○対馬孝且君 私は、日本社会党を代表いたしまして、
鈴木総理の
ベルサイユ・
サミット及び
国連軍縮総会の帰朝
報告を初め、ロッキード判決等の重要な
政治問題につきまして質問いたします。
鈴木
内閣の約二年間の
政治を
国民はどう見ていると
総理はお
考えですか。
外では
軍縮を唱え、内にあっては反核の
国民的な盛り上がりに水をかけ、あるいは
政治浄化を叫びながらロッキード事件の金権腐敗体質を温存し、和の
政治を唱えながら数を頼んで強行する。増税しないと公約をしながら、過去五年間課税最低限度額を据え置き、実質増税を行い、さらに来年度以降は新しい消費税の創設をたくらむ。一方では
国民受けにかっこうよく立ち回りながら、他方では全く正反対の
行動をする。このように鈴木
内閣の
政治はその場その場で巧みに使い分ける二枚舌のずるい
政府、これが
国民の率直な気持ちであります。
総理は、こうした
国民の不信と怒りのいら立ちにどうこたえ、不安を取り除きますか。まず冒頭に当たり、鈴木
政治の欺瞞を厳しく指摘し、
総理の
政治姿勢を問いながら、以下具体的に伺います。
まず第一に
政治腐敗の問題でありますが、ロッキード事件に関連して受託収賄罪に問われた橋本登美三郎被告、佐藤孝行被告に対する世紀の有罪判決によって、
国民の中から改めて
政治浄化への機運が盛り上がっているのであります。今回のロッキード判決は、当時の政官財の構造的汚職の実態を法的に明らかにされたものであり、
総理大臣、二運輸大臣、運輸政務次官等が黒い金を受け取り、その意を体して政策の展開を行い、
国民の政権と
政治への信頼を失わしめたという事実を
総理はどのように受けとめているのか、明確な答弁を求めるものであります。
戦前の政党
政治が崩壊したのは、
政治の汚職腐敗が
国民の
政治不信につながり、ファシズムに道を開きつつあるといっても言い過ぎではないと思うのであります。いまこそ議会制民主主義を守り、政党
政治を維持していくために、
政治家みずからが
姿勢を正し、
国民の
政治に対する信頼を回復させなければなりません。その
責任は、まず政権党である
自由民主党、その総裁である
鈴木総理あなたにあると思うのでありますが、所信を伺いたいのであります。
ことに、裁判所の厳密な事実認定によって有罪と宣告された佐藤議員は当然辞職すべきであり、わが党は
国民の厳粛なる信託を裏切った佐藤議員の辞職勧告案をいち早く提案しているのでありますが、
自由民主党はこれに同調すべきであります。これに対し
総理の明確な答弁を求めます。
ロッキード事件の解明については、刑事手続による司法の真相究明はもちろん必要でありますが、それは言うまでもなく、
政治家は刑事
責任とは別に重い
政治責任を負うているからであります。東京地裁の判決によって、田中元
総理、二階堂
自由民主党幹事長、加藤六月全国組織
委員長らにも黒い金が渡っていたことが事実となったのであります。これら灰色高官は被告人と同じ金を受け取っていながら、ただ職務権限がない、あるいは時効にかかっているという理由で起訴を免れているにすぎないのであります。このような疑惑の人物を党の幹事長に置いた総裁としての
総理の
責任はきわめて重大であります。この
責任をどのように感じておられるのか、明確な答弁をいただきたいのであります。
アメリカでは、過般、上院のハリソン・ウィリアムズ議員が汚職で追放され、またリチャード・アレン
大統領補佐官は主婦の友社から一千ドル、約二十五万円の謝礼を受け取ったことで辞任したように、みずからを浄化することが
国民の
政治に対する信頼の回復に欠かすことのできない決定的な問題であります。判決において灰色がクロと認定された二階堂議員、加藤議員の
政治責任をうやむやにするならば、
政治浄化の芽は摘み取られてしまうことになるのであります。
総理は、言葉では
政治浄化や
政治倫理の確立を唱えつつも、実際には金権腐敗の体質を温存し、灰色高官を要職につけ、
政治疑獄の主役が意図するままに動いてきております。この
総理の
姿勢は、
