○
政府委員(
鈴木義男君) まず、現状に完全に対応できる程度に拘置所を
整備しようとすると一体どのくらいお金がかかるのかということは、これは大変計算のむずかしい問題でございますが、数年前に私
どもで
試算したことを御参考まででございますが申し上げますと、全国に現在簡易裁判所が六百近くあるわけでございますが、そのうち、現在拘置所あるいはその簡易裁判所の所在地で拘置所その他の収容
施設がございますところが大体百五十くらいでございます。そういたしますと、裏から申しますと、簡易裁判所の所在地であって、かつそういう
施設のないところが約四百出てくるわけでございます。
そこへ、
施設の規模等もいろいろございますが、そういうところは非常に入ってくる
人たちの、収容される
人たちの数も少ないわけでございまして、十人足らずであろう。ただ、
施設というものは日々変動がございますので、平均いたしますと二人か三人ということでも、多いときには十人、場合によっては十五人ということになりますので、そういうことを考慮いたしまして、十人くらいの定員の
施設をつくると一体どのくらいかかるのかという計算をしてみたわけでございま十が、そのときは、約三千五百億かかる。
これは、くしくも本年の
法務省の
予算と同じ箱になるわけでございますが、これを先ほど官房長からも御
説明いたしましたけれ
ども、
法務省の営繕
関係の
予算ということであれいたしますと一体どれだけかかるのか、しかもこれはそういう新しい拘置所をつくるだけではなしに、いままである
施設の拡充等を加えますと、相当な目もくらむような額になってまいりますし、それからそういう点についての
人件費、どのくらいまた
人員がふえるのかという点についても、これはいろんな計算の仕方がございますが、五千人ないし七千人の
増員が必要ではないかということでございます。これは、それだけしなきゃどうしてもだめであるという
数字ではございませんけれ
ども、一つの
試算の方法としてそういうことをしてみたことがございます。
それから、もう少し単純に申しますと、現在代用監獄に入っている人の数値五千人でございますから、この五千人、一日平均でございます。これは変動がございますので、その
人たちを全部刑務所あるいは拘置所へ入れるということになりますと、恐らく一万名程度の定員増を図る必要があるのじゃないか。一万名につきまして、収容を一人ふやしますと八百万から一千万の建設費がかかるということになりますと、一万名でたとえば一千万といたしますと一千億という
数字になるわけでございますが、そのほかに土地代等を見なきゃいかぬわけで、いずれにいたしましても、相当な額の費用がかかるということが一つ隘路としてございます。
それからもう一つは、もうこれはすでに御質問の中に入っていたと思うのでございますが、現在私
ども、これは拘置所だけではございませんで、刑務所もそうですし、少年院それから
少年鑑別所等もそうですけれ
ども、こういう
施設を新たにつくろう、あるいは従来あるところを建て直そうということになりますと、近所の
方々からそれは困るという御意見が非常に強く出てまいります。場合によっては反対運動ということも出てまいりまして、それを説得するのは非常に困難である。現在でも私
ども非常に困っておりますのは、老朽化した
施設がかなりあるわけでございまして、これは拘置所ではございませんが、たとえばこの近所でいきますと小田原の少年院であるとか、八街の少年院であるとか、それから小田原のこれは拘置所になりますが、こういうところは非常にもう老朽化しておりまして、ぜひとも建て直したいというふうに考えて優先順位は先の方につけるわけでございますが、ところが現地の住民の
方々との話し合いがどうしてもつかない、そういうことで延び延びになっている
施設もあるわけでございまして、つくろうとするたびに非常に大きな問題、そのために、二年、三年という交渉だけで月日がたつということもあるわけでございます。
それから最後に、先ほど申しましたように、簡易裁判所のある場所ごとに
施設をつくるということになると、かなり親族の方であるとか家族の方であるとかいう方が面会に行くのが非常に楽になるわけでございますが、現在あります場所に増設といいますか、収容能力をふやすということにいたしますと、警察の留置場でありますと比較的近くにたくさんございますので、家族の方あるいは弁護士さん等の面会等も容易でございますけれ
ども、これが県庁所在地へ行かなければいけないということになると、その点での不便ということもいろいろあるわけでございます。
現在、拘置所に収容するか、あるいは代用監獄に収容するかという点については、これは裁判官がお決めになるわけでございますが、恐らく裁判官も一体拘置所に余力があるかどうか、それから
関係者にとってどちらへ入れたら便利であるかどうか、それからもう一つ、これは大事な問題でございますが、捜査を十分に行うためにはどうしたらいいかということなどを考えて決められていると思うわけでございますが、現在この代用監獄に入っている
人たちを、全部といいますか、大部分を、あるいは相当部分を拘置所の方へ移すということにつきまして、いま申し上げたようないろんな難点があることを申し上げておきたいと思います。