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国務大臣(渡辺美智雄君) ここに、
昭和五十七年度
予算の御
審議をお願いするに当たり、その大綱を御説明申し上げ、あわせて当面の
財政金融政策の
基本的な
考え方について、私の
所信を申し上げたいと存じます。
現在、欧米先進国の多くは、依然として二けたの
インフレとそれに近い大量の
失業に苦しむなど、
経済面できわめて困難な
事態に直面しております。特に、
失業の
増大は治安の悪化を招き、
国民生活を不安に陥れています。
一方、いまや
わが国の
経済は、
世界のほぼ一割を占めるに至り、また、
物価上昇率は四%程度と
先進諸国の中で最も鎮静化し、
失業率も二%台と最低になっております。
そもそも
政治の要諦は、平和で豊かな安定した
国民生活を築くことにあります。
わが国は、戦後一貫してこの目標を達成すべく、
政府、
国民が一体となって
努力してまいりました。
この結果、
わが国は、狭隘な国土、乏しい天然
資源にもかかわらず、現在の
繁栄と安定を築き上げてきたのであります。これは、
活力ある自由主義
経済の所産であり、勤勉で資質の高い
国民の
英知と
努力のたまものであります。
しかしながら、顧みれば、この道のりは、必ずしも平たんなものばかりでなく、幾多の試練を受けてきたのであります。
昭和三十年代から
昭和四十年代後半に至るまでは、安い
石油が自由に手に入るという好条件に支えられて、いわゆる高度
経済成長が
実現されました。この間、豊かな
財政のもとで、立ちおくれていると言われた
社会保障政策や文教政策が一斉に取り上げられたのであります。
しかしその反面、物質万能の風潮が一世を風靡し、ややもすれば労せずして国家
財政に依存しようとする
政治的要求が、
財政の節度をゆがめてきたことも事実であります。たとえば、高度
経済成長以前には、国鉄も健康保険
制度も食管
制度もいずれも収支はほぼ
均衡し、健全経営でありました。だがいまや、いわゆる三K赤字として、
財政赤字の元凶のごとく言われるに至りました。
なぜでありましょうか。
それは、
時代の移り変わりに
対応する苦労を怠り、恵まれた
財政によって、安易に赤字の穴埋めがなされてきたためであると思います。
だが、いつまでも安い
石油の入手による
経済繁栄はできなくなりました。いわゆる第一次、第二次の
石油危機の到来がそれであります。
昭和四十九年以降高騰し続ける
石油価格の中で、
世界じゅうが
インフレと不況の荒波を受けました。
わが国もその例に漏れません。
しかるに、
わが国経済はこれに耐え抜いてまいりました。
この間、
財政は大きな
役割りを果たしたのであります。特に、第一次
石油危機により
経済が
停滞し、税収が落ち込んだ中で、
財政は大量の
公債発行という非常手段によって
財源をつくり、
景気の回復と
国民生活の安定を図ってまいりました。とれにより、
わが国経済は、安定
成長へ円滑に移行するとともに、
福祉元年と言われる
昭和四十八年度以降の
福祉政策をさらに推し進めることができたのであります。
昭和四十八年度から五十六年度までの間に、厚生年金の月平均支給額が二万二千円から十万七千円に引き上げられた例を挙げるまでもなく、
社会保障関係費は約四倍、文教及び科学
振興費は約三倍になり、この結果、これらの
施策の
水準は、欧米先進国に比べても遜色のないものとなりました。一方、この間、税収は二・四倍の伸びにとどまり、その不足額は
公債の発行で賄われてまいりました。
ところで、
公債の発行残高は、
昭和五十六年度末で八十三兆円、五十七年度末で九十三兆円程度の巨額に上り、その利払い等に要する経費も五十七年度
予算においては、一般会計
歳出の一六%程度を占めるに至りました。これは公共事業
関係費をも上回り、
防衛関係費の三倍程度にも相当いたします。
将来を展望いたしますと、
わが国が
世界有数の長寿国となったため、年金や医療の経費はますます
増加が見込まれる一方、天災や
エネルギー問題など今後の
経済情勢の変化にも
財政は
対応していかなければなりません。しかし、遺憾ながら現状のままでは、
財政にはこのような
課題を
解決するために新たな
