○山田譲君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となっております
昭和五十七年度の地方
財政計画並びに
地方税法、
地方交付税法等の一部を
改正する
法律案について、
総理初め
関係各
大臣に幾つかの
質問を申し上げたいと存じます。
まず最初に、私は、地方自治についての基本的な
考え方についてお尋ねしたいと思います。
言うまでもなく、地方自治は憲法で保障された地域住民の固有の権利であり、国はこれを最大限に尊重しなければならないものであります。そして、地方自治こそはまさしく
わが国の民主主義の基盤とも言うべきものであります。かかるがゆえに、地方分権の確立は、最近のミッテランの
政策にも見られるごとく、いまや
世界的な趨勢にあると言っても過言ではありません。しかるに、最近の
政府の姿勢を見るに、これを尊重するどころか、かえって地方自治を圧迫し、ますます反動的中央集権的な色彩をむき出しにし始めていることに対し、私は非常な憤りと民主主義の危機を感じざるを得ないのであります。以下、その具体的な例を挙げてみたいと存じます。
その一つは、地方自治体の職員の給与についてであります。申し上げるまでもなく、地方自治体の職員の給与の決定は、当該自治体固有の事務として、それぞれ地方の実情に即して地方議会において自主的に決定されるべきものであります。そして、その水準が高いか低いかということは当該地方の住民が判断すべきものであります。しかるに
政府は、確かな
根拠もなしに、その水準が国家公務員よりも高いと一方的にきめつけ、そのような自治体に対しては特別交付税を減額したり、地方債の発行も認めないというような制裁
措置を講じようとしているのであります。言うまでもなく、地方債は本来地方自治体の独自の判断に基づいて発行すべきものであるにもかかわらず、たまたま国の許可権限を乱用してかかる恫喝的行為を行うことは、まことに地方自治権に対する重大な干渉であると言わざるを得ません。
その二つは、国の行
財政改革の問題であります。言うまでもなく、いうところの行
財政改革はあくまでも国の行
財政改革であって、地方の行
財政改革ではないはずであります。それにもかかわらず、臨調答申に名をかりて地方自治体の行
財政制度と運営にまで不当なくちばしを入れようとしていることは言語道断であります。
その三つは、
国民健康保険給付の一部都道府県
負担や地域特例によるかさ上げ率の引き下げ等々、国の
財政再建の名のもとに行われた
歳出削減のツケ回しを行うことにより、ただでさえ苦しい地方
財政を犠牲にするという暴挙をあえて行おうとしていることであります。
以上、私は最近における典型的な事例を三つほど挙げましたが、その他
政府が行っている地方自治侵害行為は枚挙にいとまがありません。
なお、国の行
財政改革と地方自治の
関係について、行政管理庁と自治省との間に統一
見解が示されたと聞きますが、その内容を明らかにしていただくとともに、この問題について行管長官と自治
大臣に基本的なお
考えをお聞きしたいと存じます。
また、臨調と地方
制度調査会との
関係についても、あわせて両
大臣にお
伺いしたいと存じます。
さて、鈴木
総理、この際、
総理は地方自治について一体どう
考えておられるか、まずその基本的
考えを明らかにしていただきたい。同時に、かつて大平
総理が唱えられた田園都市構想のような夢とロマンに満ちたビジョンをお持ちかどうか。もしお持ちであれば、その内容をここで
国民の前に明らかにしていただきたいと思います。そして、そのような
総理の地方自治に対する基本的
考え方に対し、私がいま申し上げたような地方自治侵害の事実に対してどうお
考えになられるか、あわせてお
伺いしたいと存じます。
次に、地方
財政対策について申し上げます。
政府はいち早く昨年六月、
景気底離れ宣言を発し、
国民に明るい期待感を抱かせたのもほんのつかの間
景気は底離れどころかますます底深く沈潜を続け、ついに
政府は昨年暮れに
経済見通しを一%下方修正せざるを得なくなったのでありますが、これすらもいまや絶望的で、辛うじて三%を
達成できるかどうかという瀬戸際に追い込まれております。そして、このことは国税の収入にも大きく影響を及ぼし、ついに
補正を行わざるを得なくなったのであります。そこで、まず自治
大臣に五十六年度の今後の
地方税の収入
見込みはどうなっているかお
伺いいたします。
次に、五十七
年度地方財政計画では、八年ぶりにその収支が均衡したと言われておりますが、その陰には、苦しい国の
財政再建のつじつまを合わせるために、臨時地方特例交付金を打ち切るとか、借入金の利払い費を一部地方
負担とするなど、いわゆる風鈴カットを行ったという涙ぐましい事実があるのであります。大蔵省と最終的な
予算折衝に当たった自治省幹部が、「今回は地方
財政対策というよりは国家
財政対策だった」としみじみ述懐したと言われているのは、まさしくそのような事実を裏づけしているということができるでありましよう。
また、国の
経済見通しをかなり高目に
見込み、それによって地方交付税・
地方税の弾性値にはね返らそうという意図がうかがわれてならないのであります。さらに、地方
財政が回復したからという理由で、国家
財政に千百三十五億円を貸し、あるいは本来国の一般会計に計上すべき臨時特例交付金を借入金とするなど、あたかも地方
