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1982-04-20 第96回国会 参議院 地方行政委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十日(火曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  四月六日     辞任         補欠選任      斎藤 十朗君     玉置 和郎君  四月十四日     辞任         補欠選任      伊藤 郁男君     柳澤 錬造君  四月十五日     辞任         補欠選任      山田  譲君     宮之原貞光君      柳澤 錬造君     小西 博行君  四月十六日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     山田  譲君      小西 博行君     伊藤 郁男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上條 勝久君     理 事                 名尾 良孝君                 山田  譲君                 伊藤 郁男君     委 員                 岩上 二郎君                 加藤 武徳君                 金井 元彦君                 小林 国司君                 後藤 正夫君                 福田 宏一君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 大川 清幸君                 神谷信之助君                 美濃部亮吉君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    世耕 政隆君    政府委員        人事院事務総局        職員局長     金井 八郎君        内閣総理大臣官        房地域改善対策        室長       水田  努君        警察庁刑事局長  中平 和水君        自治大臣官房長  石原 信雄君        自治大臣官房審        議官       小林 悦夫君        自治大臣官房審        議官       矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       坂  弘二君        自治省行政局長  砂子田 隆君        自治省行政局公        務員部長     大嶋  孝君        自治省行政局選        挙部長      大林 勝臣君        自治省財政局長  土屋 佳照君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁次長    鹿児島重治君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        内閣官房内閣参        事官       中村  徹君        行政管理庁行政        管理局管理官   石坂 匡身君        防衛庁長官官房        総務課長     長谷川 宏君        厚生省保険局医        療課長      古川 武温君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○地方行政改革に関する調査  (地方行財政消防行政警察行政等基本施  策に関する件)  (昭和五十七年度の地方財政計画に関する件) ○地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る六日、斎藤十朗君が委員辞任され、その補欠として玉置和郎君が選任されました。     —————————————
  3. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事山田譲君及び伊藤郁男君を指名いたします。     —————————————
  5. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、地方行政改革に関する調査を議題といたします。  地方行財政消防行政警察行政等基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 予定を若干変更しまして、内閣官房それから行管庁衆議院との関連がございますから、そこだけ先にお聞きしておきたいと思います。  今度の国会ほど談合問題というのが国会議論されたことはないんですが、その中で天下り問題も、当然一つのパイプ役としての役割りが出てまいりました。これは後ほどまた人事院にお聞きしたいと思うんですが。そういう中で、私は決算委員会にも所属しておるわけですが、五十五年度の決算の報告を見ますと、特殊法人認可法人における不正支出不正工事、こういうものが次々に——次々というか矢継ぎ早に出ておるのが実態なんです。そういう意味合いで、特殊法人認可法人の問題について内閣並びに行管の方にただしておきたいと思いますが、これは、きょうは地方行政委員会ですからどのみち大臣が出てくるわけではございませんので、二十三日の決算の総括の際にも取り上げてまいりたいと思います。そういう前提でお尋ねしておきたいと思うんです。  予算委員会議事録を見ますと、私は非常に問題に考えましたのは、これまでの国会で、主としてマスコミをにぎわしたり、いろいろな意味で取り上げられたのは、特殊法人認可法人役員のいわゆる天下り、それからそれに伴う給与、退職金、こういう点が中心であったと思うんですが、今度の予算委員会の中で特に問題になっております一つとして、役員でなくて一般職員出向という形で大量に特殊法人認可法人に出ております。そのことが、逆に言えば無責任体制という現象を生んでおることも事実でございまして、その具体的な一番大きな例としては年金福祉事業団、これが非常に議論されております。  これの実態を見ますと、年金福祉事業団の場合には百七十名程度構成員の中で、そのうちいわゆる管理職、これが全部出向職員。それから係長クラスが三十三名中プロパーは二名、あとは全部出向職員、まあこれは極端な例だと思うんですが。さらに一般事務職員も見ると、八十六名中出向職員が四十七名。これはもう事業団というよりもまさに厚生省の分室というスタイルになっておるわけですね。  そこから人事を見ますと、大体この出向職員というのは平均して一年で帰っている。厚生省社会保険庁に帰っておる。こういう実態です。一年ということになると、社会保険庁というのは保険料を徴収するところですからね、そういう職員が来て、今度は事業団になると融資をする、その調査をしたり資格認定をやったりもしくは何というんですか、建物の価値を調査したり、そういったものが中心になるわけですから、ようやく仕事を覚えかかったころにはまた本庁に帰る、こういう仕組みになっておるようです。  そこで私は、この問題について予算委員会をずっと調べてみると、総理中曽根長官も、答弁を見ますと、これはいけないことだと。三月十五日だったですか、総理答弁を見ると、厚生省に是正するように強く指示をしたと。行管庁長官も同様の意味のことを言っておる。  ところが、きのう私は行管庁官房を呼んで具体的にどういう指示をしたのかということで聞きましたところ、いや、実はそこは私の方の所管じゃございませんと。所管でないところの大臣指示したとかやりましたと、こう言っておる。事務当局の方は所管事項でございません。こういうことでは、これは大臣総理大臣が何ぼ国会国民に向かって答弁してみても意味ないことであって、まさにこれははぐらかし、こういうふうな感じがするんですが、これは一体どのようにとらえて行管庁並びに官房として処理をしておるのか、それを聞きたいんです。
  7. 石坂匡身

    説明員石坂匡身君) お答え申し上げます。  ただいまの年金事業団の問題につきましては、予算委員会でも議論がございまして、私ども行管庁も、各省並びに特殊法人人事権に属する問題でございますから直接の権限は先生のおっしゃるとおりないわけでございますけれども答弁にもございましたように、その是正方につきまして厚生省にお願いをしておるということでございます。  厚生省といたしましても、何らかの是正措置を講ずるべきだという観点から検討をしているというふうに承知をしております。
  8. 中村徹

    説明員中村徹君) 厚生省に対する指示の問題につきましては、ただいま行管庁の方から御答弁があったわけでございますが、予算委員会の審議を通じまして、閣内の意見統一して述べろというお話がございまして、そのときに内閣官房長官が、特殊法人役付職員につきましては、各法人業務内容及び規模、設立の沿革、設立後の経過年数その他種々の事情があるので、これを一律に規律することは困難であるけれども、できる限りの内部登用の促進、民間活力の導入に段階的に努めてまいりたいという答弁をされたわけでございますが、その答弁趣旨につきましては、直ちに関係各省に伝達した次第でございます。
  9. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、たしか宇野さんの行管長官のときにこの問題が、たとえば鉄建公団であるとか、KDDであるとか、いろいろ問題が出されて国会で追及されまして、私はあのときに十回ぐらい質問に立ったんですが、そのときに結論として、宇野長官の方で、いろいろ設立経緯には問題はあるけれども、ここまで問題がなってくると各省にお任せするわけにはいかない。したがって、認可法人特殊法人については行管庁所管として見直しを含めてやりますと、こういう国会答弁があって、それから私は行管庁所管だと思っておったんですが、いま聞きますと所管でないと、こういうことなんですが、これは事務当局というか、行管長官を含めて所管事項でないということになるのか、それとも、こういった問題について——たしかあれは九十国会ぐらいだったと思いますがね、ちょっと記憶ありませんが、そこら辺の経緯と照らし合わせてみて、そういう理解でいいのかどうなのか、それが一つ。  それから、もう一つの問題は、いま内閣官房参事官の方から具体的な指示をしたと言うけれども、その指示文書なりがあるのか、どういう指示内容なのか、それを聞かしていただきたい。
  10. 石坂匡身

    説明員石坂匡身君) いま、特殊法人並びに認可法人等につきましての所管お尋ねでございますが、先生も御承知のとおり、特殊法人の存廃問題、あるいは法律に伴う制度改正というものにつきましては、これは明確に行政管理庁所管でございます。行政改革等でも、行管庁が主体となりましてそれは実行しているところでございます。  ただ、認可法人につきましては、これはいわば、特殊法人が国の意思による強制設立というものであることに対しまして、民間意思の入った設立ということで、行政管理庁国家行政組織を管理するという立場にある点から、ただいまの構成では行政管理庁所管にはなっておらないというのが現状でございます。
  11. 中村徹

    説明員中村徹君) ただいまお答えいたしました答弁趣旨の伝達のやり方につきましては、官房長官答弁されましたのが三月十七日でございますが、当日に電話によりまして内閣参事官室より各省に連絡いたしたわけでございます。
  12. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 所管については大体わかりました。  そこで、三月十七日の国会が済んだ後で電話指示をしたと、そういうことですか。電話指示したのはいつですか。
  13. 中村徹

    説明員中村徹君) 当日、電話によりまして答弁趣旨を伝達いたしたわけでございます。
  14. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ところが、三月十七日にそういった答弁電話指示したのが、四月一日の人事異動を見ますと、全然答弁を無視していますね。四月一日の人事異動を見ると、三十名退職しておるわけです。そのうち二十五名は社会保険庁に帰っておるわけです。それから、厚生省に三名帰っている。二名が退職をしておるわけです。ところが今度は、その補充として出向が二十八名来ておるわけです。そして、プロパーは四人しか採用しない。天下りを引き取れと。これはもう総理大臣答弁官房長官指示もへったくれもあったものじゃない。  私は、どうもここはおかしいと思って、もう少し調べてからまた立ちたいと思うんだけれども政府の言ういわゆる総定員法五%の削減というのとかかわりがあるんじゃないかと思う。国民に向けては五%削減しましたと。削減した分は何かというと、この特殊法人の方に、認可法人の方に行っておる。ころ合いを見てまたもとに戻すと、こういうやりくりをしておるように感じてならぬのですね。  これは、総定員法というのは行管庁所管をしているんじゃないんですか。もうそういう意味では、この事象を見ると、まさにこれは完全にしり抜けになっているんじゃないですか。これは、中曽根さんじゃないけれども国民に向かっては、国家公務員は何%削減しましたと、地方公務員だけが云々、こう言っておって、削減した分はどこに行ったかというと、全部それが一時退避だわね、一時避難というやつだよ。削減じゃないんだよ。こっちの方に行っているわけだ。そういうことが関係省庁認可法人特殊法人を使って操作されておるという感じがしてならぬのです。これは私がもう少し調査をすればわかることですけれどもね。  しかもこれを見ると、大体一年でくるくるかわっているわけです、一般職員まで。管理職を含めて一年でくるくるかわっている、この人事異動状況から見ると。これで結果的に、検査院が指摘しているように、福祉事業団で去年も幾つか不正事件起こっていますわね。起こるはずですよ。  こういうことに対して一体——もう時間がございませんから、内閣なり行管としての見解だけ聞いて、また私は二十三日に今度は決算でやりますので、お伺いしたいんです。
  15. 中村徹

    説明員中村徹君) 年金福祉事業団の具体的な人事につきましては、これは年金福祉事業団人事権においてやっておるわけでございまして、それを所管しております大臣でございます厚生大臣が監督するという仕組みになっているわけでございます。  したがいまして具体的な人事につきましては、私ども詳しく承知しているわけではございませんけれども一般人事方向といたしまして、厚生省におきましてはプロパー職員の比率をできるだけ高めるという方向人事運用を図っているというふうに伺っております。
  16. 石坂匡身

    説明員石坂匡身君) 定員削減との関係につきましてのお尋ねでございますが、御承知のように、定員削減業務量の消長でございますとかあるいは事務合理化簡素化というふうなことに伴いまして、実際に離職をする、退職をする方の後を補充をしないというふうな形で進めておるわけでございます。  また一方、こういう定員削減を進める一方で必要な部門につきましては増員措置も講じておるところでございまして、先生の御指摘のような、それがゆえに天下りと申しますか、そういったたぐいのものがふえているということではなかろうというふうに私どもは考えている次第でございます。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それではもう一つだけ聞いておきますが、こういった総定員法の五%削減については、追跡調査をやっていますか。
  18. 石坂匡身

