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1982-04-01 第96回国会 参議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月一日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 伊江 朝雄君                 林  ゆう君                 片岡 勝治君                 柄谷 道一君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 竹内  潔君                 堀江 正夫君                 野田  哲君                 山崎  昇君                 中尾 辰義君                 峯山 昭範君                 安武 洋子君                 秦   豊君    国務大臣        郵 政 大 臣  箕輪  登君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  伊藤宗一郎君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        防衛政務次官   堀之内久男君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   石崎  昭君        防衛庁参事官   上野 隆史君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁人事教育        局長       佐々 淳行君        防衛庁衛生局長  本田  正君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  和田  裕君        防衛施設庁長官  吉野  実君        防衛施設庁総務        部長       森山  武君        防衛施設庁施設        部長       伊藤 参午君        沖縄開発庁総務        局長       美野輪俊三君        外務大臣官房審        議官       松田 慶文君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省国際連合        局長       門田 省三君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十七年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十七年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管防衛本庁防衛施設庁)) ○郵政省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  予算委員会から委嘱のありました昭和五十七年度総予算中、総理府所管のうち防衛本庁防衛施設庁を議題といたします。  予算の説明につきましては、さきの本委員会におきましてすでに聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 堀江正夫

    堀江正夫君 私、実はきょうは、この前の予算委員会一般質問のときに官房長官が言っておられました双葉山専守防衛論、これについてお尋ねするつもりでございましたが、時間があったら最後にこれはお尋ねすることにしまして、まず、先日来日をされたワインバーガー長官の千海里シーレーン防衛能力向上要請の問題について幾つかお伺いしたいと、こう思います。  これにつきましては、けさの新聞を見ますと矢田統幕議長がきのうの記者会見でもいろいろと申しておられるようでありますが、まず最初に、ワインバーガー長官要請内容はどういうものであったか、これをひとつ御報告いただきたいと思います。
  4. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) こういう問題について大変御造詣の深い、また御自分での貴重な御体験を持っておられます堀江先生に対しての答弁でございますけれども、間断なき対話を続けることが日米安保体制信頼性向上にも大いに資するわけでございまして、その一環として今回の私との定期協議が行われたわけでございますけれども、その間に、従来からの方針どおり、私から防衛大綱水準に定めるものを一日も早く達成したいというような私ども考え方を申し述べたのに対しまして、アメリカ側から、引き続いてわが国防衛努力について一般的な期待表明があったわけでございますけれども、こういう会議の性格上、特に相手側のことにつきましての詳細なことを申し上げることは、外交慣例上もございましてなし得ないのでございますけれども、そういう私とのやりとりの中に、今回の会議でお互いの日米間の防衛協力につきまして大変意義のある会話ができたものと思っておるわけでございます。
  5. 堀江正夫

    堀江正夫君 私はたった三十分しかございません。質問にずばり答えていただくようにお願いします。  いま一般的なお話だったんですが、それじゃシーレーン防衛についての要請についてはどうなんですか。御説明いただけないんですか、いただけるんですか。
  6. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) いまも申し上げましたように、われわれは従来から、わが国周辺数百海里また航路帯を設ける場合はおおねむ一千海里程度海域において海上交通保護ができるということを目標防衛力整備を行っているところでございますけれども、このことを私から申し述べました。米側もこのようなわが国考え方理解し、そのための防衛努力についての期待表明がありました。
  7. 堀江正夫

    堀江正夫君 それでは、具体的には結局ハワイでお話し合いになるということかと思いますが、ここでもう一度、それじゃ政府が従来国会等で申しておられますところの周辺海空域シーレーン約千海里の防衛についての基本的な考え方、これを確認をしておきたいと思います。
  8. 塩田章

    政府委員塩田章君) 従来の考え方確認ということでございますが、今回の会議を通じましてもわれわれの考え方は全然変わっておりませんし、そのことをアメリカ側理解をしてくれていると思っておりますが、申し上げますれば、防衛庁としましては、わが国から周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度わが国周辺海域につきまして、自衛隊がそこにおける海上交通の安全を確保することができることを目標として防衛力整備を行ってきておるということでございます。その周辺海域を超える部分につきましては一般的に米側に依存するという従来の態度は、政府といたしましては全然変わっていないわけでございます。
  9. 堀江正夫

    堀江正夫君 総理が五月にアメリカ首脳会談をやられた後、日米共同声明を出されました。その後でニューヨークのナショナル・プレスクラブ講演をし、記者会見をやられました。そのときに共同声明の中では、周辺海空域防衛をやりますと、こういうことを約束をしておられます。また演説の中では、やはりシーレーン千海里程度これをやるんだと、こういうことを言っておられます。このことは、予算委員会総括質問同僚議員質問に対してもはっきり総理が答えておられます。  そうしますと、これは周辺海域数百海里それからシーレーン一千海里程度を守る防衛力整備をするんだという防衛庁政府考え方であると、もう一度確認をします。
  10. 塩田章

    政府委員塩田章君) 従来の政府考え方総理がお述べになったものでございます。
  11. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、今度新聞で伝えられておりますところのワインバーガー長官の一千海里シーレーン防衛能力向上という要請は、大筋において従来の政府総理のお考えを受けて要請したものだと、こう考えてよろしゅうございますね。
  12. 塩田章

    政府委員塩田章君) 私どももそのように理解をいたしております。
  13. 堀江正夫

    堀江正夫君 前々から一千海里、周辺海域数百海里と言っておられます。ところが計画大綱水準を見ますと、そういう数字はどこにも出てまいりません。はるかにはるかに低いところでございます。それに対して、いやいや一千海里、数百海里の海空防衛というものを念頭に置いて計画大綱はつくったんだと、こう言われておりますが、これはそのとおりですか。
  14. 塩田章

    政府委員塩田章君) そのとおりでございます。
  15. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、計画大綱水準というのはとても千海里のシーレーン防護なんかできるはずがない。数百海里の周辺海空域防衛もできるはずはない。にもかかわらず千海里だ、あるいは数百海里だということをいやしくも日米首脳会談共同声明で言われる。アメリカナショナル・プレスクラブ講演でもこういうことを総理が言われる。ずいぶん先の先の話ですね。大体いつごろまでにそれはやろうというお考えがあって言っておられるんですか。
  16. 塩田章

    政府委員塩田章君) 防衛計画大綱水準達成したいということにつきましては、御承知のように、現在やっております五六中業大綱達成することを基本にして作業をしておるということは、昨年来申し上げておるところでございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 五六中業で仮に計画大綱水準達成しても、周辺海域は百海里から二百海里あるいは太平洋側においては三百海里の対潜哨戒能力を持つだけなんだ、こういうことですね。そうすると、シーレーンの千海里とか周辺海域五百海里とは全く関係ないじゃないですか。しかも、それが六十二年度に仮に達成できたとしても、実際にその能力を持てるのは何年ですか。一九八〇年代を過ぎて九〇年代に入るんじゃないですか。そうなると、千海里だ、あるいは五百海里だというのはいつのことですか。夢のまた夢じゃないんですか。
  18. 塩田章

    政府委員塩田章君) 五六中業は六十二年までの期間でございますので、六十二年度調達分のオンハンドベースは最終的には昭和六十六年ごろになることは御指摘のとおりでございます。  ただ、その前の、おっしゃいました百海里、太平洋側で三百海里程度のことしかできないではないかということでございますが、この点は先ほど申し上げましたように、周辺数百海里、航路帯を設ける場合には一千海里程度防衛できるということを念頭に置いて現在の防衛計画大綱ができておるということは、先ほど申し上げたとおりであります。
  19. 堀江正夫

    堀江正夫君 それじゃ念頭に置いてというのはどういうことですか、願望ですか。いや、そうじゃなくて、それだけのことをやっておればある程度は千海里もやれるということなんですか。
  20. 塩田章

    政府委員塩田章君) 大変お答えのしにくいところでございますけれども、単なる願望ではなくて、ある程度のことは、相当程度のことはできるということをもくろんだものでございます。
  21. 堀江正夫

    堀江正夫君 ある程度というのはどういう程度ですか。
  22. 塩田章

    政府委員塩田章君) もしそのお尋ねが、数字でもって、何かパーセントみたいなもので示せというお尋ねであれば、パーセントでもって何パーセント程度のことができるというふうにお答えすることは困難であります。
  23. 堀江正夫

    堀江正夫君 私は、本当を言いますと、ふざけていると思うんですよ。従来は、千海里と言ったら行動範囲だというようなことを言っておられますね。行動範囲というのはそもそも何だ。それは足があるんですから、それだけの足を持っているんですから行動はできるでしょう。行動ができるということと実際に防衛任務達成できるということは違う、全く違う。  しかし、はっきりと総理防衛庁も千海里のシーレーン防衛をやります、守りますと、こう言っておられるんです。数百海里の海空防衛もやりますと、こう言っているんですね。大変差がありますね。私はもっとその辺ははっきりと国民に示してもらわなきゃいけないと思います。また、そういうやれもしないようなことを国際政治の場で約束するなんというのは私はとんでもないことじゃないかと思いますね。もっと本当に必要だと思うなら必要な努力をすべきじゃないんですか。私は必要だと思う。それに対して何か口先だけでやれるようなやれないような、それではもうとても済まされる状況じゃないと思いますが、いかがですか。
  24. 塩田章

    政府委員塩田章君) 行動任務が別だということはよくわかりますが、われわれは、海上自衛隊シーレーン防衛任務を受けた場合にどの程度範囲まで行動できる能力があるか、一千海里程度行動し得る能力を持ちたいということで整備をしておるということを申し上げておるわけでございまして、そのための必要な努力をしてないではないかということでございますが、それは、私どもといたしましては、現時点において何をおいても防衛計画大綱水準に到達することが先決であるということで努力をいたしておるわけであります。
  25. 堀江正夫

    堀江正夫君 もっともっと突っ込みたいですが、私三十分しかないんですね。そこで、後またちょっと触れますが、五六中業の問題について入りたいと思います。  現在の情勢下日本が果たさなければならない責任というのは、わが国に対する侵略を確実に抑止をしなければならない、同時に、さらに局地的な寄与力を高めて西側全般としての平和確保体制強化に貢献をする、ここにあると思います。そのためには、これはもう皆さん言っておるところでありますが、平時計画である計画大綱水準ではもちろん問題にならない。これはもう防衛庁だって認めざるを得ないだろうと思いますね。心ある国民はみんなそう思っています。速やかに見直しを行うことが必要なんです。同時に、その整備の時期を早めなければならない。いずれにせよ、画期的な防衛努力というものが現在日本政治が取り上げなければならない最高、最大、最優先の政治課題なんだと、私はこう信じております。政府は、しかし頑強にみずから平時計画だと言っておるところの計画大綱水準に固執をされておる。もう私にとってはどうしても不可解でよくわからないわけですが、しかしきょうは百歩、千歩譲って、この計画大綱達成の五六中業の問題について質問をしたい、こう思うわけです。  その第一は、総理も、五六中業の第一年度を五十八年度にするんだということについては、そのようにはっきり決心をしておられますかどうですか、それをまず確認したいと思います。
  26. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 総理もそういう御決心と承っております。
  27. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、私はまずほっとしたわけです。どうも巷間いろんな雑音が伝えられておりまして、これが五十八年度第一年度ということにならない、五六中業作成がおくれるというようなことにでもなれば、これはもうとんでもないことになる、国際的にも対米上から見ても。こう思っておりましたが、それでひとまず安心したわけですが、それでは、そのためには当然作業上の時期的なリミットがある。また防衛庁案を決定するまでには、当然大蔵省初めいろいろと調整をしなければならない。そうなりますと防衛庁素案は、私の経験なり何なりからしますと、各幕の作業期間概算要求庁内審議もございますね。そうすると四月中、遅くも五月初めにはできておらなければならないんじゃないかと、こう思います。現在の進捗状況、今後の見通しはいかがでございますか。
  28. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 御指摘のように、五十八年度の予算概算要求に間に合うように目下五六中業作成に全力を挙げているところでございます。なお一層の御支援を賜りたいと思います。
  29. 堀江正夫

    堀江正夫君 それもひとつ安心をしましたが、しかし問題は、この素案作成に当たって防衛庁は非常に困っておられるんじゃないか、苦心をしておられるだろうと、こう私は十分に理解をしております。というのは、国防会議では、六十二年度に計画大綱水準達成することを基本にして作業していいと、こう言われておる。ところが一方において、総理GNPの一%を超える考え方はないんだと、こう言っておられる。全く矛盾しておるわけですね。しかし常識的に考えてみましても、現在のこの防衛力整備のレベルで整備を進めていく、このように仮定してみましても、五十九年度には一%の問題は必ず出てくるだろうと思いますね、五十九年度ですよ。まして、現在の経済成長の低迷、こういうようなこととか現在の世界情勢、これを考えてみますと、一%の問題はどうしたって避けて通れないじゃないか、このように思われてならないわけです。  ところが、総括質問における栗林議員質問に対して、長官はいろいろと答えられております。苦心の存するところだと思いますね。たとえば、効率的な防衛力考える、節度のある整備に留意をする、GNPの一%を念頭に置いてやるんだ、大綱水準達成が図られるようぎりぎりの努力をする、こう言っておられます。しかし現実的にもう作業しておられる。それはやっぱり一つの尺度で作業しなければ作業にならないと思いますね。各幕はもうすでに二月にはそれぞれの計画要請が出ておる、こう聞いております。そうしますと、それは具体的に平均一%ぐらいということでやっておられるのか、あるいは新聞で伝えられておりましたように、平均すると一・三%ぐらいということを念頭に置きながらやっておられるのか。それにしても、その程度では私は防衛庁としてはどちらつかずの案をつくることになるんじゃないかなというふうに懸念されてなりませんが、実際はいかがでございますか。
  30. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 大変お気持ちのある、また反面大変鋭い御質問で、なかなかお答えがむずかしいのでございますけれども、まず第一点は、いまとにかくぎりぎりの努力をしている最中でございまして、先生の御指摘にしかとお答えできるような内容が固まっておりませんので、ということが第一点でございます。  それと、いまも最後の方で御指摘がございましたけれどもGNP一考に関する閣議決定というものは現に存するところでございまして、当然それも念頭に置かなきゃならぬ。また、片方では大綱水準達成を図っていくということも、防衛庁として、また防衛庁長官として国民に対する一つ責務でもございまして、その調整を図るために目下大変な苦心なり努力をしているということ、今日の段階ではそのことを申し上げる以外には——お答えになりませんけれども、そういうことでございますので、御了承を賜りたいと思うわけでございます。
  31. 堀江正夫

    堀江正夫君 その防衛庁の現在の立場もよくわかるわけですが、しかし現実的に作業しておられるわけですね。しかし、迷いながらやっておられるんだろうと思いますよ。  そこで私は、大綱水準達成するといっても、この前の栗林議員質問にも答えておられますように、ぎりぎりの努力をしている、効率的にやるんだと、いろいろ言っておられます。節度のある達成を図るんだとか、こう言っておられます。もちろん、計画大綱水準には別表に数的な量は書いてあります。しかしそれ以外は、近代化程度をどの程度にするか、あるいは継戦能力、抗堪性、即応能力をどの程度向上さすか、これはもう充実すると書いてありますが、数字は何もないわけです。したがって考え方によってはずいぶんと幅があるわけです。しかし、日本防衛防衛庁というのは唯一の第一義的な責任を持たなきゃならない官庁であります。現在の情勢のもとで、初めからその水準自分で低く抑えた案をつくる、それで果たして防衛庁国民に対する責任を果たせるんだろうか。私は、そういうことを防衛庁自分で悩みながらもやるということは、シビリアンコントロール基本をみずから無視し破壊することにはならないか、このように思うんですよ。というのは、元来、事態をどのようにとらえ、どの程度防衛力をいつまでに整備するか、そして自衛隊にどのような任務を与えるのか、これはどうですか、まさしく政治責任そのものじゃないですか。防衛庁自分判断でやることでもやれることでもないと私は思いますね。  そこで私、大変苦心しておられるから、ここで提案をするわけです。この際、本当に水準達成するためにはこれこれをこの程度にしなければならない、その場合に経費はこれだけかかる。また一%の枠内でやるということになるとこれはこの程度になって、そうなるとこのような欠陥が残る。これらをまずはっきりと政治に認識をしてもらうべきではないか、そうしなきゃシビリアンコントロールの筋は通せないじゃないか、こう思うわけなんですね。  そこで、この二案、これはもうもちろん一々細部まで積み上げて比較をするといったような事務的な余裕はないでしょう。私はそんなような作業は必要じゃないと思います。政治に必要なのは、概貌が大観できる、それによって判断ができるという程度でいいんじゃないか。したがって、大きく言ってこの二案のどちらに沿ってやるかということをまず総理国防会議でもって決断をしてもらうということが現段階においては一番優先するんじゃないか、そうしなければ防衛庁としての責任は果たせないじゃないか、作業もできないじゃないか、こう私は思うんですけれども、いかがですか。
  32. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 政治が優先し、またシビリアンコントロールをあくまでも貫かなけりゃならぬということは全く同意さしていただくわけでございますけれども、また、そのことを防衛庁長官としての最大の使命と心得て不敏ながらやらせていただいておりますけれども、いま鋭く御指摘がございました、水準達成するということと一%の枠内でやるということ、そういう二案というような御指摘がございましたけれども、私も先ほどから申し上げておりますとおり、その二つの考え方を、現時点において、また財政その他諸般の事情、制約の中にこの時点でまとめられるベスト、ベターな案をどうやってつくり上げるかということで腐心をしているわけでございまして、もちろんそういうようなことのまとめ方の段階において総理なりそういう方々の御意見を承る機会もあろうと思いますけれども防衛庁の自主的な判断において一つの案をまとめて、その後で国防会議決断をしてもらわなけりゃならぬというふうに思っておるわけでございます。
  33. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、この前の質問に対しても、GNPが流動的でまだわからないとかいろんな不安定な要素があるんだ、こういうことでございましたね。確かにそうでしょう。しかし、これはもう五十八年度を第一年度にするということになりますと、とても一つ想定を置かなければできる問題ではないわけです。そういうようないろんな想定については当然ある節度を設けてやるということであるならば、私は防衛庁は本当に、はっきり言いますときわめて不満足なものになると思いますね。それで、計画大綱でもって平時計画としては万全なんだ、それを基調にしてすぐいざという場合に対応できるようなものに踏み出すことができるんだというものには私はとてものことにならないだろうと思うんです、防衛庁だけがとつおいつ思ってつくったのでは。  ですから、重ねて言いますけれども、私は自分の若いときのこういうものにタッチした経験から見ましても、政府に本当に決断すべきものは決断してもらわなきゃならないんです、政治に。それをやらないで防衛庁防衛庁サイドだけで考えてやる。でき上がればそれがもとになるわけです。その前の段階防衛庁はやっぱりやるべきじゃないかと思いますが、重ねて私は意見を申し上げるわけです。
  34. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 防衛の第一義的な責任者として防衛庁としての責務を果たしてまいるわけでございますけれども、その段階でも、先ほども申し上げましたとおり高度の政治判断をいただかなきゃならない場面もあろうというふうにも考えておりますし、そのための私自身防衛庁長官としての心組みも持っておるわけでございますけれども、何といっても第一義的には防衛庁が自主的にそれなりの計画を、ベターと思われベストと思われる計画をまとめて高度の判断をまつということになろうと思います。
  35. 堀江正夫

    堀江正夫君 もう一分でございますから、最後に、私は先ほどの干海里の問題とも関連をして申し上げますが、長官は衆議院の答弁の際にも、五六中業の中でもアクセントを考えるということを言っておられます。新聞では、これは海空を重視する思想を出されたんだと、こう言われております。どのくらいの経費でやるかということにもよるわけでありますが、この海空重視というのは、これは正面だけなのか、あるいは後方も含めて考えられるつもりなのか。その場合に陸のウエート、これは陸の役割りについては防衛白書なんかでも非常にはっきりと書いておられますね。これをどのように考えておられるのか。さらに即応態勢、継戦能力、抗堪性、これをどのように位置づけようとしておられるのか、この辺を最後に承って、私の質問を終わろうと思います。
  36. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) これまた御造詣の深い先生に対する答弁で恐縮でございますけれども、やはり防衛というのは正面、後方、さらには国民皆様方の防衛に対する幅広い、また強力な御支持がなければ、本当の意味での防衛というものは全うされないわけでございます。そういうような諸般の事情を十分かみ合わせたバランスのとれた防衛力というものをつくり上げることが最大目標でございまして、特に海空を重視するとか、さらにはまた海空の正面装備のみを重視するとかという予断を持っていま作業をしているわけではございません。ただ、いまお話のとおり即応能力あるいはまた継戦能力、抗堪性の向上等については、当然のことながら重視をしていかなけりゃならない必要があると考えております。
  37. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、きょうは前々から問題になっておりましたF4の試改修の問題等を含めまして質問さしていただきたいと思います。特に先日の予算委員会の理事会等でいろいろ議論もありましたし、また先日の内閣委員会でも議論がありました。実はあの試改修の問題につきましても、凍結されておりました予算防衛庁の手で解除されたと私思っておるんですが、この問題につきましても、予算凍結を解除して契約行為が行われたであろうと私は思うんですが、であっても、実際問題としてこの試改修という問題についてのいろんな疑惑、あるいは国民に与えた影響あるいは当委員会でいろいろ議論された経過等を踏まえて考えてみますと、問題が余りにもたくさん残っていると。これからやっぱりこの問題は明確にする必要があると考えております。そういうような観点から、きょうはこの問題を初めに質問さしていただきたいと思っております。  これは、まず凍結されておりました予算を解除した後、現在までどういうふうになっているのか、これの説明をお願いします。
  38. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 後で政府委員の方から補足をさせますけれども先生指摘のとおり、先般参議院の予算委員会での外交・防衛問題についての集中審議が終わられた段階におきまして、予算委員長また理事会の皆様方のお許しを得まして理事懇に私が出席をさしていただきまして、いわゆる御審議が終わった時点において防衛庁として、年度末も控えておりますので、停止を解除して執行をし、防衛庁としての責務も果たしたいし、そのことによって国民の御支持にもこたえたいということで解除をいたしまして、その翌日、二十七日、総理のところに私が伺いましていま申し上げたようなことを総理にも申し上げまして、その時点で防衛庁の装備局長に解除を指示いたしまして、その後装備局長の手によって諸般の手続が済みまして、きのう契約が締結されたということでございまして、装備局長の方からそのほかの事情については補足をさせます。
  39. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 若干補足をさしていただきますが、五十六年度の執行停止になっておりましたF4EJ試改修の設計にかかわる契約でございますが、いま長官からお話ございましたように、二十七日にこれについての契約手続等を進めるということでございましたので、その後所要の手続を進めまして、昨日、三菱重工業株式会社との間におきましてF4EJ試改修の設計にかかわります契約を締結いたしました。契約当事者は、通常の例と同じでございますが、調達実施本部長と三菱重工の担当の取締役でございます。契約金額につきましては十三億三千万円ということでございます。
  40. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 試改修完了はいつごろですか。
  41. 和田裕

    政府委員(和田裕君) いまの申し上げました契約にかかわりますものは試改修の設計でございます。機体側からいたしますところの全体のシステムについての設計でございますが、これは二年でやることになっております。
  42. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 十三億三千万というのは設計だけですか。
  43. 和田裕

    政府委員(和田裕君) これは機体及び全体システムにかかわります設計だけでございます。
  44. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 試改修そのもの全体ではどのくらいかかるんですか。
  45. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 試改修全体は、五十七年度におきまして八十五億円お願いしてございますので、いま申し上げました十三億円と合わせますと九十八億円ということになります。
  46. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その試改修が終わるのはいつ、大体何年ぐらい。設計が二年ですね、それで、それから実際に試改修をやりますね。終わるのは大体どのくらいなんですか。
  47. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 五十七年度予算のこれは国庫債務負担行為でございますが、これは三年でございますが、それによりましていろいろ試験等を行いますので、試改修を行うのは予算上からいいますと五十九年度で終わるということでございます。
  48. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、予算上じゃなくて、試改修をされたものが実際に実戦配備されるような時期はどのくらいなのか。
  49. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 実戦配備する前にまず量産にかかるわけでございますが、量産につきましては、一応の予定といたしまして、六十年ころというふうに考えております。
  50. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 量産は六十年として、試改修された飛行機が実際に飛ぶ、いわゆる試運転と言うんですか、何と言うんですか。
  51. 塩田章

    政府委員塩田章君) いまのめどといたしまして、試改修とそれから実用試験——実際に飛ばしてみる試験、あわせまして五十九年、六十年ごろを実際に飛ばしてみる試験、実用試験に当てて、六十年ごろにその成果を見て、以降量産に入っていきたいというふうに考えております。
  52. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと私は、ここで具体的にこの問題につきましていろいろな問題がありますので、幾つかの点を明らかにしていきたいと思います。  これは先日の委員会でも、防衛局長、やはり私は一つは文民統制という点から大きな問題がある、こういうふうに考えております。まず試改修の問題について、総理の発言というのが何回も予算委員会等でも議論になっております。要するに、あの増田発言当時の議論を踏まえて、そのことについて防衛庁が説明不足であったことについてはまことに申しわけない、こんなことは先日の委員会でも長官からも何回も説明がありましたが、実際問題として、このF4に爆撃装置をつける、実はこの問題についてはF4が昭和四十二、三年当時の国会で相当問題になったあれなんですということについても総理には説明をしたのかどうか。この問題について、具体的に私たちが新聞報道等で見る以外にないわけです。これは実際総理には説明したのかどうか。  先ほどから防衛庁長官の説明を聞いておりますと、試改修の問題について、先ほど説明したとおり、いま委員会で申し上げたことを総理に申し上げたと、いわゆる予算の凍結の問題についていきさつや何かを総理に説明したと言っていますけれども、要するに、いま委員会で説明した防衛庁長官の説明が非常に抽象的ですから、中身なんかわかるわけありません。そういうふうな説明ではいかぬと私は思っています。しかしきょうは、そういうような抽象的な雲をつかむような話じゃなくて、もう少し具体的に、総理には何と説明したのか。それを具体的に説明に行った場に塩田局長はいらっしゃったわけですから、どういうことなのか、一遍はっきりしていただきたいと思うんです。
  53. 塩田章

    政府委員塩田章君) 口頭で御説明したものですから、いま正確な記録があるわけではございませんけれども、私の覚えております印象で言いますと、まず延命をいたしたいということ、これはかなり詳しく申し上げたような印象があります。それから延命に伴いまして能力アップを図りたいということも申し上げました。その際に、どういう能力アップを図るのかということ、それからさらに四十二、三年当時にこういういきさつのあった問題でありますということについて、いま考えてみますと、総理に詳しく御説明をしなかったというふうに考えておりまして、その点を国会にも御説明しなかったこともあわせまして、その点を反省いたしておるわけであります。
  54. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、総理が聞いてないという方が正しいわけですな。
  55. 塩田章

    政府委員塩田章君) いま申し上げましたように、延命のことと能力アップを図りたいということは申し上げまして、その点は総理も御承知をなさっております。それ以上の詳しい点を申し上げなかったということでございます。
  56. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは五十五年の八月のことですね。  それでは、その後十一月の十日、いわゆる国防会議の参事官会議、そしてその後の十二月二日には国防会議が開かれています。その国防会議でも説明をしてない、出席したメンバーが聞いてないと言っておられます。これは新聞がそういうふうに報道しているわけですから、それをわれわれ信用する以外ないんですが、これはどうなんですか。
  57. 塩田章

    政府委員塩田章君) まず最初の五十五年の八月というのは、これは防衛庁のまだ内部の話でございまして、防衛庁長官に御説明した時期でございます。総理にはその後だったと思います。  それから国防会議でどの程度説明したかということでございますが、これも私同じ程度の説明をしたように覚えております。
  58. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、逆に言えば、要するにこの問題そのものが相当議論になったというふうなことについては説明をしてない、これはあえて避けたわけですか。
  59. 塩田章