さきのハワイにおける同行記者団の会見にて「証人喚問は
国会で相談されること」と言い、まるで
国会でやるべきものだと人ごとのような口ぶりであり、これではもはや
国民は納得し得ないのであります。国政調査権の発動による真相究明は
国民の念願であり、この
国民の
期待にこたえるためにも
国会への証人喚問を直ちに実現すべきであります。
総理の確かな答弁を求めます。
私は、この際、田中角榮の五億円の受託収賄問題、児玉ルートP3Cオライオンの軍事航空疑惑などはいまだに解明されておりません。この真相の解明のためにも航特委の復活、国
会議員の倫理を正すためにも倫理
委員会の設置をすべきであります。わが党がすでに提出をしてきた資産公開法並びに
政治資金規正法等の成立と
強化改定することを要求し、
総理の
政治決断を強く求めるものであります。
第二に、私は
軍縮と平和の問題について伺います。
鈴木総理は、
国連軍縮総会に出席され、高い視点からの
軍縮演説を行って帰国されたのでありますが、もちろんこの総会は、
世界の平和を願う多くの人々の核兵器に反対し、
軍縮を求める運動に支えられたものであることは十分承知されていることだと思います。この
軍縮総会において
総理は平和三
原則を提起したのでありますが、こうした平和の理念はわが党も
評価することにはやぶさかではありません。しかし、
現実に自民党
政府が進めようとしている政策は、この理念に逆行するものではないかと言わざるを得ないのであります。
まず、
総理の
核軍縮の主張とは逆に、今年度予算において財政再建を理由に福祉や教育費の削減を行いながら防衛費を大幅にふやし、防衛大綱の見直しのための五六中業の作成を進め、軍事
大国への道を歩もうとしているのであります。
総理、こうした軍拡路線を
核軍縮へ向けてどのように転換するつもりなのか、お伺いいたしたいのであります。
また、完全
軍縮を達成する上で、核不使用の国際的合意を形成することは限定核戦争の危険が指摘されている今日の
状況ではきわめて重要な
意義を持っているのであります。これは衆参両院本
会議で採択された
軍縮決議においても指摘されているところでありますが、日本
政府として今後はあらゆる核不使用の決議に
賛成すべきだと思いますが、
総理の答弁を求めます。
総理の
軍縮総会での
演説をニューヨーク・タイムズ紙が、「日本、
国連で再軍備策を説明」という報道に相なっております。外務省情文局の
責任者である渡辺参事官の説明によれば、「日本は軍事予算を増額しているが、勢力均衡と戦争抑止のため必要なものであり、新たな均衡がとれたときは
鈴木総理の言うところの
軍縮のプロセスを開始することができるのだが、現在の環境では軍備削減はできない」という説明に相なっているのであります。この
姿勢は、まさに「
軍縮の前に軍拡」というレーガン政権の見解と軌を一にするものであると言わなければなりません。
総理の見解を明らかにされたいのであります。
総理、国の安全のための核抑止力とか力のバランスといった政策や方法は、すべて軍事力
拡大のための方便にすぎないのであります。私は、あなたが
核軍縮を真に願うのであれば、核の傘を離れ、非核三
原則を厳守しつつ、日本周辺の非核地帯の設定に真剣に取り組み、
世界の
核軍縮の主導権をとるべきであります。ことに、
世界で
唯一の核兵器による
被爆国である
わが国の
立場として、米ソ戦略兵器削減
交渉や中距離核兵器削減
交渉といった
大国間の軍備管理
交渉にすべてを任せるという
姿勢は許されないのであります。
総理の
所見をお伺いいたします。
総理は、
世界の軍事支出の六%を引き合いに出し、軍事費の削減をして
開発発展途上国に対する
経済協力をしていくと訴えたことは多とするものであります。しかし、六月二十日の新聞報道に明らかなように、防衛庁長官は五六中業の見積もり予算要求を防衛費のGNP一%の枠を実現する修正の態度を打ち出しております。これは明らかに
総理の言う
軍縮の方向とは逆行し、軍拡を強めるものであります。
総理の確たる答弁を求めます。
第三に、
ベルサイユ・
