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伊藤郁男君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております
昭和五十六年度
一般会計補正予算案三案に対し、一括して反対の討論を行うものであります。
いまから一年前の
国会論戦の中で、わが党の佐々木
委員長は、
昭和五十六年度当初
予算に対し次のような批判と提言を行ってきたところであります。すなわち、佐々木
委員長はこう述べたのであります。行財政改革がほとんど行われず、二兆円の国債減額分の大部分がそのまま国民の負担に転嫁されました。もし
政府が真剣に民間の活力を期待するというのであれば、中小企業者に対する各種の増税の取りやめ、
物価調整減税の実施、住宅並びに土地対策の推進などを図るべきであります。そうでなければ五・三%の
政府経済見通しもとうてい達成できない。このように断言したのであります。ところが、
政府・自民党はわれわれの主張には耳をかさず、わずかに一人当たり五百円という超ミニ減税でその場をしのいできたのであります。その後の
日本経済の動きはどうであったか。われわれの主張どおり、個人
消費は全く停滞し、民間の活力を維持するどころか、中小企業の設備投資も盛り上がらず、住宅建設はますますじり貧傾向をたどったのであります。これがため、
政府の経済成長見通しは、当初の五・三%が十月には四・七%に下げられ、ついには四・一%にまで引き下げられたのであります。そして、この四・一%でさえ、その達成は困難な状況にあると言わなければなりません。確かに経済は生き物であり、的確な予測は困難とはいえ、初めから全く裏づけのない希望的観測だけを国民に示し、実績は大幅に狂うというのでは、国民の政治不信はつのるばかりであり、
政府の政治責任はきわめて重いと言わざるを得ません。
このことは単に国内だけの問題ではありません。国外に対しても、輸出主導の経済成長は貿易摩擦問題を激化させ、日本はきわめて困難な
立場に追い込まれているのであります。
さらに見逃すことのできない問題は、
補正予算において四千五百二十四億円の租税収入減を招き、これがため三千七百五十億円の赤字国債の追加発行を行っていることであります。
鈴木内閣は当初
予算において二兆円の国債減額を最大の公約にして財政再建のスタートを切ったはずであります。ところが税収減が生ずるや否や、いとも安易に赤字国債を追加発行しようとする姿勢は、きわめて無責任な態度と断ぜざるを得ません。
政府は、
物価が予想以上に安定したので税収減はやむを得ないと抗弁していますが、これは全くの詭弁であります。むしろ
政府は、
物価が安定すれば
消費が回復する、それがきっかけとなって中小企業の設備投資も上向きに転ずると述べていた事実を思い起こすべきであります。確かに税収不足は過去にも経験しているところであります。問題はその穴埋めの方法であります。今回は、当然行財政改革の断行によって処置すべきでありました。税収減即赤字国債の追加発行というのでは、何のためにこれだけ行財政改革の
議論を積み重ねてきたのか、全く国民には納得がいかないところであります。
鈴木総理が行革に政治生命をかけると言う以上は、年度途中といえ
ども、税収不足は行政経費の徹底切り詰めによって対処するのが当然であります。にもかかわらず、
補正予算に計上されている既定経費の節減及び不用額の減額は例年より少ない六百億円にしかすぎません。これでは
鈴木総理の行革にかける熱意も上辺だけのきれいごとであり、国民の信頼を得ることは全くできないと言わざるを得ません。
以上、私は昨年の
政府の経済運営に対する厳しい批判と、
補正予算に対する反対の理由を述べてまいりましたが、このことは過去についての批判だけで済まされる問題ではありません。
昭和五十七年度
予算と経済運営についても、昨年と全く同様の失敗を再び
政府は繰り返そうとしているのであります。特に
所得税減税について、ことしもまた財源対策を理由にしてその実現を見送ろうとしているのでありますが、このような姿勢は、昨年の経済運営の失敗の教訓を全く酌み取ろうとしない傲慢な態度と言わざるを得ません。いまこそ
総理は、発想を根本的に転換し、勤労者の不公平感を解消し、
内需中心の適正な経済成長を図るため、
所得税減税を断行すべきであります。
減税は、一時的には税収の減収になりますが、長期的には経済成長を促進し、税の自然増収が期待でき、財政再建に大きく寄与するものであります。このように発想を根本的に転換することが、現在八万ふさがりに陥っている経済、財政問題を解決する一歩ともなります。このことは、まさに
政府に最も強く求められている
政策課題と思いますが、
総理の決断を強く期待して、私の反対討論を終わります。(拍手)