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国務大臣(
坂田道太君) 実はそこに私の苦心があるわけでございまして、いま
日弁連さんの方から主張されておるのは、新たに
保安処分制度を設けなべとも現在の
厚生省でおやりになっておる
精神衛生法に基づく
措置で十分ではないか、しかし十分といっても実態はなかなかそうではない、自傷他害の人を
措置入院しましてその方を受け入れても、
短期間にこの
方々が出てしまうということ、そのために結局
厚生省の予算、人員等が不足しているから、それを十分に手当てをすれば、
日弁連さんがおっしゃるようなことは現在の
制度でも十分に果たせるのじゃないかという御
意見、私
どもの方は、それはそれといたしましても、相当それには時間がかかる、費用もかかる、しかし現在起こっておるような
精神障害を受けておる人の
犯罪、特に六罪種のごとき凶悪
犯罪で、しかも起訴されましても心神喪失ということで無罪になる、あるいは大体起訴ができないということで、これまたそういう
人たちが存在するということになれば再犯のおそれがあるということで、現にいろいうの再犯の事例が起きておるわけでございます。
一方、やはり
市民の
立場、
国民の
立場――加害者の
人権も大切だけれ
ども、その加害者によって引き起こされた
被害者、
被害者の家族、あるいはそのコミュニティーあるいは社会というものの不安や懸念や怒りを一体
政府はどうしてくれるのだ、何にもしてないじゃないか、一体
厚生省の
措置入院でいいのかと言われましたときに、政治家といたしまして、ただいま私は
法務大臣でございますけれ
ども、かつて私は
厚生大臣もいたしました。そういう観点に立つならば、
政府自身としては両方を踏まえた
一つの具体的な、先生にお答えできるような案があってしかるべきではないかというふうに思っておるわけです。
いま非常に問題点が明確になってまいりました。この橋をかけることが私は
政府としての務めではなかろうか。またその間、
法務大臣としてやるべきこと、あるいは
厚生大臣としてやるべきこと、それを含めた
一つの
政府の
考え方があっていいのではないだろうか、こういうふうに思うわけでございまして、困難ではありますけれ
ども、そういう問題を解決しなければならない責任がある。
そこで、一般
国民の良識のある
方々、常識ある
方々は、この
状況をどうお
考えでございますかということを一遍お聞きいたしますることは、私が
法案を作成するにつきましても非常に大事なことである。そしてまた、よしんば何らかの案を
国会に提出いたしました場合においても、公聴会等において皆さん方がそういう
方々の御
意見をお聞きになって是か非かというふうにお
考えいただくことも私は大事だと、こう思いまして、でき得べくんばそういうような第三者の有識者の
方々、もちろん
厚生省関係の
精神衛生に携わっておられる
方々、あるいは
精神犯罪の学者の
方々、あるいは鑑定医等を実際にやっておられる
方々、あるいは
裁判をやっておられる判事さん、そういうような
方々にひとつお
考えをいただくということは、この
段階できわめて必要というふうに思っておるのです。
まだ、いつどういうふうにして出発するかは
考えておりませんが、いまやそういう機が熟してきておるというふうに思っておるわけでございましりまして、これにつきましては、外国と比べても非常に入院患者が多い。それから入院日数が多いというのは事実でございまして、これにつきまして、私
どもなるべく
社会復帰を早めて、
社会復帰の政策に
重点を置いてやってまいりまして、なるべくそういうことのないようにということでいまやっておるわけでございますが、何せベッドが足りないのが現状でございますので、
現実は、ここで申しわけないのですが、ある程度超過入院という
現実の姿はあるわけでございますが、しかし、最近非常に私
ども社会復帰政策というものを強くとり出しておりますので、以前と比べますとかなり超過入院というのは減ってきているのが実情でございますので、ひとつその点御理解をいただきたいと存じます。
それから、国立の病院がない、県立の病院がないということがございました。確かに県立病院のないところが八県ございますが、そういうところは国立の病院あるいは他の公的
医療機関の
精神科病棟がございますので、そういう方面で
措置入院その他の問題は取り扱っておりますので、現在のところ、
厚生省が行っています
措置入院制度につきまして、
措置入院患者が入れなかった、こういうことはいまないわけでございます。これはもう
重点的に入院させるようにということを、私
ども常々指導しているわけでございます。
三番目に、
犯罪者の方がいること、こういう
お話がございましたけれ
ども、あくまでも私
ども精神衛生行政は
医療と保護、これを主でやっておりますので、全く次元の異なる問題でございます。でございますけれ
ども、先ほど
お話しのございました
措置入院制度というのを適正に私
ども運用することによって、間接的には
社会防衛に役に立っているのではないだろうか、こういうふうに
考えておるわけでございます。