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1982-05-13 第96回国会 参議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十三日(木曜日)    午前十時六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         坂元 親男君     理 事                 下条進一郎君                 鈴木 正一君                 宮田  輝君                 川村 清一君                 鶴岡  洋君     委 員                 岡部 三郎君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 藏内 修治君                 古賀雷四郎君                 田原 武雄君                 中村 禎二君                 三浦 八水君                 坂倉 藤吾君                 村沢  牧君                 八百板 正君                 藤原 房雄君                 下田 京子君                 田渕 哲也君    国務大臣        農林水産大臣   田澤 吉郎君    政府委員        農林水産政務次        官        成相 善十君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        林野庁長官    秋山 智英君        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        経済企画庁調整        局調整課長    海野 恒男君        外務省北米局北        米第二課長    朝海 和夫君        通商産業省通商        政策局通商企画        調査室長     鈴木 孝男君        通商産業省貿易        局輸出課長    伊藤 敬一君        通商産業省貿易        局農水課長   茶谷  肇君    参考人        全国農協中央会        常務理事     榊  春夫君        主婦連合会事務        局長       清水 鳩子君        全日本農民組合        連合会書記長   谷本たかし君        全国漁業協同組        合連合会会長  池尻 文二君        和光大学経済学        部教授      持田 恵三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農林水産政策に関する調査  (農畜水産物輸入自由化問題に関する件)  (農畜水産物輸入自由化反対に関する決議の  件)     —————————————
  2. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農畜水産物輸入自由化問題に関する調査のため、本日の委員会参考人として全国農協中央会常務理事榊春夫君、主婦連合会事務局長清水鳩子君、全日本農民組合連合会書記長谷本たかし君、全国漁業協同組合連合会会長池尻文二君及び和光大学経済学部教授持田恵三君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 農林水産政策に関する調査のうち、農畜水産物輸入自由化問題に関する件を議題といたします。  本日は、参考人方々に御出席を願っておりますので、御意見を承ることといたします。  この際、参考人方々に一言あいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ、当委員会に御出席をいただきましてありがとうございます。  農畜水産物輸入自由化問題につきまして、忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、議事の進め方について申し上げます。御意見をお述べ願う時間はお一人十分程度とし、その順序は、榊参考人清水参考人谷本参考人池尻参考人持田参考人といたします。参考人の御意見の開陳が済みました後で、委員からの質問がありますので、お答えをお願いいたしますが、時間の都合がありますので、簡潔にお願いいたします。  それでは、榊参考人からお願いいたします。榊参考人
  5. 榊春夫

    参考人榊春夫君) 全国農協中央会の榊でございます。参考人として、自由化問題についての意見を述べさしていただく機会を与えられまして、ありがとうございました。  欧米諸国との間で貿易摩擦問題が深刻な政治問題化し、緊張状態に発展してまいりましたことは、はなはだ遺憾なことであります。そのよって来る原因を考えてみますと、第一には、アメリカ経済の不振、落ち込みが原因しているものと思います。第二次オイルショック後の米国経済がその打撃から脱出することができず、経済成長が停滞し、失業とインフレによる国民生活の不安が深刻化しております。また農業部門においても、豊作による過剰在庫の増大と国際環境の悪化による輸出不振によって四十年来と言われる農業危機に陥っております。  日米間の貿易摩擦の第一の要因は、米国経済的競争力相対的低下高金利政策など、米国経済の構造ないし経済運営にあるのであって、米国自体で解決する責任があると考えます。  このような状態に陥った要因一つとして、わが国の自動車を初めとする工業製品過度輸出攻勢を無視することはできません。貿易摩擦を引き起こした第二の要因は、この日本側の無秩序な工業製品輸出にあります。米国民が、わが国に対して後進国援助防衛費の負担が不十分であると思っているアメリカ国民としましては、不況克服に難渋しているアメリカ経済に追い打ちをかけたことに対して国民世論が反発するのも無理からぬものがあると思います。このような事情にあるにもかかわらず、貿易摩擦問題と言えば農産物貿易自由化がすべてであるかのごとき扱いかされていることははなはだ当を得ていないと思います。われわれ農業生産者及び生産者団体は、農産物輸入自由化はもちろん輸入枠拡大についても断固反対するものであります。  日米貿易摩擦原因は以上のごときものでありますから、アメリカの膨大な対日赤字をつくった原因者解決策を講ずべきであり、農産物分野貿易摩擦責任を負う理由は全くないものと考えます。工業製品輸出によって生じた貿易不均衡は工業部門で解決すべきであり、これを農産物に転嫁することは本末転倒であります。  以下、われわれの主張する点を要約して申し上げますと、第一に、貿易摩擦原因工業製品過度輸出にある以上、これを解決することなくしては農産物輸入を仮に自由化してみても、貿易摩擦がこれによって解消するものでないことは明白であり、農産物は無意味な犠牲だけを強いられる結果となります。  第二に、わが国農産物国際市場において閉鎖的であるとする見解は全く誤解であります。わが国農産物輸入額は一九八〇年で百六十九億ドルに達し、世界第一の農産物輸入国であり、特に穀物・大豆についてはアメリカからその九〇%を輸入し、小麦も五七%であります。しかも農産物輸入量は年々順調に増大しており、これを反映して国内生産は後退を余儀なくされているのであります。  第三に、農業分野においては、先進各国ともそれぞれの国の置かれている条件の相違から何らかの保護的措置をとっております。米国では、砂糖、酪農製品綿等中心に十三品目においてガット協定自由化義務を免れており、またガット協定に違反していると見られる食肉輸入法により牛肉輸入数量制限を実施しております。EC諸国においては、共通の農業政策により域内農業を保護し、輸入農産物に対して高額の輸入課徴金を課す一方、輸出農産物に対して奨励金を交付するなど、きわめて露骨な保護政策をとっております。  私は、このことを一義的に非難するのではなく、自然に制約されることの大きい農産物については、工業製品と異なって、各国の実情に合った保護政策を講ずることによって、世界全体として食糧生産確保努力が行われているのが実態であり、国際貿易上も農産物についてはこのことを是認すべきであることを申し上げたいのであります。  次に、第四点としまして、牛肉、オレンジ、果汁を初め、農産物輸入制限品目は、わが国農業基幹作目ないしは地域農業を支える重要な特産物であります。しかも牛肉自由化酪農経営に重大な影響を与え、また柑橘の自由化落葉果樹全体に深刻な影響を与えるなど相互に密接な関連性があることは言うまでもありません。  第五に、いまや日本人カロリー摂取量は一人一日平均二千五百キロカロリーに達し、日本人の体位や労働程度から見て飽和点に達し、近年ほぼ横ばいの状態であります。しかも食物構成の内容は、引き続きでん粉質が減少し、油脂、たん白がこれに置きかわる傾向にあります。このため、水田利用再編対策によって農業生産全体の再編成を迫られ、農畜産物は軒並み過剰問題を抱え、価格長期低迷生産資材の高騰によって農業所得昭和五十年以降連続的に実質低下という異常な厳しい状況に陥っております。  第六に、わが国農産物国内自給率は三〇%台という世界先進国の中で最も低い水準にあります。昭和五十五年四月の国会における食糧自給力強化に関する決議においても、この容易ならぬ事態にかんがみ、与野党挙げて国民食糧確保のため国内自給力向上策を講ずべきであるとの方針を示されております。われわれは切にその実行を期待するものであります。  なお、この機会に二、三申し上げておきたいことがございます。  その一つは、われわれ生産者は、農産物輸入自由化枠拡大に強く反対してまいりました。このことは単に生産者の利己的な要求ではなくて、国民食糧確保という農業者使命感から申し上げていることであります。幸いにして最近消費者労働団体からも理解と御支援をいただき、また地方経済団体からも御支援をいただいております。国会においてもさきに衆議院農林水産委員会において全党一致自由化枠拡大反対の御決議をいただきました。そのほか、知事会市長会町村会地方議会等地方公共団体もこぞって御決議をいただいております。このことは、農産物輸入自由化枠拡大反対国民的世論であり、国民食糧自給力確保はすべての政策に優先して確保さるべき国民的課題であることを実証するものであります。この中にあって、貿易摩擦問題を引き起こした第一番の責任者である財界がひとり農産物自由化を主張していることは、はなはだ理解に苦しむところであり、遺憾に存じます。  次に、農産物輸入自由化を求めるアメリカ政府方針でありますが、対日貿易赤字解消にほとんど役立つところのないことを承知しながら、わが国農業事情を無視して農産物完全自由化を誇大に宣伝しておりますが、これは私どもにとっては一種の威嚇としか受け取れないものであります。同盟国であるとまでされている世界最大の友好国との間において、このような状況下で物事が処理されることは、将来にわたって重大な禍根を残すことになると思うわけでありまして、農産物貿易における完全自由化要求は徹底的に排除していただきますよう強く要望いたします。  次に、わが国経済運営についてでありますが、国際摩擦を回避するためには基本的には過度輸出に依存しない日本経済の方向づけが重要であります。内需振興中心安定的経済成長を図るべきだと思います。そういった経済運営の中で農業の果たすべき役割りを重視していただきたいのであります。  なお、ガット協定の中では、国内生産制限を行っている場合には輸入制限措置をとることができる規定が設けられております。わが国では、多くの農産物が過剰であり、行政指導によって実質的な生産制限が行われているにもかかわらず、これが国内法に基づき強制されているものでないために、国際的に正当な評価をされていないうらみがあります。立法措置を講じて国に農産物生産制限を行う権限を認めることにつきましては、これが行き過ぎになるおそれがあるという点でむずかしい問題を含んでいるわけでありますが、農産物を外圧から守るためには検討に値する課題ではないかと考えます。  最後に、われわれ農業生産者団体としましては、国民食糧確保という重要な使命を持っているわけでありますから、国民に対して良質にして安い食糧を安定的に供給することは片時も忘れることのできない責務であると考えております。  このため、日本農業編成を図る中で飛躍的な生産合理化効率化を図るべく農協系統全組織を挙げて取り組むことといたしております。全国民に対してこの努力をお誓いしますと同時に、国政の立場からこれを支援し、促進していただきますようお願い申し上げます。  これらの事情も御勘案いただきまして、農産物輸入自由化枠拡大を断固として阻止していただきますよう重ねてお願いを申し上げまして、私の陳述を終わります。  以上です。
  6. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ありがとうございました。  次に、清水参考人お願いをいたします。
  7. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) ただいま御紹介いただきました主婦連合会清水でございます。  いま榊さんは一番川上の生産者というお立場で御発言があったわけですけれども、私は一番川下の消費者という立場で今回の自由化の問題について意見を述べてみたいと思います。  今回のアメリカ自由化要求に対しましては、日本消費者は、本格的な国際化市場開放を求める大きな波の中でどういうふうに考えていったらいいかという意味で、私たちはこの農業というもののあり方、そして私たちを取り巻いております食生活環境の見直しということに対しまして真剣に考えてまいりました。これは生産者団体の方が生産基盤とその生活基盤を失うという、そういう危機感と質的には違うかもわかりませんけれども、私たち消費者にとっても大変重大な問題でございました。  その中で幾つか考えたことを申し上げたいと思います。  基本的にはいま榊さんがおっしゃった背景と私の考えておりますことも同じでございまして、余りにもアメリカ要求はむちゃくちゃじゃないかと、もう少し一般の日本消費者を説得する材料というものを持ち合わせないということを大変残念に思って見てまいりました。直接そういうアメリカ生産者団体その他経済界の方にお目にかかる機会というのはございませんでしたので、新聞とかラジオとかその他の情報から判断したので間違っている部分もあるかと思いますけれども、余りにも相手国国民の感情を逆なでするような部分が大変多い。これは日米の外交の上からも大変に残念なことだというふうに思いまして、こういうことが起こる前にやっぱり日常的に日本消費者アメリカ消費者に対してどういうことを要求していかなきゃいけないか、話し合いの糸口をつくっていかなければいけないか、これはこれを機会にして私たちもそういう話し合い場づくりというものをぜひしていきたいと思いますし、やはり政府とか国会の中においてもぜひそういう場をつくることにこれからも御配慮いただければというふうに思っております。  具体的に申し上げますと、ここに農水省食品モニターのいたしました調査結果がございますんです。これは農水省のいたしました調査ですからどうせ手前みそだということになるかもしれませんけれども、その調査結果を見ましても、少し高くてもやはり日本でとれるものを買った方がいいんじゃないかという国民世論というのが過半数を超えております。これは本来、消費者感覚から申しますと、安いものが入るんだったら自由化に反対するのはおかしいんじゃないかというふうな意見が出るのが当然だと思いますけれども、それはなぜそういうふうになったかと申しますと、例の四十七、八年の石油パニック、それから大豆騒動状況というものは私たちはいまでもよく覚えております。そして、たとえそれが食糧であっても農産物であっても、そのときの場合によっては戦略物資と十分になり得る。その戦略物資として使われたときに、一体日本消費者というのは惨たんたる状況に置かれるということを国民はいやというほど知ったと思うんです。これは理屈じゃなくて、いまでも感覚の中で忘れることができないことだと、そういうことがこういう農林水産省モニター意見の中に出てきたのではないかというふうに思います。  それから、五十六年の十月二十一日に農水省が発表いたしました輸入ゼロの日という試算がございますけれども、あれも私たち国民にとっては大変に脅威なデータでございました。いまの日本自給食糧だけではいま私たちがとっているエネルギーの半分しか賄うことができないんだというふうなこと、これは安易に海外食糧輸入に頼っている体制というものは反省するべき時代に来たということの何よりのあかしだと思います。  続いて、最近NHKが「日本条件」ということで、三回にわたりまして「食糧・地球は警告する」という特集を組んでおりました。これは大変にいろいろな示唆に富んだ、私たちも全く知らないような材料がたくさん出てまいりましたけれども、その中で土壌流出とか灌漑用水の枯渇、農地砂漠化というものがアメリカという最大農産物輸出国において深刻な状況にあるということを知りましたときに、私たちは安易に海外農産物輸入を依存してしまうことに対する不安というものは、これはぬぐい去ることができないと思います。  それから、主婦連合会で毎年一回、東京都に住んでおります都民千人を対象に、農業についてどういうふうに思っているかという意見を求めてまいりました。その中でも、やはり最近特にはっきりしておりますことは、都会の消費者であっても、やはり安易に食糧海外に依存する体制というものは不安だ、やっぱり最低の農産物というものは自分たちでつくれるという、そういう保障をつくっておくべきじゃないかということを東京消費者は半数以上の人が訴えております。  そういうふうな背景を考えましたときに、私はいまアメリカ要求しております農産物完全自由化ということについては、やはりこういう日本消費者の気持ちというものをもっと丁寧に説明するべきではないかと思います。  先日、生活協同組合の代表の方がアメリカ農業団体代表の方とお会いになったそうですけれども、そのお話を伺いました。そうしましたら、生協ではこれだけの農水産物アメリカから買っているんだというデータをお出しになったらびっくりしておられた。そういうふうに事実を余り御存じないままに、ただ自由化しろ、それに反対する日本消費者はけしからぬというふうな言い方をしたので、何かもっとけんけんがくがく激しい議論になるかと思ったら、そうじゃなかったということを一昨日、私伺ったんですね。やはりそういう細かい情報がどうも伝わっていないんではないかというふうに思いました。  それから、次に安全性に関する問題ですけれども、これはいまの日本消費者が食べ物について安いということ以上にむしろ安全であるということを大変に要求しております。その理由は、やはり日本死亡率の中でがんの死亡率が群を抜いてふえているということ、これは添加物ですとか、農薬その他の化学合成物質による原因だろうということをみんなは素人なりにも感じているわけで、いまなるべくそういうものの少ない農産物を食べたい、本当に健康に役に立つ農産物を食べたいというふうな視点から考えますと、やはり長期間の輸送形態をとって日本に入ってくるアメリカ農水産物というものは、そういう意味からもかなり消費者には不安要因であろうというふうに思います。時間がございませんので、その具体的なことは省略いたします。  第三番目に申し上げたいのは、輸入食品検査体制の問題ですけれども、これは五十四年度のデータで少し古うございますけれども、輸入件数が三十数万件に対しまして、行政で直接検査しているのが全体の五%で、それから国の指定検査機関検査しているのが五%、合わせて一〇%しか輸入食品検査が行われていない。にもかかわらず、それを裏づけるように検査人員というものは全国で五十七名しかいない。その中で輸入農水産物がいまの量の何倍かにふえると、たとえば牛肉を例にとれば、アメリカはいま日本人が食べている牛肉と同じ量だけを買えと言ってきているそうですけれども、それだったら輸入検査体制というのはいますぐ倍にしないと、私たちはこれ以上危険、不安な輸入食品を体の中に取り込むことについては賛成はできないわけです。そういうことで、私たちはいろんな安全性の問題ですとか、それから国民が安心して生活できる食糧体制の確立とかいうことを考えたときに、いまのアメリカ要求というものに対しては国を挙げてはっきり言うべきことは言うという時代ではないかというふうに思っております。
  8. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ありがとうございました。  次に、谷本参考人お願いいたします。
  9. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) 貿易摩擦がなぜ起きたのか、日本経済の面から見てまいりますと、二度にわたる石油ショックからの混乱から日本経済がいち早く抜け出すことができたからだと言われてまいりました。その中身を見てまいりますと、幾つかの点が挙げられてよいと思います。  一つの点は、原油の値上がりを中小企業勤労国民にいち早くしわ寄せすることができたという点が一つございました。それからもう一つの点は、いわゆる減量経営の名による首切り合理化路線、これが成功的に行われたということがあったと思います。そのために日本の資本の国際競争力は強まりましたが、その反面、国内市場拡大を制約せざるを得ない状態が生まれました。かくして輸出にさらに拍車がかけられて集中豪雨的な輸出となったということではないかと思います。  そういう状態の中で農業つぶしが構造的に強められる事態となってまいりました。時間もありませんので、私は二つの点だけ挙げておきたいと思います。  一つの点は、農業生産過剰と輸入圧力の強まりということであります。高度経済成長時代に始まりました減反は、低成長時代には米だけではなくて主な農畜産物拡大されました。農産物価格も極端に抑制されるようになってまいりました。これは一方では消費が停滞する中で輸入量が逆にふえるということによって生み出されたものだと言っていいでしょう。米の第三期減反は来年、再来年から始まろうとしておりますが、米の第三期減反にいたしましても輸入削減をしないと転作指定のつじつまが合わぬという状況にすでになっております。  二番目の問題として挙げておきたいと思いますのは、耕種部門規模拡大も制約されざるを得ない状態になったということであります。  高度経済成長時代米作請負が広がり出したのに三つ要因がございました。一つ農地の貸し手の問題でありまして、安定兼業農家の増加であります。二つ目農地の借り手の問題でありまして、高率小作料を支払い得るような米価水準であったということがあります。そして三つ目には、生産力の階層間の格差拡大であります。  ところが、減量経営合理化強化以降こうした事情幾つかの変化が生まれております。たとえば雇用政策がその一つであります。低成長時代になりましてから臨時雇用が拡大されて、常用雇用が削減されるというふうに雇用政策が転換されました。加えて行政改革が行われようとしており、そしてこれがまた安定兼業農家の就労に大きな打撃を与えていくでありましょう。  さらにもう一つは米価の問題があります。生産者米価は低成長以降賃金抑制以上に抑え込まれてまいりました。一昨年の米価水準で見てみますと、原生産費のカバー率は戸数別で二三・一%に下がっております。米販売農家四戸のうち三戸が赤字販売を余儀なくされる状況になっているのであります。かくして規模拡大制約が強まるもとで上層農家の崩壊が開始されようとしております。農業をめぐる環境条件が厳しくなると小さな農家が滅びて大きな農家が育つと一般論として言われておるのでありますが、現実に生まれている状態は逆であります。たとえば水田で見ますというと三ヘクタール以上の農家が減少に転じ始めたというのがそれであります。  こうして見るならば日本農業の危機きわまれりと言わなければならぬでありましょう。輸出主導型経済構造を福祉型経済への転換を抜きにしては農業危機の克服はできない状態になったと言ってよいのであります。そうであるにもかかわらず、農業危機に決定的打撃を与える農産物輸入自由化が俎上に上げられるようになってまいりました。  前回の貿易アンバランスが問題となりました昭和五十二年、当時の農林大臣でありました鈴木善幸現内閣総理大臣は一月十四日私たち全日農など農民団体の代表に対して次のように述べております。日本農産物市場は外国に対し開放し過ぎていると。鈴木総理のこの言葉を引用するまでもなく、日本農産物市場は外国に対して開放のし過ぎであります。それは輸入量について見ましても群を抜いて世界一高いという事実が端的に示しておりましょう。あるいはまた、輸入制限措置について見てみましてもしかりでありましょう。残存輸入制限品目こそ二十二品目を数えておりますが、たとえばECについて見ますならば主要農畜産物輸入について課徴金制度でもって国境保護措置を行っておるのでありまして、これと比べてみましても日本輸入制限措置はいかに控え目であるかは明白であります。  さらに消費者にいたしましても、先ほど清水参考人が申し上げておりましたように、食糧自給の向上を望み、輸入拡大は望んでおりません。具体的な数字で見てみますと、昨年総理府が食糧供給のあり方について世論調査を行っておりますが、それによると、できるだけ自給すべしというのが七五%に上り、安ければ輸入した方がよろしいというのがわずかに一六%にすぎないという事実がこれを端的に示しております。  農畜産物輸入自由化をしても貿易黒字解消は焼け石に水であるのに対し、農業が受ける打撃はまさしく壊滅的であります。二十二品目完全自由化した場合、それによって生み出される対米貿易黒字の解消はわずかに七、八億ドルにすぎないとされているのがそれであります。また、農業が受ける打撃は、二十二品目自由化した場合、例外的な若干の物を除き大部分が壊滅的打撃にさらされるのは必至であります。また、その打撃は他作物に波及されていくことを見逃すことができません。たとえば牛肉輸入自由化を行った場合に、乳雄子牛価格の暴落は酪農に対し大きな打撃を与えるでありましょう。さらに他の食肉農家への打撃が広がること、これまた言うまでもありません。米作に対する打撃もまた例外でなかろうと思います。米食率の低下と、そして転作も不可能なような状態を生み出すことは、米の生産過剰にさらに拍車をかけることになっていくからであります。  政府は、輸出突出型の経済構造をそのままに、貿易拡大均衡を目指そうとしております。一方、欧米の国際競争力の回復は容易ではない事態と見受けられます。そうであってみるならば、農産物自由化攻勢は今後も相次ぎ、やがて米の自由化問題までも引き起こすおそれなしといたしません。現にアメリカでは水田の開発が盛んになりつつあります。  農産物輸入自由化はもとより、枠拡大も行うべきではありません。これを行うということは、核ばかりか食糧までもアメリカ全面依存に導くことだからであります。同時に、そうした経済政策のあり方は、輸出強化と資本の対外進出の面から、防衛分担の拡大が進められ、やがて日本は軍事力で食糧確保するような状態が生まれてくる可能性もなしといたさないからであります。貿易摩擦解消の道は、勤労者の所得引き上げなど内需拡大輸出に一定の歯どめをかける方向で行うべきであります。つまり輸出主導経済構造を国民が求める福祉型の経済構造への転換を目指すということであります。そうであってこそ、日本農業が直面している危機の克服と日本農業を発展させる道が開かれていくのではないかと思います。  時間が参りましたので、以上申し上げ、私の意見開陳を終わりたいと存じます。ありがとうございました。
  10. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ありがとうございました。  次に、池尻参考人お願いいたします。池尻参考人
  11. 池尻文二

    参考人池尻文二君) 私は全漁連の副会長池尻でございます。  私どもも農業団体と相提携をいたしまして、農水産物自由化問題が持っておりますこの国民的な課題に対しまして、正しいやっぱり理解を得たいということで、毎日運動をいたしておる次第でございます。  そこで私は、漁業の立場からこの自由化問題について触れたいと思う次第でございます。  先生方御案内のとおり、わが国は質量ともに世界第一の漁業生産国でございまして、現在恒常的に一千百万トンという魚類の生産を続けております水産国でございます。と同時に、先ほどの農産物の場合も同じでございますが、また水産物の輸入におきましても、これ世界第一の水産物の輸入国でございまして、たとえば昭和五十四年で、一番水産物の輸入がピークに達したときでございますが、輸入額総額九千三百七億円という額に達しまして、まさに水産物の輸入産業は一兆円産業になったというところまで伸びてきておるわけでございまして、ちなみにその年の漁業生産額あるいは漁業生産量と比較をいたしますと、わが国の一千百万トンの漁業生産額は二兆六千億でございますが、この金額に対して三五%の数字になりますし、それから一千百万トンの生産量に対しましては輸入量が一六%に当たるという数字でございます。しかも現在アメリカとの間にいわゆる摩擦を引き起こしておるわけでございますが、私ども、この水産物の輸入相手国は従来韓国が金額あるいは数量ともに一番の国だと思っておりましたが、最近は金額的には韓国を抜いてアメリカが第一の国になっているということから考えまして、すでにアメリカからたくさんの水産物が入っているということがおわかり願えるかと思います。  それからもう一つは、農業と若干私ども、同じ第一次産業でございますが、漁業が違いますのは、先ほど申し上げましたように、世界第一の漁業生産国であるとは言いながら、無の消費と申しますか、需要は世界第一に非常に強い魚食の国民であるということから、すでに歴史的にも漁民ないし漁業者は自由化の洗礼というものについてはかなり試練を受けてきた過去がございます。たとえば世界第一の漁業生産国であると言いながら、需要に対して供給力が非常に少なくなっております。たとえばエビだとかあるいはカニだとかあるいはタコだとかタイだとかその他の高級魚、モンゴイカあるいはかずのこ等の高級魚はすでに自由化をされておるわけでございまして、それからもう一つは、わが国漁業生産者に相当の生産力があるにかかわらず、すでに自由化になっていま問題をときどき起こしている種類に、例のカツオ・マグロがございまするし、それからサケ・マスがございますし、あるいは沿岸のワカメがございます。カツオ・マグロ等のごときは、これはもう昭和三十六年に自由化をされておりまして、当時はカツオ・マグロ漁業なんというのは日本漁業のお家芸であった関係もございましょうが、輸入がわずか数百トンにすぎないというような時代がございましたが、現在は韓国、台湾その他から相当の量が入っておりまして、自由化された今日において、ときどき価格戦争というようなものを引き起こしておるわけでございます。そういうように非常に歴史的には特に需要の強い高級魚等につきましては、思い切った自由化が先行しているというのが私どもは水産物の貿易問題の特性ではないかと、こういうふうに把握をしておるわけでございます。  そこで、現在問題になっております残された品目について私どもがなぜ自由化というものを拒むかということにつきまして簡単に申し上げますと、残された品目は、イワシ、アジ、サバ、タラ、ニシン、イカ、ブリ、ホタテ、昆布、ノリ、こういう種類の水産物でございます。いわゆる多獲性魚類とそれから沿岸の漁民がつくる養殖漁業が中心になっておるわけでございます。私は率直に申し上げまして、価格だとかあるいは商品の需給の関係からだけでありますと、このイワシだとかサバだとかこういったような多獲性魚というものは、単にそういうような関係から見ましたら、自由化しても私は日本の漁業者はそれに対する抵抗力は持つと考える面があることを否定できません。たとえばアジだとかあるいはイワシ、サバ等の多獲性魚に運賃かけて、あるいは鮮度のよくないものを何ぼ持ってきたって、そんなものは消費から見放されるわけでございますから、そういう視点から見ると私どもは問題が解けるわけでございますが、これらの漁業は御案内のとおり日本列島周辺において生産される漁獲物でございまして、御承知のとおり、日本列島の周辺の国々、たとえばソ連あるいは朝鮮民主主義人民共和国あるいは韓国それから台湾、それに中国、みんな近隣諸国は大なり小なり今後漁業に非常に大きな関心を持っている国でございまして、もしこれを自由化してしまいますとするならば、一番大きな問題は、日本市場という魅力ある市場に対しまして、しかも日本列島周辺のいわゆる漁場を中心にして、まさに資源争奪が行われる可能性というものが非常に濃いという点を私どもは非常に危惧をしておるわけでございます。御案内のとおり、二百海里体制というとりでがあるではないかという御指摘がございますけれども、これもなかなか韓国あるいは中国に対して、そう直ちに私どもが二百海里規制ということを行うことは事実上できない関係がございまして、その点が非常に問題になる点ではないかと考えております。  それから、その他の北海道のコンブあるいはホタテあるいはノリ等は、御案内のとおり、まさに農産物と同じ視点からの反対でございまして、沿岸の小さな零細な漁業者がかけがえのないものを生産しておるわけでございまして、これはあくまでも保護をしていきたいと、暫時保護をしていきたいという視点から私どもは自由化に反対をしておるわけでございます。  なお、この点につきまして、もし自由化した場合に、これも農産物も同じ側面を持っているわけでございますが、自由化した場合にアメリカ側から見て一つも——一つもではないんですけれども、メリットというのは少ないという問題がございます。つまり、先ほど申し上げましたように、ソ連から、あるいは韓国から、あるいは中国から、あるいは北鮮から、あるいはカナダから、その他の国々の方がむしろわが国に対する市場売り込みというものについてアメリカ以上の関係がございますので、水産物の自由化をしたからといってアメリカが得をするという面はないわけでございます。  この点を踏まえまして、目下水産庁も鋭意対話によって、交渉によってこの問題を解決していく努力をしていただいておるわけでございますが、幸いにいたしまして、水産物のこの視点につきましては、アメリカ側もなるほどという一つ理解と申しますか、が進んでおりまして、特にニシン等の問題につきましては、今後鋭意話し合いを続けていけば、そうむちゃな結果にはならないのではないかと、かように判断をいたしておるわけでございます。  しかし、もう一つ私どもが最後に申し上げたいのは、別の摩擦をアメリカとの間に起こしておる関係でございます。それは、御承知のとおり、現在アメリカ水域から漁獲割り当てを受けて日本の漁船が出漁しておるわけでございますが、ことしからアメリカはこの漁獲割り当て方式を変更いたしまして、年間百十五万トンの漁獲割り当て量を、まず年度当初に半分与えると、それから四月、七月に二分の一ずつを、二五%ずつを与えると。つまり、子供にお菓子をまず半分上げて、そしてお利口だったらあと半分ずつ上げましょうというような、あめとむちの方策をとってきておるわけでございまして、そこで現在日本に対しましては、当初予定されておりました四月分の割り当てをおくらせただけではなく、さらに具体的には、二五%のところを一五%にカットしてきていると。その裏づけといたしまして、アメリカの漁業者がとっておるスケソウダラを洋上で買い付ける量というものを、まさに私どもから見ますとまことに不可能な数字というものを要求して、それをのまぬ限りこういうものの漁獲割り当てというものを割り当てるということに応じないという、いわばアメリカとしては頭に血の上がったような態度をとり続けておることにつきまして、私どもまことにこれが理解できない態度であるということで、この点につきましてアメリカの反省を現在求めて、早期の妥結を図っておるところでございます。  そういうようなことでございまして、水産物の問題というものはいろいろございますけれども、私どもが最終的に納得できるものと、それからどうしてもしばらくはできないという態度を堅持しなければならないという側面があることを御理解をいただきまして、今後日本の漁業の健全なる発展のために、諸先生方の格段の御協力をお願いいたしまして、私の意見の開陳を終わりたいと思います。
  12. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ありがとうございました。  次に、持田参考人お願いいたします。持田参考人
  13. 持田恵三

