、だから学者のような議論はできませんなどというようなことを言っている立場に日本はないと私は思うんです。もっと積極的に、どうですか、ソ連にもアメリカにも出かけていって、核兵器はやめようじゃないか、ほかのことはいろいろある、むずかしいこともあるだろうけれども核兵器は絶対悪なんだからやめようじゃないかと説得したらどうですか。前の外務大臣園田さんはそれをやってきたじゃないですか。そうして世界の人の共感をある程度得てきたじゃないですか。それをあなたにできないということはないじゃないですか。たとえば、核不配備の問題にしても、これは確かにソ連が提案国です。そして、最近の文学者たちの核兵器禁止の要求に対してブレジネフ書記長は、核を持っていない国については私の方は攻撃しませんよと、そういうことを言っているじゃないですか。なるほどこれは政治的な駆け引きかもしれませんよ、あなたの言うように。それに乗って、やめなさい、核配備しては困るということは言えるじゃないですか。日本が一体それによってどんなに損をするんですか。どんなに危険になるんですか。私はならぬと思う。ですから、私はあなたが幾ら非核三原則を広島平和式典の中であいさつしたところで、片方で核の不配備に対して反対の投票をしていたのでは一体どういうことになりますか。これは、いま世界じゅうに核の問題は、東ドイツでも西欧でも英国でもそしてアメリカの各州でもこの反核、核凍結の運動は世界全体的に起きているじゃないですか。こういう中でリーダーシップをとるのは、私は日本総理大臣だと思う。幸い日本はそうした意味では非核三原則を持っているし、また平和憲法を持っているんです。一番説得力があるんじゃないですか、あなたがそういうことをやるのが。あなたは今度の国連の軍縮総会に出ていかれるようでありますけれども、あなたはここで一体何を訴えるつもりですか。世界の人々からあなた置いていかれますよ。日本の国内でだって三千万の署名、各層に広がっているじゃないですか。国会の中でもそういう動きがあるんじゃないですか。あなたは総理大臣としては世界で一番初めに国連の軍縮特別総会に出ていかれる、こういうことを明言した。何を訴えに行くんですか、あなたは。
  45. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど来申し上げておりますように、究極においてわれわれは核の廃絶を目指して進まなければいけない、これは世界の真の恒久的な平和を確保する上から、また、人類の核からの惨禍を未然に防止するためにこれをやらなければいけない、こういう立場で取り組んでまいるわけでありますし、私はいまいろいろ構想を練っておりますし、これを実際問題としてどのようにしてわれわれがそういう目的に向かって効果あるステップを進めることができるかということを考えながら提案をいたしたいと考えておるものでございます。ただ、核の脅威、核からの惨禍、それがただ延びればそれでわれわれの目的が達するというものではないことは、これはもう大政治家である竹田さんは一番よく御存じのところであるわけでございます。われわれは究極の目的をいかにして達成するか、現実的に、それを考えながらこの問題にも取り組んでいかなければいけない、こう思っております。
  46. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもよくわかりません。  私は、ことしの正月にアメリカの上院で発表した「米ソもし戦わば」という報告書を読みました。これによりますと、一発によってアメリカでも数千万からの人が死ぬ、こういうアメリカの上院の調査報告書が出ておりました。いまのあなたの言っていることを見ますと、三月十日が百倍ぐらいになって返ってきそうな気が私にはするんです。あのしかばね累々とした、そうした日本の国土に化してしまうんじゃないか、そういうことで、あなたのところはいま何にもないわけです。こういうことで果たして世界の人を納得させることができるか。恐らくノーでしょう。  ここで伺いますけれども、五十三年の五月二十四日でしょうか五日でしょうか、多分五月二十四日でしょう、私の後で質問をなさる木村睦男さんが外七名で発議をされ、参議院の本会議で議決をされた決議があると思うんですが、読んでください。——政府知っているはずです、政府にいっているんだから。(「そんなの読んでもいいんじゃないの」と呼ぶ者あり)いや、私が読んだっていいんですよ、読んだって、相手がどれだけ理解しているかわからぬじゃないか、私が読んだんじゃ。だめですよ、これは相手の理解度だもの。
  47. 植木光教

    委員長植木光教君) 竹田君、答弁はだれに求めておられますか。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 軍縮課でもいいです。
  49. 門田省三

    政府委員(門田省三君) 参議院昭和五十三年五月二十四日の決議を読ませていただきます。     国際連合軍縮特別総会に関する決議  広島、長崎に原爆が投下されてより、すでに三十三年を経過し、その間あらゆる機会を通じ核兵器廃絶を訴え続けてきた日本国民努力にもかかわらず、現在、核兵器を中心とする果てしない軍拡競争が展開されている。このような国際情勢の中で、本年五月国際連合軍縮特別総会が開催されることは意義深いものである。  よってこの際、本院は、左のように決議する。  一 人類共通の崇高な目標である世界恒久平和と安全に到達するために全面完全軍縮をめざしつつ、今次総会において核兵器の窮極的廃絶、生物・化学兵器の禁止について、国際的合意に達するよう強く訴える。  一 我が国は、唯一の被爆国であり、非核三原則を国是として堅持するものである。よって、特に核兵器不拡散条約を真に実効あらしめるために、すべての核兵器国に対し、地下核実験を含めた包括的核実験禁止条約の早期締結及び核兵器の削減並びに核兵器が二度と使われないよう要請するとともに、同条約未加盟国の加盟について強く訴える。  一 非核武装地帯構想が、世界の平和の維持に重要な意義を有していることにかんがみ、適切な条件の整っている地域から、漸次世界の各地域に非核武装地帯の設置が実現するよう国際努力を要請するとともに、同地帯に核保有国による核攻撃が行われない保証を求める。  一 際限のない軍備の増強は、現在の国際社会にとって看過し得ない問題であり、通常兵器の国際的移転の規制、軍事費の削減を各国に強く訴える。  一 政府は、右各項目を尊重して、その実現に努力すること。  以上でございます。
  50. 竹田四郎

    竹田四郎君 恐らくこれとほとんど同趣旨決議が一日前に、五月二十三日に衆議院で議決されております。恐らくここにいる大臣諸公、その決議に参加をしているはずです。全会一致であります。しかも、この項目の最後に、「政府は、右各項目を尊重して、その実現に努力すること。」とわざわざつけ加えている。この決議は無視をしておられますか、どうですか、総理
  51. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そういう院の決議というものを尊重いたしまして、私どもはジュネーブにおける軍縮委員会におきましても、また前回の国連の特別総会におきましても、政府としてはそういう方向、そういう精神を体して努力をしておるわけでございます。来るべき特別総会におきましても、表現その他についてはこれはいろいろ工夫をこらさなければなりませんが、趣旨におきましては院の決議は歳として生きておるわけでございますから、そういう点を十分踏まえて努力してまいりたい、こう考えております。
  52. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういうことであるならば、いままでの決議に反対したということについて私どもはどうも理解に苦しむわけです。ことしはこういう決議については、核不使用あるいは核戦争の防止あるいは中性子爆弾の問題あるいは核の不配備の問題、同じようにことしも国連の総会に恐らく出てくるだろうと私は思います。国会決議を尊重しているということで、そのために努力をしているということであるならば、まさかことしは反対しないでしょうね。
  53. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほども申し上げましたように、決議の内容、提案者の意図、また国際情勢、そういう点を総合的に勘案をして判断をしたい、こう思っています。
  54. 竹田四郎

    竹田四郎君 大変私は、あなたのいまの答弁は国民は納得をしていない。これはいま映っているわけです、聞いているわけです、すべての国民が。私すら納得ができないものを何で国民が納得できるか、そのように私は思います。しかし、これをいつまでも私やっているわけにはまいりませんので次に移りますけれども、ひとつ真剣になってこの問題は考え直していただきたい、こういうふうに思うわけであります。  次へ移りますが、五十七年度予算に関連して、若干意見を述べながら質問をしていきたい、このように思います。  私ども社会党は、すでに申し上げましたように、平和国家としての日本が、防衛費の異常な突出や、あるいは防衛費が聖域にされて後年度負担をどんどんふやしていくというようなこと、あるいは米国のレーガン政権にコミットされてきているということ、こういうことについて賛成はできませんし、また経済協力にいたしましても、本当の人道的な意味で発展途上国、そういうところに人道的な援助を与えるのではなくて、紛争の周辺国に一種の軍事費としての経済協力ということで、きわめて危険な道を選ぶ予算であって、内需拡大を基本とするところの所得減税を避け、あるいは老人のための福祉を切り捨てて、子供を犠牲にした教育費の削減や四十人学級の先送りや公共料金の値上げ、こうした福祉国家から軍事国家への道を歩もうとするその企図には、明確に反対せざるを得ないと思うのです。ことしのような情勢の中でこういういびつな予算、これはやがてアメリカが歩む道であろうし、ソ連が歩む道であろうと私は思います。考え直してみる気はございませんか。
  55. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ございません。
  56. 竹田四郎

    竹田四郎君 非常に私は残念だと思います。こうした軍事予算を中心とした国の財政、必ずそれは経済を破局に陥れていくものだ、これは真剣にいま考えてほしい。ただ単に変える気持ちはございませんと言うだけでは、渡辺大蔵大臣、あなたの子孫に答えにはなりませんぞ。レーガンの道を再び踏ませるようなことがあってはなりませんぞ。このことは特に警告をしておきたい、このように思います。  次に、鈴木内閣の財政再建の道というものは私はもう放棄したのではないか、また実現不可能ではないのか、こういうふうに思わざるを得ないわけであります。補正予算で国債の減額幅を縮小したり、そして建設国債二千五百五十億、特例国債三千七百五十億、合計六千三百億の減額幅を少なくしている、こういうことであります。そしてまた、五十七年度の予算の一兆八千三百億の国債発行減額のうちに、特例債は当初の予定の三千五百億から、二千七百四十億円を増加して、建設国債をそれだけ減額をしてつじつまを合わせておりますが、これでは五十九年度の赤字国債をゼロにするという財政再建計画を放棄したことにならないのか。本年の内外情勢を見ても、五十六年以上の経済の悪い景況、こういうものが予想されるわけであります。こういうところから考えて、どうも鈴木内閣の財政再建計画というのはすでに崩壊した、失敗した、こういうふうにしか思えないわけですが、どうでしょう。
  57. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 五十六年度予算におきまして、二兆円の赤字国債を減らすという目標を掲げてやってきたことは事実でございます。ところが、御承知のように予想外の物価の安定、景気の立ち直り方のスピードが遅いというようなことなど、そこに史上最大の金額の災害、二年続きの冷害、こういうような災害がございました。そういうようなことのために、税収が見込んだよりも少ないということが予想をされる、一方には出費が増大をすると、こういうようなことで、われわれとしては、やはり幾ら緊縮予算と申しましても、災害が起きればそれに優先的に対応しなければならない、当然のことでございます。そういうような点から、五十六年度において一部特例国債の追加発行と建設国債の発行を余儀なくされたということは、残念ながら事実でございます。だからといって、それによって財政再建を放棄したとか、そういうようなことではございません。与えられた条件の中で最大限にこれはやっていかなければならない課題でございますから、それに向かって五十七年度予算も取り組んだわけであります。  五十七年度予算でなぜ一兆八千三百億円全額を特例国債で減らさなかったのかという御趣旨だと思いますが、これについては御承知のとおり、ゼロシーリングの去年と同じ枠の予算ですよと、そのために人件費が上がってもその中へ全部はめ込んでいらっしゃいということをやったものですから、たとえて申し上げますと、文部省予算一つを例にとりますと、教科書の無償は持続したい、これは切れない。それから私学助成の問題についてもこれも少しふえることであって、抑えるのが精いっぱいである。それから育英資金の問題も、これは有利子にできないかと言っても、八百億からあるわけですが、これも切れない。何を切るのですか、人件費はふえるのですよと。そこで、それでは学校の建てかえについて、まだ心配ないのがたくさんあるから、数%学校の建てかえを節約しましょうと、そういうことになっておる。その結果は、その財源たるべき建設国債が不要になった、要らないということでありまして、約四百億円要らないわけですから。似たようなものが農林省にもございますし、建設省の方では、経済成長によって自動車重量税初めガソリン税等の自前の自主財源がふえる。予算額は同じだと。したがって不足額は小さくなる。不足額が小さくなるということは、一般会計の持ち出しがそれだけ少なくなることですから、その財源たる建設国債が千四百億円程度不要になるということであって、節約とか、あるいは増収によって建設国債が不要になるわけですから、不要になるものを無理に発行する必要はないわけでありまして、それが二千七百数十億ということになるわけであります。では、一兆八千三百億全額を、そのほかに赤字国債をやれと、節減しろというと、どこでそんな節減をするのか。歳出をどこを切るのかという話になるわけでございます。ぎりぎり切ったところをさらに二千七百億切り込むといっても、現実的に非常にむずかしい問題がございますし、そうなるとちょっと行き過ぎではないか。余り極端にそんなに切っちゃったら、何といいますか、行革デフレというか、そういうようなことを言いかねないという状態にもある。したがって、われわれといたしましては、やはり経済情勢その他を見て、総額で一兆八千三百億円の国債減額にしたというのが事実でございまして、決してこれによって財政再建を放棄したとかどうとかということは全然ございません。
  58. 竹田四郎

    竹田四郎君 あなたは職業柄、税金のことは非常にお詳しいようでありまして、結構なことでございますけれども、あなたの頭の中には、経済を固定的じゃなくて経済を動かしていくというそういう着想に私は非常に欠けていると去年から思っている。太らせて税金を上げるという方向、こういう考え方が少しもあなたにはない。私は、去年うちの赤桐委員がここで述べたことに、非常に強く印象を受けました。というのは、減税という手段も一つだけれども、人事院勧告を早くやりなさい、それが景気浮揚のためにプラスですよ、そういうことをここで述べたはずです。ことしの暮れはどうだったです。私は横浜に住んでおります。伊勢佐木町の店、もう個人商店は売り上げ四割減ですよ。ことしのお正月、床屋さんの新年会に私は行ってみた。そうすると、床屋さんがこう言うんです。竹田さん、去年の暮れの床屋は七時でほとんど終わっていますよ。普通は八時、九時までやっている、そういう床屋が七時で店のカーテンを引いちゃっている。これは何を意味します。だから、人事院勧告による給与を出さなくちゃならないというのなら、もっと早く出しなさい。そうすれば商店街の意気込みが違う、気合いが違う。景気の回りも違ってくる。いませっかく出したあれは全部貯金になっちゃっているでしょう。消費に回っていないでしょう。金の使い方を知らない大臣だなと私は思いました、そのときに、残念でありますけれども、いまのお話を聞いていても、そういう意味では、まさにお金の使い方を知らない大蔵大臣だなあということしか私は言えません。  河本長官、十月−十二月の経済成長の計算がもうそろそろ出ると思うのですけれども、いつ出るのですか。もしいますぐここで数字が出ていないというならば、大体その目算程度でも結構ですから、教えていただきたいと思います。
  59. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 御案内のように、昨年の後半新指標に変えたものですから、作業が若干おくれております。しかし、もう三、四日もたちますと大体の数字が出てくるのではないかと、こう思っておりますが、大体のことを申し上げますと、内需の回復が非常にスローテンポである、そこへ昨年の秋ごろから輸出が非常に落ち込んでまいりました。世界的に不況で日本の物が売れにくくなった、こういうことがございます。それから、在庫調整がほぼ終わったものですから輸入の方が相当ふえてまいりました。そういうことがありまして、第三・四半期はむしろ貿易関係が足を引っ張っておる、こういう状態になっておりまして、あるいはマイナス成長というようなことになるのではなかろうか、こういうことでいまのところ非常に心配しておるのが現状でございます。
  60. 竹田四郎

    竹田四郎君 十月−十二月がマイナス成長になるということになりますと、まあ次の一−三月がどうなるかわかりませんけれども、これもうんと伸びるということは一応考えられませんね。そうしますと、五十六年度の修正した四・一%、実質、これは成長可能ですか、もっと下がりますか。
  61. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 第四・四半期は第三・四半期よりは若干よくなるのではないかと、こう思っておりますが、四・一%という五十六年度の経済成長目標は非常に苦しい状態になっております。
  62. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、あなたは税金の計算は非常にお上手ですからひとつ教えていただきたいのですが、そうしますと、この補正予算で減額をしました三十一兆八千三百十六億円、これは補正の税収額ですね。これは確実に確保されるんですか。いまのお話ですと、どうも五十六年度の成長率の四・一%、これももう少し下がりそうだということになると、この税収はどうなりますか。
  63. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 非常に私も実は心配をしておるところでございます。税収はやはり経済の動向に左右される、これは事実でございます。しかしながらまだ法人の申告等も出ておりませんし、業種によったはいい成績を出しておるところも実はございます。中小企業の方は伸び方が非常に悪い、これも事実でございます。しかしながら、いずれにせよ、全体のものはやはり五月の申告締め切り後でないと正確な数字は、見積もりでございますから、どうかはっきりわからないというのが正直なところでございます。
  64. 竹田四郎

    竹田四郎君 また企画庁長官に伺いますけれども、五十七年度は八・四%、名目、こういうお話でございますけれども、これはこの見通しができた当時から、河本さんはこれは努力目標だよというようなことをおっしゃられたことがございますね。そうすると、五十七年度の経済成長率八・四%、名目、実質五・二%、これはどうなんでしょうか、いきますか。
  65. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 経済は激動期にございますので、やはりこの変化に応じまして機敏で適切な経済運営を進めるということが、これからの経済成長の前提条件になろうかと思います。  そこで、努力目標と言ったようなことはございませんで、私が言いましたのは、昨年の秋、五十七年度の経済成長の作業をいたします際に、このままほっておけばどうなるかという作業をいたしましたところが、それは三・七か三・八ぐらいの成長であろう。それでは失業問題も非常に深刻になりますし、貿易摩擦も拡大をいたします。税収も減ってしまう。これは大変だから、ある程度の政策目標を加味して努力した場合にはどの見当の成長が可能であるかという計算もいたしました。ところが、ある程度の政策努力を加えていくならば五・二%成長は可能であると、こういう結論に達しましたので、五・二%成長という目標を設定したのでございます。  繰り返して大変恐縮でございますが、世界経済の非常な激動期でございますから、その変化に応じまして、やはりその都度適切な経済運営を展開していくということが五・二%成長を達成する絶対の条件だと考えておりますが、第二次石油危機が起こりましてからもう三年を経過いたしますので、おおむね世界全体がこの調整を終わったのではないかと、こういう感じもいたします。世界経済はいまは最悪の状態にございますが、権威ある国際機関とか、あるいは各国政府の見通し等を見ましても、後半からおおむね立ち直ってくる、そういう見通しも多いと、このように思います。そこで、これからはやはりそういう変化に応じた適切な経済運営をやっていかなければならぬと、このように考えております。
  66. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは認識かもしれませんけれども政府が八・四%を決めたときと現在の世界情勢、まあOECDの経済見通しはいまおっしゃられるようにことしの後半よくなるということでありますけれども、しかし世界経済を見ていると、ことしの後半よくなりそうもありませんな。よくなっているなら、もうそろそろ上向きになってなくちゃいかぬと思うのです。そういう点、あるいは国内の話でも、先ほど出た話を総合してみますと、やはりそんなに急にうんと伸びていくという感じは率直に言ってございません。  そうしますと、五十六年度の税収が落ちそうだと、それを土台に次の五十七年度の税収は計算されていると思うのですね。それは三十六兆六千二百四十億ですか。それはどんな計算で、成長率をどのぐらいに見て、租税弾性値をどのくらいに見でそういう数字というものをつくり上げているのですか。もしその成長率なり租税弾性値が狂ってくれば税収は当然狂ってくる、こういうふうに思わざるを得ないのですが、どうですか。
  67. 矢澤富太郎

    政府委員矢澤富太郎君) お答えを申し上げます。  税収の見通しは、たとえば二年先あるいは三年先と、かなり先の場合にはGNPの成長率の予想成長率に弾性値を掛けてマクロ的に算出をいたしておりますが、五十七年度つまり直近の予算に計上いたします見積もりにつきましては、個々のたとえば雇用とか賃金の伸びがどうなるかとか、あるいは生産とか物価の伸びがどうなるか、あるいは清酒、ビールの消費量、自動車、クーラー等の蔵出しがどうなるか、それぞれ個別の積み上げによって計算をいたしております。ちなみに五十七年度税収でございますが、源泉所得税につきましては賃金の伸びを六・九%、雇用の伸びを一・六%というふうに見ております。また、法人税につきましては生産の伸びを五・八%、物価の伸びを三一%というふうに見ております。酒税につきましてもたとえば清酒の伸びが四・八%あるいはビールが六%、これらは各業界の需要動向の聞き込みをもとにしたものでございます。そういった状況で、それぞれにつきまして個別の積み上げで税収の見通しを立てております。したがいまして、GNPをもとにして弾性値を掛けるという見通しの方法は、五十七年度予算、直近の見通しを立てる場合には使っておりません。
  68. 竹田四郎

