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1982-04-21 第96回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十一日(水曜日)    午後一時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高杉 廸忠君     理 事                 斎藤栄三郎君                 田代由紀男君                 広田 幸一君                 原田  立君     委 員                 佐々木 満君                 仲川 幸男君                 福田 宏一君                 宮澤  弘君                 森山 眞弓君                 山田  譲君                 渡部 通子君                 市川 正一君                 木島 則夫君                 山田耕三郎君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君    政府委員        公正取引委員会        事務局取引部長  相場 照美君        経済企画庁国民        生活局長     小金 芳弘君        経済企画庁物価        局長       廣江 運弘君        経済企画庁総合        計画局審議官兼        物価局審議官   川合 英一君        経済企画庁調査        局長       田中誠一郎君        資源エネルギー        庁石油部長    野々内 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        経済企画庁調整        局財政金融課長  宮島 壯太君        通商産業省機械        情報産業局産業        機械課長     見学 信敬君        資源エネルギー        庁石油部流通課        長        長田 英機君        郵政省郵務局郵        便機械化企画室        長        石山 隆郎君        建設省都市局都        市計画課長    田村 嘉朗君        建設省住宅局住        宅政策課長    北島 照仁君        建設省住宅局住        宅生産課長    越智 福夫君    参考人        日本銀行総裁  澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (物価対策基本方針に関する件)  (公正取引委員会物価対策関係業務に関する  件)     —————————————
  2. 高杉廸忠

    委員長高杉廸忠君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高杉廸忠

    委員長高杉廸忠君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 高杉廸忠

    委員長高杉廸忠君) 当面の物価等対策樹立に関する調査を議題といたします。  前回の委員会において聴取いたしました物価対策基本方針及び公正取引委員会物価対策関係業務等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 広田幸一

    広田幸一君 昨年度を振り返ってみまして、消費者物価が非常に安定をしておるわけです。卸売物価もかなり低くなっておるんですが、どうも最近の傾向を見ますと、一月が前年同月比で二・一%、二月が二・八%、三月が三・〇%、こういうふうに最近上がっているわけです。しかも最近の円安も続いておりまして、これが一月、二月、三月もそういう実績になっておるわけであります。こういう傾向が続きますと卸売物価が上がり、そのことが消費者物価にはね返ってくるではないかというようなことが心配されるわけでありますが、今後の見通しとして、どういうふうに経企庁としては見通しを持っておられるか、まずこれをお聞きします。
  6. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) 最近の卸売物価状況につきましては先生御指摘のとおりでございます。  ちなみに、これを五十六年度全体で見てまいりますと、五十六年度全体は需給緩和等によります国内品落ちつきあるいは原油等に見られます原材料価格落ちつきがありまして、前年同比で見ますと、一・四%におさまっておりまして、その前の年の一三・三%から比べますとかなり落ちついておるわけでございます。ただ、最近の傾向といたしますと、御指摘問題点があるということは事実でございます。それば御指摘にもありましたとおり、円安傾向輸出入品を押し上げておるわけでございまして、これは主として素原材料になるわけでございますが、これが生産過程では中間品を通り、そして完成品に至って、ついには消費者物価に及ぶ、こういうのが通常の過程だと思います。ただ、その間にはいろいろ物によりまして出方にも差がございますし、期間も違ってくるわけでございますが、その場合、一番問題になりますのは需給がどういう地合いであるかということでございまして、一律にいま何月ごろこうなるということは言えないわけでございます。ただ、御指摘のとおり、そういう輸出入品価格が上がってくるということが物価に対して先行き問題を起こすという可能性は十分あるわけでございまして、需給関係もございますけれども、われわれとしますと今後ともその動向には十分な注意を払っていかなければいけない、こういうふうに思っております。
  7. 広田幸一

    広田幸一君 そういうことも将来心配されまして、これから経企庁としての景気対策中心にして質問をいたしますが、五十七年度の経済成長率は五・二%というふうになっておるわけでありますが、これは予算委員会審議の中でも政府見通しは高いではないか、民間のいろいろな調査の統計をとってみても高過ぎる、こういうふうな論議がかなり厳しくあったんですけれども、大丈夫です、やれますという長官答弁で終始しておるように私、記憶しておるのでありますが、果たしてそういうふうにいくだろうかと思うんですけれども、この辺はいかがでございましょうか。
  8. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま、世界経済は非常な激動期にあると私ども判断をしております。戦後最悪状態になっておるというのがいまの状態だと思いますが、その原因は第二次石油危機が非常に厳しく全世界を覆っておる、こういう背景があろうかと思うのでございます。そういうことがございまして、五十六年、これは暦年でありますが、一月から十二月までの経済成長実質二・九%であります。そういう中において、果たして政府目標の五・二%成長が可能であるかどうかということは、これまで国会の委員会等におきまして、しばしば議論になってまいりました。そこで政府の見解といたしましては、こういう経済激動期にほうっておけばこれはなかなか五・二%成長というものは達成することはむずかしい、しかし適切な経済政策を機敏に展開していくならばこれは可能である、日本経済は五・二%成長を達成する力を持っておる、このように答弁をしてまいりましたが、その考え方は現在でも変わっておりません。
  9. 広田幸一

    広田幸一君 いま長官は、五十六年度の成長率が二・九%と、こうなるようにおっしゃったんですが、私が若干計算をしてみましたらば、二・七、最悪の場合二・六ぐらいになる可能性もあるような数字が出ておるわけですが、どちらにしましてももう少ししたらはっきりしたものが出てくるわけですから、いずれにしても昨年度の四・七%が昨年の十二月で四・一%に下方修正されて、いずれも実質長官がおっしゃるように二・九%とした場合、これは差し引きしますと五・二%から引くと二・三%ですね、差が。かなり低いところからさらに二・三%引き上げなければならぬということになるわけでありますが、大変なこれは数字であろうと私、思うのです。いまこの数年間の実績を見ましても五十三、五十四、五十五、五十六を見ましても、この当初の予定に対して実績が五十三年度はマイナス一・三、これは実質でございますが、五十四年度は〇・二、五十五年は一・一、これはマイナスです。それから五十六年は、これ三%になるわけでございますから、この数字を見る限りにおきましては、長官の私は積極政策というものは、いろいろ聞いておりまして、大いにやってもらいたいと思っておるんですけれども、これだけの過去の実績に対する二・三%というものがこれからどのような積極政策をやりましても、大変無理な数字ではないかというふうに言わざるを得ませんが、この辺のところはいかがでございましょうか。
  10. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま二・九%という数字を申し上げましたが、これは一月から十二月までの暦年で言ったわけでございます。五十六会計年度ということになりますと、四月から三月まででございますので、この数字はまだわかっておりません。六月になりませんとはっきりいたしませんが、いずれにいたしましても五十六年度の成長が三%に達するということは非常に厳しい現状であろうと、このように判断をしております。  五十七年度のGNP規模は二百七十七兆と想定をしております。仮に三%成長のものが五%成長になる場合に二%違う。三%と五%というと非常に大きな数字の違いのように思われますけれどもGNP全体から見ますと、五、六兆の最終需要拡大すればそれでいいと、こういうことでありますから、仮に二百八十兆といたしますと、二百八十五、六兆の経済規模になればいいということでございます。  そこで、いま政府の方として考えておりますことは、去る三月の中旬に五十七年度の経済運営基本方針を決めましたが、その第一は、金融政策を引き続いて機動的に運営するということでございます。わが国物価水準は、消費者物価に関する限り三%台が続いておりまして、また国際収支も黒字になっております。そこで、国際的な金融情勢さえ条件が変化すれば、日本国内需要は機動的に金利政策で展開できる条件は熟しておるわけでございますので、引き続いて環境の整備を待って機動的な展開をしていきたい、このように決めたところでございます。  それから第二点は、政府並びに地方の関係公共事業、これは土地代を除きまして約二十四兆ございます。これを上半期七七%台の執行率を確保しようと、こういうことを決めました。したがって、上半期には約十九兆円、下半期には約五兆円と、こういう数字になります。例年は六五%前後でありますから、一二、三%も上がりますから、土地代を除きましても三兆、土地代を入れますと約四兆見当上半期事業量拡大をすることになります。  それからまた住宅は、ことしは百三十万戸を計画しておりますが、その半分が何らかの形で公的資金が入る住宅計画になっておりますので、この分についても最大限上半期に繰り上げて執行をしていこうと、こういうことも決めたところでございます。  また、昨年発生いたしました災害が約一兆円ございますが、これも五十七年度中にできるだけ多くを執行していこう、できれば八割見当をやってしまおうと、こういうことも決めております。  さしあたっては、このように公共事業並びに公的住宅その他の投資上半期に集中することによりまして景気回復策を図っていきたいとさしあたっては考えておりますが、後半民間経済の力が出てまいりますと、それはそのとおり大変結構になるわけでありますが、もしそのとおりいかないと、その場合には何らかの対策を立てなければなりません。建設省あたりからは公共事業の追加をもう少し具体的に明らかにすべきであるという要請も出ておりますが、その問題につきましては、経済活力が維持できるような、そういう経済政策を適当な時期に具体的に考えていきましょう、ここまでは政府方針が決まっておりますけれども、まだ具体的な中身につきましては最終の合意はできておりません。ただしかし、経済活力を維持、拡大をすると、これがすべての政策基本でございますので、以上申し上げましたような方向で五十七年度わが国経済回復するような、そういう方向に努力を集中してまいりたいと考えておるところでございます。
  11. 広田幸一

    広田幸一君 長官いまおっしゃったこと、後で少し私も分析しながら質問していきたいと思うんですが、こだわるようですけれども、さっきの暦年の二・九%、そのとおりでありまして、私がいままでの一、二、三カ月のそれを見ましたときに、時間がありませんから、——どうも二・六から二・七になるような数字になるわけです。しかし、そのことは二、三%のことですから、ここでそれほど問題にするわけじゃありませんが、いずれにいたしましても、二・何ぼの大きな差がつくわけでありまして、いまおっしゃったようなことだけで果たしてできるだろうか、いままでの実績を見まして。特にさっき長官がおっしゃいましたように、いま世界はもう最悪経済の不況の中にあると、こういうふうな前提でお話しになったわけでありますから、いままでに比べてこれから世界的経済がよくなるというような何か条件はないではないかというふうに考えますと、より五・二%というのは大変むずかしいではないかと思うんであります。  そこでやっぱり過去を見ながら将来を見通していかなきゃならぬわけでございますから、五十六年度がなぜこのように落ち込んだであろうか、その辺のひとつ御説明をいただきたいと思うんです。
  12. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 五十六年度の経済を振り返ってみますと、昨年の年央にいわゆる石油危機の直接的な影響は脱したのではないかというふうに考えているわけでございます。その後緩やかな回復にあったわけでございますが、御存じのとおり、昨年来以降輸出増勢が鈍化しているというところから、景気にいろいろ影響を与えているということかと思われます。特に昨年の十−十二月期は経済成長率マイナスでございますが、その大きな要因輸出増勢が鈍化し、輸入がふえたということの結果でございまして、内需で見ますとプラスでございます。特に民間需要で見ますとプラスになっているわけでございます。したがいまして、ここのところ民間需要回復が見られるわけでございますが、何分にも輸出増勢鈍化が、従来堅調でございました加工型産業等にも影響を与えているというところから、生産、出荷がこのところ一進一退状況ということでございます。  加えまして、海外の条件を見ますと、ただいま大臣から御説明ございましたとおり、アメリカ高金利が非常に居座っておるわけでございまして、わが国の場合には物価が落ちついておりまして、実質金利がかなり高いという状況にございますので、元来ですと金融政策が発動できる条件があるわけでございますけれども何分にもアメリカ高金利のために、たとえば長期金利の引き下げができないといったような事情があろうかと思います。一方、原油価格の上昇、相対価格の変化によりまして、いわゆる素材型産業等についての停滞が見られるといったような状況がございますし、加えまして、若干このところにまいりまして回復の兆しは見られますけれども個人消費一進一退でございましたし、住宅投資が低迷していたというところから、中小企業の活動が停滞を示していたという悪循環がございまして、総じて見ますと、そういった諸要因が重なりまして五十六年度の景気は期待していたようなラインに乗っていなかったというふうに考えているわけでございます。
  13. 広田幸一

    広田幸一君 私のあれが間違っておったら御指摘いただきたいと思うんですが、外国景気が悪くて外需伸びなかったということでありますけれども——そういうお話だったですね。ところが、実績を見ますと、五十六年度の暦年では二・一%で、当初経企庁が見込んだ数字よりも上がっておるわけですよ、数字から見ますと。そういうことになりませんか。ですから、何か外国景気が悪かったから、外需が落ち込んでというふうなぐあいにもとれるんですけれども、そのようなことはないかどうかというふうに考えます。  それから長官一さっき金融政策をもっと積極的にやるというお話があったんですけれども、日銀なんかの最近の動きを見ますと、これ以上限度いっぱいだと、こういうふうなことも言われておりますし、貨幣の供給量もずいぶん高い、これは第一次の石油ショック以前のああいう高さになっておる。現在一〇%ぐらい出ておるんじゃないでしょうか。そういうところから見ますと、そう別断金融政策によってこれから好転するというようなことは余り期待できぬではないかというふうに思うのでありますが、この辺のところはいかがでございましょうか。
  14. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 確かに金融はいまお述べになったとおりでございます。私が申し上げましたのは、金融を機動的に運営するという具体的な意味は、条件が許せばもう少し長期プライムも下げたいと、中小企業投資拡大をするためには長期金利が下がらないとこれはなかなか中小企業計画は進まないのであります。そのことを申し上げたわけでございますが、現時点ではそれができないと、なぜできないかというと、それはアメリカ高金利が足を引っ張っていると、こういうことを申し上げたわけでございまして、現状はいまお述べになったとおりで、私もそのように考えております。  それから先ほどいろいろな質疑応答がございましたが、一つは要するに私は五十六年度の経済の足を引っ張ったのは実質可処分所得マイナスになったと、こういうことだと思うんです。これは政府の当初雇用者所得伸びは一人当たり七・五%、それから国民経済全体としての雇用者所得伸び雇用者の数が一・六%ふえると想定をしておりましたから九・二%想定をしておりました。それが中小企業状態が悪いものですから、当初の予定よりも非常に大幅に低下をしておる。一方で公的負担が非常に大きいとこういうこともございまして、可処分所得マイナスになる。したがって消費伸び悩む、あわせて住宅が建たない、これはまた中小企業に悪い影響を及ぼすという悪循環の繰り返しと、こういうことが一つの大きな私は当初と見込み違いになった点だと思います。  それから貿易の問題につきましては、上半期は四月から秋まではこれは大体予定どおり貿易伸びたと思うんですが、いま局長が申し上げましたのは、昨年の秋ごろから輸出が急速に落ち込んだと、それが後半の経済の足を大きく引っ張っておると、そういう趣旨を申し上げたわけでございます。  以上のような点が五十六年度経済予定よりも相当違ったと、この背景であろうと、このように分析をいたしております。
  15. 広田幸一

    広田幸一君 済んだことですから、いま長官が正直に——正直にと言うと失礼ですけれども、やっぱり消費伸びなかったと、内需拡大しなかったということが大きな影響だというふうにおっしゃっておるんですが、そのとおりだろうと思いますし、大臣もいままで景気回復をするためには個人消費を伸ばすと、内需拡大するということを何回も言ってこられたように記憶しております。勤労者賃金もそのためには一定上げなきゃならないというようなことも積極的にお話になっておるように聞いておるわけですが、そこでそういう話が出ましたので、いま春闘が全部済んだわけではありませんが、大体山場を越したのですけれども、五十七年度の景気をよくするためにはやっぱり消費拡大しなきゃならぬと思うのですが、今度の春闘の結果をどのようにごらんになっておりますか。これによって可処分所得が二年間落ち込んだと言われてきたのですけれども、これが今度の春闘のあの結果によって伸びてくると期待できると、こういうふうに見ておられましょうか。
  16. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 春闘の現在までの妥結の状況を見ますと、大企業中心に約三百社弱が決定をいたしました。その平均のベースアップ七・二%、こういう数字になっておりまして、消費者物価が五十五年度七・八%、五十六年度の数字はまだ最終的にわかりませんが、多分四%前後になるのではなかろうかと、こう思っております。したがって、消費者物価が安定をしたということから判断をいたしますと、五十六年度のベースアップよりも五十七年度のベースアップの方が中身の濃いものになっておると思うんです。ただしかし、わが国経済分析をしてみますと、中小企業の分野が非常に多うございまして、働いておる人たち中小企業の方が多くて、約三分の二が中小企業で働いておる、こういう状態であります。昨年の雇用者伸びが非常に政府見通しよりも低かったというのは中小企業状態が悪くて中小企業ベースアップが非常に低い水準であったと、所得伸びなかったと、こういうことも背景にございます。まだ中小企業ベースアップが決まっておりませんで、これからでございますので、来月いっぱいぐらいかかるのではないかと思います。そこで、いま政府の方といたしましては、中小企業ベースアップが一体どのように動くのか、それを見ないことにはこの春闘による経済効果というものはにわかに判断できないと、このように考えております。
  17. 広田幸一

    広田幸一君 可処分所得分析は労働省もやっておるようでありますけれども、何か一%ぐらい伸びがあるだろうというようなことがちょっと言われておるようですが、いま長官がおっしゃったように、最終的にはまだわからないと思うんです。私もいま長官がおっしゃいましたように、八〇%以上を占めておる三百人以下の中小零細企業勤労者賃金がどの程度でおさまるか、そのことが個人消費拡大に大きな影響を来たすだろうというふうに一応見ておるわけでありますが、これからの見通しを見なきゃならぬということでありますが、設備投資を見ましても昨年の場合は全体的に落ちております。大企業の方はやっていますけれども伸び方もやっぱり落ちておる。中でも中小零細企業の方はずいぶん落ちておるわけでありますね。ですからこれは五十七年度に伸びていくような情勢があるかどうか。その辺を見ますと、どうも伸びていかない。とすれば私は中小零細企業勤労者所得伸びるということにはならないんではないか。しかも超過勤務手当というようなものも減っていく。すると長官、さっきからおっしゃっているような五十七年度に景気をつけるという大きな中身であるこの個人消費を伸ばすというところに期待ができぬではないかというふうに心配をするわけでありますが、この辺はいかがでしょうか。
  18. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま中小企業設備投資お話が出ましたが、五十六年度は私どもは大企業設備投資は約十九兆あると考えておりましたが、これは大体計画どおりいっておると思います。しかし、中小企業の方は二十三兆ぐらいあると考えておりましたが、これが四兆近く落ち込むのではなかろうかと、このように思います。予定よりも十数%落ち込む、これは非常に経済成長に大きな影響を及ぼしております。四兆も落ち込みますとこれは大変なことだと思うんですが、その背景はやはり景気現状がはっきりしないということと、それからやはり中小企業投資の場合は全部借入金でやる場合が多いのでございまして、大企業の場合は有利な資金証券市場等から調達することが可能でありますが、中小企業の場合にはそれができない。そこで、やはり金利がもう少し下がるはずだと、物価が下がっておるのに、いまの実質金利日本は高過ぎる、もう少しやはり金利負担が減少するのを待ちたいと、こういうことも一部にあろうかと、こう思っております。  そこで、先ほども金融政策機動的運営ということを申し上げたわけでございますが、五十七年度——今月から始まっておるわけてこざいますが、五十七年度の設備投資がどのように展開をしていくか、それはこれからの景気の動向、政府経済政策一つにかかっておると、このように思いますので、最終的の数字を申し上げかねますけれども、しかし、計画設備投資予定どおり五十七年度に進むようになる、そういう産業政策を進めてまいりたいと、このように考えております。
  19. 広田幸一

    広田幸一君 長官、私も経済のことがよくわかっておるというわけじゃありませんが、いま長官がおっしゃいました、景気を出すためには設備投資もどんどん伸びていかなきゃならないと、こういうお話であります。そこのところがいま何とも言えないということでありますが、最近の、私も新聞等で見る限りでございますからその程度の資料しかなくて言えませんけれども、日銀とか開発銀行とか興業銀行、長銀、そういったところが出した数字を見ますと、この設備投資計画というものはだんだんと低くなっておりますね。五十七年度の場合もそういうふうなものが低くなっておると、こういうことが言えますし、大きな会社が、大企業がいわゆる投資をやるというようなところもありますけれども、自己資金をもってやろうというわけですね、たまった金をもってやろうということでございますから、積極的にお金を借りてやろうというようなどうも傾向でないと。とすると、いわゆる高度経済成長の時代のような積極的な、伸ばしていくというような、そういうふうにも見えないわけでございますが、この辺を余り期待をして五・二%というのを考えるのはやっぱり心配になるわけですが、この辺のことはいかがでしょうか。
  20. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 最近、銀行の設備投資見込みについての調査が幾つか発表されております。いまお述べになったとおりでございますが、この内容は非常に違っておるんです。銀行によりましては数字が非常に違っておると、こういうことを私どもは留意をしておりまして、必ずしも全体の経済の動きをつかんでいないのではないか、調査の範囲が非常にそれぞれ異なっておるのではないか、比較的狭いのではないか、こういう感じも受けております。  そこで、高度成長時代と比べて設備投資が減るはずだという趣旨のことをいまおっしゃいましたが、基本的にはそうかもわかりませんけれども、現在の設備投資の目的をずっと調べてみますと、科学技術が日進月歩の勢いで進んでおりまして、それを産業の分野にできるだけ取り入れていきたいと、また取り入れないと競争に敗れてしまうということでございますので、現在の設備投資の目的は、一つは技術革新投資、それからもう一つは省エネルギー投資、これが中心でございます。で、中小企業などの設備投資の内容を調べてみましても、この二つが中心の目標になっておりまして、ことしもそれぞれの中小企業においても技術革新投資と省エネ投資に対して非常に強い希望を持っておられるわけですね。ただしかし、投資条件が熟さないということで延ばされる場合が多いということでございますから、いまは高度成長時代と違いますけれども、いま申し上げましたような目的から設備投資意欲というものは非常に強いと、このように私ども判断をしております。したがって、条件さえ熟せば相当大規模設備投資が進むと、このように判断をいたしておるのでございます。
  21. 広田幸一

    広田幸一君 もう一つ長官、こうして景気が悪いというのは、まあ可処分所得伸びないという、消費拡大につながらないということでありますが、そういうふうになったもとというのは、いわゆる、よく大蔵省等が言っておりましたけれども、財政の出番がないということですね。要するに、たとえば公共事業にしましても、この三年ぐらいは全部横ばいでございますね。しかも物価は上がっていますから、実質目減りになっておる。そういうことがやっぱりこの全体の経済の不活性化をもたらした結果になっておるではないかと。その点では長官積極政策でございまして、あるいは長官のそういった考え方がいまの政府政策の中に出ていないかもしれませんけれども、われわれが見まして、やっぱり政府の財政の出番がないと、もっと積極的にこの政策をとるべきであったと、こういうふうに思うんですが、この辺はいかがでございましょうか。
  22. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 政府の社会資本投資は昭和五十三年からほぼ横並びでございます。したがいまして、財政が積極的に作動してないというお話は、これはそのとおりだと思います。ただしかし、先ほども申し上げましたように、財政事情は窮屈でございますが、ほっておくわけにはまいりませんので、そこで、五十七年度の財政運営といたしましては、社会資本投資上半期に集中的に技術的に可能な限り最大限ひとつ繰り上げてやってみようと、後半は後半のことだと、こういう思い切った対策を立てておるのでございまして、実質は、上半期だけのことを考えますと数兆円財政が拡大されたと、このように判断をしていただいてもいいのではないか。後半どうなるんだと、まあこういう御疑問もございましょうけれども、後半のことにつきましては適当な時期において対策を考えていかなければならねと、こう思っております。
  23. 広田幸一

    広田幸一君 建設省の住宅局お見えになっておると思うんですが、私も、とにかく消費拡大しなきゃならぬと、そういう、積極的に政府はやってもらいたいという意見を、考え方を持ってるわけですね。そこでまあ住宅建設というものがすそ野が広いわけですから、景気には非常に大きな影響を出す。で、私も、ことしは長官もおっしゃいましたように百三十万という目標を立てて、これをやるんだということでありますが、どうも私が勉強した範囲では、いままで、去年なんかのずっと落ち込み等を見ますと、そんなに多く期待できるだろうかというと、余り期待できないんでありますが、どうでしょうか、見通しを建設省の方からひとつお聞かせいただきたい。
  24. 北島照仁