施策を講ずる余力はありません。
また、
公債発行残高の累増は、金利
水準の引き下げの阻害要因になるなど、
金融政策の円滑な運営に大きな影響を及ぼすに至っております。さらに、大量の
公債発行を続けることは、
民間資金を圧迫し、
経済に
インフレ要因をもたらすことにもなりかねません。ことに、
インフレは現に
世界にその例を見るがごとく、
景気を後退させ、
失業の
増大を招き、
国民生活の安定そのものを損なうものであります。したがって、できるだけ早く
公債依存の体質から脱却する必要があります。
政府は、このような
考え方に基づいて、鋭意、
公債発行の減額に
努力してまいりました。
しかしながら、
公債発行の減額は、とりもなおさず
財源の減少を意味します。
財源が減少すれば、
歳出を削減するか、他にかわるべき
財源を求めるかのいずれかによるほかはありません。
ところで、
歳出はきわめて多岐にわたる経費の積み上げであり、個々の受益者にとっては、その
歳出の削減は、月給の引き下げと同じような苦痛を伴うものであります。特に、高度
成長下の惰性で、安易に
政府に依存しようとする傾向は、いまだに断ち切られていないため、
歳出削減は
財政再建の第一歩であるにもかかわらず、総論には賛成でも、
歳出削減が自分にも及ぶとなれば各論では強い反対を示すものであります。
一方、他にかわるべき
財源を求めることに対しては、きわめて強い抵抗があるのも事実であります。過去何年かにわたり、本来税で負担すべきものまでも
公債に依存してきた体質は、一、二年で容易に変わるものではありません。
しかしながら、国の
施策により利益を受けるのも、また、その費用を負担するのも同じく
国民であります。
歳出の削減、たとえば、補助金の一層の削減による
行政サービスの低下をどこまで受け入れるか、あるいは、
行政サービスを
維持向上させるため
国民負担の上昇をどこまで受け入れるか、このことはまさに
国民の選択すべき問題であります。
昭和五十七年度
予算に関しては、何よりも
行財政の徹底した合理化、効率化によって
財政再建を進めるべきであるとの世論がつとに高まったことにかんがみまして、
行財政改革による
歳出削減を
中心として
予算編成を行うことを
基本方針といたしました。
高度
成長下における豊かな税収を背景に是認された
施策であっても、安定
成長下の限られた
財源のもとでは、改めて
検討すべきは当然であります。また、受益者負担の原則をも取り入れて、国への要求が安易に
拡大しないように工夫することも必要であります。総じて、
時代の要請に即応して
財政構造の合理化を図ることが必要なのであります。
このような観点から、
昭和五十七年度の各省庁の
予算要求に当たりましては、原則として前年度と一律同額にとどめるという
予算編成上画期的な方策、すなわちゼロシーリングを採用いたしました。また、昨年春、
臨時行政調査会が発足し、七月には
歳出削減等の方策につき
答申が出されました。
政府としては、この
答申を最大限に尊重し、速やかに所要の
施策を
実施に移すとの
基本方針のもとに、当面法律改正を要する
事項について、いわゆる
行革関連特例法案を昨年秋の
臨時国会に提出し、その成立を見たところであります。
昭和五十七年度
予算は、このような過程を経て、
歳出を極力圧縮し、
公債発行額を前年度当初
予算より一兆八千三百億円減額いたしました。
昭和五十七年度
予算は、以上申し述べた
基本的
考え方に立って
編成いたしました。その大要は、次のとおりであります。
歳出面におきましては、経費の徹底した節減合理化によりその
規模を厳しく抑制したところであります。特に、
国債費及び
地方交付税交付金以外の
一般歳出は極力これを抑制いたしました。
また、補助金等につきましては、昨年八月に決定された「
行財政改革に関する当面の
基本方針」に定めるところにより、
整理合理化を行いました。
さらに、国家公務員の定員については、新たに策定された第六次定員削減計画に基づいて、削減を着実に
実施する一方、増員は極力これを抑制いたしました。この結果、
行政機関等職員については一千四百三十四人に上る大幅な縮減を図ったのであります。
これらの結果、
一般会計予算の
規模は、前年度当初