    説明員石坂匡身君) これは毎年、総定員法の中に定員令というのが各省庁別にございますが、その定員令定員削減に伴う人間を政令で落としておりますので、確実に落ちております。政令で落としておりますので、落ちておるということでございます。削減を落とし、増員を乗せるということで政令改正を行っております。その削減の数だけは必ず定員上落ちているということでございます。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 次に、これは財政局長だと思うんですが、御承知のとおりに、予算委員会が済んだら、大蔵大臣が、五十六年度は二兆円程度の赤字になるということをようやく本音をぼつぼつ出してきました。もうこれはとうに必至の情勢にあったわけですが、この委員会の際の議論でも財政局長答弁を聞くと、大蔵大臣が言わないんだから先になかなか言えなかったのは無理もないと思うんですが、そのにおいすら余り感じないような答弁に終始したと思うんです。ところが、いまの情勢から見ますと、いよいよ大蔵大臣の方でもう隠し切れないということで鮮明になってきた。そうすると、このままいきますと、五十七年度予算そのもの空中楼閣みたいなかっこうになる。これが三兆円程度、下手をすると四兆円程度また減収になる。こういう非常事態感じられるわけですが、その結果、いわゆる地方財政にどういうふうに影響をするととらえておるのか、また、それに対する対処をどういうふうに考えておるのか、これをまずお聞きしたいと思うんです。
  20. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十六年度から五十七年度へかけて、景気の動向とともに税収がどうなっていくかということはいろいろ懸念材料があるわけでございまして、私どもも五十六年度については、まだ三月決算法人の結果がはっきりしていないということで、大蔵当局からは明確な数字はもらっていないわけでございますが、補正後かなり法人税等で落ちるというような話を聞いておるわけでございます。結果的にそれがどういう影響があるかということになりますと、五十六年度については交付税もすでに交付をされておるわけでございますから、仮に減収になれば、結局その減収分というのは五十八年度に精算減というかっこうで出てくるというふうに、そう受け取らざるを得ないわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、五十八年度の地方財政計画を立てる際に、地方財政収支がどうなるか、あるいはまた必要な交付税がどれだけになるかということ等を踏まえまして、地方財政運営支障のないようないろいろな手段を講じて対処しなければならぬと思っております。その点は私どもとしても、円滑な運営支障のないように十分対応していきたいというふうに思っておるわけでございます。  そこで、五十六年度がそういうことであれば、それをいわば発射台が落ちてきたので、五十七年度も落ちるんじゃないかということでいろいろ世間的にうわさをされておるわけでございます。私どもとしては、地方財政計画には地方税等について政府がいろいろと経済の諸情勢を勘案して作成した五十七年度の見通しなどを基礎にいたしまして、その段階で最も適切と思われる方法によって税収等を見込んだわけでございます。この歳入確保が、いまおっしゃったようなこともございましていろいろと懸念材料もございますので、決して楽観は許されないと思っておりますが、私どもとしては、今後の経済情勢の推移に即しまして経済運営財政運営の面で適切な政策努力を積み重ねることによって、見込みどおり確保は期待できるというふうに思っておるわけでございます。これから後半になって経済がどのようになっていくのかどうか、まだ不明な点も確かにあるわけでございますけれども、もろもろの政策よろしきを得れば、私どもとしては期待ができるというふうに考えておるわけでございます。  そういう段階でございますから、五十七年度特に歳入面において問題を生じたらどうするかということについては、ちょっとここでお答えする立場にはないわけでございます。むしろそれは確保できるという努力を続けていかなきゃならぬと思うわけでございます。いろいろな事態が起こりましても、私どもとしては地方財政計画において、その収支見込みを示しておるわけでございますから、その運営支障のないような対応は常に考えていきたいと思っておるわけでございます。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この問題は、後ほど交付税法案がございますから、そこでまた議論をしたいと思いますので、きょうは一応見解だけお聞きしておきたいと思います。  そこで、これは大臣にちょっとお聞きしたいと思っているのですが、地方選統一をするという話が自民党さんの方で盛んに議論され、それがマスコミを通じて流れているわけです。ところが自治体の側から見ると、たとえば二月、一月選挙を控えたところを含めて、これから統一地方選挙に向かって、かなり地方選挙が多いんですが、もう問い合わせがしきりでくたびれるのですね、率直に言って。事務当局を受け持つ自治体の側からも、一体これはどうなるんだろう、こういうことがしきりに言われてくるわけです。これは自民党さんの中にもいろいろ議論があるようでございますが、僕はやっぱり大臣として物を申す時期にきておるのじゃないか、自治大臣として。これ以上の混乱をつくるべきじゃない。  私はもともと、先般の際にも申し上げたように、いわゆる地方自治分権立場に立って考えてみても、それから住民の権利の面から考えても、この問題は何もいま統一しなきゃならぬという公正な理由もない。むしろこれは自治体選挙ばらばらにやるのが一つ実態であろうし、少なくともこれはやっぱりもとは、一番スタートは統一しておったんでしょうが、それぞれの自治体事情によっていろいろな問題があると思うのです。こういった事情によって日程がばらばらになっている問題ですから、ここでまた毎年一回統一地方選挙やるとか、もしくはそのために任期をいじくってみるとか、こういった所業はなすべきでない、こういう立場で言っておったんです。  これはやっぱり自治体所管する自治大臣としても、ここら辺の議論は少なくとも来年の統一地方選挙の問題については、もう議論をすべき段階は過ぎたと私は思うので、閣議なり、もしくは自民党なり含めて、そこら辺を明らかにする必要があるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、大臣はこの問題についてどういうふうに受けとめており、対処しようとしておるのか聞いておきたいと思うのです。
  22. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 自民党の方で地方選挙統一するという方向検討を進められているというのは、これは事実検討しているようでございます。それはいろいろ理由もあるところらしいので、昭和二十二年に地方選挙が始まってから任期満了が集中する四年ごとに特例法を制定して統一的に選挙を行ってきたのでありますが、これがだんだんばらばらになってきて統一の対象になる選挙が非常に減ってきた。そのためにいろんな地方選挙が毎回ありまして、種類が非常にありまして、手数の方から言っても事務の方から言っても、それからいろんな選挙対応するいろいろな所管業務からいっても非常に繁雑になってきたというところから、これはもう一度締め直して統一してはどうか、こういう発想が主で、それに基づいて選挙法に対する検討が行われてきたようでございますが、まだ私自身もこれ余り見きわめているわけじゃございません。また、自治省としましても具体的な検討段階に全然入っていないのでございますが、この統一選挙のあり方について、わが方では問題意識はもちろん強く持っているところでございます。  ただ、これはどうしても統一選挙のルールを変えるということは関係者に非常に大きな影響力を与えることになりますので、これはやはり各党の忌憚のない御意見を伺いながら、また、地方の当事者の方々のいろんな意見を聞きながら十分練り上げて進めていくべきではないか、また、それに対して自治省としても対応をしていくべきではないか、こういう見解を持っているところでございます。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、深追いをするつもりはないんですが、いま大臣答弁を聞いていると少し言わざるを得ないんですがね。  自治体選挙が戦後統一してやられてから今日までの間にばらばらになっていったというのは、それは何も各党の都合とか国の都合でなくて、その町、その市、その自治体でそれぞれの事情があって、たとえばリコールがあったり、もしくは不信任案が通ったり、死んだり、いろんな事情の中で自然にできてきた実態ですよね。私はやっぱりまず第一に考えなきゃならぬのは、一つ選挙民。選挙民がそのことに迷惑しておるのか、そのばらばら実態に。選挙民からそんな意見一つもない。むしろその方が選びやすいと、こう言っている。それから、いまあなたおっしゃったように、事務の繁雑。繁雑するというのは、おととしのようなダブル選挙になると事務は繁雑する。そうじゃなくて、個々なら一つも繁雑しない。特に市町村などは、選挙担当というのは三人か四人。多いところで四人くらいですよね。普通三人か二人です。そういうところは、個々の選挙ほど正確を期して、そして住民の負託にこたえることができるんです、事務的には。それが実態です。ですから、この問題について、地方選統一しようなんという意見選挙民や自治体の側から一つもない。  にもかかわらず、それが各党にとあなたおっしゃったけれども各党の中にも自民党を除いては一つもない。自民党の方がこんなことを、何が都合が悪いのか、その中身についてはいろいろ言いませんがね。それは他党のことですから言いませんが、そういう意見になってきておるわけです。しかも、そのことが事務担当の地方自治体職員選挙民にとって——現職の人はいいでしょう、しかし今度新たに選挙を戦う人になると、いつから準備をするかという準備を考えなきゃならぬ。また、大方ここら辺でと目標を立てた途端に先に延ばされたんじゃたまったものじゃない。  そういういろんな問題、波紋が起こり始めておるから、私は、自治大臣として、もうこれ以上の混乱を起こすべきじゃないという決断をして閣議に持ち込んできちっとさすべきじゃないか、もしくは自民党にそういう申し入れをすべきじゃないか、こう言っておるわけです。もう一遍ひとつ見解をお聞きします。
  24. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 御指摘の点は、非常にごもっともな点が多いと思います。ただ、地方住民の方からは全然その声が出ないというようなお話もありましたが、逆に私の方の和歌山県なんかは、余り地方選挙が多過ぎるじゃないかという文句もかなり出ているわけで、各地方、いろんな地域によって違うのでございましょうけれども、私の県は特にまた地方選挙ばらばらになっておりまして多過ぎるのも確かなんですが、そういうところからそういった動きが出てきたんだろうと思うんですが、これは私どもの方でも地方事情とかいろんなあれをよく調査いたしまして、意見を固めて、ある時期に進言をしようと思っております。
  25. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつ、あるときじゃなくて早急に大臣としての進言というか、閣議に対する見解を出していただきたい。そして、こんな住民、自治体職員事務を担当する者に対して惑わせることだけはやっぱり早くやめていただきたいということを強く要請しておきたいと思います。  そこで、先ほどの天下りの問題に移りますが、先ほども申し上げたように、私、今度の国会論議をずっと議事録を調べてみて、またマスコミの皆さんが熱心に談合問題を取材しておりますが、それらを見て、ほぼ明らかになったのは何かといえば、まず第一に、公共事業集中して談合問題が発生しておる。むしろ公共事業の場合にはすべてにわたって談合でやられておると言っていいんじゃないか。これは何も建設省だけじゃございません。五十六年度で二十兆円、今度五十七年度は二十四兆円という公共事業全体の中に言えることじゃないかと私は思う。それが第一。  それからもう一つの問題は、この議論をずうっと聞いていますと、総理も建設大臣も、所管大臣も、最後の段階には、最終的には、これをどうするのだという問題については、これはもう再発防止を含めての措置は中央建設審議会ですか、そこに逃げ込んでおる。一つも問題解決の方途を国民に明らかにしていない。集約するとそう言えると思うんですが、これは私は地方自治体も例外じゃないと思うんですね。むしろ地方自治体が二十四兆円の——今度五十七年度の場合は二十四兆円ですが、その主役であると思う。そういう観点からこれは自治省としては、大臣としてどう対処して指導に乗り出しておるのか。再発防止を含めてまず見解を聞いておきたいと思うんです。
  26. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお話しがございましたように、契約の問題につきましては、むしろ公共団体が非常に多くの公共事業をやっておりますから、国だけの問題ではなくて、地方自治体におきましてもこういう問題については十分に慎重に当たらなきゃならぬ問題だと思っております。特に、契約の事務の執行というのは公共団体におきまして大変大事な仕事でございまして、そういう点について住民の方から疑惑の目で見られるというのは十分に反省をしなきゃならぬことでありますし、そういうことがないように解決をすることは、現下におきましてはきわめて緊急な課題だと思っております。  自治省といたしましても、この指名業者の問題につきまして、入札の経過なり結果、そういうものを公表すべきだと思っておりますし、業者の選定をどうするかということにつきましても、十分考えて執行しなきゃならぬということにつきましては、前から会議等を通じてお話しを申し上げているところでもあります。特にことしの当初の総務部長会議、四月に行われました総務部長会議におきましても、私の方から強く県にその点を申し述べておりますし、一月の二十一日付の財政課長名による指導につきましてもそのことを明示してございますし、近くは四月の九日付で事務次官名で各都道府県知事に出しました指導通達につきましても、このことについて強く要請をいたしておりまして、こういうことがやはり住民一般から疑惑を持たれないように今後とも慎重な配慮をしていくべきことを望んでいるところであります。
  27. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 望んでおるのは結構なんですがね、具体的にどういうふうにして再発防止をすべきだと、こういう指導をやられておるのか。私が聞いた中では、この都道府県庁の担当の職員の皆さんは、もうほとんど談合なしの入札はないと言っておるんです。そんなことできない、必要悪だと。もっと言うと、もうこれはまさに生活の知恵だ、こう言っている。こういうものに対してどういうふうな指導をしたのか、それを聞かせてください。
  28. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 先ほどお話しがございましたように、一般競争入札、指名競争入札通じまして、もういろんな入札制度についての問題点があることは予算委員会の中でもずいぶん明らかになっておりまして、私どもといたしましても、こういう問題につきましてどういうふうにするかということにつきましては、お話しがありましたように、中建審の議論というのを見守ってきたところであります。中建審の小委員会の中でもいろんな報告がなされておりましたし、中建審の方からも建議がなされてまいりました。いろいろ考えますが、結局は、住民に入札でありますとかそういうものの経過なり結果なりというのをやはり公表していくということが一つですし、現在のように指名業者を十社ぐらいでやるということもいかがかということもありますから、それもいまの報告ですとまあ二十社ぐらいという形になっておりますが、そういうことをやるか、あるいは制限つきの一般競争入札を考えるか、そういう点を勘案しながら入札については適正を期すようにということを指導をいたしておるところであります。
  29. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それで果たして談合がなくなりますか。果たして公正が期せられますか。私は中建審のあの建議を見ましたけれども、これはメンバーを見ると業者の代表とそれから建設官僚のOBと財界の皆さんが中心になっていますね。学者がちょっといる。これでは出てくるのは大体もうあの程度だと私思うんですよ。だから現実に——警察庁にも聞きますが、北九州の事例がございますね、そういったような形がやられておる前提の中でどうするのか。ここら辺が私はこれは国民に答える唯一の問題点だと思うんですよ。  そこで、ひとつ大臣、これ事実を知っておるかどうか知りませんが、お聞きしておきますが、国の補助金ございますね、五十七年度で約十五兆円。それから、国庫負担事業というのもございますね。こういう事業の場合には、これは地方自治体に行きますね。そうすると、大体、この補助金をおまえのところにやるけれども、この工事についてはこの業者をひとつ指定してくれというのが普通なんですね。ですから談合をやる前にもう大体決まっておるわけです、中央の大きいやつは。これが通例だと私は思うんですよ。  それで、それをより確実にやっておる例があるんですね、それは何かというと、建設省なんですよ。建設省は、各県の土木部長、いわゆる課長級、この人事についてはいまだに、部内の、県庁内の異動でも県外の出向異動の場合でも、これは事前に知事が協議をしなきゃ頑として受け付けない。これがいま建設省の地方都道府県に対する人事——特に技官ですね。技官については、技術課長、技術部長についてはこれは一切受け付けない。これがガンになっている。ですから、どこの知事でもそうですが、ここに経験者もおられますが、知事経験をやっていれば皆知っておることなんです。これは全国共通ですからね。しかもこれは出向職員じゃないんだ。本省から出向した職員はもちろんですが、地場から部長、課長になった職員も含めて建設省登録をやっている。この点について私は十四日の決算委員会で建設大臣にどうするんだということで攻め上げたんですね。それで、そんなことは知りませんとか言っておったけれども、最後には、まあ何とか善処しますということなんですが、ここがやっぱり、建設省がどうしてここを譲らないかと言えば、それが談合への一つのルートです、と私は思うんですが、この点について、こういった事実に対してどういう態度をとろうとしているのか、これは大臣見解を聞いておきたいと思う。
  30. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 私も、そういった細かい機構上のことに関してはわかったようなわからないようなところがありまして、またよく調査した上で御返事をいたします。
  31. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これはここにおる皆さん知っておるはずですよ。事実苦情を毎日聞いておるはずです。ですからすぐ調査をして、これは早急に次の委員会にはひとつ答えてくださいよ。私はここはきちっとしていかないと、談合問題、まず第一角から崩れるということだけ申し上げておきたいと思うんですがね。  私はやっぱりこういったことは、あなたが冒頭に地方自治に対する自律の精神、それから自治分権の態度を明確にしましたが、それとは相入れぬことなんです、人事の問題は。ここら辺は私はもっと毅然としてもらいたいと思う。その点一つ申し上げておきたいと思いますがね。これは、人事の面はそこまでないけれども、農林省、厚生省各省庁の補助金関係についても大同小異の点があると思う。ここら辺を私はまず是正をしていかないと、地方の談合問題、不正という問題は基本的に解決しないということだけ申し上げておきたいと思うんです。  そこで、人事院についてお聞きしますが、もう一つの談合問題で議論になったのは、発注官庁と、そこのOBでいわゆる会社に入っている者、そして業者、こういった三つが癒着の構造を示しておるのが各委員会における議論の中で浮き彫りにされた談合の構図の実態だと私は思うんですね。  そこで、民間に天下った各省庁のOBというか、この人たちの役割り、これを見ると、私はこれがなくならない限り談合問題、不正というのはなくならぬような気がしてならぬのです。人事院においても国家公務員法に基づいて審査をして厳正にやっておると思うんですが、どうもやっぱりその中から出てきた実態を見ると、率直に言ってしり抜けになっているような感じがしてならぬ。たとえば手みやげ天下りというかね、これは防衛庁、それから文部省、各省庁で国会で浮き彫りにされておりますね。こういった問題について、やっぱりそこら辺の一番パイプになっておるのがほとんど天下りですね。こういったことに対して藤井人事院総裁は、国会答弁を見ますと、見直したい、そしていままでのあり方について検討を加えたい、ここまでは答弁しておるんですね。一体どうこの問題を見直して処理しようとしておるのか、そこをお聞きしたいと思う。
  32. 金井八郎

    政府委員金井八郎君) 昨今論議されております談合問題につきまして、人事院といたしましても、退職公務員が企業に入りましてその行動が談合問題に関連してとかく批判の対象になっているという点につきましては重大な関心を持っているわけでございます。  それで、私どもといたしましては、各省庁の担当官を集めまして、退職公務員が営利企業に就職する場合に、公務員法の趣旨もとらないようにという意味の注意書というものをつくりまして、それを説明の上配付するようにということを厳重に励行してもらいたい。それから、各省庁に委任した分につきましては、監査等もさらに厳重に行いたいということをとりあえず行いましたけれども、いま御指摘のございました審査の面につきましても、従来から企業の中で営業関係、特に工事関係の会社におきましては営業関係というのは談合にかかわりのあり得る部署でございますので、そういうポストへ就職することは原則として承認していない、それから、離職後二年間の間は、就職後にそういうポストへ移ることもさらに承認を得なければできない、こういう形になっておりますけれども、その部分をさらに強化していきたい。それから、当該企業の工事高、そういうものが、当該官庁から移った職員につきまして、その企業の工事高というものが就職前と就職後でどういうふうに推移しているかという点も今後は審査の際に十分に調べまして、いま御指摘の持参金つきとかというようなものに対しての一つの防止という意味で、十分その点を加味して今後審査をしていきたいというふうに考えております。
  33. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 その二年間のいわゆる再就職について厳重に強化していくとか、それから就職前後の工事高を調べてそこら辺をやるということも一つの方法だと私は思うんですが、今度の挙がった実態、それから会計検査院が把握した実態を見ると、たとえば関東建設局と、そこの技官ですか技術者ですか、課長であるとか次長であるとかなんとか、こういう方々が関東管内の建設会社の顧問とか調査部長とか、もしくは専務とか常務とかこういうところに入っているんですね。不思議だと思って調べてみると、人事院意見を聞いてみると、いや過去五年間その会社の手続については直接当たっていないので、関東建設局におったけれども、それはこの公務員法のいわゆる範疇に入らないということで許可しましたとか、もしくは、顧問で出ておるからしたがってこれは二年間の範疇に入らないとか、こういういろいろな事例がたくさん出ておりますね。私はそこが、故意に公務員法を小さく解釈しておる。まあ職業選択の自由の憲法上の問題もあるからかもしれませんが、小さく解釈している。そして結果的にはルーズな結果を生んでおる。  ですから役所の側は、これは今度は五年後はどこの土建会社に入れようと、どこに話しようと、逆に言うなら五年間だけほかの課に外しておけば人事院はストレートに通るという仕組みになるわけです。そのことは恐らくお互い役人同士ですから、ちゃんと官房かどこかで人事院と話がいっておって、これならいいですか、それなら五年間ここだけ外してくれれば大体その会社に行けますよと。こういうようななれ合いがいままでずっと続いてきておるんじゃないかと思うんです。そういうようなふうに思いたくないけれども、思わざるを得ない事象が余りにも多いんです。これは関東建設局だけじゃございませんよ、一つ一つ事例を挙げてみると。ですから、たとえば文部省にしてみても、建設会社に行っておるのはほとんど学校建設の技官連中が中心になっている。こういった事例をつくっていきますと、何ぼ網をかぶせても役所同士でそういう話が人事院と通じているなら自由自在にできる、こういうような感じがするんですよ、私が見たときに。だからやっぱり、たとえば公共事業を扱う業者については、その関係各省天下りについては一切認めない、このくらいの厳しさをぴしっとする、いわゆる五年間の関係をもっと広げる、建設局なら建設局全体に広げる、こういった措置がやられていかないとこの問題というのは私は直っていかないんじゃないか、そういうように思うんですね。  ここら辺については、一体人事院としてこの見直しをするに当たってどういう考え方を持っておるのか、私の意見を含めて、ひとつ御返事をいただきたいと思います。
  34. 金井八郎

    政府委員金井八郎君) 先生御指摘のような考え方もあろうかと思います。  ただ、私ども審査をする立場から申しますと、公務員法の規定では、離職前五年間に在職していた国の機関と密接な関係にある企業に就職することは原則として禁止、人事院が法の精神に反しないということで承認をしたというものについてはこの限りでないと、こういうたてまえになっております。つまり、全面的禁止でなくて、やはり憲法で保障しております職業選択の自由というものがございますので、それを公務員法で全面禁止せずに人事院の承認にかからしめて、いわば基本的人権と公共の福祉との接点を人事院の審査に任せると、こういうことになっていると承知しております。  そこで、いま御指摘のように、たとえば建設関係の官署にいた者は土建会社にはだめだというくらい強く締めるということになりますと、これはむしろ全面的禁止に近くなるという感じがどうしてもいたします。そこで、やはり公務員法で規定しておりますように、離職前五年間に在職した官署と密接な関係ということの中に立って審査をする場合には、離職前五年間に在職したポスト、職務と責任がどういうものであったかということを詳しく調べまして、少しでもその企業との関係で密接な関係にそのポストがあるということになる場合には、それは原則として承認はいたしませんけれども関係がないということになりますと、御承知のように、公務員でございますから、職務と責任、権限というものがない場合にはその企業との関係というのは一切これは生じ得ないわけです。そういうことで、審査の場合にはその点を細かく精密に調べた上で現在行っているわけでございますので、余りその官署に在職したということだけでこれは就職がだめだということになりますと、現在ほとんど大半営利企業への就職というものはまずだめになるのではなかろうかという感じがいたします。  なかなかむずかしい問題でございますので、私どもも諸外国の例その他もいろいろ研究したり、一般の御意見、御批判というものも受けとめまして、常々そういう点について検討はしておりますけれども、現在のところはいま申し上げましたような考え方で審査を行っておるわけでございます。
  35. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わざわざ政府は、僕らが反対するにかかわらず、六十歳定年を強硬に押しまくって成立させたということは、六十歳まで役人の身分については保障すると。その人の場合には六十歳までに一仕事終わったわけだ。その後、年金もまた保障していく。そういう中で仕事をどうするかという問題があるわけですから、私はもっと新しい観点に立って対処していかなきゃいかぬのじゃないかと思うんです。何も人事院がいままで審査を厳格にしなかったとかということでなく、いまあなたの話を聞いておると厳格にしたと言う、その結果が現実にこんな状態が起こっているわけでしょう。天下った人たちが手みやげを持っていってやっているわけでしょう、現実に。そうしてそれが発注官庁と業者のパイプ役をやっておるわけでしょう、現実には。あなたは厳格にやったと言うけれども実態を見ると、この談合で国会議論されたりマスコミで取材されている中身を見ると、人事院では厳格にやったと言うのがどうしてこんな現象が起こったのか。問題はそこなんですよ。だから、そこからいま人事院総裁が言う審査の見直しというのをしていかなきゃならぬ。そのためには、たとえばいま二年の期間を五年にするのもいいでしょう、三年にするのもいいでしょう、法改正も含めて。それから、過去五年のやつを十年に延ばすのもいいでしょう。いろいろやり方はあると思う。しかし、あなたが言う密接な関係のある云々というものを極度にしぼって解釈して、その結果が今日の実態を生んでいるわけだ。  これは私は、財政再建云々言っていますけれども、どんなにほかの省庁のたとえば首を何人切ったところで、この年間二十四兆円という公共事業のロスをとめない限り、漏水をとめない限り、これはへにも立たぬですよ。しかもその結果は国民の皆さんに増税を要求しようということでいま大蔵省の方でいろいろやっておるわけでしょう。僕はこれでは行政に対する不信が解かれないと思いますよ、この問題解決しないと。  だから、そういう観点でやっておるわけだから、あなたが、人事院が一生懸命今日までやった結果こういう実態になっておる。この実態の上に立ってどうするかというその決意、そのためには法改正もやむを得ないというぐらいの決意を込めてやるべきじゃないかと思うんですが、時間の関係がございますから、この問題は、また二十三日に人事院総裁に来てもらいますけれども、何か御意見があればひとつ聞いておきたいと思います。
  36. 金井八郎

    政府委員金井八郎君) この問題の一つは、服務の面から考えましたときに、工事の発注側である官庁の問題、官庁のそういう担当者の問題、つまりガードの問題だと思います。もう一つは、営利企業に就職した職員の、企業人となった人の行動の問題、この二面があると思います。  なるほど審査の面で厳しくすることによってそういう面をできるだけ防止していくということも一つの方法でございますけれども、それだけが万能というわけではございませんので、やはり官庁服務体制を厳格にしていただく。それから、離職した公務員についても、今後の行動について、やはりかつての公務員ということできちっとした自覚を持っていただくという面も必要ではないかというふうに感じられるわけでございまして、制度の面それから審査の面につきまして、私ども常々いろいろな御意見をいただいて検討、研究しておりますので、御趣旨もわかりましたので、なお今後その点も十分検討をしたいと思います。  それから、先ほど先生もおっしゃいました、定年制が昭和六十年から導入されますので、そうなりますと、現在営利企業に就職している職員の平均離職年齢というのは大体五十三・六歳でございます。いかにも早いという感じがいたします。これも、ここ二、三年の間はどうしてもこういう傾向が続くんじゃないかと推定されますけれども、定年制が導入された以後におきましては、若干傾向が変わってくるのではないかというふうに私は見ております。
  37. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは自治大臣としても同様な問題だろうと思うのですが、あなたの見解だけ聞いておきたい。
  38. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 私どもの方は、地方自治体政府の各関係の人たちがどのくらい行っているか、どういうふうな人事の交流をしているかというようなことはつまびらかにしておるわけではございません。しかしながら、余り政府機関の人たちが、直接地方自治体人事的にどんどん入っていくということがもしあるとすれば、好ましいことではないというふうに考えております。
  39. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この程度で、また二十三日にやらしていただきます。  それから次に、警察庁も来ておることですから聞いておきたいんですが、来年二月の北九州市長選挙が行われるに当たって、谷現市長の後援会と、それからもう一つの団体である明るい町をつくる会、この二つの要請で日本土工協の九州支部の所属の五十社が一億六千万円の選挙資金集めを行っておる。この実態を見ますと、これは新聞報道でございますが、割り当てがA、B、C、Dと四つに分けられて、五百万、四百五十万、三百万、二百万。そのランクの基礎が、これもまた四つに分けられています。五十三年から以降の同市の受注額が七億一千万以上、六億四千三百万以上、四億四千七百万以上、三億七千万以上、こういうのが割り当てランクの基礎になっておるようですね。そうであれば、これは談合ルートによって資金割り当てがやられたと言って過言でないんじゃないかと私は思うのですが、この問題について、自治省、警察庁ともにどの程度までいま対処しておるのか、まず聞きたいと思います。
  40. 中平和水