    政府委員塩田章君) あえて避けたわけではございませんけれども、いまその点が一番反省をしているところでございますが、少なくとも詳しく御説明をしなかったということは間違いございませんので、その点を申しわけないと思っているわけであります。
  60. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これ長官ね、あえて反省をしている、その点を反省していると何回も言っていますよ。その責任はどうするんですか、防衛庁長官。文民統制という面から言えば一番大事なところじゃないですか。国会で一番議論した点を無視して、そしてこういうことをあいまいに済まそう、こういうことは私は許しませんよ、こういうことは。あなたは、この間の内閣委員会で私が質問したときに、内局のそういう長官を補佐する立場の人たちについては責任は問いませんと、こう言いました。しかし、この間のときもそうですけれども、今回もそうです。そこが間違っていたんです。申しわけなかったで済む問題ではないでしょう。文民統制という点から言えば一番大事な点じゃないですか。その一番大事な点をあなたは責任を問わないということはどういうことなんですか。そんな、そういうことをあいまいに済まして次の問題じゃないでしょう。現実に間違いを認めておるじゃないですか。その問題について防衛庁長官はどう考えているんですか。
  61. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 防衛庁全体としても御指摘のような問題につきましては真摯に反省をしておりまして、これはその時点その時点でのつかさつかさの者というよりも、防衛庁全体の反省として、国会にも御迷惑をたくさんおかけしたわけでございますから、二度とそういうことのないように、それから防衛庁全体の反省事項として御指摘のような御趣旨にはしっかりおこたえをして、二度とこういうように国会に御迷惑をかけることはしないということでぜひ御理解を賜りたいと思います。
  62. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもあなたの答弁は抽象的ですね。  今回の問題は、これからまた具体的に幾つか指摘をいたしますけれども、まさにその点にあるんじゃないですか。今回のいわゆる試改修は、専門的な言葉でごまかして説明を逃れようとしたのじゃないと私は思います。思いますけれども、国会のそういういろいろな議論やそういう問題を回避して、結局鈴木総理も知らないうちに今回の試改修が決定されて、そうして予算化された。予算化された問題ですから、これは、われわれとしても予算そのものは認めておるわけですから、しようがない。しかしながら、文民統制という点から言えば、いわゆるシビリアンコントロールが有効に機能しているとは言えないんじゃないですか。それについて、やはり制服の皆さん方には、防衛庁の内局にもそういう問題があるんじゃないかと私は思うんですけれども、試改修だからその必要はないんだというこの論理、これがあるんじゃないか。私は、試改修というものが防衛庁長官の権限でできると、これからもこれは議論しなければならない問題ですけれども、しかもそういうふうな中で、もう少しこの問題に対して防衛庁自身が本格的に反省をして、そしてこういうふうな問題が二度と起きないようにする体制というものをぴしっと具体的に示していかなくちゃいけないんじゃないか、こう思いますけれども、どうですか。
  63. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先ほど私が申し上げましたような重大な反省をしておりますので、その反省が口頭禅に終わらないように、なるべく早い機会に防衛庁の反省の実が皆さん方の前にお示しできますようにしたいということで、ただいま鋭意努力中でございますので暫時お時間をちょうだいしたいと思っております。
  64. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 長官のそういう御答弁ですから、その点はこういうような問題が二度と起きないような具体的な対応を見守っていきたいと思います。  そこで、次に防衛庁長官、この試改修については防衛庁長官の権限の範囲内でできる、量産体制になれば国防会議に付するんだ、こういうことですね。これは一体どういうことなんですか。要するに、国防会議に付すというその基準は、どういうことが国防会議に付す基準なんですか。
  65. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) これも後で法制上の問題もございますので補足をさせますけれども、この試改修ということがわれわれが国防会議にかけないでもいいというふうに判断したという一つでございますけれども、一般的に戦車、護衛艦、作戦用航空機等の装備にかかる開発項目のうち、長期にわたり多額の経費を要するものについては、各年度の防衛力の具体的整備内容として国防会議に付することとなっておりまして、そういう観点から、今回は試改修でもございますし、いま申し上げたようなものに当たらないということで国防会議には諮ることとしなかったわけでございますが、われわれとしてはシビリアンコントロールには反するものではなかったというふうに確信をしております。  ただ、また先生のことに蒸し返しになりますけれども、詳細な説明を国会なり総理にしておかなければならなかったという、そういう点での欠落があったということについては、防衛庁としては反省をしているということでございます。
  66. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 長官、いまの説明をもう一回してくれませんか。要するに、試改修の防衛庁長官の権限の中身の問題ですからね。いま長官おっしゃった長期にわたり多額の金額になるものは国防会議にかける云々という話がありましたが、いま詳しい中身をおっしゃいましたね、そこのところをちょっともう一回。
  67. 塩田章

    政府委員塩田章君) 防衛庁設置法の六十二条の二項五号に、内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項をかけるということになっておりまして、その重要事項に該当する事項としてあらかじめ指定されたものとしての閣議決定が五十一年の十一月五日にございますが、その閣議決定で一から四まででございますけれども、その第四項に、「前項各号に掲げる装備に係る開発項目のうち、長期にわたり多額の経費を要するもの」をかけるんだということになっております。前項に掲げる装備といいますものは、いま長官が言いましたような戦車でありますとかミサイルでありますとか、護衛艦でありますとか作戦用航空機といったようなものが掲げられておるわけでございますが、そういった項目の「開発項目のうち、長期にわたり多額の経費也要するもの」、こうなっております。  今回のF4の試改修につきましてそれに該当しないと判断をいたしましたのは、F4EJの試改修の内容そのものはるる御説明をしてまいったとおりでございますが、現在すでにF15で使っておりますセントラルコンピューター等を従来からわが国で使っておりますF4EJに搭載するというものでございまして、新しい装備品をここで開発するというものではない、いわば既存の構成品等の組み合わせを主な内容とする試改修でございますので、これは、私どもといたしましては、いわゆる開発項目ではないというふうに考えました。  ただし、また申し上げておりますように、しからばこれが量産のときにはなぜかけるのかということになりますと、これは先ほど申し上げました、また設置法六十二条に戻りまして、これはやはり百機かどうかまだ正確ではございませんけれども、一応百機程度のものをこういった改修をする、量産改修をするかということになりますとわが国防衛力にとって重要な意味を持つことになりますので、そういう意味で、「内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」であるという観点から、これは国防会議にかけるべきものであろうというふうに考えておるということを申し上げたわけであります。
  68. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは防衛局長、僕は全然いまの御答弁が納得できないわけです。今回のF4EJの試改修はいわゆる開発項目ではないから重要事項には当たらない、そうおっしゃいますけれども防衛庁というところはお金に対して非常に感覚が麻痺しているんじゃないですか。一機百億もかかるような試改修は多額の金額じゃないですか、これは。十三億というのは非常に少ない金額なんですか。しかも私が一番初めに申し上げましたように、設計に二年間かかって、実際に飛ぶのが六十年ごろでしょう。それは非常に防衛庁の十年、二十年というあれからすればこれは短期間なんですか。現在のいわゆるいろんな装備やいろんな兵器の発達の度合いから言えば大変長期にわたる研究開発、試改修じゃないですか。長期にわたるものじゃないんですか、これは。金額が少ないんですか、これは。  あなた方はとにかくこの問題について何とか逃れようとしているかもしれませんけれども、そういう点から見ても、初めからこれは国防会議にきちっとかけて決定をして、量産になる前にやっぱりちゃんとやるべき問題じゃなかったんですか。もう試改修の契約も終わったわけですから、ここら辺でほんまのことを言って、そしてこれからの本当の体制をきちっとすべきじゃないですか。やっぱりここら辺のところも全然これは納得できませんよ、あなたの説明は。どうなんですか。
  69. 塩田章

    政府委員塩田章君) 金額が私は多額でないと言っているわけでもございませんし、期間も御指摘のようにかなりの年月を要するわけでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますことは、いわゆる開発項目かどうかということでございまして、その点につきまして、先ほど私が申し上げましたような意味で、これは新しい装備の開発というほどのものではないだろうということで先ほど来申し上げているわけでございまして、金額の点とか期間の点につきましては、先生の御指摘はよくわかるわけでございます。そういう点で、私が申し上げているのは開発項目かどうかということでございます。
  70. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ開発項目、そこだけがあれなんですか、金額は関係なしに。これからそれじゃ開発項目以外であれば何でもいけるということなんですか。それが一つある問題と、あなた方はF15のときに相当議論をして、この問題についてはいわゆるクリアしているからいいんじゃないかという、新聞報道でもずいぶんありますけれども、それとはやっぱり別問題じゃないですか。だから私は言うんです。この問題については、F4のときに爆撃装置を取り外した国会での議論というのがあるんじゃないですか。そういう点からいけば、それはまともにこの開発項目には当たらないかもしらぬ。しかしながら、それに類する項目として金額あるいは期間ともにきちっと長期にわたるんじゃないですか。だからやっぱりきちっとすべきじゃないですか、これ。どうなんですか。
  71. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先々から申し上げておりますとおり、また先生も御指摘のとおり、今回の問題は、F15ですでに実用しておりますセントラルコンピューター等と、これもまた従来から使用しておりますF4EJとの組み合わせでございまして、いわゆる国防会議に付議すべき新たな装備品というものを開発するということには当たらない、既存の構成品の組み合わせだということが主な内容だということでかけなかったわけでございまして、そのことについてはわれわれはいまも誤りとは思っておりませんけれども、再三申し上げておりますとおり、国会で大変な御論議があったことというきわめて大事な点の御説明が欠落をしておったということについては、われわれとしては重大な反省事項であるというふうに本当に真摯に思っておりますし、先ほども申し上げておりますとおり、これを決して口頭禅に終わらせないように必ず防衛庁の実をもってお示しをし、先生を初め皆様方の御指摘に必ずおこたえをしたいということで、目下防衛庁挙げてその体制に向かおうとしておりますので、何とぞそういう点で御理解を賜りたいと思いますし、先生の御指摘の数々につきましては、今後もわれわれの防衛政策の運営なり運用の面で一つ一つ生かさせていただきたいというふうに思いますので、くれぐれも御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  72. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いやいや、もう全然納得できませんな、全く。長官ね、それは御理解してくれ言うたって御理解できまへんな、これは。官房長官がこれは要するに防衛庁長官の権限の範囲なんだという記者会見をしたし、いまさらそれをひっくり返すことできぬわけや。防衛庁長官の発言もそれはいまさらどうしようもないということもわかります。わかりますけれども、私は今回のこの問題については、それは局長もおっしゃいました、長期にわたるという問題それから多額の金額という問題、これも軽々しくは考えてないとおっしゃる。私は、そういうような点あるいはいろんな周りの問題から考えてみても、当然こういう問題は国防会議にきちっとかけてそれで決定すべきであると、これはもう私はそういうように思っておりますし、これから何をやるにしたってそういう姿勢でなくちゃ本当の文民統制というのはできませんよ。これに答弁せいと言うたって、またこれ官房長官からもう答弁出ているわけですからいまさらひっくり返すわけにいかぬわけでしょうから、また同じ答弁でしょうから、この問題はそれでおいておきます。きょうはもう時間的な制限がありますから、いろいろほかのこともやりたいですからね。  もう一つ、試改修の問題についてどうしても納得できない問題があります。これはほんまにどないなっておるんですか。今回の統一見解、これ苦心惨たんして防衛局長つくられたんでしょうけれども、今回の統一見解の中の三番目の項目の「今回の改修は、」というところですね、これ全部読んでみますと、「今回の改修は、このような能力向上が実際可能であるかどうか代表機一機に対して試改修を行うものであり、その結果、将来所期の成果が得られれば、さらに費用対効果等を検討の上、その量産改修について国防会議に付議することになろう。」、ここまではわかりますね、これはね。「国防会議において認められれば、F−4EJに爆撃計算機能を付与することになる。しかし、その機能は」、ここからが問題ですね、これ。「その機能は最近における軍事技術の進歩等を考慮すれば、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるという誤解を生ずるおそれは、全くないものである。」と、こう書いてあるんですね、これ。これはもう本当にどこからこういう言葉が出てくるんですか、これ。他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるという誤解を生ずることが全くないなんて、そんなばかなことないでしょう。「全く」なんというのはよけいなことと違いますか、これ。やっぱりちょっと書き間違えたんじゃないですか、これ。  それで防衛局長、ソ連とかアメリカとかそういう国は軍事技術も相当発達しています。これは当然でしょう。ですから、いわゆるF4に爆撃装置をつけたからといって急激にどうということはないかもしれません。しかしながら、そのほかの近辺の諸国から見ればこれはどうなんですか。軍事技術やいろんな点から見たって、その脅威を全く感じていないかどうか、聞いたんですか、これ。そんなばかなことないでしょう。これはやっぱりそういうふうないわゆる不遜な考え方防衛庁の内局の中にあるということです。他国に脅威になるかどうか。ならないということを私たちは確信をしておると、そう信じておると、そのくらいだったらまだましやな、これ。しかしながら実際はそれは「全くないものである。」と。こんな考え方でこの今回の防衛庁の統一見解が出されているということについては、まさに私はいまの防衛庁の姿勢をあらわにしていると思う。これはどうなんですか、この点については。
  73. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 私どもは確信を持ってそういう脅威は与えるおそれはないものと思っており、そういうことでこの表現をさしていただいたわけでございまして、それだからこそそういう確信のもとに今回の試改修に踏み切らせていただいたということでございますけれども、戦力その他の数字の問題もございますので、もしあれならば防衛局長から補足をさせていただきたいと思います。
  74. 塩田章

    政府委員塩田章君) いま大臣がお答えになったような考え方のもとにこういうことを書いたわけでございますが、「最近における軍事技術の進歩等を考慮すれば、」と書いてございますのは具体的にどういうことを考えたかといいますと、たとえば四十二、三年当時の戦闘機と現在の各国の戦闘機というものの比較をした場合に、これは当然のことながらいろんな面で進歩をいたしておりますし、また各国の戦闘機が地上爆撃能力といったものもあわせ持つといった傾向も現時点ではもうほとんど一般的であると言っていいと思いますし、それからまた、一方戦闘機の攻撃を受ける方の立場から言いますと、それに対するレーダーでありますとかあるいはSAM、あるいは短SAM、こういったような対空能力といったものも当時に比べまして非常に発達をいたしております。  そういったようなことを考えあわせまして、またさらにもう一点つけ加えさせていただきますならば、現在もし他国に戦闘機でもって攻撃に行こうということになりますと、当然いわゆる地形追随装置といった装置がなくてはなかなか困難であると言われております。つまり、ロー・ローで攻撃してハイで帰ってくるというような形をとりますので、当然に地形追随装置といったようなものがないとなかなか実際問題としてよその国に攻撃に行くということはむずかしいというふうに言われておりますが、そういったものももちろんわが国の今度のF4についておるわけではございませんし、そういったようなことも考え合わせますと、ここにありますように、最近の軍事技術の進歩等を考慮すればこういうおそれはないというふうに私ども判断をした、そういうことを表現をさしていただいたわけであります。
  75. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは局長、僕は後段議論しようと思っておりましたけれども、いわゆる軍事技術の進歩ということでその問題を片づけてしまえるかどうか。これはやっぱり重要な問題だと私は思うんですよ。日本にあるいろんな装備を軍事技術がどんどんどんどん進歩しているから試改修なり何なりしていいと、そういうことにはならないでしょう。実際問題として軍事技術の進歩なんていうものはきわめてあいまいな基準ですね。このあいまいな基準で装備をどんどんどんどん開発強化していく。よその国の脅威にならないから、それで国防会議にもどこにもかけないでやっちゃう。そういうことにだんだんだんだんエスカレートしていくじゃないですか。ですから、私はこういうふうないま防衛局長の発想のとおりだと、相手がだんだんだんだん強化されると自分のところも同じようにどんどん強化していく。相手の軍事技術がどんどん進めばうちの方もどんどん進めていく、当然のことでしょう。しかしながら、だからといって日本のそういう技術を国防会議にもどこにも諮らないでどんどん改善していっていいということにはならないでしょう、それが一つ。  それからもう一つは、先ほどの他国に脅威という問題ですけれども、一体「他国」というのはどこを見て他国と言っているんですか。そういうふうな意味から言えば、やっぱり私はこういうふうな防衛庁長官の発言にいたしましても、いわゆる他国に攻撃的脅威を与えるという、その脅威を与えるという誤解を生ずるおそれは全くないということはない。日本がそういうものをどんどんどんどん装備を強化して近代化していけばいくほど、やっぱりそういう国はみんなそれなりに脅威に感じているわけです。全くないかどうかというのは、これは相当その国の主観にもよりますからわかりませんよ。やっぱりこういうふうな考え方というのは、防衛庁としてはもう少し考え方を何というか、こういう今回の統一見解の中で試改修するということを正当化するために一生懸命書いたんでしょうけれども、やっぱりちょっと先走り過ぎているんじゃないか、そういう感じがするんですけれども、その両点あわせて。
  76. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) もちろん、私が出しました統一見解の上には当然憲法があり、また非核三原則というものがあり、また専守防衛という防衛政策の基本がございまして、その中でのこういう統一見解でもございますし、また反面、軍事技術の進歩というものはまたこれ当然防衛政策を考える場合においては入れなければならない基本的な要件でもございまして、そのバランスをとるというところに今回のこういう見解が生まれたわけでございまして、決して先生指摘のようなこういうことで歯どめのないようなことにはならないものと、またそうしてはならないものと、そしてそのことがまた私ども政治家として果たしていかなければならないシビリアンコントロールであろうというふうにも考えておるわけでございます。
  77. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣のお考えはそれはそうかもしれませんけれども、憲法があり、非核三原則がありと、当然それはわかるわけです、その話は。だけれども、今回の試改修に絡んでこういうふうな統一見解の中身を見てみなさい。やっぱり他国に侵略的、攻撃的脅威を与えないようにわれわれとしては十分配慮すると、そしてそういうようなものはないと信じておると、そうでないといかぬのと違いますか。そうじゃないですか。要するに「生ずるおそれは、全くない」なんということは、そんなこと言えるのですか、大体そんなことが。「他国」というのは一体どこを考えて言っているのですか。これは余りあれこれ言ったって仕方ありませんから、あともう少ししか時間なくなってきましたのでほかの問題に入りますけれども、これは局長、「他国」なんて何を考えているのですか。それだけ一遍聞いておきましょう。
  78. 塩田章

    政府委員塩田章君) 文字どおり他国でございまして、日本以外の国ということでございます。
  79. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは、そんな答弁ないよ、大臣。日本以外の国なんて言ったって、それはそれに決まっていますわ、字は。字はそうですけれども、実際問題そうじゃないでしょう。あなたがそう言うのなら全部詰めていきますよ、「他国」とここに書いている意味の中身を。世界じゅう、イギリスとかヨーロッパ含むのですか。F4は飛んで行けないから含まないでしょう。F4が飛んで行ける中身になっちゃうのじゃないですか、そんなことを言うと「他国」なんというのは。当然どこら辺の国々というのはわかってくるのじゃないですか。まじめに本気で答えなさいよ、そんなことは。
  80. 塩田章

    政府委員塩田章君) 御指摘のとおりでございまして、実際、現実の問題としてはF4EJの飛んで行ける範囲ということになるわけでございますが、具体的にどの国とどの国というふうに具体的な名前を挙げてここでお答えをすることが果たして適当かどうかということで、それを避けさしていただいているわけでございますので、その点を御理解賜りたいと思います。
  81. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は、これは防衛庁長官、やっぱり相当いろんな問題を残しています。したがって、これは機会あるごとに委員会でやらなくちゃならない。宿題を大分残しましたから、防衛庁の対応もありましょうから、それはそれで今後やりたいと思います。  次に、これは装備局の問題でありますが、日米防衛技術協力の問題であります。昨年の暮れ、私は和田装備局長質問をいたしましたが、これは一体どうなっておるのですか。これは実際問題、今回の先ほどワインバーガー長官との話についてもお話ございましたが、これは当然、その軍事技術の協力問題につきましては年明け早々にある程度結論を出さなくちゃならないというふうな意味の発言もあったわけであります。ところが、いまだにその問題について答弁が出ていませんし、どうなるのかわからない。これ、先日の総理とワインバーガーさんの会談の中では、総理はいま検討中で前向きにというふうな意味の回答があったと、そういうような新聞報道があります。  しかし、これは実際問題として私は、当然国会が終わってからイエスという返事をすると、そういう意向じゃないかと勘ぐっているわけですけれども、和田装備局長、これはわが国のいわゆる武器輸出に関する三原則とかあるいは三木内閣時代に表明した武器輸出自制のためのわが国基本政策、これはきちっと決まっているわけですし、そういうようなものはすべて国会の場で明らかにされてきたわけですね。そういうような経緯からいきますと、私は今回のこの問題についても国会の場でやっぱり明らかにされた方がいいんじゃないか、こう思っているわけです。  ところが、どうも最近の新聞報道等あるいは国会の動き等を見ておりますと、今度の国会が終わってからこの問題について結論を出すと、そういうふうな動きがあるやに聞いておるわけです。そんなことじゃやっぱり困る。こういう問題は昨年から相当議論をしてまいりましたし、衆参の予算委員会でも問題になったことでもあります。当然私は今国会中にこの問題についてきちっと結論を出すべきではないか、こう思うんですが、どうですか。
  82. 和田裕

    政府委員(和田裕君) いま御指摘のありました問題につきましては、前から申し上げておりますように、現在関係省庁等の間で引き続き検討をしているところでございます。まだ結論は出ておりません。いま今国会中にということでございますが、私どもとしては鋭意検討しておりまして、できればなるべく早く出したいものだということでございます。
  83. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長、もう結論は出ておるんでしょう。
  84. 和田裕

    政府委員(和田裕君) いま御指摘ございましたように、本件につきましては国会におきましても何度も取り上げられていろいろ発展してきた過程がございます。五十一年二月二十七日には武器輸出に関します政府の統一方針というのができておりますし、また昨年の国会におきまして、特に予算委員会を中心にいたしまして、これにつきまして国会決議というものが成立をしたことを私どもよく承知しております。そういったことでございますので、本問題につきましては非常に幅広い見地からいろんな場合も想定しながら考えなきゃいかぬということでございまして、そういったことのために若干時間がかかっておりますが、いま現在、目下鋭意検討している、こういう状況でございます。
  85. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大分前から鋭意検討しているとおっしゃっていますね。これはやっぱり目標はいろいろ私はあると思いますけれども、国会会期中に結論を出すと、結論を出せとは言われてないんですか。
  86. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 特にいつまでにとかいうことで御指示を受けているというような事実はございません。ただ一点、先生いま国会で非常に問題になっていることでもあるので国会との関係について十分配慮しろという御指摘でございましたので、そういった点につきましては関係省庁にも申し上げまして十分留意していきたい、そういうふうに考えております。
  87. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは防衛庁長官にも申し上げておきますが、やっぱりこういう問題は、案外いままでの経過からしまして、国会が終わった時点でぽんと発表になるんですよ。これは総理がどうしようああしようともう大体決めておるわけですよ、これね。それでその責任を装備局長に全部押しつけたんじゃかわいそうですわ、実際問題。ですから長官、こういうような問題は非常に重要な問題でもありますし、日本の将来の問題でもあります。そういうような点からいきますと、ぜひ国会の会期中に結論を出す、ある程度の方向を決める、そういうふうにすべきが筋だと私は思うんですが、どうですか。
  88. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 装備局長からお答えを申し上げましたとおりのような事情でいま鋭意やっているわけでございますし、また防衛庁だけでございませんで、通産省、外務省、三省庁間での検討事項でもございますので、私独断でということは申し上げられませんけれども、御趣旨の点は御指摘をいただくまでもなしに、また装備局長もそれなりの御答弁を申し上げましたとおり、そういう配意というものは当然あってしかるべきものと私は考えております。
  89. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはぜひそうしていただきたいと思います。  次に、これは先ほど堀江先生が御質問になりましたのですが、伊藤・ワインバーガー会談とシーレーンの問題ですね。これをちょっと一遍いろいろとお伺いをしたいのでありますが、まず先ほど防衛庁長官は、ワインバーガーの要請の問題について、中身についていろいろ説明がありましたけれども一つもわかりませんね。新聞報道では案外詳しくあれこれあれこれ出ているのに、防衛庁長官の説明は、実際に会った本人から説明を聞いているのに本当にわからないというのはどういうことなんですか。新聞報道によりますと非常に詳しく出ておるんです、これね。防衛庁長官、これは実際あなた、ワインバーガーさんに会われて、もう少しやっぱり会談の中身について、ポイントだけで結構ですから、経過とかそういう中身はいい、具体的なこと。ワインバーガー長官と会って  こういうこととこういうことを言われた、それに対して私はこういうこととこういうことをこう答えたと、何というか、わかりやすく経過、周りの状況説明はいいですから、その中身のぱちっとしたところを教えていただけませんか。
  90. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) さっき堀江委員にもいろいろ申し上げましたけれども堀江委員のお時間の都合上もございまして割愛をさせていただきましたが、先生の重ねての御質疑でございますので、概略を申し上げさせていただきたいと思います。  まず、国際情勢につきましては、アメリカ側からジュネーブにおける米ソ中距離核戦力規制交渉の進展状況及び最近の米中関係を中心に一般的な説明がありまして、これに関連いたしまして私の一方から若干の質問を行いました。  それから第二点目が、日米双方の防衛努力について、まず米側から、世界の平和と安定にとって東西間の軍事バランスの維持が必要不可欠であり、日米両国はざらに努力を続ける必要があるという意見が出され、日本防衛力につきましては防空能力、対潜能力及び陸上装備の改善が重要であるとの指摘がありました。これに対して私の方からは、われわれは大綱水準をできるだけ早く達成すべく、さらにはまた防衛に対する日本国民の世論を十分勘案しながら着実に防衛努力を行っていく考えであることを申し述べました。そしてまた、それにつけ加えまして、防衛庁においていま大綱水準達成することを基本として五六中業作成作業を鋭意行っているということを御説明いたしました。  また米側からは、わが国が、先ほどから御論議になっております問題でございますけれども、従来から述べておりますわが国周辺海域における海上交通の保護について一般的な期待表明がありまして、さらに次の日米間の事務レベル協議において話を続けたいという意味の発言がございました。  また、日米防衛協力につきましては、いわゆるガイドラインに基づく研究作業日米共同訓練を今後とも推進をしていくということで意見の一致が見られ、これまたいま問題になりました防衛技術の相互交流を推進したいというアメリカ側期待に対し、当方からは、いま私もまた装備局長が申し上げたような結論のことを申し上げますとともに、その前提として、昨年の六月大村前長官が訪米した折に明らかにしたように、相互交流の原則にのっとってこれを拡大していくことについては当方としても原則的に同意するが、わが国は武器輸出三原則等の政策があり、いま御指摘の点については政府部内で検討中である、まだ結論は出ていないということを説明をいたしました。  概略以上でございます。
  91. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長も同席されたんですか。
  92. 塩田章

    政府委員塩田章君) 同席いたしました。
  93. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ局長にお伺いしますけれども、いわゆるシーレーンの問題、そのほかのことは別の機会にやるとして、そこにしぼってお伺いしますが、要するにシーレーンの問題についてはワインバーガーさんはどうおっしゃったんですか。
  94. 塩田章

    政府委員塩田章君) いま大臣からお答えいたしましたように、海上交通の保護の問題につきまして一般的な期待表明があったわけでございます。日本がかねてから言っておりますわが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にあっては一千海里ということについて、日本がかねてから海上交通の保護について防衛力整備をいたしたいということを言っておるわけでございますが、それについて、そういうふうに実現できるようにアメリカ側から期待表明されたわけであります。
  95. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 海上輸送路防衛ですね、これは要するに防衛庁考えているいわゆるシーレーン防衛構想というもの、先ほどから局長が何回も説明しておられますね、それとワインバーガーさんが考えているシーレーン防衛構想というのはちょっと違うんじゃないですか。違うと新聞には報道されていますね。  しかも実際問題として、このワインバーガーさんの発言というのは、先ほどもお話ございましたように、あのアメリカでのプレスクラブにおける総理の発言は、先ほど、従来の政府考え方総理が述べただけだと、あなたはそうおっしゃいましたけれども、少なくともシーレーン一千海里の防衛という問題については、その中身は違うかもわかりませんが、総理も発言しているわけですね。ですから総理の発言であることについては間違いないわけですよ。その総理の発言について、これはワインバーガーさんは総理の公約と受け取っておるでしょう。それと同時に、その前のあの日米共同声明の中のいわゆる日米役割り分担という問題と両方を絡み合わせると、当然シーレーン防衛構想という問題が日米間のこれから重要なテーマになってくることはもう間違いないわけでしょう。これはどうなんですか。
  96. 塩田章

    政府委員塩田章君) アメリカ側は、そういった点について今回の会談を通じまして大きな期待を持っていることは明らかになりました。したがいまして、そういう意味では、今後この問題が日米間のわれわれのいろんな段階での話し合いの中で中心的なテーマになるだろうということは考えられますけれども基本的に私どもが言っておる防衛力整備目標周辺数百海里、航路帯を設ける場合にあっては一千海里といったことについて日米理解の食い違いがあるというふうには私どもは受け取っておりません。
  97. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、その周辺数百海里、航路帯一千海里。その航路帯というのは、あなたはどういう航路帯考えているわけですか。
  98. 塩田章

    政府委員塩田章君) これもしばしばお答えをいたしておるわけでございますが、具体的に地図であらわせるような意味での航路帯が存在するわけではございませんで、そのときの状況に応じてわが方の海上防衛作戦というものを勘案いたしまして、船舶の護衛ができるような実際上、要するに船はここを通れ、通るのが安全だというような意味の航路帯、あるいはまた船団護衛を組んでいく場合には、その船団護衛を組んで通る航路帯というものが実際には考えられますけれども、いわゆる南西航路、南東航路、二つの航路帯考えられるというふうに一般的に言われておりまして、私どもも一般論としては大体そういう考え方でよろしいんじゃないかと。実際のあらわれ方は多少の変化はあると思いますけれども、一般的に申せばそういうことでよろしいんじゃないかというふうに考えております。
  99. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 要するに防衛庁考えている、日本考えているいわゆるシーレーン一千海里というのは、線で考えているわけですな、言うたら。
  100. 塩田章

    政府委員塩田章君) 航路帯というのは、言葉は帯でございますけれども、線でもなく帯という意味でもなく、まあ帯というのもどういう意味で使うかにもよりますけれども、かなりの幅のある概念でございまして、いずれにしましても陸上で言うところのハイウエーみたいなものが海上にあるわけじゃございませんので、そういう意味で非常に狭い線でありますとかあるいは狭い意味での帯でありますとか、そういう概念では律しられない方がいいんじゃないかというふうに思います。
  101. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 要するに、その防衛庁シーレーン航路帯というのは一体何を考えているの、結局。私は、新聞やいろんな報道等を見て、いわゆる千海里の違いというのはどこにあるかということでいろいろ考えてみたんですけれども、いまおっしゃいましたように、要するに帯じゃないにしても、いま船がやってくる、日本の船が石油なりなんなり積んでくる。それを日本自衛隊が守る。それは一千海里まで行けるようにしたいというあれなんでしょう。そうすると、船がやってくる道を——道というか、船が安全に航行できるように日本自衛隊がそれを守ると、そういうことなんでしょう。  要するに、いまおっしゃいましたように南西航路、南東航路、二つの航路があるわけですね。アメリカのワインバーガーさんが言うているのは、これは全体の面を言っているんじゃないですか、これ。両方挟まれた全体の海域を言っているんじゃないですか、これ。それはそうであるかどうかわかりません、私も。きょうは時間ありませんね。これで時間ありませんからほかのことはできませんしあれですが、議論する時間がなくなってきましたが、そこら辺の食い違いがあるんじゃないか。あなた食い違いはないないと言っていますけれども総理はそういう詳しい説明、詳しい中身なしでいわゆる航路帯一千海里なんてプレスクラブで説明をすると、あなたはわかっていてもほかの人は全然わからぬわけや。全部一千海里と思いますがな、やっぱり。ですから、そこら辺の認識の食い違いというのがあるんじゃないかということを私は思うわけです。それはどうなんですか。
  102. 塩田章