    竹田四郎君 八・四%の成長率としていまの一つ一つの細かいことは私聞きませんが、弾性値はどのくらいになりますか。
  69. 矢澤富太郎

    政府委員矢澤富太郎君) 弾性値は一・六一でございます。
  70. 竹田四郎

    竹田四郎君 かなり弾性値を大きく見ているような感じがいたします。去年私はここで論議をしたときは、弾性値は十年くらいで見ますと一・二だと、少な過ぎるだろうと私が言ったら、いやそんなことはない、一・二だと言い張った記憶がありますけれども、ここへ来て簡単に今度は一・六などという数字を持ち出しているわけでありますが、そういうことにならないだろうというように私は思います。恐らくこれは、そのときに行ってみないとわかりませんけれども、二兆から三兆の税収減、そのぐらいのものは覚悟せざるを得ない。私はほかでも計算さしてみました。というのは、これは一番経済予測が当たっているのが京都大学のモデルです。そのモデルに、関西経済研究センターが中期財政モデルを組んでおりますから、それを連結をさしてもらいました。そしてこちらでいろいろと数字を、これを入れてくれ、あれを入れてくれ、こういう数字を入れて計算してもらいましたけれども、どうも六十年、五十九年、政府の中期展望に基づく税収の額とははるかに差がありますね。その二けた以下のたとえば中期展望による国債の額は五十九年で六兆五千二百億、六十年でも同じでありますね。それよりもはるかに大きな国債の数字でなければ、税収の毎年四兆ないし五兆の伸びを考えている中期財政展望、この数字にはならない。もしそれをやるとすれば、通関輸出ベースの伸びが一五・二という途方もない外需の依存率でやるか、税金をうんとふやすか、このほかには私の計算では五十九年度に財政再建ができるなどという数字は一向に出てこないわけです。これは私の簡単な計算でありますから必ずしも十分合っているとは言えませんけれども、しかしモデルの方は私の言うよりもはるかに高い見通しの価値を持っているモデルであります。それですらこうなんです。ですから恐らく税収はだめになる。公債は発行せざるを得ない。こうならなければ、経済は縮小再生産へ飛び込んでしまう。こういうふうに私はならざるを得ないんじゃないか、こう思います。  もう一つは公共事業です。ことしの五十七年度の公共事業は一体どのくらいあるんですか、全部で。
  71. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 中央と地方を合わせまして、全部で二十四兆と考えております。
  72. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は中央だけ計算しますと十四兆三千億くらいあると。これ地方のいまの数字は約十兆でありますから、もっとひどい結果になるだろうと思います。五十七年度は公共事業費の上半期の繰り上げというのはどのくらいになさったですか、前倒し。
  73. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 五十七年度公共事業を前倒し執行するという点についてはもう政府部内で合意ができておるのですが、さてどの見当を具体的にやるかということにつきましては、いま作業中でございます。
  74. 竹田四郎

    竹田四郎君 新聞によりますと七五%とか、あるいは八〇%前倒しをすると、こういう話でありますね。そうしますと、もし八〇%にしますと前倒し一〇%多くするわけでありますから、五十七年度の下半期は一兆七千億少なくなりますね。それだけ恐らく景気の息切れということが心配になるだろうと思います。そうなれば、それだけまた建設国債を発行せざるを得ない。こう考えてみますと、約一兆建設国債をよけい発行せざるを得ないというような事態に追い込まれるのじゃないですか。
  75. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 経済の見通しが非常にむずかしい。なかなかどこが計算してもぴたっと当たらない。世界各国みんなそうでございます。特に世界じゅうことしも前半はそうよくならないという状況の中でございまして、その中で日本は先進諸国の中では一番高い経済成長を遂げようというようなことでいろいろ工夫をしておるわけであります。  その一つとして、いまお話のあった経済を持続させるためのいろいろな手法、公共事業の前倒しを初めいろいろな手法をとりたいと思っているわけでございますが、後半どうなるかという問題については、これは世界の景気の情勢というものも見ていかなければならない。日本だけで経済は動いていくわけではありませんから、どうなるかということはその後の話でございまして、われわれとしては、したがって一刻も早く予算成立さしてもらって、用意したものを速やかに執行するということが先でございます。おぜん立てしたものを延ばしていくわけにいかない。法律その他年度内にみんな上げてもらって、そして早くにそういう心配のないように措置をしていきたい。それで半年あるわけですから、その後でどうなるかという問題はわれわれはそのときで考えていかなきゃならぬと、そう思っております。
  76. 竹田四郎

    竹田四郎君 日銀総裁お見えになりましたから、この問題はちょっと切らしていただきますが、いずれにしても鈴木総理、もう五十七年度は税収減、公共事業の前倒しによるところの減、世界景気は私はいまの話と違うと思うんです。世界景気がよくなるようなら日本の輸出は伸びたはずだ。伸びないのです。そうなってきますと、まさに来年、五十七年度は鈴木内閣にとって大変な年になると思うのです。もう週刊誌は書いてありますね。六月危機説というようなニュースまで実は出ていますね。恐らくその根源というのは、この財政問題が非常に大きなウエートを占めると思うのですね。ですから、私は真剣になって政府がこれからの財政政策というものを、ただ単に固定的なものとして考えるのじゃなくて、ダイナミックなものとして考えていただきたい。それてなければ——あなたは総理大臣ですからいいでしょう、さっき言った床屋さん、伊勢佐木町の商店街の人たちはどういう形になるか(発言する者あり)いや、これはすべてです。私は知っているからそこを言っただけです。でありますから、そういう点では真剣にひとつこの問題は考えていただきたい、また後でそのお話は申し上げるのですが。  日銀の前川総裁、御苦労さまでございます。  日銀は最近、短観、短期経済観測調査という三カ月ごとのを出しまして、前には十一月に出されて、今度二月に出されたわけでありますけれども、この四千六百八十社の調査であろうと思いますけれども、これを見られてどういうふうな景気展望をお持ちでございますか。
  77. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私ども、最近の経済状況に対する判断といたしまして、昨年来、個人消費あるいは住宅関連、余りはかばかしくない。それに伴いまして、主として中小企業の設備投資が余りよくないというところでございましたけれども、昨年の十一月ぐらいから輸出がやや足踏みになってまいりました。そういうことから、全体の景気の状況というものがそう変わったとも思いませんけれども、やや足踏みの様相になってきておるわけです。一方、在庫調整の方はほとんど完了いたしましたので、それが在庫が生産の圧迫材料になるという事態ではもうなくなっております。また、大企業の設備投資は依然として堅調でございますし、また企業収益も底がたい状態であるということから、企業マインドがここへきて大きく崩れるというような状態ではないというふうに思っております。  最近、いまお話がございました二月に短観をまとめました。これは企業から私どもが三ヵ月ごとにちょうだいしておりますアンケートの集計でございまして、その結果もほとんど同じような状態が出ております。素材産業は、在庫の圧迫がなくなりましたので、従来の停滞感がやや薄らいでいるということがございまするけれども、一方、いままで比較的よかった加工業種の方は、輸出の停滞ということもございまして、好況感というのはこれがやや薄らいでおるというふうな状態でございます。しかし、短観を見ましても、収益の方は依然として底がたい状態でございまするので、企業マインドそのものが崩れておるということではないと思います。ただ、景況の回復がはかばかしくないというのは事実でございまして、これからも私どもは十分景気の動向等を慎重に見守ってまいる必要があるというふうに考えております。
  78. 竹田四郎

    竹田四郎君 総裁、伺いますけれども、この企業短期経済観測調査には、下の方の企業の規模はどのくらいまで入っていますか。三十人以下の企業は入っていないんじゃないですか。
  79. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 中小企業は千八百社入っておるわけでございますが、中小企業でございますから、五十人以上ということになっておるというふうに思います。
  80. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういたしますと、率直に言いまして、小零細といいますか、そういう企業の数値は短観の中に入っていない、だから日銀の短観で、中小企業、しかもさっき言ったような企業の実態というものはこの中には入っていない、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  81. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 五十人以上でございまするから、五十人に満たないものは入っておらないわけでございます。まあどういうふうな名前になりますか、いわゆる零細企業と申しますか、あるいは個人企業、そういうものについてはこの短観の中には入っておりません。
  82. 竹田四郎

    竹田四郎君 この際、総裁に伺いたいと思うのですが、どうも私は余り景気は伸びていきそうもない、それが税収にすぐはね返ってくる、こういうことを考えてみますと、総裁としては、いま国内的にどこにどういう手を打ったら景気の回復にプラスになっていく点になる、こういうふうに思いますか。
  83. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私どもは基本的に、着実に景気回復が期待できるためには、インフレにならないことが第一であるというふうにかたく考えております。そういう意味で、私どもも従来から景気の点、もちろん無視しておりません。景気がよくなることは望ましいことであり、また内需、外需の均衡がとれることは望ましいことでございまするけれども、一方インフレにならないように、物価の安定が確保できるということが、長い目で見た景気の着実な回復につながるものであるというふうに考えております。
  84. 竹田四郎

    竹田四郎君 総裁も御承知だと思うのですが、私、ことしの予算関係のいろんな政府の出している書類の中に、金融政策の機動的な運営を図りという言葉がもう非常にことしの予算の特徴です。これは税収が少ないからそっちの方へ責任逃れをしているとしか私は思えませんけれども、総裁に伺いますが、いまの状態で金融の機動的な運営による経済対策というものは効果のあるものどんなものがありますか、教えてください。
  85. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融政策は機動的に運営ができるというところが特色でございまするので、私ども金融政策の運営に当たりましては常々機動的に運営するということを考えてきておるわけでございます。機動的に運営するという意味は、情勢の判断において予断を持たないで正しい判断をする、判断に誤りなきを期するということが第一であろうと思いまするが、その判断に基づきまして行動するときには機動的にするという意味でございます。そういう基本的な考え方で一昨年の夏以来私どもは金融政策の緩和政策をとってきておるわけでございまして、これがマネーサプライあるいは貸出金利あるいは金利全体、公定歩合も下げてまいりましたので、そういうことで緩和状態が実際にできておるわけでございます。そういう点から申しますると、着実な景気回復を期待するための条件は十分に整っておるというふうに思います。  いまどういう手が打てるかというお話がございました。ただ、私ども金融政策を運営してまいりまする上において、これを取り巻きます環境は非常に複雑でございまして、なかんずく内外金利差が非常に大きい、海外の金利が非常に高い、国内のインフレ率その他から申しますれば、国内の金利は下げられる環境にあるわけでございまするけれども、海外との関係から申しまするとなかなか下げられない、これを無理に下げますると円が安くなる、貿易摩擦をさらに激化する、あるいは物価の高騰を出すということがございまするので、現在私どもは、そういう面から申しますると金融政策につきまして新たに手を打つ選択の余地というものは非常に少ない、狭いというふうに考えております。
  86. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、あなたの方はこの金融の機動的な運営ということが一番たくさん書いてある。そうですな。非常に幅が狭いと、こうおっしゃっているんですが、あなたの方は具体的にどのようにしようとしているんですか。
  87. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いま前川総裁からお話があったように、幅は狭いのです。ともかくアメリカの高金利というものは、日本だけでなくてドイツでもフランスでも実際はみんな迷惑している。何とかこれはもっと下げてくれと、アメリカ自身だってこれでうまくいかぬじゃないかということもわれわれは国際会議でも言っておりますし、今後も言っていきたい。われわれといたしましては、たとえば住宅建設というような問題にいたしましても、公庫の枠を広げるとか、あるいは厚生年金の還元融資を取り入れて住宅促進をやるとか財形貯蓄にも助成をして融資制度を活用するとか、いろいろそれは金融問題についてもできる限りのことはやってまいりたい。  ただ、ここで利下げということはいまのような理由によってこれはできないということでありますし、また物価が上がるということになれば、当然これは機動的に運営して物価を抑えなきゃならぬということもいろいろあると思います。
  88. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣のおっしゃっていることよくわからないし、小さなことだけしかわからないので、本当に金融政策の機動的な運営というダイナミックさを感じないですね。  総裁に重ねてお伺いしたいのですが、総裁は日本の経済のファンダメンタルズという言葉を使っておりますけれども、いわゆる物価や、あるいは貿易収支や、そこの成長率や、そういうものを含めてファンダメンタルズと、こういうふうにおっしゃっているんだろうと思いますけれども、そのファンダメンタルズが悪くなったから円安になっているのですか、どうですかね。いままで総裁がおっしゃっているのは、日本はファンダメンタルズ、基礎的な条件が日本経済はいいから円はもっと高くなっていいはずだというのが総裁の御主張だったようでありますけれども、ファンダメンタルズというのが本当にいいのか悪いのか、本当によければ二百十円ぐらいを私は維持するであろうと思うのです。どうもこの辺に問題が若干あるのじゃないだろうかと思うのですが、どうでしょうか。
  89. 前川春雄

    参考人前川春雄君) ファンダメンタルズとは何だということになりますると、必ずしも全部定義があるわけではございませんが、いまお話がございましたように、物価あるいは国際収支あるいは経済成長、プラスの成長があるということが、経済的な面から申しましたファンダメンタルズであろうというふうに思います。そういう点から申しますると、円相場に関しましても、当然ほかの国よりもインフレ率は低いわけでございまするから、円が強くなってしかるべきであろうというふうに思います。現在、円相場が余り強くございませんのは、実は先ほども申し上げました金利差のために国際収支の総合収支が赤になっているということが大きな要因でございます。経常勘定は確かに若干のプラスでございまするけれども、資本勘定のネットの流出、純流出が非常に大きいために、経常勘定の黒を消してしまってなおかつマイナスが出ているということが円安の大きな要因でございまして、この資本勘定がマイナスになっておるということの裏には、先ほどの海外の金利が非常に高いということから内外金利差が非常に大幅である、そのためにとかく資本が海外に出やすい環境にあるということが主な原因だというふうに思います。  ただ、そういうふうな経済的な要因だけであるのか、さらにそれ以外の広い意味のファンダメンタルズというものもあるのではないかということの御質問だと思います。確かに日本の経済が持っておりまする問題といたしまして、原料の対外依存度が非常に高い、輸出依存度もまた高い。そういうことから、経済要因以外のいわば経済の体質というようなものが大きな要素になっておることは御指摘のとおりだと思います。  また、政治的あるいは軍事的な面による影響ということもございまして、日本の経済が、何と申しますか、海外からの影響を受けやすい体質を持っておるということが、とかく円相場にも大きな影響を及ぼしておるわけでございます。たとえばイラン、イラクの戦争が起きたとか、あるいはポーランド問題が起きるということになりますと、たちまち円が安くなるということがございまするのは、そういう経済問題以外のファンダメンタルズということが影響している面があろうかというふうに考えます。
  90. 竹田四郎

    竹田四郎君 あと一問で終わりたいと思います。  円高になるようにもっと介入したらどうだという議論がありますけれども、それには何らかの制約があるのですか。新聞の裏で読みますと、何か大蔵省が外貨準備高を減らさないようにそでを引っ張っているから、なかなか総裁は介入ができないのだ、こういううわさ話も実はあるわけでありますが、もっと円高になるように介入を大胆にしろという意見がありますが、どうですか。
  91. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 為替相場は、御承知のように円とドルとの比較、相対比価でございまするので、円だけではなかなか相場を動かせない面がございます。アメリカの方の要素が変わりますると相場に影響するということがあるわけでございます。介入によって一定の相場水準を、人為的にある水準を維持することができるかどうかという点でございまするが、これはいままで何遍も経験しておりまするけれども、介入によって相場水準を一定のところへ抑えるということがなかなか困難でございます。特にそういうふうな介入の場合には、日本ばかりでなしに、相手方あるいはそのほかの国々も、主要国が一緒になって行動するということが市場に対する影響が非常にいいわけでございます。  現在、アメリカの方の政策から申しまして、アメリカの方は介入をしない、不介入方針というものをとっておりまするために、どうしても介入に限界があるということが一つございます。  大蔵省日本銀行との間で、介入政策につきまして、これは毎日お打ち合わせをしながらやっておるわけでございまするけれども、そういう介入の実施につきまして、大蔵省日本銀行と意見が合わないということはございません。もちろん市場相手でございまするから、市場に対する見方というものが違うということは時にあり得るわけでございまするけれども、介入についての方針が相反するというようなことはございません。
  92. 植木光教

    委員長植木光教君) 前川参考人には、お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。
  93. 竹田四郎

    竹田四郎君 文部大臣に伺いますけれども、ことしは公立学校の施設整備費をたしか減額をされている、少なくされているように私は聞いておりますけれども、一体危険校舎というのはどのぐらいいまあるんでしょうか。そして、危険校舎の基準というのは一体どういうことなんでしょうか。たとえば東海地震が来るというところ、そういうところは一体どういう措置で危険校舎をなくする対策を進めているのか。私は、そういう危険校舎をこういうときにはむしろ積極的に進んでやった方が子供のためにもよければ、景気のためにもいいのではないか、こういうように思うのですが、何か少なくされているような気がいたします。そういう意味では、むしろ景気対策に対して積極的でないという感じを私どもは受けるわけです。これは一体、そういう数値をちょっと申していただきたいと思うのです。
  94. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) ただいま事務当局が参っておりませんので、危険校舎の数等については私自身は知悉いたしておりませんが、危険校舎の改築につきましては、昭和五十二年度の第二次補正予算におきまして、建物の耐用点数、従来四千五百点でありましたものを五千五百点に引き上げまして、これによって改築を促進しよう、あわせて景気の浮揚に役立てよう、かような改正をいたしたわけでございまして、従来継続しております。五十七年度におきましても市町村の強い要望にこたえまして、これを堅持いたしてもおるわけでございます。五十七年度の予算が減っておりますのは、近年、木造建物の比率が逐年減少してきておるわけでございます。したがいまして、市町村から提出しております計画にいたしましても、五十七年度におきましては、五十六年度に比して小中学校が十五万二千平米の減少、パーセンテージにして八・三%の減になっておるわけでございます。高校につきましては四万四千平米減少、比率にして二一・七六%の減になっておるわけでございます。この実態に見合いまして予算を減少させておるわけでございます。
  95. 竹田四郎

    竹田四郎君 文部大臣、どうなんですか。それで危険校舎がなくなったわけじゃないと思います。計画的には確かに少なくなってきていることは事実であろうと思う。こういう時期でありますから、むしろこういうところを伸ばしていくいい機会じゃないか。そうすれば土地を引き上げる要因も少なくなるのですね。もっと積極的にお進めになったらどうでしょうか。
  96. 柳川覺治

    政府委員柳川覺治君) まず、お尋ねの改築を要しますところの危険校舎の面積でございますが、千点の引き上げを行いまして、五千五百点の状態にあります五十六年五月一日現在の所要坪数は七百十九万平米でございます。従来の基準でございました四千五百点でとらえますと三百四十万でございますが、これを引き続き千点引き上げということで、七百十九万六千平米ということの実態でございます。  先生御説のとおり、危険校舎の前倒しによりまして景気浮揚ということは、それなりにゆえあることだと存じますが、現実に大臣がお答え申しましたとおり、現在木造の校舎が小中学校で一五%という実態でございます。そのうち危険校舎として改築を要するものが一二%程度ということでございますので、それなりに木造の比率が下がってきたということの相対的な関係がございます。  また、危険校舎の改築に当たりましては、当然にそれ相応の準備期間を必要とするということもございます。また、市町村の財政負担等の面からもございまして、早急な前倒しというのには、それなりの困難も伴うのじゃないかというように感じております。
  97. 植木光教

    委員長植木光教君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開し、竹田君の質疑を続行いたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  98. 植木光教

    委員長植木光教君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十七年度総予算三案を一括して議題といたします。     —————————————
  99. 植木光教

    委員長植木光教君) 渡辺大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡辺大蔵大臣。
  100. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 先ほどの竹田議員の御質問に対する答弁におきまして、国会結論が出たらそれに従うかという御質問がございまして、私は、国会国権最高機関でございますから、憲法も変えることができますし、法律も変えることができますと、したがって、国会でもし決まれば従うも従わないもないわけでありますと、当然、あたりまえ、従うのは当然であるということを申し上げたわけですが、憲法も変えることができるというのは、これは憲法の改正案を発議できるという意味で略して申したわけでございますから、御了承をいただきたいと思います。
  101. 植木光教

  102. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がございませんので若干飛ばします。  河本さんに伺いたいのですが、内需の拡大を図るために建設国債と赤字国債を区別することを検討する時期に来ているという御発言があったように新聞で承っておりますけれども、これはどういう意味なんですか。ちょっと説明していただきたいと思います。
  103. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 建設国債も赤字国債も国の借入金であるという点ではこれは同じでありますが、建設国債の場合は国の資産として投資効果が残る、あるいは産業基盤の整備、こういう投資効果が残る、こういうことにもなりますので、何でもかんでも借入金は悪だ、そういう感覚もありますが、しかし、一回この際、建設国債と赤字国債というものについて区別していろいろ研究してみたらどうか、こういう趣旨のことを言ったわけでございまして、建設国債は出す、そういうことを言ったわけではございません。
  104. 竹田四郎