    説明員(北島照仁君) 最近、住宅建設が低水準で推移しております。昭和五十年代に入りましてから大体百五十万戸前後で住宅建設推移してきたわけでございますが、五十五年におきまして百二十一万四千戸と、前年比一八%ほど落ち込みました。そしてまた五十六年度も、まだその三月の数字が出ておりませんので確定した数字でございませんが、百十四万戸前後という、昨年よりさらに六%程度落ち込むんじゃないかというふうに一応考えております。この原因といたしましては、五十四年から五十五年にかけまして地価とか建築費が上昇したと、それによって住宅価格が上がった、一方、住宅ローンの金利も高水準で推移した、それから、先ほど来議論になっておりましたけれども、国民の実質所得伸び悩んだ、こういう事情で住宅価格と取得能力の開きが大きくなったと。五十六年に入りましてからは、実は住宅価格の方は安定化傾向を示しておるわけでございます。すなわち、建築費の方は横ばいないしはむしろ低落の傾向にある、地価の方も安定化傾向にある、それから金利の方も大分下がってきておる。しかし、一方において所得伸び悩んでおるというところで低水準で推移しているんじゃないかというふうにそこは考えておるわけでございます。  その昭和五十七年度でございますけれども、この住宅建設を何とか促進しなきゃいかぬということで、この五十七年度の予算編成あるいは税制改正等におきまして、住宅金融公庫融資あるいは財形融資、年金融資等におきまして、貸付限度額を引き上げた、それから貸付戸数も増大したと。それから現在、住宅金融公庫法につきましては参議院で審議中でございますが、公庫法の改正によって既存住宅金利の引き下げを行う、あるいは財形融資でございますが、利子補給制度を導入するというようなことを行いまして、これらの措置によって何とか国民の所得住宅の取得能力の補完をするという措置を講じたわけでございます。  また、住宅土地税制におきまして、住宅取得控除の拡充とか、あるいは土地税制の大幅な改正を行い、これによって宅地供給の促進、それによるところの宅地価格の安定を図ろうとしておるわけでございます。  さらにこれは、大蔵省の方を通じてお願いしているところでございますが、民間住宅金融につきましても、四月からもうすでに一部引き下げになりましたけれども住宅金融につきましては、資金量の確保とか、あるいは迅速な手続とかいうことを大蔵省を通じて行っておるところでございます。  こういうような措置、政府としましてはできる限りのことを行ったということでございまして、今後も、——ここに局長長官がおられますんですが、企画庁の方におきまして、適切な経済運営を行って、全体として物価の安定とか、あるいは所得の向上というものを行うこととしておりますので、これによって何とか百三十万戸といいますか、住宅建設の促進というものを図れるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  25. 広田幸一

    広田幸一君 建設省としては、そういう言い方になると思うんですが、一昨年が一八・三%も落ち込み、五十六年は幾らになりますか。
  26. 北島照仁

    説明員(北島照仁君) 百十四万戸前後というふうに考えております。
  27. 広田幸一

    広田幸一君 前年伸び率幾らになります。
  28. 北島照仁

    説明員(北島照仁君) 六%程度の減というふうに考えております。
  29. 広田幸一

    広田幸一君 一昨年が一八・三%の減ですから、去年は六%の減で、かなり回復したようなことですけれども、いずれにしてもいろんな周囲の状況からしまして、土地がそう下がったわけではありませんし、それから建築材料がそれほど、言われるほど安くなっていない、伸ばそうという政府の気持ちはわかりますけれども、私は住宅建設が大きく伸びていくという、そう可能性もないようでございます。特に、最近は絶対不足時代から大分脱皮しておりますから、なかなか政府が考えておるようなぐあいにいかないと、こういうふうに見ております。  そこで、長官、何とか五・二%景気回復させなければならないということでありますが、さっきおっしゃったように、公共事業の前倒しで七七%ということにしておるわけでありますが、後半はどういうことになるのですか、いずれ秋ごろには補正予算を組まれると思うんですが、その財源はどこから求めるのでございますか。
  30. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 後半は世界経済回復すると言われておりますので、貿易現状のような姿ではないと思いますし、それから前半公共事業を集中することによりまして、これを誘い水としてこの民間経済の力を引っ張り出したいとこう思っております。そのとおり進めば、公共事業を追加しなくても済むと思うんですけれども、もしそのとおりにならなければ、これはやはり公共事業を何らかの形で民間の力が落ち込んでおる分だけまた同時に上半期集中して、下半期減った分だけある程度これは対策を立てませんと、これは経済ががた落ちになってしまいますから、そういうことについては、その時点で考えていかなければならぬと、こう思っております。  ただしかし、まだどうなるかわかりませんので、できればそういうことをしなくても済めばいいわけでありますから、いまのところはとにかく上半期集中して、ひとつやってみようと、ここまで決めておりまして、下半期にどうするかということについては、まだ何も具体的には決めてない。経済も悪くなっては困る、悪くならぬようにしなけりゃならぬ、そこまでの合意はできておるのだけれども、具体的な内容についてはまだ政府部内で詰めていないと、こういうことでございます。
  31. 広田幸一

    広田幸一君 国民もまた企業も、いまの日本経済の実態というものを本当に凝視しておるわけですが、長官、さっき何としても五・二%維持できるような、そういう経済政策をしなきゃならぬということでありますが、本当にできるだろうかと、恐らく無理だろうという意見が大半だと思うんです。まあしかし政府はやるというふうにおっしゃるんですけれども、でも国民全体の期待というものが私はあると思うんですわね。ですから、この辺で後半についてはこうしますと、こういうふうなことがもっと具体的に出てほしいと思うんですね。何か長官お話によると、前段とにかくやってみると、後の時点でこう考えるということでは、少し国民に対して不親切ではないかというふうに思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  32. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) この点は現場を預かっておられます建設省からも同じような意見が出ておりまして、上半期に思い切って集中する、とにかくやってみろと、後半は後半でまた考えると、そういうことを言われても、もし考えてもらえなければこれは困ると、こういうことになるので、そこをもう少し明確に早くしてもらえないか、そうしないことには七七%といってもそれが計画どおり消化できるかどうかわからぬと、大変心配だということが建設省の方からも意見が出ておりまして、それはごもっともな意見でございますから、その点について、どういう対応をしたらよいかということについては、できるだけ早く政府部内で相談をしたいと思っております。
  33. 広田幸一

    広田幸一君 最近五十六年度の税収の落ち込みが二兆円をオーバーすると、この間渡辺大蔵大臣のどこかの話によると、二兆三千億、四千億と、いずれにしても二兆円以上の税収の落ち込みがあるということを言っているわけです。これを問題にして、果たしてこの計画で五十九年度の財政再建の計画が実施できるだろうか、こういうふうなことが、毎日のように新聞にも出、いろんなところで言われておるわけでありますが、私どもが見ましても、五十六年度の税収の落ち込みが二兆円以上であるということになると、おのずから、五十六年度の税収を基盤にして五十七年度の予算というものが組み立てられておるわけですからね。ですから、五十七年度の税収もかなり落ちるんではないか、まあ五兆円になるとか六兆円になるとか、五十六年度の落ち込みを、これをカバーしていくとすれば、これは五十八年度になりますかな、いずれにしても五十七年度は三兆円以上は税収の落ち込みになるだろうと、こういうふうに言われておりますが、この辺の、まあ長官は大蔵省ではないんですけれども、やはりいま進めている七カ年計画とも無関係ではないと思うんでありますが、この辺のところは長官どう分析見通しをしておられましょうか。
  34. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 最近、大蔵省の方から五十六年度の税収は当初の予定に対して七、八%ぐらい落ち込むのではなかろうかと、こういうことが発表されております。五十六年度の税収予定は三十二兆円でありますから、それの七%あるいは八%ということになりますと相当な金額だと思います。これは六月になりませんとはっきりした数字はわからぬそうであります。しかし、そう大きな狂いはないのではないかと私どもも思いますが、まあ問題はむしろ五十七年度の私はこの税収、五十八年度の税収、ここが非常な大事な点でなかろうかと思うんですが、と申しますのは、四月五日に成立いたしました五十七年度予算では、税収は三十六兆六千億と想定をされておるわけであります。したがいまして、五十六年度の実績に比べまして七兆ぐらい税収が自然増収ふえないと、これは足りないということになりますので、この見当税収がふえるような財政と経済の力を維持するということが、これは大変な課題だと、こう思っております。  税収の年度は六月一日から始まりますのでまだ先のことでありますから何とも言えませんが、私は、そういう意味からもこれからの経済運営が非常に大事だと考えております。一説には、そんなことは不可能だ、こういうことを言われる向きもございますが、しかし、五十五年度の税収を調べてみますと、年度当初の予算ベースで見ますと、大体前年度に比べまして五兆ふえております。五十五年度の経済は二百四十兆という規模でございますから、二百四十兆という規模経済から五兆という税の自然増収が確保できたということであれば、二百八十兆という規模経済から五十七年度の経済、その程度の規模でありますが、五十五年度の力を維持することができるならば、六兆とか七兆とかいう税の自然増収を確保することもあながち不可能ではない、このように考えております。  だから、いまの段階で頭からもうとにかく五十七年度は大規模な税収欠陥が出てくるのだと、こういうことを即断してしまうということはいかがなものであろうかと、それよりもそういうことにならぬようなやはり工夫と努力をしていくということが大事でなかろうか、こう思っておるところでございます。
  35. 広田幸一

    広田幸一君 長官のおっしゃるとおりにいけばいいし、そういう方向にいかせなきゃならぬと思うんですが、果たしてそういうふうにいくだろうかということを心配するわけですが、これは新聞に出ておった記事であります。これは、四月の十六日に朝日、毎日、読売にも出ておるんですが、長官がどっかでお話しになった記事が出ておりまして、私もずっと見ました。このとおりにいけば大変いいことだと私は思っておるんですけれども、そんなにいいぐあいにいくだろうか。いま長官が五十六年度、五十七年度の税収の見込みを、財政計画によるこの税収の金額をお話しになって、五十五年度のときの実績から見ると、GNPもふえておるんだから大丈夫と、こうおっしゃって、この新聞にもそう出ておるんですけれども、自然増収というものを、私もこれによってちょっと勉強してみたんですけれども、この数年間自然増収というものがそう伸びていないわけですね。五十五年度で四兆六千億円、五十六年度で四兆五千億円、五十七年度で四兆三千億円ということになって、これはこういうふうになっておるわけですけれども、これ五兆円の自然増収が出るという景気はかなり成長率が高いものでなければならないと思うんですが、いまさっきから言っておりますような、いろんな厳しい、国際的にも、国内的にもむずかしい状況の中で果たして自然増収がそんなに……、そういうふうに長官思うんですが、この辺はどうでしょうか。どうも長官のおっしゃっておるとおりにいかないような感じがするんですが。
  36. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は五十七年度に六兆とか七兆とかいう税の自然増収が確保できるとは言ってないんですよ、確保できるとは言っていない。ただ、確保できないと言い切ってしまうのはいかがかと、こういうことを言っておるわけでございまして、確保できるかどうかということは、これはもうこれからの課題でありますから、世界経済回復して、そして日本経済もその中にあって大きな力を回復すると、そして、五十五年度程度の財政と経済の力を仮に確保することができるならば、それは不可能なことではない。だから頭から、まだ再来月から始まろうとする年度のことでありますから、だから、いまの段階でだめだだめだと、こう言ってしまうのはどうだろうかと、まだこれから時間もありますから、いろいろ工夫をしてそういうことにならないように、そういう工夫と努力をしていくことが必要ではないかと、こういうことを言っておるのでございまして、ほうっておいてもそれができるということを言っておるわけではございません。
  37. 広田幸一

    広田幸一君 目標を立てて努力するということは、私はこういう問題に限らず、お互いが毎日の生活の中でそういうことは当然なければならない、そういうふうに思いますよ。しかし、さっきも言いましたように、この数年間の実績というものはずっと下がってきておるわけでしょう。後で七カ年計画も私はもう少し考える必要があるということを述べたいと思っておるわけですけれども、限度があると思うんですよ、限度があると思う。やってみなきゃわからぬじゃないかと、いまからそう言ったってどうなるかわからない。しかし、もうあと数カ月先のことですからね。ですから、その辺ははっきりしていただかなきゃならぬと思いますし、そこで、まあこの間も、二、三日前でございますか、経済同友会ですかね、佐々木さんが、幹事をしておられるんですね、佐々木さんももうとてもこれは五十九年度の財政再建は無理であると、もう赤字国債を発行しなきゃならないと、景気をつけなきゃならぬというようなこともおっしゃっておるわけですね。そういう声がだんだんとあるし、政府の内部にもそういう声があるというふうに聞いておるわけですね。長官はどのような意見があろうとも、とにかくいまの経済というものを立て直していかなきゃならないという非常に責任があると思うんですね。それだけに、私は虚構の計画というふうなことは言いませんけれども、やっぱりある程度国民が納得できるような線を、数字というものか、そういうものを明らかにされなければ、何か政府の責任があるとかないとかというようなことでは済まされない時期に来ているのではないか、こういうふうに思うんでございますが。
  38. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど税収のことについてお話がございましたが、五十五年度は当初の予算では四兆六千億伸びる、こう想定しておったわけです。それはお話のとおりでございますが、その後もう少し伸びるだろうということになりまして、最終的には五兆伸びたと、こういうことであります。実績は五十四年度当初予算ベースに対して五兆円伸びたと、こういうことであります。五十六年度は、いま四兆四千億というお話がございましたが、これは当初の計画でございまして、昨年度年度末にある程度の減額修正が行われまして、四兆しかないだろうと、こういうことになり、さらに先般大蔵省の方から七・八%ぐらいさらに三十二兆に対して減るんだと、こういう発表がされたばかりでございまして、そのとおりだといたしますと、五十六年度の税収は一兆四、五千億になるであろうと、こういうことになるわけですね。  したがって、経済のちょっとした違いによりまして五兆の税収が出たり一兆四、五千億の税収になったりするわけでございまして、私の言いましたのは、五十七年度の経済財政の力を五十五年度程度の規模にすることができるのならば、そうすると経済規模も一回り大きくなっておるから六兆、七兆という自然増収を生み出す、そういうことも不可能ではない、頭からそんなことはできっこないと、こう決めてしまわないで、それができるような工夫と努力をしたらどうだろうかと、こういうことを言っておるわけでございまして、その点はひとつ、ほうっておいてもできるというわけではございませんのでひとつ御理解賜わりたいと思います。
  39. 広田幸一

    広田幸一君 その辺はやりとりしてみてもわかりません。進みませんし、長官積極政策のあらわれとして理解をしたいと思うんですが。そこで私は、経済企画庁が立てております新経済七カ年計画というものを何か見直しをする必要があるのではないかというふうに思うんですが、その辺についてはいかがでございましょうか。
  40. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 現在の七カ年計画がスタートいたしましたのは昭和五十四年からでございます。もうすでに本年度で、五十七年度で四年になるわけでございますが、これを根本的に見直すかどうか、つくり変えるかどうかということにつきましては目下検討をいたしております。と申しますのは、来月も終わりごろになりますと、昨年の五月、経済審議会の中に二十一世紀を展望いたしました長期展望委員会というのをつくっていただきまして、これからの二十年間日本の社会経済はどのように変化するかということ等について作業をしていただいております。たくさんの専門家に作業を熱心にしていただきまして、大体まとまってまいりました。来月末にはその答申をいただけるものだと、こう思っております。それから一方で臨調の本格答申が七月に出るようになっておりまして、この二つの報告を見まして、そして五十四年度七カ年計画がスタートいたしました当初とは大分事情も変わっておりますので、この際抜本的につくり直すべきではないかと、こういう議論もございますので、そういう議論を真剣に検討してみたい、そしてつくり変えるかどうかということにつきましてはこの七、八月ごろに結論を出したいと、こう思っております。
  41. 広田幸一

    広田幸一君 長官、大変、正直と言ったらおかしいですけれども現状をやっぱり厳しく分析をされておっしゃっていただいたと思うんですが、これから将来を見通してそういう計画を変えるようなことも考えていかなきゃならぬということでございますが、私は、五十九年度の一つの目標どいうものが政府にあるわけですから、何かこのあれを見ますと、経済成長伸びというのがこれが平均五・一%になっておりますね。そういうことになっておるんですが、この五十六年度の実績等を見ますと、これはもう五十八、五十九、六十というのは名目で九・九%ぐらいに持っていかなきゃならぬということでございまして、かなりこれは、こういう数字になりますと、もう後々大きく後の方にしわが寄せられるといいますか、そういうところになってくると思うんでありますが、そういう意味で私は、この計画というものが早くやられ、しかも実態に合ったようなものにならないといけないと、こういうふうな意味で申し上げておるのでありますが、その辺の関係は、これは計画とそれから中間の財政計画等のかね合いがあるわけでございますから、その辺のところをもう一回御答弁いただきたいと思います。
  42. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これはいまお話しになりましたように、世の中が相当大きく変わっておりますので、そこで先ほど申し上げましたような二つの答申を参考にして決断をしたいと、こう思っております。七、八月ごろにこの決断をいたしますならば、来年度以降のこの計画に十分間に合うであろうと、こう思っておるところでございます。  そこで、新しい計画を仮につくるといたします場合に、私どもとしては二つの点を留意しなければならぬと思っておりますが、その一つは、先ほど来お述べになっております、経済の現在の姿が普通の姿なのか、あるいは一時的な異常な姿なのか、現在の経済状態がですね、この判断が必要だと思うんです。一説には、現在の世界全体のゼロ成長または低成長というものは将来ずっと続くのではないかと、こういう意見もございます。しかし一方で、いやそうではないと、いまの世界経済状態は戦後最悪状態であって、あるいは一九三〇年の大恐慌にも匹敵するようなそういう深刻な状態であって、それは第二次石油危機影響が一時的にしかも深刻にいまあらわれておるからそうなっておるんだと、少なくともことしの秋以降、遅くとも来年以降は世界経済全体の力が回復をして、そして正常な姿に戻るであろうと、こういう意見もございます。私どもは、その後者の意見が正しいのではないかと、こう思っております。と申しますのは、第一次石油危機の後も同じような意見がございまして、世界経済はもうゼロ成長とかマイナス成長に落ち込んでしまったのだと、こういう状態が続くのだという議論が非常に強かったのであります。しかし、第一次石油危機が起こりまして三年たちますと、世界経済は大体安定をしてまいりまして、欧米諸国の経済もゼロ成長から四、五%成長回復する、わが国経済も五%台の成長に安定をする、そういう時代がずっと二、三年続いておったのでございます。それが五十四年にこの第二次石油危機が起こりまして、第二次石油危機の場合には、石油危機がじわじわと非常に深刻になったものですから、そこで昨年の後半から現在が最悪状態になっておる、だからいまは最悪状態であって、いまは正常な姿ではないと、このようにやはり理解する方が正しいのではないか。こういう悪い状態がずっと永続するというのはこれは偏見ではないだろうか、第二次石油危機影響というものをもう少し分析する必要がある、このように私どもは考えております。  それから第二点は、欧米諸国がゼロ成長またはマイナス成長という状態になるならば日本も同じ程度の成長しかできないのではないかと、日本だけが欧米諸国に比べて高目の成長ができるというのはおかしいと、こういう意見もございます。それも一説だと思いますが、私どもは、日本経済は欧米諸国にない特別の力を持っておる。それは物価の安定であり、失業率の低さであり、そして貯蓄率の高さ、あるいは金利水準、それから国際競争力、あるいは労使関係、それから防衛費の負担、こういうことを考えますと、欧米諸国が低い成長だから日本も低くならないのがおかしいんだと、欧米諸国より高い成長ができるはずない、こういう議論には私どもはくみしないと、日本は欧米諸国よりも高目の経済成長をする潜在的な能力があって、それを具体的に発揮すべきであって、そしてその余力を挙げて第三世界経済を援助していくというのが日本基本方針ではなかろうか、このように判断をしておるわけでございますが、以上のような二点を中心にして、もし現在の七カ年計画を直す場合にはこれからの経済見通しをつくっていきたい、このように考えております。
  43. 広田幸一

    広田幸一君 まあ、長官ずいぶんいろいろと資料に基づいての将来の見通しであったと思うんですが、確かにおっしゃるように日本外国と違った非常に潜在的な力があるように私も思います。  そこで、せっかくそういうお話を聞きましたので、いま世界経済が戦後最悪の事態にあるということでありますが、どういうところによその国がこうして経済が落ち込んでおるかというような点について簡潔にお知らせいただけませんか。
  44. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) その一つはやはり失業率だと思います。OECDの失業者は第一次石油危機の起こります前は一千万でございましたが、その後第一次石油危機で二千万にふえ、第二次石油危機によりましてさらにそれが加速されまして、現在は三千万になっております。アメリカが約一千万弱、それからヨーロッパの中心地帯EC諸国が約一千万強と、その他の国々を合わせまして約三千万、このように言われておるのが私は一つの現象であろう、こう思います。  それから第二の現象はインフレだと思います。最近はインフレは峠を越したように思いますけれども、それでもまだ二けたインフレの国が非常に多い、そういうことを背景にいたしまして非常な社会不安が続いておる、それぞれの国の政権そのものが根底から揺らいでおる。こういうことを判断をいたしますと、やはり現在の状態は正常な姿ではない、このように私ども判断をいたしております。
  45. 広田幸一

    広田幸一君 もう一つ、そこで、失業率が高いと、ECでも一千万、アメリカでも一千万ということですが、そういう失業率が高い、失業者が多いということはやっぱり景気が悪いから失業者が出てくるということになるわけですね。ですから、その失業者がたくさん出るという原因というものは端的に言って何でしょうか。
  46. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 要するに、第二次石油危機が起こりましてそうして経済が混乱をいたしましたが、そのときの私は対応を十分やらなかった、そのときの対応が不十分であった、こう思っております。第一次石油危機のときは日本の方が私は対応がまずかった、こう思うんです。欧米諸国の対応の方がよかった。それだけ第一次の場合は欧米諸国の経済の立ち直りが早かったわけであります。第二次の場合は日本の方が比較的順調に対応いたしまして、欧米諸国の対応の方が比較的十分ではなかった、こういうように判断をいたしております。
  47. 広田幸一