    政府委員塩田章君) いま御指摘の、われわれとしては二本の航路帯考える、それに対してワインバーガーさんの方は面として受け取っておるんじゃないかという点につきましては、私はそういう意味の食い違いはないというふうに理解いたしております。
  103. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その食い違いはないというのはどういうことなんですか。ワインバーガーさんも航路帯として受け取っておるということなんですか。
  104. 塩田章

    政府委員塩田章君) 私どもの申しておることを十分理解をしておられると思います。そういうことでございます。
  105. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、逆に言えば、先ほど私は航路帯というのを帯あるいは線と言いましたら、そうじゃないとあなたはおっしゃいましたが、帯の幅というのはどのぐらいを考えているの。その航路帯の幅というのか、それはどのくらいを考えているんですか。
  106. 塩田章

    政府委員塩田章君) この航路帯の幅は一体幾らかということにつきましても過去にいろんな議論があった経緯がございますけれども、現在の対潜水艦作戦というものを考えました場合に、具体的にこの幅は何マイルであるというふうにはとても言える性格のものではないと思っております。要するに、現在日本の船舶が外国から日本に向かってきます場合に、あるいは日本から出ていきます場合もそうですが、現在はもちろんのこといろんな勝手な航路を通っておるわけでございますが、それを有事の場合には大体南西航路帯あるいは南東航路帯という二本の線に大体しぼろうというような意味でございまして、具体的に線があるわけでもないし帯があるわけでもない、実際にはそこで海上自衛隊の護衛作戦がその時点でどういうふうに行われるかということにもよると思います。  この間もほかの委員会お答えしたわけですが、実際の作戦としましては、船団を組んで、いわゆる昔流のコンボイシステムで護衛する場合もあります。それからいわゆる面を——面といいましても広い意味の面ではございませんけれども、いわゆる航路帯といいましても、個々の船を、船自体は独航させておきまして、海上自衛隊の艦艇あるいは航空機がその辺を、その前後を対潜作戦をいたしましてクリアにしていく。クリアにしていって船舶は独航していくというような間接護衛のやり方もあります。そういうようなことでございますから、具体的に何か帯みたいなものがあって、そこを通りなさいというような意味で考えておるわけではございませんから、そういう意味合いからいきましても、その幅が何マイルであるとかというふうに限定してお答えすることは困難でございます。
  107. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。  そうすると、グアム以西の南東航路あるいはフィリピン以北の南西航路の間に囲まれた海域については、いわゆる航路帯の中に入るわけですから、どこでも命令があれば行ける、守れるような態勢を組まなくてはいけないということになると、結局これはアメリカ要請しているのと同じになっちゃいますね。先ほど同僚議員質問で、航路帯というのがわれわれ聞いていまして本当にわずかな線みたいに見えましたけれども、結局あなたの答弁をずっと詰めていきますと、アメリカ要請と全く同じですな、これ。面ですな、結局。どこの面でもどこでも、いわゆる日本の船が通るところは行って護衛できるということになりますな。
  108. 塩田章

    政府委員塩田章君) 実際問題として、わが方の海上自衛隊がどれだけの——先ほど言いました間接護衛の例でいきますと、間接護衛をするためのクリアにしていくエリアの面積ですね、どこまでできるかという問題がありまして、そのときの相手方の潜水艦の出没いたします情報とかいろんなことを考えながら、ここの付近を通っていくことが安全だということで、仮に独航させるにしましても安全な区域をリードしていくということになろうと思います。したがいまして、先生のおっしゃいますように、のべつに日本航路帯の間は全部対象になるんだと、こう言われましても、実際問題としてそんなこともまたむずかしいわけでございまして、やはり帯ではないにしてもおのずから南東航路、南西航路というものがやっぱり概念的にはあるとお考えいただいてもいいんじゃないかと思います。
  109. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、能力は別にして、あなた方がさっきから何回も言っている周辺数百海里、航路帯一千海里の中身は、できるできないは別にして、わが国自衛隊日本のいろんな石油が来る船とかいろいろなものを護衛するというその範囲を言っていると。能力は別ですよ。そういうことになりますね。
  110. 塩田章

    政府委員塩田章君) 結局もう無数の、たくさんの船が通るのを、勝手に通ったのではとてもできませんので、おのずから南東航路、南西航路と通常言われておりますような航路の付近を通ってもらって、その付近をクリアにしていくということしかないだろうと思います。
  111. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、この問題等含めまして相当いろいろ問題があります。次の機会にこの続きはやらしていただきたいと思います。
  112. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 防衛庁長官防衛局長に御注意しておきたいんですけれども、さきに堀江君の質疑またいま峯山君の質疑、その中において、堀江君の質疑に対しては外交慣例上秘密は秘密だというようなことで、黙して語らずとは言いませんけれども、ある程度制約しておったと。後の場合には聞き方上手かどうかわかりませんけれども、答えられている。そういうふうな点では、大変委員長の立場として困惑をいたしますので、ひとつ答弁はできるだけ皆さん方に明確にお答え願うというような姿勢をとっていただきたいということを要請しておきます。
  113. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいま委員長の御注意もございましたけれども、いままでの質疑を聞いておりますと、何をおもんぱかってか、防衛庁の答弁はいわば逃げの姿勢、たてまえの姿勢に終始しておられるように受けとめられます。私はそうした姿勢というものが、安全保障に対する国民合意の形成というものを妨げていることを憂うるわけでございます。以下の質問について率直簡明にお答えをいただきたい。まず冒頭、お願いをいたしておきます。  そこで、海上自衛隊を初めアメリカ、豪州、カナダ、ニュージーランドの海上部隊と航空部隊が参加する環太平洋合同演習、いわゆるリムパック82が今月二十三日から約五週間にわたってハワイ周辺の中部太平洋を中心に展開されているわけでございますが、それに参加しておる五ヵ国の艦船、航空機及び兵員、さらにそのうち海上自衛隊として参加している艦船、航空機、兵員についてまず明らかにしていただきたい。
  114. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 参加各国の艦船、航空機の数を申し上げます。  海上自衛隊が艦艇が三隻、航空機が八機でございます。それからアメリカが艦艇が四十七隻、航空機が約百機——細かい数字はちょっとわかりませんですが約百機。それからカナダが艦艇三隻、航空機が四機。オーストラリアが艦艇六隻、航空機十機。ニュージーランドが艦艇一隻、航空機二機。以上が艦艇、航空機の数でありまして、人員の方はこれは実は五ヵ国の総数しかわかっておりませんで、細かい内訳がまだアメリカから通知がありませんので、人員は全部で二万九千人以上ということで、約三万というふうに考えております。それからわが海上自衛隊の場合は人員は九百四十人でありまして、艦艇に八百三十、航空機部隊に百十名。  以上でございます。
  115. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、その演習全体の想定シナリオ及び訓練内容について明らかにしていただきたい。
  116. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) まず訓練内容から申し上げますと、これは前回のリムパックの場合も同様でございますが、海上戦闘の主な項目といいますか、それを網羅的に挙げてあります。一つは水上打撃戦訓練、これは艦艇同士の戦いと、簡単に言えばそういうことになります。それから二つ目が対潜水艦捜索攻撃訓練、三つ目が防空戦訓練、四つ目が電子戦訓練、それから五つ目に敵対関係にある緊張状態の中での移動する訓練、以上のようなものが主な訓練であります。そのほかに、洋上で補給を受ける訓練なども入っております。  そこで、次は想定シナリオと申しますか、その点でございますが、以上申し上げましたような各種の訓練を効果的に行うために必要なシナリオを第三艦隊の方で用意して、これに基づいてやるということになっております。  以上、申し上げましたような各種の訓練からおわかりのとおり、かなり各個訓練といいましょうか、いろんな種目についてやりますので、それぞれが円滑に訓練ができるというと、たとえば対潜水艦訓練であれば何隻ぐらいの潜水艦がどういう方向から攻撃してくるとか、あるいは防空戦であれば何機ぐらいの航空機がどっちの方向から襲ってくるとか、そういう訓練に必要な想定がつくられているわけでございます。  ただ、それらは以上申し上げたことからおわかりのとおり、いわば戦術的な想定でございまして、いわゆる戦略的な想定——ある特定の国を共同して守るとか、特定の海域を分担して守るとか、その種の戦略的想定はございません。さっき申し上げた各個の訓練に必要な戦術的な想定、これがつくられておるわけでございます。
  117. 柄谷道一

    柄谷道一君 戦術的想定はあっても戦略的想定はないという答弁でございますが、防衛庁長官にお伺いしますが、リムパックには今後も定期的に参加を続けるお気持ちでございますか。
  118. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) ただいま政府委員から答弁をいたしましたように、リムパックはわが自衛隊の戦術技量の向上に大変有益な訓練でもございますし、教育訓練の充実強化に役立つものと考えておりますので、今後もリムパックが実施される場合には事情の許す限り参加をしたいと考えております。
  119. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、昭和五十四年十二月十一日に政府は初めてリムパックに参加するに当たっての方針を打ち出しております。その後これを中心に国会でいろいろ質疑が行われておりますが、これを総括いたしますと、一つは米韓合同演習、いわゆるチームスピリットのような具体的に敵を想定したりわが国の専守防衛を逸脱する演習には法的に参加できない。第二には、リムパックに参加しても米国以外の艦隊と共同行動をとる場面はない。第三に、防衛庁設置法五条二十一項による所掌事務遂行のため必要な教育訓練に限定した行為である。しかもそのような訓練でも相手国は自由主義国に限られ、共産主義国や紛争当事国、分裂国家は選ばないというのがおおむねその当時の基本方針であったと承知いたしております。その方針は今日も変わっていないということが言えますか。
  120. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 以上のような、また先生お話しのような基本的な考え方は現在も変わっておりません。
  121. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、そういう政府の見解の根拠にあるのは、集団的自衛権が憲法上許されないということを前提にしての解釈であろうと思います。そこで、それを前提とするこの基本方針は単なる政府方針でございますか。
  122. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 自衛隊が訓練を行う場合に、憲法以下の法令に準拠したものであること、それからわが政府基本的な政策の範囲内で行われるということは当然のことでありまして、従来それでやってきたわけでございます。わが政府の憲法解釈によれば集団的自衛権は行使しないということになっておりますから、その範囲内でリムパックにも参加してきたというわけでございます。
  123. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは法制局に法的根拠を御説明願いたい。
  124. 味村治

    政府委員(味村治君) ただいま御指摘のように、政府は従来から一貫いたしまして集団的自衛権の行使は憲法上許されないというふうにお答えいたしております。その理由につきましてもたびたびお答えをいたしておりますが、申し上げますと次のような理由によるものでございます。  すなわち、憲法第九条の解釈といたしまして、憲法第九条はわが国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることは禁止していないというふうに解されるわけでございますが、それは無制限に許されるわけではございませんで、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるというような急迫不正の事態に対処して、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて認められるものでございまして、またそのような措置は、このような事態を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものと考えられるのであります。  したがいまして、他国に加えられました武力攻撃を実力をもって阻止すると、これが集団的自衛権の内容でございますが、そういった集団的自衛権の行使は憲法上許されないというように解しているわけでございます。
  125. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、さらに法制局にお伺いいたしますが、日米安保条約は、その前文の中において「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」云々と、こう明記されているわけでございます。この安全保障条約の前文からすれば、わが国にも個別的自衛権とともに集団的自衛権というものが存在するということを日米両国で確認したということとなるわけでございますが、これと集団安全保障との関連について明確にしていただきたい。
  126. 味村治

    政府委員(味村治君) 御指摘のように、日米安保条約にそのように前文でうたっているわけでございますが、わが国は主権国家であり、独立国家でございます以上、国際法上国連憲章の五十一条に規定しております集団的自衛権を有しているということは当然のことであるというふうに考えております。日米安保条約の前文は、その当然のことを規定したものであるというふうに考えておる次第でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、わが国は憲法上集団的自衛権を行使することは許されないと、このように考えている次第でございます。
  127. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいま御答弁がございましたように、国連憲章五十一条は、国家が個別的または集団的自衛の権利を有するということをうたっております。したがって、国連の普遍的集団安全保障措置に対する協力は、いわば加盟国の義務となるわけでございます。  そこで、日本は国連に対して附帯条件つき加盟はいたしておりません。いわば無条件加盟をしておるわけでございます。したがって、この点について国連無条件加盟と集団自衛の権利の関連についてさらにお伺いをいたします。
  128. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 国連憲章上認められております集団的自衛権の権利は、わが国が国連憲章に入っている、加盟していることによって当然認められているわけでございますので、これはわが国が条件を付する付さないという、もちろんわが国は条件を付さないで加盟しておりますけれども、当然わが国にとって認められている権利であるというふうに理解しております。
  129. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛庁長官にお伺いいたしますけれども、これ一般論でございますけれども、この安全保障措置というものは重層化し、その協力関係を拡大することによって効果が増大すると、これはもう当然のことであろうと思うのでございます。その意味で、現在集団安全保障体制をとっていないアメリカ以外の諸国との協力関係というものが、今後緊迫した国際情勢の中で当然検討の素材に上がってくると思われます。特にアジアの近隣諸国、欧米の自由主義諸国との間における今後の協力関係というものについてどうお考えになっているのか、お伺いします。
  130. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) わが国の平和と安全を守るためには、世界全体が平和で安全であることが望ましいわけでございまして、そのためのことはわれわれは念頭に置かなければなりませんけれども、集団的自衛権の行使に当たるようなことはわれわれとしてはできないわけでございます。
  131. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、さらにこれ外務省にお伺いしますけれども、国連に対するすべての加盟国は、国連憲章四条に規定されている加盟条件、すなわち国際連合憲章に掲げる義務を受諾し、それを履行する能力と意思のある平和愛好国であるというこの条件が満たされなければならない。これは当然のことであると思うんです。しかも、こうした原則に基づきまして、今日まで国際連合は、臨時的措置として国際連合緊急軍ないしは監視軍、もしくは監視団という名称の兵力を各国の兵力によって編成して紛争地域に派遣し、これによって平和を維持するという方針をとってまいりました。この兵力提供というものはもちろん強制されるものではありませんけれども、よほどの理由がなければ当然加盟国の義務としてこれを拒否し得ないものだと思いますし、今日まで日本が、たとえばレバノン等に対して要請を拒否してきたということが外国に対していい印象を与えていないということもまた否定できない事実であろうと思うのでございます。  そこで、私は基本的には、この問題については兵力提供免除の附帯条件を国連によって承認されるか、これは一つの方法ですね。もしくは憲法の許容範囲内において専守防衛という立場に立って国際的に協力をするという視点に立ってこの要請を受諾するか、選択は二つしかないのではなかろうか、こう思うわけでございます。過去の問題は問いません。今後の新たな国連からの要請に対して政府としてはどういう方針を持って対応しようとしておられるのか、お伺いします。
  132. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのございました点につきましては、まず国連憲章上は、その第四十三条におきまして、加盟国が安全保障理事会から要請されることあるべき協力の態様といたしまして、兵力、援助、便益の提供ということが定められているのでございます。つまり、兵力の提供のみならずその他の協力の形もあり得るということが憲章上定められているのでございます。  他方、現実の問題といたしましては、国連憲章が当初意図いたしましたいわゆる集団防衛体制というものは機能いたしておりません。これは御承知のとおり、安全保障理事会において拒否権の行使ということがございまして、平和維持についての国連の機能というものが所期の目的どおりに機能いたしてない。  そこで、まさに委員がお述べになられた点だと思うのでございますが、安全保障理事会の決議または総会の決議によりまして、監視軍あるいは監視団の派遣ということが国連のもとに行われているのでございます。この場合に、そういった監視団に兵力を出す点につきましては、加盟国の自発的な協力ということによって行われている。言いかえれば、自分の国からこの程度の兵力を出す用意がありますということが前提となりまして監視団が編成されているということでございます。  したがいまして、お尋ねのございましたようなわが国の選択という問題は必ずしも起きないわけでございまして、わが国といたしましては、国連のこのような世界の平和の安全と安定を維持するための機能、これを重視しております。そこで、わが国の憲法あるいは法令の許す範囲内における最大限の協力をいたすということで、具体的には財政上の貢献と、これを考えておりますし、また従来それを実施してまいっておるということでございます。
  133. 柄谷道一

    柄谷道一君 確かに、いま答弁がありましたように、臨時的な緊急軍、監視軍などへの兵力提供というものは国際道義というものに頼るわけでございますから、強制力を持っていない。したがって、わが国が相応の異なった協力を行う、それはそのとおりでございましょう。しかし、本来は国連憲章第四十三条に基づく国際連合軍の派遣によって軍事的な安全保障をとるというのが究極の目標になっておるわけですね。事態はそこまでいっておりませんが、これは仮定の問題でございますけれども、その場合には国際連合に対して兵力を提供することが私は義務づけられていると、こう解釈しておるわけでございます。したがって、そういう要請があった場合、これを拒否するということになりますならば、義務不履行として国連加盟の資格を失うことにもなりかねないのではないか、こう思います。  私は、このような場合日本がとるべき選択は、端的に言いまして、国連憲章が改正されれば別でございますけれども、現行憲章によりますならば、兵力を加盟国の義務として提供するか、もしくは国際連合から離脱するという以外に選択の道はなくなるのではないか、こう思えるのでございますが、いかがでございましょう。
  134. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  先ほども若干触れさしていただいたのでございますが、四十三条で規定しておりますのは、兵力、援助、便益、こういったことについての加盟国の協力ということでございまして、それを受けまして憲章上では加盟国と国連の安全保障理事会との間で具体的に協定を結ぶ、どのような協力体制をするのか、より具体的には兵力でもって協力をするのか、あるいはその他の経済的な、あるいは補給線上の問題——ロジスティックスの問題その他いろいろ便益等がございましょうが、兵力以外の形で協力をするのかといったことも含む協定を取り交わすことによって協力の形が決まってくるという立て方になっているわけでございますので、兵力の提供ができないということによって直ちに国連憲章の定めるところに応ずることができないというわけではございませんので、その点先ほど私の御説明が必ずしも明確でなかったかと思うのでございますが、そのように憲章上なっておりますことを御説明さしていただきたいと思います。  したがいまして、わが国としましては、お尋ねのございましたような選択に迫られる、つまり憲章に沿って国連にとどまる場合には、わが方として何か基本的な方針の変更が必要ではないのか、あるいはまた、そういうことができないときには国連から離脱しなければならないのではないかという点、そういった選択には迫られるものではないと、かように解しております。
  135. 柄谷道一

    柄谷道一君 私、与えられた時間が少ないものですからひとつこれは宿題にしておきたいと思うのですが、私は、臨時的な監視軍への派遣、これは強制力はないですからいろいろの対応がある、これはわかるんですね。私の設問いたしましたのは常設国連軍——これはまだないですね、しかし国連のたてまえからすると、究極には常設の国連軍をもって世界の安全を保障していこうというところに遠大な目標を置いているということは事実でございますね。その場合に兵力提供の義務を加盟国として拒否し得るのかどうか、この点についてはただいまの答弁では必ずしも定かではないと、こう思うのでございます。その場合でも日本として拒否ができるということと国連への無条件加盟との関連について、これは日本の国策上重要な問題でございますので、私はきょうは要求しませんけれども、ひとつ統一した政府の見解を報告で結構ですからお示しをいただきたい。このことによって国民の疑義というものを解明してまいりたいと、こう思いますので、この点は要求しますが、よろしゅうございますか。
  136. 門田省三

    政府委員(門田省三君) 承りました。そのようにさしていただきます。
  137. 柄谷道一

    柄谷道一君 では、次の問題に移りますが、三月一日から始まりましたアメリカ下院の外交委員会東アジア・太平洋問題小委員会における対日問題公聴会の中で、ウエスト国防次官補が次のように述べております。日米安保条約は一九八一年五月の鈴木・レーガン共同声明で再生された。従って安保改定の必要はない。さらに両国首脳は適切な役割り分担の必要を認め、鈴木総理は憲法の範囲内で日本の領土、周辺海空域及び千海里以内のシーレーン防衛をなし得ると述べた。こう陳述したと報ぜられておりますが、このアメリカ側の認識に対して日本の認識には断層はございませんか。
  138. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 御指摘のウエスト次官補の発言が意味しておりますのは、昨年五月の日米首脳会談における共同声明において、鈴木総理とレーガン大統領が、日本防衛並びに極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間において適切な役割りの分担が望ましいことを認めるとともに、鈴木総理は、日本は自主的にかつ憲法及び基本的な防衛政策に従って日本の領域及び周辺海空域における防衛力を改善し、並びに在日米軍の財政的負担をさらに軽減するためなお一層の努力を行うよう努める旨述べ、さらに総理ナショナル・プレスクラブにおいて、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度海域における海上交通の保護を行うことができることを目標として自衛の範囲内において海上防衛力整備しているという旨の説明を行ったということではないかと考えるわけでございます。  われわれ防衛庁といたしましても、以上のような考え方に従いまして着実な防衛力整備に努めているところでございまして、昨年の日米首脳会談を含めあらゆる機会に日米間で安全保障問題について不断の対話を重ねることは、日米安保体制信頼性の維持向上に資するものであるというふうに考えております。
  139. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、その鈴木総理の説明という中に、日本の意思として、これは海空双方を千海里シーレーン防衛については含んでいるという考えで述べられたのかどうか。
  140. 塩田章

    政府委員塩田章君) わが国周辺海域におきまして海上交通の保護を行うための対潜作戦等を行います場合に、洋上の防空ということは当然必要なことであります。このために、航空自衛隊自分の持っております戦闘機の有効な行動半径の中におきまして海上交通路につきましてもエアカバーすることは当然でございますけれども、航空自衛隊行動半径にはおのずから限度がございます。そこで、私どもといたしましては、航空自衛隊行動半径以上の洋上の防空につきましては、艦艇の防空ミサイルといったようなものを今後とも整備していく必要があるというふうに考えておりまして、そのような努力をいたしておるわけでございます。そういうような意味におきまして、いま申し上げたような意味におきまして、シーレーン海上交通の保護につきまして防空といったことも含めておるということでございます。
  141. 柄谷道一

    柄谷道一君 近代の戦闘において制空権のないシーレーン防衛というものが果たして可能かどうか、これはもう結論は明らかでございます。しかも航空自衛隊には足が限定されているわけでございます。その足が延びないところは艦艇に積載いたしました対空ミサイルをもってカバーしていきたいということでございますけれども、果たしてその程度で上空の防衛ができるのかどうかということになりますと、これもまた疑問でございます。昨日の統幕議長の記者会見内容等を見ておりますと、この千海里、二つの航路ですね、上空防衛というものを果たすためにはどうしても支援基地というもののあり方について考えなければならない。いわば新しく航路帯の中に航空機基地を設定することによって、千海里のシーレーンのいわゆる上空防衛に力を注いでいく必要があるんではなかろうかということを示唆しているんではないかと受けとめられる向きもあるわけでございます。この点についてさらにその見解をお述べいただきたい。
  142. 塩田章

    政府委員塩田章君) 御指摘の点がいわゆる南東航路あるいは南西航路といったような航路帯にあります島、それぞれのところに基地をつくるべきではないかという御指摘であるとすれば、現在私どもはいま持っております基地以外に戦闘機のための基地を持つ計画はございません。現在、硫黄島につきまして移動訓練のための建設はいたしておりますけれども、基地をつくる計画は持っておりません。
  143. 柄谷道一

    柄谷道一君 現在持っていないということはわかるんですが、それは今後とも持たないという方針ですか。
  144. 塩田章

    政府委員塩田章君) 今後そういうことを整備するかどうかということを考えておらないということでございます。
  145. 柄谷道一

    柄谷道一君 ということは、否定なんですか、白紙だということなんですか。
  146. 塩田章

    政府委員塩田章君) 現時点において白紙でございます。
  147. 柄谷道一

    柄谷道一君 白紙だということは、今後検討の俎上に上ることがあり得るというふうにとらまえていいんですか。
  148. 塩田章

    政府委員塩田章君) 俎上に上ることがあり得るかどうかということを考えたこともございませんので、現時点ではそれ以上のお答えはいたしかねます。
  149. 柄谷道一

    柄谷道一君 いろいろな問い方をしましてもそれ以上の答えが出ないということになりますと、どうもわからないまま質問を終わることにならざるを得ないわけでございますが、最後長官にお伺いいたしたいと思います。  私は新聞をよく読みまして、アメリカの下院における公聴会におけるいろいろの人々の陳述を読み取ってみました。その中で、たとえばジェラルド・カーチス・コロンビア大学教授の陳述の中には、千海里の航路帯の哨戒については日米は合意しているが、その防衛では一致していない、こう述べております。またウィリアム・ギン前在日米軍司令官は、現在の日本はいかなる形の限定された攻撃にも対処し得る能力がない。一定のソ連の攻撃に対し、三海峡封鎖、海空域防衛航路帯千海里防衛などについて独力で対処する能力を持つべきだと、こう述べております。さらに、フランシス・ウエスト国防次官補は、海空自衛隊の規模、装備は、日本政府自身が潜在的脅威と規定している八〇年代のソ連の軍事力水準から、千海里内の航路帯防衛することはできないと、このように陳述をいたしまして、一様に日本に対する千海里の海空防衛能力向上を求めていると、こう私は読み取るのでございます。  こうしたアメリカ側の一般的に公聴会の中から得られる日本への期待に対して防衛庁としてどう対処していこうとしておられるのか、いかがでしょう。
  150. 塩田章

    政府委員塩田章君) いまいろいろお名前を挙げられまして、公聴会での発言が御指摘になったわけでございますが、そういった点は私どもも承知いたしておりまして、そういった発言がありました。そういうことからもうかがえますように、アメリカ側は一般的にわが国の現在の海上自衛隊能力シーレーン防衛に不足ではないかということについて指摘をし、一般的な期待を持っているということは言えるかと思います。  それに対しましてわが方が一体どういう対応をするかということでございますが、これは従来からしばしばお答え申し上げておりますように、現在の私ども目標といたしまして、防衛計画大綱の線に一日も早く到達したいと、それがわれわれに与えられた目下の急務であるという考え方のもとに現在の作業を進めておると、こういうことでございます。
  151. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後に、防衛庁長官にお伺いしますけれどもアメリカ期待日本の対応、これがぴたり一致してないということはもう言えるわけですね。そこで、私は去る二十三日の委員会でも質問したわけでございますけれども、公聴会の内容やその他にも、ボルドリッジ国務次官補は、日米関係が向こう数年間に当面する基本的危険は、経済および防衛面での日本に対する期待の増大と、これに応ずる日本側の能力または意思との不均衡にあると。ジョンソン元駐日大使は、安全保障問題の出発点は脅威についての日米共通の認識であるべきだが、両国間にこの点で合意ができたことはない。スカラビーノ・カリフォルニア大学教授は、日本防衛について重要なのは、予算数字でなく、ソ連の脅威に対する認識と防衛上の役割であると、このように述べているわけです。  そこで私は、ソ連の脅威というものについてアメリカ期待日本の対応、これについて差があるということが彼らの述べておる危機の根源であると、こう受けとめられるわけでございますけれども、もしそうだとするならば、私は脅威というものに対する日本の認識がアメリカのそれと異なるならば、具体的な論証を挙げてアメリカ理解を求めるべきであり、もし共通の認識であるとするならば、これに対して日米間の具体的対応の調整を行うということが同盟関係を結んだ日米関係の上で最も緊要な対応でなければならぬと、こう思うんです。この点に対する長官の所見を伺いまして、質問を終わります。
  152. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 米国議会の公聴会等で御論議のありましたソ連の脅威の認識について、いわゆるソ連の一貫した軍事力の増強やこれを背景とする周辺諸国や第三世界への勢力拡張等もあり、最近の国際軍事情勢には厳しいものがあること。また極東ソ連軍の質、量両面にわたる増強等はわが国にとって潜在的脅威の増大であるというような点で日米間で認識が一致しております。基本的には一致しております。  しかしながら、その認識に対する対応でございますけれどもアメリカの方は、自由主義諸国のリーダーとして強大な軍事力を基礎にグローバルに世界の平和と安全に深く関与しその責任を果たそうとしているのに対しまして、わが国は、憲法及び基本的な防衛政策に従い、わが国自身の防衛のために必要な範囲防衛力整備しているものでございまして、その対応の違いが出てくるのはやむを得ないものでございまして、このことについてはアメリカ側理解をしているわけでございます。また、そのようにわれわれも考えております。  しかし、われわれとしては、そういう厳しい国際軍事情勢にもかんがみまして、今後とも日米安保体制を堅持しながら、その信頼性の維持の向上を図りながら、われわれの方針に従いまして防衛力整備を着実に行っていく所存でございます。
  153. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  154. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十七年度総予算中、総理府所管のうち防衛本庁防衛施設庁を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  155. 山崎昇