    竹田四郎君 続いて河本長官に伺いますけれども、私は、いまのトリレンマといいますか、景気回復、貿易摩擦、財政再建、これを切り抜けるには内需の拡大以外にないと思いますが、河本さんはどうお考えになっていますか。
  105. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いまの状態を簡単に申し上げますと、世界不況のためにわが国の貿易が伸び悩んでおる、むしろ、減少傾向になってきた。それから内需の関係では、実質可処分所得がむしろ落ち込む傾向にここ二年間ばかりなっておりますので、消費が計画どおり伸びない、あるいは住宅がなかなか思うように建たない。住宅とか消費とかというのは中小企業と非常に密接な関係がございますので、したがって、中小企業の状態が非常に悪い、こういう状態になっておりまして、また公共事業もずっと横並びでございますから、その面からの景気刺激策は期待できない、こういうことにもなっておりますので、やはり日本独自の政策をいますぐやろうということになりますと、内需の回復策を考える、それしか景気対策としてはないのではないか、このように思います。
  106. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、去年ここで、特に中小企業の設備投資がふえないということは大変な問題じゃないか、景気の浮揚に対してこの面を考えなくちゃいけないじゃないかということをかなり申し上げたつもりです。そして経済企画庁は、五月、早々と底入れ宣言をして、これから景気はよくなるぞ、こういうようなことを去年はおっしゃったはずです。それからずうっと景気はよくなるかと思ったら、だんだんだんだん、暮れに迫るに従いまして景気は悪くなった。私は、経済企画庁は景気を見誤っていた、こう思うんですが、これに対して何か反省されている点はございませんか。あるいは経企庁の景況を示す幾つかの指標がございますね、先行指標とかいって、五〇%以上になればこれから景気はよくなるよというような指標もございますが、この指標もこのごろは全然当たらないですね。全然と言ってよいくらい当たらないんですが、これは一体どこに原因があるんですか。
  107. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 景気はやはり昨年の四、五月ごろで大底をついた、私どもはこのように判断をしております。それからやはり、緩慢ながら回復の方向には進んでおる、全体としてですね。このように判断をしておったのでございます。約六カ月間そういう傾向は続いたと思うんです。しかし秋の後半になりましてから、先ほども申し上げましたように、貿易が非常に減ってきた、内需はまだ回復していない、こういうことで、いま景気は完全な足踏み状態になっておる、こういう状態でございまして、まあ激動期でございますので、これはやはり景気は固定的に考えられない、常に動いておる、こういうように私どもも判断をしております。
  108. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、経済企画庁が景気を見通したり判断したりする場合の指標に、統計に問題があるのじゃないか。先ほども日銀総裁に私が伺った理由は、何人からの統計だと言えば、五十人以上だと。五十人から下の統計というものは入っていない。恐らく企画庁の統計もそうじゃないか。いまそれじゃ、そういう小さなところの、二十九人以下の事業所の統計を入れろと言ったら、そう簡単にいきません。そういうものを入れるような統計をこれからつくらなければ正しい統計というのは出てこないじゃないですか。いままでの高度成長みたいに、大きな企業が物をつくれば、それが中心でどんどん回っていく、その統計をとっていれば間違いないという時代ではなくなってきた。だからもっと中小企業の統計を整備する、このことが私は必要だと思うんですが、通産大臣はいまの中小企業というものをどういうふうにお考えですか、全体の地位の中で。
  109. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中小企業は、わが国の経済全体の中では非常に大きなウエートを占めておると思います。設備投資の面におきましても、全体の産業の設備投資の中では五三%という過半数を占めておりますし、あるいは中小企業の従業員も三千四百二十数万人ということで、全従業員の八割以上、八一%ということでございますかう、経済における中小企業のウエートというものは大変大きいわけでございます。したがって、中小企業が非常に力を失うということになりますれば、日本経済そのものが力を失ってくるという、こういうことにもなりかねない、大変重要な基盤を持った産業であると考えております。
  110. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣でなくて結構ですが、私は、最近は中小企業の方が生産誘発の力というものはむしろ強いように思うんですが、通産省はどういうふうにその辺はお考えになっておりますか、大企業と中小企業との、生産を誘発する力。
  111. 勝谷保

    政府委員(勝谷保君) どちらが強いかと言われても、比較しては見ておりませんが、ただ中小企業が、いまも大臣が申し上げましたように、従業員で八〇%でございますから、その家族を含めますならば、私たちの推測では六割を超す人口を占めているという感じがいたします。さらに、設備投資でも五三%を占めているということでございますので、中小企業分野の消費とか設備投資が伸びることが、わが国の景気を支える大きなファクターになるのではないかという考えを持っております。
  112. 竹田四郎

    竹田四郎君 中小企業庁長官、大変私残念だと思うんですよ。  中小企業庁ではございませんが、通産省の中ではそういう非常にいい論文が最近出ているんですよ。お目を通した方はございませんか。むしろそういう意味で、中小企業の力というものを再評価している人がおりますけれども、知りませんか。
  113. 勝谷保

    政府委員(勝谷保君) 残念ながら、どういう資料でございますか、定かでございませんが、私ども中小企業庁といたしましては、いまも申し上げましたように、個人消費の面、設備投資の面、あらゆる意味で中小企業がマジョリティーを占めておりますので、中小企業分野の活力こそ日本経済の礎であるという自覚と認識のもとに政策を遂行いたしております。
  114. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣、非常に残念です。通産省でそんなりっぱな報告を出しているのに、それをここにいらっしゃる人が目を通していないなんて、こんな残念なことないですね。どうですか。
  115. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中小企業問題に関する通産省の研究なら、もちろん通産省が出しておるわけですから、大体知っておるわけですが、その名前がわからぬものですから、見当がつかないわけですね。どういう表題になっているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  116. 竹田四郎

    竹田四郎君 あきれて物が言えません。  中小企業の最近の投資動向はどうですか。
  117. 勝谷保

    政府委員(勝谷保君) 残念ながら一けたの伸びを示しております。大企業が二けたを示しておるのに比べまして一けたでございますし、特に最近は投資の動向は沈滞ムードでございます。
  118. 竹田四郎

    竹田四郎君 中小企業庁長官、内需と輸出に対する大企業と中小企業の寄与度というのか、どっちがどのぐらいの役割りを果たしているかというようなことはわかっているんでしょう。
  119. 勝谷保

    政府委員(勝谷保君) これははっきりいたしました。私どもの方でつくった資料でございます。  中小企業は、最終需要の部門別生産誘発依存度につきまして、中小企業は個人消費が四六・八、設備投資は一、二・八、この内需によって七割近くを占めております。大企業はそれに対しまして六割程度でございます。これは私どものつくった数字でございます。
  120. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、やっぱり内需拡大と中小企業というのは、私は非常に大きな関係があると思うんですがね。これは何らかそういう意味で、通産省は、中小企業対策というのは先ほど言ったことしかないわけですか。ほかに、内需拡大という意味でもっと何か考えていらっしゃるんですか。これは労働省もどうですか。
  121. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま中小企業庁長官から説明をいたしましたように、中小企業の占めるウエートというのは、内需の方が外需よりは大きいわけでございます。したがって今日、中小企業が落ち込んでおる、これを回復していくためには、やはり内需の拡大を図っていくことが最も重要であると、私どもはそういうふうに考えております。  中小企業対策としては、御存じのように、金融対策としての中小企業金融公庫とか、あるいはまた、国民金融公庫に対しては、長期プライムレートよりは〇・三%という低い水準に抑えてきておりますし、あるいは商工中金も〇・二%というふうに低い水準を維持して投資の拡大を誘導しておるわけでございますし、同時にまた、三金融公庫の下半期における昨年度よりの資金量というものも三〇%近く確保しておりますし、五十七年度は大体六・一%資金量は伸ばしておるわけでありまして、そういう中で、われわれとしても設備の投資の拡大を図っていきたい。ただ、中小企業は相当設備更新の時期には来ておるわけですが、なかなか全体的に景気が思わしくないということで、意欲がまだ出てないという面もあるわけでございます。私たちは、内需を拡大する方策としては、河本長官も言われましたように、あるいは予算成立すれば上半期に集中して公共事業の前倒し、さらにそれに伴って中小企業関係の需要の拡大、さらに中小企業関係の官公需の前倒し等も積極的に図っていかなければならぬと思いますし、あるいは住宅対策ということも住宅関連産業、中小企業、非常に大きいわけですから、住宅対策を積極的に進めるということも必要であろう、こういうふうに思っておるわけでございますが、その他もろもろの中小企業対策、五十七年度予算、いろいろと用意をしておりますが、そういうものを動員をしてこれからの中小企業の振興といいますか、回復を図っていかなければならない。基本的にはやはり内需の拡大というものに対して総合的な政策を進めるということが、中小企業のこれからの回復の上においては一番重要じゃないかと、こういうふうに考えるわけであります。
  122. 初村滝一郎

    国務大臣(初村滝一郎君) お答えいたします。  中小企業は大体、大企業と比較して労働問題、賃金問題、すべてが低いわけなんです。そういうことを特に認識しまして、私どもは中小企業の方に重点的に雇用問題、資金問題、そういう方面でお力添えをいたしたいという決意を持っております。
  123. 竹田四郎

    竹田四郎君 労働大臣、最低賃金法というのがございますね。いま地域最賃でいきますと時給当たりでどのぐらいになりますか。——わかりませんか。
  124. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) お答えいたします。  地域別最低賃金の時給につきましては一時間当たり二十二・八円というところでございます。日額は百八十二円ということでございます。
  125. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間給は幾らと聞いている。
  126. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) 一時間当たり時間給は二十二円八十銭……
  127. 竹田四郎

    竹田四郎君 違うぞ。
  128. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) いや、昭和五十六年度における地域別最賃の……
  129. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間給。一時間の給料。
  130. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) 時間給でございますか。失礼いたしました。時間給は三百七十四円でございます、
  131. 竹田四郎

    竹田四郎君 労働省がこういう答え方をしてくれては困るんですよ。地域によって違うわけですよ。ですから、一つの幅があるはずですよ。それを答えなさいよ。
  132. 植木光教

    委員長植木光教君) 落ちついてしっかり答えてください。
  133. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) 府県別に申し上げますと……
  134. 竹田四郎

    竹田四郎君 いや、最低と最高。
  135. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) 最高は東京が四百二十二円でございます。鹿児島が三百三十九円ということでございます。
  136. 竹田四郎

    竹田四郎君 労働大臣、去年も六・四七%引き上げましたけれども、ことしも早期に五十円、時間給上げたらどうですか。一人、月にいたしますと一万円。そうすれば、これが大きな内需への方向に向いていくし、最近は大変給料が上と下で格差が開いてきております。下が低くなってきております。これを引き上げるということは、私はその意味では一兆円減税以上の効果をあらわすと、こういうふうに思うんですよ。
  137. 初村滝一郎

    国務大臣(初村滝一郎君) お答えいたします。  この最低賃金というものは、低賃金労働者の労働条件の改善を図ることが目的になっておるというふうになっておりますので、これはやはりいま労働大臣にすぐ上げろと言われましても、なかなかそういうわけにいきません。これは公・労・使三者構成による最低賃金審議会というものが各県にあるわけでありますから、その意見を尊重して決めなければならないと、かように考えております。
  138. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、いまの内需を拡大するということになると、そのぐらいのことしなくちゃいかぬと思うんですよ。そのことによって初めて全体の賃金が私は上がっていくし、内需の拡大につながっていくと思うんですよ。そういうことをこの中小企業対策の一つとしてしなくちゃいかぬと思うんです。  もう一つは、大蔵大臣、いまパートタイマーの、扶養家族であって、働けて税金のかからない限度というのは幾らになっているんですか、パートタイムの。
  139. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 九十七万円と思っております。
  140. 植木光教

    委員長植木光教君) いや、逆でしょう、逆だよ。
  141. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 七十九万円でございます。
  142. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣は、よくこれを私どもがふやせと言うと、働きゃいいじゃないか、もっと取りゃいいじゃないかと、こう言いますね。しかし、その七十九万円以上を取りますと、今度は税務署なり国税局が来まして調べますね。ことしは大変それを調べました。家庭争議まで起きた経験を私は知っておりますけれども。もし、そういうふうにしたら、これは亭主の方の二十九万円分は削られるわけですね。そのほかに保険料とかなんかもふえできますね。そうすると、もし七十九万円以上になって、幾らかの段階になれば、大体お二人の給与の計が一定の額に達しますけれども、ある金額までは、ただ働きしなくちゃならぬ。ペイするのに、ただ働きするのは、どのくらいただ働きしなくちゃなりませんか。これは三百万円の世帯で私は計算を命じてありますから出してください。
  143. 矢澤富太郎

    政府委員矢澤富太郎君) 御指摘のとおり、パート収入が七十九万円を超えますと、配偶者控除の適用がなくなるわけでございますが、それによりますだんなさんの方の租税負担の増加額は、夫の年収が三百万円の場合は三万四千八百円、四百万円の場合は四万六百円、五百万円の場合は四万八千四百円、六百万円の場合は六万九百円でございます。
  144. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうなるとね、何日ぐらいただ働きしなくちゃなりませんか。
  145. 矢澤富太郎

    政府委員矢澤富太郎君) パートがまあ、仮に一時間五百円といたしまして、八時間で四千円でございますから、三百万円の場合の三万四千八百円、まあ四、八、三十二、八日か九日働かなければいけない。
  146. 竹田四郎

    竹田四郎君 これはね、私の計算です。時給が五百円、七時間、一週間五日働く、そして一年じゅう働くとして九十一万円収入があります。これを七十九万円の線で抑えるとしますとね、四十五週しか働けないんです。七週間はただ働き、こういう計算になる。だから、年の暮れへ行くとパートのおばさんたち休むでしょう。約二カ月違うんですよ。それだけ働けなくなるという計算になるんですよ、三百万円で。ですから私は、この七十九万円というのは引き上げるべきだと、これが低賃金、賃金を引き下げる原因です、いま。それ以上働きますと、税金がかってくるからそこでやめちゃうんです。ボーナスも要らないと、こういうことになっちゃう。ですから、私は給与所得控除を二十万円引き上げなさいと、そのかわり上の方は、青天井はなくして押さえなさいと、こういう形で七十九万円というものを引き上げることによって非常に消費の拡大に私はつながっていく、こう思うんですよ。  ですから、先ほども通産大臣がおっしゃったように、中小企業の立場が大きくなるということは、ここの労働者の給料を少しふやしてやる。恐らく河本大臣、その中小企業者の雇用者所得は年間で約百兆に行くんじゃないですか、中小企業者の労働者の雇用者所得は。どうですか。
  147. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 雇用者所得の総額を百四十兆ぐらいと想定しておりますから、その六五%ぐらいでございますから、ほぼ百兆だと、こう思います。
  148. 竹田四郎

    竹田四郎君 ですからね、中小企業者の給与を少し多くしてやるということは、これがぐっとふえるということですよ。そのことが私は内需の拡大ということにつながると思うんですよ。  どうですか総理、私のこの議論は。これは総理、答えてください。
  149. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私もいま竹田さんの御意見を拝聴しておったのでありますが、政府としても十分研究をいたします。
  150. 竹田四郎

    竹田四郎君 研究するだけじゃだめですよ。
  151. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いや、わかっています。
  152. 竹田四郎

    竹田四郎君 これはここをふやさないと、いまの貿易摩擦もどうにもすることできない、税金もどうすることもできない、景気もどうすることもできないということだから私は提案している。どうですか、今度は大蔵大臣。
  153. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは税金の話と給与の話は別な話だと私は思いますね。
  154. 竹田四郎

    竹田四郎君 別の話じゃない。同じだよ。担当が違うというだけですよ、あなたの。
  155. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いやいや、要するに七十九万円まで無税で、しかも扶養家族になれるというのをまあ百万とか幾らとか、いま二十万ぐらいふやせと言っているわけですね。だから、ふやせということなんです。これは、税金というのはやっぱり公平の原則というのが一方にありまして、そのバランスが崩れますと、みんなががたがたになっちまう。そこに実は問題があるわけなんです。  たとえば、普通の奥様方は二十九万、幾ら家で自分の夫のために尽くし、養育をし、子供のめんどう見て、洗濯やいろんなことをやっても、二十九万円しか要するに扶養控除を認めてもらえないわけですね。実際は、奥さんがいなければ課長になれなかったとか、あるいはまあ選挙で当選しないとかいう人もあるかもわからない。しかし、それにもかかわらず必要経費は、必要経費といいますか扶養控除は二十九万円しか認めてくれない。ところが、奥さんは家事のことやその裏働きをやらないで出稼ぎに出れば、そのたくさんのものを非課税で認めるということになると、そういう人とのバランスという問題がございます、一つは。そこに大きな税法上の矛盾があります。  もう一つは、給与所得控除だけを上げるという話は、これは仮に、よくこれは国会なんかで言われるんですが、どうも魚屋さんとか青色申告をやっている家とサラリーマンの家とでは、所得制限等があって、保育所に入っても、向こうがいい暮らしをしておりながら出す金は少なくて済んでいると、けしからぬという話がよくあります。これがもっと拡大します。なぜかと申しますと、仮に一家で五人の人が所得分散をして、青色申告なり同族会社でやっているとすれば、二十万円ずつ一人について非課税にすれば、百万円その一家族は非課税になっちゃうんですから。片っ方は、奥さんが子供がおって、主人のために尽くして、主人が月給が上がってもそれは二十万円しか非課税にならないという、そういう矛盾が大きく広がるという問題があります。  いろいろ問題がございますので、これらの問題は、別に働いて悪いというわけではございませんから、所得が多くなれば、共働きになって百万とか二百万とかという俸給を受ければ、当然扶養家族から外れて奥様は奥様だけの所得者になるというだけのことでございます。基礎控除その他を上げる場合には、そういう全体の問題を絡めてやらなければならないので、パートに出ている人だけに特別にそれ以上に恩典を与えるということは、いろんな矛盾を生むということも御承知おきいただきたいと存じます。
  156. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理、いま全然矛盾なしでこのトリレンマというんですか、三重苦を回していこうなんということできますか。どこかで突破口をつくって回していく以外にないでしょう。そうしたら、きれいごとばかり、たてまえ論ばかり言っちゃおれないですよ、いまは。特に大蔵大臣、そうでしょう。何か言えばあなたは公平、公平と、こうすぐ言う。こんなに不公平があって公平だと、こう言う。もう少しどこかでやっていかなきゃならぬでしょう。  河本さん、ことしはどのぐらい雇用者所得を伸ばしたらいいですか。あなたのところは六・九%ですね。六・九%だとすると、それを春闘に直すとどのぐらいになりますか。
  157. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 六・九%というのは一人当たりの雇用者の伸びを想定しておるわけでありますが、全体といたしましては、雇用者の数もふえますので、八・六と考えております。  それで、その場合に一人当たりのベースアップは幾らかということでございますが、雇用者所得とベースアップとは概念が違いますので、幾らだと言うわけにはまいりません。たとえば雇用者所得の中には残業とかボーナスとか、それ以外のものも若干入っておりますので、概念が異なっておると、こういうことでございます。
  158. 竹田四郎

    竹田四郎君 正確に言うと、概念がそういうことであるだろうとは思いますね。しかし、大ざっぱに言って、去年は七・七%で雇用者所得の伸びが七・五%、〇・二%ぐらい低い。それをことし直していくと大体七・一%ぐらい。七・一%ではあなたのおっしゃっている三・九%の、実質、民間の消費支出の伸び三・九%にいきませんよ、絶対にいきませんよ。少なくともこのいわゆる大企業の春闘のベースアップというのは、さっきのような最低賃金を上げるとか、七十九万円の基礎控除を上げるとか、こういうことをしない限りは、一〇%以上の春闘のベースアップをしなければ、企画庁の言っている数字になりませんよ。どうですか。
  159. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 実は、昨年は当初一人当たり七・五%、全体としては九・二%を想定をしておりましたが、大企業のベースアップは比較的よかったのですが、中小企業の状態が、先ほどるるお話しのように予想外に悪いと、こういうことで実際の雇用者所得は一人当たり六%前後しかなっていないのではなかろうか、七・五%を相当落ち込んでおるのではなかろうかと、こう思っております。
  160. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理、あなたベルサイユ・サミットへ近く行かれるようでございますけれども、いまのお話を聞いていて、そして政府がことしうんと使っている言葉に金融政策の機動的運営と、こういうのがある。これは、やっぱり一番邪魔をしているのは、アメリカの高金利が一つ大きな邪魔をしておる。あなたサミットへ行って、この問題どういうふうにレーガンに言いますか。
  161. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今度のサミットに限ったことでございませんが、この前のオタワ・サミットの際におきましても、またカンクンで私、レーガン大統領にお会いした際におきましても、この点は強く指摘をいたしまして、その是正方を強く要請をした経過もございます。また御承知のように、OECDでありますとか、それから主要先進国の蔵相会議等でも、経企庁長官やわが方の大蔵大臣からも、機会あるごとにその点は強く申し上げておるところでございます。今度のサミットにおきましても、ただいま準備会のPR代表の諸君でいろいろ議題その他を整理をいたしておりますが、私もシュミットさん、今度また近くミッテラン大統領もお見えになります。これらの首脳とも十分意見の交換をいたしまして、御指摘のように、アメリカの高金利の問題は世界経済に大きな影響を及ぼしておる問題でございますから、私どもも大きな関心を持っておりますし、この是正方について強く働きかけていきたいと、こう思っております。
  162. 竹田四郎

    竹田四郎君 幾ら言っても下がらないじゃないですか、ちっとも。上がるばかりじゃないですか。そして為替はああいう状態でしょう。根本はアメリカの軍事経済だと思う。この問題を私は強く言わない限りは金利は下がっていかない。今度は実現してくださいよ、アメリカの金利を下げるのを。同盟国でしょう、日本は。そのぐらいのことはやったっていいじゃないですか。どうですか。
  163. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは、世界経済の再活性化を図るためにどういう施策を今度の先進国首脳会議で取り上げるかということを、いろんな面から検討しなければならない課題でございます。あなたのおっしゃるようなことにつきましても、私どもは前にもしばしば申し上げております。いま軍備に使っておる金、資源を軍縮、軍備管理を通じて、これを低位に、バランスをとりながら、均衡をとりながら軍縮等で引き下げていく、その余力を経済の底上げ、経済の再活性化に使うべきではないか、特に第三世界、開発途上国等の援助に回すことが必要であるということも申し上げておるわけであります。そういう点につきましては関係各国とも十分協議をいたしたいと、こう思っております。
  164. 安恒良一