    政府委員(中平和水君) ただいまの御指摘の問題につきましては、新聞報道等を通じまして私どもも事案を承知した次第でございます。したがいまして、現在の段階といたしましては、これは所管をする福岡県警に指示をいたしまして、福岡県警でも十分に関心を持ち、情報あるいは資料の収集に当たっておる段階でございます。したがいまして、まだいわゆる基礎的な情報、資料の収集の段階でございまして、具体的な捜査活動を開始したという報告はまだ受けておりません。
  41. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治省はどうなんですか。
  42. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) だれがお答えをするのがよいのかわかりませんが、自治省としては、一応新聞で知っている程度でございます。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 選挙部長来ておると思いますがね、呼んでおるわけだから——これは政治資金規正法とのかかわりはどうなっていますか、この額は。
  44. 中平和水

    政府委員(中平和水君) これは自治省所管事項でございますが、最終的に刑罰法令を動かしていくということになりますと私のところになりますのでかわってお答えをいたしますが、新聞に指摘しているとおり、一つの政治団体に対してはいわゆる個別規制百五十万の枠があるわけでございます。したがいまして、そうした枠を超えて業者から一つの政治団体に現に支払われておる、こういうことになりますと、その罰則が働いていく余地は出てまいろうと考えております。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ところが、そこもちゃんと計算に入れておるようですね。言うならば、明るい町をつくる会で要請しておるのだけれども、領収証を見ると谷伍平後援会になっていますね。言うなら、これは私の想像ですが、百五十万の範囲内は明るい町をつくる会、オーバーする分は今度はこっちの会——一政治団体ですか、こういう使い分けをしている。それ以上にオーバーする分はどうするのか、これはもう少したって使途不明金を見ぬとわからぬわけですが、いずれにしても、この団体の過去四年間の資金募集の実態を見ると、非常に集金能力を発揮しておりますからね。そういう点は私はそれぞれ手なれておると思う、言いかえれば。こういった問題を含んで今度の問題が明るみに出てきたということが言えるんじゃないかと思うんです。  これは警察庁にちょっとお聞きしておきますが、すでに別の汚職事件からそういう事実にふさわしいものが出てきておるんじゃないですか。そこら辺と関連すると、私はやっぱりこれは放置をしておったら大変なことになるような感じがしてならぬわけですが、そこら辺、もしここで公開できるならお聞かせ願いたい。
  46. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 現在、北九州市には、いわゆる土地ころがし問題とか、市政にまつわるいろんな疑念が生じまして、福岡県警としては、かねてからいろんな角度から事実関係の把握なりあるいは内偵捜査をしていることは、これは事実でございます。そういう過程から、ただいま御指摘がなされたような事実があるという報告は私は受けておりません。  ただ、何か読売新聞の記事の中に、「寄付の一部が建設会社の裏金からねん出されていたことが、別の汚職事件から発覚した」云々と、こういうことがちょっと記事に出ておりますが、これは何かいまから数年前にあったある建設会社の汚職の事件を捜査したときに、これは当然規制の枠の中でございますが、枠の中の金があったような記憶があるという、公の席で記憶があるというあいまいなことを申し上げるのは大変失礼でございますが、その程度の情報は私は得ております。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いま初動捜査の段階ですから、これ以上は言ってもなかなか答弁しないでしょうから、私もきょうはこの程度でおきますがね。  これは大臣、いま統一地方選挙がもう近づいておるわけですね、一年後に。そしてこれは、どっちかと言えば、統一地方選挙の前段の選挙ですよね。そして、こういう実態が起こっておるということになると、これはやっぱり国家公安委員長でもある大臣が一罰百戒の態度で臨んでおかないと、この取り扱いというのは、統一地方選挙を迎えた地方自治体の首長の皆さんがやっぱりどう出るか、これがくぐり抜けることができるのかどうなのか、私はこういう意味を含んで見守っておると思うんですよ。こういうことがここまで明らかになって、領収証まで出てきておる段階で、警察がこの問題について、結果的には何もなかった、大山鳴動してネズミ一匹というようなかっこうになったんではこれはえらいことになると思うんで、いま警察庁の答弁を聞くと、今後の見通しについてはそこまでなかなかおっしゃっていただけないものだから、大臣見解だけ、国家公安委員長としてこれに臨む態度、どういう態度で臨むか、その点だけ聞いておきたいと思います。
  48. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) やはり私は、こうした問題も法令に触れてくる部分があればこれは厳重に調査をすべきものと理解しております。ただ、こういう性格のものは、最初に鳴り物入りでやっていますと大体実体がつかめなくなってしまうので、これは慎重にやった方がいいというふうに考えております。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣ね、国家公安委員長の権威が落ちないようにしてもらわなきゃいかぬと私は思うんですよ。名前は言いませんが、あなたの以前の国家公安委員長が、問題になっておる埼玉の産婦人科の親玉ですね、あれから千二百万か、国家公安委員長就任祝いもらったという事件がございましたね。やっぱりそういうような疑いの目をもって見られておるわけですから——あなたじゃないですよ、前任者か前々任者かもっと前か知らぬけれども。ですから、やっぱり国家公安委員長としてはこういう問題については毅然として対処していく、いやしくもブレーキをかけるようなことはしない、この点はきちっとして国民に明らかにしていかなきゃいかぬと思うんです。その点、もし御意見があれば伺って、この問題は終わりたいと思うんです。
  50. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 警察は、こういった新聞、あるいは情報を入手いたしますと、まず周辺からいろんな調査といいますか、そういった情報を収集いたしまして、それから問題があればその核心に入っていくものと思っております。その点はきわめて厳重であると私どもは理解しております。
  51. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 次に移りますが、これは自治体とも重大なかかわりがあるからきょうはあえてお聞きしたいと思うんですが、先日、国立の東大附属病院分院ですか、ここが東京都から基準看護病院の取り消しがございましたね。これは私、新聞を見ましてすぐ調査してみますと、一回や二回じゃないんです。再三にわたって注意を喚起したけれども聞き入れないので非常措置をとらざるを得なかった、こう言っておるわけです、都の方は。それで、実態を見ると、入院患者百七十五名中四十五名が付き添いがついておる、こういう実態が報告されておるわけですが、近藤院長のお話を新聞で見ますと、基準を守れば患者を守れない、こういうことで割り切っておるように思います。ところが、だんだん私の方に耳に入ってくるのは、これは東大分院だけじゃなくて、他の国公立病院も思いは同じというわけですね、こういう情報が入ってくるんですが、一体厚生省としてこれにどう対応しておるのか、そこをまずお聞きしたいのが一つ。  それから、国立病院、公立病院で基準看護の指定を持っていない実態というのはどういうふうになっておるのか、あわせてひとつお聞きしたい。
  52. 古川武温

    説明員(古川武温君) お答えいたします。  新聞に出ておりました東大医学部附属病院における基準看護の取り消しの件についてでございますが、同じような現象が他の国公立病院でもあるのではないか、その対処はどうかという御質問でございますが、全国なべて見ますと、約三分の一の病院が基準看護をとっております。ベッドで見ますと三分の二になります。国公立病院ではほとんどとっていると、こういうことでございます。  基準看護病院では、その病院の職員によって一切の看護が行われるわけでございますので、患者の負担による付き添いをつけることは認めないということです。  お話しございましたように、東大分院においては再三東京都において指導を行ってきたわけでございますが、本年一月の実地調査においても、患者負担による付き添いが常態として行われていると認められたので、三月一日付で基準看護の承認を取り消したものでございますが、この件につきましては、やはりそうした実態が明確になればそのようなことで厳正に対処していきたいと、こう考えております。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう一つの質問の方は。——三分の一しか基準看護の病院になっていないという実態はどうとらまえているんですか。
  54. 古川武温

    説明員(古川武温君) これは、病院のそれぞれ看護の体制によりまして基準看護をとるとらないというふうなことになると思います。たとえば東大分院のように一類の場合には看護と患者の比が一対四、特二類、一番上のランクでございますと、看護婦の数をふやしまして二・五人で一人の患者さんを見ると、こういうふうな看護体制で患者を見ていくということでございます。それはそれぞれの病院の実情といいますか、どういう患者を主にして見ていくとか、そういういろいろな状況がございまして、それに応じて対応しているところであると考えております。
  55. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすると、もう一つ聞きますが、国立医療センターでございますね。国立医療センターというのは代表的なセンターですが、ここで二百二十床も八年間休眠しておる。こういう実態厚生省の石倉課長ですか、管理課長か、認めておりますように、看護基準がそのものが問題だと、こういう発言をしていますが、ここはこういった問題はどういうふうにあなたたちは理解しておるんですか。
  56. 古川武温

    説明員(古川武温君) まず、病院の看護基準をどういうふうなところでとるかという問題につきましては、病院の中のいろんな問題がここに絡んでまいります。したがいまして、先ほどお話がありましたような、たとえば東大の分院のような場合には、看護の職員数から言えばもっと高い看護ができるような病院でございます。しかし、基準看護をとらないでやろうと、こういうふうな判断を管理者がされているわけでございます。また、医療センターについてはその逆のような現象があるようでございます。  ただ、それが現在の入院料、そうした保険点数の上で十分見られていないからその辺が不十分だということについては、保険局としては、その改定のたびに入院料関係の点数を改善してはきておりますが、現状その他の点数との関係から適正なものであると、こう考えております。
  57. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 新宿の医療センターはいつ申し込んでもなかなかベッドがあかないということで断られるんですよ。私も二回ありました。そういうベッドのあかないところ、物すごく入院患者が多いんだなと思ったところが、実はそうじゃなくて、二百二十床あいています。それで八年間も放置している。それは一体何ですかと言うと、この看護基準ではとても賄い切れないと、こう厚生省の課長が言っておるわけです、基準をつくっておる厚生省で。これはどういうふうに国民に釈明するんですか。
  58. 古川武温

    説明員(古川武温君) 病院それぞれによって保険点数、診療報酬点数による収入以外の要件がいろいろ働いているようでございます。参考のために点数を申し上げますが、たとえば昨年、五十六年の六月の改定でございますが、ここで入院の基本的な料金、たとえば先ほどの一類看護で申しますと大体どのくらいの点数になっておるかと申し上げますと、入院料が百五点とか看護料が幾ら、あるいは普通給食料が幾らと、こういうふうに足していきますと、七百三十二点でございます。また、重症の患者さんのためにはそうした特別の許可というふうなものをいただきますと、一日に、看護として四百、それから室料として個室の場合は二百と、こういうことでございます。そういう場合には一万円を超えると、こういうことでございます。  こういうふうなことで御了解いただけると思うんですが、先ほどから申し上げているように、個々の病院のいろんな事情というのは、たとえば国立については総定員法ですか、そうしたものの縛りもございまして、別の観点からの事情も出ております。
  59. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 恐らくそういうふうに言うだろうと思うんです。看護基準が問題だとはなかなかおっしゃらない。しかし、現実にあなたの方が昨年の点数改正をやりましたですね、そして、やった実態に対して、その上で、全国公私病院連盟という公私立の皆さんから、原価割れ点数是正要求というのが出されていますね。それを見ると、やっぱりここに無理があるんじゃないかという感じがしてならぬのです。その実態を見ると、室料の問題もございますわね。ところが、私立の大学病院というのはほとんど差額ベッドを取っていますね。ところが公立の場合はなかなかそうはいかない、やかましくなるものだから。こういったことで公立の方も非常に厳しい条件の中に置かれておるわけですが、したがって、私も健福の関係をずっとやってきましたけれども、公立の場合にはたとえばその県ごとに持ち出しをして一般会計から入れて、そしてやらなければ維持できない、これが実態だと思うんですよね。  こういったことに対して、自治省は公立病院の問題についてどうとらえておるのか、まずお聞きしておきたいと思うんです。
  60. 坂弘二

    政府委員(坂弘二君) 公立病院と申しますか、厳密に申しますと自治体病院について申し上げます。  自治体病院でまず基準看護を行っている比率でございますが、全体の点につきましては先ほど厚生省の方から御答弁ありましたが、自治体病院だけに限って申しますと、基準看護をいたしておりますのは全病院の六七・八%でございます。しかもこれを一般病院、結核とか精神病院を除きまして一般病院の二百床以上のものについて見ますと、自治体病院のほぼ一〇〇%に近い病院が基準看護を実施しております。  それからまた、その基準看護の内容でございますが、いま問題になっております東京大学の分院は、一類という四人に一人というものでございますが、それに対して、一番高い、患者二・五人に一人という特二類を受けておりますものが、自治体病院の場合は、基準看護の指定を受けているもののうちの五九・九%。非常に自治体病院の場合には高い、濃密な看護が行われていると考えております。
  61. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治体負担は。
  62. 坂弘二

    政府委員(坂弘二君) 自治体病院は地域医療の高度医療の中心になるとか、いろいろ特別の行政的な要素もございますので、それらの分につきましては一般会計からの繰り出しを行っておりますが、何と申しましても収入の最も基礎になりますのが社会保険診療報酬でございますので、その社会保険診療報酬につきましても、公立病院の実態に即するように適時適切な改定が行われたいと、これはわれわれ常に申しております。
  63. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、結果的に基準看護の料率では、これが一番大きな基礎だけれども、それでは自治体病院がこれだけの体制をつくることはできない、一般財源の持ち出しをせざるを得ない、これがいまの自治体の公立病院の実態だと思うんですね。そういうところに今度はおひざ元の国立病院でこういう事件が起こってきた、おたくの一番誇りとする医療センターで二百二十床も休まざるを得ない、こういうことは、基準看護料そのものに問題があるんじゃないか、こういう見解を持たざるを得ないんです。  そこで、連盟の方から要求しておる——特二類というのがいま最高になっていますね、それに対して特三類をつくれと、こういう要求が出てきておる、要求点数の改善の問題が出てきておる。こういった問題であるとか、訪問看護料の新設であるとか、指導相談所の新設であるとか、総合健診料の新設であるとか、こういった問題について厚生省はどういうふうにお考えなんですか。
  64. 古川武温

    説明員(古川武温君) 自治体病院協議会その他からただいま委員がお話しになりましたような要求が出ております。それは承知しております。入院料関係あるいは看護料関係では数十%のアップ、あるいは外科点数の組み直し、こうしたものでございます。医療費改定のたびごとに入院料ですと二〇%、あるいは前回は一〇%でございますが、改善は図っております。外科点数については特に重点的に改善をしております。四〇%程度の改善でありますが、まだ診療側からすれば不満というふうなことで要求があるわけで、そういうことは踏まえながら対処してまいりたいと考えております。
  65. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、あなたの答弁を聞いていると、意味がわからぬのですが、どういうふうにこの問題に対処しようとしておるのかということを聞いておるわけです。たとえば中医協のメンバーを見ますと、ほとんど医師会代表になっておりますね。開業医が中心になっている。それに武見天皇という存在があったでしょう。そこら辺から見ると病院代表というのはほとんど入っていない。そういうことと関連して中医協の中でこれらが押し殺されていっておるという事例もあるんじゃないですか。そこら辺を含めてもっと詳細にひとつ報告してくださいよ、どういう考え方か。
  66. 古川武温

    説明員(古川武温君) 診療報酬の額につきましては、中医協の御意見をいただきながら改定していく、こういう仕組みでございます。  いまのお話しは、中医協委員についてのことでございますが、中医協は三者構成でございまして、一号側は支払い、二号側は診療、そして公益委員とこういう構成でございますが、診療側につきましては、医師会、歯科医師会、薬剤師会の推薦をいただくと、こういうことで委員を推薦いただいて任命するという形をとっております。医師会任命については五名でございまして、従来からその中の一名が病院関係と、こういうふうなことになっておりますが、現在ちょうど御推薦をいただいたところでございますが、そこにも両病院団体の了解を得てお一人の顔が見えるように聞いております。
  67. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、お一人の顔が見えておるかもしれませんが、この原価割れという実態についてはあなたはどうお考えですか。点数。
  68. 古川武温

    説明員(古川武温君) 昨年六月の改定は、従来の医療費の改定の枠からだいぶ、一部の方たちは革命的という言葉まで使われておりますが、やはり医療の未来を見据えた改定だと、このように考えております。そして医療費というのは、個々の診療技術に着目ということは、医療機関の経営というのが一つございますが、やはり国家全体の経済の中で医療費というものを位置づけながら、そうした関係の中で決定していかなければならないものだと、そういうふうに理解しております。
  69. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうまであなたがおっしゃるのなら、もう一つお聞きしますが、あなたがおっしゃった看護料の昨年の引き上げというのは、六・八%ですか。
  70. 古川武温

    説明員(古川武温君) 八・一%です。
  71. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 八・一%ですか。ところが同じ政府の毎月勤労者賃金上昇率というのを見ると、五十六年度が二〇・四%ですか、五十三年からこの三年間で。五十七年度を含めると二七・六%、そういうふうになっていますね。そこら辺がやっぱり一番この問題のネックになっているんじゃないんですか。実態に沿っていない一番問題点じゃないんですか、どうなんですか。
  72. 古川武温

