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1982-04-22 第96回国会 参議院 地方行政委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十二日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  四月二十日     辞任         補欠選任      神谷信之助君     近藤 忠孝君  四月二十一日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     神谷信之助君  四月二十二日     辞任         補欠選任      山田  譲君     坂倉 藤吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上條 勝久君     理 事                 名尾 良孝君                 山田  譲君                 伊藤 郁男君     委 員                 岩上 二郎君                 加藤 武徳君                 金井 元彦君                 小林 国司君                 後藤 正夫君                 福田 宏一君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 大川 清幸君                 神谷信之助君                 美濃部亮吉君    国務大臣        自 治 大 臣  世耕 政隆君    政府委員        自治大臣官房審        議官       矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       坂  弘二君        自治省行政局長  砂子田 隆君        自治省行政局公        務員部長     大嶋  孝君        自治省財政局長  土屋 佳照君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁長官    石見 隆三君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        臨時行政調査会        事務局主任調査        員        陶山  皓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明につきましては、すでに前回の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 山田譲

    山田譲君 地方交付税法の審議に入る前に、まずお伺いしておきたいのは、地方財政とそれから国の財政、こういうものの関係についてであります。  最近の地方財政決定状況といいますか、決まり方を見ておりますと、どうしても国の財政に従属するというふうな形でもって決められているんじゃないか、そういう感が非常にしているわけでありますけれども、とりわけことしの場合はそれがひどいように思われてなりません。よく地方財政と国の財政は車の両輪であって、両方うまく回っていくことによって政治がちゃんと行われていくんだ、こういうふうに言われておりますけれども、どうも最近はそうなっていない。両輪かもしれないけれども、片方の輪がいびつになっちゃっている。ですから、車そのものが真っすぐ向かっていかなくなっているんじゃないかというふうな感じがしてなりません。特に、どうも最近のゼロシーリングとか財政再建というふうな国の財政再建財政の事情によって地方財政がそれに振り回されていく、こんなことじゃ本当の地方自治が確立できないんじゃないか。実際内容を見てみますと、形式的には借りたり貸したりというふうなかっこうになって、実質的には将来返してもらうんだから構わないじゃないかというふうなことがよく言われますけれども、そういうものじゃないと思うんですね、やはりきちんとしたたてまえがあるんだから。しかも交付税固有財源であるという考え方に立つとすると、その固有財源が国の財政によって適当に操作されていく、これは非常に問題じゃないかというふうに私は思うんです。  したがって、ここで大臣にまずお伺いしておきたいのは、地方財政と国の財政との関係について基本的なお考えを伺っておきたいと思います。よろしくお願いします。
  4. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 国の財政地方財政と申しますが、これは私は相互に行き来するものであって、両輪という言葉になるのでございますが、そういう性格のものだと思います。五十七年度地方財政対策に当たって、実はこれはいまいろいろ御指摘になられましたけれども、貸し借りのようなことになってきた。つまり俗な言葉で言えば、国の方から、予算を組むんだけれどもどうも金が足りなくて困っているから、ちょっと一時立てかえて貸してくれないか、いろいろな方法を講じて貸してくれないか、後で必ず返すから、こういう話でございます。国の方もなかなか困っておるらしいので。  それからもう一つは、いままで国から借りていた金を国へ返すべき時期があと何年かに迫っている、それで、本当は将来返すやつを今年度でもって何か弁済するような形をとっている。それは結局五十七年度予算を編むに当たって収支が大体とんとんになったから、まあ少し国のために便宜を図ってやろうと。だから、本来はもっと後に返すべきやつをいま帳消しのような形にしている。こういうようなことで、いろいろ国とこちら側とのいろんな話し合いで、地方自治体には一切悪影響のないように、支障を来すことのないように配慮しながら、国が困っているときは少し助けてあげようかと、こういう形で今回の五十七年度のあれが組まれたものであって、国が主であって地方が従であるということではございません。そのような考えの上に立って編成されたものでございます。
  5. 山田譲

    山田譲君 大体地方財政あるいは国の財政といっても、広く日本国全体のものでありますから、ですから全然別というわけにもまいらないというふうに思います。ただしかし、それが余りにも便宜的に考えられてくる。国が財政再建なんだから地方はもうとにかく有無を言わさず金を貸せとか、将来返してやるからというふうなその基本的な考え方そのものが私はやっぱり問題があるというふうに思うんです。  いま大臣がおっしゃった程度のことであればこれはしようがないと思うんですけれども、最近の傾向、とりわけことしの状況を見ますと、どうも一方的に国の都合だけでもって地方財政が引きずられていっている。もちろん将来返すからという理屈はあるにしても、返せばいいというものじゃないと思うんですね。やはりそれは、地方自治体にとってもことしの交付税はどうなるんだというようなことで非常に関心がある。ところが、これがそういう地方自治体の意思も余り反映できずに、要するに国の方針でもって引きずられていってしまう。こういうふうなことになると、これはひいては——詳しい話は後になりますけれども地方自治行政に対する、地方自治の本旨に対する一つの重大な干渉という問題になってきはしないか、こういうふうに心配されるわけでありますので、その点もう一回ひとつお返事をいただきたいと思います。
  6. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) こういうことは単年度で終わらせたい。つまり、その年その年の特別な状況によってそれに対応していくために、いままで国から金を引っ張り出して借りてきて地方財政の方を埋めたことも再三ありますので、まあ国が困っているときは、それではことしは少し何かこちらも用立てましょうというぐらいのつもりで行われるべき性質のものでございまして、これが永続的に措置されるとなると問題でございますが、単年度だけの考え方でこういうものは今後運営すべきである、そのように考えておるものでございます。
  7. 山田譲

    山田譲君 それでは次へ参ります。  これは税務局長で結構でございますが、五十七年度地方税収見込みということについて伺いたいと思うのですが、この前もちょっと御質問しましたけれども、国がすでに二兆円以上の歳入欠陥が出ようとしている、これはもうほとんど確実だと思うのですけれども、そういう状況地方税の方に影響がないということは私は考えられないわけでありまして、当然地方税についてもこれは相当大きな減収になっていくのじゃないかと考えざるを得ないのです。すでに、新聞報道でありますけれども、五十六年度法人事業税落ち込みによって地方財政計画見込みより道府県税が三千四百億ほど落ち込むのじゃないか、こういうふうな新聞報道もすでになされているわけでありまして、この点どういうふうに考えていらっしゃるか。  それと同時に、いま申し上げたのは道府県税でありますけれども市町村税につきましてはどうですか。これをひとつお伺いしておきたいと思うのです。  それからもう一つ、それに関連しまして、地財計画外税収あるいはまたギャンブルというふうなものの収入はどのようになっているか、これをお伺いしたいと思います。
  8. 関根則之

    政府委員関根則之君) 昭和五十六年度税収につきましては、国税の方で大分大幅な減収になりそうだという話は私どもも承っておりますけれども、その確定額といいますか正確な数字をもっての話は聞いていないわけでございます。しかし、いずれにしろ相当大幅な減収が起こりそうだという状況については素直に受けとめざるを得ないだろうと思う次第でございます。  御承知のように、国税の減・額が自動的に機械的に地方税にすぐに反映するというものではございませんが、法人所得に対して課税をいたしております法人県民税なりあるいは法人事業税なりというものは、やはり対象が同じでございますから、同じように落ち込んでくる可能性というものは十分見ておかなきゃいかぬわけでございます。ただ、私の方が税収見通し等について議論をいたします場合には、やはりわが方の実態といいますか、実際に都道府県なり市町村なりに入ってきている現実の税収状況もとにいたしまして推計をいたしております。そうしますと、最近の数字としては、都道府県につきましては、二月末でございますけれども、主として法人関係税落ち込みが相当ひどいものですから、しかし、ほかの税目で多少計画を上回るものがございまして、相殺した結果、全体といたしまして伸び率にいたしまして四・七ポイントほど落ち込んでおるというのが二月末の徴収実績であるわけです。これを自動的に伸ばしますと、先ほどお話がございましたように、三千億を超えるような税収減計画に対しましての税収減というのが予想されるわけでございます。地方の場合にも確定額をもって申し上げるわけにまいりませんけれども、ほぼその程度減収というのは都道府県税については覚悟しなければいけないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。  それから、市町村につきましては、市町村法人関係税も確かに伸び悩んでおるわけでございますが、都道府県に比べまして、事業税がない関係で、税収全体に占める法人関係税ウェートが低いわけでございます。一方、市町村個人住民税ウェートが非常に高いわけでございますが、それが比較的順調に伸びておりますので、ほぼ市町村については、都道府県と同じように的確な数字を持っておりませんけれども、いろいろあちこちわれわれができる限りの範囲で当たっておりますところでは、大体計画額をどうにか達成することができるのではないか、こういうふうに見込んでおる次第でございます。  二番目の御質問の、税外収入といいますか、税の中の計画計上額以外のもの、すなわち、超過課税でありますとか、あるいは法定外普通税の問題ですが、これは、超過課税中心法人に対する課税が多いわけでございますので、超過課税については法人関係税中心にしてやはり伸び悩みが見られるものというふうに考えております。しかし、的確な数字について一々私ども調査をいたしておりませんので、この方面につきましては、そういう一般的な傾向としては申し上げられますけれども、具体的にどの程度どういう影響があるかということについては申し上げかねるわけでございます。  なお、法定外普通税につきましては、それほど大きな影響は出ていないというふうに考えております。
  9. 山田譲

    山田譲君 なかなか確定的なことは言われないと思うし、私も、国の減収があったからストレートにそれが地方税にも影響するだろうと、こういうふうなことは申し上げるつもりはないんだけれども、現在の景気動向から推していっても、やはりそういう問題は地方税についても当然起こるんじゃないかというふうに思わざるを得ません。いまお話がありましたような四・七ポイントの落ち込み、そしてこれが大体三千億ちょっとになるであろうというふうなお話がありました。確定ではないということでありますけれども。そうすると、仮の話ですが、もしこの三千億の欠陥が出たとすればこれはどういうふうに処置なさるか、そこのところをお伺いしたいと思います。
  10. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十六年度税収は、ただいま税務局長から話がございましたように、大体三千億程度減収ということでございまして、かなり法人関係税落ち込みが多いわけでございます。この点については、落ち込みの大きかった地方団体から申請もございまして、何らか減収補てん債等の措置をしてもらいたいということがございました。減収額そのものを全部申請してきておるわけではございません。それぞれの団体財政状況等を勘案して申し入れがございまして、私どもとしては実態を見た上で、すでに千七百七十億円程度減収補てん債として認めようということになっておりまして、それで地方団体についてはもう市町村も含めて手当てをしておりますので、大体収支決算ができるというふうに考えておるわけでございます。  なお、ついでで恐縮でございますが、国税影響されます法人税落ち込みに伴う交付税の減というものは、これは影響するのは五十八年度の問題でございます。これも重大な問題ではございますが、これは五十八年度で処理をするということになろうかと存じます。
  11. 山田譲

    山田譲君 次に、当然これも予想の問題ですから確定的なことは言われないと思いますけれども、五十七年度についての地方税関係、これは財政計画にも明らかに出ておりますけれども、今後の景気動向というふうなものを見るときに、やはりこれからそんなに急に景気がよくなるというふうなことは考えられない。ですから、ことしの五十七年度地方税見込みというのは大体見通しとしてどうなっているか。つまり、見込みどおりにいくだろうというふうに考えておられるか、それとも不安があるというようなお考えでいらっしゃるかどうか。そこのところを伺いたいと思います。
  12. 関根則之

    政府委員関根則之君) 五十七年度地方税収見込みを立てるに当たりましては、十二月の時点におきまして国の所得税等減収が予想されましたので補正予算が組まれました。その補正予算後の数字もとにいたしまして、来年度経済見通し等数字を踏まえて計上したわけでございます。その後、補正予算の段階におきましては、あのときに補正減額をいたしました額以外の税収はほぼ予定どおり入るものと、こういう前提で組んでおったわけでございますが、それが先ほどお話がありましたように、相当大幅な減収がさらに生じてくると、こういう事態になってきております。  それから、来年度経済見通しにつきましても、各方面から実質五・二%、名目八・四%の成長はなかなかむずかしいんじゃないかと、こういったような御意見もありまして、経済見通しに対してきわめて厳しい見方をしている向きが多くなってきているわけでございます。私どももこういう情勢変化というものは真剣に受けとめ、容易ならざる事態にあるということは素直に認めざるを得ないだろうと思っております。  ただ問題は、ことしの国税減収ないしは地方税減収——ことしといいますか昭和五十六年度減収額が、いわゆる発射台の低下が、すぐに、それに弾性値を掛けた分来年度に響くかといいますと、必ずしも私どもはそうは考えていないわけでございます。来年度におきまして、当然のことながら政府の方におきます経済運営につきましての政策努力というものもなされるものというふうに考えるわけでございますし、また同じ経済成長の中におきましてもいろんな成長の仕方というのはそのときそのときで変わってくるわけでございまして、企業収益一つとりましても同じ成長の中でも企業決算が比較的いい決算が出る場合と、必ずしも成長率ほどには決算がよくないというような場合もあるわけでございます。そういったもろもろの変化というのは必ずしも一律にいまの時点で申し上げられないわけでございます。私どもといたしましては、今後の政策努力がよろしきを得ることによりまして、計上いたしました税収につきましては何とか確保し得るのではないかという、これもやはり期待を持っておるところでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、最近の事態というものにつきましては、私どもも真剣に心配をしながら見守っていかざるを得ないというふうに考えておる次第でございます。
  13. 山田譲

    山田譲君 きのうも物価特別委員会で私は河本長官質問をしたわけでありますけれども政府考えている五・二%とかという経済成長率はやはりかなり無理があるんじゃないか。経済専門のいろんな研究センターというふうなところの予測を見ましても、特に後半になって一兆を超す公共事業費の追加を見込んだ上でなおかつ三・数%であろうと。三・三%、三・四%といろんな数字があるようですが、こういう状況であります。ですから、やはり政府の五・二%というのはかなり高い数字になっているんじゃないかという感じがします。しかし、これは見通しの問題でありますし、その線に沿って政府としても大いに努力していくと、こういうことを言っておられるわけですから、そういう点も十分考えた上で適切に対処していただきたいと、こういうふうに思います。その次に、五十七年度地方財政均衡しましたということをよく言われます。しかし本当にそう言えるかどうかということなんですね。特に、過年度における地方交付税特別会計借り入れの残高というふうなものが五十七年度の分を含めまして八兆八百二十八億円ぐらいになる。そして五十九年度からはその償還が始まるわけですね。その半分を国が見るというふうなことでありますが、それにしてもかなり大きな額になる。そうしますと、実質的に考えていけば、これは償還をしなければなりませんから、その分だけが交付税率実質的には下げられたようなことになっていくんじゃないかというふうに考えざるを得ないのであります。  それからまたもう一つ、八年ぶり収支均衡したというふうなことを言われますけれども、それは先ほどの話じゃありませんけれども、やはりいわゆる国のゼロシーリングの飛ばっちりを受けて、そして地方自治体が極端な圧縮、とりわけ歳出圧縮を余儀なくされているんじゃないか。その結果八年ぶり収支均衡というふうなことになっているにすぎない。そうしますと、その圧縮された分は当然また後になってはね返ってこざるを得ないわけでありますけれども、こういうようなことを考えますと、そう簡単に収支均衡したというふうなことはとても言えた状態じゃないんじゃないかというふうに思います。特にいまの歳出圧縮につきましては、過去の歳出伸び率ですね、そういう平均値をずっととって掛けてみれば大体わかるわけでありますけれども、それにしてもことしあたりは四兆円くらいの差が出てくるんじゃないか。そうすると、その分住民生活に負担が、そちらに犠牲が行っているというふうに考えざるを得ないのでありますけれども、この辺はどういうものか。  それからまた、地方公営企業繰出金につきましても、決算と比較をしてみますと、五十五年度地方財政計画八千百五十億円に対しまして、その他の会計からの繰入金が一兆二千億になっている。そして四千百五十八億円もオーバーをしているというふうな状態でありますから、これまた大変なことでないかというふうに思うんですけれども、この辺はどういうものかまずお伺いしておきたいと思います。
  14. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十七年度におきましては、私どもとしては歳出面では単独事業等必要なものは確保しながらも、財政再建へ歩を進めるということで、全般的に抑制基調に立ちまして、歳入では見込まれる限りのものを見込んで、確保できるというものを見込んで計上したわけでございまして、その結果収支均衡という見込みになったわけでございます。そういった財政計画をつくったわけでございます。  ただ、その背景には、ただいま御指摘のございましたように、交付税特別会計の八兆円の借り入れ、それ以外にも地方債普通会計債でも三十四兆、それから公営企業債のうちで普通会計が持つものが約七兆ということで膨大な借入金があるわけでございますので、なかなか財政の体質が改善されたとは思っていないわけでございます。特に、先ほどから御指摘のございましたように、五十七年度税収なりあるいは国税三税、それに伴う交付税がどうなっていくかといったようなことを考えれば、五十七年度自体も非常に苦しい、窮屈なのではないかという御意見もございました。しかし私どもとしては、名目八・四%、実質五・二%の成長が達成できるかどうか、いろいろ意見があることも承知しておりますし、決して楽観も許されないという気持ちを持っておることも事実でございますが、今後の経済情勢の推移に即して適切な経済運営なり財政運営を行いますように、政策努力を積み重ねることによって何とか五十七年度均衡はとっていきたいと思っておるわけでございます。  ただ、全体といたしまして非常に抑制基調に立って均衡を図ったということにはなっておるわけでございまして、そういった意味で私どもとしては何とかこれからの行く先には希望を持っておるわけでございます。希望は持っておりますが、ただ全般として大変な大きな借金をしょい込んでおるし、また、交付税特会借入金等についても五十九年度以降へ送り込んでおるといったこと等もあるわけでございまして、決してなまやさしいやり方でいけるとは思っていないわけでございます。  それともう一つ、その抑制があったのは、結局国のゼロシーリング等によってかなり窮屈な削減をしたのではないかといったような御指摘もございました。しかし私どもとしては、いまも申し上げましたような単独事業等につきましては、社会資本整備なり地域経済の振興に資するために必要な規模は確保したつもりでございますし、老人医療給付等制度改正に伴う必要な経費についても、それに対応するものは見込んだつもりでございまして、何とか必要なものは確保したと思っておるわけでございます。  そういったことで、決して楽観はしておりませんけれども、全体としては均衡がとれた形になっておりますし、今後引き続き財政健全性には努力をしていきたいと思っておるのでございます。  地方公営企業繰出金について、財政計画決算との乖離が大きいといったような御指摘もあったかと存じますが、御承知のように一般会計が負担すべき経費あるいは補助とか出資をすることが適当な経費については、所要額財政計画上計上しておるわけでございまして、私どもとしては今回の五十七年度においても一一・八%という全体の伸びよりはるかに高い規模伸びを見ておるところでございます。しかしながら、決算との乖離といった点について申し上げますならば、制度として当然見るべきもののほかに、地方財政計画で予定しておりませんたとえば宅地造成事業なり港湾整備事業といった経費についても地方団体は自主的に繰り出しを行っておるといったようなこととか、下水道事業において料金で賄うべきと考えられる部分についても繰り出しを行っておるといったようなこともございまして、結果的には上回っておるということでございます。私どもとしては、理論的に考えられるものは、いま申し上げましたようにかなりな伸びを見ておるわけでございまして、適正な規模を確保しておると思います。ただ、いま申し上げたような実質的な問題もございまして、実情がございまして、決算との乖離が出ておることは事実でございますけれども、今後とも繰り出し等については、必要な検討を行いまして繰出金の適正化ということには努めてまいりたいと思っております。  まああれこれ申し上げましたけれども、全体として必要な経費は見ながら何とか均衡はとった。しかし、将来についてはなお厳しい問題が残っておる、こういうのが私どものただいまの考え方でございます。
  15. 山田譲

    山田譲君 今年度は確かに形式的には収支均衡したということが言えると思うけれども、将来のことを考えますときに、それも遠い将来じゃなくて近い将来を考えても、なかなかこれは大変なことじゃないかというふうに思わざるを得ません。  それからもう一つ、ことしの計画を見まして、だれが考えてもおかしいと思うと思うんですが、二千九十八億円を借り入れをしている、これなんかも当然臨特として交付税の中に繰り入れるべきじゃないかというふうに考えざるを得ないんです。それからまた、どういうことかよくわからないんですが、千百三十五億円を国に貸すというふうなかっこうをつけている。これも当然こんなことをするわけはないんで、片っ方で借りて片っ方で貸すというふうなそんなばかげた話はありません。どうしてこういうことをやったか。要するに、これは冒頭にも申し上げましたとおり、国の財政再建の単なるつじつま合わせのためにやったにすぎない。  そうしますと、これは国の財政の方にとっても、どうせ近い将来にまたそれは返さなきゃならないんだから、ことしだけ国の財政が一応均衡したといっても、これはもう必ずそのツケは将来に残っているわけですから、国の財政的見地から考えても非常におかしなやり方だというふうに考えざるを得ないんです。国に一方では借りて一方では貸したかっこうをつける、いずれにしても、将来は必ず借りたものは返しますというふうな形にはなっているんですけれども、こういう形ではこれはどう考えても主体性を持った地方財政の確立ということができないんじゃないか。何か国の財政のためにしようがなしにやった。国の財政からしてもそれは非常におかしな話で将来的には返さなきゃならないということになりますと、国の財政あるいは地方財政両方とってみてもどうも納得できないわけでありますけれども、恐らく自治省も大蔵省といろいろ折衝をされたと思うんですけれども、その辺のことはどういう議論がなされたかお伺いしたいと思うんです。
  16. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 率直に申し上げまして、大蔵当局においては、国の財政も大変厳しいので、地方関係経費を三千億程度削減するということでひとつ協力をしてもらいたいといったような、マクロ的な意味ではございますが、話がございました。それをめぐって私どもとしてもいろいろ議論をし、地方財政も決して体質改善が果たされておるわけでもないし、努力はいろいろとするけれども、そう簡単に削減ができる状況にはないということで、あれこれと時間をかけて相談をしたわけでございます。ただ、そういった過程でいまの二千九十八億円、すなわち利差臨特の千九十八億円と臨時特例交付金として私どもが当然地方として交付を受けられると思っております千億円、合わせて二千九十八億円というものは、どうしてもこれは必要がある。また、地方団体として確保すべきものであるということで折衝いたしました。大蔵当局においてもそのことについては了解をしたわけでございますけれども、何せ国が大変財政的に厳しいということで、一般会計を通じて出すということはとても財源手当てができないということでございました。しかし、結果としては、私どもとしての主張を実質的に入れるというかっこうになりまして、とりあえず二千九十八億は交付税特別会計借り入れる。しかしながら、その償還については全部国が責任を持って返します、負担をいたしますということでございまして、その意味では実質的に確保されたということでございます。  片や、いろいろとやりくりをしたと御指摘ではございました。確かにそういう形にはなっておりますが、五十七年度地方交付税全体の原資としては、御承知のように、三税の三二%分の九兆二千三百億円余りと、臨時特例交付金に相当するいまの二千九十八億円と、それから返還金二十八億円を合わせますと、九兆四千四百三十五億円、これが原資として見込まれたわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように一いろいろと歳出等についても抑制基調に立って合理化を図っていくということで収支見通しました結果、交付税総額は九兆三千三百億円あれば何とか地方財政の上に支障が生ずることはないということでございますので、千百三十五億円というのは、むしろ中長期的な地方財政の健全化を図るという観点から、五十七年度においてはこれは減額をいたしまして、交付税特会借入金償還が始まる五十九年度以降の地方交付税に加算するという方が好ましいことである、こういう判断に立ちまして減額留保をするという形になったのであります。  見方を変えて申しますならば、一つの方法として交付税特会の借入条件を変えて、五十九年度以降に送り込んだわけでございますが、本来、前の条件のままであったとするならば、多分五十七年度においても二千百五十億ぐらいの返還が、地方の負担だけでも二千百五十億ぐらいのものがあったはずでございます。そういうことを送り込んでおるということなども頭に入れて、むしろ五十九年度以降に若干回した方がそれは相対応することにもなるだろうというような配慮もあったことも事実でございました。  そういうことあれこれ勘案しました結果、いささか一般にはわかりにくい形ではございますけれども、必要なものは確保する、そしてまた、中長期的に見て一番いい方法は何であろうかということで今回のやり方をとったわけでございまして、私どもとしては、いろいろな意見がございましょうけれども、いまの地方財政全体の中では、中長期的な見通しに立ってみてもこの方法がよかったのではないかというふうに考えておるところでございます。
  17. 山田譲

    山田譲君 大蔵省という相手のあるところでもありますし、それから財政再建というふうな至上命令のもとに、大蔵省も相当がんばったと思うんです。それに対して自治省の皆さんも非常に御苦労をされて、結局名を捨てて実を取った、そこの苦心の作がこういったやりくりになったというふうに思いますけれども、何となく非常に不自然なやり方であって、何度も繰り返して申しますように、国の財政のためにこういう非常な無理を、実は取ったとはいうものの、非常に無理をせざるを得なかったということについては自治省としても、今後もひとつがんばっていっていただきたい。そして、やはりあるべき姿で素直に地方財政が確立できるようにひとつ今後とも御努力をお願いしておきたいというふうに思うわけであります。  それから、この際ですから、結論めいたことで恐縮でありますけれども、私もるる申し上げたようなことで、今年度だけから見ますと多少無理があるにしても、一応収支均衡がとれたということは言えますが、将来展望を見ますときに、やはりなかなかこれは大変じゃないか。そうしますと、現在の交付税率三二%というものが妥当かどうかということは、当然これは検討されてしかるべきだと思うんですが、これについて自治省としては、現在の三二%が妥当であると考えるか、あるいはまた多過ぎると考えるか、少な過ぎると考えるか、この三つに一つしかないと思うんですけれども、どういうふうに考えていらっしゃるか、そこをお伺いしたいと思うんです。
  18. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 交付税率そのものは、十分御承知のように、国と地方との財源配分の基本的な方式でございますので、長い間余り変えないというかっこうでやってまいりました。しかしながら、五十年度以降の財政収支の不均衡状態もとで、特に五十四年度のごときは四兆一千億円の財源不足を生じた、そのために確保した交付税は、実質国税三税の四七%にも達したということでございまして、私どもとしては、これはほっておけないということで、かなり強く大蔵当局とも交付税率引き上げ等について議論をしたわけでございます。ただ、たびたび申し上げますように、まさに一方が崩れてしまったら国全体としての行政は成り立たないわけでございまして、国の財政もきわめて厳しいということで、いわば暫定的な形で交付税特会借り入れ二分の一国負担といったような方式で今日まで来たわけでございます。  そういう中で、五十七年度はどうも見込みとしては財源不足がなくなったということで、一般には非常によくなったように錯覚を与えることになるわけでございますが、私どもとしては、非常に努力をしてそういう形にはしたけれども、今後の推移というものはわからないし、先ほどからたびたび指摘がございましたように、いろいろと膨大な借入金を返済する過程において問題が出てくるというふうに思っておるわけでございます。そういった意味から、私どもとしては交付税率を今後引き上げる状況になるのかならぬのかということになりますと、端的には申し上げられないわけでございまして、やはりそのときの財政状況なり、国の財政状況なり、そういったものを考えて、全体として円滑に行政が進められるような形で考えなければならない。ただ、仮に非常に厳しい状況になったときにどうするかということになるわけでございますが、そうなった場合は、やはり交付税率そのものは最初に申し上げましたように、国と地方の財源配分の基本にかかわる事柄でもございますので、その状況を踏まえて検討しなきゃならぬ。  と同時に、私どもとしてはせっかく臨調等でいろいろと検討をしてもらっておるわけでございますが、どうしても国と地方との間の機能分担のあり方をめぐる議論の中では地方の自主性が高められる方向で持っていくべきだと思っておりますし、できるだけ地方に仕事を移していくということがやっぱり基本であるべきだと思っております。したがって、そういう状況等を踏まえて地方と国との財源配分というのはどうあるべきか、そういうこともいずれ問題になってくると思いますが、そういうことも踏まえて交付税率のあり方というものを検討をする必要があるであろうというふうに考えておるところでございます。
  19. 山田譲

    山田譲君 三つのうちどれかということになったら臨調に逃げられちゃったわけですけれども、さしあたりことしとしては、まあまあいろいろ問題はあるにしてもこれでいきましょう、臨調でどんな答申が出るか知りませんが、そういう場合にまた当然考えていかざるを得ない、こういうふうなお話のように承りました。私どもとしては、何回も言っていますように、地方財政の現状、将来を考えますときに、どうしてもやはりこの際、交付税率を上げなきゃならないんじゃないかというふうに考えますけれども、いまおっしゃられたようなことでしょうがありませんが、ひとつ今後とも十二分にその辺は御検討をお願いしたいというふうに思います。  それから、やや細かい問題になって恐縮でありますけれども、いわゆる財対臨特ですね、これについてですけれども、これはグリーンカードが制度化されたという場合に一体どうなるかということをお伺いしておきたいと思うんです。つまり、「源泉分離課税が選択された利子所得等について住民税が課税されていないこと等」という表現になっておりますけれども、とりわけ最後の「等」という意味ですね、これはどんな場合を考えていらっしゃるか、これについてお伺いしたいと思います。
  20. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 本年度の二千九十八億の中で、千億というものが財対臨特に相当するものであると申し上げておるわけでございますが、これは従来から財対臨特は、いま御指摘のございましたように、所得税において利子配当所得について源泉分離課税というものを選択しました場合には住民税にそれが反映されない、住民税ではその分が取れないという状況を勘案してやったわけでございます。それが主体でございますが、「等」というのがついておりますのは、過去の収支均衡状態もと地方財政状況が非常に悪化しておりますときに、その地方財政状況を勘案いたしまして、その分も含めて財対臨特の総額を決めたということでございます。その「等」というのはまさにそういう意味で、地方財政に非常に財源不足が生じた、それを勘案して出したということでございまして、今回の千億の場合はおおむね主体としては源泉分離課税を選択されました利子配当所得に対応する住民税引き当て分がかなりな部分だというふうに考えておるところでございます。
  21. 山田譲