    ○安恒良一君 関連。
  165. 植木光教

    委員長植木光教君) 安恒良一君の関連質疑を許します。安恒君。
  166. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は一月二十九日の本会議で、総理並びに関係大臣に産業用のロボットが雇用に与える影響についてお聞きをしたのでありますが、新聞の報道によりますと、今度のパリ・サミットで参加国は産業用のロボットの発達などが、技術革新が雇用や経済成長に与える影響について議題にするということが大きく報道されておりますが、政府としては準備会の段階でそのような議題を受け取られたのかどうか。それから政府としてこれらの問題に対し臨まれる態度について、サミットでありますから総理からのお考えをお聞かせいただきたい。
  167. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いまベルサイユ・サミットにおいて取り上げる議題につきまして、準備会合でいろいろ代表が協議を進めております。去る二月の会合の経過も報告を受けておりますが、いまお話が出たような産業用ロボットの問題は出ておりません。しかし、これからまだ時間がございます。世界経済の重要な、関連する諸問題につきましては取り上げて検討されることになるわけでございますから、いまのところまだそういう報告は受けておりませんが、私どもはその問題につきましても関心を寄せておるところでございます。
  168. 安恒良一

    ○安恒良一君 いまのところ受けてないというんですが、新聞はかなり具体的に世界的レベルでの技術革新を管理する原則づくりが必要だということで四項目、フランス側の考え方を具体的に提起をしています。  そこで、私はロボットを導入する際に、人間との関係において論理性を考慮しなけりゃならぬと思います。ユダヤ系のロシア人でありますが、アイザック・アシモフが一九五〇年に提唱しましたロボット憲章とも言うべきロボット工学の三原則ということについて、総理、御承知でしょうか。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 産業用ロボットにつきましては、現在わが国においても相当幅広く活用されておりまして、大体七万五千台ぐらいあると言われておりますが、その中で高度なロボットは二万台ということで、世界の中で七割が日本でいま利用されておるわけでございますが、これからの技術革新の時代を迎えまして、このロボットの生産性を高めていく、技術革新の波に対応していく上における意味というものは非常に重要になってくると思います。しかしまた、反面、雇用の問題も将来出てくるわけでございますし、そういうものを含めて、現在通産省としてはロボット産業動向調査委員会というようなものをつくりまして、総合的な立場で産業用ロボットに関していろいろと検討を進めておる段階であります。
  170. 安恒良一

    ○安恒良一君 私が聞いたことは、ロボット工学の三原則を御承知でしょうかと聞いているんです。
  171. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 教えていただきたいと思います。
  172. 安恒良一

    ○安恒良一君 第一条に、ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を見過ごすことで人間に危害を及ばしてはならない。こういうふうに第一条にあります。そこで、御承知ないんですからやむを得ませんけれども、私がお聞きしたいことは、この第一条の人間に危害を加えてはいけないという解釈ですが、私なりに解釈しますと、ロボットが人間に対して物理的に危害を加えるということだけではなく、人間の上に君臨をしたり、人間を阻害することまで含まれているものだというふうに思います。たとえば一部の人間が導入して、その導入した人だけが多くの利益を得る。その反面、労働者が労働市場から締め出される、こういうことも含んでいるというふうに私は思いますが、その点の見解はいかがでしょうか。
  173. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 産業用ロボットというのは非常に危険な作業であるとか、過酷な労働であるとか、あるいはまた単純な労働にこれが活用されておるわけでございまして、現在においては、この産業用ロボットの役割りというものは非常に私は大きいと、こういうふうに考えております。将来的にはいま御指摘にあるような問題点はいろいろと検討をしていかなければならぬ課題ではあると、こういうふうに思います。
  174. 安恒良一

    ○安恒良一君 もう二分二十四秒しかありませんから、どうかこの次、私が総括に立つときにやりますので、ロボット工学三原則をひとつ勉強してきていただいて、答弁をしていただきたい。私がお聞きしたいことは、やはり雇用問題への影響を非常に心配をしているわけですから、もう時間がありませんので、きょうはこれで終わりたいと思います。改めてまた労働大臣、また通産大臣とやりたいと思います。
  175. 竹田四郎

    竹田四郎君 官房長官にお聞きしますけれども、F4について、これは官房長官防衛庁長官が、どちらかわかりませんけれども、この前は参議院でも御審議をいただきたいというお話になったわけですね、補正予算のときに。衆議院ではかなりいろいろな議論をされているわけでありますけれども参議院ではきょうが初めて、始まったばかりでありますからまだ審議はされてないわけでありますけれども、私どもは集中審議の中でもできたらこのF4問題というのは少し討議をしたいと思っております。また予算的にもきょうもやりたいと思って資料は持ってきたのですけれども、実はそこまでいかないわけでありますけれども、その集中審議が終わらない限りはひとつ執行停止ということは続けてほしい。もっと私どもこれを審議しないと大変むだ遣いもあるような気がしておるんです。そういう意味でどうなんでしょうか。
  176. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては、先般、当委員会において補正予算を御審議願いましたときに、委員長の御仲介がございまして、政府といたしまして当委員会が本予算を御審議されます際に重ねて論議する必要がある。したがって、政府としてはその時期まで予算の執行を停止しておくことが適当であると、こういう判断を委員長の御仲介の結果私どもとして持つに至りまして、今日まで執行停止をいたしておるわけでございます。  なお当時、総理大臣からも申し上げましたように、政府といたしましてはできるだけ早く本件の執行をいたしたいという希望を持っております。この点は委員会にも申し上げたところでございますので、先般、委員長の御仲介によりまして、御審議がある程度ございますまでは執行を停止をいたさなければならないと考えておりますが、同時に政府がそのような希望を持っておりますこともどうぞ御参酌をいただきたいと存じます。
  177. 竹田四郎

    竹田四郎君 通産大臣、いま日米の貿易小委員会が行われているわけですが、これはどんなふうになっておりますか。
  178. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) きのうときょうにかけまして小委員会が行われておりまして、日米関係についての貿易問題についての総括的な論議が行われておりまして、アメリカ側から日本に対してさらに広範な市場の開放を強く求めてきておるわけでございますが、その内容につきましては新聞等にも報道されておりますが、われわれから見て、まだ事実誤認に基づくものもずいぶんあるのじゃないか、こういうことで、わが方としても反論をいたしておる段階でございますけれども、私どもはきょう、きのうとの日米小委員会でのアメリカ側の主張、わが国の主張、全体的に判断をしながら今後の貿易摩擦解消に向かっての対応策を考えていかなければならぬと、こういうふうに存じております。
  179. 竹田四郎

    竹田四郎君 外務大臣、近く訪米されるそうでありますけれども、どんな任務で、どんなことをお考えで行くのか、この貿易摩擦についてはどういう態度で行かれるのか。
  180. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 近く訪米することにいたしておりまして、その際当委員会にも御迷惑のかかることがございますのでお願いをしておるわけでありますが、二十日から二十五日、参りたいと思っております。そして二十二、三と、レーガン大統領あるいはブッシュ副大統領、ヘイグ長官等とお会いする予定でありますが、いま申し上げたその顔ぶれでおわかりのように、今回私の使命といたしましては、大体国際情勢一般につきまして各角度から協議をいたしたい、こういうことでございますが、もとより二国間の重要課題である貿易問題にも触れざるを得ないと思っておりますが、貿易問題関係については、ただいま安倍通産大臣がお答えをしておりますように、きのう、きょうと貿易小委員会がございましたので、その討議の結果を踏まえましてどのような日本側の意見を言うか、これはこれから整理をして準備をしてまいりたいと、このように思っております。
  181. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理、最近ガットの事務局長のデュンケルという人がハンブルクの東アジア協会の夕食会で演説をしております。
  182. 植木光教

    委員長植木光教君) 竹田君、時間が参りました。
  183. 竹田四郎

    竹田四郎君 はい。  これによりますと、「“日本問題”に対する唯一の恒久的解決は、欧米経済が生産性を日本の水準にまで引き上げ、(日本の)挑戦を受けて立つことである」と、こういうことを言っておりますけれども、これは御承知のとおりだと思うんですが、これについてはどういうようにお考えですか。
  184. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、ガットの事務局長がそのような率直な、ヨーロッパにおいてそういう御意見を述べたということは、非常に勇気のある正しい御発言であるというぐあいに評価をいたしておるところでございます。今日の貿易摩擦は、日本とアメリカ、日本とECだけに存在するのでなしに、アメリカとECの間にも存在いたします。これは各国の経済が、先ほど来お話が出ておりますように、非常にあらゆる面で困難な事態に直面をしておる。雇用の問題にしても、あるいは国際収支の問題にしても、いろいろみんな苦しんでおる。そういうところからこの貿易摩擦の問題も発生してきておる、そういう根本の問題を解決しなければ私は貿易摩擦というのは解消できない、こう思っております。そういう意味で、ガットの事務局長がおっしゃったこと、日本に劣らないような競争力をつけよ、合理化を図れ、こういうことは私は正しいお考えである。同時にまた、日本としてなすべき点があるならばできるだけ改善もし、国際的な協力もして、そして世界経済の再活性化、貿易摩擦の解消の方向に日本としてのなすべき役割りも果たしていきたい、こう思っております。
  185. 竹田四郎

    竹田四郎君 終わります。(拍手)
  186. 植木光教

    委員長植木光教君) 以上で竹田四郎君の総括質疑は終了いたしました。     —————————————
  187. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、木村睦男君の総括質疑を行います。木村睦男君。
  188. 木村睦男

    ○木村睦男君 鈴木総理は一昨年大平総理の亡くなられました後を受けて、戦後東久邇内閣以来十五代目の総理大臣になられたわけでございます。この過去十四人の総理の方が、百年来とも二百年来とも言われる非常な激変の中で今日の日本を築いてこられ、そして、顧みますというと日本が独立しましてからも三十年、安保条約ができまして以来も三十年、そしてその日米安保条約の中で今日のように想像もできなかったような経済大国日本になったわけでございます。  総理は先般本会議で所信を表明されましたが、その中で、当面緊急な課題として、行政改革と財政再建、そして貿易摩擦の解消、これに全力を挙げていくということを言われたわけでございます。同時に、国際情勢の認識においては、東西間の緊張が緩むことは全くなくてむしろ非常に緊張が激化しておる、こういう国際社会の中で日本はどうして生きていくかということに全力を挙げて努力いたしたいという旨の所信表明がございましたが、この機会にいま一度国民の前にわかりやすく、今日の時点に立ってのこういった総理の御決意に関連しての方針なり、御決心を改めてお聞きしたいと思います。
  189. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま内外の情勢を見てまいりますときわめて厳しいものがあると存じます。国際情勢につきましては、アフガンに対するソ連軍の軍事介入、またポーランドの緊迫した情勢、あるいはきわめて混沌とした中東の和平の行方、アジアにおきましても、インドシナ半島の諸情勢、極東におけるソ連の軍事力の増強等々、いろいろな状況から判断いたしましても、非常に国際情勢は厳しいと私は認識をいたしておるところでございます。また、世界経済、国際経済の面から見てまいりましても、第二次石油危機の後遺症、これはいまだに完全に脱し切れていない、そういうようなことから、深刻な不況、インフレ、失業、国際収支の悪化、そういう問題がございます。特に、開発途上国と第三世界、石油を産出しない国々は、五千億ドル以上の累積赤字、そういうものを抱えて非常な経済的な困難な事態に相なっておると思います。そういうような国際政治情勢、経済情勢からいたしまして、私は、恒久的な平和をそこに確立をする、安定をする、そして人類の幸福を確保していくということは今日の最大の課題である、このように考えるものでございます。  そういう中で日本は、いまお話がございましたように、われわれの先輩、国民の皆さんに真剣に日本の戦後の再建と復興のために御尽力をいただいて、自由と民主主義、そして自由経済体制のもとに今日の日本の安定と繁栄を確保することができたということは、私どもは大変感謝にたえないところであり、われわれの先人の努力に深い敬意を表しておるところでございます、しかし、それを掘り下げて見てまいりますと、確かに日本の経済は先進工業諸国に比べても非常にうまく運営がなされて今日まで至っておりますけれども、財政の面からいたしますと、大変な累積赤字を抱えておりまして危機的状況にございます。これを今日このまま放置いたしますれば、財政の対応力、回復力というものを失う。硬直化しておるということでございます。新しい時代、八〇年代以降二十一世紀に向かっての新しい時代は新しい政策を求めておるわけでございまして、これに機動的に有効に対応できる行政並びに財政の体制を確立するということが、私はわれわれに課せられた大きな仕事である、任務である、このように考えておるわけであります。そういうような観点から、私は、行政改革と財政の再建、これを内閣の大きな政策課題とし、この国民的課題に全力を挙げて取り組んでおるところでございます。  また、日本の経済が、国際経済の中でこのような比較的恵まれた状況下にございますけれども、前途はなかなか容易でない。特に貿易の面からいたしまして、貿易摩擦というものが非常に緊張状態にまで発展をいたしておるわけでございます。貿易で国を立てておる日本としては、この貿易摩擦の問題をできるだけ早く解決しなければいけない、この経済問題を政治問題に発展させるようなことがあってはいけない、こういうような認識に基づきまして貿易摩擦の解消のために努力をいたしております。そのために、東京ラウンド、関税の二年分前倒しを行いましたり、また輸入手続の簡素化等々の諸施策を進めようといたしておるわけでありまして、こういう点を御理解を賜りまして御協力お願いいたしたい、こう思っております。
  190. 木村睦男

    ○木村睦男君 過去におきまして非常な高度経済成長を遂げ、第一次、第二次の石油ショックも切り抜けた今日の日本でございますが、そのツケが今日こういう状態になって、総理が財政再建ということを強く言われ、五十七年度はその第二年目に入るわけでございます。財政再建と行政改革とは切っても切れない関係にあるわけでございますが、五十七年度も四十九兆七千億の予算を編成された。これは対前年の伸び率におきましては、特に一般歳出の規模は一・八%の程度で、過去二十年にわたっていまだかつてないという非常な緊縮ぶりでございます。そういうふうに非常な決心をもって実行されておられますけれども、昨年の秋ぐらいからどうも国民の間では、総理の財政再建に対する熱意が多少冷めたのじゃないだろうか。昨年の米価の値上げのときの状況あるいは人事院勧告の実施、こういうことを見ましても、国民の、公務員であるところの国家公務員初め、率先してこの乏しきに耐えるときに、ついにああいった人事院勧告をそのままのんでしまった、多少の修正がございましたが。そういうことで、やや熱意が後退しているのではないかというふうに考えている節もあるわけでございます。また、行政改革につきましても、先般、中曽根長官がこの夏に出ます答申を二回に分けて一回は秋にするというふうなことを言われて、臨調の方でもかなりこれには反対をいたしておるようなことも新聞に出ております。こういうことも、行政改革についても多少後退しておるのではないかというふうな不安を持っております。この機会を逃したらいずれもとうていできない重要な問題であります。それだけに私は、非常に御苦労は多いと思いますけれども断固としてこれはひとつやり抜いていただきたい。改めてこの点について総理並びに行菅大臣の御決意を承りたいと思います。
  191. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 行政改革と財政再建、これは不可分のものであり、私は表裏一体のものととらえてこれに努力をいたしておるところでございます。この財政再建の問題につきまして臨調からも第一次の答申をちょうだいいたしました。また、国会の御論議を通じまして各党各会派の御意見等も伺い、広く国民世論にも耳を傾けてこれに取り組んでおるわけでありますが、いま一部にございますところの、公務員の給与を抑制的にすべきだという答申があったにかかわらずそれがついに不発に終わった、不徹底に終わったというような批判がある、こういうことでございますが、私は、国会の御論議等を通じまして、とにかくボーナス等九百億に近い犠牲を公務員諸君に払ってもらいまして御協力をいただいたところでございます。こういう点につきましても、国会の全体の空気からいたしますと、ああいうことをなし得たのは国会の方々の御理解、御協力によるものである、これは私は財政再建にもそれだけ寄与しておる、こういうぐあいに確信をいたしております。  それから生産者米価につきましては、あの程度の米価の改定、これは全く微調整でございます。もう問題にならないほどの微調整でございまして、都市労働者等がベースアップも行われておるということからいたしまして、私はあれをもって政府の財政再建に対する腰が砕けたとか、そういう御批判は当たらない、このように考えておるわけでございます。今後とも私どもは、五十九年特例公債依存の体質を脱却するという目標、これは最低の財政再建に対する目標でございますが、これは必ず達成をする、国会の御協力を得ながらこれをぜひ達成をしたいという信念において変わりのないということを申し上げておきたいと思います。
  192. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政改革が、今日ほど国民の関心を呼んだことはないと思います。また、国会におきましても、これぐらい御熱心に論議されておることもないと思います。これは戦後三十数年に及ぶ行政の実績を見まして、この機会に思い切った改革をやらなければもう二十一世紀までできないと、そのように議会人も国民の皆さんもお考えになってこれだけ御支援いただいているものと思いますし、特にジャーナリズムの皆様方の御支援がほとんど全会一致のような形で強力に押していただいているということは未曾有のことであると思っております。そういう事態をわきまえまして、臨調の皆様方もいま全力を尽くしてやっていただいております。われわれは、いままでここで皆様方にお約束しましたことをあくまでも断行してその責任を果たすつもりでおります。  特に、この六、七月に予想されている答申はその中心になるものと心得ております。いわゆる分割答申を認めるのではないかというような記事が載りましたが、あれは誤解でありまして、われわれはこの六、七月の答申が中心であり、基本になるであろうと期待しております。  その際に、できるだけ目玉をしぼっていただきたいと、そしてむしろわれわれが一番力を持って国民の関心が高いときに一番むずかしい、一番国民が期待する、そして一番大事な仕事を持ってきていただきたい。第一次の臨時行政調査会のときに、こう分厚いものを普遍的なもので持ってこられましたが、あれが実は焦点がぼやけてできなかった原因ではないだろうか。したがって、焦点を明らかにして、そうして一番国民の期待する、むしろむずかしいものを持ってきてください、われわれはそれに向かっては全力を傾倒して断行いたしますと。しかし、それで漏れたものが出るかもしれぬ。その場合には、これは来年三月で臨調は終わりますけれども、来年三月でそれで解散するときに出てくるのではしり切れトンボになるおそれがある、非常に重要なものも含まれると思う。もしそういうものが出てきた場合には、三月を待たずとも臨調に対しては随時答申ということをお願いして、必要あらばいつでも案を提出してくださいと申し上げておるのですから、その三月を待たずとも、秋にでも答申していただいても結構でございます、もとよりこれらは臨調の皆さんのお決めくださることで、われわれが干渉すべきことではございません、そういう趣旨のことを申し上げまして、われわれの意気込みを実は申し上げたのでございます。  したがいまして、われわれが臨調の御答申を受けまして、これを断行する気構えにつきましては寸分の狂いもございませんので御理解お願いいたしたいと思います。
  193. 木村睦男

    ○木村睦男君 どうぞいま披瀝されました御決心、ひとつ今後行動において大いに示していただいて、ぜひ国民の期待にこたえていただきたい、かように希望いたしておきます。  次に、大蔵大臣にお尋ねしますが、ことしの四十九兆円の非常に緊縮した予算でございますが、その根底には、経済成長五・二%というのが根底になっておりますが、この基本である経済成長五・二%が果たして可能かどうかということについてはいろいろ心配がございます。衆議院予算公聴会におきましてもそういう意見が出ておりますし、また経済学者の中にも、経済評論家の中にも、とても五・二%は無理ではなかろうか、景気の冷え方が思うように戻ってこない、いろんな原因がございます、内需が伸びない。これが根底が崩れると四十九兆円の予算もとうてい達成できなくなるというふうに心配されるわけでございます。五%という成長率は、かつてアメリカでもヨーロッパでも一番景気のよかったころに五%という成長があったのでございまして、いまではそれがずっと下がってきておる。こういうふうな状況を見ましても、大変これが心配されるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  194. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 午前中からお話がございますように、世界の経済が非常に停滞をしておると。しかしながら、ことしの後半から世界の経済もアメリカを初め何とか上向きになるだろうという一致した大体見方でございます。日本も世界の経済の中にあるわけでございますから、日本だけがずば抜けていい成長をするということはなかなかむずかしい、これも事実でございます。まして、景気の落ち込みというものがこれ以上あったのでは困るわけでございますから、われわれといたしましては、経済企画庁を初め各省庁ともよく連絡をとりまして、そして五十七年度の経済成長が達成ができ、税収の確保が図れるようにいろいろな手を組み合わして、一つだけではかっとやることはできませんから、いろいろな手を組み合わして所期の目的を果たしてまいりたいと考えております。
  195. 木村睦男