    説明員(古川武温君) 医療費のあり方については、委員の御意見もございますし、そうしたことを踏まえて中医協の御審議をいただき、適正な医療費というものをいただきたいと思っております。
  73. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私はぜひそうしてもらいたいと思うんです。そうしてやっぱり基準看護病院になると付き添いをつけてみても患者の方がそれを請求できぬでしょう、二重払いになりますから。いま専門的な付添看護というのは大体一日一万円ぐらい取りますよね。したがって、終日、二十四時間看護のような重病のときは大変な負担ですよ。せっかくできた基準看護というのが実態に沿っていないために、こういう患者を持つ家族にとっては大変な負担増になってきている。しかもそれが国立病院でこういう実態が赤裸々になるということ自体私は異常だと思うんですよ。あなたのところの——所管は文部省かもしれませんよ。しかし政府が責任を持ってつくっておる病院ですからね。だからそういうような実態というものを踏まえて、基準看護についてやっぱりもっと積極的に、患者の立場それから診療に当たる病院側の意見をくみ上げて、ぜひひとつ適正なものを努力してもらいたい、そういうことを要望しておきたいと思います。  これは自治大臣、さっき自治省の方からも御答弁ありましたが、単に国立だけの問題じゃないんですよ。そのために自治体負担というのが、財政局長からもお聞きになると思いますが、持ち出しが大変な結果になってきていることも事実。そうしなければ地域医療の中核は守れない、こういう実態にあるんだから、私はこれは厚生省の問題というふうにとらえずに、むしろ公立病院を持っておる自治省の、こういう問題に対する発言というんですか、積極的な対応というのがあっていいんじゃないか、こういうふうに思うんですが、見解を承ってこの問題を終わりたいと思います。
  74. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 私も幾らかこの方は存じていますのですが、大まかに言いまして、完全看護、基準看護、この中で、やっぱり症状の重い人はもう一日じゅういろんな問題が出てくるから看護婦がほとんど付ききりになる。それから別なところではわりあい手のかからない病棟もあるというので、一つの病院の中自体がいろいろでして、暇なところと忙しいところといろいろあるかと思います。ただ、総じて看護婦さんの数が、最近は幾らか解決されてきましたけれども、全体としてはまだ間に合わない。それからもう一つ、看護料も入れて、入院料全体として考えていくと、いまの保険のコストでいきますと、まだなかなか十分とは言えないと思います。  こういういろんな事情が錯綜しまして、結果としては自治体などの病院はほとんど赤字である。それから私立の二百ベッドぐらいの病院というのはほとんど基準看護ができないでおる。基準看護をやらなくてもほとんど赤字である。それが今度はいろんな保険の点数や何かにしわ寄せが行って無理をする場合も出てくる。いろいろおもしろくない問題の起こるところでございますが、これは日本の医療体系全体をよく眺めながらやはり改正すべきところはどんどん改正していかなきゃならない。それから、むだなところはどんどん省いていく必要もあるけれども、一番核心に触れるところはやはり医療体系全体をどういうふうにしていくか、こういう今後のいろんな問題点を含んでいるところでございまして、われわれの方の自治体の病院もその中に同じく触れてくるところでありまして、この改正、医療体系の見直しいかんによっては自治体の負担がますます重くなっていく場合もあるし軽くなっていく場合もあるかと思う次第でございます。  私は、やっぱり医療ですから、自治省の方でも負担をするのをいとうことは決してないのでありますが、やはり医療全体をよくよく見直していくということと、この自治体関係の病院に関しましても、なるたけむだを省きながら重点的にそういう基準看護の本来の趣旨を十二分に発揮していける方向にわれわれは努力していくべきであるというふうに考えております。また、そういう方向でわれわれは極力推進してまいる所存でございます。
  75. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私はぜひそういうことを望んでおきたいと思いますが、特に毎年の三月の確定申告を見ると、何というんですか、ベストテンにはほとんど個人のお医者さんが入っておる。どこの県でも市でも開業医がベストテンに入っている。ところが、だからお医者さんはもうけているんだなという国民的な印象はあるけれども、その医者の数の半数を占めるのは病院ですよ。この病院の方は逆立ちして歩いている。ここにぼくは点数配分その他について十三兆円の医療産業の中でも問題があるんじゃないかとかねがね思っているんです。それがいみじくも今度国立病院でこういう事象が出て、それに対して、恐らく私はこのまま放置をすると国公立病院の中で基準看護を辞退する組が出てくる公算が大きいと思うのです。そういうことは今後の日本の医療のあり方にとっても大変なことになる、そう思ったから、きょうはこの問題、厚生省に出てもらってひとつ早急に対処してほしいということを言ったわけです。それが一つ。  それからもう一つの問題は、ニュージャパンと日航の事件が起こった。ところがこのときに、新聞、テレビで、どこどこに負傷者が入院したという病院を、テレビで字幕に出てくるのをずっと見ると、ほとんど国公立病院がないんですよ。一つか二つしかない。あとは全部民間病院と、こうなっている。僕はそこら辺に、国公立病院の救急体制にも問題があるんじゃないかという感じがしてならぬのです。これはぜひ消防庁から一遍意見を聞きたいと思いますがね。私が仄聞するところによると、国公立病院は救急体制がありながら、事実上はやっぱり拒否する例が多いらしい。そこら辺も含めてひとつ検討してもらいたいということをつけ加えておきたいと思います。  時間がございませんから、一つだけ総理府に最後にお聞きしたいと思うのですが、今度は同特法が名前を変えて五年間の時限立法で成立しましたですね。途端におたくの方は、同対室を、何かよく覚えぬが、地域改善室か、名前を変えるということは、印鑑から何から全部やりかえるわけだから大変金がかかることだと思うのですがね。変えられたその意味が私はわからぬのですよね。その意味をひとつ聞かしてもらいたい。  時間がございませんから、同時に、自治体にもこの問題強制しようとしておるのかどうなのか、これもひとつ総理府に聞いておきたいと思います。
  76. 水田努

    政府委員(水田努君) お答え申し上げます。  おかげさまで、三月三十一日に全会一致で地域改善対策特別措置法案が成立をさしていただいたわけでございますが、私が所管いたしております部署は、その地域改善対策特別措置法を所掌しているということと、それからその新法の制定に伴いまして総理府の附属機関として設置されておりますところの同和対策審議会が地域改善対策協議会に名称が変更になりまして、その庶務を私の部署が担当していることから、法律及び私どもが庶務を担当しております地域改善対策協議会の名称の変更に伴いまして同和対策室を地域改善対策室と変更いたした次第でございます。  なお、地方自治体についてはどう対処するのかと、こういうことでございますが、これは法案の審議の際、衆議院内閣委員会自治省の行政局長の方から、地方自治体ではいろいろ御検討があろうかと思うが、最終的には自治体の判断で決められるべきものと考えているという御答弁をいただいているところでございます。
  77. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 法案の中身で、何か同対法と変わったところがあるんですか。そしてまた、変わったところを考えておるんですか、五年先を含めて。どうなんです。
  78. 水田努

    政府委員(水田努君) 法律の名称を変えた点、あるいは今度の新法を運営していくに当たっての精神その他は、それぞれ法案の審議の際に種々確認、質問がございまして、明確にお答えをいたしているところでございます。
  79. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、附則の中でそういうことがあるから名前を変えたのかもしれませんが、同和という問題は、非常にいま定着してきたんです、地域段階では。まあ言うならこれはなじんできたというか、文字も含めて、実態にも。そういう中で地域改善対策室をつくると、その意味解釈を含めてまた二、三年かかりますよ。混乱が起こりますよ。  だから私は、総理府がそういうことに変えたことはやむを得ないとしても、やっぱり地方自治体にこれを波及さしてはならない。しかし、もう兵庫その他でちょろちょろ先駆けをしようというところも出てきておるけれども、これはかえって同和対策特別措置法の持つ意味の混乱を生む、そして後退させる、私はそういうような感じがしてならぬのです。少なくともこの五年間にこの問題を実施をしようとすれば、一日もゆるがせにできない問題でもあろうと思うので、そういう面で自治省自体はこの問題についてどういう見解を持っておるのか、ここで明確にしていただきたいと思います。
  80. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 公共団体の組織の名称、そういうものに関しましては、従来から国自身はこれに対して自主的な判断に任せてまいったわけであります。今回の法律改正に当たりましても、自治省といたしましては、いろいろな点で公共団体がそれ自体で検討をされることがありましょうが、名称その他に関しましては、やはり公共団体が自主的に判断をしてお決めになることだと思っておりますから、そういう組織に対していたずらな干渉はしないというのが従前の立場でありますので、そういう方向を堅持していきたいと思っております。
  81. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこをひとつ堅持をしてやってもらうということで、まだあと七分ありますが、ここでもうやめます。ぜひひとつお願いしておきたいと思います。
  82. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  83. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、地方行政改革に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  84. 大川清幸

    ○大川清幸君 午前中論議があったので、確認のために大臣の御意向をちょっと伺っておきたい問題があります。  それは、佐藤委員との間のやりとりで、地方議員の選挙の制度の問題で新聞報道がいろいろされておりまして、ばらばらになっているやつをまとめようというようなことが骨子のようでございます。私も実は十数年来選挙事務を預かっておりまして、確かに市町村長の選挙等を全部入れますと毎月三つから五つ、多い月は二十ぐらいあるので、事務を取り扱う私の立場で言うとえらい大変なんですよ。ところがよく考えてみると、その町村で選挙がある場合は、町村の人は、一回選挙をやれば後四年ないんですね。ですから住民側の方の負担はあんまりないんですよ。そういう点から考えると、全国をまとめて見ている自治省なり、国の立場なり、政党の事務局の本部なんかでいうと事務量は大変だと思います、これは繁雑で。しかし、有権者側から見れば、そんな繁雑な問題はまずないということから考えまして、まとめることがいいのかどうか。こういう制度の抜本的な改革については国民にも大きな影響がありますので、やはり有権者の立場を最優先で考えていただく方が一番これは賢明な対処の仕方だろう、こう思うわけでございます。  この間の参議院の全国区の問題でも、提案の手続その他から見ても問題意識が欠落している面はないんですかというようなことを私さんざん申し上げたんですが、制度改革については、特に選挙についてはそういう点を慎重に考えていただく必要があると思うんです。とりわけ明年四月は統一選挙を控えておりますので、いま聞くところによると明年の統一選挙まで何か動かしちゃおうかというような話まで出ていましたので、そんな点から考えると、各党関係候補者等が走り出したり首長が走り出している実情の中でございますから、少なくともいまの時点で来年の統一選挙についてどうこうするというようなことはこれははっきりしておいていただいた方が不安を取り除く点でよろしいんじゃないか。それで、地方議員の選挙あるいは首長の選挙について制度をどうするかということはもう少し慎重に時間を置いて考えていただく次元の問題だろう、こう思うのです。統一選挙をにらんだ場合にはここで態度をはっきりしておいていただく必要があるのであって、自民党さんでいま党内で考えていらっしゃることですから政府がどうこうというわけにはいかないかもしれませんが、閣議などのときに、先ほども意見がありましたが、早い時期にこの統一選挙にかかわる部分については明確にしておいていただく方がよろしいんじゃないか、こう思うんですが、御所見を伺っておきます。
  85. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) おっしゃるように、たしか自民党の一部でそういう統一地方選挙ということを検討している向きはあるのでございますが、われわれの方にはまだ実際には聞こえてきておらないのであります。  自治省といたしましては、私は所管大臣としましては、やはり事が選挙でございますから、それは各党いろいろ御事情もあることだし、地方地方でいろいろ御事情もあることでございますから、それを十分総合的に御意見を拝聴しながらわれわれの方は慎重に取り組んでまいりたい。われわれの方もよく調査をいたしまして、その上である時期に発言をしてまいろうと、こういう考えでおるところでございます。
  86. 大川清幸

    ○大川清幸君 それではその点よろしくお願いをいたしたいと思います。  地方交付税の問題は別に日程も予定されておりますので、本日のところは地方交付税の問題で深く立ち入って質疑はいたさないつもりでございますが、基本的な問題について何点かお伺いをいたしておきたいと思います。  まず最初に、国の予算編成時期とほぼ同じころに地方財政計画というのを自治省では毎年作成をなさっておるわけですが、この地方財政計画の性格といいますか、意義ですかね、これは、ごく概括的で結構ですが、どういうことになるのか御説明願いたいと思います。
  87. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 地方財政計画の実質的な意義は、地方財政全体の収支見込みを明らかにすることによりまして、地方財源の不足額に対して税財政制度の改正とか地方交付税率の検討といったようなことで財政収支の適合を図るために必要な措置を講ずる、そういったことでつくるわけでございます。また、自然、地方団体に対して全国規模における地方財政のあるべき姿を示すということでもございます。それと、計画を通じて標準的な事業の内容というものを明らかにする、地方としての施策を明らかにするということがございます。また、そのことを通じまして地方団体の毎年度の財政運営の指標となるということをも頭に置いて作成をしておるものでございまして、基本的には地方交付税法等の規定に基づいて収支の見込みを明らかにしておるものでございます。
  88. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、ただいまの御説明で理解はするんですが、確かに具体的に言えば五十七年度の交付税の総額、これを決めないとやはり地方の計画も立ちませんから、そういう意味では、大蔵省との折衝をする段階でもこれが一番基礎になるんでしょうから、マクロ的な規模での算定が必要なので、これはよくわかります。それからその年度に行う国のいろいろな政策がありまして、当然それを織り込んで財政計画はお立てになるし、それから住民に直結した地方の行政サービスの点でも、どれとどれを柱にするかなんということは毎年織り込まれるので、そういう点での意味合いはよくわかるんですが、一つ問題なのは、三番目に御説明のありました、地方団体に対して地方財政のあるべき姿、それに従って地方団体の財政運営の指針にしてもらうんだと、こういうことで、確かにそういう役割りにはなっているだろうと私は思うんですね。ところが、地方財政計画の基礎になる基準団体の、何といいますか、手続上から言えば測定単位だとかあるいは補正率だとかいろんなものがあって、こう積み上げていってつくりまして基準団体ができますね、サンプルが、できるわけでしょう。全国の大体総和を求めるような手法でこの財政計画というのは積み上がってできてきますね、基準財政需要額と基準財政収入額の差が交付税としてどうするかというようなことになるわけですから。そうすると、トータルではそういう規模になるんですが、個々の地方公共団体それぞれ、都道府県あるいは市町村別で言うと、かなり現実との乖離はこれはどうしても技術的に生じますね、物理的にも。  そこで問題は、都道府県の税収ですね。この点は、御承知のとおり法人二税に大きく依存する形になっていますから、したがって景気の回復がおくれればそれだけ税収が落ち込むというような影響は当然出てくるわけです。五十七年度の当初予算の税収見込みが、前年度比で、地方財政計画では一〇・二%になっていますね。これを上回って税収見込みを立てている県というのは山梨、岐阜、奈良のわずか三県で、地方財政計画とほぼ同率の税収見込みを立てたところが茨城と長野の二県。わずか五県です、これ。それから残りの四十二都道府県は大体一けた台の伸び。静岡県なんかは〇・九%の伸びということでかなり厳しい見方をしていまして、トータルで言うと六・七%の伸びしか見ていませんから、この地方財政計画で言う国側で見ている伸びとは大分乖離がありますね、格差があります。  一方、おもしろいことに、五十六年度の地方財政計画に関連して見てみますと、道府県税の伸びが一一・四%国の方では見ているんですが、この一一・四%を上回った県は五十六年度は十八あるわけです。これは、何といいますか、五十六年度はかなり地方の方が税収の伸びを高く見ているという、こういう形が出ているんですが、これは前年度の税収の伸びを高く見た県は翌年度低くなるというのは、これは、数理的な関係性というのも当然あるだろうと思うんですが、要するに国の地方財政計画の中の税収の伸び率、単純にこれだけを見て全体の判断をするというのは、ちょっと問題があろうかと私は思うんですけれども、五十七年度の場合はどうも地方の方が厳しく税収を見ているようなんで、そういう関係性から相対して見ますと、五十七年度の当初の税収見込み、地方財政計画に盛り込んである分は、これはかなり高めというか、強気で見たんじゃないかというような感じがするわけです、この数字の関係だけ言えば。この点はどう見ますか。
  89. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 先生も御指摘のように、各団体によりまして、ことしはどの程度税収の伸びで予算を組もうかという考え方は、それぞれ団体によりまして違うわけです。いろんな要素がそこにはありまして、もちろん最近の景気回復の過程が地域によって違うという問題が一番基本的にはあると思います。しかし、それだけではございませんで、たとえば、非常に大きな県庁舎の建設事業をやってきたのがことしで終わるということになりますと、財政規模全体が低くなる。しかし、年度途中からまた新しい仕事が何か始まるのじゃないかというような場合には、当初では歳出もしぼって組みますし、と同時に、それに見合う歳入についても多少計上留保というものをいたしまして計上する。そういうふうないろいろな事情が各団体によってまちまちでございますから、その年度当初に各団体におきまして地方財政計画で計上した伸び率を上回って予算をつくった団体が何団体ある、ことしはそれが減っているから渋いということは、一律には言えないだろうとは思います。  しかし、全般的な問題といたしまして、五十七年度の予算編成に当たって各地方団体が相当慎重な予算の編成の仕方をしている、税収の見通しについて必ずしも楽観的な見方を各地方団体ともしていないという傾向は受けとめられるものというふうに私どもは考えております。
  90. 大川清幸

    ○大川清幸君 個々の地方公共団体の状況からいうと、いろいろでこぼこができる実情は私もよくわかるわけですけれども、これは財政計画を立てる時期が二月ごろですから、その年の後へ行っての景気の見通しなんかに変化が起こるので、いろいろ先へ行って補正をするようなことやいろいろなことが起こってくるのは当然なんですけれども、ただ、単純な見方で、五十六年度は財政不足額というのは一兆三百億ぐらいあった。そういう状況にありながら地方団体では道府県の方の税収の伸びの見込みが計画をずっと上回る形で出てきていた。今度、五十七年度の方は、国の方が比較的高く見ているのに、しかも形式的に言えば、地方財政収支のバランスが一応とれた形になっています。実質的にはいろいろまた別に問題があるので二十二日にやりたいと思いますが、そういう形になっている中で、五団体だけが上回った見方で、あとはずっと低い税収見通しを見ている。五十七年度の見通しは大変厳しい、地方公共団体側は見方は厳しいんだろうと思うんです。  そうして見ると、これは意地の悪い聞き方じゃないんですが、先ほどの御説明の地方団体の財政運営の指針を提供しているとすると、その辺の意味合いはどうなんだろうかと疑問がわいてくるんですが、この辺はどう説明をされますか。
  91. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 私どもは、地方財政計面を作成します段階におきましては、そのときで最も適切と思われるいろいろな指標をもとにして過去の実績等も頭に置きながら推計をしていくわけでございまして、いわばきわめて平均的な形で出てこざるを得ないと思うのでございます。したがいまして、現実の地方団体の予算に計上されたものが計画を上回ることもあればその逆の場合もあるということはこれは当然でございまして、地方団体は地方財政計画で示された指標、その基礎になる指標などをいろいろ検討しながらも、御承知のように景気の動向というのは地域によって異なりますために、それぞれの地域の経済情勢などを踏まえて税収を見込むということがございますし、また、先ほども話がございましたが、当初予算においては補正財源を留保していくといったこと等もございまして、通年分の税収見込み額を計上しないということもあり得るわけでございますので、若干違うと思うのでございます。  しかし、五十六年度が一一・四%の地財計画の見込みの際に都道府県では一〇・一%ということで、全体としては低いようでございます。今回は一〇・二%と都道府県で見ておりまして、骨格予算を編成しておる団体を除けば六・七ということで、ややそこの差はあるようでございますが、率直に申し上げまして私どもも去年の暮れあたりからいろいろと経済の動向等については注目もしておりまして、大体全体としては政府経済見通し等を見ればこれくらいでいくであろう、しかし、全体として景気そのものにもいろいろ懸念材料もあるから、地域の実態を十分見きわめた上で、一律に考えないで慎重に対処をすべきであるということなども含めながら実はいろいろ指導をしてきておったということがございます。したがいまして、そういうことを頭に置きながら、若干やはり慎重な態度が出ておるなとは思っております。  ただ、昨年の例を見ても、九月補正でかなりいろいろな変化もあるわけでございますので、最終的にどうなるかということはわかりませんけれども、おっしゃいますように、数がかなり違っておるから指針として役に立っていないのじゃないかという御指摘でございますが、やはりそういった私どもの基礎や何かいろいろ調べて、それぞれの団体の実態に即した見方をしておる、あるいはまた、政策的配慮などを加えてつくっておるわけでございます。私どもとしては、これは十分地方団体は指針として使ってもらっておると思っておるわけでございます。
  92. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、五十六年度の税収の見込みについては予算委員会でもさんざんやって、私の記憶では、私は三月の十五日ごろ質問に立って大蔵大臣にもいろいろ見通しを聞いたのですが、時間的な問題があったものだから、しかも予算案を出している段階で全くおっしゃるとおり税収は落ち込むなんという答弁はできないのは、これは私も立場上よくわかるのですが、参議院の予算委員会が済んで一日か二日たったら、何か二兆円がなんだかんだというのは、全くあの予算委員会での大蔵大臣以下の答弁というのはひどいものだなと私は思っているので、いずれまた補正予算の委員会でもあったら一回物を言わなければいかぬと思っているのです。  それはそれとして、この五十六年度の税収、当初予算に対して二兆二千億、あれは補正後の見込みでおっしゃっている。しかも、大蔵省側の言い方は、決算調整期間の五月まで取り込んだ分で言っていると思うのですよ。ですから、地方税の方へ響いてくる分については多少、これ試算をしてみなければわからないけれども、大蔵省の二兆二千億か幾らか知りませんが、その落み込み部分で全部地方税に響く分を計算する必要はなかろうというふうに思っているのですが、先ほど午前中の質疑のやりとりで、明確な数字の見込みはちょっとわからないという財政局長の御答弁があったので、同じこの席で余り明確な答弁はいただけないだろうと思うのですが、この地方税の落ち込み分についての処置の仕方についてはどうされるのですか。数字の推測はさっき答弁できないと言ったからそれは結構ですけれども
  93. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国の方も、私ども公式には大蔵当局から資料をもらって説明を受けておるわけではございませんが、一回補正した後で法人税を中心にかなり落ち込んで、予定どおり確保できるかどうか危ぶまれておると聞いておるわけでございます。  そういった傾向がございますから、ただ、法人関係税の歳入所属年度区分が少し違いますので国と違うことは御承知のとおりでございますけれども地方団体においても、法人関係税を中心にかなり落ち込んだところが出てまいります。したがいまして、私どもとしては、交付税算定上見込んでおった税収どおりにいかないところからいろいろ申請が出てまいっておりますので、その点についてはすでにもう新聞等にも出ておりましたが、千七百七十億円の減収補てん債を許可するということで発表しておるところでございまして、そこらは地方団体が自分のところの財政状況を考え、税収決算見込みなどを十分踏まえて申請されたわけでございまして、私どもよく事情を聞いた上で対応したつもりでございます。
  94. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうすると、ちょっと念のために聞いておきますが、この二十四都道府県とそれから十八市町村、これに対して、ただいま御答弁のありました一千七百七十億ですか、この起債を認める方針をとられたようですが、そうするとこの分は、見合い分としては、いまいろいろ論議をしている補正以後の税収の国税部分での落ち込みですね、それも見合いに含んだ意味での認可ですか。そうじゃないでしょう。
  95. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国税が落ち込んだということで直接響いてくるのは交付税でございます。その分が実はもう予算として支出を受けておりますから五十六年度は地方財政には影響はない。ただその問題は、先ほど申し上げましたように、五十八年で精算をすることになります。そこで精算減が出てまいります。これをどうするかということが次の問題として出てくるわけでございまして、地方税そのものは法人関係税が落ち込んだので、それで交付税で見ておった分と差が出たものについては実態に応じて必要な減収補てん債を許可をいたしまして、財政運営支障のないような措置をとる、こういうことでございます。
  96. 大川清幸