    参考人持田恵三君) 和光大学の持田でございます。  いままで四人の参考人方々がるる申し述べられたことについて、私もおおむね賛成でございますので、そういった細かい具体的な問題には余り触れないで、私としては、日米貿易摩擦というものは一体何であるか、それが果たして農産物貿易輸入自由化によって解決し得るであろうかという点に問題をしぼって、せっかくの機会でございますので、私見を述べさせていただきたいと思います。  日米間の貿易摩擦と申しますものは、これは古くからあった問題でございます。たとえば、早くからは繊維の問題、あるいは鉄鋼問題、板ガラス、カラーテレビ、さらに最近は自動車ということになっているわけでございますが、こういった古くからあった貿易摩擦がなぜ七〇年代、さらについ最近に至って非常に深刻化して、また政治問題化してきたかということでございます。  それは私は、結局日本工業製品輸出が摩擦を惹起している品目が次第にアメリカの基幹的な産業部門に及んできているということにあると存じます。たとえば自動車といったものはアメリカのやはり基本的な産業でございます。波及効果の大きい基本的な産業でございます。それが日本工業製品輸出によって打撃を受けてきているということ、それが第一点だと思います。  それからもう一つは、やはり現在世界を、あるいはアメリカを覆う不況というもの、それによってもたらされたところの非常に深刻な失業の問題、この問題が現在の貿易摩擦を非常に深刻にしてきている原因だと思います。  第一の点について若干補足さしていただければ、自動車を初めとする対米工業製品輸出が最近急増してきておるわけでございますし、これ自身は、日本の高い生産性、あるいは労働者のモラルの高さといったことからくることでございまして、日本のいわば公正な競争の結果であるわけであります。その結果として日米間の貿易の形が、形の上では、日本が現在工業国であり、アメリカ農業国であるような形になっております。たとえば、自動車を初めとする機械類の日本の対米輸出の比率は、アメリカに対する輸出額の七〇%を占めておりますし、アメリカからの日本に対する輸入の五六%が食糧あるいは原料でございます。食糧が二六%ということでございます。これは一九八〇年の数字でございますが、そういう形になっております。これは一見農業国と工業国との間の分業のような形でございます。つまり、アメリカ農業国であって、日本が工業国であるという形をとっております。しかし、御承知のように、アメリカは決して農業国ではございません。アメリカ農業は非常に強いと言っても、決してアメリカ農業国ではございません。アメリカの農林水産業の就業人口の比率は四%以下でございますし、農業の就業人口の比率は三・何%という低い数字でございます。日本農業就業人口の比率は九%ということでございますから、そういう面から見てもアメリカ日本よりはるかに工業国である。よくアメリカが最先端部門と農業に特化しつつあるというふうに言われております。いわば頭の部分と足腰である農業というものに特化している、真ん中のボデーの部分が抜けてしまってきているということをよく言われます。しかし、アメリカの産業の基本的な部分はやっぱりボデーの部分でございます。それはいま申し上げた就業人口の比率からもわかると存じますけれども、そういったアメリカの基本的な、しかし弱い基幹的ボデーが、日本の強力な工業の競争力によってパンチを受けているということに、現在の日米間の貿易摩擦の一番深刻な根源があると思います。したがって、日本工業製品輸出を伸ばして、かわりにアメリカ農産物輸入をふやして、いわゆる現在の日米間の農工分業のような形をさらに推進していくという考え方、これは一部にある考え方でございますけれども、これはいわば拡大均衡を図るということになるかと存じますが、そういうことによって貿易摩擦というものが、いま申し上げたようなものである限り、こういう形では決して解決し得ないだろう。つまり、アメリカがそれじゃ日本農産物をより多く輸入してくれるならば、自動車産業はそっくり日本に任せましょうというようなことには決してなり得ない。アメリカにとって自動車産業というのは、やっぱり基本的な産業部門でありまして、捨てるわけにいかない部門でございます。そういう意味では決してそれによって貿易摩擦問題が解決するとは私は思いません。  それから、第二の問題であります世界的な不況に基づく失業問題がこれであります。こういった失業問題が日米貿易摩擦を深刻化しているということの意味は、需要全体の大きさが伸びなくなっている、ゼロサム社会化している現在の世界経済の中で、一国の雇用を増大させるような輸出の増加というものが、相手国の産業の需要の減少、失業をもたらすという形をとっているということが最大の問題でありますし、現在日本が自主規制という形で自動車その他の自主規制をやっておりますけれども、その自主規制にもかかわらず日本車のシェアが大きくなっているということは、アメリカの車の需要全体が落ち込んでいることの結果でございます。したがって、アメリカがもっぱらいま九%に達する失業率の失業の責任というものを日本輸出に押しつけてきている。これは決して全然根拠がないとは私は思いませんけれども、それは日本の工業が不当な輸出をやっているということでは決してありませんが、そういう意味ではやはり一定の根拠を持つことだと思います。しかし、それがさらに迂回して、日本市場の非開放性、ことに農産物輸入が制限されているということに非難が向けられるということは、全くの八つ当たりだと私は思います。また、その八つ当たりであること自身をアメリカ自身も多分知っていることだろうと思うわけであります。もし農産物輸入自由化することによってアメリカに何かの利益があるとしても、それは恐らく現在苦境に陥っている農業の一部の苦境が若干緩和されるというだけでございまして、アメリカの工業の失業問題が解決されるわけでは決してないと思います。たとえばデトロイトからの失業者が中西部のアメリカの農場へ移動していく、それによって雇用を獲得し得るということはあり得ない。現在アメリカ農業というのは、この二十年来年々農場が減り、農業就業人口が減りつつあり、現在もその傾向は依然として続いている。したがって、そこに雇用を求めることはできないとすれば、結局、日本農産物輸入がもしふえるとすれば、それの見返りとして日本工業製品がかえって輸出がふえて、その分だけ失業が増加するという形になるのではないかと思います。  結局、日米貿易摩擦という問題は、私は究極的には日本輸出を抑えることによってしか解決できないのではないかと。拡大均衡ということをよく言われますけれども、それが図れる条件があるならばそれもまたいいでしょうけれども、私は現在の世界経済の情勢あるいは今後しばらく続くであろう情勢の中では、拡大均衡の条件は残念ながらないのではないかというふうに思います。したがって、最終的にはやはり日本工業製品輸出をある程度抑えざるを得ない、そのことによって貿易摩擦を解消せざるを得ないということになるであろうと。一つのある意見として、農産物輸入の劇的な自由化をやれば、アメリカのいわばいらいらがおさまる、日米貿易摩擦は解消するという意見もございます。もし日本農産物輸入の劇的な自由化をやれば、確かに一時的にはアメリカのいわゆるいらいらと言われるものは鎮静するかもしれません。しかし、それはいわばアメリカも困っているけれども、日本農業も困るようにしたという一種の安心感でございまして、それは決して本質的な意味での解決には少しもならない。いずれまた、アメリカの失業は依然として続き、アメリカの工業の不振が続く限りにおいて、再び貿易摩擦は再発いたしますし、結局それはいまも言った輸出の問題へと、工業製品輸出という問題へといかざるを得ない、それが本質である限り、いかざるを得ないというように思います。とすれば、結局日本はその劇的な自由化によって農業のかなりの部分を失う。しかし、結果においてやはり同じ輸出規制をせざるを得ないということに落ちつくということになるのではないか。つまり全く損だけをするという形になるのではないかというふうに私は思います。  したがって、現在農産物貿易自由化という選択は決して賢明な選択ではない。現在の世界経済日本経済の情勢から言っても、決して賢明な選択ではない。また、日米貿易摩擦を解決する筋道ではないというふうに私は申し上げたいわけでございます。  最後に、せっかくの機会でございますので、もう一つ補足さしていただきたいことは、こういう貿易摩擦の問題のやはり根本に、もう一つ日本の農政の責任という問題があると存じます。つまり、いままでオレンジ、ミカンにしろ、牛にしろ、構造改善事業の基幹作物という形で推奨されてきたものでございます。それがしかもいま過剰生産に陥って非常に困っている。そういう事態の中で、急激な自由化ということは、いわば政治の責任の問題として不可能であろう、とてもできるはずではない、農民に対する責任からいってもできないだろうと。そういう視点から、やはり一つ農産物貿易問題というものは考えるべきだというふうに私は思うわけでございます。  以上で終わらさしていただきます。
  14. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳を終わります。  それでは、これより参考人方々に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  15. 村沢牧

    ○村沢牧君 参考人の皆さん、本日は大変御苦労さんでございます。貴重な御意見をありがとうございました。  幾つかの点について御質問を申し上げたいというふうに思いますので、ぜひ簡潔に御教示を願いたいというふうに思います。  まず榊参考人でございますけれども、全中は、貿易摩擦解消、特に農産物に対する外圧に対して今日までかなり積極的に取り組んで、アメリカにも出かけていったし、またアメリカからは要人を招いていろいろ意見交換もしている。したがってアメリカ事情についても把握をしているというふうに思うんであります。  そこで、今日までアメリカがとってきた態度というのはいろいろと変遷してまいりましたけれども、最終的には、過日行われた日米非公式協議でアメリカが一歩譲歩して、休戦の道が開かれたかのごとく報道されている向きもあるわけでありますけれども、全中としてはどういうふうに受けとめておられるのでしょうか。基本的には変わっておらないというふうに考えるのか、それともアメリカの言われるような枠の拡大とか、関税の引き下げを行えば何とかこの棚上げみたいなことが開かれてくるであろうというふうにお考えになっておられるかどうか、その辺のことについて全中の見方を教えてもらいたい。  もう一点は、全中は先日、「日本農業の展望と農協の振興方策」と題して八〇年代農業の発展の抱負を発表された。私も読ませてもらったが、非常に参考になるところもあります。こういう中で農産物輸入との関係をどういうふうに位置づけをしていくのか。生産性を高めることも結構だけれども、輸入との関係を、これは無視しているわけじゃありませんけれども、どのように位置づけをしてこうした振興方法を図っていこうとされるのか。  以上、二点についてお伺いしたいんです。——一通りお聞きしまして、後で御答弁願います。  それから、清水参考人にお伺いしたいんですが、農業問題や食糧問題について大変御理解が深くて、いろいろと参考にさしてもらったわけでありますけれども、しかし日本の中には、農業を守っていくという立場だけではなくて、財界のように、自由化をして安い農産物を外国から持ってこいという意見もかなり強いものがあるわけですね。しかし国民の中には、外国から農産物を入れれば、肉でもあるいはその他の物でも安く入るんではないか、こういう考え方を持った人もある。  そこで私は、農林水産省にしても農業団体にしても、もっと国民理解を得るようなことをしなければならないというふうに思うんですけれども、そういう立場に立って、一体、農水省やあるいは団体がまだ国民理解が得られてないのではないかと心配される向きもあるんですが、これらについてはどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞きをしたい。  谷本参考人にお尋ねいたしますが、参考人がおっしゃったように、日本農業は縮小再生産をされてまさに崩壊されつつあるわけであります。これは外圧も大きな影響であります。もちろん、貿易摩擦農産物輸入自由化ははねのけていかなければなりませんが、同時に、参考人も一部おっしゃっておりましたけれども、日本経済構造、このことについても、農業やあるいは勤労国民を守っていくという立場に立って、このいままでの構造がいいのかどうか、これらについて考えなければならないというふうに思いますし、谷本参考人もその趣旨のことを言われておったわけでありますが、もうちょっと突っ込んだ御見解を承りたいというふうに思うんであります。  そして持田参考人でございますが、持田先生がおっしゃったとおり、貿易摩擦を解消するには日本輸入をもうちょっと秩序あるものにしていく、これが一番だと。全くおっしゃるとおりだと思いますが、しかし、今日まで個別の製品についてたとえば日米間でもいろいろ交渉して縮小しよう、自粛しようということでやってきたわけですね。しかし、私はそれだけではもう解決ができないようなところまで追い込まれてきているのではないか。つまり私の言わんとするところは、アメリカなんかでも個別の製品もさることながらわが国の社会や経済の仕組みですね、あるいは産業政策、商慣習等が一般的でかつ広範囲なものの閉鎖性や不合理性を攻撃をしてきておるんだ。言うならばわが国市場全体がアメリカEC諸国に比べて閉鎖的であるためにそれらの国の商品が国際競争力を持っていても日本で売れないんだと。その一環として農産物にも矛先が向けられてきた。そのようなことにも私も考えるし、そういうことをおっしゃる先生も多いんですけれども、その点についてはわが国経済構造の閉鎖性についてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか、以上お伺いいたします。
  16. 坂元親男

    委員長坂元親男君) まず、榊参考人からお答えを願います。
  17. 榊春夫

    参考人榊春夫君) 五月五日の日にジュネーブで行われました非公式の日米会談におきましてアメリカ側が輸入自由化完全自由化要求を棚上げするといいますか、一時休戦することもあり得るような姿勢を示したということが伝えられておるわけでございますが、私どもはその際アメリカが三十九項目というような関税の引き下げなりあるいは輸入検査手続の緩和なり枠の運用の問題なりさらには枠そのものの要求なり打ち出してきているわけでございまして、日本側の対応いかんによっては引き続き完全自由化を求めることもあり得ると、どっちもあり得るという言い方というかにおわせ方に終わっておるということのようでございますので、われわれとしてはこれはむしろ危険なわなになるおそれがあるということの方を心配いたしております。少々のものを持っていっても、日本としては相当痛い思いをして持っていっても、こんなことで何だということで依然として自由化、完全開放を要求するという姿勢が続くんではなかろうかということを非常に不安を持って見ているわけでございます。まあどんな提案をしようと、けちをつけようと思えば幾らでもけちのつく性質のものだろうと思いますだけに、そしてアメリカの意図というものがサミット前に何とか農産物についての日本側の第二弾の開放策というものを打ち出させたいと、こういうところに最大のねらいがあるとするならば、これはきわめて危険なかけになるおそれがあるというふうに警戒の念を持って見ている状況でございます。  それから、輸入の位置づけといいますか、基本的な考え方でございますが、われわれはあくまで現在三三%というような国内自給率というものは何としても引き上げていかなきゃならぬというふうに考えているわけでございまして、輸入というものはあくまで補完的なものであるという基本的な考え方をいたしております。しかしながら、残念なことに六七%というものを外国からの供給にまたなきゃならぬということでありますと、その輸入量をいかに安定的に確保していくかということもまた見逃せない大きな問題であると思っております。特にその輸入の主力は畜産に密接な関係のある飼料穀物の輸入が主体になっているわけでございまして、この飼料穀物の安定的な確保ということは一面で国内の飼料生産を増強していくということとあわせてやはり飼料の安定的な確保ということについては十分配慮していかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございまして、幸いにして日米その他の諸国と組合間貿易というような姿、協同組合間協力というような形で安定的な供給の支援も得ておりますので、そういうことを主体にして安定確保を図っていきたいということをあわせて考えておる次第でございます。
  18. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 次に、清水参考人お願いいたします。
  19. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 先ほど意見の中で国民食糧供給をどう考えているかという数字をちょっと申し上げたんですけど、その中でもう少し細かく見てまいりますと、年齢による意識の違いというのは非常に大きいんでちょっと拾ってみましたら、二十代の人は輸入に依存した方がいいんじゃないかという率が五十代の人の約倍くらいあるわけですね。これは私、五十代でもう非常に食糧の大切さというものをよく知っている世代ですから、そういう世代は今日のような状況に対して的確な反応ができると思うんですけれども、もし国民理解が不足しているとすれば、やっぱり飢えを知らないという豊かさの中の世代ですね、そういう人たちにどういうふうな情報提供をしていくかということが大事なんじゃないか。で、いま政府その他のやっています情報提供というのはやや画一的な面があると思うんですね。そうじゃなくて、こういう時代になりましたら地域差もありますし世代差もあるので、もう少しきめ細かい情報の提供というものを深めることによってそういう理解をより根づいたものにしていけるのじゃないかというふうに思います。  それから、外国の物の方が確かに安いというデータも出ておりますので、この意見を一概に私も否定するつもりはございませんし、モニター意見の中でも、食生活環境として最大の関心はやはり価格問題なんですね。九〇%以上はやっぱり安いかどうかという価格問題に集中しておりますので、ここを私もさっき時間がなくて省略したんですけれども、やはり価格問題を抜きにしてただ自由化反対と言うだけでは、これはこれだけ生活が苦しい中では説得力がないと思いますんです。それで、榊さんの方でも最近具体的に農産物価格をこれだけ安くできるというプログラムとか、それから地域のモデル農協のデータですとか、そういうものがずいぶん出ているんです。私も地方へ参りましてそういうお話をよく聞きますし、米価審議会の席上でも、非常にアメリカに競争できるような価格農産物をつくれるという農家もだんだん出てきておりますので、そういうものをやっぱり農業団体自身が余り芽を摘まないというか、そういう情報を隠すことはもうちょっと時代におくれていると思いますので、やっぱりそういう理解を深める上ではそういう競争力を強める、価格の上で供給力を強める農家の実際の姿をもっと国民の前に出すということを、これは大変なことだと思います。ある意味では零細な農家の切り捨てにもつながると思うので大変なことではあると思いますけれども、あえてその勇気を生産者団体が持たないとなかなかこういう真からの理解というものは深められないのじゃないかというふうに思いますが、大分そのデータを抑えてきた事実が私はあったんじゃないかと。それは産地の方に直接伺うと、そういうことをおっしゃる方があるんですね。それは谷本さんの御意見とも大分違ってくるかと思いますけれども、そういうふうに思っております。
  20. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 次に、谷本参考人お願いいたします。
  21. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) 先ほど日本経済の構造上の問題について、私、輸出突出型経済構造だと申し上げました。もう少し突っ込んだ見解いかんというお話でございます。  日本輸入を見てみますというと、石油を中心とした燃料、それから鉄鉱石などの原材料、それから農産物、これが圧倒的な比重を占めております。第一次産品中心のこうした輸入構造を持っているのは、世界先進国には類例のないことであります。一方、輸出の方を見てみますというと、ほとんどが工業製品であって、そのうち特化しているのは重化学工業ということであります。こうした輸出構造というのも、他の先進資本主義国に類例のない特徴であります。  このように見てみますというと、日本貿易構造は言ってみるなら古典的帝国主義貿易構造とこんなふうに呼んでよいのではないかと思います。それが構造的にどういう状況を生み出すかということが問題なのでありまして、これについては、時間もございませんので、三つだけ私、挙げておきたいと思います。  まず第一点は、対内的な問題といたしまして、絶えず賃金の抑制と農業抑制が避けられない性格を持つということであります。加工貿易で競争して勝っていくのには、賃金の抑制で勝負をすると同時に技術革新で勝負をしていかなければなりません。技術革新で勝つのには、高利潤、高蓄積というのがその前提になければならない。したがいまして、絶えず財界が日本労働運動対策に他の先進国よりも熱心になるという性格がそこから出てきているのではないかと思います。またさらに、工業製品輸出する見返りに農産物輸入するということになるわけであります。したがって、そこでは農業抑制というのが避けられない性格を持つということになってくるのではないかと思います。今度の行政改革を見てみましても、財界が主張しておりますのは、やはり運動面で見ますというと、戦闘的日本労働運動を形成してまいりました官公労の労働運動、それから農業、農民の運動では米価運動が主軸をなしてきておりますが、どうもそこに焦点を向けてきているのではないかというふうに私どもは感じざるを得ません。それは、行革の焦点がまさしく、三公社の民営化などのそれに見るように、あるいはまた農業問題では食管つぶしに見るように、具体的に出てきているのではないかというふうに思います。  次に、二番目の特徴といたしましては、対外的な問題でありますが、対外的には絶えず対外不均衡をもたらすという性格を帯びざるを得ないということであります。というのは、付加価値の少ない第一次産品を輸入をして、これを加工をして、付加価値の多い工業製品輸出していくというのでありますから、相手国に対しては常に低成長と低雇用を押しつけるというような条件が生まれてまいります。戦後世界の相互依存体制日本輸出攻勢がいわば殴り込みをかけるような形でもって市場分割作戦に出ていっているというふうに言われるわけでありますが、そうした状況というのはここから生まれてきているのではないかというように思います。  次に、三番目の問題点として挙げておきたいと思いますのは、軍事大国化が不可避になっていくであろうということであります。賃金の相対的な上昇を背景にいたしまして、企業の対外進出というのが盛んになってまいりました。東南アジアを中心とした企業の進出などがふえてくるに従ってアメリカからも防衛の分担の拡大要求されてきております。同時に、これは日本の財界の中からも軍事費の増強要求が出ておる事実に見るように、資本の対外進出とともに軍事力を強化拡大するような方向というのが出てくるということでないのかと思います。現在の世界経済の動向は、言ってみるならば、資源制約下の中での経済再編をどう進めるかというようなことにあるわけでありますが、そのもとで日本経済は、言ってみるならば、力による資源、食糧確保への道を歩みつつあるのではないか、そういうふうな感じがするわけであります。最近、東南アジアから日本の軍国主義化についてのおそれがかなり高まってきているというのも、そうした点があってのことではないかと思います。  このように見てまいりますというと、今回の日米貿易摩擦解消の落着点が一体どこになっていくのかという点が最後に問われていかなければならぬと思います。アメリカの場合で言いますというと、国際競争力があるのは防衛産業であり、農産物であり、コンピューターといったようなところが挙げられております。一方、日本の財界の方は、農産物輸入拡大と防衛力の強化拡大を言っておるわけでありますから、農産物問題で勝負しながらやがては飛行機など軍需品を日本が購入をするというようなところにその着地点が求められる可能性が強まっていくのではないかと、このように考えます。
  22. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 持田参考人お願いをいたします。
  23. 持田恵三

    参考人持田恵三君) いまの御質問はたしか二点あったと思います。一つは、自主規制というやり方でやっていけるんだろうかということが一つだろうと思います。それからもう一つは、日本市場の閉鎖性の問題だろうと思います。  前者について、私は自主規制では一つの限界があるということは事実だろうと思いますが、それはたとえば行政指導一つ限界であるということと、それ自体大体市場メカニズムから言えば無理な話でありますから、そういう面からは確かに限界があるに違いないというふうにも思います。それで、私もこれは別に専門ではございませんで、私は農業問題が専門でありますから、専門ではございませんが、私は個人的な考え方としてはやはり輸出課徴金というような形がむしろ望ましいのではないか。それはもう一つ意味がございます。単に課徴金をかけるということだけではなくて、現在、日米間の貿易摩擦の、つまり日本輸出が伸びて突出しているという一つ原因は、円の不当な安さにあるわけでございまして、これはアメリカの高金利がもちろんその原因になっている。したがってそういった円の不当な安さをカバーするためにも、輸出課徴金によっていわばレートの修正を一部でやるということは意味があるのではないかというふうに私は思います。  それからもう一つの点、市場の閉鎖性という問題でございますが、サービス業とかあるいは金融まで含めた市場の閉鎖性というような問題が非常に言われているようでございますが、この点については私も専門外でございまして、具体的な点については何とも申し上げる力がないわけでございますが、ただ、一つ言えることは、やはりアメリカ日本に対する輸出が一体どれだけ努力をしてきたかという問題が根本的にあると思います。日本は、ただ手をこまねいて向こうの開放的な市場へ向かってどんどん輸出したということではなくて、それなりの相手に合わせる努力をした上で輸出していたわけでございまして、それは日本の商社が、有能な商社マンがずっとやってきた仕事であって、相手の需要に合わせて売るというのはこれは商売の鉄則であろうと思いますし、そういう意味では、日本市場アメリカと違っているからけしからぬというのはこれはおかしな話でありまして、日本市場に合わせた研究をし、また輸出する努力をすべきであるというのが本筋ではないかというふうに私は、これは素人考えでございますが、そう思っております。
  24. 村沢牧

    ○村沢牧君 ありがとうございました。
  25. 川村清一

    ○川村清一君 それでは、私、池尻参考人にちょっとお尋ねいたしますが、池尻さんがさっきいろいろお話しされましたように、水産物の自由化につきましてはアメリカは余り現在のところ強く言ってきてないようでございますが、したがって日本の新聞なんか読みましても、水産物が入らないで、農産物あるいは農畜産物といったようなことで大きく取り上げられておりますが、しかし、先ほどのお話にもありましたが、もし残存品目二十二品目が全部自由化されるということになりますれば、当然そこに水産物も入ってまいりまして、ノリだとか、それから昆布だとか、それからニシン、タラ、たらこあるいはブリといったような品目がみなその中に含まれるわけであります。したがいまして、もしもう二十二品目全部が自由化されるというようなことになりますれば、これはもう水産も大変なことになりまして、先ほどのお話にもありましたが、いわゆるまあノリだとか昆布だとかイカだとかタラだとかたらこだとかということになりますれば、沿岸漁業、養殖漁業、全くこれは大打撃、壊滅的な打撃を受けるわけでありまして、大変なことになる。日本の漁業のもう全く全滅であると、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうことになるだろうと私は考えております。したがいまして、そういう立場からまあ全漁連の副会長さんでありますからあえて忌憚なく申し上げるのでありますが、どうも漁業団体の運動が弱いんではないかと。農業団体は物すごい力でもうエネルギーを挙げて運動をやってますね。それに比べて漁業団体も、全然やってないんではないんでしょうけれども、どうも弱いんではないか。これは残存品目全部自由化されたら日本農業もこれは壊滅的な打撃を受けると同時に、日本の漁業も全滅的な打撃を受けるわけですから、したがいまして、この運動は農業団体と一緒になって、農業団体ぐらいの力を盛り上げて運動を展開すべきではないかと私はまあ常日ごろ考えておったんです。そこで、全漁連といたしまして全国の漁業団体組織をもう少し指導して全国的な運動を盛り上げるべきではないかと思うのでございますが、全漁連副会長池尻さんのひとつお考えをお聞かせいただきたいと、これが第一点であります。  それから第二点は、このアメリカ政策というものが、先ほどお話がありましたが、いわゆる漁獲割り当てを百十万トンぐらいありましたやつを今度は最初五〇%、四月に二五%、七月に二五%といったような割り当てをいたして、ことしの四月はまあ一〇%削減してやったといったようなことで、このことは何といいますか、アメリカの二百海里内におけるところの日本の漁業というものを、これをできるだけ日本の船にとらせるんではなくしてアメリカでとったものを日本に売りつけると、日本側から言えば買い付けると、こういうようなことに政策が変わってきたんではないか。まあブロー法なんかにははっきりそれが出ているわけでありますが、そういうようなことになったんではないか。そうなりますればこれは大変なことであって、沿岸漁業を指導されておる全漁連さんには余り関係はないかもしれませんけれども、一つのスケソウに例をとりましても、スケソウはまあ百五十万トンぐらいとるわけでありますが、アメリカの二百海里水域の中で大体五十万トン近くとっているんではないかと思うんですが、それを、そのアメリカ水域の割り当て量をとるためには母船式のいわゆる独航船が行ってやっています。独航船が約百隻近くいると思うんですが、それを洋上でもって全部スケソウを日本が買い付けると、買い付けるということになると、そうすると今度はとれないんですから、とれないんですと、その母船についていっている独航船、約百隻近くの独航船はそれは用がないことになるわけですね。そうなりますればこの独航船のこれは経営ができない。当然そこに減船というものが出てくるわけですね。そうするとこの減船が百隻近くの独航船を減船するということになりますれば、これまたこれは大変な大きな問題になるわけでございますが、こういうふうな点で、私は絶対これは反対なんですが、直接全漁連には関係のないことでございますけれども、日本水産界のやっぱり指導的立場にある池尻参考人のひとつ御意見を承っておきたいと、かように思うわけであります。
  26. 池尻文二

