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長谷川信君 時間が非常に制約をされておりますので、
大臣から簡明率直にひとつお答えをいただきたいと思います。
なお、いま宮之原
委員からもお話ございましたように、余り
文部省の事務当局に左右されないで、
鈴木内閣のトップ閣僚として大所高所からひとつ御
答弁をいただければ大変幸せだと思っているわけであります。
大臣も
中国関係あるいはアジア・ASEAN
関係、非常に御専門でいらっしゃるわけでありますが、
日本と
中国の間あるいは
日本と
韓国の間は約二千年の交流の
歴史がございますね。その二千年の交流の
歴史の中で、争った時間というものはまず百年に満たない。
中国におきましても二千年のうち、まあ恐らく七、八十年くらいがトラブルの時間であったのでありますが、あとは大体
友好の
歴史を存続いたしておったわけだと思うんです。
韓国におきましてもやや同断のことが言えるわけであります。それで、
戦争が終わって、
日本があのとおり世界の袋だたきに遭って、それから刻苦精励をして、どうやら今日アジアの中の
友好の基盤を大体取り戻したというか、築きつつあった。そこで、いまこの
教科書問題が出ているわけでありますが、私
どもは、この
解決の方法は、やはりアジア諸国との
友好を取り戻すということが
解決方法の根幹であり基本でなければならぬと思うんです。
なお、いろいろ御
意見にもございましたが、
歴史というものはやはり真実をそのまま書いて、そして後世の諸君がそれに基づいて誤りなき正しい
方向を模索できるようにするのが
歴史でなければならない。
きのう、私はある
新聞で見たのでありますが、西ドイツの
教科書にはやはり
戦争のことがもうかなりあからさまにみんな出ている。アウシュビッツのあの惨状など
教科書の中に写真が何枚も出て、若い諸君はそれを見て、こういうことをやちゃいかぬなあというふうな
教育をしている。そうだからといって、西ドイツの国が別に共産化したわけでもありませんし、あそこの
教職員組合がえらい左傾をしておるというふうな傾向も出ておらないようでありまして、やはり
歴史というものは正しいことを
記述して、それに基づいて後世の諸君が正しい判断をするということが
歴史でなければならない。まあそういう
意味からも、この問題は慎重に
考えなければならないと思っているわけであります。
しかも、
戦争が終わって日中条約を結ばれたとき、私も当時の
責任者である一人の先生からもお話を聞いたんでありますが、あのとき周恩来と田中角榮のいろいろの応答の中で周恩来さんがおっしゃるには、あなたの国は八年間でもって約一千万人の
中国の人民を殺傷というか、そういうことをやった、しかも家を焼き、鉄道を壊し、橋を壊し、あらゆる惨状をやったわけでありますが、だからそれはあなた方の方はやっぱり陳謝をしなさいということをかなり重ねて言ったのでありますが、しかしその応答の間で、深く
反省をするということでけりがついたと、しかも賠償は一銭も取らないで、過去のことは忘れましょう、新しい時点からこれから日中
関係の
友好を取り戻しましょうということで、まさにこれは
歴史的な取り決めが行われたことは
小川大臣よく御案内のとおりであります。
韓国におきましても、御案内のとおり日韓共同コミュニケでやはり
日本国は深く
反省をするということでけりがついて
友好の取り戻しをやった。ここで、そういう
教科書問題で、
日本の私
どもが
考えておるよりもはるかに
韓国、
中国あるいはASEAN諸国、アメリカ大統領までこの問題に言及を始めておるぐらいでありますから、かなりやはり深刻な様相を呈しておることは
大臣一番よく御案内のとおりであります。きわめて憂慮すべき状況であります。
そういう中でいまいろいろなことが行われているわけでございますが、
文部省のおっしゃるには、先ほどからるる御
説明がありますように、私
どもはこれから
北京に参ります、そしてソウルにも参ります、そして
検定制度についてるる
説明をして、必ず了解を得るように
努力をいたしますということが
文部省の
説明の骨子のようでありますが、向こうの方の国は
両国とも、
検定問題は
日本国内の問題であるから私
どもはそれは関知したことではございませんと言っておる。これはもう当然のことなんですよ。まあしかし、深く
反省をしておれば、このような
記述を変えるということがないじゃないかというようなことがいまの議論の中心になっていることも御案内のとおりであります。
この間、ある
新聞を見たら、
中国だか
韓国だか忘れましたが、「進出」ということで、トヨタ、日産からアメリカに自動車が進出をすることと同じように思われたのでは、これは幾ら何でも私
どもとしてはたまったことではないというふうなことを
中国人、
韓国人のどなたか言っていることを
新聞に散見をいたしておったのでありますが、なかなか神経がとがっておる。そういう中で、いま
文部大臣は、あなたがおいでになろうと思ったら、
北京の方はちょっと来ぬでくれよと、これもまことにはなはだ私
どもは遺憾に思うのでございますが、いまは非常に大切なときでありますが、いまのような状態で、
韓国、
中国の皆さんが、
文部省のおっしゃるようなことで了解をするというようなことが
考えられるか、あるいはそういうことが可能性があるかどうか、私はむずかしいと思う。この点、きょうここで
大臣から御
答弁されると、いろんな何といいますか響きもあり、またそれこそ全世界にその
大臣の御
答弁が電波で通ぜられるわけでございますが、いろいろお
考えをいただいて、きわめて高い次元で……。
やはりきのうも自由民主党の
教科書問題の会合があって、いまもお話があったのでありますが、いろんな諸君がいろんな
意見を言いましたが、何とか取りまとめようという
方向でいま進んでおるんですよ。あるいはさっき
宮澤官房長官も、
鈴木総理がおいでになるまでの間にこの問題は取りまとめられますとはおっしゃらなかったが、取りまとめなければならないし、また取りまとめるように最善の
努力を払いますと言っておった。だから、大勢というか、国内の情勢も、これはやっぱり何というか、あれだけいろんなことが起こったのでありますから、少なくとも一千万人の
中国人が死んだり、
韓国でも三十六年間の間にあれだけいろんなことがあった。それに比べれば、字句の三字や四字直すことはそれほど難解なことではないじゃないかという
意見も
国民の間にかなり浸透しておる。
ひとつ
大臣ね、車を捨てて町の中を歩いてごらんになれば、私も自由民主党の一員ではございますが、この問題に関しては
文部省の
意見は余り街頭の中では通用しないような形になっておると私
どもは
承知をいたしておるわけであります。まあそういうことで、きょうは
文部大臣というか、
小川国務大臣から、きわめて大所高所からの
立場で、あなたのいまこれからおっしゃることは直ちに電波でもって
北京、ソウルに通ずるわけでありますから、これは必ずその
検定の
説明だけで事が済みます、あるいは済まないからこの字句の修正等につきましても前向きでこれから
文部省としても
検討しなければならないようなこともあり得る、あるいはしなければならない、それは御
答弁は
大臣の主観に基づいてのことでございますが、明確にひとつお教えをいただきたいと思うわけであります。