    山田譲君 わかりました。  それでは同じく、やや細かい問題になりますが、昨年までに発行された財源対策債を解消して、これを基準財政需要額の中に単位費用として入れた、戻したという話で、これは結構だと思うんですが、ただ一部、地方債計画一般会計債の一般公共事業の中にまだそれが多少残されているというふうに聞いておりますけれども、これは本当かどうか。それが本当だとすればその額は一体どのくらいになりますかということをまず一つお伺いしたいと思うんです。  それからもう一つ、同じような問題ですが、財源対策債振替で増加しましたこの基準財政需要額、これは幾らぐらいになっているか。  その二つをお伺いしたいと思います。
  22. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 御案内のように、今回、五十七年度地方財政収支が一応の均衡を見たということでございますので、従来から交付税の基準財政需要額にかえて地方債で賄ってまいりました財対債の措置を行わないことにしたわけでございます。したがいまして、この分につきましては基準財政需要額に振りかえていくわけでございますが、ただ、御承知のように、起債で財源措置をする場合と交付税の基準財政需要額で財源措置をする場合には、その方法の上で違いがございます。起債の方はきわめてもう具体的にそのものずばりでございますが、交付税の方は、たとえば単位費用において標準的な事業費としてこれを算入するというふうな方法がかなり使われております。今回、この振替に当たりましては、そういった点のやっぱり変動が出てくる。  財源対策債というのは大変異例なことではございますけれども、何分にも昭和五十年以来もう七年間にわたって現実の地方団体財政運営の上ではなじんできたことでございますので、その点を考えまして、地方債計画の上では特に一番問題になりますのがやはり市町村農業基盤整備等の事業、これは昔は交付税だけで見ておりましたものを、五十年以降、起債——財対債て見ることになってきたわけでございますが、したがいまして、これを今度は交付税に返すということになれば起債はゼロ、こういうことになるわけでございますが、それではなかなかやっぱりやれないという点がございまして、そこで、地方債計画の上ではそれを調整する意味を持ちまして約千二百五十億ほどこれを見込んでおるわけでございます。したがいまして、直接に単位費用なりあるいはいわゆる事業費補正という方法を用いて基準財政需要額に振りかえますのが五千六百五十億、これを振りかえておきまして、そして、その算入の状況を見まして、現実にそれでは対応できないというところにつきましてはこの千二百五十億を使って調整をしていく、こういう、何といいますか、いわば経過的暫定的な手法を使わなければ現実の財政運営というのはやはり見合っていかない、自治体に即しないということで、そのように措置をしたいと考えておるところでございます。
  23. 山田譲

    山田譲君 それじゃ、その千二百五十億ですか、これはほとんど全部が農業基盤整備事業用であるというふうに考えていいですか。
  24. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 全部が農業基盤整備用ではございません。それ以外につきましても一いま農業基盤整備事業を申し上げましたのは、これはもう一番極端な例でございまして、ほっておけば起債がゼロになるわけでございますが、それ以外のものにつきましても起債の充当率がやっぱり大きく下がるわけでございます。その下がる部分についても若干調整の必要があろうかと思いますが、農業基盤整備事業はこの千二百五十億の中のかなりの部分を占めることになろうかと思います。特に市町村の場合がこの変動がやっぱり大きいと考えられますので、交付税の方の振替によって、現実に算定されました状況、これは八月にならないとわからないわけでございますが、それを見ながら調整枠として配分をしていくということにしたいと考えております。
  25. 山田譲

    山田譲君 よくわかりました。  その次に、道府県あるいは市町村というふうなところでやっております地方公営企業に対する繰出金を的確に算定するために、基準財政需要額のいわゆる経費の種類のところに地方公営企業償還費を入れる、こういうお考えはできないでしょうか。
  26. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 地方公営企業の経営のかなりの部分が起債によって行われておる、特に各種の施設をつくってまいります場合には起債によって行われるわけでございますが、この起債の償還に要する財源は、公営企業の原則によりまして本来的には独立採算制、料金等で賄うということでございますので、やはりその原則によらざるを得ないわけでございます。  ただ、地方財政計画の上でも繰出金を、つまり一般会計からの繰出金を見ておることでもおわかりのように、それらの償還金の中にはこれは一般会計によって負担すべき部分というものがあるわけでございます。たとえて申しますと、下水道の施設整備に当たりまして、下水道の施設については家庭から排出される汚水の分とそれからいわゆる雨水の分、この両方を下水道施設は受け入れるわけでございます。汚水の部分についてはこれはやっぱり料金でもって賄っていくということでございますので、これは一般会計によって負担すべきものじゃない、したがってまた交付税の中にも算入すべきものでないと考えておりますが、雨水の分、実はこちらの方が大きいわけでございます、約七割でございます。これにつきましては、これは料金にはね返すわけにいきませんので、そこで、いわばその公債費相当分を繰出金として一般会計から入れる。と同時に、交付税の方では基準財政需要額、下水道費の算定におきまして、これに見合う部分を中に算入をしていく、こういう方法を使っておるわけでございまして、御指摘のように、一般的に公営企業債償還費というような費目を交付税の上で立てるということは、私どもとしては交付税全体の体系の中からいかがなものであろうか。仮に償還費を見るといたしましても、いま下水道の例で申し上げましたような形で公債費を、一般会計で見るべきものを算入していく、これはやっておるわけでございますので、その点で御理解をいただきたいと存じます。
  27. 山田譲

    山田譲君 次に、単位費用の問題でありますけれども、これは御承知かどうかわかりませんが、名瀬の市議会で、この中に行財政対策専門委員会というのがあるようですが、これが地方交付税について一種の報告を出しているわけです。その報告の中で、とりわけこの単位費用について、現在の単位費用というのは、つまり「合理的、且つ、妥当な水準」ということになっていないんじゃないか。住民生活と自治体行政の現実から出発して決められていないんじゃないか。むしろその決まり方が、交付税財源の伸びの範囲内で単位費用をどこまで伸ばせるかとかあるいは政策的に伸ばさなきゃならない費用はどこだというふうな、そういう観点から逆算をして決められているんじゃないか。ですから、行政の実態と合わなくなっているということを名瀬の市議会の専門委員会指摘しておられます。これは名瀬の市議会が言われるまでもなく、私どももそういうふうに感じてならないわけでありますけれども、この辺について、この単位費用の問題について、果たして合理的かつ妥当な水準ということになっていると思っていらっしゃるかどうか、この辺について御意見を伺いたいと思います。
  28. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 交付税の算定の基礎になります基準財政需要額の内容あるいはその要素の一つでございますところの単位費用の内容について、やっぱり地方団体からいろいろ御意見のあること、御指摘のとおりでございます。端的に申しますと、交付税の単位費用、したがってそれによって算定さるべき基準財政需要額をどのように決めるかということは、先ほど市議会の御指摘のあったように、交付税の枠の中で逆算して決めるのではないか、こういうお話でございますが、私どもの方から言わせていただきますと、交付税とそれから基準財政需要額のもう一つの要素を占めますところのいわゆる基準財政収入額、この二つを合わせたものが基準財政需要額になるわけでございます。この基準財政需要額がどのような額であれば合理的かつ妥当であるのかということは、結局地方財政計画における歳出の中身、これをまず基本として決めてくるわけでございます。地方財政計画は、そういうことで、もし歳出に対して歳入が足りなければ何らかの措置をした上で財源不足を埋める、たとえば交付税をそのために特例をもって増加させて穴埋めをするということをするわけでございますので、それをブレークダウンするものがすなわち基準財政需要額であり、単位費用であるわけでございます。ただ、地方財政計画はきわめてマクロ的でございますから、個々の地方団体の現実の無数の行政需要に応じてきちんと一つずつ積み上げるということがなかなかできないわけでございまして、その点では現実の社会経済情勢の進歩に伴うところの行政の中身の変化に必ずしも即座に対応していけないという点はこれはあろうかと思います。私ども、そういう点につきましては、単位費用の改正等に当たりまして、毎年度地方団体市町村の場合には地方課を通じて常に意見を聞きまして、どういう点が最近問題になってくるのかというようなことをいつもしんしゃくをいたしまして単位費用をつくるように努めておるわけでございます。  いろいろ御意見のあることは私ども十分承知しておりますので、今後ともその点についてはできるだけ適切な合理的な水準で算定をするよう、努力をしてまいりたい、かように存じます。
  29. 山田譲

    山田譲君 確かに無数にあるいろいろな行政需要に対して、一々単位費用を全くその実態に合うようにやれということの方がなかなかむずかしい話だとは思うんですけれども、この名瀬の市議会あたりが言っていることは、やっぱりそれなりに実際にやっておられる人が感じてわざわざこういう意見書を出されたのではないかというふうに思います。ですから、今後ともそういう自治体の実際に自治行政に携わっている人たちの声もよく聞きながら、できるだけその実態に合うような単位費用を検討していただくようにお願いをしておきたいと思います。  それから、これはやや跳びはねた議論になりますけれども借入金というふうなものは毎年交付税の中にはっきりと明記する、そういうのが筋じゃないかと思うんですけれどもいかがでしょうかということと、この際、ひとつ思い切って国税収納金整理資金から、一般会計なんか通さないで、直接交付税と譲与税の特別会計、これに繰り入れることを考えたらいかがか。どうも一般会計を通るものだから貸すとか借りるとかややこしい問題になる。そんなことをしないで直接やるということをどうして考えていただけないか。この点についてお伺いしておきたいと思います。
  30. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 御指摘のございましたように、交付税法におきましては、そういった交付税特会における借り入れについて、一応国とのそういう関係にあることは書いてあるわけでございますが、額そのものは特別会計で借りるものですから、特別会計法の方に書いてございまして、それを通じて全体の姿がわかるようになっております。  ただ、おっしゃいました意味は、さっと交付税法を見たときに、数字そのものがすかっと整理されたかっこうで出てないという点で見にくいという御指摘であろうと思います。そういった点、交付税借り入れ等がどうなっておるかということはあるいはもう少しわかりやすい整理の仕方が要るであろうと私ども思っております。できるだけ何かそういった資料が必要であれば配付するとか何か考えたいと思いますが、法律のたてまえとしては特会で明記するということで相まっていけると、こう思っておるわけでございます。そういうことでございますが、なおいい方法があるのかどうか、そういった点は検討はいたしたいと思います。  それからもう一つ一般会計を通さないで特会へ直入したらどうかといったようなお話がございました。これは国税収納金整理資金から直接交付税特会へ繰り入れるということは、まさに地方交付税地方固有財源であるということをより明確にするという趣旨でございましょうし、そのことについてはすでに地方制度調査会等からも答申がございます。私どももこれまで国の財政当局との間においてたびたび議論も行ってきた問題でもございます。どうも一般会計を通じてやるものだから、これは一般の補助金等と間違われて、非常に地方財政経費がふくらむふくらむというような感じを与えてしまうということもございます。そういった意味で、私どもとしても大いに関心を持っておるわけでございます。御質問の趣旨は十分理解できるし、また、ごもっともだとも思うのでございますが、一方、そういったことをした場合の地方財政への影響、たとえば交付時期をどうするのか、ある時期において、まだ年度当初は直接入ってくる額も非常に少ないわけでございますから直ちにこの配分ができないといった問題とかいろいろございます。そういった種々の問題点を含めていろいろ検討をしなければならないということで今日になっておるわけでございまして、御趣旨の点は十分わかるわけでございますが、なお一つの議論として慎重に検討をしていきたいと思います。
  31. 山田譲

    山田譲君 まあこの問題は古くて新しい問題であるわけですけれども、ひとつ今後とも検討していただきたいというふうに思います。  交付税の最後に、これはぜひ自治大臣にお願いをしたいと思うのですけれども、ずっと聞いておられておわかりになったかと思うのですけれども、この交付税法というのは非常にわかりにくい法律じゃないかというふうに思うのです。普通の常識を持った人間にしてもわかりにくい。やっぱりよっぽど権威のある人でないと、自治省の皆さん方しかわからないような法律であろうというふうに思わざるを得ないのです。ですからこの交付税法そのものをもっとすっきりした形にするようなことは考えられないか。非常に複雑怪奇で、交付税法を一度読んでもなかなか、それじゃうちの自治体には幾らもえるんだろうかということがわからない。こういうふうなことで、恐らく大臣も一度聞いただけでは、どこで貸してどこで借りたとか、いつ返すとか、この問題はおわかりにならないんじゃないかと思うんですね。ですから、大臣だってやっぱりわかりやすい法律の方がいいと思っていらっしゃると思うのですけれども、自治省の皆さん方しかわからないようなそういう法律じゃなくて、一般国民にもう少しわかりやすいような法律に変えるような方向でやるべきじゃないかというふうに思うのですが、大臣、この点いかがでしょう。これはぜひ大臣にお伺いしたいと思うんです。
  32. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 交付税の問題、いつも論議になるところでございますが、私も法律はよく読んでおります。ですけれども、国全体の財政事情とかいろいろありまして、そういうことでその都度その都度論議されるところでございますが、まあいろいろ複雑な状況があるためにそうすかっとした、はっきりした、輪郭のうんとはっきりしたものになかなかなりにくいという点で、われわれもすっきりした形は望むところでございますが、なかなかそこまで行き切れないいろんな状況があるというふうに判断しておるものでございます。
  33. 山田譲

    山田譲君 私が言いたいのは、最初できた当時に比べてますます複雑怪奇になっていくということなんですね。とりわけことしのように財政再建というふうな問題が絡んできますと、ますますもってそこが複雑怪奇になっていって、一体地方財政均衡しているんだか均衡していないんだか、借金が幾らあるのか、返さなければならない金が幾らあるのか、あるいは貸している金が幾らあるんだということすらわからないような状態になっている。ですから、このままでいけば、交付税そのものがいよいよもってその複雑がさらに複雑を生んでいくというようなかっこうでいくと思うから私は申し上げたわけです。大臣、その点いかがですか。
  34. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) これは議員御存じのように、国際経済とか日本の財政状況が二十年前あるいは十年前と非常に異なってスケールも大きくなると同時に、内容がいろいろ複雑化してまいりまして、そのために財政全体の状況がいろんなふうな形になってきているところに、地方交付税その他の割り込み方、枠がどういうふうになるかということが一番基本の問題になるところでございまして、これは財政状況は全体としては非常に複雑怪奇にふくれ上がってきておりまして、これはもう財政全体のあらゆる面で言えることでございますが、これが必ずしもいいとは言えないので、私どもはやはり状況に応じながらこの地方交付税全体をもっとすっきりした形で地方財政計画の基礎になるように役立てていきたいと、このように念願しているものでございます。この状況において、これは御指摘のように徐々にすっきりした形に解決していかなければならないものと考えております。
  35. 山田譲

    山田譲君 何かますますわかりにくくなってきた、そんな感じがしてしょうがないものですから私は申し上げているわけです。ですから先ほど私申し上げたように、この借金はきちっと法律に明記する、あるいは一般会計なんか通らないで直接地方へ配分するようにすると、こういうふうなことにすればこれはもうきわめて簡単明瞭、だれが見ても地方財政はいま幾ら借金がある、幾ら貸してある、あるいはまた、ストレートにこっちへこれるというふうなことがわかるようになるわけですから、まあそう単純にいかないにしても、ひとつぜひそういう方向でやっていただきたい。何か意識的にわざとますますわかりにくくしているような気がして仕方がないんです。  その次に、やや観点を変えまして、関係がある問題だと思いますからお伺いしておきたいのですが、これは地方自治といわゆる委任事務という問題であります。  最近、よく地方の時代というようなことが言われる。これは地方で議員さんが立候補するときには、いまや地方の時代でありますというようなことを必ず言われるわけです。自治省はそんなことを言っているとは思いませんけれども。そういう地方の時代ということが盛んに言われるようになったということは、それなりに意味のある言葉だと思うんですけれども、自治省としては、言われておるところのこの地方の時代というものは一体どういうものであるか、どういうふうに理解をしていらっしゃるか。この点をまずお伺いしたいと思います。
  36. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 地方の時代と申しますのは、ここ二、三年前から大変あちこちで提唱されてまいりました。御案内のとおり、一番先に神奈川の長洲知事さんが「地方の時代」ということをおっしゃったわけでありますが、基本的には、地方が自分で考えたことを自分で執行できるということが基本にあるんだと、しかも、地方におけるいろいろな創意工夫というものが現実に住民の行政の中に生かされていく、そういうものが地方の時代であろうというふうに思っております。  そういう意味では、現在いろいろな形で地方分権の推進でありますとか、国、地方を通じます行政事務の再配分でありますとか、そういうものが、少なくとも地方の時代に沿うような形で解決されていくということが大変望ましいと思っております。
  37. 山田譲

    山田譲君 そういう観点から考えまして、いわゆる委任事務というものが非常に多いと言われている。俗に七割ぐらいは、実際自治体でやっている仕事のうちのそのぐらいは委任事務じゃないか。もちろん委任事務ですから機関委任もあるし団体委任もある、こういうふうなことになるわけですけれども、これは、いまおっしゃられたような地方の人が地方の仕事をやっていくというのとちょっと違って、自治体が国の仕事をやらされるという形になっているわけで、それがしかも分量が非常に多いということになりますと、それといま言った地方の時代というふうなこととの関連はどう考えればいいのか。  もう一つここで伺いたいのは、自治省としては、いま私七割と言いましたけれども、自治省としては、大体どのくらいが委任事務になっているか、そのところと、その考え方をお伺いしたいと思います。
  38. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) ただいま申し上げましたように、住民の創意工夫が生かされる行政がなされるということが基本にあるわけでありますが、もともと地方自治自身は、住民に身近な仕事というものにつきましては、住民の意思を反映させながら、身近な地域におきまして公共団体が自主的あるいは自律的にこれを行っていくというのが基本であろうと思います。  ただ、そういういろいろな仕事の中に、住民の身近で行う方が望ましいのであるけれども、国全体から見ますと、ある一定の基準なりあるいは統一なりをとるということが必要な事務もある。しかし、そういうものがありましても、先ほど申し上げましたように住民の身近で行われ、民主的に行われるということから言いますと、選挙で選ばれました公共団体の長に委任をして、実態に合いながらやっていく仕事というのもまたこれも大変あるだろうと思っております。そういう意味で機関委任事務というのはある意味ではやむを得ない仕事の一つの形態であろうと思っております。  この問題につきましては、もう御案内のとおり、地方制度調査会におきましてもずいぶん議論をされました。地方公共団体の行われる行政というのは、事務の性質から見て望ましいものであれば、もう積極的に公共団体の方にむしろ移譲していくべきだという議論がなされておりますし、私たちもそう思っております。そういう点で、各省との間で、いろいろな仕事が出てまいりますときに、あとう限りそういう方向へ持っていこうと思っておりますので、今後ともそういう方向で検討していきたいと思っております。  御案内のとおり、いまたとえば機関委任事務の数というのは、地方自治法を最近改正をいたしておりませんので非常に申しわけないのですが、四十九年に改正を提案をいたしましたときに、機関委任事務の件数からいうと五百二十二ほどございました。その後、機関委任事務が三十ほどふえているだろうと思います。これは法律の件数のような形で載っておりますから相当な数でありますが、自治省自身として機関委任事務を精細に調べたことはございませんが、一般的に事務の流れから見てみますと、府県においては大体七割ぐらいが機関委任事務ではなかろうか。市町村におきましても三割か四割ぐらいはやはり機関委任事務というのがあるんじゃなかろうか、そう思っております。
  39. 山田譲

    山田譲君 いまあなたは何か委任事務と言えば全部知事というようなことを言われたけれども、当然委任事務ですから、機関委任以外に団体委任もあると思うんですね。自治法で言う、別表に書いてあるようなやつが形式的に言えば恐らくあれが機関委任であり団体委任である、そういうふうになると思うんですけれども。  そこでお伺いしたいのは、そういう状態を、いま七割とおっしゃった、市町村の場合は三割から四割というふうにおっしゃいましたけれども、それは機関委任ということになると、団体委任事務はもっとあると思うんですね。そうすると、国の事務、団体委任か機関委任かは別として、いずれにしても国の事務を地方がやらなきゃならない。そうなりますと、むしろ地方自治体本来でやるべき仕事というものがそちらの方からもう犠牲になるといいますか、圧迫されていくんじゃないかというふうなことも考えられるわけです。  しかしそうはいうものの、国の事務といっても、国民であると同時に地域住民でもあるので、国の法律をそのままやることについては、国民の側から見れば、これはこういう事務だからどうだとか、団体委任事務はどうであるとかと、そんなことを考えながら事務をしているわけじゃないと思うし、受けとめているわけでもないと思うんです。  ただ、自治省にお伺いしたいのは、たとえば厚生省なら厚生省が法律をつくろうとする。その中で一つの事務を、これを都道府県にやらせるというふうに書くかあるいは都道府県知事に、機関に委任するというふうに書くか、その場合に当然自治省に相談があると思うんですけれども、これは団体委任にしてくださいとかこれは機関委任にしてくださいとかという、そういう一つの基準はどこにあるかということをお伺いしたいんです。
  40. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) まあ機関委任事務にするか団体委任事務にするか、あるいは一般的な公共事務として行わせるかというのは、そのときのいろいろな政策判断が私はあるだろうと思います。  一般的に、機関委任事務にするということを各省が申します場合には、その事務について国がやはり指揮監督権を持っていたい、言うならば知事に対して何らかの意味で管理執行の上から制約を加えると申しますか、そういうことを考えている事務、そういうものにつきましては一般的に機関委任事務とするというのが各省の考え方であろうと思います。  私たちの方は、そういうものにつきましてもそういうことまで至らなくてもいいではないか。と申しますのは、先ほど団体委任事務の話を申し上げませんでしたのは、御案内のとおり、団体委任事務というのは、事務自身は公共事務よりも若干国の関与が強いと言えば言えますが、別表の一なり二なりに掲げてあります仕事をごらんいただいてもわかりますとおり、実際これは公共事務なのか団体委任事務なのかというのは大変わかりづらい。むしろ私たちはこれは本当は分ける意味合いが余りないんだろうと思っておるからそう申し上げているわけですが、そういうふうに団体委任事務を考えますと、やはり全体的に見まして、私たちの方は、国が機関委任事務であろうとこう申してきても、それはやはり国体委任事務の方がいいんではないかということを言いながら事務の調整をすることがございます。そういうことがうまく各省に説得ができまして、納得いただいて相談をすることもございます。あるいは各省としては、どうしてもその事務だけは放せない、どうしても指揮監督をしたいんだということであれば、どうしてもやっぱりそれは機関委任事務になってしまう。そういう形の成り合いからできているというふうに思っております。
  41. 山田譲

    山田譲君 非常によくわかりますけれども、国の立場といいますか本省の立場から言いますと、やっぱり知事に機関委任することの方が仕事がやりやすい。一種の国の機関をそこにつくることになるわけだから。だから何か仕事をさせようとしたら機関たる知事に委任する、こういう方がやりやすいだろうというふうに思うんです。しかし、それを余り伸ばしていきますと、今度はきわめて中央集権的になっていく。選挙でもって当選した知事が、当該自治体のことをやるよりも、むしろ国の一つの、たとえば労働基準局長というようなのと同じような形でもって仕事をやらされるということになりますと、これは非常に中央集権がますます強くなっていって当該自治権がかえって侵害されるような結果になっていきはしないか、こういうおそれがあるわけです。ですから、やっぱり機関委任事務というようなものはやたらにふやさないようにした方がいいんじゃないか。国の側から見て中央集権的にやろうと思うとこれは機関委任の方がいいと思うんですね。  そこでもう一つお伺いしておきたいのは、機関委任といったって知事ばかりでなくて、たとえば行政委員会めたいなものがあるわけですね。労働委員会であるとか、人事委員会であるとか、監査委員会であるとか、選挙管理委員会であるとか、こういったものがある。そういう機関に委任する仕事も法律で当然決まっているわけですから、その場合に、もし国が決めたとおりにやらなかった場合に、まあ知事の場合は首を切るというふうな方法があるようですけれども、ほかの行政委員会についてはどういうことが考えられるか。  そしてもう一つは、団体委任の場合に、その当該団体が、たとえば国の法律をもって施設を各都道府県でつくらなきゃいけないとこう決めて、ところがその都道府県がつくらなかった場合にこれはどうなるのか。そこら辺をちょっとはっきりと教えていただきたいと思うんです。
  42. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 御案内のとおり、一般的に地方自治法の規定の中には、いまおっしゃられましたように、マンデーマス・プロシーディングと申しますか、職務執行命令がかかる部分がございます。それは一般的に国の事務をやっております知事なり市町村長に対してかかることになるわけでありますが、行政委員会に関しましては、地方自治法の中でこれを主務大臣が指揮監督する規定はございません。ございませんというよりも、むしろ個別の法律の中において、たとえば教育委員会について文部大臣が指揮監督をするのでありますとか、そういう規定はございます。正規の処分に違反してやったときどうなるかという規定は、実は地方自治法の中では市町村長が機関委任事務をやったときの知事の権限としてございましたり、あるいは選挙管理委員会の仕事の中で、都道府県の選挙管理委員会市町村の選挙管理委員会を指揮監督する形において、もしも間違ったことを市町村の選挙管理委員会がやった場合には処分取り消しとかそういう規定がございますが、その他の委員会につきましては、地方自治法の中には規定がないわけであります。  先ほど申し上げましたように、むしろそれは各法の中にございまして、教育委員会であれば地方行政に関する例の法律の中にございますとか、労働委員会でございますと御案内のとおり労働組合法の中にございますとか、そういう形の中で各大臣にその指揮監督権が与えられておりますが、一般的に処分取り消しというのは、私が存じている範囲内では、いま申し上げました選挙管理委員会の問題と労働委員会の問題ぐらいではないかと思っております。取り消しというのは、決定権を持っていて現実にやっていくという形の調整なりあっせんなり、そういうきわめて強い力を持っている、そういうことをやれるのはどうも選挙管理委員会と労働委員会だけではないかというふうに思っております。
  43. 山田譲

    山田譲君 労働委員会については別に処分権限なんかないでしょう。労働委員会が調整的機能と司法的機能がある、司法的機能があって、不当労働行為の命令を出した場合に、それに対して不服があれば不服のある人が中央労働委員会に申し立てる、こういうことはありますが、あっせん、調停、仲裁というふうなことを労働委員会がやった場合に、それを中労委がこれはいかぬとかやめろとか、そんなことを言う権限は全然ないわけですわね。だから、必ずしもそういうことではないと思うんです。  ただ、知事の場合と行政委員会の場合がそういうふうに違うということと、先ほどお返事いただかなかったけれども団体がやらなかった場合どうするんですか、委任事務について。
  44. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 団体委任事務に関しましては、地方自治法の中ではそういう規定はございませんので、一般の公共事務と同様に取り扱っております。
  45. 山田譲

    山田譲君 まあそういうことですが、私の申し上げたいのは、地方自治法そのものは一応機関委任事務を認めてはいるものの、やはり非常にこの自治権というものを地方自治法は非常に高く考えていると思うんですね。ですから、たとえば委任事務であっても、知事の場合は一応別としても、当該自治体の自治権というものを非常に尊重した結果、あのような地方自治法ができているんじゃないかと思うんです。そういう意味から言いましても、中央官庁としては機関委任事務をふやしたいでしょうけれども、やはり自治省あたりがひとつがんばっていただいて、そうめったやたらに機関委任事務なんかつくらないように考えていただきたいと思うんです。  それから、いまの委任事務という問題に関連して、この前もお話出ましたけれども、先日、山形県の金山町ですか、でつくった情報公開条例、これについて、委任事務の関係は、機関委任については本省の了解をとらなきゃならないというような、本省といいますか、大臣の了解がなければ出せないというふうなことを言われました。そうすると、団体委任事務についてはどうですか。
  46. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお話がございましたように、先般申し上げましたのは、一般的に文書の管理と申しますか、そういう面から見ますと、情報というものを公開をしていくというのは固有事務だと思っておる、団体事務につきましても機関委任事務にしても同様でございます。ただ、機関委任事務の処理に関しまして、もともと国に指揮監督権があるものですから、それで指揮監督権を何らかの意味で行使をすればその機関委任事務について公開ができなくなるのではないかというふうに考えているということを申し上げたわけでございます。
  47. 山田譲

    山田譲君 これは自治省に聞くべきことではないかもしれませんけれども、いまの条例に関連しまして、実際問題として、だれかがこの情報を提供してくれ、見せてくれと、こう言ってきた場合に、これが機関委任事務であるかどうかなんというのは余りわからないとは思うけれども、たとえば機関委任事務であったからといって、それを一々所管の大臣のところにお伺いを立てて、これは公開していいですか、悪いですかなんということは言うのは余りにも現実的でないように思うんですね。そうしますと、一たんすべてのものは全部公開してしまう、原則的に。そして、その後で何か問題があればやっぱり所管大臣が注意をするというようなことはあるでしょうけれども、やはり一々所管の大臣の許可を受けた上でなければ機関委任事務については公開できないというのは余りにも現実的でなさ過ぎるように思うんですけれども、そこら辺、どうでしょうか。
  48. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 原則的には全くそのとおりだと思っております。ですから、住民側から申し上げますと、機関委任事務といえども一般的には、それは固有事務だから請求しますとか、固有事務でないから請求しませんなどということを住民は考えてはいないだろうと思います。ですから、そういう意味では、一般的にはそういうものがあって、何もなければ機関委任事務であろうが全部公開されてしまうというのが原則だと思っております。ただ、そういうことをやられちゃ困ると、こうおっしゃるなら、具体的にこの事務をやっちゃ困るということを国が初めから注意をしなきゃいかぬと思っておりまして、一々これは出してもいいでしょうかということを公共団体が国に聞く必要は私はないんだと思っております。
  49. 山田譲

    山田譲君 それでは次に、給与の問題に入りたいと思うんですけれども、いろいろ問題がありますけれどもきょうは全部やる暇はありませんから、少ししぼって、いわゆるラスパイレスというやつですね。何か、聞いていますと、ラスパイレスでやったんだから絶対間違いないと金科玉条みたいにおっしゃる。だけれども、果たしてそんなに精度の高いものであろうかどうか。自治省の中でも、このラスパイレスの指数を算出するに当たりまして、これは自治省の資料の中に書いてある言葉ですが、ラスパイレス指数の算出に際しては、同時にパーシェ指数も行っており、両者の値の開きの程度についてのチェックをしている。というふうに書いてある、自治省が書いたものの中に。そうしますと、いわゆるラスパイレスでもってこうだ。ですから、この県は高過ぎるとか、この県はそれよりも若干低くなっているとか、こういう言い方をされて、それはラスパイレスでもってやったんだと言っているけれども、ところが自治省自身が認めておられますように、同時にパーシェ指数も行っておると、こういうふうに言っている。そうして、しかも非常にわかりにくいのは、両者の値の間の開きの程度についてのチェックをしているということを言っている。そうすると、恐らくパーシェ方式でやった場合と値が違っているだろうと思うんですね。これは当然だと思うんだけれども。そうすると、その値の開きの程度についてのチェックをしたというのは一体どういう意味か、そこのところをはっきり教えていただきたいと思うんです。
  50. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 御指摘のように、地方公務員の給与水準につきまして、地方公共団体の基幹的な職種でございます一般行政職、これに属します職員について、学歴別また経験年数別にラス方式によって国家公務員との比較を行っております。このラスパイレス指数と言いますのは、国とそれから団体との職員構成の相似の程度あるいは職員数の多少によりまして、その反映の正確さの度合いは若干異なるというふうに考えられますけれども、その団体の給与水準を総合的に把握する指数としては、私は十分使用にたえ得るというふうに考えております。  そこで、いま申し上げましたようなことでラスパイレス方式によって指数を出しておりますけれども、同時に、当該団体の職員構成で比較をいたしますパーシェ指数、これでチェックをしておるということでございます。このパーシェとラスの指数の差というのはそれほど大きいものでございません。給与制度あるいは運用状況の検討に資するという目的から見ました場合にはラスパイレスで十分反映しておるというふうに考えております。  ちなみに申し上げますが、五十六年四月一日現在の地方公共団体の給与水準をラスパイレスで申し上げますと一〇六・七ということになっております。これをパーシェで出しますと一〇六・一ということでございます。都道府県におきましては、これが一番開きが大きいと申しますか、これがラスで申し上げますと一〇六・七でございますが、パーシェで出しますと一〇五・八というようなことでございます。指定都市につきましてはどちらで出しましても一一〇という結果が出てまいります。このように全体で比較をいたしますとコンマ以下の差が出てくるということで御理解をいただきたいと思います。
  51. 山田譲

