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参考人(
竹井紀代君)
都立の
墨田工業高校に勤務しております。
養護教諭になりまして中
学校で十四年間、それからた
だいまの
高等学校でいま四年目を終わろうとしております。私の場合は
高校でも
定時制ですので、その辺の
定時制の
状況もあわせて
皆さん方にぜひ知っていただきたいと思ってお話ししていきたいと思います。
まず、私の場合は、先ほど
中神さんの方は小中
学校を中心にいろいろ言われたわけですけれ
ども、私の場合は
高校の方で、
高校といいますと一応
義務教育じゃないというところで、それが
一つのネックになってさまざまな問題を生じてくる。そういうようなこともあわせながらちょっと
状況を報告してみたいと思います。
まず、私がいまいます
定時制の方なんですけれ
ども、
定時制の
生徒につきまして、つい最近、三年がかりで、私
たちの方で
定時制生徒の
健康実態を
アンケートを通して調べてみました。そのときに
生徒の
職業、どういう
職業についているかということをまず調べてみなんですけれ
ども、やはり
中学卒で勤める
生徒が多いものですから、かなり下請的な
労働現場というかいわゆる
単純作業労働が多いわけです。そういうところなものですから当然
労働条件なんかも非常に悪くて、
職場の
健康診断ですとか、それからたとえば
けがをしたり
病気になったりしましても、いわゆる
医務室とか
保健室みたいなのが全くなくて、赤チンが置いてあればいいというような
職場の中にいます。それで
労働条件も悪いものですから、一応
有給休暇があったとしてもそれがなかなかとれない。
日給月給になっているものですから、結局一日でも休むと給料が差し引かれるし生活に支障を来すということで休めない。だから当然
有給休暇があってもとらない。そういうような厳しい
労働現場の中から毎日通学しているわけです。ですから、当然そういう日ごろの
労働のいろんな
影響から体に及ぼす
影響は非常に大きくて、その
アンケートをとりましたときに、体の
状況ももうほとんどの
生徒が何かしらの訴えを持っているわけです。本当に健康であると答えた
生徒はわずかで、そういう
状況の中で
学校に来まして大体五時から九時、それから
クラブ活動が入りますと十時ぐらいまで体を使っていろんなさまざまな授業を受けるわけです。その中で、
慢性疲労が蓄積された中で当然
事故が起こってきたり、そういうようなことがかなりあるわけですね。そういうような
状況の中で
一つ問題になるのは、そういう
労働条件の悪さというところから、いわゆる定職を持たないわけですね。いわゆる
パートとか
アルバイトにどうしてもついてしまう。それはいまの
社会状況の
一つの
問題点なんだろうと思うんですけれ
ども、先ほど
中神さんの方から出されました
健康白書の百三十三ページにもちょっと
定時制生徒の問題が載っていますけれ
ども、七七年に私
たちの方で調べたときは
パート、
アルバイトの
生徒がわずか一七・四%だったのが、最近調べた今度のその
調査の結果では三六%、約四〇%近くになっているわけです。当然、そういう
職場のそういう
状況の中から体の問題についてもさまざまな問題を生じているというところがかなり関連してあるわけです。
一応
定時制の
状況はそういうことで、関連しましていわゆる全日制の
——まあ全日制の
生徒の方が全体的には多いわけですけれ
ども、全日制の
生徒の
状況を簡単に言いますと、体が大分大きくなってきて、その中で
運動量とかそれから運動する技術的なものがかなり高度なものになるというところから、かなり
けがとかそういうものが重傷になってくるわけです。そういうことからも、
けがする件数な
どもかなり大きくなりまして、七八年にこれは全日制を中心に
調査した結果から言いますと、
安全会の適用件数が、年間の件数ですけれ
ども、一番多いのが二十件から三十件が大体三四%、それから三十一から四十件が一九%、それから五十一から七十件までが一七・四%で、七十件以上というのが六・三%もあるわけです。やはりこういう中でどういう
事故があるかということをちょっと
幾つかつかんだものをお知らせしますと、たとえば男子で
体育の時間にバレーボールをしていて二人でボールをとろうとして正面衝突して、結局一人は右の額をがばっと割創というんですか、五センチぐらいの傷をつけて出血が多量にあって、
相手の
生徒は頭部を打撲して、失神状態まではいかなかったけれ
ども、とにかくすぐ
保健室で休ませた。それからもう
一つは、たとえば
体育の時間に千五百メートルを走行中倒れ、それは救急処置したんですけれ
ども結局心臓麻痺で死亡した。またある場合は、
体育祭の騎馬戦でげんこつで結局目をつつかれて左眼底出血を起こした。それから、これはたまたま
先生が来る間なんかにちょっと
生徒同士がふざけてやったんだろうと思うんですけれ
ども、マット運動のときに使うマットに、結局
生徒をくるんでちょっと布団蒸しみたいな形で遊んでいたら、それによるショック状態を起こして、それで最初は何でもなかったんだけれ
ども、後から気持ちが悪いということで急に意識を失ってしまった。それから
クラブ活動ですけれ