サミット問題について質問いたします。
先般の
サミットにおいては、
世界経済の再
活性化を最大の焦点として、
各国の
通貨、
経済政策の
協力が合意されたと報道されております。
総理は合格点をとれたと自画自賛をしたのでありますが、
サミット後の
情勢は
通貨問題も一段と深刻になってきております。
わが国の円も、きのうは二百五十七円六十銭、最安値になっております。
政府は為替市場安定のための介入に関する
サミットの合意を実行するようアメリカ
政府にどのように訴えていく
考えか、また、アメリカ
政府はどのような
高金利是正を約束したのか、明らかにされたいと思うのであります。
また、対ソ
信用供与問題については、アメリカの一方的な制限
強化をのまされたことの印象をぬぐい去ることができないのは私一人はでないと思います。
先進国の不況、インフレ、
通貨、
貿易、エネルギーなどの
経済問題を
中心とする
サミットから次第に
政治色を強めていることに危惧の念を強めざるを得ないのであります。
総理がレーガン
大統領との会談でサハリン石油・天然ガス
開発協力の弾力的
措置を求めたのに対し、アメリカ
政府はこれから
考えるとの答えがあったと伝えられておりますが、この問題は、
わが国にとって今後の
わが国とソ連との
経済協力全体にも影響を与えかねない重大な問題であり、鈴木
内閣は今後アメリカにどう説明をし、実現に向かって
努力する
考えか、明らかにしていただきたいのであります。
次に、
貿易摩擦問題について伺います。
先月末に関税引き下げを
中心とした
わが国市場開放策第二弾が発表されました。今回の
市場開放措置についてどこまで
各国との間に合意ができているのか、明らかにされたいのであります。
さらに、このような
米欧諸国の批判や指摘に対し、特に秋の
日米農産物交渉ではオレンジ、牛肉の
輸入枠拡大が問題となることは必至であります。今後夏から秋にかけて強まることが予想されるこうした
米欧からの市場開放圧力に
政府はどのように対処していくのか、また、
さきの
農産物輸入
自由化反対の
国会決議をどう守っていくのか、
総理並びに農水大臣の決意をお伺いいたします。
第四に、財政問題について伺います。
五十六年度の税収は、補正後見込みに対し三兆円もの歳入欠陥が必至となっているほか、五十七年度は当初見込みに対し四兆円、五十八年度には財政の中期展望で予定する税収に対し実に七兆円もの巨額の
税収不足が発生すると言われており、鈴木
内閣の最大の
政治課題である「増税なき財政再建」「五十九年度特例公債脱却」の公約達成が不可能な現状にあることは、もはや明らかであると言わなければなりません。
政治責任をとると言明された
鈴木総理は、財政の現状に対する
所見と進退を含め明確な答弁を求めるものであります。
また、大蔵大臣、あなたの
責任はより具体的でなければなりません。この歳入欠陥問題は単なる
経済変動とか予期せぬ条件変化によるものではなく、
政府の意図的に過大な
経済見積もりによるものだけに、明らかな人災事故とも言うべきであります。いまや大蔵大臣の進退を明らかにした上での所信を伺いたいのであります。
私は、異常な九十四日間の延長を図った今
国会に五十六、五十七年度の補正予算を提出し、これに伴う
経済計画を含む見通し等の訂正を明らかにすべきであると
考えています。歳入欠陥
対策として本年度予算の歳出削減をするのか、または赤字
国債を増発するのか、さらには財政再建期間を延長するのか、いずれの道を選択するのか、
国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
また、グリーンカード問題についても
政府の
責任ある
所見を求めます。
経企庁長官、あなたも
責任を免れる
立場ではありません。
総理は
サミットにおいて景気の
拡大と
内需中心の
成長を公約いたしましたが、六月十一日に発表された五十六年度実質
成長は二・七%で、改定見通しの四・一%さえも大幅に下回りました。また、五十七年度五・二%の