    山田譲君 そうすると、この値の開きの程度についてのチェックをしているということは、いま言ったように、パーシェでやっても結果的に値の開きが大したことはなかった、こういうことで、特別なチェックをしたということは、チェックはしたけれども大して違いはなかったからラスパイレスそのものを使った、こういうことですか。
  52. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) いま申し上げましたように、ラスの指数で十分給与水準というのはあらわし得るというふうに考えておりますし、また、二つの指数をそれぞれ用いますとかえってまた混乱をするということもございまして、ラスで代表させておるということでございます。ただ、個別の団体に参りますと、開きがこれほど小さくはなくて、もうちょっと大きいというところも出てくるかと思います。
  53. 山田譲

    山田譲君 これは、私これ以上言いませんけれども、そうなれば、やっぱり全体としてはさっき言ったような点でそう大差はないにしても、少なくとも大体ラスの方が高く出ているということのようです。しかも、個別の団体を見ていくと、パーシェとラスパイレスがかなり値が開いているところがある。こういうふうな話になりますと、ラスパイレスだけでもって高い低いとかという議論をされるのではちょっと片手落ちではないか。やっぱりラスとパーシェの場合はこうですというふうなことをやったって別にそこに混乱は生じないというふうに思うんですよね。その点いかがでしょうか。
  54. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 私どもが個別的に指導を申し上げると申しておりますたとえば百五十三団体等につきましては、相当給与水準が高いわけでございまして、これらにつきましては、いずれを用いましても何ら私は問題はないというふうに考えております。  先ほどちょっと申し上げましたが、町村の場合で申し上げますと、ラスで言いますと九八・八、パーシェで申しますと九九というような結果が出てまいりますので、いずれが高いか低いかということは、先ほど申し上げましたように、全体の水準としてはコンマ以下ということになりますので、いろいろな数字を用いずに一般的に用いられておりますラスパイレス指数というものを使っておるということでございます。
  55. 山田譲

    山田譲君 それからもう一つのラスパイレスについて、これは私の理解が間違っていれば直してもらって結構ですけれども、三つほどちょっと疑問があるわけで、もともと比較が、いわゆる行政職(一)ですね、この職員だけを比較しているんじゃないかというふうに思いますが、それではやっぱり不完全じゃないかという疑問点が一つです。  それから、国の調査は一月十五日付ですけれども地方の場合は四月一日付になっている。そこに三月の差があるわけですけれども、とりわけ四月というのは昇格の時期なんですね。ですから昇格した結果が四月一日に出てきてしまうとこういうことで、四月一日、一月十五日の間ではかなりの開きが出てきやしないかという疑問です。  もう一つは、地方の場合は国の一般行政職にはないような職種もまたかなり多くあるんじゃないかというふうに思いますけれども、この辺はラスパイレスについて私が持っている一つの疑問なんですけれども、この三つについてどう考えればいいのか教えていただきたいと思います。
  56. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 私どもが一般に使っておりますのは、先ほど申し上げましたように、その地方団体の基幹的な職種でございます一般行政職、まあ大体これで、その団体の給与水準というのはそれが基本になっておりますので、あらわし得るということで使っておるわけでございます。もちろん国にない職種等もございますが、それらにつきましては一応その基幹的な職種というものとの均衡の上にそれぞれ給与水準というのは設けられておると思っておりますので、それで代表さしておるわけでございます。  それから、国家公務員と地方公務員の給与の調査の時点が違うのではないかというようなことでございます。御指摘のように、国家公務員の給与実態調査は毎年一月十五日現在で調査をしてございます。しかしながら、これにつきましては、四月に普通昇給がある人につきましては昇給を受けた者ということにしておりまして、四月一日の予定額どいうことで国家公務員の方は出されております。  一方地方公務員の給与実態調査、これは四月一日現在で調査をしておりますけれども、当然四月分の普通昇給はこれに含まれております。ということは、いわゆるその定期昇給等によりまして、調査時点の差ということでラスの指数に差が出るということは実質的にはないというふうに私どもは理解をいたしております。
  57. 山田譲

    山田譲君 いや、昇格です。昇給じゃなくて昇格の場合です。
  58. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 昇格ということになりますと、ポストがそれぞれ決まっておりますので、前の人が退任をして、それから新しい人が昇格をしてくるということになりますので、その給与水準そのものには差が出てこないということでございます。
  59. 山田譲

    山田譲君 ちょっとそれはおかしいと思うんですけれども、この問題についてはまた改めていろいろ意見を申し上げたいと思いますけれども、基本的に、このラスパイレスかパーシェかというふうな問題は別としまして、国家公務員と賃金を比較するという問題ですね。どうして比較しなきゃならないかという問題が一つある。とりわけ地方公務員については、地方公務員法によって給与決定の要素というのは、国ということも一つはあるけれども、同列としてその地域の民間の賃金であるとかあるいはその地域における生計費であるとか、こういうものを見るということで、その一つとして国というものは書いてあるにすぎない。ですから、賃金決定の要素というのは三つか四つあるわけです、公務員法によって。そうすると、どうしてそのうちの国だけをとって、そしてその比較をして高いとか低いとかという評価をするのか、そこのところがどうも納得できません。  これはもうここでいろいろやりとりするつもりはありませんけれども、また、もし国どおりにやれと言うならば、都道府県の人事委員会なんて要らないんでして、だから地方公務員法上のそういう幾つかの要素を考えて、そして当該都道府県に置かれている人事委員会が勧告をすると、こういうシステムになっているわけで、それを国とストレートに比較して高い低いを決めるというようなことであるとすれば、そしてその高い方はけしからぬというふうな言い方をするとなれば、これはもう当該都道府県の人事委員会なんかまるっきり要らないという考え方と同じじゃないかと思うんですけれども、そこのところはどういうものですか。
  60. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 国家公務員の給与水準、これは御案内のとおり毎年行われます人事院勧告によりまして全国の民間賃金の平均的な給与水準に保たれておるというふうに考えられるわけでございます。  そこで、そういった国家公務員の給与水準と比較をするということによりまして、地方公務員法に規定いたしております民間事業の従事者との比較ということも間接的に行われるということが一つございます。それから、国家公務員と地方公務員は従事しております職務が類似しておりますので、同一の条件のもとでの給与比較というのが行いやすいということも考えられます。それから三つ目には、地方公務員の給与制度それからその運用というものが国家公務員の給与制度なり運用を基準としておるというところがございますので、給与水準につきましても国家公務員を基準とすることによりまして統一的な算定なり比較分析が可能になるということが理由でございます。  もちろん、各地方公共団体の職員の給与につきましては、いま御指摘の地公法二十四条に定めます給与決定の原則に従って決定されなきゃならぬということは当然でございまして一その団体の組織なり規模なりあるいは地域の社会的条件といったものに応じて合理的な範囲内において国の制度を修正し、その団体に適したものとして適用するということになるわけでございます。人事委員会におきましても、そういった地域の状況といったものをよく調査をしていただきまして、適正なあるべき給与水準というものを勧告していただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  61. 山田譲

    山田譲君 おっしゃるとおりだと思いますけれども、そのとおりになっていないじゃないかということを私は言っているわけです。この間も私がここで質問したときに、当時、砂子田局長は、何となく人事委員会は余りちゃんとした機能を果たしていないような言い方でおっしゃったわけで、そうなると自治省そのものが地方公務員法を否定するのか、人事委員会は要らないという言い方になるのかということで、私は非常にこれは問題発言であろうと思うんですけれども、まあ本心を言っていただいたんだから、それはそれで勘弁できると思うんですがね。だから、下手にかっこうのいいことを言うよりは本心を言っていただいた方がこっちにとってはありがたいわけです。  それにしても地方公務員の給与の問題についてはもっともっといろいろな場所で私はいろいろ申し上げたいと思いますけれども、ここで、この間そちらで出されました定員のモデルですね、これについて幾つかの質問をしていきたいというふうに思います。  これは、五十七年四月一日に行政局長から各都道府県知事あて、あるいは指定都市あてに出された「地方団体における定員管理の適正化の推進について」という通達であります。  最初にまずお伺いしたいのは、これはどういう趣旨でこの通達を出されたか、こういうことでございます。それをまず局長に伺いたいと思うんです。——行政局長、これは局長が出された通達なんだから、局長に答えてもらいたい。
  62. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 定員モデルに関しまして、実は第二次の臨時行政調査会から、公共団体におきます定員について何らかの指針を示すべきだということが示唆されました答申を受けました。それに従いまして、公共団体がどういうふうに定員を定めていくのが望ましいのか、そういうための試案と申しますか目安と申しますか、そういうものを学識経験者の方々にお集まりいただきまして研究をしてまいったわけであります。  もともと定員管理というのは、基本的には地方自治のたてまえから申しますと、公共団体自身が自主的に判断をして決定をいたすべきものであります。しかし、臨調答申にもございますように、公共団体の定員が増加をしているということを指摘をされておりますので、各公共団体がどういう形でそれがふえているのかそれを自主的に判断をしてもらいたいし、それからある程度こういう算定の方式でやればその公共団体の定員というのがはじかれるのではないかということを前提にしながら、一つの目安を立てるための方式というのを御研究いただいたわけであります。それにつきまして、こういうやり方をしたらどうだということのための参考資料として、あるいは目安として、各公共団体の方に通達を出したわけであります。
  63. 山田譲

    山田譲君 そうすると、これは単なる目安である、単なる参考資料であると、こういうことですか。
  64. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) いま行政局長から答弁がございましたように、地方公共団体の定員管理、これは基本的には地方自治のたてまえからも当然その自主的な判断と責任において有効適切に行われなきゃならぬということでございます。  しかし、御案内のように、教育なり福祉といったような部門におきます国の規制、関与、それの見直し等がなされなければ自主的に、あるいは弾力的な定員管理ができないということも、これは申し上げるまでもないことでございます。と同時に、いわゆる一般行政管理部門につきましても、定員管理の適正化ということが要請されておるわけでございます。その場合に地方公共団体におきます適正な定員算定のよりどころが、これが必要になってくるわけでございますけれども、そういったために今回各地方公共団体がそれぞれ置かれておりますいろんな条件、これに差があることをもちろん前提としながらも、各団体にとって定員算定の一つの指針と申しますか、目安と申しますか、それになるようにといったような観点からこのモデルを示したというふうに御理解をいただきたいと思います。
  65. 山田譲

    山田譲君 この通達の文書を見ますと、必ずしもそうはとれないわけで、前文の方でもって、とにかく国家公務員の場合もやっているんだというふうなことで、「国の第六次定員削減計画に準ずる措置を講ずる」というふうなことを言った上で、ついては今度はこういうものをつくったから見直しを行いなさいと、まあ「要請します。」という言葉ですけれども。  いずれにしても、そういうことであるとなれば、それはあなた方がおっしゃっているように、この通達がそういうただ単なる参考資料あるいは目安になるものを出しますと、あとは自由にそっちでやりなさいというのとちょっと違うんじゃないかと思うんですね。また、普通役所の文書の常識からいいましても、単なる参考資料であるというふうな程度であるならば、わざわざ局長通達なんかじゃなくて部長かあるいは課長の内簡くらいで出しておけば、参考にしなさいと出せばそれでいいことだと思うんです。これはやはり局長通達で出したというところにはそれなりの重みがあるわけでして、この文書を見ても事実そういう感じがありありと出ております。その辺で必ずしもあなた方がおっしゃるような単なるそういう程度であるということを疑わざるを得ないんですけれども、この辺はどういうものですか。
  66. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) それはそのとおり局長通達に書いてありますような文面でございまして、もともと定員削減計画に関しましては、すでに先般来の閣議でも決定されたことでございますし、公共団体の方にもそれなりの努力をしてほしいということを要請をしておりますから、それなりのことはやはり定員については考えてほしいというのが一つございます。  それから、後段の方につきましては、いま公務員部長が申し上げましたように、あくまでもこれは第二次臨調が公共団体の全体の定数というのをどういうふうに自治省はやっているのかということがございましたから、それに従いまして、といって国自身につきましても定数を完全にはじき出してこうだと言って定員法ができているわけではありません。あれは四十二年に凍結をしたという定数でありまして、どういうふうに算定をしたかということはないわけであります。したがいまして、公務員全体に関してどういうふうな定数の算定をするかというものについての指標がないわけであります。  それではなかなか臨調から答申を受けて指導をするといたしましても何もないではないかということがありますので、先ほど申し上げましたように、学識経験者に集まっていただきまして、どういうふうにこれを見たらいいのかということを考えながら一つのモデルをつくっていった、そのモデルというものをつくると大体こんな感じになりますよということを一応報告をしていただきまして、それをやはり公共団体が、定数定数といってうるさく言うけれども、どういうふうにして一体その定数というのをやればいいのだという意見はこれ幾らでも公共団体から来ているわけであります。国がそんなにやかましくおっしゃるなら、やはり国自身もそういうものを明示すべきではないかということはあります。といって、国自身がそれぞれの公共団体の定数を完全に決めてしまうわけにはこれまいらない。やはり自主的に決めていただきたいというのがございます。しかも公共団体としてはいろいろな特性がありますから、部門間にみんな平等に人員が張りつくというわけじゃありません。ですから、全体的な枠の中でどういう人間が必要なのかという目安だけはやはりどうしてもつけてやらなきゃならない。そうしますとある一定のモデルを算定せざるを得ない。そういうものを算定をして各公共団体がそれに従ってひとつ自分たちなりに定数をはじいてもらいたい、そういうことのための定員モデルというものを示して、そのできたものを一つの目安にしながら公共団体の中でいろんなことを工夫してほしいということで出したわけでありますから、それ以上の何物でもないと思っております。
  67. 山田譲

    山田譲君 よくそちらの気持ちはわかりました。  それで、これについてちょっと聞いておきたいのは、そもそもこれは研究会というんですか、そこでいろんな専門家が集まってつくられたようですけれども、その研究会なるものの法律的性格は何ですかということと、いつできて、それから今後いつまで続けるつもりか。それについての今年度予算は幾らになっておりますか。これをお伺いしたいと思います。
  68. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) この研究会は、自治省が地方公共団体の人事行政に関しまして必要な技術的な助言、指導を行う際の指針を得たいということで設置しておる私的な研究会でございます。  この研究会は、五十六年の七月に設置をいたしまして、五十六年度、五十七年度の二カ年間を予定をいたしております。  予算につきましては、五十六、五十七年度の二カ年間につきまして、それぞれおおむね百五十万円程度が計上されておるということでございます。
  69. 山田譲

    山田譲君 そうすると、一種の私的な研究機関である、こういうことのようです。  それで、いつまで存続させるかという点の御返事がなかったんですけれども、百五十万というのは年間百五十万ですね。
  70. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 五十六年度と五十七年度の二カ年間で研究を行うということにしておりますので、五十七年度までということでございます。  百五十万というのは、五十六年度も五十七年度もそれぞれ百五十万と、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  71. 山田譲

    山田譲君 そうすると、これは五十七年でやめるということですか。
  72. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 五十七年度中かかりまして、この前は二十万以上の市、指定都市、都道府県についてモデルの計算方式を研究したわけでございます。五十七年度につきましては、これをさらに精度を高めるといいますか、それと同時に、また、そのほかの団体につきましても定員算定の方式と申しますか、そういったものについて研究を進めていきたい。一応五十七年度でその研究は終わりますかどうかわかりませんけれども、いまの予定では五十七年度ということでその研究を進めるということにしておるわけでございます。
  73. 山田譲

    山田譲君 何かこれは正式な文書じゃないんですけれども新聞によりますと、三年ごとにこのモデルについて見直しをしていくなんということ書いてありますけれども、そうすると、三年ごとに見直しをするというのは、それはどなたがやるんですか。
  74. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) まあ三年もたちますと、いろいろまた社会的な情勢あるいは経済的な情勢というものも変わってくると思います。  今回、この研究会でその基礎的な算定方式というものをつくって研究をしていただいたわけでございますが、その後の見直しということになりますと、これは私どもいわゆる行政的な段階で見直しを進めていくということで今後の運用を図っていきたいというふうに考えております。
  75. 山田譲

    山田譲君 そうすると、その三年というのはこの新聞報道に間違いないわけですか。
  76. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) いまのところ一応三年ぐらいたったところでまた見直さなければならぬだろうというふうに考えておりますので、その意味においては報道は間違いないというふうに御理解いただきたいと思います。
  77. 山田譲

    山田譲君 次に、このモデルのつくり方について、いわゆる回帰式というんですか、回帰モデル方式というやつのようですが、専門家がいろいろ研究してこういうものをつくられたようですけれども、この回帰モデル方式そのものについて自治省御自身が非常に問題点があるんだということを自分から言っていらっしゃる。「地方公共団体定員管理便覧」、これは公務員第二課でつくられたやつですね。これ見ますと、「長所と問題点」というのが書いてあって、長所は三つしかないけれども問題点の方が六つもあるというふうにちゃんと出ているわけです。  この六つを読んでみますと、この回帰方式は「あるべき姿ではなく、現状を示すに留まる。」、これがまず問題点の第一に挙げてあります。それから二番目が、「事業の内容一事務処理方式等の要因が、現在のところ無視されている。」、それから三番目が、「説明変数の選択が難しい。」、四番目として、「統計上の相関関係と、理論上の因果関係とは必ずしも合致しない。」ということが問題点の四点目。五番目に、「部門別の職員数の分類が難しい。」。六番目が、「職員数の少ない部門又は団体に適用するのには無理がある。」と、こういうことを、これはあなたの方で書いたんだからよくおわかりだと思う。長所については三つしかありません。長所はあえて読みませんけれども、とにかく三つしかないけれども、問題点というのはこんなに六つもあると。  こういうことで、問題点のあるやり方でつくったモデル、これを果たしてそんなにあなた方は地方へ自信を持って出せるんですかね。
  78. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 先ほど申し上げましたように、何らかの指針といいますか算定方式が必要であるということでつくったわけでございます。回帰方式というのは、一般的にこれまで用いられてきた方式でございます。それによりまして他の団体と比較をして、自分のところの団体が適当なものであるかどうかというある程度の目安はつけ得るものだというふうに考えております。  いま御指摘のように、確かに職員数につきまして絶対的に何千何百何十何でなくてはならないというような数字ではございません。あくまでも相対比較の中においてよそを見比べたときに、自分のところの職員の水準といいますか、職員数の水準というのがどういうものかということについてめどをつけていただくわけでございます。そういった意味におきましては、十分使用していただけるものだというふうに考えております。
  79. 山田譲

    山田譲君 そこが一番大きな問題でね、問題点のトップにありますように、これは「あるべき姿ではなく、現状を示すに留まる。」というふうに言っているわけですね。ですから、一応現状というものを前提にして、この数値でもってはじき出されているというふうに思います。  そうしますと、この出されたものはこれが一番いいんだという数字にはならないんで、要するにいま現状をずっと平均していくとこんなものになりますよというだけのことであって、あくまでも相対的なものでしかないというふうに思います。いまおっしゃったとおりだと思うんですが。そうしますと、次に出てくるのは、あるべきじゃなくて全体のやつですから、当然それよりも低いところも高いところもあると思うんですね。それは常識的にそう考えざるを得ない。これより高いところあるいは低いところというのは、すでに出ているんですか、そういう団体は。
  80. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 御指摘のように、もちろん高いところも低いところもあるわけでございます。しかし、いま申し上げましたように、絶対にこの数字でなくてはならないというものでございませんので、特に、非常に職員数が多いからといって直ちにどうこうするということにはなりません。各団体で自主的にお考えいただいて、また、他の要素等ももちろんあると思いますので、それらを勘案した上で適正な定員管理というものを図っていただくための資料でございます。そういった意味で、多いところ少ないところございますけれども、各団体につきましてどこがどれだけ多いとかあるいは少ないというようなことを公表するというつもりも、もちろんこちらの方は持っていないわけでございます。
  81. 山田譲

    山田譲君 いま多いところも少ないところもとおっしゃったけれども、ところが少ないところというのはほとんどないんですよね。ほとんど全部が多くなっている。しかも、これは恐らく自治省以外でこんなものを発表するところはないと思うから言うんですけれども新聞だってみんな取り上げて、そしてどこそこの県は何%これ以上高くなっている、どこどこの県は何%ですと全部書いてあって、これを見た限りでは恐らくこれより低いなんというところはほとんどないんです。  そうしますと、これは恐らく自治省で発表された数字だと思うんですけれども、各新聞全部取り上げて、そして新聞によってはこれによって七千人の削減ができるんだということをはっきり言っている。そうなりますと、これはやっぱりあなたそんなものじゃないんじゃないですか。これはだれが発表したんですか。ちゃんと新聞もあるし、こういう「地方行政」という雑誌もあるんです。全部書いてあるんですよ。この県は何%高くなっている、この県は何%で、トップは和歌山の五・三%が最高だなんて全部書いてある。だから、これはどう考えたって新聞社が計算したものとは思われないんです。
  82. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) いま申し上げましたように、個別の団体についてどれだけ人数が多いとか少ないとかいうことを私ども公表しようというふうには考えておりませんが、この算定方式によりますとおおむねどういうことになるのかという意味で発表したわけでございまして、そういう意味合いにおきましてはその個別の団体についてどうこうということではないというふうに申し上げておるわけでございます。
  83. 山田譲

    山田譲君 それじゃ、低いところはどこですか。
  84. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 団体名は申し上げませんが、低いところというのが都道府県で十五、それから指定都市で五つ、それから人口二十万以上の市で二十ほどございます。
  85. 山田譲

    山田譲君 これは後で結構ですからはっきり教えてくださいよ。新聞社の方にはみんな発表しているんですから、こちらの方に発表できないはずはないと思うんですね。ですから、高いところ、低いところ、これをぜひ教えていただきたいというふうに思います。さっき言ったように相対的なものですから当然低いところもあれば高いところもある。大体常識的には低いところと高いところと同じ数にならなきゃ変だと思うんだけれども、とにかく低いところが非常に少ない、こういうことであります。  しかも、新聞の取り上げ方はこれでもって七千人はもう即座に首が切れるというふうな言い方をしている。そういう気持ちでもってあなた方はこれを考えているのかどうか、もう一遍はっきり言っていただきたいと思います。
  86. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 地方公共団体の職員、これは各部門別にそれぞれ配置してあるわけでございますが、その団体によりましてどの部門を重視するか、あるいはどの部門で定員の合理化を図るかということで、これまたいろいろあると思いますし、また、たとえば仕事がコンピューターで総務系統に仕事が集中しておると言えば総務系統の部分はふえるということもあろうと思います。そういうことがございますので、各団体でこれを参考にしながらそれぞれの仕事の流れと申しますか、それに沿った職員配置というものを図り、かつまた定数の合理化といいますのは、最初申し上げましたように、国が相当部分規制、関与をしておりますので、それらの見直しというものも含めた上で総合的な定員管理の適正化というものを考えていかなきゃならぬというふうに考えております。
  87. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 先ほどから行政局長と公務員部長が申し上げましたとおりに、地方団体に対して自治省が定員の適正化ということをかなり以前から言ってまいりまして、じゃ、定員の基準というのはあるのかないのかと言われると、常に統計数字の上から出た大体の線というのは持ち合わせていなかったのが現状で、これはつくらなきゃいけないということで、三年か四年かかってやっとでき上がってきたわけでございますが、これは大筋の基準みたいなもので、先ほど言われたように、これが絶対というのではございませんで、大方の基準のようなものを示したわけです。  これでき上がってきたとき、私一番最初に見せてもらったんですが、そのときびっくりしたのは、つまり大変恐縮なんですが、私の出身県の和歌山県が一番基準に合ってない最高峰でございまして、定員超過の最大でございました。どうも大変ぐあいの悪いことなんですが、これをこのまま各地方団体に絶対こうあらねばならないということになるといろいろ地方によって状況が変わっておりますからあれですが、つまり、現実と統計数字で出てきたものによる類推の間というのは常にいろんな差があったり実情にそぐわない点もあるんですが、一応の基準というものを指し示す方が今後のいろんな定員の問題やなんかをやっていくのにも、地方地方でお互いにいろんな反省し合ったりよそのを見たりしながら比較していって大体の適正化というところをつかむことができるだろう、こういう予想のもとに発表をしたという——新聞に発表したのはどこが発表したのか知りませんが、新聞では一番さわりのところだけ発表したんだと思うんですが、実際の状況はそういうことでございます。
  88. 山田譲

    山田譲君 もう時間になりましたから終わりたいと思いますが、いずれにしても世耕大臣みたいなりっぱな人を当選させている和歌山県ともあろうところがそうでたらめな定員管理をやっているとは思わないのです。ですから大臣、うちは五・三%高かったから恥ずかしかったなんて絶対におっしゃらないで、これで堂々とやっていけというふうに言っていただきたいのですよね。和歌山県の県の自治に基づいてそれぞれの仕事がこれだけ必要だからということでなっている。その結果が五・三%ぐらいあったって、それは大臣、自信を持ってこれでいこうというくらいなことで、絶対そういう意味の個別的な、これがこうだからおまえ下げろとか、まあ上げろというところはないかもしれませんが、そういうことはおっしゃらないでいただきたいと思うんですが、それはひとつお願いできますか。
  89. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 恐らく私は和歌山県に対しては言わなければならないだろうと思います。日本一になってくれないように言わなければならないと思うんですが、よその県に対しましては慎重な態度で臨んでまいります。
  90. 山田譲

    山田譲君 わかりました。  これで終わります。
  91. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  92. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  93. 大川清幸

    ○大川清幸君 午前中の質疑でも問題になっておりましたが、地方財政の実情に対する認識の問題でございまして、これが今後の地方財政運営等に大きなかかわりを持つわけですから、その辺の確認をいたしておきたいと思うわけですが、五十七年度地方財政計画を見る限りでは収支均衡がとれたことになっておりまして、しかも国の財政状況がきわめて深刻な実情にある、こういう対照的な面も手伝っていると思うんですが、地方財政計画の上では八年ぶり地方財政実質的に回復したと見る向きもあるし、新聞論調なんかでも地方財源にゆとりが生じているような言い方をするところもあるようですが、しかし実態は一体どうなっているのかということをはっきりさせないといけないと思うわけで、地方財政の実情については実質的な均衡がとれたのかどうか、この辺の御認識はいかがでございますか、まず、大臣の御所見から伺います。
  94. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 五十七年度収支がぴったり一致したという形がとられておりますのですが、これは、一つは、この地方交付税の総額が法定額だけでは不十分でありまして、これに増額措置を講ずることによって所要額九兆三千三百億円を確保しているということ。第二に、昭和五十六年度地方財政対策において交付税特別会計借入金償還方法を変更して、償還時期を昭和五十九年度以降に繰り延べるということにしたことがございまして、この措置がとられないとすると五十七年度においては当然これは収支均衡にはならなかったわけでございます。こういう点から考えますと、つまり単年度で大変地方財政が豊かな状況になったとは言い切れないのでございます。  また借金が、五十七年度末におきまして借入金が、特会の借り入れ八兆円等で全部で四十二兆円、それに公営企業借入金が七兆円、そういうことで総額約五十兆円ぐらいの借入金が残っているのでございまして、五十七年度だけの地財の事情によってこれは一挙に裕福になったということは言えないものでございます。
  95. 大川清幸

    ○大川清幸君 大臣も、自治省としても、地方財政の実情についてそういう御認識でいていただいて今後の財政運営等を図っていただけば大変結構だと思うわけでございます。  それで、中身について少しお伺いをしてみますと、今年度地方財政計画の中で、一つはいま御説明もあったんですが、国の一般会計歳出の方では御承知のとおりゼロシーリング等でずっと抑え込みにかかって、手がたい予算の組み方をしたわけでございます。地方財政の場合でも、この国の基本方針というものの影響を受けております。ですから、そういう意味では、要するに圧縮型というか、協力をする形にどうしてもならざるを得ない、これはもう当然のことだろうと思うんですね。歳出の方のそうした抑制傾向、もう一つ政府経済見通し、これは政策的な要素もあって民間機関の経済成長率見通しなんかよりはかなり高いというか、強目に見た傾向があったと思うんです。参議院の予算委員会が終了してわずか一日か二日のところで税収見込み額に対する歳入不足といいますか、これが二兆円程度だというようなことをこれ大蔵省みずからおっしゃっている。ですから、そう考えますと、地方財政計画の場合は、これは国の基本的な方針といいますか、こうした大変高目に見た税収見込み、これを基本ベースにして地方税並びに地方交付税等の自然増収などを見て財政計画を組んでいますからね。こういうような対照的な面での二つの問題を考えてみますと、税収というか、地方税あるいは交付税——交付税の方は後でまた論議しますが、収入を高目に見ています。歳出の方では抑え目に見た。こういう形式的というか、予算編成の技術の上からは一応の均衡がとれた形にもなってくる。したがって、裏返して言うと、これは実質的な均衡ではない。まあ砕いて言うと、言葉は悪いかもしれませんが、どうも見せかけ上の均衡だと、こういうことになるんじゃないかと思うんですね。  ですから、そういう点では、いま大臣が御答弁をなさったように、地方財政実態というのは決して実質的な均衡がとれているのではなくて、やはり今後の展望を見ても大変厳しい状態にある、こういう認識でなければいかぬと思うんですが、いかがですか。
  96. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) ただいま大臣からも御答弁申し上げたわけでございますが、一応収支均衡がとれたということでございまして、それは一つには歳出についてできるだけ必要なもの以外は抑制措置をとったということで、それは国と同じスタンスに立っておるわけでございます。したがいまして、公共事業などは当然連動してこれは縮むわけでございますけれども、しかし一方では、これは国の制度というよりも地方独自で一般行政経費もなるべく切り詰めていこうとか、しかし必要な単独事業はかなり伸ばしていこうとかということで、地方独自でいろいろと判断をして歳出見込みを立てたということでございます。また、収入についても、税なり交付税なりにつきましては、これは国というよりも政府全体として、政府として一つ経済見通しをいろいろな政策努力も含めて立てたということでございまして、それをもとにしておることは事実でございます。  ただ、御指摘のございましたように、今後景気の動向いかんによるわけでございますけれども、民間の経済見通しなどはどうもやや低目になっておるという点から見て、財政計画で見込んだ地方税の確保あるいは国税三税が確保され、したがって交付税が予定どおり確保できるのかと、そういった点については懸念材料がないと私も申せないと思います。ただ、五十六年度はある程度明らかでございますが、五十七年度についてはこれからであり、景気も底入れが済んだと、こういう見方もあるわけでございますし、今後の財政運営あるいは経済運営いかんにかかわっておるわけでございますから何とも申せませんけれども、私どもとしては見込んだとおりにいけるものだと、こう思っております。そこのところが非常に不安であるからもしだめだということになれば、財政計画自体がバランスがとれたものだとは言えないんじゃないかと、そういう御趣旨はよくわかるのでございますけれども、私どもとしては全体として歳入の確保ができるという前提で組んでおるわけでございます。したがいまして、結果として総合的に申し上げますならば、五十七年度地方財政計画においてはたとえば地方交付税において特例措置によって積み上げなどもやっておるという点においても、それは完全に手放しで均衡がとれたと言えるものでもございませんし、同時に、将来に向かってもいろいろと懸念材料がないわけではないということで、御指摘の趣旨はわかるわけでございますけれども、全体として私どもとしては地方財政計画で見込んだ歳出が実行できますように歳入面でも努力をしてまいりたい、その点は地方団体財政運営に支障がないようにぜひ努力をしたいと思っているわけでございます。
  97. 大川清幸

