○坂倉藤吾君 同時に、私はいままで手をつけてきたことだから、これは完成をいずれにしても急がないといかぬということは当然の話なんですが、問題は先ほ
ども答弁がありましたように、ダム建設を伴うものについてきわめて遅延が目立つ、これは
一つの特徴だろうと思いますね。そうなりますと、ダム建設
自体が果たして当初目的に従って進めるだけがいいのかどうか、私はそのことについての総点検を一遍しなければいかぬのじゃないのか、こういう気がするんです。
先般、私は兵庫県の加古川西部へ行ってまいりました。これは加西市を
中心にいたしました受益地に対するところですね。ここへ行ってきましたら、これも大変なことでありまして、当初はここは四十二年に着工して四十九年に完成をする予定。それが六十二年完成見込みというふうに今日なっているわけです。しかも、これを見直しをしましたのが、何と五十六年に見直しをしている。四十九年の当初完成予定というのはとっくに過ぎちゃっている。それから十何年もたってから、やっと見直しをしている。しかもその見直しは総合的なあの地域についての総点検の上に立っての、たとえば水利
政策全体についての見直しを行ったんではなくて、
一つの引かれたレールの中での見直しだけをしている。ところが、地元の加西市の市長さんなんかの意見を聞きますと、もともとこの工事については、たとえば飲用水等も含めまして、いわゆる上水
関係も含めて本来そのダムは利用したいという
考え方があったんだと、こう話をされているんですよ。私
たちが地域的にざっと見ただけでも、ここは多目的ダムが必要なんじゃないのかと、むしろ。それをこの
農業用水という
立場でこれを進めることが果たしていいのかどうか、こういうことが抜本的に問い直さなければならぬ課題なんで、そういう
立場での見直しがあるんならいいんですが、それは全くない。しかもそういうようなことで、当初の工事費というのは五十五億円でやると言ったんですね、五十五億円。それが現在計画では二百四十六億円になっているんです。しかも非常にその当初計画よりも期間が長くなっていますから、したがって、受益農家そのものも減少している。これはもうこの間に、いわゆる開拓事業用地ということで当初認めておりましたのは四千八百五十ヘクタール。この四千八百五十ヘクタールが、以後転用農地が三百三十六ヘクタール、農地造成や権利移動が百二十ヘクタール、当初計画のずさんな区域で、灌漑排水路ができましてもいわゆる受益にならない地域がその後の精密調査の中で百ヘクタールも出てきている。合計の減は私がいま申し上げただけでも五百五十六ヘクタールあるんです、四千八百五十のうちの。ところが土地改良区というのは一体どうなっているかというと、当初の四千八百五十ヘクタールの持ち主全部を、受益になるかならないか別にしまして、判こをつけということで改良区の組合員にしている。したがって、精査してみたらおれのところ
関係ないじゃないか、こういう話になる。さらに、計画の見直しによってポンプアップをするところ等についてはもう辞退をしている。その後の情勢変化というのは、
水田の再編問題も絡みまして、いわゆる転作等でかつてのように水を必要としないというような問題が発生をしてくる。これでは一体これ何のために現実に行ってきたのかということがことさらに出てくるわけであります。
ところが、そういうふうに疑問視をされている問題についても、なおかつ農民の負担というのはきわめて大きなかっこうになってきている。当初、判をついて改良区の中に入った当時の農民の意識というのは、大体の概算でちょうど
昭和四十二年のときは元金が一万七千九百十四円、これは反
当たりであります。そして金利をひっくるめましても、予定に完了しておれば二万五千九百五十五円、おおむね二万五千円払えば、いままでよりも水が自由に使えることになるんじゃないのか、こういう意識で判こをついているんですよ。ところが、もういまや五十六年
関係で眺めていきますと、これは反
当たり十万二千円。金利合計いたしますと十六万二千七百円になるんです。これだけ農民負担なんですね、農民負担。いま反
当たり十六万二千七百円といったら、米に直してどれだけありますか。この地域は大体七俵から八俵が単収ですよ。そこの二俵分ぐらいずつ毎年払っていかなければならぬ、これは大変な私課題だと思いますよ。こういう
状況が、これは私がたまたま行きましたところですから、こういう計算をびっしりできるんです。ところが、こういう
状況をもたらした原因は一体何かというと、綿密にそれを言わないで、実はこれお出しをいただきました資料なんですが、遅延の主な理由というものは、石油ショックによって契約をした機材が急激に上がって、いわゆる労務費、資材費の高騰で、それに伴って公共事業費というものが抑制をされてしまった、だからそれが遅延の主な原因ですよと、これが
一つ。もう
一つは、事業実施に必要な権利
関係の調整、いわゆる補償
関係が長引いておりまして事業が進みません、こういう話になるんですね。
そうなりますと、当初計画を進行させる前段として、一体その付近の農民の方々あるいはまた
行政のところ、こういうところは一体どういうふうな話でこれ煮詰まってきたのかということを疑わざるを得ないんですよ、正直申し上げましてね。全体が好んでやろうというのなら、私は少なくとも補償
関係について、金額の多少の問題はあるでしょう、しかしそれほど難航するというようなかっこうにはならない。たまたまこの加古川西部の場合は、中国縦貫道の問題があって、
農水省が示しておる補償の約三倍程度のいわゆる補償金が片方では支払われる。距離は相当離れていますけれ
ども、それの
影響があって、こんなはした金では困るというのが難航した理由に
一つは取り上げられるでしょう。しかし少なくとも地元全体のこの工事に対する
理解というものがきっちりされてなかった。さらにそれの受け入れ母体であります土地改良区の
編成に当たっても、先ほど言いましたように、きっちりした計画の提示、
説明、こういうものが抜きになって、いままでよりもうんとよくなるし、収益が上がるんだし、負担は少ないんだから判こ押しなさいという話で改良区の中に組み入れられてしまっている。これが実態になっている。
私はそういう意味から見てまいって、この資料を分析をいたしますと、ほとんどのところがそういうことじゃないのかというふうにこれ
指摘をせざるを得ないんですよ、残念ながら。しかもこうした事業というのは、大変失礼な言い方になるか知りませんが、
国会議員の各先生方が、おれのところもこういうふうにしたらどうかというような話が幾つかあって、事務当局としてはそれについて一々チェックが言いにくい、こういう
状況が現実にあったんじゃありませんか。私はそういう中で、
田澤農水
大臣が、実は新規を極力抑えていくのだという決意は、これは大変なことで、みごとな話なんですが、さかのぼって言いますと、そういうことの災厄というのは、いま全部農民に降りかかっておるわけですから、これは私はきちっと
予算の
編成に当たっても整理をしてもらわなければならぬ、こういうふうに思うんですが、どうでしょうか。