予算に比べて六・二%増の四十九兆六千八百八億円となっております。また、このうち、
一般歳出の
規模は前年度当初
予算に対し一・八%増の三十二兆六千二百億円であります。
一般会計予算及び
一般歳出の伸び率が、このように低い
水準にとどまったのは、それぞれ
昭和三十一年度及び
昭和三十年度以来実に二十数年ぶりのことであります。
歳入面におきましては、
経済情勢の変化等により、
昭和五十七年度の自然増収が、ゼロシーリング決定の際参考とした
財政の中期展望における自然増収よりも約七千億円不足することが見込まれましたので、
経済の実態に即し、この不足分を補うため次の
措置を講じました。
まず第一に、
税外収入において極力増収を図ることとしました。
次に、なお残る不足分を
税制面の見直しにより
措置することといたしました。すなわち、税負担の公平
確保の重要性等に顧み、
租税特別措置については、期限の到来するものを
中心に
整理合理化を図るとともに、
交際費課税を
強化することとしております。また、法人税については、貸し倒れ引当金の法定繰入率の引き下げ及び延納
制度における延納割合の縮減等を図ることとしております。
なお、税の執行につきましては、
国民の信頼と
協力を得て、今後とも一層適正公平な税務
行政を
実現するよう
努力してまいる所存であります。
公債につきましては、
さきに申し述べましたように、その発行予定額を前年度当初
予算より一兆八千三百億円減額し、十兆四千四百億円といたしました。この減額の内容は、特例
公債一兆五千六百十億円、建設
公債二千六百九十億円となっております。これにより、特例
公債の発行予定額は三兆九千二百四十億円となり、建設
公債の発行予定額は六兆五千百六十億円となります。
減額された
公債がすべて特例
公債とならなかったのは、主に次の理由によるものであります。
すなわち、ゼロシーリングのもとでは、
予算要求に当たっての経費の取捨選択については、各省庁の自主的
努力を尊重してきましたが、各省庁は、建設
公債を
財源とすることのできる施設費を削減することなどによって要求を取りまとめてきました。また、公共事業
関係費は、前年度と同額に抑制いたしましたが、これに充てることとされている特定
財源収入の
増加が見込まれましたため、
財源不足は少なくなり、したがって、建設
公債は必然的に減額されるのであります。
こうした事情のもとにあって、特例
公債だけで一兆八千三百億円を減額しようとすれば、
一般歳出増加額をさらに相当程度圧縮せざるを得ません。これは、
財政需要が
増大する中で、前年度と同額というゼロシーリングによって
予算の要求自体がすでに厳選されているため事実上困難であり、また、その与える影響も大きいところから、とり得なかったところであります。なお、ゼロシーリングの例外とした
エネルギー対策、
経済協力等につきましては、
政府の重要
施策であり、さらに、これを大幅には削減しなかったものであります。
いずれにしても、ゼロシーリングは堅持され、
昭和五十九年度特例
公債脱却との
方針は何ら変わるものではありません。今後ともこれを目指して、最大限の
努力を傾注してまいる所存でございます。
特例
公債の発行につきましては、別途、
昭和五十七年度の
公債の発行の特例に関する法律案を提出し、御
審議をお願いすることといたしております。
財政投融資計画につきましては、厳しい原資事情に顧み、
民間資金の活用に努めるとともに、対象機関の事業内容、融資対象等を見直すことによって、
規模の抑制を図り、政策的な必要性に即した重点的、効率的な資金配分となるよう努めたところであります。
この結果、
昭和五十七年度の
財政投融資計画の
規模は二十兆二千八百八十八億円となり、前年度当初計画に比べて四・一%の
増加となっております。
次に、主要な経費について申し述べます。
まず、
中長期的視点から
充実を図る必要がある
施策については、厳しい
財政事情のもとではありますが、重点的に
措置することにしております。すなわち、
エネルギー対策費、
科学技術振興費及び
経済協力費については、その緊要性にかんがみ、
充実を図ることといたしております。また、
防衛関係費につきましては、
わが国が置かれている