    参考人池尻文二君) 第一点の全漁連の輸入自由化反対の運動がきわめて低調じゃないかという御叱正をいただいたわけでございますが、確かに農業団体の運動は御案内のとおり私は率直に申し上げまして、牛肉、オレンジその他の自由化という問題はまさに鋭角的と申しますか、その影響する度合いの広さ、深さ、これは相当な黒船騒動みたいないわば側面も持っておるわけでございますが、水産物の方は私が最初御説明申し上げましたようにきわめて歴史的な経過があり、水産の分野におきましては二百海里体制であらゆる国と漁場確保の交渉あるいはその他の交渉というものを事実上積み重ねておりまして、その中で水産物の貿易というものも各品目ごとに話題になってくる側面を持っておるわけでございます。現在のところはニシンが問題でありスケソウが問題になっておりまして、韓国とのノリというものはいま余り問題が薄いという問題があります。したがって、私はあえて全国の漁民に旗を振りましてただコーラスだけを大きくして、ノリも沖合いの魚もそれからホタテも一緒になって自由化反対、自由化反対と言ってみたって、これはやっぱりかえって迫力を失うことになりはしないかというようなことで、先生の御出身の北海道の組織、これだけがいまのところ各品目についての非常に先鋭的な意識を持っておりますので、その団体と防御おさおさ怠りなしということでやっておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、農協団体と一緒に共闘の枠を組みながらできれば榊さんのところの手足まといにならないように、あるいは邪魔にならないように私どもは「鞭声粛粛夜川を渡る」という態度で水産庁に物を申しておるわけでございます。  それからスケソウの洋上買い付けの問題はもう先生御指摘のとおりで、私より非常に御造詣深いわけでございますが、これを無制限に許していきますと生産段階においても問題がございますし、それから北海道等の陸上すり身に影響するところもきわめて甚大でございます。と同時に私はこれは政府間と、政府政府がやる事業ではございませずに、あくまでも民間がそろばんが立ち、そしてそれが十分消化されるという前提がなければ、要りもせぬ物をこの価格でしかも四十万トンも買えったってこれはもう恫喝以外の何ものでもないわけでございまして、この点につきましては、たとえそれがアメリカがひとつの拒否を、ある相当の強いことを言いましても私はのんではならない。かえってアメリカ日本の国の相互の関係がそういうことによって将来損なわれるという観点に立ちまして、近視眼的な態度で対応すべきではないのではないかというような気持ちを持っておることを意見として申し上げておきたいと思います。
  27. 鈴木正一

    鈴木正一君 大変時間も少なくなりましたので、各参考人方々全員にお伺いすることは不可能かと思いますが、きわめて簡潔になるべく重複を避けまして質問をさしていただきたいと思います。  まず、全中の榊参考人にお伺いいたしますが、先ほど来、話がちょいちょい出ておりましたように、この貿易の摩擦をめぐって、あるいはそれと角度を変えた中からも日本の農政、農業全体に対して財界から大変な注文なり意見なりが出ておることは御案内のとおりでありますが、特に今回の摩擦をめぐっての農産物自由化、これに対する一つ意見として、いわば日本農業、農村を体質改善をして、完全な自由化のもとに市場開放をしなさいと、そのことによって、それに対応のでき得る足腰の強い農業をつくることが先決なんではないか、大体こういう要旨のもとに意見が展開をされておることは御案内のとおりだと思うんであります。  それを受けて立つ生産者団体代表である全中の中においては、そうじゃないんだと、かつて自由化をしたような場合に、いわば日本の木材というのは自由化でずっときておりますが、外材の圧迫を受けて大変な植林意欲に対しても低下を来しておるし、今日の日本の木材需給から見ても、もう本当に山を荒廃に追い込むような段階になってきている。こうなれば、国土の保全上にもぐあいが悪いじゃないかというような一つの理屈が展開されてくると思う。そういう意味から、この自由化にした場合における日本農業というものが、あるいは個別にしろ、あるいは拡大をちょっとやっただけにしろ、どのような部門にどのような影響のはね返りが具体的にどう出てくるんだというような、そういう一方における意見を持つ皆様方に対するパンチの効いたと申しますか、説得力のある論というものが今日展開されていいのではないか、具体的にそういうことを持ち出していいのではないかと、こういうふうに考えますが、それについての御意見がありましたらお聞かせを願いたい、こう思います。  次は、清水参考人にお伺いいたしますが、実際のところ、私はこの主婦連合会事務局長さんということになりますというと、いわば一般的な考え方では消費者代表なんだと、こう言われております。そうすれば、その物の考え方、消費者は安いのが入った方がいい、こういうことになりますから、向こう様の品物が安ければどんどん入ったらいいじゃないかと、こういう意見が出るのかと思っておりましたら、案外そうではなくて、いろいろ農水省モニターの結果を持ち出されて、全国消費者意見というものはこうじゃない、半数近くはやはり国内産を消費したいんだと、こういう意向が出ておるから、第一次オイルショック以来の動きというものが消費者階層に移っちゃって、相当に考えが違ってきている、こういう意見の開陳がございました。  ところで、それは非常に結構なことだと思うんでありますが、具体的には、主婦連という立場において、消費者を傘下に持っておって、その本当の主婦連の立場からの声というものが、いまあなたがおっしゃったような具体的なパーセントとして出てきておる。だからわれわれはこの自由化には反対なんだ、あるいは一部自由化はやむを得ないんじゃないかというような具体的な結論というものをまだ私は聞いておらないんです。これとこれの品目ぐらいは少し緩めたらいいんじゃないですかというようなこと、あるいは全部やはり将来の戦略物資等の考え方等から見ても日本においてはやるべきじゃない、こういう意見に到達し得るような背景をお持ちになっておるのかどうか。この点を組織の中の局長さんとしてひとつ明快なる御答弁をいただければきわめて幸いである、こう思います。  次に、持田参考人の方にお聞きしたいと思いますが、御意見を拝聴いたしますというと、最終的には結局節度のない日本工業製品輸出の増大を歩んできたがために、結果的に貿易摩擦最大原因を、要因をなしておる、こういうことがございました。その後で、農産物自由化においてはアメリカさんの方が八つ当たりをしておるんだから、いろんな各界各層でそういう雰囲気が見える。だからこれを鎮静させるために、あるいはそのいらいらしているものを鎮静させるための手段としてはあり得るかもしらぬけれども、問題の解決にはならない、こういうことを申されました。  ところで、お尋ねをいたしますが、それならば、これほど政治的な絡みの中で問題になっておる貿易摩擦、あるいは農産物自由化問題でございますから、あなたは、たとえば農産物輸入拡大もしくは自由化、これが個別に行い得るような措置を講じて、一時的にも友好親善を図ってきたところの相手の、アメリカさんならアメリカさんの方のいらいらした神経を鎮静させることもあり得るのではないか、そういうことも一つの方法として考えられるのではないかというふうにお持ちになっておられるのか。それとも、これは原因の解決には絶対にならないから、あるいは日本農業、農村の将来のために絶対やるべきじゃないという御判断をお持ちになっておられるのか。その点を、まあこれは先生の方から聞くのは無理かと思うんでありますが、ひとつもっと突っ込んでお答え願えれば、お聞かせ願えれば非常に結構である、こういうふうに思います。  以上、御三人の方にお伺いいたしたいと思います。
  28. 榊春夫

    参考人榊春夫君) 牛肉なりオレンジが自由化された場合に、農産物生産にどういうふうな影響があるかということについての連関表みたいなものを考えた試算というようなことは、現在までのところ実は手がけておりませんので的確なお答えはいたしかねるわけでございますが、農水省の方で試算されたものを見ましても、牛肉自由化があればこれはもう完全に壊滅する。同時に、酪農の方も六割方はだめになるだろうというふうな数字が示されているようでございます。私どもも、それ以上のものがあるだろう。畜産がただだめになったというだけでなしに、そうなればえさ関係も影響を受けるわけですし、草地、いままで草地として活用されていたものがどうなるのかというふうな問題も当然あるわけでございまして、非常に大きな影響を受けると思っております。  財界の農政批判についてちょっと触れられましたので、この機会にそのことをちょっと申し上げておきたいと思うんですが、財界の農政批判の中心をなしておりますのは、農業に競争原理を導入すれば生産、流通の合理化が進むと、そういうことによって国際競争力のある日本農業が育つんだと、こういう言い方になっていると思うんですが、おしなべてどうも財界の人たち農業を考える場合に、土地の問題であるとか自然の条件であるとか、そういうものを全く無視して、経済原則だけで物を判断しようとするどうも欠陥があるように見受けるわけでございまして、そういった点でわれわれと全く基本的に問題の取り上げ方が違うんじゃないかというふうに思っております。特に、日本のような制約された小規模の土地所有の農家がたくさんあるという中で、財界では専業農家が大規模経営に移行していくことを期待するような考え方、もっと端的に言えば、兼業農家切り捨て論のような考え方が行われておりますけれども、私ども、日本経済条件の中で、特に地価問題等を考えましたときに、そういった経済原理だけで土地の集積力があるというふうなことはとうてい期待できないというふうに思っておりまして、むしろ集団的な、地域の集団で高い生産性の上がる生産組織をつくっていくということによって初めて大規模経営のメリットを確保することができるんではないか、そういう方向で指導を強めていきたいというふうに考えておりますことをつけ加えまして……。  以上でございます。
  29. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 二つございましたんですけれども、まず安い農産物が入れば消費者も安く手に入るのではないかというこの論法なんですけれども、必ずしもそうじゃないということを申し上げたいんですけれども、それはここで政府がつくりましたデータなんですけれども、いま農産食料品に対する最終消費者の支払っている飲食費のうち、生鮮物として食べているのが二八%で、それから外食分が二二%、加工食品として食べているものというのが非常にウエートとして高くて四七%ぐらいあるわけですね。原材料が非常に安く入って、このように加工食品が生産活の中で大きなシェアを占めていくことになりますと、安く入る農産物がいろんな加工品、いわゆる冷凍食品ですとか缶詰ですとか、いまテレビなどで盛んに宣伝しております、とにかく袋を開ければそのまま食べられるような、そういう食品加工に大変にたくさん回されてしまって、そしてその中は非常にコストとそれから利益とか流通マージンとかいうものは私たちに全く見えなくなってまいりますので、むしろ安い農産物が入ることがイコール消費者に安い食品が入るという保証がなくって、これは一つの錯覚の時代じゃないかと思うんです。むしろ非常にもうけの材料になるというふうな感じがございますので、私が先ほど食生活の見直しを含めてこの自由化を考えなければいけないというふうに申し上げたのはそこのところなんです。  それからもう一つ、個別に牛肉、オレンジがどうかということですけれども、オレンジにつきましては、先ほど申し上げましたように、遠いところから運んでまいりますもので非常に腐りやすいということで、アメリカで許可されていないカビ防止剤を大量に使わなければ日本に持ってくるまでに船一杯分腐ってしまうというようなことが現実にあっているわけなんで、オレンジ、柑橘類につきましては安全性の不安の筆頭商品なので、いま一番消費者が柑橘類の輸入に反対しているのは、イコールそれが安全性の不確かというか、むしろ発がん性とか催奇形性があると言われている添加物をくっつけてくるということで、これはそういう意味からももう絶対困るんですね。  肉の場合ですけれども、アメリカの肉がどのくらいの値段で入ってくるのか私もよくわかりませんけれども、いまの流通機構その他から言うと、輸入肉がそのまま安い価格消費者に入るという制度的な問題の解決もしないとならない問題が残っておりますので、安いものがそのまま消費者の手に安く入るということは年々構造的になくなってきているんじゃないか、むしろそれはやはり一つの加工産業の利益の対象に持っていかれてしまうんじゃないかという非常に大きな不安を持っております。  あと具体的に一つずつどうかということなんですけれども、代表的な牛肉とオレンジで、あとにつきましては、いまアメリカの言っておりますのが完全自由化という要求だけで私たちの目に映っていますので、じゃ消費者団体とすれば、生産者団体のように輸入枠の拡大もいやなんだというところまで消費者の合意ができるかどうか、私はやっぱりそこのところがいまの生産者団体要求とは多少違うニュアンスは一般の消費者は持っているんじゃないかというふうに思いますけれども、個別にどうかということはまだ私たちの方の情報としては全くないというのが現実だと思います。
  30. 持田恵三

    参考人持田恵三君) 農産物貿易自由化について一定程度の限定つきの何か認めたらいいのではないかというような御質問だと思うんですが、私も日米関係というのは現在日本の生存にとって好むと好まざるとにかかわらず基本的な関係であって大事にする必要がある関係だというのは全くそのとおりでございまして、そういう意味アメリカ日本との関係が貿易摩擦をめぐって悪化することは決して好ましいことではないと、それは全くそのとおりなんです。しかしただ、たとえばオレンジの枠を拡大するとか、牛肉輸入枠を拡大というような形での対応、それは日本農業に対して致命的な打撃を与えるものでないならば、それは政治の問題でありますからそれはある程度、全然認めないということではもちろんございません。ただ、そういうワイルドライスが入るとか、あるいはオレンジの枠が広がるとか、牛肉の枠が広がるというだけでは決して日米間のその貿易摩擦は解決しないのであって、工業製品輸出の側に劇的な措置がとられる方がむしろ日米間の貿易摩擦の解消に役に立つし、いらいらの解決に本質的に役に立つであろうという考え方でございまして、それなしにそういったいわばちょっとした枠を拡大するとか、一部の品目自由化するということはむしろ逆にいらいらを拡大するものではないかというのが私の考えでございます。
  31. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 参考人の方大変御苦労さまでございます。貴重な意見ありがとうございます。時間の制約もございますので、清水参考人消費者海外に依存をするという危険性がある、こういうお話も聞きたかったんですけれども、それは先ほどの話でわかりましたし、それから池尻さんの方の運動の面にもちょっとお聞きしようと思ったんですけれども、先ほどの件でわかりました。  そこで、榊さんにこれから個々にお伺いしたいと思いますが、榊さんに、基本的な問題ですけれども、私は日本の国益の基本として、また一億一千万の食糧安全保障の立場から農産物貿易自由化を原則とすべきでないと、こういうふうに思っております。日本食糧日本国内生産し、その上不足するものは、生産でき得ないもの、これについてはそれに限って輸入すべきだと、こういう基本的な考えを持っておるんですけれども、これに対してどういう御意見なのか、これが一つと、しかし現状を見ると食糧自給率は三三%になっておりますし、また現状このままで行くと一たん有事の場合にはどうなるんだろうかと、これを心配するわけです。しかも、国会では食糧自給率の向上ということでその強化の面について決議をしておるわけです。しかしその半面、われわれにも責任はございますけれども、対応が遅々として進んでいない、こういうことで、さらにいま自由化のこの大問題が起きているわけです。これに対して忌憚のない、政府に対してどう望んでおるのか、この二点について最初にお伺いいたします。
  32. 榊春夫

    参考人榊春夫君) お説のとおり、われわれも食糧は自給することを最優先、第一番の原則として推進していかなきゃならぬという基本的な立場農業生産に励んでいきたいと思いますし、政府におかれても、冒頭陳述で申し上げましたとおり、国会決議において自給力向上の決議も行われていることですから、ぜひその完全な実施に向かって進んでいただきたいということをお願い申し上げたいと思うわけでございます。われわれもやはり現状のままでいいのかと言われますと、現状のままでは困る問題がたくさんあります。というのはやはり十分な生産力を発揮していないと批判されるような農家もあることでございますし、また農地の活用の実態からいたしましてもかなり不作付地が増加しつつあるというような現実もあるわけでございまして、やはり農用地の造成、拡大、それの利用率の向上という問題と、それから農業生産力の活性化ということをやはり最重点の政策課題として推進していかなきゃならぬというふうに思っているわけでして、構造改善事業を初め、そういった生産面の自給力向上のための生産対策というものを政府にも十分ひとつ御配慮いただきたいということを強く要望いたすものでございます。
  33. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一点ですが、榊さんにお願いしたいんですが、いまの問題に関連しますが、貿易摩擦の問題というのはこのところ急激に大きな問題になってきておるわけでございます。  世界の情勢、特にアメリカ、ECの失業、それからインフレ、貿易赤字、こういう増大を見ると、ますますこの問題はこれからも激しくなっていくんじゃないかなと、こういうふうに予想されるわけです。特に日本の政治、経済政策を考えあわせ、私は大変心配するわけでございますけれども、そこで、当面この貿易摩擦が解消するという方向に向いても、恐らくこれからまたこの摩擦は第二弾といいますか、第二波、第三波ということで押し寄せてくるんではないかと、こういうふうに想定されます。私が思うのには、これは根本的には日本経済政策、また外交政策、こういうところに政治的配慮が欠けているんじゃないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、日本農業を背負う——二度と再びこのような問題が起こらないように——中央会として政府にどんな貿易摩擦に取り組んでいったらよろしいか、この辺の御意見をお伺いしたいと思います。
  34. 榊春夫

    参考人榊春夫君) 一番基本的な問題は、やはりアメリカの外交姿勢といいますか、施政の方針にも問題があると思います。  いままで私どもが接触した限りにおきまして、農産物完全自由化という大きな旗印を挙げて世論を指導しているのはレーガン政権そのものではないかというふうな気がするわけでございまして、生産者団体と接触した限りにおいては必ずしもそういう姿勢ではないと、もう少し双方の農業事情というものに理解を持った話し合いが可能であるというふうな感触を得るわけでございますけれども、レーガン政権が完全自由化をみずから打ち出し、世論を指導しておると、こういうことがありまして、先ほどもちょっと出ましたように、休戦するかのごとき動きがありますけれども、一体そういう指導方針をとってきたレーガン政権が本当に矛をおさめられるのかということが非常に不安なわけでございます。  したがいまして、この問題に対処するわが国政府とされましても、何としても完全自由化要求を完全に撤去させるということをひとつ主眼にやっていただきたい。同時に、枠拡大というようなことで、実質的に自由化したと同じことに通ずる危険性があるわけでございますから、自由化拡大については絶対にそういうことを許さないと、やはり日本農業事情というものを徹底的に理解させてかかるということを基本に置いて取り組んでいただきたいということを切望するものでございます。
  35. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に谷本さんにお伺いしたいんですが、農産物輸入自由化問題で、現在二十二品目制限品目があるわけでございますけれども、これを完全自由化しても、在日アメリカ大使館の数字を述べますと約八億ドルだと、こういう程度のもので、いわゆる貿易摩擦の改善には寄与しないじゃないかと、こういう数字も出ておるわけです。したがって、本当に現在の米国、ECのいわゆる貿易摩擦の解消にそういうことでなるとは思えないわけです。それをあえて執拗に農産物の枠の拡大、制限品目の枠の拡大であるとか、自由化自由化とかいうことで、非常に攻勢が強いわけです。この背景にはアメリカのいわゆる長期的な食糧戦略といいますか、この一環ではないかとも思わざるを得ないわけです。これからこの二十二品目をきっかけにして、この後、国家貿易の米、それから酪農と、こういうところに道がつくられていくんではないかとも思われるわけです。この考え方に対して、谷本さんはどういう御意見をお持ちか、お伺いします。
  36. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) アメリカ完全自由化要求一つとして考えられますのは、日本政府を揺さぶりながら農畜産物輸入の枠拡大ということで仕上げていく。またさらに、それと抱き合わせに工業製品日本輸出の自主規制をさせる、あるいはまたアメリカの戦闘機などを買わせる、こういうようなねらいが一つあるのではないかと思います。  それからもう一つの点は、御指摘のように、二十二品目、これで日本が撤退をしたならばそこで今度は二歩、三歩と踏み込んでくる。その二歩、三歩と踏み込んでくるところのねらいは酪農品もさることながら、アメリカとしてはやはり本命は米ではないかと思います。で、昨年産米を見てみますというと、玄米換算でアメリカ生産量は六百七十万トンでございました。これに対して消費の方は精米換算で二百二十万トンから二百三十万トン程度であります。そうしますというと、現在の状況でも約四百万トン程度輸出をしなければならないというのがアメリカ国内事情であります。問題はそれだけではなくて、アメリカ自身もこれまで農業生産輸出産業として特化してきた結果として、生産手段である農地の流出等々の問題を惹起しております。したがいまして、農業条件、土地の条件が保全できるような農業ということになりますと、アメリカとしてはできるだけやはり水田開発をやりたいという意向が強いのではないかと思います。そうしますと輸出できるのはどこなのか、一つは東南アジア市場があります。ところが、東南アジア市場はドルを持たない。それからもう一つアラブがあります。アラブについてはすでにオーストラリアが先手を打ってしまって、アメリカが入り込む余地がない。残る市場はどこかということになってくると極東であります。その最大市場日本であります。そうした点から見てみますというと、今度の完全自由化で揺さぶってきている背景には行く行くは日本の米穀市場、ここをアメリカがねらっているんではないかというふうに思います。
  37. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一点お伺いしますが、これはある意見ですけれども、農産物完全自由化された場合、日本農業は大きな問題になる、壊滅状態になると、こういうふうに言っておりますけれども、日本人には日本人の嗜好もあり、好みもあり、また日本人好みのいわゆる品種改良ということで長い間日本農業はやってきたわけです。それに長い年月を研究してきてもおりますし、技術を導入してきているわけでございます。したがって、農産物自由化になった場合、ある程度抵抗力があるんじゃないかと、こういう意見もございます。その農産物自由化になった場合、果たしてどんな影響があるのか、壊滅状態とは言いますけれども、どんな影響があるのか、具体的には私よくわからないんですけれども、たとえばたくさん品目がございますけれども、牛肉とミカンについてはどの程度影響があるか、この辺おわかりになったら教えていただきたいと思います。
  38. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) 完全自由化をしても嗜好の問題があるのではないかという御指摘でございますが、私はこの点は余り、何といいますか、信用はできないような印象が強いのであります。といいますのは、たとえば、日本人の食生活の場合に米が主体でありましたから、米の味というのは非常に微妙でありますから、内地米でないというと日本人は食わないであろうというふうに言われておるのでありますが、必ずしも私はそうではないと思います。たとえば私自身の経験でありますけれども 新潟のコシヒカリを私の家で食べますというと、うまいと言うのはおばあちゃんと私と家内でありまして、子供の方は余り好きません。と言いますのは、カレーライス嗜好型の子供が育ってきてしまっておりまして、そうした子供から見ると、コシヒカリ、ササニシキというのは必ずしも好みが合わない、カレー、チャーハン嗜好からすると合わないんですね。日本は米が主食だといいながらも、もうすでに日本の米主体の食生活というのが、戦後きわめて短い三十年の間に完全に壊されてきてしまっておるわけでありますから、そういう状況から見てみますと、どうも嗜好性の問題というのは余り当てにならないんではなかろうかというふうに思います。  それから、完全自由化をした場合の牛肉、ミカンが受ける影響でありますけれども、これはもう先ほど来他の方も申し上げておりますように、まず勝負ができないのではないかというふうに思います。  この点は、牛肉で言いますというと、アメリカはさることながら、オーストラリア、ニュージーランド、ここから出てきます安い牛肉、これはもう日本の乳雄子牛ともろにぶつかってまいります。しかも、この価格日本の豚肉よりも安い。ですから、豚肉もやられるであろうというふうに考えて差し支えないと思います。それではアメリカの高級牛肉はどうなのか。これは日本のいわゆる高級牛肉とかなり競合するわけでありますから、したがって、日本の超高級的な牛肉は別といたしまして、他のものはこれはやはり性格的に非常に似通っておるわけでありますから、相当な打撃を受けるであろう。して見ると、大体牛肉が壊滅的な打撃を受けるということは想像にかたくなかろうと思います。  それから柑橘類でありますが、柑橘類の場合には、もうすでに輸入が非常にふえておって、その中での生産体制になってしまっておるということであります。たとえばレモン、グレープフルーツ、オレンジで見てみますというと、輸入量が三十五万五千トンになっておりまして、中・晩柑類の大体五〇%に相当しております。それからまた、バナナ、パイナップル等々を見てみますというと、全体で百二十万トンの輸入量になっておるわけでありまして、温州ミカンのこれまた五〇%を超すという状態であります。そういう状況の中で、日本の果樹生産はそれぞれ生産制限的なものをやらざるを得ないというような状況でありますから、そこへ自由化の打撃が加わりますというと、もはやもう受ける打撃というのは決定的になっていくであろう。しかも、日本の果樹生産の場合は、何といいますか、圃地の大半が傾斜地であり、そして平均規模も非常に小さい、したがって、合理化が非常にしにくいというような状況でありますから、受ける打撃は大きいだろう。しかも、そしてその打撃は壊滅的な打撃となっていくのではないだろうかというふうに見てよいと思います。
  39. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、最後に持田参考人にお聞きしたいのですが、持田さんは先ほどのお話で、結論として日本工業製品輸出を抑えるということ、それからもう一点は、日本の農政の責任、政治の責任だと、このようなことをおっしゃいましたけれども、今日まで日本農産物の制限品目は二十二品目に現在はしぼられてきたわけでございます。そこで、米国でも、それからEC諸国でも農業保護、国境保護措置はこれはとられておるわけでございます。これがその国々にとって、農業とか水産業とか、それから林業とか、どういう役割りを果たしているのか、これが一つと。それからもう一つは、またそれを日本農業の保護、いわゆる非自由化についてはどんな程度のものであればよいのか、その基準というか、水準というか、この点について、ちょっとむずかしい問題であると思いますけども、御意見を聞かしていただきたい、このように思います。
  40. 持田恵三

    参考人持田恵三君) 最初の問題でございますけれども、御承知のように、アメリカにしろECにしろ、ことにECは厳しい国境保護措置をとっております、農産物について。それがまあECの共通農業政策の基本になってるということは御承知のとおりでございまして、それなしにはECの共通農業政策は成り立たないわけでございますから、財政的にもあるいは共通価格の設定という面でも成り立たないと、そういう意味では非常に大きな役割りを果たしていると思います。また、アメリカの場合は、ただ、そもそも輸出国でございますから、アメリカ農業保護政策というのは主として国内農産物価格の支持、農民所得の支持ということに傾いておりまして、一部の、たとえば羊毛だとか砂糖だとか、そういったものに関する輸入規制というのはもちろんございますし、牛肉輸入規制をやっておると、それはそれなりにやはりアメリカ農業の中の弱小部分を保護してるという面があると思います。その点はちょっとECと、あるいは日本とは少し違うんではないかというふうに思いますけれども、いずれにしろアメリカの場合、日本貿易自由化品目が二十二品目ある、あるいはフランスもかなりあるわけでございますが、それとアメリカと比べれば非常に多いと言うけれども、そもそもガットを成立さしたときの主導国であったアメリカその他の国々は、初めからガットの免責された輸入制限を持っておりまして、日本は初めからそれは全然ありませんから、そういう意味で比較するのはちょっと公正を欠くのではないかというふうに私は思います。  それから、自由化の基準をどうすべきかという御質問でございますけれども、これは私はちょっと簡単には実はお答えできない。まあ非常に抽象的に言えば、日本農業にとって深刻な打撃を与えるものでない限りは、それはまあそうかたくなにがんばることもないだろう、という程度のことしか申し上げられません。
  41. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 ありがとうございました。
  42. 下田京子

    ○下田京子君 皆さん御苦労さまです。時間ございませんので、恐縮ですが、一点について五人の方皆さんにお伺いしたいと思います。端的にお答えいただければと思います。  皆さん共通されてお述べになっている点は、いろいろ言い方は別にしましても、いまアメリカ要求が非常にむちゃくちゃであり、またけしからぬと、二つ目には、アメリカ要求でもって貿易摩擦の解消の根本的な解決にならぬと、それから三つ目には、国内食糧の自給率向上が必要だと、こういうふうにお述べになっているかと思うんです。そこで、いままさに日本政府がどのような立場で何をなすべきかということが問われているような気がいたします。その点を皆さん一言ずつ、恐縮なんですけれども明確にお答えいただければと思います。  で、特に貿易摩擦原因一つでもございます日本の工業界が国際競争力をつけてきたその背景といたしまして、低利融資であるとか各種の補助金、あるいはまた税制面での優遇措置等がありまして、一方で労働者に対しては賃金抑制、首切り合理化、パート・下請化へあるいは中小企業の犠牲というふうなこともあったかと思うんで、そういったことと比較してお述べいただければと思います。よろしくお願いします。
  43. 榊春夫

    参考人榊春夫君) 大変膨大な中身になる問題かと思います。十分にはお答えできないわけですが、やはり基本としましては、過度輸出に依存しない日本経済というものを打ち立てていかなきゃならぬと、言いかえるならば内需振興にもっと力を注いだ経済運営というものを心がけていかなくてはいけないんじゃないかというのがわれわれの結論でございます。
  44. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) やはり工業のツケを農業に回すという、この悪循環だけは政府が断たなければいけないんじゃないかというふうに思います。それぞれ、工業は工業、農業農業事情がございますので、一方の赤字のツケを一方に安易に押しつけるということは、やはりその国の政治の責任としては私たちは納得できないし、そうあってはいけないというふうに思っております。
  45. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) 日本の工業が国際競争力を強めるために日本農業がこれまで犠牲にされてきておるわけであります。したがいまして、その延長路線での問題解決はやっていただきたくないということであります。  で、日本農業をよくするのには、やはり輸出突出型の貿易構造を改めるということが大前提ではないかと思います。それは勤労国民の購買力を引き上げていくということを基本にいたしまして、国内の購買力を拡大しながら、輸出を節度あるものに改めていくと、つまり福祉経済への転換を目指すということを基本にして対処すべきではないかと思います。そうすることが日本農業をよくしていく道が開かれる基礎づくりになるわけでありますから、そのように政府は対処していただきたい、こう考えます。
  46. 池尻文二

    参考人池尻文二君) 魚を離れて議論をいたしますれば、私は現在の貿易摩擦というのは二つ原因があるのではないかと思います。  一つは、五〇年代、六〇年代は経済運営の供給サイドにおいて、供給は無限であるという仮説に立って経済の運営をしてきたのではないかと思います。それが七〇年代、八〇年代になりまして、石油ショックでその神話が崩れていった。したがって、アメリカの自動車産業は燃油多消費型の、しかも大型の、しかもそれが使い捨てで、どんどんどんどん消費されるという形で運営をされてきたと思いまするし、日本の石油化学、石油精製、あるいはアルミ産業、そういったものもやはり同じではないかと思います。  もう一つは、現在がいわゆる環境的な資源——水、空気、緑あるいは土地、そういった環境的な資源でさえも、これはもう限りがあるという前提で、ここで需給の両面において経済のハンドルの切りかえを行わなければならないという事態に私は世界経済があると、こういうふうに見ておるわけでございます。したがって、これは再構築を要することでございますので、とん服薬で、かぜで薬を飲んで寝れば、あしたからびんびんになるというしろものではないと思います。アメリカの産業が比較的、相対的に力が落ちているというのは、まさに逆に言えば日本の二十代の若者がねじり鉢巻で、いいもので安く品物を売って何が悪いと、貿易は自由ではないかと。つまり、すでに病院に入り、あるいは食餌療法で長期的な療養をしなければならぬ一つの体質の面と、それから若々しくて、そういう面で後進的な先進国の産業とがぶつかっておりまして、そこで摩擦が起こっておるわけでございまして、私は、今度総理がたとえばサミット等に出かけるならば、そういう次元で世界の指導者は話し合いをして、そのしわ寄せを農産物自由化だとかなんとかいうところに持っていって解決できるものではない。その辺の基本的な経済政策なりあるいは世界的な経済的な枠組み、機能の分担、そういったものを今後鋭意積み重ねていきませんと、私どものいま第一次産業が負う宿命というものはますます強まるのではないかという気がいたします。
  47. 持田恵三