    広田幸一君 五つほど日本のいい面といいますか地力というものが言われましたけれども長官がこの間本会議でも答弁をされたのを私覚えておるんですが、物価の安定、失業者も少ない、国際競争力も強いということでありましたが、私の印象に残っておりますのは、労使の関係が非常にうまくいっておる、諸外国に比べまして。私はその分析というのは本当に正しいというか非常によく見ておられると思うんです。生産性を高めていくという、そういう姿が日本一つの特徴としてあらわれてきておると思うんです。  それからもう一つは、私はやっぱり長官もよく言っておられますが、防衛費ですね、防衛費をいま一%以下に抑えているわけですが、もうこれ以上伸ばすということはこの大きな潜在的な力を阻害するというふうに私は考えておりまして、長官がそういうことをいろんなところで述べておられることを私はお聞きするんですが、私は、その考え方は、長官もそれこそ有力な閣僚の一人でございますから私はそのことを今後もしっかりと主張をしていただきたいと思うわけであります。  時間が来ましたので私はまとめて、まとめるようなかっこうになるかどうかわかりませんが長官にお願いをしておきたいと思うのでありますが、五・二%の成長率、これでは長官と残念ながらかみ合わなかったわけです。私は大変なことだと思っておるわけです。しかし、積極政策をとっておられる長官は全力を挙げてやらなければならないと、そういう目標を持ってやられるということでありますからそれはそれでいいといたしましても、さっきから言っておりますように、この数年間の成長率実績というものは悪い。世界的にも国内的にも決していい経済の環境ではない。とすれば非常に心配をしておるのが多くの国民であると思うのであります。そこで、いつ今度長官に私が再度このような場で質問を申し上げることがあるかどうかわかりませんが、きょうの委員会で私がしつこくそのことを申し上げたと、今度のそういった場合には、こういう結果になったではないかと本当に胸を張って言えるような私は政府の積極的な政策というものが今後本当にあとわずかでございますから、確立されるように特に期待しまして、最後に長官の決意といいますか、その辺をひとつお聞かせいただいて質問を統わりたいと思います。
  48. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 当初にも申し上げましたが、何しろいま非常な世界激動期でございますので、わが国もそれによって非常に大きな影響を受けておるわけであります。したがってこの情勢の変化に即応しまして機敏で適切な政策を展開していくということが前提条件でありまして、ほうっておいてもできるというわけではございませんので、やはり機敏で適切な十分な政策が展開できるように、そういう方向に努力しなければならぬと、こう思っております。
  49. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 私がちょうだいした時間は三十分ありますので、重複を避けて御質問申し上げたいと思います。  世界的不況の原・はアメリカ高金利にあることはほとんどの方々の意見が一致していると思います。では、一体そのアメリカ金利を下げ得るだろうかどうか、その見通しを第一にお伺いします。  第二は、またアメリカが下げ得るようにするために日本がどういう協力をすべきであろうかということをお教えいただきたいと思います。
  50. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま世界的に深刻な不況が最大の課題でありますが、そこで来月以降開かれます幾つかの国際会議におきましても、世界経済の再活性化ということが最大の課題になろうかと思います。で、世界経済の再活性化を図るための具体的な措置は何かといいますと、いま御指摘になりました私はアメリカ高金利を是正する、このことをおいてないと。アメリカ高金利を是正すれば私は世界経済の再活性化は可能である。そのくらいこの問題は重要な課題だと、こう思っておりますが、これまでアメリカは、物価が安定をすれば金利はだんだん下げますと、そういうことを繰り返し昨年来言ってきたのであります。幸いに二月の消費者物価は七%台になっておりますし、その後もずっといい方向に進んでおります。したがって近く六%という水準にもなろうかと思いますし、卸売物価も安定をしておりますから、物価に関する限りは私はもっともっと金利を下げても差し支えないという条件は熟しておる、こう思います。ところが最近になりますと、どうも前言を翻して一向に下げようとはしない。その背景はやはり大幅な財政赤字にあると、クラウディングアウトが起こるのではなかろうかという、そういう心配が背景にあってそうして金利がなかなか下がらないんだと、こういうことを言われておりまして、この財政赤字をどの見当まで修正するかということにつきましては、アメリカ政府アメリカの議会がいま相談をしておりまして、五月中には何らかの結論が出てくるであろう、このように言われております。  私は、財政赤字が縮小すればそれで条件は熟すると思いますから、仮に財政赤字が縮小しない場合には一体どうするかということになりますと、それはアメリカの貯蓄率をふやすことだと、こう思うんです。  アメリカの貯蓄率は昨年の前半は四%台に落ち込みまして、建国以来史上最低の水準である、このように言われておったのでありますが、その後だんだんと回復をいたしまして、昨年末には六%台の水準までに回復をいたしました。ところが最近になりましてまた落ち込みまして、四・九%という水準に落ち込んでおるようであります。  レーガンの経済政策の一番の基本は、大減税をして物価を安定させて、そして同時にその資金を貯蓄に回してもらう、産業投資にその貯蓄を振り向けて生産性の向上を図って強い経済に立て直す、それがアメリカの国力の再建の筋書きだ、このように言われておったのでありますが、貯蓄に関する限り、どうもスケジュールどおり進んでいない。  調べてみますと、アメリカはもともと貯蓄率の低い国でありますけれども、数年前には八・六%という水準まで貯蓄がふえたことがあるんです。ですから、私はこの大減税が背景になり、そして物価が安定をするということになりますと、政策の進め方いかんではもう三%や四%貯蓄がふえないはずはない、私自身は外部からこのように見ておるわけでございますが、その貯蓄がふえるか赤字が減るか、どちらかが実現をいたしますならば、物価の安定と相まって、アメリカ金利は完全に下がる条件は熟すであろう、このように思います。  ただ、それは経済的な議論でございますが、六月にはパリサミットもございまして、アメリカ自身も世界経済の再活性化ということを強く言っておりますし、多分アメリカ大統領もそういうことを言われるのではなかろうか、このように思いますが、その場合に、アメリカ大統領がパリ会議に出席をされまして、世界不況の最大の原因である金利をそのままに据え置いたまま出席をされるのかどうか、それとも何らかの手を打って、大手を振って出てこられるのか、そこらあたりはもう少し様子を見ないと何とも判断できない、こう思っております。
  51. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 日本アメリカに対して協力する道は何かということをお伺いいたしたわけですが、私はこう思います。日本が資本輸出国になる、その面でアメリカに協力すべきではないだろうか。新聞の伝えるところによると、百億ドルぐらいの金をアメリカに援助するなどということを伝えられておりますが、それは政府として何か相談に乗っているんでしょうか。
  52. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) そのことは私も知りません。百億ドルとか二百億ドル構想はいろいろ伝えられたことがありますが、政府として相談に乗ったことは一切ございません。
  53. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 アメリカのような大国に日本が百億ドルぐらいやったって焼け石に水で、それよりむしろ向こうが日本の資本市場に来ていろいろと資金調達をするときに、日本はそれに全面的に協力をしてやることが私は一番大事だろうと思う。そうすると、どうも日本政府の足並みがそろってなくて、たとえば一つの例はゼロクーポンであります。すぐ発売禁止にする。せっかく向こうが日本の資本市場で資金の調達をしようとするときに、それではちっとも日本は協力していることにならないだろうと思います。  それから第二点は、私はもっと日本は自由化を推進すべきだと思うんです。いまの摩擦解消のためには確かに農産物のような問題もありますけれども、原則としてもっと自由化をしていくということがアメリカの高金利政策を是正させるために必要なことだと思いますが、御意見いかがでしょうか。
  54. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほどの百億ドルあるいは二百億ドルという構想でございますが、私自身の考えを申し上げますと、アメリカ世界の最も進んだ国でありますし、資金も必要とあれば幾らでも調達できる能力を持った国であります。しかも、GNPは三兆数千億ドルという非常に巨大な規模に達しておりますし、日本が百億ドルや二百億ドルの資金援助をすることによってアメリカ経済影響が出るとは思いませんし、しかもアメリカは非常に誇り高い国でありますから、そういう形の資金援助というようなことを、発展途上国に対してならいざ知らず、世界の指導的立場をもって任じておるアメリカに対しては、果たしてアメリカ経済規模その他を考えて有効かどうか、そのことから判断をしていかなければならぬと思いますし、アメリカ自身はそういうことは一つも言っておらぬわけでありますから、そこはよく判断をして相手の感情を余り逆なでしないようにすることが大切ではなかろうか、こういう感じもいたしますが、いずれにいたしましても私は何にも相談を受けておりませんから結論めいたことを申し上げる立場にはございません。  それから、資本の流れの問題でありますが、いま円安になっております一番大きな背景アメリカ高金利でございまして、アメリカ金利が非常に高い、そこで日本から資本の流出がどんどん進んでおりまして、毎月二十億ドル以上の資金が流れていっておる。五十六年度は日本へ流入した資金もございますが、流出した資金もございまして、六十五億ドルの赤字になっておる、こういうことでございます。現時点でも二十億ドル以上の金が毎月流れ出す。ここが円安背景でございますから、ここを正確に分析をして、一体どうしたらよいのかということを、私はこの対策を立てることが必要だ、なかなかこの点は軽々に結論は出せないのではないか、よほど慎重な対応が必要だ、こう思っております。
  55. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 御意見よくわかりましたが、もう一つ発展途上国も景気が非常に悪い、全世界が悪いんで、その一つの打開策としてはいかがでしょうか、いま一年間に四千五百万人から五千万人の人が餓死する、したがって日本の持っている外貨を使ってアメリカから食糧を買ってこれを発展途上国の餓死寸前にある人たちに対する援助をしてあげるということが、私はこの際望ましいことだと思いますが、いかがでしょう。
  56. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 国連の調査によりますと、現在、世界の飢餓人口、飢えておる人口は四億五千万、二回にわたって調査をしておりまして、その二回の平均が大体四億五千万になっておるそうでございます。そして、そのうち毎年五千万の人間が餓死しておる、一日十五万の人が飢え死にしておる、こういうことでございます。その三割が子供である。そういう報告が国連から出されております。昨年の十月のカンクンの南北サミットにおきましても、このことが南側の代表から真剣に提案をされました。  そこで、五千万の餓死者、この餓死を食いとめるのに最小の食糧は幾ら要るかということを計算をしてもらいましたところが、大体三千五百万トンの食糧があると餓死者を食いとめることができる。ことしの国際機関の食糧援助は大体一千万トンだそうであります。したがって、あと二千五百万トンの食糧援助が追加されますと、一応の餓死は食いとめられる。千五百カロリーぐらいの食糧を平均与えますと餓死はしないんだそうでございますが、しかしそれは飢え死にをしないというだけでございまして、自由に動き回ることはできない。自由に動き回るためには二千二百カロリーが必要だと言われておりますが、そのためには八千万トンの食糧が必要になる。そのうち、先ほど申し上げましたように一千万トンが国際機関からことしは出されますから、七千万トンの食糧があれば五千万の人が餓死をしないばかりか自由な活動ができるという、そういう背景ができるわけであります。それに必要な資金は、前者の場合には約六十億ドル、後者の場合には約百六十億ドルとも言われておりまして、この見当の食糧援助をするということは、これはアメリカ、ヨーロッパ、日本、OPEC諸国の一部がやりましょうということになりますと、それは簡単にできることであろうと思いますし、それから、それだけの食糧の増産能力はアメリカ中心に十分あるわけでありますから、そういう世界的な合意ができればそれは実現すると思うんです。  ただしかし、いまおっしゃったのは日本だけでやったらどうだということでございますが、日本だけでやるということになりますと、現在の食糧の世界貿易の流れを日本だけの立場から変えてしまう、こういうことにもなりますから、相当異論が出てくる国もたくさんあろうかと思います。だから、こういう問題はやはり日本は応分の努力をしなければなりませんが、日本だけでこれを、この大問題を解決するというのはなかなか世界的な合意、またこの計画がなかなか円滑に進まないのではないか、こういうこともございますので、私はいまおっしゃったことは非常に大きな課題でもありますし、世界規模でぜひ解決できることを期待いたしますが、日本だけでやるということにつきましては少し問題があろうかと思います。やり方についてはいろいろ世界的な機関において相談をする必要があろうかと、こういうように思います。
  57. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 御意見のとおりで、日本だけでやれるとは私も思っておりませんから、ぜひひとつ国際的な規模でそういう方向へ持っていくことが景気を活性化する一つの道であろうと思います。  それから、先ほどからもお話に出ておりましたが、この不況が長期にわたるのか短期にわたるのかということについては非常な議論が分かれます。コンドラチェフの波で五十年ぐらいの長期不況にいま陥っているんだというようなことを言う方もおられる。しかし、これからこれを打開するために私はやはりイノベーションを徹底的にやる以外にないんじゃないだろうか。したがって、応急対策としてはいま御指摘のようなアメリカの高金利政策是正の方向に向かって日本もできるだけの協力をしてあげる。それから同時に、このコンドラチェフの波を打破して、早くも少し明るい世界にするためにはイノベーションにどれだけの努力を払うかによって決まっちゃうんじゃないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  58. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま世界経済の再活性化の緊急唯一の課題は、私はいま述べましたアメリカ高金利問題だと、こう思います。  それからもう一つの大きな課題は、エネルギー問題だと、こう思っております。現在の混乱の背景がエネルギー問題にあるわけでありますから、いま石油が小康状態のときに、やはりエネルギー政策をしっかり世界的な規模で進めておくということが必要だと思います。一昨年のイタリアのベネチア・サミットではこのことが議論されまして、参加各国で合意ができたんですけれども、その後エネルギーがやや小康状態になったために、各国ともそのときの合意を忘れまして、非常に後退をいたしております。ここが一つの大きな問題点でございまして、第二次石油危機の混乱はいずれおさまると思いますけれども、第三次石油危機が新たに発生をする危険性があろうかと、このように思います。  それから第三が、いま世界を大きく変えつつありますものが技術革新だと思います。原子力エネルギーとか、あるいはコンピューター、あるいはエレクトロニクス、あるいは生命科学と、こういうようなものがいま世界を大きく変えつつございまして、産業界でもこの技術革新の波に乗りおくれたのでは、これはもう敗北をするということで一生懸命に取り組んでおるというのが現状でございますので、これからの経済政策を考えますときに、以上のような点が非常に大事な課題ではなかろうかと、このように思います。
  59. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 いま長官のお言葉の中にありました石油問題についてちょっとお伺いいたしますが、いま民衆が非常に不審に思っておるのは、世界的に油が余っている、また国内でも油が余っているのになぜ四月一日からキロ当たり三千円も上げるのかと、こういうことだと思うんです。  私はそこで、政府政策の中で石油業法というものは非常に大きな問題だと思うんです。で、確かに少なかった時代には業法の果たした役割りは大きかったですけれども、今日になって見るとそれが非常な足かせになっているんじゃないだろうか。要するに石油業界は設備過剰です。それがためにできた物を業転物としてブラックで売っている。それで本当から言うとこの際もう少し設備を縮小した方がいい、だがそれがなかなかできない。私はいまの日本の石油業界というものの意見を簡単に申しますと、石油業法の見直しが要求されていると思うんです。それが一つ。  もう一つは、いままではやはりコスト主義で、生産コストで価格を決めておりました。円安でいま輸入する油が高いんだと、だから小売価格も高くするんだと、こういう意見なんですけれども、物の値段というのは需要供給の関係によって決まるべきものでありますから、やはり市場機能を活用する、それが大事じゃないかと思う。そういう意味において私は石油についても石油市場、マーケットをつくったらどうかと、市場をつくってはどうかと。アメリカでもイギリスでもそれはできているわけですから、日本でも石油業法のもとにおいて過保護になっている傾向がある。そうして国民に非常な悪影響を及ぼしていると考えますが、長官いかがでしょうか。
  60. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 石油の問題とか、石油業法の問題はこれは通産省がお答えになるのが一番いいわけて、来ておられますな——来ておられますから、この問題は、石油問題は通産省から答えていただきましょう。  そこで、私は基本的な問題だけ申し上げますと、やはり産業の発展のためには市場機能を活用するということ、これが一番大事な点ではなかろうかと、市場機能が失われますと産業の活力も失われる。そこで発展がとまってしまう、合理化がとまる。これは石油業界の問題のことを言っているわけじゃございませんで、経済基本原則としてそういうことがきわめて大事な点ではなかろうかと、いま御指摘になりました点につきましては私も賛成でございます。
  61. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 石油に関する行政介入の問題というのは、私どもとしてはできるだけ行政介入を排除いたしまして、市場メカニズムに任せるという方向が望ましいと考えておりまして、昨年の暮れの石油審議会のレポート、あるいは最近の臨時行政調査会における議論、こういうものもそういう方向にあるというふうに私ども理解いたしております。したがいまして、今後もできるだけそういう方向にいきたいと思っております。ただ、石油製品は御承知のように非常に重要な、民生にも産業にも重要な物資でございますので、余り大きな変動あるいはむちゃな価格構成というものがあってはならないというふうに考えておりますので、できるだけ安定的な価格で推移するというふうに監視はいたしたいとは思っておりますが、基本的にはマーケットメカニズムというものを重視する方向に持っていきたいと、かように考えております。  それから取引所の問題でございますが、実は取引所につきましては関連の業界から全くまだそういう取引所に石油製品を上場してはどうかというような意見もございませんので、私ども従来検討したことはございませんが、ロンドンでは新たにそれがつくられてうまくいっているというようなニュースも聞いておりますので、私も関心は持っておりますが、まだ通産省として検討するというところまではいっておりません。今後そういう動きがあれば石油の安定供給という観点から検討してみたいというふうには考えております。
  62. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ことしの景気を左右する大きな力は百三十万戸建つかどうかということです。いま日本住宅の戸数だけで言うと約二百万戸ぐらい過剰なんですから、そういうときになおかつ百三十万戸新しく建てようというなら、従来より一歩前進をしたものでなければならぬはずだと思います。それがためには都市計画法に基づく線引きの見直しを至急やることが大事だと考えます。いかがでしょうか、建設省の方いらっしゃってますか。
  63. 田村嘉朗

    説明員(田村嘉朗君) お答えいたします。  市街化区域、市街化調整区域の区分、いわゆる線引きにつきましては、実は一昨年の九月に線引きの見直しにつきまして都市局長の通達を出しまして方針を明示したところでございます。この通達の趣旨は、現在の住宅宅地の需給の逼迫ということを背景にして供給が促進されるようにということでございます。  その主な内容は、まず第一に、宅地の供給に結びつく計画的な市街地の整備が確実な区域につきましては積極的に市街化区域に編入をするということでございます。  それから二番目に、大都市地域等におきましては、大規模住宅地開発事業の実施等に当たりまして随時市街化区域に編入するということでございまして、これは都市計画は原則としておおむね五年ごとに見直しをするというのが運用のたてまえでございますが、いま申し上げましたような具体的なプロジェクトがある場合には、随時変更をして市街化区域に編入するということを打ち出しております。  それから三番目に、第一の点と逆でございますが、市街化区域といえども、当分の間営農が継続される等の計画的な市街化の見込みのない土地につきましては、いわゆる逆線引きと申しますか、積極的に調整区域の方に編入すると、こういうことを打ち出しておりまして、これらが主な内容でございますが、こういう方針に基づきまして現在各公共団体におきまして鋭意見直しを進めておるところでございます。
  64. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 最後の問題ですが、実質賃金が減ってしまう、これを何とかせなきゃならぬということは景気対策として大事なことだと思います。  そこで、この間鉄鋼関係賃金が六%上がりましたら、すぐ製品価格を五・五%上げるということを二、三日後に発表している。余りにも露骨なのに私はいささか驚いたんでありますが、もう少し企業努力を真剣にしてみて、そしてしかる後に値上げというんなら話はわかりますが、春闘で上げたらもう一週間たたないうちに上げる。これじゃ私はずうずうしいという一言に尽きるだろうと思うんです。もう少し経営者の良心と申しましょうか、賃金物価悪循環を断つような努力が切に望ましいんだろうと思います。  それからもう一つ、第二点は、台湾でやっております制度をちょっと申し上げます。  買い物をいたしますと必ず受取書をくれます。それにナンバリングがついておりまして、年に二回抽せんをいたします。したがって、皆受取書をもらいます。これがために税収もふまえましたし、同時に購買力を刺激いたしています。日本でもこの際景気対策一つとしてそういうことをおやりになってみてはどうか。ただ単に買え、買えと業者が宣伝してみてもなかなか購売力は出てきません。いま申し上げたように、受取書を出してナンバリングをつけておくと、これは富くじの作用もいたしますし、同時に好奇心を刺激する。私はこの際こういうことをやってみてはいかがかと思いますが、御意見いかがなものでしょうか。
  65. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) 最初に、鉄鋼値上げと、それから賃上げといったような関連の御質問ございましたので、これにつきましてお答えいたします。  鉄鋼値上げにつきましては新聞ではいろいろの情勢が伝えられておるようでございますが、最後的に値上げの申し出があったというふうには聞いておりません。ただ聞くところによりますと、新聞等の情報だけでございますけれども、鉄鉱石であるとか原料炭といったようなものの交渉が逐次決着を見つつあるようでございまして、その辺のコストをどういうふうにカバーするかというような問題かと思います。先生はそれに関連をいたしまして、せんだって決着を見ました春闘賃上げとの関係において安易さがあるのではないかという御指摘でございました。御指摘のとおり、賃上げが行われました場合に、その上昇率が労働生産性の上昇を上回りますならば、これは企業におきます賃金コストの増大をもたらします。ただ、この賃金コストの増大というのは、まさに先生が先ほどおっしゃいましたように、それが商品の価格にあらわれるかどうかということは需給という市場の場を通じてあらわれるわけでございまして、賃上げと物価というのを即短絡的に考えるわけにもこれはまいらない非常に複雑な要因があろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、賃金コスト等の増大を理由とした安易な製品値上げは行われるべきでないということはおっしゃるとおりでございまして、私どもといたしましても、そういう点は全く同感でございますし、生活関連物資等につきましては十分な監視あるいは調査といったものを続けなければいけないと思います。ただ、最初にお断りをいたしましたように、鉄鋼値上げというものは具体的な問題としてはまだ聞いておりませんので、答弁はその程度にさしていただきたいと思います。  次に、二番目に台湾の例を挙げてお話しになりました件につきましては、残念ながら私どもまだ承知いたしておりませんが、貴重な御意見として十分に拝聴さしていただきたいと思います。
  66. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 では後で資料を提供いたしますから、どうぞ十分研究してみてください。そして購買力が刺激されるような方途を新しく生み出されることを希望いたします。  どうもありがとうございました。
  67. 山田譲

    山田譲君 時間も余りありませんから、なるべく重複を避けたいと思いますが、いずれにしましても、現在国民が一番関心を持っております、景気が一体どうなるんだ、いつになったらよくなるんだろうというふうなちまたの声は至るところで聞かされるわけでありますから、そういう意味で、あるいは重複する部分もあるかと思いますけれども、御勘弁をいただきたいと思います。  最初にまずお伺いしたいんですが、これも先ほどお話出たと思いますが、五十六年度の経済成長率が結局どのくらいになるかという見通しを伺いたいというふうに思うわけです。これは経済研究団体の予測などを見ますと大体二・六%程度じゃないかというふうなことを言っておりますが、政府としても大体どの程度になるか、まず最初にそれをお伺いしたいと思います。それとその内訳ですね、内需外需に分けた内訳をお伺いしたいと思います。
  68. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) お答えを申し上げます。  五十六年度の経済成長率がどれくらいになるかという御質問でございますが、現在のところ第三・四半期の十−十二月期まで数字が出ておりまして、残りの五十七年一月から三月期がまだ集計ができてないところでございますが、私どもの計算によりますと三%を下回る数字が出るのではないか、このように考えてございます。
  69. 山田譲

    山田譲君 内需外需の内訳。
  70. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 最終的な数字がまだ出ておりませんので、これは六月に入りまして所得部で統計が出るわけでございますので、まだ私どもこの国会の場でどの程度になるということをはっきり申し上げることはできない点を御了承いただきたい、このように思います。
  71. 山田譲

    山田譲君 わからないなら仕方ありませんが、いずれにしましても当初予定したよりもかなり下回る、半分以下になりそうだということでございます。  それで、これからの問題になりますが、何といってもこの見通しということになりますと水かけ論みたいなことになってしまう。ですからそれを幾ら言ってもしようがないんですけれども、少なくとも最初の見通しと半分くらい狂っちゃったというふうなことは、やはりそれなりに一つの責任を持ってきちんとやっていただきたいというふうに思います。  それで、経済企画庁の月例報告というのが毎月出されておりますが、これを五十六年五月号から見ますと、景気についてこういう言い方をしております。「我が国経済をみると、物価が落ち着くなかで、景気の動きに改善のきざしが生じている。」これは五十六年五月の月例報告の文章です。それが今度五十六年九月になりますと、やはり景気については、「景気は総じてみれば緩やかに改善の方向に向かっている。」と、こういう言い方をしている。それに続いて十二月になりますと、「景気は総じてみれば回復過程にあるもののそのテンポは緩やかである。」というふうな言い方をしている。それから、今年に入りまして、一月十九日の同じところを見ますと、「景気は総じてみれば回復過程にあるものの、テンポは緩やかである。」いまのような言い方をしている。それから、二月の月例報告を見ますと、「景気は総じて見れば回復過程にあるものの、」こういう言い方をしている。そして、三月号を見ますと、「景気回復のテンポが依然緩やかである」というふうなことを言っている。四月を見ますと、「景気回復のテンポが依然緩やかである。」経済企画庁の人は、テンポが依然緩やかであるという言葉しか知らないんじゃないかと思うくらい、同じことを五月から毎月言っているわけです。ところが実際見ると、そんな状態じゃないわけですがね、それにもかかわらず、こういった月例報告でもって毎月同じような、要するに言わんとするところは、景気の動きは改善のテンポになっている、こういった同じ文章ですけれども、ほとんど同じようなことを言っておりますが、これは一体どういう根拠でこのような言い方をなさっているのか、はっきりお答えいただきたいと思います。
  72. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) ただいまの御指摘のとおり、月例経済報告は、昨年の春以降、景気は緩やかな改善の過程にあるというふうに書いているわけでございます。  第二次石油危機影響を見ますと、御存じのとおり、一昨年物価はおおむね峠を越しておりますし、国際収支の面で見ますと、昨年の春におおむね赤字から黒字の方に転化してまいったわけでございます。一方、デフレ効果を見ますと、いわゆる実質GNP実質所得で、石油価格が上昇いたしますと、実質所得が海外に移転するわけでございますが、そういった意味でのデフレ効果というのを見ますと、おおむね昨年の春に終わっているというふうに判断できるわけでございます。したがいまして、景気を何でとられるかという問題がございますが、実質GNPなりあるいは生産とか雇用あるいは企業収益といったような総体的な活動という面で見ますと、昨年の春におおむね底を打ったのではないかというふうに見ているわけでございます。  まず生産の動きで見ますと、昨年の四−六月期に、前期比ではマイナスではございますが、前年同月比で〇・八%のプラスでございますし、七−九月期四・五%、十−十二月期五・七%の増加でございます。  一方、実質GNPで見ますと、四−六月期、前期比一・二%のプラスでございますが、七−九月期〇・七%、十−十二月期はマイナス〇・九%ということでございます。若干動きが区々でございますけれども、そういった動きにございますし、さらに、企業収益の面で見ますと、これは日本銀行の短期経済観測でございますが、五十六年度下期に、石油を除きますと六・二%の増加の後——五十六年度上期マイナス一一・五%、石油を除きますと八・四%の後、五十六年度の下期は四五・六%のプラス、石油を除きますと六・二%のプラスということでございまして、総じて見ますと緩やかに回復しているんではないかと判断しているわけでございます。  ただ、先ほど来御議論がございましたように、昨年末以降輸出増勢がかなり鈍化いたしまして、加えて輸入が増加するといったところから実質GNPマイナスになっているわけでございますし、そのことが生産あるいは雇用等々にも影響を与えているということで、景気には若干足踏み的な状況が見られるのではないかと判断しているわけでございます。
  73. 山田譲

    山田譲君 これは常識的に言って、総生産は減っていくし、それから財政的に粗税収入も減ってマイナスになっていくと。それから投資だって減っている。貿易だって輸出も、輸入だってこれは減っているわけですよね。それから、企業の倒産件数から言ったってずっとひどい状態になってきている。こういう状態を見て、これは景気が緩やかに回復に向かっているとか、テンポが何だとかいう、そんなものじゃないと思うんですけれどもね。でもしかし、これは書き方の問題ですから、そう書いたってしょうがないと言えばそれまでだけれども、もう少し常識的に書いていただきたいというふうに思うんですよね。われわれが考えている景気と企画庁が考えている景気との定義が大分違うみたいですけれども、もう少し常識的な線でひとつやっていただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、昨年の暮れから輸出が非常に下がっている、それから輸入も決して伸びちゃいない、こういうふうになっておりますけれども、この原因はどこにあるというふうに考えておられるか。
  74. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 輸出伸びない大きな要因といたしましては、何と申しましても欧米の景気がなお非常に停滞を脱していないということでございまして、そのことが非産油LDC諸国の景気にも影響を与えているということかと思われます。加えまして、何分にも石油の需給が小康状態でございますし、石油価格が落ちついているというところからOPECの黒字が非常に減少している、購買力が落ちているという状態があろうかと思います。総じて申しますと、世界経済がなお停滞を脱していないという影響が大きく出ているという点があろうかと思いますが、同時に、何と申しましてもこのところ貿易摩擦がございまして、自動車等につきましては輸出についての抑制が行われている影響が一部あろうかと思いますし、さらに最近の一時的要因でございますけれども、家電製品を中心にいたしまして現地在庫が若干ふえてございまして、その調整に時間がかかっているという点があろうかと思いますが、そうしたことが輸出増勢の鈍化の大きな要因になっているかと思われます。  一方、輸入でございますけれども、輸入は生産が緩やかではございますが回復しているということを一つには反映しているかと思われますが、昨年の秋以降、在庫調整も進みまして、石油ないし木材が、これも大変水面下ではございますが緩やかに増加しておりますし、ここのところ化学製品あるいは非貨幣用金がふえているというのが輸入増加の大きな背景をなしているのではないかというふうに判断しております。
  75. 山田譲