国際情勢等を考慮しつつ、
防衛計画の大綱に基づいて、
防衛力の着実な
整備を図ることといたしております。
一方、
社会保障関係費、文教費につきましては、真に緊要な
施策には、きめ細かに配意したところであります。特に、
社会保障については、
老人保健制度の
実施、
心身障害者対策の
拡充等給付の重点化、負担の適正化等を一層進めつつ、各種の
福祉施策を着実に
推進していくことといたしております。
また、公共事業
関係費については、引き続き前年度と同額にとどめておりますが、特に、
住宅対策については、
住宅建設融資枠の
拡大等
施策の
充実に努めております。
なお、地方
財政に関しましては、その適正な運営に支障が生じないよう配意することとしておりますが、地方公共団体に対しましても節度ある
財政運営を図るよう要請するものであります。
この機会に、
さきに提出いたしました
昭和五十六年度
補正予算について一言申し述べます。
歳出につきましては、災害復旧等事業費、
農業保険費、給与
改善費等当初
予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊要となった
事項について
措置を講ずることといたしました。
歳出の追加額に必要な
財源の捻出には、現下の厳しい
財政事情のもとにおいてきわめて苦慮したところでございます。すなわち、
緊縮予算の中にあって既定経費をさらに節減するとともに、
税外収入の
増加等を図ることにより可能な限りの
財源を捻出し、これをもって給与
改善に要する経費その他通常の追加
財政需要を賄うことといたしました。しかし、
昭和五十六年の史上最大
規模の災害については、緊急にその早期復旧を図る必要があり、これに要する経費については、
公債の増発により、その
財源を
確保せざるを得ませんでした。
次に、本年度の租税及び印紙収入については、
物価の予想以上の安定等により、価格や取引金額に応じて課税される物品税や印紙収入が落ち込むなど、四千億円程度の減収が避けられない見通しとなりました。このような予期せざる
経済情勢の変化に伴う
歳入不足額につきましては、
経済の実態に合わせて
補正予算において補てんすることが適当であると
考えまして、特例
公債を
追加発行することといたしました。
昭和五十六年度
予算は、
財政再建元年
予算として二兆円の
公債発行減額を目標に挑戦いたしましたが、これを一部変更し、完全に達成できなかったことは残念なことであります。しかし、その一方、これは、予想を上回る
物価の鎮静化という
国民生活の安定にとって好ましい状況の出現等の結果でもあり、やむを得ない
措置であることをおわかりいただきたいと思います。
以上によりまして、
昭和五十六年度一般会計補正後
予算の総額は、歳入
歳出とも、当初
予算に対し三千三百七十二億円
増加して、四十七兆一千二百五十四億円となります。
以上、
昭和五十七年度
予算及び
昭和五十六年度
補正予算の大要について御説明いたしました。
次に、当面の政策運営の
基本的
考え方について申し述べます。
最近の
内外経済情勢のもとにおいて、私は、
さきに述べた
財政再建に加え、特に次の二点を
基本的
課題として今後の
経済運営に当たってまいりたいと
考えております。
まず第一は、引き続き
物価の安定を
基本とし、国内
民間需要を
中心とした
景気の着実な回復を
促進することであります。
物価は、落ちついた
動きを示しております。
物価の安定は、
国民生活安定の
基本であり、今後とも、
財政金融政策を通じ、
物価の安定に
努力してまいる
考えであります。
景気につきましては、
内需の回復の足取りは緩慢ではありますが、今後は、次第に
改善し、明るさが増してくるものと期待されます。
昭和五十七年度
予算におきましては、厳しい
財政事情のもとではありますが、
住宅建設の
促進を図るため、
住宅金融公庫の融資枠の
拡大、税制上の
措置等の
施策を講じております。公共投資につきましても、
財源の効率的配分、地方
単独事業の
拡充、
民間資金の活用等により事業量の
確保に努めております。
また、
金融政策につきましては、一昨年八月以降一連の金融緩和
措置を講じてまいりました。昨年十二月には、第四次の公定歩合引き下げ