ども、野球部で硬球が右の頸部に当たって呼吸困難を起こすとか、それからこれはちょっと直接
けがということじゃないんですけれ
ども、後でもちょっと出したいと思いますのでちょっと言いますけれ
ども、女子の
生徒が、水泳のテスト中に泳いでいまして急に気分が悪くなったということで、すぐ引き上げて処置をしたんですけれ
ども、最終的には大脳動脈閉塞症ということで、左上下肢の運動麻痺の後遺症が残って、その後がなりリハビリテーションなんかで回復するのに時間がかかったと。これは本当に氷山の一角というか、こういう
事故がわりと中心に毎日の
学校生活の中で起こっているという
状況があります。そういうような中で、じゃ、先ほ
どもちょっと出ましたけれ
ども、
安全会では実際にはどういう形になっているのかと、やはり私
たちが日ごろそういうものを
安全会の書類申請する中で非常にいろいろ問題を感じ、ぜひこういうところは改善していってもらいたいというようなことを
幾つかちょっと出してみたいと思います。
まず
一つは、
高校の場合は義務制でないということが大きいんだろうと思うんですけれ
ども、
安全会の掛金が一部個人負担になっているわけです。全日制の場合ですとやはり三百円近く、それから
定時制の場合は百十円なんですけれ
ども、これやっぱり掛金が個人負担になっているというようなこともありますし、そのために
教育委員会の方で同意書とか委任書とかというのをちゃんととっておかなきゃならない。そういうようなことから、やっぱりぜひこのあたりは掛金についても個人負担をなくすようにしていってもらいたいというふうに思うんですけれ
ども、実際にこういうように
安全会に加入していても、実際に医療等の
状況という、お
医者さんで幾ら幾らかかりましたという書類をお
医者さんで書いてもらいまして、それを
安全会の方に出すわけですけれ
ども、その書類を毎月毎月何十件も担当のお
医者さんに書いてもらうわけです。その書類の作業は結局私
たち養護教諭が一々やっていられませんので、その
けがをした
生徒が各自で病院に行って取ってきてもらうと、そういう形に
学校ではしているわけなんですけれ
ども、その辺もかなり、特に
定時制なんかですと休んで行かなきゃならない。そうすると
仕事休めないから、じゃもう
安全会の方はいいですというような形になってしまうわけです。それは全日制でもあるわけですけれ
ども、結局そういう書類を取ってきたりなんかするのがめんどうくさいということで、私は、もし
生徒が行けない場合はなるべく自分で行くような形にはしていますけれ
ども、結局そういう形で書類がかなり手続がめんどうだというところで
安全会の申請をもう
生徒の方がやらなくてもいいよみたいな形でやめちゃう、そういうような
状況がかなり各
学校、
現場であります。ですから、そのあたりもやはり書類の事務の簡素化という形で私
たちの方でもいろいろお願いしているわけですけれ
ども、その辺十分考えていただきたいというふうに思います。
そういうことからさまざまな問題があるわけですけれ
ども、もう
一つは、
定時制の場合、いわゆる正規の通学経路だったら、たとえばうちから
職場に行って、
職場から
学校に行く場合のその三角経路で
事故を起こした場合は
補償されるんですけれ
ども、たとえば
職場からどこか出張でほかの場所に行って、そこから
学校に来た場合は結局正規の通学経路じゃなくなっちゃうわけですね。だからそういう場合は適用がされないわけです。そういうちょっと問題も残っています。
それから、一応
安全会である程度の
補償はされるわけですけれ
ども、たとえばこれは
定時制に多いんですけれ
ども、全日制もあるというふうに聞いてます。これは本人または家族の生計維持者という
生徒がいるわけですね、結局働きながら家族を養って
学校に行っている。そういう
生徒が
学校で負傷した場合
——会社で負傷した場合は労災で認定されるわけですけれ
ども、
学校の場合は結局
安全会だけなものですから、そういう場合の生活費の
補償が全くどこからも出ないわけです。そういうことで、
生徒の方も、病院には通わなきゃならないんだけれ
ども会社も休めないとか、そういうようなことになると結局転職をしたり、それから
学校をやめたり、それから
治療を中断してしまったりとか、そういうもろもろのやっぱり問題をいま抱えております。
それからもう
一つは、これは
安全会のこういう法規集というのが各
学校に来ていて、この中にもちゃんと、たとえば医療等の
状況をお
医者さんで書いてもらったときに、普通は診断書料が取られるわけですけれ
ども、この
安全会の書類については一応文書料は取らないということが、いろいろ医師会とか歯科医師会とか、そういう各組織に取らないようにということでお互いにそういう取り決めがあるわけです。だけど、実際に私
たちが行ってみますと、お
医者さんとか病院によりますとその文書料を取られてしまうわけです。たまたま私もこれは自分で行って初めて知ったんですけれ
ども、みんなそういうとりに行った場合、
生徒が結局文書料を払っていると、そういう文書料の問題なんかも残っております。
それから、これもやはり私が経験したんですけれ
ども、医療機関に医療等の
状況を、証明書をもらいに行ったときに、いままで中