    山田譲君 そこで、こういうような状況の中で政府が五十七年度の五・二%という成長率を見込んだわけであります。これは先ほど来のお話にありましたけれども、果たしてこれが大丈夫かというふうな素朴な疑問をわれわれも持たざるを得ないのでありますけれども、たとえば日本経済研究センターというところの見通しとしては三・五%というふうなことを言っておりますね。しかも、それは二兆円強の景気対策を見込む、つまり二兆円強の公共事業の追加を考えている、それから五十八年度一兆円の減税見込み、こういうふうなことを勘案した上で三・五%になるであろうと、こういう言い方をしております。富士銀行あたりは三・三%。それから、国民経済研究協会あたりを見ますと、これ三・四%と言っておりますが、これも一兆五千億の公共事業を追加して、そうしてこれだけのパーセンテージの成長になるであろう、こういう言い方をしているわけです。それに対して、政府は、そういう追加なんということを一応考えていない前提のもとに五・二%という数字成長率を見込まれたわけでありますけれども、ひとつまずこれは河本長官の自信のほどをお伺いしたいと思うわけです。
  76. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年の秋、五十七年度の経済見通しを作成します場合に、事務的に検討させました際、現状のままずっと推移すれば大体三・八%成長であろうと、こういう考え方をまとめて持ってまいりました。その場合に、日本経済はどうなるかということもいろいろ作業してもらいましたが、失業者が相当ふえる、それから税収は激減をする、それから貿易摩擦は拡大をする、そういうことになりますという答えも同時に持ってきたのでありますが、そうなりますと日本の抱えております問題は解決しないばかりか、ますます困難を来すということになりますので、その後、可能な限りの追加政策をやった場合はどうかと、こういうことについて作業をしてもらいましたところが、ある程度の追加政策を機動的に必要に応じてやるという場合には、これは五・二%成長は必要であると、こういうことでございました。そこで政府の方といたしましては、雇用の問題、税収の問題、それから貿易摩擦の問題を解決するためにも、この見当成長が必要であると、そういう判断をいたしまして、必要な場合には追加政策をとると、先ほども情勢の変化に応じて機敏で適切な経済運営をしていきますということが前提条件であるということを申し上げましたが、そういうことをすることによって五・二%成長を達成をしたい、こう思っておるところでございますし、またそれだけの潜在的な力というものは、私は日本経済は持っておると、このように考えております。
  77. 山田譲

    山田譲君 そうしますと、いまの長官お話からうかがわれるのは、今後追加の公共事業というふうなものもあり得るということなんでしょうか、その状況を見てですね。
  78. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 今回、政府の方で公共事業、それから住宅のうち公的資金が入るもの、それから災害復旧、こういうものを上半期最大限集中しようということを決めました。そのことによって上半期は大体財政規模が数兆円ふくらむであろう、こう思っております。その分だけ景気刺激になるわけであります。幸いにこれが誘い水になりまして、後半民間経済の力が出てくれば、それはそれでいいわけですが、もし後半力が出てこないと、世界経済状態もよくならない、こういう場合には、そのときはほうっておくわけにはまいりません。ほうっておけば経済はがた落ちになってしまいますから、そのときには当然必要な追加政策が考えられなければならぬと、こう思っております。建設省などは、それならばその時点における追加政策を具体的に早く決めなさいと、こういうことを言われるわけでありますが、いまの段階でどこまでそれを具体的に決めたらいいのか、あるいはもう少し様子を見た方がいいのか、こういうことにつきまして政府部内で検討しておるところでございます。
  79. 山田譲

    山田譲君 長官は、衆議院の九日の大蔵委員会で、政府が何の政策努力もしないと五十七年度の経済成長率実質三・八%にとどまり、政府経済見通しを一・四%下回るというふうな見通しを明らかにしたということになっておりますが、まさか政府が何もしないということは考えられないんで、あらゆる努力をしてという話だとは思うんですが、そうするといまおっしゃったように、これからの努力いかんだということになると、その努力というのは一体内容は、これから考えるという話ですけれども、大体どんなことがその努力の中身になると思っていらっしゃるかどうか。それをちょっとお伺いしたいと思うんです。
  80. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) もし計画どおり経済回復しないという場合に考えられますことは、やはり公共事業量の追加だと、こう思います。先ほど自由民主党の代表の方が私のところへ決議文を持ってこられたのでございますが、これを見ますと、公共事業を下半期三兆円追加すべしと、こういう決議であります。自由民主党政務調査公共事業執行に関する調査特別委員会、こういう署名がございますが、三兆円の公共事業の追加をすべしと、こういう決議を先ほど持ってこられましたが、こういう意見はいろいろあるわけです。三兆円追加すべしとか、五兆円追加すべしとかいろいろあるんですけれども、しかしもう少し様子を見ませんと政府としては何とも判断できませんので、ただいまのところはもう少し経済の動きを見た上で、適当な時期にどうすべきかということについて判断をしたいと、このように考えております。
  81. 山田譲

    山田譲君 いまの決議文なるもの、私は別な話ですけれども、一生懸命委員会審議をやっている最中に、自民党が決議文を長官のところに突きつけるというようなやり方は非常にけしからぬ話だと私は思います。絶対今後そういうことのないように、委員長に特にお願いをしておきたいと思います。  それからその次に、いま公共事業の前倒しというふうな話で、七七%前倒しをするというふうなお話がありましたけれども、考えてみますと、これは五十六年も同じようなことをやっているわけですね。五十六年も前倒しを私の手元の資料によりますと七一・五%、約七二%はすでに前倒しで五十六年度もやられているんです。そしてただ問題は、契約額がそうなったからといって、そのお金が実際に出なきゃこれは意味がない。そして支払いの方を見ますと、支払いはずっとおくれて十月から十二月に入って半分以上が出てきているというような状態ですから、たとえ前倒しをやったところで現実に金そのものが世の中に出てくるのはずっとおくれてしまうんじゃないか。そうすると、果たしてこういった去年も同じようなことをやっていて、それが効果があったかなかったかということになりますと、非常に疑わしいというふうに考えざるを得ないんですけれども、その点どういうもんでしょうかということと、住宅建設につきましても予算委員会の中では建設大臣がかなり自信を持ってこの住宅金融公庫に対する倍率が非常に高いんだから、ことしは家がたくさん建つでありましょうというふうなことを言っておりますけれどもね。それはやっぱり私ども見る限りそういうことでふえているんじゃなくて、金利が今度段階的になりますから、上がると困るというふうなことで、いわば駆け込み的に希望が出てきているんじゃないか、そういうふうなことを思うわけでして、申し込み数が多いから直ちに住宅の建設が去年よりずっとふえるであろうというふうな、去年も同じように建築基準法が変わるということになったら途端に申し込みが多くなったということもあるわけでして、ですからそういうことも勘案しますと、そういうことをもって住宅建設が促進されるだろうというふうに即断するわけにはいかないんじゃないかというふうに思うのですが、この辺のところについて長官のお考えを伺いたいと思います。
  82. 高杉廸忠

    委員長高杉廸忠君) ちょっと待ってください。  委員長に要請がありました件は、理事会で厳重に注意をいたしたいと思います。
  83. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 住宅建設の問題でありますけれども、これは五十六年度と五十七年度の内容は相当私は違っておると思うのです。民間見通しなんか見ますと、五十七年度の住宅政策として政府が決めておりますことはどうも余り評価されていないんじゃないか、こういう感じがいたします。住宅金融、それから中古住宅に対する取り扱い、それから土地政策、これは相当思い切った内容になっております。私どもはこういう幾つかの積極的な対策背景としまして、五十六年度は百十四万戸に落ち込んでおりますけれども、百三十万戸見当回復するということは決して不可能なことではない。御案内のように、二年前までは百五十万戸の水準が四年間続いたわけでありまして、いまは特殊な事情によって急激に落ち込んでいるわけでございますから、ある程度のことをやりますと一挙に百五十万戸までは回復しませんけれども、百三十万戸見当のところまでは回復する力があるのではないかと、こう思っております。
  84. 山田譲

    山田譲君 前倒しの問題はどうですか。
  85. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 前倒しは普通の年ですと六五%ぐらいなんです。特に執行をおくらせるという場合には六〇%以下にした例もございます。昨年は七〇・五%ということを目標にしまして促進型のタイプで公共事業執行したわけでございます。この場合に、支払いがおくれましても業界に仕事が流れまして、そして仕事がある程度執行されるという場合には、支払いそのものは仮に二、三カ月おくれましても金融機関というものがございますから、それは金融機関からも金が流れていきますから、仕事が現に進めばその分だけはやはり景気回復に何がしかのプラスにはなるであろう、このように判断をしております。
  86. 山田譲

    山田譲君 いま数字の話で恐縮ですけれども、私の資料によると五十六年度は七一・五%。いま長官は七〇・五とおっしゃいましたけれども、これ私の方が間違っておるんでしょうか。
  87. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 五十六年度は上期七〇・五%でございます。
  88. 山田譲

    山田譲君 四月から六月までに四〇・四%、七月から九月までが三一・一%で、計が七一・五ということになっているんだけれども、これ違いますか、そうするとどっちか。
  89. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 私の手元にある数字によりますと、五十六年度の上期契約実績は七〇・五%、金額で申し上げますと十兆七百五十億円と、こうなってございますが、先生のところの数字、後ほどその数字をいただいて検討さしていただきたいと、このように思います。
  90. 山田譲

    山田譲君 ちょっと数字の点を後でまた調べて、私の方が間違っていたら訂正いたします。  それじゃ次に進みたいと思いますが、長官はいつも可処分所得をふやすということを言っていらっしゃいます。全くそのとおりだと思うんですが、伺いたいのは、それじゃ可処分所得をふやすために一体どういうことを考えておられるかと、こういうことなんです。常識的にはまず賃上げをすればいい、あるいは減税をすればいいというふうなことが考えられるわけでありますけれども、ところが賃上げにつきましてはどうも政府のやっていることは一つの低賃金政策を実施しようというふうにしか考えられない。それは、長官はいつも、民間の労使はこれは話し合いで決めるべきものであって、政府が介入する必要はないんだと、こういうふうにおっしゃいますけれども、わずか三〇%そこそこの組織率ですから、そういう話し合いで実際決まるというところは三割そこそこしかないわけで、あとの人たちはみんな未組織労働者です。そういう人はやはり話し合いで賃金なんか決められない。そうしますとどこを基準にするかというと、やはり公務員の賃金というものを非常によく見ているわけでして、公務員があれだけ上げたんだからうちの方はこれだけだと、こういう基準に絶えずなっているわけですね、現実は。それからまたさらに、いわゆる公益法人というふうなそういう団体ですね、営利を目的としないような団体、そういうところにおいてもやはり公務員の賃金に大体右へならうというふうなところが非常に多いわけです。したがって、三百万以上いると言われている公務員の賃金というものは非常に大きな日本国全体の労働者に対する賃金一つ水準になっている、モデルになっているということを考えるときに、公務員の賃金を抑えつけようというやり方は、これはそういう意図がないとは言われても結果的には低賃金政策であると、こういうふうに言わざるを得ないんです。減税につきましてはいろいろ話もあるようですが、いずれにしてもことしはだめですと、こういうかたくなな態度しかないと。そうしますと、果たして長官言っていらっしゃるような可処分所得を一体どういうふうにしてふやすんだということがどうもわからなくなってくるわけですけれども、その辺は一体どういうふうに考えていらっしゃるか、そこをお伺いしたいと思います。
  91. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 可処分所得の問題を考えます場合に、理論的に申し上げますと、一つ所得そのものがふえないとこれはどうにもなりません。それからもう一つ物価の安定が必要だと、こう思います。それから公的負担が重くなったのではこれは手元に残りませんから、やはり公的負担がある程度軽くなるということが前提条件だと思います。具体的になりますと幾つかの問題がございますけれども基本的に、理論的に申し上げますと以上の三点が当面の課題だと、このように考えております。
  92. 山田譲

    山田譲君 それでは賃金の問題はどうですか。
  93. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 賃金の問題につきましては、これはもう政府の方からもたびたび見解を表明しておりますように、労使間で話し合って決めていただく、これが基本である、政府の方からはそれに対して意見は言わないと、こういう考え方で終始しておるわけでありますが、ただ、政府がそれじゃその場合に何にもしないかといいますと、政府の方としてやっぱりやるべきことがあると思うんですけれども、それはやはり生産性が上がるようなそういう産業政策政府はとっていかなければならぬと思います。それから同時に、構造不況業種とかあるいは中小企業の経営がよくないとか、あるいは地域的に経済状態が非常に悪いとか、そういう背景がありますとこれは賃金交渉が円滑に進みませんから、やはりそういう格差をなくするような政策、そういう政策も当然とっていかなければならぬと思います。だから労使交渉が円滑に進むようなそういう背景づくりは政府の方としてはやらなければならぬ責任はありますけれども、しかし賃金交渉そのものは労使の間で決めていただくと、こういう考え方でございます。
  94. 山田譲

    山田譲君 それは民間の労使、とりわけ組織労働者についてはそれは言えると思うけれども、未組織の労働者、その立場でいま長官ちょっとおっしゃったけれども、そういう条件をつくってやるということと、もう一つ一番大事なのは、先ほど来言っておりますように、公務員あるいは公労協といいますか、そういう三公社五現業といったようなところの賃金については、これは明らかに臨調の答申も言っておりますけれども、極力抑えろということを言っておりますし、その線で実際政府もそうやっておられる。そういうことの一つ問題点でこれじゃ可処分所得がふえるわけはないと。いろいろな要素がほかにもあるにしても非常に大きな要素であるところの賃金についてこれを抑制するというふうなことをやったら、これはますますもって可処分所得は減る一方じゃないかというふうに思わざるを得ないのですけれども、その点についてもう一遍お答えいただきたいと思います。
  95. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本の産業構造を見ますと中小企業が非常に大きなウエートを占めておりますし、そこには労働組合もないところが非常に多いわけであります。したがいまして、中小企業の経営全体がよくなるようなそういうやはり政策政府の方としては努力しませんと、支払い能力がない場合には賃金が払えませんからどうしても所得伸びない、こういうことになりますから、そういう意味から中小企業政策は非常に大事だと私どもは考えております。  それから三公社五現業は、御案内のように仲裁裁定が出ますので、それを政府がどのように判断をするか、あるいは議会の方でどのように判断をしていただくか、こういう手続がございますし、それから公務員につきましては人事院勧告が出ますので、これを政府は尊重するというたてまえでずっとやってまいりました。で、この人事院勧告その他につきましては臨調としては意見もあるんだと思います。あるんだと思いますけれども賃金決定のたてまえ等も、仕組み等もございますから、その仕組みを完全に無視することはできないということで昨年は御案内のように仲裁裁定の取り扱いと人事院勧告の取り扱いが与野党の間の相談で決められたと、こういうことでございます。
  96. 山田譲

    山田譲君 長官のようなお考えの方ばかりだといいんですけれども、裁定についても新聞で毎日裁定どおりやるのはけしからぬというふうなことをほかの大臣が言って、初村労働大臣は一生懸命一人で孤軍奮闘をしているというふうな話も伝わっておりますし、公務員賃金についても人事院勧告制度を見直せというふうな、言いかえれば結局公務員の賃金政府の思うままに抑えることができるというふうな仕組みにしたいというふうな気持ちが政府の中にも相当根強くあるように思われてなりません。そうしますと、可処分所得の話になりますが、やはりこれをふやすという長官のお考えが実現できなくなるわけでありますから、ひとつそこら辺のところは十分考えていただきたいというふうに思います。  それから次に、長官はことしの暮れあたりには世界経済が上向きになっていくんじゃないかと、こういうふうなことをときどきおっしゃいます。そうなりますとおのずから日本経済もよくなるであろう、そういうふうなことをおっしゃる。全然影響ないと私思いませんけれども、それじゃ世界経済がよくなれば日本経済も自動的によくなっていくんだと、努力なしにしても、黙っていてもよくなっていくというふうに考えていらっしゃるのかどうか。つまり世界経済が上向いたところでいわゆる日本貿易摩擦というふうな問題も直ちに解決できる問題であるかどうかということを伺いたいと思うんです。  最初にまず、世界経済が上向くであろうと言われているその根拠、あるいはOECDあたりの予測をもとにしてらっしゃるかもしれませんけれども、これもやはり日本経済見通しと同じようなことで余りよく当たらないということになりますと、その他どういう根拠でことし暮れあたりからよくなるだろうというふうなことをおっしゃられるのか、そこを伺いたいと思います。
  97. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 世界経済の問題につきましては、各国の政府、それから権威ある国際機関、こういうところでの見通しはいずれも後半秋以降、経済回復方向に行くだろうと、こういう見通しが発表されています。そういう見通しはあってもそれはそういうことにはならぬと、こう判断をされればそれはそれまででございまして、これ議論の余地はないわけでございますが、やはりその背景には私は第二次石油危機の厳しい影響がある程度調整されつつある、こういう考え方があるのではないかと、こう思うんです。たとえば一つ物価の問題でございますが、世界各国が一時非常に激しいインフレに襲われておりましたけれどもアメリカ物価も七%台に最近はおさまってまいりましたし一この分では近く六%台になろうかと、こう思います。ヨーロッパも各国ともそれぞれ二、三%づつぐらいは下方に向かっておりまして、ようやく峠を越したと、調整がほぼ終わりつつあると、こういう感じもいたします。  それから石油価格も下がってまいりましたし、何といたしましてもことしで第二次石油危機が起こりましてから三年経過をいたしますので、まあまあ調整の時期が来つつあるのではないだろうかと、こういう感じがするわけであります。  それからまた世界各国ともいまのような状態ではとにかく困ると、どうしてもいまのような状態を一刻も早く抜け出したいということで、来月以降開かれます一連の国際会議におきましても、世界経済の再活生化ということが最大の課題になるわけであります。景気回復するのには一体どうしたらいいか、世界各国が協力をしなけりゃならない、こういうことが最大の課題になって国際会議が運営されると、こういうことでもございますので、多少は見通しのことでありますから狂うかと思うんです。たとえばOECDの昨年の十二月の見通しなどは、この六月には若干修正されまして、回復の幅がややおくれると、こういうことになるように伝えられております。そういうこともございまして、見通しのことでございますから多少の狂いはあろうかと思いますが、大勢としては私は後半から来年にかけて世界経済は立ち直る方向に行くのではなかろうかと、このように判断をいたしております。
  98. 山田譲

    山田譲君 次は財政再建といいますか、行政改革の問題に関連をして御質問を申し上げたいわけですが、財政を非常に切り詰めていくと、ことしはゼロシーリングというふうなことで、防衛費の問題は一応別に置きますが、ゼロシーリングというようなことでかなり切り詰めたわけです。そしてどっちかというと二宮金次郎みたいにとにかく節約しろ倹約しろとこういうふうな言い方で、しかも最近は五十八年はマイナスシーリングにするんだというふうな意見さえ出されております。もちろんむだを省くということは当然な話でありますけれども、それと同時にやはり一方では国民の生活を向上さしていくという、そういう積極的な政策が打ち立てられなきゃいけないんじゃないかと思うんです。だから全部一律にべたにとにかく削減するんだ、削減するんだというふうなことをやって、ただ財政規模を縮小して、そして再建がいわばできりゃいいんだと、こういうふうな考え方で果たしてそんなものが政治と言えるかどうか、これは財政には違いないかもしれませんけれども、本当の財政というものはそんなものじゃないはずだ。当然国民生活を向上させるということが政治の一番の眼目でなけりゃいけないはずですけれども、どうも財政再建のためにそういった面を犠牲にしようとしている。そしてじゃいつまで犠牲になりゃいいんだと、財政再建がたとえば政府の言うとおりに五十九年度に公債の発行がゼロになる、特例公債がゼロになる。途端にそれじゃ国民生活が楽になるのかどうかということを考えますときに、五十九年以降だってそんな簡単に私は生活が楽になるとか、可処分所得がふえるというふうに思われないわけです。ですから財政再建といいますか、いまやっておる行政改革なるものがどうもそういう面で本当の国民生活、国民生活の向上というふうな一番大事なところを忘れているんじゃないかという気がしてなりませんけれども、その辺は河本長官、どうお考えでしょうか。
  99. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 五十七年度の予算の特徴は、御案内のように基本はゼロシーリングでありますけれども、四つの例外を設けまして防衛費と経済協力とエネルギーと科学技術と、これは国の安全保障と国力の発展の一番大きな課題でございますから、これは例外を設けましょうと、こういうことで予算編成がされたことは御案内のとおりでございます。五十八年の予算編成は実はまだ何も決まっておりませんで、マイナスシーリングなどという報道がございますけれども、これは単なる報道でございまして、政府部内で一回も議論したことはございません。これからのことでございますのでどのようになりますか、それはもう少し様子を見なければわからぬと思います。しかし、いずれにいたしましても、政治の目標というのは国民生活の充実向上にあるという御指摘がございましたが、その点は政府の方でもそのように考えておりますから、やはり国民生活の充実向上ということをこれからの政治の一番の中心に考えていかなければならぬと、こう思っております。
  100. 山田譲

    山田譲君 財政を切り詰めてそれで財政再建しようということ、それはそれなりに意味があるとは思いますけれども、だんだんだんだん財政規模を縮小していって、と同時にそれは経済そのものが発展が縮小していってしまう。そうすると国民生活の水準がむしろ低下するというふうな形になってしまうと思うんです。どうも現在の財政再建というかけ声を聞いていると何か肝心の国民生活の充実という点が忘れ去られて、財政一本やりでやっていこうとしている。こういう財政再建はやはり問題があるんじゃないかと思わざるを得ないのです。ですから先ほど申し上げました繰り返しになりますけれども、やはりむだなところは省くのは当然な話であるけれども、それと同時にやはり少しでも毎年毎年国民生活を向上さしていくというふうな積極策がその中に含まれていかなければならない。全体として財政の規模がむだのない充実したものになっていくということはこれは当然そうしなければならない話だとは思うんですけれども、そこについてもう一遍ひとつ御意見を聞かしていただきたいと思うんです。
  101. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 財政再建というのは何ぞやと言いますと、これはことしは赤字国債が四兆円発行されておりますが、この四兆円という赤字国債を五十九年度にはゼロにしようというのが財政再建の目標でございます。ことしの日本経済規模は二百八十兆、来年は三百兆を超えると思いますし、それから五十九年には三百二、三十兆の経済規模になろうかと思いますが、そういう中におきまして四兆の赤字国債を減すということはこれは必ずしも不可能ではない、政府はそういう方向でこれを実現しますと、こう言っているわけですね。ですからこの見当のことをやりながら一方で国民生活の充実向上を図っていくというこれを両立させるということは決して不可能ではないと、このように思います。
  102. 山田譲

    山田譲君 もう時間になりましたから、最後にこれは長官のお考えをちょっと聞いておきたいのですけれども、よくアメリカのいま失業者一千万人弱いるわけですが、それがよく日本で、日本といいますか、報道機関なんかの話によると日本は失業を輸出しているというふうなことを言われる。ですから、長官にお伺いしたいのは、アメリカの一千万人弱の失業というのは日本輸出のせいなのかどうかということについて長官のお考えをお聞きした上で私はやめたいと思います。
  103. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は、アメリカの失業者が一千万近くなったということは日本輸出のせいではないと、こう思います。これはアメリカ経済政策のせいであって、日本のせいにこれをされますと、これは大変迷惑だと、こう思います。
  104. 原田立

    ○原田立君 澄田総裁御苦労さまであります。本当は日銀総裁前川さんにおいでいただく予定だったんですが、何か会議があるそうですから。期せずして、きょう河本長官澄田総裁においでいただいたわけでありますけれども、五十六年の五月六日、当委員会におきまして私が景気の動向についてどうかということをお伺いしたところ、河本長官はいわゆる景気の底離れ宣言なさって、それで大変明るいニュースだということで各紙が非常に大きく報道し、その後それを非常に期待したわけです。そのときに澄田総裁もおいでになって、今後の回復は緩慢なものであるが景気は底入れしたというふうな意味の御発言がありました。  ところが、先ほど山田委員がずっと指摘しているようなふうに、言葉はちっとも変わらないけれども実態は少しもよくなっていない、むしろ停滞ぎみになっていると、非常にそれを憂慮しているわけでありますが、現在の動向について、その原因、認識、長官はどういうふうに御認識ですか。    〔委員長退席、理事広田幸一君着席〕
  105. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年の六月ごろが私は日本経済の大底であったと思うんです。一昨年の夏ごろから急速に日本経済状態が悪くなりまして、政府の方でも一昨年の九月と昨年の三月に二回にわたりまして若干の景気対策を進めました。そういうこともございまして、大体五、六月ごろに私は大底を抜け出したのではないかと、こう判断をします。それ以降の経済の幾つかの指標を先ほど来局長説明しておりますが、その指標をごらんになりましても、経済そのものは非常に緩慢でありますけれども、昨年の秋ごろまでは私は回復に向かっておったと、こう思うんです。ただ、昨年の秋以降、世界全体の不況のために輸出貿易停滞をいたしまして、そのために、外需による大幅な落ち込みのために、わが国マイナス成長に一時的になっておりますけれども内需の方は若干回復に向かっておるわけでございますので、やはり経済は緩慢ながら回復方向に向かっておると、ただし、その力が非常に弱いので、各方面で跛行性があらわれておると、この判断は私は間違っていないのではないかと、こう思います。そういうこともございまして、五十六年、これは暦年のことでありますが、一年間の成長は二・九%でありますし、会計年度、この三月までの年度はまだ定かにはわかりませんけれども、大体三%弱の経済成長になるであろうと、こう思っております。  世界経済全体がマイナス成長またはゼロ成長と、こういう中におきまして、日本が三%弱とはいえその見当成長を続けておるということは、これはやはり緩慢な成長があればこそでございまして、経済企画庁の見通しは、御判断一つにもよりましょうけれども、そんなに間違っておったと、このようには私どもは考えておりません。
  106. 原田立