措置がとられ、これを受けて預貯金金利を含む金利
水準全般の引き下げを図ったところであります。
今後の
金融政策の運営に当たりましては、
物価、
景気、海外
経済情勢等
経済の動向を総合的に判断して、引き続き適切かつ機動的に対処してまいりたいと
考えます。
第二は、
調和ある
対外経済関係を
促進し、
世界経済の
発展に貢献していくことであります。
世界経済は、
貿易のみならず資本交流等を通じ、ますます
相互依存関係を強めつつあります。その中で、
わが国の経常収支は昨年四月以降黒字傾向にあり、これを背景として欧米
諸国から
貿易不
均衡の是正を求める声も高まってきております。
世界経済の
活力の源泉は
自由貿易にあり、
わが国としても積極的にこれを
推進することにより、
世界経済の
調和ある
発展に貢献していかなければなりません。
このような観点から、
政府は、先般、
市場開放対策、輸入
促進対策、輸出対策などを内容とする対外
経済対策を決定したところであります。
特に関税につきましては、
わが国市場の
開放に資するとの見地からいち早く
対応して、その引き下げを図ることを決定いたしました。すなわち、東京ラウンドの合意にのっとった関税の段階的引き下げ
措置を来年度に予定した分に加え、さらに、一律に例外なく二年分繰り上げて
実施するなどの前向きの改正
措置を講ずることといたしております。
また、原油代金の
産油国への偏在が
世界経済をゆがめていることにかんがみまして、
世界貿易を円滑にするために、オイルマネーの還流について、
わが国は引き続き積極的にその
役割りを果たしていくことが必要であると
考えます。
さらに、
開発途上国の
経済発展のための自助
努力を支援することは、これらの国々の
国民福祉の
向上と民生の安定に寄与するのみならず、
世界経済全体の
均衡のとれた
成長と安定を
確保するためにも重要であると
考えます。このような観点から、また、国際責任の分担という見地からも、厳しい
財政事情にもかかわらず、
経済協力については着実に
拡充を図ることとし、あわせて、その効率的
実施に十分配意し、
政府開発援助の
中期目標の達成に引き続き努めることといたします。
世界経済の円滑な
発展のためには、国際通貨の安定は欠くことのできないものであります。円相場は、
わが国経済の良好な
基礎的諸条件を反映して、基調としては、円高方向に動くことが期待されております。今後、
関係諸国とも密接な連絡を保ちつつ、円相場の安定に努めていきたいと
考えております。
わが国は、戦後幾多の試練をみごとに克服して、現在の
経済的
繁栄と安定を築き上げてまいりました。この
繁栄し、安定した
経済社会こそ、われわれが子孫に対し誇りを持って引き継ぐことができる貴重な財産であります。
このような
繁栄と安定は、
世界経済の中でひとり
わが国が孤立して
維持できるものではありません。
わが国は
資源の乏しい国であります。同時に、
わが国は
世界の
国民総生産の一割を占める
経済力を持つようになった国でもあります。
わが国の
動きは、
世界経済に少なからぬ影響を与えます。
いまや、
世界経済を離れて日本
経済は存在し得ないことを
認識して、
わが国にふさわしい
役割りと責任を積極的に果たしていくことが肝要であります。
また、将来にわたる安定的
繁栄にとってゆるがせにできない問題として、
財政再建の問題があります。
財政再建の道のりは、厳しく、また困難なものではございますが、すでに
財政再建に向かって軌道の上を着実に歩んでいるのであります。一方、
経済は生き物であります。上り坂もあれば下り坂もあります。雨の日も、風の日もあります。したがって、その
対応には緩急もありましょうが、苦痛に耐え、忍耐強く、
財政再建の歩みを進めなければなりません。それが、われわれ世代の
使命であり、
財政を担当する私の責任でもあります。
かかる大任を肝に銘じ、
昭和五十九年度特例
公債脱却を目指し、引き続き
財政の
再建に全力を傾注する
決意であります。
国民各位の御
理解と御
協力を切にお願い申し上げる次第でございます。(
拍手)
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