    ○山崎昇君 まず最初に、法制局長官に二点ほど、私自身整理をするために法律的な見解をお聞きをしておきたいと思うのですが、第一点は、防衛庁設置法の第二条によりますというと、防衛庁というのは、「国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、総理府の外局として、防衛庁を置く。」と、こうなっておりますから、言うならば国家行政組織法に言う行政機関ということになる。ところが、自衛隊法の第二条によりますというと、自衛隊の定義がございまして、この法律において、自衛隊とは、防衛庁長官及び政務次官、事務次官、参事官等々を含むものとすると。言うならば防衛庁を含んだものが自衛隊ともとれる。  そこで、この自衛隊というのは、国家行政組織法から見て一体どういうふうに私どもこれを理解をしたらいいのか。防衛庁が管理する自衛隊ではあるんですが、防衛庁は組織法上の行政機関である。自衛隊は一体それじゃ何なのだろうか。改めて国家行政組織法を見ますと、国家行政組織法の第八条では附属機関が置かれることになっている。第九条では支分部局が置かれることになっている。それにも該当しない。そして、いま申し上げましたように、自衛隊そのものは防衛庁長官以下全部含めるというかっこうになっておる。これは法律論的に、あるいは組織的に言えば、私どもどういうふうにこれを理解をしておったらいいのか。ゆうべも当時の人事局長でありました加藤さんの本も読んでみましたけれども、なかなか私自身法律的に理解ができない点がたくさんございまして、法律の最高の専門家であります法制局長官のまず見解をお聞きをしておきたい。
  156. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 防衛庁といいましても、自衛隊といいましても、ともに同一の防衛行政組織を指すものであるという点においては変わりはないと思います。ただ、御質問にありました国家行政組織法との関連ということになりますと、防衛庁は国家行政組織法上の行政機関、つまり総理府に置かれる外局として行政機関であるわけであります。それはいわば、国家行政組織法という目から見ますと、静的な一つの行政組織としてこれをとらえた場合にこれを防衛庁と言うのだと思います。それをさらに実力組織という面の、部隊行動をするという動的な面からとらえた場合にこれを自衛隊と言うことになろうかと思います。  正確に言いますと、先ほど指摘になりました自衛隊法の第二条でも、あくまで実力部隊であるという点に着目をしてとらえておりますから、防衛庁の中でも自衛隊の離職者就職審査会というようなものであるとか、あるいは防衛施設庁の総務部に置かれる調停官、労務部及び附属機関というものは除かれているわけであり、そういう意味において、実力部隊であるという面に着目していわば動的にとらえたものが自衛隊である。その関係は、防衛庁設置法の六条で、「自衛隊任務自衛隊の部隊及び機関の組織及び編成、」云々「については、自衛隊法の定めるところによる。」というふうに規定されているのだと思います。したがって、直接自衛隊というものをとらえて国家行政組織法上の何らかの位置づけとするのはなじまないのではないかと思います。そういう意味で、非常に特異な防衛行政組織であるということは言えようかと思いますが、それは最初に申し上げたように、実力部隊であるという点に着目しての特別の位置づけをしたものと考えております。
  157. 山崎昇

    ○山崎昇君 どうもやっぱり法律的な見解ではないんだね、あなたのは。加藤陽三さんも静的なとらえ方と動的なとらえ方という意味のことは言っています。しかし、少なくとも日本におきます国家行政組織というのは、国家行政組織法できちっと基本原則が決められて、それに基づいて設置をされるわけですね。したがって、第六条に言う自衛隊任務は当然法律で設定しなきゃなりませんから、法律で組織や部隊編成をつくるのはそれはあたりまえのことであって、国家行政組織法でいったらあいまいですね、これは。組織法からいったら静的だとか動的なんていうことにはならぬですね。法律論としては私は何としてもこれは納得できないですよ、正直に申し上げまして。  これは八条の附属機関でもなければ九条の支分部局でもない。防衛庁そのものは総理府の外局であることはもう間違いがありませんね。その外局が管理する自衛隊というのは何なんだ。その自隊隊には、日本は官庁理論をとっておりますから防衛庁長官以下入っちゃうですね。入って自衛隊と言う。言うならば、ある意味で言えば防衛庁より広い概念をとっている。一部の者は入りませんよ、たとえば防衛施設庁の者とか、一部の者は入りませんが、しかし、少なくとも管理する側の防衛庁長官以下、政務次官、事務次官以下入っちゃう、参事官もですね。そういう意味で言えば、自衛隊の方が法律論で言えば広い概念に私はなっているんじゃないだろうか。どう考えてみても国家行政組織法との関係で言えばあいまいな存在ではないんだろうか。  きょうはそれがメーンでありませんけれども、重ねてあなたの見解をお聞きをしておきたい。
  158. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 御指摘のように、自衛隊は国家行政組織法の八条の機関でもなければ九条の機関でもないと思います。その点は、先ほど申し上げましたように、あくまで国家行政組織法上の行政組織としてとらえた場合には防衛庁である。ただし、その実体に着目すればそれは実力部隊でありますから、その実力部隊という面から見て別途いろいろ組織なり権限なり任務なりを決めるということは、むしろ普通の行政組織とは違うという点に着目しての合理的な決め方ではないかと思います。  それから最後に、むしろ防衛庁より広いというようなことをおっしゃいましたけれども、それはそうではなくて、防衛庁自衛隊というのはむしろ原則的には全く同じ範囲のものを言い、ただ実力部隊という面に着目した場合には自衛隊の方がむしろ狭いということでありまして、防衛庁自衛隊が何か自衛隊の方が広いというふうには私ども考えておりません。
  159. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は、国家行政組織法上の法律論としてはなかなか納得がまだできませんが、これは別な機会にもう少し詰めてみたいと思います。  もう一点、きょうあなたにお聞きをしておきたいのは、衆議院の予算委員会あるいは参議院の予算委員会もそうでありましたけれども、F4の問題に端を発しまして、言うならばシビリアンコントロールとも関連あるわけですが、自衛隊法の七条にだけ「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」と、こうあります。この規定がシビリアンコントロールというものとやっぱり密接不可分の関係一つはあるのではないか。あの問題が出たときに総理大臣は、いやおれはそこまで知らなかったんだ、そういう説明がなかったんだ。これは防衛庁長官の補佐が悪かったのか説明が悪かったのかは問題の存するところだと思うんですが、こういう規定は他の行政機関にはございません。  そこで、一体自衛隊法の第七条のこの規定というのはどういう趣旨でこれが入れられたのか。またこれは、たとえば憲法の六十五条でありますとか七十二条でありますとか、あるいは内閣法の六条でありますとか、こういう法制関係とは一体どういう関係にあるのか。これも法律的な面から長官の見解をお聞きをしておきたいと思うんです。
  160. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 自衛隊法七条のそもそもの趣旨は、自衛隊の管理運営を含むいわゆる行政権というものは内閣に帰属する、これが憲法のたてまえでありますから、自衛隊に対する指揮監督権についても、最終的には内閣の首長であり内閣を代表する内閣総理大臣がこれを行使する、そういうことを明らかにしたものだと思います。その意味では内閣法六条と同趣旨に出るものと解しております。  ところで、なぜわざわざ自衛隊法についてのみ特にこのような規定を設けたかというのが御質問の趣旨だと思いますが、それはやはり自衛隊に対する文民統制というものの重要性にかんがみ、重ねてこのような規定が設けられたものであるというふうに考えております。
  161. 山崎昇

    ○山崎昇君 それも幾らか私はわかる気もするんですけれども、やっぱりぴっと落ちないものがあります。  実は先般、これは問題は違うんでありますが、自民党の古井さんの内閣総理大臣の権限をめぐります論文とか、あるいは林修三さんの論文でありますとか読んでみますというと、行政権は内閣にある、内閣総理大臣は閣議の決定に基づいて各部を指揮監督をする、これが基本であることは間違いがありませんね。そしてまた自衛隊から言うならば、防衛庁から言うならば、これは総理府の外局として設置をされる。総理府の長は内閣総理大臣であって、ただ、ただし書きで国務大臣防衛庁長官に充てて、防衛庁長官を指揮監督することになっているわけですね。そういう意味で言うならば、私は通常の行政機関とやっぱり同じ形態であって、とりわけここにこれを持ってきたというのは、いまあなたの説明以上のものが何かあるのかなあという気がするんです、これは。法制的にこういう規定を入れなければ文民統制ができないのかどうか、これも重ねてあなたの見解をお聞きをしておきたい。
  162. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 防衛庁総理府の外局でございますから、総理府の長である内閣総理大臣は、国の防衛に関する事務を分担管理する大臣として、当然その中にはいわゆる文民統制というような立場に立つ管理運営というものを権限として持っていると思います。ただ、先ほども申し上げましたように、自衛隊というものは普通の行政組織と違いまして実力組織であるわけでございます。そこで、そういう意味の普通の行政事務としてもむろん文民統制は可能だと思いますけれども、さらにそれにつけ加えて、行政権の最高の責任者である内閣総理大臣、その内閣総理大臣が簡単に言えば自衛隊の最高指揮官であると、そういう趣旨をここではっきりあらわすためにこういうような規定が設けられたのではないかと思います。その趣旨は、実は先日参議院の予算委員会で源田委員の御質問に対して私がそのような趣旨のことをお答えしたわけでございます。ただいまの御質問に対しても同じような考え方お答えができると思います。
  163. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、整理してお伺いしておきたいのは、本当の意味のシビリアンコントロールをきちっとするために、改めて自衛隊という存在が重要な存在であるだけに、内閣総理大臣の権限というものを明確に規定をしておいたんだと、そういうふうに整理しておきたいと私は思うんですが、いいですか。
  164. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 大体そういう趣旨でございます。先ほど申し上げましたように、実力部隊であるという点に着目して自衛隊法というものができておる、同じような趣旨でこの内閣総理大臣の指揮監督権というものが明記されておる、こういうことであろうと思います。
  165. 山崎昇

    ○山崎昇君 実力部隊云々はまた別な機会にやりますが、きょうはこの二点だけまず法律的にお聞きをしたわけですから、法制局長官結構です。  そこで、防衛庁長官に私はお聞きをしたいと思うんですが、きょうここに、私が最近読んだ本でございまして、主として自衛隊の制服をやっておられました方々がやめられましてから書かれたものを中心に読んで、一体制服の方々というのはどんなことを考えて普通隊務をとっておったのか、あるいはまた自衛隊に対してどういう見解をお持ちなのか、私どもよくわからぬ点もあるものですから、努めてそういうものを読みながら私自身の整理をしていきたいという意味で読んでいるわけなんですが、最近読みますというと、たとえば「自衛隊のみたソ連軍」でありますとか、あるいは「日米共同作戦」でありますとか、あるいは「自衛隊は役に立つのか」という前の統幕議長の方々が中心になった本等々を読んでみましても、専守防衛というものについてはきわめて否定的であります。こんなもので日本は守れるものではないんだ、専守防衛というのはナンセンスなんだと、軍事的にいえば戦略守勢というんだそうでありますが、ナンセンスである。政治スローガンにすぎないんだと、一口で言えば総じて大体そういう見解のようでございます。  そこで、一体防衛庁長官は、何回もいろんな質問がありまして、わが国は専守防衛に徹するんだと、こう言うんですが、あなたは専守防衛というものについてどういうお考えを持っておるのか、お聞きをしておきたい。
  166. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その際、防衛力行使の態様もあり方も自衛のための必要最小限度にとどめ、また保持する防衛力も必要最小限度のものに限られる。そういうことで、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢を言っているわけでございまして、これはわが国防衛基本的な方針となっているものでございます。われわれとしては、従来からこの専守防衛基本として防衛力整備を行っているところでございまして、これと米国との安全保障体制と相まってわが国の平和と安全を確保しようとするものでございます。
  167. 山崎昇

    ○山崎昇君 私の承知する限り、この専守防衛という言葉を使われたのは中曽根さんが長官のときの防衛白書であったと記憶をしているわけです。「わが国防衛は、専守防衛を本旨とする。」という言葉がたしか当時の言葉であったと私は記憶をしているわけです。  そこで、それ以来この専守防衛という言葉が大変議論になって今日まで来ているんですが、新たに重ねて二点ほど関連してお聞きをするんですが、この専守防衛というものを国民にわかりやすく説明をすればこういうふうになるというふうに説明した学者がおりました。それはショーウインドーのガラスみたいなものである、そのガラスを破らなければ中のものを取ることはできないんだ、だから自衛隊というのはショーウインドーのガラスと同様なんだ、専守防衛とはそういうものなんだ、こういう説明をされました。これについてあなたはどういう見解をお持ちになりますか。
  168. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 表現としては大変興味あると思いますけれども、そういうような弱いものであってはならないと思います。
  169. 山崎昇

    ○山崎昇君 いや、弱い強いではないんです。さっきあなたは、相手の攻撃があったときにそれに対して守るんです、その力も最小限です、こういう説明がありましたから、それに関連して、言うならば専守防衛というのは相手が来て初めてなるわけですから、こっちから行くわけじゃない。そういう意味ではショーウインドーのガラスと同じなんだ、破らなければ中のものを取れないんです。だから、そのガラスを防弾ガラスにするのか、厚さを増すのか、あるいは薄いものにしておくのか、これは最小限度の考え方にはいろいろあるけれども、そういう存在が自衛隊なんだという説明があるんですが、ただ弱い強いの問題ではありませんで、基本的に専守防衛というのはそういうものなのかどうか、あなたに見解をお聞きをしておきたい。
  170. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 形容詞の問題と防衛の問題を適切に比較してお答え申し上げるのはなかなかむずかしいわけですけれども、私いま申し上げましたとおり、そういうすぐ破られるようなショーウインドーのようなものではあってはならないと思います。
  171. 山崎昇

    ○山崎昇君 なかなか答えられないようですな。だから、専守防衛というのが、最近は制服の皆さんが言うように、だんだんそうではなくなってきている。むしろこちらから攻める道具になってきている、そういう危険性がこの専守防衛をめぐりまして私はあるんじゃないかという危倶をしているわけです。  もう一つあなたにお聞きをしますが、かつて西村さんが防衛庁長官をやられたときにこの専守防衛の説明をなされた。そのときに、自衛隊は内野を守るんだ、アメリカの軍隊は外野を守るんだ。日米防衛協定でアメリカは外野を守って、日本は内野を守るんだ、そういう意味で、自衛隊というのは専守防衛なんです、これが西村さんの説明であったわけです。これに対してあなたはどういう見解を持ちますか。
  172. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) これも、野球の用語と防衛の問題をこれまた正確に比較することもむずかしいわけでございますけれども、われわれの基本は、いまも申し上げましたとおり、日米安保条約というものを結んで、限定的な小規模な侵略な対しては、しかもそういうものがないことを、未然に防止をすることを考えつつ、もし侵略があったならば小規模な限定的なものに対しては独力で排除する。そしてまた、安保条約の発動によってアメリカと共同対処をするということでございまして、そういうことからそれを内野と外野というふうにきちっと分けた表現とわれわれの考え方がどうかということでは、ちょっと正確にお答えできないような気がいたします。
  173. 山崎昇

    ○山崎昇君 前任者の言葉をいろいろ使って私もあなたに大変恐縮と思うんですが、私はずっとこの問題を追ってきてみて、いろんな解説を見ながら、なるほどそういうやっぱり言い方もあるのかなというふうに考えてきているわけなんですが、もう一つ、これは中曽根さんが防衛庁長官のときに三島由紀夫さんと対談をしまして、そのときに予算編成の三原則というのをつくっておるわけなんですが、そのときに彼は「自衛官の人間尊重ということが一番重要である。自衛官である前に人間であり、国民であり、市民であって、そして自衛官であるわけです。そういう意味において日本国憲法の持っている人権保障などの諸権利は当然持つべきである。」というのが第一に述べられておる。  第二は、「端的に言えば、自衛隊というのは若い技術者の集団である。技術的にも練度の高い技術者として自衛官を育てていきたいんだ。」と、これが第二です。「それには、住居の問題とか待遇とか、そういう身の回りの問題が入っていかなければならない。考えの基点を人間尊重、人間第一。次に兵器だ。」と、こういうことを述べられて、三島由紀夫さんも「それはおっしゃるとおりであります。一番大事なことであります。」と、こうなっている。  しかし、最近の防衛庁のあり方を見るというと、正面装備という形で、言うならば兵器優先の予算編成になっているのではないんだろうか。言うならば、このときのこういう精神というのは一体どこへ行ったんだ。ここから考えても、この専守防衛という問題はどうも最近はないがしろにされているんではないんだろうか、こういう気がしてならぬものですからお尋ねをしているわけなんですが、いま申し上げましたこの対談におきます考え方等について、あなたの見解をお聞きをしておきたい。
  174. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) いまお話がございましたような内容については私も同感でございます。  それと、正面装備のみにというようなお話もございましたけれども、正面装備そのものが防衛力大綱水準になかなか到達してない。しかも調達に相当程度時間がかかるということなどから考えますと、やはりいま正面装備に対してわれわれが急いでおります態度は御理解いただけるものと思います。  また反面、繰り返しになりますけれども、どんなに正面装備ができ上がっても、それを運用するのは自衛隊の皆さんであり、われわれであるわけでございますから、あくまでも自衛隊の人間性、あるいはまた技術者としての練度の向上、あるいはまた国を愛する気概等、そういう自衛隊の人の問題はきわめて大事であるというふうに考えております。
  175. 山崎昇

    ○山崎昇君 ここで明確にやっぱり人間第一、次に兵器。しかし、最近の防衛庁の動向は、最初に兵器、人間はその後。そういう傾向じゃないでしょうか。私は、あなた方がどういうふうに答弁しようとも、最近の防衛庁のあり方というのは、やっぱり専守防衛から踏み外していっているんじゃないかという気がしてなりませんので、いまいろいろ引用させてもらっているわけです。  これは、全体の時間の予定もありますからこの程度にしておきたいと思うんですが、次にあなたのこれも見解をお聞きをしておきたいのは、よく巷間アメリカの核の傘という言葉をわれわれ聞きます。一体アメリカの核の傘というのはどんなものなんだろうか、これ見たことあるんだろうか、さわったことがあるんだろうか、あなた自身これはどういうものだというふうに認識しているのか。といいますのは、実は先般ある政治学者と社会学者と歴史学者の座談会がございまして、それに私もちょっと出て聞いておったんですが、昔から傘というのは二つの側面を持っておる。一つは権力を表徴するものである。もう一つは地位の高さというものをあらわすものである。だから最近でも、たとえば東南アジアなんかのテレビを見ておりましても、何というんですか高僧というんですか、偉いお坊さんなんかは大きな傘で差されて歩かれる。そういう意味で傘というのは権力の表徴であるというこういう説明でございました。  もしそうだとすれば、アメリカの核の傘というのは、これはアメリカの権力の象徴なのかあるいはアメリカの地位の高さというものを示すものなのか、日本はその下に入るということになれば一体どういうことになるんだろうか。そして、いま申し上げましたが、一体防衛庁長官というのはこのアメリカの核の傘というのは見たことあるのか、どういうふうにあなたは認識されているのか、これもお聞きをしておきたい。
  176. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 傘というのがどういう時点からどういうふうに言われてまいりましたか、私も正確には承知しておりませんけれども、われわれが言っているような傘というものは、こういうふうに理解をしております。  それは、核攻撃を抑止するためには、核の報復力を背景とする抑止力が必要であると考えております。しかもわが国は非核三原則聖堅持しているわけでございますので、核の脅威に対してはアメリカの核抑止力に依存をしていると、これがいま一般にアメリカの核の傘と呼ばれているものでございますが、いま御指摘のそれが権力の象徴であるとか、そういうようなふうにはわれわれは受け取っておりません。
  177. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、いまあなたの言う核の傘というのは、これは一たん何かあったときに抑止力として使える、そのときには傘ですから開くのかもしれません。ふだんはこれはどうなっているんですか、しぼんでいるんですか、開いているんですか、あるいは破れているんですかね。これは核の傘、核の傘とこう言うんですけれども、もちろん私ども見ることはできませんね、あなたも見ることはできないでしょう。何かあったらと言っても、開いているのかつぼんでいるのか破れているのか、わかりゃせぬですね。そういう意味では、一体核の傘というのは何なのか、もう一遍説明してくれませんか。
  178. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) ただいま先生のお言葉の中に、核というのは一たん何かあったら開くのかなという御下問でございますが、一たん何もないために核の抑止力が必要である、これが核理論の基本でございます。
  179. 山崎昇

    ○山崎昇君 それはあなた、さっき長官の言うことと違うじゃないですか。だから核の傘とは抑止力だというから、それじゃあなた方見たことはあるんですかと、どんなものですか、教えてくださいよ。——ないでしょう、ね。  それから一たん何かあればそれに対して報復する、そういう力をあらかじめ持っておって抑止力にしたいというわけですから、何かなければこれ開かないんでしょう。ふだんはどこかにしまって、たんすの奥か物置の隅か知りませんけれども、置いておくわけでしょう。だから核の傘、核の傘と簡単に新聞でも書くし、言われるんだけれどもアメリカの核の傘のもとに日本があれば安全だと、こう言うんだけれども、一体この核の傘とは何なんだろうか、考えてみたらよくわからない、私は。それは、長官、もう一遍あなたの見解を聞いておきたい。
  180. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先ほど申し上げたことになるわけですけれども、やはり報復力を背景とした核の抑止力というものを一般に傘というふうに言われているものと理解をしております。
  181. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると抑止力が傘ですか。いまあなたそう言う。抑止力が傘ですか。傘という限りはどんな傘ですかね。普通はこれあれでしょう、雨降らなきゃ傘差しませんわね、その辺がわからないのですよ、私ども本当に。
  182. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 繰り返すようではありますけれども、やっぱり核報復力を背景とした抑止力、見えませんけれども、それはやっぱり不断に開いているものだと思います。
  183. 山崎昇

    ○山崎昇君 なかなか苦しい答弁で恐縮だとは思いますがね。しかし実際、国民から言えばそれがよくわからない。そして最近、御存じのように、やっぱり世界的にも、それから日本の国内でも核の廃絶という問題について大きないま世論が起きてきている。必ずしも核が抑止力にはならない、もはや、現代になってくるというと。逆にこれがあるから人類が破滅するんじゃないかという、そういう意味でアメリカの核の傘の下にいたら日本が安全だなんという物の考え方は改めなければならぬのじゃないか。  そして、あなたに重ねてお聞きしますが、いま国際的にもあるいは国内的にも、あらゆる階層の方々が核の廃絶について、あわせて軍縮について、大きないま世論となり、運動となってきているわけです。これについて一体あなたはどういうお考えを持ちましょうか。  特にここに一枚だけ持ってきておりますけれども、かつて防衛庁の官房長をやられた竹岡さんも、「いまや核の傘にまさる核軍縮」——表題が。核の傘でなんか守られない、核がない方がいいと言う。そういう意味で言えば、核のいま廃絶の運動、軍縮の運動に対して、防衛庁長官としてはどんな見解をお持ちでしょうか。
  184. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 私どもはやはり、戦後三十数年間平和が続いてきたのは、東西の両陣営の軍事力のバランスというものがあり、またその背景には、核についても相当な抑止力が作用して平和が保たれてきているものと思います。核の抑止力が戦後三十数年間の平和を保ってきた、そういう効用はわれわれは認めております。  反面、わが国が世界唯一の被爆国という悲惨な歴史を持っておるということ、それ以上に、核戦争が起きたならば人類が破滅になるというような御指摘等については全く同感でございまして、そういう運動につきましては、われわれとしても理解を持って進めなければならないと思っております。
  185. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、あなたみずからアメリカの核の傘から抜け出る、アメリカの核の傘は要りません、日本の今日までの経過からいって、それが一層いま世界に向けて核廃絶あるいは軍縮の一つの私はポイントでないかと思うんだが、それだけの決意、あなたにありますか。
  186. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) いまは抑止力が効いておりますから、それなりの核の抑止力の効用を認めるということを申し上げたわけでございますけれども、これが万が一バランスが崩れた場合にどうなるかということもわれわれはやっぱり現実の政治家として考えなきゃなりませんし、特に防衛庁長官としては、国の防衛を預かる最高責任者として、このバランスが崩れた場合のことも相当ほかの問題以上に厳しく考えていかなきゃなりませんので、終局的には核廃絶また核縮小というものを目指すわけでございますけれども、いま直ちにそういう運動に私が加担をするというわけにはまいらないような立場にありますことを御理解いただきたいと思います。
  187. 山崎昇

    ○山崎昇君 いや、そういう立場にありますという立場は、ある意味で理解してもいいと思う。あなた自身はそれだけの決意を持ち得ますか。立場はいまあなたが強調されました。しかし、あなた自身はやっぱり核なんというものはない方がいい、この世の中から核なんというものはなくした方がいい、そういう決意をあなたはお持ちですかと聞いているんです。
  188. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) もちろん、核などというものがわれわれ人類の行動を規制するような、そういうような事態は一日も早くなくなることを希望しております。
  189. 山崎昇

    ○山崎昇君 次にお聞きをしておきたいと思うんですが、実は「自衛隊のみたソ連軍」という本がございまして、これを書いている方々は、すべてこれ元自衛隊の制服をやった方々あるいは評論家の方々等の対談や論文になっているわけですが、どれを見ても全部ソ連を相手に戦うということが基礎になっている。もうソ連が攻めてくるものだと、それにどう対応するのか、これが基礎になって書かれているわけです。あるいはまた、つい最近でありますけれども、いま全国で大変もてておるようでありますが、竹田五郎さんの「宝石」の三月号を読ましてもらえば、自衛隊のあり方というのは、まずソ連が攻めてきたらそれがどこから攻めてきて、どういう攻め方をするかというシナリオをつくって、それに基づいて防衛力の増強をすべきである、いまの政府のやっていることは逆だと、一%がどうだとか何がどうだとか、ああいうのはナンセンスでありますと。そして、私が前に予算委員会で鈴木さんにお伺いしたんだけれども、これはこの「自衛隊の秘密」という本に出ておりましたように、大平さんがカーターと会ったときに、日本は不沈空母だと、こういう言葉を使われたということはここに書いてありましたからそれを使った。そうしたら、やっぱり竹田五郎さんも、戦略的に見れば日本アメリカの不沈空母でありますと書いている。  すべてソ連がいまにでも上陸する、いまにでも攻めてくる、そういう形の上で実は制服の方々というのはやめられたら講演されるし本も書かれる。そして、竹田さんの話、恐縮でありますが言えば、そのシナリオはもしつくるとすれば百を超えるんではないかと書いている。いろんな場合を想定して防衛庁防衛力整備をしていくんだと、こういう骨子のようであります。また反面、同じ防衛庁におられた方でも、日ソの二国間だけで戦争はあり得ない、日本が戦争になるのは米ソの戦争に巻き込まれるときだけが日本が戦争になるんだ、言うならばアメリカの巻き添えを食うときに初めて日本は戦争という状態になるんだ、こう説く人もおります。  そこで、防衛庁長官お尋ねいたしますが、あなたは日本が戦争になるという場合は、どういう場合が日本が一体戦争になるとお考えなのか。そして、どういうあなたはシナリオを持ってそれに備えるための防衛力の増強というものをお考えになっているのか。この機会ですからお聞きをしておきます。
  190. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先ほど来申し上げておりますとおり、現在の国際情勢においては、東西間の全面的な軍事衝突や、それを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争は抑止されているところでございます。が、もともと国際情勢というのは常に先行き予断を許さないものがあるわけでございまして、現時点で将来わが国に対する侵略の発生が予想をされるということとか、その場合の契機となるものは何であるかということについて申し上げることは困難でありまして、先生お答えにはそのままならないわけでございますけれども、われわれとしてはわれわれ自身のできるだけの防衛力整備を急ぎながら、反面、日米安保体制信頼性の維持をこれもまた不断に向上を図りながら、すき間のない防衛体制というものをつくり上げるのがわれわれ防衛庁としての国民に対する現時点での急務であるというふうに考えております。
  191. 山崎昇

    ○山崎昇君 やっぱりお答えにならぬのですね、あなたの言っていることは。  いまあなたに示しましたように、これは竹田さんの「宝石」の三月号、「自衛隊を張り子の虎にするな」という論文の一節です。大変この人はあっちこっちでこの自衛隊増強について演説しているんですが、その中に「戦略環境、侵略者の意図、戦略・戦術的な侵略規模、様相等を分析系列化する(つまりは、わが国に対する侵略のシナリオを作ることだが、おそらく百種を超えるであろう)。」と、そういうものをつくって、それに基づいて防衛力を増強しなさい、そうでないのはナンセンスだと言わんばかりにこれは書いてある。そして、いま私が申し上げましたように、「つまり日本は、米軍にとっては巨大な不沈空母であり、ソ連にとっては大きな目の上のコブなのである。」、こういう表現を使って、あちこちでいま専門家と言われるかつての制服の方々は演説をして、防衛力の増強に一役買っているわけでしょう。そういうことを私は見るたびに本当に寒い思いをするわけです。  そして、私はきょう、最近読んだ本しか持ってきていませんが、これもまた大賀良平さん、竹田五郎さん、永野茂門さん、三人で書かれた「日米共同作戦」という本です。これによると、日本の参戦のきっかけは何か。太平洋シーレーン攻撃の余波を受けて太平洋上かどこかで撃沈された場合」——これは日本の船か何かだと思う。第二は在日米軍基地を攻撃された場合。第三はアメリカ要請に基づいて三海峡の封鎖を迫られる、この場合に日本は戦争になりますよ。言うならば、日本とソ連との関係では、二国間では戦争の状態にはならない、ない、あり得ない。アメリカとソ連との関係日本は巻き添えを食うんだ。これがこういう制服の方々の書いております論文ですよ。それに基づいて海峡の封鎖でありますとか、後でシーレーンは聞きますけれども、そういうことについて述べておられるわけです。  だから、いま私は、防衛庁のことしの予算を見まして、ずいぶん衆議院でも議論になりました、なぜこれだけ予算が詰まっているときに防衛予算だけふえるのか、なぜ防衛庁予算だけ突出するのかという議論は、私は背景にこういうかつて制服であった方々の日本戦争論みたいなものがあって、それに基づいて着々とあなた方は防衛力を進めてきているのではないだろうか、そういう気持ちがしてならないんです。いろんなデータを集めて読んでみると、結局はそういう結論になっちゃう。一体防衛庁長官はどういう見解を持ちますか。
  192. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) いろいろいまも御披露はございましたけれども、いろいろの御意見があることは承知をしております。しかし、われわれはそういう御意見等にいささかも影響されることはございませんで、われわれ自身がすでにお決めをいただき、国会の御審議もいただいております防衛計画大綱水準にできるだけ早く到達したいという、そういう努力の積み重ねの一環として今回の予算をお願いをしておるわけでございまして、先ほどもお話がございましたようなことについて、一々防衛庁が、われわれのとる態度について影響を受けているというような事実はいささかもないということを申し上げておきたいと思います。
  193. 山崎昇