    ○原田立君 たくさん間違ったというのじゃなくて、そんなに間違ってないとしても、実際いきませんよ、そんなこと言ったって。政治の世界ですから、少しの問題でも国民の方は敏感に感受するわけなんですから、受け取るわけなんですから、その点そういうふうなことを仰せにならないように希望する次第であります。  四月二日の新聞——いまもお話があったけれども政府が何か試算したところによりますと、改定目標四・二%、これに対して昨年度の実質成長率は三%台を割り込み、二・七%という低い水準にまで落ち込むおそれがあると、こういうふうな指摘があるんですけれども、いま長官は二・九%というふうに仰せになったけれども、そこら辺は若干修正されて伸びたということですか。
  107. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 先ほど大臣がお答えいたしましたのは五十六年一月から十二月の実績でございまして、これは実績として数字が出ております。それが二・九%と、このように申されたのでございます。  それから、もう一点の御指摘ありました新聞報道の数字は、私ども経済企画庁の見通し担当課におきましては、先ほどもこの委員会答弁を申し上げましたように、正式に数字をまだ確定しておりませんので、二・七%という数字は、私ども政府の担当している者としてはあずかり知らない数字でございます。
  108. 原田立

    ○原田立君 それでは、大体最終的には何%ぐらいになるというふうに試算なされておりますか。
  109. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 五十六年四月から十二月までの四半期別の数字がすでに出ておりまして、残りの五十七年一−三月期がどれぐらいになれば全体として何%になるという積算はできるわけでございます。  過去の例から見まして、仮に二・〇%五十七年一−三月期が伸びた場合に、年度全体の数字として実質二・九%という数字が計算できます。私どもは五十七年一−三月期の成長率が前期比二・〇%というのはかなり高い数字ではないかというように考えられますので、こういった点から判断をいたしまして、先ほど大臣からも答弁がありましたように、三%を若干割る数字になるのではないかと、このように予測している次第でございます。
  110. 原田立

    ○原田立君 長官、だから三%を割って約二・七%ぐらいじゃないかというふうに言われているんですが、計算しなければはっきりしないという返事が来るんだろうと思うけれども、そんなことじゃなくて、大体どのぐらいになりそうですか。
  111. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年の四月から十二月までは正確な数字が出ております。一月−三月の数字は実際にまだわからないんです。どうしても六月の中旬になりませんと見当はつかないんですけれども、しかし仮に一−三月が二%成長になった場合にどうなるかとか、あるいは一%成長になった場合にはどうなるかとか、それから昨年の一−三月は〇・七%成長でありますから、そうなった場合はどうなるかとか、そういう試算はこれは簡単にできますけれども実質五十六年度としての成長率はもうしばらく待っていただきませんとはっきりしたことは申し上げる段階ではございませんが、ただ三%に達するということは、先ほど来申し上げておりますように、なかなかこれはむずかしい厳しい状態になっておると、こういうことでございます。
  112. 原田立

    ○原田立君 そうすると、目標よりも下回ると、下回るであろうと、こういう考えですね。
  113. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年の秋修正いたしました成長目標は四・一%成長でありますから、三%成長の達成も大変むずかしいという状態でありますから、政府目標は達成することはまず不可能だとこう思っております。
  114. 原田立

    ○原田立君 簡単にそういうふうに言葉がくるくる変わられたんじゃ困るんです。やっぱり去年年末四・二%に改定し、またそれが実際にできない。もちろん景気がもう前進がなかったんだからあなた一人の責任だとは私は言わぬけれども、だけれどもやっぱりその局に当たっておられる長官見通し等は重大な問題だと思うんです。だからせっかく頼りにしているところなんですから、余り目標が変わらないように、大いに目標が達成できるようにせっかく御努力願いたいと思うんです。  五十七年度の景気の動向について、長官は前半と後半と分けて何か考えておられるようでありますけれども見通しは一体どうなのか、景気対策の具体策についてもあわせてお伺いしたい。
  115. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 五十七年度につきましては三月の中旬に政府部内で景気対策の進め方を、経済運営の進め方を決めたのでございますが、それは一つ金融政策を引き続いて機動的に運営をするということと、それから中央、地方の公共事業、それから公的住宅、災害復旧、これを上半期に集中的に最大限執行していこう、こういうことを決めております。その結果、経済が後半軌道に乗ればそれでいいわけでございますが、もし万一軌道になお乗らないという場合にはその際には必要な対応策を立てていかなければならぬと、そこまでは政府部内で合意をいたしております。
  116. 原田立

    ○原田立君 澄田日銀副総裁にお伺いいたすんですが、十三日から行われた支店長会議の席上、各支店長からの報告では、景気停滞感が強まりつつある中で景気上昇へのきっかけがなかなかつかめないというような御意見であったように聞いております。総裁も記者会見の中で景気停滞感に強い警戒の念を持っているとの御発言であったわけでありますけれども、その原因についてどのような御見解をお持ちですか。
  117. 澄田智

    参考人澄田智君) 先般行いました支店長会議における各地の支店長の報告は、大企業設備投資等は総じて堅調でございますし、業種によって多少差はございますが、一般的に言って在庫調整もおおむね一巡していると、こういう面からその圧迫というものは少なくなってきているが、一方個人消費住宅投資あるいは中小企業設備投資等が依然として一進一退状態である、さらに昨年の秋以来輸出伸びが鈍ってきておりましてこれが景気全体としての生産活動等の足を引っ張っている、こういうような感じで、達観して全体として見まして停滞ないし足踏み状態が、そういう様相が感ぜられるというような報告が多かったわけであります。しかし、経営者等の経営マインド、これは総じて引き続いて落ちついているというような報告もございました。いままでの減量努力の効果が出てきておりますし、また原材料価格等が海外を含めて落ちついておりますし、企業収益の底がたさが失われていない、金融の緩和も続いている、こういうようなことが、今後企業マインドの底がたさがこういうことで維持されている限りにおきましては、景気回復の基盤は損われていないというふうに考えられるわけであります。こういうところで、きわめて緩慢な回復の基盤というようなそういう状態が続いている、こういうふうに感じられるわけであります。  原因というお尋ねでございますが、いま申し上げましたように景気回復する基盤はあるわけでございますし、他方今後これがどういうふうに回復をしていくかということはなお今後の推移を見なければならない、そういう意味で景気動向については十分注視していく必要がある、かように考えておるわけでございます。
  118. 原田立

    ○原田立君 その記者会見の中で、大企業の話はいまお話しのとおりでありますが、個人消費住宅建設は目立った回復を期待できないが云々と、こういうふうな仰せがあるわけでありますが、やっぱり個人消費拡大とかあるいは住宅建設等も公共事業を前倒しして一生懸命景気回復を図ろうと、こうしているのに、日銀総裁個人消費住宅建設は目立った回復を期待できないと、こう仰せになるとちょっとショックなんですよね。これは今年度一年を見通しして仰せなのか、一体その根拠はどこなんでしょう。
  119. 澄田智

    参考人澄田智君) ただいま御指摘個人消費住宅投資でございますが、現在までのところ一進一退というような状態で、その回復ははかばかしくない、こういうことを総裁が記者会見のときに支店長会議の報告を取りまとめたものとして話をしたと、こういうふうに了解をいたしております。今後のことというよりは現在の時点における大勢であるというようにお考えいただきたいと思います。  消費者物価は御承知のように安定を続けておりますし、そういうために物価の上昇による所得の目減りというようなそういう心配もございませんし、個人の可処分所得自体は伸び率は緩やかでございますが、今後ある程度の伸びは期待できるわけであります。ただ、いまのところ企業生産活動が抑制ぎみでございますので所定外の労働時間等が圧縮されておりますし、そういうことで伸び率は緩やかな状態であるわけであります。昨年の十−十二月の数字等見ましても若干回復の兆しと申しますか、そういうものはうかがわれると思います。  それから住宅建設の伸び悩みでございますが、これはもちろん地価の問題とかいろいろあるわけでございますけれども、この点につきましても、建設資材の価格が落ちついている、そういうようなこともあって住宅着工にも若干の動意が見られないでもない。それから住宅公庫の最近の借り入れの申し込み等は増加をいたしてきております。こういうような点で住宅についても、これ昨年のこともございますので底入れという言葉を使うとこれはまた後からおしかりを受けるかもしれませんが、まあ若干底入れ的な感じがうかがわれないものでもない。まあこういうことで、しかし回復テンポは決して目ぼしいものではございません。緩やかであるというふうに考える方が当然のことだろうと思いますが、そういう状況で、現在の時点はまことにはかばかしくございませんが、今後においては徐々ながらこれらの項目についても上昇の可能性というものはあるものと考えられます。
  120. 原田立

    ○原田立君 長官にお聞きしますけれども、四月三日の参議院予算委員会で、長官はわが党の中野鉄造議員の質問に答えられて、米国の金利が下がった場合は低金利政策をさらに一段と進めることも可能であると、いろんな条件があるけれども、「その場合は当然低金利政策をさらに一段進めることも可能だと、」いうようなことをお答えになっているわけでありますけれども、もちろんアメリカ金利が下がれば当然こういうことも考えられるんだろうとは思いますけれども、再度その点をお伺いしたい。  それと、澄田総裁については、それについてどういうふうな御所見がおありになるかお伺いしたい。
  121. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 政府金融政策基本方針は、機動的に運営をしていくと、こういうことが基本路線でございまして、これはもう何回となくそういうことを決定をいたしております。機動的に運営するという意味は、現在の景気動向から考えまして、できるだけ低金利政策を進めるということが機動的に運営するという内容でございますが、この点は去る三月にも再確認をしたのでございますけれども、ただ、残念ながら、国内条件は機動的に運営できるようなそういう幾つかの条件はそろっておると思うんですけれども、いま御指摘のように、アメリカ高金利がいまのような状態ですと、これはとてもやれません。そこで、先般予算委員会で、アメリカ高金利が下がれば、日本金融政策を機動的に運営する条件はある程度整うんだと、そういう趣旨のことを言ったわけでございまして、その考え方はいまでも変わっておりません。
  122. 澄田智

    参考人澄田智君) 金融政策の運営に当たりましては、ただいま長官から機動的というお話がございまして、そのとおりでありまして、日本銀行といたしましても予断を持つということではなくて、その時々の情勢に応じて機動的かつ弾力的な対応を常に心がけていかなければならない、これが金融政策というものの性格であると、こういうふうに心得ているわけでございます。現在のように、アメリカ高金利、それによる内外金利差が大きい、こういう状態においては、金融は当然そういった状態のもとで慎重に運営されなければならないわけでありますが、わが国の側からこの内外金利差の解消をおくらせると、アメリカ金利が多少下がったにいたしましても、現在のところ、ほとんど下がってもごくわずかな金利の動きをいたしておりますので、こういうところでわずかに下がりましても、ここで日本側で、金利水準を一段と下げるというようなことをいたしますと、それだけ内外金利差は逆に増大する、あるいは増大しないまでも、内外金利差の解消をおくらせると、こういうようなことになるわけであります。そういうことだとか、いわんや金利差を拡大するような措置というものはとうていとれない、こういう状況でございます。  将来のアメリカ金利の動向については繰り返しになりますが、予断を持ってどうこうするということでなくて、そのときの情勢に応じて対処をしていくべき問題である、基本的な考え方としてはそういうふうに考えております。
  123. 原田立

    ○原田立君 長官長官の話と渡辺大蔵大臣の話がいつもこう対照的に違うんですよね。去年の予算委員会のときに私がその点を指摘したらば、それは裏と表の相違であって変わりはないんだというふうな御答弁があって、思わず爆笑が委員会であったことがあるんです。私はそれ、そのときはそのまま黙っておりましたけれども、非常に不愉快だった。今回の場合も、大蔵大臣はさきの大蔵委員会で五十六年度の税収不足に引き続いて五十七年度も不足が見込まれるとの答弁をしておりますが、長官は、五十七年度の歳入欠陥は克服できると言われているということが報道されているわけであります。まあ景気をよくして明るい方向に持っていくのが長官の役目だと言うならば明るい方向ばっかり言うのも結構だけれども、これがまた裏表だなんというような話だと思うと、これはもう信頼性に乏しくなっちゃう。本当にこういうことが、五十七年度については、こういう明るい希望を持ってやっていいんですか。
  124. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 五十七年度の予算案は、去る四月五日に成立をしたばかりでございます。その予算書を見ますと、五十七年度ですね、五十七年度の予算書を見ますと、税収予定は三十六兆六千億と書いてあります。そういう税収見積もりをして予算が成立したばかりでございますから、その税収見積もりに対していますぐこれできないということを言い切るのは、これはいかがなものかと私は思います。現在の経済予定よりも落ち込んでおりますし、五十六年度の税収が、二月までの税収の実績によりますと減ると言われておりますから、厳しい条件にあることは私は事実だと思うんです。しかし、いまの段階で税収が確保できない、大幅な財政欠陥が必ず起こるんだと、そういうことを言い切るのはこれはいかがなものかと、ついこの間成立したばかりでございますから。  そこで、私はこの税収年度というのは六月一日から翌年の五月三十一日までのことでありますから、まだ大分先のことでもあるから、経済運営いかんによっては税収を確保するということは、必ずしも不可能ではないではないかと、何らの努力もしないで、あるがままに任せておけばこれはまあ税収不足になるかもわからぬけれども、そういうことにならないように、いろんな工夫をする手段は残されておりますから、ためだ、だめだといまの段階で言うのはいかがなものであろうかと、五十五年度の財政経済を見ますと、税収を確保する可能性は十分残されておる、政府としては国会にその予算を出して決めてもらったばかりでございますから、それが実現するような工夫と努力をするというのが私は政府の務めだと、このように考えております。
  125. 原田立

    ○原田立君 これ一問でもう時間になりましたので終わりにしたいと思いますが、四月九日の閣議の後で、公共事業執行率が七七%台となるよう努力する方針を渡辺蔵相は明らかにしたと、これを受けて始関建設相が上半期に事業を繰り上げ執行すると下半期の事業量の減少が懸念されるので補正予算を組み、公共事業を追加することを早い時期に明らかにしてほしいと述べたと、こう言われているんですけれども、先ほども同僚委員から質問がありました。これ実際問題一番大切な問題なんです。この問題についてのお答えをいただいて私の質問を終わります。
  126. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 建設大臣からそういう発言があったということは新聞にすでに報道されておりますが、事実そのとおりでございまして、現実問題として上半期に集中執行をするということのためには下半期の見通しをある程度早く具体的にしてもらわないと大変やりにくいと、こういう要請でございます。当然のお考えだと思いますので、これをどのように取り扱っていけばいいのか関係閣僚の間で相談をしようと、こういうことにいまなっておりますが、いまの段階ではまだ結論は出ておりません。
  127. 渡部通子

    ○渡部通子君 先ほど来いろいろ議論がございましたのでなるべく重複を避けまして、確認の意味も含めて最初に長官に数点伺いたいと思います。  四月九日の閣議で五十六年度の歳入欠陥が二兆円を超えると、この見通しが明らかになったことで総理が公約として掲げております五十九年度財政再建の破綻、これも明確になったとまで言われています。大変重大な事態だと思うわけです。とりあえず閣僚のお一人として何とかしなければならない立場に長官もおいででございますので、これに対する率直な御見解を伺います。
  128. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 五十六年の二月までの税収が今度明確になりましたので、それを受けまして五十六年度全体の税収をいろいろ想定をすると、未確定要素もあるけれども、いまの段階は三十二兆という税収予定に対して七%か八%ぐらい不足するだろうと、そういうことを大蔵省の方で言っておられるわけであります。若干の未確定要素はあるけれども、そういう可能性があると、そういう表現であります。  その問題と五十九年度に財政再建をするというその関係はどうかと、非常に重大なことになっておるではないかという御指摘でございますが、五十九年度に財政再建をするという具体的な内容は、現在発行しております赤字国債四兆円を五十九年度にはゼロにすると、これが財政再建の内容でございまして、まだ五十九年までは五十七年、五十八年、五十九年と三年間ございますから、私はもうすでに五十六年に出た財政の赤字はこれは万やむを得ませんけれども、五十七年度以降三カ年ございますので、その間の財政経済運営を間違いないようにしっかりやっていけば私は財政再建は十分可能だと、こう思っております。
  129. 渡部通子

    ○渡部通子君 五十六年度の成長率実質で三%むずかしいと先ほどからの議論でございます。最近よくわが国経済成長率というものは第一次石油危機で五%台に、それから第二次石油危機で三%台になったのではないかと、こういう認識がございますが、この認識に対しては長官はどういう御見解をお持ちでしょうか。
  130. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは私は非常に大きな問題だと、こう思います。わが国成長は五十一年から五十四年までは五%成長が続いておりましたが、五十五年に三・七%成長、それから五十六年、まだわかりませんが、大体三%弱の成長でなかろうかと、こう思いますが、この二カ年を平均しますと三%強の成長になっておりますので、そういうことを根拠にして、もう日本経済は三%成長時代に入ったんだと、こういう議論があるわけでございます。しかしながら、私どもは五十五年の経済と五十六年の経済というものは異常な姿であると、これは第二次石油危機という世界経済が大混乱に陥りまして、日本経済もその厳しい影響を受けまして経済全体が非常に停滞をしておる、不景気状態になっておると、そのために一時的に三%成長に落ち込んでおるのであって、これが本来の日本経済の力ではない、私どもはこのように判断をしておるのでございます。そこでこの五十七年度も五・二%成長政策の推進いかんでは可能である、そういうことを判断をいたしまして五・二%成長目標というものを掲げておるわけでございまして、過去二カ年の三%前後の成長というものは一時的な現象である、永久にそういう状態になるものではない、こういう判断でございます。
  131. 渡部通子

    ○渡部通子君 景気対策ですが、まず何といっても可処分所得を何とかふやす方向、これも先ほどからの議論のところでございますが、ことしの賃上げで先ほどの話ですと可処分所得が一%ぐらいはプラスになるだろうと、こういう御見解のようでございますが、それで果たしてそうなるのかどうか、それからそれで消費拡大するかどうかということを私は大変に疑問に思いますので、その点も一点伺っておきたい。  私たちの生活実感というものはもっと厳しいように、私はこの数字よりも厳しいように思うわけでございます。この際給与を引き上げてもらうか、あるいは貯金を取り崩してでも消費を多少でもするかと、貯金をやめてでも消費をするか、これははなはだむずかしいんじゃないかと思うんですね。私もこの間、長官の地元であります地域の婦人会をずっとのぞいて歩きました。一番いま受けてやっていることというと、リフォームファッションショーというのを御婦人方が一生懸命やっていらっしゃいまして、新しく洋服をつくってのファッションショーじゃないんです。みんなリフォームのファッションショーということで、たんすの中をひっくり返せば二年や三年は物を買わなくても済むというようなことで大変にぎにぎしくやっていらっしゃる地域をずっと見てまいりまして一これは財布のひもは緩まないというのが、これはまことに一例でございますけれども実感でございまして、内需回復というものがことしの賃上げ、可処分所得プラスに転ずるとしても明るく見通せるものかどうか、その点の御所見を伺います。
  132. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 五十七年度の可処分所得がどれくらいになるかということにつきましては、いろんな条件がまだ整いませんのでいまの段階では何とも言えません。しかしながら、政府経済見通しを作成をいたします場合に、一人当たりの雇用者所得伸びは六・九%、国民経済全体の立場から考えた雇用者所得伸び、これは雇用者がふえることが前提になっておりますが、これは八・六%、こういう想定をして経済見通しをつくったのでございます。現在までのところベースアップは大企業で約三百社弱決まっておりまして、その平均は七・二%になっております。物価が安定しておるということを考えますと、昨年のベースアップに比べますと中身はある程度充実をしておるのではないかと、こういう感じも受けますが、ただ、七割、三分の二の人が働いておられます中小企業ベースアップがまだ決まりませんので、現在のところは最終的にどのような状態に落ちつくのか、これははっきりいたしません。それと、ベースアップ雇用者所得というものは計算の基礎が違っておりますので必ずしも連動はいたしません。そこで可処分所得が現在の段階でどうなるかということは、最終判断をする条件は整っておりませんけれども、ただいままでの動きから判断しますと、昨年よりは若干改善されるのではないかと、ここまではある程度言えるのではないか、このように思います。
  133. 渡部通子

    ○渡部通子君 公共事業に関して、下半期民間経済が回服しなければ失速に関して当然追加政策が必要だと、先ほど繰り返しお述べでございますが、いずれにしろ私も建設国債の発行に踏み切らざるを得ないだろうと思うんですが、どのくらいおやりになるんですか。
  134. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 下半期のことにつきましては、実はまだ具体的に政府部内の意見はまとまっておりませんで、とにかくいまの段階は公共事業、それから公的住宅、それから災害復旧、これを技術的に可能な限り最大限上半期集中前倒しをひとつやっていこうではないか。数兆円という大規模になると思うんですけれども、その前倒し分だけで。その分だけ事実、現実に仕事がふえるということになりますが、世界経済も後半回復方向に行くであろうと、このように言われておりますし、そういたしますと、貿易条件がよくなるわけでございますし、それからアメリカ高金利もいまのような状態ではないと、やはりことしの後半はある程度下がるのではなかろうか、こういう見通しもございますので、民間経済全体がある程度活力回復するであろうと私どもは考えておるわけです。しかし、もしそのとおりいかないということになりますと、民間の力は弱いし、それから公共事業住宅その他は下半期に仕事の量が激減をいたしますから、これはもう経済が大変困難になります。そこで、そういう場合には機敏で適切な対応をしなければならぬと、こういうことはもう具体的に意見は一致しておるんですけれども、それじゃ具体的に一体どの見当のことをやればいいのかということにつきましては、まだ最終の結論は出ておりませんで、これから政府部内で意見調整をすると、こういうスケジュールになっております。
  135. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこまでの御説明は先ほどから繰り返し繰り返し伺っておりますので、そこまではよくわかっているんです。それで、当然必要な追加政策が、もし活力回復しない場合には必要だと、そこまでおっしゃっていらっしゃいますので、私がその先を、建設公債の大量発行ということで踏み切られますかと、それからどのくらい見込まれますかということを、その先を伺ったわけなんです。
  136. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) そういう場合にどの程度の仕事を追加するかということでありますが、追加の方法もいろいろあろうと思うんです。たとえば建設国債を増発するというのも一つの方法でしょうし、財投資金を確保して、財投の拡大によって仕事量を確保するというのも一つの方法でしょう。それから、公的住宅を追加するというのも一つの方法だと思いますし、あるいは地方の単独事業等をふやしていく、そして政府の方はその財政的な裏づけを図っていくと、こういうことも一つの方法だと思います。あるいはそれらの全部の組み合わせ、一部の組み合わせ等も考えられると思うんですが、しかしいま申し上げますように、一体具体的にどうすべきかということについては、この内容はまだ決まっていない。経済状態が悪いときにはほうっておくわけにはいかない、何かしなければならぬ、そこまでの合意があるということを申し上げたわけでございまして、具体的な内容につきましては、もう少し様子を見た上で政府部内で意見の調整をすると、そういうことになっております。
  137. 渡部通子

    ○渡部通子君 もう一点、五十七年度の経済は、いずれにしてもこのまま推移すると非常に厳しいと、これの見通しはほとんど衆目の一致するところだと思うんです。それで、政府も総合経済対策を打ち出すと、こう言っておられますけれども、いつごろになりましょうか。
  138. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 実は、そういう議論も政府部内にございます。この際、何か工夫して総合経済対策をやるべしという議論もございますが、一部には、さしあたってそれじゃやれることは何かと。もう金融政策は機動的に運営するということを言って、アメリカ高金利がどうなるかということをひたすら待っておると、その推移を見守っておる、こういう状態でございますし、それから公共事業公的住宅、災害復旧、これを最大限前倒しをする、こういうことを決めたばかりでございますし、それ以外に何かやれるかといいますと、具体的なことは余りないじゃないかと。構造不況業種対策をやる、個別対策をやると、こういうこともありましょうけれども、これはもうすでに一つ一つの業種ごとに通産省の方でやっておられるわけでありますから、何かあれば積極的にやったらいいが、いまのところ何を一体やるんだという議論等もございまして、実はこの問題もまだ結論が出ていないということでございます。
  139. 渡部通子

