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説明員(
真藤恒君) 現在、
公社は御存じのような姿で動いておりますが、過去の状況あるいはこれからの先のことを見ますと、現在まで支出の伸びと
収入の伸びが、オイルショック以後いつも支出の伸びの方が
収入の伸びよりも大きい。大体平均いたしまして三%から二%のマイナスギャップになっております。総
収入が約四兆円でございますので、平均しまして一
年間千二百億ぐらい確実に経営状態は収支バランスの面からいくと悪くなっております。当面、私
どもの当事者としての義務は、
経営形態がどう変わりましても
収入の伸びと支出の伸びを少なくとも平行線に持っていくということでございます。黒字である間にこの
収入の伸びと支出の伸びを平行線に持っていくということが緊急な問題でございまして、赤字になりましてばたばたいたしましてもとてもうまいぐあいにはできない、そう考えまして、私、着任以来、いままでやっていないようなこと、あるいは考えていないようなことをずいぶんいろいろ申しまして、みんなの
協力を得て、それが
一つずつ軌道にいま乗りかけておるところでございます。さしあたり五十六の年度で、これは着任間もないので、もちろん十分なことはできておりませんけれ
ども、それでもかなり支出の倹約、あるいは逆にいままでよりもいろんな新しい宅内機器の
販売促進というのが予算以上にできましたし、それから一番大きくこたえておりますのは、現在の規定の中で金利負担を減らすということに手をつけたのでございます。合計いたしまして、そういう企業
努力による数字が約千億、あるいは千億よりちょっとふえるぐらいの変化はいたしております。
そこで、私が非常に従来の三十年の歴史のある
公社の中で一番違和感を与えておりますのは、予算に対する経営の当事者としての基本的な考え方でございます。もともと企業というものが採算性の責任をとらされる限りにおいては、企業というものは決算を終わって一企業というものは
事業に着手する前は最低これだけの利益が要るのだということが第一目標でございます。したがいまして、それに合うようにいかに企業
努力を続けていくかというのが企業の経営の第一歩でございます。長い間、行政官庁並みの予算生活で来ておりますので、予算に合えばいいのだ、予算に合わせるという考え方がしみ込んでおります。
簡単に言いますと、現在の
公社の形態では、
事業にかかる前にまず予算あり、予算に合わせれば事はないということでございますが、この予算というものがくせ者でございまして、よく見ておりますというと、既定経費というものについてはインフレ要因を加算しただけでまいります。新しい
事業に対しては、それだけのエクストラの予算が当然出てまいります。そういうふうなことで目標利益を立てて一
年間やって、みんなで
努力して、決算して、その結果企業に残すべき内部留保、資本に返却すべき配当、それと従業員に還元すべき臨時給与、一時金というものが決まるべき性質のものがすべてさかとんぼになっているわけであります。
今度、約三百億から四百億ばかり予算から支出を落としましたけれ
ども、なれませんので末端ではかなりのきしみもあったようでありますが、いずれにいたしましても、予算合わせをやってくれるな、要る金は予算がなくても使ってくれ、要らない金は予算があっても使ってくれるな、これをモットーにしただけで、
月次決算のやり方とあわせまして約三百億から四百億ぐらいの経費の節減をやっております。もちろん、そういうふうなことに
協力するムードが外部に
販売する
努力にもこたえてきておりますし、また金利の負担を減らす知恵もいろいろ出てくることになったわけでございます。
五十七年度は、やはりこの状態でさらにそういうやり方を高度化しながら持っていきたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、独立採算、企業性、できるだけ安く
電気通信サービスをするということになりますと、そういう要請というものを主体に考えますと、どうしても
事業にかかる前に予算が確定しているという姿ではこれは無理でございます。やはり利益目標を幾らだ、あとはこういう範囲の規定の中で企業