    参考人持田恵三君) 大変膨大な内容を持った質問でございますけれども、二点についてだけ私見を述べさしていただきたいと思います。  一つは、最初の私の意見陳述の中で、最後に申しましたように、農政の一貫性という問題であります。一つはやはり貿易摩擦という形で農業政策が外交問題になりつつある。しかし農業政策というのはあくまでもやはり国内政策の問題でございまして、したがって、まず何よりも国内政策としての農業政策の筋を通すべきであるというのが私の考え方でございます。つまり農民にいままでいろいろなことを奨励して、二階に上げておいてはしごを外すようなことはすべきではない。何よりも国内政策としての一貫性を追求すべきであるということが第一点であります。  第二点は、いま池尻参考人が言われたこととほぼ同じでございますけれども、私は日本経済政策全体が、どうも必ずしも現在の世界経済情勢に合っていないのではないか。つまり、成長経済のイメージの上にまだ立てられているのではないか。しかし、どうも私は、これは私見でございますけれども、現在の世界経済なり日本経済を含めて、停滞経済の段階に入ってきている。これはもう簡単に、またそのうちに高度成長になるという話の問題ではないと思います、根本的に。もっと深刻な問題であろうと思っておりますし、そういった停滞経済の中で、改めて経済政策を立て直さなければいけない、その前提として。その中の一環として、また農業政策あるいは農業というものを位置づける必要が改めてあるのではないかというふうに、これは本当の私見でございますが、そういうことでございます。
  48. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑を終わります。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、皆様には御多忙中にもかかわらず当委員会に御出席をいただきまして、大変貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。本委員会代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時十四分開会
  49. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査のうち、農畜水産物輸入自由化問題に関する件を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  50. 村沢牧

    ○村沢牧君 私は、本日の主要問題に入る前に、当面をする問題について若干伺っておきます。  政府は、昨十二日の公共企業体等給与関係閣僚会議で、三公社五現業の仲裁裁定の取り扱いについてはその結論を持ち越し、明十四日にさらに協議をすることになったということが報道されております。仲裁裁定は即時実施をすべきものであると考えますけれども、閣僚会議で農水大臣はどのような態度をとってますか。
  51. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 公労法三十五条の精神を尊重した態度を表明してございます。
  52. 村沢牧

    ○村沢牧君 そのことは当然ですけれども、仲裁裁定制度について政府としてはどのような基本的な立場に立ってますか。
  53. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 仲裁裁定の制度は、公共企業体等職員の労働基本権の制約の代償措置の一つであるというふうに理解しております。  公労法第三十五条に、「委員会の裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならず、また、政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」と定められておりますので、このような趣旨に基づくものであるというふうに理解しております。
  54. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣、公労法第三十五条の精神を踏まえるならば、林野庁は当事者として仲裁裁定完完実施の義務を負っているというふうに思うんですけれども、大臣の見解はどうなのか。  さらに、先ほど給与関係閣僚会議で、公労法の精神にのっとって態度をとっているということでありますけれども、農水大臣としてはその閣僚会議でどのような発言をしているんですか。
  55. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 先ほど申し上げましたように、三十五条の精神にのっとって農水大臣としての意見を述べているわけでございます。
  56. 村沢牧

    ○村沢牧君 それならば、いま私が質問したように、林野庁の当事者として完全実施の義務を負っている。したがって、完全実施をしなければならない、そういうふうにお考えになりますか。
  57. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) でございますから、この三十五条の規定にありますように、これに服従しなければならないということでございますから、その決定を尊重した態度をいま主張しているということでございます。
  58. 村沢牧

    ○村沢牧君 昨年、政府は仲裁裁定を一括案件として国会に付議をした。その理由として、仲裁裁定の実施が予算上可能であると断定ができないからと、まあこう言っているわけでありますが、結果的には予算の範囲内で仲裁裁定が実施ができた。つまり、予算の範囲内で実行できるものを議決案件として国会に付議をした。このことは誤りであったというふうに思いますが、大臣はどういう見解を持っていますか。
  59. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 委員長……。
  60. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣に聞くんですよ。あなたは仲裁裁定とかそんな閣僚会議に出る人じゃないだろう。
  61. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 確かに結果論から言いますというと公労法の十六条により国会に付議した。その後の結果論から言いますというと完全実施の形に相なりましたけれども、その間やはり国の最高機関の意思にのっとってのことでございますので、それもやはり三十五条の規定によって「公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とする裁定については、」云々ということでございまして、財政上非常に厳しいというこの背景はやはり私たちは十分配慮した上でのことだと、かように考えております。
  62. 村沢牧

    ○村沢牧君 財政上の結果というか問題は、昨年の場合、結果的に見れば財政上措置ができた。ですから、財政上措置ができるものを国会に付議するということは誤っておったと、これはこういう指摘をされてもやむを得ないと思うんです。  そこで、昨年予算内で実施ができたということは、企業努力によるものであることは認めます。ことしも努力をすれば実施をできるというふうに思うかどうか。本年度はどのように努力をしていこうとされるんですか。
  63. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 五十六年度につきましては、先生御指摘のとおり、企業努力によりまして極力経費の節減に努めまして、既定経費の中で移流用によりまして、この予算に計上されました給与改善費を上回る分につきまして充当して実施したわけでございます。  今回の仲裁裁定につきましては、先ほど大臣が申し上げましたとおり、公労法第三十五条の精神を踏まえまして対処することといたしており面して、現在政府の内部におきまして慎重に検討している最中でございます。
  64. 村沢牧

    ○村沢牧君 慎重に検討していることは当然のことですけれども、ことしも努力をすれば、企業努力をすれば予算の範囲内で実行できるという、そういう可能性はあるのかどうか、どうなんですか。
  65. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 木材の景気が御承知のとおり大変厳しいさなかで、現在経営改善に鋭意努力して取り組んでいる最中でございます。そういうことも踏まえながら、私どもやはり三十五条の精神を踏まえて対処すべく現在鋭意検討中でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  66. 村沢牧

    ○村沢牧君 現在検討中であるということは答弁聞かなくても私はわかるんですよ。  そこで、大臣、仲裁裁定を国会に付議したり実施を延期するというようなことは法の精神からいってもあるいは労使関係からいっても好ましいことではない。したがって、本年度は昨年の轍を踏むことなく即時完全実施に踏み切るべきだ、こう指摘をしますが、どうですか。
  67. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) これは公労法の十六条の規定によってやはり国会に付議しているわけでございますので、それはそれなりに私は合法的なものだと思うのでございます。しかし、労使関係その他を考えますというと、やはり御説のように政府として完全実施を速やかにするのが私は妥当なものだと思います。  しかし、十六条の規定によって国会に付議することは、先ほど申し上げましたように予算上あるいはまた資金上のいろんな不可能な点があるという断定の上でのことでございますので、それもまた合法的な措置だと、こう考えてよろしいのじゃないだろうかと思います。
  68. 村沢牧

    ○村沢牧君 仲裁裁定の問題は、ひとり農水大臣の意見だけでもってどうすることもできないということは、その間の事情については私もわからぬわけじゃありませんが、そこで林野庁を所管をする農水大臣の林野庁の特質と仲裁裁定との関係についてただしておきたいと思いますが、行政改革に関連をして、赤字の国鉄、林野の賃金は抑制すべきだという意見があるわけです。国有林の赤字は、私がここでいろいろ申し上げるまでもなくて、またきょうは時間ありませんから申し上げることは省略いたしますけれども、一般的な企業の赤字と同一すべきものではないと思うんです。つまり、今日国有林が単年度収支で赤字であるといっても、過去における乱伐や過伐もあり、そのことがその時期においては国家財政寄与をしてきた。国家百年の大計に立って山の経営を見るならば、単年度赤字であったとしても、投資をすべきものはしなければならない。さらに加えて、国有林事業は、現在、職員の理解と協力によって経営改善に努力中である。したがって、単年度収支が赤字であるからという理由でもって、その経営状態によって職員の給与に差をつけることはすべきでない、赤字であるからと抑制すべきでない、このように考えますが、これは担当大臣としてのはっきりした意見を聞きたいんです。
  69. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 私もそういう考えでそれを主張いたしております。
  70. 村沢牧

    ○村沢牧君 そういう主張をいたしておりますが、いまいろいろ検討中であるけれども、農水大臣としては国鉄、林野の賃金を抑制していくということが言われている中におきまして、林野庁の持つ特質あるいはその使命、あるいは経営改善のいまの状況、赤字であるから、他の企業体と差別をつけていく、このことは絶対やってはならない、そのことを強く私は要請するんですけれども、改めて重ねて大臣の答弁をお願いしたいと思います。
  71. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 過般の関係閣僚会議においても林野事業のいわゆる経営状況は必ずしも期待に沿うような状況ではない。それは林野事業の特殊な事情にもよるものですけれども、しかし、現在国有林野事業改善特別措置法によって経営改善を進めているから、他の公共企業体と同様の扱いをしてほしいということを強く要請をいたしております。また、今後もこれは要請してまいりたい、かように考えております。
  72. 村沢牧

    ○村沢牧君 ぜひそういう態度で臨んでもらいたいし、要請するだけじゃなくて、結果的に見て他の公共企業体と同じように扱ったというふうになるようにしてください。  次は、本日の主題であります貿易摩擦に関連して伺いますが、農産物貿易交渉は東京ラウンドの合意事項がありながら貿易摩擦に関連をしてアメリカ、ECから市場開放を求める動きが強くなり、特にアメリカにおいては去る四月十二日、十三日の日米貿易委員会作業部会で話し合いがつかない、アメリカ側はガットの場に持ち込むということを提案し、日本もこれを受けて立とう、そういう報告がされておるわけであります。  しかし、その数日後、アメリカ日本に対して関税の引き下げや輸入枠の拡大市場開放の第二弾に盛り込むように要請した。そうして今月の五日にも日米非公式協議では輸入枠の拡大や関税の引き下げを日本に求めてきたということが報道されておるわけです。  このように何回も態度が変わってくるアメリカの真意というのは一体どこにあるというふうに理解をしているのか。非公式協議といっても五月五日に出されたアメリカ側の要求アメリカ政府の正式な態度である、このように農林省は受けとめておるんですか。
  73. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  まず五月の五日にジュネーブで行いました非公式協議というのは、日米貿易委員会であるとか作業部会とかいうそういう肩書きのついている協議でないという意味で非公式というふうに俗称しておりますけれども、この席上出てきました通商代表部のマクドナルド次席あるいは農務省のロドウィック次官、皆それぞれ米国政府代表して発言をしておられるわけでございますから、ジュネーブの協議の席上述べられた米側の見解というのは、アメリカ政府の見解であることは間違いないというふうに思っております。
  74. 村沢牧

    ○村沢牧君 それではジュネーブ協議で出されたアメリカ要求の内容について具体的に明らかにしてください。
  75. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) ジュネーブでは議論は何と申しますか、日本輸入制限について休戦ができるかどうかという問題を議論をしたわけでありますが、その議論の一部としてアメリカが関心を持っている事項についてアメリカ側がいろんなことを述べたわけであります。  それで、もちろんアメリカ側の基本姿勢としては、現在においても輸入制限の撤廃を要求するというのが基本姿勢でありますが、仮に休戦できるとしてということで話題になりましたことは、一つは、いますぐ自由化できないのであれば、自由化の時期を、自由化のめどをつけてもらうことができないかという問題であります。これはジュネーブで議論をしましたときには、牛肉、柑橘は十月から協議ということで別建てであるという了解のもとで議論したわけでございますが、牛肉、柑橘以外の問題、輸入制限品目について議論をしたわけでありますが、自由化のめどを示せないかという問題については、これはアメリカ側は全品目に関心を持っております。しいて言えばノリは関心がないと言ってもいいという言い方をいたしておりました。  それから自由化のめどの問題のほかにもう一つは枠の拡大ができないかと、これもノリを除く全品目について関心があるということでございました。  それから関税の引き下げ、これは昨年暮れに在京アメリカ大使館のバラグラフ公使から外務省の深田経済局長あてに提示されました米側関心品目リストとほとんど大差ないものでございますが、豚肉、アヒルの肉、レモン、グレープフルーツ、ジャム、チョコレートなどが目ぼしい品目でございます。それについて関税の引き下げをやってくれないかと。それからあと食品衛生関係の話、あるいはワイルドライスのような問題、そういう輸入検査手続関係の改善要求幾つかございました。ジュネーブの席上、アメリカ側が提起した問題は以上のようなものでございます。
  76. 村沢牧

    ○村沢牧君 たとえばいまお話しになった関税の引き下げについても三十九品目の関税の引き下げがジュネーブ会議で出されたという話もあり、そしてきょうの農業新聞を見れば、八十七のリストですか、こういうものについて明らかにされておったというふうに具体的に出ておるんですが、それはそんなに具体的に出ているんですか。
  77. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 確かに具体的に出ております。それで、品目の数についていろいろ異なった報道がされておりますのは、CCCNの何けたで数えるかということによって数が多かったり小さかったりするという問題があるわけでございまして、三十何項目というふうに言っておりますのは四けた数えた話でございまして、それからもう一つの、ちょっと失念いたしましたが、いま先生のおっしゃいました多い方の数は、あれはたしか七けたで数えた場合でございます。
  78. 村沢牧

    ○村沢牧君 そのアメリカから要求されている品目について資料を当委員会に提出できますか。
  79. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 提出いたします。
  80. 村沢牧

    ○村沢牧君 委員長、いま資料を要求したら当委員会に提出するということがありましたからひとつよろしく取り扱いをお願いしたいと思います。  つまり、アメリカ側は自由化のめどを示せ、あるいは枠の拡大ができないのか、関税はどうだということで日本にボールを投げかけて日本の方で検討してきてくれということなんですか。
  81. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) これはジュネーブでやりましたときには、日本側としてはこの種の問題について現在の日本政府のポジションは門前払いということである、アメリカ要求に対して。それで、アメリカ側の要求について検討する可能性があるとすれば、それはアメリカが休戦の意思表示をすることが先決であるということを主張をいたしました。それからそれに対してアメリカ側は休戦の可能性がないわけではないけれども、それは日本がどういうことをやれるかということを聞かしてもらうのが先決であるということを言いまして、日米双方とも事態は鶏と卵の関係のごときものであるという認識に到達をいたしました。それで、鶏と卵のような関係からいかにして脱却するかということにつきましてそれぞれ相手方の出方を念頭に置いた検討をそれぞれの側で行って、それを持ち寄って協議をすることにしようではないかということで別れたということでございます。
  82. 村沢牧

    ○村沢牧君 どうもわかりにくいんですがね、日本はこの輸入枠の拡大や関税の引き下げを大幅に行ったらばアメリカ側としては自由化の即時要求はしない、こういうふうに言ってそういうふうに受けとめているのか、それともアメリカの残存輸入制限品目の撤廃あるいは自由化を求める基本的な態度は変わっておらぬけれども、日本の対応いかんでは一時棚上げしてもよろしいですよということなのか、どういうふうに受けとめておるんですか。その受けとめの仕方によって日本政府も対応していかなきゃならぬと思うんですが。
  83. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  いま先生が挙げられました二つの設例に即してお答えいたしますれば後者の方でございます。
  84. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは、アメリカの態度は変わっておらぬと、しかし日本がこのジュネーブ会議でアメリカが示したことについて真剣に努力してきてそれがアメリカで納得できる、気に召すものであったならば一時休戦してもよろしいですよと、そういうことなんですか。
  85. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) もう一遍正確に申し上げますと、休戦してもいいとまで言っていないわけです。要するに休戦問題を検討することができるということでございまして、そこら辺はお互いにしっぽをつかまれないように注意深く言っておるわけでありますから、わかりにくいのがあたりまえであるというふうに思っていただきたいと思います。
  86. 村沢牧

    ○村沢牧君 アメリカは休戦をしてもいいというようなことも言っておらないという、そうすると一部に報道されておりますように、アメリカ側は一歩譲歩して一時休戦の道が開かれたんだと、だから日本政府としてもアメリカ側に対応するために具体的に検討していくんだというようなことも報道されておるんですが、そのような考え方は非常に甘い、農林省はそういう考え方を持っておるんではないということなんですか。
  87. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) アメリカ側も休戦の可能性を認めていることは事実であります。それはそういう意味では四月十二、十三の作業部会の段階に比べれば状況は変化してきていると思います。私はただ、いま非常に注意深く言葉を選びながらお答えいたしましたのは、休戦の可能性について米側はまだコミットしているわけでないということでございます。要するに休戦の可能性はありますが、それはまだどっちへ転ぶかということは非常に不透明なところがございまして、断固として日本をやっつけるのであるということではなくって休戦の可能性があるということも示唆しておりますが、休戦の可能性についてはもういただきと思っていいという状態ではないということでございます。
  88. 村沢牧

    ○村沢牧君 そこで、その非公式協議に出席した人のそういう意見であるのか、最初に私は伺ったんだけれども、それがアメリカ政府の正式な態度であるのか、その辺はどういうふうに判断するんですか、それじゃ。
  89. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 両名とも休戦協定の交渉権限を備えてジュネーブへ来たわけではないというふうに理解をしております。
  90. 村沢牧

    ○村沢牧君 そうすると、冒頭局長アメリカ政府の公式な態度であるというような判断しているというようなことを答弁があったんですが、いまの答弁とニュアンスが違っているんですが、どういうことなんですか。それはいままで話のあったことは皆さん当事者で話し合いをしたことであって、アメリカ政府としての公式な態度というふうには受けとめることはできないんですか。
  91. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 公式にアメリカ政府代表する地位にある立場の者がノンコミッタルに話をするという、そういう事態がジュネーブで起こっているのであるというふうに思います。
  92. 村沢牧

    ○村沢牧君 アメリカの態度は変わっておらぬ、そこで日本が即時自由化できない場合にはそのめどを示せと、これも正式にアメリカが言っているわけですね。
  93. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 自由化できないのであればかわりにめどを示せということは、確かに向こうは申しました。
  94. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣ですね、いままで私も経済局長にいろいろ聞いてきたんですが、なるほどそうかと、わかったというふうにすっきり腑に落ちない、何だかわかったような、わからないようなことなんですけれども、一体大臣はこういう交渉を受けて、それからこれがアメリカの正式の態度であるということも言われておるわけですけれども、この交渉結果に基づいてどういうふうにしていくという作業を進めていくんですか、しているんですか。まず、大臣としてはこれを一体どういうふうに受けとめておるんですか、もっとわかりやすく大臣の考え方を聞きたいんです。
  95. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 五月五日のジュネーブでの農産物協議についての内容については、いま経済局長から御答弁さしたような状況でございますが、私はやはり四月十二、十三日に開かれた作業部会、これは三月九日、十日の日米貿易委員会の結果を受けて開かれた公式の会合なんですよ。この中でアメリカは、やはり完全自由化でなければならないということを主張し、わが国としてはそれはどうしてもできませんということで物別れになりまして、その後、後を受けたいわゆる協議なんです。そこで私は、休戦の問題というのは一番大きい問題だと思うのでございまして、果たしてアメリカの態度が休戦に持ち込もうとしているのか、あるいはまたそうじゃないのか、あくまでも完全自由化でなきゃいかぬという態度を堅持しつつも、さらに休戦にも応ずるのじゃないというのであれば、私たちはなかなか私たちの考えをまとめるわけにまいらぬわけですよ。したがいまして、私はアメリカの態度いかんによるものだと、こう思っておるのでございまして、作業の進め方もアメリカの態度いかんによって私たちは進めていくという考え方でございます。
  96. 村沢牧

    ○村沢牧君 これは後ほどいろいろお聞きをしてから大臣に聞こうと思ったんですが、その前にも若干お聞きしておきますけれども、大臣はアメリカの態度いかんによって日本も対応していこう、こういう基本的な考え方である、アメリカ日本の態度いかんによって棚上げなり休戦もしようということなんですね。両方がにらみ合いっこしておるんですね。そうすれば、向こうの態度がわからないうちに貿易摩擦の第二弾なんかに農産物をやすやすと織り込んでいくことはできない、盛り込むことができない、これは常識だろうと思うが、大臣どういうことなんですか。
  97. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 先ほど局長から答弁さしたように、アメリカも休戦については、休戦するとしたらどういう状況で休戦できるかということをアメリカもいま考えている、だから日本もどうぞ考えなさいということでございますが、私はやはり先ほど申し上げましたように、作業部会の結果、こういう一つの態度が出たわけですよ、両国の。その結果、非公式ではございますけれども、アメリカの方からモーションが出てきたんです、モーションが。それを受けて、ガットの精神はあくまでも話し合いをしていかなきゃならないということから私たちは応じているんですから、そういう点から考えますというと、やはりアメリカは一体農産物自由化そのものをどういう考え方で受けとめるのかという基本的な問題が私はまだ残されていると思うんです。それを私たちは少し深くアメリカの実態を把握しない限り簡単にやはり応ずるというわけにまいらぬと私は考えています。
  98. 村沢牧

    ○村沢牧君 経済局長に聞きますが、いま大臣は、日米委員会のときの決定が正しいものであるというか、正式のものであるという趣旨の答弁であったわけですが、そうするとこのジュネーブ会談においては、例の小委員会のときにアメリカが持ち出した、ガットの場に出しますよと、日本も受けて立ちますよと、そういうことだったんですね、作業部会の中では。だからジュネーブ会談においては、ガットに持ち込むということはアメリカは取り下げるという話があったんですか、その辺の感触はどう受けとめていますか。
  99. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) まず、ジュネーブへ出かける前の段階で、東京で在京アメリカ大使館との間でいろんな接触が行われました。その段階で、アメリカ側はこの問題をガットの紛争処理手続に訴えるということを決めたわけではないという意思表示を私どもがジュネーブへ出かける前の段階でいたしました。ガットの紛争処理手続に訴えるということを決めたわけではないということをアメリカ政府が言っておるわけでありますから、それはそれで私どもも額面どおり信用をしております。  ただ、その決めたわけではないということと、それが休戦につながるかどうかということは、またこれはおのずと別の問題でございますので、そういう意味では、ガットの紛争処理手続に訴えることを決めたわけではないということを知らされたからといって、わが方としては態度を変更しがたいというふうに考えておったわけであります。  今度ジュネーブで話をしてみますと、アメリカ側としては休戦の可能性があることは認めて話し合いをしておるわけでありますから、そういう意味ではさらに一段と情勢は変化をしてきているように思います。  ただ、変化をしてきているんですが、そこは非常に注意深く申し上げているんですが、アメリカ政府自由化要求するというポジションは何ら変更がないということでありますから、その点は誤解のないようにお願いしたいんでありますが、その自由化要求するというポジションには何ら変更はないけれども、休戦の可能性はあるという、そういう事態であります。  そういう意味で、アメリカ側の公式のポジションが変化したかと言えば、それは自由化要求するという基本的なポジションは変わっていないわけでありますから、それは変化はない。アメリカ側が変化がないのなら日本側が対応して新しい動きをする意味がないではないかということになろうかと思いますが、その点は、作業部会の段階におけるアメリカ側の態度と、いま私がるる申し上げましたような変化が起こってきていることは事実でございますので、その変化をどう認識し、どう対応するかという問題はやはりあろうかと思っております。
  100. 村沢牧

    ○村沢牧君 作業部会でアメリカ側はガットの場に持ち込みましょうと提案したと、日本も受けて立ちますと、そういうことにして決着はつかなかったということをこの委員会でも農水省は公式に言っておるわけですね。  いまお話を聞いておると、そのガットの場に持ち込むというようなことも決めたわけではない、発言があったかどうか知らぬが、まだ正式に決めたわけじゃない。決めていないものをその都度アメリカが何か言ったからといって日本政府が右往左往して、どうするんだこうするんだというようなことを言って日本政府の対応をどうやっていくこうやっていくということも、これもまた不見識な話だというように思うんですが、一体その作業部会のときにガットに持ち込むというアメリカ側の態度はこれ生きているんですか、あれはもう御破算になったというふうに考えるんですか、どういうことなんですか。
  101. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) ガットの紛争処理手続に訴えるということは、現在アメリカ政府の中でそういう決定は行われていないわけでありますから、したがってガット云々の議論というのはアメリカの現在の公式のポジションとしてはそういうものは存在しないというふうに認識しております。
  102. 村沢牧

    ○村沢牧君 ガットの場へ持ち込むということはアメリカ政府で正式に決まっておらない、今度のジュネーブ会議で枠の拡大だとか、関税の引き下げだとか、検査手続をどうしようというようなことも、これもアメリカ政府で別に決めておるというわけじゃないことなんですか、これは決まっておるんですか。
  103. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) IQの増枠を要求をするということは、これは確かに先方はIQの増枠に関心を有しておるということは述べたわけでありますが、これはそれをもって増枠をしてくれればIQが存在すること自体についてアメリカが争う意思を有しないということを言ったわけではございません。
  104. 村沢牧

    ○村沢牧君 いろいろの意見を聞いたけれども、結局アメリカ側の態度は変わっておらないと、残存輸入制限品目をこれを早期撤廃しろと、自由化をせよと、この基本的な態度は変わっておらないと。しかし、そのほかいろいろ出てきて、こういうそれまでにめどを示せとか、あるいは関税を引き下げよとか手続を簡素化にしろとかいろいろ出てくるけれども、基本的な態度は変わっておらない、そういうふうにはっきり私は受けとめるんですけれども、重ねて大臣の見解をただしておきたいんですが、そういう見方でいいんですか。いろいろのことをアメリカは言ってくると、これは政府の態度は決まっておるかというと、いやそうじゃない、決まってはおりませんということですね。あるいは一面から見ると決まっているようにも見えるし……。ただアメリカの態度の変わらないことは先ほど私が申し上げたように制限品目の撤廃だとか自由化、このことについては変わっておらない。このことを中心として日本政府としては対応していくんだという何か基本がなくちゃいけないと思いますが、大臣どうでしょうね。
  105. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 確かに作業部会の当時のアメリカの考え方から見ると、いわゆるジュネーブ会議での考え方というのはある程度緩和されたように見受けられます。また事実現地へ出向いた局長もそういうように見ておるのでございますが、私はこの農産物自由化についての考え方でございますが、やはりこの問題は厳しく受けとめなきゃならないと、こう考えている、当初から私はそう考えているんです。それはやはりアメリカは、いわゆる貿易の対外経済摩擦の起きた原因から考えてみて、貿易のいわゆるインバランスの解消のためには何としても、世界経済の再活性化にあるわけですが、しかしアメリカ高金利政策によってやはり為替レートの関係で円が安くなって輸出が伸びていっている。ですが反対にまた輸入がある程度鈍化しておりますので、そういう関係からやはり拡大均衡政策をとらなきゃいかぬというので今日まできている。その拡大均衡政策の中でやはりアメリカ農産物輸入することが拡大均衡政策の大きいものだと思うんですね。そういう点から考えますというと、私はこの貿易自由化という問題については、アメリカはかなり厳しい態度で日本に臨むのじゃないだろうか、そう思いますから、私はいろんな考え方が出てまいりますけれども、結局、拡大均衡政策との関連から言いますというと、農産物に対する要求というのはかなり厳しく要求されるものと、こう考えます。したがいまして、私はわが国農業を支えるためには、これはやはりいまいっぱいいっぱいの状況でございますから、これはいまがまんしていただきたいという態度を常に堅持していかなければならない、かように考えておりましたし、また今後も考えなきゃならない問題だと、こう考えておるのでございます。
  106. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣が厳しく受けとめていくこと、そのことは正しいことであるし、私もそうなくてはいけないというふうに思うんであります。  そこで、ジュネーブ会談のやりとりを聞いておってもらちの明かぬ話でありますし、また局長としても公式の場で言いにくい点もあるであろうというふうに思いますから若干前へ進みますけれども、日本社会党は今日まで貿易摩擦問題とわが党の見解というのを内外に明らかにして、政府に対しても農畜産物輸入自由化や枠の拡大をやってはいけない、やるべきでないと、こういう申し入れも何回もやってきたところであります。先日も私は当委員会でこの問題をとらえて大臣に質問して、大臣としても決意を述べられているところでありますが、そこで、私は確認をしたいんでありますけれども、大臣は日本は残存輸入制限品目の撤廃も自由化もできないと、したがって自由化のめどを示すこともできないと、この基本方針には変わりありませんね。
  107. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) その考えを貫こうと思って努力をいたしておりますし、またアメリカにもその点を理解していただこうと、こう考えております。
  108. 村沢牧

    ○村沢牧君 経済局長アメリカ側といろいろ交渉するんですけれども、そういう大臣の決意や農林水産省としての基本的な態度を踏まえてアメリカ側に正確に伝え、あるいは日本の意思を発表しているんですか。
  109. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 四月の作業部会の際も、五月五日のジュネーブの協議の際も私は輸入制限の撤廃は不可能である、それから撤廃のめどを立てるということも不可能である、こういう問題は検討をしてみることさえできないということを伝えてございます。
  110. 村沢牧

    ○村沢牧君 輸入枠の拡大についてもやはり同じことが言えるというふうに思うんです。国内では生産調整をしているいまの農業の現状、さらに輸入の増大したことがわが国農業食糧自給率の向上に及ぼしてきた影響、これらを考えると、これ以上輸入をふやすというわけにはいかない、私はこういう理解に立ち、このことを主張してまいりましたけれども、大臣の見解は現時点においてどうでしょうか。
  111. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 御指摘のとおり、やはり現在の日本の農林水産業の実態を考えますというと、やはり輸入枠の拡大も非常にむずかしい問題である、かように考えますので、この点についても極力私たちの考えを主張して理解を得たい、かように考えております。
  112. 村沢牧