    ○渡部通子君 大変時間がございませんので、少し具体的なことを一、二点伺いたいと思います。  先ほどから住宅政策が大事だということが言われているわけですけれども、確かに住宅、数も大事ですけれども質の時代に入ったということはもう言われていることでございまして、いままで上に上に伸びてきた住宅を今度地下の有効利用ということに着目をすべきではないかということを申し上げさしていただきたいんです。  欧米諸国の実情も伺ったり、申し上げたりすればいいんですが、時間がございませんので端的に御質問をいたしますけれども、現在地下室というものは、工事費が高い、あるいは利用度が低い、建築基準法の容積率に算入されるなどの理由がありまして、本当に普及をされていないように私は思います。しかし、今日の異常な地価の高騰による土地の高度有効利用の要請、あるいは建設技術開発等、地下室建設工事費のコストダウン、こういったものも考えられますので、住む方から言いましても、生活様式が非常に多様化しておりますから、食糧庫とか家事室とかオフィスとかといった新しいスペースの要求も出てきていると思うんです。何よりもかによりも私、マンション等のいろんな広告を見ましても、収納スペースが少ないというのがわれわれ主婦にとっては一番困ることでございまして、おかげでたんすなどをたくさん買いますからかえって部屋が狭くなると、こういう非常に非合理性もございまして、地下の有効利用ということを当然考えるときにきているのではないかと、こういうような客観情勢を踏まえまして、一定の条件のもとに、たとえば一定以上の広さを確保している敷地とか、あるいは上下水道や道路整備の完了している地域においては、地下室を容積率の対象から除外すると、こういう方策はとってもらえないものかどうか伺います。
  140. 越智福夫

    説明員(越智福夫君) ただいま先生からお尋ねございました住宅におきます地下の利用でございますが、現在でも物置き等の居室でないものにつきましては地下においても利用ができる、こういう制度になっておりますし、また衛生上の観点から見まして、空堀等を設けましたような形の地階の居室はこれができるという形になっておるわけでございます。  それで、ただいまのお尋ねの容積率でございますけれども、これは先生もお話しございましたような形で、土地の建築物による利用率の問題と、それと周辺の公共施設の整備の状況とか、こういったものの関係からその地域につきまして一定の容積率を定めると、こういう形の制度になっておるわけでございます。したがいまして、この使われます用途の階が地下にありますか、あるいは地上にございますか、こういうことの差によって、たとえば地下であるからそれから除外する、こういう性質のものではないのではないか、こう考えておる次第でございます。
  141. 渡部通子

    ○渡部通子君 現実に建築業者に聞きますと、容積率さえ外してもらえば喜んで地下室つくるというんです。住む方からしても収納スペースとしては非常に欲しい。建築業者の方などはしばしば、鉄骨の太さなどを太くしろなどと言われてコストが上がるので非常に困っている点もありまして、地下室等をつくらしてもらえれば、鉄骨とかセメントとかの需要も非常にふえるわけでございまして、そういう一挙両得で、容積率さえ外してもらえれば、いまの除湿技術なども非常に進んでおりますから、それほど高くなく地下室をつくることは可能だと、建築業者からも住む方からの要望からまいりましても、これを外していただいて地下の有効利用、これは災害対策にも大きな役割りを果たすと思いますので、この際建設省にひとつお考えをいただきたいと思いますが、重ねて伺います。
  142. 越智福夫

    説明員(越智福夫君) ただいまお答えいたしましたのは地下が価格が高くなる、これは事実高くはなりますけれども、高くなるから地下について特別にどうということではございませんで、地上にございましても地下にございましても、その床が住宅のために利用される、その利用の度合いといいましょうか、それを容積率という形で規制をいたしておるわけでございますので、一般的に言いまして、地下にございますからその部分だけは外すというようなたてまえの制度ではないということでございます。  ただ、先生がおっしゃいましたようなマンションの場合に、容積がもう少し上がれば建てやすくなるというような問題につきまして一定の広さ、その中に一定の空地、こういった環境が確保されておりますような場合には、いろいろな制度で容積率を少しふやす、こういう制度はあるわけでございます。
  143. 渡部通子

    ○渡部通子君 地下室をつくった場合、容積率にそれが対象にされますから、やっぱり上を一階減らさなきゃならないというようなことになりますでしょう。だから、現実、やっぱりマンション建ててそれを分譲する場合には地下室に収納庫をつくったから、だから十階建てのところを九階にするというのはとてもそれは建築業者としてはできる仕事ではないわけですね。だから、地下室をつくった場合には、十階を九階に減らさなくてもいいように容積率から除外してもらわなければ、それは現実問題として手のつけられる話ではないでしょう。その辺を御配慮いただけませんかとお願いしているわけです。
  144. 越智福夫

    説明員(越智福夫君) 繰り返したようなことでございますけれども、先生おっしゃいますように、建築物が一定の延べ面積できますと、それに伴いまして、それが地下にある床でございましょうと、あるいは九階、十階の床でございましょうと、一定の交通の発生でございますとか、都市活動が起こってくる。その建築の床面積に代用されます都市活動と周辺あるいは関係をいたします公共・公益施設とのバランスをフルに見まして、都市計画的な観点から容積率というふうな形の法制限が加えられておる。したがいまして、それを一階下げる、上げるということによってその量が上下するわけではございませんので、そういう意味で、いま私は、地下にあるから容積率をカットするというふうな制度のものではないというふうに申し上げたわけでございます。
  145. 渡部通子

    ○渡部通子君 御説明はよくわかりますけれども、地下にあるからといって、地下で、地下の一軒というものを売るわけにはいかないでしょう、これは売る対象にはなりませんよ。だからそこを、発想の転換をお願いできないかという問題提起をしているわけです。幾ら御説明いただいてもその御説明では、発想の転換をしていただかない限り——だって、地下に面積か同じにとるからと言ったって、地下に一軒つくってこれを売りましょうと言ったって、買い手はそれはありません。だから、地下は収納庫とか特別な違う目的の部屋につくりかえるしかないわけでしょう。そうなりますと、容積率で規定されれば地上の一軒分を減らさなきゃならないわけですから、建築業者としては請け負えるはずはないわけで、その辺の発想の転換をお願いできないかと言っている。私、問題提起にとどめます。課長さんではこれ以上のお返事はいただけないと思いますので、ひとつ、今後の問題として検討をお願いしておきます。  これは本当に、建築業者によく聞いてみますと、容積率さえ外してもらえれば喜んで地下に収納スペースはつくりますと、こういうことですよ。住む側からいたしましても収納スペースが少ないというのが、いまのこのマンションを見た場合の一番の悩みでございますね。それは災害対策にも役立つではないかあるいは鉄骨をふやせというようなことを建設省が言って、鉄骨の直径をふやせなどと言って、それで鉄の消費をふやそうとしている。それは地下室をつくるということにすればそれも賄えるではないかと、私はこれは大変どっちにとってもメリットが大きいものだと思うんです。だから、容積率の地下の対象というそれさえ外してもらえれば非常に住宅というのは有効にいくのではないか、質の向上につながるのではないか。これを提起しているわけでございまして、これでとめておきます。ひとつ今後の問題として御検討いただきたいと思います。  もう一つ個別の問題を伺っておきたいんです。  これから夏になりますと、清涼飲料水等における自販機の問題がまた非常に起こってまいりますので、まず自販機に対するトラブルとか苦情とか、そういったものが問題点ございましたら御説明ください、簡単に。これは通産省でも国民生活センター、どちらでも結構でございます。
  146. 小金芳弘

    政府委員(小金芳弘君) 国民生活センターが、昭和五十六年の一月から十二月までの間に受け付けました苦情相談件数は七十二件となっておりまして、そのほかに十一の地方消費生活センターから寄せられたものが二百二件というふうになっております。
  147. 渡部通子

    ○渡部通子君 これは朝日新聞に報道されておりましたけれども、東京都の調査で、結局販売機の管理者が四割名前が載ってないというんですね。必ずだれが管理しているかということがはっきりしなきゃならないはずでしょうが、朝日新聞の調査では東京都では四割が名前がはっきりとしていない、こういうことでございまして、そうすると今度トラブルが起こった場合に、責任は一体どこなのかということになってくると思うんですが、この管理者の明記ですね、これを義務づけるなり、そういったことはできないんですか。
  148. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) 自動販売機につきましては、一つは安全問題もございます。おっしゃいますような取引問題、いろいろなふぐあいが起きる自動販売機がございます。管理者責任をとれるように統一ステッカーを貼付すべく、これを指導によって五十五年十月以来指導しているところでございます。
  149. 渡部通子

    ○渡部通子君 これは義務ではなくて、指導条項になっているんですか。それからこの自販機の根拠法は何ですか。何か法律に基づいているんですか。
  150. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) なかんずく安全問題につきましてはJISによって基準をそれで制定しておりますが、先ほどの苦情処理問題につきましては法的な根拠は特にございません。
  151. 渡部通子

    ○渡部通子君 それはひとつはっきりした方がよろしいのではないかと思います。  管理責任者、自販機の管理責任者が責任を負うのならば、それは名前を明記することは義務づけなきゃいけないし、それがない場合の罰則も取り締まりも必要ではないかと私は思いますが。それから法的根拠というとJISの据えつけの基準だけですね。据えつけの基準だけが法律で決められているわけですけれども、文京区の場合調査対象二千五百二十台のうち、機体が水平に固定されていないとかあるいは二カ所以上固定用の埋め込みボルトで押さえる構造になっていないとか、そういう据えつけ基準を満たしてないものが八五%あったという結果が出ています。そうすると据えつけ基準だけが法的に縛られておりながら、それすら満たされているものは一五%しかない。そのほかは指導だけに任されている。こういう形で、これほど自販機がはんらんをしている、中でも清涼飲料水等が大方売られている、夏になって事故等も予想されるあるいは地震などがあった場合には倒れてくるとか、ずれてくるとか、こういう事故を予想した場合に、もう少し何とかした方がよろしんじゃないでしょうか。
  152. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) 先生御指摘一つは文京区の調査によるものと考えます。私どもも現在JIS基準に対しまして、遵守状況がもう一つうまくいってないのではないかという感じがしておりますのですが、全国的な、統一的な実態調査はまだされていない実情にございます。文京区の方で、ある調査会社に委託しまして、非常に遵守状況が悪いという結果を私も読ましていただきました。そういった観点から今年度は、特に通産省には消費者モニター制度がございます。全国七百五十名ほどモニターがおります。その実態の調査を私ども取り組んでまいりました。必要な部分について基準の改正なりいろんな強化なり、そういったものを図ってまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  153. 渡部通子

    ○渡部通子君 ひとつ、それよろしくお願いをいたします。事故の起こる前に実態調査をして必要な法的分析をする、取り締まりもする、こういうことでお願いをしたいと思うんです。  そこでもう一点伺っておきますが、これは自販機で売られているのがほとんど清涼飲料水が一番突出して多いということは私は余り気に入らないんです。あそこで売られているのは果汁一〇〇%なんというものはおおよそありませんでね、色づき砂糖水のようなものが大量に子供たちに飲まれているというのは余り奨励されたことではございません。  それの中身の議論は後回しといたしましても、自販機で切手やはがきが売られているということは、これは大変便利な話だと思うんですが、非常にこれまだ知られていないし、普及率が低いと思うんですね。郵便局が閉まってから手紙を出したいときに、あるいは日曜でも買える、手近である、こういったことで、非常にこれは便利なものだと思うし、こういった内容こそ普及されてしかるべきだと思うわけです。この状況と、今後の見通しなりあるいはこの議員会館なり国会なりにでも、この数少ない切手の自販機でしょうけれども、はがきの自販機でしょうけれども、置いてみていただいてはどうかということも申し上げたいのですが、この点の御答弁もいただきたい。
  154. 石山隆郎

    説明員(石山隆郎君) お答えいたします。  現在切手類の発売機、全国に百八十局程度配備してございます。これには在来の型と最近開発いたしました新しい型がございます。新しい型、利用者のいろいろのニーズにこたえていくために機能を豊富にしたということでございます。そういうわけで、現在実験中というような考え方で私ども対処しているわけでございますが、今後どうするかという御指摘でございますので、切手発売機、窓口混雑時の緩和あるいは夜間の利用等、都市部の有効な場所に設置してお客様の希望にこたえていく必要があるというのが基本的な考え方でございます。そういう方向で具体的な対策を立ててまいりたいというふうに考えております。
  155. 渡部通子

    ○渡部通子君 それでいいんですが、国会等にも置く計画はありませんか。
  156. 石山隆郎

    説明員(石山隆郎君) 率直に申し上げまして、国会等では大層大量に一時に売れるもので、この売りさばき機は少数枚数というような需要を期待しておるということでございますので、検討はさせていただきますが、今後課題ということで受けとめておきたいというふうに思います。
  157. 渡部通子

    ○渡部通子君 終わります。
  158. 市川正一

    ○市川正一君 先ほど来長官日本経済現状をリアルに見詰め、またリアルに論理じてられるというふうに私伺ったんでありますが、私も事実と論理に基づいて端的にお伺いしたいと思います。  まず経済運営に関してでありますけれども、今日、日本経済状況が五十六年度第三・四半期は前期比で〇・九%マイナス成長というふうに非常な危機的状態にある。こうした中で五十六年度税収不足が二兆数千億に及ぶということはもはや確実であると、これが五十七年度に拡大されて持ち越されるという状況に相なっております。  こうした日本経済停滞の原因について、河本長官予算委員会などでの論戦を通じて、また本日もそうでありますが、その最大の原因が個人消費停滞、国民の実質可処分所得の落ち込みにあることを指摘してこられたわけでありますが、この認識は変わりないと、こういうふうに確認してよろしゅうございますね。
  159. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本経済の最近の低迷の背景にはこの世界経済の不況ということがあるわけであります。世界経済の不況は第二次石油危機の悪い影響と、こういうことでございますが、五十六年度の政府見通しが狂いました直接の原因は何かと言いますと、これは貿易の急速な落ち込みと、それと、可処分所得マイナスになりまして政府見通しがその点狂ったと、こういうことが背景にございます。
  160. 市川正一

    ○市川正一君 ところが渡辺大蔵大臣は、こういう莫大な歳入欠陥が確実になっておるにもかかわらず、八日、信託大会においてそのあいさつでこう述べています。「当たったことのない経済見通しを土台に税収見通しを立てるのだから、見込みが狂って当然」、全く無責任な発言であります。で、税収見通しが狂うのは当然という、こういう渡辺大蔵大臣の発言を河本長官はどう受けとめていらっしゃいますか。
  161. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は、そのことは聞いておりませんので何とも言えませんが、これまで大蔵省の専門家に聞くところによりますと、翌年の税収見通しを立てられるときには、主として実績主義で行くと。つまり、個々の税収の積み重ねで行くと。それから翌々年度以降の税の見通しを立てる場合には、名目成長に税の弾性値を掛けて、そしてある程度税の実績を参考にして出すんだと、こういうことを言っておられました。税収の計算方法には幾らかの方法があろうかと思うんです。まあいずれにいたしましても、経済が落ち込んだということはこれはやはり税収が不足した私はその背景であると、このように思っております。まあその意味では大蔵大臣の言われることも必ずしも不穏当なことではないと、こう思います。
  162. 市川正一

    ○市川正一君 これを報じた新聞は、これを「河本長官が聞いたら怒りそうな大演説。」と、こうありますけれども、いずれにしても、狂うのは当然だというようなお立場でないということはいまおっしゃったと私は伺うんですが、河本長官は、先ほど来述べていらっしゃるように、五十七年度予算が現状のままでは、いわばほうっておけば五・二%の成長率達成も、また歳入欠陥も避けられない、こういう認識でございますね。
  163. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年の十二月に予算編成をしたわけでありますが、その時点と現在の状態は相当経済の姿は変わっておると思うんです。  そこで、この予算が成立いたしましてから、上半期公共事業あるいは公的住宅、災害復旧を技術的に可能な限り最大限集中執行していこうと、こういうことも決めたばかりでございます。まあ経済激動期でございますから、その変化に応じてやはり適切な対応をしていかなければ経済成長は達成できないと、こう思います。
  164. 市川正一

    ○市川正一君 長官、いま十二月時点と、こうおっしゃったけれども、しかし先ほど来、予算が成立したのは四月の五日だと、こうたびたび言っておられる。わずか二週間前ですよ。その予算が成立するまではどうおっしゃっていたですか。それまでは、この五・二%の成長率は可能だと、そしてまた、これは予算は最善のものだということで、あの予算を、いわばみずから政府としても、また長官としても答弁なさっていたわけです。ところがいまになって、いわば二週間たった今日では、適切な対策を機敏に打たなければこれはできぬというふうに、こうおっしゃる。これは、やはりいままでの政府の態度と、予算が通った途端に舌の根も乾かぬうちにころっと変わってしまう。これは無責任と言わざるを得ぬと思うんですが、どうですか。
  165. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) その点は、政府の方では五・二%成長目標を昨年の秋つくりますときに、経済激動期であると、世界全体が激動期であると、だからその変化に応じて機敏で適切な対応をする必要があると、これは絶えず言っておるわけでございまして、突然言い出したわけではございません。
  166. 市川正一

    ○市川正一君 しかし、予算委員会が通るまでは、予算委員会でのやりとりを通じて、この予算が最善のものである、五・二%も達成は可能であり、税収不足も起こらぬと、こういう御答弁をずっと繰り返して、そして国民の要求である減税も拒否なさってくると、それが経過じゃないですか。  そこで、私ちょっと伺うんですけれども、今後景気対策、また不況対策、いろいろ積極的な対策を必要とするという点ではわれわれもそのとおりです。同感です。  で、問題は、そのために何をなすべきかであります。で、河本長官も先ほど来述べていらっしゃるように、個人消費停滞の原因となっている国民の実質可処分所得をふやす以外にないと。背景という言葉を使われたけれども、それは同時に直接のいろんな原因にもなっているわけですから、そうしますと、そのために先ほど長官は三つの前提ということをおっしゃった。第一は所得をふやすことであり、第二は物価を安定させることであり、第三は公的負担を軽くすることである、こうおっしゃった。私はその一つ一つをここで論じませんけれども、特に日本経済停滞の原因として個人消費の落ち込みをこう指摘される以上、当然この三つの前提の、たとえば第三の問題である公的負担——減税の問題ですね、減税の必要性は当然長官としては認識されているでしょうし、また強調されるべきだと思いますが、そうでなければ首尾一貫した論理ということにならぬと思うんですが、その点はいかがでしょう。
  167. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) この減税問題につきましては、政府の方は一月に統一見解をつくりまして、その内容は、過去五カ年間所得税減税をしておりませんし、所得税の負担が非常に重くなっていると、ですから五十七年度は無理だけれども、五十八年度以降できるだけ早く減税ができるようなそういう条件をつくり出したいと。その条件とは何ぞやと言いますと、一つは財源が確保できることであり、第二は五十九年度に財政再建の見通しが立つことであると。こういう基本的な考え方をまとめておったのでございます。    〔理事広田幸一君退席、委員長着席〕 しかし、その後予算審議の段階で議長見解が出まして、そうして予算が成立次第、大蔵委員会で小委員会を設けて、そこでいろいろこの問題は議論しなさいと、こういうことになりまして、政府の方では、それまでは政府見解を持っておりましたけれども、そういう議長見解が出ましてからは、政府見解はあるけれども、その大蔵委員会の結論が出ればこれを優先して尊重いたしますと、こういうことを繰り返し言ってきたのでございます。で、現在は大蔵委員会の結論待ちである、大蔵委員会の結論によって政府の方はそれを尊重して善処すると、こういう考え方でございます。
  168. 市川正一

    ○市川正一君 冒頭申しましたように、日本経済の実態、そしてそれを打開していく方策というものをリアルに事実と論理に基づいて論じたいと。そして、長官が御答弁の中で三つの前提ということを言われたわけですから、その三つの前提ということは、当然重要な要素として減税という問題はあるんじゃないかと。ですから大蔵小委員会がそれはそれとして作業は進めるでしょう。しかし、論理の帰着として、おっしゃったそういう三つの前提、その中に減税問題は当然入っている、こういう理解で間違いはないんですね、ということを伺っているわけです。
  169. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 大蔵委員会の結論は結論として、政府の見解はどうかと、こうしてお尋ねになりますと、それは一月の統一見解が政府基本的な考え方であると、こう申し上げざるを得ない。そういう見解はありますけれども、しかしながら、議長がこうしたらどうですかということを言われましたので、その議長の見解に従って大蔵委員会の結論を待っている、それに従います、こういうことを言っているわけです。
  170. 市川正一

    ○市川正一君 ですから、大蔵小委員会の方はそれで進めるでしょうけれども、しかし、いわば経済政策として、いわば経済見通しの問題として、本当にここでおっしゃるように適切な対策を機敏に打たなければ五・二%の成長率達成もおぼつかないと、こういうふうにみずからおっしゃっているわけですから、だとすれば、そこで適切な対策を機敏に打たなければならないいわば非常に火急の事態であるという場合に、この三つの前提ということをおっしゃっている以上、それは減税問題に積極的立場で取り組むということなんでしょうということを、私は論理の帰着としても、また施策の実態としてもお聞きしているわけですが、そうなんでしょう。
  171. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 減税につきましては、繰り返して恐縮ですけれども、わかりやすく言いますと、減税はやりたいということなんです。(「やるべきだ」と呼ぶ者あり)いや、そこまではいっていない。それは、五カ年間所得減税をやっておりませんから、だから負担が非常に重くなっている。ですから所得減税はやりたい。ただ、しかしそれには条件が必要だ。財源がないとやれないわけですし、それから政府基本方針であります五十九年度財政再建という、その見通しが立たないとこれもやれないわけですから、その二つとの整合性を持たさなければならぬわけですね。ですから条件が整い次第できるだけ早くやりたいというのが一月の政府の統一見解だということを申し上げておるわけです。  ただ、それじゃその問題と景気との関係はどうかと、こういうことになりますと、これはおのずから別問題だと、こう思います。予算委員会等で一兆円減税ということが盛んに言われましたけれども、私はそのときもお答えしたんですけれども、一兆円減税ということは、五カ年間減税をしなかったのでいま税の負担が大変重くなっている。重税感が非常に強い。だからそれをある程度軽くする。あるいは税の公平をある程度欠いておる。だからそれをある程度軽くする。こういうことですとそれなりに重要な私は意義があると、こう思うんです。ただ、しかしながら一兆円減税によって景気対策ということをやれば、私はいまの日本経済現状から見まして、もちろんそれは若干のプラスにはなりましょう。しかし、それが景気回復の起爆剤になる、そういう力はとても一兆円程度の減税ではこれは不可能である。こういうことも申し上げたのでございます。  それじゃ幾らぐらいの減税が必要かとおっしゃいますから、そこでアメリカの減税の規模を参考として申し上げた、こういうことでございまして、景気対策ということになりますとおのずからまた別個の判断が必要だと、こう思います。
  172. 市川正一

    ○市川正一君 で、進めますが、ところが、いま景気対策としても政府が行おうとしているのはそれと逆行するいわば行財政改革、これは減税は拒否して、そして福祉、教育、社会保障は切り捨てていくということでありますから、実質可処分所得はむしろ減らしていくという方向をいまの鈴木内閣はとっているというのが現実であります。  そこで私伺いたいんですが、去る九日の河本派の世話人総会で、この点についてこういうふうに言っております。行革路線は事実上崩壊したとの認識で一致している。この結論を森山欽司代表世話人が、派の総意として河本長官にも伝えるということになっております。  私、決して派閥次元の問題としてこれをここで取り上げているわけではないわけであります。  九日のことですからもう長官の方にこのお話は行っているかもしれませんけれども、私はこういう行革路線は事実上崩壊したという認識、河本長官御自身もこう認識されておられるのか、それともこの行革路線をあくまで進めるという立場なのか。私はまじめに、リアルに、現実政治に取り組む政治家としての長官の率直な見解を承りたいと思います。
  173. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) そのときの話は私も後で聞きましたが、必ずしも新聞の言っているような内容ではありませんでした。  ただしかし、行革問題についていろいろ議論が出たということは聞きましたが、私はそのときに私の考えを言ったのでございますが、行政改革はこれはあくまで政府基本方針でありますから、これはやり切らなければならぬ。しかし、それと並行して景気回復策を進めていけばいいのであって、景気回復は後回しだと、そういうことになりますとこれはまあ税収も入ってきませんから、財政再建もできませんので、これから政府としてやらなければならなぬ方向は、行政改革も成功させる、同時に景気回復も成功させる、この二つを並行して進めていくことが必要である、そういうことを私も説明をしておきました。  私の周辺の方々は、なるほどそうだと。その二つを並行させることが大事だと、こういうことで意見の一致を見ておりますので、行革路線が崩壊したとかそういうことは一切ございません。
  174. 市川正一