財政が国の
財政に協力したと言わんばかりのかっこうをつけているのであります。このまやかしの
財政計画をもって果たして本当に収支が均衡したと喜んでおられるでしょうか。この点について自治
大臣の御認識と、この計画どおり実現できるということを自信を持って断言できるかどうか、しかとお
伺いしたいと存じます。
次に、地方
財政と
景気対策についてお尋ねいたします。
地方
財政計画によると、公共事業費の
伸び率がゼロという
状況の中で、地方自治体の単独事業は
伸び率八・五%ということになっております。聞くところによると、これは大蔵省の激しい反対を押し切って自治省ががんばった結果かち取ったものだそうでございまして、この点を私は高く評価すると同時に、今後これが計画どおり
実施されることによって、地域の
景気振興と地域開発に大いに役立てていただきますよう期待するものであります。この点についても自治
大臣の御
決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
ただ、これに関連して、単独事業の
実績をもとにして当該
実施団体に地方交付税をよけいに配分しようとしていると聞きますが、これは実質的には地方交付税の特定
財源化を進めることになるものとも
考えられ、地方交付税法に言う「交付税の交付に当つては、」「条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」という
趣旨に反することになると思われるが、自治
大臣のお
考えをお聞きしたいと思います。
なお、先般閣議で決定された公共事業七五%の前倒しを
実施するとなれば、いずれは
補正予算なり建設
公債を考慮せざるを得なくなり、このことは
必然的に地方
財政にも大きな影響を及ぼすことになると思うが、これについて
大蔵大臣の
所見をお
伺いしたい。
次に、
地方税制の問題に移ります。
国民全体の心からなる悲願であった一兆円
減税については、頑迷固陋の
政府の態度によっていまだにはっきりした結論を得ていないことはまことに残念至極であります。一刻も早く
政府の前向きの回答が出されますよう、私はこの壇上から声を大にして強く
要求するものであります。
これに関連しまして、これもまた長い間地域住民の強い願望であった住民税の
所得控除の額の引き上げが何ゆえに考慮されなかったか、全く理解に苦しむところであります。しかも、住民税の
課税最低額の方が
所得税のそれに比較して二〇%も低いことを
考えるとき、その額の引き上げは当然過ぎるほど当然の話であると
考えられます。そしてまた一方、
法人に対する均等割の税率をそれぞれ五〇%ずつ引き上げるよう強く要望していたにもかかわらず、これまた全く無視されてしまいました。
次に、社会保険診療報酬
課税の特例
措置や電気税の非
課税措置等、だれが
考えてもおかしいと思われる
不公平税制について何ら
検討が加えられていないのはどうしても納得できません。これを要するに、今回の
地方税法の
改正案なるものは、相も変わらず強者に弱く弱者に強い不公平と格差を一層強めるものであって、地域住民の期待を真っ向から裏切ったものと言わざるを得ません。
以上の諸点について自治
大臣の明確なる御
答弁をお願いするものであります。
また、都市近郊の市街化区域におけるいわゆるC農地に対して新たに
課税措置を講ずることについては
種々問題がありますが、とりわけ、このことはいわゆる都市農業のあり方に深くかかわるものでありますので、これについては特に農林
大臣に
所見をお
伺いしたいと存じます。
次に、臨調と地方
財政についてお
伺いいたします。
巷間伝えられるところによりますと、主として財界筋は、すでに地方
財政にはゆとりが生じてきているとの認識のもとに、地方交付税率を段階的に引き下げるべきであるとの
意見を臨調に出しているようでありますが、これこそ全くの認識不足に基づくものであって、とうてい容認できるものではありません。
すでに述べたように、五十七年度
財政計画においては一見均衡がとれているように見えますが、これはあくまでも地方交付税の原資の借り入れと地方債の増発によって辛うじてつじつまが合わされているだけであります。借り入れと地方債の両者合わせて約四十兆円の借金が現存し、これが地方
財政硬直化の原因となっていることを
考えますと、むしろこの際地方交付税率を引き上げる方向で
検討すべきものと
考えますが、自治
大臣と
大蔵大臣に
所見を
伺いたいと存じます。
最後になりましたが、すでに御承知のとおり、先週、山形県金山町で全国に先駆けて情報公開条例が制定されました。これは今後当然各地方自治体にも波及するものと
考えられますが、自治
大臣いかがお
考えでしょうか。
そして、国においても情報公開法制定についていろいろ論議がなされているところでありますので、これを所管される行管長官にも一言御
所見を承りたいと存じます。
終わりに臨み、現在
政府は文字どおり歯どめのない軍拡路線を突き進んでおりますが、平和と民主主義の基盤であるべき地方自治が、仮にもこの軍拡の嵐の中に巻き込まれることの絶対にないよう心から祈念をしながら、私の質疑を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