    ○村沢牧君 私は、今日まで当院の本会議やあるいは他の委員会、たとえば予算委員会等においても、農産物輸入わが国で不足をするものに限って行う、わが国生産が可能なものについては自給率を高めていく、このことが農業政策の基本であると、こういう主張をし質問をしてまいったところでありますが、その際、総理も全くそのとおりでございますというふうに言っておるけれども、現実はなかなかそういう形になっておらない。つまり、大臣にこれまた確認ですけれども、輸入というのはわが国で不足をするものについて行うんだと、そしてわが国生産ができるものについては生産力を高めて自給率を高めていくんだ、こういう基本的な政策は貫いていかねばならないというふうに思いますが、これまた改めてこの際ですからお聞きをしておきたいと思います。
  113. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 私たち食糧の自給力の維持確保ということがいま一番大きな課題でございますので、そのためには何としても生産性の向上を図らなければいけない、その生産性の向上も私たちの国で生産できるものは極力私たちの国で賄おうというこの基本に立って進めていくということでございますので、これまでもそういう態度をとってまいりましたし、今後もそういう態度で臨みたい、こう考えております。
  114. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣の基本的な態度については私たちも賛成ですが、しかし現実はなかなかそうはいっていない。たとえば自給率の問題を見ても、長い間の皆さん方の、自民党の政府のいろんな政策によって、たとえば農業は縮小され、それから海外依存政策が強められた、そして食糧の自給率は年々低下してきた、特に穀物自給率は通常三三%と言ってるんですけれども、先日私の質問に対して、農水省は三〇%を割ったと、五十六年ですね、そういうふうに言ってるんです。大変なことですね。まさに先進国では最低の水準となって、国民食糧の供給にも不安を与えている。こういう事態になることを恐れたから国会でも衆参両院で自給力強化に関する特別決議も行ったんです。しかし、現実はこうした決議と逆行している。  大臣、農水省使命というのは、やっぱり国民食糧確保することにある、安定的確保といっても自給率を高めて確保することにあると思うんですが、大臣はいまの自給率の現状、あるいは農水省みずからが出している長期見通しのとおりになっておらないということをどういうふうにこれを反省して、どういうふうにこれを挽回し、取り戻し、自給率を高めていこうとされるんですか、まずその決意についてただしておきたいと思うんですが。
  115. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 御指摘のように、わが国で自給できるものはお米、あるいは野菜、果物あるいは畜産物なんでございますが、そのほかの大豆だとか小麦あるいはトウモロコシ、さらに飼料作物等はどうしても海外から依存しなければならない現状にあるわけでございますので、私たちとしては、これを、自給力を確保するために今後最善の努力をしなきゃいかぬ。特に飼料作物について特に奨励をしてまいらなければならないと、こう考えているわけでございます。しかもいま御承知のように、穀物はもうお米が日本では一千万トン程度生産されますが、アメリカからもう二千三百万トンも穀物が入っているという現状ですね、これはやはり日本農業にとって、自給力の面から言うと非常に重大な問題なんですね。ですから、私はこれを何とか改善していかなければならない、こう思います。しかし、まあ限られた日本のこの領土の中でそれを進めることはいまにわかにはできません。しかし、長期の展望に立ってこれはぜひともある程度の自給力を確保していかなければならないと思うんです。たとえば石油の面でも、いま国が昭和六十五年までに四九%の依存度にしたいということを目標にしておるのでございまして、そういう点から言うと、食糧の面では、まだまだ穀物の面では三〇%をいま割るような現状でございますから、こういういわゆる体質は変えていかなければならない、こう考えておるのでございますので、そういう点に今後も積極的な努力を払わなければならない、かように考えております。
  116. 村沢牧

    ○村沢牧君 努力を払うことは当然だけれど、やはり具体的な政策に予算の面にぜひあらわさなきゃいけない、まあ全然あらわれていないというわけじゃないけれども、年々自給率が下がってきておるんですから、幾ら口先だけで努力をすると言っても、現実が伴っておらないと思うんですよ。  そこで、今日自給率がこんなに低下してきたということは、これまた輸入との関係を無視して考えることはできない。たとえば大豆にしても小麦にしても、なるほど日本のいまの耕地面積で、あるいは土地利用型の農業を高めていくところで、小麦や大豆日本で自給できるようにするということは大変なことですけれども、なぜこんなに下がったということもやっぱり輸入との関係が非常に大きいわけですね。ですから、いまここで外圧に屈して一時貿易摩擦の風当たりは若干緩くなったとしても、日本農業の将来の展望にとって重大なことになってくると思うんですね。  そこで、自由化されたとすると大変だ大変だということを言うんですが、具体的にどういうふうに大変なのか。午前中も参考人を呼んで意見を聴取したところでありますが、全中としても具体的な品目についてこういうふうになりますよということを、まだそこまで煮詰まった検討もしておらないようでありますが、すべての農産物とは言わないけれども、特に代表的な自由化を求めておられる作物として牛肉は一体どうなるのか、オレンジは一体どうなるのか、この二点について農水省の見通しを、見解を明らかにしてください。
  117. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えします。
  118. 村沢牧

    ○村沢牧君 局長、私は専門的、具体的に聞きたいんだから、局長の抽象的なあれじゃなくて聞かしてもらいたいんです、具体的になるほどこういうことになるのかということをですね。
  119. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) それじゃやめます。
  120. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 畜産局長いま所用でこちらへまだ参っておりませんので、私かわりましてお答え申し上げますが、現在牛肉国内生産量は約三十万トンでございます。これは部分肉に換算をしてでございますが、これはむしろ私ども、農業基本法が通りまして以来、選択的拡大の主要品目ということで、特に畜産の中でも大家畜の場合には、先ほど村沢先生から御指摘ございましたが、穀物飼料に依存しなくても国内の飼料作物によりまして生産拡大は可能であるというところから大いにこれを奨励してきたわけでございます。特に四十年代に入りまして、米の過剰生産という問題がございまして、その中でもこの牛肉につきましては今後の戦略作物ということで積極的に選択拡大の対象品目ということで各種の奨励措置を講じてきております。これが今日仮に自由化いたしました場合、まだ日本国内生産性というものと外国と比べました場合、相当の開きがございまして、特に牛肉の場合の主要生産国はアメリカよりも主として豪州、ニュージーランドでございますが、生産規模も非常に違いますし、また輸入価格等々比べましても、恐らく豪州の場合には日本の恐らく三分の一ぐらい、アメリカの場合には約三分の二程度価格で入ってくるということになりますと、確かに嗜好の程度は違うにいたしましても、最近の若い方々は、日本の和牛の肉よりもある程度赤身の入った肉というようなものの嗜好が強いということもございまして、いまの生産量から見ますと、現在の日本牛肉生産というのは非常に破局的な影響を受けるのではないかという心配をするわけでございます。  したがいまして、これに対して何らかの対策をとった場合どうかというような問題もございますけれども、現状におきまして不足払いというような方法をとることも現在の財政事情から見ますとはなはだむずかしいという感じを持っておりますし、こういう状況から見ますと肉用牛の現在飼養農家、約三十五万戸ございます。また同時にこの牛肉は、最近は乳牛政策の一分野を成しておりまして、特に乳牛の雄の肉が現在では国内牛肉生産の約四割になっているかと思います。こういうものもしたがいまして大きな影響を受けるということになりますと、酪農につきましても同じような影響を受けるということになりまして、これは単に肉用牛生産だけでなしに、酪農全般についても大きな影響を受けるということになりまして、私どもとしては、この牛肉生産については自由化はきわめて困難であるというふうに考えておるわけでございます。  その次に柑橘でございますが、柑橘につきましても、基本法以来、私ども今後の選択的拡大の大きな品目といたしまして畜産あるいは果実あるいは野菜というものに大いに戦略的な奨励を行ってきたわけでございますけれども、これも最近では特に柑橘は年間三百万トン以上の生産を超えるような状況になってきておりまして、国内におきましてもすでに選択的奨励というものが需要の面からかげりが出てきておりまして、最近では生産抑制のためにあるいは伐採等転換を奨励し、また夏柑、晩相等への品種転換を進めるというふうな実態になってきております。そこで、外国から同じようなオレンジというものが仮に自由化されて入ってきました場合、品質、価格の面におきましても相当の影響を受けると。また、現に過剰生産をしておる中で、外国から自由に、同種のオレンジの輸入自由化するということは、むしろ国内農家に与える影響から見ましても、これは困難であると。この柑橘の生産農家、これは温州ミカンだけとりましても約三十万戸ございますし、これも大体西日本の暖地の大きな主要作目になっておりまして、いま申し上げたような現状におきましてこれを自由化するということは、私どもとしてはとてもできないというように考えているわけでございます。
  121. 村沢牧

    ○村沢牧君 いま答弁があったように、牛肉やオレンジがたとえ秋、十月の交渉にラウンドの関係で持ち越されたとしても自由化することはできないという理解をするわけですけれども、——わが国世界最大農産物輸入国である。そして、その主要な穀物の大部分アメリカ一国に依存しているわけであります。  そこで、数字的にお伺いいたしますが、昨年、つまり一九八一年の農産物輸入額とその伸び率、その中で特にアメリカからの輸入額ですね、前年対比、あるいは輸入額に占めるシェア、これらについて明らかにしてください。
  122. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 一九八一年の農産物輸入金額は百八十四億八千四百八十九万二千ドルでございまして、これは対前年比四・九%の伸びになっております。そのうちアメリカからの農産物輸入金額は、七十七億八千九百六十六万一千ドルでございまして、これは対前年比一〇・一%の伸びになります。農産物輸入金額の総額に占める米国からの輸入のシェアは四二・一%でございます。
  123. 村沢牧

    ○村沢牧君 そこで大臣、重ねて伺いますが、昨年の農産物輸入の伸び率は四・九%であったと。しかし、アメリカとの関係は一〇・一%も伸びておる。金額にしてもまさに史上最高であろうというふうに思います。また、そのシェアは四二・一%。私の記憶が正しければ八〇年代には四〇・一%だというふうに思いますが、このシェアも大きくなり、これまた史上最高だと。つまり、日本アメリカにとっては最大のお得意様ですね。日本で不足をする物をアメリカに頼っていくということは、これは大事なことであり、そのことは輸入をしなければならないわけでありますけれども、生産調整をしている物まで輸入を押しつけられてきておる現状、まさにこれは筋違いじゃないか。日本政府はもっと毅然たる態度をとるべきではないかと思うんですが、大臣はどういうふうに思いますか。
  124. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 確かに、牛肉にしてもまた酪農にしても五十四年度以降いわゆる計画生産を進めているのが現状でございますので、また柑橘についても同様の、需要が非常に停滞しているという現状でございますので、私はやはり日本農業を縮小してまで他の物を、外国に依存するということは、これは日本農政のとるべき姿じゃない、態度じゃないと、こう思いますので、そういう点は、日本農産物の需要の動向というものをできるだけアメリカに御説明をして理解をいただくということに努めていかなきゃならない、こう考えています。
  125. 村沢牧

    ○村沢牧君 相手側の理解を求めることも必要だけれども、やっぱり日本の態度が毅然たるものを持っていなけりゃいけないというふうに思うんです。だから、アメリカから言われたから何とか検討しなきゃならない、どこそこの貿易摩擦があるから検討しなければならないということではなくて、日本農業を守っていくために、日本食糧供給を高めていくために、日本政府としての、日本の農水大臣としての毅然たる態度をとるべきであるというふうに私は質問申し上げたんですけれども、重ねて大臣の決意を聞きたいです。
  126. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) そういう意味の御答弁を申し上げたのでございます。
  127. 村沢牧

    ○村沢牧君 外務省いますか。——外務省どなたですか。
  128. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 北米第二課長です。
  129. 村沢牧

    ○村沢牧君 外務省に私はきょうの質問をするについて要請をしていたんですが、課長さんが出てきて悪いというわけじゃないけれども、基本的な問題等について聞きたいので政府委員をぜひ出してくださいと、そういうことを何回も前から要求しているんですが、あなた政府委員ですか。
  130. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 私は政府委員ではございません。
  131. 村沢牧

    ○村沢牧君 国会が特に外務省にも関係をする問題、日本政府の対応が迫られている問題について論議をしておるときに、政府委員を出してくださいと突然言ったわけじゃないんですね。きのうあたりからずっと言っているんですよ。なぜ政府委員を外務省は出せないんですか。
  132. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) ただいま御討議いただいております貿易摩擦経済問題の所管は外務省では経済局でございますが、経済局長、大変申しわけございませんが、在京の外交団とのかねてからの会談の約束がございまして、昨日御連絡を受けまして時間の調節に努めましたが、先方の都合もありまして、残念ながら本日出席できなかったということでございます。
  133. 川村清一

    ○川村清一君 ちょっと議事進行について。  ちょっと速記とめてくれませんか。
  134. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  135. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 速記を起こして。
  136. 村沢牧

    ○村沢牧君 いまのことに関連して外務省、もう一点だけ伺っておきますが、私は外務省が昨日見えたときに官房長を出してください、あるいは局長出してくださいと要求したんですが、いまこちらで話があったようなことなんですけれども、外務省の態度というのはあれですか、農林水産省委員会あたりは局長や官房長が出るべきではないというような、そんなことを基本的に考えているんですか。
  137. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) そういうことではないと考えておりますが、本日のところはさきほど御説明いたしたような事情があったわけでございます。
  138. 村沢牧

    ○村沢牧君 官房長は。
  139. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 官房長の予定については、実は私は詳しいことは承知しておりません。
  140. 村沢牧

    ○村沢牧君 局長がだめだったら官房長出してくださいと言ったんじゃないですか。冗談じゃねえよ。官房長の都合も聞かなくてだめですと言ったって、出ませんと言ったって、そんなことあるのか。もう一回答弁してください。
  141. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) それでは官房長の都合につきまして早速調べましてお答えいたします。
  142. 村沢牧

    ○村沢牧君 あれですか、官房長の都合調べてこれ出すということなんですか。そういうことなら私は質問いまちょっととめていますけれども、どういうことなんですか。
  143. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) それでは早速ただいま、私自身が実は官房長の都合までは調べないまま参りましたが、早速ただいま調べます。
  144. 坂元親男

    委員長坂元親男君) よく聞こえないので、もう少しはっきり言ってください。
  145. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 私自身は官房長の都合を調べないまま本日ここに伺いましたが、早速調べていまお答えします。
  146. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは、外務省がいま調べているようですから通産省に質問しますが、通産省いますか。——あの、通産省も政府委員ですか。
  147. 茶谷肇

    説明員(茶谷肇君) 政府委員ではございません。
  148. 村沢牧

    ○村沢牧君 これまた私は昨日も通産省に政府委員を出してくださいと、官房長あるいは担当の局長出してくださいと、そういうふうに要請しておいたんですが、なぜ出ないんですか。
  149. 茶谷肇

    説明員(茶谷肇君) 先生の御要請は伺っていたわけでございますが、担当の貿易局長それから官房長ともども、さる外交団と本日ちょうどいま前前からの約束がございまして、そちらの方に出ておりますので、先生にもその点御了解を願いたい旨、いろいろお話を前に申し上げたとおりでございます。
  150. 村沢牧

    ○村沢牧君 こんなことで論議したって時間食うばかりですがね、先ほど出れませんというのは、あなたが来て名刺を置いていきましたね。こんなことで済むと思うんですか。官房長にしても局長にしても、暇な人はないんですよ。みんな用事はある。しかし、国会の審議というのはね、国会から要請があったら出てくるという、国会を尊重するという気持ちがなくちゃいけないんですが、それはだれだって用事はあるでしょう。なぜ出れないんですか。
  151. 茶谷肇

    説明員(茶谷肇君) ただいま御説明申し上げましたとおり、外交団と本日ただいま会合を持っておりますので、出席できないわけでございます。
  152. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 村沢君にお尋ねしますが、外交用務で会議中ということですが、どうしますか……。
  153. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) ただいま官房長の方に都合を確認いたしましたが、ちょうどこれも同じく外交団との会合がありまして、残念ながら調整がつかないということでございます。
  154. 村沢牧

    ○村沢牧君 日本は外国のお客さんしょっちゅう来てますがね、外交用務と言えば通るなんて思ったら、それは見当違いですよ。ですから、私はこれ聞かないけれども、一体この時間で外国のだれが来てどういう重要な案件で国会に出なかったか、外務省と通産省、文書をもって明らかにしてください。委員長、要請します。
  155. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 朝海北米第二課長、茶谷農水産課長、それを確認して出してください。
  156. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは、外務省の政府委員は来られないようですけれども、しかし、外務省に関連をする問題でありますから聞いてまいりますけれども、昨年一年間の日米貿易のインバランスは百三十四億ドルですね。対ECでは百三億ドルに上っておると。仮にわが国農産物市場開放をしてみたとしても、せいぜい摩擦に寄与するのは五億から七億ドル。また、先進諸国はいずれも農業の国家保護措置を講じておる。わが国だけが農業過保護であるという指摘は当たっておらない。アメリカでも十分こういうことを知っているというふうに思うんですけれども、承知をしておってもなお市場開放を迫ってくる背景は何であるのか。外務省はどのように認識していますか。
  157. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 現在のいわゆる貿易摩擦背景に関しましてはいろいろな要素があろうかと考えております。  その一つは、たとえば米国あるいは欧州におきましてインフレが進行している、経済全体として停滞しているというような中で、いかにして対外的な関係において拡大均衡的な発展をしていくかということが大きな課題になっていると考えておりますが、それと同時に、米国の場合ですと、現在の米国政府の基本的な考え方は、国際貿易におきましてできる限り障壁を取り去り、それぞれが国際競争力を有する分野において自由に競争していこうという基本的な哲学のようなものがあると考えております。そのような見地から、アメリカの目から見ますれば、農産物につきましてはアメリカは競争力が強いので、日本の側において自由化努力してもらいたいという基本的な考えがあるのじゃないかと見ております。
  158. 村沢牧

    ○村沢牧君 日本は非常に輸出が多いから、あるいは市場を閉鎖しているからアメリカの不況が回復しない、あるいは失業者も増大をしている。つまり、諸悪の根源が日本にあるともいうようなことを言って、自国の、つまりアメリカ国民の不満をなだめようとしている、こういうことが一部から指摘をされているんですね。こうしたことがないとは言い切れない。そうとするならば、日本は何のために貿易摩擦の解消のために国を挙げてこんなに大騒ぎをしているのか。外国の政府や為政者の責任を回避するための役割り日本が演ずることがあってはならないと思う。これについては外務省はどういうふうに考えますか。
  159. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 現在起きておりますいわゆる貿易摩擦の問題は、先ほど申し上げましたとおり、相当部分それぞれの国の経済の活性化といいますか、景気の向上といったことと関係している部分もあると思いますが、私どもの方では、したがいましてあらゆる機会をとらえまして、それぞれが自国の経済の再建、再活性化に努力してほしいというようなことを強く指摘しておるところでございますが、それと同時に、私どもの基本的な考え方は、世界的な相互依存関係の中にあって、日本としても今日相当の経済力を持っておりますので、世界経済全体の発展のためにどういう貢献ができるだろうかと、そういう見地からも考えてまいりたいというふうに思っております。
  160. 村沢牧

    ○村沢牧君 どうも答弁もすっきりしないんですがね。  わが国は、今月までアメリカとはまさに友好関係を保ち、一部には同盟国とまで言われているわけですね。そしていろいろな面で協力もしてきた。たとえば、自動車輸出の自主規制もやったし、六十七項目にわたる非関税障壁の削減をしたり、あるいは海外投資の増大をする。それにアメリカの意図を受けて防衛費まで突出をさせた。つまり、アメリカの言うことをこれだけ聞いておるんですよ。さらに農産物まで譲歩して自由化したり、枠の拡大をしたり、これに仮に——折れることはできないですよ、もう。折れるとしたって、アメリカの自動車工場が再開されるわけでもないし、あるいは鉄鋼労働者の暮らしがよくなるわけでもない。したがって、外務省としてはわが国農業の置かれている立場等十分踏まえて、もっと自主的にわが国立場を、独立国としての立場を主張し、そういう立場に立って外国との交渉をすべきではないかというふうに思うが、どうですか。
  161. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 御指摘のとおり、日本事情日本の置かれた立場につきましては、今後も引き続き諸外国の側に十分説明し、働きかけも行っていきたいと考えております。
  162. 村沢牧

    ○村沢牧君 外務省は、具体的に言って貿易摩擦を解消するにはどうしたらいいのか、そして農産物自由化だとか枠の拡大要求に対しては外務省としてはどういう見解を持ってアメリカその他の外国と折衝しているのか、この基本的な態度を明らかにしてください。
  163. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 外務省といたしましては、先ほども触れましたが、諸外国の側に主張すべきことは今後も十分主張するとともに、同時に、国際的な協調的な関係をつくっていく上でどうしたらいいかということについて今後も考えてまいりたいと思います。  具体的に、農産物の問題につきましては、先ほど来御答弁がありましたような状況でございますので、今後農水省とも緊密に連絡をいたしましてこれから検討してまいりたいと考えております。
  164. 村沢牧

    ○村沢牧君 農産物の問題についてこれから検討していくということなんですが、農水大臣は、自由化もできない、困る、自由化のめども示すことはできない、枠の拡大も困ると言っているんですよ。外務省はこれからそのことを検討するんですか、どういうことなんですか。
  165. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) そのような日本立場と、それからアメリカ側の立場、その間に立ちまして何らかのお話し合いによる道はないものだろうかという趣旨でございます。
  166. 村沢牧

    ○村沢牧君 そうすると、外務省は日本アメリカの間に入って調停、仲裁でもするというふうな、こんなふうな趣旨に受けとれるんですが、そういう態度なんですか。
  167. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 仲裁というようなことではございません。当然のことでございますが、外務省は日本政府の一機関でございますので、基本的に日本政府立場代表しまして外国政府と折衝する立場にあるわけでございますが、それと同時に、外国の側の物の見方なり関心なりも正確に国内の関係方面にお伝えしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  168. 村沢牧

    ○村沢牧君 それじゃ基本的に言って、農水大臣が先ほど来答弁をしておる、こういう見解に外務省も立つと、こういう決意でもってこれからの外交交渉を進めていくという、外務省の態度としてそのことを確認できますか。
  169. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) そのとおりでございます。
  170. 村沢牧

    ○村沢牧君 通産省も、ちょっと聞きますけれども、貿易摩擦原因は、これはだれが見ても、どういう資料から見ても、工業製品輸出の増加によるものであって、農産物貿易摩擦原因をなしているんじゃない。したがって、摩擦を解消するためにはやっぱり工業製品の秩序ある輸出だとか、いままでの貿易政策、これらについて政策の変更を求めなければ、仮に農産物の枠を拡大したとしたって貿易摩擦は解消することはできない、このように断言しますけれども、通産省の基本的な考え方はどういうことなんですか。
  171. 伊藤敬一

    説明員(伊藤敬一君) お答えいたします。  先生御指摘の貿易摩擦でございますが、これ、わが国経済全般にわたります非常に重大な問題と受けとめまして、私ども通産、特に貿易政策をやっております当局といたしましては、毎日鋭意検討に取り組んでおるところでございます。それで、貿易立国でありますわが国にとりまして貿易をじみちにかつ安定的に拡大していくということ、そのことはこれはもうわが国が適切な経済成長を実現するために最も大切なことではないかと思っておるわけでございます。したがいまして、基本的にはガットの精神でもあります自由貿易体制を維持いたしまして貿易拡大均衡を図っていくということではございますが、確かに先生おっしゃいましたように具体的な輸出の問題につきましては、これはやはり日本経済もここまで成長を遂げてきたわけでございますから、諸外国のいろんな事情も踏まえて政策を決定していかなきゃいかぬ。私どもしたがって、相手国経済及び特定産業の状況を十分配慮しつつ特定品目にかかわる集中豪雨的輸出、こういうものがもしあるといたしましたならば、これはもう当然廃止しなければいけないということでこれまでもやってきておりますが、今後とも適切に対処していく考えでございます。たとえば、代表的な事例といたしましては、先生も御指摘になりました自動車輸出、昨年度も対米向け百六十八万台というようなガイドラインをつくっておりますが、五十七年度も同様に実施してやっていきたいというふうに思っております。  それで、ただ輸出の抑制措置の中で輸出課徴金の構想というのがたまに出てまいります。私どもただこれは貿易立国でありますわが国といたしまして、やはり輸出を罪悪視するというようなことにもつながってまいりますし、現在、輸出動向そのものが決していいような状態ではございません。二月が通関統計でマイナス三・六%、三月がマイナス三・五%、四月まだ発表になっておりませんけれども、私ども一昨日発表いたしました輸出確認統計、これによりますと四・八%の連続減少になっております。これは五十年以来の事態でございまして、そういう輸出の落ち込みというものもわが国経済の健全な発展という観点からはやはりまだ一つの問題ではないかと考えておるわけでございまして、こうした時期にこの輸出課徴金というのは決してとるべき政策ではない、ガットの自由精神にも反しますし、わが国経済を一層失速に追い込みかねない、ともすれば諸外国は輸入課徴金というようなことを言うわけでございますが、それにも一つのかっこうの口実を与えかねないというようなことで、これはもうとるべき政策ではないということを昨年の経済対策閣僚会議、十二月に政府方針として決定いたしておるわけでございまして、いずれにいたしましても、私ども国際社会の安定と発展の中においてこそ初めてわが国経済の長期的な繁栄が実現できる、これを名実ともにかみしめまして今後の政策に処してまいりたい、かように考えております。
  172. 村沢牧

    ○村沢牧君 通産省は農産物市場開放を渋るのは誤りであるというような、こんなような内部の文書をつくってみたり、あるいは農産物市場開放の矢面に立たざるを得ないなんていうことを発言をする人もおるわけですね。農業サイドだとかそして食糧安保という立場から見るならば許しがたいことなんです。通産省としては農産物自由化、枠の拡大についてどういうふうに思っているんですか。あんまり長くしゃべらなくたっていいから、基本的に簡潔に答弁してください。
  173. 伊藤敬一

    説明員(伊藤敬一君) 前段のところだけ私から一言答えさしていただきます。  当委員会でも一度答弁いたしておりますが、農業政策との関係で何らかの考え方、文書をまとめたことがあるんじゃないか、こういう御質問を受けたことがございますが、そうした事実は一切ございません。
  174. 茶谷肇

    説明員(茶谷肇君) お答えいたします。通産省といたしましては基本的には貿易拡大均衡を基本としながら調和ある対外経済関係の形成に努めまして国際経済摩擦の解消を図ることが緊急の課題と考えております。このために関税の引き下げの前倒し措置等を通じまして円滑な通商関係の確立に努力をしているところでございます。  農水産物市場開放につきましては、関係諸国との友好関係に留意しつつ、農水産物の需給動向等を踏まえましてわが国農水産業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に重要であると考えております。しかしながら、欧米諸国等はなお多くの分野にわたりまして一層の市場開放要求をしております。したがいまして、わが国といたしましては、今後とも十分粘り強く欧米諸国等に対しましてわが国の実情やこれまでの政策努力を説明いたしまして、その理解を深めるべく努力を傾注いたしますとともに、引き続き、一層の市場開放に向けて努力いたしまして、ベルサイユ・サミットを念頭に置きながら第二弾のまとまった対外経済対策をぜひ取りまとめることが必要であると考えているわけでございます。
  175. 村沢牧

    ○村沢牧君 外務省、通産省にちょっと基本的なことをきょうは質問もしたかったわけでありますけれども、先ほど来指摘をしているように政府委員で皆さんありませんから、私は両省に対する質問はこの辺でおきますが、後日改めて質問いたしますから、そのときはさっき要望しておったような立場の人を、ぜひ出してください。  そこで、私のぼつぼつ質問をまとめてまいりますけれども、大臣、いろいろ質問し、意見も申し上げてきたんですけれども、わが国農業を取り巻く情勢、特に輸入の増加がわが国農業に及ぼしてきた影響あるいは日本農業の将来展望、食糧の安全保障等々考えるときに、自由化にも枠の拡大にも絶対に応ずることはできない。また一面、先ほど来質問いたしましたように、市場開放を求めるアメリカの真意がどうもはっきりしない。こういう状態の中にあっては、政府がこれから取り決めようとする市場開放第二弾に農産物を盛り込むべきではない、もっと事前にアメリカその他の国と交渉して日本の現状、意思を諸外国に理解をさせる努力をすることが先決ではないか。つまり、第二弾に農産物を織り込むべきではないというふうに私は理解しますが、大臣の決意はどうですか。
  176. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 対外経済摩擦の解消につきましては、政府としての重大案件でございますので、先ほど来答弁にありましたように、昨年の暮れに経済対策閣僚会議を開いて五項目の対外経済対策を決めて、それにのっとっていま対策を進めているわけでございまして、もうすでに関税率の前倒し、あるいは非関税障壁の緩和等を進めて、この考え方をやはりアメリカあるいはECにできるだけ理解を求めるために努力をしてまいっておるのでございます。しかし、アメリカあるいはECの貿易自由化に対する態度というのは非常に厳しゅうございまして、特に農産物に対する自由化要求というのは非常に強いわけでございまして、先ほど来御説明申し上げたような日米間の状況でございます。したがいまして、第二弾措置との関係でございますけれども、これについては私はアメリカのこれからの態度についてこれからいろいろ話を進めていかなきゃいかぬと思いますので、その結果を踏まえて第二弾との関係が出てまいると思います。私としてはやはり農産物のあり方というものはいま私たちとして一つのスケジュールにのっとって進めておるのでございますので、その結果を見て第二弾の問題は考えるべきだと、かように考えております。
  177. 川村清一