    ○市川正一君 この場ではそういうことにさしていただきますが、ところで鈴木総理は五十九年度までに赤字国債をゼロにできなければ政治責任をとる、こう明言されました。しかし、もはやゼロにすることは不可能な事態に進んでおります。したがって、政治責任をおとりになるのは当然のことだと私は思いますが、同時に五十七年度予算で五・二%の成長率が可能だとして、この成長率を基礎に立てられた税収見通しの狂いが明白ということになれば、経企庁長官としての河本さんの責任も当然問われなければならなくなってまいりますが、この点の政治責任について、長官はどうお考えになっていらっしゃるのか、非常に立ち入ったことでありますが、この機会に承っておきたいと思います。
  175. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 五十六年度の税収はある程度の不足が出るということは、これもうすでに大蔵省の方で明らかにされておりますから、これはまあ万やむを得ないんだ、こう思います。しかし、五十七年度の税収年度は六月一日から始まって、来年の五月三十一日に終わるわけでありますから、まだ再来月から始まるわけです。現に始まっていないという現状でございますので、これからの財政経済政策いかんによっては、私は、四月五日に成立した五十七年度予算に盛られた予定の税収を確保するということは必ずしも不可能ではない、こう思っております。  なぜかと申しますと、五十五年度の予算では、当初予算に比べまして前年度比五兆円の税の自然増収が確保されております。五十五年度の経済規模は二百四十兆という規模でございます。五十七年度は二百八十兆という規模でありますから、五十五年度程度の財政と経済の力をわが国が維持することが可能ならば、六兆とか七兆とかという税の自然増収を確保することも不可能ではない。  そこで、私は、こういう激動期ですから、こういう激動期には、機敏で適切で十分な経済政策を展開することが必要である、こういうことを言っておるわけです。それをやらないで何もしなければそれはうまくいかない場合だってあろうかと思いますから、これは政府全体として予算が確実に実行されるような、そういう幾つかの政策を機動的に進めていくということは、これはこれからの課題でございまして、これからそういう方向政府全体として努力をしていく、こういう考え方でございます。
  176. 市川正一

    ○市川正一君 具体的問題に入りますが、物価問題としての石油製品の価格について伺いたいと思います。  石油の在庫状況は依然として高い水準にありますし、また、石油製品についても同様の傾向にあると思いますが、輸入原油の価格動向はことしに入って若干の上昇があるとしても、昨年の第三・四半期の時点から低い水準を保っております。ところが、四月から、先ほど斎藤委員も指摘されましたが、民生用石油製品を中心に値上げが進行している、まことに不可解であります。従来、政府は、製品の価格の動向は市場原理で決まる、こういうふうに主張しておりましたが、そういう立場からしても減産指導をいま行っておりますが、そうではなしに価格が下がるようにむしろすべきでないかと思いますが、これは通産省でも結構ですか……。
  177. 長田英機

    説明員(長田英機君) お答え申し上げます。  先生いま御指摘になりましたように、石油製品の価格はマーケットメカニズムによって基本的に決まっていくということだと考えております。特に、いま先生御指摘になりました最近の値上げの点でございますが、私どもとしましてはコストが増加した場合にはマーケットメカニズムを通じてそれが末端価格に反映していくということは、これは経済原則としてやむを得ないことであると考えておるわけでございます。つきましては、本年に入りまして為替レートが非常に円安傾向に転じてきております。片や、石油製品の市況といいますものは、昨年の暮れぐらいから非常に軟化傾向を示しております。  こういう状況で、石油企業の方は非常に経営の圧迫を受けておりまして、石油企業が負担しているコストが転嫁できないという状況にあったわけです。こういうことを背景に、この四月から石油会社が値上げを実施したわけでございまして、これは円建ての原油調達コストの増加などによるコスト増というものを市場に反映していくということであるわけでございます。
  178. 市川正一

    ○市川正一君 私、この機会に長官にぜひじかにお伺いもし、また要請もしたいんでありますが、燃油でありますA重油、これが非常に高騰して漁民漁家の経営に深刻な打撃を与えています。たとえば三重県のカツオ、マグロ漁民の例でありますが、七八年ごろまでは総経費のうち燃油の占める割合が三〇ないし四〇%程度であったのが、最近では五割を超えるという状態に至っております。また、価格の動きも、去年二月一日にはキロリットル当たり六万三千三百円だったのが、現在八万円を超える状況に至っております。これでは漁民が経営努力をしてもなかなか追いつかないという状況にあります。従来、全漁連を通じて関税免除の輸入あるいは農林水産省を通じての制度融資などで一定の対策はとられてきたんでありますが、限界に来ているというのが実情であります。  そこで、この際、生鮮食料品の価格安定、また地域振興という立場からも漁業用A重油の価格を安定させるための積極的な対策をとるべきだと思うんでありますが、河本長官いかがでしょう。
  179. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 漁業用A重油につきましては、確かに非常に重要な物資ということで価格の安定が望ましいというふうに思います。ただ、残念ながらOPECの値上げ、それから円安によりましてコストが急激に上昇いたしておりまして、ことし二月の原油輸入価格は、円建てでございますと、イラン危機の前のもう三倍にも達しているというような状態でございます。したがいまして、どうしても製品価格は上がらざるを得ないという状態でございます。ただ、漁業用A重油につきましては確かに御指摘のように非常に重要な物資でございますので、関税を免除いたしまして、それから輸入も認めるという状態になっておりまして、相当程度輸入が行われておりますが、ただ、このA重油を含めます中間留分というのは国際的に供給が十分ございません。したがいまして、輸入を認めましても輸入枠まで達しないというような状態で、日本国内のA重油価格というのは国際的なA重油価格に引っ張られまして、かなり安値にはなっております。しかしながら、やはりコストというものの上昇から製品価格が上がらざるを得ないということでございまして、市場メカニズムというものを通じての価格構成、こういうものでコストが反映されるのはやむを得ないと考えております。ただ、漁業につきましては確かに重要な問題がございますので、それは漁業対策の一環としていろいろな手が従来から打たれているというふうに理解いたしております。
  180. 市川正一

    ○市川正一君 今後も大いに努力を重ねていただきたい。  時間が迫ってまいりましたので、次に新聞販売の正常化問題について公正取引委員会にお聞きしたいと思うんです。  去る三月八日の瀬崎議員が衆議院の予算委員会分科会で奈良市の読売鶴舞販売所の問題を取り上げました。これは読売の発行本社の押し紙、増紙競争等の圧力によってついに廃業に追い込まれざるを得なかったケースでありますが、半年以上申告して経過しておりますが、いまどういう状況になっておるか、結論はいつ出るのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  181. 相場照美

    政府委員(相場照美君) 御指摘いただきました問題につきましては、確かに昨年の十月十九日に申告をいただいているわけでございます。  実はこの問題、通常のものと違いまして、かなりの資料が添付されての申告でございます。通常ですとなかなか私どもにも手に入らないような資料が添付されているわけでございますので、私どもとしましても鋭意この調査を進めているところでございます。特に私ども大阪にも地方事務所があるわけでございますけれども、直接私どもの手で詳しく調査を進めているという状況にございます。ただ、調査を進めてまいります段階でちょっとした困難にもぶち当たっております。と申しますのが、特に押し紙の関係のものにつきましてどうも申し立ての内容が両方で違ってきている、いわば発行本社側の御主張と申告された方の御主張に若干の違いがある、そのあたりの詰めをやっているという段階でございます。鋭意いま調査を進めているところでございますので、もう少し時間をおかしいただきたいというふうに考えております。
  182. 市川正一

    ○市川正一君 半年もちってまだあなた鋭意鋭意ではどないにもならぬ。しかもあなたがおっしゃったように詳細な証拠と資料が全部添付されているんですよ。私自身いままでこの問題幾つか取り上げてきましたけれども、最大の特徴は処理が非常に遅いということなんですよ。もういま拡材を使った不法販売競争というのはこれはもう天下周知の事実でしょう。だとすればこれはもう迅速に処理しなければ、また、発行本社もこぞって正常化を言っているわけです。ですから、敏速に処理してだれも文句を言うものはおらぬのです。思い切って敏速に適確に処理せよということをこの際改めて強調したいんでありますが、調査方法も含めてもし食い違うなら両方呼んで確かめればいいじゃないですか、どうですか。
  183. 相場照美

    政府委員(相場照美君) そのような方法も考えております。
  184. 市川正一

    ○市川正一君 やりますか。
  185. 相場照美

    政府委員(相場照美君) さらに方法につきましては、先ほどおっしゃいました適確性という点につきまして、調査方法について鋭意検討させていただきました上、決定いたしたいと思います。
  186. 市川正一

    ○市川正一君 いま発行本社の方は七月をめどに新聞販売の正常化を図るというふうに言っておりますけれども、従来も何度もこういう正常化宣言をやってはそれが実効が上がったためしがないわけです。今回は従来と違った何か具体的な努力というものを発行本社の方ではしようとしているんですか。
  187. 相場照美

    政府委員(相場照美君) 実は先生、御指摘のとおり、昭和たしか五十二年だったと思いますが、各発行本社は販売正常化ということを大きく取り上げまして宣言を世間にしたわけでございます。その結果なかなかうまくいかなかったという状況にあることも事実でございまして、他方、私どもといたしましても、各地で発生いたしますそういった違反行為に対しましておしかりも受けているところでございますけれども、鋭意是正に努めているという状態にあるわけでございます。  ところで昭和五十五年になりますが、私どもといたしましても、この実態の解明のために実は新聞販売店についての実態調査、アンケート調査を行ったわけでございます。その結果かなりの実情がといいますか、そういった実情の根の深さというようなものがわかりましたので、昭和五十六年の二月に各発行本社に対して何らかの抜本的な対策をとるようにということも申し入れた経緯がございます。ところで発行本社、特に、新聞協会を中心といたしまして販売正常化のために現在も動いているわけでございますが、特に、昨年七月以降あるいは遅いところですと十月、十一月にもなっておりますけれども、全国の各都道府県、一部抜けているところもございますが、部数増減管理センターというのをつくりまして——実はここはどういうことをやるかと申しますと、各販売店が実際に受け取っている販売部数、発行本社から送られてくる販売部数が実際に注文のとおり来ているのかどうか、いわば、押し紙がないかどうか、こういったものを実施に当たって調査するという機能をここに与えまして各都道府県にそういったセンターをつくりましてこれを実施する。  一方、拡材につきましても各調査委員会をつくりましてそれぞれやっていく、こういうたてまえになっているわけでございます。  現在私どもとしてはその状況について監視に努めているところでございますが、一部先生おっしゃいましたように、果たしてこれでうまくいくのかという意見がございます。私どもといたしましては、こういったものをバックアップするという意味からも一方監視に努めると同時に、こういった動きをバックアップしていくという立場からも、たとえば、私どもこういった違反行為について業界にその処理を任せるということだけじゃなくて、直接私どもが警告等をするとかあるいは一般消費者にもこういった動きについてPRするとか、いろんなことを現在も考えておるところでございますが、さらにこれ実は七月までに……
  188. 市川正一

    ○市川正一君 ちょっと時間がないので、やめてくれ。
  189. 相場照美

    政府委員(相場照美君) はい、わかりました。
  190. 市川正一

    ○市川正一君 これで終わります。  じゃあいろいろありましたが、奈良の鶴舞の販売所の事件はいつ決着つけてくれるんですか、それだけはっきりしてくれ、それでもういいから。
  191. 相場照美

    政府委員(相場照美君) こういうふうな事件でございますので、これは確実に事実を私どもとしては把握する必要がありますので、したがいまして、鋭意努力する……
  192. 市川正一

    ○市川正一君 その意はさっき聞いたよ。いつまでにやるというのか。
  193. 相場照美

    政府委員(相場照美君) いつまでという約束は現在のところ……
  194. 市川正一

    ○市川正一君 だって資料はそろっているじゃないか。もう半年たっているのだよ。
  195. 相場照美

    政府委員(相場照美君) その資料の中で先ほど申しましたように……
  196. 市川正一

    ○市川正一君 だからそれをちゃんとやってもらいたいのだよ。
  197. 相場照美

    政府委員(相場照美君) いつまでというのは、ですから私どもは確信を得るまで、こういうふうに考えておりますので……
  198. 市川正一

    ○市川正一君 じゃ後でそれを確かめよう。これで終わります。
  199. 木島則夫

    ○木島則夫君 経済政策基本につきましてはもうすでに同僚議員から、いろいろなあらゆる角度から質問されておりますので重複は避けたいと思いますので、農産物の自由化の問題についてお伺いをしてみたいと思います。  日米経済関係の中で牛肉とオレンジは古くて新しい問題だというふうに思います。これまでも摩擦の張本人として日米間に紛争が起こるたんびにこの問題が前面に出て日米の間で火花が散らされてきた、こういった問題でございます。アメリカ側は絶えず輸入の完全自由化を要求する、これに対して日本側は国内の畜産あるいは柑橘農家の保護を理由に自由化を拒否、輸入枠の若干の拡大で対処をしてきたというのが現在までの経過でございます。こういった経過措置を細かく私ここで申し上げる時間がございませんので、せんじ詰めて申し上げますと、このままの事態を放置すれば、日本世界の孤児になるのは目に見えているということから、鈴木首相も牛肉、オレンジの自由化はやむを得ないという腹を固められたようでございます。過日の日米貿易摩擦に関する予算委員会の集中審議の私の質問に対してもこういった趣旨のことをはっきりとおっしゃっております。  こういう状況の中で、農業団体は危機意識をみなぎらせて反対をされている、これは当然のことであろうと思います。  その反対理由を幾つかポイントとして挙げてみると、第一の理由としては、日本世界最大の農産物純輸入国であって、日米貿易不均衡の原因に農産物市場の閉鎖性があるというアメリカ側の見解は全くの偏見であるというのが、これは第一点。一々理由は申し上げない。  第二の理由、残存輸入品目を撤廃しても、日米のアンバランスの解消にはつながらない、これが第二点。  第三点、牛肉を自由化すればアメリカからの飼料用穀物の輸入が激減をする、こういうふうに言い切っていますね。  第四点、日本の農業全体への打撃、自由化がなし崩しに行われていけば、やがては米にまでこれが波及して農業が壊滅をして、食糧の安全保障上大問題になる。  第五点として、アメリカもECも日本以上に農業保護政策をとっているじゃないかというのが反対の主な柱のようでございます。  私はこれに対してやはり疑問点を感じている。  まず第一に工業と農業とを分断した物の考え方では処理できないということが第一点です。非常にありていに、ざっくばらんに申し上げるならば、戦後の農村の近代化、あるいは耕作の機械化、自動車や家電に象徴される農村の生活革命、こういったものは決して農業の力だけで達成したものではない。むしろ工業分野を中心とした日本経済の発展の恩恵が農業の分野にも広がっていった結果こういうふうになったんだというふうに私は解釈をしている。  また、第二の疑問点としては、農産物残存輸入制限品目の二十二品目が本当に国を挙げて、ほかのものを犠牲にしても死守しなければならない対象品目であるかどうかということも私は問題点であると思う。二十二品目の中には、オレンジとか、いま言った牛肉——牛肉は確かに大事なものかあります。細かいことで恐縮でありますけれど、あとコンニャクとか落花生、こういったものが日本の食糧安全保障上どういうつながりを持つかということも、私には必ずしも納得できない。  いろいろ挙げれば切りはございませんけれど、私が具体的な質問に入る前にまず長官にお尋ねを申し上げたいことは、日本経済の国際化ということは、非能率な産業分野は海外の生産力に任せる、日本はもっと高度な分野に挑戦をするという国際分業の理念にほかならないという見方は間違いでしょうか。多少乱暴な意見で申しわけないんであります。私も農業のお立場、農業団体の御主張というものはよく承知をしているつもりでございますが、この際ある意味で、問題を明確化する意味でいま申し上げた点について長官の御意見を承りたいんであります。
  200. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 農産物の問題につきましては、アメリカ側と去る四月十二日に日本政府の事務当局で接触をいたしまして、いろいろ話し合いをいたしました。先方は、御案内のようにガット二十二条でひとつ協議をしようではないか、こういう提案をそのときにもしたようでありますが、その後若干態度が変わってきたようであります。そこで、いま真意を確かめておるというのが現状でございますが、いずれにいたしましても、現状は放置はできませんので、やはり何らかの対応は必要だと、こう思っております。いま政府部内の関係者の間で相談をしておる最中でございます。
  201. 木島則夫

    ○木島則夫君 せんじ詰めますと、日本の農業政策の中期、長期ビジョンがいままではっきりしなかった点に私は問題点があったというふうに思うわけでございます。私なりに申し上げるならば、日本が国際的な自由貿易体制の中で生きていくためには、いままでの社会経済体制を全く動かさないで、もうちょっと言葉をきつくするならば、無傷のままで温存させようということ自体無理な話ではないかと、こういうふうに思うわけでございます。自由貿易というのは相手国の経済体制の中に食い込んでいくことであり、既存の経済体制の中に食い込んでいけば必ずそこに問題が起こる。その問題を一切出さないということは、回り回って言えば、自由貿易の制限を主張する、つまり何もやらないんだということにめぐりめぐってなることであろうと、こういうふうに思います。本来から申し上げるならば食糧は国家経営の基本でございます、基盤である。政府は食糧安保の立場から日本の農業のあり方を長期展望の中で示されなくてはならない。そうすればいかに——別に私はコンニャクを特に象徴的に取り上げて言っているんじゃないんですよ。いかにコンニャクに固執をするということが、長期的なビジョンの中でどうかということもはっきりしてこようという、その辺の長期ビジョンがやっぱり政策の中に欠落をしていたんじゃないだろうか。これははっきり申し上げてよろしいと思うんでありますけれど、日米間の農産物摩擦、しょせんはわが国の農業のあり方、食糧確保を目指すあり方、こういった農産物をめぐる長期展望の欠如から生まれてきたものであろうというふうに私ははっきり申し上げたいんでありますが、この際長官の御所見も伺っておきたいと思います。
  202. 川合英一

    政府委員(川合英一君) ただいま先生から、先に工業と農業を分断した物の考え方について御批判がございましたし、またただいま中長期的な見地から企画庁として農業政策をどう考えるのかというお話があったわけでございますけれども、企画庁におきましても、現在の七カ年計画におきましても農業を食糧安全その他の見地から位置づけて、中長期的に農業のあり方というのを論じておるわけでございます。さらに現在、先ほど長官が申し上げました長期展望委員会におきましても、長期的な農業のあり方等もいろいろ御議論いただいておるわけでございます。その中におきまして、ひとつ先生に御理解いただきたいのは、工業と農業の違いというのは、たとえば畜産物等で施設的な豚とか鶏とか、ブロイラーとかいうものはかなり日本の場合も工業と同じようにある程度EC並みの水準にかなり近づきつつあるという状況でございますが、一方、土地利用型の農業につきましては、土地所有の零細性等もありまして、なかなか規模拡大が進まないと。したがって、生産性の向上もなかなかむずかしいという実情にあるわけでございまして、かなり農水省の方も規模拡大等によるコストダウンにも努力しておるわけですが、いまのところ裸のままで国際競争力を持たせるというようなぐあいには土地利用型農業はなかなか時間がかかるという状況にあるわけであります。したがいまして、そのような場合に食糧安全という見地も含めまして、土地利用型農業をどのような形で規模拡大を進めながら、さらに効率的な生産を確保していきつつ、国際的にも合意の得られる形をつくっていくかということが、今後の国際的にもあるいは国内的にも取り組まなければいけない農業の問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。また、そういう方向で長期展望あるいはいまの七カ年計画も書かれておるというふうに考えるわけでございます。
  203. 木島則夫

    ○木島則夫君 きょうはあえて私農林省はお呼びしなかったわけです。お答えは大体想像できるからでございます。  そこで、企画庁としての、つまり大所高所に立った日本の全体の、また日本と国際的な関係をどう把握するか、そういった大所高所に立った企画庁の御意見も私はぜひはっきりと自主的な御意見を伺う意味で、あえてきょうは農林省をお呼びしなかったわけですね。だから、そこのところを踏まえてお答えをこれからいただきたいと思うわけでありますけれど、先ほど長官のお答えの中で、もう一つ私ははっきりさしていただきたかったんでありますけれど、つまり日本経済の国際化ということは、非能率な産業分野は海外の生産力に思い切って任せる。日本にはもっと高度の分野に挑戦をするという国際分業の理念がそこにあるのではないかという質問に対してはどんなふうにお答えをしていただくでしょうか。
  204. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 工業の分野では、これは必然的に私はそうならざるを得ない、こう思っております。たとえば、軽工業あるいは雑貨工業の分野等におきましては、日本はもう韓国に及ばない分野のものもたくさん出てまいりまして、撤退を始めたところもございます。そして、日本は、さらに原子力エネルギーとか、コンピューター、エレクトロニクスあるいは生命科学、こういう分野に新たに挑戦をしていく、これはおっしゃるとおりになりつつあると思います。  しかし、この農業の分野につきましては事情が私は若干違う、こう思うのであります。食糧の安全保障、こういう見地もございましょう。ある程度の自給力を維持するということもそういう角度から必要だ、こう思います。  今回私どもが痛感をいたしますのは、こういう外圧が起こってきたのを機会に、今後できるだけ強い農業につくりかえる、そういう工夫と努力が必要ではなかろうか。先ほど一部の分野ではEC並みの競争力を持つようになったという説明がございましたが、そのとおりでございまして、そういう工夫と努力をやれば、アメリカ並みにいくということはなかなかむずかしくても、EC並みの力を農業に持たせるということは必ずしも不可能ではない。だから、こういう場合にこそ国内対策をしっかりやって、強い農業につくりかえていく。無条件で市場の開放はやれませんから、農業に関しては。だから、強い農業につくりかえていく、そういうことを一方で進めていく。だから、農業団体なども全部頭からだめだ、こうおっしゃらぬで、ある程度前向きに強い農業につくりかえるように政府はひとつしっかり金を出せ、こういうことをおっしゃればいいのではないか、私はこう思っておるんです。
  205. 木島則夫

    ○木島則夫君 せっかくお話が出ましたので、もうちょっと長官のプランニングというか、青写真みたいなものを聞かしていただきたいのでありますが、長官が考える強い農業というのは、具体的に、これは質問通告を申し上げておりませんので、あるいはお答えにくいと思うんでありますけれど、長官の頭の中にございます日本の強い農業のあり方、それはどういうものでございましょうか。
  206. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは、来月、二十一世紀を展望いたしました日本の産業社会のあり方等につきましての答申をいただきまして、それを参考にして今後私ども最終方向を明らかにしたい、こう思っておるんですけれども、要するに競争力のある農業という意味でございまして、先ほど申し上げましたように、一部の分野ではEC並みの力をもう備えておる、だから残る分野でもできるだけ工夫をすることによってEC並みの力が確保できるようなそういう生産性の向上を図っていく、そういうことが強い農業、こういう意味でございます。
  207. 木島則夫

    ○木島則夫君 問題のオレンジと牛肉でございますけれど、少し具体的に教えていただきたいんでありますけれど、オレンジの自由化が行われたとして、アメリカ並みに安く買えるのかということですね。  それから、非常に具体的に伺います。  現在、幾つもの、三つも四つもの段階の流通業者の手を経ているのが一気に短縮されるメリットがあるんじゃないか。たとえば、スーパーの貿易部門が直接輸入をして、系列のスーパーで売ることも可能になる。そうすれば、当然流通機構の改善策にもつながる、こういうことにもなるわけでありますが、この辺は企画庁としてどういうふうな見通しをお持ちでございますか。
  208. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) オレンジの自由化をした場合に、アメリカ並みに安くなるかという御質問でございます。それに直接お答えするのはなかなかきついことだと思いますが、多少過去の数字から申し上げますと、オレンジの小売価格の動きを追ってみますと、季節的に輸入枠が大きくなります六月から八月の時期は、ほかの時期に比べまして平均的には割り安になっております。このことから、輸入自由化によります輸入量の増加は価格引き下げ効果を有するものと期待してよろしいかと思っております。  次に、流通のことについてお話がございまして、例を挙げて御質問がございまして、スーパー等による直接買い付けの道が開かれた場合にいかがか、こういう御質問でございますが、これもその結果すぐこうなるというふうな断定的な言い方は非常にむずかしいわけでございますが、一般的に申し上げますと、既存の卸売市場というような流通の経路がございますが、その流通に対しまして、新しいそういう流通経路は競争的に機能するということが通常考えられますので、流通コスト節減に好ましい方向に動くのではないかというのが一般的に考えられておるところでございます。
  209. 木島則夫

    ○木島則夫君 これは言わずもがなでありますけれど、日本市場に輸出を希望している国に対して等しく門戸を開放することになり、市場が閉鎖的であるといった不満がやわらぐこと、これはもうお答え要りません。そういったことも当然あろうと思います。  ところで、私が知る限りにおいては、ミカン業者と申しますか、ミカンをつくっていらっしゃる方々はいま大変困っていらっしゃる。つまり、ミカンが安過ぎるんじゃないか、そのために晩柑類に移行をしている、これも事実のようでございます。そういうところに自由化されてオレンジが入ってくる、当然競合をする、この辺は企画庁として、もし自由化されてオレンジが入ってきたときに、一つは、日本のミカンと何というか、嗜好の点でどういう競合性があるのか、また競争性においてどういうふうになるのか、その辺はどんなふうな見通しを立てていらっしゃるか。
  210. 川合英一

    政府委員(川合英一君) オレンジを自由化したという仮定で物を申し上げるのも、そういう事態が現にあるわけでございませんので、非常にむずかしいわけでございますが、先生御指摘のとおり、現在ミカン農家につきましては、米と同じように生産調整をやって晩柑、ナツカンに切りかえを行っているという事態にあるわけでございまして、そういうことの中で、かなりオレンジの場合は日本のミカンよりは香りの面において非常にすぐれた特徴を持っているというようなことから、たとえばジュースなんかの場合には日本の通常のミカンジュースなんかに比べますと非常に市場性が高いというような話もございまして、なかなか日本のみかん農家にとっては強力な競争相手が出現するという形になってくるんだろうと思います。  その場合、ミカン農家というのは比較的ミカン専業的な形でやっておられる農家が多くて、そこで転換に当たっても晩柑類とかそういう似たような形のものの高接ぎ等で対処しておりますので、そういう状況から見ると、なかなかこれは大変な問題になるんではないかということが考えられますが、これはまだそういう事態が起こっているわけでございませんので、仮定の事態でお答えするわけにもいかないわけですが、事情はそういう事情にあるということだと考えております。
  211. 木島則夫