    ○木村睦男君 衆議院予算委員会減税問題が非常に議論になって、先ほど竹田委員からも質疑がございましたような、現在、将来に向かって検討するということに一応なっております。  ところで、一体その五十七年度の三十六兆六千二百四十億円という税収の見込み、これ自体が本当にそういくであろうかということが非常に憂慮されるわけでございます。大蔵省の説明によりますというと、「財政の中期展望」の中の自然増収より七千億不足が起こるというふうなことで、租税特別措置を初めとして交際費の課税強化等、いろんな方法を講じてこれだけの税収の見積もりをしておるわけでございますが、これは五十六年度の当初予算に対しては一三・四%の増であります。しかし、五十六年度の税収が先般の補正予算の段階で四千億減収になったということで補正予算を組んだわけでございますが、これらを考慮いたしますというと、五十六年度の一三・四%というのは実は一四・九%、約一五%増ということになって、かなり高い見積もりをしておるわけでございます。大蔵省の「財政の中期展望」、これは五十六年から六十年まで、この中で五十七年度予算を前提として五十八年度以降の税収の対前年の伸び率を一一・九%と大変低目に見込んでおるわけでございますが、今後だんだん内需もふえてよくなるという前提でも、五十八年度以降対前年一一・何がしかのパーセントの税収を見て計算しておりますのに、今回は五十六年度に対して実質的には一四、五%という非常な高目の税収を見込んでおる、どうもこの辺が心配だ、こういうふうに私は考えるわけでございます。ことに、五十七年度は内需を大いに刺激するために住宅建設初め民間投資も大いに進めていくということになっておりますけれども、果たしてこれだけの五十六年度に対する高いパーセントの税収見込みというものが期待できるであろうか、非常に心配しておりますが、その点についての確信のほどをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  196. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 税収の見積もりは非常にむずかしい。経済の見積もりもむずかしいけれども、なかなかいままで長い間の経験値でぴたっと当たるということは余りない。大体五%から一〇%前後上または下、多いときは二〇%前後したこともございます。  五十六年度の税収については、物価の予想外の安定、景気の立ちおくれ、いろんな消費節約の徹底、そういうものが一面において非常にいい面もありますが、他面税収の面においては物価の安定等は裏目に出てきておるわけでございます。そこであらかじめ減額補正を行ったわけであります。  五十七年度の問題につきましても大体当初よりも七千億円ぐらいのものを実は少なく考え予算を組んだわけでございます。  それらの見積もりの委細については、長期展望のものは経済成長の見通し、予測、それに一定の経験値に基づく租税弾性値等を掛けてはじいておりますが、来年度のものについては、いろいろな生産の指数の見積もりとか、売り上げの見積もりとか、物価の動向とかあるいは雇用者所得とかいうようなものを経済見通しをやるのと似たような手法によって、いろんなところから見通しを聞いたり実績を伸ばしたりというような、専門家がみんなで集まって積み上げて見積もってあるわけでございます。しかし、これも問題はその見積もりの根っこになるものが違ってくれば違ってきてしまうわけでございますから、われわれといたしましてはマクロで言えば経済見通しが実現できるようにやはりいろいろと工夫をしていく必要があると。そういうことで、これは各省庁とも相談をいたしながらその税収が確保されるように今後ともきめ細かく対処してまいりたいと考えております。
  197. 木村睦男

    ○木村睦男君 非常に困難な問題だと思います。ひとつがんばってもらいたいと思います。  それにいたしましても、先ほどもちょっと触れましたが、住宅建設を内需の回復の目玉商品のようにしておられるようでございます。一体五十七年度百三十万戸ということになっておりますが、現在の住宅建設の五カ年計画、これはどういうようになっておるか。あるいはせいぜい百万戸、実績から言うと達成できるかどうかという心配を私は持っておりますが、百三十万戸できるということのひとつ根拠を、これは建設大臣ですか。
  198. 始関伊平

    国務大臣始関伊平君) ただいま日本の経済の直面いたしております困難な情勢を打開するためには何としてでも内需の拡大を図ることが必要である。その内需の拡大に資する重要な柱として、百三十万戸の住宅建設というものが決定されておるわけでございまして、ここに非常に大きな役割りと期待が持たれておる次第でございます。  ただいま御指摘のございましたように五十四年の石油ショックの時代の前は大体年々、五十一年、五十二年、五十三年は百五十万戸前後の住宅建設の水準を維持しておりました。その後になりましてちょっと様子がおかしくなりまして、五十五年には百二十一万戸、本年はまだ年度の途中でございますが百十五万戸ぐらいに落ちつくのではないかということでございますので、ただいま御指摘いただきましたように大変困難な情勢ではございます。しかし、私どもは困難であるということを十分に承知いたしました上で何としてでもこれはやり遂げなければならぬという考え方に立ちまして、昨年末の予算の編成、財政投融資の決定、さらに土地並びに住宅の税制改正に当たりまして、いまの政府が駆使し得る一切の政策手段を動員いたしまして万全の対策を講じてまいったつもりでございます。  その後の情勢でございますが、公的金融のうちの住宅金融公庫などの貸し付け限度額の引き上げという点だけを五十六年度の最後の第四回目の募集に当たりまして採用いたしたのでございますが、その結果は六万戸の募集に対してほぼ倍の十二万戸ちょっと足らずでございますが、ということでございまして、これは従前の例に照らしますと最も高い応募率でございまして、公的金融、公的な手段を使う方面につきましては、これは確かに私は相当程度進んでいけるものと見てよろしいだろうと思っております。  なお、そのほかに銀行ローンその他でやる純然たる民間住宅もあるわけでございますが、この点につきましては大蔵省お願いしまして、ローンの利率の引き下げとかあるいは資金量の確保とかいろいろやっておるわけでございますが、なお全般的な着眼点といたしましては土地の問題が非常に大事でございますから、すでに土地を所有しておる人が賃貸住宅を建てる。特に都会などにもそういう場所が多いわけでございますけれども、そこにねらいをつけまして土地担保融資というのがございます。これは公庫金融でございますが、融資率はほぼ一〇〇%。その他特定賃貸住宅制度というのがございますが、こういったようなもの。それから住宅・都市整備公団でやります民営の賃貸用住宅の建設、それを本年、五十七年度一万戸を予定いたしておりますが、さらに最近テレビ等で盛んにやっておりますが、三大都市圏の中には低質ないわゆる木賃住宅が密集しておりましていろいろな弊害も言われますので、木賃住宅の建てかえ、それとあわせて住宅環境を整備いたしますための公共施設の整備というふうなことをやりますために、木造賃貸住宅地区総合整備事業というものが五十七年度の予算で認められておりますので、今後各方面の御協力をいただきまして、全力を尽くして百三十万戸計画を達成してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  199. 木村睦男

    ○木村睦男君 いま大臣のおっしゃった百三十万戸計画の基礎になるのは、恐らく過去二十年間に住宅建設約二千五百万戸建っております。これは非常にローン等が高くございまして支払いにも十五年、二十年。やっと支払いが終わって、本当にわがものになったからゆっくり住もうというふうにだんだんなってきております。したがって、三十年、四十年はかかると思うわけでございます。そういう客観状況の中で百三十万戸というのは非常に苦心の策であろうと思いますけれども、土地対策あるいは融資問題等、さらに思い切った手を打たなければなかなか達成できないのではないかと非常に心配をいたしておるところでございます。  なお、先ほど所得税減税のことについてもいろいろお話が出ておりますけれども、こういうことを考えますというと、現在の三十六兆の税収そのものも非常にむずかしいと私は考えなくてはならないと思います。そういう中で減税をいかにやるかということはこれまた非常にむずかしい問題でございます。しかし、考えてみますというと、もうすでに五年間減税をいたしておりません。所得税の最低限二百一万円、これが親子四人の家庭の制限でございますが、毎年のペースアップその他で収入がふえておる。それだけ累進課税がかかってきますから苦しいのもよくわかるわけでございます。したがって、ただ単に減税ということのみならず、それに加えて、不均衡の是正あるいは間接税、直接税の問題、いろいろ付随して解決しなければならない多くの問題がございますので、こういうあらゆる点を総合して今後の減税問題に対処していただきたい。いずれ国会の場で減税問題については結論が出ることと思いますけれども、その点を十分に考慮してやっていただきたいことを注文いたしたいと思いますが、大蔵大臣いかがでございますか。
  200. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 結論から言えば、まことにそのとおりだと存じます。  歳出を確保するために歳入があるわけでございますから、歳入は原則的には租税によって賄われるということが原則でございます。したがいまして、租税をどういう形で国民に御負担をいただくかということが問題であります。いまの現況は、すでに所得税と法人税で約七割近いものが税収として歳出を支えておるわけでございますから、これから赤字国債からも脱却し、年々借入金を少なくしていくということになれば、その分国民の租税に対する依存度が非常に高まってまいります。そういうようなときに所得税を減税すると言っても、すでに所得、法人だけで七割を支えていかなければならないということになると、現在の状態ではなかなかこれは大幅な減税というものは言うべくしてむずかしい問題がございます。  しかし一方、ただいまおっしゃいましたように、数年にわたって課税最低限を据え置いておりますから、しかも所得の累進率が日本は高い、上に行けば行くほど極端に高くなっておりますので、そういう点から重税感が出てきておるということも事実でございます。諸外国から比べれば、まだ三千万円以下の人は税額は低いことになっておりますけれども、いずれにしても、数年間所得税を減税していないということは、日本流に考えれば、負担が非常にふえておるという実感があるのも事実でございます。  そういう歳入歳出全体についての問題をあわせてこの問題は考えていく必要がある、かように考えております。
  201. 木村睦男

    ○木村睦男君 これからの日本の財政あるいは予算の中で、一つ大きな問題にだんだんなってくる、すでになっておりますが、老人問題があると思います。  すでに、六十五歳以上の高齢者の人口比率から見ましても、一割近くを占めておる。しかも外国に比べましてわが国の高齢化のスピードが非常に早い。たとえば日本で申し上げますというと、人口比の中で六十五歳以上の老人の占める比率が五%であったものが一%までになるのに、四十五年という短い期間でなっております。同じことを外国について見ますと、イギリスでは六十年、西独では七十五年、かなりスローテンポで老人がふえておる。日本は非常に早い。そういうことを考えますというと、これからの老齢化社会をどうしていくか。核家族化の進展で扶養意識も減っておる。老人は一人立ちをして生きていかなければならない。そうなりますというと、まだ働ける老人の労働問題あるいは健康管理の問題、あるいは年金、医療、いろいろ大きな問題がございます。  五十七年度の予算でも、社会保障費の予算の中で老人関係予算だけでも二兆五千億を占めております。これは、高い高いと言われておる防衛費予算と大体同じ額になっておる。それほど老人対策には今後ますます費用がかかってくる。こういうことを考えますと、老人対策というものは本当に焦眉の急であり、ほうっておけない問題でございます。  これらの点について、同僚の宮田議員から関連質問がございますので、委員長、よろしくお願いいたします。
  202. 植木光教

    委員長植木光教君) 宮田輝君の関連質疑を許します。宮田君。
  203. 宮田輝

    ○宮田輝君 いろいろ問題はございますけれども、私は年金について御質問を申し上げます。  みんなで盛り立てていかなければならない年金制度でございますけれども、率直に申し上げて、国民年金に入っている奥さん方は、掛金は上がりますけれども、ちゃんともらえるんでしょうかと、こうおっしゃる向きもあります。また厚生年金の方もやがては掛金が三倍にもなると、こうも言われております。厚生大臣、まず年金の給付と負担をどうなさいますか。それから年金の一本化ですけれども、実質的に一本化されるのはおよそいつごろになるのでしょうか。この二点をお伺いいたします。
  204. 森下元晴

    国務大臣(森下元晴君) 御老人についての社会保障また社会福祉については、今後厚生行政の中でも非常に重大な問題として受けとめております。先ほど木村議員からもおっしゃっていただいたとおりでございまして、この健康と生活保障のための年金であり、また保険でございまして、老後の安定をいかにするか。  御承知のように、非常な高齢化時代を迎えまして、果たしてこの給付が十分受けられるであろうかどうか、こういう心配があることは事実でございます。しかも現在の年金制度は非常に複雑でございまして、臨調等でも一本化の声も出ております。八つの部門に分かれましてそれぞれ特徴が実はございまして、急にこれを一本化することはできない。また御指摘のように、官民格差と申しまして、平等であるべき老後の保障が非常に大きな格差がある、そこに不公平が生まれる、そこに不平不満が出る、安らぎのある老後が迎えられないということも事実でございます。  そこで、御質問のこの一本化の問題でございますけれども、この問題は方向はその方向でございますけれども、沿革、歴史等がございまして、逐次各審議会とか、また各政党でもそれぞれこの問題については懇談会また調査会等もつくっておりますし、そういう意見も御参考にさしていただきまして、将来の一本化の方向に努めてまいりたいと思います。  それから私ども考え方といたしまして、健康に対する考え方でございますが、これは老人保健法の問題で質問ではなかったわけでございますけれども、老後の安定、安心感を得るためには、所得保障と同時にやっぱり健康に対する保障でございます。これは老人保健法が参議院の方で継続審議お願いしてございますので、一日も早くこの法案を通していただきまして、十月一日から実施さしていただく。これはまさに老人に安らぎのある生活をしていただこう、そして元気で長生きをしていただこう、そういう所得の面と健康の面で高齢化社会を迎えまして幸せを願っていただこうと、これが厚生省の大方針でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
  205. 宮田輝

    ○宮田輝君 いろいろお話がございました。いずれも差し迫った問題でございますので、より前向きに対応していただきたい、こう考えます。  それから官民格差というお話も大臣からございましたけれども、こういうことがあるんです。ある公務員とある会社員の場合でございますけれども、ほぼ同じ条件で三十五年間勤め上げて六十歳で再就職をした。二人とも月給が十六万円とすると、共済年金に加入していた人の場合は年収六百万円までは月額十七万二千五百六十三円、これは大蔵省の数字ですけれども、この年金とそれから十六万円の月給と合わせて三十三万二千五百六十三円の収入になるんです。ところが、厚生年金に加入していた勤め人の場合には、月給十五万五千円以上もらっていると年金が出ないという制限額を超えますから、月収は月給の十六万円だけと、こういうことになるんです。申し上げるまでもなく、厚生年金から離れてしまえば年金は受けられることにはなっているんです。しかし実際は六十歳以上になっても、勤めていれば厚生年金に加入しているわけですね。  で、厚生大臣と大蔵大臣にお伺いいたします。  同じサラリーマンなのに厚生年金と共済年金ではずいぶん差異があります。特に年金生活の第一歩のところで不均衡のために不公平感を持たれるような制度の違いは直しておいた方がいいんではないか、改めるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  206. 森下元晴

    国務大臣(森下元晴君) この問題につきましても、できるだけ早い機会に格差がなくなるようにいたしたい。お役人を実は五十五歳で定年退職すると、再就職いたしますと年金の上に給料がそのままいただける、逆の場合にはいただけません。しかしながら、いわゆる民間にお勤めになった方がやめられまして国家公務員等になりますと、これは同じような適用を受けれるわけでございますけれども、こういう実例はあるはずがございません。そういう問題がございまして、これは相関関係はありますけれども現実的にはそうなっておらない。そういうことを踏まえまして、この年金格差が出ないように、同じ年金でありながら不公平が出ないように、できるだけ早く格差是正のために努めてまいる所存でございます。
  207. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) この格差問題というのは単純にはなかなか比較は実はできないんです。一長一短ございます。公的年金の場合は、やめてほかへ勤めましても、六百万円を超える給与所得者に対してはやはり支給制限措置がございます。これと同じようなものは、実は制度上厚生年金にはないと。しかしながら、同じ厚生年金の中で就職しているから、別なところへ行かないから、そういう点で制限を受けるというようなこと等もございます。  いずれにいたしましても、これはなかなかそういう理屈を言っても納得していただけないようなことが多いわけでございまして、これらについては長期的な観点から引き続き検討をしていくに値する問題でございますので、十分検討さしていただきたいと考えます。
  208. 宮田輝

    ○宮田輝君 私は公務員と会社員を比べて、どっちが得だとかどっちが損だとか、そういうことを申し上げているつもりはないんです。高齢化社会になっても、世の中に活力がなくなってはならない。そのために福祉のあり方として不公平感はない方がいい。特に公的年金の場合は、いまの一つの制度の中の助け合い、それよりは大きな輪の中の助け合いの方が望ましいのではないかという考え方に立って質問を申し上げました。  総理、多くの国民は前向きの鈴木総理に、安心できる均衡のとれた年金制度について強い期待を寄せております。これからさらに積極的にお取り組みをいただきたいと思うんです。総理のお考えを聞かせていただいて私の質問を終えたいと思います。
  209. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 年金制度の一元化の問題は、これは多年の懸案でございますが、特に急速に高齢化が進んでおりますわが国におきましては、これに対する、将来に対する政策というものをすっきりと確立して取り組む必要があると、こう考えております。  究極においては、私は一本化するのが一番いいと、こう考えておりますが、当面は御承知のように制度間でいろいろ格差がございます。これはできたときの目的、沿革、財政事情、それぞれいま異なっておりますから、これを一遍にいまの段階で直ちに二本化するということは非常に困難でございます。そこで、まず制度間の不均衡をできるだけ是正をしながら、不均衡をできるだけ縮めながら一本化の方向に向かって早急に私ども制度の改革をいたしたい、このように考えております。
  210. 宮田輝

    ○宮田輝君 ありがとうございました。
  211. 木村睦男

    ○木村睦男君 外務大臣は、この二十日にアメリカに行かれるわけでございます。御苦労さまでございます。  日米の貿易摩擦についていろいろとまた折衝をなさるのではないかと思うわけでございますが、最近非常に貿易摩擦が異常な形になってまいっております。いままででもあるいは繊維であるとか、あるいは鉄鋼、そういったものについての貿易摩擦はございましたが、今回の貿易摩擦でいろいろ議論されておるところを見ると、従来とは多少形が変わってきておるのじゃないか。と言いますのは、アメリカ自体が、失業率ももう一割になろうという大変な経済の落ち込みの中で苦労しておる。ただし、商務長官のごときはそういうことが原因ではないと、こうはっきり言っておりますけれども、実際はやはりそういうことが大きな問題になっておる。同時にいままでの日本は、経済的にもまだまだ先進国になっていなかった。しかし、いまや経済的には非常に強い日本になってきておる。その強い日本が核も持たないきわめて軽武装で平和を享受しておる。これはアメリカのおかげではないかといった感じもやはりあると思うんです。  そういう感情的といいますか、あるいは二国間のいままでのいろんな関係というものの態様が変わってきておるという上に立っての貿易摩擦ではないかという節も感じられるわけでございますが、そういうことを踏まえて外務大臣、ひとつ向こうに行かれましたらこの問題に十分取り組んで、そしていろいろ日本が施策を講じておることはいままでもお話になっておられますけれども、さらに一層努力をして、日本の真意を理解して十分な成果を上げていただきたいことを希望いたしまして、御決意のほどを承りたいと思います。
  212. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 木村委員から、日米の貿易の状況について御所見がございましたが、私もまさにそのとおりに受けとめておるわけでございます。  日本がここまで経済力をつけ、国際的にも自由主義陣営二番目の力を持っておる。そういう立場からいたしまして、アメリカが現在国内経済で非常に苦しい立場にあるということも理解をいたしながら自由貿易体制を守る、日本の市場を一層開放して、米側が不満といたしております競争力のあるものでも、なかなか日本に市場を拡大していくことができないと、かりそめにもそういうことがあってはならないのでございます。昨年の鈴木内閣改造後、早速にこれらの緊急な問題に取り組むために、御承知のような関税の前倒しとか、非関税障壁の撤廃とか相当の努力をしておるのでありますが、米側においてなかなか理解をしていただけない、あるいは誤認をしておる点もあるのではないかと、そういうことで江崎ミッションも参りましたし、日米貿易小委員会も二回にわたって行われております。そういうことで、私としては当面経済摩擦については逐次手が打たれてきておる、またアメリカ側においても次第に理解力を持っておるじゃないか。これは今回の日米貿易小委員会における米側の所見を見ても、日本のとっておる措置についても理解を持っておることがよくわかるのであります。したがって、私としてはそういう貿易問題は貿易問題といたしまして日米間で国際情勢についての協議をする、意見を交換するということの方が重要性があるのではないか、その間に二国間問題としての貿易についてももちろん触れて米側の理解を求めていきたい、こういう見地に立って今回訪米をいたしたいと、こう思っておる次第でございます。
  213. 木村睦男

    ○木村睦男君 佐藤総理は、沖縄が返るまでは戦後は終わらないと名言を吐かれて実行をされたわけでございます。私はまだ戦後が終わらない問題がほかにもあると思うのです。一、二の例を挙げますというと、北方領土の問題がございます。そして、もう一つは私は憲法の問題があると思います。占領中につくられた憲法、これはやはり日本人の手で十分にこれを検討し、直すべき点は直していかなければならない、こう思います。  そこで、占領中に憲法がつくられたということの意味を一体どういうふうにお考えになりますか。これは日本国民の皆さんも余りはっきりしたことは御承知ないんじゃないか、こう思うわけでございます。かいつまんで言いますというと、終戦直後、二十年の十月にマッカーサー司令部から憲法の草案をつくるように指示があった、そして当時の松本烝治国務大臣はそれを受けて憲法草案をつくって、そして翌年の二十一年の二月の八日にこれを司令部に出そうとしたわけでございます。ところが、その憲法の日本政府のつくった案が新聞にスクープされまして、そして急遽司令部の方はホイットニー民政局長を中心に数人のスタッフをして司令部で憲法の草案をつくって、そして松本国務大臣のつくった、日本政府側のつくった憲法草案ではなくて、司令部がみずから憲法草案をつくって、それを英文のまま日本政府に示して、これをもとにして日本の憲法をつくれ、しかもいろいろ注文がついておりまして、前文であるとかあるいは第一章はこの草案に必ずよりなさいというふうな注文もついて、そういう経緯を踏まえて日本政府が憲法草案をつくり、そしてその後は当時の改正の手続をとりまして国会に提案をされたと、こういうことでございます。  この英文で示された憲法草案のどこを改正したかとこういいますというと、まだ国会に出す前に日本政府側でアメリカと折衝をして直したのが一院制を二院制にした、草案には参議院はなかったのでございます。それから、国会に出されましてから、これは御承知のように芦田小委員長のもとで憲法九条の第二項を追加をした。これは日本は侵略戦争は放棄するが、自衛のための自衛権を認める、自衛権行使のための武力を用いることは可能であるという意味であの二項ただし書きがつけ加えられた。こういう経緯になっておるわけでございまして、こういういまの憲法の制定の経緯を踏まえて総理はどういうふうにお考えになりますか、所感をお聞かせいただきたいと思います。
  214. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 現行憲法が制定をされた経緯につきまして私に所感を求められたわけでありますが、現行憲法が当時点領下におきまして占領軍の強い影響のもとにでき上がったという経過、これは確かにあったと思いますが、しかし帝国議会においてこれが議決をされておるということは事実でございます。
  215. 木村睦男