    ○山崎昇君 それはあったら大変ですよね。しかし、少なくとも在職中専門家と称される方々があちこちへ行って、国民に対してこういう演説をして、それがあたかも日本を守るような錯覚になりつつあるところに私は危険を感ずると言うんです。そして出てくる結果は、あなたは影響されないと言うけれども、結果はいまの財政事情の中で防衛庁予算だけふえるじゃないですか。それも、きょうは述べませんけれども、順を追って私ども整理してみるというと、執拗なアメリカの要望やら要求やら、ある意味では内政干渉がましいことさえ言っておる。その結果として、あなた方は防衛予算というものをふやしているじゃないでしょうか。それだから、私は繰り返しあなたにいまこういう点を申し上げているわけです。  次にお聞きをしたいんですが、そういう意味でこれからあなた方はF15というものをかなり購入される、P3Cというものもかなり購入される。そこで改めて、これは公式の場でありますから、一体F15というのはどういう性能を持つものなのか、そしてこれはどういう配置をして、どういう任務につかせるのか。P3Cというのは一体どういう性能を持って、これもまた自衛隊としてはどういう配置を行うのか、これをお聞きをしておきたいと思います。
  194. 塩田章

    政府委員塩田章君) まず、F15でございますが、F15は領空侵犯に対処するとともに、高空侵攻に対します要撃戦闘を主たる任務といたします。そのほか必要に応じまして支援戦闘も行うということを任務といたしております要撃戦闘機でございます。  性能といたしましては、全備重量約二十五トン、幅、長さ、高さ等は省略させていただきますが、乗員は一名、最大速度は二・五マッハ、最大航続距離は海里で申しまして約二千五百海里、それから要撃行動の場合の短距離要撃行動の半径は約二百五十海里、長距離要撃行動の場合の半径は約八百二十海里というふうな性能を持っております。  配置でございますけれども、現在まだ新田原に臨時飛行隊を編成をした段階でございまして、今後の配置はいまの時点でまだ決めておるわけではございません。いずれにしましても、全国にございます航空自衛隊の戦闘機基地に逐次配置していくということでございますが、具体的にはどの基地に配置していくという計画までまだございません。  それからP3Cでございますが、申し上げるまでもなく、資源の多くを海外に依存しておりますわが国としましては、わが国周辺海域における海上交通の安全の確保ということが非常に重要なことでございますが、このために、その安全確保という観点からやはり一番脅威となりますのは潜水艦でございますので、潜水艦に対しまして有効に対処し得るということを目的とした対潜航空機でございます。  性能といたしましては、全備重量は約五十六トン、搭乗員は十名、進出速度——作戦海面に向かって進出する速度が約三百六十ノット、進出した後のオンステーション——作戦する時間でございますけれども、仮に四百海里進出したとしまして、作戦時間は約十一時間といったような性能を持っておりまして、潜水艦を捜索するに必要なソーナーでありますとかあるいはレーダー、あるいは磁気探知機、そういったものは当然持っておりますが、そのほか武装といたしましては魚雷、対潜爆弾、機雷、ロケット弾、ASM——ASMというのは対艦誘導弾でございますが、そういったようなものを持つことができます。  なお、先ほどオンステーション十一時間ということを申し上げましたが、わが国で運用する場合には八時間ということで考えております。
  195. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま性能について説明がありました。これは一人の人のあれですから、これで私はすべてだとは思いませんが、ここにありますのは「世界の最新戦闘機」という、これは木村秀政さんという人の監修された本で、F15の性能についても書いております。ただ、この中で私は注目をしましたのは、アメリカの空軍当局が一つの結論を得た。それは何か。すなわちいかに超音速機といえども戦闘機対戦闘機の空中戦はほとんどがマッハ一・〇以下の速度で、高度も一万メートル以下で行われることを経験的に知ったと。言うならば、これからの空中戦というのはこういう超音速の戦闘機は用事がないのではないか。だんだんこれは空中戦としてはすたれていくのではないか、こういう考え方があるということを述べておるわけです。そういう意味で言うならば、これからいま御説明のありましたF15を多数日本が購入するということは一体いかがなものだろうかという気がしてならぬわけです。  それからもう一つは、専門家の話によりますというと、このF15を仮に日本が買った場合に、一体この訓練というものをどうされるんだろうか、それから日本の上空に訓練の空域なんというものがあるんだろうか、こういうことが大変専門家の間で心配になっておるのですが、その点はどうですか。
  196. 塩田章

    政府委員塩田章君) 超音速戦闘機が実際に空中戦闘をやる場合に、どういう形で空中戦闘を行うのかということになりますと、それは御指摘のように、常にお互いに最大スピードで戦闘するわけではないと思います。まあ、そういうこともあるかもしれませんが、通常はそんなに早いスピードでぶつかり合うということではない。特に最近のように超低空で行動する飛行機が多くなってまいりますと、当然その時点のスピードは下がってくるわけです。ただ、どういう形で空中戦闘を行うにしましても、あるいは地上攻撃を行うにしましても、行った後の退避する力とか、そういうようなことにおいてスピードがまさっている方がいいであろうということは一般的には言えると思いますが、空中戦闘自体はお互いに最大速度同士でぶつかるというわけではないだろうと、それは御指摘のとおりではないかと思います。したがって、そのこと自体をもって速いことが役に立たないと一概には言えないのではないかというふうに思います。  それから、第二の訓練空域の問題でございますが、これはF15に限りませんで、現在の航空自衛隊一般に訓練空域につきましては非常に苦心をしておるところでございまして、逐次運輸省ともよく相談をしながら訓練空域の確保に努めておるわけでございます。これはF15が入りましたからといって直ちに特段どうということでなしに、元来航空自衛隊の大きな一つの問題点でありまして、努力をしておるわけでございます。その一つの対策としまして、先ほども話が出ましたが、硫黄島なんかに移動して訓練をするというようなことも考えておるというのも、この訓練空域の問題に関連をいたしました一つの措置ということでございます。
  197. 山崎昇

    ○山崎昇君 ある専門の方のお話を聞きますと、マッハ二からマッハ二・五ということになると半径二百五十キロぐらいの訓練空域が必要である。二百五十キロというと、この人の説明によると、東京から佐渡島までで三百三十キロぐらいというんですね。言うならば、それに近いだけの半径の空域がなければこの訓練ができない。こんなF15を多数購入して、ほとんど訓練もできないようなものを航空自衛隊が持って何するんだろうか。極端なことを言うようでありますが、海原さんの言葉をかりれば、航空自衛隊は高級飛行クラブだと、こういう言葉を使っていますわな。これはいいか悪いかわかりませんが、本人がそう使っているわけであります。  だから、私がさっき申し上げましたように、いまあなたも言ったように、もう超高度のところで超スピードでの空中戦というものはあり得なくなってきている。そういう意味で言うならば、F15をこれから多数日本が買うなんということは、私はやはり少しむだな気分がしてならぬわけです。ましてや訓練空域もない。また、訓練をするということになればこれ大変な金がかかるんじゃないだろうか、こう思うんです。そういう意味でこの点は私はもっと真剣にひとつ考えてもらいたい。  それからP3Cについても、これも制服の方の言葉をたびたびかりて恐縮でありますけれども、竹田さんの言葉をかりると、八戸に配属するのかと聞いたら返事がなかったと、重ねて聞いたらまた返事がなかった。言うならば、P3Cを買っても、一体どこに配属して何の任務でどうするのかということさえまだ自衛隊にはないんではないか。P3C一機で、私ども聞くのは、大体四国一円ぐらい警戒といいますか任務がやれると聞いているわけです。これを二十機も三十機も買って一体日本をどういう形で警戒をするのか。私は軍事力というのはよくわかりませんけれども、どうもそういう方々の話を聞けば聞くほど、いま防衛庁がやろうとしておりますこれらこの種の装備のあり方というものについて疑問をやっぱり持ってくるわけです。  重ねて聞きますが、P3Cはまだ配置を決めてないようでありますが、一体どんなことをするんですかね。
  198. 塩田章

    政府委員塩田章君) 先ほどお答えを漏らしましたが、P3Cは、現在厚木に最初の飛行隊を——まだ飛行隊までいっておりませんけれども、年度末にはたしか八機になると思いますが、編成いたしまして、そこからスタートいたしますが、その後、先ほどのF15と同じように今後どの基地にどのように配置していくかということをまだ決めておりません。P2Jのリタイアしていく様子に応じまして今後逐次P3Cが入ってきて、それを配置していくわけでございますが、具体的な配置計画というところまでは、現在検討はもちろんいたしておりますが、決まっておるわけではございません。  それで、これをどう配置してどう使うのかということでございますが、一機でもって相当の広い範囲の捜索行動能力を持っておるということは、先ほども御説明を申し上げ、またいま先生からも御指摘があったとおりでございますが、このP3Cを使いまして先ほど来議論になっておりますわが国周辺数百海里あるいは航路帯を設ける場合においては約一千海里程度の海上防衛というようなことを考えました場合に、このP3Cが今後対潜水艦作戦の主力になっていくというふうにわれわれは考えているところでございます。
  199. 山崎昇

    ○山崎昇君 次に、長官にお聞きをしておきたいんですが、これもずいぶん質問があった点だと思うんですが、シーレーンですね。これも何かわかっているようで私どもよくわからぬものですから、シーレーンというのは一体何なのか、そしてどうされようとするのか、まずお聞きをしたい。
  200. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 御指摘のように、シーレーンということにつきましても特に明確な定義があるわけではございませんけれども、一般的には海上交通路という意味で使われているものと承知をしております。  そういうわが国への船舶の航行ルート、シーレーンはいろいろあるわけでございますけれども、またそのことも御承知のとおりでございますけれども、有事の場合にわが国への海上交通の安全を効率的かつ効果的に確保するためには、航行する海域をある程度特定する必要があるというふうにも考えております。このためわれわれとしては、有事においていわゆる南西、南東航路帯といったものを一応念頭に置いておりますけれども、もともとそういう航路帯の設定というのはそのときの脅威の様相等に応じて行われるべきものでありますので、必ずしも特定の航路帯とか海域を固定して考えているわけではございません。
  201. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま長官の説明があったんですが、私もやっぱりよくわからないんですね。これも専門の皆さんのお話を聞くというと、戦前もこんなことはできない、やれなかった、やったためしがない、アメリカといえどもとてもそんなことはできるものではない、ましてや日本ができるものではないという意見と、やろうと思えばやれないこともないという意見と、大きく私は分かれていると思っています。  そこで、これは「週刊ダイヤモンド」という本に関野英夫さんという方が、もし日本自衛隊シーレーンをやるとすればどれぐらいのものが要るのかという試算を一つ出しました。それによると、小型空母が三隻、ミサイル潜水艦二十七隻、ヘリ搭載駆逐艦九隻、ミサイル駆逐艦十七隻、駆逐艦五十三隻、護衛艦三十隻、高速哨戒艇四十隻、こういうものをとりあえず持たなければ、日本が言っております一千海里の航路帯を守るなんということはあり得ないと、そしてこれは金額に直せばGNPに占める割合は二・七%だ、ざっと現在の三倍だと、これだけで。  ましてや、もう一つ軍事科学研究会の方々の出されたものを見るというと、海上自衛隊の護衛部隊を十七個に増強、主要艦艇数を百三十六隻、これは小型空母十七、対空ミサイル駆逐艦三十四、多目的駆逐艦八十五。総経費に直しまして三十兆円、ざっとGNPの三%かかると。一体こんなことが日本自衛隊ができるのか、いまの日本予算がもつのか、こういうふうに指摘している人もおります。  また、きょうは持ってきておりませんが、やめられましたときには空将であった奥宮さんという方の話を聞くと、とてもそんなことはできるものではない。戦前の商船というのは、船長は海軍の予備士官か船員もまたそういう訓練を受けたような方々がほとんどだと。だから、ある意味で言えば艦隊訓練といいますか編隊航行といいますか、そういうものができた。いまの商船はとてもそんなことはできやせぬ。そして私は運輸省に、最近におきます日本へ外国から参ります船の数字というものを聞いてみました。聞いてみますと、日本船が全体の大体五二%、外国用船が四八%、特にこの外国船の場合につきましては、日本の国旗を上げていない、どこの船かわからぬ。全部で合計二千五百五隻。総トン数にして六千五百二十二万七千トンですか、これだけのものが出入りしている。どこの国の船かわからぬような船が大半だという。シーレーンシーレーンと言っているけれども、こういうものを一体日本海上自衛隊は守れるんだろうか。P3Cが幾ら上を回ってやってみたところで、どこの海に、大体どの辺にソ連の潜水艦がおりましたよというような情報をアメリカに流す程度ではないか。P3Cの役目というのはその程度のものではないか、それ以上のことはできないというのがこういう方々の意見でもあります。  そこで長官、いまあなたからシーレーンというものについての定義も聞いたんですが、よくわかりませんけれども、一体本当に自衛隊はやれるという自信をお持ちでやっているんでしょうか。総理は約束してきたんでしょう。専門家になればなるほどできないと言う、そんな能力はないと言う、これはアメリカにさえないと言う。そういう意味で言うと、シーレーンシーレーンと最近大変な宣伝でありますけれども、もう少し防衛庁として慎重に考えなきゃならぬ点じゃないんでしょうか。どうですか、長官
  202. 塩田章

    政府委員塩田章君) 御指摘を待つまでもなく大変重大な問題でございますから、慎重に対処しなきゃいけないことはわれわれもよく承知しておるつもりでございます。いろんな人がいろんな数字を挙げておることももちろん承知いたしておりますけれども先生のお話の途中にもございましたが、もちろんできるという人もおるし、むずかしいという人もそれはいろいろおると思います。  ただ、われわれは、防衛計画大綱にまだ到達していない現状において、いまの海上自衛隊でどれだけできるかということについて、必ずしも十分なことはできないということも率直に申し上げて、一方、反面防衛計画大綱はそれが到達すればどうなるのかというお尋ねに対しましては、相当な能力向上が図られる、あるいは大幅な能力向上が図られるというようなお答えをしてきております。それにはもちろん数字的に、現在は何%できて、大綱ができれば何%できるんだというような数字でお示しすることは困難な問題でございますけれども、私どもとしてはそれなりにそういうことを申し上げておる、それなりにどういうふうなやり方をしてやっていくかということについてはもちろん考えておるわけでございます。  戦前は、確かに日本の海軍の場合、ほとんど商船の護送能力がなくてああいう結果になったというのは非常に大きな教訓だと言われておりますし、確かに戦前はできなかったということは言えますけれども、現在、もちろん潜水艦の能力も大変発達しておりますけれども、同時にP3Cを中心とする飛行機の発達あるいはヘリコプターを搭載しました艦艇のいろんな能力のアップ、そういうようなことを考えまして、私どもとしては必ずしもシーレーン防衛ということが不可能であるというふうには考えておらないわけであります。  ただ、先ほども申し上げましたように、それではいまどれだけできて、将来どれだけできるんだということを具体的な数字でお示しすることは大変困難な問題でございますので、大変御説明はむずかしいんですけれども、われわれは防衛計画大綱の線を一日も早く到達させていただきたい、それによって現状を大幅に改善をして、そういった能力をつけていきたいというふうに考えているわけであります。
  203. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は、シーレーンというのは二つの前提があると聞いているわけです。一つは、公海自由の原則というのが第一の条件である。第二の条件というのは、海上輸送に障害が起きないような環境を確保する。言うならば、いまこそ、シーレーンでP3Cを飛ばして商船隊を守るなんというおこがましいことを言わぬで、もっとやっぱり外交に力を入れて、日本は平和に生きなきゃいかぬわけでありますから、そういう意味で私は防衛庁のいまのあり方というものに対して危惧の念を持っているわけなんですが、本来ならもっと詳細に私もきょうデータを持ってきておりますからお聞きをしなきゃいけませんけれども、もう時間がなくなってまいりましたからこの程度でやめておきたいと思いますが、いずれにいたしましても、このシーレーンの問題についてはいま慎重に扱うというお話でありました。本当に慎重にやってください。膨大な金が要りますよ。  それから、次にお聞きをしておきたいのは、つい二、三日前でありますけれども、石川島播磨重工の浮きドックの問題が新聞に大変大きく出たわけですが、これも私は読みましたのが去年の七月に読んだんですが、「自衛隊の秘密」という老川さんという諸売新聞の当時ワシントンの特派員だったようでありますが、この人が一番最初に「浮きドックのパズル」という表題で、もうすでにこのときからこの問題を書いているんです。ですから、私は防衛庁はこの問題について承知をしておったんじゃないだろうか。アメリカは何でいまごろになって、二年もたってからこの問題を持ち出して、そして私は防衛力増強の一翼を担うようなかっこうで日本に圧力をかけてきているんではないだろうか、こう思うんですが、この問題について一体防衛庁はどういうふうに承知をしておったのか、その点だけ聞いておきます。
  204. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) まず、御指摘のことで会談の当事者として申し上げますけれども、去る三月二十七日のワインバーガーとの会談において、アメリカ側から西側の技術のソ連への流出に関し、かつて日本がソ連に輸出した浮きドックを例に出して、非軍事的な用途であると思われる技術でコマーシャルベースでソ連に売られるようなものでも軍用に転用されるものがあるという一般的な話がありました。これは国際軍事情勢の説明の中の一環として述べられたものでございまして、そのときも米側から、このことで日本を批判する意図で申し上げているわけではないと断ってもおりましたし、一般的な注意喚起であるというふうに理解をしております。そしてまた、その時点で防衛庁が承知をしておったという事実はございませんし、また防衛庁はソ連を含めた対外貿易の許認可に関しまして判断なり決定をする立場にはないということもまた申し添えておきたいと思います。
  205. 山崎昇

    ○山崎昇君 これは三月三十日の読売の見出しですから、「米国防長官が対日警告」という言葉、見出しに使ってやられておりますね。私はこの「浮きドックのパズル」というのは——私は変な癖がありまして本を買った日付を全部入れているわけですが、これは去年の七月二十六日の日曜日に買って読んだ本であります。この中にすでにこの問題が出されておるわけですね。当然、外務省なり防衛庁なり、こういう情勢については把握しておるものだと私は思っておったんですが、そうでありませんで、そしていまになってからこの防衛力増強に関連をして国防長官が対日警告なんぞという形で日本に文句を言うというやり方に対して、私はやっぱり納得できない。  そういう意味では、あなた方が見逃したのか、あるいは黙っておってアメリカの言い分だから聞いておきましょうというのかよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、私はアメリカのやり方というのは少し内政干渉がましいんじゃないか。何でも自分たちの言うことだけ正しくて、日本に文句さえ言えば日本自衛隊が増強になったり、防衛力が増強されるような錯覚を持っているんじゃないだろうか、こういう気持ちにさえこれ見てなるわけです。そういう意味で、ひとつ長官はきちっとした見解をお持ちの上でこれからの運営を図ってもらいたいということを申し上げておきます。  もう私の時間が来まして、大変沖繩の開発庁の皆さんにも恐縮なことをいたしましたが、最後に一、二点まとめてお聞きをしておきます。  第一は、防衛施設庁にもお聞きをしますが、沖繩の米軍基地内の土地の強制使用についてことしの五月十五日でこれが切れます、法律が。そこで、いままでは日本の法律で措置をしてきておったんですが、聞くところによれば、日米地位協定による米軍用地特別措置法を強制適用するという考えがあるやに聞いておりますが、それが事実かどうか。  それから沖繩が復帰をされましてから米軍の基地が減っているかといえば逆にふえていると言われておりますが、一体それはどういうことなのか。さらに、米軍の基地があることによって、沖繩の第二次振計もそうでありますが、振興というのがきわめて重大な影響を受けて、きのうも沖特でずいぶん議論になりましたけれども、全国都道府県の所得で言えば一番最下位である。東京を一〇〇として沖繩は七八だ、失業者は本土の二倍半である。特に若年層に対して失業者が多い、こういう状況にある。あるいは返還された土地もすべてこれが利用されておりませんで、跡地の利用につきましてもいろんな問題があります。  本当は一つ一つきょう細かにお聞きをすればいいんですが、私の時間がなくなりましたからまとめていまお聞きをしているんですが、施設庁長官の見解と、それから第二振計の中におきますこれら一連の問題等について、開発庁の長官きょうおりませんが、開発庁の政府委員から答弁を求めまして、私の質問を終えておきたいと思うのです。
  206. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 順序を追ってお答えをいたしますが、まず最初の、いま暫定法によりまして沖繩の基地が米軍に適用されておるんですけれども、五月十五日にその暫定法の期限が参ります。現在政府は何をしておりますかと申しますと、米軍用地特措法に基づきまして県の収用委員会に合意が成立していない、つまり大多数のものにつきましては、米軍基地の所有者大多数のものにつきまして、数字で申し上げますと九九%ぐらいの方につきましては全部合意ができておりまして賃貸借契約になっておりますが、あと残っておるわずかといいますか〇・四%、人数にいたしますと百人ちょっと超える、こういう人たちが契約に応じてくれないような状態であります。引き続き努力はいたしておりますけれども、安保条約、地位協定の関係で基地として提供しなきゃならぬという理由で政府考えておりますが、特別措置法に従いまして県の収用委員会に裁決の申請をいたしておるところでございます。収用委員会におきましてはほぼ一年以上にわたりましてといいますか、半年以上にわたりまして審理を行って、われわれといたしましてその結果を期待しておるところでございます。それが一つ。  第二点は、米軍の基地がふえているか減っているか、こういう話でございますけれども、大勢として——細かい数字はもし必要ならば申し上げますけれども、沖繩が復帰になってから今日に至るまで米軍の基地は全体として減っております。自衛隊の基地はふえております。トータルとしても減っておると、こういうのが実情でございます。詳しい数字が必要であれば後ほど申し上げます。  それから、これは沖繩開発庁の方だと思うんですけれども、われわれの方の土地の返還といいますか、基地の返還と沖繩の経済開発との関係についてほんのちょっとだけ申し上げますと、われわれといたしましても沖繩の経済開発といいますか地域開発が進むことは最も必要なことだと思っておりますので、基地の返還に際しましては、なるべく早目にそういう情報を地主の方々にお流しする、そして、心の準備をしていただくように努力する、それが一つと、返還に際しましては、われわれの方といたしまして契約に基づきましてしかもこうむるべき損失については法律に従って補償してきましたし、今後ともその方針を続けていく所存でございます。
  207. 美野輪俊三

    政府委員美野輪俊三君) お答えいたします。  先生から沖繩の米軍基地等の返還跡地の利用につきまして、主として今後どう扱っていくのかという御質問でございます。  私ども先生御承知のように、沖繩には米軍の施設、区域の五三%が集中しておるという状況あるいは基地の管理に伴う諸問題が発生をしておるということは承知しておるわけでございます。第一次の振興開発計画におきましても、この返還跡地の利用につきましては、米軍施設、区域の整理縮小の動向を踏まえながら、総合的な土地利用の観点に立って具体的施策を検討する必要がある、このようにいたしておるところでございまして、その跡地及び跡施設を産業振興及び社会資本の整備に活用していくという基本的な方向を打ち出しておるわけでございます。第二次の振計——昨日改正法案が成立をいたしまして、これから第二次の振興開発計画を策定することとなるわけでございますが、この第二次振興開発計画の中におきましても、基本的にはこのような考え方のもとに跡地利用の有効活用を図っていきたい、このように考えておるところでございます。
  208. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 まず初めに一言、F4の問題について一言私の方からも申し上げておきたいと思います。  いろんな問題におきまして国会で答弁をしたということは、国会に対して約束をしたということなんですよ、これこれこういうふうにいたしますということは。したがって、F4の問題について国会で数年前あのような措置をするという答弁をした以上、やっぱりそれは国会と防衛庁との関係の中で処理をしなければならない。しかも総理大臣もまたあなたも、シビリアンコントロールの最高の機能は国会だと、こう言っていますよね。ですから、あなた方がどんなに言いわけをしようと、今度の処理については、これはシビリアンコントロール——文民統制について問題があったということを言わざるを得ないと思うんです。このことをひとつしかと受けとめていただきまして、国会答弁というのは国会に対する約束なんだと、こういうふうに踏まえていただきたいと思う。これはすでに私も予算委員会の方で質問もいたしましたし、すでにいろいろの角度から質問も行われたので、ここでは繰り返しません。  それからもう一つ基本的な問題といたしまして、いまもいろいろシーレーンの問題が論議をされました。私もいま政府考えておる専守防衛について、もちろんわれわれはこの防衛政策について政府と見解を異にするものを持っておりますけれども、それはさておいて、防衛力増強といういま政府の方針を検討したときに、やっぱり私は、ぎりぎり専守防衛というものは絶対に守っていかなければならない。これはもうぎりぎりの線だと。しかし今日の趨勢を見てみますと、いま山崎委員が指摘されたように、専守防衛もどうやら危機に直面をしている。その路線が各方面から何といいますか批判をされ、誹謗され、政府の方針が揺らいでいくのではないかということを大変心配するんですよ。この際、ひとつ政府の決意のほどをお聞きしたいと思います。
  209. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 予算委員会の席上でも、総理官房長官等から、また私からも累次答弁を申し上げておりますように、専守防衛ということでわが国の安全と平和を守っていくということはなかなかにある意味においては大変つらい、むずかしい、また困難な選択をしたわけでございますけれども、われわれはこれは防衛基本方針として決定をし、その方針に忠実に従いながら、今後とも専守防衛という防衛基本方針を貫き通してまいる所存でございます。
  210. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 アメリカの、率直に言って内政干渉的な防衛力増強の動きもあり、またこういうことも言っているんですよね、これはアメリカじゃなくてある人が。つまり、いまソ連の極東における軍事力の増強は、日本防衛力増強について大変いい刺激を与えてくれる、こういうことを言っているんです、お読みになったかもしれませんけれども。これはその名も高き竹田五郎さんの発言なんです。ちゃんと雑誌に書いてある。こういうふうに、まさに常軌を逸した一つのいま論評が行われている。こういうことについて私は本当に憤激にたえないわけでありますけれども、彼の理論からすればソ連様々だと、増強しているから日本防衛力も増強できるんだというようなことまで発言をするということは、まさに常軌を逸した発言だろうと思うわけであります。  それはさておきまして、私は、この専守防衛について、防衛庁という立場だからあるいはやむを得ないという点もありますけれども、この専守防衛、つまりもっと根源的に言えば平和憲法を選択した、こういうことについては、いま防衛庁長官もおっしゃったように異常な決意だと思うんですよ、これは異常な決意。しかし、われわれはあの悲惨な戦争体験の中から、困難ではあったけれどもこの平和憲法の道を選択したわけですから、われわれ自身がそういう決意を固めていかなければならない。  ずばり言えば、私はこの防衛費以上の金を使っても戦争をなくしていくということだろうと思うんです。あるいは防衛費以上の金を使っても戦争のために人の命を失わせない、これがいわば平和憲法の基本的な理念でありますからね。どんなに海上自衛力を増加したって、戦争がおっ始まって何百も船を守ろうなんというのは不可能であるということは、あなた方もわかっていると思うんです。ですからシーレーン、つまり海上交通の安全を守る、その道は何かといえば戦争を起こさないこと以外にないでしょう。そういうところをいつも私は考え防衛政策というものをやっていただきたい。  つまり、専守防衛だけによって日本防衛はできない。専守防衛の仮に防衛大綱ができたって、いざ戦争になればそんなもの——そんなものと言っちゃ大変失礼でありますけれども、それによって巨大な軍備を持った国との戦争がもし起これば、それは一瞬にして日本は敗れるということを決意しなければならぬわけですから。専守防衛はその裏に平和外交、平和政策、そういうものが裏打ちをされて初めて専守防衛という一つの根拠が成り立つわけですよ。そういう平和政策や平和外交というものを抜きにして、どんなに専守防衛を叫んで大綱を速やかに完成させ、あるいはさらにそれを増強したって日本の平和と安全を確保できない、私はそう思うんです。  ですから、防衛政策を考えていく上には絶えずその裏表の関係、仮に政府の方針で言う専守防衛ということであれば、同じようなウエートを持って平和外交を推進する、仮に国民から専守防衛防衛大綱の基準で日本は守れるかという問いに対しては、守れます、それはそれ以上に力を平和外交、平和政策を推進していくんだ、そういうことを国民に私はぜひ訴えていただきたいと思うんです。そうでなければ、いま声高に叫ばれている軍備増強に私は政府があくまでもこれを死守していくということはなかなか困難になっていくんじゃないか、この点を特に申し上げておきたいと思いますが、防衛庁長官にもう一度この点について、つまり平和政策というものが裏打ちされて初めて専守防衛という論理が成り立っていくんだ、こういう私の考えについて所見があればお伺いしたいと思う。
  211. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 平和政策といいますか平和外交が国の大前提といいますか、基本であるという御趣旨には全く同感でございまして、その平和政策なり平和外交が崩れた場合——崩れないようにするわけですけれども、場合に、われわれの防衛が専守防衛として出ていくということでございまして、御趣旨の点は全く同感でございます。
  212. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 日本防衛というものについて、私は日本が巨大な軍備を蓄積していけば、特定の国の名前を出すことについて問題はあるにいたしましても、ソ連にしてみればそれは大変だと、じゃおれの方もまたさらに防衛力を増強しよう、こういう相関関係が出るのは明らかでありますから、そういう点はどこかで断ち切っていかなければならぬということになりますれば、いかにして平和を維持するか、いかにして戦争、紛争を回避していくか、それが日本防衛であり、それ以外に私は日本を守っていく道はない、こういうひとつ私も信念でありますが、防衛庁も絶えずそのことを念頭に置いて誤りないひとつ路線を進んでいただきたい。もちろん、われわれは別の一つ考えを持っておりますけれども、いま進めている防衛政策について、いろいろと各方面からあなた方の計画について、いま山崎さんが指摘したような多くの論評が行われております。そういうものに負けずに専守防衛という線だけは死守をしてもらいたい、このことを申し上げておきたいと思います。  なお私は、そういう基本的な問題ではなくて、予算関係について若干質問を申し上げたいと思いますが、まず最初に、さきの予算委員会で厚木基地の爆音問題、まあ問題は小さいわけでありますけれども、ゴルフ場の問題について質問をいたしました。特にゴルフ場につきましては答弁を要求した点がありますので、この際お願いをしたいと思います。
  213. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 先般の御質問先生からお話がありました、防衛施設庁の人間があるいは横浜施設局の人間が、先生質問しないのでゴルフはもうやってもいいんだ、こういうことを言ったのはけしからぬと、こういうお話があって、まことにそうだとすればけしからぬ話だと私も思いまして、誠意を持って調査をいたしますと申し上げました。早速私の方で調査をいたしました。調査の対象は、横浜施設局全員とそれから米厚木ゴルフ場関係者に調査いたしましたところ、幸いにしてそういうことはありませんでした。  以上、お答えいたします。
  214. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 私も根拠がなくていやしくも権威ある予算委員会質問したわけではありません。そういった内容のお手紙を私はいただいたわけでありますから。私が質問通告をしたということ、その事実を知っているのは、私の秘書と私の質問要綱を聞きに参りました施設庁の関係その他、そのときには相当大ぜいいましたからね、政府関係者二十人ぐらいおりましたから、そこで説明をしたわけですから、私の知る限り、それ以外の人は知らぬということになれば、しかもその質問を時間がなくて割愛をしたその事実も知っているということになれば、これは政府関係者以外あるいは直接政府関係者が他の人に何かそういう話をして、私のところにそういう投書に近い手紙が来たわけでございます。どなたかがきっとそういうふうに、私の質問ができなかった点を曲解して、あたかも私が了解をしたというふうに受け取ったのかもしれませんが、しかしそれは私も申し上げましたように、事実とすれば私はそれはほうっておけないというようなことでありまして、あなた方が調べてそういう事実がなかったということであればそれで結構です。  ただ爆音問題にいたしましても、この種の問題にいたしましても、抗議の行動を起こしたりデモ行進をやったり、私が国会で質問すると、非常に効果があるんですよね。長官が説明されたように、いま騒音、爆音も非常に改善された。しばらくするとまただめになるんですよ。だから、毎日私は国会でこう質問していれば爆音が——いや本当なんですよ、これは。ですからこの点は、アメリカは民主的だから国会で騒がれれば自重しなきゃいけない、自粛しなきゃいかぬというのかもしらぬけれども、自粛ができるならばずっとこういう状態を続けてもらいたい。今度私が質問するときにはこの程度じゃおさまらぬぐらいに強いことを申し上げますから、この点はひとつアメリカの方にしかとお伝えをいただきたいと思います。
  215. 吉野実