    ○木島則夫君 とにかく香りがよくって、味がよくって、値段がもっと安くなれば、これはもう需要がふえることは当然なんですね、自由化されれば。そうすると、日本のミカンとは競合する。当然、そのミカン農家、業者に対していろいろな影響が出てくる、これは当然であろうと思います。これはあくまで仮定の問題でありますから、この先私があれやこれやと申し上げることはむしろ慎まなければならないと思いますが、さて、問題はこの畜産というか、牛肉ですね。これは私は当委員会でもずいぶん関心を持っていままでやらしていただいた問題でございます。農林省呼んでおりませんので、企画庁独自の御見解をきょうは承りたい。  畜産振興事業団は差益金としてキロ当たり二百円から四百円の範囲で、年間にして三百億から三百五十億に上る金をプールしております。そして、これを国内の肉牛生産振興のために使っております。これは間違いございませんね。  さて、その畜産振興事業団が発足をして二十年たちましたね。二十年たった。たったのに、どれだけの肉牛生産体制の基盤ができたのか、この辺は具体的に御説明をいただきたい。御報告をいただきたい。
  212. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) 輸入牛肉の差益金につきましては、先生も御指摘のように、長期的観点に立ちまして、わが国畜産の生産合理化、流通の改善等に使用いたしますとともに、小売価格の引き下げを図るためのいろいろの安売り事業の実施のために使用されておるところでございます。  そこで、御質問は畜産振興事業団のこうした助成策等によって畜産の合理化はどのように進んだかということでございますが、わが国畜産の規模拡大は、肉用牛につきましてはいまだ零細性を脱却できないものの、結果といたしますと、数字で見ますと、着実に進行しているということは事実だと思います。これはまた、そのために消費価格は、時点の取り方にもよりますけれども、一般物価に比べて安定的な推移を示しておると思います。これは一つには農家の生産性向上努力ということもありますし、国からの指導、援助といったようなものもありまして、こういうものが総合的な結果であらわれていると思いますが、その中に御指摘の事業団からの助成というものも一定の役割りを果たしておるというふうに評価いたしております。
  213. 木島則夫

    ○木島則夫君 そうすると相当効果があったというふうにあなた方は、企画庁としては御評価をしている、こういうことですかね。現状としましては一、二頭飼いの農家の比率が依然として五十四年度七三%、非常に高率ですね。高率。ですから、コストダウンにこういう状態でつながるかどうかというような疑問を、素人ですけれど私は抱かざるを得ない。ですから、いま言った肉牛生産農家のコストダウンにどれだけ役立っているのか。基準価格帯を設けて肉牛が売られている、肉が売られているということは私もよく承知いたしております。価格的にはどうですか。上限、下限がございまして、その中で安定基準価格、つまり中央卸売市場の売買価格にのっとって安定基準価格というものが設けられておりますね。これは私も承知をしている。いま言ったような効果の中で、あなた方がおっしゃった効果があるという中で、価格的にどうふうな実証ができるのか。これはこの間、私質問通告をしたつもりでございます。
  214. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) 最初に、一、二頭といった飼育規模の小さいものがまだかなりあるんじゃないかと数字を挙げて御指摘でございました。合理化を図るべきだと思うがどうかということだと思います。  その次に、合理化が行われているということに伴っての価格面の動きはどうかと、特に和牛の安定価格帯との関係での御指摘かと思います。  まず、御指摘のとおり、肉用牛の飼育規模が小さいものが多いということでございますが、これを分けて考えてみますと、わが国におきます肉用牛の飼養の歴史といいますのは、もともと役肉兼用という形で行われておったものを肉利用のみの目的に転用をいたしたわけでございまして、歴史的な問題で浅いという点も一つ指摘されると思いますけれども、一番基本的には、いわば子取り経営といいますか、繁殖部門におきまして、特に草でございますね、粗飼料を必要とするわけですが、それは土地基盤の拡大に非常に問題があるということで、これは地理的に御理解いただけるところだと思います。そして、繁殖部門についての収益性が低かったというようなことで先生の御指摘のようになお低い段階にあるということだと思いますが、先ほど私がお答え申し上げましたように、低い段階にあるということは否めないとは思いますけれども、徐々にその規模拡大は進展しているということも事実でございまして、たとえば肉用牛の一戸当たりの飼養頭数は四十五年の二・〇頭から五十六年には六・五頭へと出ておるわけでございますし、繁殖部門におきましても五頭以上経営の頭数のシェアは四十六年が約一割であったのに対し、最近では約三割強というふうに数字は教えております。しかし、いずれにいたしましても、今後とも多頭飼養経営の育成、粗飼料基盤の充実等の施策の積極的促進が必要であると考えております。  次に、その価格帯の関係でございますが、価格帯の関係で見ますと、まず和牛と乳雄と分けて考えないといけないと思いますが、和牛はいわば上等の肉になると思いますが、和牛はおっしゃるようにかなり五十五年あたりにおきましては上限価格を突破いたしておりますが、乳雄の方につきましてはほとんど価格帯の中におさまっておるというのが実情でございます。和牛は輸入製品でこれを薄めると、価格を操作するというような方法に遠いわけでございまして、一時的な需要のあやで、かなり上限価格を突破するということもあるわけでございますが、乳雄につきましては、先ほども言いましたようにかなり安定的な動きをしているということでございます。先生の御指摘のように、この肉用牛の飼養がいろいろのまだこれからの発展といいますか、生産合理化をなおなお図っていかなければいけないということも事実でございますが、徐々にではございますが、伸びてきているということもひとつ御理解をいただきたいと、こういうふうに思います。
  215. 木島則夫

    ○木島則夫君 ずいぶん気の長い話で、長期的な観点に立たなければいけないと、農業政策はわかりますけれど、畜産振興事業団が発足して二十年になりますね。差益金の使い道、そういうものはやっぱりもっと国民の目にはっきりと映るような効果を私は現出してほしかったと。  もう時間がありませんので、最後に二点だけ伺いたいんでありますけれど、アメリカの対日供給能力をどう見るか。つまり自由化されたらアメリカなんかの肉は入ってこないんだよと、ほかからどんどん来ちまうんだと、こう言うけれど、私は必ずしもそうは思ってない。やる気になればアメリカ日本向けにどんどんつくってやってくる。それから、河本長官の前々の小坂経済企画庁長官が私の質問に答えて、牛肉が安くなったときに、その需要はどうかという御質問を申し上げたら、爆発的な需要が起こる、こういうふうにおっしゃっております。この二点について、どういうふうにいま経企庁はお考えになっているか。
  216. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) FAOの調べによりますと、一九七九年アメリカ国内で九百九十三万トンの生産を上げながら、さらに七十二万トンの輸入を豪州、ニュージーランド等からいたしております。その一方で日本へ高級肉等を四万トン輸出しておるわけでございますが、米国が日本への輸出余力を有しているかどうかということにつきましては、先生の言われた御趣旨も理解できないわけではございませんで、一概に言うことはできませんし、またいままでの状況はそのまま変わらないというふうに考えるのもいささか疑問だとは思いますけれども、いま言いましたような数字の性格から申し上げますと、アメリカが牛肉の準輸入国であるという状況からして、高級牛肉を別にすると、いままでの数字からだけ多くを期待できるということも言い切れない、こういうふうに思います。ただ、先生の言われたような状況の変化も起きるではないかということも、それは考えられるところだと思います。  次に、牛肉の価格とそれから消費関係をどう見るかということでございますが、この畜産物の消費動向を見ますと、価格が上昇した五十三年以降で申し上げますが、牛肉の消費が減少して、価格が下落をいたしました豚肉の消費が増加をする等非常に価格に敏感な反応を示しております。したがいまして、このようなことから、牛肉価格が相対的に安定すれば、これはほかの肉、ほかの食物等との相対関係を見なければいけませんが、相対的に安定すれば豚肉、鶏肉、魚介類等との代替という面もあり、牛肉需要量が増加するということは当然考えられるところだと思います。
  217. 木島則夫

    ○木島則夫君 もう一点、前々企画庁長官が、牛肉の値段が安くなれば爆発的な需要消費につながると、こう言われたんだけれども、あなた方はそう見ますか。
  218. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) これも大変むずかしい御質問でございますが、肉の価格は、牛肉だけの時系列で見た上がり下がりということもさることながら、それとそのほかの肉との関係というのも考えなければいけません。そういう意味で相対的な価格を問題にして議論をしなければいけないという点が一つと、それから先ほど来いろいろ問題になっております可処分所得といいますか、所得効果という面も考えなければいけませんので、一義的には言えませんが、下がればふえるというような一般的なことは、大変恐縮でございますが、あり得るとは思います。
  219. 木島則夫

    ○木島則夫君 結構です。
  220. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 重複が避けられるように選択をいたしましたけれども、若干の点で重複をいたしますが、御理解をいただいてお答えを願いたいと思います。  私は、公共事業の前倒しで果たして景気回復が可能ですかという立場からお尋ねをいたします。  われわれの物価対策特別委員会が設置されましたのは、第一次石油ショック以降困難な経済環境を迎えて、国、地方とも、財政はもちろん国民生活も相当な困難を体験をいたしておりまして、しかも物価の動向は、石油価格の持続的高騰の影響で、海外からのインフレ圧力もあって、上昇を続けておるときでありました。こういったときに、特に季節的商品でありますとか、わけても自然条件影響を受けやすい季節野菜の価格の異常な騰貴から国民の消費生活を守るために適切な諸施策を論議することを目的としてでございました。昭和五十五年、五十六年の冬野菜におきましては異常な高値で物価指数押し上げの元凶のようにも言われたことがございましたけれども、今日では国内物価政府の予想すら下回る鎮静ぶりでございますし、例年問題になります季節野菜までが安定した優等生ぶりを示しておるのが現況でございます。  しかしこの物価の安定は、売れないからの、買われないからの安定であり、消費伸びがないから安定していると言われておりますとおり、勤労者所得が前年度に比べて実質低下するという異常な賃金抑制政策のもとで、消費需要の極度の落ち込みにありますことはすでにたくさんの質問者が申されましたところであります。本来ありがたいはずの物価安定が、それを下回る実質賃金の低下によりまして国民生活は大きく圧迫をされ、国民は生活の切り詰めを余儀なくされておりまするし、中小企業の倒産でありますとか、雇用不安は、これからもさらに大きくなるのではないかという心配は去りません。その結果国庫の収入も大幅に減額を余儀なくされ、昭和五十六年度の歳入欠陥は二兆円を超えると言われております状況ですが、このような状況では、政府にとっての至上命令であります財政再建すらも破綻をしてしまうとさえ言われておりますのが今日の状況であります。  このような結果を招いたことについて、巷間次のような批判を聞きます。すなわち、経済学的にはいわゆる近代経済学といいますか、数理経済学ではいろいろの統計数字を使って目先どうなるかということを考えるだけであって、資本主義経済の矛盾というようなことには一切目を向けないところにあるということであり、また財政的には小手先細工でさしあたりのつじつまを合わせてきただけだとか、経済が人間の心理で動くということを理解しない硬直志向だとか言われております。確かにその辺のところもありますかもしれませんけれども経済にはさらに多くの要因の絡みがあるはずです。このような実態を招いてきましたことについての特徴的な原因、先ほどもお答えがありましたけれども、重ねて、どこにありますのか、経済企画庁長官の御所見を承りたいと存じます。
  221. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 公共事業の前倒しだけで景気回復するのかと、こういうお話でございますが、公共事業の前倒しをいたしますと、確かに一時的に経済に大きな効果は出てくると思いますが、それだけで直ちに景気回復すると、そのようには私ども判断をしておりません。公共事業GNPの現在九%見当でございますので、やはり経済全体を見ました場合には、所得伸びまして、そして消費住宅拡大をする、それからまた設備の近代化あるいは省エネルギー投資が軌道に乗る、貿易拡大する、そこへ公共事業はある程度ふえる、こういう幾つかの要素があって初めて景気はよくなるんだと、こう思います。  ただ、現在政府としてとり得る景気刺激対策は、公共事業とか公的住宅とか災害復旧とか、こういうものの前倒ししかいまのところ対策がないものですから、万やむを得ずこれに主力を集中しておるというのが現状でございまして、したがいまして私どもは、このことだけで景気が必ず回復する、そういうことはとても断定はできない、こう思っております。
  222. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 ただいま長官にお尋ねをいたしましたのは、公共事業の前倒しが景気回復を可能にするかどうかという前段に当たります、今日のこういった財政状態を招きましたことについての長官の御所見ということでお尋ねをいたしました。また質問の中で適当なときがありましたら、そのことについて御教示をいただきたいと存じます。  そういったことで、とにかく大変な財政状態を招いております。そういうことから今日行政改革、すなわち財政再建については、高度経済成長政策のつけを国民が支払わされておるのだという不満の声を聞きます。まさしく今日の経済状態を招いた原因は、昭和三十年代の高度経済成長政策を進め出したときからすでに始まっておることでございまするし、そして昭和三十年代に日本経済の今日を予測しておられます著名な経済学者の著書まで出しております。  本来、経済成長とは、私は国民の購買力の増大ということが一番大切なことだ、これを前提といたしております。国民の購買力の増大が消費需要拡大をしていきます。そうすればまた生産の増強が誘発されて経済成長をしていく、こういう姿でなければなりません。国民の購買力がそんなに急激に増加することはありませんのですから、高度経済成長という、そのこと自体がやっぱり無理であったのではないか、このような考えも成り立ちます。今日、日本の高度経済成長政策は、国民の購買力のかわりに、公共事業によります多額の財政投資需要をつくり出してこられました。さらにまた企業に対する行政施策によって手厚くこれを支えてこられましたのも事実であります。しかし、先ほど申し上げましたように、もちろん公共事業といいましても、当然労務賃金の支払いは増加をします。最終消費財の消費もいたします面から、消費需要拡大に対してはやっぱり貢献をする面がありますけれども、考えなければならないのは、公共事業は直接消費につながらないところの生産財の生産を伴います。さらにはまた、公共事業はいわば資本同士、資本間、すなわち資本同士の需要であって消費拡大には直接つながらないという面も計算に入れておかなければならないと思います。いわゆる鉄が鉄を生むの言葉のとおりであります。したがって、ある意味では空景気をつくるのだと言う人さえあります。日本経済はとにもかくにも公共事業という多額の財政投資と、さらに軍事費に金を使ってこなかったこととあわせまして、これらの莫大な国家資金が手厚い援護政策として、やはり企業の技術革新や、設備の近代化を進めることを可能にしてまいりました。そういうところから強い競争体質をつくり上げて、今日貿易摩擦の現状が示しておりますとおり、世界市場を支配するまでに外需拡大してきました。こういった両面から国家経済を維持してきたのでありますけれども、その反面にやっぱり多額の国債が累積をされてきております。このままでは国家財政が破綻するというところから、しかも内外からのインフレ要因も懸念をしながら、行政改革、財政再建というデフレ政策を取り始められたのでありますと思います。そういう結果、歳出削減の名のもとにやっぱり国民への施策は後退をしなければならなくなりましたし、経済面では経済力の弱い中小企業に倒産が出てきたり、労働賃金が抑制されたり、さらにはそういった経済情勢でありますから同じ労働者でありながらもその勤務する企業によって賃金の格差が拡大をしてまいっておりまして、ようやくにしてそれらの恵まれない立場の人たちからの不満がうっせきをし出しておりますというのが現状であろうと思います。だからこのままではさらに国民生活が圧迫される可能性がきわめて高いということから、私はいまが施策として一番大切なときなのではないか、こういうように思っております。そういうときに、今日の日本経済は、いまが最も大切なときではないかと思っておりますのですけれども、このような経過について当局はどのように考えておられますのか承りたいと思います。
  223. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) ただいま先生から昭和三十年代あるいは高度成長の時期のツケがいま回っているんではないかというお話がございましたけれども、高度成長期には御存じのとおり、多額の自然増収がございまして、その見返りとしまして減税を行うという形で財政規模自身は収支を保ってきたというのがいままでの経過ではなかったかというふうに思われます。  第一次石油危機後財政赤字が増加したわけでございますが、その大きな要因は社会保障あるいは文教等の公共サービスの水準がかなり高かったということもございますし、ただいま御指摘のとおり、景気対策ということで公共投資の拡充が図られたという点もございます。しかし、全体として見ますと、いまのところ国際的に見まして、わが国政府自身は大きな政府ではございませんで、むしろ大きな政府になる可能性を持っているというふうに考えられるわけでございます。  で、いままでの活動を支えてまいりましたのは主として民間活力でございまして、やはり設備投資等を中心といたしまして生産活動が高められ、先ほど来お話もございましたような賃金に対する分配の面で見ましても分配率はむしろ上がっているという状況にございます。  一方、賃金格差の面では、昭和四十年のころから見ますと、賃金格差はむしろ一時縮まったわけでございますが、第一次石油危機後は若干その格差が再び、従来に比べますと若干大きくなっておりますが、高度成長期に比べますとかなり格差は縮小しているという状況にあろうかと思います。  したがいまして、全体として見ますと、設備投資あるいは公共事業、それからそれを補完するという形での生産拡大によりまして国民の福祉、国民生活の向上が図られてきたのではないかというふうに考えているわけでございます。
  224. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 先に進めさしていただきます。  そういったことでいままでは外需が主体でございましたけれども、諸般の情勢から国内市場の拡大型に政府政策の転換を進めておられるように思います。そして、今日までの施策の中で内需拡大に直結すると言われております一つは、所得税の減税、これも見送ってこられました。さらに二つ目は、春闘における賃上げも昨年を下回っております。これから決まっていくであろう中小零細企業はやはりよくありません。そういったことから、格差はますます拡大をするということが見通されております。で、今回の不況は、私の考え方としては、先ほどの高度成長期からすでに起因しておると申し上げましたけれども、それは論議をさておきまして、ミクロ的に考えてみましても、家庭部門の不振を反映をした消費不況だと言われております。総需要の六〇%を占める消費需要の抑制による物価の鎮静であります。だから、その原因を取り除いていかなければ内需拡大をされません。原因を取り除くことによって可処分所得拡大もまた期待をすることができるのでありますけれども、幾つかの要因があります中で、最も直接的な関係のあります減税、さらには、また賃上げ、これらがいわば見送られたという形でありますけれども、そういったことでは、近い将来に、これは過ちであったということを証明するような、好ましいことではありませんけれども、現象を迎えるのではないかという心配を私は持っておるのでございますけれども、そういう心配はありませんかどうかお考え方を承りたいと思います。
  225. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 現在が消費不況だと、こういうお話がございました。私は、ある意味では消費不況であり、住宅不況であり、中小企業不況だと、こう思っておりますが、その背景は可処分所得が昨年減少した、そういうところに原因があろうかと、こう思います。  そこで、これからの経済でありますが、可処分所得がふえるということが、これはもう一つの大きな前提になろうかと思うんです。  それからもう一つは、世界経済回復をいたしまして、そしてわが国貿易拡大均衡の方向伸びていくと、そういうことが当然必要であろう、このように考えております。  五十六年度の経済計画どおり成長しなかったというのは、やはり可処分所得の問題と、それから貿易不振と、この二つが原因であろうと、こう思っております。
  226. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 そういうことから、私らの望みます二つの施策が見送られました。そういったことで政府としましてはたった一つ内需拡大策として前倒し政策を表明をされておられます。断っておきますけれども、それらは住宅対策、災害復旧対策等を含めて公共事業ということにいたしておりますので御理解をいただきます。そういうことから私は、この前倒し政策でなぜ効果が期待薄かということを申し上げてみますと、一つは財政資金を投じて需要をふやしていくということになりますと数字的には景気はよくなります。けれども、本当に国内景気の上昇を期待しようとすれば、先ほどから申し上げておりますようにやはり国民の購買力を培養をして、そこからの持続した需要拡大をされなければならない、このように思っておりますのが第一点です。  二つ目の点は、今日の経済状態景気を持ち上げるだけの公共事業を持続的に起こしていくということは、やっぱり財政の面から不可能なのではないか。  三つ目の問題は、公共事業への財政投資はさきにも述べましたとおり、生産財に回る面もありまして、全部が直接消費には結びつかないということから同じお金を使っても不効率な面があるように思います。以上のようなことからして確かに一部公共事業に対する依存度の高い地方の中小企業を救済する効果はありましても、内需を活性化していく妙薬とはなかなか成り得ない。長官は先ほど、これ単独ではそれを期待することは無理だ、このようにおっしゃっておられました。しかし、いまとろうとしておられます施策の中で一番大きなのが前倒し政策でございますから、やっぱりこれだけである程度の見通しを立てなければならない今日の状態なのではないか、このように思っております。  先般大蔵大臣は、減税しても貯金がふえたらどうすると言っておられたそうでありますけれども、国民が自己防衛をせなければならないような財政施策に問題がありますと思いますのですが、私はやっぱり国民に対する購買力培養が肝心である。それをほうって公共事業だけではとても無理なのではないか、このように思いますが、このことについてお答えは先ほどいただきました。補足をしていただきます点がありましたらお願いをいたします。
  227. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先般参議院の予算委員会で、たしか参議院の予算委員会であったと思いますが、公共事業を一兆ふやした場合にGNPにどういう影響があるか、減税を一兆円した場合にそのGNPにどれだけの影響があるかというそういう作業をせよ、こういうことであったと思うのですが、そのときに専門家の間で試算をさせましたところが、公共事業を一兆ふやしますとGNPが〇・五%高まる。減税の場合は貯蓄に回るというようなこともございまして〇・二%の成長率が高まる、こういうことを報告をいたしたのでございます。したがいまして、さしあたっては景気に直接影響があるということではやっぱり公共事業の方が幾らか効果的だ、このように思います。ただ、いまお述べになりましたことは国民の可処分所得を伸ばしていくということが政策の一番の中心であるべきである、こういうお話でございまして、政府の方といたしましても政策の目的は、一つは国民の生活水準を充実向上することであり、それから第二はわが国が国際社会に貢献できるような、国際経済に貢献できるような経済力を維持拡大することである、そういうことを常々申し上げておりますが、そういう角度から考えますと可処分所得がふえるようなそういう方向に行くということは、これはもう当然望ましいことだと、こう思っております。  以上です。
  228. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 とにかく今日の日本の財政運営というものは非常にむずかしい状態にありますと思います。私はこれを三すくみの状態にあると申しております。たとえば、景気の浮揚を図っていくためには、とりあえずとられるべき手段として財政投資が必要であります。ところが、財政投資を継続していこうとすれば財政再建を破綻に導くことになりかねません。それは、財政再建を破綻に導かないように財源を求めようとした場合に税にこれを求めれば、鈴木総理の増税なき財政再建の公約を破ることになります。このような形を私は三すくみの状態にあると考えております。したがって、これを解決をしていかなければなりません。  もう一つの問題は、日本輸出拡大の大きな原因の一つは、やっぱり民間活力設備投資、技術改革等にありましたとは思いますけれども、何よりも、賃金物価上昇以下に抑圧されながらも勤勉しかも従順に働いてきた労働者の努力がありますと思います。しかし、先ほども申し上げましたとおり、実質賃金の低下は続いておりました。その後でまた、ことしは前年度を下回る賃上げ率です。それでも発表されておりますのは大企業だけでありまして、発表のされておらない、これから決まっていくであろう三分の二を占めます中小零細企業に働く労働者との賃金格差は、ますます拡大するであろうという予測が立ちます。政治に対する不満は、先ほども言いましたとおり、ようやくうっせきをしてきております。これを政治力によりまして低賃金政策を続けるのも限界に来ておるのではないか、このように思っておるのでありますけれども、いわばこの二つの点だけから考えてみましても、今日の日本経済は袋小路に追い込まれておるように思われてなりません。そのような状況のもとにおいて経済政策景気対策を進めていくのはまことに困難なことだろうと思いますが、景気の担当大臣とされまして今後の景気対策について、本当に抱負は持っておられますと思いますけれども、確信のほどをお示しをいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  229. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私どもは、いまのわが国経済状態は異常な状態である、こう思っております。これが普通の姿であるとは思っておらないのであります。第二次石油危機の厳しい影響がいま世界を覆っておりますが、日本もその一番厳しい状況のもとにあるというのがいま現状だと、こう思っておるんです。そこで、先ほど来繰り返して、五十五年と五十六年が三%成長になったけれども、これは日本経済の実力ではない、一時的な現象だと、このように考えておりまして、やはりこういう状態を抜け出すためには何が必要かといいますと、一番肝心なことは、世界経済全体の再活性化だと、こう思います。  そこで、そのためには何が必要かというと、結局アメリカ高金利を直してもらうということが決め手だと、こう思っておるところでございます。  それからもう一つは、自由貿易体制を維持すると、こういうことだと思いますが、これからの幾つかの国際会議でもその二つが中心的な課題になろうと、こう思っておるところでございます。  私どもは、現在が最悪状態ではございますけれども、ことしの後半、遅くとも来年以降はある程度経済力が回復するであろう、そして再び五%見当成長の力を日本経済が持つようになるであろうと。まち、そういう方向に持っていきませんと、国民生活も安定をいたしませんし、それから財政再建もできない、こう思いますので、できるだけ早く日本経済が安定成長路線に定着するような、そういう方向政策努力を集中してまいりた  い、このように考えておるところでございます。
  230. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 終わります。
  231. 高杉廸忠

    委員長高杉廸忠君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十分散会      —————・—————