    ○木村睦男君 おっしゃるとおりだと思います。ただ占領中に、占領軍が被占領国の行政制度はよほど支障のない限りこれは改めるべきでないというのが明治の末期にできました陸戦法規に関する条約——ヘーグ条約といっておりますが、その中にそういう意味のことが書かれておりまして、日本もそれに加盟をしておる。こういうことから考えますというと、占領中にできた憲法というものはやはり占領軍のいろんな意思がそれに加わって、必ずしも民意にこたえた結果になっていないということが過去の歴史の積み重ねの上においてそういうことがあったためにこういう国際戦時条約もできたということから考えますと、やはり私はいろんなその中に欠陥があるということもまたやむを得ないであろうと思うわけでございます。特に、それからすでに三十五年を経過しております。百年とも二百年とも言われる大変な社会経済、国際情勢の変化を迎えた今日、その後の経過に顧みましても内容と合わない点が多々あるということもこれまた当然のことであろうと、こういう意味では私は憲法というものは常に検討をする。そして、その時代、時代に合った憲法に直していくということがわれわれ国民の義務ではないか、かようにも考え得ますので、私はこの際これらの問題について質問をいたしたいと、かように考えたわけでございます。  憲法改正と言いますと、何か憲法改正すなわち第九条、軍国主義、戦争だと、こういう非常に短絡的な宣伝が行われておりまして、憲法の内容、それを十分に知っていない国民の多くの人はその宣伝のみが耳に入って、憲法を改正するとか、憲法を研究するとか言うと、ああ第九条の改正だというふうに考えがちな傾向があることは私は非常に遺憾に思うのでございまして、総理はゴルフをおやりになって非常にお上手でございます。お上手な総理は恐らくゴルフをやられるときには肩の力を抜いてゴルフをやられると思いますが、私はいまの憲法を考えるときに、やはり肩の力を抜いてそうしてリラックスしていまの憲法を素直に検討していくべきではないか、かように思うわけでございまして、あえて第九条を憲法改正の代名詞のように扱っておるというところに私は非常な間違いがある、かように感ずるわけでございます。  そこで、いまの憲法の条章の中でどういう点が——じゃその前にいまの憲法が二十一年に国会成立いたしましたそのときのいろんな記録を見ますと大変興味ある事柄が載っております。たとえば憲法の前文については、これは当時社会党の議員の方の質問の中にございますが、「憲法の前文は消極的であり、卑屈的である。平和主義について非常に観念的過ぎる、泣くがごとく訴うるがごとき哀調すら漂っている。」というふうなことで、いまの憲法についての意見を言っておられる。また、あの憲法の採決のときに社会党は賛成をされた。しかし、社会党は改正案を出されたけれども、それが通らなかったために賛成ということで、しかし憲法は社会法的なものであるべきであるという所説を加えて賛成をしておられる。それから共産党はこれは反対をされた。共産党はまず天皇制というものに対して反対をしておる。そしておもしろいことにはこの憲法には国を守る自衛の条項が一つもない、これでは一体日本の国は将来どうなるか、そういうところで反対である。つまり第九条があるから反対だというふうなことでもあったわけでございますが、そういうふうな反対をし、あるいは違った意見を持って今日の憲法が成立してきておる。その憲法をいまは非常に理想の憲法のように言われて、これを検討する者は軍国主義だとかというふうな議論とごちゃまぜになっていろいろ言われておるところに私は問題がある。やはり肩の力を落としてそして素直にいまの憲法がどこがどうかということはやはり研究をしておくべきものではないか、かように思うわけでございます。  私はいまから二、三の例について申し上げますので、法制局長官の方からいろいろ所感があったら御説明をいただきたいと思うわけでございます。最後に総理の御意見を聞きましょう。  その前に、いまの憲法の用語が非常に間違っておるという点も非常にあるんでございまして、御参考に政府、各委員にもお配りしておりますが、日本語としてもああいった間違いがある。そのほか誤字もある。そういうものはいろいろたくさんありますが、私はそういうことがあるからそれが理由で憲法を改正せよというのではございません。改正のときにはそういう問題もあるということを知っていただきたい、こういう意味で申し上げておるわけでございます。  そこで、憲法第一条に天皇のことが書いてございます。あの条文を見ますというと、一体国民の代表はだれか、国家の代表はだれかということは必ずしも明確でない。「天皇は、日本国の象徴であり」云々と書いてございます。いかなる国の憲法でもまず国家を代表するのはだれであるかということははっきりと書いてあるのが普通でございます。天皇は象徴であるから日本の代表であるというふうな解釈でずっときておりますけれども、象徴と代表とは大いに意味が違うのでございまして、象徴が代表であるんなら代表取締役は象徴取締役と、こう言ってもいいというふうにもなることでもおわかりだろうと思います。しかも、われわれは天皇は国家の代表であるともう信じ切っておりますけれども、学説はやはり分かれているのです。天皇である、あるいは内閣である、あるいは内閣総理大臣である、こういうふうに分かれておる。ことに憲法学者でおられた宮澤先生は、この憲法から推して日本を代表するものは内閣である、こういう学者が説までしておられるということはやはり非常に問題ではないかと、かように思います。  それから、第九条につきましてはすでに判例その他で自衛隊の合憲は認められております。おりますけれども、やはりちまたにはこの問題について諸説ふんぷんとしていまでも解釈が十通りも十五通りもある。学者によって一番解釈が違うのがこの第九条。こういうままで置いていいのであろうかという疑問もあるわけでございます。  それから、国民の権利義務の章でございますが、ここでも非常に国民の権利についてはたくさん書いてありますが、義務については教育、これは受けさす義務と受ける権利、そして勤労、それから納税、この三つの義務しか規定してございません。これはやはり非常に問題であろう、かように思うわけでございます。ことに共同体としての家族、家庭、こういうものの存在を明確にすることによって日本の国家は成り立つわけでございますが、この点も明確にしてないという点に非常に問題があろうかと思うわけでございます。  それから第四十一条に、「国会は、国権最高機関」である、こう書いてあります。ところが、日本のような、あるいは自由主義陣営のようないわゆる自由民主国家においては三権分立のたてまえになっておるわけでございますので、国会、つまり立法府が最高の機関ではないのでございまして、立法、司法、行政並立した三権分立が民主主義国家の真の姿でなければならないのに、日本の憲法には、国会は、国権の最高の機関であると書いてある。これを外国の例に見ますというと、これはソ連その他共産国で、いわゆる権力集中の国では間々こういう条文をとっておりますが、民主主義国家においてはこういう条文を憲法の中にうたっておる国は一つもない。この点も実情に合わないのではないか、かように考えるわけでございます。  なお、もう一つ二つ言いますというと、第八十九条、これは公の財産の支出または利用の制限。公金その他の公の財産は宗教上の団体のために金を出したり利用さしてはいかぬと、また公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業にもやってはならない、こう書いてあります。ところが現在、政府は私立学校に補助金を毎年出しておる。ことしも二千八百三十五億この予算で計上をいたしております。ただ、これをストレートに私立学校に出さないで、日本私学振興財団にと、ワンクッション使って出しておる。したがって、教育に公の金を出しておるのではないという言いわけになっておるわけでございます。なお突っ込んで言いますれば、金を出しておるから監督もしておる、監督をしておるから公の支配に属してきたんだと、だから合憲なんだという解釈も成り立とうかと思いますが、それは順序が逆でございまして、この憲法で言っておる公の支配に属しない教育に金を出していけないというのは、そういう手続さえよければいいという趣旨ではなくて、やはり教育の自由といいますか、そういう立場から、政府の監督しない民間の教育機関に政府は干渉がましい金を出したりすべきではないという趣旨から出ておると思います。  そういう意味から言うと、明らかに八十九条にどうも抵触するのじゃないか、しかし、従来ワンクッション置いてやっておるからいいのだと、こういうふうなことになろうかと思うのでございますが、こういうことが繰り返してあるいは継続してありますというと、こわいのは、やはり遵法精神というものが消えていく。そして人によって法律をどんなに解釈してもいいのだ、たとえば、税務署が来れば税金を納める者が、税法を私はこういうふうに解釈したからこれは脱税じゃございませんと言ってもそれに抗弁できないんじゃないか、というふうな感じすらするわけでございます。  もう一つ例を申し上げますというと、非常事態に対する憲法上何も日本の憲法には規定がない。これは非常に危険なことだと思います。どの国でも非常事態に対する政府の権限なり何なりというものは基本である憲法に規定してあるのが通例でございますが、全然日本は規定してない。一たん、これは外国の侵略だけが非常時ではございません、大地震もございます、内乱もございます。そういうときに、ある程度現行法を超えて措置をしなきゃならぬ、この裏づけがなければ、そのときの政府が民主主義に徹した政府ならよろしいけれども、そうでない政府ですと何でもできるという危険がある。こういうことは実際にはあり得ぬと思いますけれども、そういうことを前提としてきちっとしておかなければ日本の秩序というものは保たれない、また権力の乱用ということに走りがちである、こういうことも考えるわけでございます。  まだほかにもございますが、時間がございませんから申し上げません。その他、先ほど申し上げたように、用語の誤り、法律用語の使用の仕方の間違いあるいはそのほか文法の、かな遣いの間違い、いっぱいあるんです。これはあるのも当然でございまして、英文の原文を渡されて草々の間にこれを翻訳をしてつくった憲法でございますから、こういう誤りがあるのも当然でございましょう。  そういう憲法でございますので、私は、やはり日本が独立して三十年、この段階におきましては占領中につくられた憲法というものに素直にこれを検討し、改めるべき点は改めるべきではないか、もうその時期が決して早過ぎない、いまやその時期が来ておるんじゃないか、かように考えております。なるがゆえに、わが党も立党の綱領としても憲法改正をうたっておるのはそういうことでございまして、憲法の持っている国民主権あるいは平和、自由主義、人権の尊重、そういうものを変えた憲法をつくるために改正しなさいと言うのではございません。いかに憲法が変わろうともこのりっぱな原則は守るわけでございまして、いま私が申し上げたような制定当時のいろんな事情、その後の社会、内外の情勢の変化、そういうものに照らしてみて実情に合わなくなっている点は速やかに改正するというのが私は正論ではなかろうか、かように思うわけでございます。  これらの点について、まず法制局長官からひとつ意見をいただきまして、後、総理大臣から御意見を承りたいと思います。
  216. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 用語の点まで含めますと七点ほど御質問があったように存じます。  最初にお断りをしておきますが、鈴木内閣としては憲法を改正する考えは持っていないということをしばしば総理が御答弁になっておられますし、また総理自身も、内容にわたって論議することは慎みますということを言われておられますので、以下私が申し上げることについても、おのずから誤解を招くおそれがないように十分注意してお答えをいたしたいと思いますが、その点はあらかじめお含みおきを願いたいと思います。  まず第一に、憲法上、日本の対外的代表はだれかという問題について御質問がございました。この点については、憲法第七条第九号に、天皇の国事行為の一つとして「外国の大使及び公使を接受すること。」ということが定められておりますから、その点で天皇は外交関係において、一部ではございますが、わが国を代表する面を持っておられるということが言えようかと思います。しかしながら、「行政権は、内閣に属する。」とされ、また条約の締結は内閣の職務とされておりますから、一般的には天皇が対外的代表権を持つとすることはできないと思います。  また御指摘のように、代表と象徴というのは法律上は別の概念であると思います。  次に、憲法第九条についてでありますが、この点につきましては従来からしばしば申し上げていますように、私どもとしては、自衛のため必要最小限度の防衛力を保持することは九条の禁止するところではないというふうに考えておりますし、自衛隊が合憲であるということについて、いささかの疑義も持っておりません。  次に、現行憲法には権利に関する規定が多いが、義務規定が少ないという点でございますが、確かにわが憲法では国民の権利に関しては詳細な規定を設けておりますが、義務に関する規定は、御指摘のように、三条しかございません。しかしこの点は、日本国憲法が基本的人権の保障というものを基本的な原理とするとともに、いわゆる権利宣言としての近代憲法としての伝統をそのまま受け継いでいる以上、当然のことと考えております。  なお、国民の義務については、確かに具体的な明文規定としては三条しかございませんけれども、十二条という規定がございまして、自由、権利の保持の義務、あるいは乱用の禁止ということを定めておりますから、その点につきまして、義務については包括的な一般的な規定が設けられているということも言えようかと思います。  次に、第四十一条の国会は、国権最高機関であるという規定と三権分立のたてまえとの矛盾についての御指摘がございましたけれども、憲法はもとより三権分立を原則としております。したがいまして、言葉そのものとしては「国権最高機関」という言葉とは若干矛盾があるように見えるわけでありますが、この規定の趣旨としては、国会の意思が法律的にも国政のあらゆる面で他の国家機関の意思に常に優先をするという趣旨を定めたものではなくて、国会は主権者たる国民によって選ばれ、その意味において国家機関の中で主権者たる国民に最も近い、したがって最も高い地位にあるというふうに考えるにふさわしいものである、そういう趣旨を表明した規定であるというふうに私どもは解しております。学者の中には政治的な美称であるというような説もございますが、そこまでは言わなくても、この規定はいま申し上げたような意味においてりっぱに意味を持つということが言えるのではないかと思います。  次に、私学助成と憲法八十九条後段との関係について御質問がございましたが、確かにこの規定は解釈のむずかしい規定だと思います。ポイントは、結局公の支配に属するということをどのように解するかということに帰すると思いますが、この点については国会においてもいろいろ御議論がございまして、結論として、御指摘にもありましたような私立学校振興助成法が制定をされまして、これは国会において議員提案によって制定されたわけでありますが、その趣旨は、私立学校が私立学校振興助成法に決める監督を受けることをもって憲法第八十九条後段に規定する公の支配に属すると、それに該当するというような解釈に立つものだと思います。また、この解釈は一般にも是認されているところでございます。  なお、御質問の中で、ワンクッション置くことによって憲法違反のそしりを免れるような考え方を御指摘になりましたが、政府といたしましては、ワンクッション置けばよろしいというような考え方は全然とっておりません。  次に、非常事態に関する規定がないという御指摘でございます。  この点につきましては学説もいろいろございますし、また、かつて政府に設けられました憲法調査会においても大いに議論のあったところでありまして、木村委員のようなお考えもその憲法調査会の意見の中にはございます。私どもとしましては、いわゆる非常事態に際しまして国民の生命、安全を守るということは、まさに憲法で言う公共の福祉の要請という点から見ましてそれは最大のものであるというふうに考えております。したがいまして、そのための措置は、現行憲法の枠内でも必要かつ合理的な範囲内で相当のことができるというふうに考えております。  最後に、用語の問題についていろいろ御意見がございました。  この資料をただいま拝見いたしまして、まず一般的に申し上げますと、この資料考え方は、ある言葉の意味を特定の意味に限定して、そして、それ以外の意味で使うのはすべて誤りであるというふうに断定しておられるように思います。しかし、言葉というものにはいろいろな意味もございますし、使う場所にもよるわけでございますから、一概にそのような断定をして、「誠に恥しい限りであり、学校教育上も問題である。」というふうにここに書いてございますが、私どもはそのようには思いません。  なお、一つ一つについて私ども意見を申し上げることは、余り長くなりますので省略させていただきたいと思います。  以上でございます。
  217. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 憲法につきましての私の考えを申し上げておきたいと思います。  私は、現行憲法の平和主義、民主主義、基本的人権の尊重という基本的理念は、いずれの国の憲法に比較しても非常に崇高なものでありりっぱなものであると、このように見ておるわけでございます。この点につきましては、自由民主党が立党の綱領の中で自主憲法の制定を唱えておるわけでございますけれども、その中にも、この基本的理念は堅持さるべきものであるということを明らかにいたしておるところでございます。  それから、憲法は国の基本法でございまして、公務員はこれを尊重、擁護の義務がございます。私は政府の責任者といたしまして、この憲法の尊重、擁護義務というものはいささかも揺らいではいけない、このように心得ておるところでございます。それから第三の点は、憲法改正に対する態度でございますが、憲法九十九条によりまして尊重、擁護の義務がございますが、また、九十六条に憲法の改正についての手続規定が明記されております。これは憲法の改正は違憲ではないという立場をとっておるものと私は解しておるわけでございます。したがいまして、憲法を調査し、研究しあるいは勉強する、いろいろ改正点について御検討をされるということは、私は憲法の尊重、擁護の義務と違背をするものではない、このように考えておるわけでございまして、自由民主党におきまして憲法調査会を設けて、そして憲法の問題について調査検討を進めておるということにつきまして、党総裁としてこれを了承いたしておるのもそういう考え方に立つものでございます。
  218. 木村睦男

    ○木村睦男君 総理から憲法の尊重、擁護についてお話がございましたが、私たちも全く総理にまさるとも劣らない気持ちで、憲法を尊重、擁護をいたす気持ちは決して負けないと思います。さればこそ、現在の憲法をよりよき憲法に持っていきたい、これがわれわれの願いであるわけでございます。昨年奥野法務大臣が憲法論議をされたということで非常に問題になったのは記憶に新しいところでございますが、私は、憲法を尊重し擁護することと、憲法をいろいろ改正のために研究する、勉強する、全く矛盾をしていない。矛盾をしておるところか、憲法尊重、擁護の熱意が高ければ高いほどよりりっぱなものに持っていこうという熱意のあらわれであるというふうに私自身は考えております。どうぞ総理もそういうお考えでひとつ今後対処していただきたいと思います。  それから、一つ言い落としましたが、八十九条に関連いたしまして靖国神社の問題がございます。  国家のために犠牲になられた方を後の民族がこれを尊敬し霊を慰めることは当然のことでございますが、これを日本古来の伝統の形においてお祭りをしておるにすぎないのでございまして、私たちはこれが宗教であるとは毛頭考えておりません。そういう意味におきまして、やはりこの問題も憲法を検討し、憲法を改めようという考えの中には必ず入れてわれわれは検討いたしておりますので、この点もひとつ総理も十分お考えをいただきたいと思うわけでございます。
  219. 植木光教

    委員長植木光教君) 木村委員、答弁を求めますか。
  220. 木村睦男

    ○木村睦男君 法制局長靖国神社の問題いかがでしょうか。    〔委員長退席、理事土屋義彦君着席〕
  221. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 一昨年国会で御答弁申し上げたことを繰り返して申し上げるわけでございますが、靖国神社の沿革がほかの一般の神社とは違っていること、また、靖国神社に対して一般の神社とは違った心情を持っておられる国民が多数おられるということは、私もその認識としてはそのとおりだと存じております。ただ、靖国神社の現行法上の性格あるいは憲法解釈におきまして、それらの事情が決定的な要素になるとは思っておりません。木村委員の御意見に対しては若干違った意見を申し上げることになると思いますが、現在の段階において、靖国神社が宗教でないと割り切るにはちゅうちょを感ずる、それが私の見解でございます。
  222. 木村睦男

    ○木村睦男君 時間がございませんので、次に移りたいと思います。  私、一つ非常に理解できない問題があるのです。それは武器輸出の三原則に関してでございます。私の仲間が私たちによく言うのですが、日本はアメリカから武器を買っている、その日本が、日本の武器は外国へは輸出しちゃいかぬと、これは一体どういうことなんだという素朴な質問をよく受けるわけでございます。もちろん、佐藤内閣時代の三原則、これは共産圏、国連決議をした国、それから現在紛争中の国、そのおそれのある国、これには輸出をしない、その他の国にはそのときどきの情勢で自由に判断をしてやるということになっておりますが、これが三木内閣になりましてから、その他の国にも武器の輸出は慎重に考える。慎重に考えることは結構なことですけれども、これがむしろ慎重じゃなくて、一切合財その武器の輸出はしないのだというふうに事実上なってしまっておる。そうすると、その友人が私に聞くのに、それじゃなぜそういうふうにやるんだと、日本はなぜアメリカから武器を輸入しておるんだ。日本は専守防衛である、侵略戦争をしない、だから武器を輸入して日本の防衛のために持って当然ではないか、こう答えますというと、それでは、日本がどの国へも武器を輸出しないというのは、日本以外の世界どの国を挙げても日本のような専守防衛の国はなくて、全部侵略国家ばかりだという裏返しになるが、それを一体日本政府は何と説明するんだというふうに私はよく聞かれます。これが私は国民の率直な疑問ではないかと思うわけでございます。現に、マレーシアだとかあるいはシンガポール、あのいま大事な油をシンガポール沖から輸送して日本は買っておりますが、あのシーレーン、あそこを掃海するとかなんとか、そういうことをシンガポールやマレーシアがやりたい、その掃海艇は日本で非常にいい掃海艇を持っておる、これを買いたいんだけれども、これも武器であるからというので買わしてもらえない、こういうふうな話も私も直接聞いております。  また、これはきょうの新聞でございますが、フランスのジョベール対外貿易大臣、これと「日本経済」の特派員との一問一答の中に、こういうのがあるんですね。「仏政府は対日武器輸出を望んでいるようだが、これは西側防衛における日本の軍事的役割と関連したものか。」ということについて、まあ問題は逆の話ですが、その中で、固有の権利である国家防衛の必要性から兵器産業を保有し、必要なところに輸出するということは当然ではないかという意味のことを言っておりますが、私はこれが正論ではないかと思いますが、日本のいまの考え方はどうも国民としては理解できない。私はそういう質問を受けて、これに十分な回答を与えることができなかったわけでございますが、こんな問題について、これはどなたに御答弁いただけばいいでしょうか。——通産大臣お願いいたします。    〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕
  223. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 武器輸出につきましてはこれまでの長い経過がございまして、御存じのように武器輸出三原則が昭和四十二年に打ち出されまして、さらに五十一年に政府の基本方針が、基本見解が打ち出されたわけでございますが、これはわが国が平和国家である、国際的紛争を助長しないと、こういうわが国の立場を諸外国に明らかにするという立場で、いわゆる重要政策としてこれが推進をされて今日に来ておるわけでございますが、最近では、御承知のようにアメリカから武器技術についての提供を求める要請が出ております。これは最近のわが国の先端技術等が非常に開発発展をしてきたということもありますし、いま御指摘がございましたように、アメリカから日本は武器を買っておる、また武器技術を輸入しておる、しかしアメリカに対しては、三原則があり、また政府の基本方針があって輸出や提供ができない、一方交通ではないか、日米安保条約もあることだし、この段階においては武器技術については交流をぜひとも行いたい、日本の優秀なこの武器技術との間の共同開発等もしたいと、こういうアメリカ側の要請もありまして、現在におきまして、いま日米安保条約、これも日本の平和と安全を守るために結ばれた条約でございますが、この日米安保条約との関係で、いま武器技術については政府の中で検討をいたしておると、こういうことでございます。
  224. 木村睦男

