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政府委員(
千種秀夫君) ただいま先生御
指摘のとおりに、最近
アメリカの
弁護士が
日本で
弁護士活動をしたいという要望が
一般的に強くなってきております。
と申しますのは、日米の経済
関係が非常に大きな問題になってきておりますけれ
ども、それだけ問題になりますだけ国際間の経済取引が盛んになっておりまして、それに関連する
法律問題というものもまた
需要が非常に多くなってきているためであろうと思われます。
わが国の企業が
アメリカに進出する、また
日本の企業が
アメリカの企業との取引をする、そういう場面に
法律問題が介在してまいりまして、そこに
弁護士の働き場というものがふえてくるわけでございます。そういうことに関連しまして、
アメリカには、
先ほど来お話に出ておりますように
弁護士がたくさんおりますし、その
弁護士というのは単に訴訟事務だけではなくて、そうした経済取引に深く食い入っておるわけでございますから、そういう金融
関係、貿易
関係、そういうものにつきまして
弁護士の関与の度合いが非常に強いわけでございます。
そういうことから、日米間の取引について
弁護士が
日本に来ても、さらに仕事を拡大したいという気持ちになるということは当然理解し得るところでございますが、そういう
需要から、最近サービス業の自由化ということの中の
一つとして、
日本の国内で
アメリカの
弁護士が活動したいということを盛んに言ってきておるわけでございます。
具体的に申しますと、
アメリカの
弁護士事務所というのは百人とか二百人とかいう大規模な
弁護士を抱えた大事務所がございまして、それは
アメリカの各州にもいろいろ支店を持っておりますが、大きなものになりますと、世界
各国に提携事務所なり支店を持っております。そこで、ブランチオフィスといいますから支店と言っておきますが、そういうものを
日本あるいは東京に設けたい、そのために
アメリカの
弁護士の入国を
許可してもらいたいというような形になってあらわれてくるわけでございます。
そういたしますと、まず
法律問題でございますが、
先ほど来御
指摘のとおりに、これに関連します
法律としましては日米通商条約の八条、また
弁護士法ということが問題になってまいります。この通商条約の八条というのは、これはそれぞれの
国民が相手の国においてそういう
専門家を雇って仕事ができるということを保障した
規定でございまして、したがって
アメリカの企業なり
アメリカ人が
日本に参りました場合には、
日本の
弁護士を雇って仕事ができるということを正面から書いているわけでございますが、そのときに
アメリカの
弁護士が
日本に来て
アメリカの人を助けるということがどこまでできるかということにつきましては、これはまた別な問題でございまして、それぞれの国でそれぞれの
資格をつくっておるわけでございますから、そこの国の
資格のない者がその相手の国へ行って自由に活動できるということまでは当然保障しているわけではないわけでございます。
しかし、その自分の企業の中の検査をさせたり監査をさせたりということになりますと、その国の
資格がなくても
一定の範囲内ではできるようにしておかないと困るというようなことから、
一定の技術者についてはそういう自分の社内の検査などをさせることができるような
規定もあるのでございますが、そこに
弁護士という言葉が入っておりませんので、いま八条の解釈としましては、
アメリカの
弁護士について申しますと、
アメリカの
弁護士が
日本へ来まして
弁護士として活動するということは当然にはできないというふうに理解されております。
ここにつきましては、やはり条約の解釈の問題が介在してまいりますから、どこまで
アメリカの
弁護士が
日本へ来てできるかということは、これは条約の解釈として、それは所管としましては外務省の条約局が所管しておるところでございますから私の方から正確に申し上げる立場にはございませんが、
一般的にはそういうふうに解釈されているようでございます。
そういたしますと、
アメリカの
弁護士がそれでは
アメリカの企業に雇われて、社員になって
日本に来て、
日本で社内の仕事をするのはどうかということになりますと、こういう社内
弁護士といいますか、社員といいますか、こういうものについては、これは条約上も、また
弁護士法上も問題はないというふうに言われておるわけでございます。
そこで、そういう
アメリカの
弁護士が
日本においてどこまで活動ができるかということになりますと、これは今度は
日本の
弁護士法の解釈の問題になりまして、
先ほど先生御
指摘のように、
日本の
弁護士法におきましては、
弁護士会に登録をしませんと
弁護士としての業務はできないことになっております。
そこで、その
弁護士の業務とはどういうことかということで、また