    ○大川清幸君 それで、ちょっと古い話に戻るのですが、古い話といってもついこの間ですが、五十六年度の補正予算のときに余りこれは論議にならなかったのですが、所得税の自然減収分ですね、これが二百八十四億八千万円でしたか、これの二分の一見ようというようなことになって、これはこのまま通っちゃったからいいですけれども、補正後の所得税の自然減収分についての二分の一の見方というのは、これは原則はあるんですか、どうですか。私の記憶では、かつて昭和五十三年の何か二分の一見る約束事みたいなことが自治省と大蔵省ありましたね。あれと同じ原則ということなんですか。
  97. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 少し御説明を申し上げますと、前回の補正におきましては、政策減税分といわゆる自然減収分とあったわけでございまして、政策減税分に対応するものは百五十五億ございましたが、これは国の政策に基づいて国が減税をするということで特別の措置をとったものでございますから、それは国の政策によってはね返りを受けたということでございますので、五十二年度とか五十三年度の戻し減税の場合と同じように、全額国が負担するということをしたわけでございます。  これに対して自然減収分対応するものは、ただいまお示しのございました約二百八十五億でございますが、これについてはどうするかということは、広く諸般の状況を考慮して負担関係を決定すべきものと考えられるわけでございますが、今回の場合は、ただいまお話がございましたように、五十三年度の制度改正によりまして財源不足に係る借入金について国の二分の一負担というルールがすでに設けられておるわけでございまして、ちょっと言い方がどうかと思いますが、当初から国税三税の見込み額が低い形であったならばそれに見合う額はやはり借入金で措置したわけでございますから、五十六年度もその見合う額は地方財源不足額ということで同じように交付税特会で借り入れて措置をして二分の一は国が負担すると、こういう形になったものだと私どもとしては考えざるを得ないわけでございまして、せっかくそういうルールがございますので、自然減収分についてはそういう扱いをした。  同時にまた、それについて全額国が負ってくれと言ってもなかなか国の財政状況も厳しいということもございましたので、そういう状況であるからこそ、また五十三年度に二分の一負担のルールというものを決めたわけでございます。そういうことを踏まえまして二分の一を地方が負担するということはやむを得ないというふうに判断をしたわけでございます。
  98. 大川清幸

    ○大川清幸君 これは余り交付税のことをずっと突っ込んでやるのもどうかと思うんですが、この不足分なり減収があった分の補てんなり、肩がわりの仕方ですね、従来いろいろ経緯があったんですが、たとえば昭和四十年の補正のときの四百八十二億なんというのは、これは国側の国税三税の減額補正に伴う地方交付税の減額だったわけですね。このときにはたしか国が全部負担したんですね、国の方の減額補正に伴う分として。このときはどうですか。
  99. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 四十年度は、これは国税三税の減額補正を行いましたが、交付税の当初予算計上額を確保しまして精算は行わないというかっこうで見た例はございます。もちろんその後いろいろなやり方が、それを調整する方法はございましたけれども、その年度においてはそういうやり方をいたしたわけでございます。
  100. 大川清幸

    ○大川清幸君 それで四十六年度の補正の千二百七十三億、これも同じような形のものですが、この分で地方借入分については、四十九年にそっくりこれは地方へ持たせた形で処理をしたんでしたか、どうですか。
  101. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) これも政策減税分と自然減収分と両方ございましたが、自然減収分については、交付税特別会計で借り入れを行って、四十七年度から五十四年度の間に償還金について全額地方負担というかっこうで処理をしたわけでございます。
  102. 大川清幸

    ○大川清幸君 ですから、これは五十三年に制度化して、二分の一、半分ずつにしましょうというふうなことを決めたことは、五十六年度の分を始末した形から見れば、地方の方がそれだけしょい込むのが楽になった形になっているからいいんですけれども、二分の一の原則を決めた根拠は何だったんですか。
  103. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) こういった問題が起こりましたのは、たびたび御答弁申し上げておりますように、五十年度以来地方財政について収支の不均衡ということになりまして、五十三年度以降、地方交付税法第六条の三第二項の規定に該当するということで交付税率を引き上げようということで盛んにやった。ところが、交付税率の引き上げというような、国と地方との間の財源配分の基本原則を変えるということはなかなかできない、国の財政も厳しいということで、交付税法の附則の改正によりまして、借り入れたものを実質二分の一は国が負担するという法律制度を設けたわけでございます。これがいわば六条の三第二項の、交付税率の引き上げまたは地方財政制度の改善に当たるということで今日まで来ておるわけでございます。私どもとしては、これは暫定的な措置でやむを得ないということで受け入れておるというのが事実でございます。
  104. 大川清幸

    ○大川清幸君 それではその問題はこの程度にしまして、次に、五十七年度地方単独事業を地方財政計画の中で見ると、これは大分見込みが積極的な形で組み込まれているわけです。前回もちょっとお伺いしたんですが、五十二年度で九千九百五十一億円ですか、それから五十三年度では一兆三千八百四十五億円、これは計画額と決算額ではやっぱりこれだけの乖離があるわけです。五十四年、五十五年の実績はどうなっているんですか。これはわかりますか。
  105. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 五十四年、五十五年につきましては、まだ正確な計算はいたしておりませんが、単独事業につきましてはやはり乖離があると考えております。
  106. 大川清幸

    ○大川清幸君 その乖離の程度がどの程度か、いまおわかりにならないようですが、心配するのは、五十二年、五十三年と、各年度乖離の額が大きくなっていますから、だから五十四年、五十五年もこの傾向たどっていやせぬかどうだろうかという心配がこちらにはあるわけなんですよ。したがって、そういう傾向がもしあらわれているとすれば、とりわけ五十七年度なんというのは景気の見通しは条件が悪いわけですから、そういう点から考えると、単独事業をせっかくいろんな政策的な意味合いがあってつけていただいたんだけれども、これ、受け皿の地方公共団体の方でこなすことができるだろうかという心配があるものですから、その辺のことに関連して、五十四、五十五年度の実績は一体どうなんだろうかということをいま伺ったわけですが、見込みはどう考えておりますか。
  107. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) ただいま審議官から申し上げましたように、五十五年度はまだ実績は出ておりませんが、最近の傾向と私どもがいろいろ耳にしておるところから考えますと、やっぱり五十四、五十五年度もかなり乖離はあるというふうに見ておるわけでございます。せっかく五十七年度で単独事業を伸ばすということであるが、過去の実績から見れば果たしてそれがうまくいくんだろうかということでございます。  実は私どももその点非常に気にしておりまして、ことし初めの全国総務部長会議等でも、最近の経済情勢なり、特に財政力の弱い地方の中小企業の状況等を見ましても、ある程度単独事業を伸ばすべきだということで、特に注意をして指導をしてきたわけでございますが、御承知のように、公共事業がかなり、三年引き続いて横ばいというかっこうになってくるわけでございまして、二年度あたりになりましてから——五十六年度でございます、これも決算を見なきゃわからないわけでございますが、私どもが注意をしておりますと、やはり実際の要請というものがあるからだと思いますが、かなり財政計画よりも予算の伸びが大きくなってきておる。これも前に申し上げたことでございますが、昨年の九月で、五十六年度でも一〇・六%という都道府県の伸び率になっておりますから、計画の八%よりは高くなっておる。したがいまして、五十七年度もある程度伸ばすだろうと思っております。  ただ、先ほどもちょっと話が出たわけでございますが、実際の都道府県の状況を見ますと、私どもが計画で見たところよりは全体としては低くなっております。ただし、全体としては五・九%の伸びということでございますから八・五よりは低くなっておるわけでございます。ただ、団体別に見れば、地方財政の八・五%を上回る伸びを確保しております団体が二十六、一〇%を超える団体も十七に上っておるわけでございまして、いろいろな団体がかなりそういう点では力を入れておるというような感覚は持っております。しかし、全体としてはいま申し上げましたように伸びを下回っておるわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、当初予算の段階では地方税収を初めとして歳入をやや控え目に見て、九月補正でかなりの肉づけを行うということも考えられるわけでございますので、まだ全体として申し上げるのには早いとは思います。  ただ、私どもとしては、計画に即して仕事がやれるように、交付税なり、特に地方債等でも、地方団体の要請にいろいろ応じられるような改善も加えておるところでございますので、今後の動向を見守りたいと思っておるところでございます。
  108. 大川清幸

    ○大川清幸君 確かに、単独事業は前年比で八・五%の伸びを見込んでおって、都道府県レベルで見ても二十六団体から七団体ぐらいが大体これに見合うだけの見込みをしておりますので、各地域の経済を刺激する観点等から国の施策と同じ方向でこの単独事業に積極的に取り組もうという姿勢が見えておりますから、その点ではそこそこ実績が上がるのかなというふうに私も期待はするんですけれども、一方、この地方財政計画の中で見ましても、普通建設事業費だとか、災害復旧事業費なんかは、実際前年度で済んでしまっていればその分減るのはわかるのですが、やはり国のゼロシーリングなんかの関係もあるものですから、公共事業費の中でも普通建設事業費等二・五%マイナスで、投資的経費全体で伸びてはいますが、直轄事業の六・九があるのでやっと伸びが二・幾らという形になっていますね。  ですから、そういう意味での公共事業投資がやはり抑えぎみの形の中で、地方公共団体における単独事業の投資的な事業、こういうようなものがうまくいくかどうかという心配がもう一面から言うとあるんですが、この辺についてはどう判断されていますか。
  109. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 確かに私どももそこは気がかりなところでございまして、こういった中でいろいろと財政運営上にも懸念材料があるときでございますから、いろいろと地方団体はそれなりで検討をされておるわけでございましょうが、全般としては慎重な態度もあるということでございましょう。  しかしながら、現実に、いろいろ先ほども申し上げましたように、地方団体の実態を見ますと、どうしてもそういった点に力を入れなければならないような実情というものが出てきておりますので、私どもとしては、地方団体もそういう特に財政力の弱い地域というものは公共事業その他の公的な仕事にかかっておるという点が多うございますので、そういうことから今後かなり仕事は進めていくのじゃないだろうかと思っております。  まだ新年度が始まったばかりでございますので具体的な実績はわかりませんが、私どもも財務調査官等を通じまして常に各団体の実態を把握してまいっておりますので、いろいろと相談に応じて、われわれとして対応できるものがあればできるだけ適切な対応をしてやりたいと思っておるところでございます。
  110. 大川清幸

    ○大川清幸君 まあこれは一年間の財政運営では大変なところだと思いますが、特に目玉にしていらっしゃるところでしょうから、特段の努力をお願いしたいと思います。  次に、大臣にお伺いしますが、本年度は予算編成の段階でこれは問題にならなかったからよかったんですが、かねて問題になっております国民健康保険給付費、それから児童手当、それから特別児童扶養手当、これらの費用について、一部地方への肩がわり問題がかねてございました。五十七年度はがんばっていただいて免れたんですが、やはり財政事情が厳しい点から考えますと、厚生大臣大蔵大臣と、大臣同士のお約束事もあるのでね、こういう点から考えると、明年度以降またこの問題がいつかぶり返すんだろうと思うんですが、こいつだけはどうしても防いでいただきたいと思うんですが、その辺についての考え方を伺っておきます。
  111. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) この問題は、単なる国から地方へのつけ回しを行うとすれば、これは反対せざるを得ないものでございまして、これは厳しい態度で臨むつもりでおります。ただ、もう一つ、大蔵、厚生、自治、三大臣の間の合意事項の項目がございますが、これは国民健康保険も含めて医療保険、これを大きな立場から見ていくという一つの項目がございます。この中に、国民健康保険のあり方がその保険の一部として出てくるわけでございますが、これは今後どういうふうに医療保険を扱っていくかということは大きな国の財政的な問題でもあるし、医療福祉の関係ももちろんありますし、非常に大きい問題になってきますので、これは今後検討を進めていくべきである。それ以外の単なるつけ回しは、これは厳しい態度でわれわれも臨んで、反対の姿勢を持っているわけでございます。
  112. 大川清幸

    ○大川清幸君 慎重にひとつお願いをいたしたいと思います。  次に、国の機関委任事務に係る情報公開の問題で、これは予算委員会でもお伺いをして、中曽根長官から比較的前向きな御答弁をいただいたんですが、先般の衆議院内閣委員会等でもかなり前向きの御答弁があったんで、この方向でよろしかろうと思うんですけれども、問題は、主務大臣の指揮監督のもとに首長の責任と判断で処理さるべきだという答弁、これは一昨年ですか、あったわけで、そいつはまだ消えていない、生きた形になっているような感じもあるんで、今回の答弁とはちょっとその辺の意味合いが違うようなんで、はっきりしておいた方が地方公共団体の方も安心するんじゃないかと思うんで、明快な解釈をもう一回聞いておきたいと思います。
  113. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 一昨年でしたか、石破大臣のときに私がお答申し上げました、主務大臣の指揮監督のもとにおいて、公共団体の長の責任と判断でやることだということを申し上げましたが、基本的にはその考え方が別に変わっているとは私は思っておりません。  それは、要するにそれをどういうふうに理解をしたかに実はかかっておるわけでありまして、地方公共団体の行政全体の中に占めます機関委任事務というのは、府県を考えてみますと大変多うございます。したがいまして、こういう機関委任事務に関連して収集されあるいは作成されました文書なりそういうものが情報公開されないということになりますと、情報公開の効果というのは非常に低下をするというふうに考えられるわけであります。このために情報公開というものをどういう点からこれを見ていくかということについて、その後申し上げました私の発言の内容について、どういうふうに、いつの段階でその内容を申し上げるかというのは大変私たち自身も実は苦労しておったわけでありますが、基本的にはもうそろそろ自治省の物の考え方というのをお示しした方がよかろうではないかということがございましたので、過日内閣委員会において私の方の行政課長から、あるいは前回の衆議院地方行政委員会において私から実はお答えを申し上げております。  それは大体三点にわたっていると考えております。  一つは、情報公開というのをどういうふうに見るかという見方の問題であります。私たちは、情報公開というのは、現実の事務処理の面から見ますと、これは公文書管理の一つの態様だというふうに見ておるということが一つであります。そういうことに見ることができるのではないかというのが一つでございます。  第二点は、現在地方公共団体が機関委任事務の処理に関連をいたしまして作成したりあるいは収集した文書というものを、これを情報と考えますならば、そういうものを管理をいたしているわけでありますが、これは従来から公共団体においては固有事務だと考えておったのではないだろうか。したがいまして、他の固有事務と機関委任事務で収集した、あるいは作成をした文書とを特段区別する理由がないのではないか。  それから第三点は、現在までに主務大臣からこういう文書の管理のあり方についていろいろの指示というものが、例外的にはあったかもしらぬけれども、余りなかったのではないか。そういう意味では一般的に国自身もそういう文書の管理については暗黙に固有事務だということを観念をされてきたものではないだろうか、こういうふうに考えておるわけであります。したがいまして、情報公開に当たっての機関委任事務については一般的にはやはり固有事務というふうに観念をしながらこれを長の責任と判断においてなしていくべきものではないかというふうに考えております。  ただ、こういう文書の中に、国側がいろいろな観点から見まして情報公開するかあるいは否かということについて、全く主務大臣の指導がなされないというのではないだろう、やっぱりある部分については機関委任事務あるいはそれに密接に関連する部分について主務大臣というものが指揮監督することはあり得るわけでありますから、そういうもの以外については公共団体の長の責任と判断において処理されるということの方が望ましい、そういうふうに申し上げておったわけでございます。
  114. 大川清幸

    ○大川清幸君 大体それで意味もわかったし、それから地方公共団体側も情報公開に対する処理については従来よりもやりやすい形にはなったんだろうというふうに私も思うんですけれども、その情報というか文書の中身によっては確かに公開しない方がいいような性格のものも、それは時間的な制約とかそれから将来ともにとか、いろんな性格のものがあると思うんです。そういうものは地方事務で扱っている国の機関委任事務の中でもむずかしいものは、防衛その他は話は全然別ですからね、そういう点から考えれば余り問題ないんじゃなかろうか。プライバシーの問題等についても地方の長がそれなりにやっぱり判断をすればそんなにばかばかしい突拍子もないことをやるようなことは考えられませんから、ですから、ただいまの答弁で言うと、どっちに比重がかかっているのかというのがやっぱり当事者である地方公共団体の長にするとちょっと頭の痛いところじゃないかと思うんですが、原則的に地方公共団体で扱っている機関委任事務に係る問題は、事務処理上の実情から考えれば、ただいまの説明のあったとおり、地方本来の固有の事務と同じ性格と原則的には判断なさる、したがって、ほとんどは地方の長の判断で条例化をするなり何なりでこれは実行できるという解釈でよろしいんですか。
  115. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 情報公開をするに当たりまして、実はいろいろなことを考えなきゃならぬのだと思っております。    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕 文書をどういうふうに保管をするかということから始まりましていろんなことを考えなきゃいかぬわけでありますが、その中でいま問題になっておりますのは、結局、公共団体全体的に見ましてどういうものを非公開にするかということにかかわっている問題だと思っております。そういう点で、いま御質問がございましたように、確かに公共団体には秘密にしなきゃならぬものも行政の執行上ないわけじゃありませんから、そういうものは具体的にいろいろ教えていただければよいと思いますし、非公開の中におきましても、いまお話がありましたプライバシーの問題でありますとか、企業秘密でありますとか、あるいは任意提供の問題をどうするかとか、さらには行政の意思決定過程までこれを公表しなきゃいかぬのかとか、あるいは犯罪捜査をどうするとか、いろんな問題が実は公共団体の中に存在をいたしているわけであります。そういうものと絡ませながら、機関委任事務についても公共団体の方で、これは公開されては困るという国側の意思があるのなら、そこは機関委任事務である以上指揮監督を受けるには、それはやむを得ないことだというふうに思っているということでございます。
  116. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、これもすでに対処はされたんだと思いますが、山形県の例の村山市、これは人口三万幾らの小さな市だそうでございますが、道路工事に係る起債の申請で、どうも五年間ごまかしがあったという報道がございまして、どうしてこんなことが起こったのか、県の地方課なんかでは手足も余りないし、一々そんな細かいところまで見て歩けないというふうなこともあるんで、しかも、奈良県の香芝町じゃありませんが、もともと仕組んでやられたらなかなかこれはチェックがむずかしいだろうという実情はわかります。しかし、これは知事の所管になる分ですが、一億六千万円程度ですか、起債の許可がずっと五年間もわからなかったというようなことについては、やっぱりちょっと自治省としても指導をしておく必要がありますね、これは。どんなふうに処理をされておりますか。
  117. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 村山市について、臨時地方道整備事業債につきまして不適正な運用があったことは御指摘のとおりでございまして、そのことがわかりまして県としては償還をさせるといったようなことで措置をしておるわけでございます。聞いてみますと、いろんな原因があるわけでございますが、ある程度注意しておれば失敗しなかったと申しますか、そういうものもあるようでございまして、その点、担当の方で少し不注意な点もあったようなことも聞いております。しかし、結果として不適正な運用があったということは事実でございまして、私どもとしては、直接の起債許可権者は山形県でございますので、こういった問題が再び起こらないように、起債許可なり財務監視に当たって適切な方策を講ずるように求めていきたいと思っております。  私どもとしても、起債の適正な運用の確保についていままでも注意は促しておるわけでございますが、いろいろな機会に絶えず注意を喚起して緊張が解けないように、そういった何らかの方法というものを考えていきたいと思っておるところでございます。
  118. 大川清幸

