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宮之原貞光君
太田議員から相当広
範囲にわたります御
質問でございますので、一問一問というよりは、場合によりましてはまとめた形で
答弁をさせていただきたいと思います。
まず第一点は、
参議院の
機能と
役割りと本
法案との
関連性ということに集約されるところの御
質問が二、三点ございました。
御指摘のごとく、わが
参議院は第
二院としての
衆議院への抑制、補完という
機能を持ち、そのことからくる
自主性、
独自性を持っておるわけでございます。このことと本
法案の
成立による
参議院の
政党化ということは、決して相矛盾するものではないと
考えておるものでございます。
議会制民主主義における国の
政治的意思形成過程におきます
政党の
役割り、任務という
現実を直視しました場合、わが
参議院もまた
衆議院同様にその面の
役割りを持っておるわけでございますから、
参議院の
政党化ということは決して否定されるものではなく、むしろ当然であり、自然の流れと言えると思うのであります。
それだけに、
政党化という
前提の中で、御
質問にもありましたように、いかにして
参議院の
機能と
役割り、それに基づく
自主性、
独自性というものを高めるかということが最も大きな任務だと思うのでございます。ただ、その点率直に申し上げまして、この現状は種々の問題点があることは事実でございます。ここに
参議院の機構
改革が天の声であると言われておるところのゆえんがあります。それだけに、わが党もそのために全力を尽くすことについては決して他党にひけをとるつもりはないのであります。
この点、わが党は公選特別
委員会の
審議の中でも再三にわたりまして強調してまいりました。特に、第六次
選挙制度審議会におきます
参議院の
機能を高めるための五項目、さらには
参議院改革協議会の遠藤小
委員会の
報告の実現にはお互い全力を挙げて
努力する必要があると思うのであります。ただ、この点率直に申し上げさせていただきますけれども、肝心の与党
自民党の熱意が余り多く見られないことは、わが党としてもやはり率直なところ感じておるわけでございます。それだけに、この問題を放置いたしまして
選挙制度の
改革のみに熱中するということは非常に問題があると思うのであります。したがいまして、わが党といたしましては、いわゆる
参議院の
政党化という
現実を踏まえて対処するところの
選挙制度の
改革という問題と
参議院の機構
改革ということは、まさに車の両輪であり、両者とも精力的にやらなければならない
課題をわれわれは背負っておる、このように
考えるところでございます。
第二の手続の問題でございますが、
選挙制度の
改革ということは、事、
議会制民主主義の
基本ルールの問題でございます。それだけに、御指摘のように
各党間の協議と合意が
基本になって進められなければならない点は、これは
質問者と全く同じ
考え方でございます。過去七次にわたります
選挙制度審議会で
議論をされてきたゆえんのものもまたその
考え方に立ったからだと思うのでございますが、今回の場合は、
自民党は他党の理解を得るためにさしたる
努力もしないままに、昨年の第九十四回
通常国会に
提出し、今
国会でその
成立を図ろうとすることが明確になった以上、この
現実を踏まえてみた場合に、ただこの問題について、わが党としてもやはり自分の党の持つところのこの
選挙制度の
改革の問題について具体的に提起をしていくということは、公党として私どもは当然だと思っておるのであります。
したがいまして、私どもといたしましては、今次
国会にこれが
提出されておる中から、いわゆる
自民党案と対置をさせる中で十二分に
審議をしていただきたいと思うのであります。そういう意味におきましては、御
意見のように
中央公聴会、
地方公聴会等を開催するなどして広く
国民の
意見を求め、可能な限り
各党の合意が得られるよう
努力をしなければならない問題だと思っておるところでございます。
第三は
憲法問題でございますが、まず
太田議員の方から、わが党の護憲の党としての
活動に敬意を表していただいておることにつきましては感謝を申し上げたいと思うのであります。御指摘のように、私どももこの点を最も重視し、党内の論議を進めてまいりました。そして、
提案をしているところの
内容は合憲であるとの確信を持ってここに提起いたしておるわけでございます。
まず、
憲法十四条、十五条、四十四条にかかわる問題でございますが、
