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山中郁子君 そこのところを、私はやっぱりもう一つ解明しなきゃいけないと思っているんです。というのは、もしいま
局長がおっしゃるようなことだとすれば、業界の対応というのはもう一つ不思議だと思うんです。
先ほ
ども御紹介しましたけれ
ども、船協月報ですね、これは一九七六年の十二月号ですが、こういうふうに言っているんですね。「もし第四条中の」、これは条約の第四条ですね。「カッコ内の文言が付加されると”gross negligence”」、これは重過失ですね。「”gross negligence”の解釈を巡って再び運送人の故意又は過失の解釈をめぐる紛争と同様の紛争を生ぜしめるおそれが多分にあり、現行条約の文言に対する前記改善の実はこれにより大幅に失われることになると考えられる。当協会としては、以上の理由により」、もっとほかにも理由を述べておられますけれ
ども、「以上の理由により第四条の文言中、括孤内の文言を削除し、それ以外の文言を原案通り採用することを強く
希望する。しと、こういうふうに
主張されています。
それから、同じく船協月報のこれは七七年の二月号ですけれ
ども、この中に、先ほ
どもちょっと藤代さんの発言として御紹介いたしましたが、その中でもその他の
方々、業界の方たちも述べておられますが、一様に重過失でなく条約が決まったということについて歓迎されて、「結果的には、業界の考え方が世界の大勢と同じだったということです。」こう言っておられますね。
それから、飯野さんという上野運輸商会の方、業界の方ですけれ
ども、飯野さんという方が、「五十七年条約に比較すると、やはり新条約は今後、われわれが
制度として実際に取り組むうえでやりやすいものになるんじゃないかと思う。批准の促進、国内法の整備という問題について、受入体制だけは、なるべく早い時期にご尽力いただきたい」、こういうふうにおっしゃっておられます。
それで、ですから船長の方の範囲もこういうふうに変わっているんだと。要するに、いまの
局長の御答弁とそれから衆議院で
お答えされていることも含めてちょっと理解をいたしますと、一つは、船舶所有者の責任制限の範囲は確かに拡大した。しかし、一方では船長等の責任を制限できない範囲が拡大したということが一つある。
それからもう一つは、船舶
所有者等が自分の過失によって責任を負う場合というのは従来から余りなかったんだ。だから、この点での影響は、船主、オーナーの責任制限の範囲が拡大しても実際には余り影響はないんだと、こうおっしゃっている。反面、船長等の責任制限できない範囲が拡大されたということは実際上の影響が出てくる、こういうところだと、おっしゃっていることを整理すると。だから、がまんのならない法案ではないし、一方で責任制限金額が引き上げられるのだから被害者等に大変歓迎されるであろう、こういう評価だということのように理解いたしますけれ
ども、それはそういうふうに取りまとめた形で理解してよろしいですか。