    ○大川清幸君 さらに、くどいようですが、財政状況が決していいわけではない、先ほど大臣も御説明になりましたが、五十六年度に行った、交付税特別会計借入金償還方法、これは五十六年度で変更なさったわけでございますが、この変更したことで、本来支払いが始まるべきものがたまたま先送りになりました。これはやはり五十七年度時点で払うということになっておればとりあえず三千九百四十億、こいつはしょい込まなければならぬわけですから、そういう点から言えば、これがやっぱり地方財政の上で言うと先送りになっただけのことで、これもバランスをとる要素にはなっているけれども、実際地方財政そのものをトータルで考えると厳しい条件の一つだろうと、こういうふうに思うんです。  それから、五十七年度交付税の総額の特例としての二千九十八億ですね、この特会借り入れ、これも後年度国庫負担で全部始末をするということですから地方負担としては特に問題が起こらないという形にはなっておるわけです。しかし、性格上考えると、従来こうしたものについては一般会計からの借り入れですとか、そういうことで見るべきものであったろうと思うわけで、こういう解釈をしてみますと、これもやはり地方財政財政状況が悪い要素の一つである。こう考えてみますと、先ほどから言っているように、実質的な地方財政状態というのは、そういう健全という認識をするわけにいかないだろう。しかも、二千九十八億も言ってみれば財政不足の一つであるということでしょうから、そういう点で考えると、やはりこれは、くどいように申し上げているのは、後の方でちょっと財政運営のことでお聞きをしておきたいと思うことがあるので、認識がある程度厳格にきちんと一致をしていませんと問題があると思うので念を押しているわけでございます。  後ほど問題にしたいんですが、一般会計へのいわゆる貸し分の一千百三十五億、これとの見合いでも、差し引いても九百六十三億がやっぱり財政不足の条件になるわけですから、これは五十七年度地方財政計画の形の上で見るとバランスがとれているが、ずっと見れば見るほどやはり財政そのものは決してよい条件には置かれていない、こういうふうにこちらでは認識をいたしておるんですが、その辺はいかがですか。間違いないでしょうか。
  98. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十七年度収支について見てまいりますと、若干制度改正もございましたが、そういったものを全部含めて計算をしました場合に、おっしゃいますように九百六十三億ぐらいの赤が出るというのが実質だと存じます。ただ、私どもは従来からの大蔵省との間の約束でもあり、そういう制度になっておりますので、利差臨特と財対臨特合わせて二千九十八億円というのはこれはもらえると、当然確保できるものだということでございますから、それを入れれば結果的には赤字には——九百六十三億はのみ込めるわけであります。しかし、その二千九十八億は借り入れたじゃないかとおっしゃいますが、これは借り入れましたが、後で返すものはみんな実質国が持つわけですから、とりあえず一般会計から来るのをそちらの方で立てかえておるという形でございまして、地方財政としては実質取ったと同じことでございます。したがって、九百六十三億をのみ込める。そこまではいいのでございますが、最初におっしゃいましたように、一方では、五十六、七、八年というのは交付税特別会計借り入れというのは後へ送り込んだ。それが従来のままで行けば地方負担分だけで二千億はあったはずだから、それを考えるとまたやっぱり足りなかったじゃないかという、そこへ戻ってくるわけでございます。  そういうことを含めて考えますと、最初に申し上げましたように、中身はそういうものだという説明をした上で一応五十七年度はこういう前提において収支均衡したと、こう申し上げておるわけでございまして、認識においては一緒でございまして、いろいろむずかしい問題が残っておるということはもうたびたび申し上げておるとおりでございます。
  99. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、先ほど山田委員の御質問でも問題があったのでその辺は重複をしないように避けたいと思うんですが、貸したり借りたり、まあ常識で考えると実に奇妙なことになっているわけで、先ほどその点はさんざん論議があったわけです。  ところで、この一千百三十五億円ですけれども先ほど大臣の御答弁では、単年度限りにしたいと、そんなことを先々もう繰り返してやりたくないということをおっしゃった。もちろんそういう姿勢で臨んでいただく必要があるだろうと私も実は思っているんですが、どうも過去の歳入不足分の穴埋めの仕方といいますか、そういう過去のやりくりの慣例みたいなものとか、それからまた一方五十七年度、五十八年度の国際経済状況とか日本経済の動向を推測いたしますと、どうも国の財政の方も余りよい材料というのは考えられない。そういう背景がありますから、そうすると、今年度限りでこんなおかしなことはやめたいんだけれども、来年度また、先ほどからさんざん論議になっておりますように、歳入欠陥が大分大きく出そうな感じもあるし、そういう点から考えると、従来いつも財政の事情、実情を考えるというようなことでおやりになっているんですが、これは大蔵省ベースで考えると言い直してもいいぐらいだと思うんですよ。そういう点から考えると、大臣のお気持ちはわかるんだけれども、大蔵省との間の折衝や、まあこれはどうなるかわからないという時間的な問題があるにしても、仮に五十八年度財政状況なんかが悪ければ同じようなやりくりというか、そういうようなことをまた繰り返さなければならないようなことにもなりはせぬかという心配をいたしておりますが、そうしたことについては心配はないという判断なんですか。
  100. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 先ほど私が答えました、単年度限りにしたいということですが、経済見通し、来年のあれはどうするかということになりますと、経済見通しは易よりももっと当たらないと言われているくらいで、来年は来年の風が吹くではないかということにもなりかねないのでございますが、私が申し上げましたのは、ああいったやりくりというものはいろんな事情によって行われるわけでございますが、これがもともとこれをよしとしてやっているわけではないので、そういう立場から正規な物の見方から考えてまいりますとそういうやりくりは単年度限りにしたいと、こういうふうに先ほど山田委員に申し上げたわけでございます。それは今年度限りであって、この方法がこれから来年も再来年もずっと、今年度はこうやったけれども、今年度やったから必ずしもこれを来年度、再来年度、これから何年も先に適用させていく、こういうことを私はやってはならないというふうに考えての上でのことでございます。つまり永続的な方法としてこれを採用するのはいかぬだろう。ただ、来年、再来年にどういった経済状況が外からも内からもやってくるかもしれないので、そのときはそのときで、またその年の単年度限りの勝負で決着をしていくべきではないかと、こういう意味でございます。
  101. 大川清幸

    ○大川清幸君 それで、わかり切ったようなことですが、この一千百三十五億円、これは一応形式的に余裕ができたんでこういうことになって、しかもこれは五十九年から向こう三年間ですか、資金運用部資金の償還分の負担を軽減するという意味でそれなりの効果は、操作のやり方としてはあると思っているんです。  しかし、御説明によると自己調整というか、そういうことなんだとおっしゃるんで意味もわかるんだけれども、金額から見ると先々、この先に論議をする問題にも関連するんですが、先ほど大臣もおっしゃったように起債残高は大変多額になっているんで、やらないよりはこれやった方がいいと思うんですよ。だけれども、初めの大蔵省べースに乗っかってやって借りたり貸したりしたことですね、こういう手法もちょっと奇妙であるし、自己調整としては評価はするんだけれども、自己調整効果の上ではもう少しやりようがあったんではないかというような気もするんですけれども、いずれにしても出発点がこそくだからこういうことになっちゃうんだろうと思うんだけれども、どうなんですかな、こういうやり方は。
  102. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 先ほども申し上げたわけでございますが、経緯的に申しますと、私どもとしては国にある程度協力したとも思っておりますし、われわれの地方財政の立場からの考え方実質的には全部通したと思っておるわけでございます。  と申しますのは、確かに国と地方とがこれはまさに一体となって行政を執行しておるわけでございますから、一方が崩れてしまったのではうまくいかないということはもう申し上げるまでもないことでございます。そういった意味で、国が非常に厳しい状況は申し上げるまでもないわけでございますし、私どもも理解はしております。そういう中で、三千億程度何とか五十六年度に比べて地方歳出が減るように、国の一般会計から出すものが減るように協力してもらいたいと、こういう話があったのであります。しかし、私どもとしては、いまの二千九十八億というものはやっぱり確保すべきものは譲るわけにいかない。したがってそれは確保するということで、それは国の都合どおりには実はならなかった。しかし一方、国の財政が厳しい状況であるから、それは一般会計から無理やりに出すという手法をとらなかったという点では協力をしたけれども、言いなりになったというつもりではなく、取るものはちゃんといただいたという気持ちでございます。  そういう中で千百三十五億というものを留保して減額したと、これはどういうわけかとおっしゃいますと、やはり節約をしてある程度残したということと同時に、まあ先ほど指摘のございましたように、交付税特会借り入れを後に送り込んだという背景もございますので、節約してできるだけ余ったものはそういう後へ送ったもののカバーに回す方が中長期的に見てもいいのではないかということと、かたがたそこへ減額留保しておくことによって国の一般会計にも役に立つということでございまして、あれこれ考えて国も地方も苦しい中で理屈の立つやりくりというものはどういうことだろうかということでやったわけでございまして、複雑でわかりにくいことは事実でございますけれども、私どもは、卑近な言葉で言うと実質損をしたというような気持ちではございませんで、協力しつつ実質を通したというようなつもりでございまして、御意見はあろうと思いますが、そこらは御理解を賜りたいと思うのでございます。
  103. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは、五十六年度国税の約二兆円の歳入欠陥ですね、これに伴って地方税でも、推計ですが三千億円程度影響が出てくるのじゃないか。これは先日もお聞きしたしただいまもちょっと説明の中で触れておられたので、こういう結果が出れば適切な対処をするつもりでいるということを局長も御答弁になっておりますから、それはそれで適切な処置をしていただけるんだろうと思うのでこれに対する論議はしないつもりですが、これともう一つ地方交付税のことも四千億円程度になるかと思うんですけれども、これは五十八年度精算のときに処置は考えるとおっしゃっておりますから、この二つの問題はいまここで特に論議をする必要はなかろうと私も思っているんです。  ただ、問題は、ただいまもお話しがあったように、政策運営の上で、あるいはこの間予算委員会河本長官がお答えになっておったようなことで何とか努力をしたいと、税収の確保については。そういうふうに局長も御答弁になっているんですが、どうも経済見通しの中で、五十七年度の後半よくなるかもしれない、それからそのほかにも政策的な運営を図っていけば何とかなるだろう、そういう努力をすると。提案をしている立場では私はそう言わざるを得ないと思うんですが、実際いろいろな面で論議されておりますように、五十七年度税収の確保という点について考えるときわめて困難な事情がある、こう思われるわけです。その辺は、まあいま交付税法を提案して審議しているときに明確にお答えはいただけないし、経済見通しが必ずしもそうなるかどうか、よくなるのか悪くなるのかわからない要素もあるわけですから明確な御答弁はいただけないだろうと思うんですが、これはいまからやはり悪い方の要素の方が多いという実情から考えますと、どうも五十七年度地方税、あるいは五十六年度の実績の見合いで入ってくる地方交付税、これについては、悪い方の材料を土台にして税収の確保がきわめてむずかしいと覚悟をしておいた方がよろしいんじゃないかというふうに思いますが、どうですかね。
  104. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十六年度は詳しくは論及されなかったわけでございますが、若干触れさせていただきますと、五十六年度地方税については、全般的にはやっぱり三千億を超える減収が出てくると思われます。そういった、特に法人関係税減収の大きいところは何とか決算の帳じりを合わすという意味からも減収補てん債というものの申請がございました。その申請は大体年度内における税収見込みを立てて、それを頭に置いてこちらに申請があったわけでございますので、出てきた額は千七百七十億程度のものでございますが、私どももいろいろな財政事情を勘案してそれだけ対応すれば、何とか各地方団体決算収支じりは合うというふうに認められまして、予定額許可をするということになっておりますので、これはこれで済んだと思っております。  国税における法人税等の補正後の落ち込み、これはたびたび申し上げますように、五十六年度にはもうもらうものはもらっておりますから、五十八年度の問題だということでございます。  そこで、五十七年度見通しをどうつけるかということでございますが、五十七年度経済成長率自体がどうもいろいろ高過ぎて気になるという御指摘でございますし、しかも同時に五十六年度の実績が落ち込んでいるんだから、最初見込んだよりも低い発射台からまた伸びの方も低くなるとなれば、二重にかかってきて厳しい状況になるのではないかということでございまして、御指摘の点はよくわかるわけでございまして、私どももいろいろと昨年末から議論はしておったわけでございます。  地方税の、特に都道府県税はある程度実績が立ってまいりますので、そういうものを見ながら歳入見込みを立てまして、その前提となるのは、やはり私どもとしては政府でいろいろな努力目標も含めた意味での経済見通し、それをもとにしておることは事実でございます。ただ、地方税の場合は、マクロ的にただはじき出すだけではなくて、いろいろな実績等を踏まえてやっておるわけでございますので、なかなか厳しい状況であることは税務局長からもたびたび申し上げておるとおりでありますけれども、何とか地方税は確保できるという考え方をとっておるわけでございます。  それと、交付税の問題も同じようなことになるわけでありますが、率直に申し上げて私どもも、名目八・四%、実質五・二%の経済成長というものが見込めるかどうかということになりますと、多くの人々と同じように私どもなかなか明確には答え得ない、むしろ懸念材料がないとは言い切れないと思っております。しかし、いろいろな指標で、そろそろ後半には浮揚していくのではなかろうかというものもないわけではございませんので、これはやはりもろもろの政策を円滑に遂行していけば何とかなるのではないかということを考え、かつまたそのための努力をしていかなきゃならぬと思っておるわけでございます。たとえば国において公共事業の前倒し七五%といったような、かなり思い切った前倒しをやる。地方においても単独事業についてこれを思い切り推進していく、またこれを前倒しをやるといったようなこと等もその一端でございますけれども、住宅建設等の推進といったようなこともいろいろな施策の中であるはずでございますし、そういうことをいろいろやっていって経済成長率を当初見込んだとおりに確保する努力をするということになろうかと存じます。  そういったことで、おっしゃいましたように明確に私もお答えするわけにはまいりませんけれども、できるだけそれに持っていくということでございます。仮にどうなったらということは、いま申し上げるもちろん段階でもございませんので、私どもとしては努力をしていく、そして必要なものは確保するし、そして最後に言わせていただきますと、財政計画で見込んでこれぐらいは歳出として必要だというものは、いかなる状態になっても、これはそれが遂行できる歳入は確保していくというつもりでございます。
  105. 大川清幸

    ○大川清幸君 先ほど大臣からも数字を挙げて御説明のあった地方財政における借金の残高ですね、確かにおっしゃるとおり、これは交付税特会借り入れの累積残高で八兆六千億ありますしね、それから地方債の累積残が三十三兆六千億ですから、それで四十二兆円ということになるわけです。それに公営企業関係の累積残を加えますと、先ほど御説明のあったとおり、五十兆円、大変大きいわけですね。これも将来地方財政の頭の痛いところでございますが、この程度なら心配ないだろうということをこの前伺ったときに局長はお答えになっていますので、その点もその御答弁に期待をして今後の財政運営を見ていく以外にないだろうと、こういうふうに思っております。  ところが、一方国家財政の方がどうも破産と言ってはちょっと言い過ぎなんですけれども、破産同然の状態だという認識を持ってもいいぐらいの僕はいま国家財政状態だと思っているんです、実は。そういう点から考えますと、どうも確かに地方財政というか、毎年度の必要額の総額を確保する努力は、過去に非常に深刻な時代もあったんだけれども、全部おやりになったんで、そういう点でも大丈夫だろうと思うんですが、こういう五十兆円を超える借金の残高、これも大変頭の痛いところなんで、これはよく先々の対処の仕方も考えておいていただきたいということで、これは御答弁はいただきませんが、むしろこういうことに関連をして財源対策債の一般市町村関連の分ですね、これは昨年なんかでも全額政府資金で充当されるような措置をとられましたよね。ですから、地方の負債の軽減といいますか、お荷物を多少軽くする意味では、計画の総額の六〇%程度の額の政府資金との差ですね、つまり民間資金と政府資金との金利差がこうありますから、これ一般会計から交付税特別会計へ繰り入れるなどの措置をしていままでずっとめんどうを見てきたわけですが、これ、さっきから私はずっと言ってきたのですが、やっぱり五十七年度財政均衡がとれていていいという状況、あるいは大蔵省にこれはそういうことでやれということで言われたのかどうか、経緯はわかりませんが、実質的には地方財政の健全化というか、均衡がとれていないにもかかわらず、ことしはこれらの措置をやめてしまった根拠はどういうことかということなんですけれども、これはどうなんですか。
  106. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 御指摘のございましたように、いままで政府資金の確保が十分でなかった。と申しますのは、五十年度ぐらいまでは全資金の中の政府資金が六〇%ぐらいあったということでございますが、それがだんだん低くなったということで、せめて六〇%ぐらいは政府資金があったと同じ形にしたいということで、その民間資金との差額のところを利差臨特というかっこうでやってきた。先ほどから話題になっております一千九十八億も過去の利差臨特としてもらうことになっておるものであるわけでございます。  そこで、五十七年度の分についてはどうするかということでいろいろ議論したわけでございますが、五十六年度は、御承知のとおり、政府資金は四五・九%でございました。今回は五〇・五%ということで、久しぶりに五〇%を超えたということで、六〇でなきゃならぬとかどうとかというんじゃなくて、おおむねそこらを頭に置いておったわけでございますので、ある程度状況がよくなれば、それほど昨年度に比べれば余り主張するということもどうかということと、それから何度も申し上げますように、全体として国の財政事情がきわめて厳しいし、地方財政としても問題はあるけれども、一応健全化の方向で、抑制基調に立ってある程度詰めていって収支均衡を図ったということなどもございましたので、五十七年度の分については、従来のような利差臨特ということの措置はとらない。じゃ、将来にわたってどうなるかということは、これはまた別の問題でございます。そういうことで両者の間で決着を見たわけでございます。
  107. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこでいまの御説明で、どうしても国の財政の事情があるものですから、いろいろの意味で多少国側の負担も軽くしてやらなきゃいかぬだろうとかいろいろな配慮もあったりしてこういう形で処理をなさったんだろうと思うんです。これは先の問題は別だということですから、それで私も一応は安心をするわけでございますが、こういう言い方をすると自治省の立場ではあんまり気分がよくないかもしれませんけれども、五十七年度財政措置の結果を見ますと、やはり大蔵省ベースの地方財政計画づくりみたいなことにならざるを得なかったんだろうと。これは言い過ぎかどうかわかりませんが、国への協力というのは、どうしても時の政府中心にして政策を進めますから、その点ではやむを得ない面もあるだろうという理解もいたします。  ところで、来年度以降、先ほどから申し上げているように、どうも経済見通しを見てもよくないし、税収にしても本当に確保できるかどうか心配だという材料が幾らもあるわけでございますから、今後の地方財政計画、具体的に言えば五十八年度以降の財政計画というか、各年度の必要な財源を確保するために対処していく上では御承知のように国の方では中期経済展望、これをつくりまして、現実的には五十七年度予算編成の上ではこれを基準にした上で編成をなさっておるわけで、五十八年度はまた経済見通しが、条件が悪いものですから多少中期展望の手直しをやった上で現実的な予算編成の基礎になさるんだろうと思うんです。  国の方はそうした中期展望を見た上での予算編成を行っておるんですが、地方財政計画を立てて国の財政の実情を見ながらいろいろ処置をしなきゃならないことは重々わかりますけれども、いま幾つかの点で大蔵省に協力をするというか、国の財政事情に見合って協力をせざるを得なかった、この要素はわかりますが、私の言いたいのは必要以上に大蔵省に引き回されるような形での地方財政計画を立てるべきではないだろう。こういう点では、自治省独自の立場で地方財政計画の中期見通しみたいなものを編成した上で今後の対処をしていただく必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、その点はいかがですか。
  108. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 御承知のように、国においてはいわゆる後年度負担積み上げ方式という形で中期展望を試算しておるわけでございまして、それに基づいていろいろ議論もされたわけでございます。私どもとしては、別にそれに引きずり回されたつもりは毛頭ないわけでございますが、ただ、大蔵省と対応した後年度負担積み上げ方式といった形のものは、たびたび申し上げておりますように、三千三百の団体について、また、地方自治体という性格から見て、なかなか容易でないということでつくらなかったわけでございますが、いま御指摘の点はごもっともだと私どもも思っております。  そこで、財政運営に資する資料として何らかの形で中期的な見通しを立てたいという気持ちを持っておりました。ただ、一定の前提を置いてでなきゃこれはできないわけでございまして、その一定の前提の置き方が非常にむずかしい。まず第一に今後の経済成長率というものをどういうふうに見込んでいくかということ、これはなかなか簡単にはできないことでございますし、御指摘のございましたように国の予算の動向ということもわからない。これは強く影響されるわけでございます。そういうことでありますから、なかなか検討はしておりますけれどもその一定の前提の置き方というのがむずかしい。詳しく詰めていけばいくほどなかなか自治省だけの手には負えないということもございますので、そうは言うもののいまおっしゃったことも私ども気になりますので、非常に精微ではないかもしれませんが、まず現実的に見てこうかなと思われるような一定の前提を置きながら何らかのかっこうで地方財政の中期的な見通しを立てたいということでいま鋭意検討を進めておるところでございます。
  109. 大川清幸

    ○大川清幸君 確かに地方財政計画そのものは、従来単年度でずっとおつくりになってこられて、これは事務レベルというか技術的にはやっぱりそうせざるを得ないということもあるし、それから中期展望をつくるについてはもう一層むずかしい条件が重なるので困難なことは私は十分理解いたしますけれども、しかしいま御答弁があったんで、せっかくの御努力を期待しておきたいと、こう思います。  次に、国のいわゆる行政改革に関連して臨調の第一次答申というのが昨年出まして、その中で特に心配になる点で一、二お聞きをいたしておきたい点は、せんだっての委員会でも質問をして大臣からも御答弁をいただいているのでその点は私も愁眉を開いたんですが、いわゆる地方への負担の転嫁の問題が幾つか気がかりになります。先日お伺いをした国民健康保険給付費の一部都道府県負担、あるいは児童扶養手当、特別児童扶養手当の一部都道府県負担への肩がわり、こういうような問題、これは一応見送りになったんで問題はないわけですが、五十八年度以降問題が復活をする、その点については大臣の御答弁で、単なるツケ回しにはこれは反対だということですから大変結構だと思っているんですが、具体的な問題で一つお伺いをしておきたいのは、合意事項の中で、「国、地方の役割分担を含め、医療保険制度等の全体の体系の中における制度のあり方について検討する。」と、これは大変微妙な表現なんですけれども、具体的に言うと、やはり将来は肩がわりはどうしてもやろうということの含みでの「検討」ということじゃないかというふうに私は心配をするんですが、そんなことはないかどうかということが一点。  それから、五十七年度分については、予算で十一カ月分計上されています。そうすると、一カ月残っていますが、これの処置の仕方については五十七年度内の処置になるのか、あるいは五十八年度の中での処置にするのか、考え方はいま固まっているのかどうか。この二点をお答え願いたい。
  110. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 昨年の十二月において、国保問題について三大臣で決着をつけたわけでございますが、結論として、五十七年度都道府県に医療費の一部を負担させるということはやらないということになりましたが、「医療保険制度等の全体の体系の中における制度のあり方について検討する。」という三大臣の合意ができたわけでございます。これは私どもとしては、国民健康保険制度の国民医療に果たしております役割りの特殊性と重要性にかんがみまして、国民健康保険制度のみを取り出してその仕組みとか運営の方法について検討を行うということではなくて、国民健康保険制度創設の経緯なり国民健康保険制度と他の医療保険制度との関連等を踏まえて、医療保険全体の中での制度のあり方ということを広い視野で検討すべきである、そういう意味であるというふうに理解しております。  したがいまして、現行制度の中で単なる負担の転嫁を論ずるといったような形のものではなくて、全体の医療費のあり方から他の被用者保険との関連等を含めて根本的なやっぱり検討をしなければ大方の納得は得られないだろうということで、それをひとつ議論をしてもらいたいということでございました。そういう意味で今後厚生省で設けられた懇談会等でどういった議論がされるか、まだこれからでございますけれども、その中には地方団体の代表の方もかなり入っておられまして、従来の社会保険制度等とは違う委員構成にもなっております。私どもとしては、地方の意向というものも十分反映されると思っております。その動向等を見ながら、最初に申し上げたような私どもの気持ちというものは貫きたいという気持ちでございます。  それから、五十七年度予算で国民健康保険の療養給付費補助金というのが十一カ月分しか計上されていないわけでございますが、それでは地方団体の国保分が一カ月分足りないということになりまして、国民健康保険財政の運営に支障を生ずることになりますので、そういうことにならないように、財務会計制度地方自治法施行令を変えまして、五十八年度分であっても出納閉鎖期間中に入ったものは五十七年度分として受け入れるというような改正をいたしまして、十二カ月分をちゃんと措置ができるようにしたいということで行政当局とも合意に達しておるわけでございます。
  111. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、三大臣の合意事項、これを受けてこの三月に厚生大臣の諮問機関である国保問題懇談会、いまちょっと話が出ておりましたが、ここでは、確定的なことは私はわかりませんけれども、五十八年度予算に検討結果を反映させたいという意向がどうもあるようです。それで、その中で実施すべき事項をことしの夏までに中間意見として提出するような方針のようです。  その中身ですけれども、現在市町村の固有事務というか市町村単位で行っている保険経営ですね、これを広域市町村圏とか、あるいは財政力の強いというか、むしろ規模のしっかりしたというか、言葉は適当でありませんが、都道府県レベルに広げようというような考え方。または、財政調整交付金の五十七年度二千百三十五億円、それから臨時財政調整交付金五十七年度一千九十三億円、都道付県への肩がわり構想、こんなようなものまで突っ込んで、ひっくるみで検討しているようにも聞くんですけれどもね。この辺の真相は御承知になっているんですか。どういう実情でしょうか。
  112. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国民健康保険の財政の安定化を図るといった意味でいろいろなことが言われておるようでございます。都道府県を経営主体とするといったような経営の広域化についてもいろいろと検討をすべきであるという意見が一部にあるようでございますけれども、いまおっしゃいましたような厚生省の懇談会で具体的にそんなものが取り上げられておるとは聞いておりません。  ただ、せっかくの御指摘でございますので、広域化という点について申し上げますと、たとえば都道府県経営にするといったような点につきましては、私どもとしては、市町村中心となるべき保健制度、いわゆるヘルスの方の保健制度との一体的運営を図ることがきわめて困難になるということが一つ挙げられると思いますし、また、都道府県財政負担をさせるということを前提とするものでありますならば、従来から私どもが反論しておりますように、医療保険制度の体系にそぐわないものになるだろうと思います。また、地域間の所得格差に伴う保険料負担の不公正ということ、これはまあ根本的な問題ではないかもしれませんけれども、府県にしたからといって、じゃそれが根本的に直るかというとそういうわけにはまいらないということ等がございまして、私どもとしては、やはり住民に密着した行政主体である市町村が経営主体として適当ではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。  今後、その懇談会でいろいろな議論があると思いますが、昨年議論されたような都道府県への負担転嫁といったこと等をまた引き出す意味で短期間に結論を出すというようなことについてはまだ何も決まっていないと思いますし、それは地方団体側の人も当然そういうことは困るということはそこの席で言っておるはずでございますから、そういうことはないと思います。期間としては、別に来年度の子算編成期までに結論を出すということにはなっていないようでございまして、先ほど申し上げました基本的な問題の検討でございますから、一、二年ぐらいかかるというようなことも頭に置いてやっておられると思います。ただ、必要なものがあれば随時結論を出してくれというなことを何か言っておるようでございますので、そこらがどういうことなのかということは私どもとしてもわかりませんけれども、私どもとしては、いま言った都道府県への広域化とか、あるいはそういった都道府県より以上の広域的な経営主体というようなものを考えるというようなことは反対でございますし一問題があると思いますし、それよりも国保財政の問題の解決に当たっては、やはり医療費の抑制を初めとしまして医療保険制度全体の体系の中におきます国保制度のあり方について十分な検討を加えて、総体的な医療保険のあり方という中でいろいろな措置を講じていくということが大事だと思っておるわけでございます。  だから、短期間においてそういった負担の転嫁的な意味でのものを詰めるということには反対でございます。そういったことにはならないと思いますし、市町村地方団体側かちもそういう意見が出るのではないかと思っております。
  113. 大川清幸

