○鈴木和美君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十七
年度の公債の発行の
特例に関する
法律案につきまして、
総理並びに
関係大臣に
質問いたします。
御
承知のように、緊急避難的
措置として、
昭和五十
年度に経常部門の歳入不足を補てんする赤字国債を発行しました。ところが、この臨時異例の
措置があたかも当然のことであるかのように、今回で八回目を数えているのであります。私どもは、このような
特例に
特例を重ねてきた本
法律案を
審議することにむなしさを感じます。しかしながら、
財政再建の名のもとに福祉が切り捨てられ、
所得税減税が見送られ、その結果重税を強いられている
国民の強い怒りを前にして、
政府・自民党の政治
責任を問わないわけにはいかないのであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
すなわち、五十六
年度には、逆進性の強い酒税、物品税、さらには中小企業に過酷な重税となる法人税率の
引き上げなど史上空前の大増税を強行することにより、国債減額二兆円を
政府は約束したではありませんか。ところが実態はどうでしょう。補正で赤字公債三千七百五十億円を含む六千三百億円の国債増発を余儀なくされ、その上さらに二兆円を超える大幅な歳入欠陥が不可避とされているのであります。
国民に過酷な重税を強制し、国債減額の約束をほごにした
総理の
責任は重大であります。
もし
総理が「赤字公債の減額
方針は当初
予算編成
段階のことで、
年度途中に生ずる歳入欠陥の穴埋めに赤字国債を増発することは公約違反とならない」というような安易な
考え方であれば、
国民の
納得は得られないと断言します。このことを踏まえて、
総理みずからの政治
責任を明らかにしていただきたいと思います。
しかも、五十六
年度二兆円
規模の歳入欠陥が生じた場合の対応策として、決算調整資金法の
規定により国債整理基金からの借り入れで処理するということでありますが、そうなれば当然五十八
年度予算を拘束することになり、税収不足と相まって
予算編成を著しく困難にすることは必至でありましょう。すなわち、
財政の中期展望に示されているように、赤字公債の減額一兆九千六百四十億円に加え、国債整理基金への返済も必要となり、もはや五十八
年度予算編成は不可能と思わざるを得ないのでありますが、
大蔵大臣の御
所見を伺いたいと存じます。
今
年度予算は去る四月五日成立したのでありますが、これにも顕著にあらわれておりますように、
財政難を理由として
社会保障関係費の対前
年度の
伸び率を二・八%にとどめるなど福祉を後退させ、また国鉄運賃や消費者米価などの
引き上げで
家計を圧迫させる一方、防衛費の
伸びを七・八%と突出させ、他国に脅威を与える軍拡
予算への道に進む
政府・自民党の姿勢に対して、
国民は本当に疑問を持っているのであります。
加えて、防衛力の増強を目指した五六中期業務見積もりの原案が昨日固まったようでありますが、
政府内部の調整がまだ難航しているようであります。その間の事情について防衛庁
長官に
お尋ねをいたします。
さらに、財界からは、防衛産業拡大をもくろみ、武器の国産化要請がなされていると聞いておりますが、
総理に、今後における防衛
政策についての
基本姿勢を明らかにしていただきたいと存じます。
次に、今後の
経済運営方針についてお伺いします。
低迷を続ける景気情勢のもとで、
公共事業の上期七七%前倒しなどを決めたということであります。私は、これをもってしても景気の下支え程度の効果しか見込めないと思うのであります。むしろ下期の
景気対策をどのようにするかが心配であります。巷聞伝えられておりますように、二兆円
規模の大型補正を組むことにでもなれば、またしても増税なき
財政再建は虚像と化し、
国民の
負担増だけが強要されることになると思いますが、
総理の御認識を伺いたいと存じます。
同時に、経企庁
長官には、現下の経済情勢の分析と今後の
景気対策の
基本方針についての御
所見をお伺いいたします。
さらに、
家計部門に目を向けますと、賃上げ率の低下、減税見送りによる
負担増などにより、勤労世帯の実質可処分
所得並びに消費支出はいずれも二年続きの減少を来しております。私どもは、これまでも
所得税減税の要請を続けてまいりましたが、いまこそ
景気対策上「個人消費の意欲を高めるため、
所得税の大幅減税を断行すべきであると考えるのであります。
そこで、
大蔵大臣並びに経企庁
長官に、五十八
年度以降は当然でありましょうが、五十七
年度分の早急な
所得税減税
実施の意思及びその必要性があるのかないのか、明確な態度を示していただきたいのであります。
次に、今
年度国債発行額のうち、資金運用部は三兆五千億円もの巨額を引き受けることとなっておりますが、最近の郵貯不振を反映して資金繰りが悪化しているということであります。資金運用部資金は
財政投