学校にいたときに私が行ったときは、一度もそういうことはお
医者さんで言われなかったんですけれ
ども、たまたまこの間行きましたら、一応それは確かに
生徒の方の守秘義務というんですか、いわゆる本人以外の人間がそのカルテを見る場合はやっぱり本人の委任状を持ってこなければだめだというふうに言われたわけです。私はそのときはかなり事情を説明して委任状なしでもらってきたんですけれ
ども、病院によってはそういう委任状を持ってこないと医療等の
状況は一々出せないと。でも私
たちにしてみれば、
学校として必要な書類なんだから、別に
生徒から一々委任状とらなくても、私
たちの
責任で出してもらえないのかということでやり合った経験があります。そういう問題も残っています。
いまの
安全会そのもののもろもろの
問題点がありますし、当然いまの段階ではその辺をぜひ改善していただきたいというふうに思うんですけれ
ども、私もやはり先ほど
中神さんが言われましたように、やはり国で
補償していくという形、
学災法の制定をぜひ早急に進めてほしいと思います。それと同時に、先ほど言いましたいわゆる生活の
補償についてもやはり救済
制度をあわせて考えていってほしいというふうに思います。
それから、こういう
状況の中でやはり教員がかなり負担を
——負担というか、
事故がないように。
教育活動を進めるわけですけれ
ども、そういう
事故がないようにするために、やはり教員の精神的な負担というものが物すごく大きいわけです。これはもちろん
養護教諭もそうなんですけれ
ども、
一般の教員も、先ほど
中神さんから言われたように、遠足もやめ
だいみたいな、そういう
事故か何かのことを考えると行事も本当に十分やっていけないみたいな、そういうところがあるわけですけれ
ども、私はちょっと
養護教諭の
立場で言いますと、これは私が勤めている学区のある
養護教諭が経験した話ですけれ
ども、先ほどの、女子の
生徒で水泳中に頭の
事故で結局上下肢が麻痺したというその
生徒なんですけれ
ども、これについては
学校のプールで起こったという因果関係がなかなかお
医者さんの方で証明できないというようなこととかもろもろのことがありまして、やっぱり
安全会に申請してもなかなかすぐ適用されなかったわけです。それで結局、
学校の方としても校長以下、
安全会でもだめだと言っているんだからもうどうしようもないと。でも実際には親としては、
学校で起こった
事故なんだから何とかしてほしいということで、
養護教諭がかなり校長さんとか担任にも言ったらしいんですけれ
ども、結局
学校としてはどうしようもできないということで、親はもう
養護教諭が
一つのせめてものパイプ役だったわけです。その
養護教諭がとにかく都の
教育委員会の
安全会の方に日参しまして、彼女はとにかく何かあったらもう辞表を出すということで、それこそ辞表をふところに
教育委員会に日参したというようなことがあります。最終的にはそれは大分時間かかったけれ
ども、一応認められて
補償金がおりたらしいんですけれ
ども、一応そういうようなことが、もうこれだけに限らずかなり日常起こっているというような
状況があります。
そういうことから、ぜひお願いしたいのは、先ほ
ども養護教諭の完全配置ということが出ましたけれ
ども、やっぱり
養護教諭が果たす
役割りというのは、そういう
意味では
学校の中でかなり大きい
部分を占めているわけです。
一つ一つ、そういう行事とか毎日の何か
教育活動を行うときに、やはり
養護教諭が日ごろの健康観察を行い、事前にチェックできるものはチェックして、そういう
けがを大きくしないような形で
健康診断を行い、
健康診断である程度ひっかかった者については事前にお
医者さんで治してもらうとか、そういう形で日ごろの健康観察とか
健康診断、そういうものを行っているわけです。
そういうことから当然救急処置においても、その場にたまたま
養護教諭がいたから未然に大きな
事故にならないで済んだというようなこともかなりあります。そういう救急処置の問題とか、それからその後、結局
けがをして先ほどの上下肢の麻痺の
生徒、そういう後の、後遺症とかいろいろ事後指導ですね、いわゆるぐあいが悪いのがすぐ治らないわけですから、
けがをしたら、そういう
骨折をしたら副木を巻いて
学校に来るとかいろいろそういう
状況の中で、
養護教諭がそれなりにそういう不備な
部分をいわゆる
学校生活の中でやっぱり
生徒のその辺のことを考えながら
教育を受けさせていくと、そういうようなことをやはり
養護教諭自身がかなり大きな
部分として担っているわけです。
そういうことから、やはりいま、東京の場合例に出しますと、一応小中
高校の全日制は
全校配置になっています、ただ、島がちょっと一校か二校いないところがあるんですけれ
ども。ただ、私がいます
定時制につきましては、いま配置率が四〇%です。で、実際に
生徒は毎日
学校生活を送っているわけで、実際に
生徒がかなりいろんな問題を、
保健室を通して、
保健室の中で
養護教諭が
生徒と向き合う中で、ただ単に薬を上げれば、おなかが痛いと言ってきたから、じゃ薬をやってそれで痛みがとまるかというとやっぱりそれだけじゃなくて、いろいろ
皆さん方新聞等で御存じだと思うんですけれ
ども、結局いろいろ精神的な
部分……