    ○木村睦男君 次に、中国残留孤児の肉親捜しのことでお尋ねをいたしたいと思います。  すでにテレビで皆さんがごらんになったように、遼寧省それから黒竜江省、先般三十名ずつ六十名の人がやってまいりまして、四十二名の方が肉親が見つかった。テレビで見ましてもそのときの情景は、本当にわれわれも涙なくして見ておれないという状況でございます。この孤児が中国で非常に多い。中国でどうしてそういうふうになったんだろうかということをさかのぼって考えておく必要もあろうかと思います。  ちょうど二十年の八月の九日に、長崎に原爆が落ちた日でございますが、その日にソ連が対日宣戦布告をして、ソ満の国境を越えて怒濤のごとく南下してきて、いわば乱暴をほしいままにしたということは厳然たる事実でございます。昭和十六年から五年間の有効で日ソ中立条約があり、まだその有効期間内にもかかわらずそういう事態が発生したということがこの悲劇を生むに至った直接の原因であるということは、改めて私は思い起こしてもらいたいと思うのでございますが、そうして非常な気の毒な目に遭っております中国の残留孤児、これが一体どのくらいあって、そして一昨年からですか、親捜しが始まって、あるいは個人的に親が見つかって、日本に帰って生活をしておる人たちがどういう状況にあるか、そういう実態についてお聞きをいたしたいと思います。
  225. 森下元晴

    国務大臣(森下元晴君) 木村議員は、お聞きいたしますと大連第一中学校出身だそうでございまして、感慨ひとしおのものがあると拝察をいたすわけであります。  ただいま御質問の中国残留孤児の数と、それからこの判明した人数等のお尋ねでございますが、本年二月一日現在、肉親捜しを依頼してきた中国残留孤児は千四百五名でございまして、このうち肉親が判明したのは、今回の孤児の訪日調査による肉親判明者を加えて五百三十五名であります。また、これらの肉親判明者のうち日本に永住帰国した者は六十一名でございます。  帰国後の状況等については、帰国後一年間程度は生活保護を受ける例がきわめて多いわけでございますが、言葉の問題で日常生活にもなれるように、そういう機関を通じて日常語のマスターをしていただくように教育をさしてもらっておりますし、また次第に職についていただいて自立するケースが増加しております。実は、去年おいでになった方で、すでに帰国されまして、言葉を覚え、そして就職しておる方も多数おられます。今後そういう方がふえていくであろう。  それと、旧満州地区に孤児が非常に多かった。これは先ほどお話しのとおりでございまして、まことに悲劇であったわけでございます。私も、たまたま当時蒙古の張家口におりまして、幸い在留邦人四万全部北京まで引き揚げてきた経緯がございます。それは当時の駐蒙軍が旧満州の状況を聞きまして、居留民は断固として守ろう、そのためには武器をとってもよろしいというような特別の布告を出しまして、八達嶺を越えて北京まで帰ってまいったというような事情もございまして、基本的な、根本的な原因は、軍国主義のもとに軍事進出をしたやはり戦争の責任ということが遠因であろうと思いますけれども、なぜ満州地区だけがそうあったかということについては、われわれも、当時の満州にいた軍の指揮系統また命令、また一方的にそういう人道的な配慮の乏しかったやはりソ連軍の内容にも私はあったように思っております。  以上です。
  226. 木村睦男

    ○木村睦男君 幸いに肉親が見つかって日本に定住をしておるこれらの人々につきましては、やはり何といいましても、日本語の教育それから職業訓練、こういうことが非常に重要なことだろうと思います。いままでも政府としても努力をしておられますけれども、まだまだ予算も少ないし、決して十分とは言えない状況でございますので、その点は、ひとつ厚生大臣の方に篤と今後意を用いて充実を期していただくようにお願いをするわけでございます。  それから、私たちのように少しでも大陸で生活をした、こういう者はひとしお感慨が深いのでございますが、この孤児を発見する、親を捜す、こういう運動をいろいろとやっております。また、そういう孤児が見つかった場合のいろんな援護関係の仕事もやっております。私はたまたま大連でございましたので、大連会という団体を承知しておりますが、この団体も親身になってそういうことをやっております。どうぞ政府においても、こういう民間団体にもいろいろと配慮をしていただいて、あるいは調査に協力してやる、あるいは政府のやる仕事を一部こういう団体に委託をする、いろんな方法でその実を上げていくようにひとつ努力をしていただきたいと思います。  なお、国籍の問題がございます。これは先般衆議院で法務大臣も話をしておられましたが、なかなか複雑な問題だろうと思いますが、こういう方が日本に帰ってきて日本に定住する場合の国籍の処理、できる限り便宜を図り、できる限り敏速にやっていただくように特別な措置を願いたいと思いますが、この点、法務大臣からお聞きをいたしたいと思います。  もう一つ、ついででございますが、問題が東北地区でございますので、北京を通じてはなかなか隔靴掻痒の感がございます。いままでもわが党といたしましても、いろんな委員会等で東北地方に領事館を置いてもらったらどうかというふうなことも提案をいたしておることもございます。この問題につきましても、これは外務大臣からひとつ、どういうふうになっておるか、お教えをいただきたい。  以上でございます。
  227. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。  中国残留日本人孤児は、仮に中国側から中国人として把握されていたといたしましても、ほとんどの場合は日本国籍を喪失していないというふうに思われますので、日本人の親が見つかれば出生届により、日本人の親が見つからなければ家庭裁判所による就籍の審判により戸籍をつくることになると思います。仮に日本人の親も見つからず、また証拠の関係で就籍が認められなかったといたしましても、孤児証明があり、かつ養親等の供述によりまして少なくとも片親が日本人であるというふうに推認をされます孤児につきましては、日本人の子に準じて帰化で処理することも検討をいたしたいと考えております。この帰化につきましても、できる限りの配慮を払うつもりでございます。  以上でございます。
  228. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 中国の東北地区の重要性は、ただいま木村委員御指摘のとおりでございまして、私どもとしましても、今後総領事館を追加する場合には、たとえば東北の瀋陽、これが中国では一番優先度の高い地区ではないかと考えております。
  229. 木村睦男

    ○木村睦男君 けさの新聞で、昨日の閣議で郵政大臣から大変ありがたい発言があって、それが内閣の方針としてそのように処理するように決まったというふうに出ております。これはわざわざ孤児を日本に呼ばなくても、宇宙中継その他テレビを通じて現地で親捜しができるような方法を講じたらどうかということでございますが、その詳細について郵政大臣からお聞きいたしたいと思います。
  230. 箕輪登

    国務大臣(箕輪登君) 先生がお話しになりましたとおり、最近のテレビで最も国民に感動を与えたそれは中国の残留孤児の方々が肉親の方々とめぐり会った。先生おっしゃったとおり六十名のうち四十二名、実に七〇%の人が肉親とめぐり会えた、これは全く感動的であったのであります。私は、このテレビの放映がなければこういう確率にはなかなかなれなかったのではないかなと思ったのであります。そこで、何とかNHK、民放の方方に現地に行ってもらう。先生もおっしゃっておりましたように、北京と東北地方ではかなり距離がある。何日も何日も北京に出るには時間がかかる。できれば、たとえば瀋陽のようなところに行って、そこへ集まってもらって、そこで、そういう人方に集まっていただいたやつをビデオに撮って日本で放映するということができれば、かなりこの肉親捜しが進むのではないだろうか。私の承知している限りでは、千四百五名の人力が親を捜してくれと申請を出したけれども、そのうち四百九十何名かが見つかったけれども、まだ九百十二名余りが残っている。六十名、六十名を日本に呼んで、いまのような同じような方法で親捜し、肉親捜しをしたならば十数年かかるではないだろうか。そのうちに親である者は年老いて死んでしまうであろう、肉親も年老いて死んでしまうかもしらない、これではいけないと私は思ったわけであります。そこで、実は昨日、閣議の席上でそういう発言をいたしたわけでありますが、総理からも、厚生大臣、郵政大臣、さらにまた外務大臣ともよく相談をして進めてみてくれというお話もございましたので、きょう早速NHKの会長、民放各社の社長さん方に集まっていただきまして、お昼休みの時間に御協力を要請いたしたところであります。それによりますというと、皆さんは全部喜んで協力をしたい、こういうお話がございました。  したがって、どういう方法でやるかと申しますというと、いま言ったような瀋陽というようなところに行っていただく。何といっても東北地方が一番残留孤児の多いところだと思われますので、やはり中国政府あるいはまたその関係者の御協力と御理解を得ながら御便宜を計らっていただき、そういうところに出かけていって、やる方法としては、ビデオテープに撮ってきて日本で放映する方法もあります。また一つは、通信衛星を通じて、そして二元放送と申しましょうか、瀋陽と日本とテレビで対談させるわけであります。そういうことも技術的には可能であります。あなたの記憶に、あなたの町のあの角にたばこ屋さんがありましたかとか、あなたの頭に傷がありますかとか、耳の後ろにほくろがありますかとか、そういう会話を通じて、そしてこれに間違いないなと思う確率の高い人を日本に呼んで対面をさせるということが一番いいのではないか。  いずれにしても、二つの方法がありますけれども、効率の高い方法でやっていただきたいということで、実はきょうお昼にお集まりをいただいた各社の社長並びにNHKの会長に御要請を申し上げ、喜んで協力をしたいと、こういうお話がございましたので、これからその進め方を厚生省や外務省とも相談しながら、あるいは総理府が担当になるかどうか知りませんけれども、御相談を進めながら、早い機会にこの案をまとめてみたいと、こう考えているところでございます。
  231. 木村睦男

    ○木村睦男君 大変結構なことでございまして、恐らくこの話を孤児の皆さんが聞けば本当に感激するだろうと思います。ぜひ早く、しかも手厚くこれが進められるように切望してやみません。お願いいたします。  同じように、まだ戦後が終わらないと思われるものの中に、先般判決が出ました台湾の元日本人軍人の扱いの問題がございます。これもすでに新聞にいろいろ載っておりますので、詳しく申し上げる必要ございませんが、要するにいまの日本の法律では、法律上はどうにもならない、しかし実情はまことに気の毒にたえない、何とか別の方法でこういう人を救済したらどうかという含みのある判決にもなっておるわけでございます。これを受けて立つのは政府であり、またわれわれであろうかと思います。この台湾の元軍人についての法律関係といいますか、そういうものはどういうふうになっておるのか、また同じ兵士は韓国にもおるわけですが、これは韓国との国交正常化のときに解決したのだろうと思いますけれども、それはどうなっておるのか、そういう法律問題について御説明をまずいただきたいと思います。
  232. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) わが国と台湾との間の財産請求権問題については、サンフランシスコ平和条約第四条(a)により、他の分離地域すなわち朝鮮、南樺太等の場合と同様わが国と台湾の施政当局との間の特別取り決めによって処理されるべき旨規定されておるわけであります。しかるに、わが国と台湾の施政当局との間の特別取り決めによる処理が実現に至らない状況で日中国交正常化が実現した結果、台湾の施政当局との間でかかる処理を行うことができなくなったという実情にございます。
  233. 木村睦男

    ○木村睦男君 法律関係はおっしゃるとおりだと思いますが、それじゃ実際問題として、こういう人に何とかしてあげる方法というものは政府の立場としてはないのでございましょうか、あるいは研究すれば何とかの方法をもってこういう人を救済することができそうだということなんでしょうか、その辺のことをお聞きいたしたいと思います。
  234. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 現時点で救済等の措置を講ずることについては、遺族、戦傷者を含む台湾側との関係、他の分離地域の人々との公平の問題、日台間の全般的な請求権問題が未解決であることとの関連、さらにはわが国の財政事情等を考慮する必要がございます。政府としては、新たに救済等の措置を講ずることについて慎重に検討する必要があると考えておりますが、正直に申し上げて、なかなかむずかしい問題であるということを御理解お願いしたいと思います。
  235. 木村睦男

    ○木村睦男君 気持ちと現実とが非常に乖離しておりまして残念でたまりませんが、われわれも一生懸命になってこの問題については取り組んでいきたいと思いますので、政府といたしましても立場の許す限り万全のひとつ研究をして、何とかこの人たちを救える方法を見出していただくように御努力をいただきたいと思います。  次に、国鉄総裁、御苦労さまでございます。いま臨調でも、非常に三公社の中で特に国鉄の再建問題が大きく取り上げられ、新聞紙上でもやかましく毎日のようにいろいろと載っております。現在国鉄の再建につきましては、四十三年以来何たびか再建計画を立て、また練り直し、その繰り返してございまして、回数で言うと六回ぐらい、まあ大きく分ければ四回ぐらいの再建計画を練り直して、一昨年法案が通りましたあの法律でもって現在再建に乗り出しておるわけでございますが、前途はなかなかむずかしいというのが実情でございます。国鉄は、この法律また経営改善計画に基づきまして昭和六十年までにどうしても再建するんだということでいま一生懸命努力されておりますけれども、なかなかどうもわれわれが見るところでは非常に困難じゃあるまいか。この経営改善計画も、最初の計画が次々と変わってきておるようでございます。きょうの新聞でも、貨物の取り扱いの問題でまた新しいいろんな構想が出ておるようでございますし、こういう国鉄再建の、六十年度を目途にして果たして三十五万人体制で再建ができるのかどうか、ひとつ御苦労なさっておられる総裁の率直な御意向を伺いたい。
  236. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 現在の経営改善計画がねらいといたしております主眼点は、昭和六十年度において幹線で収支均衡をするようにいたしたい。残念ながら、全体の営業キロが約二万キロ余りございますけれども、そのうち九千キロの部分、いわゆる地方交通線、地方バスにつきましてはなかなか収支均衡まではまいりません。それから退職金の問題あるいは年金の問題等がございまして、その部分については何とも私どもの力だけでは収支を償わせるというわけにまいりませんが、幹線部分については何とかがんばって収支均衡をするようにいたしたいと考えております。そのための一つの重要な要素として、やはり経費を減らさなければならないということで、全体としての職員数を減らす、そして同じだけの仕事を少ない人でやっていくということがきわめて重要なこの幹線収支均衡のための要素と考えて今日まで取り組んでまいったわけでございます。  最近の問題といたしましては、どうも貨物のお客様が減りぎみでございまして、そこで、昨年この改善計画をお認めいただきました当時に考えておりましたのと約一年ぐらいの間に変わってまいりました一番大きな要素は、貨物のお客様が減る、したがってそれだけ収入が減るという問題でございました。こうした点については、もともと貨物は、やや専門的な言葉で恐縮でございますが、貨物固有の経費だけは収入で賄えるようにしたいということが計画の内容でございますので、それを達成いたしますべく多少の変更といいますか、モデフィケーションを行うことによってぜひとも当初の目的は達するようにしたいという考えを持っておるわけでございまして、その具体案はいま練っておるところでございますが、その考え方の一部といったようなものが昨今報道されたということでございまして、それらにつきましては、なおもうちょっとよく練りました上で御報告申し上げたいと存じております。
  237. 木村睦男

    ○木村睦男君 時間がございませんから多くを聞くわけにいきません。  もう一つ国鉄総裁にお尋ねしたいのは、いま臨調を初め国鉄の民営化あるいは分割、そういう意見がどしどし出ております。これらをずっと見てみますというと、国鉄の再建のためには、現在の労使間の規律が非常に乱れておる、これはマル生運動以来の積み重ねでございますが、この状態ではとうていいまの経営形態のままではだめなので、民営なり分割なりということに話が進んで奉るやに思うわけでございます。わが方におきましても小委員会等つくって検討いたしておりますが、まことに実情は残念な点が多うございますが、この辺の労使間の関係の立ち直り、こういう問題について御決意を聞かしていただきたいと思います。
  238. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 国鉄の労使問題は残念ながらかなり以前からいろいろ問題がございまして、また労使問題ということと相絡みながら、またほかの事情もありまして、職場におけるいろいろな乱れといったようなものが見られるわけでございます。特にいま御指摘のようにいわゆるマル生問題といったようなことあるいはそれの後始末といったようなことを契機としていろいろ混乱が起きたという経過もございます。私は私なりにそうしたものを秩序立てていくことについて相当気を配ってきたつもりでおりましたが、どうも残念ながら、その後民間等におきましては大変オイルショックを乗り切るに当たって労使間で企業の存立ということを中心に考えながらの取り組みが進んだということに比べまして、私どもの改善テンポが遅かったということは認めざるを得ないのでございまして、そのことが民間とわれわれの職場との対比において非常に目立ちますところから、いろいろ御指摘を受けているんだと思っております。これは何としても早く直さなければいけないわけでございまして、民営論あるいは分割論といったものもいろいろございますけれども、私どもとしましては、その組織がどうあるべきかということと関係なく、現在の公社組織のもとにおきましても、当然のこととしてさらに現場の秩序を正していかなければならない、規律を立て直していかなきゃならぬと考えております。どうもいろいろと次々問題が新聞報道等によって出されておりますけれども、むしろ私はこの機会に、そうしたものを隠すというようなそういう雰囲気がどうしても昔からありますのをむしろ直していって、それを、お恥ずかしいことではございましても皆さんの前に明らかにして、それをまた反省材料として直していくというのが当面の急務の問題ではないか、組織論がどっちにどういうふうに展開していくかということとは関係なく、まずこれに取り組むことが私どもの今日の最大の仕事であるというふうに考えておるわけでございます。でございますから、あるものは労使間の問題でありましょうし、あるものは昔からのよくないなれというようなものから生まれてきたものでございましょうと思いますので、それをいまいわゆる総点検を行いまして、実態を明らかにするということに今月初め以来努力をいたしておるわけでございます。まことにお見苦しいのを皆さんに見ていただくような始末で残念に思っておりますが、それにおこたえするにはこれを立て直すことにありというふうに考えておるわけでございます。
  239. 木村睦男

    ○木村睦男君 最後に総理お願いをしたいんですが、先ほどの日中孤児の問題でございますが、生まれたての子供を苦しい環境の中で今日まで育ててくれた中国におられる養親の方々、また今回のような孤児捜しに協力をしていただいた中国政府の方々、こういう方々に、いずれ総理は中国に行かれましたときにも感謝の誠は申されるでございましょうが、ちょうどいい機会でございますので、国民を初め、この声は中国にも伝わると思います。また孤児の人たちの耳にも入ると思いますので、この席でひとつ総理の感謝の気持ちを表明していただき、私の質問を終わります。
  240. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま木村先生からお話のございました中国残留孤児の養父母、またいろいろお世話になった方々に対して感謝の意を表したいという御発言は、これは日本国民全部の気持ちであろう、このように私も感じております。つきましては、六月には趙紫陽中国首相もわが国においでになりますし、私も秋には答礼のために中国を訪問いたしたい、こう考えておりますが、そのような機会におきまして、中国政府並びに中国政府を通じまして養父母の方々に対しまして深甚なる謝意を表明し、伝達方をお願いいたしたい、このように考えております。
  241. 植木光教

    委員長植木光教君) 以上で木村睦男君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  242. 植木光教

    委員長植木光教君) 引き続き派遣委員報告を聴取いたします。大蔵大臣、農林水産大臣通商産業大臣、運輸大臣、建設大臣、自治大臣及び国土庁長官にはお残りを願いたいと思います。総理大臣以下他の閣僚は御退席くださって結構でございます。  本委員会は、昭和五十七年度総予算案審査のため、京都府、岩手県及び香川県にそれぞれ委員を派遣し、去る二月二十三日各地において同時に地方公聴会を開催し、つぶさに現地の意見を聴取してまいりました。  これよりその概要について御報告を願います。  まず、京都班につきまして、岩崎純三君にお願いいたします。岩崎君。
  243. 岩崎純三