    ○川村清一君 時間があと十分ほどしかないんですが、私、水産物について質問いたしたいと思うんです。それで、時間がありませんから、答弁も本当に簡潔にポイントだけお答えください。  いま残存品目二十二品目、これが完全に自由化されますと、これは水産物も相当含まれておりますから、日本の水産界に対しましてはやっぱり重大な影響があるわけです。それで、水産庁が今日までアメリカといろいろ折衝されておるようですが、その折衝されておる問題のポイントですね、どんなことについて折衝されて、現在どんなような状態になっておるのかということをごくかいつまんで報告してください。
  178. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 残存輸入制限品目二十二品目の中で、水産物は、タラ、アジ、ブリ、サバ、イワシ、ニシン、イカ等が含まれております。対米関係の従来までの接触の状況でございますが、本年三月に開催されました日米貿易委員会の時点におきましては、米国としては長期的な観点から水産物についても完全自由化要求するという立場をとったわけでございますけれども、その後いろいろと実務的に話し合いをいたしました結果、当面の現実的な問題といたしましては二つございまして、一つは、米国の関心事項といたしまして、ニシンの輸入割り当ての運用の改善という問題と、対日漁獲割り当てに関連いたしまして、スケソウダラの洋上買い付け、これを増大してほしい、この二点の意向が明確になったわけでございます。その後もなお非公式的な接触を続けてまいったわけでございますけれども、アメリカといたしましては、この二つの問題につきまして納得のいく解決ができますれば、当面必ずしも完全自由化に固執するという態度は見せておりません。  それからまた同時に、私ども非常に大きな懸案でございます対日漁獲割り当ての問題がございます。この問題につきましては、四月に二五%割り当てられるべきものが一〇%削られて割り当てられているということで、私ども強く抗議をしたわけでございますが、この問題の解決のためには、ただいま申しました二点につきまして何らかの解決が必要であるというふうに考えておりますので、五月の三日から七日にかけましてワシントンにおきまして、これらの問題を中心にいたしまして、実は日米水産物の実務者協議を開催したわけでございます。この協議におきましては、完全自由化に対する態度といたしまして、日本側はこれは絶対できないということを明確にいたしました上で、ニシンにつきましては輸入割り当て枠の拡大輸入割り当て制度の運用面における改善、これは北海道漁連のシェアの引き下げでございますが、この点につきましてアメリカ側と十分に協議をいたしました結果、話し合いはかなりの程度まで煮詰まった状況になっております。しかしながら、まだ煮詰まっていない点もございますので、なるべく早い機会に外交ルートあるいはさらに会合を持ちまして最終的な決着を図りたいというふうに考えている次第でございます。  なお、洋上買い付けにつきましては、双方の意見がまだまだ開いておりまして、これにつきましてはさらに粘り強い交渉を必要とするというふうに考えております。
  179. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、いまアメリカ側との話し合いの中で対象になっておる品目はニシンとスケソウダラであると、その他の問題についてはまだ対象になっておらないと。  そこで、水産庁としましては、水産物の残存品目完全自由化というものについては、現在は話し合いの上に乗っていないけれども、将来を考えたときに、見通しとしてはどう考えていられますか。
  180. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいまのところ先生御指摘のようにニシンの輸入割り当て制度の運用につきましての問題と、それから洋上買い付け、これはスケソウダラでございますが、この二つアメリカ側の要求でございまして、アメリカにおきまして漁獲できる対象魚種を考えましても、なるほどこの二つ要求してきたなという感じがいたします。  先ほど申しましたように、ニシンにつきましては完全自由化はできないということをはっきり申しまして、その運用面につきましての話し合いを煮詰めているという段階でございますし、また洋上買い付けは当然これはIQ制度を前提とするものでございますから、これにつきましては当然完全自由化はしないという態度でございます。したがいましてこれらの問題が解決いたしますれば、米側の関心の魚種というものから見まして、他の魚種へのアメリカの圧力というものはさほど強いものじゃないというふうに考えられますので、当面水産物に関する完全自由化要求というものは、大臣も常におっしゃっておられますように、これに手を染めない形で、つまり自由化に手を染めない形で解決ができるというふうに考えておる次第でございます。
  181. 川村清一

    ○川村清一君 農畜産物でいま一番問題になっている牛肉、この牛肉自由化をされた場合において、もちろんアメリカから日本に入ってくるでしょうけれども、それ以上にやはりオーストラリアだとかニュージーランドから入ってくるのが一番こわいわけですね。それがぽんぽん入ってきたら、日本のいわゆる肉生産業、それから酪農はもう壊滅的な打撃を受けるということになりますわね。そこで、水産物の面から考えてみますと、自由化されましてもアメリカは大したこわいものは私はないと思うんです。むしろこわいのは、完全にIQ品から外されてしまいますと、これはソ連であるとか中国であるとか、あるいは韓国であるとか台湾であるとか、あるいはカナダであるとか、それからノルウェーだとかといったような国から入ってくる大変こわい品目がたくさんあるわけですね。そういうことで非常に心配しているわけですよ。  そこで、もしそういうようなことになったらこれは大変なんであって、時間がないからニシンがどうだ、スケソウがどうだということは話ししませんけれども、完全に自由化されますと、現在のIQ品目になっておるノリであるとか、あるいは北海道の大事な沿岸の全漁民が依存している昆布であるとか、それからスケソウダラ、タラコですね、こういうようなものからブリだとか、それからホタテだとか貝柱だとか、これが全部自由品目として入ってまいりますれば、これはもう日本の特に北海道の沿岸漁業、それから養殖漁業ね、ブリなんというのが自由化されれば、当然ハマチなんかにも影響してまいりますから、これは養殖漁業にも甚大な影響がありまして、もうまさに日本の漁業というか、特に沿岸、養殖漁業は壊滅的な打撃を受けざるを得ないというようなことになるわけであって、これは農産物ということで農畜産物についてはずいぶん大きな声が出て、わあわあ言っていますけれども、水産業の方は余り表面に出てきませんから、余り世論の中において議論されておりませんが、これは大変なことになるんで、これはしっかりやってもらわなければいけない。アメリカとの話し合いの中でも何かそんな程度ですから、まあニシンやスケソウと言ったって、まあスケソウの洋上買い付けなんていうことがふえていったら、これは大変なことになりますよ。独航船なんて百隻ぐらい出ているんだから、これもまた減船問題が出てきて、大臣頭の痛いことになりますからね。だから、これで私もう時間がありませんから最後ですが、大臣、しかとこういうことをすべて考えて、水産物の自由化についても万全の措置をとってもらいたい、毅然たる態度でもって対処していただきたいということを要望いたします。大臣のお答えをいただいて質問を終わります。
  182. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) いま水産物の自由化の関係は、水産庁長官から答弁したとおりでございまして、今後完全自由化はできないという態度でもろもろの措置を進めてまいりたいと、かように考えます。
  183. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いままでいろいろお話がございましたが、いずれにしても最近アメリカ、ECとの貿易摩擦が非常に激化しておりまして、特にアメリカからは貿易不均衡の増大を理由にして、牛肉、オレンジ、果汁など残存輸入制限品目の撤廃を中心に、いわゆる農産物輸入自由化、その枠の拡大を強く迫られているわけでございます。  現在、わが国農業は主要農産物生産調整、それから価格の低迷、生産資材価格の高騰、いろいろな困難な問題を抱え、非常に苦慮をしております。私は農産物自由化市場開放によって貿易摩擦の解消はとうてい考えられないと思っております。  けさほどもお話がありましたけれども、在日米大使館の計算ですが、二十二品目完全に自由化しても約八億ドル、この程度でいわゆる貿易摩擦の改善にはならないと、こういう数字も出ております。  こういうように急激に日米間に政治問題化してきた、この原因は何なのか。いままでもいろいろ言われてきましたけれども、ここでまとめて、今後どういうふうにするのか。外務省、通産省、経企庁、農林水産省、御見解を承りたいのであります。
  184. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 現在の欧米との貿易摩擦背景といたしましては、いろいろな要素があると思いますが、一つには、こうした国々では第二次石油ショック影響からいまだに脱却していない。その調整の過程にあるという事情があろうかと思います。したがいまして、こうしたところでは依然高インフレ、高失業といったような困難な事情があるわけでございます。  それとあわせまして、先ほども御答弁いたしましたように、欧米におきましては、日本経済力を身につけてまいりました今日、こうした世界的な経済的な困難について、もう少し積極的な役割りを果たしてもらいたいという大きな期待も高まりつつあるというふうに考えております。  そこで、貿易との関係で申し上げれば、日本についての欧米における見方は、日本はいろいろな意味市場が閉鎖的ではないかということが、御承知のように比較的広く言われているわけでございます。こうした状況につきましては、私どもとしても、欧米の側に誤解がある場合もございますので、それは逐次正していくよう努力しておりますし、日本の置かれた立場日本の主張もきちんと主張してまいりたいと考えております。  それと同時に、国際社会におきます日本責任という見地から、先ほど来も答弁がありますように、昨年の十二月以来、いろいろな市場開放施策を講じてきておるところでございまして、そのいわゆる第二弾といたしまして何らかのまとまった措置をとるべく、現在、政府部内で検討を進めているということでございます。
  185. 鈴木孝男

    説明員鈴木孝男君) 先生の御質問に対しまして、いま外務省がお答えしましたように、通産省の方も基本的には、貿易摩擦問題の背景といたしましては日本国際競争力が強化されている中で、世界経済が第二次石油危機後、世界的に停滞している。あるいはさらに、アメリカ高金利政策等、マクロの経済政策によりまして、二国間の、わが国で言えばアメリカとの関係、あるいはECとの関係の貿易インバランスが拡大している、こういったようなことが背景にあるかと思います。いわゆる日本の国際的な経済的地位の高まり、世界的な保護主義の風潮が強まっておる、こういう中で貿易摩擦問題というものが顕在化しているんではなかろうかと思います。そういった意味世界経済との調和ある発展、あるいは世界経済の活性化に向けまして、わが国がどういう形でできるのか、こういった視点で貿易摩擦問題というものを円滑に解決するよう努めていくべきであろうという形で通産省の方も考えております。
  186. 海野恒男