    ○大川清幸君 確かに県の方では返させるような措置をしたように報道されているんですけれども、この一億六千万円ですが、実際にどんな事業に使っちゃったんだかわかっていますか。余り細かいところまでわかりませんか。
  119. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 細かくはわかっておりませんが、一億五千七百万ぐらいになっておりますが、そのうちの五千万ぐらいは、すでに完成しておった道路をうっかり申請したというようなものがございます。それから、手続等をとれば十分やれたものを手続を忘れておったというものもございます。これが相当な部分ございます。細かいものを一々ここに持っておりませんが、中には起債措置が不可能であったもの、たとえば広場とか駐車場とか測溝といったようなものを一緒につい含めて申請しておったというようなこと等もございます。先ほど香芝の話がございましたが、それほどのものではないように思いますが、やはり不適正な使用は使用でございますので、措置はきちんとしたいと思っております。
  120. 大川清幸

    ○大川清幸君 次に、先ほどもちょっと問題になっていましたが、別の角度からお伺いをしてみたいんですが、三公社五現業の給与をめぐる仲裁裁定の問題でいろいろ論議になっていますし、人事院の外郭団体である日本人事行政研究所、理事長さんが尾崎さんという方ですが、これが十八日に「公務員等公共部門の人事管理を考えるための基礎調査」というのを発表になっておりまして、国家公務員ですとかあるいはいま言った三公社五現業に対するアンケート調査みたいなことの報告がなされておるわけです。  その中で、地方公務員の給与に係る部分でございますが、市町村職員の給与決定については人事委員会のような勧告機関の設置が望ましいというような報告が出ているんです。これは都道府県ですと人事委員会がありまして、国の人事院と同じような事務処理をしているわけですが、御承知のとおり、市町村の方はそれがなくてやっている慣行になっているわけです。しかし、市町村はどうも国家公務員よりも極端に高かったり、でこぼこがかなり顕著なところがありますね。それで、いまの時代ですからやっぱり住民から厳しい批判を受けたりするわけで、それなりの対処は地方公共団体でもそれぞれしていかなきゃならぬだろうと思っているわけです。  これ、制度的にはこういう調査の結果が出ているからといって、こういう制度がいいかどうかは問題だろうと思うんですが、国家公務員地方公務員の給与の問題、退職金の問題等が、納税者、国民の側から言えば論議の焦点に今後もどうせなるんでね、そういう点から考えると、対処をするのにどうしたらいいかということは一応は考慮しておく必要があるんじゃないか、こう思うんですけれども、この辺についてはどうお考えになりますか。
  121. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 地方公務員の給与につきまして、人事委員会の勧告があれば適正な給与水準が保たれるのではないかというのがその調査の結果の根底になっておると思います。そういう点におきましては人事委員会の機能が評価されておるということで、これは大変私どもとしてはありがたいことだと思いますし、また、人事委員会はその期待にこたえるべく一層の努力をすべきだと思います。  市町村にすべて人事委員会を必置とするということにつきましては、これはやはりその規模なりあるいは職員数といったようなものが都道府県、指定都市に及びませんし、また、都道府県のように警察等の職員が存在するということでもございませんで、単独で人事委員会をそれぞれ設けるという場合にはかなりの人員なりあるいは経費が必要になると思います。それからまた、仮に都道府県の人事委員会に市町村の勧告を委託するとした場合であっても、給与水準の異なります構成市町村ごとに給与の適正化の勧告を行うというようなことにつきましては、実際上なかなかこれはむずかしいことになると思います。  御案内のとおり、現在都道府県と指定都市については人事委員会が必置でございますし、十五万人以上の市につきましては人事委員会あるいは公平委員会いずれかを置くことができるという形になっておりますので、それぞれの団体におきます実情といったものを勘案をいたしまして、そういったところでは人事委員会を置くか、あるいは公平委員会を置くか、いずれかを適切に選択すべきだというふうに考えております。  仮に市町村に人事委員会を置かないということにいたしましても、給与の適正化というのは現在の国民的な課題でもございますし、給与の改定に当たりましては国なりあるいは他の地方公共団体の職員なり、あるいは民間の事業の従事者といったような方々の給与を考慮して適正に行われなければならぬということは申し上げるまでもないわけでございまして、最終的には住民の代表機関でございます議会の納得と支持が十分得られるというような形で地方公務員の給与水準というものは決めていかれなければならないものだと、このように考えております。したがいまして、現在のこの制度をいま直ちに変更するというようなことは考えていないところでございます。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕
  122. 大川清幸

    ○大川清幸君 やはり地方公務員の給与の問題は余り国の方からとやかく干渉してもらわない方がいいと私も原則的には思っているんですよ。ただ財政規模もそうしっかりしていない小さな市町村で、やはり極端に給与ベースが高くて住民から非難を受けたりするようなことがあっては、これはまずいわけですから、したがってその市町村レベルでのそうした問題については現行の制度の中でも、制裁措置やなんかをやっては困るんですが、指導をして抑制していくというか、住民の納得のいく方向での指導、これはいまの制度のままでも可能だと、そういうふうに考えておられるわけですね。その点は大臣いいんでしょうか、そういう解釈で。
  123. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) おっしゃるとおりでございまして、国は直接市町村にこうしろああしろということは関与しない方針でございます。
  124. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間がなくなりましたから、一つだけ聞いておきますが、五十五年四月に自治省さんで出した「地方行政改善調査結果報告書」というのがありまして、大変これりっぱなもので、ずっと私読んでみたんです。いろんな問題が細かく取り上げられてあって、目的は、「地方公共団体の率直な意向を調査把握し、地方行政の改善に資そうとするものである。」と、こういうことになっていますが、五十五年にでき上がって二年たっておりますが、これらのものが早速ばたばた端から解決をするなんということはとても無理なことでございますが、この中では、基本的には、国と地方事務配分なんという大変でかい問題もあって、これはなかなか臨調あたりの意向も聞かなきゃどうにもならぬ問題もあろうと思うんですが、かねて言われておったような機関委任事務の処理の仕方等についても有効な意見がたくさん挙がっているようです。これは、実行方についてはどのような手法で進めていらっしゃるんですか。
  125. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお話のございました地方行政の改善調査の問題は、実は五十四年に行ったものを五十五年に公表したものでございます。これは十年前に一度やったことがございまして、折々、地方公共団体におきます国に対するいろんな注文がございますから、そういうものを聞いておくというのは大変大事なことでございますし、そういう結果を各省庁にお知らせをしておき、政府全体の中でやはり是正をしていく方向に心がけるべきだと思っておりますものですから、そういうものを実はまとめまして国の政府機関に全部配付をいたしておるわけでありますが、おっしゃられますように、この問題、結局地方制度調査会の答申と全く同じようなことでありますが、なかなか政府の中で意見一致がないということで実行はできないという面がございます。  そういうこともありますので、その文書も実は臨調に提出をしてございまして、この際は臨調の方でもその中をひとつごらんいただいて大所高所から御検討になって、もしその中で、確かにそうだと、なるほど住民の身近な行政というのは身近なところで行わせるべきだという原則に立っていただけるなら、そういうことというのはわりあいに実行可能なものが多いのではないかという感じがございますから、そういう観点から実はそれは臨調にも提出してございますし、先ほど申し上げましたように関係の各方面にお配りをして参考に供しているわけであります。
  126. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間が来ましたから、以上で結構です。
  127. 神谷信之助

    神谷信之助君 第一テーマは、大体主として大臣にお答えいただく質問が多いと思うんですが、まず、先般の大臣の所信の中で、「かねてから民主政治の基盤は地方自治にあると確信しております。」というようにおっしゃっているんですけれども、この問題、いわゆる地方自治とは具体的にどう御認識なさっているかどうか、まずこの点をお聞きしたいと思います。
  128. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 憲法に規定してあります「地方自治の本旨」をわれわれ流にとらえてみますと、地方公共団体の自主性とか自律性が十分発揮できるような自治の制度を決めて運営することであると、そのように理解しております。
  129. 神谷信之助

    神谷信之助君 さらに、所信の中で、「新しい時代に即応した地方自治の確立」というようにおっしゃっておられるわけですけれども、この「新しい時代」というのは何を展望されておるのか。それに「即応した地方自治の確立」とおっしゃっているこの具体的な内容といいますか、一体何を問題とされているのか。この点はいかがでしょうか。
  130. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 「新しい時代」というのは、つまり日本だけでとらえてみますと、これは日本がかなりの経済成長を示しまして現在に至っている。その上に立って地方を考えますと、過去の自治のあり方とまた異なった観点、立場、展開、こういうものがあらわれてくると思います。これは国際的な、実際の世界経済とか世界の情勢の動きも日本の地方自治にとっては全然無関係ではないのでございまして、こういういろんな総合的なものから生み出されていく地方自治への新しい見方、考え方、その上に立っての政治の構想、こういうことを私は意味するものと考えております。
  131. 神谷信之助

    神谷信之助君 以上、ちょっと理屈っぽい聞き方をしましたが、後は具体的にその点をただしていきたいと思うんです。  そこで、鈴木総理はよく行財政改革に政治生命をかけるということを公約されておるんですけれども一般には、しかしその中身というのは、あるいは具体化というものは第二臨調任せという批判が強いと思うのです。したがって、この点、そういう批判に対して閣僚の一員としてどう考えるのか。臨調答申を尊重するということは、それをうのみにするということなのかどうか。この点はいかがですか。
  132. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) この第二臨調のいろんな部会における検討の基本点、こういうことから発する御質問でございますが、私は、尊重するのにやぶさかではないんですが、尊重ということは、全然そのまま素通りで受け入れるということとはまた若干意味が異なると思います。
  133. 神谷信之助

    神谷信之助君 うのみではないと、素通りで受け入れるわけはないというようにおっしゃるとすれば、特に国と地方団体とのあり方について、自主財源とか交付税財源、あるいは交付税制度、補助金等地方財政に係る問題、あるいは地方行政の守備範囲等いわゆる自治体行政のあり方の問題など、これは自治大臣としては素通りには済ませない問題も当然議論になるわけですが、この点について大臣のそういう発言権といいますか、そういうものは保障されているわけでしょうか。
  134. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) これは、自治省あるいは内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会でも同じく臨調と並行していろんな検討、答申がなされているところでございます。われわれの方の考え方も反映されておるわけでございます。
  135. 神谷信之助

    神谷信之助君 それは過程ですわね。だから問題は、結論が出るまでにどういう形で大臣として、閣僚の一員として、直接的にそういう発言権が保障されているかどうかということにかかわる問題ですけれども、それは後で具体的にひとつ進めていきたいと思います。  この第二臨調の特に第三部会で国と地方のあり方の問題が中心的に議論をされているようですが、そこで議論をされている基本といいますか、あるいは観点といいますか、この辺はどういうように承知をされているわけですか。
  136. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 私どもは、この地方自治の本旨が、地方の自律性とか自主性とかそういうことを中心にこれからも——現在もそうですが、配慮していくべきであると、こういう観点に立ちまして、したがって国と地方との行政のあり方のいろいろな見直し方、それから財政のあり方、つまり行政の簡素化とそれに伴う財政の節約による今度は地方自治体の自主性、自律性に供するためのいろんな施策を講じていかなければならない、こういう観点に立ちまして、つまり民主政治の一番基本をなしている地方自治のあり方に基づいて、私は第二臨調におかれましてもそれを基本的な認識として十分にいろんな検討をした結果答申をいただきたい、こういう考えでおるわけであります。
  137. 神谷信之助

    神谷信之助君 大臣がおっしゃる点は、かいつまんで言うと、結局地方の自主性、自律性あるいは地方自治、こういう立場を堅持をしながら全体を見直していくと。見直しをしていく中では財政のあり方の問題、特に簡素化あるいは節約、こういった問題も十分そのあらわれとして出てくるんだと、こういう話ですね。だから、この点が世に言われるやっぱり財政の再建を中心に置いた行財政——国、地方を含めてですね、それの見直しが臨調の中心になっているんではないだろうか。しかし本来は、国の政治にしろあるいは地方の行政にしろ、それは国民一人一人の暮らしをどうやって守り、向上させるか、言うなれば政治の要諦というものは、かなめというのは、民生の安定にあるわけです。とりわけ地方自治という観点からいうと、これは地域住民の生活をどう守り、どう向上させるか、住民の利益をどう守っていくのか、ここに原点がなければならない。もちろん財政問題を抜きにとは言いません。どちらが主になるのかというと、われわれは地方自治の立場といいますか、しかもまた民主主義のそれが原点とおっしゃるならば、あるいは土台だとおっしゃるならば、その見地を抜きにして行われるとすると、私は、出てきたものがなかなかこれは地方自治と相入れないものになる危険が多分にあるというように思うんですよ。  同時に、私はもう一つ、臨調で検討されている内容の問題というのは、ときどき報道はされます。いままで当委員会においても、報道された内容について自治省の考えを聞いたりいたします。しかし、報道は報道であって、それはそこまでは知らないという答弁もありますし、自治省自身が呼ばれて聞かれたのはこれだけです、申し上げたのはこれだけですということであって、臨調自身が、第三部会なら第三部会で国と地方のあり方について具体的に何を問題にし、何を現在議論をしているか、そういう点は十分に国民の前には知らされていない。ある意味では密室の審議だと私は思うんですよ。本当に国民の暮らしを守り、国民の全体のコンセンサスを求めながら、そして国の政治のあり方、あるいは地方役割り地方のあり方、こういったものを検討するものとすれば、もっともっと公開をして、そして国民自身の問題を途中経過の中で、過程の中で問題を提起をしながら、そしてそれらの中で出てきたいろんな意見をくみ尽くして、そして答申をつくり上げるというならばこれはわかりますよ。いままでやられているのは、私はそういう点では非常に国民的な議論のない密室審議が続けられている。そこから出てきたものを今度は尊重するということで、うのみではないとおっしゃっても頭から否定はできない、そういう条件に置かれた状況の中で、本当に最初におっしゃったような地方自治の自主性、自律性というものが維持できるのかどうか、そういう危惧の念を私は強く持つんですが、その点は大臣いかがですか。
  138. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 地方自治の本来は、地方の自律性とか自主性にあるわけですが、翻って、では地方の行政が一体どういうことを目的としているかといいますと、結局これは、大きな意味での国民の福祉というものを中心に考えていかなければならないと思うのでございまして、こういう考え方を通じて見てまいりますと、われわれの方からも臨調へは十分にいろんな資料その他を提出いたしまして、参考になるような具申もしているわけでございます。臨調は臨調の方でいろいろ審議をされておられると思うんですが、そういう形で意見は十分に反映しておりますし、また、私どもの方の地方制度調査会の会長も臨調のメンバーとしてお入りいただいているし、決してその点では密室ではないと存じております。
  139. 神谷信之助

    神谷信之助君 いやいや、だけれども国民には報告されたことはないです。調査会の会長は出ておりますけれども国民には報告をされたことはありません。代表が出ているといってもただ地方制度調査会の代表が出ているということであって、だから国民全体の前に問題点が一体何なのか、何が議論になっているのか、国と地方のあり方として一体何が具体的に問題になっているのか、一遍も明らかになってない。いかがですか。
  140. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) ただいまお話がございましたように、臨時行政調査会が非常に非公開であるというお話でありますが、実は審議の内容すべてを一般に公開して傍聴させるというのは大変審議上むずかしい部分が私はあると思います。公開するか非公開にするかは臨調自身がお決めになることではありますが、一般的に、そういう審議経過がどうであったか、あるいはどういうことが議論されておるのかということを、その審議が終わるたびにそういう意味で実は新聞社の方々に臨調の事務局から発表しているというふうに聞いております。そういう点で、何がなされているかというのはある程度わかるようにしていきたいというのが臨調の事務局の考えであるように聞いておりますから、全く非公開で、全く密室の中でやっておるというようなものでもなかろうと思います。たとえば、私たちが御質問を受けまして、臨調で何をやっているかというお話がございまして、わからないところはこれお答えできないわけでありますが、わかっているところはおおむねいままでもそういう意味でお話しをしてまいったつもりでおります。  たとえば、国と地方の機能分担でどういうことが議論されているのかということがいまも議題になっておりますが、そういう中で、たとえば地方財政制度のあり方というのをどういうふうに考えるのか、あるいは広域行政のあり方というものについてどういうふうにこれからしていったらいいのか、あるいは地方の減量化でありますとか効率化でありますとかそういう点についてどうするのか、それから、従来から問題になっております地方事務官の見直しの問題、あるいは国の出先機関の見直しの問題、また当委員会でも前から問題になっております補助金の整理合理化の問題、さらには許認可の見直しのような規制監督行政についてどういうふうになるのかというのが、大体いま第三部会で議論されている主要な検討課題であります。  この中の一つ一つについていまお話しを申し上げる時間もこれはないと思いますので、項目だけ申し上げましたが、そういうことを柱にしながらいま臨調の中で国と地方とがどういうふうに公共部門を受け持ってお互いに協力して行政を執行できるのか、いまはそういう点をやっておるわけでありますから、これを少し長い目でわれわれの方も見ていきたいと思っております。
  141. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあテーマは出ていますが、それはいままでそれぞれ調査会にしろ当委員会にしろ議論になっているわけです。その議論方向が実際にはどう向いているのか、一体一つ一つの問題についてどういう利点なりマイナス点があるのか、言うたら具体的なものはないんですよ。新聞発表は新聞発表です、きわめて抽象的です。だから、そういうことがわからなければ議論にはならないということを申し上げている。  臨調問題はそれぐらいにいたしますが、私は、やっぱりそういう角度からの問題をもっと国民に提起をしていく、そういう角度なしには行政改革——方向は若干われわれとは根本的に違うものを持っていますけれども、いずれにしても行政改革というものはスムーズにいかないだろうというように思っています。  そこで、具体的に自治省自身が進めておられる簡素化、効率化の方向ですね。これは自治省も五十六年の一月ですか、「行政改革の推進について」という文書も出され、また、第二臨調に対する自治省見解も出されています。それで、「今日行政に求められている役割を的確に見きわめ、国、地方公共団体間における適正な機能分担を図りつつ、」「行財政の簡素効率化を進める必要がある。」ということをおっしゃっているわけですね。その具体的な中身として、「行政が過度にあるいは漫然と膨張することのないよう、民間の果たすべき機能を十分に認識し、民間の創意や活力の活用を図り、民間、地域社会活動等と行政との適切な機能分担の確立、民間委託の推進などの減量策を講ずる必要がある。」、これは臨調に出されたやつですが、通達の方では、「事務事業のうち民間委託等により実施することが適当なものについては、十分な管理の下に民間委託等を積極的に進める等事務処理方法の改善に努める。」というようにありますね。  そこで、具体的にお聞きをしますが、こういう行政の簡素効率化、これを進めていく上での基本的な考え方といいますか、それからもう一つは具体的な柱といいますか、そういった点はどういうように具体的に指導ではなされているわけですか。
  142. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 御案内のとおり、高度経済成長の時代から行政が膨大になってまいりまして肥大化をしたと、こうよく言われております。この問題については、神谷委員も御案内のとおり、第十七次地方制度調査会の中におきましても行政の見直しの議論がなされました。それを土台にしながら臨調に対しましても自治省の行政改革に対する物の考え方を示したわけであります。私たちは、民間に委託をする、あるいは事務事業を簡素化すると申しましても、臨調に申し上げている行政の簡素効率化というのは、国、地方を通ずる事務の再配分の見直し、その前提に立つ地方分権の推進というものがあって初めて行政というのは効率化されるのだということを申し上げているわけであります。  いまお話しがございましたように、部分的に、それじゃ民間委託であるとかそういういろいろ起きてくる事業の簡素効率化というものについてどういうことを考えているかということを申しますと、やはり一つ民間委託をするに当たりましても、公共団体自身が現実に自分で実施しなくても十分に行政サービスが全うできるんだというものにつきまして、先ほどお話しがございましたように、十分なる管理のもとに行わせるというのが一つでありますし、さらに、そういうものをやる場合につきましても、単に経費が安く、コストが安くなると申しますか、そういうことだけを目標にするのではなくて、やはり住民から見て行政サービスが低下をしないんだということも大変大事でありますし、その場合にも行政責任の確保ということも当然図らなければいかぬ。さらに、委託する事務事業の内容につきましても、その性格なり内容を十分に考える必要があるし、委託先につきましても十分な選定をする必要がありましょうし、単に委託契約を結んだから終わりというわけじゃなくて、契約と委託後の管理がどうなっているのか、委託料をどういうふうに払っていくのか、そういう面を十分に検討しながら委託をしていく。そういうことによって、自分みずからがやらなくてもいい仕事について民間委託を進めていくというのは好ましい方向であるというふうに考えて指導いたしております。
  143. 神谷信之助