    政府委員(吉野実君) まことに先生方御熱心にそういう問題に関心を持っていただきまして、私の方も、基地の管理は海上自衛隊がやっているわけですけれども海上自衛隊自身もそういう基地対策という面から、住民等に不満とか不安を起こすということは非常に心配をしているわけで、実はそれ以後、米側も非常に日本側に対して同調をしたといいますか理解を示して、いい態度になっておるわけですが、実はこの間も申し上げましたけれども、あれは空母ミッドウェーが長期間横須賀に停泊しておるということによってCLPといいますか、空母着艦訓練をやらなきゃならないというそういう事情があったために騒音がやむを得ず起こったと、それは合同委員会の合意事項の中の範囲で実はやったわけなんでございまして、ですから、そういう事態はない方がいいに決まっていますけれども、またミッドウェーがいつあるか知りませんけれども、あるという事態においては多少騒音が起こるということは、これは合同委員会の合意事項の範囲内であると、やはりやむを得ないことが起こるかもしれない。それはいつ起こるか、起こらないかもしれませんけれども、そういうことであることを御了承賜りたいと思います。
  216. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうは言っても、たとえばよくあそこで基地反対の運動なんかしますね。その日は飛ばないんですよ。あるいはわれわれが騒音調査に行くと言えば、その日は飛ばない。これははっきりしていますから、そういうことで済むのならばということなんですよ。この点はひとつしかと関係当局の方に言っていただきたいと思います。  ゴルフ場のことは、あなたが大変ゴルフに堪能なようで非常に説明もりっぱであったという、ある新聞が褒めておりましたけれども、下手くそがやっているからと、そういうことだけでは相済む問題ではありませんから、今後とも厳重に監視をして危険防除のために手を打っていただきたいと思います。  次に、提供施設、アメリカに基地を提供いたしておりますけれども、施設庁から出された資料を大変細かく拝見をさせていただきました。施設庁あるいは防衛庁当局の努力もこれあり、逐次返還をされておりますが、五十六年度までずっと返還をされた資料をいただきました。五十七年度以降、つまり明年度予定をされているあるいは解除される見込みの状況、施設庁の方でつかんでおられるところをお聞きしたいと思うんです。
  217. 伊藤参午

    政府委員伊藤参午君) お答えします。  施設、区域の整理統合につきましては、従来から日米間において協議して、安保協議委員会等で合意されたものを現在移設等を実施して鋭意その実現にかかっているわけでございます。そういったことに伴いまして返還される見込みになっております施設、五十七年度以降ということになりますが申し上げますが、横田飛行場の一部それから横須賀の海軍兵員クラブ、同じく長井住宅地区、それから灰ヶ峰の通信施設の一部、佐世保海軍施設の一部、沖繩の天願通信所、嘉手納飛行場の一部といったような内容が返還が見込まれます。
  218. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 もう少し先の方もわかりませんか。それ以降、たとえば五十八年度。
  219. 伊藤参午

    政府委員伊藤参午君) 現在私どもの方で行っております各般の施策によりまして返還というものが近い将来見込まれるという数字で申し上げましたので、ただいまのは五十七年度以降ということでございまして、五十八年度にまたがる場合も当然予想されます。
  220. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 いまの個所につきましてどの程度、もう少し細かく、いまでなくていいんですが、後日メモで御報告いただきたいと思います。  それから特に県、市町村で、ここは市町村の特別の理由によってぜひ返してもらいたいというようなところ、これは大部分そうだと言えばそれまでだけれども、あなた方が見て、なるほど県、市町村の理由を聞くと当然だと、しかも返還をしても特に重大な支障をすぐ来すというようなことがなさそうだというようなところがあれば、これも報告できる範囲で結構でありますけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  221. 伊藤参午

    政府委員伊藤参午君) 先生の御要望、私どもの方でわかる範囲内において後刻御説明したいと思います。
  222. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 後でひとつこれもメモでお願いをいたします。  次に、在日米軍経費で本来やるべき施設の問題、施設の改善とかなんかがあるわけでありますけれども、これもかねがねアメリカからこの部分についても日本が負担しろと、こういうような強い要求によって年々これが膨張しておりますね。これは本来アメリカが全額出すべき筋のものであるのにアメリカが出さないので日本が負担をしている、こういうことになってきておりますが、時間がありませんから具体的にお聞きします。  駐留軍労務者について、法定福利費あるいは任意福利費等、給与の差額、日本の公務員との給与差、こういう点についてはかねがね政府の方も検討をされ、いま実施をされておりますが、これらについてはわからないわけではありません。本来的に言えば、アメリカが出すべきだということを言えばそれまでだけれども、まあまあ私もその程度についてはやむを得ないだろうということを党の方でも考えておるわけでありますが、しかし他の施設経費を見ますと、たとえば隊舎ということになればこれはアメリカの兵舎ですよね。昭和五十四年度で三沢、横田、岩国、それから昭和五十五年度になりますと隊舎七棟、これは三沢、キャンプ座間ほか相当数の地域になっております。それから五十六年度になってまいりますと車両整備工場、航空機掩体、これは格納庫ですかね。航空機用燃料給油施設、つまりこれは飛行場の米軍の飛行機の燃料給油施設だろうと思います。  最初のうちはそうでもなかったんですけれども、こういうふうに直接米軍の兵舎とか格納庫とか、そういうものまで日本が負担をするということについては、これはちょっとわれわれとして理解できないと思うんですよ。どなたの防衛庁長官のときですか、これは思いやりの一つの施策だというようなことで大体始められた政策ですが、こういう点については施設庁としてのお考えはどうなんですか。このままでいけばずるずるずるずる、そのうち飛行機まで買ってくれなんということになるかもしらぬ。
  223. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 先生が若干触れられましたように、いわゆる思いやりに基づく労務経費の分担及び提供施設の整備、これについては、それぞれ昭和五十三年及び五十四年からスタートをいたして今日に至っておるわけでございます。  それからそれに関連をいたしまして、ハワイ会談あるいは日米共同コミュニケにおきまして、アメリカ当局から駐留軍経費の負担軽減について向こう側から要望があって、日本側もそれに対して条約といいますか地位協定の範囲内でと、そう書いてありませんけれども、まあできるだけの努力はいたしましょうということになっておるわけでございます。だから米側にすれば、具体的に余り申し上げるのはどうかと思うんですけれども新聞等に出ておりますから、光熱水料を持ってくれないかとか、そういうような話もちらほら出たわけでございますけれども、われわれの方といたしましては、あくまでも地位協定の範囲内ということでございますので、維持費でありますところの光熱水料とかそういうようなものは持つわけにはまいりません。これは断りました。  労務費をもっとたくさん持ってくれないかと、こういう問題につきましても、いまやっております項目、事項、その範囲を超えては持てない。金額はふくらむかもしれませんけど、それ以は地位協定の解釈上、法制局とも詰めました結果持てないということで、私の方はそれはそういうことを申し入れております。  提供施設の整備でございますけれども、これは地位協定上の限界はそう厳しくはないわけでございますけれども、われわれの方といたしまして諸般の事情を考えて、財政事情もあるし、アメリカの隊舎等の老朽度もあるしということを考えまして、自主的に、アメリカ側の話はふだんよく聞いておりますけれども、それに全部乗っかるということではなくして、われわれの方から見てこの程度はやってやらなきゃならぬかなと思うようなところでもって予算要求をいたして御了解を得ていると、こういうことでございまして、今後どうするんだというお話でございますけれども先ほど申しましたように、駐留軍経費の負担の軽減につきましては、地位協定があるから幾らふやせといっても限度があります。先ほど申しましたように、光熱水料を持てといってもそんなわけにはまいりません。施設整備について今後どうするんだということでございますけれども、財政事情等ありますので、われわれの方として幾らでもふえればいいという性質のものではないことはもちろんでございます。
  224. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これしかし、予算を見ますと、五十三年度から始められております。しかし、五十三年度は労務費の一部ということでありますが、五十四、五十五、五十六を見ますと相当のこれは伸び率ですよね。このままで行ったらこれは相当なものだというふうにこの資料を見ると思うわけです。それでいま施設庁の説明がありました、何でもかんでもはだめだというような方針のようでありますから、その基準のようなものがもしあれば、これも後刻資料として御提出を願いたいと思うんです。  それから最後に、防衛庁が調達する兵器の資料がございます。「最近五ヵ年間の主要装備品、艦艇等の予算単価、契約単価の推移」、この一覧表をいただきましたけれども、この数字にはいろいろ説明が必要なのでしょう、きっと。しかし私どもがこれを見ても非常にわかりません。たとえば航空機の値段にいたしましても、べらぼうに高くなってみたり、また逆に非常に安くなってみたり、これだけの資料ではとても調達の実態というものが把握できないんですがね。数字が非常に違っているのを一、二例をとって、こういうことなんだという説明があれば航空機のところで説明していただけませんか。非常に安くなっているところもありますね。
  225. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 確かにこの資料で見ましても値段の傾向は必ずしも同じじゃございません。F1などで見ますと、大体全体としては下がってきておりますが、たとえば五十三年度が一番高くて、四年度、五年度、六年度と下がっております。一方、F15等につきましては逐年、まあ二年ごとでございますが、コンスタントに上がっているということで、先生おっしゃるとおり違うわけでございます。  まずF1とF15について申し上げさせていただきますが、なぜこういうようないま申し上げたような傾向であるかということでございますが、第一にF1の場合には、五十三年度までのものにつきましては、これは初度部品込みで買っておりますために、それより後のものとはおのずから価格の内容が違うわけでございます。したがいまして、裸値段でちょっと申し上げますとわかりやすいんではないかということで、裸値段で申し上げますと五十二年が二十一・五億円、以下五十三年が二十二・五、五十四年が二十一・六、それから五十五が二十二・三、五十六年が二十一・五というようなことで大体平準化はしております。  それから、それにもかかわらず、さっき申し上げましたように、五十三年が若干高いわけでございますが、これはいろんな要因が絡み合っておりまして、たとえば単価増の要因といたしましては人件費、材料費の値上がりがございます。それから一方単価減の要因といたしましては、当然のことながら生産がふえてまいりますと慣熟といいますか、その技術に当然慣れてまいります。そういった慣熟による加工工数が逓減いたしまして、これが値下がり要因にございます。それからもう一つ複雑な要因は、輸入部品の為替レートが上がったり下がったりしておりまして、それがでこぼこを生む要因になっております。こういったようなことでございます。  それから一方、F15の方につきましては、これは最大の要因はF15につきましてはまだ相当部分を輸入に仰いでおりまして、これを全部アメリカから部品、器材、輸入しておるわけでございますが、アメリカにおきまして大変なインフレがございます。特にF15の材料の主なものを構成しておりますチタンでございますが、チタンにつきましては二年間に七〇%上がるというような大変なインフレになっておりまして、そういったことが影響いたしまして大変値上がりをしているということでございます。  なお、いまの御説明で大体形成的には申し上げたわけでございますが、数値等に基づいて説明しろということでございましたら、また機会を得てそのようにさせていただきたいと思っております。
  226. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 以上です。
  227. 安武洋子

    ○安武洋子君 私はシーレーンの問題で御質問いたします。  ワインバーガー国防長官が先日来日いたしまして鈴木総理と会談をされております。そのときに、首相は昨年の訪米で日米防衛についての役割り分担を表明した、その立場で日本が本土千海里シーレーン防衛で役割り分担をすると理解している、こう発言をいたしております。  防衛庁は鈴木総理から、一千海里防衛で役割り分担をするというアメリカとの約束があるのかないのか、聞いておられますか。また、そのような要求があったのかどうでしょうか、お伺いいたします。
  228. 塩田章

    政府委員塩田章君) 共同声明の文句は御存じのとおりだと思いますが、その共同声明の受けた後プレスクラブで総理が演説をされました。その演説の中にいまのシーレーン防衛のことがされたわけでございますが、これは日本政府がかねてから国会等お答えを申し上げておることをそのまま総理が演説の中でおっしゃったわけでございまして、これは特にアメリカに対する約束とか約束でないとかそういうことじゃなくて、総理日本の政策としてこういうことを考えておるということをお話しになったと、こういうことでございます。
  229. 安武洋子

    ○安武洋子君 そんなことを聞いてないんです。ワインバーガー国防長官が千海里シーレーンでこれを日本が役割り分担をすると理解をしていると向こうがこう発言をしております。だから、防衛庁は鈴木総理から、一千海里防衛で役割り分担をするというアメリカとの約束があるんだか、していないのかということを聞いているか聞いていないかということを聞いているわけです。それにお答えください。
  230. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) その件に関しては総理からまだ何のお話もございません。
  231. 安武洋子

    ○安武洋子君 昨年の七月の二十八日の参議院の内閣委員会塩田局長が答弁をなさっておられます。ここで「日本防衛力につきましては、あくまでも日本の領域あるいは周辺海空域及び航路帯にあっては約一千海里という、私どもが従前からお答えを申し上げておることをそのままアメリカ側指摘しまして、そこの防衛日本がやってもらいたいと、」云々というふうに答弁をなさっておりますけれども、この「そこの防衛日本がやってもらいたい」云々のこの要求を了解なさったのでしょうか。お尋ねいたします。
  232. 塩田章

    政府委員塩田章君) これは、アメリカがそういう要求をしたとか、われわれがそういうことに対して了解をしたとか、そういうことではございません。私たちがそういうことを常に言っておりまして、アメリカもそのことを承知しておると、それだけのことでございます。
  233. 安武洋子

    ○安武洋子君 ですからあなたの御答弁、これずうっと読んで見ますと、そして総理が向こうで言われたことも、向こう側が日本シーレーンで役割り分担をすると理解をするんだというふうなことを言っておりますけれども、「そこの防衛日本がやってもらいたい」というのは、こういう要求をアメリカが強く持っているということは疑いないと思います。  それで、その要求は了解なさらなかったといま御答弁で伺いましたが、さらに伺いますが、昨年の日米首脳会談、大村・ワインバーガー会談あるいはハワイの事務レベル協議でも一切そういうことは了承はなさっておりませんですね、お伺いいたします。
  234. 塩田章

    政府委員塩田章君) 了承というような意味ではございません。そういう意味では了承したという覚えはございません。そういう話題が出たことは事実はございますし、日本側が日本側の意見を言ったことも事実でございますが、これは日本アメリカとの間で片一方が要求し、片一方が了承したと、そういう性質のものではございません。
  235. 安武洋子

    ○安武洋子君 では防衛庁としての御認識を伺いますが、午前中の塩田防衛局長の御答弁の中でも、この一千海里問題というのはまさに焦点になってきているというふうな御答弁がありましたけれども、今後アメリカはこの数百海里、一千海里の日本防衛分担、すなわち日本に一千海里、数百海里の独自防衛というふうなことを強く要求してくるというふうな認識をお持ちでございましょうか。
  236. 塩田章

    政府委員塩田章君) 私が受けておりますのは、日本がこれをやると言っておるので、アメリカはそれはそのことを理解をし、そしてアメリカとしては、日本がそれをやるというには現在の自衛隊能力では不足しているんじゃないかということについて、アメリカ側アメリカなりの意見を言うんではないかというふうには思いますけれども、これはあくまでもそれだけのことでございまして、日本日本としての立場で言っておると、アメリカはそのことを了解した上でもっと防衛力が要るんではないかという意見を持っていると、そのことをいわゆる期待表明としているかもしれないと、そういうことではないかと思うんですね。
  237. 安武洋子

    ○安武洋子君 としますと、分担を日本は確約をしていない。そのことを御答弁なさいました。とすると、わが国アメリカとはこの問題については意見は相違すると、こういうことでございますね。確認しておきます。
  238. 塩田章

    政府委員塩田章君) 意見は相違していないと思うんです。わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合に当たり一千海里の防衛をできるように防衛力整備したいと日本が言っているのに対して、アメリカはそのことに対して理解を示しているわけですから、そのことに関する限り意見の相違はないわけです。
  239. 安武洋子

    ○安武洋子君 では聞きますけれども日本がこの防衛力を一千海里それから数百海里整備をしたいと言っていることは、日本独自でしたいと思っていることなんですかどうなんですか。アメリカは、一貫して要求としては日本防衛分担ということを言っているし、またワインバーガーもそのように理解をしているということを繰り返し表明しているわけですから、あなたが意見の相違がないと言うことは、これは日本が独自に分担をするということではなくて、あくまでもアメリカと一緒にというふうなことなんですか。役割り分担じゃないんですか。そこをはっきりしてください。
  240. 塩田章

    政府委員塩田章君) これは、今度のワインバーガー会談はもとより、去年の日米首脳会談はもとより、はるか前から日本政府はそういうことを言っているわけです。日本考え方として言っておるわけです。これを受けまして、五十三年の十一月にできた日米ガイドラインでも日米の海上作戦についての合意ができておるわけでございまして、そのことについて従前からのいきさつをずっと追っていきますと、特に今回あるいは去年の首脳会談以降何らかの変化があったというふうには私どもは認識をしていないわけです。
  241. 安武洋子

    ○安武洋子君 ではアメリカは、日本が一千海里それから数百海里、これを分担して独自で防衛しなくてもよい、こういう認識に立っているということですね。
  242. 塩田章

    政府委員塩田章君) 結局日米で何が合意できておるかといいますと、日米の五十三年十一月のガイドラインの中に「海上作戦」としまして、「海上自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備のための作戦並びに周辺海域における対潜作戦、船舶の保護のための作戦その他の作戦を主体となって実施する。米海軍部隊は、海上自衛隊の行う作戦を支援し、及び機動打撃力を有する」云々と、こうなっておりまして、このことが現在時点での日米の合意でございまして、これに基づいて私たちは現在作戦計画研究を進めておりますし、それからわが方の防衛力整備といたしましては、このさらに以前の防衛計画大綱の中にあります防衛構想、こういうものを受けまして防衛力整備をしておる。その中身としまして、周辺数百海里、航路帯を設ける場合には一千海里の防衛力整備したい、こういうことをかねてから申しておる。こういうことでございます。
  243. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから私は聞いております。だからアメリカは、日本シーレーン、この一千海里それから数百海里、これを独自で分担しなくてもいいということを了承しているんですね、だから意見が一致しているんですねということを聞いております。そこを明確に答えてください。
  244. 塩田章

    政府委員塩田章君) そういう意味では、日本が独自ということでなくて、主体となって海上自衛隊が作戦を行う、こういうことの中にいまの周辺海域のことは入るわけですから、そういう意味では、海上自衛隊が主体になって米海軍がこれを支援する、こういう形でございます。
  245. 安武洋子

    ○安武洋子君 そのことをアメリカは了解をしているということですね。もう一遍念のために。
  246. 塩田章

    政府委員塩田章君) これはガイドラインでございますから、日米の合意の文書でございます。
  247. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、やっぱりこのワインバーガーの発言の中で、役割り分担をすると理解しているというふうな発言がありますけれども、これは向こうが勝手に理解しているだけということになりますね。そうしたら、こういうアメリカの要求に従っていきますと、私はいまの大綱を突破せざるを得ないのではなかろうかと思うわけです。矢田統合幕僚会議議長も、アメリカ要請している周辺一千海里シーレーン防衛、これは大綱達成されても十分な成果が上げられない、こう言っております。そして三月二十六日の参議院の予算委員会塩田局長が、米側は全般的に防衛計画大綱の線よりももっと多くのものを要求している、こう御答弁なさっていらっしゃいます。  そこで具体的に聞きますが、この防衛計画大綱の線よりももっと多くのものを要求しているというのはどういうことなのでしょうか、具体的に明らかにしていただきたいんです。それは防衛構想の面でそう言っているのか、あるいは数字的なものなのでしょうか、お答えいただきます。
  248. 塩田章

    政府委員塩田章君) 具体的にではなくて一般的に、シーレーン防衛について話が出ましたときに、日本のいまの自衛隊防衛力で十分できないのではないかということを言っておるわけでございまして、このことは、たとえば最近アメリカで行われております公聴会等におきましても政府側の証言の中にも述べております。そういう意味では、アメリカ側としては、そういうところから察しますと、日本が言っているシーレーン防衛についていまの自衛隊では不足ではないかという考え方を持っておることはうかがわれるわけでございます。具体的にわれわれに向かってどうしろと言っているわけではございません。
  249. 安武洋子

    ○安武洋子君 具体的に防衛構想の面で自衛隊のいまの力ではだめなんだと言っているのか、あるいは数字的なものを挙げて言っているのか。対潜水上艦艇が六十隻とか潜水艦が十六隻、これでは少ないよというふうなことで話が出ているのか。そこの点をもう一つちゃんと明確にしていただきたいし、もう一つ確認をしておきたいのは、ではこの一千海里の防衛分担、役割り分担、それを日本が受け持てというアメリカの要求はないんですね、あなたのお話なら。
  250. 塩田章

    政府委員塩田章君) 今回具体的な話があったわけではございません。去年のハワイ事務レベル協議以降そういう質問がときどきあるわけでございますが、ハワイ協議のあの形の話題の中にはいろいろ出たことは出ましたけれども、今回そういう具体的な数字を挙げての話があったわけではない。それから、一千海里の役割りを受け持てと言っているのではなくて、日本がやると言っていることをアメリカ理解をしておる、こういうことでございます。
  251. 安武洋子

    ○安武洋子君 では日本が独自にそこを分担してやろう、こう考えているんですか。もう一遍聞きますけれども
  252. 塩田章

    政府委員塩田章君) 日本は、周辺数百海里、航路帯を設ける場合にあっては一千海里程度の海上護衛ができるような防衛力整備したい、このように言っておるわけであります。
  253. 安武洋子

    ○安武洋子君 どうもすれ違うんですよね。あなた頭ひねってなさるけれども、私の方が頭ひねりたいんです。いまの矢田統幕議長の話だって、アメリカからのそういう要求にはこたえたら大変なことになると。いま大綱達成されても十分な成果が上げられないという前提として、アメリカ要請している云々と、こういうことはもう一般的に言われているわけですよ。だから、この点アメリカからそういう要請があったのかと言えば、そういうことはないとおっしゃる。そして日本が独自にそういうことを目指しているだけだとおっしゃる。で、アメリカがそれを了解しているのかと言うと、アメリカとのそれは合同会議で決まったことだと、こういうふうなことでおっしゃっておりますでしょう。だから、これはあくまでも、アメリカからこういう要求は日本に来ていない、そして日本が独自にそういうことを目指している、そして主体的にやろうとしているんだと、こういうことでまとめてよろしゅうございますね。
  254. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先ほどから防衛局長お答えしておりますとおり、もともと、われわれは日本の国の安全と平和を守るためにこういう防衛計画をつくり上げまして、その中で、周辺数百海里あるいはまた航路帯を設けるならば一千海里、こういうものを守るための力もつけたいということで努力をしております。ただ、現時点ではまだ到達しておりません。また、防衛計画大綱水準ができ上がった時点においても、あるいは、相当の力は出ると思いますけれども不十分かもしれないというふうにもわれわれ自身も考えております。これはもともと、われわれが日本の国を守るための自主的な努力として掲げております努力目標でございます。これに向かって毎日進んでおるわけでございます。したがって、そういうことを前提にいたしまして、今回ワインバーガーのときにも、そういう話が出たときに、まことにそれは自主的な努力で大変結構なことでございます、ぜひ引き続き防衛力整備努力をしてくださいというような期待表明がございました。その中で、先ほど防衛局長が申し上げましたとおり、そうは言っても、防空能力とか対潜能力とか、そういうことでもっと改善する必要があるのではないでしょうかというような期待表明があったということは事実でございますけれども、もともと、われわれがアメリカから課された役割りとかそういうことでやっておるものではございません。
  255. 安武洋子

    ○安武洋子君 こういうシーレーン防衛で膨大な軍事費をますます膨張させていこうとしている、私はそういうことは全くけしからぬと思います。  そこで、五六中業について伺います、それと関連がありますから。一体五六中業作業というのは現在どこまで進んでいるんですか。
  256. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 五六中業作成作業は、昨年の国防会議で了承されたことに従いまして、おおむね一ヵ年の作業期間を予定して、いま鋭意作業を進めておるところでございます。作業も順調に進んでおります。ただ、なかなか大変な作業でもございますので、いまのところ内容等について御説明できる段階でないということはあらかじめ申し上げておきたいと思います。
  257. 安武洋子

    ○安武洋子君 この一月の六日に参事官会議が開かれて、ここで陸海空三幕僚監部の要求は聞かれていると思います。この五六中業期間中の軍事費を試算したら、GNPが五年間平均一・三%にもなったというふうに新聞報道されておりますけれども、これは事実ですか。お尋ねいたします。
  258. 塩田章

    政府委員塩田章君) 一月六日に参事官会議を開きまして、各幕の素案をお聞きしたということは事実でございます。
  259. 安武洋子

    ○安武洋子君 そのときに、その数字が五六中業GNPの一考を超すというふうなことはなかったのですか。
  260. 塩田章

    政府委員塩田章君) 各幕の案といいますのも、今後われわれがつくりますのも主要装備の、主要事業の積み上げ、しかも正確に積み上げますのは必要装備だけでございまして、全体の事業費を出しておるわけではございませんので、その時点でいま御指摘のように対GNP比が何ぼになるかという計算をしたわけではございませんので、いまの御指摘の数値については私からは何ともお答えいたしかねます。
  261. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、新聞報道によりますと、制服の要求した正面装備ですけれども、これが約六兆円にもなる。それから人件費などを含めますと五年間で約二十兆円にもなる。これではGNP一%突破というのは確実です。ところが一方、総理GNP一%以内という発言もありますし、それから閣議決定もあります。だから防衛庁は最終的に、国防会議に付議する前に総理の裁断を求めざるを得ない、このために防衛庁はどのような事態にも対応できるように複数の五六中業の原案を準備していく必要がある、こういうふうに報道されております。それで、規模的には制服が原案の六兆円を上限にする、下限はおよそ四兆五千億程度、こういう範囲で複数案を準備する方針で制服原案を見直す。で、数通りの案を準備する、こういうことが言われておりますけれども、このように複数案を考えているのは事実なんでしょうか。お伺いをいたします。
  262. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) けさほど堀江先生その他にも申し上げましたとおり、いま作業中でございまして、いろいろの考え方があると思います。また、御指摘のような防衛庁外の御意見もいろいろあるようでございますけれども、われわれとしては国民の皆様方に御納得いただけるような、また国会の皆様方にも御納得いただけるようなこの時点での一番いい案をつくり上げまして、一本にまとめまして、しかも対GNP比一%という閣議決定というものをしかと念頭に置きながら、そして案としてもこの時点ではいい案というものを調整しまとめながら、一本の案としてまとめて国防会議に付議したい、そのために鋭意努力中であるということでございます。
  263. 安武洋子

    ○安武洋子君 ちょっと伺いますが、念頭に置くということは、必ず守る、堅持をするということですか。
  264. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 閣議決定は当然守られなければなりません。
  265. 安武洋子