    ○大川清幸君 そういう答弁であれば私も一応の安心はいたしたいと思っているんですが、話題になっている国保給付費の地方負担の問題ですけれども、これは三大臣の合意事項の中の文面を読んだ上ではそう問題がないように思うんですが、厚生省と国民健康保険中央会、この間の申し合わせ事項を読みますと、これ読み方が悪いのかどうかわかりませんが、「本年六月のいわゆるゼロ・シーリングの閣議了解、同年七月の臨時行政調査会の第一次答申、これらの趣旨を受けた昭和五十七年度予算の概算要求並びに去る十二月二十一日の大蔵、厚生、自治の三大臣及び自由民主党」云々と、政調会長の名等がずっと連なって申し合わせ事項というのが出ているんです。  この頭のところの文章を見ていますと、どうも国民健康保険給付費の地方負担問題というのは、いま丁寧な御答弁があった医療保険制度全体の体系の中における制度のあり方としてどうなんだと、こういうところから出発をして検討をしていただいて出てきた話題というか、考え方じゃなくて、もともと政府の厳しい財政事情の中でゼロシーリングを行わざるを得なかったその枠の中から、厚生省としては苦しいものだから、何とかそれは荷物を軽くせにゃいかぬということで出てきた問題であることは間違いないように思うんです。  ですから、繰り返してくどいように申し上げるんですが、今後の地方への負担の転嫁、こういう問題は厚生省側から何かの形で出てくるという心配はないでしょうね。また、出てきた場合にどうされますか。いま御答弁なっている姿勢でがんばっていただけますか。こういうことを聞いているんですが、その点はどうですか。
  114. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) これは御指摘のとおりの事情で、厚生省側は困っていると思います。大蔵省の方は必ずしもそうではないようであります。というのは、これもいろいろありまして、国民健康保険のところが一番手をつけやすいということなんです。  ただ、よく考えてみますと、健康保険であるからには、国民健康保険だろうが一般の普通の健康保険だろうが、国じゅう同じで、一点に対して幾らというコストが決まっておりまして、それで日本国じゅう全部平等な制度もとで診療を受けて、それに対する支払いをしていかなければこれは保険じゃないんで、仮に、沖繩は高くて神奈川県は同じ国民健康保険で一点単価の価が違うとなるとこれは大問題になってきます。そういう意味では国民健康保険といえども全部これは全国隅々まで平等でなければならない。そうすると、仮に地方へ負担をかけたとしましても、地域地域によって国民健康保険を経営するんだといいましても、その場所の貧富の差も大変はなはだしくってそれに耐えられない、それでもなおかつ平等に保険として扱わなきゃならないとなるとこれは大問題となってきます。  私はやはり医療保険全体の立場からこれを見て、もしこのままでいくと国民健康保険が滅びてしまうという、たてまえの上に立って物を考えていくとすれば、それでもなおかつやっぱり全体的な見方からしていかないととても解決のできる問題じゃない。だから私は、厚生省がジレンマに陥っているのは恐らくそこだろうと思うんです。厚生省は逃げたいことは確かです。一部負担を地方に転嫁したいということは確かだと思います。だけれども、これをこの前行われたようなその場その場をしのぐ方法でやるとこれはえらいことになってしまいます。ですからこれはわれわれは単なる地方に転嫁するだけの問題、肩がわりだから、これは断固反対である、今後とも絶対反対の姿勢である、あくまで医療保険全体としてとらえていく、こういう立場を今後とも固守したいと思っております。
  115. 大川清幸

    ○大川清幸君 国民健康保険の問題はきょうここでは論議する場所じゃないからあえて深入りはいたしませんが、大臣の御認識、私も同じような認識で現状のままで国民健康保険制度が運営されていくとすれば破局的な時期が案外早く来るだろうという心配をいたしておりますので、ただいまのような御見識で対応していただくならば大変結構でございますので、ぜひともこれは特段の御努力を期待いたしておきたい、こういうふうに思うわけでございます。  もう一つは、地方へのツケ回しの問題で気がかりになる問題の確認をいたしておきたい点は、補助金の一律削減というのか、表現はどうかわかりませんが、どうもゼロシーリング影響でそういうようなことが行われたと。事業の減量があって削減の措置がとられるということであればこれは事業の見合いの分ですから特に問題はないんだろうけれども、補助率の切り下げとか補助対象範囲の縮小、これは技術的には後年度送りにしたりいろいろな操作の仕方があると思うんですよ。ですから、そういうようなことで一体補助金に係る問題が、削減方針が、地方公共団体への負担の転嫁になるような要素は全くなかったんだろうかどうなのだろうかという心配をしておりますが、そこら辺はどうですか。
  116. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国庫補助金の一割削減は、御承知のように臨時行政調査会の第一次答申で、個別に整理合理化の方策が示された事項に係るもの以外の補助金等につきまして、生活保護費等を除いて各省庁ごとに原則としてその一割を削減するという方針で行われたわけでございます。五十七年度予算においてはおおむね二千十六億円の削減が行われております。  ただ、この削減は、いま私ども承知している限りでは、事務事業の縮減なり事務事業の繰り延べ等を前提として行われておるものでございまして、補助率の切り下げ等による地方団体への負担転嫁はされていないと判断をいたしております。
  117. 大川清幸

    ○大川清幸君 そういう状況なら結構なんですが、昨年十一月に、「昭和五十七年度予算に係る地方財政措置について」ということで各省庁の事務次官あてに、これは自治省事務次官通達というのですか、これが出ているようでございますが、地方財政計画の作成をする段階で実際にはどのような実績が上がったか、これは御報告いただけますか。
  118. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 地方財政健全性を確保していくためには、国庫補助負担制度の改善合理化なり国と地方との間の財政秩序の確立等国の側における措置というものがどうしても多くなってくるわけでございますので、私どもとしては、手おくれにならないように毎年度各省が概算要求のまとめを始める時期にいろいろと取りまとめて各省に要求をしておるわけでございます。  五十七年度予算に関しましても、いろいろと方針を立てて各省庁に要請を行ったわけでございますが、その結果、たとえば補助単価については統計調査事務に関する地方団体委託費、それから地籍調査費補助金等につきまして改善措置が講じられる。また、補助基準につきましては、公立学校施設整備費補助金とか、保健衛生施設等施設整備費補助金、これは保健所施設等でございますが、それについて所要の改善措置が講じられたわけでございまして、総額として事業費ベースで百二十三億円ということになっておるわけでございます。それ以外に私どもとしてはいろいろな要請をしておるわけでございまして、補助金の運用方法の改善とか、各種の地域特例措置がもう期限切れになるのでそれを延長してもらいたいとか、地方への負担転嫁については反対であるといったような申し入れなどをいろいろしておりますが、かなりな部分についてその実現を見ておるということでございます。今後ともそういった点については引き続いて各省に要請していくつもりでございます。
  119. 大川清幸

    ○大川清幸君 ですから、補助金の整理合理化、これは自主的にやっていただくならば、方針としては大変結構だというふうに私も考えるわけですが、ところで、この補助金自体の本質にメスを入れて効果的な整理合理化をやっていただくことがかなり望ましい方向だろうと思います。しかし、こうした一律削減方式みたいなことでやりますと、不要不急のものが省かれるということにならないで、やっぱり事務量全体を維持していくというような基本的な考え方がその底流にあるとすれば、間々補助率の低いものだけ集めて措置をして、適当な、まあ措置というのは言葉がいいのかどうかわかりませんが、そういうような操作をして、結局は地方負担の方が結果としては増大してしまうというようなことになっていないんだろうかという心配をするわけですが、その点はどうですか。
  120. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) ゼロシーリングということでふところが窮屈になるということになりますと、同じ補助金の総額の中で事業量をふやすという意味では、おっしゃいますように補助率の低い方へシフトしていくということも、傾向として全然ないとは私ども思いません。ただ、そのことのためのみにそういったことをやっているとは思いませんで、やはり各省とも国民生活に密接な仕事をやるわけでございますから、いろいろと必要なものについて予算を組んでおるということだと思います。  そういうものではあるけれども、なるべく仕事をよけいやるということで全然そういうことがないかどうかということになりますと、やや五十六年度あたりでもそういう傾向が若干ございましたので、私どもとしてはそういうことは絶対ないように強い申し入れをしておるわけでございます。
  121. 大川清幸

    ○大川清幸君 補助事業の中身について、もう隅から隅まで明らかにするなんというのは大変むずかしいことですからそれはさておくとして、たとえば直轄事業費の内訳の中で見ますと、トータルで国の負担は〇・一%落ちていますよね。地方負担の方は六・九%逆にふえています。形だけ見てすぐ評価をすることはどうかなと私も思うんですけれども、どうも事業の中身で見ても治山治水、道路あるいは港湾、海岸、漁港など国の負担額が減少している形になっておるわけです。ですから、この見合いで地方の負担増というようなことがやっぱりおのずから起こってきているんじゃなかろうか、こういうように思うんですね。国の方の低いことについてはいろいろな要素もあるし、特定地域に関連する例の国の補助負担の行革特例による六分の一カットもあるし、そんな影響もあるだろうと思うんですが、これやっぱりゼロシーリング影響といいますか、そんなことで地方への負担に転嫁された部分全くないとは言えないんじゃないかという心配をしているんですけれども、それは大丈夫ですかな。
  122. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 直轄事業費をとらえてのお尋ねでございますが、御指摘のように、確かに国費が減りそれから地方費がふえると、こういうことになっておるわけでございます。この地方費のふえた中には、これもただいま御質問の中でお挙げになりましたように、行革特例法によるところの六分の一カット、これにつきましては、御承知のように、財政金融上の措置を講じて支障のないようにするということでございますが、そういう要素がこの中にかなり入っておるわけでございます。そのほかに直轄の災害復旧事業がふえたことによる地方負担の増加等ははね返っておりますが、全体の中の一部には、どうも明確な理由が把握できませんが、やはり地方の負担率の高い直轄事業費の方がふえたというような要因もあろうかと思います。  内容をしさいに分析しておるわけではございませんが、たとえば道路事業費、いわゆる道路の建設の方でございますと、これは四分の三国が持って、四分の一しか地方は持たないということでございますが、維持補修費の方になりますと、御承知のように二分の一、二分の一でございます。内容を見ますと、やはり維持補修費の方がふえておるということは言えようかと思います。ただ、率直に申しますと、直轄国道の改修というのは非常に進んでまいっておりまして、最近ではどちらかと申しますと、でき上がったものを維持管理する方、この分量が傾向的にはやはりふえてきておることも事実でございまして、これが地方への負担のしわ寄せのために意図的になされたとはちょっと判断ができないわけでございます。そういう意図的なものではこれはなかろうと。  維持管理費に関する直轄事業費の地方負担のあり方につきましては、私どもかねがね問題にしておるところでございます。これは御承知のとおりでございますが、それはともかくといたしまして、内容から分析すると、御指摘のようにやや負担率の高いものにシフトしていく傾向が全くない、これは言えないかと思うのでございます。
  123. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、御承知のように、地方財政審議会の答申によりますと、存続する国庫補助金等、これは積極的に統合メニュー化、総合補助金化、こういうようなことを図るべきである。あわせてその交付手続等の徹底した簡素合理化を図れというような中身にこの答申はなっておるわけでございますが、この財政の厳しい中で当局としてもそれなりの努力をなさっているだろうというふうに思うんですけれども、五十六年度現実にこの方向で行ったわけですから。具体的な改善はどういう点がなされたか、概要で結構ですが御報告をいただきたいと思います。
  124. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国庫補助金等については、毎年度整理合理化ということで各省取り組んでおるわけでございますが、五十七年度予算におきまして、これは大蔵省で調べた数字でございますけれども、いろいろな整理合理化が行われております。  この資料によりますと、整理されたものが二百四十八件で三百三十七億円。前年度よりも減額したものが七百六十六件で、合わせて二千七百三十五億円。補助率が引き下げられたものが七件、これは地方団体向けのものはございません。それから統合されたものが七百八十六件。要するに、統合後が二百六件でございまして、五百八十件が減ったと、こういうことでございます。それから終期の設定がされたもの——サンセット法でございますが、これが百十七件。それから定員削減が八十五件で三十五億円という数字が出ております。その他合理化をしたものが八件ということでございまして、件数として延べ二千十七件で三千百七億円という数字が出ております。  きわめて概括的な数字でございますが、こういうことに相なっております。
  125. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、臨調関係で幾つか伺っておきたいんですが、臨調の第三部会、この審議状況がたまたま新聞等で報道されたりしておるわけですが、この中での改革の原案に係る部分ですが、地方行政に関連のある問題が幾つか取り上げられておりまして、地方交付税年度間調整制度を導入するという問題だとか、基準財政収入額の算定の際の算入率の見直しの件等、これは大変問題なんです、こういうことは。交付税率の引き下げというようなことにこれつながりかねない。また、先ほど初めのところで触れたんですが、地方財政収支について、臨調の方々全部がそうだと私は言うつもりはありませんけれども、どうも財政のバランスがとれたり、一千百三十五億を一時国の方へ貸すような形をとったりというようなことが、どうも地方財政に対する楽観を持たせるような契機になっていないんだろうかという心配をするわけですよ。地方財政計画の国に準じた歳出抑制、そういう点では、先ほども問題になっておりました高い給与とか上乗せ福祉——こういうような表現については私はちょっと問題があると思っているんですけれども、標準以上のこうした行政サービスの是正をさせるというような考え方も問題になっているようです。言ってみれば、地方財政というか、地方財政を減量化させようという方向は、これは公正な立場でこういう努力をさせる方向で物を考えていただくんなら余り心配ないと思うんですよ。何か知らぬけれども、どうも地方財政を必要以上に圧迫すると言えば言い過ぎかもしれませんが、財源を洗い出してぜい肉を落とすだけならいいが、しぼれるだけしぼっちゃった上で、国の財政の方へのはね返りで多少財政再建でも楽をしたいというわけじゃないでしょうが、そんな材料にしたいという考えがあるのかどうか、これはわかりませんが、結論的に言えば、地方財政の現状に対する認識が余りにこれは違うんじゃないか。こういう論議をされること自体が。  そこで、調査会、あるいは第三部会の方に自治省からも出ていって、いろいろな実情の説明や報告をなさって材料は提供しているんだろうと思うんですけれど、その点についての対応はどうなっているんですかね。こういう話が出てくることについて、どうも心配が絶えないというような気がするんですけれども
  126. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) これは、臨調の方へは、地方制度調査会の会長がこちらの関係でメンバーになって出ております。それでいろいろ連絡をとりながらやっておるわけですが、余り審議過程の中でこっちでアドバルーンを上げないでくれというふうな意見もありまして、余りアドバルーンを上げないているのでございますが、臨調の方で、地方財政が国の財政よりもゆとりがあって豊かであるというふうに見ていることは確かなようであります。その根拠となるところは、つまり、地方公務員の給与が国家公務員に比べて異常によ過ぎるところの地方団体がかなりあるということ、それからボーナスとかプラスアルファとか、いろんなことがどんどん新聞などで出てまいりまして、そういうことが基準になってそういう心証になっているようであります。もう一つは、借金の金額が国の方が八十兆を超えてしまって、地方の方はまだせいぜい四十兆ちょっとじゃないか、そういう評価もありますので、公営企業のあれも入れて、いや五十兆だというふうに説明してはいるんですが、国よりもまだゆとりがあるというふうに見られていることは確かでございます。  そこで、われわれの方は、そういった印象を打ち消すために、やはり地方団体に対してもかなりきついことも言わなければならない、こういう状況でいることは確かであります。
  127. 大川清幸

    ○大川清幸君 そういう認識が向こうに多少あるとするとやっぱり心配なんで、そういう点では対応措置をしっかりしていただきたいんですけれども、何か御答弁なり説明ありますか。
  128. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 基本的に大臣から申し上げたとおりでございまして、いまのような感覚がございまして、地方交付税についてもいろいろと議論がされておるわけでございます。しかし、私どもは、いまの臨調の委員の中に地方制度調査会の会長もおられますが、第三部会のいままさに国と地方との財源配分等に関連して議論されておる場には、自治省の次官、財政局長などをされた方も入っておられまして、いろいろな勉強もその方もされるわけでございます。私どもとしては、実情を詳しく説明も申し上げて、いろいろと御説明もいただいておりまして、最近では、いろいろな経済の動向等もありまして地方財政そのものが思ったより楽にどんどん黒字になっていくような感覚は大分払拭されてきたというふうに受け取っております。  これは、大臣がおっしゃいましたような基本的な風潮があって出てきたことでございますから、今後ともわれわれとしては実態がよくわかるようにPRもしなきゃならぬと思いますし、いろいろな機会をとらえて地方財政状況のみならず交付税制度の基本的な問題等についても十分納得をしてもらうように努力をしたいと思っております。
  129. 大川清幸

    ○大川清幸君 これは先々影響が出てくる問題で、特段の御努力をお願いしておきたいというふうに思うんです。  ですから、毎年度歳入不足が出て、それを措置するためにいろいろな御苦労をなさって財源の確保をしている。一応年間のバランスが毎年とれて年を越してきているわけですから、そういう努力は私たちも評価をするんですけれども、どうも地方財政に対する状況の判断というのは、それはうまく運営してきたと言うべきことなんだろうと思うんですが、それがどうもこうした調査会なんかでも実情を理解していただく条件につながっていないようなところが、努力したわりには報われていないようでお気の毒だと思うんですけれども、いまお話しのあったとおり、特段の努力をなさるということですから期待をしておきたい、こういうふうに思うんです。  その第三部会が考えている交付税年度間調整、この中身が最終的にどんなものになるのかというのはちょっとまだわかりませんけれども、過去の経緯を見て、特に五十年度以降の実際の交付税特会借り入れですとか財源対策債の振替の措置など、これを見てみますと、おおむね二兆円前後、金額としては決して小さくない。こういうような実情から考えると、仮にこの第三部会で考えているような調整制度があったとしても、そんな簡単に事務的に調整をするというようなことはむずかしいんじゃなかろうか。年度間調整だの何だのという考え方で処理をしようとしていま検討をされているんでしょうけれども。ですから、言ってみれば交付税年度間調整、この技術的な範囲というか、域を越える問題じゃないんだろうかというふうに考えているんですが、まだ答申なり報告が出ないので論議になるかどうかわかりませんけれども、この交付税年度間調整制度、これについてはどんな御認識ですか。もし仮に報告が出てきたらこれでやらざるを得ませんか。実情からいったらそぐわないということになりますか。どうですか。
  130. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) まだ私どももどういった形で結論が出てくるのか、いろいろな情報はできるだけ入手するようにしておりますが、はっきりいたしておりません。いま御指摘のように、交付税における年度間調整とか、あるいはまた新しい発想で地方財政計画における年度間調整といったようないろんなことが言われておるようでございますが、具体的にどんなことを考えておられるのか、私どもとしても果たして具体的な制度として成り立ち得るような方策があるんだろうかと思ったりしておりますが、結論が出ていないものにどうこう言う立場でもないわけでございます。  ただ、交付税年度間調整ということにつきましては、これまでもいろいろ国会では御意見があったわけでございますけれども、やはりその時々の国、地方財政状況などを勘案いたしまして、地方財政の運営に支障を来さない範囲内で予算あるいは法律案というかっこうで御承認をいただきながら年度間調整を行っておるわけでございます。特に、年度末に補正があったときは当該年度に使わないで翌年度に使うといったようなことも一つ年度間調整で、これはすべて法律を通じて御了承をいただいておるわけでございます。今後においても、中長期的に見てそれが非常に適切で妥当な措置と思われる場合は、私どもとしては地方財政全体の中で検討をして国会の御承認を得てやるということはあり得ると思いますけれども、それを何らかの形で制度化してルールをつくるといったようなことはなかなかむずかしいのじゃないかと思います。  しかし、いずれにいたしましてもどんな中身でどういう結論が出されるのかということがまだはっきりいたしておりませんので、私どもとしても関心を持って見守っておるというような状況でございます。
  131. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間がなくなりましたから、最後に確認をしておきたいんですが、先ほど申し上げた中の一項目ですが、基準財政収入額の算入率の問題なんです。これも改革案がどういう形で出てくるかという時間的な問題もあるんですが、この算入率の見直しですね、これが論議になっているようなんです。論議になっている根拠は何かというと、これも必ずしも明確ではありませんが、留保率というか、算入率ですね、これが設定された時点に比べて今日では確かに国の予算規模に匹敵するだけの地方財政計画の中の規模になっていますから、そういう点から考えると、おっしゃるように地方税収規模も大変大きくなっているんで、パーセンテージは二〇%、二五%だけれども、留保財源そのものは大変実質的には大きくなっているんじゃなかろうかという考えが向こうにあるんだろうと思うんですよ。  そんなことでこれの見直しの論議がどうもあるようなんですが、この率の問題だけではなくて、これらの留保財源がいわばいま問題になっている地方公務員等の高い給与、そっちにも流れているんじゃないかとか、とかくの御批判もあったりというようなことでございます。あるいは、先ほどちょっと話の出た上乗せ福祉、国に先駆けて何かを住民サービスのためにやる、これがまるで悪いみたいに言われているけれども、これは地方の自主的な行政サービスの問題であるから、決してやみくもに批判をするには当たらない。こういうようなことから考えまして、財政措置としては二〇%あるいは市町村の二五%、この辺の留保財源を確保しておく方が財政運営上もいいし、各地方公共団体の自主的な財政運営を確立する上でも当然これは確保しておくべき問題であろうというふうに私は解釈をいたしておるんですが、これらはかなりやはり確度の高い状態で手直しが検討されているみたいなんですけれども、この辺については全く心配がないのかどうか、お答え願いたいと思います。
  132. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 基準財政収入額の算定に当たりまして、道府県で百分の八十、市町村で百分の七十五という基準税率を用いていることは御承知のとおりでございますが、これにはそれなりの意味があるわけでございまして、一つには、基準財政需要額の算定に当たって、地方団体のあらゆる財政需要を完全に捕捉して算入することが技術的に困難であるから、ある程度そういうものを残しておくということでございます。それからまた、自治体としての地方団体がそれぞれの地域の特性に応じて自主的に独自の施策を展開していくという余地をどうしても残しておく必要もあるということ。それから三番目は、税源の多少が地方交付税によって完全に均等化されるということになりますと、地方団体が独自に税源の培養の努力をするといったことを摘み取ってしまう。いろんなことがございまして、こういった制度がとられておるわけでございます。したがって、もし交付税の総額を抑えるために基準税率を引き上げるというような議論があるとすれば、それは全く実情に合わない。いまの基準財政需要額そのものはまさにこういった形で算定した基準財政収入額と交付税で成り立っておるわけでございますから、そっちを引っ込めるならば財政需要をいじらなければならぬといったようなことになるわけでございまして、ただ単に、これをすれば税金をよけい見てそれだけ交付税率も引き下げていいんだといったような単純な考えは、これはもう全然実情に合わないと私ども考えておるわけでございます。  もちろん、基準税率を引き上げれば地方団体間の財源を一層均衡化させるという効果をもたらす、これは言えると思います。そういった点はあると思いますけれども、一方、地方団体の財源の弾力性の幅を狭めてしまうということにもなるわけでございまして、多種多様な住民ニーズにこたえるために、どの程度地方団体の財源の自主性を発揮させるか、そこらにどの程度の余裕を持たせたらいいのか、これは議論してみればなかなかむずかしい問題ではあると思いますが、いま申し上げたような意味合いにおきまして、私どもとしては基準税率の引き上げには検討すべき問題がきわめて多いと思いますので、やはりこれは慎重に対処しなきゃならぬと思っております。  率直に申しまして、いまの臨調第三部会の中にはかなりそういった意見があるようでございますけれども、これを設けておる意義と、それを動かすとなればどういう問題が起こるのかということを十分やっぱり納得して検討を進めてもらいたいと思っておるわけでございます。
  133. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間がなくなりましたが、いまの御答弁ですと算入率の問題は現状がいいかどうか、これは検討しなきゃならぬ問題だから、むずかしい問題だから慎重にということだったんですが、慎重に考えなきゃならぬという意味なんですけれども、検討の方向で慎重にやるというのですか、現状維持の方が妥当だということなんですか。どうなんですか。
  134. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 私どものいまの認識では、先ほどから申し上げた意味で、これをあえていまいじる必要はないだろうと思っております。ただ、いろいろ議論がされておりますので、その際、われわれが考えておることを十分踏まえた上で議論をしてもらわないと、単純に、交付税率を下げていいということにつながるような発想でやられては非常に困るということを申し上げたわけです。
  135. 大川清幸

    ○大川清幸君 大臣もその点は御異論ありませんね。
  136. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) ただいまの局長の答弁と同じ考えでございます。
  137. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間が来ましたから、残余の問題は別の機会にします。
  138. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは、きょう私は、地方公務員の給与抑制の問題が一つ、それから地方財政計画に係る問題が一つ、それから地方税における大企業優遇税制に係る問題、大体この三つのテーマで質問をしたいと思います。  きょう当委員会でも議論になっている臨調の特に第三部会の問題、状況なんかも含めて議論したいと思います。特に、臨調の方針というのがもうすでに地方財政に非常に大きな影響を与えておることは事実ですし、したがってこの点、国と地方の機能分担及び地方財政制度のあり方の問題が第三部会で検討されておるわけですね。報道によりますと、一部はもう調査会の方に意見が出されたという報道もあったり、それは事実かどうかわかりませんが、そういった状況もありますので、最初に臨調の方に、この第三部会では具体的には六つぐらいのテーマで検討をされているというんですが、その六つのテーマの中身と、それから作業の進行状況、そしてその部会の取りまとめの大体のめどですね、まずその点についてお答えいただきたいと思います。
  139. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 御説明申し上げます。  初めに、全体の状況について御説明申し上げますが、御承知のとおり、第三部会は国と地方関係というテーマを取り扱っておりまして、実は、ただいまの時間も第三部会定例日で開会中でございますが、昨年九月スタートして以降本日が三十一回目でございます。別途、二月に入りましてから、機能分担と地方財政の問題を専担いたします第二分科会というものを設置いたしまして、今日まで十一回の審議が行われております。  第三部会のテーマは非常に大きなテーマで、かつ問題が多岐にわたっておりますが、部会として検討事項の整理がなされておりますのは、一つは国と地方の機能分担の問題と当然それに関連いたしますが、財源配分あるいは地方財政の問題、そして二つ目に広域行政というテーマが挙がっております。三つ目が地方行政の効率化、減量化というテーマ、そして四つ目に地方事務官の問題、五つ目には地方出先機関の事務の見直しと、大きく分けますと五つのテーマが整理されております。  世間によく六つと言われておりますのは、たとえば補助金の問題なんかも地方財政の問題に絡めてその中に入っておりまして、これは数え方の問題でございますけれども、以上申し上げたようなテーマが設定されてございます。  現在の審議の状況でございますが、何分にも問題が多岐にわたり、かつむずかしい問題でございますので、各方面からのヒヤリングを相当時間をかけ、かつ、フリートーキングで論点の整理をしていただきまして、方向づけの議論に入りましたのは、部会及び分科会ともにやっと最近というのが実態でございます。  今後のめどでございますが、基本答申に向けてまず部会報告という段取りがございます。部会報告のめどとしては、先般の調査会におきまして五月中旬をめどとするということが決められておりますが、第三部会につきましては五月のいつごろになりますか、いまのところ流動的でございますけれども、審議の状況からいたしますと、ほかの部会よりテンポが若干おくれぎみでございますので、私ども見込みとしては五月いっぱいには部会報告にこぎつけたいということで御審議をお願いしておるという状況でございます。
  140. 神谷信之助

    神谷信之助君 あなたのいま言いました給与問題、それから第二番目の地財計画に係る問題具体的な問題で少し後でお聞きしていきたいと思うのです。  まず、給与の問題ですがね、臨調の第一次答申、あるいはそれに基づく政府の行革大綱、あるいは最近報道されているいまの第三部会の作業の中でも、地方公務員の給与の高い部分について抑制の措置をとれ、それは財政措置を講じろとかあるいは財政措置も検討しろとかいうようなことが報道されておりますが、この財政措置というのは、具体的にどんなことをお考えになっておるんですか。
  141. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 申し上げましたとおり、現在のところ方向づけの固まった問題は具体的には何一つございません。テーマの中に、地方行政の効率化、減量化というテーマがございますので、そのテーマの中で地方公務員の定数管理とか給与の問題が議論の中身としては入っておりますけれども、具体的にたとえば給与の問題について抑制方策とか具体的な内容とかいうことについて固まった議論はございません。
  142. 神谷信之助

    神谷信之助君 固まった議論にはなっていないようなんだけれども、その議論の中では自治省に対してそういう制裁措置といいますか、それを自治省にやらせようというような意見はやっぱり相当強くあるのですか。
  143. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 第一次答申の際には、先生御案内のとおり給料、退職手当等の適正化という観点から、地方公務員の給与につきましても、国の「給与水準を著しく上回る団体に対しては、財政措置を講ずる。」という提言がなされたわけでございますが、今回の基本答申に向けまして具体的にどういう内容の結論になりますか一いまのところ全く流動的でございまして、議論の過程では確かに地方公務員の給与の問題について、たとえば国の水準を上回る部分に対して何らかの措置が必要ではないかという観点の先生方の御議論があることは事実でございますけれども、それに対して、臨調あるいは部会として具体的にどういう提言をするかというところまでの意見の集約は、いまの段階では全然できておりません。
  144. 神谷信之助

    神谷信之助君 第一次答申で、「財政措置を講ずる。」とありますが、これは何を予想されているのですか。あるいは何を期待されているのか、具体的な財政措置を。
  145. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 当時は第二特別部会というところでこの御指摘の問題を議論されたわけでございますが、当時、その第二特別部会の御議論として、何らかの抑制方策が必要だということから、著しく上回る団体に対する財政措置という結論が出まして、それが本調査会においても基本的に方向は変わらなかったということでございますけれども、当時の部会の御議論の中で、財政措置の具体的な内容については必ずしも細かい議論はございませんで、財政措置の具体的な内容については非常に技術的、専門的な分野でもこれあり、政府においてと申しますか、御所管の自治省において具体的に御検討いただくべき問題であるということを前提に、何らかの財政措置が必要だという雰囲気であったと承知しております。
  146. 神谷信之助