    神谷信之助君 自治省のいまの答弁を聞いていますと、大体その言葉だけでいきますと別に落ち度のない完全なものになる。しかし、私は思うのですが、実際問題を進められるのに、結局一つはやっぱり地方財政の節約になるかならないのかということは、これはどうしたって考えざるを得ない問題であります。あるいは、人員をそれで抑えることができるかどうか、当然その内容一つになるでしょう。それから、いま盛んに、そこまで役所がやらないかぬのかどうかという守備範囲の縮小の問題というのがいま一つ問題になっている、こういった問題もあるでしょう。あるいは、これは新経済社会七カ年計画の中にも出てきていますが、生活分野での自治体サービスにかわる民間部門の育成というのが新経済社会七カ年計画の中に入っています。だから、実際やっているサービスにかわって、民間の活力を導入して、そしてそれでやれないものかどうか、それをまた育成していくんだというのも七カ年計画の中に入っていますね。いま行政局長のおっしゃることは、こういったものがいわゆる看板にはなるけれども、いま実際の環境というか条件としては、そういうものが寄せ集まって、そして進めざるを得ない、そういう状況になってきておる。そこで、具体的にそれが実行に移されてくるといいますか、進められるのは、一つは民営化とか下請、あるいは民間委託、こういう方法でしょうし、それからもう一つのやつは、盛んにおっしゃっている受益者負担の原則の問題、これをはっきりさせていこう。大体使われる手段というのは、この二つが非常に重点的にやられているように思うのですね。  そこで、きょうは、二つともやる時間がありませんから、特に民間委託問題ですね、私はこの問題をひとつ取り上げてみたいと思うんですけれども、とりあえずまず実施状況を、特にどういう部門に実施率が高いかということを、ようけありますから細かくはいいですから、その辺を中心に説明してください。
  144. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 実は、自治省といたしましても、外部委託について三千団体を全部調べればよろしいのですが、なかなか三千団体を全部を調べるというのはむずかしいものですから、都市におきます一般的な外部委託の実施状況というのを五十五年の三月で調べてございます。  これを見てみますと、大体三つぐらいに分かれているんじゃないかと思いますが、一つは、内部管理の事務で何が委託できるか、あるいは計算事務で何ができるか、あるいは事務事業の中で清掃事業のようなもの、こういう方で委託ができるのかどうか、こういう問題があるように思います。  仕事の中身で見てみますと、やはりきわめて多いのが庁舎の清掃というのが多うございます。特に廊下の清掃でありますとか事務室の清掃でありますとか、あるいは窓ガラスの清掃でありますとか、こういう清掃の問題が大変多うございます。それから、同じく内部管理事務の中で申しますと、マイクロフィルムの作成、こういうものがわりあいに多くございまして、現実にやっているというところの率は、もちろんマイクロフィルムは要らないという団体はやむを得ませんが、必要だと思っている団体の八二%はそういうことをやっているという数字が出てございます。そのほかに、計算事務では上下水道の使用量の計算を任せておる、あるいは清掃事業でいえば不燃物のごみでありますとか屎尿運搬でありますとか、あるいは一般ごみの収集でありますとか、そういうものをやっていただいているというのがございます。わりあいに委託をするということを言いましてもなかなか進まないというのが、これは前にもお話し申し上げたことがあるかと思いますが、給食のようなものはなかなか進まないというデータが出ております。さらに、一般的に広報紙の配布でありますとか、あるいは道路の測量現況図の作成、こういうものがわりあいにパーセンテージが高いものを占めております。  最近は、こういうような内部管理でありますとかそういう事業のほかに、公の施設の管理運営というのが最近公共団体の中に出てまいりまして、これはそれほど率が高いとは思っておりませんけれども、たとえば老人の家のような民生施設、そういうものがわりあいに高い比率を占めておる。たとえば施設の設置数が千二百七十四あるうち、五百七十七ぐらいは管理運営を全部委託をしているという数字が出ております。そのほかに老人センターでありますとかそういうものも出ておりますが、公の施設全体を見てみますと、まだそれほど多くの委託がなされているようには思えません。しかし最近は、むしろ公設民営と申しますか、そういう方向に公共団体自身もやる方が住民サービスになるのじゃないかということを考えながら工夫をしているようには見受けられます。
  145. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、何から何まで民間委託をしていいということにはならぬわけですけれども、そういう民間委託をする場合の基準というのを、いろいろ皆さん方のお出ししておられるやつやら実際の状況なんかを見てみますと、それを集約してみると、大体こういう原則になっているんじゃないかというように思うんですがね。たとえば、住民に対するサービス供給を内容とする事務事業で、それから許認可等のいわゆる公権力の行使を伴わないもの、仮に伴ってもきわめて軽微なもの、かつ能率的処理の見地から適切なもの、まとめてみると大体そういうものを基準にして民間委託が考えられている。したがって、そういう見地から考えて、いまおっしゃったようにいろんな事務事業で委託を考えているわけですね。  したがって、その場合に結果として出てくるのは、メリットの方は、それだけコストが安上がりをする、あるいは一般論的に言いますと、その方が能率的にやれるであろうというようなことがメリットではないかというように思うんですが、この辺の見解はいかがですか。
  146. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまおっしゃられましたように、一般的には公権力の行使を伴うものは委託をしないというのが原則でありますから、そういうことは大体公共団体はしないのが普通だと思っております。先ほど申し上げましたように、内部管理の事務でありますとか、あるいは専門的な知識を有する機械設備の保守だとか、あるいはそういうことに対する技術とか知識とか、そういうものを持っている人たちに対する委託でありますとか、そういうものが最近ふえているわけです。  ただ、委託をしますときにどういうふうに公共団体が考えてやっているかということになりますと、私は公共団体によっていろいろ差があるだろうと思っております。たとえば、同じごみ収集をやるにつきましても、一々自動車を買うということを公共団体が始めては大変だ、だから、委託先がそういうものを持っておって、機械でありますとか設備でありますとか、そういうものが高度なものでも利用できる。言うならば公共団体が買わなくてもそれで済むじゃないかというものも中にはあるように思いますし、コンピューターに入れて計算事務を早くしたいと、こう思っておりますが、小さい市町村なんかでコンピューターを買うというのは大変だ、だからそれを委託をするとか、あるいはそういう意味で計算事務をそこからお願いをするとか、そういうものは先ほど申し上げましたように中にはあると思います。  それから庁舎の清掃——庁舎の清掃というのを申し上げますのは私たち自身も大変じくじたるものがあるんですが、変な話で恐縮ですけれども、私たちが役所に入ったときは自分で清掃をしたものでありますから、本当は掃除の委託などということを大声で申し上げるのは余りいいことではないと私は思っておりますけれども、たとえばいまのいろいろな勤務時間その他から考えまして、清掃の委託をするというのが一般的に行われています。そういう清掃の委託につきましても、自分のところの職員がやらない以上はだれかを雇わなきゃいかぬということになりましたときに、ビルのあちこちを清掃している会社がありますれば、朝早い時間とか終わってからやるとかいうことになりますと、清掃がむしろ非常に便利だということで清掃委託をするとか、それなりの公共団体が努力をしながら委託をしているというふうに私は考えております。
  147. 神谷信之助

    神谷信之助君 そういう面ばかりおっしゃるんだけれども、私が問題にしたいのは、住民の生活と直接かかわりのある面での民間委託なんです。清掃の問題だとかその他いろいろ意見はそれぞれありますけれども、きょう問題にしたいのは、そういう角度からの問題なんです。たとえば、大分前になりますけれども、前回はごみ収集の問題でいろいろ問題を出したと思うんですけれども、今度は、きょうは特に保育所問題を取り上げてみたいと思うんですよ。  これは、公立の保育所がだんだん建たなくなる、建てるよりも民間経営といいますか、民営の保育所をつくっていくという方向にいま傾斜をしつつあるように思うんですが、この点はいかがですか。
  148. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) おっしゃられますように、保育所の管理運営の全部委託というのは現在のところ二・六%ぐらいになっておりますけれども、これはやはり徐々にふえていくのではないかというふうに考えております。
  149. 神谷信之助

    神谷信之助君 その場合に、なぜ公立の保育所にしないで徐々に民間経営に移行していく傾向がいま出てきているのか、この点はどういうようにお考えですか。
  150. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 一般的に保育所に管理運営を委託をしているという態様を見てみますと、現実に公務員自身が——保母さんを雇ってやるということよりは、時間的にもあるいはいろいろなめんどうを見る上においても、むしろ民間にやっていただく方が便利だという点はあるように思います。特に最近のように、早朝から夜間までいろんな意味で保育に欠ける児童を保育所に収容する、あるいは見ていくということになりますと、なかなか公務員の中だけでこれを操作をするというのはむずかしい。それはある意味では、そういうものはもう勤務時間でも何でも延長してやればいいじゃないかという御議論もこれはまた中にはあると思いますし、そういうものまでやらないというのは公共団体が逃避をしているじゃないかという御意見も、私はないわけじゃないと思いますけれども、そういう一般の住民から考えてみましてむしろその方が適切だなと思われる、あるいは全体的に見て、建物は公共団体がつくってやるけれども中の運営はむしろその方が住民のニーズに合っているんだというふうに考えながら、公共団体の方でそういう委託をしているものだというふうに考えております。
  151. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま、たまたまおっしゃいましたけれども、そういう住民の要求にこたえるためには、公立公営よりも、公設民営とかあるいは私立の方が対応が便利だという面、それから全体としてはコスト——市の財政から言うとそれだけ経費は安く上がるという問題になっておりますね。だから、そこのところが私は非常に大きな問題だというふうに思うんですよ。  これは横浜の保母の賃金の公立と私立の格差ですけれども、一年目は一カ月当たりの格差は大体五千円から一万円ぐらいの差なんですね。年間にいたしますと八万四千五百円から十六万九千円ぐらいの格差になる。二年目になりますと、二万円から三万円の差が公立と私立の間で出てくる。だから、年間にしますと三十三万八千円から五十万七千円ぐらいになる。十年目になりますと、月当たり三万から五万ぐらいの差、年間では五十万七千円から八十四万五千円になる。十五年目になりますと、月当たり六万円以上になるし、それから年間の格差というのは百一万四千円以上になるわけですよ。  それで、これは御承知のように、運営の経費は国から八割が措置費で出てきていますね。あとは一応保育料で賄えというシステムでしょう。しかし実際には、自治体から法外扶助費で、特に大都市なんかはそれぞれ措置をしていますね。そういったものが横浜の場合ですと大体二割支給されているわけです。そういうことをやりながらも公立と私立ではそういう格差が出てくる、こういう状況が現実にあるわけです。  私のところの京都の場合は、こういう賃金格差をなくすために全体をプールして一定の賃金を保障していく、最低限のやつは。それで賃金格差をなくす努力というのを京都市はやっていますけれども、だからそういう措置をとっていなければ、もうそういうように公立と私立の賃金格差というのは非常に出てくるわけです。しかもこれは、保母の賃金というのは短大卒勤続五年が基準でしょう。だから私立の保育園を運営しようとすれば、五年以上十年も十五年もおってもらったら困るわけですよ、賃金、何ぼ少なくっても上げなきゃしようがないから。だから、結局経験の浅い保母さんに頼らざるを得ぬという状況になる。それから、ひどいところでは例のベビーホテルみたいなものもありました。問題になったようなああいうこともあるし、定員の倍近くも入れるというようなことでもやらなければ民間の経営というやつはできない、こういう状況が起こるわけですよね。  そうするとこれは私は、しかも一番深刻なのは健康破壊がその中で当然起こってきているわけですね。頸肩腕障害やら腰痛、自律神経失調症、内臓疾患、切迫流産、こういったのが大体急増してきているでしょう、保母さんというのは。だから、保母さんの資格を持った人というのは相当だぶついているんだけれども、そういうことで働けない条件の人というのも相当数おって、そこからまた逆に無理も起こってくるという悪循環が重ねられているという状況にあるわけです。この点は私は決して好ましい状況じゃないと思うんだが、こういった問題はどういうようにお考えになっているんですかね。いまの保育所の傾向が公立から民営の方に移行していくような状況が見えているときに、自治省としてはこういった問題についてはどういう指導をなさるのか。決してこれは好ましい状況じゃないだろう、ほうっておくわけにいかぬだろうというように思うんです。この点いかがですか。
  152. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお話しがございましたように、保育所にどういう形で住民の方がお預けになるかという問題がこれはあると思います。そのときには、先ほど申し上げましたように行政サービスというものが低下をするということがあってはならぬというのが基本的にありますから、そういう意味で、公共団体が十分な管理のもとにこういう委託をするということがまず先に解決をされなきゃ問題だということは先ほど申し上げたとおりであります。  ただ、私は、どうもあるいは若干紋切り型になって恐縮かもしれませんが、行政というものがこれだけ肥大化をしてきている、その原因が全部ここだという議論ではありませんが、そういうときに行政というものがどの程度まで、先ほどお話ししました、守備範囲というのがあるのかという議論は、常々これは議論のされているところでありまして、一体行政というものに限界があるかどうかという議論さえも実は問題になるわけでありますけれども、きょうはそのことは抜きにいたしましても、こういう委託をするとかしないとかということについて、住民の物の考え方が私はあるだろうと思いますし、それに沿って解決をしていくということがやはり望ましいと思います。  そのときに、その住民の物の考え方なりあるいは委託をするということを最終的に決めるといいますか、議論をしていく場というのは、私はやはり議会だろうと思っております。そういう中で委託をする方が望ましい、あるいはそういう選択をする方がむしろいいんだということを公共団体のいろいろな角度から議論をされて決めていくというのが一つの公共団体のルールだとは思っております。そういう意味で、住民の選択の論理、あるいは公共団体がどういう事業を委託するかということの選択、そういうものが議会の議論の場を経てやはりなされているものだというふうにわれわれは考えておりますので、その中で十分に検討されて、それで保育所についてはむしろ委託をする方が望ましい、あるいはやめた方がいいという議論が私は出てくる、そういうふうに理解をいたしております。
  153. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、行政のサービスと民間のサービスは同じものじゃないでしょう、行政のサービスと民間のサービス、この辺大臣はどうお考えですか。行政サービスと民間のサービスは違うでしょう。言うなら、行政のサービスというやつは、公共サービスというのは、利潤追求とか採算の可能性とは無関係に社会的必要の充足のために開始をされあるいは拡大されていくわけですね。民間のサービスというのは採算を度外視してやることはできはせぬですわね。あるいは利潤を度外視してというようなことはできやせぬでしょう。だから、その点では公共サービスと民間サービスというのは決定的に私は違うと思う。この辺は大臣どうお考えですか。
  154. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 行政サービスの話になりますと、先ほどから申し上げておりますように、やはりその委託に当たっての適切な処理がなされているかどうかということがありますし、一般的に行政がそういうサービスをすることと民間でサービスをすることとの間で差異はないし、民間にやってもらった方がサービスがむしろよくなるという部面もあるだろうと思っております。たとえばごみ収集のようなことをやります場合に、民間にお願いをして、余り人通りが込んでこないという時間に民間の人に非常に早い時間に収集をしてもらうという方法もありましょうし、いろんなサービスの仕方ということを考えましても、それほど民間と行政の間でサービスに差がないのではないかというものが実は委託の対象になっているんだと思っております。極端に、これはまさに行政でやらなけりゃどうしようもないと、要するに採算を全く度外視をしてやるという筋合いのものについては、これは極端な例で言えば消防でありますとか、警察でありますとかというサービスというのは、一般的に、民間でやれるかといったら、私はとてもこんなものはやれる筋合いのものじゃないと思います。  ですから、そういうサービスをするかどうかという問題については、そういう比較均衡の上に、しかも適切にやれるのか、あるいは専門の分野から考えてそういうことの方が望ましいのかと、先ほど申し上げましたようなそういう点を考えながら私は公共団体では委託をしているものだというふうに理解をいたしております。
  155. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま、ごみ収集やら屎尿の処理の問題を例に出されましたけれども、たとえば屎尿処理ですと、大体契約内容というのは、一台について幾ら、あとはでき高払いですわね。だから、そういう契約になっているでしょう。しかし実際問題としては、大体水洗化が進んでくるとか、いろいろ出てきますから、そういう中では結局逆に今度は水でわざわざふやして持っていったりしている例も出てきますよ。そしてほとんどが未組織の労働者ですよ。いやおうなしにとにかく働いている。それから若い者しか勤まらない。しかし一定の年限いったらもうほかの方が得やと。だからきわめて流動的です。いわゆる労働条件がもうきわめて悪いんです。その方が便利だろうと。表面的にはそうです。しかし、そういう近代労働者と言えないようなそういう労働条件の中に追い込む、あるいはそういうものをつくっていく、そういう仕事を自治体がやるわけです。公共団体がやるわけです。  保育所の場合もそうなんですよ。私立の保育所の保母さんの組織率はきわめて低いんです。だから基準局で基準法違反の調査をしたら、公立の保育所では基準法違反というのはもう九十何%ぐらい出てきますわね。昼休み時間が一斉にとれないとか、いろいろなあるでしょう。いわゆる権利の問題に関するそういうところはもう物すごい。民間の私立の保育所は同じ条件もっとひどいんだけれども、ここでは五〇%そこそこですよね。基準法違反ということは言えない。言ったら園長からいびられて追い出される、首になるんだ。だから文句を言えないというんだ。そういう状況をどんどんどんどんつくることが自治体の仕事なのか。そこの問題なんですね、大臣。  私が言うのは、民生の安定が政治のかなめなんだし、自分で独力で生活できる、あるいは独力でやっていける企業、こういうところに自治体が実際にはお手伝いをするんじゃなしに、一人ではなかなか生活できない状態に追い込まれている人たち、いわゆる弱者と言われる、社会的弱者と言われる、あるいは中小零細業者ですね、資本力では劣っている、競争には勝てない、それに対してどのように市場を開拓し、あるいは技術革新を援助していくか、そういうことをやっていくのが自治体の仕事なんじゃないでしょうか。そこのところが問題ではないか。そういう観点から民間委託というものを考えないと、朝早う来て、昼なら込むところを人通りの少ないときに早うやってもらったら便利がいい、だから喜んでもらえるんだというだけの問題では、自治体のやっている仕事というのは、それだけでは済まされない問題を持っていると思うんですが、ひとつ大臣、その辺は御見解いかがですか。
  156. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) これは私は、その持っている価値の評価の仕方で、行政レベルがいいときもあるし、民間レベルの方がいいときもあるし、これはサービスという観点に立ってでございますが、局長がさっき言われたのは、地方議会を通してこれは行政、これは民間というふうな判別の仕方を地方自治体では多分していると思うので、内容、質ということも言われますが、サービスという観点に立つと逆に民間の方がいい場合もあるので、仮に救急指定病院をとりますと、公立の救急指定のところへ連れていってもキャンセルされる場合もある。なかなか時間外だと厳しい。それが民間の救急指定に行くともっと早く受け入れてサービスをしてくれる、こういう点もありますし、それからショッピングなんかでも、公立のものよりは民間のマーケットの方がかなりサービスも行き届いていてきれいである。それからいま盛んに地方自治体は、これは経費の節約もありましてあれですが、中学校とか高等学校、これは県とか市でやるとなかなか大変な費用もかかるので、私立の学校などを誘致してくるわけでございますが、私立の場合だと今度は公立の学校とまたおのずから違った学風とか雰囲気がありまして、教育のあり方が若干違ってくる場合もある。  こういうことで一概に比較はできないのでございますが、やはり一番本質は、民間でも行政レベルのものでも、託児所なら託児所の本来持っている機能、目的、こういうものにかなっているかどうかというところにいろいろ問題があるかと思います。かといって、民間の方も全然採算を度外視してやるというわけにはまいりませんですから、これはそういったことを根底に置いてその解釈の仕方を幅を広げてやっていけば、民間業務といえども地方自治体経済的な負担だけじゃなくて、いろんな意味で大いに役立っていく。その意味では新しい風を吹き込むことも可能である、こういうふうに私は解釈しております。
  157. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  158. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記を起こして。
  159. 神谷信之助