    ○安武洋子君 では一考は堅持をする、こういうことは間違いないと伺って次の質問にまいりますが、昨年七月二十八日の参議院の内閣委員会です。これは大村長官でございますが、五六中業作業の際、昨年のハワイ協議で出された「米側意見のうち取り入れるものがあれば参考としていきたい」と、こういうふうに述べておられます。それで、アメリカの要求を取り入れるようなことがありましても、このGNP一%以内ということは堅持をなさるでしょうか。それからまた、ワインバーガー国防長官が来日して、事務レベルの協議というのがことしもハワイで行われるというふうな予定だというふうに聞いております。この席上で、アメリカの要求がどのようなのが出てくるかわかりませんけれども、たとえどのようなものが出てこようと一%を超えない、一%以内を堅持すると。私は一%以内だからいいと言っているわけではありませんけれども、一%を突破するということは大変なことです。そういうことを堅持する、この二つはいかがでしょうか、御答弁いただきます。
  266. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) これも再三申し上げておりますけれども閣議決定ももちろん念頭に置きそれも守っていかなきゃなりませんし、また反面、国民の皆様方に御信頼いただけるような防衛の実績も積み重ねていかなくちゃいけないということで、まことに苦心の要るところでございますけれども、両方の調整をうまくとりながらりっぱな案をつくりたいということで御理解を賜りたいと思います。なお、補足的に防衛局長から説明をさせます。
  267. 塩田章

    政府委員塩田章君) 後段の、昨年ハワイ会談でアメリカがいろいろ言ったことについて参考としていくということを言ったがそれを参考にしておるか、あるいはこの次にあることについてもそうするのかと、こういうことでございますが、これはそのときにも言ったと思いますけれどもアメリカとのいろんなディスカッションでございますからいろんな意見が出てきます。それについてディスカッションをする過程において、あるいはその後いろんな形で対話があるわけでございますから、そういう中でディスカッションをしながら参考になるものは参考として聞いていくということではございますが、具体的にその後いまの防衛計画大綱を目指してやっております五六中業の中で、それをどこをどういうふうに取り入れたかということにつきまして、私どもアメリカのこういった点をこういうふうに取り入れたというふうな意味で参考にしておるわけではございません。われわれの考え方でやっております。  ただ、継戦能力向上でありますとか、あるいは即応態勢の整備でありますとかC3Iの整備だとか、こういうようなことはアメリカ側は言っておりますし、またわれわれもそれは聞いておりまして、それは当然のことでございます。われわれアメリカに言われるまでもなく考えなくてはいけない問題でございます。そういうようなことは当然今度の五六中業の中でも考えを取り入れていかなきゃいかぬというふうに思っておりますが、先生の御指摘がもし何が何隻、何が何機というようなことを取り入れたかという御指摘であれば、それは取り入れておりません。
  268. 安武洋子

    ○安武洋子君 塩田さん、私そんなことを一つも聞いていないのに違うことを御答弁くださった。私は、アメリカからいろいろな要求があって、それを取り入れたとしてもGNP一%を絶対堅持するだろうなと、今後そういう要求があったとしても一%は堅持するだろうなと、そういうことを私はいま御質問申し上げたのです。  さらにお伺いいたしますけれども、五六中業中に防衛大綱水準達成する、こういうふうに言っておられますけれども、その水準達成したとしてもGNP一%の枠、これは厳守をなさるのでしょうね。
  269. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先生先ほどGNP一%のことをその都度御引用でございますけれども、これは言うまでもなく閣議決定で、しかもその前提には当面GNP比一%をめどとして、目途としてということでございまして、そこにこの閣議決定の意味合いがあるわけでございまして、そういう意味で私ども念頭に置いてやらねばならぬ、また念頭に置くということもそこに意味があるのでございまして、ぜひ御賢察を賜りたいと思います。
  270. 安武洋子

    ○安武洋子君 ということは、GNP一%は当面だけ守って、情勢によってはこれはめどであるから、目途であるから変えると、こういう前提があるのだということでございますか。
  271. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 文字どおり当面でございまして、それから変えるとも変えないとも、そういうことでございまして、いまのところは閣議決定を守るということを念頭に置いて作業を進めておる、しかも大変苦心のあるぎりぎりの努力をしておるわけでございまして、なかなかそこに大変な防衛庁としての苦心のあるということで、温かい御理解を賜りたいと思います。
  272. 安武洋子

    ○安武洋子君 全くそんな温かい理解なんかできません。(笑声)  お聞きいたしますけれども、五六中業中に、じゃGNP一%、これをお変えになるんですか。
  273. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) いま作業中でございまして、またGNPがどうなるかというようなことも流動的でもございますし、いま具体的に変えるとも変えないとも申し上げることのできない段階でございます。
  274. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ちょっと政府側に申し上げておきたいと思いますが、議員の質問に対して大きい声で笑ったりなんかするということはちょっと不見識だと私は思います。今後十分注意をお願いいたします。
  275. 安武洋子

    ○安武洋子君 では五六中業作成中にGNP一%以内におさまらない、そういうことになりますと、この枠を変更してほしいというふうなことを総理とか国防会議意見具申するというようなこともあり得るということですか。
  276. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 直前にもお答えを申し上げましたとおり、まだ作業中でございますし、内容も固まっておりません。またGNPも流動的でございます。したがいまして、将来の仮定のことにつきましていまお答えできる段階ではございません。
  277. 安武洋子

    ○安武洋子君 ますますおかしい。総理は、鈴木内閣においてはと。鈴木内閣まだ続いているんですよね。鈴木内閣壊れているんじゃないでしょう。だったら鈴木内閣GNP一%堅持しないといけないんですよ。それなのに、いままだ作業中だ、わからない、こんなことでいいんですか。鈴木内閣なのにGNP一%堅持をなさらないんですか。その点をはっきりしてください。
  278. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 鈴木総理がそういうことを国会でもしばしば申し述べられておりますことも重々承知をしております。
  279. 安武洋子

    ○安武洋子君 重々承知をしていてどうするんですか。ただ念頭に置くだけで、変えるかもわからない、当面だ、めどだとさっきおっしゃっているけれども、鈴木内閣である限りは堅持をしないといけないんじゃないんですか。
  280. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) またこれ繰り返しになりますけれども、当面対GNP比一%ということを目途としてやるということが閣議決定の趣旨でもございますし、また作業内容はまだ固まってもおりませんし、また根本のGNPもどうなるかわからないというような段階で、いわば仮定の、これからのことについていま私は正確な答弁はできないということを申し上げておきます。
  281. 安武洋子

    ○安武洋子君 仮定じゃないんですよね。長官、よく聞いてください。いま鈴木内閣——あなた鈴木内閣の閣僚の一員、その閣僚の一員が、総理が鈴木内閣においてはGNP一%を堅持する、こう言っているんです。それなのに、あなたはこの一%を堅持して五六中業作成に当たらないんですか。あなたはそういう指示をおろさないんですか。おかしいじゃないですか。当面だ何だと言いながら、閣議決定はそうなっている。総理は、それがたとえあったとしても鈴木内閣の間は一%を堅持する、こういうふうにはっきり国会で答弁をなさっておられます。何も私人として発言されたのではなしに、国会答弁なんです。この総理の国会答弁を一体どう思っていらっしゃるんですか。はっきりしてください。
  282. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 総理のそういう御発言の趣旨も重々承知をしております。閣議決定のことも、閣僚として守らにゃならぬということも重々承知をしております。  そういうことを踏まえながら、いまそれらのことがうまく調整されるように目下ぎりぎりの努力をしておる、この苦心のことをぜひ御理解を賜りたいと思います。
  283. 安武洋子

    ○安武洋子君 そんなもの全く理解できません。理論的にも理解できない。鈴木総理は、一%以内堅持と言っているんでしょう。それを守るんですか、守らないんですか。もう守るか守らないかで結構ですから、イエスかノーか端的に答えてください。
  284. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 守るようにいま努力をしております。
  285. 安武洋子

    ○安武洋子君 守るように努力じゃなくて、絶対守らなければいけないんじゃないですか。しつこく聞きますが。
  286. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) われわれ、やっぱり守るように努力していると言う以外にはいまのところお答えできません。
  287. 安武洋子

    ○安武洋子君 努力しているということとそれを厳守するということは、これは明らかに違ってきます。努力しているということは、努力してもできなければしようがないということになりますが、これは総理の国会答弁で、鈴木内閣である限りは一%堅持——堅持ということは絶対守るということなんです。国民に対する約束です。それをお破りに防衛庁長官なるんですか。あなたの答弁、ここははっきりしていただかないと私は引き下がれません。
  288. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 初めから破るつもりで守る努力をしているわけではございません。守るためにいろいろと努力をしているということでございます。
  289. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう押し問答になりますからね。  では、絶対に守るという努力をしているということで、守るという立場に立たれるということで私は了解いたしますが、それでよろしいでしょうね。
  290. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 一般に世の中に絶対ということはほとんどあり得ないわけでございまして、守るように懸命な努力をしているということでぜひ御理解を賜りたいと思います。
  291. 安武洋子

    ○安武洋子君 そういうふうにごまかされたら困るんですよ。これは、国民に対してGNP一%以内というのは、鈴木内閣である限り守るんだという総理国民に対して国会で答弁されている約束なんです。それが、絶対ということはあり得ないから云々とか、いろんな前提を置かれるということには疑心暗鬼にならざるを得ないわけです。ここはそういうことじゃなくて、総理のそういう国会答弁をしっかり守るんだという立場にあなたは閣僚のお一人として当然お立ちになるべきではありませんか。また重ねてお伺いいたします。はっきりしてください。
  292. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) もう御丁重な重ねての御質問でございますが、私の方としても、この時点ではまだ内容も固まっておりませんし、GNPも流動的でもございますし、正確なお答えはできません。  繰り返して申し上げますけれども総理の国会での御発言、閣議決定、それから国民に信頼されるような防衛体制を一日も早くつくり上げたいという防衛庁長官として国民に対する責務、そういうようなことをいろいろとかみ合わせて、閣議決定の趣旨も生かされるような、守られるようなそういうぎりぎりの努力を懸命に防衛庁挙げてやっておるという段階でありますということだけしかいまのところ申し上げられないのでございます。
  293. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう私はずいぶんと不満です。そういうことで、私は鈴木内閣の一閣僚としての資格がないということを申し上げとうございます。  しかし、もう時間が迫ってきましたので、あとちょっとかためてお伺いいたしますので、お答えください。  一月の十二日の鈴木首相から伊藤防衛庁長官への指示事項で、五十八年度の予算概算要求が五三中業の最終年度になるのか、あるいは五六中業の最初になるのか、これによって五六中業作業のタイミングも変わってくると思うので検討してほしいということがありますけれども、どのような結論を出されているんでしょうか。  それから昨年の四月二十八日の防衛庁長官の発言で、五六中業作成期間はおよそ一ヵ年の予定となっています。私は、中業作成で軍拡を推し進めることには反対ですけれども防衛庁計画をお聞きいたしますけれども、もう一年経過しようとしておりますけれども、これは概算要求までに結論が出るんでしょうか。概算要求に間に合わないことがあり得るんでしょうか。  それから当初四月に防衛庁案、七、八月ごろに国防会議で了承が見込まれておりました五六中業策定のスケジュールが大幅におくれることが予想されるというふうなことがありますので、そのことが事実かどうかということをお答えいただきとうございます。
  294. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) まず、五六中業のあれは初年度が五八予算になるのでございまして、それは五六中業の初年度として五八の予算考える。  それから作業は順調に、先ほど来私何度も御答弁申し上げましたように、なかなかむずかしい作業でございますけれども作業としては順調に進んでおります。  それから概算要求に間に合うようにぜひつくり上げたいというような目標でいま進めております。
  295. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう私の持ち時間が残念ながらなくなってしまいました。しかし、きょう残された問題は今後もやっぱりはっきりさせていただきたいと思いますが、いまの御答弁で五六中業作業がとても順調に進んでいると、こうお答えになりながら、まだ作業中なのでGNP云々一%超えるかどうかわからないんだとかというふうな実にあいまいな姿勢もおとりになっていることは明白です。私は、鈴木内閣においてGNP一%堅持をするという総理の国会答弁、これは厳守さるべきだと、防衛庁長官もこの線に沿って厳守をしていただきたい、このことを重ねて御要求をいたしまして、私の質問を終わります。
  296. 秦豊

    ○秦豊君 伊藤長官、いま霞が関の各省庁は国会終了直後の高級幹部の人事異動をめぐってもう内定期に入っている。ところが、ひとり六本木檜町かいわいのみは逆にある意味の臨戦態勢ね、ハワイの事務協議、続く伊藤訪米、これが終わるまではもう現体制でやる以外にないと、川の真ん中で馬は乗りかえられぬというふうな心境のようだし、体制のようだし、常識的にはぼくはそうであろうと、しばらく塩漬けでしょう、違いますか。
  297. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 人事の問題は大事なことでございますので、行政府長官としては特に大事なことと考えておりますが、私自身いまさらひけらかすわけではございませんけれども、新米の防衛庁長官でもございまして、特に国会でいろいろな御論議のあったことでもございますので、目下国会で来年度の予算をぜひ早期に御審議を賜りまして成立をいただきたいということで専念をしておりますので、そういう風評あるいはまた御指摘のことについてまだ私の念頭にはないのでございまして、お答えできないことを残念に思います。
  298. 秦豊

    ○秦豊君 その答弁でいいんですよ。私はきょう本論はシーレーンに当然集中したい。しかし、これは国家の総合安全保障に関するし、一防衛庁マターではない、政府マターである。したがって宮澤官房長官の出席を求めています。いま定例会見中ですから、それを待つという意味で本論には入りません。入らないで別な問題をしばらく防衛庁に聞いていきたい。  石崎参事官いらっしゃいますな。——一部のマスメディアが、これは意外だったんだが、陸の日米共同訓練についての若干の報道をしておる。海がやる、空がやる、これはわかるんだ。ところが、有事にも来援が予見されていないアメリカの陸上兵力と日本の陸上自衛隊が共同訓練を積み重ねようとする。山桜二とか山桜三とか、富士の実動演習とか、これ一体理由と必然性がわからない、私には。何をねらい、何を目指したいかなる必然性に基づく演習なのか、この辺をまず明らかにしてもらわないとわからぬ。
  299. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 陸の日米共同訓練の必要性については、私よりむしろ防衛局長が答弁した方が適当な問題ではないかと思いますが、あえて訓練担当者として申し上げれば、将来の有事の際の米国陸軍の来援がどういう形になるのか、これはまだガイドラインに基づくいろんな研究なども行っている段階でありますので私にわからない点が多いんでありますが、いずれにしても、どういう形の来援が可能であるにしても、そのときに米陸軍と陸上自衛隊との連携作業というものがスムーズに行えるように準備しておくということは必要であろうと考えております。  そこで、いま行っている別途の研究が進むにつれて、訓練の内容にもそれが投影されてくるであろうと思いますけれども、目下のところは通信訓練であるとか図上訓練であるとかを通じまして、ごく基礎的な両者のコミュニケーションの確立とか、基礎的な連携要領の熟練というところにねらいを定めましてやっておるわけでございます。
  300. 秦豊

    ○秦豊君 これ有事来援といったって、限定的かつ小規模侵略は独力対処。ハワイの師団も来ませんよ、歩兵師団も。沖繩の第三海兵師団は中東へ行っていますよ。非実体的なんだ、非現実なんだ、このシナリオは。だから、海がやる、空がやる、陸もおくれじ、これはいけない。だから防衛局長、補足してください。何をねらったものか。  また、もう一つ。石崎さん含めて、これは、ことしは富士の実動で一応終わりでしょうな。来年以降拡大傾向を目指すのか、その辺もあわせて答えてもらいたい。
  301. 塩田章

    政府委員塩田章君) これはよく御存じのことを申し上げて恐縮ですが、ガイドラインの中の「陸上作戦」という項に「陸上自衛隊及び米陸上部隊は、日本防衛のための陸上作戦を共同して実施する。」と、こうありまして、「米陸上部隊は、必要に応じ来援し、反撃のための作戦を中心に陸上自衛隊と共同して作戦を実施する。」と、こういうことがガイドラインの中に決められております。  したがいまして、先ほど先生は陸上部隊の来援はないという前提でお話しになりましたが、私どもはその「ない」という前提に立つわけにはまいらないということでございます。
  302. 秦豊

    ○秦豊君 来年からのことを、石崎さん、拡大傾向なのか、大体横ばいレベルぐらいでこの程度の訓練を維持するのか、その辺はどうなのか。
  303. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 一言で申し上げれば、やや拡大というところでございます。というのは、今年度やりました通信訓練、図上訓練、こういったものに加えて来年度は、現在審議していただいておる予算が通ればの話でありますが、それに加えて実動訓練もやりたいと思っておりますので、それが新たに加わるという意味で若干拡大ぎみと申し上げたわけであります。
  304. 秦豊

    ○秦豊君 和田装備局長、突然ですが、アメリカが真に目指しているもの、技術協力の。これは日本からの完成技術そのものの移転じゃなくて、アメリカとNATOがやっているスタイルの開発協力体制に持っていきたい、こういうねらいは感じられますか。
  305. 和田裕

    政府委員(和田裕君) アメリカとの間は、まだ対米技術供与の問題があるということを申し上げている関係もございまして、そう深い話に入っているわけではございません。  ただ、昨年十二月に第三回の装備技術定期協議をやりました際にも、先方から、わが国との間で共同研究、共同開発といったことを考えてみたいと、こういうお話がございました。それが、いま先生おっしゃいましたようなNATOスタイルのものなのかどうなのかわかりませんけれども、常識的に考えてみまして、NATOとアメリカの間にはこの話につきましてもう大変長い歴史がございます。日本の場合にはまだ話を聞いたばかりで中身もよく説明を受けてない、こういうことでございますので、ちょっとまだこれについてとやかく言うのは早いんではないかという気がいたします。
  306. 秦豊

    ○秦豊君 いずれにせよ、次の日米協議は六月ワシントンですか、それは確定したのかどうか。それから議題は、いずれにしても主題はエアディフェンスが主題なのか、あるいは日本からの、当然たまりたまった宿題がありますからね、どの程度対米協力ができるかということの結論、それがあると思うんだが、あなたが予見される次回ワシントンでの協議の幅、範囲、これを聞いておきたい。
  307. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 次回につきましては、十二月のときには確かに国会が終わった後にでもという話ございましたが、その後一切接触もございませんで、確定しているというのはちょっと言い過ぎではないかという感じが率直にいたします。  それから議題についても、そのときに一体どういう状態になっておりますか、いまのところまだ何とも言えませんので、実際的にはその近くになりましてから、実際に第四回が開かれる近くになりましてからお互いに接触して決めるということになるんではないかと考えております。
  308. 秦豊

    ○秦豊君 きわめてこれ具体的な問題だけれども、次の八八戦車ですね、わが国の。それとアメリカの例のM1エイブラムスの後の後継戦車、XM2と言うべきかもしれないが、それの両方とも主砲が百二十ミリになると思うんですがね。これは日本製鋼所としかるべきアメリカの特定企業とのこれこそ共同開発というふうなスタイルはあり得るんですか。
  309. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 次期の戦車でございますが、確かに八八といいますか何といいますか、いまの開発計画では百二十ミリの砲を備えることを考えております。それからアメリカにおきましても、エイブラムスにつきまして工程がどうかちょっと存じませんが、私が昨年行きましたときに話を聞いたところでは、エイブラムス自体につきまして現在百五ミリを積んでおりますが、これを百二十ミリに換装したいという計画は持っているやに聞いております。  したがいまして、同じ百二十ミリの砲を積むのであれば、お互いの間で共用性——インターオペラビリティーといいますか、共用性を持つ砲がいいだろうということで、情報交換等をしたいなということでその話はいま進めてはおります。  ただ、それが具体的には全く同一のものをつけるかどうかにつきましては、いままだ確定的に申し上げられません。と申しますのは、片や技術研究本部におきましてわが国独自の百二十ミリの砲のいま研究を行っておりますし、それからアメリカの方はどうもラインメタルの砲をほぼ採用する方向で大体決まっているようでございますので、そこら辺の感じでございますので、いまのところ最低限申し上げられるのは、インターオペラビリティーを確保する方向でいま話し合いといいますか、お互いに情報交換をするようなことを話しつつあるということだけでございます。
  310. 秦豊

    ○秦豊君 あと一つだけ聞いておきたいんだが、いま陸自が使っている対戦車ロケットですね、あの六四式誘導弾。それから七五式の多連装ロケット、あれはコンパクトでわりと使いいいわけですよね。こういうものにアメリカ陸軍としても関心があって、そういうものを基礎にして共同開発研究というふうなことは全く考えられてはいませんか。
  311. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 私が見聞きしている範囲ではそういったことは一切ございません。
  312. 秦豊

    ○秦豊君 防衛局長ですかな、これは。統合という問題をちょっと聞いておきたいんですよ。  なぜ聞くか——今後検討課題に必ず上ると私は思っているからです。つまり率直に言って、陸海空といま三自衛隊が鼎立しているわけだが、国土防衛についてさえその防衛構想が整合しているとはとても考えられない。幕の人間はどう言っているか知りませんよ。たとえば、だれが言ったのか知らぬが、航空が勇猛果敢・支離滅裂であり、陸上が用意周到・頑迷固陋であって、海上が伝統尊重・唯我独尊だと。僕はなかなかよく聞いてみるとわかるような気もするんだな、隊の気質というか。これはまあ一種のジョークとして生まれた言葉かもしれないが、作戦思想においても果たして整合性と調整が終わっているというふうなことを言えるかどうか、三自衛隊について。海はシーレーンだと、空は全土だと、それから陸は北海道と言っているんだ、今度。Z師団に対して七五%の戦力アップだ、こう言って戦力を備えるなんて相変わらず北、北と言っている。アメリカはあり得ないから西を向いてくれと、朝鮮人民……。それぐらい違う。そういう意味で、果たしてその作戦思想が三自衛隊というふうなこういう単位で調整されていると防衛局長、言えますかな。
  313. 塩田章

    政府委員塩田章君) 陸海空それぞれの基本的な使命に応じた希望なりあるいは将来計画を持っておると、あるいはそういう議論をするということはある程度それはあるんだろうと思いますが、防衛庁としましてこれをどういうふうに実際の行政の面で取り仕切っていっているかといいますと、これはやはり統合幕僚会議がございまして、具体的に申しますと、年度防衛計画というのをつくっているわけでございますが、その年度防衛計画は、もちろんこれは陸海空それぞれつくるわけでございますが、その前提になる統合計画をまず統幕でやる。それには、御承知のように陸海空各幕から職員が出ておりまして、そこで練ったものを各幕におろして、それを受けて各幕がつくるというようなことで、年度防衛計画につきましても整合性を図るというようなことはもうやっております。そういう意味において、私は現状においてそういった統合についての配慮はいたしておると、もうこれで十分かどうかという議論はもちろんございますけれども、何ら拱手傍観しているわけでは決してないということを申し上げます。
  314. 秦豊

    ○秦豊君 官房長官いらしていただきましたので、早速主題に入りたいと思いますが、防衛局長それから防衛庁長官、この統合運用というのは、たとえばスウェーデンなんかは全土を七つか八つのブロックに分けて、それぞれ統合部隊を運用している。日本の場合、たとえば北海道。あなた方がそれほど重視するならば、北海道における部隊運用をまず統合部隊として設置してやってみると、慣熟してみるというふうなことは私はあり得べき構想の一つだと思うんですよね。  たとえば、海峡防衛というのは統合運用が最も適合するわけ。だから、それを含めて今後部隊の統合については十分に検討すべきだなという考えはお持ちかどうかだけにとどめておいて主題に移りたいと思うが、どうでしょうか。
  315. 塩田章

    政府委員塩田章君) 統合、いかにあるべきかという問題意識は持っております。持っておりますが、現在御指摘のような統合部隊を実際につくってみるかというところまではまだいっておりませんで、ことしの五月にも北海道の方に陸上部隊を輸送することを中心にしました統合演習を行いますが、いまはそういった統合演習を実際にやってみると、その積み重ねの中で陸海空の各級指揮官のそういった統合マインドといいますものを育てていきたいというところの段階でございます。
  316. 秦豊

    ○秦豊君 シーレーンの主題に入る前提としまして確認をしておきたいんだが、これは塩田さんだと思います。  ワインバーガー・伊藤会談で、今回はこれまでと、次はハワイでテクニカルな問題を詰めましょうという了解で散りましたね。そうすると、このテクニカルな問題というのはどんな範囲、どんな事項が考えられますか、確認しておきたい。
  317. 塩田章

    政府委員塩田章君) 今回は一般的な期待表明がございまして、ハワイで引き続きこういった問題の話し合いをしたいということでございました。別にテクニカルという言葉を使ったわけでもございませんが、内容はどうなるかわかりませんけれども、この問題を引き続きハワイで話し合いをしたいという先方の申し出があったわけでございます。
  318. 秦豊

    ○秦豊君 では、非常に漠々としているものだから、一回改めて夏ハワイに集まってもなかなか煮詰まらないことも多分にあり得るし、いわんや伊藤訪米がシーレーン日米間の協議についての最後の場面ということもとても考えられない、かなり長い時間かかるというふうにとってよろしいですかな。
  319. 塩田章

    政府委員塩田章君) もともとハワイの協議といいますものは、いつも申し上げておりますようにフリーなディスカッションということが主題でございますから、そこで煮詰めるといったような会議の場ではもともとないというように私ども思っております。  これはそれじゃ、その後の、いまのお話しのございました伊藤長官の訪米というような時期がもしあるとすれば、そのときにどうかというようなお尋ねでございますが、こういった種類の話は、まあ要するに不断の対話ということが向こう側の趣意でございましょうし、われわれも日米間のこういった問題についての不断の対話を続けていくということに、積極的な意義はむしろそちらの方にあるんだろうということで、別にタイムリミットはいつごろだとか、そういうようなことで詰めていこうという考え方ではございません。
  320. 秦豊

    ○秦豊君 それからこれも確認をしておきたい。統幕議長はああ言っていますね、大綱水準を備えてもシーレーンは守れません。恐らくワインバーガー国防長官もそういう印象を持って帰ったでしょう。だから、内局の言っていることはたてまえ、国会用、ユニホームとアメリカの言っていることはどうやら実体的、こういう印象を与えたとしても私は自然であろうと思う。  そこで、じゃ具体的に聞くが、大綱達成時には何個護衛隊群になっているんですか。これが一つと、その場合には南東シーレーンに対しては即応態勢にある実戦部隊としての護衛群隊が一個、そして南西は二個護衛隊群、こういう配備になり得るのかどうか。それで一応内局としては、塩田氏としては、統幕議長がどう言おうとも一応のシーレーン防衛のミニマムな与件は満たし得るというふうに考えているのか。
  321. 塩田章

    政府委員塩田章君) 大綱達成されたといたしましても護衛隊群の数は四個でございます。大綱にございますように、即応態勢を維持するのは一個ということで大綱はなっておりますが、御指摘の、それでは南東シーレーンに何個か、南西シーレーンに何個かということでございますが、これは具体的な作戦としましては対潜航空機部隊と艦艇部隊との両用ということになりまして、しかもいつも申しておりますように、船団を組んだ直接護衛をとるかどうかということによりましてもずいぶんその運用は異なるわけでございます。直接護衛方式をとれば、当然各レーンに護衛隊群を配置しなければいけませんけれども、常にそういうことになるかどうか、そういったような問題もございますので、いまの御指摘のように南東に何個、南西に何個というふうに固定的に私ども考えているわけではございません。
  322. 秦豊

    ○秦豊君 では本論に入りたいと思いますが、官房長官、御多用の中恐縮でした。  私が申し上げたいことはこれからですけれども、私の大前提は、このシーレーン防衛論議をめぐる国会の論議というのは、必ずしもこれは実体的でない。できっこないからやめろと言いたいような論議もあれば、増強せよというストレートな論議もある。その中間もある。しかし深められているとは思えない。十数年論議してきてほとんど深められていない。そこで、一防衛庁マターではなくて政府マターでやる。これは一種のジンテーゼであり総合だという、システムだと、国家の国家戦略に直結しているんだという前提で官房長官にもいろいろとお伺いしてみたいと思う。  それで、今後あってはならないが、今後生起し得る蓋然性として、起こり得る戦争の形態というのは、アメリカの国防総省もすでに作業に入っているが、核を使った短期戦なのか、非核通常長期戦が予想されるのか、防衛庁はどう思っていますか。
  323. 塩田章

    政府委員塩田章君) これは一概にもちろん決められる問題ではないた思いますし、全く人によっていろんな意見があり得ると思います。まあ大勢的に言えば、従来もこういう核の時代になってきたら核を使って短期戦で一挙に終わってしまうんだというような意味の意見が多かったように思いますけれども、それに対して最近は、もう核を使ってそういった形のは恐らく起こらないだろうと、あるいはきわめて起こりにくいだろう、むしろ通常戦力による長期戦あるいは長期といいましてもいろいろ幅があると思いますが、短期ならざる長期戦といったようなことが最近言われ始めておるというようなことは私どもも感じております。ただ、防衛庁としてそれをどちらで考えているかと言われましても、いまどちらというふうには、これはちょっとお答えいたしかねます。
  324. 秦豊