    神谷信之助君 一般に報道されているところでは、臨調の出す答申というのは、実行可能なものでないとぐあいが悪いとこう言う。しかし実際には、「財政措置を講ずる」ことと言いながら、その具体的な中身というのはそれはおまえら考えろと、無責任きわまる。したがって、それを受けて閣議決定した行革大綱では、「検討する。」となっていますね。だから、何を考えるかわからぬから検討せいという状況です。  そこで、それを受けて自治省の方では、どういう検討をして、具体的などんな措置をすでにやられていますか。どういうことをやられているか。
  147. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 臨調の答申では、「国家公務員の給与水準を著しく上回る地方団体に対しては、財政措置を講ずる。」ということになっておるわけでございますが、自治省としては、これは給与水準の適正化にねらいがあるということでございましょうから、まず、給与水準が著しく高い団体に対して、その運用等の状況について報告を求め、当該団体みずからが自律的に計画的に適正化を図るように個別指導を行うということにしておるところでございます。  この個別指導に基づいて関係地方団体において自主的に計画的に給与の適正化が行われるものと考えておりますし、また、期待しているところでございますが、財政上の措置については、私どもとしては、その計画的な給与の適正化の状況を見ながら必要に応じて講ずべきものだと考えておりまして、第一次答申を受けて、たとえばラス指数を基準とする等の方法によって直ちに財政措置を講ずるといったようなことは何もやっていないわけでございます。  なお、御承知のように、国の基準を上回って支給された期末・勤勉手当、いわゆるプラスアルファについては、特別交付税の算定上私どもとしては減額対象としておりますが、これは従来からやっておるわけでございまして、臨調の答申に基づく制裁措置というものとは別問題でございまして、この答申の後の状況はいま申し上げたようなことでございます。
  148. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまの、著しく高い団体については報告を求めているというやつは後で具体的になにしたいと思いますけれども、従来やってこられた期末・勤勉手当にプラスアルファをつけている分については結局特交減額という措置をとってこられたということをおっしゃっていますね。これは時間の関係から、いままでの経緯からもう私の方から言いますけれども、結局そこは財政力に余裕があるという判断をして、そういう措置をした。だから、特交は限られている財源なんだから余裕団体には少し遠慮をしてもらうというのはあたりまえではないかという言い方でいままでの御答弁をなさっているんです。  具体的にお聞きしますが、去年の暮れ、五十六年末の問題、これはいわゆる従来のプラスアルファの問題と、それから国の場合は旧ベースで期末・勤勉手当の支払いになっていますね。それを新ベースでやったところもある。こういったものについて一体総額どれだけの減額措置をなさったのか。これをひとつお聞かせいただきたい。
  149. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十六年度の特別交付税におきましては、プラスアルファによる減額のうちで、いわゆる新ベースによって支給した団体が百七十三団体ございました。それについては、いわゆる減額項目として算定した額が六十一億円でございます。
  150. 神谷信之助

    神谷信之助君 従来のやつではプラスアルファをつけて……。
  151. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) プラスアルファ全体でございましょうか。——プラスアルファ全体としては、対象になったのが三百十五団体でございまして、減額項目として立てられたものは三百一億でございます。
  152. 神谷信之助

    神谷信之助君 そのほかに、議論になっています、ラスの高い順番でいって結局上から百五十三団体ですか、それに対する措置というのは、これはたとえば三月十八日衆議院の地行における答弁では、五十四団体に対してしかるべき措置をしたような答弁がありますが、いかがですか。
  153. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) いわゆる給与の個別指導団体におきまして、五十六年度の特交の額が前年度の額を下回っておるところもございます。これは先ほどから申し上げておるとおり、制裁措置としてやったわけではございませんで、その経緯を若干申し上げますと、五十六年度は特別交付税総額の伸びが御承知のように対前年度比二・七%ということできわめて低かった。したがいまして、特別交付税要因として個々の地方団体財政需要を取り上げます際にも、おのずからその判定を厳しくせざるを得ないという事情があったわけでございます。そういった状況もとで、地方団体共有の財源であります特別交付税実質的に公平に配分いたしますために、給与水準の著しく高い団体につきましては、一般の団体よりも財政的に余裕があると考えざるを得ないという実情を考慮いたしまして、個別のいろいろな事情のしんしゃくを行っているわけでございまして、その結果といたしまして、個別指導団体でございましても、措置すべき財政需要のあるところは特別交付税の額が増加することとなったところもございます。一方では特別交付税の額が前年度を下回るような団体もできたわけでございまして、五十四団体についてはそういったいろいろな事情のもとで減額になったわけではございますけれども、五十四団体だけについて特別の扱いをしたということではないわけでございます。
  154. 神谷信之助

    神谷信之助君 五十四団体というのは、その百五十三団体のうち、ラスの高い順に一番から五十四ということではないということですか。
  155. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) もちろんそういうことではございません。
  156. 神谷信之助

    神谷信之助君 次は起債の方ですが、起債の申請に対して許可を与える場合に、給与が高いと、したがって財源が豊かだということで起債を認めない、遠慮をさせる、あなたが言われた遠慮をしてもらうとか、申請を取り下げる、無理でしょうなとおっしゃって申請をさせない、そういう措置はやられるんですか。
  157. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 起債の許可に当たって特別に制裁的なことをする気持ちは毛頭ございませんが、私どもが起債の許可をいたします際は、当該地方団体財政力全体を判断しながら起債を許可をするわけでございますから、そういった中で、当該団体財政状況の中で、たとえばきわめて給与が高いとかあるいは期末・勤勉手当でプラスアルファを出しておるとかいったようなことは、やはり総合的な判断の中では入ってくると思います。特に、いろいろと国家公務員について国民の世論を背景に期末・勤勉手当の支給についても特別な措置がなされた、地方公務員についてもそれに準じて措置をするようにということについて、それ以上の支給をしたといったようなところは、これは財政上ゆとりがあるじゃないかというような議論ももちろん出てまいったわけでございますが、私どもとして、具体的にこことここをどうしたというわけじゃございませんが、そういったことは起債全体の配分に当たって配慮するという態度を持っておることは事実でございます。
  158. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは五十年当時に、松浦さんが財政局長時代にこの問題を議論をしたときに、起債問題ではそういう、御遠慮願うといいますか、余裕ある団体とみなすと、こういう御答弁をなさっているんですがね。いずれにしても財政的に余裕がある団体という判断を自治省がなさるのであって、給与が高いからそれに対する制裁措置として行っているんではないということを強調されるわけですね。したがって、すなわち現行制度もとでは、そういう給与が著しく高いということに対する財政的な制裁措置を加えるということはできない、そういうことだと思うんですが、その辺は間違いないですね。
  159. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) それぞれの地方団体が条例の規定に基づいて支給されておるものでございますから、それが違法であるとかどうとかという特別なものがない限り、その理由をもって私どもが制裁措置を講ずるようなことはいたしません。
  160. 神谷信之助

    神谷信之助君 それで、臨調にもお伺いしますけれども、臨調の議論の中で、著しく給与が高いところの自治体というのは財政力に余裕があるという考え方がやっぱり支配をしているというように、まあ自治省はいまそう言っていますよね、臨調の中にもやっぱりそういう考え方は強いわけですか。
  161. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) あくまでも、昨年の緊急答申の段階を前提に御説明をさせていただきますが、その際の第二特別部会の御議論で、確かに先生御指摘のような財政余裕ということを理由に抑制が必要であるという観点の御議論があったことは事実でございます。
  162. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうなると、問題は人件費、いわゆる高い給与を出す、そういう団体は余裕ある団体という判定ができるのかどうかという問題がこれ非常に重要になるわけですね。そうでしょう、大臣。  ただ実際は、それぞれの自治体の財源というのは決まってるわけですよ、多い少ないは別にして財源は決まっている。その財源を知事なり市長なりはどこに重点を置いて使うか。地方自治の原則からいったらこれは首長の責任ですよね。権限である。しかもそれは首長が、知事なり市町村長がしたい放題できるわけじゃない。議会の承認を経なければこれは一文だにも支出はできない。こういう仕組みになっているわけですからね。だから、それぞれの地域の条件なりあるいは特に知事なり市町村長の考え方で、より優秀な人材を集中をしてそして効率的に仕事をやっていこうという場合には、他の自治体よりは給与水準を高くするということはあり得るわけでしょう。あるいは、橋梁道路なんかに重点を置こうと。その場合自治体の首長が、自治省が考えている基準財政需要額の中の算定基礎になった土木費や橋梁費その他道路費、これらをうんと上回ってそこに財政支出をするということも自由なんですね、地方自治が原則なんだから。あるいは、わが市は特に老人福祉施設に重点を置こう、あるいは保育所をもっと建てようとそこに重点を置く、そういうことも自由であるわけでしょう、自治なんだから。これは、交付税は一定の基準に基づいてそれにいろんな係数を加えて配分をしているんですから。それで全体の枠としては、その地域それぞれの自治体の地方税収、あるいは使用料、手数料その他の金、あるいはあとは国庫支出金と起債ですわね、それだけの財源をもって、そしてそれぞれの知事なり市町村長がその住民のニーズをとらえ、その地域の経済状態をとらえ、あるいはその地域全体の自然的条件もつかまえて、それで財政の支出の重点をどこに置くかというのはお考えになるわけです。たまたまその重点を人件費に置く。特に自治体の仕事は御承知のように人間がやるわけですからね、その部分がきわめて多いわけですから、その点でそこへ重点を置いてそういう措置をなさる。そうしたら、おまえのところは余裕がある団体だと、そういう判断ができるんですか。  これはもうきわめて政治的に、政治家の面から見てもらわないとわからぬと思うんだが、大臣いかがですかね、それ。事務当局の判断は、それは数字でさあっと計算しますよ。そんな問題じゃないでしょう。
  163. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) まあ大臣もお答えいただくとは存じますが、いろいろお話を伺ったわけでございますけれども、基本的には、地方団体の行財政運営は自主的に運営さるべきものでございます。したがいまして、財源の使途も当該団体の判断によるべきものであると存じますから、運営の実態はさまざまなものであろうし、また、それは多様にわたってあたりまえだと思います。したがいまして、団体によってそれぞれ質の異なる政策や経費に対する財源の配分につきまして、一つの物差しで財源余裕の有無を直ちに判断するということは、一般的に言ってこれは困難であろうと私ども考えております。したがいまして、何でもかんでも、何か一つの事象をつかまえて一々あげつらっておるわけでもないわけでございます。  しかしながら一期末・勤勉手当を国の基準を上回って支給をするといったような場合には、給与費といういわば各団体共通また同質の経費に対しまして、国の基準と同じような基準によって支給しております他の地方団体を上回って財政支出を行っているというものでございますし、また、客観的にそれは対比が可能なものでございますから、財政的に余裕があると判断をして取り扱っておるということでございます。
  164. 神谷信之助

    神谷信之助君 客観的に何が……。
  165. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 客観的に対比、お互いに対比し得るということでございます。国を幾ら上回っておるということもはっきりわかるということでございます。そういったことで財政的に余裕があると判断をしておるものでございます。  こういった判断に基づいて特別交付税の配分を行うことは、地方団体共有の財源を実質的に公平に配分するということになるであろうと、私どもとしてはそういった考え方に立っておるところでございます。
  166. 神谷信之助

    神谷信之助君 大臣も大体同じことでしょう。反対の意見があるのだったら言うてもらうけれども、同じやったらもう時間がないから……。  それじゃ、そうおっしゃるのならばもう一つ聞きますが、国家公務員と地方公務員の給与水準が著しい差が出てきておると。そういう地域というのは特定されてきますわね。だから、それはそれなりの原因があったからそうなったんでしょう。そういう原因についてはどういうようにお考えなんですか。
  167. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) これはいろんな原因があるだろうと思います。たとえば高度成長期に民間の給与が非常に上がった。それで職員を採用するために初任給を上げざるを得なかったというようなこともあるだろうと思います。また、そういった中で、いま申し上げましたように国家公務員に比べて高い初任給を決める、あるいは運用によります昇給短縮でありますとか、あるいはいわゆるわたりといったようなもの、それから給料表それ自体の問題といったようなところから高いところが出てきたというふうに考えられるのではなかろうか、このように考えております。
  168. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまおっしゃいましたけれども、いわゆる高度成長一つは、政府自身が町村合併をどんどん進めていきましたわね。人口五万から市だけれども三万でも市になってよろしいという形で町村合併をし、市をつくっていきましたよね。だから、私の方の京都でも、昔は宇治町という町だったけれども宇治市になってきました。町村合併をして無理やりに広げて。だから、それまでの町村型の、町役場、村役場型の行政とは質的に違った都市型行政が必要になってきているんです。それまでは小学校卒、高校卒、旧制中学卒というのが職員の大半を占めて、農繁期になれば三分の一ぐらい残って三分の二は田植えに行く、それでも町民の皆さんから別に文句はなかった。いわゆるそういう町村型の行政でよかったわけです。  ところが、高度成長が進むと同時に、片一方では町村合併が進み、市ができてきて都市行政が要求される、こういう時期になったわけでしょう、全国的に。特に、京阪神なり中部圏なり首都圏で。だから、そういうところでそういう仕事をこなせる職員を採用しようとすれば、たとえば私のところで言うと、京都府や京都市に勤めるよりもこっちに来てくれと、来てもらわないかぬ。そうすると、初任給はそれよりは一号か二号は高くしますよ。京都市で三年がんばってはるよりは、うちの方に来たら早いとこ、三年たったらもう係長にしますよとか、いろんなえさを出さなかったら来ないんです。これも事実です。ですから、実際あの時期というのは職場の中の賃金体系というのは非常に混乱をした時代ですよね。悪戦苦闘しているわけです。いい都市行政を進め得る職員、人材を集めるために。そういう形で、ああいう状況ができてきたわけでしょう。  しかも今度は、出ているいまの給料表というのは、国家公務員の給料表は八等級までありますわね、一般行政職で。ところが町村へ行くと、大体下から四つぐらい、八、七、六、五ぐらいですね。ちょっとでかい、一万を超える町村でももう一つ上ぐらいまでの給料表しかないわけだ。それが合併して市になるわけですよ。そして、一遍には上げられぬから、せいぜい六等級ないし七等級まで。だから、国の一等級、二等級、三等級ぐらいの部分は頭切りして、それで給料表をつくらざるを得ないわけです。  それで大量に人員は採用せないかぬ。こういう状況から、どうしたって八等級の天まで行って、給料表にもない人がだっとたまってくる。私なんかもいつもそうでね、ずっと順番にとにかく頭打ちしてね、そして二、三百人たまってくるとこれは人事管理上ほっとおけぬわけでしょう一昇給させないということはできない。何ぼ特一だの特二だのつけてみたって限りがある。だから平でももう一つ上に上がれるようにする。だから係長相当職とか課長補佐相当職とか、いろいろなやつをつくらざるを得ない。それがいわゆる運用上の問題でしょう、いま言うていたところの。そういう給料表自身、あれは二十七年か八年以来、現行の給料表は変わっていないんです。  ところが自治体の方の体制というのは大きく変貌しているわけです。それをそのままいまだに温存して、強制するから、やむを得ずはみ出さざるを得ない状況というやつが出ているわけでしょう。そっちの方をほったらかしておいて、現象だけ見て、それで高いのどうのと言ってみても、実際問題現場では直しようがなかった、そんな簡単に一遍には。勝手に独自の給料表をつくっているところも一部ありますがね。それはよっぽど英断がある首長さんであって、一般的にはなかなかつくれないんです、自治省の監視が厳しいから。だから、無理に無理が重なって、言うならば継ぎ足し継ぎ足しの現在の給与状況になっているというのが、実際のいまの現状でしょう。それを何とか強引にやろうとおっしゃるんだけれども、私はそこに一つは無理がある。そんなら昔の町村型の行政に戻った方がいいということなのか。そうでないでしょう。都市型行政をもっとやらすと。だからそういう方向をやるということは、私は、一つは大事だと言うんですね。  余裕がある団体というのもいまおっしゃいましたけれども、給与水準というのは一番対比しやすいと、こうおっしゃるわけだ。対比しやすいものからそうやって一つ一つ、おまえのところは上回っているからと対比をしてつぶしていくということならば、臨調が盛んにおっしゃっている上乗せ福祉にも、これも対比できるわけだ。国の水準にしてしまって、全部七十歳以上なのにおまえのところは六十八歳以上で老人の医療費を無料化しているのは、これはけしからぬと。それは対比できますよ、対比しやすいんだから。おまえのところは財源が余裕があるんだ、だから別のことを考えろ、と。同じ論法になってくるんです。そういうことについては、上乗せ福祉に対して臨調が攻撃されるについては、先ほどの答弁ですと、自治省としては反対だとおっしゃるんだけれども、しかし、同じ対比しやすいものから征伐していこうという考え方というのは、私はそこに一つ大きな問題がある。しかも給与体系というのは、先ほどから言いますように、首長が勝手に決めれるものではなしに、そこの職員団体とも交渉もするし、合意に達しなければならないし、しかも議会の承認も要るし、それに対して批判があればまた監査請求も出てくるし、それでまた住民から批判されればまたそれはそれなりにそれぞれの自治体自身が考え処理されていくことです。それを上の方から強制をしていくという、そういうやり方では、地方自治の芽を摘んでしまう。私は地方自治の根本にかかわる問題だからきわめて大事な問題だと思うんです、そういう点から。  そこでもう一つ、個別の行政指導の問題ですけれども、あの通達を見ますと、いま上回っている団体の問題は先ほど聞きましたが、先ほどの答弁ですと、具体的に報告を求めて、計画の提出を求め、それに対して個別指導をやって、そうして自主的に改善をしてもらえばけっこうだけれどもそれを聞かなければ財政措置、また、財政措置はまだどうするか決まっていないけれどもと、こうなるわけですね、段取りは。そうすると、まさにそういう意味では、いまの財政措置は何をするかそれは決めてないけれども、言うことを聞かなければ最後に財政措置をやりますよということを含めて、去年の暮れのあの百五十三団体に対する指導の通達というものは出されているわけですか。
  169. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 昨年の通達は、まず百五十三団体について給与水準が高いことはラスで見ても当然わかるわけでございますが、そこで一体なぜ高いんだろう、どういうところを直せばいわゆる適正なものになるのかということをまず知っていただきたい、分析をして知っていただきたいということが第一点でございます。それで、それがわかればおのずとどうすればいいかということが出るわけでございまして、それらにつきましては自主的に自律機能の発揮によって直すべきところは直していただきたい、こういうことを言っておるわけでございます。  いまお話しのいわゆる財政措置につきましては、あの通達では触れていないところでございます。
  170. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから結局、あなた方の方が個別指導をやって、それで従わなかったら最後は財政措置をするというわけでしょう。
  171. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 先ほどから申し上げておりますように、私ども財政的な余裕があるということでやっておりますのは、期末・勤勉手当のプラスアルファというものがとらえやすいし対比しやすいということでやっておりますということでございまして、給与水準が高いということで、いまたとえばラス指数等を基準にしてやっておるわけでもない。そこで、百五十三団体についていま個別指導をやって、公務員部を中心に適正化について指導をしてもらっておるわけでございまして、私どもとしては、地方団体がまさに自主的に自律的にこれをおやりになるということを期待しておるわけでございます。そのために適正な計画を立てて、そしてそれを計画的に遂行していくということをお願いをしておるわけでございまして、給与のいまの水準というものは、御指摘のございましたように、過去にいろいろな実態上理由があって今日に至っておるわけでございますから、必要なものもあればまた昇給短縮なりわたりとかいったようなものの積み上げもありましょうし、それは過去のものがありますから、一遍でいまその状態にあることを直ちにけしかりぬということでやるということをしておるわけじゃないということを申し上げておるわけです。  ただ、自主的に自律的にいろいろと計画を立てておやりになる場合に、こういう形でいたしますというものを本当にそのとおりやらないでほったらかしておくといったような場合には、一体国民の批判としてはどういうことになるんだろうか、いろんな事態が出てくると思います。そういう状況を見た上で、一体どうしていったらいいかということを今後実態を見ながら検討をいたしたいということでございまして、具体的にどうするというところまで詰めておるわけではございません。
  172. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう一遍はっきりしてほしいんですが、報告を求めて、それで助言指導をなさる、それに対して、われわれの方はこうこうこういう理由でそれは納得できません、聞くことはできませんと言うても、別にどうもないですね、それじゃ。
  173. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 現状を分析していただいて、問題点がわかればその段階で、いや私のところは何もやることはないんだという正当な理由があれば、そういうこともあり得ると思いますけれども、やっぱり直すべきところがわかれば私のところはほっておきますということはないものというふうに私どもは期待をいたしております。
  174. 神谷信之助

    神谷信之助君 正当な理由があればとおっしゃいますが、正当な理由は結局公務員部長の判断じゃないですね。当該の知事さんなり市町村長が、おれがやっているのは間違っていないと。それはけしからぬと言うわけにいかぬわけでしょう。おまえのところの給料は高過ぎるんだ、それは間違っておる、けしからぬと言うわけにはいかぬでしょう。
  175. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 先ほど申し上げましたように、いわゆる非常に高い初任給でありますとか、あるいは運用昇短でありますとか、あるいはいわゆるわたりでありますとか、そういうようなことは私としては直していただかなければならぬものだと思っておりますし、したがいまして、百五十三団体につきまして、正当な理由といいますか、ほっておいてもいいという正当な理由はほとんどないだろうと思っております。したがいまして、当然各地方自治体といたしましては、自分のところの給与水準というのは、今日このような批判を受けておる時期でもございますし、直すべきところはやはり直すというふうな自覚を持っていただきたいということを私どもは申し上げておるわけでございまして、その期待に私はこたえていただけるものだと、このように考えておるということを申し上げたわけでございます。
  176. 神谷信之助

    神谷信之助君 特に県、それから指定都市、それから相当のところではそれぞれ人事委員会を持っているわけでしょう、その人事委員会が、あなた方の言い方で言ったら役に立たぬ人事委員会もあるかのような、非常に無視されたような答弁もありましたけれども、それが地方公務員法に基づいた権限に基づいて調査をし、そして勧告しているわけですよね。同時にそれは、片一方では首長が判断をし、そして職員団体側と合意に達した   あるいは達しない場合もありますけれども、そして、最終的には議会の承認を得る、こういう状況ですよね。  たとえば、これは埼玉の例ですが、国家公務員の初任給がいま高校卒で八万五千九百円ですか、大学卒が十万六千九百円です。埼玉県の初任給は高卒で九万一千五百円、大卒が十一万二千六百円。ですから、ラスで言うと高卒の方が一〇六・五ですか、それから大卒が一〇五・三。ラスというよりは国公の初任給に対する比率ですね。ラスと言うと若干語弊があると思いますけれども。まあそういうことになる。ところが、実際に埼玉県の労働部で調べた県内の二百九十九名以下の中小企業の労働者の平均賃金、これを見ると、高卒の男子で九万八千七百四十六円ですね。だから、国公の初任給に対して一一四・九ですよね。それから男子の技術者で十万二百五円、一一六・六です。それから女子が九万五千二十一円、これでも一一〇・六になるわけですよ、国家公務員の初任給に比して。それから大卒の場合は、男子の事務職員で十一万七千八百三十円ですから一一〇・二、同じく技術職員で十一万九千八百三十五円ですから一一二・一というように、国の初任給に比較して——二百九十九人以下というんですから県庁の職員数からいうとうんと小さいわけでしょう、中小零細企業のそういうところの平均賃金、いわゆる大企業と中小企業の賃金格差が開いてきているというのは御承知のとおりだと思うんだけれども、その低い方のやつに比べても国家公務員の初任給基準というのは低いんです。これは地域的な格差というのが出てくるわけですね。東京に近いわけですからね、一時間半、二時間通勤にかかっても東京へ出てくる人がうんとふえてきておるわけでしょう。それだけに埼玉の中小企業の場合、それだけの賃金、初任給を出さなければ来ないという面も出てくるんですよ。それは埼玉県の県庁でも埼玉の市役所の場合も同じ条件です。  だから、そういういろんな原因があり、その中で優秀な人材を吸収をしてそして効率的な行政を進めるというのはあたりまえだということになると私は思うんですよ。だから、民間でも技術を中心に運用しているそういうところでは高賃金のそういう老練な技術者を集めるでしょう。それから、いわゆるコンベアシステムなんかでやっていると、これはもう技術は要らぬ、できるだけ低い賃金の人をたくさん雇う、こうなるでしょう。だから、そういう意味では、役所の仕事を実際に進めていき、しかも多様化しているいまの住民のニーズにこたえて、そして本当にそういう役割りを果たし得る仕事を自主的に自発的に創造的に考えてくれるようなそういう行政事務労働者というのをつくろうとすれば、ほかに競合しているわけですからね、だから、そういう水準というのは、当然これはそれぞれの地域なりそれぞれの首長の考え方によって変わってきてあたりまえなんです。それに従わないやつはけしからぬという、そういう考え方は、これはもう地方自治は要らぬわけですよ。皆自治省の出先にしたらいいんですよ。自治省の埼玉県出張所にしたらいい。そうじゃないんですよ、やっぱり。そこのところが私は、いまやられておるのは承認できないというんですね。  実際に、確かに公務員に対する風当たりは強いですよ、いま。これは結局景気が悪いからですよね。高度成長のときは大体公務員になり手がないわけです。逆に公務員の優秀な事務職員、技術屋でも、僕らの仲間でも、大分民間に引き抜かれていきました。いま景気が悪いですからね。だから、どうしても公務員の方は、あれは終生保障されて、倒産はないし結構なことやという、そういう一般的風潮というのがあるのは事実なんです。それで、そういうのはありますし、しかも実質所得がずっと減ってきているんですからね。ますますそういう点の気持ちというのは起こるであろう。  しかし同時に、やっぱりそれを助長しているのは、私は、この国会でも次々と出ていましたが、高級官僚が天下りをし、そしておみやげまで持っていって公共事業を食い物にするというような事件がどんどん出るわけだ。報道される、われわれもどんどん指摘する、次から次出てくるんだから。あるいはやめた高級官僚が公団、公社を渡り鳥しながら、平公務員ですと一年勤めて一カ月しか退職金の計算にならぬけれども、月数で計算をして、二、三年で何千万というような退職金をもらっていく人がどんどんと出て、それが報道されるわけでしょう。それは本当の一部の高級官僚、一部の人にすぎないんだけれども、それが全公務員の姿かのように思われるわけですね。だから、そこからずっと批判、攻撃というものが出ているわけですね。  だから、細かいことで言えば、朝の出勤時間も、八時半出勤やのに八時半から八時四十五分じゃないか。八時半を守っていないのが多いと、こういって数日前のテレビにも出ていました、東京都のが。あれは、ラッシュを緩和するためにわざわざ時間調整をやっているだけの話です、実際は。そうせざるを得ぬわけでね。言うたら、公務員労働者の方が犠牲になっておくらして来る。時間をずらせて、ラッシュを少しでも緩和をするというので数年前からとられてきているやり方です。それが、いかにも出勤時間は怠慢やという宣伝にされているんでしょう。  そういう宣伝と相まって、いま皆さんの人件費抑制のいろんな仕事というのがやられる。しかも、それ現場で実際に聞いてみますと、もう笑うに笑えぬわけですね。市の人事課長同士が雑談で言っているのは、おまえのところ正直に出すさかいや、ちゃんと出したらラスは減らせぬのや、公文書やからぱあんと判こ押してあったらそれをどうのこうの見いへんのや、おまえちょっとばか正直と違うかという話がやられているんですよ。  それから、急激に都市開発が進んだようなところでは、小学校卒で三十五年、四十年ずうっと勤めた人が総務部長とか部長クラスで三、四人残っているでしょう。その人がおらぬようになったらラスはもう二ぐらい下がるんだね、ばっと下がっちゃう。だから、あれは百五十三団体、一一五ぐらいでしたか、あのすれすれのところというのは、もう助役にするとかどこかへ出向さすとか、こうやればよかった。おととい厚生省と年金事業団との出向の問題が同僚委員から問題になっていましたけれども。    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕 だから、要領のいいところは住宅供給公社とかいろんな団体に水準の高いやつは出向さして、そして全体のラスを抑えると、人員も抑えることができる、こういう処理もできるわけです。  そんな報告を集めてやってみて一体どんな効果があるのか。それよりもっと大事なのは、私は、地方自治をどうやって守り育てるか。それは、中には高いところもある、むだもあるでしょう。市長が選挙に勝って、それで自分のお気に入りを秘書に連れてきて、それでべらぼうな賃金を出しているところもありますよ。それは長続きはしないんです、そういうものは。必ず住民の批判が起こってそれはやめざるを得ぬという状況になってきてます。時間はかかるけれども、そういうことで地方自治というのを大事に育てていくということを、人件費の問題も含め、その地域地域の決められた財源の中でどのように財源を捻出しながら住民の要求にこたえていくのかというのは、それこそ自治体に任せるべきだ。  私は、そういういろんな話を聞いていると、そんな報告に基づいて個別指導するというのはまさにナンセンスだ、おやめになった方がいい。それこそむだな仕事ですよ。税金のむだ遣いもはなはだしいと私は思うんだけれども大臣、この点どうですか。
  177. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) おっしゃることもわからぬではないんですが、大体自治省というのは常識的な役所でございまして、わりあい社会通念のようなものを大切にしているから、地方に対する呼びかけでも、いろいろ総合的に調べた上で、その上で判断して指導するという形をとっていますので、給与に関する地方団体に対する指導でも、そうピントの外れたようなことは行っていないと思っております。
  178. 神谷信之助

    神谷信之助君 大臣がそうやと言うて承認してしもうたら部下の職員は立つ瀬がないというようなことになりますからね。それはそうおっしゃらざるを得ぬだろうと思いますが、私は、本来地方自治をどう育てるか。まだ生成過程ですからね、誕生して間もない、本当にまだそういう意味では乳飲み子とも言えるような、あるいは幼年期というか、まだまだそういう段階です。だって財政的にひとり歩きできないんだから。そういう状況ですから、それをあえてそういう指導で画一的な方向でやろうというのは大きな間違いだと思う。  それで、あの通達で、「対象団体」の最後の第五項でしたか、都道府県がそれに類似するような団体についてはやってもよろしいというやつがありますね。あれは何ですか、その県なら県で二つなり三つなりがあの百五十三の中に入っていると、それ以外のところは全部ということですか。
  179. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 一つには、先ほどお話とも関連をいたしますけれども、たとえば、一部の地方公務員がすべての悪い代表であるというようなお話もあったわけでございます。一部の高過ぎる団体が結局すべての地方団体の給与が高いというような印象を一般に植えつけておるということも、これも否めない事実であろうと思います。私どもはそういった意味で、本当の意味の地方自治権というものを拡充をしていくために、どうしてもこの一部において高過ぎる給与というのがいわゆる地方自治不信を招きかねないというようなところからやっておるわけでございます。  たしか前の委員会であったと思いますけれども、百五十三については自治省が直接内容を把握をして適正化を進めていただきますということを申し上げたわけでございます。それはそうといたしまして、もちろん低い地方自治体もあるわけでございます。ですから、残りは全部県でやってもらうという意味ではございませんで、やはりそれに準ずるような、あるいはそこまで至らぬにしても高過ぎるというようなところにつきましては県の方で指導を進めていただきたい、こういうのがいま御指摘の最後の部分でございます。
  180. 神谷信之助

    神谷信之助君 いや、だからその点は、ラスパイレス一〇〇を超える団体は全部やりなさいと、そういう趣旨ですかと言っているんですよ。
  181. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 私どもは、ラスパイレス一〇〇でなくてはならぬということを申し上げたことはございませんので、それはそれなりに各県あるいは各自治体が自主的に御判断になる部分があろうと、こういうふうに考えております。
  182. 神谷信之助