    説明員(海野恒男君) 外務省及び通産省からの御答弁で、さらにつけ加えるべきものはないわけでございますけれども、強いて申し上げますれば、日本の持つ貿易構造そのものに、やはり日本は物を輸入して、原材料輸入して、それを加工して外に出すという形で経済を維持発展さしてきたという、あるいはそれをしなければならないという構造を持っておるわけでございますが、輸入する国と輸出する先との間に違いがあるということで、絶えず二国間の貿易のインバランスというものが起きやすい構造を持っておる。そのために相手国、最近の例で言いますればヨーロッパ並びにアメリカでございますけれども、先進国が第二次石油ショック後、まだそれから立ち直ってきていないという非常に困難な状態に逢着しておるというようなことが一層今日の摩擦問題を激化さしているという背景があると思うのでございます。  したがいまして、構造的には常に何らかの形でトラブルを起こしやすい構造を持っておりますので、相手が常に元気であるときには問題にならないことが、元気でなくなりますと問題になってくるということがございますので、今後とも、できますれば世界経済全体が常に活気に満ちた状態で発展している状態をつくり出すことが貿易摩擦を基本的に解決する大きな政策であるというふうに考えますが、しかし、そうは言いましても経済自体は生き物でございますので、絶えず発展する場合と停滞する場合がありますので、そういうことを考えますと、今後ともいろいろな形で摩擦が起きやすいということを常に念頭に置いて、慎重な対処をしていく必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  187. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  各省からそれぞれ、いろいろ意見が述べられましたので、そう余りつけ加えることもないのでございますが、私どもといたしまして何か特にアクセントを置くといたしますと、やはり現在の日米間の通商上の摩擦の一番大きな要因になっているのはアメリカの失業問題、失業問題に象徴されるようなアメリカ経済の不振な状態というのがやはり通商上の摩擦の一番大きな原因として注目すべきものではないかというふうに思っておるわけでございます。  農産物分野について見ますと、先ほど御答弁申し上げましたように、米国からの農産物輸入は一九八一年におきましても、若干ではございますが、一〇%を上回る伸びを示しておるわけでございまして、アメリカからの農産物輸入というのは順調に増加傾向をたどっておるわけでございまして、アメリカから特に苦情を言われたり、摩擦が起こるという原因農産物貿易自体には存在しないというふうに思っておりますが、そういう全体的な経済環境の中からこのような問題が出てきているのであるというふうに思っております。
  188. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大体各省とも、いわゆる世界的な失業、インフレ、貿易赤字、こういったところが原因と、こういうことになるわけですけれども、そこで五月七日に総理の諮問機関である経済審議会が二つの小委員会報告を発表しました。このうち、国際経済委員会の報告書には、日本の一人当たり国民生産、これが二十一世紀において世界の第一位になるであろうという展望のもとに、自由貿易体制を維持することがわが国の生命線、こういうふうに言っておりますし、より一層の市場開放、産業調整を他国に率先して積極的に行うことが重要と、このように強調しております。特に市場開放については農産物貿易自由化を挙げておりますけれども、農林水産省はこの報告書についてどのような所見を持っておられるか、お尋ねいたします。
  189. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) まず、私どもといたしましても、自由な貿易体制を維持することの重要性について特に異論があるわけではございません。私どもも自由な貿易体制を維持することがわが国経済の生命線にかかわる問題であるという指摘に、別に農林水産省として異存があるわけではございませんが、ただ私どもは、自由な貿易体制と申しましても、現在ガット締約国を眺めわたしてみましても、それぞれ各国ともいろんなことをやっていらっしゃるわけでございまして、修道院のような生活をしているわけではないわけでございますから、自由な貿易体制の重要性を認識するということと、現在わが国が行っている程度輸入制限が維持されるということとは別に背馳するものではないというふうに考えております。  それから、非関税障壁、農産物市場開放云々につきましては、先ほども申し上げましたように、私どもとしては、現在の農産物輸入制限は撤廃し得るような状態ではないというふうに認識いたしておりますが、輸入制限を撤廃し得るものが出てきた場合には、それは積極的に対応していくべきものであろうと思いますが、現状ではそういうものはないというふうに認識をいたしております。
  190. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 途中であれですけれども、けさの新聞を見ますと、「日本国会での農産物輸入自由化反対の動きに対して、米国議会でまた手厳しい反撃を加える声が急速に高まってきた。」、こういう見出しで、自由化反対決議、先日行われた衆議院の農水委員会、この反対決議に大変怒っておる。レーガン大統領は「断固たる報復せよ」と、こういう大きな見出しで出ておりますけれども、新聞で見る限り、この中で言っているのは、アメリカの民主党のウィリアム・ロス上院議員、「同議員は「コメから牛肉、かんきつ類、小麦と、農産物二十二品目にかかる日本輸入割り当ては自由貿易の障壁の最も露骨な実例だ。日本米国農業界の日本市場への輸出を正面から阻み、公正な貿易を拒否している」」。これは的外れだと私は思います。またいずれも批判のための批判ではないかと、こういうふうに認識しているわけですけれども、もう一つ、この共和党のウィリアム・トーマス議員、この人は「日本農産物市場が開放されていれば、米国の農産業界はその自由貿易の恩恵に浴し、いまの深刻な不況から脱却するのに役立つ」と、これも私は的外れだと、このように思うわけですけれども、こういう対日批判の大合唱を米国農産物議員が言っておるわけでございますけれども、この点について農林水産省としてどんなふうにこれを受け取めているかお聞きしたいんですけれども。
  191. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 先ほども申し上げましたように、アメリカからの農産物輸入は現在までのところ順調に伸びているわけでございまして、アメリカ農産物貿易問題について日本に対してけんか腰の態度で臨むいわれは全くないというふうに思っております。しかしながら、そういうことを言って息巻いている人が若干いるようでございますが、できるだけ早く大国としての雅量を回復してほしいものと思っております。
  192. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 さらに先ほどの報告書の中で、わが国の対応について何点か述べておりますけれども、四点ほど述べておりますが、その中で言っていることは、特に、「市場開放を更に積極化すること。我が国の残存輸入制限品目数をみると、特に農産物に多い。したがって、農産物貿易についても、積極的に市場開放を進めていくべきである。」、こういう報告も出ておりますし、もう一つ、「諸外国から非関税障壁として非難されるものの中には、歴史的、文化的な背景が存在しており、相手国理解を待つほかないものもある。しかし、今後重要なことは、相手国の批判によって改善するという受身の態度ではなく、市場開放を自主的かつ積極的に推進していく姿勢であろう。」、こういうふうに指摘しておりますけれども、農林水産関係者から見れば、これは余りにも一方的な考え方、報告ではなかろうかと、私はこういうふうに思うんですけれども、農林水産省の受け取め方はいかがですか。
  193. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 私どもといたしましては、できるだけ自由化しても大丈夫なような競争力の強い農業にすることが望ましいことは、これは私どももそうだと思いますが、現実はそうはなっておらないわけでありますから、そういうときに、やみくもに輸入制限の撤廃を至上目的のように考えて輸入制限の撤廃の問題を論ずるということは不穏当であろうと思っております。
  194. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこで、けさほど参考人にもお聞きしたんですが、農産物完全自由化された場合、日本農業は壊滅する、大変な事態を迎える、こういうふうに言われておるわけです。  それで、この点についてお聞きしたんですが、もう一度お聞きしますけれども、日本人にはやはり日本人の嗜好がある、また好みというものがあります。また、日本人好みのように品種改良も長い年月をかけて日本はやってきて、農家も努力してきているわけです。そこで、そういうことを考えれば多少自由化になっても日本には抵抗力があるんじゃないかと、こういうふうに言われる人もおります。しかし、その農産物自由化になった場合、そういうことを考えれば少しぐらいと、こういう気持ちはあるのかどうなのか、その辺はいかがお考えですか。
  195. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) これは日本人の食習慣あるいは嗜好というのは国境保護措置に代替するような農産物保護効果を持つかどうかということはきわめて疑わしいと申しますか、私どもとしては全く当てにならないというふうに思っております。変な話ですが、フライドチキンのように外来的な食事の方がかえって豆腐のような伝統的食事よりは自給率が高いわけでありますから、食習慣に依存して国内農業を防衛するというのはとるべき判断ではないというふうに思っておりますので、そういうことを当てにして輸入制限撤廃の可能性を論ずるというつもりは毛頭ございません。
  196. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 先ほどの話に戻りますけれども、先ほどの報告書から見ると、これから政府市場開放第二弾に向けて、この諮問機関の報告書を盾に農産物の開放の一つ理由としてくることも考えられますけれども、市場開放の第二弾において、端的に言って農産物のいわゆる具体的品名が明らかになるのかどうなのか、この辺はいかがですか。
  197. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 輸入制限の問題について申し上げますれば、私どもは輸入制限の撤廃ということは毛頭考えておりませんので、品目は出るはずはございません。
  198. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは念を押しますけれども、残存輸入制限品目二十二品目について段階的に解消を考えていることは毛頭ないと、こういうふうに断言できますか。
  199. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) さようでございます。
  200. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは先日行われた、非公式と言われておりますけれども、ジュネーブの日米農産物再協議に出席した局長から、その経緯と協議内容について、具体的にお話し願えればありがたいと思います。
  201. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 実はこの話は、四月十二日、十三日にワシントンで行われました輸入制限の作業部会の話にさかのぼるわけでございますが、四月十二、十三の作業部会は、御高承のとおり、アメリカ側としては農産物輸入制限の完全撤廃を要求し、それ以外の中間的な妥結ということは全く考えていないと。それで、日本がどうしてもそれに応じないということであれば、ガットの紛争処理手続に訴える以外に道はないということがアメリカ側の考えであるということが、作業部会の席上、日本側に伝えられたわけでございます。したがいまして、日本側としては中間的な妥協案を検討するということは一切やめまして、したがって、第二段階対策でも農産物については何らの措置を講じないということを決定をいたしまして、まあアメリカがガットの紛争処理手続に訴えるのであれば、わが方としても締約国でございますから協議には応じようという心づもりをいたしたわけでございます。    〔委員長退席、理事宮田輝君着席〕  その後アメリカ側から、どうもアメリカ側の真意を正確に伝え損なったようでございますが、実はアメリカ側としては第二段階対策で何かやってもらいたいのでありますという意向が伝えられてまいりました。それで、私どもといたしまして、いまごろ一体何を言ってきているんだということで、在京アメリカ大使館と東京でいろいろ接触が行われたわけでございますが、その段階でアメリカは、二十二品目のIQの撤廃ということは確かにアメリカ政府の原則的な立場であるのだけれども、別に弾力性がないわけではありませんと。それから、ガットの紛争処理手続云々という問題につきましても、ガットの紛争処理手続に訴えるということを決めたわけではありませんと、そういう意向を私どもに伝えてまいりました。まあそれだけでは、いますぐそうだということではないということはわかりますけれども、何か中間的な妥協案のようなものを模索することが意味があるのかないのか一向に要領を得ませんし、むしろ自由化要求という点では作業部会当時のアメリカ側の立場と全く変更がないようにも見られますので、こういうことでは日本側としては動きようがないよと、やっぱり従来のとおりの考え方でいくより仕方がないというふうに申しておったわけでございますが、運休前になりまして、通商代表部のマクドナルド次席代表から外務省の深田経済局長に電話がかかってまいりまして、深田局長と私に会いたいということでございました。それで、先般の経験から見ても、果たして通商代表部がアメリカ政府全体の考え方を正確に代弁しているのかどうかは疑わしい点もありますので、農務省にも参加してもらいまして、農務省からはロドウィック農務次官が参加するという形で、四名でジュネーブで会合をいたしました。  そのときに話題になりましたのは、言うなれば仕切り直し論でありますが、要するに作業部会のときにアメリカ側が伝えた立場というのは、どうもいまになってみると要領を得ない点があるわけでありますが、しからば現在の段階でのアメリカ政府立場というのは一体いかなるものであり、それによって日米間の協議の糸口がどういう形でなら開けていくものであるかということを模索する作業であったというふうにお考えいただいたらよろしいかと思います。それで、アメリカ側の言い分は端的に申しますと、アメリカ政府としては自由化要求するという原則的な立場に変更はないと。しかし一方、第二段階対策で何かはやってもらいたい。やってもらう以上は自由化要求について休戦をするという可能性がないわけではないけれども、休戦ができるかどうかというのは日本側がどういうことをやってくれるかにかかっているのであるというのがアメリカ側の言い方でございます。それに対して日本側としては、残存——残存といいますか、輸入制限の撤廃要求についてアメリカが休戦の意思表示をすることが先決であると。アメリカが休戦の意思表示をしない以上、先月の作業部会直後に決定された日本政府立場というのは変更のしようがないと。したがって、第二段階対策で何かやってもらいたいということであるのなら、まず休戦の意思表示をすることが先決であって、休戦の意思表示があればそれを踏まえて何か考えていく余地が生ずるがもしれないということが日本側のポジションでございます。    〔理事宮田輝君退席、委員長着席〕 それで、日米双方とも鶏が先か卵が先かという事態であるというその点については共通の認識に達しまして、それで、それぞれ相手方の出方を想定した上での仮定的な検討をして、その結果を持ち寄って再度協議をすることにしようということで別れたということでございます。
  202. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いろいろ経緯もあり、それから交渉結果もいまお聞きしたわけですけれども、最終的には、一言で言えば、アメリカ要求として、日本側から直ちに自由化できないと言うんならば、それがいつできるのか、めどはどうなのか示してほしいと、こういうふうに要望があったと、こういうふうに私は理解するんですけれども、また今月の十七日からの週に再度非公式に協議が行われるということになっておりますけれども、この再協議に臨む政府のいわゆる方針というのはどういうふうにするつもりなんですか。
  203. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) アメリカ側としては休戦条件ということを正式に述べたわけではありませんが、協議の過程で幾つかの事項が話題になりました。その話題になった中に、先ほど先生から御指摘がございました、自由化のめどを立てるという問題が提起されたことは御指摘のとおりでございます。  それから、十七日から始まる週に再度協議をしようということで別れたわけでございますが、この協議に臨むに当たっての政府方針というのは、いま目下思案中でございますので、いまの段階でこれが政府方針であると申し上げるようなものが決まっているわけではございません。
  204. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣にちょっとお伺いしますけれども、ずっともとへ戻って話を申し上げますと、農産物自由化の問題については、七八年に東京ラウンドでこれ話し合ったわけですね。東京ラウンド以来一応鎮静化していたこの貿易摩擦の問題ですけれども、昨年来急激にまた再燃をしてきたと。それで、農産物に限ってはあの東京ラウンドで約束をして、そして、たとえば牛肉、オレンジのことについてはことしの十月以降に相談をしましょうと、こういうことで約束になっていたわけです。ところがその後、作業部会があり、そうしてジュネーブがあり、またこれからロスがあるとか、いろいろ非公式、公式ということで変わってきているわけです。私はよくわからないんですけれども、そういう約束がありながら、農産物についてはこういうふうにしようと、こう言ったのが、米側がその後いろいろ事情がどういうふうに変わったか、その辺が私よくわからないわけなんです。なぜそうしなければならないのか。決めていながらそういうふうにするというのは何かその後情勢が変わったのか、その辺は大臣どのようにとらえておられるのか。もとへ戻って大変恐縮ですけれども、ガットに提訴をするとか、また、それから非公式に会合をやるとか、また作業部会のときには、完全自由化するとか、してもらいたいとか、そういういろいろ紆余曲折しているわけです。そういうふうになった事情というのはいわゆる日本政府としてどういうふうにとらえているのか。私もよくわからないんですけれども、その辺はいかがですか。
  205. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) まず事実関係からちょっと御説明させていただきますが、一つ東京ラウンドのときにIQにつきまして日米間で合意ができたものは、牛肉とオレンジとオレンジジュース、グレープフルーツジュース、この四品目についてIQにかかわる日米間の合意ができたわけでございます。それで、現在までのところ、アメリカ政府はこの日米間の合意に反するような行動は別にとっておりません。問題は次の一九八四年度以降の取り扱いをめぐる協議の時期の問題について、東京ラウンドの合意以前に協議を繰り上げてもらいたいということを言い出したことはございますが、これは三月の日米貿易委員会の際話をつけまして、東京ラウンドの合意の幅の中で一番早い時期ということにいたしまして、東京ラウンドの合意からははみ出さずに来ております。ですから、東京ラウンドのときに合意ができました四つの品目につきまして、その後別に変な事態が起こっているということではないわけでございます。それ以外のIQ物資につきましては、東京ラウンドのときに何ら合意がございません。したがいまして、アメリカ政府としても、いつ、何を日本側要求をぶつけてきても、別にそれは約束が違うではないかと言われるような約束は東京ラウンドのときにございませんので、そういう意味アメリカ側は、先ほども申し上げました四品目以外のIQについてはフリーハンドを持っておりますので、東京ラウンドの経緯に照らしてアメリカの行動がおかしいというようなことではないということを申し上げておきます。
  206. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、大変飛躍しますけれども、仮にいまこういった自由化問題で大変政治問題になっているわけですけれども、この日米交渉の結果、どうなるかわかりませんけれども、決裂した場合に、米国が残存輸入制限品目、制限について、ガットに違反しているとして二十二条のガット協議を申し入れた場合、日本政府は、これは飛躍した考え方ですけれども、対応はどうするのか。この辺はいかがですか。
  207. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) ガットの紛争処理手続に訴える場合に、紛争処理手続の過程に入りまして以降のいろいろな対応の仕方というのは、いま申し上げるのは時期尚早であろうと思いますが、入り口の段階での協議、これは日本は締約国として受けざるを得ないもの、受けるべきものであると心得ております。
  208. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣にお伺いしますが、今後欧米の強い要請によって、わが国農産物の残存輸入制限品目を、たとえば一品目でも自由化することになればその自由化品目国内において生産が壊滅的打撃を受けると、これはいままでの状況から言って、恐らくそうなるであろうと、私はこういうように思うわけでございますけれども、たとえば一例を挙げますと、大豆が一九七一年、昭和四十六年でございますけれども、七月に自由化されました。その後の生産経過、経緯を見てみますと、六一年には四十二万トンの生産があった、しかし六七年には二十万トン、七二年、昭和四十七年には十一万トンに激変をしているわけです。また、一九六四年のレモンの自由化によって、日本のレモン、いわゆる栽培面積、これも激変をしております。八〇年、昭和五十五年の面積は三十七ヘクタール、一九六三年、このときには百四十四ヘクタールあった、十六年前の四分の一に減って、いわゆる自由化以降日本市場のレモンは完全にアメリカの、いわゆる米国産レモンに独占されている、これは紛れもない事実であります。  大豆、レモンの例をいま申し上げましたけれども、二十二品目は、これは日本農業の最後のとりでというか、これは基幹農産物であってどうしてもと、こういうふうに私は思いますけれども、もしこれが自由化されると重大な、いま言った数字から言っても恐らく同じ経緯をたどるのではないかなと、もっと早いかもしれない、こういうふうに思われるわけです。大臣としてこの阻止に毅然たる態度で臨んでいただきたいわけでございますけれども、この点について大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  209. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 私が農水大臣に就任してから間もなく、関税率の前倒しを行いあるいはまた非関税障壁の緩和等をいたしまして、対外経済摩擦の解消をしてまいったわけでございますが、この二つの問題をアメリカあるいはECに極力説明をして、日本貿易拡大に対する態度を御説明申し上げてまいったのでございますが、アメリカのいわゆる農産物自由化に対する態度というのは非常に厳しい。私はこういう中で、いま御指摘のように日本農業の現状はしからばどういう状況にあるかと言えば、御承知のように米の過剰だとかあるいは老齢化だとか兼業化、あるいは社会の混住化等の背景の中で非常に農業社会というのは混乱して、新しい農業をつくり上げなければならないといういま時代に、状況にあるわけでございます。そういうときに、私はいま農家の方あるいはまた団体の方々貿易摩擦に対する関心あるいはこれに対する不安というものを非常に大きく感じているわけでございますので、これを私たちは支えてやることによって、初めて日本の農林水産業の新しい芽が育つものと私は考えているんです。ことにいま御指摘のように大豆あるいはレモン、これは事実輸入いたしますというと、日本農業はかなり停滞し、縮小いたします。  私は、現状においてやはり牛肉にしてもオレンジにしてもいま自由化の枠を拡大しあるいはまた完全な自由化を施したとするならば、日本農畜産物に与える影響というのは非常に大きいと思うので、こういう点を考えますというと、いまにわかに枠の拡大あるいは農産物自由化完全自由化等をするわけにまいらない状況にございますので、私は経済対策閣僚会議においてもあるいは閣議においても、またできるだけ私の代理で、農林水産省から代理でアメリカあるいはECに出向いている方々に対して、できるだけ日本の農林水産業の実態を説明をし、理解をしていただくために努力をいたしているわけでございまして、今後も私はこの農産物自由化に対して、の枠の拡大等に対してはできるだけしないように支えて、国内の農林水産業の育成のために努力をいたしたいという決意でございます。
  210. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣の決意は大変結構でございますけれども、いまお話ししたのはいわゆる自由化によって日本農業が先細りになってきた、こういうことですけれども、今度こちらが輸入している量から見ますと、その反面アメリカやECから日本農産物のいわゆる閉鎖性を持っていると、こういう指摘もありますけれども、量から言いますと、日本世界農産物貿易では最大の準輸入国、しかも穀物、大豆中心輸入のほとんどをアメリカにいわゆる依存している現状であります。たとえばトウモロコシ、コウリャンは一九六〇年と一九八〇年と比較すれば約十一倍になっています。それから小麦は二倍、大豆は三倍になっています。  いま大臣から決意が披瀝されましたけれども、またPRの方もそれこそ最大努力をして認識してもらうようにPRもしていくと、こういうお話でございましたけれども、結果はこういう結果になっているわけです。  そこで、いままでどんなふうにこの理解をさせるための努力、これは過去ですけれどもやってきたのか、その辺はいかがですか。
  211. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 従来から、たとえば私どもとアメリカの農務省との間には毎年定期協議をずっと続けてきておるわけでございます。それから、あるいは政府全体といたしましては外務省の経済担当の外務審議官がヘッドになっておやりになっております高級事務レベル協議というようなものもございますし、いろんな形で政府間の協議の枠組みがございます。そういう機会をその都度利用をいたしまして、アメリカ側に対しては日本農産物輸入がいかにアメリカに大きな利益をもたらしておるかということについては繰り返しアメリカ側によく説明をしているところでございます。それからまた、大使館や総領事館を通ずる対米広報におきましても、こういう点についてはアメリカ向けの啓発活動を外務省がやってくださっているというふうに承知をいたしております。  それから、特に最近日米間でこの種の論争がやかましくなりましてからは、従来からやっておりましたそういう論点のほかに、さらに各国農産物輸入政策を横断的に比較をしてみて、それで日本農産物輸入政策というのは先進工業国の中では最もリベラルな農産物輸入政策をとっていて、農産物の自給率の国際比較においてもわが国が先進工業国の中で最低、これは自慢めいたトーンでしゃべるべきことではありませんが、まずそういう事実についてアメリカの有識者の注意を喚起するという努力を特にアクセントを置いてやっているつもりであります。そういう中で、日本は一番自由な農産物輸入政策を採用している国なので、いろいろ文句を言いたいことがあるかもしれないけれども、まず日本に向かって文句を言うというのは事柄の軽重の度合いから見て正しい物事の処理の仕方ではないということがアメリカ人の身になってみてもわかるような啓発活動を努力してやっているつもりでございます。
  212. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つお伺いしたいんですが、午前中の参考人消費者代表からいろいろ御意見を聞いたわけでございますけれども、データの結果、その消費者代表の方の言われるのには、私も意外に思ったのですが、いわゆる海外食糧に依存するのは非常に安全性とかいろいろな面で危険性があると、もちろんこれ食糧安全保障という面もそうでしょうけれども、そういう話がございました。消費者にとれば、安ければいいというものではございませんけれども、高いより安い方がいいと、したがって消費者サイドにすれば安い方がいいから恐らくこの自由化には、程度はありますけれども賛成する方が多いんじゃないか、こういうことで私は聞いていたわけなんですけれども、実際には約半分以上の人が自由化には、先ほど言ったように安全性とかまた食糧安保とかという観点から反対である、そういう御意見を聞きました。そこで、やはり日本の国は日本生産したもの、それを自給自足といいますか、それが一番理想的ではなかろうか、こういう御意見でございました。  この自給率の問題でございますけれども、日本世界でいま最低水準食糧の自給率であります。穀物を見ても、一九六〇年には八二%の自給率があったのに、一九八〇年には三三%、こういう数字が出てきておるわけです。総理府の世論調査、食生活食糧問題に関するアンケート、これでは、できるだけ自給自足がいい、こういうのが七五%、安ければ輸入した方がいいというのが一六%、わからないというのが九%、こういう数字も出ております。自給自足を望んでいるのが先ほどの消費者代表の御意見にもあったとおり、これは国民の望むところであると私はこのように思っているわけでございますけれども、この自給率の向上と農産物自由化ということは大変むずかしい判断と考えますが、この国会でも自給率の向上ということで一昨年決議をしたわけです。しかしその対応は非常にはかばかしくない、こういう現状でございますけれども、このジレンマについて農水省としてはこれからどのように対処していくのかその辺の方針をお聞かせ願いたいと思います。
  213. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 私どもとしては、国会の御決議をいただいておることでもございますので、自給力の向上ということを基本に据えて、それと調和のとれたといいましょうか、両立し得る範囲で外国との間の紛争もできるだけ起こらないように対処をしていくと、そういう心組みでおります。
  214. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは私の最後の質問になりますけれども、わが党は四月二十二日に、ここにおられる農水大臣を初め、二十三日には外務大臣、大蔵大臣、通産大臣、それぞれに農産物自由化に反対する申し入れを行ってまいりました。一部学者、評論家などには、政府牛肉、オレンジの二品目に対して国内生産者保護政策に疑問を持っている人たちもおります。また反面、過大な農業保護はこの機会に再検討して、政府自由化に踏み切るべきである、こういう意見も財界等から出ておりますけれども、農林水産大臣のこの点に対するしかとした考え方をお聞かせいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  215. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) この委員会を通じて何回も申し上げておるのでございますが、いま中長期的に見て世界食糧事情は非常に不安定である、また国内も米の過剰その他多くの問題を抱えておりますが、その中で私たちは、食糧の安定供給あるいは自給力の確保ということを目指して生産性の向上を図ってまいっております。しかもただいま御指摘のように、国内生産できるものは極力国内で賄うという基本、しかも国民の需要の動向をよう見て農業の再編成を図って食糧の自給力を確保したい、こういう立場でいま進めているわけでございまして、そういう関係から申しますというと、やはり農産物自由化という問題は非常に大きい課題なんですね。また大きな問題として私たちは扱わなきゃならぬ状況にあるわけでございますので、私は新しい農業の芽を育てるためにも貿易自由化に対してはできるだけ手を染めないで日本農業の振興のために努力をしたい、かように考えておるのでございます。
  216. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 終わります。
  217. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 きょうは午前中参考人から、それから午後大臣が出席しまして、いろいろいま日本農業一つの大きな課題でございますこの自由化問題につきましていろいろ質疑をいたしておるわけであります。  まあ、私ども農林水産委員という立場からいたしますと、どちらかといいますと農業を守るという、またそれなりにそういうことに関係のある方が多いわけで、どっちかというとそっちの方にウエートが置かれるのかもしれません。しかしながら、それは古今東西どこの国におきましても、農林水産業という一次産業は非常に弱い構造的な体質を持っておるという、そういうことだけに、また私どもの命を支える大事な食糧であるということからいたしまして、また農業の衰退した国で栄えた国はございません。過去のそういうこと等を考えあわせますと、非常に重大な問題だということで、きょうも衆議院におきましても、また当委員会におきましても過日来論議が重ねられておるわけであります。  先ほど来いろいろ御質疑がございましたが、過日の当委員会におきましても大臣が非常に強い御決意を述べて、担当大臣として本当に当然のことだろうと思いますが、また特にいままでの豊富な政治経歴の上からいたしましても、特にまた農業が主体であります東北の出身の大臣という、こういうことからいたしましても、私は当然のことだろうと思うのでありますが、最初に大臣から、先般現在の農産物のIQはわが国の農林水産業の振興にぎりぎり必要なものばかりで、体を張っても避けたいという強い決意表明があったわけであります。その間、大分アメリカとの交渉の中で話のついたもの、先に延びたものいろいろあるわけでありますが、今日を見ましてもその強い御決意は変わりはないのかどうか。変わっちゃ困るんですが、今日までの経緯の中でさらにその決意を固められていらっしゃるのかどうか、まずその辺のことからお伺いをしておきたいと思います。
  218. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 私は、去年の暮れ大臣に就任をいたしましてからもう五カ月になるのでございますが、その間、対外経済摩擦解消、特に農産物自由化問題についてあらゆる場所において私の立場を強くしかも積極的に主張してまいりました。いわゆる経済対策閣僚会議においてもあるいは閣議においても主張してまいりました。  まあ、問題は非常に大きな問題でもあり、また非常に重大な問題でございますだけに、直ちに結論を得るという問題ではございませんけれども、私は日本の農林水産業の置かれておる現状からして、どうしてもやはり農畜産物の重要な品目である残存輸入品目について、あるいはまた地域の重要な品目である残存輸入制限品目については、どうしてもやはり完全自由化してはならないという態度をこれまでもとってまいりましたし、今後もその態度で臨んでいきたい、かように考えております。
  219. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 まあ、農業を守るという立場の大臣でありますから、非常に強い決意でいらっしゃる。また、就任以来不動のものであるということについては、私どももぜひその決意を貫き通していただきたいと思います。  しかしながら、これはきょういろいろ論議がございましたように、農業サイドだけで考えられることじゃございませんで、日米貿易という相互関係の中での問題であります。しかしながら、これはどこから考えてみましても、くどくど同じことを申し述べるつもりもないのでありますが、日本最大アメリカとの農産品の輸入国という関係にあると言いましても、現在また自由化を迫ってまいりますものとアメリカ日本との貿易の中での黒字の幅、こういうことをかんがみますと、現在、農産物に集中的に攻撃が加えられておる。これはもう日本貿易体質そのものという、きょうもいろいろ論議がありましたが、鶴岡さんからもお話ありましたけれども、大きな観点からこれは考えなければなりません。  ただ、こういう産業構造ということになりますと、あすあさってにどうするということになりませんので、今日までも、こういうアメリカとの間におきましては繊維製品やそのほかのことについて、鉄鋼問題、こういうことでの問題がありまして、そういうことの解決のためにそれぞれそのときそのとき対策が講じられてまいりました。しかし、やっぱり日本のオイルショックという、一次、二次のショックがあったとは言いながら、日本経済世界の不況下の中ではそれなりに大きく改善をし、そして急成長したというこういうところにあるのだろうと思いますが、世界の中の日本ということで、日本の産業のあり方、特に貿易問題につきましては、これから慎重な配慮をいたしませんと、アメリカは決して農業国ではないはずでありますけれども、しかし、世界最大の工業国であると同時に、農業国でもある、そういうことで日本に対しまして、日本が弱くなっておりますこの農産物に対しての攻撃が集中的に行われておるということでありますが、こういうことはやっぱりこの時点で最大の対策を講じ、長期的な展望というものをつくりませんと、やはり今後についてもこの問題が惹起することは当然であり、先ほど来お話ございますように、自給率向上ということで国会決議もいたしておりますが、農業というのは機械工業と違いまして一朝一夕に体質が変わる、こういうものじゃございませんから、長期的にやっぱり着実にこの体質改善、対策、対応、こういうものが進められなければいかぬ。こういうことで現在当面するこの自由化問題に対しての対応、また、国内的な対応策、こういうこともあわせて農林省としては御検討いただいておると思うんでありますが、国内的な対応策につきましては、これはもういろいろ問題のあるところでございまして、現在米の生産過剰の中で減反政策、それに伴います転換作物ということで自給率の低いものについては、それなりに補助金を出して対応策を講じておる。こういうことでマクロ的に見ますと、いろいろ今後の対応については対処すると言いながら、その問題、問題に見ますと、また、地域性、こういうことを見ますと、やはりこれはきめ細かな対応策がぜひともとられなければならない、こういうことを私は痛感をいたしております。今後の対外的な対応策と国内的な対応策、アメリカとの交渉については、いろんなこれから今後の日程等についても先ほどもお聞きいたしましたけれども、国内の今後の対応策、長期展望とかいろいろな展望策や何かもございますけれども、この農産物貿易自由化ということに関して特にまた最近省内での検討事項や考えておることがございましたら、お伺いしておきたいと思いますが、いかがですか。
  220. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) まず、前段の対外的な対応でございますが、日程めいた話は省略して大筋をお答えいたしますと、私はまず、日本農産物最大輸入国で、しかも単にその最大輸入国であるという事実だけではなくて、最大輸入国であることのよって来るゆえんというのは、わが国農産物輸入政策というのは、外国はいろいろ誤解しておるようでありますが、実はわが国農産物輸入政策というのは非常に自由な輸入政策を採用している。少なくともほかの国との比較論においては、わが国農産物輸入政策というのは自由なものであって、農産物貿易分野日本を相手にして事を構えるというような事態ではないのであるということが外国によくわかるようにするということがまず基本ではあるまいかと思っております。これにつきましては、従来から対外広報、対外啓発につきましては外務省とも御相談をしながらいろいろやってきたわけでございますが、今後とも引き続き努力をしてまいりたいというふうに思っております。  それからもう一つは、何と申しましてもしょせん日本に向かってつべこべいろんなことを言ってみても、日本農産物輸入制限の撤廃というようなものについては絶対に譲歩しないのであるということをよくわかってもらうということが事態を鎮静化する上で有益なのではあるまいかというふうに思っております。何かやってくれる可能性があるというふうに見られますと、どうしても自分の得点にしたいのが人情の自然でございますから、おれが言ったから日本自由化したのであるというふうに言われるように持っていきたいと思うのは人情の自然で、どうしても自由化要求を誘発するという効果を持っておるように思いますので、そういう意味では絶対に自由化しないということが外国から見てもよくわかるようにする、それを踏まえた上でなければ前段に申し上げたような広報活動というのも十分な効果を生じないのではないかというふうに思っております。  それから国内対策でございますが、これは一言で申しますれば、農産物の需要の動向に即応した生産性の高い農業に再編成をしていくということに尽きるわけでございまして、これは元来の農政の基本をそのまま、正姿勢で推し進めていけばそれでよろしいわけで、対外的な問題があるからといって特に風変わりな農政の進め方を工夫しなければいけないということではないというふうに思っております。
  221. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この自由化問題につきましては、いまもいろいろお話ございましたが、非常に政治的な背景というものもちらちらうかがわれるわけでありますね。農産物自由化問題で政界を揺さぶって工業製品輸入規制を正当化させよう、こういうことが背景にあるのじゃないか、また、国家貿易品目酪農製品とか食管の米の自由化を獲得しようとする戦略の一つじゃないかとかいろんなことが言われております。また、アメリカにはアメリカの政治情勢というものもあるようであります。日本アメリカとは精神文化、そういう面での相違もありますので、こういう交渉事というのはなかなかむずかしい一面はあろうかと思うんでありますけれども、しかし農業につきましては、アメリカ日本を考えているような現状でない、そういうことについてどこまで認識を持っておるのか。これも先ほどもいろいろ御説明あったようでありますが、先ほど来局長からもPRとか何かいろんなお話ありますけれども、やはり日本の大きな工業力というものに対して、そこにある日本の農林漁業というものに対してはどういう認識を持っておるのか。私どもはそれはつぶさに関係者に会ったわけじゃないからよくわからないんですけれども、相当な認識の相違というものはあるんだろうと思います。そういうことにつきましては、これは外務省との関係になるのかもしれませんが、やっぱりきちっと日本の現状を訴えるということと、さらにまた、先ほど来こういう政治的な動きという、その背景にはちらちら見えてしようがないわけでありますけれども、そういうことに対しまして毅然たるやはり政府の態度、日本の国の態度というものが必要なんだろうと思います。それについては大臣からもお話ございましたが、今後こういう問題については、PRに対しまして特に日本の現状、いままでも言われてきたことかもしれませんが、特にひとつ訴えていかなきゃならぬ、そして少なくともこういう工業製品輸入規制、工業製品といいますか、農産物以外の——政治的な配慮のために農産物が犠牲になることのないような努力最大にしていただきたい。  それからまた、よく言われておりますように、米の自由化云々なんということもちらちら言われておるわけでありますけれども、少なくとも日本における食管制度、そして米の位置づけというものを考えますと、こんなことがちらちら出るようなことだとこれは大変なことでして、それこそ農水省が今日まで日本農業というものをどこまで現状をPRしてきたのか、訴えてきたのかということが疑問視されることになろうかと思うんです。今日までも努力をしてきたのだろうと思いますけれども、これからもさらにひとつ強烈に現在の日本農業の現状というものを訴えていただきたい、そういうことの手だてとして今日考えていること、やってきたこと、それから、これから考えていること等についてお考えありましたらお伺いしておきたいと思いますが、どうですか。
  222. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 先ほど来、その点については何回かにわたってお答えをしているわけでございますが、私はひとつ御理解を賜っておきたいと思いますのは、日本農業事情を幾らよく説明いたしましても、アメリカは絶対自由化要求とか、米を輸出したいとか、そういうアメリカ側の要求を断念させることは不可能でございます。ですから、アメリカがそういうことを言ってきたのは、日本政府のPRが足りないからそういうことを言っているのに違いないというふうにお考えいただくことは大変な誤解でございまして、これははっきり申し上げておきますが、アメリカ側にそういうことを断念させる方法というのはありません。これは幾ら説明してもそういうことを断念する気遣いはないわけでありまして、断念する可能性があるとすれば日本が絶対に譲歩しないということがわかったときに初めてしようがないからあきらめるかということがあるのでありまして、日本の農民がかわいそうだからあきらめようなどということは絶対にありませんから、PRにそういう効果を期待をすることだけはおやめいただきたい、こう申し上げておきます。
  223. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 そんなことはわかっているのだよ。だから精神文化の相違というか、物の認識の相違というのは、日本人アメリカ人との精神的な文化的な相違があるのだから、主張はどういう形であるか、ですから、その持っていき方はいろいろな持っていき方があるだろうと思うのだけれども、しかし、少なくとも、言葉の上だけでどういうことを言ってきたから認識が足りないという、そういうことだけじゃなくて、やはりいままでのいろいろなことを見ますと、日本農業なんというのはあんな狭い国に、日本にどれだけの農業があるのかという非常に軽視した物の考え方というのがあるんじゃないですか。断念させるなんという、そんな軽々しい要求なんか絶対入れないなんというあなたそんな言い方をするけれども、そうじゃなくて、そこへ持っていくまでにはやはりいろいろな努力の積み重ねが必要でしょう。断固として言ってきたことをはねつける、はねつけると言ったってその以前にそれなりの積み重ねがあって、それができるのであって、何もしないで来たやつをこのやろうと言ってはねつけてそれで押し通していけるという、そういうことじゃないわけです。そのためにはいままでも外務省を通じていろんなことをやってきたのだろうと思うけれども、少なくともやはり主要なところにある人については、また、その要にある人たちについては絶えず日本の現状というものは訴え続け、これは日本の歴史を見ますと、いろいろなことがあろうかと思いますけれども、日本に対する、アメリカから見た日本農業という観点からしますと、われわれが考えているようなものではないだろう。特にこういう大きな貿易上の黒字の差が出てまいりますと、農業なんというのは小さく見えてくるに決まっています。それは不断の努力、不断の積み重ねが大事だということを私は言っているんで、そんな断念なんか絶対しないんだなんというようなこういう行き方じゃなくて、常日ごろからそういうものの積み重ねの中からそれをさせるような努力の手順という、手だてというものが必要であることを私は言っているんですよ。そういうことで外務省と今日までやってきたと思いますけれども、よりひとつ努力を続けていただきたい、こう思うんです。  それで、それぞれの品目牛肉牛肉、また畑作は畑作で、それぞれにいろんな問題があるんですけれども、これはもう北海道なんかではどちらかというと水田よりも畑作に切りかえるべきだということで、せっかく緒についたものが雑豆や何かについていま大きな波をかぶろうとして、耕作をしている人たちが一年に一遍しかとれない畑作物、それを非常に不安を持ちながら、どれだけ植えつけていいんだろうか、ことしの価格はどうなんだろうか、そういう不安なことで営農をするようなことでは、これは本当に農業に対して希望を持てるわけはございませんで、こういうことに対しましてもひとつ減反政策として何年かの計画を立てて相当なお金をつぎ込んでやっておるわけでありますから、それらの方々に対してはやっぱりその希望を失うことのないような政策をしていただきたい。  それから漁業について、長官がいらしておりますからあれですが、ようやく四月の割り当てが決まったようですが、当初の見込みより、二五%よりちょっと削られましたですね。この削られたことは日本の水産界にさほど大きな影響力がないんだという見方をしているようですが、決してそうじゃないだろうと思うんです。それがまた一つの実績となって次のときの交渉にそれがどういう影響を及ぼすかということ、こういうこと等も考えあわせますと、アメリカが削った理由はいろいろ言っておるようでありますけれども、いろんな交渉の中で決まったわけですからこれはやむを得ないのかというと、日本側としては承服できない、こう言うに決まっていると思いますが、今後こういう、四月の割り当てで二五%に達しなかった、それを今度の七月の割り当てに何らかのプラスが、プラスといいますか、後押しができるのか、これ交渉の経緯の中で今後アメリカ日本との漁業の問題についてはどういうような感触で、またそれを突破する手だてがあるのかどうか、その辺のことについてお伺いしたいと思います。
  224. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) お答えを申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、従来まではアメリカ側の対日漁獲割り当ては年一本で割り当てをやってまいったわけでございますが、ことしは当初五〇%、それから四月二五%、七月二五%というぐあいに分割して割り当てをしてくるようになりまして、しかも四月の割り当ては非常におくれまして、一カ月ほどおくれた上でさらに一〇%のカットということで割り当てを行ってきたわけでございます。  このような割り当てに対しまして、私どもといたしましては、これはアメリカ二百海里内の日本の漁船の操業に非常に大きな影響があるという観点から、しかもアメリカからの水産物の輸入アメリカ輸出額の中の半分近くを占めている、十分にいままで協力をしているじゃないかという立場からアメリカに対して強く抗議を申し入れまして、これにつきましては、自後の復活と申しますか、これを取り返すということで話し合いを詰めているわけでございます。  ただ、このような話し合いを進めます場合には、一つアメリカ側のカットの原因になっておりますいわゆる洋上買い付けの量というものについて話し合いをつける必要がございますし、それからまた、先ほど御答弁いたしましたニシンの輸入割り当て制度の運用の改善という問題をアメリカ側が申しておりますので、これらにつきまして、実は五月三日から七日にかけましてワシントンにおきまして実務者の協議をやりました。ニシンの輸入割り当ての運用改善につきましてはかなり話し合いも煮詰めてきたわけでございますが、なおスケソウダラの洋上買い付けの問題につきましては双方の意見が相当まだ隔たりがございますので、日本の漁業が失業問題なりあるいは減船問題が生じないということを念頭におきまして、この点につきまして今後とも粘り強い交渉をいたしまして、できれば七月の割り当ての際にこの問題を解決してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  225. 下田京子

    ○下田京子君 農産物市場開放をめぐる問題が大変重大になってきておりまして、先ほど来から問題になっておりますけれども、私、最初に確認しておきたい第一の問題、ジュネーブ協議にあってアメリカ側が一時サミット前に市場開放第二弾の内容を日本がどういうふうに盛り込むかということによって完全自由化要求をあたかも取り下げるか、そういう休戦の宣言をしたようなお話があるわけですけれども、先ほどの局長のお話を聞けば、休戦するかどうかはその中身を見てだというのが米側の話、日本はそれに対して休戦の意思表示をすることがまず先なんだ、こういうやりとりがあったということなんですけれども、その休戦というのはどういう内容なのか、そこをちょっと確認したいんです、どう受けとめているのか。  局長はじかにいろいろ話してきたと思うので、三点にわたって聞きたいんですけれども、アメリカ側がそのときに言った休戦ということは、実際日本側が提示した輸入拡大の措置を前提にして、またさらに上積みをいろいろ追ってくるんじゃないか、結果として休戦がなくなってしまうことになりはしないか、そういうことも考えられますね。  それからまた、休戦しても、十月からの牛肉、オレンジ、この交渉になりますと自由化ということが再度出てくるんではないか。そうしますと、いつまで休戦というふうに言っているんだろうか。  またさらに、休戦という具体的な中身にいきますと、自由化のスケジュールを示せ、目途を明確にしろ、こういう話もいろいろ出ていますが、それをも含めて一時棚上げしたというふうに理解するのかどうか。休戦といっても、何かすべて完全自由化を休戦した、棚上げだというふうに理解されているような向きがあってはっきりしないので、その辺をお答えいただきたいと思います。
  226. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) ただいまお尋ねの点は、先ほども御説明をいたしましたように、ジュネーブではアメリカ側も別に休戦協定を結ぶための権限を持ってきたわけでもございませんし、私の方もそういう権限を持って出席したわけでもございませんので、必ずしも休戦条件について突っ込んだ議論が十分行われたというふうには申すことはできないと思います。そこら辺はいろいろ不明確なところがございますが、少なくとも私どもの方で休戦ということで念頭に置いておりますことは、ある期間——ある期間というのはこれはまた交渉によって詳細を詰めていかなければいけませんが、少なくともある期間IQの撤廃を要求することを差し控える、したがってその間はガットの紛争処理手続に訴えるということもしない、そういう状態がある期間継続することが保証されているということを念頭に置いて休戦という言い方をしたわけでございます。  したがいまして、アメリカ側としては日本の対応いかんによっては休戦の可能性があるというふうに申しておりますが、そこのところは取り決め方をよほど慎重にいたしませんと、先生御指摘のように、一応休戦はできたはずなんだけれども、IQが多いとか少ないとか言ってあと何トン足せとかそういう議論が起こる余地はあり得ると思います。ですから、話を進める場合にはその点はそういう紛争が残らないようによほど気をつけてやる必要のある問題だろうというふうに思っております。  それから、牛肉、柑橘についてのお話でございますが、これは十月送りということが決まっておりますので、いまの段階で休戦の問題を話をするにいたしましても、牛肉、柑橘は休戦協定の対象外と、休戦協定ができるかどうかということはまた十月になって牛肉、柑橘の話をしてみなければわからないということでございます。  それで、ただ間違いなく申し上げられますことは、十月に牛肉、柑橘の協議が始まりますときに、いろいろ曲折はあろうと思いますが、アメリカが最初に言い出すことは、これら四品目について完全な自由化要求するという態度で協議に臨んでくるであろうということはすでに予告されておりますので、それはそういうものと覚悟いたしております。
  227. 下田京子

    ○下田京子君 わかりましたが、そうしますと十七日以降の協議、十八日とも伝えられておりますけれども、その際に日本農産物についての市場開放、具体的な措置を提示するのかしないのか。もしするという場合には、さっきちょっとありましたけれども、まず休戦の条件が先だよと、それを聞くことによって内容次第では逆に日本側の提示したものはなかったものというふうに扱うのかどうか。
  228. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 次に協議する機会にいかなる対応をするかということにつきましては、目下検討中でございまして、こういうふうにやる心づもりであるということをいま御説明申し上げる用意はございませんのでその点はひとつお許しをいただきたいと思うんでございますが、一つだけはっきりしておりますことは、これは自由化要求を一時封印するためにこういうことを検討してみているわけでございますから、いろいろ検討してみるにいたしましても、IQの撤廃問題ということはこれはそもそも検討の対象になり得ないということはこれは理の当然でございまして、したがってそれの延長線上の問題として自由化のめどを示せという問題についても、これは肯定的に対応しようのない問題でございますから、これは検討をまつまでもなくそういうことはあり得ないということをいま申し上げられますが、そこから先の話につきましては、これはせっかく検討中でございますので、いまお答えをする能力はございませんのでお許しをいただきたいと思います。
  229. 下田京子

    ○下田京子君 いろんな事情で答えられないというわけだから幾ら押し問答してもこれはらちが明かないと思うんですが、さっきかなり局長が明確に申されておりましたが、アメリカがいろんな形で要求を突きつけてくるだろう、基本的には完全自由化という要求は断念しないだろう、それを断念させるというのはとうてい不可能だ、しかしそれを可能にさせるかどうかというのは日本側が絶対に譲歩しないという態度なんだと、こうおっしゃったと思うんですね。それが大変重要だと思います。その点で、四月の二十二日に衆議院の農水委員会の席上、わが党の寺前議員が、アメリカが取得しているガットの義務免、いわゆるウエーバーについていろいろ話したときに、局長はこういうふうに言われていますね。アメリカがウエーバーを取得したのはガットにかかわっている人たちの間では歴史的偶然だ、何ら正当性を持たないと、この点は日本側機会あるごとに指摘していると、こういうふうに明確に述べておりますし、またこの前の四月十二、十三の作業部会でも、アメリカが取得しているウエーバーがいかに理不尽なものなのか、そういうものを棚上げにしておいて日本輸入制限をいたけだかに攻撃するというのは道理に合わないし、公正な態度ではないと、こういうふうに主張しているわけですよ。だとしますと、提示するかしないか検討の内容どうのこうのということはさておいても、いまのような立場できちんと対応していくのかどうか、今後の、その態度についてもう一度お伺いしたいと思います。
  230. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) アメリカのウエーバーについての私どもの認識というのはこれは変わることはございませんので、今後のアメリカとの協議の進め方についていかような検討が行われようとも、作業部会の席上アメリカのウエーバーについて私どもの述べた見解が変わることはあり得ないというふうにお考えいただいて結構でございます。
  231. 下田京子