憲法十五条はいわゆる
選挙権、
被選挙権を含む包括的な参政権を定めており、その
選挙権、
被選挙権の具体化については第四十四条において
規定をされておるものだという理解に私どもは立っておるのであります。なお、御
質問の四十三年の
公職選挙法違反にかかわりますところの
最高裁の判決主文は、当然尊重し遵守されなければならないことは申し上げるまでもないわけでございますが、その
最高裁大法廷における判決要旨にありますところの「
憲法十五条一項には、
被選挙権者、特にその
立候補の自由について、直接には
規定していないが」云々と述べておりますように、私どももこのいわゆる
被選挙権等について
規定をしておるものは第四十四条であるという解釈に立っておるのであります。
なお、
憲法には御
承知のように
選挙権という文言はなく、第四十四条において「
選挙人の資格は」と言っておりますように、いわゆる
選挙権は、すべての
国民が人なるがゆえに当然有する権利、すなわち自然法的な人権、超国家的な人権ではなくして、国家
機関としての
選挙人団の
構成員としての地位と資格を有する
国民に与えられたところの国法上の重要な権利であるという理解に立っており、したがいまして、いかなる
範囲の
国民に付与するかということは、御
承知のように四十四条の
規定によって定めるという形に相なっておるのでございます。この点は
被選挙権も同様でございまして、四十四条が「
議員の資格」と言っておることは、このことを示しておるのでございます。
第二十一条の
結社の自由の問題でございますが、確かに、
結社しない自由も
憲法二十一条の
結社の自由に含まれておると解しております。しかし、その自由も無制約ではなく、
政党本位の
選挙制度を設けるという合理的な
理由により
一定の
制限を受けることはやむを得ないものではないかと
考えております。
また、無
所属の
立候補という問題にかかわりますところの信条の問題、第十九条の問題にいたしましても、同じような立場に立っておるということをこの機会に申し添えておきたいと思うのであります。
次に、
個人の
立候補にかかわる問題でございますが、理論的には一人一党制の
政党要件というものは
拘束名簿式比例代表制の中にはあり得ると
考えております。しかし、本
改正案は、
政党が
国民の
意思を形成する最も有力な媒体であることに着目し、その媒体
機能を活用しようとするのでありますので、いわゆる一人一党制ではこのことが大きく期待できません。そこにわが党が政策的に、いわゆる
政党要件としてあのようなことを採択いたしておる次第でございます。
御
質問の日弁連のアンケートの問題でございますが、日弁連から送付の資料によりますと、
全国の登録された
公法学者の五百三十人にアンケートを配付し、その約一六%に当たる八十六名から回答があり、その回答の内訳が御
説明をいただいたとおりでございます。それだけに私も貴重な資料としていただいておるところでございます。
次に、衆参両院のあり方の問題と関連をいたしまして、
衆議院は
政党代表、
参議院は
個人的高度の
専門家の直接
代表として
規定づけられて、
参議院の
政党化に否定的な立場であるようでございますが、私どもはその
見解を異にすることをこの際申し上げておきたいと思うのであります。
第四は、
法案の
具体的内容にかかわりますところの諸問題でございますが、
名簿作成の手続につきましては、それぞれの
政党はその
政党の運営ルールに従いまして、与えられたところの
役割りの
重要性を自覚し、自主的、主体的に、適正な民主的な
選定手続によって定められるわけでございますので、これを
法律の面で統一的に
規定をする必要はないと私どもは
考えておるのであります。
恐らく各
政党におきましても、日常の
政治活動等によって把握をいたした
有権者の
意思、あるいは
一般党員の
意思が反映した名簿を作成されるであろうと
考えておるのであります。いやしくも御指摘のような派閥力学とか金が物を言うようなことに相なりますと、その
政党は
国民の審判を厳しく受けざるを得ないわけでございます。私は、その意味におきましては、本
改正法案は
政党の自浄作用に大きな
役割りを果たしてくれるに違いないとさえ思っておるところでございます。
第二の二%条項でございますが、御指摘のように
前回の
参議院通常選挙の実績によりますと約百十二万票前後になるわけでございますが、御
承知のように当選後の欠員補充が六年間有効であるということや、
選挙運動、
供託金のあり方からいたしまして、どういう小さな諸