    神谷信之助君 名前はあえて言いませんが、ある県では市は全部やっているんだね。そこの県では、あなたのところのランクの中には二つだけが入っているんだけれども、残りの市は全部同じように今度は県がまねをしてやる。これには基準も何もないわけですね。そういう点ではこれは若干あなた方の趣旨とは違うわけでしょう。
  183. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 内容的に、正すべきものがあるものを正していただくということにおいては、私どもの趣旨と異なるというところはございません。
  184. 神谷信之助

    神谷信之助君 何ですか、内容的には異ならぬと……。
  185. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) その団体の給与の制度なり運用といったものの内容的に正していただくべきところがあるということでおやりいただくならば、私どもの方針と何ら変わるところはないということでございます。
  186. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、給与の決定、それから給料表の運用、これは実際はそれぞれの自治体の条件に応じて判断をして運用をするということは絶対許されないことだというわけですか。国のとおりやりなさい、それ以外のことは絶対許さぬと、そういうことをおっしゃるんですか。
  187. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 原則は国と同様の方向でやってもらいたいと思っておりますけれども、そのほかのことがすべて許容できないものであるというようなことを申し上げたつもりもございませんし、また、そういうつもりもございません。ある程度地方自治体のいわゆる自主的な運用と申しますか実情と申しますか、そういうものに合う形で運用していただくということは、これは差し支えないものだと思っておりますが、余りそれがかけ離れて非常に高過ぎるようなことになってまいりますと、これはやはり問題があると、こういうふうに思っております。
  188. 神谷信之助

    神谷信之助君 高過ぎるかどうかというのは自治省が判断すべき問題じゃないと私は思う。それは、それぞれの地域の住民が判断します。京都でもそうですよ。町で、古い職員もおるし、あれで百人足らずの職場ですからね。そして四等級しかないわけです。そうすると、長くなってくると一等級になっちゃうわけです、半分ぐらいが。だけれども、一等級といいましても国の基準で言うたら五等級でしょう。五等級といったら、せいぜい二十万台の給料表ですね。だから、自分の給料表を持ってずっと町民の間を全部回って、これがどうして高いんですかと。問題は、等級の上がないからそれだけの話であって、そういう話がある。あるいは、宇治市でも盛んに議会で議論になってやっていますけれども、みんな自分たちの給料表持って市民の戸口を回って説明をしたら、いや、あなたそんな低かったんか、じゃ、高いのはだれなんやと。それは局長だとか特別の人もありますよ。これも本当に高いのかどうかというのは、私はそれ自身も疑問なんですよ。それは首長の判断とわれわれの判断が違うかどうかは別にしても、首長が必要と思って、また、それだけに値するとしてそれだけの賃金を払うわけですから。  それで、そのことについて文句がある、問題があるならば、それは市民が主人公なんだから判断をすればいい。それを全部国の基準に、あるいは若干の運用の程度まではいいけれども、高過ぎるところがあるのはけしからぬという考え方自身は、まさに何といいますか、自治省なり政府が自治体の上におって、そして自分たちの決めた枠の中に抑え込むんだ。これでは地方自治じゃない、昔の天皇制官僚時代の市町村とまでは言いませんけれども、まさにその方向になるだけの話で、だからこの点は私は根本的に意見が違う。これはまた実際問題として、先ほど言いましたように、きわめて実際にはナンセンスな問題がどんどん起こっています。  こればっかりやっているわけにいきませんから次の問題に移りますが、その点ひとつ実態にも即し、しかも基本はやっぱりいま言いましたように、地方自治をどう守り、発展をさせるか、その判断は、主人公というのは住民なんだからということを、しかもそれを支えていく上で、そこで働く労働者の自主性、創意性をどう発揮をさせるか、それにこたえるようなやっぱり賃金体系なり賃金水準というものを考える必要があるという点だけを指摘をして次の問題に移ります。  臨調の方、お待ち願っていますので、次の地財計画の問題では先に臨調の側の御意見をずっとお伺いして退席願うと。公務員部長の方はもう結構です。  それで、あなたがおいでになる前に、先ほどからも若干出ておったんですけれども、あるいは当委員会で前にも出ているんですけれども報道によりますと、地方財政に余裕があるとか地方財政は放漫だとかそういう考え方が非常に強いという、そういう報道があるんですけれども、事実かどうか、事実とすればどういうことなのか、理由はどういう点にあるのかという点をまずお伺いしたいと思います。
  189. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 同じことを繰り返してまことに恐縮でございますが、第三部会の現在の審議の状況は、具体的に詰まった話がございませんで、いわば方向づけの論議の中途の過程であるということを前提に御説明を申し上げます。  地方財政の問題についてはもちろんテーマの一つに挙がっておりますので、いろいろな御議論があるわけでございますが、私の承知いたします限り、たとえば地方財政に余裕があるから何らかのその手段が必要だというふうな方向での議論が部会の先生方の大勢を占めているとか、そういう雰囲気が強いとかというようなことはございません。
  190. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは、次の問題は地方交付税ですね。この臨調第三部会の、報道されているものしか知りませんから申し上げるんだけれども、それによると、改革素案の要旨の中に、「低成長期に対応した地方財政システムの合理化」という項があって、地方支出水準の長期的安定のために交付税年度間調整制度の導入等の検討の必要という問題が報道されているんですがね。これは実際にそういう意見があるのか、あるいはそれはどういう趣旨なのかという点、いかがですか。
  191. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 先生が御指摘報道と申しますのは、恐らく本日の朝日新聞ではないかと思いますが、申し上げましたとおり、格別方向づけが固まった問題はありませんで、まあ新聞報道は恐らくはいろいろな論議の過程で部会の、あるいは分科会の先生方の御議論をその都度事務局の方で整理をして議論の素材を提供するという、これは本来の私どもの仕事でございますので、御議論の都度そうした整理メモ的なものをつくっておるわけでございます。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕 そうしたいわば論議の過程——いつの段階かは別といたしまして、それが新聞紙上に間々報道されるということがございますので、そういう意味で御理解をいただきたいわけでございますが、部会なり部会のその構成員の先生方は御案内のとおりいろいろな御経歴なりお立場の方がおいでになりまして、したがいましていろいろな御意見をお持ちであるということは、これは当然のことでございまして、御議論の過程でその新聞報道にありましたような年度間調整というような問題が一つの物の考え方としてあり得るのではないかという問題提起と申しますか、そういう意味で御意見があったことは事実でございます。  なお、意見の集約とか結論とかという意味ではございませんので、それをめぐってのいろんな御意見が、いろいろやりとりはあるわけでございますが、過程の議論の詳細につきましては、この段階で御説明申し上げることはお許しをいただきたいと思います。
  192. 神谷信之助

    神谷信之助君 この年度間調整というのは、本来個々の地方団体がやることになっているんですね、いまの制度はね。もちろん交付税制度地方財政法及び交付税法をつくる前の段階の地方制度調査会では年度間調整の問題も出ていましたけれども、結局は個々の団体年度間調整を行う、いわゆる国ではそれはやっちゃならぬというように現行法はなっていますよね。だから、それにあえてメスを入れようというのは、結局のところは交付税率の引き下げをねらっているのではないかといううがった見方もあるし、しかし年度間調整やるといったって自然増ばかりじゃないんで、自然減の、減収の場合もありますからね。だから、そういった点を考えたりしますと、この年度間調整の導入というのは、本当に現行の地方自治制度をよくお知りになった上でのお考えなのかどうかという点が一つ疑問があるという点は申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ交付税の均てん化を図ろうという話が出ているというんですけれども、これが事実かどうか。均てん化を図るというのは一体具体的に言うとどういう方法をお考えになっているのか、また、何のためになさるのかという点が疑問なんですが、この点はいかがですか。
  193. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 先ほども申し上げたような趣旨で、地方財政の合理化と申しますか、そうした観点で部会のメンバーの方々の中にいろいろな御意見があるということでございますが、その中の一つに、先生先ほど指摘のような均てん化というふうな問題提起があったということでございまして、私どもの理解では、その御意見をおっしゃっておられる先生の感覚は、恐らくは、いわば高度成長期から安定成長期に入って、地方財政全体と申しますか、国の財政も同様でございますが、国、地方ともにパイが小さくなってきておる、そのいわばパイの分け方と申しますか、そういう趣旨で、全体の枠組みの中での均てん化ということを少し考えてみたらどうだろうかという意味の問題提起ではないかというふうに理解をしております。
  194. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまおっしゃる御意見ですと、そういう御意見は結局パイが小さくなったものだから交付税率の引き下げでいけばいいじゃないかということにもつながってくる考え方になってくるので、これはわれわれ地方財政問題を扱っている者としてはきわめて遺憾というか反対せざるを得ない。実際の地方財政というのはきわめて厳しい状況にあるというように考えています。  その問題は別にしまして、次の問題をお聞きをしますが、先ほども同僚委員からこれは自治省の方に質問があって財政局長が答弁をなさっていましたが、臨調部会の中で、この基準財政収入額の算定の基準税率を、府県八〇%それから市町村七五%にしておるのはけしからぬ、これは余裕があるんじゃないか、一〇〇%にしたらどうなんだという御意見があるんですけれども、しかし仮に一〇〇%にしますと、これはそのかわり使う方も全部自治省で握って計算をし出さなきゃいかぬ、そんなことは不可能な問題だし、それから自治体ですからね、国の出先ではないんだから、それぞれの地域に合った政策がとられる、それに必要な財源というもの、この余裕というやつがなけりゃならぬわけだし、もう一つは、逆の面から言うと徴税意欲を失わされるという問題があるんじゃないかという財政局長は三つの点から反論されておりましたけれども、こういった点についてはどうなんですか。そういう御意見が出ておるようだけれども財政局長にかわっていま私がさっき答弁されたのを申し上げたんだけれども、そういう点の御理解のほどはどういう状況なんですか。
  195. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 何度も申し上げますとおり、具体的な論議の過程につきましてはこの段階ではお許しをいちだきたいわけでございますが、御指摘のような意見がいろいろな多くの御意見の中の一つとして部会において問題提起的な意味でなされておるということはそのとおりでございます。しかし、これにつきましては、当然のことながらいろいろな角度からいろんな議論が可能な問題であろうと思いますし、現に部会におきましても、先ほど先生御指摘のような観点からの御議論も出ておるということを御理解いただきたいと思います。
  196. 神谷信之助

    神谷信之助君 それから、東京都が特にねらわれているようなんだけれども、東京都を初めいわゆる不交付団体がありますね、これは余裕があるんだから超過財源があるはずだ、だからこれを吸い上げて全国にばらまいたらいいという考え方もあるように聞いているんですが、これは事実かどうかという問題。  私は、そんなことをすればまさにそれこそ地方自治の否定だし、われわれから言いますと、東京都は逆に不交付団体という扱いのため義務教育費国庫負担の問題やあるいは譲与税その他いろいろの問題で逆のいじめを食ってやっておる。だから決して富裕団体というようなことが言えるどころの騒ぎじゃない。逆に都区合算方式をやめればもっともっと交付団体がふえてくる。そういう議論はいままで当委員会でも何回か繰り返しているんですけれども、こういうような考え方というのは、こっちに余っておるやつをこっちへ回したらいいじゃないかというようなことでいきますと、それぞれの自治体の特殊性なり、それからそれぞれの自主性なり自律性というものを否定することになるんですね。そういうように思うんだけれども、そういう意見はやっぱりあるんでしょうか。
  197. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 問題提起的な意味でそうした御議論があったことはそのとおりでございますが、これに対しましては、ただいま先生がまさしく御指摘なさったような観点からの後意見が展開されておるということも事実でございます。
  198. 神谷信之助

    神谷信之助君 それからもう一つは、先ほど給与問題は言いましたが、いわゆる上乗せ福祉に対してそれは超過課税をしたらいいじゃないかという議論があるというようにも聞いていますが、これは増税なき行革を進めるとおっしゃりながら片一方ではそういうところに対しては超過課税をやったらいいじゃないかというのもその線では矛盾をするし、もう一つは、やっぱりそこの首長さんのそれなりの、その地域の条件、人口構成あるいは要求の度合い、そういったものに応じて議会の承認を得てやられることですわね。それに対して、逆に懲罰的なそういう態度、超過課税でなければ福祉課税ということになってきますわね、給与費を同じで。だからそういう考え方自身、私は地方自治の原理から言うとまさにけしからぬ議論だというふうに思うんですが、この辺はいかがですか。
  199. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 御指摘のような問題についても、論議の過程で問題提起的な意味で御意見があったわけでございますが、先ほども申し上げましたとおり、こうした問題についても同じく、まさしく先生御指摘のような観点から非常に大きな問題であるというような御意見もかなり強く出ているということを申し上げておきたいと思います。
  200. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、一昨日の当委員会質問の中で特に、臨調はいろいろ御苦労なさって調査もし、ヒヤリングをし、あるいは議論なさっているんだけれども、その中身、過程ですね、これがなかなか実際には明らかにならない。だから先ほども私は、報道に基づいてその中で感じた点を、時間の関係もあるから全部は追い切れないんだけれども、幾つかの重要な問題は地方自治に関する問題として提起をしたんだけれども、しかしそれに対する御答弁も、こういう意見もあるしそれに対する反論もありましたということであって、これはここでやっと、そういう二つの相異なった意見があり、そういうことで議論があるということがわれわれはわかったわけです。  報道の限りでは、いま言ったように、交付税率を下げられないかとかあるいは超過課税とか、いろいろあるんですよ。そういうことでは本当に国民の前に公開をされた議論が進められているということにはならない。本当に国民の納得と理解の上で行政改革を進めようとすれば、その議論の過程、その議論それぞれの根拠、こういったものをもっと大胆に国民の前に提起をして、そして国民的な議論を展開をする中でそれらをくみ上げて答申をつくっていくということになれば、まあ賛成もあり反対もあるにしても、ある程度の国民的なコンセンサスを得やすい条件というのはつくられるわけでしょう。ところが自治省に聞いてもなかなか中のことはよくわからない、公式には言えないと。いろいろ実際には知っておっても公式には言えないと。でもやっときょうは来てもらっていろいろ聞いて逆の意見もあるということはわかった。しかし、どっちがどうなっているというのはまだわかりませんと、こうなっているんです。  だからそういう問題を、そういう二つの意見なら二つ、三つなら三つの意見があって、何を根拠にしてこう言われているというのをもっと明らかにしてもらえば、国会でも議論するし、あるいはまたそれぞれの自治体関係者の中でも議論になるし、あるいはまた国民自身直接関係のある問題は国民の問題として議論になるでしょう。それができていないのですね。この点は一体どのように臨調の中ではお考えになっているのですか。とにかくそれまでの過程は一切抜きにして、結論が出てから結論をばんと出す。そして後は、政府は尊重すると言うているんだから尊重しなさいということになってしまったら国会も何もないですよ。ファッショ的な運営だと言わざるを得ないですね。だから、その辺のところは臨調の中ではどういうようにお考えか、お伺いしたいのです。
  201. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) 私は、第三部会担当の主任調査員ということでございまして、ただいまの先生の御意見について直に御説明を申し上げる立場にはもちろんございませんが、外部への議論過程の公表という問題につきましては、本調査会においても先生方でいろいろ御議論がかねがねございまして、基本的には、私ども承知しておりますところでは、議論の過程がすべて外部にそのまま公表されたときに、いわば臨調として、調査会及び部会を含め自由潤達な議論と申しますか、それの阻害要因になり得ることもあるという趣旨で、議論が揺れている段階の状況をそのまま生でストレートに出すということについては、調査会の御判断は必ずしも積極的ではないというふうに承知をいたしております。  なお、部会とか調査会、最近は連日ございますが、報道関係に対しましては議論の状況のポイントについてはその概要をその都度発表するということはいたしております。
  202. 神谷信之助

    神谷信之助君 だけれども報道をされているから、報道機関にはおっしゃっているから出るんだろうと思うんだけれども、たとえば「年度間調整制度の導入等を検討する必要があるのではないか」と、こういうことですからね、これはいいのか悪いのか。このことをせいという根拠は一体何なのか。それに対して反対の意見はあるのかないのか。反対はどういう理由を持っておるか。さっぱりわからぬ。こんなことを言われたって公表されたことにならない。何が議論の対象になっているかということはわかります。しかし、何でそういう議論が出るのかというのはわからぬ。  私は、確かに議論の過程を全部出したらいろいろ混乱をするという意見もあるかと思いますが、あれだけ何回もヒヤリングなさり、それから関係省庁から資料を求め勉強をされたわけですから、出てくる意見というのは思いつきの意見ではないはずだ。それなりの根拠を持って意見を出されるのだろう。だから堂々とそれは公表したらいい。公開したらいい。それに対して議論をして、なるほどおれの思い違いだったということになればそのことは明らかにしていく。そういうフェアな態度を公開の条件の中で進めて初めて民主的な行政改革という方向がつくられていくんだというように私は思うんですよ。  だけれども、第三部会の主任調査員の陶山さんにそのことまで言うてもなんですから、私はその点を特に申し上げておきたいと思います。おとといも大臣には、まさにあれは密室論議じゃないか、何が国会だと言って食ってかかったんだけれども大臣は閣僚の一員ですから、臨調をつくった責任の一端を持っておられるから、だからそう言って文句を言ったんだけれども、その点をひとつ率直に臨調の内部にもお伝えをいただきたいというように思います。
  203. 陶山皓

    説明員(陶山皓君) ただいまの先生の御意見、当委員会において強いそういう御意見があったということは上司にも報告し、かつ、何らかの形で、たとえば私が担当しております第三部会の先生方にもお伝え申し上げたいと思います。
  204. 神谷信之助

    神谷信之助君 御都合があるようですから、それでは臨調の方お引き取りいただいて結構です。どうも済みませんでした。  そこで、いまのなにを背景にしながら自治省の方にもひとつお尋ねをしますが、一つは、年度間調整制度の導入問題ですよ。先ほども同僚議員の質問があって、それはその都度法的措置を行ってやっておりますという答弁を大臣、局長おっしゃいました。現実、現在の地方財政法及び地方交付税法は、自治省における年度間調整というのは認めていない。それぞれの地方団体年度間調整をしなさいと、そういう趣旨で組まれていますわね。したがってその都度特別立法された場合もあるし、それから今度は中に入ったわけですね、交付税法案の中に、千百三十億ですかの部分はこうしますよと書いて、それで承認を求めるということになっているんですけれども。これはあなた方の方から言うと、まさに、何といいますか、将来予想される償還財源に、現在の財政状況から考えたら、ちゃんとこっちで扱かっておいた方がいいだろう、その方が自治体の利益になるだろうという判断で、そういうことなんだけれども、いまお聞きのように臨調の方の考え方というのは、年度間調整制度の導入というやつは、どうやって交付税率を引き下げるかと、そういうねらいも一部ではあって、そういう意見も出ているという話ですから、百八十度違うわけですね、具体的な扱いというのは。そういうように私は思うんですが、この点まずいかがですか。
  205. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 率直に申しまして、交付税における年度間調整というのは具体的にどういうふうにするのか私どもなかなか理解がしにくい。  と申しますのは、毎年度国の予算において交付税については組まれるわけでございまして、景気により年度間に税の増減があったところで、その予算は一応執行することになっておりますから、その調整というのはどういう形でするのかは私どもよく理解できない。時たま過去やりましたのは、補正予算がわざわざ組まれるということで、そこで出てきた新しい財源をどう使うかということでございますから、その点については一々国会の御承認を得た上で措置をしておるということで、その形では年度間調整をやっておる。ただ、制度、仕組みとして、いかなる事象が起こったときにその制度に乗ってこうなるんだといったような形の年度間調整というのはどうしてとれるのか、ちょっと私の方も、いろいろ中で議論してみてもなかなかよくわかりにくい点がございます。  あるいは、その年度途中において税の自然増収等があるからといって、財政計画全体について、単年度主義でなくてその次の年度にわたって財政計画全体を見通してやるということなのかどうなのか。そうだとするなら、いまの地方財政計画の基本的な性格にかかわる問題でございますし、また、その場合でも、じゃ具体的にどうするんだとなると、なかなか仕組みについての具体的な手法というのは見出しにくいのじゃないかと、私ども常にこれいじっておってそう思うのでございますけれども、よくわかりません。  だから、どんな形で出るかわかりませんが、意見を聞かれれば私ども実態お話ししたいと思いますし、出たとしても、それは検討して果たしてできるものかどうかわかりませんので、それ以上をこちらとしても申し上げにくいわけでございます。
  206. 神谷信之助

    神谷信之助君 これはおかしいじゃないですかね。法のたてまえから言うと、自然増収がある、自然減収があると、それは翌年度に精算する、あるいは翌々年度にかかる場合もあるでしょう。大体法のたてまえから翌々年度までに精算をしなければならぬ。そこで、たとえば増なら増で、五十六年度に自然増があって、それが五十七年度にすぐわかるなら五十七年度交付税財源にプラスする、財源に入ってくるんだし、五十七年度に間に合わぬかったら遅くとも五十八年度に精算をしなさいと。減の場合もそうですわね。それは交付税法上はっきりしているじゃないですか。どうしたらいいかわからないじゃない、そうすることになっているじゃないですか。
  207. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) いまおっしゃいました意味でのいろいろな、精算とかどうとかという方式はできているわけでございますから、それ以外にいかなる方式で、たとえば年度途中に非常に税の自然増収が何かの形で景気がよくなって極端に伸びた、その年の財政計画ではこれぐらいと見ておったけれども思いのほかよく入った、それは余裕があるんだから翌年度で何らかの仕組みで、あるいは交付税制度にはね返すのかどうなのかわかりませんが、そういう形での新しい年度間調整方式というようなものを考えておられるのだとするならば、それはなかなか具体的な問題としては私どもとしてもいい手法というのが考えにくいという意味で申し上げておるわけでございます。
  208. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあそこまでは現行交付税制度の中ではちょっとないですね。たとえば年度間に補正を組んでそれで自然増が出た。本来は、交付税のたてまえから言えば配分せないかぬわけです。その配分する基準はどうするかというのは別表にはありませんからね、だからそういう意味では配分の基準をどうするかというのを、これは実際問題としてはどうするかという検討をしなきゃならぬ問題。その辺がわからぬから来年度へ持ち越しという措置を去年、おととしの補正のときはなさったわけでしょう。  しかしわれわれは、本来は、新しいそれだけの交付税財源ができたわけですから、配分し得る時間的余裕があれば、それはその配分の基準というものを、それこそどういう算定にするか、これは私自身も別に案を持っているわけではないんだけれども、一定の基準に基づいて配分をして、そしてそれぞれの地方団体年度間調整措置をするとかあるいは積み立てをするとかという措置なり何なりをすべきなんだという点は、前の補正のときに私も主張をしたわけですよ。  今回の場合は、二千九十八億円というのは、利差臨特及び分離課税等のもらうべき根拠があったやつだからもらっておくと、それで、そのうち一千百三十五億円は、言うたら余裕財源というか留保財源というか、あるいは国に貸したというか、とにかく留保しておく。後になって取れぬようになったらかなわぬからね。そういう意味では、地方団体の財源全体を確保するという意味では、私はその意味ではプラスだと思う。いままでの慣例を断固主張をしてその分を確保したという点では評価をする。ただ問題は、その残った千百三十五億を、留保財源というちょっといままでにない新しい手法を使って、そして将来にやるというのは、これもいま言った交付税制度の趣旨から言うとやっぱり問題があるのではないか。  大体交付税制度は、先ほどもちょっと言いましたけれども、これも前に当委員会で議論をしましたけれども、当時のあれは石原さんですかの解説なんかを見ると、当初は地方制度調査会では自治省の方にそういう年度間調整措置ができる、そういう法律を予定をしてやったけれども、結論としてはやっぱり地方団体の自主性にゆだねるべきだということで現行体制になったという歴史的経過があるでしょう。だから、そういう経過から言うと、最近はその法律をつくった当時の立法趣旨の枠を越えて、自治省サイド、自治省の次元でこの年度間調整をされていくという、そういう例が重なってきているんですね。現象は年度間調整ですから、一緒ですからね、だからその辺が臨調の議論の中にもうまくひっかかって、それだけ余っているならば率を下げたらいいじゃないか、あるいは逆にそんなことは許さないだけのなにをしたらいいというやつでいろんな、八〇%、七五%の話が出たら、どうやって削ったらいいかという話に集中をしてきているということが言えるんじゃないかと思うんですが、この辺はいかがですか。
  209. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) いま最初におっしゃいましたような、私どもが国会にお願いをしてやっておりますいわば年度間調整というようなものであるならば、わざわざ臨調でそれを仕組みとして何か考えたいということでなくても、これはまさに全体の財政状況等を見て国会の御判断を仰いでやっておるわけでございますから、あるいは別の何らかの形の年度間調整ということなのかどうか、そこらが、実体がわかりませんものですから、私どももさっきから申し上げておりますように、どうもどんな形になるんだろうかという中身を、もう少し進捗状況を見て聞きませんとちょっと申し上げにくいということでございまして、本当にいいものがあるならば、それは制度改正としてまさに国会で御審議してもらってやればいい話でございます。ただ、いまのところどんな形なのか本当によくつかめないし、どんな仕組みなのかもはっきりしない段階でちょっと申し上げにくいということを言っておるわけでございます。  それから、千百三十五億を留保して残すからどうも余裕がある、だから交付税率の引き下げも含めて、何かそういうかっこうで調整をしていったらいいんじゃないかということになるんじゃないか、そういうことを考えておるんじゃないかというような御指摘もございました。何かその議論があったのかどうか、つまびらかに聞いてはおりませんが、私はそういう意味で議論がされたようなことは直接的には聞いていないわけでございます。  それと同時に、これはたびたび申し上げておりますが、二千九十八億せっかく借り入れて確保いたしても、千百三十五億を残せばそういう余裕論につながるのではないかということでございますが、私どもの計算でいきますと、前にも申し上げましたが、五十七年度は九百六十三億のいわば不足が出てきた、だからそれだけ埋めればいいじゃないかということになってしまう。そうしますと、従来からの確保すべきものはもう一部要らないというかっこうになる論につながる。それでは困るので、確保するのは確保しますけれども、できるだけその確保したものは有効に使いたいということで、われわれとしては千百三十五億は将来の地方財政に寄与する形で使いたいということでやったわけでございまして、その意味で自治省が地方団体にかわってそういった年度間調整をとるというのはどうかというような御意見もあるわけでございますけれども交付税特別会計において地方団体共同の借金である巨額の借入金残高を抱えておる現状でございますから、やはり地方財政の中長期的な健全化、将来にわたる交付税の安定的な確保に資するという方向で、交付税特別会計自身においても年度間調整を行うことが適当であるという判断に立ったわけでございまして、そのことがもし余裕があるという考え方につながっておるならばわれわれの説明が不足しておるのでございまして、関係の方に私どもいろいろ説明しておるつもりでございますけれども、その点はなお明確に地方財政状況というものは説明をしていく必要があると思っておるわけでございます。
  210. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかしね、いま報道なんかで予想されているところでは、恐らく五十七年度の補正を組まざるを得ぬだろうというようなことが言われたりしていますね、歳入欠陥が生じてきたりして。あるいは建設国債の発行なんかも含めてね。そうしたときに、当然地方税収歳入不足も出てくる。それで大蔵省にちゃんとめんどうを見てくれと言ったって、おまえら千百三十五億あるじゃないかと、こういうことになりかねないし、仮に五十七年度にそれが起こらぬでも、もう明らかになっているように五十八年度交付税財源というのは減ってきますわね、国税三税の減収がありますから。だからそれがあるじゃないかと、大蔵省側から見ますとこう言うのは目に見えているわけだ。千百三十五億円ちゃんと使い残して置いてある財源があるじゃないか、だからまずそれで穴埋めして、その足らぬ分は何とか見ましょうということになりかねないわけでしょう。逆に言うたら、これをいまの現行交付税制度と同じように含めて地方団体に配分をし、そして地方単独事業その他のやつもちゃんと交付税で財源的にも保障していくとか、そのほかいろんなことで保障する。あるいはそれぞれの自治体で財源の積み立てにする。もちろん渡してしまえばその財源があるじゃないかということはなくなるわけです。  だから、ある意味では私はその発想は、実際の将来の交付税特会のそういう借入金償還なんかを考えれば、ちゃんと取るべき、もらうべき理由があるんだから大蔵省に認めさして特会で借り入れるということでやった点は評価をするけれども、その千百三十五億というやつを、いま、言うたら使い残して置いておくということは、実際問題としてこれからの五十七年度の補正なり五十八年度予算折衝のときに逆手に使われるという危険が多分にあるのではないかというように思うんですけれども、この辺はいかがですか。
  211. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 千百三十五億を留保するということは先ほどから申し上げておるとおりでございますが、それは留保しておることが実は国の一般会計にも寄与するということでやっておるわけでございますから、大蔵省において、あの分があるじゃないかということでそういった議論が出てくるとは私どもは思っておりません。そしてまた、そこらをどういうふうに扱っていくかということは、やはり地方財政全体から見てどちらが有利かということなどもこれは率直に私どもとしては考えて運用することになると思いますが、全体として見れば、今回決めた形でしておいて、そしてそれは必要なときに返してもらうという方が先々考えてみましたときに有利であると申しますか、適切であるというふうに私どもは判断しておるわけでございます。  なおまた、今後の財政状況いかんで、五十六年度にある程度国の法人関係税が減ったのにその分に対応する交付税は配ってあるからそれをひとつ考えてくれという意見があるのではないかということでございますが、これは私どもは、それは理論的におかしいのであって、五十六年度地方財政計画に基づいて使うためにこれは当然必要であった金でございます。だから、実際精算するといたしましても、五十六年度は正当に使っておるものでありまして、五十八年度精算するといっても、そのときに、精算される際に交付税がどれだけ要るのか、要するに地方財政収支が五十八年度どうなるのか、その際に必要な事業をするために交付税が幾ら要るのかと、そこの議論になってくるだけの問題であって、おっしゃいますように五十七年度の国の財政状況に関連してそこが問題になることはないというふうに考えております。
  212. 神谷信之助