努力をしろという形になりませんと、ちょっとこの問題は根本的には長期にわたって解決のできる方法じゃないのじゃないかというふうに考えております。したがいまして、今度の臨調でどういう企業形態を御採択になるかわかりませんが、いずれにいたしましても、
国民に世界的に見て競争力のある安い
電気通信サービスをやれというのが至上命令であるとなれば、やはりそれができやすい形に持っていくことが一番大事じゃないかというふうに考えております。
それで、現状におきましては、御存じのように
公社法と会計法と公労法と三つが絡み合って、その制限の中で、その三つの法律の中で私
ども具体的に動いておるわけでございますが、残念ながら
公社法の実態は、経営の効率あるいは財務の問題ということにつきましては
公社法に書いてある実態は実行されていない部分が非常に多い。その辺、ではなぜそうなったのかということが
一つ問題でございまして、なぜそういうふうに
公社法と実態が変わったのか、原因は何だということをやはり考えなきゃいかぬのじゃないかと思います。
そんなふうなことでありますが、これから先の電電の私
どもの義務といいますのは非常に大きな義務がございまして、御存じのように
電気通信が従来のアナログ系からディジタル系に変わりつつありますし、これは日本だけじゃございませんで世界じゅうがその方向にいま急速に動いておるのでございますが、ここで、われわれがいろいろなことでディジタル系に変えて、いわゆる高度
情報通信網の
整備に立ちおくれますと、日本の
社会活動が先進工業国の
社会活動に比べて非常に能率の悪いものになりまして大きな足引っ張りになるということでございまして、このために
技術的に大転換をやらなくちゃならぬ。設備的にも現在あるものはほとんど入れかえなきゃなりません。したがって、
職員のほとんど全員に新しく再教育、再訓練、再配置がえということをやらなくちゃなりませんし、また、それができなければ幾ら設備ができましても完全に動かすことはできません。しかも、このディジタル系の
技術といいますのは、いわゆる私
どもが使います言葉でソフトサイドの非常に高度な
技術を持った人が非常に多人数要るということでございまして、現在まだそういう能力を持った
職員というのは微々たる数しか持っておりません。これから大変な教育スケジュールを立てなきゃなりません。そういうふうな大転換が一方あるということ。
それともう
一つは、そういう高度
情報通信網と申しましても、その
サービスの値段が高いものでいわゆる高ねの花だという形の高度
情報通信網では
社会活動に影響力も少ないし、日本の
社会の後進性というものを脱却できません。したがって、大ざっぱに申し上げまして、いま一
加入当たりの一カ月の払い込みの総平均が八千五百円から八千七百円でございます。これが二割ふえるか、多くても三割ふえるぐらいのところで高度
情報通信網がお使いになりたい方はどなたもお使になれるという値段で提供できるようにしなきゃならない。そうしますというと、コストの方から申しましても、収支のバランスをとりながらでございますから相当現在よりも思い切った組織がえ、
技術面からくる組織がえ、それからそういう財務面からくる組織がえを大幅にやらなくちゃなりません。いまどういうふうにどのスピードで変えていっていいか、ちょっと見当もつかぬぐらいの大変革をやらなくちゃなりませんが、そういうふうな状態になっておりますので、そういうことをやらざるを得ない立場に立っておりますので、そういうことが十分やれるような企業形態のあり方ということをお考え願うことが私
ども当事者としてのお願いであります。
そこら辺のところが、まあ大げさに申し上げますと、
技術的にも組織的にも財務的にも根っこから掘り返さなきゃ、さっき申しましたような新しい
時代の
電気通信サービスを提供することがむずかしいという形の直前に立たされております。従来の
電話をやってきましたこの電電
公社の
経営形態の過去の歴史のイメージで将来の電電
公社の組織なり経営のあり方を考えますと、また世間に御迷惑かけることになることは必定だと思います。その辺のところ、私
ども当事者といたしましても、これからそういう高度
情報通信網になったら一体世の中にどういう影響が出てくるのか、またそういうふうに変わっていく方向はどういうふうなことが考えられるのかというようなことをいま鋭意勉強して取りまとめて、だんだん皆さんに御了解を求めていきたいというふうに考えております。