政党、諸団体でございましても、
選挙戦術としては複数の
立候補を擁することになると
判断をいたしておりますだけに、いわゆるこの二%条項で個々に出られるという方がそう多くないという
判断をいたしておるわけでございます。
第三の
選挙運動だけなぜ
個人にしたのかということでございますが、長年
個人中心の
選挙制度になじんできたわが国では、
自民党案のように
政党本位の
選挙だからといって
選挙運動を全面的に禁止をするというやり方は、私どもとしてはむしろ
国民の間に戸惑いと政治との遊離をもたらすことになるのではないだろうかということを懸念いたしております。そこに可能な限り
名簿登載者と
国民の直接的な
結びつきを重視しなければならないとして、
現行の
選挙運動のあり方を
基本にし、これにいろいろな要素を加えて提示をしてあるというのがわが党の特色であるわけでございます。
しかし、はがき、ポスター等のいわゆる配布量は、
現行法を基準としたわけではございますが、これはむしろ個々人というよりは
政党本位に取り扱い、効率的に扱うということが私どもは非常に望ましいことだという
考え方に立っておるのであります。
第四の類似
政党の続出によるところの混乱
防止策でございますが、これは本
法案の中にもありますように、既成
政党の告示
制度を設けて
防止策を講じておりますし、かつ
一定要件を備えた
政党本位の
選挙運動でありますので、御指摘のように、また従来以上に非常に
費用がかかるということは私どもは全然
考えておりません。
第五の選ぶ側の
要請の諸問題でございますが、本
改正案は、
現行全国区
選挙における選ぶ側と選ばれる側とに係る各種の弊害をむしろ除去することになり、
政治資金にまつわる諸問題や
金権候補の解消にもむしろ役立つのではないだろうかという
判断をいたしております。また、
個人への
投票を認めないという点につきましても、
国民の
意思を正確に反映するためには拘束名簿式で
政党への
投票のみを認めるといういわゆる合理的な案でありますだけに、その点は
憲法の許容するところの
範囲だと言えると思います。
最後の御
質問は、
選挙制度の諸問題でございますが、御
承知のように、
定数是正に係ります
国民の訴訟件数は、すでに
衆議院関係が五十件、
参議院で九件に上り、
違憲判決が四つも出ており、立法府といたしましても、御指摘のように一日も早く着手をしなければならない問題でございます。この点は
質問者もお触れになったように、本院におきましても、あるいはまた公選法の
委員会におきましても私どもも強く指摘をし、その実施のための
努力を働きかけておるところでございます。また
政治資金規正法の見直しの問題も同様に、同法第八条がその方向性をすでに明示をしておりますし、かつ見直しの年限をすでに過ぎておるわけでございますので、私どもとしても急がなければならない
課題だと思います。そういうような意味合いにおきましては、
質問者と全く同様に、
定数是正の問題あるいはまた
政治資金規正法の問題は緊急の
課題だと
考えておるわけでございます。
ただ、率直に申し上げまして、いわゆるこの問題ではなく、すでに別の問題として
選挙制度の
改革の案が
自民党から
提出をされ、
提出されておるものを何ら
審議しないでこの問題が先だというわけにはまいりません。
成立を期そうとしているだけに、これに対しますところの私どもの
考え方ということも率直に提起し、やはりこの
議論を踏まえていくという
考え方に対して私どもは対応しておりますだけに、
政治資金規正法なりあるいは
定数是正の問題を先にやらなければこの問題は
審議できないという立場には立っておらない点は御理解をいただきたいのでございます。
また、小
選挙区制の問題でございますが、
比例代表制と小
選挙区制とは理念的には相反するものであることは御理解いただけるものだと思います。したがいまして、私どもは
参議院の
全国区制の
改革が
衆議院の小
選挙区
制導入の突破口になるのだという
考え方には立っておりません。しかし、それにもかかわらず、もし与党
自民党の方があくまでもこれを
導入しようとする意図があるとすれば、これはまさに党利党略以外の何物でもありません。それだけに私どもといたしましても皆さん同様、絶対
反対の立場からこれに対決して闘うところの決意があることを申し添えまして、
答弁を終わらせていただきます。(
拍手)
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