    神谷信之助君 なければ結構ですが、私はそういう若干の危惧を持っている点だけは指摘をしておきます。  ただ、こういう措置がいまの現行交付税制度から言うとやっぱり特例措置であるし、しかもそれは法の趣旨から言うと外れていると思うからこの法案の中に入れて承認を求めておられるわけだけれども、それが常態化していく、そういう形態について私は好ましいことではない。これは自然減収もありますし、自然増収もありますけれども、しかし自然増収はこれからももう全くないとは言えないわけなんで、そういう点では実際に交付税法に定めるシステムで特例を設けなくて処理できる方法があるかないかというのは、十分にひとつ検討課題として検討してもらいたいというように思います。  次の問題ですが、国の財政圧縮の問題と地方財政計画圧縮規模の点を比較すると、どうも国の圧縮規模よりも地方財政計画圧縮規模の方が大きいんではないかという点を私は感ずるんです。言うなれば臨調路線具体化の特徴をやっぱり今度の五十七年度の地財計画というのは持っているのではないかというように言わざるを得ない状況ではないかというように思うんです。  五十七年度の地財計画は、四十七兆五百四十二億円、前年度比で五・六%増で、これはまあ戦後二番目に低い伸び率になっていますわね。臨調答申では、「地方財政計画において、一般歳出伸びを国の一般歳出と同程度抑制する。」と、国と同じ程度と、「程度に」と言っているんですけれども、国の五十七年度伸びは六・二%ですから、それに比べてみても、片一方は五・六ですからね、よけい圧縮をされている。  それから、これは先日衆議院の地行委員会で三谷議員が指摘したわけですけれども、これをずっと見てみますと、五十年度以降国の一般会計予算との対比をしてみますと、地財計画規模は五十四年度までは国の一般会計規模を上回っていたわけですね。五十五年度以降この国の一般会計予算規模を下回るという状況になってきている。五十五年度では九千四百六十二億の差ですね、低いと。五十六年度では二兆二千三百七十二億、五十七年度ではさらにふえて二兆六千三百九億と、年々国に比べて伸びは抑えられておる、地財計画規模は。これは数字の上で明らかになっているんですが、この点についてはどういうお考えでしょうか。
  213. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 予算規模地方財政計画規模では、おっしゃいますように五十四年度を境に五十五年度以降は地方の方が低くなっておることは事実でございます。しかし問題は、そうなってきました原因には、やはり当然これは地方の財源ではあるわけでございますけれども国税三税の三二%分の交付税そのものが一般歳出に入ってきているので、それはどんどん伸びておる、国の一般会計の中に入って出されておるということでございます。それと同時に、公債費が相当な額になって国が伸びてきているということでございますので、私どもとしては、やはりそこらの特別な要素は除いて考えるべきだと思っておるわけでございます。  そういった意味で、国から交付税部分とそれから国債の償還費分を除いたいわゆる一般歳出地方の場合から公債費を除いた一般歳出ということで見ますと、たとえば五十五年度でも国が五・一に対して地方は六・六%の伸び率、五十六年度は国が四・三に対して地方は五・九、五十七年度は国がゼロシーリングで非常に圧縮いたしましたために一般歳出は一・八%の伸び、これに対して地方は四・七%でございますから、実質の中身においては私どもとしてはそれほど圧縮していない。たとえば公共事業自体でも国は連続三年横ばいでございますが、私どもとしては、単独事業はそれなりに伸ばしておるといったような相違があるわけでございまして、そういった歳出構造の差異というものが反映しておるんだというふうに理解をしておるわけでございます。
  214. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  215. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記を起こして。
  216. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま時間の配分を考えると、どうやら消防庁長官まで行きますね。国土庁と建設省、どうも五時までにはちょっとおたくのところまでは行かぬかもわかりませんと思いますので、えらい待たして済みませんが、申しわけございません。  いま、交付税と公債費の額、こっちの方も公債費を引いてという比較がありましたね。私らもそういう比較もあると思います。しかし、同時にまた、地方財政規模でそういう観点でいくと、たとえば国の補助金ですね、国庫負担金、それに基づいた、まあ事業費は事業費別、自己負担を含めて歳出に出てきますけれども、その地財計画のいわゆる国庫支出金の分を、歳入歳出でその分引くということで見てみますと、これはまた同じようなことになってくるんですよね。だから、自主財源を中心にして、そしてどれだけの財政規模がどうなってくるかという点、いわゆる国の方の交付税歳入歳出分を差っ引いてという考え方でいくならば、地方財政計画でも国の補助金、いわゆる国庫支出金分は引いた上で比較をするということも考えなければおかしいのではないかというように思っているんですけれども、これは見方の問題、いろいろ見方がありますからいいと思うんです。  もう一つ僕が言いたいのは、いわゆる国の財政収支試算ですね、これとの比較で見ますと、自治省は昭和五十五年まで国会に収支試算表を出されておりましたが、自治省のあれでいきますと、五十五年度の地財計画をベースにして昭和六十年度までの一応収支試算をなさっております。それをもとに見てみますと、やっぱり臨調路線の影響とわれわれ言うんだけれども、同時にそれは景気の沈滞も含めてということになると思いますけれども、そういう関係で、五十五年、五十六年度の国の予算においても、それから地財計画においても、試算表から見ると相当下回ってきていますね。たとえば、五十六年度地方財政歳出規模というのは四十六兆八千七百億円というように試算表ではなっている。ところが、実際は四十四兆五千五百九億円ということで、五十六年度では二兆三千百九十一億円、五十五年度に出された収支試算表から言うと規模圧縮されてきているんですね。それで圧縮率は四・九%。それから、収支試算では、五十七年度地方財政歳出規模は五十二兆六千百億円、実際の地財計画は四十七兆五百四十二億円で、五兆五千五百五十八億円圧縮されている。この圧縮率は一〇・六%です。同じように、国の一般会計予算をこの財政収支試算表で見て実際の予算と対比をしてみますと、これは五十六年度圧縮率が二・〇、五十七年度は六・六というようになるんですけれども、これ大体間違いないだろうと思うんだけれども、そういうことになっていると思いますが、確認ができますか。
  217. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) ただいまお示しのございました点については御指摘のとおりでございまして、かつてつくりました五十五年度ベースの財政収支試算におきます国、地方の五十六年度、五十七年度歳出規模に対します実際の五十六年度、五十七年度の国の一般会計予算、あるいは地財計画規模の比率は、お示しのとおり地方財政計画の方が低くなっております。  これは主として国と地方の、先ほども申し上げましたが、歳出構造の違い等によるものだと思っておりまして、国の一般会計予算では伸びの著しい国債費と地方交付税交付金のウエートが大きいということ。また一方、今度は地方の方で見ると、給与関係経費というのは、地方の方がシェアとして見れば国の倍ぐらい大きいわけでございまして、したがって、収支試算の見込みでは給与を含めたその他の支出をたしか一〇・三%ぐらい見ておったと思いますが、この五十六、七は御承知のように非常にそれが低くなっておるということで、実際とは非常に差が出てくるというようないろいろな理由が考えられるわけでございまして、実質的に私どもとしては抑制が国よりも厳しかったという意味ではないというふうにとらえておるわけでございます。  そのことは先ほども申しましたが、例の一般歳出ベースで比較をいたしますとおわかりいただけるわけでございまして、伸び率そのものは、五十七年度におきましても国の一・八%伸びに比べて地方が四・七%ということで高いわけでございまして、いろいろなそこらの歳出構造の差、あるいは一般歳出について見た場合の数値等を考えますと、地方の方を無理に圧縮しているとかどうとかということにはなっていないだろうと私ども考えております。
  218. 神谷信之助

    神谷信之助君 若干その辺は私どもと見解が違いますね。だから、特に今度五十七年度では国の公共事業が横ばいになるということは、逆に言うと結局補助金がそれだけ減る。去年は六分の一カットのやつも出ていますし、そういった問題含めまして、全体として五十七年度というのは、そういう補助金、国庫支出金あたりが例年よりも低くなっているという状況がそれだけ逆に地方単独事業を伸ばしたといっても結果としては、直接的な肩がわりじゃありませんよ、もちろん。直接的な肩がわりじゃありませんが、結果としてといいますか、そういう点では結局肩がわりをしたということになるんじゃないかというように思うんです。  それで、次にその点で少し具体的に単独事業問題に入っていきますけれども、国の公共事業の方は二・六%の減になって地方の単独事業の方は八・五%の増。だから、いまも申し上げましたように、これは国の支出といいますか、補助金の方を減らして、結局自治体財政で全体としてはカバーする、だから国の補助対象の公共事業の量が減ったというのがイコール地方単独事業になったということではないけれども、日本の経済全体に刺激を与えるという公共事業の果たす役割りという面で見ると、国が減った分を地方でカバーしている。全部が全部カバーし切れませんけれども、一応そういうことにも見える。結局、それは結果として国の支出の補助金は減らす、しかし地方の方はその分自治体財政でカバーをするということになっているんじゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  219. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国の方は、厳しい財政状況もとで、御承知のようにゼロシーリングという形で予算要求をして、全般的に公共事業も抑えたわけでございまして、しかしそのかわりを地方でというわけではございませんで、そういった実態等を考えてみました場合に、最近の地域に与える影響ということを見ますと、特に財政力の弱い、どちらかというと公共事業等に依存しておるような地域に非常に影響が大きいし、また、中小企業等に与える影響も大きいといった事情を背景にいたしまして、私どもとしては、そういうことであるがゆえにますます住民の生活に密着した社会資本整備ということが必要であるという基本的な姿勢で単独事業を伸ばそうと思ったわけでございます。それがあわせていま申し上げましたような地域経済の安定的な発展にも資するということがございますので、そういったことを重視して地方団体の要請にもこたえて伸ばしたわけでございまして、国が抑制されておるから肩がわりをしたということは全然考えておりません。  もちろん、国の方がそういう状況にございまして、地域経済の疲弊ということも考えられるので、国の方にあるいはそういう期待をしておる気持ちがなかったとは私どもも申し上げません。しかしそれは、そういうことで押しつけられてやったとかどうとかという問題ではなくて、地方自治体の立場に立ってこのような形をとるのがよかろう、そういうような判断に基づいてやったわけでございます。
  220. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ事務当局としては私はそう答弁せざるを得ぬと思うんです。  これは大臣、僕は、経済のいまの消費不況の状況、しかも輸出が非常に鈍化してきているという状況で、本来から言いますと、国の公共事業を増大をして景気刺激も一面やらないかぬ、しかし、実際問題としては、国の財政状態からいうとそういうことはできない。だから政策的には、あるいは政治的にはというか、政策的には、そのカバーを地方の単独事業をできるだけ強化をしていく、それに必要な措置はそれなりにとらざるを得ぬということには当然なるわけですけれども、そういうことはこれは政治的な経済運営の問題としては考えざるを得ない帰結ではないかというように私は思うんですが、この辺はどうですか。
  221. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 五十六年度もそうですが、五十七年度も公共事業をもっと伸ばしたいけれども、予定していた以上に伸ばすということはやっぱり可能ではなかったと思います。思い切り伸ばすということは公共事業の面でもなかなかうまくいかなかった、それも事実でありますが、もう一つ、公共事業そのものを地方でやらせるということは考えておりませんでございました。むしろ、地方独自の立場で、地方の単独事業を積極的にやっていただいて、それがひいては地方経済とか、地域の経済の安定とか発展につながっていく、こういう考えでこれを助成していく、この考えはもちろんございました。  だから、公共事業そのものを肩がわりして単独事業に押しつけるということではなくて、公共事業は公共事業でやり、地方の単独事業は単独事業で積極的に進めていって、それがつまりひいては地方経済にも影響し、国全体の経済あるいは税収への影響、こういったことにも反映させていこう、こういう考えがあったことは事実でございます。
  222. 神谷信之助

    神谷信之助君 大臣、私が質問するから、下手な答弁していちゃもんつけられたらかなわぬと思って大分慎重に言われているようだけれども、私は、地方の単独事業を伸ばしていくことについて反対じゃないんです。いいことだし、できればもっと伸ばしたらいいと思う、それに必要な自主財源をもっと与える必要があるだろうという点で、だからその面では評価するんですよ。だから、逆に言うと少な過ぎるんではないかというふうにさえ思っているんです。  そこで、五十六年度発足をしたところの各公共事業の五カ年計画の進捗状況というのを一部調べてみたんですよ。たとえば第三次海岸事業の五カ年計画ですと、総事業費九千三百億、一般公共事業費は八千二百億、地方単独の方は五百億、調整費が五百ということで計画が進んできて、いま見通しとして——建設、運輸、農水ですね、この関係は。それで、建設省に聞きますと、大体二年経過した五十七年度末の進捗率の見込みは三二%と、こうなると言っているんですがね。ところが、この一般公共事業の方がずっと抑制基調できまずから、地方単独事業の方が進んでいくことになり得る可能性は出てきますね。  海岸事業の場合は、そう大きくなにはしてこないんじゃないかと思うんですが、たとえば第五次の下水道整備五カ年計画なんかは、これも同じように五十六年度からの五カ年計画ですが、総事業費が十一兆八千億円で、そのうち一般公共事業が七兆七千九百億、地方単独事業費が三兆四千二百億なんですよ。それで調整費が五千九百億です。それで、五十七年度末の進捗率の見込みは三一%ということになっています。ただここの事業は、これは地方単独事業でだっとふやすというたって、枝管ふやしたって、本管が進まへんとこれはそう簡単にはふやせない事業になってくるんだしというように思ったりしてね。都市公園整備事業の場合も同じような結果が出てきます。全体として国の公共事業が横ばいであるということが、個別にこう見ていくと、若干いろいろ問題があって、伸ばすにも伸ばし得ない部分も出てくると思います。ただ、まあ地方単独事業というのは、これだけじゃなしに、これと関係のない、全くの、純粋の単独事業というのはうんとありますからね。しかもそれは、事業自身非常に小刻みにできますから、そういう意味ではある程度やりくりはつくのではないかとは思います。この辺のところは私はもっとどんどん全体的に考えてみればいいというように思うんです。  そこで問題は、地方単独事業の八・五%増を消化することが可能なのかどうかという問題が一つ問題になってくると思う。これは交付税について、そういう地方単独事業を進めていくために傾斜配分を検討中だという話も衆議院の地行で出たりしておりますが、この辺はどうかという問題ですね。これは新産・工特のときも事業費補正でやって、そういう措置をやりましたね。その点については当時の松浦財政局長だったか、あれはたしか補助金的性格を持った交付税の運用であって、交付税の本来の趣旨からやっぱり問題があったということを答弁をなさっているんですけれども、そういう何というか、交付税が本来自由に自治体で使えるものをひもつきになるような仕組みですね。まあ形式はどういう形式をとろうとも。そういうことになってはいけないと思うんですが、この辺についての御検討の状況はどうなのか。  それからもう一つは、だから地方債は一定の枠をふやしておられますけれども地方単独事業の起債の充当率それぞれによってばらつきも出てくるんでしょうが、これについては一体どのようにお考えになっているのか。  それからもう一つは、国の公共事業は七七%前倒しということになっていますが、地方単独事業も同様の前倒しの指示をなさったようにちょっと聞いたんですけれども、同じように前倒しということをなさるのかどうか。この三つの点、ちょっとお伺いいたします。
  223. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 地方単独事業につきましては、毎年ある程度伸び率を見込んでおるわけでございますが、結果として見てみますと、財政計画決算との乖離がかなり目立っておる。これはたびたび申し上げておりますが、経理の仕方にも問題ございまして、いわゆる公共事業に対する継ぎ足し単独事業というのがどうも補助事業の方へ整理されておるという面もございます。しかし、現実に乖離があることは事実でございまして、せっかく私どもとしてこういった先ほど申し上げたような趣旨で地方団体に単独事業大いにやってもらいたいと、こう思っておるわけでございますけれども、なかなかそういう点において懸念をされる向きがあるわけでございます。  そこで、今回私どもとしては単独事業を伸ばすとともに、一般財源もかなり伸びたことでもあるし、また、地方債においても単独事業の枠は相当とりまして、その中で一般事業債の伸びを特に二二・八%も伸ばしていろいろな地方団体の要請にこたえたいというようなことで取り組んでおりまして、そういうことも考えておりますが、そういうような中で普通交付税の算定におきましても、何らか実際にやった団体について適切に配分されるような形、重点的な傾斜的な配分が行われるかどうかということについて、そういうことをやるのがいいか悪いか、あるいはやるとしたらどういった算定方法が考えられるかということを検討をしたいということをお答えをしたわけでございまして、具体的な算定方法についてはなかなかまだいろいろな問題がございまして結論を得ておりません。いままでも単独建設事業費につきましては各費目の単位費用で平均的な水準における経費を算入しておるわけでございますけれども、それにいわば平均的な水準を上回って公共施設等の整備を行うという場合に客観的な指標がとり得るならば、それを基準財政需要額の算定に用いることといたしましても、いわゆる交付税上におけるあるべき財政需要を算定をするという基本的な枠組みというものを逸脱するものではないだろうと、そういうように観念的には考えております。  しかしながら、じゃ、どういった指標でやるかということになりますと、具体的にその年度でやったものがすぐ反映するかということになりますと、直接的な事業費補正的なにおいが出てまいりますし、そういうことになると、やはり従来から私どもが申しておりますこととやや違背するような感じもいたします。そこで一定水準以上のものをやっておるが、かつまたそういうきわめて結びついたかっこうでなくて、長い目で見てその団体の実際の仕事にうまく適切に当てはまるような何らかそういう指標がとれるかどうか、そこが悩みでございまして、いろんな検討をいたしておりますけれども、それぞれに議論もあるような気がいたしまして、いま検討をいたしておりますけれども、まだ最終的な結論は得ていないといった状況でございます。  それから、そこらについての起債の充当率でございますが、これはおっしゃいますように、いろいろな充当率がございます。臨時地方道等であればもう一〇〇%見るというのもございますし、そうでない場合は七〇%とかいろんな率がございます。しかし、そこらの配分はそれぞれの地方団体状況を見て要請に応じて対応していけばいいと思っておるわけでございます。  それからもう一つ、これは国自体において景気の浮揚を図るという意味から、上期において七五%程度の公共事業の前倒しということが言われておりますが、そういうことになれば、私どもとしても当然地方団体の裏負担というのがあるわけでございますから、それに対応して地方債の許可を早めるとかどうとかということで対応していくということになると思いますし、また、単独事業についてもせっかくそういった趣旨でございますし、本来的なねらいは地域における社会資本整備ということがねらいでございますが、あわせてそういった国全体としての経済政策にも寄与するということも一つ考え方でございますので、単独事業においても前倒しで進めたいということで、地方の方にもその旨をお知らせをしたということでございまして、それに対応する手段を今後考えていきたいと思っております。
  224. 神谷信之助

    神谷信之助君 その地方単独事業の前倒しもやっぱり国と同じような七七%ぐらいのやつを目指すんですか。
  225. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国の方でこう決まったから同じような趣旨でやってもらいたいという通達を出しております。
  226. 神谷信之助

    神谷信之助君 これはやっぱり国の公共事業というやつは比較的中心的な基幹的なやつになりますからね、自治体だけではちょっとてこに合わぬ事業になります。しかもそれも前倒しで来るし、補助金はついてくるんだし、裏負担の起債の方はいまもおっしゃるように早めるようにしてやってもらえる。こうなってくると、片っ方地方単独事業は自己負担ですからね。起債をある程度めんどう見てもらうにしても。だから、そういう意味ではどっちが先かというと、地方単独事業は全くやらぬということにはならぬけれども、実際の効果としては、結局どうしても前倒しの国の事業を先にやりながらある程度地方単独事業も消化をしていくという、まあ優劣と言うとなんだけれども、人情としてそれを先にということはありますよね、実際問題としてね。  ところが、これは実際の景気浮揚あるいは特に消費不況を回復していくという点でいくと、それより地方ごとの社会資本の充実の事業を早めていく方が、地域的にはよりためになっていく。やっぱり国の公共事業ですと大企業がどんどん乗り込んできますから、地元にどれだけの金が落ちるかというのは別の問題になって、税金の納め方も、東京都には入るかもしれないけれどもその村には入ってこないと、こうなってきますから、だからその辺の関係を含めて考えると、この地方単独事業を国の公共事業等もあわせながらどのように促進をするかというのは非常に重要な課題になってくるんじゃないかというように思うんですけれども、この辺はどうなんでしょう。
  227. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 事業の進め方は、地域によってもいろいろ違うと存じます。国の公共事業が主体になるところもあれば、そういうものが少ないところもありますし、その点はいろいろばらばらだと思いますが、過去の例を見ても、非常に公共事業が盛んなときは、伸び率が非常に高いときはどうしても単独事業が伸びなかったという事実がございます。しかし今回の場合は、公共事業そのものが総体としてそう大きな伸びであるわけではなくて、予算内でなるべく早く契約をして計画を進めていこうということでございますから、それは全体計画の中で進めていきますから、それによってそう大きく崩れることはないだろうと思っております。  ただ、財源措置については、やはりその起債等についてなるべく早く申請を受け取ってやるといったようなこととか、配分するものは早く連絡してやるとか、いろんな手を講じていかなければならないだろうと思っております。  と同時に、地域によって異なると申し上げましたのは、御指摘にもあったわけでございますが、たとえば去年おととしあたりの冷害対策の場合、本当に地元の人が日当、賃金を得るというかっこうで地元を潤わすというようなのはむしろ単独事業の方がいいではないかということで途中で単独地方債の追加配分をしたりいろんなことをやった経験もございます。そういった点について今後地方団体からもいろいろな相談があるだろうと思っております。まあ何度か申し上げますが、そういった意味で私どもの方は財務調査官というのをふやして常時相談に乗るようなシステムをつくっておりますので、よく把握をいたしまして、できるだけ具体的な問題に対応できるように努力をいたしたいと思っております。
  228. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは、地財計画の最後の問題は、消防庁の関係で、二月二十五日の衆議院の地行委で、石見長官が、研究会を設けて消防力の基準の見直しの作業を進めているという答弁をなさっておるんですが、この見直しの目的と作業の進行状況をまずお伺いしたいと思います。
  229. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 消防力の基準の見直しにつきましては、御案内のとおり昭和五十五年の六月に消防審議会から御答申をいただいておるわけであります。この答申では、「常備消防と消防団の」「機能分担のあり方に対応し、消防機関の施設、装備、人員の整備を図ることに関連して、現行の「消防力の基準」を見直す必要があると思われる。」、このような御答申をいただいたわけでございます。私どもといたしましては、この答申を受けまして昭和五十五年の十月に消防力の基準の調査研究会を設けまして、それぞれ専門家によりましての調査研究を現在お願いをいたしておるところでございまして、まだ現時点におきまして具体的な改正点でございますとか、あるいは結論を申し上げる段階にはまだ至っていないわけでございます。  私どもといたしましては、いずれにいたしましても地域の実情に即して消防力の強化を進めていくという方針を持ちまして、ただいま申し上げました答申にもございますように、常備消防と消防団の機能分担のあり方あるいは農山村部におきます常備消防のあり方というようなことを中心にして御審議をいただきたい、あるいは結論をいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  230. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまの長官の答弁ですと、消防力を強化する方向で研究をしているというようにお伺いしたわけですが、先ほど言いました臨調の第一次答申では、「消防職員については広域消防化、民間自助努力の活用等により、厳しく増員を抑制する。」こうありますからね。だから、えらく消防職がねらわれているという感じを強くしていたんですが、それに対して衆議院地行の記録をずっと見たりしますと、研究会において基準の見直しについて緩める方向かあるいは強める方向か、まだ全く白紙であるという話だったけれども、いまの答弁を聞きますと、消防力強化の方向で検討してもらっておるということを期待をしているという趣旨のようにお聞きをしたいんですが、その辺はいいですね。
  231. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいまお示しにございましたように、臨調の昨年七月の答申では、増員を抑制するといういわば人の問題だけについて触れていただいておるわけでございます。私どもといたしましては、前段御答弁申し上げましたように、消防力の整備を進めていこうとしておるわけでありまして、人の問題だけを考えているわけではないわけでありまして、組織、装備、人員を含めまして総合的な消防力の整備というものを今後どう持っていくかということを御審議願いたいと思っておるわけであります。  もとよりこの臨調の御答申を私どもといたしましてはこれを無視するというわけにはまいらぬわけでありますけれども、しかし、一方ではやはり消防力を整備し強化をしていく必要があるということはこれまた事実だと思うわけであります。今後、そういう中でただいま申し上げましたように、組織、装備、人員も含めて総合的な整備方策というものを御検討願いたいというふうにも考えておる次第でございます。
  232. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ先月のニュージャパンの集中審議で、私は特に査察要員等を含めまして消防体制の強化、改善の必要性というのを言ったんですが、過去五年間の地財計画の消防職員の増員の状況をずっと見てみますと、やっぱり五十七年度は例年から言うと増員は抑制されているというように思うんですよ。これは御報告願おうと思ったんですが、時間の関係で私の方から、お聞きしている点で言いますと、五十三年度ですと千三百名、そしてあと規模是正でプラス二千人、だから合計三千三百になるわけだ。五十四年は千二百二十九人。五十五年が千二百二十七人に規模是正で千人プラスされていますから二千二百二十七人。五十六年は千二百四十人。五十七年はとうとう千人を割って九百七十九人と、こういう状況になっているんです。  まあ人員の問題だけが消防力の強化ということにイコールではないというようにそれは思いますが、しかし、いわゆる整備という点で言いますと、消防力の基準に対する車両とか職員の充足状況、これの新しい調査結果が四月早々に出ていますね。この状況をちょっとどういう状況か、基準に対するそれぞれの充足率をお答えいただきたいと思うんですが。
  233. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 昭和五十六年四月現在の消防力の充足状況でございますが、これは申し上げるまでもなく、各市町村の消防機関におきまして、私どもが示しております消防力の基準を参考にいたしまして今度はそれぞれの市町村整備目標ということで設定をいたしております各市町村ごとの消防力の基準に対して、実際の保有台数が幾らかということの資料でございます。  概数で申し上げますが、消防ポンプ自動車では八八%でございます。小型動力ポンプが六八%、はしご自動車が五八%であります。それから化学消防ポンプ自動車が五四%、救急車が一〇〇%、消防水利が六六%という整備状況になっております。
  234. 神谷信之助

    神谷信之助君 職員も出ていますね。
  235. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 職員につきましては、現在各市町村消防機関が保有しております車両数を前提にいたしましての職員数の充足状況は約七八%ということになっております。
  236. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、車両その他のそういう条件の整備状況が、いま御報告になったように、一〇〇%までないんです。まあ救急車の場合は要求が強いということでありますが。そういうのをトップにして低いところは五四%、これは化学消防ですから、特定の地域になってくるかと思いますけれども。そういう状況で、それに対する、いわゆる現有車両に対する職員の充足率が七八%弱ですね。そういう状況で、まだまだそういう点では不十分であるという状況が私は言えると思うんです。  ですから、これは一昨日の私の質問に対して大臣がおっしゃっていましたけれども、臨調答申は尊重するということではあるけれども、それはうのみにするということではないんだと、こう言ってたんかを切られましたけれども、まあそういう点から言うと、先ほどおっしゃったように、いまやられている研究会の方向というのは、少なくとも消防力の基準を切り下げるのではなしに充実強化をしていくという方向であるということは明らかになったと思うんです。私は、査察の問題、それから火災の予防のための教育訓練、それから救急救助業務、これは増加してきているし、それから、都市における高層ビル、高層建築ですね、これがふえてきている。雑居ビルの場合はまだ不十分な点がきわめて多い危険な状況が残っている。それから同時に、いわゆる広域消防化に伴って常備消防の設置がこれからさらに進んでいくでしょう。  だから、そういう点を考えると、臨調の第一次答申の言うような消防職員の増員を抑制せいというのは、これはちょっと実態を知らない——あれは緊急答申だそうだからやむを得ないにしても、実態を十分に知らないで出されているんじゃないかというように思うんです。特にその点、これは長官にも努力してもらわないかぬのですけれども、特にその点は大臣の方で、臨調の方にも強調してもらうということが必要ではないか。  ちなみに五十六年度の消防白書を見ますと、五十五年度の出火件数が五万九千何がし、六万件近いですね。損害額は千五百七億、いわゆる財物の方ですね。ところが死者の方は二千人近い死者。負傷者は約八千人、一万人近いというか、八千人を超えております。これは国民の財産のみならず生命まで奪われている状況がふえてきているわけですね。もちろんその原因には放火とか自殺による火災とか、そういう内容も社会的状況からふえている面もありますけども、いずれにしても、これはたまたま火災に遭った人が損なんだということで済まされない問題ですね。消防職員がもう暇でしょうがないというような状態になるぐらいの方が、それほど火災発生件数が減ってくるという状況が一番好ましい状態です。ですから、そういうことをやろうとすると、火災が発生をして、それを早期に消火をするという活動が確かに重要なんだけれども、どうやって火災を発生させないか。不可抗力的なものもありますけれども先ほど言ったように自殺とかそういった放火とかいろいろありますけれども、実際にはそういう査察とかそれから予防、訓練、教育、こういったものの人員というのは、もう現場へ行ったら大変なものなんですね。だから、そういう点をやっぱり加味して考えないと私はいかぬというように思うんです。  時間も大体来ましたから、最後に長官とそれから特に大臣に、そういう点で政治責任を持っておられるわけですから、ひとつ明らかにしてもらいたい、こういうように思います。
  237. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいまお示しにございましたように、最近の消防行政につきましては、一つは常備化が次第に進んでまいってきております。もう一点は、とりわけ都市部におきましての予防行政あるいはまた装備の近代化ということが非常に強く要請をされてきております。三つ目は、救急業務が大変な勢いで急増をいたしておることも事実であります。  このような中で、消防につきましては、装備あるいは人員につきまして、ただいま御答弁申し上げました充足状況から見まして、私ども必ずしも十分であるとは理解をいたしておりません。やはりとりわけ装備あるいは人員の確保につきましては今後とも引き続き努力をしてまいらなきゃならないと思っております。  と同時に、ただいまお示しにございましたように、年間六万件からの火災が発生いたしておるわけでありますが、それにつきましては、そのうち、たばこ、たき火、火遊びというこの三つで約二万件でございまして、こういうものが各国民の方々一人一人のちょっとした努力なり御注意によって十分防ぎとめられる火災なんでございます。そういう意味におきまして、今後やはり地域の自主防災組織の強化あるいは国民の方々の防火意織の高揚ということも、あわせて民間の自助努力の一環としてお願いをしてまいらなきゃならないというふうに強く考えておるところでありまして、いずれにいたしましても、今後こういう意味での消防力の整備、強化につきましては、いわば役所の側におきます努力と民間の国民の方々の努力とあわせまして、防火、予防の実効を上げてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  238. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 消防力の基準の見直しということが問題になりましたですが、これの見直しに当たっては、これは地域によって全部いろいろ事情が違いますから、あくまでも地域の実情に即した消防力の総合的な整備を進めていく、このような観点に立って今後行われていくべきが至当であると考えております。
  239. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう時間がありませんので、第三テーマの地方税は残念ながら次の機会に譲ります。税務局長初め、国土庁、建設省、えらい御迷惑かけました。  以上で終わります。
  240. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時一分散会