    ○下田京子君 そこで大臣にお尋ねしたいんですけれども、提示するかどうかは明確でないけれどもというお話を前提にしつつも、とにかくアメリカ側が道理に合わない、しかも公正な態度でないいろんな要求を次々に出してくるという中にあって、アメリカの姿勢をそのままにした形で、一つは残存輸入制限品目の枠拡大、あるいは東京ラウンドで合意した関税率の引き下げ措置を二年分繰り上げて実施したばかりなのにさらに関税引き下げを図るとか、あるいは三つ目には輸入手続の簡素化など、こういうことにもしこたえるということになると、いままで言われていたこととは相反することになると思うんで、この点どうなのかという点では再度お聞きしたいわけですけれども。
  232. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 先ほどもお答えいたしましたが、私はやはり貿易委員会の後を受けた作業部会、この結果というのは非常に重大に受けとめているんですよ。したがいまして、アメリカの本当の考え方というのは何なのかということを十分認識した上でないと、私たちのいままでの態度は変えるわけにいかぬということを先ほど申し上げましたが、今後もそういう姿勢でいかなきゃいかぬ。単に、この前のは第一弾の関税率の前倒し、あるいは非関税障壁の緩和というものはそれなりに評価されておりますけれども、そのことで農産物自由化はおさまってはいないんですね、もっとむしろこう何か拡大する雰囲気にあるということは非常に私にとっては残念なんですよ。ですから今後もたとえばそういう考え方をある程度、何ら全体の認識を得ないまま緩和したとしても、それはどれくらいの成果があるかということになると非常に私は疑問だと思うんです。したがいまして、私たちはあくまでもアメリカの態度は一体どうなんだということをきちっと理解した上でないと私は日本の態度を示す必要はないと、かように考えております。
  233. 下田京子

    ○下田京子君 まだちょっと明確じゃないんですが、この前のジュネーブの協議のときに、席上米側から四点について要求が出されたと。私は、はっきりしている完全自由化についてはもうだめだと、こういう態度を明確にしているからあえて言わなかったんです。あとの残りの三つ部分についてどうするんだと、こう聞いたら、アメリカの言い分もよく聞いてと——アメリカの言い分をよく聞くんじゃなくて、いま言っているようにこちらが絶対に譲歩しないんだという態度が大事だと、こう言っているわけですよ。だからあえて三つ部分、つまり残存制限品目の枠拡大、これには対応するのかどうかということなんです。これもうだめだとはっきり言い切れるかどうか。さっきの他の委員とのやりとりを聞いていますと、大臣は、私は日本農業をしっかりさせていかなければならないと、いまにわかに枠を拡大し、完全自由化することはできませんと、こう言ったんです。ああいいことを言ったなと思ったら、その次に、その枠の拡大についてはできるだけしないように支えていきたいと、こう言うんです。そうしますと、その枠の拡大はするのかしないのか、こたえるのかこたえないのか、これも含めてきっぱりとノーと言って譲歩をしない態度で臨むのかということを聞いているんです。
  234. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) ただいまの段階では枠の拡大もしないという態度で臨みます。
  235. 下田京子

    ○下田京子君 いまの態度、いまの時点ではということでしたが、いまの時点、つまりきょうあすではなくてある一定期間、これは重要でございまして、特にきょう午前中に全中常務理事や主婦連事務局長、全日農書記長、あるいは全漁連の副会長、それから和光大の教授等々五人の方が参考人意見を述べられたんです。  そのときに、皆さんが共通して言われたことは何かと言いますと、アメリカ要求というのはとにかくむちゃくちゃだと、けしからぬと、それからまたアメリカ要求を受け入れたからということで貿易摩擦は根本的に解決しないと、そして国内農業を守るというのは、食糧自給率向上に絶対必要なんだというのがとにかく立場はいろいろあっても一致している点なんです。そういう点から、消費者団体を代表して主婦連の清水事務局長さんが言われたことは非常に印象的なんです。これは、工業のツケを農業に回すなと、この悪循環を絶つことが政治の責任であると、こういうふうに明確に述べられているわけなんです。まさに生産者消費者ともに農業を犠牲にするなと言っているんです。ただひとり財界、大企業、ここが、これはもう完全自由化だというかっこうでアメリカと一体になっちゃってるんですよね。こういう点があるだけに、きちっとしたやはり対応をしていくべきだと思うわけです。重ねて決意を聞かしてください。
  236. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 残存輸入制限品目については、自由化も、この枠の拡大もいたしません。そういう態度で臨みましたし、今後も臨んでまいりたいと考えております。
  237. 下田京子

    ○下田京子君 日本農業の、政府責任者としての農水大臣がそういう立場を明確にされた。しかし、私がいま何度も高いましたけれども、財界、臨調、この関連から見たら、一体政府全体でどうなのかという点では非常に不安なわけなんです。  詳しくは述べませんけれども、四月の二十七日、経団連あるいは経済同友会と、それぞれ総会開きまして、この問題について述べられてます。特に経団連が言われていることは、こういうことを言ってます。  「対外経済摩擦改善に関する見解」というかっこうで発表しまして、わが国市場が諸外国よりも閉鎖的だとは必ずしも言えないと、こう言いつつも、経済摩擦問題が政治化の様相を深めているので放置できない。そして防衛的でなくて前向きにとらえてやりなさいと、こういうことを言いまして、具体的には、残存輸入制限二十七品目自由化促進、そして残存輸入制限品目の撤廃をできるだけ早く実現する、こういうことを言っているわけなんです。  私は、先ほどの決意からしたら、こういう財界の、まさに正面からの挑戦に対して、何らかのやっぱり対応というのは明確にしておくべき必要があると思うんですけれども、どうですか。
  238. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 経済団体に対して、私も稲山会長初め極力機会をとらえて私の考えを述べてまいりましたし、また今後も経済団体に対しては強く私の考え方を述べて理解をいただきたい、かように考えております。
  239. 下田京子

    ○下田京子君 理解するための努力はしているということなんですけれども、財界の天皇とも言われるような土光さんが会長になっている臨調の問題なんですよ。この臨調は受けて立つという立場がいまの鈴木内閣でしょう。閣僚の一員として農水大臣もその責任を担っているわけなんです。その臨調の中で何を言っているかと言いますと、行革を盾にとりまして、農業に対する保護政策を批判しているわけですよ。明確にその中で、市場原理を導入しなさい、こういうふうに言ってますでしょう。特に、まだ正式じゃありませんけれども、第一部会報告というかっこうでいま出されている報道を見ますと、今後の運営において一層の市場原理の導入と財政負担の軽減合理化を図らなければならない。そして、中長期的には現行のお米等については全量管理方式を見直しなさいということで、具体的にお米の問題も出して言ってきているわけですよ。つまり、お米のことを例にしながらこういうかっこうで言ってくるということになりますと、アメリカからの自由化問題ということに内部から崩そうというふうなことにもなるという、大変大きな問題があると思うわけなんです。私はこれはきちっとすべきだと思うんですよ。どうです。
  240. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 第二臨調の答申はまだ出ていないのでございまして、うわさ、恐らくそれはどういうことなんですか、いまお話しのことはまだ私聞いておりませんので、答申が出た段階でその対応をいたしたいと、かように考えております。
  241. 下田京子

    ○下田京子君 答申が出た段階でって、答申がいまのような内容で出たときにはこうだというところがお聞きしたかったですね。  大臣がそういうふうな明確な立場がなぜとれないかということなんですけれども、きょうの日経新聞を見ますと、きのう日経連の定期総会が開かれているんですね。そこで大槻会長言ってますよね、三兆何千億の歳入欠陥けしからぬと、そういうこととあわせながら言っているのが「農業部門に対する行き過ぎた保護政策が、欧米諸国からの輸入自由化要請、報復措置としての対日輸入側限になった」と、こうまで述べているんですよ。次々、次々言ってくるのにいまのような部会報告が正式に出てから対応したいなんということを言っていれば、これは大臣が重ねて言っているような、本当に農業を守っていくとか、あるいはアメリカに対する具体的なきちんとした態度にはならないと思うんですよ。なぜそれができないかということなんですけれども、これは私も見て驚いたんですが、一九八一年、昨年、アメリカからの輸出入金額を見ますと、これは御承知だと思いますが、輸出総額が三百八十六億ドルですね、アメリカに対して。そして、輸入総額が日本に二百五十二億ドル、差し引き輸出超過分というのはどのぐらいになっているか、百三十四億ドルということになりますが、そのうちとにかく自動車がもうその輸出総額だけで百十三億ドルになっているわけですね。輸出全体の三割強という状態です。それから、電気機器関係が五十五億ドル、その輸出全体の約三割を占めております。  この自動車業界あるいはまた電気機器関係、これが財団法人であります、また自民党の政治団体でもございますが、国民政治協会に対して八〇年どのぐらいの政治献金やっているか、大臣、にやにや笑ってますけれども、すごいです、これもう。日本自動車工業会だけでこれが八千万円、日産自動車が六千三百六十二万円、トヨタ自動車が三千二百七十一万円、それから本田技研が二千三百万円、三菱自動車工業が二千九十九万円、日野自動車が八百三十六万円、この自動車関係の五社と工業会と合わせて二億二千八百六十八万円ですよ。それから日本電子機械工業会を含めて電気部門五社だけで二億七千四百八十万円、合わせてざっと五億三百四十八万円、これだけ、約五億円ですよ、八〇年代。これだけ政治献金、自民党さん受けているんですよ。そういうところに明確な態度がとれないところがあるんじゃないか。こういった企業が国際競争力をなぜつけていったかというと、片や政治献金、受けたその政治家は、もう政府一体になって低利、補助金、そしてまたいろんな優遇措置をやってきている。一方で労働者の合理化、首切り問題等、下請云々で苦しんでいる状態、こういう問題をそのままにしていて解決ということにはならないと思うんですけれども、御感想、どうですか。
  242. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 農産物についての考え方はいろいろあろうと思います。しかし、私は先ほど来申し上げておりますように、わが国のいわゆる新しい農業の芽を育てるためには何としても農産物自由化は阻止しなきゃいかぬ、こういう考えでおります。幸いにいたしまして、国権の最高機関である衆議院においてこれが議決された。きょうまた参議院においても御決議をいただく予定のようでございますので、そういう大きな背景で、私は力は足りませんけれども、思い切った努力をいたしたいと、そのように考えております。
  243. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 下田君、時間が来ておりますから……。
  244. 下田京子

    ○下田京子君 まだでしょう。——最後に一問、さっきちょっと言いましたけれども……。
  245. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ごく簡潔に願います。
  246. 下田京子

    ○下田京子君 お米の問題なんです。これは午前中の参考人も言ってましたし、いろんな団体が言われておりますけれども、アメリカ完全自由化を目指しているけれども、その本質はどこにあるのかという、こういう話に対してやっぱりそれは完全自由化を旗印にしながら、できるだけ日本政府を揺さぶっていくんだと、そして当面は農産物の枠の拡大だと、そしてつまるところ、将来にあってはお米の自由化をねらうんだという話が出ているわけです。これは本当にアメリカ側からいろんな形で出ていると思うんですよね。去る二月の二十三日に江崎訪米団が行かれたときにも、ブロック農務長官がアメリカのお米買ってくれと、こういう話をしたということも聞いております。それからかつては、これは五十五年だったと思いますけれども、日本が行っている輸出のお米の問題ですか、この問題についてもいろいろと言ってきていると。それからまた昨年十二月に、これは米国下院歳入委員会貿易小委報告というかっこうで、いわゆるギボンズレポートというふうな中にも、とにかくお米を買えという話も出てきているんです。最近いろいろ読みますと、種子の分野からもまた迫ってきている。だからこれは単なる話としてではなくて、重大な問題なので関心を持ってこういうことについてきちっとした態度で臨むこと、何度も言われておりますけれども、まさに絶対に譲歩しないんだ、この態度で臨んでいただきたいと思うんです。そのことを要望し、再度決意を聞きまして質問を終わりたいと思います。一言決意。
  247. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 米の輸入については絶対入れるわけにまいりません。
  248. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まず初めに、先ほどからも何度も質問は出ておると思いますけれども、この市場開放策の第二弾、これはいつごろ策定されるのか、そしてその内容については大体どういうものになりそうなのか、特に農産物の関係はどう扱うのか、御質問をしたいと思います。
  249. 海野恒男

    説明員(海野恒男君) 第二弾をいつごろまとめられるのか、それから内容はどんなものであるのか、農産物等についてそれはどのように扱われるんだという三点かと思いますが、まず内容でございますが、これまで各関係省庁の局長会議等を通じまして一応八項目、残存輸入制限品目の取り扱いについて、それから関税率の引き下げについて、それから輸入検査手続等の改善について、サービス貿易自由化の問題、それから流通機構、ビジネス慣行の改善の問題、それから輸入拡大、ハイテクノロジーの問題、その他という八つの項目についてまとめたいという方向でいま議論を進めておるところでございまして、その内容につきましてはこれから詰めるという状況でございます。  それからいつごろまでかということにつきましては、大体私どもは下旬をめどにというふうに考えております。下旬と申しましても二十一日から三十日まであるわけでございますが、そのいずれの時期かに経済対策閣僚会議において御決定いただきたいということの方向でいま取りまとめをしておるところでございます。  それから農産物につきましては、御存じのような経緯がございまして、農水省、これからアメリカとの交渉に来週のいずれの時期にか入るというふうな状況でございますので、それの結果を踏まえて、結果を聞いた上でどのように取り扱うかを決めさせていただくと、こういう方向でいま考えておるところでございます。
  250. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 第二弾がどうなるかということも非常に重要ですけれども、私は第二弾をやったところでそれだけでおさまるものではないと思うんですね。この貿易摩擦、それから自由化に対する圧力、それからわが国の開放政策に対する圧力、そしてこういうものが農産物にも及んできておるわけでありますけれども、私は政府は一体こういう一連の動きに対してどういう基本姿勢で臨むのか、これ農産物のことだけではありません、総体的にどういう基本姿勢で臨むのか。それから将来的な展望はどうなのか、この点を大臣にお伺いしたいと思います。
  251. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) これについては、この委員会でも御答弁申し上げておりますが、昨年の暮れ、経済対策閣僚会議を開きまして五項目にわたって、内容については後で御説明申し上げますが、五項目にわたって決定をいたしまして、その線に沿うて対外経済摩擦解消のために努力をいたしているわけでございます。そこで第一弾としては、すでに御承知のように関税率の前倒しと非関税障壁の緩和というものをし、OTOの設置等をいたしてこれに対応してまいったのでございますが、最近のアメリカあるいはECの現状は非常に厳しいものがございますので、それに対して第二弾対策を考えなきゃならないのじゃないだろうかということで、ただいま経済企画庁から説明したような状況でございます。
  252. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、こういう国際的な経済一つの流れ、それから将来の展望というものについて、やはり正確に把握する必要があると思うんです。  この十日、十一日にパリでOECDの閣僚理事会が開かれました。ここに出された報告ですね、これは新聞で報道されておる情報にすぎませんけれども、あくまで自由貿易を守る立場から、貿易摩擦を二国間で処理するのは弊害が多い、つまり日本アメリカに対してとっておる輸出規制、こういう問題に対しては非常に批判的な立場が表明されておる、むしろこういう問題についても国際的な基準を設けるべきである、こういう方向が一つ言われております。それからもう一つの問題としては、農産物に対しては従来ガットの規定においても政府の補助金や輸入制限には比較的寛大な立場であったけれども、これを見直すべきだという動きが出てきております。  私は、やはり世界経済というものが保護主義あるいは縮小均衡といった方向じゃなくて、やはり開放体制、自由貿易拡大といった方向で進むべきだと思いますし、それが日本の国益にも沿う方向であるというふうに考えるわけであります。これらの一連のこういう動きに対して大臣はどういう考え方を持っておられるかお伺いをしたいと思います。
  253. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  まず前段の問題につきましては、確かにそういう御議論が有力であるということは私どもも承知をしておりまして、そういう御議論をなさる向きは、あのような問題はむしろセーフガード条項の処理の仕方によって解決をした方があの種の問題についても国際的なディシプリンが働くので望ましいというお考えによるもののようであります。確かにごもっともな御意見であるというふうに私どもも思っております。  それから後段の問題につきましては、ガットの秩序というものが農産物について工業製品といろいろ異なった取り扱いをしていることについて、できるだけ農業、工業共通の通商秩序に従わせるべきであるという考え方が存在することは私どもも承知いたしておりますが、私自身、実は六日に十八カ国協議グループに出席をしてまいりましたが、私どもの見るところでは、ガット締約国の大勢は必ずしも農産物工業製品と共通の通商秩序をもって律すべしという考え方にはなっておらないわけでありまして、まずECは現在の輸出補助金、可変課徴金によって組み立てられております共通農業政策を頑強に擁護しようというふうに考えておりまして、いま御指摘のような議論によってECを攻撃しようとしておりますオーストラリア、ニュージーランド、カナダ等と激しくやり合っている状態であります。  それからまた、ただいま先生御指摘のような御議論は、一つにはアメリカが取得しておりますウエーバーを攻撃するというためのインプリケーションであると、そういう文脈の中で提起されているという側面がもう一つあるわけでございますが、これにつきましても、アメリカは現在の農事調整法二十二条のウエーバーを擁護しようという姿勢でおります。スイスの加入議定書に基づく輸入制限につきましても同様でございまして、ガット事務局は確かにいま田渕先生のおっしゃるような物の考え方をしておりますし、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ等がそれに同調していることは事実でございますが、私はガット締約国の大勢が御指摘のような議論に傾いているというふうには思っておりません。
  254. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 もちろん農業製品は、農産物工業製品と性格が違うわけでありますから、工業製品と同じように自由化を進めろと言ってもこれは現実的ではないと思うんです。  それから、現在のところ農業製品については各国が思い思いに保護政策をとっておる。そして、それに対してお互いに攻撃をしたりして、農産物をめぐる貿易トラブルというのは後を断たないわけでありますけれども、しかし、私は国際的な通商の一つのルールをつくるという見地から見て、農業製品についてはある程度の一定の保護、そういうものは急にはなくすことはできないと思いますけれども、できるだけ国際的に公平な一つの基準をつくっていくという方向に進むべきだろうと思いますし、またそういう方向に進んでいくと思うんです。それで、そういう中で各国がそれぞれ思い思いにとっておるような保護政策を一般にルール化していくという方向は当然出てくると思うんです。また、日本としてもそういう方向が望ましいと思うわけですね。私はそういう見地から、日本農産物保護政策についても従来のやり方だけでいいのかどうか再検討する必要があると思うんです。  これはどういうことかと言いますと、農産物の保護というのは、一つはもちろん食糧というのはきわめて重要な物資でありますから、国民の安全保障という見地から考えなければならない。だから、安全保障上必要欠くべからざるものについては、これは自由化についてある程度の制限は認められるべきであろう。こういうことは一般には受け入れられると思うんです。  それからもう一つは、これは農産物に限らず工業製品でもセーフガードその他で保護される道が残っておるわけでありますけれども、やはり急激な自由化によってその国の産業あるいは農業というものに壊滅的な、急激な打撃を与えるような場合にはセーフガード的なものがやはり認められるべきだと思います。  大体この二つのケースがきわめて重要な要素だろうと思うんです。だから、わが国がこの農業保護政策を考える場合においても、やはり将来国際的にある程度理解が得られるやり方というものを考えていかぬといかぬ。それには安全保障の見地から、農産物を何もかも一律にやるんじゃなくて、これはこの段階までは保護を主張し得る、そういう基準というものをやっぱり設けていくべきであろう。  それから、急激に自由化をすれば壊滅的な打撃を受ける、これについてはそれなりの期間とか、あるいは救援政策とかいうようなものが考えられるべきであって、そういうことがないと、これからは私は国際的な交渉の中において、ただ単にそれはだめだと言うだけでは通用しなくなっていくんじゃないかと思うんです。この点に対する見通しはいかがですか。
  255. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 先生の御指摘のように、農業にある種の保護は仕方がないとしても、それを国際的ルールに服せしむべしという御議論は確かに私どもも傾聴に値する御高見であるというふうに考えております。  それで、ガットの閣僚会議などを展望いたしまして、現在そういう方向で議論を進めてみるという企てが十八カ国協議グループの中で現実に行われておるわけでございますが、ただ実態を眺めてみますと、現在のガットの農産物貿易のルールというのはきわめて不公平にできているわけでございまして、ECの共通農業政策あるいはアメリカのウエーバーというものが現在のガットの通商上の秩序の不公平さのガンになっているわけであります。それで各国がこれを激しく攻撃しておるわけでございますが、ECもアメリカも頑強に抵抗して譲らないと。それで、実力から申しますと、これらの不公平さを攻撃する側というのが、どちらかと申しますとオーストラリアとかニュージーランド、カナダというような腕力の乏しい国でございますので、結局腕力が一番強烈なECとアメリカが不公平な既得権を頑強に擁護しようというふうに考えておりますので、私はなかなか田渕先生のおっしゃるような方向に事態が転がっていくというふうには思っていないのであります。
  256. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 急にはなかなかいかないでしょうけれども、私は日本立場としてこれからはやっぱり、開発途上国、そういうところの農業の育成ということも大事ですけれども、やっぱり国際貿易というものの公正化ということを図っていかないといかぬ。また、その中で開放体制というものをやっぱり進めていかぬといかぬと思うんです。だから、やっぱり日本としても、ECやアメリカがとっておることがまずければ、それは攻撃せぬといかぬと思うんです。それから同時に、日本の姿勢としてもやっぱり一貫したものを持たないといかぬと思うんです。  それから、いま問題になっておる牛肉とかオレンジの自由化の圧力があるわけですけれども、もしこれが自由化された場合に、日本国内生産がどの程度影響を受けるのか。この農業新聞の記事によりますと、牛肉はもうほぼ全滅してしまう。あるいはそのほか酪農は六ないし七割減少、養豚も二割は減少する、こういうような記事が出ております。私は、農水省として、牛肉やオレンジの問題でもし自由化した場合にどの軽度の打撃を受けるのか、その辺についての資料を持っておられるかどうかお伺いをしたいと思います。
  257. 石川弘

    政府委員(石川弘君) たとえばいろんな前提を置かなければいけないわけでございますが、価格の格差だけということで申しますれば、牛肉の格差は最も安いオーストラリアと日本では大体三分の一の価格でございます。ですから、安さだけということで完全に自由に入れるということになりますと、たとえばいまおっしゃるように牛肉生産は全く壊滅するというような想定もし得るわけでございますが、ただ、たとえば大変高級な牛肉というふうなものはオーストラリアにはございませんから、和牛の高級の肉みたいなものが独自な価格の体系で残るといえば残存することもあり得ると。いずれもこれ大きな前提を置かなければいけませんので、私どもいわば頭の中の体操と申しますか、いろいろと条件を設定していろんな想定をすることはやっておりますけれども、定量的にこうだということをはっきり言えるようなものは実はなかなかつくりにくいわけでございます、いろんな条件を置きませんと。ただ、影響する度合いは大変多うございまして、国内牛肉供給の七割は実は乳牛から参っておりますので、これが酪農にどう影響するかとか、あるいはそういう場合にえさ産業といったようなものがどういう形になるだろうかとか、あるいはたとえば屠畜場だとかそういう畜産物流通のようなものにどう影響を与えるかとか、そういうものを個別的に性質の姿としていろいろ想定はいたしておりますが、実は最のような概念まできちっと落としましてこれだけのものになるというところまでは詰め切ってはおりません。
  258. 小島和義

    政府委員(小島和義君) オレンジのケースについてただいまの御質問にお答え申し上げますが、オレンジの場合には牛肉の場合とやや性格を異にする点がございます。と申しますのは、アメリカ産のオレンジと日本国内生産をいたしております柑橘類というのは、一部同じような物もございますが、完全に同じ物をつくっているわけじゃないという特徴がございます。ただ昨今の様子で申しますと、国内国民一人当たりないしは全体の、果物全体の消費量というのはほとんど頭打ちでございますし、何かがふえれば何かがその影響を受けるという大変複雑な需給関係を形成いたしております。加えて、国内の柑橘産業というのがこの十年ばかりの間というのは大変な苦境にございまして、何とかしてこの苦境を脱するべく国内みずからが大変な努力をして、生産の転換でありますとか、あるいは果汁による消費拡大でありますとか、さまざまな努力をしておる最中でございます。したがいまして、自由化したらその何割がなくなるとかいうふうな定量的な意味影響度というのはなかなかこれは計算しにくいのでございますけれども、現在の柑橘農業が相当大きな打撃を受けるということは申し上げられるかと思います。金額的あるいはその定量的な検討というのは、さらに深めてまいりたいかと思います。
  259. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 牛肉、オレンジが非常に大きな問題として取り上げられておりますけれども、もちろんこの自由化による打撃ということは配慮しなければならない問題だと思います。ただ、もう一つ、この自由化をしていないがためのいろいろの問題ということが出ております。これはどういうことかというと、やはり流通機構の問題、流通経路の問題だと思うんです。自由化をしていないがためにその流通経路において自由な競争が行われない、それがある面では利権につながっていく、特にオレンジの場合は、わずか四社というのが全体の輸入量の大部分を扱っておるというようなことになっておる。それから輸入オレンジの値段はCIF価格の大体四倍から五倍、消費者の手に渡るときには四倍から五倍になっておる。こういうようなことが私は非常に不明朗な面を生み出しておると思うんです。それから牛肉の場合には、畜産振興事業団がその差益を受け取ることになっております。これが年間三百億から三百五十億円に上ると言われておりますけれども、これを本当に有効に使って、日本の畜産というものの競争力強化に役立っておるのかどうか、この辺にも非常に疑問がある。私は自由化をしないがための弊害というものも一面には出ておると思うんですね。  だから私は、自由化をしない、保護するなら保護するで、やっぱりきちんとした理由ときちんとしたやり方をしないと、それは外国からも理解されないし、あるいは消費者からも理解されないということになるんじゃないかと思いますけれども、この点はいかがですか。
  260. 小島和義

    政府委員(小島和義君) ただいま御指摘になりました数字でございますが、オレンジの場合、輸入割り当てはいわゆる商社割り当てでございまして、実際に割り当てをいたしておりますのは通産省でございますから、私どもの口から的確なことは申し上げかねますが、大まかな数字で申し上げますと、上位五社で大体全体の輸入量の三分の一ぐらいではないかと思いますので、四社で六割というのはやや過大に失するように思っております。  それから、もちろんその輸入の数量を政策的意図に基づいて抑えておるわけでございますから、自由な商品流通に比べればそこに何らかの不自由さが残る、扱い得る商社ないしは扱い得る数量というものが自由にならないという点ではやむを得ない点でございますが、輸入価格に比べまして国内価格というのは高い、これもまたやむを得ない点でございます。ただ、最近、東京ラウンドの合意以来輸入数量は急速にふやしてまいっておりますので、その意味では、かってに比べますれば輸入原価対国内の卸売価格というものの関係は縮小する傾向になっておるわけでございます。また、商社間のシェア問題につきましても、極力傾斜をなだらかにする、こういう意図も働かしておるはずでございますから、その意味では、輸入割り当て制度に伴う不公平さというものを極力是正をしながら国内の保護を図っていくと、こういうものが筋であろうというふうに考えているわけでございます。
  261. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 畜産物の流通につきましても、御承知のように相当枠の拡大を図ってきました過程で、実は昨年等につきましては、入札をいたしましても不落が出るというような状況もございまして、いわばそういう意味ではかつてのような、何と申しますか、数量が限られたことによりますようないろんな利益というようなものはだんだん生じないような姿になってきているわけでございます。そういう中で、御承知のように差益も減少いたしてきておりまして、五十六年度は三百億を割る水準に最近下がってまいりました。これは当然のことでございますが、国際価格との差をだんだん縮めてきているわけでございますから、差益はだんだん生じにくくなるということでございます。しかし、せっかくの差益というもの、これを有効に活用すべきことでございまして、御承知のように差益の大半の部分というのは国内生産合理化あるいは国内における消費者対策に使っているわけでございますが、御承知のように酪農製品等につきましてもずっと価格を据え置いてきた、それから牛肉価格等につきましてもEC等に比べましてはるかに小さな上げ幅で何年もやってきたわけでございますが、そういう結果、価格政策面で必ずしも、何と申しますか、経営をしにくいというような条件の中から、いろんな負債問題だとかあるいは経営改善問題というのが出てまいりまして、御承知のように、それらの差益等の非常に多くの部分は酪農家における負債整理問題とか、あるいは畜産経営の改善のための融資という形に使ってきたわけでございます。今後も、この差益の使い方につきましては、十分にそういう国際的な価格差というものを縮めながら国内生産性を上げていくという方向に使えるように努力してまいるつもりでございます。
  262. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  263. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。  この際、便宜私から各派共同提案による農畜水産物輸入自由化問題に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     農畜水産物輸入自由化反対に関する決議(案)   現下の我が国農業・漁業をめぐる諸情勢は極めて厳しいものがある。   農業にあっては、米をはじめとする主要農畜産物の需給の不均衡及び価格の低迷、二年連続の冷害の発生、漁業にあっては、海洋新秩序の定着に伴う国際規制の強化、燃油価格の高騰、水産物需要の停滞等により危機的な事態に直面し、厳しい対応を迫られている。   こうした困難な時期にあって、米国等からは、牛肉、オレンジをはじめとする残存輸入制限品目完全自由化等が一層強く要請されている。しかし、すでに大量の農畜水産物輸入されている状況の下で、我が国農業・漁業が壊滅的な打撃を受ける結果となるような輸入自由化等は軽々に行われるべきではない。   よって政府は、貿易摩擦の処理に当たっては、我が国農業・漁業をとりまく厳しい状況について諸外国の十分な認識を得るよう一層努め、残存輸入制限品目自由化及び輸入枠の拡大等については、農業者・漁業者が犠牲とならないよう対処するとともに、国会の「食糧自給力強化に関する決議」に即し、その実現を図るため我が国農業・漁業の体質強化及び再編整備を促進すべきである。   右決議する。  本決議案を本委員会決議とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  264. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  ただいまの決議に対し、田澤農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田澤農林水産大臣
  265. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従い、今後鋭意努力をしてまいります。
  266. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会