政府見通しは、わが党が指摘したとおり幻の
目標であることがはっきりしてきたのであります。長官、もはや他のすべてに優先して内需
拡大による
景気対策を打ち出すべきと
考えますが、ひとつ積極的な
所見を伺いたいのであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
特に、
政府見通しが大きくずれた住宅建設や中小企業の設備投資の落ち込みは、消費需要の低迷と密接な関連があり、所得税減税を初めとする家計消費の回復をてことした内需
拡大の積極的な
対策をとれと、わが党が春の予算
委員会以来再三要求してきたところであります。
景気対策として上半期
公共事業の四分の三をすでに前倒ししているが、下半期
対策として仲裁裁定の完全実施、消費需要の
拡大のため一兆円減税を行うべきだと思います。政策の重点を積極的な内需
拡大策に転換し、新たな
経済見通しを明らかにすべきと思いますが、長官の英断ある
所見を求めます。
総理、故
大平総理が愛読された「日暮硯」には、信州松代藩の家老恩田木工の財政立て直しの手だてがあり、それには「うそを言わぬこと」へ「賄賂を取らぬこと」、「財政の実態を明らかにすること」など為政者の
基本姿勢が示されているのであります。
総理のお
考えをしかとお伺いしたいのであります。
最後に、今後の行政改革について、
総理の
基本姿勢についてお伺いをします。
第二臨調のあり方についてですが、わが党は行財政のぜい肉落としには基本的に
賛成をいたしております。しかしながら、最近の臨調と
政府あるいは
国会との
関係を見ますと、臨調が
政府や
国会の上にある特別権力機関ではないかとの疑問をぬぐえません。
鈴木総理の諮問機関にすぎない臨調に第四の権力を与えることは、明治憲法下の枢密院を想起し、やがて
国会や
政府の形骸化を招くなどによる無用な不安を
国民に与えております。とりわけ、
わが国は
世界に例のない戦争放棄の
平和憲法を持つ国であり、その精神の上に立って東西の緊張緩和を進め、
世界の平和維持に
努力すべき決意を明確にすべきであるにもかかわらず、防衛力整備についての
政府方針を打ち出すことは厳に慎むべきであります。
さらに行政改革について、臨調の部会
報告を検討するに、行政の理念はあっても行政の民主化という視点は全く欠落し、不公平税制の是正についても触れられておらず、また分権化を言いながら国と地方の
関係は不明確であります。中央官庁の統廃合問題についても数字合わせにすぎず、中身のない何ら改革の効果が認められないもので、したがって国土庁に北海道
開発庁と沖繩
開発庁の吸収合併にはわが党は反対であります。
臨調から明確な方針を示されているのは国鉄、電電、専売の分割と民営化だけであります。社会
経済の変化に
対応して改革することは必要であると
考えますが、その方針は、
政府の干渉から独立し、経営の自主性の尊重、分権化の
強化であり、民営化と分割には反対であります。したがって、
政府においてもこの取り扱いは慎重になされることを特に要求しておきます。
私は、臨調部会
報告は
平和憲法の改悪をねらった意図的な行革であると断ぜざるを得ません。
鈴木総理はどう見ておられるのか、また、七月の基本答申が出た際どのように
対応されるのか、
総理の答弁を求めます。
さて、私は質問を終わるに当たり、
総理の反省と決断を求めてやまないのであります。いま
国民大衆の鈴木
内閣に対する不信感は極度に達しておると言わなければなりません。それはあらゆる世論調査の結果が物語っているとおりであります。しかも不信の理由は、いたずらに目白の風になびき、国益を忘れた財界の使い走りにすぎない臨調に迎合する愚かな浮き草
政治であると言わなければなりません。先哲の言葉に「民、信なくんば立たず」との教訓がありますが、いまこそ真剣に玩味すべきではないでしょうか。清潔にして公正な民主
政治をよみがえらせるため
鈴木総理の猛省を促して、私の質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