    ○秦豊君 いまアメリカのペンタゴン——国防総省のスタッフたちは、非核通常長期戦というケーススタディーに入っています。したがって、アメリカは国家戦略備蓄法を改めまして、九十三品目の戦略物資については買い増しをする、つまり予算の裏づけをして。こういう措置をすでに三年ほど前から、いや七九年以来実行しています。今後ますますそうするでしょう。  そこで申し上げたいことは、官房長官シーレーン防衛という問題を国家的なアイテムと考えた場合に、われわれはかなり長期の対応というものをやはり想定し織り込んで、かなり長期の国民生活と生産をどのように維持し守り抜くのかという観点が私は必須になろうと思います。だからシーレーンといえば、ユニホームに任せれば率直に言って小型空母も欲しい、VTOL機も積みましょう、それじゃバックファイアに間に合わない、では物すごい大きなDDGをつくるかどうするかという選択の問題にも軍事的になってくる。だから、それはユニホームに任せればそうです。だからこそ基本的な国家戦略、政治がここに登場しなければいけない。政治が逆にユニホームに厳密なオーダーをする。枠づけをする。この観点がぼくはシーレーン論議では特に肝要だと思うんです。したがって、シーレーン、何個護衛隊群にしても完璧はあり得ません。防衛局長もうなずいているけれども。やはり海上防衛力の漸増と同時にバランスすべきは国家としての備蓄ではないかと、私はまず基本的にそう思いますが、それがバランスし、相互補完をすることが重要ではないかと思いますが、官房長官、いかがでしょうか。
  325. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) わが国が万一の場合に備えて有効に対処し得るためには、いま秦委員が言われましたように、いろいろしなければならないことがあろうと存じます。いわゆる有事の場合の法制の整備もその一つでございましょうし、ただいままさに御指摘になりました国民の生活必需品初め、防衛に必要な物資等々もできるだけ備蓄をしてまいるということは大変大事なことであると、御指摘のとおりに私存じますけれども、遺憾ながらわが国の今日はまだそれらの方面においてきわめて不十分であると申し上げざるを得ないと思います。
  326. 秦豊

    ○秦豊君 お答えのとおりだと思います。  私は、去る昨年の五月一日に、政府の総合安全保障政策に関する質問主意書のかなり分厚いものを提出いたしました。お読み取りかと思いますが、それに対して国家備蓄−−スウェーデン、アメリカの例を引用しながらお尋ねしたことに対しまして、率直に申し上げて、検討をこれからさせていただく、レアメタルを含めて、ということでございました。それから一年有余たっておるのであえて伺うわけですけれども、やはり大平さんの一つの安全保障上の遺産は総合安全保障ですが、私は政府の総合安全保障政策に最も欠落しているのは、皮肉にもタイトルにうたった総合性であると思っております。だから、備蓄と海上防衛力のバランスなんということは、これはまさに総合政策の一環です。そこで、政府としては備蓄政策も十分でない、そのとおりだと思います。そこで政府としては、逆に海上自衛隊に対して、有事の場合には最低一億一千万弱の国民を守り抜くためにあるいはこのレベルの生産を維持するために、海上自衛隊は有事に当たってはどれくらいの船舶をどのような態様で日本に無事に護衛してもらいたい、確保せよというオーダー、いわゆるこれを防衛期待度と専門家は申しておりますが、それを与えたことがありますか。
  327. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私、十分に承知をいたしておりませんけれども、現在の防衛計画大綱基本になっております思想が基盤的な防衛力整備ということでございますので、恐らくはそれを超えてただいまのような具体的なオーダーを認識したことはないのではなかろうかと思います。
  328. 秦豊

    ○秦豊君 では、「国防の基本方針」あるいは「防衛計画大綱について」というややまとまったあの政府文書、これはどこからたたかれても批判されても、その批判にたえ得るようなわが国のユニークな国家戦略の基本であるという言い方はできますか、長官
  329. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 十分知識がございませんので正確にお答えできませんけれども、私の聞いております範囲では、基盤的防衛力整備というのは、わが国のような国が最低限度持っていなければならないものを整備しておこうと、いわゆる専守防衛の立場から、そういうものと承知をしておりますので、したがって、これがただいま言われましたような具体的な場合にそれだけで対応できるほどのものとして認識されておるのでござ  いましょうかどうでございましょうか、ただいまのところはその防衛計画大綱をもまだまだ達成できない状況でございますので、現実の問題としてはその辺におるのじゃないかと、十分私存じませんが、そのように考えております。
  330. 秦豊

    ○秦豊君 いま政府には有事に備えた法制づくりは若干進捗している。それも他省庁との関連で横に広げると渋滞をしている、これが実態。備蓄政策はこれから練ります。そうすると、一方的に独走をしているのは海上自衛力の増強という、まさに軍事というミリタルなものばかりが突出をし、目立ち、しかもより多くを求めたがっている。総合安全保障という理性と政治の意思の働いた感覚と力が働いていない、相互抑制が。まだまだ私は不十分だと思います。  それから長官言われましたけれども、国防の基本方針、防衛計画大綱についてのあの一連のコメント、これは作文にすぎません。これはNATO諸国などのレベルからすれば、国家戦略の基本文書ですと言うことはいささか恥ずかしいのではないでしょうか。基本戦略はまだ策定されてないのではないでしょうか。いかがでしょうか、国家戦略は。
  331. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 直接にお答えすることにならないかもしれませんけれども、NATO諸国と比べてという御指摘がございましたが、それはわが国民の防衛についての意識の成熟が過去のいきさつもあってきわめて徐々であり、またゆっくりしか育っていないということ、そういうことのやはり反映という部分が私は相当大きいのではないか、こう思っております。
  332. 秦豊

    ○秦豊君 非常に慎重に言葉を選ばれておりますし、それはわかりますけれども、では政府に有事の必要所要量についての策定、定説、統一見解はございますか。
  333. 塩田章

    政府委員塩田章君) 政府にということでございますが、私が承知する限りでは防衛庁の海上幕僚監部で行ったそれしか私は承知しておりません。
  334. 秦豊

    ○秦豊君 官房長官、海幕の分析は昭和五十年、五十一年ですよ、あの例の文書です。あとは民間海運関係から二つ、それから日本の事情を解析したアメリカ専門家が一つ、あとは民間のシンクタンク三菱と野村に一つずつあります。ところが政府にはまとまったものはありません。シーレーン防衛は一防衛庁マターではないと僕は前提して申し上げましたが、長官の御認識も、これはナショナルプロジェクトである、政府マターだという御見解はお持ちでしょうか。
  335. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 防衛計画大綱達成するということは、国の安全そのものに関係いたしますので、これは政府全体が関心を持たなければならない事項だと思います。
  336. 秦豊

    ○秦豊君 もうまさにそのとおりだと思います。  そこで具体的に伺いますが、小坂さんのもとの運輸政策審議会が来る七月に海上輸送の安全保障についての基本的な答申を出します。いや打ち出す予定です。私すでに質問主意書も出しておりますけれども、やはりそこで長官に伺いたいんですけれども、確かにナショナルプロジェクトである、政府マターであると。ところがシーレーン防衛という総合を考える所管、行政の中には主務官庁はじゃどこですか、ありますか。
  337. 塩田章

    政府委員塩田章君) それぞれの役所でそれぞれの部門をやっておると思いますけれども、御指摘のように総合的な政府一つの窓口としてどこが担当かということでありますれば、いま強いて挙げれば私は総合安全保障の閣僚会議の事務局あたりがこれに当たるんじゃないかなと思いますけれども、実体的にそこまでいっているかどうかということは別にしまして、いま思いつくのはそういうところではなかろうかという感じがいたします。
  338. 秦豊

    ○秦豊君 お聞きのとおりなんです、長官。この程度なんです。日本のこのフェイタルな立地条件、資源のパーセンテージは言いません、時間を食うから。お互い痛いほどかみしめているこれだけのフェイタルな条件に、日々過酷な条件にあるわが国の、しかもナショナルプロジェクトだ、政府マターだと、総合安全保障だと言いながら、それを統括し、集約し、収敏し、練り上げ、深化する主務官庁さえ決まっていない。あえて言えば長官のところに帰っていく。長官が統括している総合安全保障関係閣僚会議、ここに帰っていく。これが実態なんですよ。  だから提案します。やはり国家の側に最高意思がなければいけない、練り上げられた精敏な。そうして国民生活と生産に責任を持つのはもちろん第一義的に政府です。したがって提案ですけれども、ちょうどよい時期ですから、アメリカ云々ではありません、わが国の民族が生きていくために、国家が、かげりは多少あっても、今日的な繁栄を守る、国民の皆さんに還元する。この意味合いにおいて、やはり私はいい時期だから、運政審の答申もあり、この際国家として、政府として責任ある国家の海上輸送に関する総合政策という策定作業に入っていただきたい。国家は私は大きな責任を持っていると思うんです。それをぜひ官房長官が統括者になり具体的に一歩を踏み出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  339. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 本来から言えば、国家というのはやはりそれだけの備えをしておかなければならないものであろうと思いますし、また先進、後進にかかわらず、多くの国がそういうことを考え、準備をいたしておると思いますが、わが国の場合には、申し上げるまでもないいろいろな理由があって、そういうことが大変によそに比べますと手薄であると申しますか国の施策の主たる部分になっていないということは認めざるを得ません。  それで、いま秦委員の御提言でございますが、政府が仮にそういうことを検討いたすとしますと、これは学術的な検討にとどまりません、実際の施策につながっていかなければならないでございましょうが、そうなりますと、もとに戻りますが、国民の世論がどれだけそのような政府の準備、備えというものを受け入れていくか。これは納税者の負担にもなることでございますから、その辺のやはり世論の成熟ということを相当慎重に考えてまいりませんと有効な備えができないことになるということではなかろうかと思います。
  340. 秦豊

    ○秦豊君 やはりそれは問題を回避していらっしゃると思います、卒爾ながらそう言いたい。国が第一義的に持つべきは安全保障に対する責任です。生産に対する裏づけです。その基幹をなしているのがシーレーンです。そのシーレーンは、だから防衛庁を超えている、通産、運輸を超えている、農水を超えている。まさに政府マターである。だからこそ政府がジンテーゼとして取り組むべき命題ではないかと言ったら、そこまでは長官もそのとおりであろうと、体制が粗雑である、弱い、そこまで認められた。ではどうすべきかというところになって、あるべき姿というところになって長官はにわかに慎重になられた。もちろん世論のことは配慮しなければいけません。しかし、まず政府が、民族が生きていくために海上輸送路を守るということはこういうことなんです、二つのルートについてこう考えております、それには現在の防衛力範囲ではこの程度は可能だと考えております、しかし十全は、完璧はなくてもこれを安全度を高めよう、輸送量をふやそうと思えばこの程度の装備と予算が必要になりますが国民の皆さんいかがでしょうというのがいやしくも責任ある政府の対応じゃございませんか。不満ですけれども、なお納得できませんので、重ねて具体的に踏み出していただきたいということに対する御回答をいただきたい。
  341. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 秦委員のお立場は、恐らくシーレーンというものが国の安全に対して持っておる非常に重大な意味、それを積極的にお取り上げになっての先ほどからの御発言であると思います。それは私にもよくわかることでございます。ただしかしながら、シーレーンという問題は、昨年鈴木総理大臣がワシントンで言われましてからにわかに今日まで政治の問題として大きく取り上げられておりまして、国会などの御論議では、これを積極的に評価し、そしてサポートしていこうという御議論ばかりではございません。これについてはいろいろ疑問を寄せられる有力な御議論もしばしば行われておる。それがわが国の今日のやはり全体の世論の縮図であろうと思うにつけまして、秦委員の御指摘は私自身はごもっともなことだと考えておりますけれども、どれだけの速度で、どれだけの規模でこの問題を取り上げていくかということは、問題を回避しているというお言葉ではございますが、やはり相当慎重に進んでいかなければならないのじゃないかというふうに思います。
  342. 秦豊

    ○秦豊君 それでは、こういう観点ではいかがでしょうか。七月に出る運政審の答申をお受けになって、初歩的にはというより第一段階としては、関係省庁が入り、民間の海運、造船、船舶関係、あるいは海洋法関係の専門家、国際法の専門家を集めた横断的な審議会によって長時間かけた英知の結集を検証する。これを第一段階とし、それがややレベルアップしかなり慣熟したところで、あるいは練ったところで、今度はそれを政府マターに文字どおり昇格さして、宮澤長官が統轄される国防会議関係閣僚会議においてまず検討をしてみる。この程度作業であれば抵抗が少ないのではないでしょうか、いかがでしょうか。
  343. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この点は、どのような答申が出てまいりますか、それにもよることと思いますので、ただいまの御発言は十分私留意をいたしておきます。
  344. 秦豊

    ○秦豊君 いまのシーレーンの、具体的には後で防衛庁に聞きますから。  いまのことに関連してちょっと伺っておきたいんですが、政府の総合安全保障政策をコーディネートする、調整するセクションは実はないんです。調べてみると、ありますという答えもあるんです。どこにありますかとさらに聞けば、総理府に審議官が若干名おります、あと国防会議のスタッフです、あとは向こうへ行ったら防研です、防衛庁もありますと、これはわかり切った話なんですよ。ところがコーディネートするセクションがないんです。わずかに宮澤長官のところの関係閣僚会議なんです。これがわが国の実態なんです。まさに寒いと言わなきゃいけない、これは。私は決して褒められた状態ではないと思います。  したがって私の感じでは、わが国には総合的な国家戦略や安全保障政策は熟成されてなくて、そのときどきの装備調達計画が一人歩き、大きな歩幅で力強く歩いてきたんです。国防会議は残念ながら専門家ではないからそれを追認する、こんなことを予備隊以来繰り返してきた。いまそれが許されない段階じゃないかというのが僕の私見です。そこで国防会議それから長官のところの関係閣僚会議も、ともすれば事務に流される。事務の対応でいっぱいです、大変です、これ忙しいから。しかも追われます。  そこで私は、今度臨調がお出しになるようですが、国防会議を強化して、アメリカンスタイルではないが、国家安全保障会議的な機能の強化策をやがて答申するようであります。臨調を待つのじゃなくて、政府が安全保障を総合的にとらえるセクションを構想すべき時期じゃありませんか。それは長官範囲だと思いますが、いかがですか。
  345. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 総合安全保障会議そのものが、各省庁でやっております施策を国の安全保障という観点から考え直してみろ、とらえてみろというそういう発想に立っておるわけでございますので、これはまあやはり各省庁の施策の中で当然のはずですが、忘れられがちな国の安全というものを忘れてはならないぞということを言う意味であの会議が私は意味を持って機能しておると思っておるのでございますが、それにしましてもいままでのところ、あの会議で何か政策決定を新たに事実問題としてするというようなところまでまだいっておりませんで、いろいろな意見交換、情報交換、おのずから各省はそれを持ってかえりまして、自分のところの政策を考える上では参考になっておるわけでございますけれども、いまのところまだまだその段階でございます。少しずつこれが成熟をしてまいりましたら、秦委員の言われるとおりではありませんでしょうが、幾らかそれに近づいていくことができるかもしれないと思いますけれども、いまのところ、まだそこまで残念ながらまいっておりません。
  346. 秦豊

    ○秦豊君 ぱちっとまとまった、きれいに仕上がったものがもし非常にむずかしい場合ですね、これも提案ですけれども防衛、外務、これはもうちゃんと持っています。防衛、外務、通産、運輸、科学技術、農林、経企庁、大蔵等々横断的な諸官庁に安全保障専門職を置く。絶えずナショナルセキュリティーをのみ考えている。——置いて、官房長官等が副長官を従えて、そのうちの一人を担当にして月例の横断的な安全保障会議を開き、その結果は関係閣僚会議に報告をさせるというふうな運営はいかがでしょうか。
  347. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いまのわが国の行政組織及び行政の動き方からいたしまして、私にいま十分評価をしてお答えする用意がちょっとございません。
  348. 秦豊

    ○秦豊君 それでは、いきなりぐっと視野を狭めまして、これ伊藤さんの構想だろうと思うんですけれども、ファントム問題にこりて防衛庁考え始めている構想として、総理防衛庁との間に連絡調整のための、あれは何というんですか伊藤長官、首相連絡官構想というのか特別補佐官というのか——補佐官制度は一回臨調で葬られたから繰り返さないな。そうすると、連絡官構想でしょうか。こういうことについてもし提起された場合、宮澤官房長官としては許容範囲に入っておりますか、それは。
  349. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何分にも国の安全というのは最も大切な仕事でございますし、総理大臣自身がまたいざという場合にはいろいろな役割りを果たされなければならない立場でございますから、常時防衛庁長官考えておられることが総理大臣との間で絶えず密接に連絡されておるということは、私はもう大変大事なことだと思います。
  350. 秦豊

    ○秦豊君 では、防衛庁側が提起すればそれはお認めになれるかもしれない、その許容範囲に入っておりますね。
  351. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 具体的な御提起を受けたわけではありませんので何とも申し上げかねますが、もしいまの総理大臣と防衛庁長官との間の連絡調整、それが不十分であるということでございましたら、これは私ども何とかしてそれは改めなきゃならない、私どもの努めなきゃならない仕事であると考えます。
  352. 秦豊

    ○秦豊君 大変言葉の端末にこだわるわけではありませんが、伊藤さんもせっかく新任早々で意気込んでいらっしゃるし、しかあるべきだと思います。そういう意味では、確かに名称ではなくて、そのような機能を持った専門職が官邸の周辺に絶えずいる。秘書官の数といいますとまた法制の面もございますから、中間的な形としては私はきわめて現実的ないい提案だろうと。反対して私言っているんじゃないんです。長官、だからお認めになったらいかがですか、国会終了後にでも。いかがですか。
  353. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) どういうふうに防衛庁長官がお考えでございますか、一度よく御意見を承ってみたいと思います。
  354. 秦豊

    ○秦豊君 完全否定ではないというニュアンスがややこぼれたような印象です。  ちょっとこれ、具体的なシーレーン問題になかなか入っていけないんだけれども、ちょっと長官、時間まだよろしいですね。
  355. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) はい。
  356. 秦豊

    ○秦豊君 総理ワインバーガー長官に述べたと言われている、わが国防衛力については着実にそれで注意深く努力するという表現、今回の表現ですが、これは大綱水準が上限だからそれ以上の増強を求めるあらゆる提案を拒否する、こういうものが下敷きになっていますか。
  357. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この発言は、総理大臣がかねがね、防衛についての国民世論の動きは好ましい方向に向かっていると思うけれども、その成熟はきわめてゆっくりしたものであって、したがって、対応を決してせっかちに、性急にしてはならないという考えを持っておられることは御承知のとおりでありまして、昨年も今年も、魚をとるときに云々というような発言があったのはその考え方でございますが、そういう意味で注意深くと言っておられると思います。  秦委員の御質問は、このことによって仮に将来防衛計画大綱達成されたときに、それから後どうこうということをこれは暗示しているか、していないかというお尋ねでございますけれども、ただいまのところ、総理大臣としては一日も早く防衛計画大綱達成するように最善の努力をすると、そういうことを申しておられるにとどまると思います。
  358. 秦豊

    ○秦豊君 宮澤長官、恐らく防衛大綱水準堅持といいますと、これがより新たなこれからの対米防衛摩擦の焦点になると思うんです。かなりしたたかな粘り腰で要求してくると思います。これはもちろん風圧ですけれども。だから、そういういかにアメリカが強要しようとも、あるいはフルパートナーとして求めようとも、期待しようとも、大綱水準堅持という方針は貫かれますか。
  359. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 防衛計画大綱が基盤的防衛力整備という考え方に立っておると思いますので、まず基盤的防衛力整備しなければならない、そのために防衛計画大綱をできるだけ早く達成をしよう、こういうことが当面の政府努力目標であると存じております。
  360. 秦豊

    ○秦豊君 五六中業は言うまでもなく自明のこと昭和六十二年度完了、もちろん発注ベースですから装備実施は六十六年でしょうけれども。われわれは昭和六十二年度に達成と、こう言っている。アメリカ期待はマイナス一であって、一年の前倒しがアメリカの本当の期待の焦点ではないか。六十一年への前倒しということについては、長官の認識と把握の中ではどう処理されていますか。
  361. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) アメリカがそういうふうに考えておるかおりませんか、私そういうふうに承知をしておりません。
  362. 秦豊

    ○秦豊君 私はこれ非常に素朴な聞き方をするんですけれども、各幕の積算がもうすでにあるわけですよ。政府GNPの一%以内でも大綱水準の装備達成は本当に可能だといまでも信じていらっしゃいますか。
  363. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この点は、恐らくいま防衛庁内で非常に詰めて作業が行われておるに違いないと思いますし、その上に立って防衛庁長官が最終的な御判断をなさるのであろうと想像いたしておりますけれども、ただいま政府がいわゆるGNPの一%を超えるような支出をするということは考えておりません。
  364. 秦豊

    ○秦豊君 もう一つ、昨年の鈴木総理訪米に当たって、例の千海里シーレーン防衛で役割り分担を日本側が初めて表明した、やや公式に。こういうイメージでとっております、アメリカ側は。これは向こうのマスメディアの平均的報道のトーンです。ところが、今回着実に注意深くという表現を使われたために、昨年の訪米のレベルからすればかなりな後退であるという受けとめ方が早くもちらついておりますし、今後ともとめどなく後退をするのではないかという不信の兆しもうかがえますけれども、この点はいかがですか。
  365. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私、ワインバーガー国防長官とはほんの短い時間しか、一時間ぐらいのもので、伊藤長官のように長く話をしておりませんけれども、それについて後退といったようなふうに先方は考えておるらしいという印象は持ちませんでした。ただ、これを文字どおり実現していくためには、どのぐらいな兵器、器材あるいは財政的支出が要るかということについて、米国としては米国なりの計算を一度やっぱりやってみて、そして日本側とそのことについて行く先議論をしてみたい、こういうことは言っておられますので、それはなかなかの仕事なんだというふうな認識をあるいはどこかで持っておられるかもしれませんけれども、その程度のことでございまして、別に後退というような心配をしておるようには私受け取りませんでした。
  366. 秦豊

    ○秦豊君 ちょっと長官のお時間のことも伺っておりますので、海峡封鎖ということを一つだけ伺って、大変残念ですけれども、お別れしなければならぬと思います。  これは防衛庁の答弁でございますけれども、今国会における。計画大綱水準の戦力を持てば海峡封鎖の能力は初歩的に持てると——初歩的にはなかったか、能力は持てる、こういう答弁があります。これは非常に僕は安易な答弁だと思うんです、いかにも。海峡封鎖ということは、やはりソ連という一国に対する一つの対抗措置ですから、クレムリンから見れば日本のクレムリンに対する敵対行為という認識が常識でしょう。そうすると当然報復措置をする。たとえば中東有事というと、アメリカから必ずそれこそホットラインを使って、海峡封鎖についての行動を物すごく強く要請されると思います。ところが、わが国が攻撃された場合じゃなくて、つまり五条事態ではなくて、六条ないしそのほかのケースで日本に海峡封鎖を要請された場合に、私はこれは軽々にイエスと言っては断じて相ならぬ。たとえば、ある局面ではそれは米ソ戦への参入を覚悟しなければならぬ、ある局面では日ソ戦が生起するという重要な国家としての意思決定ですかち、海峡封鎖なんというのは簡単に言ってほしくない。海峡両側の限定占領あるいはシーレーンへのまさにブラフあるいはタンカーに対する国籍不明という形をとった攻撃、こんなことは軍事常識の範囲に入ると思う。したがって、私は海峡封鎖の能力があるという問題と国家の最高意思の決定のプロセスあるいは結論は断じて位相は違わねばならぬと思うんで、宮澤官房長官にこれは最後質問ですけれども、やはり海峡封鎖なんということを軽々しくその武器を振り回せるような状態ではないのではないか。アメリカから提起されても峻厳な対応をすべきではないかと私は思いますが、それに限定していかがですか。
  367. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 正確にお答えできますかどうかでございますが、わが国防衛基本方針は専守防衛でございます。加えられた危害に対して自衛をするために防衛力を持っておるわけでございます。そのためにのみ持っておるわけでございますから、したがいまして自衛権の発動についてはおのずから与えられた原則があると思います。一つは、わが国に加えられる危害あるいは脅威が急迫しており、かつ不正であるということ、そうしてそれに対して対抗する措置としてはそれ以外に方法がない、いわば起こっております危機なり脅威に対して相当因果関係のある範囲を超えてはならない、簡単に申すと過剰になってはならないということであると思います。この原則は守られなければならないと思いますので、ただいまの御質問に対するお答えもそこからおのずから出てくるのではないかと思います。
  368. 秦豊

    ○秦豊君 確認的にトレースすれば、中東有事というふうなケースにおいては、政府として海峡封鎖の決断をすることはしたがってあり得ないというふうに演繹されますね。
  369. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 具体的には与えられた、現実に起こった事態のもとでお答えするしかないと思いますけれども基本的な物の考え方はただいま申し上げたところであろうと思います。
  370. 秦豊

    ○秦豊君 官房長官どうぞ。  防衛庁、ちょっとこの具体的なところまでは時間が乏しくなりましたけれども塩田さんね、グアムまでは何海里あります。
  371. 塩田章

    政府委員塩田章君) 突然のお尋ねでございますが、私の印象では千三百海里ぐらいじゃないかと思います。
  372. 秦豊

    ○秦豊君 では、千海里終わりました。これが終点ですね、終末点ですね。グアムまで三百海里強。その間の恐ろしいような空白のゾーンはどうするんですか。
  373. 塩田章

    政府委員塩田章君) これは、しばしば申し上げておりますように、わが国は一千海里程度防衛ができる力を持ちたいと言っておりますが、一般的にそれ以上のことは米海軍に依存すると、依頼するということでございます。
  374. 秦豊

    ○秦豊君 そういうむなしい答弁をしてはいけません。アメリカのフリゲートを含めて、アメリカの持っている百三十五隻の駆逐艦の配備、十三隻の攻撃型空母、これへの張りつけ、内航を含めた警備、もう火を吹いているんですよ。余力がないことはアメリカの海軍作戦部長が十年前から言っています。アメリカが保障し得るのはせいぜいアラスカ、ホノルル、それ以上は責任が持てない。これは公式の議会の証言ですよ、いいですか、アメリカの統幕議長の。あそこは日本の国会のようにむなしいことを言わない。あなた方のようなことを言わない。ずばっとデータに基づいて言うからね。そういう公式なものでそう言っているのに空白の三百海里。じゃ今度はグアムとハワイの間はどうなるんですか、何の保障もない。そうして一千海里、こんな非実体的な議論。しかもさっきから同僚議員に対して、もう基地群考えておりません、基地は。硫黄島はちょっと訓練に使いますと、そんなので護衛艦の数だけをふやしてなぜシーレーン防衛があり得ますか。やはり常識として考えれば、あなた方の言っているシーレーン防衛については、千海里を超えたところからグアムまで三百海里、これがすでに残されているし、千海里そのものも完璧ではないし、いわんやグアム−ハワイ間については保障が何にもない。じゃ日米間にどういう協定があるんですか、お示しいただきたい、それが一つ。  それからもう一つ。やはり私は南東、南西の両レーンを本当に国民生活に責任を持つ政府として守り抜こうと思えば、常識的に南西諸島は宮古、石垣を含めた一種の、レーダーは別として警戒施設、防衛施設。小笠原は父島、そうして硫黄島と鳥島を含めたSOSUSの敷設、つまりASWの最も強く予見される海域は小笠原東方海面である。ならば小笠原の父島を抜きにした私は対応はないと思うから、そういうものを含めた、つまり初歩的な防衛体制というものを防衛庁が真摯に考えていくぐらいでなかったら、どうして国民生活の安全を期し得るか。有事最低の二億トンはおろか一億二千万トンも輸入できないだろう。だから、あなた方の答弁というのは、ふっと踏み込むと、かわし続ける。非常に実体的でない。その場その場。あなたはやがて去る、局長にしたって。あなたの後を襲う局長、行政の継続性。もう十年前からの議事録を読み返してみても、シーレーン防衛論が深まらない最大の誘因はあなた方の答弁の姿勢にある。時間がないから、委員長のお許しをいただいてまとめてたたき込むように聞いたけれども、いまのことについて答弁を求めて、私の質問を終わりたい。
  375. 塩田章

    政府委員塩田章君) 私たちの答弁が実体がないという御指摘でございますが、私たち、しばしば申し上げておりますように、現在の自衛隊でも一千海里の非常に能力は不足しております。せめて一千海里は守れるようにしたいということをかねてから申し上げているわけでございます。
  376. 秦豊

    ○秦豊君 願望だと言っている。
  377. 塩田章

    政府委員塩田章君) そのための努力を現在現実にしておるわけでございます。  ところで、それでは一千海里以上についてのアメリカとの協定があるのかということでございますが、そういう趣旨の協定はございません。ガイドラインによる研究以外にそういったことについての協定はございません。  それから両レーンの防衛について、南西諸島、いろんな島の名前を挙げられましたが、特別に何か考えておるかということでございますが、現在宮古島にレーダーサイトがございますけれども、それ以外に、いま御指摘のようなことを、計画を持っておりません。
  378. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 他に御発言もなければ、これをもって昭和五十七年度総予算中、皇室費、国会所管、内閣所管及び総理府所管のうち、総理本府、青少年対策本部、日本学術会議、宮内庁、行政管理庁、防衛本庁防衛施設庁についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  379. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  380. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 郵政省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。箕輪郵政大臣。
  381. 箕輪登

    国務大臣(箕輪登君) 郵政省設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、近年における電気通信の重要性の増大にかんがみ、電気通信行政の一層公平かつ能率的な運営を図るため、郵政省の附属機関として置かれている審議会の組織について所要の改正を行おうとするものであります。  電気通信は、近年におけるわが国社会の情報化の進展に伴い、国民生活及び国民経済に大きな影響を及ぼすようになり、これに対応して電気通信行政の分野におきましても広範かつ複雑な課題が山積するに至っております。  このような情勢のもとに、長期的かつ総合的な視点に立って、広く国民の英知を反映しつつ行政を推進するために、電気通信行政に関する調査審議機関の充実強化を図ることが喫緊の課題となっていることにかんがみ、もっぱら電気通信行政に関する事項を調査審議する電気通信審議会を設置しようとするものであります。  なお、電気通信審議会を設置するに際しましては、現下の厳しい行財政事情にもかんがみ、既存の審議会の合理的再編成によることとし、郵政審議会を改組するとともに、有線放送審議会を廃止することといたしております。  その他、所要の規定の整備を行うこととしております。  この法律の施行期日は、昭和五十七年十月一日といたしております。  以上がこの法律案提出いたしました理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  382. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 本案に対する質疑は四月八日午前十時より行うこととし、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時十七分散会      —————・—————