法律論がそこに介在してくるわけでございまして、これはやっぱり業務性とか報酬を取るという利益性とか、そういうものも要件でございますし、
先ほども申しましたように、
一定の会社の社員として雇われるとか、そういうことになりますと、これはそういう要件には該当しないことにもなってまいりますので、全然できないのではなくて少しはできるのではないかというところに
一つの問題はあるわけでございます。
そこで、たとえばこれは
アメリカのニューヨークの例でございますけれ
ども、
アメリカの
弁護士というのは各州ごとの
制度でございますから、
原則としてでございますが、ある州の
弁護士は他の州の
弁護士の
資格は当然持っていないわけでございます。したがって、よその州の
弁護士資格を取るためには、その州の
試験も取るか、それでなければ、州同士の条約のような取り決めがありまして、その条約のような取り決めによって
資格を取るか、そういったことを必要とするわけでございます。ニューヨークにおきましては、やはり国際的な取引が多いものでございますから、
一定の分野におきましてはその自分の国の
法律については相談に応じてもいいというような、
一定限度でございますが、外国
弁護士に門戸を開放しているわけでございます。そのルールを
日本にもひとつ適用できるように、相互主義でやろうじゃないかというような提案があるわけでございます。
ところが、それをやろうといたしましても、
日本の場合、ニューヨークと対等にできるかどうかといいますと、
アメリカは連邦
制度でございますし
日本にはそういう
制度はございませんから、
日本とニューヨークとそういうふうに取り決めができるのか、また
日本の具体的な
需要といたしましては、ニューヨークだけでなくて西部とか南部にもそういう
日本企業が進出しておりますから、やるのならば全米とでなければ困るとか、
日本企業が活躍している各州が全部網羅されなければならないとか、そういう議論が実質的な議論としては出てまいります。
そういうことから、こういう話を詰めていくためには、仮に法改正を伴う話といたしましても、とにかく実質的には直接の利害のある
日本弁護士連合会が、
アメリカの
弁護士会といいますか、法曹協会と申しますか、その対応する機関と話を詰めまして、これならば相互にやっていけるという合意ができますならば、それに伴った法的措置を講じていけばこの問題は解決し得る問題だと思います。
しかし、ただいまちょっと触れましたように、
アメリカの
制度がそういう州単位の組織でございますし、また
日本の
弁護士の
人口あるいは外国へ進出していくための力といいますか、エネルギーといいますか、そういうものと
アメリカのその二けたも違うような数の
弁護士の
活動状況と対比いたしますと、なかなかそういうことが簡単に解決できる問題ではないように思います。それは力
関係だけでなくて、
先ほど来話に出ておりますが、
弁護士の仕事というのが、その国の
司法制度でございますとか、ひいては
国民生活に非常に密接に結びついておりますので、たとえば
アメリカの
弁護士が来て
日本で仕事を大いにやりますと、
日本の
国民生活に与える影響というものも十分考えられるわけでございまして、そういう意味からいたしましても、そこにはおのずから限度もあり、また急激にそういうことができないという制約もあると思います。
そういう問題を全部くるめまして、これからそういう国際的な折衝と申しますか、話し合いの中で解決策を見出していかなければならないわけでございます。そういう意味からいたしまして、これは先々長期的に見ますと開けた問題かもしれませんけれ
ども、急激にいい解決策が見つかるというほどの問題でもないように思うわけでございます。
そこで、
先ほど御質問ございました
日米貿易小委員会というのが三月九、十と二日にわたりまして外務省で行われたのでございますが、二日目の午後に、サービス業の自由化の
一つとしてこの問題が取り上げられました。
法務省から私が参りまして、ただいまのような経緯につきまして私
どもの立場を
説明したわけでございます。
そこでは、そういう将来の
弁護士活動に関する条件という問題と、もう
一つは、現実に
日本で支店をこしらえるため入国したという
弁護士の入国問題と
二つの問題が取り上げられたわけでございますが、私
ども前半の問題につきましては、日弁連といまABAとの間で話し合いをしておるし、近く向こうの代表が来日して話す機会を持つというような話も聞いておりますので、それに期待して、その結果を見ながら私
どもも検討していきたいということを申し上げております。
また、入国につきましては、ただいま申し上げましたように、現状におきましては
弁護士法の制約もございまして、そういう
弁護士法違反になるような
状況のもとで入国を許すわけにはいかない。したがって、そういう取り決めができるということになれば、またそれに従った入国の方法もあろうというような趣旨のことを申し上げております。