    ○岩崎純三君 予算委員会地方公聴会京都班につきまして御報告申し上げます。  京都班は、植木光教委員長、沓脱タケ子理事、木村睦男委員下条進一郎委員上田委員、片山甚市委員、丸谷金保委員、太田淳夫委員中村鋭一委員、そして私岩崎の十名で構成され、二月二十三日京都市において開催してまいりました。  公述は、地域の総合開発、関西経済の動向、中小企業問題の三項目で、六名の関係者から意見を聴取し、また派遣委員からも熱心な質疑が行われました。  以下、公述の要旨につき簡単に御報告申し上げます。  最初に、地域の総合開発につきましては、京都府知事林田悠紀夫君並びに滋賀県知事武村正義君から意見を聴取いたしました。  林田公述人は、政治、経済、社会の均衡ある発展のため、京都府においては府南部地域の京阪奈丘陵に文化・学術・研究の拠点として新都市建設の構想を持っている。この地域には、第二国立国会図書館や国立総合芸術センター、国際交流センターなど、国や民間による研究施設、教育施設、国際交流施設等の集積立地を考えているが、京都府はもともと、生活、産業基盤の公共施設が他府県に比較して立ちおくれており、今後新都市建設も含め、景気対策の上からも公共事業の前倒しなど、公共投資の拡大に国の積極的な措置を期待したい。特に交通網の整備が急務となっており、近畿自動車道舞鶴線、京奈バイパス、国道九号バイパス等の建設、国鉄奈良線、片町線の複線電化のほか、河川、上下水道の整備についてもその早期執行を極力国にお願いする旨の意見が述べられました。  次いで武村公述人は、琵琶湖総合開発について、戦後の急速な工業化や生活様式の変化によって、琵琶湖の水は富栄養化による汚染が進み、五十二年夏には、それまで瀬戸内海のこととしか考えていなかった赤潮が初めて発生をした。これによって滋賀県民は大きなショックを受けたが、これを契機に、湖水の富栄養化の原因となっていた合成洗剤の使用禁止など、湖水の水質保全に全力を挙げて取り組んでまいった。四十七年に発足した琵琶湖総合開発十カ年計画は、当初京阪神地区の水需要急増にこたえるため、毎秒四十トンの水を供給することを目指したものであるが、その後の経済情勢などから、十年目を迎えた現在、事業の進捗率は四〇%強にとどまっている。しかし、幸いにも今国会においてさらに十年の計画延長法案が提出されているので、その間、下流府県等の協力も得て、全力を挙げて事業の完成に邁進してまいりたい。まだ下流域の関係自治体との間には、負担金問題、飲料水の供給開始の時期、水質保全基金等の問題が残されているが、特に基金については、原因者負担か、応益者負担かの問題があり、下水道の第三次処理を施した場合の維持・管理費をどう負担するかについて決着がついておらない。これらについては近畿圏全体で話し合いを進め、納得し合える新しい仕組みをつくっていきたい旨の意見が述べられました。  次に関西経済の動向につきましては、大阪商工会議所副会頭里井達三良君、京都銀行協会会長井上太一君から意見を聴取いたしました。  里井公述人は、関西が国際化を進め、いわゆる関西復権のためには、近畿圏全体にわたる地域整備と並んで、二十四時間稼動可能な公害のない国際空港の建設がぜひとも必要である。四十三年に初めて関西国際空港計画が取り上げられてから、以後審議会において、再三にわたる審議の結果、埋め立て工法による泉州沖立地との結審を見るとともに、五十七年度予算におきましては、空港候補地の最終調査のためのボーリング調査費として、これまで最高の三十二億円が計上されたほか、運輸省、大蔵省の間に正式協議の道が開かれたことは新空港建設推進の立場から大きな進歩と評価をしている。  今後の課題は、まず第一に、運輸省から提示された三点セット、すなわち、空港本体、環境影響、地域整備についての地元の合意が得られることであり、第二は新空港が単なる交通機関と違って、人、物、情報の媒体であるばかりか、関連交通体系の整備、産業構造、さらには文化ともかかわりを持っていることから、運輸省のみならず、各省のこのプロジェクトへの公式な関与が望まれることである。地域の総合開発のためには、新空港と並び、文化、学術、研究都市構想として、筑波学園都市と異なった産学官の役割り分担に基づく国際的、学術的な提携研究の場としての関西リサーチコンプレックスを形成することにあるので、その早期実現方に力添えを願いたい。これらプロジェクトの受け皿として、関西各都市を結ぶ交通網の整備が不可欠であり、とりわけ南北の交通網として大阪湾岸道路、国鉄大阪外環状線の南伸、第二京阪道路の建設が必要である旨の意見が述べられました。  次いで井上公述人は、京都産業は従来従業員九人以下の小規模企業が九割近くを占める零細企業中心の産業構造となっている一方で、西陣織、清水焼など多種多様な伝統産業と、エレクトロニクス、精密機械など独創的で科学技術の先端をいく知識集約型産業が併存をしている。しかし、最近の景況を見ると、エレクトロニクス、精密機械などはおおむね好調を持続しているものの、生活様式の変化による着物離れの進行や、消費不況もあって、和装繊維関連業界の景況は低迷を余儀なくされている。加えて、京都の伝統産業及び中小企業は後継者の育成難や繊維の原料一元化の問題もあって苦しいが、今後は新技術、新製品の開発によって活性化を見出したい。京都府の中小企業金融は充実しており、今後とも国、府、市の中小企業対策に金融面から協力していきたい旨の意見が述べられました。  次に、中小企業問題につきましては、大阪府中小企業団体中央会会長田中鋳三君、大阪中小企業投資育成会社社長新井真一君から意見を聴取いたしました。  まず田中公述人は、昭和五十七年度予算で中小企業対策費が二千五百億円を超えたことは大変ありがたいが、今後一層の増枠を望みたい。大阪の中小企業は生産活動も高水準を維持し、雇用情勢も改善されてはいるものの、景気に敏感であり、輸出は停滞色があらわれ、設備投資にもかげりの色が濃くなってきている。これを打開するためには中小企業の受注の機会を多くし、景気を浮揚させ、活気を与えることが先決である。そのためには、まず第一に個人消費を回復させるための実質可処分所得を増加させるような所得税の減税、第二に公共投資、設備投資の拡大促進、第三には商工中金の政府出資及び財政投融資を大幅に投入して貸付資金量を確保するとともに、金利を引き下げられたい旨の意見が述べられました。次に新井公述人は、中小企業対策費二千五百五億円の確保及び財政投融資でも中小企業三機関の貸付枠が六%の伸びを見たこと、また中小企業政策国際会議費を計上されたことは高く評価をする。なお、この国際会議が大阪で開催されることを要望いたしたい。また今日、中小企業の中でも中堅企業こそ経済活性化の要因であり、技術革新のプロモーターでもあることから、それの技術面への金融施策の充実を図っていくことが必要である。さらに、非上場の株式評価の改善を五十八年度から実施することとなったことは喜ばしいが、その方式としては収益還元方式の導入、純資産価格方式による土地評価、類似業種比準方式における業種、株価算定、減額率の改善を図られたい。また、株式による物納、延納の担保扱いを認めてもらいたい旨の意見が述べられました。  以上で京都地方公聴会報告を終わります。
  244. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、盛岡班につきまして土屋義彦君にお願いいたします。土屋君。
  245. 土屋義彦

    ○土屋義彦君 盛岡班につきまして御報告をいたします。  盛岡班は、松尾理事矢田部理事、田代理事岩動委員、欄口委員下田委員及び私土屋の七名で組成し、二月二十三日、盛岡市で開催をいたしました。  公述項目は農業水産業及び国鉄問題の二項目であり、それぞれ三名ずつ、計六名の関係者より公述がありました。  以下、公述内容につき簡単に御報告申し上げます。  農業水産業につきまして岩手県農協青年組織協議会会長米沢公述人より、米価を初め麦価等がほぼ据え置かれたほか、二年続きの冷害もあって生活が圧迫されるなど、農家をめぐる環境は大変厳しい。さような中にあって、最近農業に市場原理を導入し、財政負担を軽減すべきとの主張が見られるが、食糧危機に即応し、国会で議決した自給率の向上を考えると、今後とも食管制度の維持、各種の価格支持制度の堅持、農業基盤の整備対策等に取り組む必要があると痛感する。そこで、現在進めている米の減反割り当てをふやさず、第三期水田利用再編対策の見直しを行うとともに、狭隘な耕地や都市近郊地帯で適用が困難な団地加算奨励金の条件緩和が望まれる。また、農作物の価格支持政策では基本的に再生産を確保できる価格設定をするべきだが、特に米価は生産費所得補償という食管法の趣旨を尊重してもらいたい。  構造政策では、新農業構造事業を計画どおり実施するとともに、土地基盤整備について今後も補助金による投資をふやすべきで、融資への切りかえは農家の負担をふやすので反対であるとの強い意見が述べられました。  弘前大学教授吉永公述人は、経済の国際化や米の構造的過剰傾向を考えると、従来の米作に対する手厚い保護政策だけでは農業が失敗に終わる懸念がある。米づくりは農地の割り高や賃金水準の高位安定、さらに経営規模の零細性から国際競争力を持てないのが現状である。特に経営規模拡大の要請があるものの、近年、土地は財産価値を保全する手段に考えられており、保有税の強化を行うべきだが、農地の流動化は困難である。農業の生産性を高め、農家の所得を向上させるには、米と米以外の農業生産の複合経営を成功させる以外にはないが、農民は長年の保護政策や補助金によって利潤を目指し、リスクを負担する気概が見られない。今後農業に意欲のない底辺農家層を温存する一律的保護農政を改め、明確な意欲ある農家に傾斜した助成策を講ずべきであると思う。農業協同組合も農業にすぐれた人材が吸収し得るよう、教育、訓練についての工夫と努力を傾注すべきであるとの意見が述べられました。  岩手県漁業協同組合連合会専務理事黄川田公述人は、五十七年度水産関係予算が厳しい財政の中で三・二%増加したことは評価をしたい。特に漁港整備と沿岸整備の二つの計画が五十七年度から六カ年計画で認められたことは漁業振興に明るい展望を開いたものである。これら公共事業の執行に当たっては、予算成立後、約五カ月間、所管省と自治体の事務処理に空費し、九月に開始される工期の実施時期を早めるようにしてもらいたい。また、経営の苦しいマグロなど特定漁業に対し、減船等の補償負担軽減措置として融資がなされるが、岩手県の基幹漁業である小型イカ釣り漁業も適用対象事業とするよう、強い要望がございました。また近年、アワビ等いそ資源の密漁事犯が続発し、漁民の生活権が侵害されております。これは密漁に対する現行罰則規定が軽微に過ぎ、抑止力を失っているためで、罰則の強化が必要であるとの強い意見が述べられました。  欧米との経済摩擦解消のため、水産物の自由化が検討されていると聞くが、国内漁業に及ぼす影響や外国二百海里水域での漁獲割り当ての減少につながるので、あくまでも反対であるとの意見が述べられました。  国鉄問題につきまして、岩手県知事中村公述人より、国鉄再建問題で地方交通線対策として本県では久慈、宮古、盛の三線が廃止対象となりました。古くから交通網の整備を県政の課題として進めてきたが、その中でも三陸沿岸地方の期待と熱意が強く、これを背景に廃止三路線を一環とする青森、岩手、宮城三県の沿岸都市を結ぶ延長三百四十五キロの三陸縦貫鉄道の建設が最終段階に入っております。国鉄線としての存続が困難となった時点で、沿線関係市町村との協議、県議会での審議、さらには県民意向を集約し、県関係市町村、縁故関係団体を出資者とする第三セクターの三陸鉄道株式会社を昨年十一月に設立をいたしました。今後に多くの課題を抱えておるが、まず苦しい経営環境を乗り切るため、運賃収入の増大策を講ずる一方、減量経営を実現する経営体制の確立、第二は政府及び関係機関による援助、特に転換交付金の充実や予定どおりの工事の進捗及び会社要員や車両の提供、第三は地域住民による第三セクターの育成、協力である、と述べられました。  また、県民の暮らしと足を守る会会長である小原公述人は、三陸縦貫鉄道は原則的には国鉄で行うべきだが、諸般の情勢から第三セクターによる運営について現実的対応を考えると幾つかの問題がある。従来二百五十億円の予定であった三陸縦貫鉄道の工事費が地形的にむずかしいにもかかわらず、大幅に減額されているのは安全性の確保から見ても不安であり、工事に見合う予算を計上すべきである。  第三セクターに変わっても盛岡鉄道管内の利用客の推移から、経営が必ずしも黒字になるとは考えにくいので、運賃にはね返るか、関係自治体の財政負担にしわ寄せされるおそれがある。したがって、国は経営欠損、補助金の支給基準を弾力的に行うとともに、新幹線と三陸鉄道をつなぐ各路線の整備を行い、利用客の誘発率を高めるべきである。  また、国鉄が第三セクターに出資し、事業に参画することが、相互乗り入れを含め経営をスムーズ化すると述べられました。  最後に、岩手経済同友会代表幹事中村公述人は、東北の悲願の新幹線が本年六月より暫定開始となるが、一日も早い東京始発と盛岡以降の建設を促進してほしい。新幹線開通で東京—盛岡間は四時間に短縮され、盛岡の乗降客は約三割増と見込まれ、観光客の増加も期待している。しかし、新幹線開業を見込んで、先行的設備投資を行ってきたホテル業界は四割程度の低稼働率に悩んでいる。  新幹線の開通で大都市と地方都市が密接となり、地域の伝統産業も活発化する反面、小売業は従来の同一エリア内だけではなく、新規大型店との競争が生じ、紛争が起こっているので、これを避けるため何らかの政治的配慮が必要であると述べられました。  以上で盛岡班の報告を終わります。(拍手)
  246. 植木光教

    委員長植木光教君) 最後に、高松班につきまして井上吉夫君にお願いいたします。井上吉夫君。
  247. 井上吉夫

    ○井上吉夫君 高松班につきまして御報告いたします。高松班は、柳澤理事、藏内委員田中委員、谷川委員、寺田委員、三木委員、喜屋武委員、それに私井上の八名で構成され、二月二十二日に、本州四国連絡橋、児島−坂出ルートの建設状況をつぶさに視察し、翌二十三日高松市において公聴会を開催してまいりました。  高松班の公述項目は、本四架橋と地域開発、栽培漁業を中心とした瀬戸内漁業、家内工業問題の三項目でありまして、各界代表からそれぞれ意見を聴取した後、熱心なる質疑が行われました。  以下、公述の要旨につき順次簡単に御報告申し上げます。  まず、本四架橋と地域開発につきましては、香川県知事前川忠夫君、四国経済連合会会長山口恒則君から意見を聴取いたしました。  前川公述人は、本四架橋児島—坂出ルートの工事が六十二年完成をめどに進められており、四国四百万人の期待が寄せられている。ここ数年工事は胸突き八丁を迎え、事業費が増高するが、目標年度中に完成できるよう、国の特段の配慮を賜りたい。四国は離島で過疎の地域である。立ちおくれている社会資本や、文化施設等の充実を図ったり、全国水準の八四%にすぎない所得格差の是正など、全国水準へのキャッチアップを果たしていくことが当面の最大課題である。特に、「四国は一つ」との言葉にあらわされるように、四県一体となって開発を進めることが必要で、第一には、四国縦貫、四国横断の両高速道路の早期建設により、四県を一つに結び、さらにこれが、本四架橋とつながると、両者の相乗作用によって飛躍的な大発展が期待できる。第二は、高松、高知、徳島など非ジェット空港のジェット化である。これら陸海空の大規模プロジェクトは、四国新時代の大きな幕あけを約束するものと確信している。しかし大規模プロジェクトはもろ刃の剣を持っており、メリットを伸ばしデメリットを抑えていく必要がある。そのためには、一般道路の整備と国鉄の複線電化並びに新幹線の導入を図ることが不可欠である。また、先端技術産業の誘致、物流施設の整備、本四架橋を中心とした観光資源開発、さらには、広域的な特色ある都市づくりも推進していかなくてはならない。これら実現のため、国の財源難の事情はわかるが、四国への重点的な財源配分を切望するとの意見が述べられ、次いで山口公述人から、四国経済は四十八年の石油ショックまで、全国を上回る高度成長を遂げ、格差縮小の道を歩んできたが、五十年代に入り経済停滞が続き、再び所得格差が拡大している。鉱工業生産は五十年を一〇〇として、五十六年には全国が一四七と五割上昇しているのに対し、四国は一一三と一割の増加にとどまっている。これは四国の産業構造の転換が全国に比べておくれ、牽引力となるIC、自動車、精密機械などの産業が少ないことに起因する。このことは、高速道路、空港など、高速輸送網が未整備なために、人的、物的な輸送面で時間的ロスが多く、産業立地を阻んでいるからにほかならない。したがって、四国の経済地位を向上させるためには、交通基盤の整備が何よりも不可欠であり、積極的に高度加工型先端産業の誘致に努めていく必要がある。特に、交通基盤の整備については、九州や中国地方と比べきわめておくれている高速道路の建設や、空港のジェット化を急ぐことが緊急課題である。これらプロジェクトの推進に当たって、四国の立場を十分考慮された財源配分を国に特にお願いしたいとの意見が述べられました。  次に、栽培漁業を中心とした瀬戸内漁業につきましては、徳島県漁業協同組合常務理事条半吾君、香川県水産振興協議会会長小磯治芳君から意見を聴取しました。  まず、条公述人は、瀬戸内漁業の規模は零細であるが、魚族が豊富な上、通年の漁業が行えるため、漁業収入は勤労者世帯の収入を上回っていたが、近年は臨海部に工場群が出現するなど、魚を守る藻がなくなったり、資源が急速に減少し、これによって漁業収入は農業収入以下に低下しつつある。このため、漁業資源を維持するため、人為的に幼稚魚の補給を行っていく必要がある。現下、栽培漁業の効果を見ると、栽培センター生産魚類の全部が成功しているわけではないが、クルマエビ、アワビ、タイ、ヒラメなどは経済的にも有効な成果を上げている。徳島県の例では、アワビのように移動の少ない魚介は、単一漁協の責任で放流し、また、広域的に移動するクルマエビ等は、県漁連が事業主体となって、小型底びき鋼業者から一部経費を徴収するほか、県、市町村の援助を受けて実施する方法をとっている。こうした栽培漁業は、単に経済効果だけでなく、資源管理型漁業の第一歩であり、さらに漁民が、この事業に参加することによって、新しい漁業倫理を持つことにも役立つと考えている。国におかれては、瀬戸内海の栽培漁業の推進に一層の支援を賜りたいとの意見が述べられ、次いで小磯公述人から、瀬戸内海の栽培漁業は、昭和三十八年からモデル海域として発展してきた。特に、五十四年の二百海里時代の到来で漁業環境が悪化し、沿岸漁業が見直され、これとともに栽培漁業の重要性が高まってきた。栽培漁業の今後にとって重要な課題は漁場管理である。その第一は、乱獲、密漁など有名無実化している管理規制を強化することであり、一地域の規制ではなく、管理規制の広域化、統一化があわせて必要である。第二は、漁民、漁業団体の自主的な漁場管理の必要性である。  ところで、瀬戸内海の漁業は、漁船漁業と養殖漁業の生産比率が五対五となり、養殖漁業の比重が高まるが、今後瀬戸内海の栽培漁業の将来を考えた場合、栽培漁業の機構拡大に並行して、地域の特性に照らした地域ごとの特色ある栽培漁業を進めていくことが、瀬戸内漁業の特色を回復することにもつながると考えているとの意見が述べられました。  最後に、家内工業問題については、日本手袋工業組合理事長官内敏雄君、徳島県木竹工業協同組合連合会会長藤川光昭君から意見を聴取いたしました。  宮内公述人は、香川県で九〇%のシェアを持つ手袋工業は、末端内職従事者が三万人を超えるすそ野の広い業界である。手袋工業は、三十年代末期から生産品目の多様化を手がけ、ドルショック当時は輸出比率が六〇%を占めた。その後、第一次、第二次の石油ショック、並びに五十二—五十四年の暖冬による在庫過剰を克服、内需移行を推進し、現在では、輸出比率は四%に低下している。しかし、全体の生産高はドルショック当時の二倍近くになっており、この間、国、県の手厚い指導や、産地振興法の指定などが幸いした。特に、五十六年の業況は、宣伝効果が効き、爆発的状態の売れ行き出荷をもたらした。しかしこれは神風であり、恒久的安定が保障されたわけではない。今後発展途上国の追い上げに対応するために、産地振興法の指定期間が切れた現在、新たな新製品開発の面での支援をお願いしたい。また、革手袋用の原皮の輸入が自由化されていない。製品の方は自由化されているのだから、早期に自由化に踏み切って、革手袋製品の生産推進に向けてほしい旨の意見があり、藤川公述人から、徳島県の木工産業は消費低迷を反映して人員削減が進み、経営は零細化をたどっている。経営上の問題点は、材料面で九〇%輸入に依存しており、価格変動に伴って経営が圧迫していること、大手住宅産業の据えつけ家具が急増し販路が制限されてきたこと、若年労働者の確保がむずかしくなっていることが挙げられる。このため、産地見本市の開催や、ブランド製品をつくるなどの工夫をしているが、零細ゆえに効果は上がっていない現状である。したがって、より企業努力を推進し、産地体質の強化と、製品開発を複数企業で行うようにしていく必要があり、そのために産業会館がぜひとも必要である。また、現在企業が住工混合地区に立地しており、経営規模の拡大のためには立地環境を考え直すことが求められている。国におかれては、産地振興法の補助金給付について多くの制約があり、特に木工業界のように多種の制品を生産している業種は補助金の活用が限定されるので、今後補助金交付の簡素化をお願いしたいとの意見が述べられました。  以上をもちまして高松班の報告を終わります。(拍手)
  248. 植木光教

    委員長植木光教君) これをもって派遣委員報告は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会      —————・—————