融資の原資の八割以上を担う重要なものであります。国債の大量引き受け、郵貯不振で
財政投
融資計画の運営に重大な支障を来すことが憂慮されますが、
大蔵大臣の御
見解を伺いたいと存じます。
以上述べてまいりましたように、ここ数年、
財政再建に向けてのポーズは当初ベースだけの見せかけで、実際には
財政危機がますます深刻化していると言っても過言でありません。
総理、
総理はかつて
昭和五十九
年度を
目標とする増税なき
財政再建に政治
責任をかけて貫くと表明されました。私どもはこの不退転の決意を心強く感じたのであります。しかし、五十六
年度に巨額の歳入欠陥が避けられないことから、もはや
総理の公約は実現不可能となったと言わざるを得ません。ところが、
総理は依然として、増税を行うことなく厳しい行
財政の縮減で公約
達成ができると言明しておられますが、私どもが
納得できる根拠を示した上で、
総理の
財政再建に対しての御決意を再度お伺いしておきたいと思います。
いずれにしても、
総理の公約は現実的でないと言えましょう。そうだとすると、公約の五十九
年度赤字公債不発行は当初
予算ベースに限定し、補正で赤字公債を発行したり、国債整理基金からの借り入れなどによるつじつま合わせば公約違反にならないということでありますか。また、
総理の言う
財政再建は六十
年度以降の赤字公債発行もあるという意味なのか、
総理に明確な
答弁を求めます。
次に、本
年度末の国債残高を見てみますと、赤字公債三十七兆円を含め総額九十三兆円に達しようとしております。このうち赤字公債は、償還期限の到来をもって全額借りかえなしで現金償還することが義務づけられております。すなわち六十
年度以降、赤字公債償還財源として毎
年度二兆円から七兆円の調達が必要となり、国債整理基金もこのままでは六十二
年度には底をつくとも言われています。
大蔵大臣は、この赤字公債の本格的な償還についていかがなされるおつもりなのか。よもや赤字債に借りかえを考えておられるというようなことはないでしょう。御
所見をお伺いします。
ところで、国ばかりでなく
地方財政においても法人
事業税の不振などで税収不足が心配されております。その上、国税の大幅な減少による
地方交付税へのはね返りもありますが、自治大臣はこの事態に対してどのように対処なさるおつもりか、五十六
年度税収
見通しを含め、今後の
地方財政運営について
基本姿勢を伺っておきたいと存じます。
次に、第二次
臨時行政調査会に対して、公務員制度
審議会、税制調査会などの各種
審議会、調査会の高い見識に立った
答申などを十分に尊重することなく財界主導の運営が行われているとの批判がなされておりますが、これに対する
総理の御
見解を伺いたいと存じます。
さらに、
臨調は五十八
年度予算に対しマイナスシーリングの
実施を求めるであろうと言われておりますが、
財政再建の名のもとに、これ以上福祉が切り捨てられ、
所得税を初めとした各種税
負担が加重されることは、
国民の
納得し得る
限度を逸脱するものと考えます。
財政再建は
国民の
立場に立って進められるべきであり、
臨調の運営が慎重に進められるよう要望するところでありますが、
総理の
見解を伺いたいと存じます。
また、最近特に心配されるのは急激な円安傾向であります。
政府、日銀は円安の歯どめ策として、対外資本取引に対し、きわめて異例な有事規制の発動をも辞さずとの強い姿勢を打ち出しておられますが、
大蔵大臣の円相場についての動向分析と有事規制発動の有無についてお伺いしておきたいと存じます。
最後に、グリーンカード制度についてであります。
この制度の
導入は、すでに五十五年に
法律が通り、その
実施が既定の事実とされているのであります。にもかかわらず、自民党の内部からこれを廃止に持ち込もうとする動きがあります。これに対し、去る三月三十日の本院大蔵委員会で
総理は、「自民党総裁の意に反した党議が決まることはないと確信する」と力強く言明し、私どもは
総理の見識を高く評価したところであります。ところが、旬日を置かず自民党政調会長が、源泉分離選択課税制度は存続し、グリーンカード制度を三年間凍結するという構想を打ち上げられたではありませんか。私どもは実のところ唖然としているのであります。
総理はこのような動きに対して、「まだ自民党の党議として決まったわけではない」と問題の所在をはぐらかしているのであります。
周知のように、グリーンカード制は、利子配当
所得の総合課税化を実現するための有力な手段として法制化されているのであります。本来厳しく課税されるべき脱税預金や架空名義預金が他の金
融資産へ急激にシフトしているからといって、公正な税制を確立するための本制度が廃止されるとなれば、本末転倒であり、まさしく不正義、不道徳がまかり通る暗黒社会と言えましょう。
総理のグリーンカード制
実施に向けての不退転の決意をお伺いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