    神谷信之助君 これからちょっと大臣議論せないかぬところで行っちゃいましたから、この問題のあとのやつは大臣が戻ってきてからにしまして、別の問題に入ります。  それでは、次のテーマを途中に挟みます。これは先ほどから若干ありました歳入欠陥問題なんです。これは先ほどから話がありましたが、いずれにしても五十七年度の地財計画が閣議で二月の二日に決定をされて、そしてもうすでに二カ月半になるという状況なんですが、五十六年度の国税及び地方税収が大幅な落ち込みというものが明らかになってきているわけですが、現時点で五十七年度の地財計画の歳入見積もり、これはもう確保できるというわけにいかぬわけでしょう。この点いかがですか。
  160. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) まあ五十七年度の地方財政計画におきます地方税収見込みというのは、たびたび……
  161. 神谷信之助

    神谷信之助君 地方税及び歳入全体の見込みね。地方税も交付税もありますから。
  162. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 地方税を初めとする歳入の見込み額というのは、私どもとしては、昨年末に議論をしたものではございますけれども政府経済見通しによります諸指標とか国税の見込み額等を総合的に勘案して積算をした結果でございまして、お示しのございましたように、五十六年度でかなり税が落ち込んでおるといったようなこともあり、また、景気全体としても回復が立ちおくれておるということもございまして、五十七年度どうであろうかという危ぶむ声もございます。政府見通しどおりの経済成長率の達成もどうであろうかといったような声もあるわけでございますが、政府としては、経済見通しにおける経済成長が達成されるために各般の政策努力をしていかなければならないわけでございますし、そういった努力もとに今後の経済運営のよろしきを得れば、私どもとしては必ずしも不可能なものではないと考えておるわけでございます。  最初に申し上げましたように、いろいろと懸念材料というのはあるわけでございますけれども、私どもは、今後の経済についても後半浮揚していくものという前提に立っておるわけでございますが、そういったことを頭に置きながら財政計画で見込んだ歳入全体としては確保できるものだという前提に立っておるわけでございます。
  163. 神谷信之助

    神谷信之助君 やっぱりいまの段階、いわゆる五十六年度の国税の落ち込み、これはもう二兆円以上になるということは、先ほども話があったけれども、もう大蔵大臣自身も予算が成立したら途端におっしゃるようになった。これは衆議院予算委員会でわが党の岩佐議員が、各税目ごとについてそれぞれ落ち込みの見通しについて迫ったですね。大蔵大臣総理大臣も、その道の専門家が集まって決めて出したその資料に基づいて決めたんだから、間違いがありませんと言ったんです。間違いがありませんと言うたけれども、もう一カ月二カ月そこそこで二兆円以上の、だから指摘をしたとおりの五十六年度の歳入欠陥が認めざるを得なくなったわけです。これは私は、先ほども話がありましたが、まさにきわめてひきょうな態度だし、国会軽視とも言わざるを得ぬというように思うんです。大臣がおればその責任を問わなければならぬ問題だというように思うんですよね。わかっているんだ、わかっていながら強弁をして、そして、とにかく予算の成立だけは済ましてしまう、こういう態度は私は国会及び国民を愚弄する態度だというように思うんです。  それで、五十七年度の国の予算あるいはその基礎になっているいろんな指標というものを、五十六年の補正を含めてですけれども、それが計画どおり進むものとして作成されたものですからね、いわゆる土台が崩れているんですから、崩れざるを得ぬ。しかし五十七年度の後半に期待を寄せて、不可能ではないというように強弁をされているわけですが、私はそういう意味では二重のペテンを述べることになってしまうというように思うんです。  ですから、そういう点は御指摘をしておきますが、そこで、そういうことを財政局長も地財計画をおつくりになったときに大体予測をされておって、当時各県の総務部長、担当者を集め、そして来年度の地財計画を示されたときに、先ほども言っていましたけれども、非常に慎重な指導をなされていますわね。税収の伸びも、まあずけずけ言われたのか、そのまま率直に言われているかどうか知らぬけども、この地財計画の伸びどおり組んではあきませんよ、下目に組みなさいよとまで率直に言われたかどうかは別にして、実際問題としては、そのことを受けとめて各府県では地財計画による税収の伸びを抑える、低目に見るという計画を実際には組んでおるわけでしょう。だから、そういう意味では、逆に言いますと、地方団体が実際に各地の五十六年度の税収の徴収実態や、それから各地方経済の状況をにらんでその実態を反映をしていない、そういう地方財政計画になっているんじゃないかということが言えると思う。  これは何でそうなるかといったら、地財計画が独立してそういうことになるんじゃなしに、国の五十七年度予算自身が粉飾予算だから、それに基づいた資料をそのまま地財計画に当てはめなけりゃならぬからそうなったにすぎない。政府の一員で、大蔵省のつくる予算とそれから自治省のつくる地方財政計画税収の見積もりがごぼっと違っておったんではこれはもう大変だということになりますから、結局はそれに従わざるを得ないということになってきているんだというように思うんですけれども、いずれにしても、五十六年度で国税の落ち込みが二兆円以上ということになってきますと、これから当然五十八年度に精算をせないかぬということになりますが、仮に二兆円ということでいきますと、大体国税三税の分が七三%ぐらいということですから、それの三二%ということで見れば約四千六百億ぐらいになる、それ以上になっていくでしょう。そういう状況になってくるんです。これは五十八年度のときに具体的に処理をすることになるだろうというように先ほど答弁されていますがね。だから、五十八年度の地財計画をつくるときには、結局、五十六年度のそういう国税三税の落ち込みから考えると、少なくとも四千数百億あるいは五千億、あるいは六千億になるかもわかりませんが、まあ国税の落ち込みが二兆五千億で五千八百億円ぐらいになりますかね。それから、三兆円になりますとざっと七千億ぐらいになってきます。いずれにしても、相当の膨大な精算をせないかぬという問題になるかもしらぬ。こういう状態になるであろうことはもう今日の段階ではお認めになるわけですか。
  164. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) いろいろ御意見を伺いましたが、結局は五十六年度と五十七年度、これはおっしゃいますように無関係ではないわけでございますが、そこらを分けて私お答えをしておるつもりでございます。五十六年度については、確かに交付税もとになります法人税は非常に落ち込んだということでございまして、これは五十八年度の精算減ということになりまして、五十六年度には影響なかった。ただ、地方税そのものは五十六年度法人関係税を中心に落ち込んでおりますので、国税ほど大きくはございませんが、三千億程度はあるいは全体としては落ち込むかもしれないという感じを持っておるわけでございます。そういった状況でございますので、何とか五十六年度は減収補てん債等で実は収支を償うようにしたわけでございます。  そこで、それをもとにした五十七年度はどうかということになりますと、確かにこの地方税と交付税と両面にわたって考えてまいりますと、交付税については国は発射台が落ちたから三税分がかなりまた落ちるんじゃないかといったような御懸念がおありでおっしゃっておるわけでございまして、私どもも、いまその点について明確にこれだけが確保できるとはっきりお答えする立場にはございませんが、少なくとも政府としては経済の目標を立てていろいろな政策を立ててそれを達成するための努力をしておるわけでございますから、一応それを前提としてやっておりますが、予算上交付税額そのものは決めてあるわけでございますから、それはぜひとも確保したいという気持ちでおるわけでございますので、その点はいかなることがあっても私どもは所要額を見込んだものは確保すると、こういう態度には変わりないわけでございます。  一方、地方税そのものは、やや落ち込んだものをもとにして計算をしておるということだから、これも見込みが立たないじゃないかということでございますが、私どもの見込みでは、法人関係税そのものは落ち込んではおりましても、それほど大きなものでもないし、今後の経済の動向がどうかにもかかっておりますが、やはり目標が達成できるということで、政府の立てた経済成長率は達成できるという前提のもとでいろいろな努力をしていかなきゃならぬ。それが一体途中で具体的にどうなるかというのはいまの段階では私どもは申し上げるわけにはまいりませんけれども、実は、総務部長会議でも申し上げましたように、ある程度過去のそういう実績等も踏まえて伸び率等も試算をしてもらっておるわけでございます。しかも、かつまたそういう中で地方団体ごとに経済の状況も違うから、いろいろと変動があるから各地方団体ごとにはそこを十分踏まえてやってもらいたいという意味で私は慎重論を申し上げたわけで、マクロとしてはそういうものが確保できるという前提でございますから、落ち込んだところはあるいは将来交付税でそれはカバーできるとかいったような、全体としては補てんができていくわけでございます。そういった前提で私どもとしては五十七年度何とかやっていけるんじゃないかと思っております。  もちろん、それが絶対に——何とかやろうと思って期待もしておりますけれども、今後の情勢いかんでどうなるか、そこまで私も断言ができませんけれども、最初に地方財政計画を組んだとおりの運営ができるような努力はどうしてもやりたいと思っておるということを申し上げておるわけでございます。
  165. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、そういう事態ですが、御承知のように五十七年度で交付税の一部の千百三十五億円ですか、いわゆる減額留保というのか、国に貸しているというか、こうやってますわな。そうすると、こんな状態だったらそんなのんきなことは言えぬわけでしょう。これはどういうことになっていますか。これはもうおやめになりますか。
  166. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十七年度は、いまお話しがございましたように、全体として制度改善等を含めた結果は九百六十三億ぐらいちょっと不足の状況になったわけでございますが、私どもとしてどうしても当然のこととして確保できるものと思っております利差臨特とそれから財対臨特合わせて二千九十八億、これはもう当然のことですから確保するということで、一般会計に金がなかったので借り入れて、返還は後で全部国が持つという意味で全額を確保したわけであります。その結果が千百三十五億は充当しなくても済むということでございますが、私どもの考えは、五十六、七、八と、この三年度は交付税特別会計の借入金を実は条件変更して後へ送り込んだということもございまして、それが後ろへ返還分があるということを頭に置けば、むしろ五十九年度以降にその分を充てる方が長中期的に見ていいのではないか、そういうことも含め、かつまた全体の収支のバランスでああいうことをしたわけでございますから、これはこれでもうそのまま私どもとしては変更する予定はございません。それよりは、いま組んであります地方財政計画にいろいろ影響があるかもしれませんが、それを頭に置いて地方団体が運営しておるわけでございますから、それがそのとおり円滑に執行できるような方法を考えるということになろうかと思います。
  167. 神谷信之助

    神谷信之助君 地財計画の歳入総額はちゃんと保障する、これは地方団体に対する約束だからはっきりすると、これはよろしいですな。それで問題は、財源の問題で、いまおっしゃることを聞けば、千百三十五億円は五十九年以降の借金返しの財源に充てる、仮に五十七年度で歳入欠陥が別に生ずればそれは生じた問題として、別の問題として、国に対してその措置を要求すると、そういう理解でいいですか、いまの答弁は。
  168. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 現段階においてそのように考えております。
  169. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで大臣、私は、地方財政計画というのは国会に報告するというか、提出するだけで、別に承認を必要とするということになっていないわけなんだけれども、しかし、事の性質上、交付税法上は、何といいますか、地方団体の財政運営一つの指標であり、それからあるべき姿を示すものというように自治省もおっしゃっているわけですがね。それが実際問題としていま審議をしているといいますか、それを議論をしている最中に歳入欠陥が生じるおそれというのは多分にある。先ほど財政局長は後半に期待をして、その歳入は恐らく保障されるであろうと言うていられるわけだ。ちょうど予算委員会の最中に大蔵大臣が、いや絶対に歳入確保できますと言うたのと同じで、予算委員会が終わったら明くる日には歳入欠陥二兆円出ましたと、こう言うのと同じような感じに私は聞くんですよ。そんなたてまえの問題ではないと私は思うんだ。  もう繰り返しませんが、先ほどからもありますように、現実に都道府県その他の当初予算の編成状況を見ると、相当地方税収入、その他は抑え目にしていますわね。交付税はもうこれはくれるものということで組みますから。だから、そういう実態を考えてみると、現在出されている地方財政計画そのものが私は本当にあるべき姿として、そういう指標として出されているものとするならば、その辺については修正をするというか変更をする必要があるんじゃないか、そういう段階に私は来ていると思う。自治大臣としては、やっぱりその辺をはっきり知らないで——そういうことになりますよ。たとえば地方税収入がこれだけありますよといまとりあえず八%でしたか、地方税収入の伸びを見ているけれども六%に抑えている、それだったら、低目に見積もっておまえら何かするのかということになりますからね。後、それは補正でやりますと言うたって、実際問題としてはできない状況に結局はなってくるということが、見通しとしては、まだいまの消費不況の状況を乗り切れない、そういう状況がずっと進んでいるわけですからね。  私どもから言うなら、現在の政策をとっている限りはにっちもさっちもいかぬだろう、第一消費不況を解消するための刺激の五十七年度中の減税もなかなかむずかしいだろう、そういう空気が強まってきているし、五十八年度はどうだろうというようなところになってきているんですからね。それがいま衆議院の大蔵小委員会の空気だという報道もあるぐらいなんですからね。そういう点から言うと、現在の軍事費を膨張させる、あるいは大企業にてこ入れをする、そういう予算を堅持をしながら福祉、教育を抑え込むようなそういう予算あるいは政策をずっと遂行する限り、五十七年度の後半に景気を持ち直して、そして五十六年度の落ち込みを上回るような、そんな税収が見込めるはずはないでしょう。それはまた全体の大方の経済界のいろんな層の見方にもなってきていますわね。  だからひとつ思い切って、そういう点では地財計画をもう一遍検討し直して練り直す必要があるんじゃないのかというように思うんですが、大臣いかがですか。
  170. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 五十七年度の地財計画の中での歳入確保については、決して楽観できる状況ではないと思います。しかしながら、地方財政計画でもそうでございますが、経済というのはいろいろ移り変わりが激しいものでございます。やはり、この見通しなどが狂ってくる場合も非常に多いわけでございますが、当初の計画をわれわれの方は変えるというようなことはなくて、やはり今後の適切な経済運営とか財政運営を通じまして、一定の当初の目標に近づいていくように、当初の目標を達成できるように政策努力を重ねていかなければならない、こういった方法を通じまして所期の目的を確保できるよう期待し得るものと考えているわけでございます。  地方財政措置については、従来から地方財政の円滑な運営支障を生ずることのないように、いろんな状況の変化に応じながらいままでも運営したのでございますが、今後ともそういった意味では政策努力を重ねながらいろんな角度から運営を図っていきたい、このように考えておるものであります。
  171. 神谷信之助

    神谷信之助君 五十年度以来の地方財政の財源不足ですね。これはことしは、五十七年度はバランスがとれるようになったとおっしゃるが、実際問題としては、私から言えば粉飾計画、バランスがとれていない。これはまあ来年になったらはっきりするんでね、そういうものをずっと続けてきているんですよ。だから、それに対して一つも責任をおとりにならない。それから、それは努力目標であって最後はできませんでした、それで結局それだけ地方税なら地方税、交付税なら交付税に穴あきますよ、それは国に借金しますよと。国も全部借金は持ってくれぬわけで、半分は自治体負担や、こうなるわけでしょう、常に。それで、いよいよその借金返しが五十九年度から始まると、こうなっているわけですよ。国の方の赤字国債の償還も六十年度から始まるんですからね。これはもう第二の財政危機が目の前に来ているんですよ。  だから、そういう状況を考えると、もっと実態に即した地方財政計画というものを明らかにしていかないとだめだし、逆に言うと、われわれから言うならば根本的に政策転換をしない限りは今日の事態というものを打開できないというように思うんです。地方財政計画問題はその点だけ指摘をしておきます。  大臣が戻られましたので、先ほどの話の続きを行いますが、大臣がおっしゃった大学の国公立大学と私学の関係というのは、ちょっと違います、これは。やっぱりそれぞれのよさといいますか、それなりの存在意義というものを持つものである、だから、これを民間サービスがいいのか行政サービスがいいのかという、いま私が議論をしている問題の範疇とは次元の異なる問題だというように思うんです。  そこで大臣、先ほどおっしゃいましたそれに関連をしてお聞きしたいんですけれども、最近自治体の行政の中で、昔と違って非常に増大をしている部門というのを見てみますと、二つのタイプがあるんじゃないかと私は思うんです。  一つは、新しい行政課題といいますか、行政領域に新しく必要になったものという範疇に属するものとして、たとえば消費者行政がそうでしょう。あるいは公害行政がある。あるいは交通安全行政がそうでしょう。あるいは休日、夜間の救急医療行政というのも最近ぐっと必要になってきた。あるいは文化スポーツ行政というのもそうです。こういう種類のものですね。これはいままでの市町村の事務では、全くなかったというわけじゃないけれども、まあ主としてなかった。余りなかった。  第二のタイプは、既存の行政なんだけれども、しかしその中身が質的にも量的にももう二倍にも三倍にもふえたという、そういう行政の内容ですね。これはいわゆる低所得者層対策といいますか、失対なり生活保護対策なり医療保護なりいろいろあるでしょう。それから児童に対する対策、これもそうでしょう。それから母子家庭、父子家庭ですね、これの対策の問題も新しく強化をされた。まあ昔はないとは言わぬですけれどもね。それから障害者対策あるいは老人対策の問題。だから、従来の民生行政から言うと、もう二倍、三倍にもふえるようなそういう領域要求がある。こういうように私は見ているんですが、その点大臣の認識はいかがですか。
  172. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 御指摘のように、その行政の種類、奥行きと幅が、仮に昭和二十年を基準にいたしますと、物すごく層が厚くなった。それから昭和四十年あたりと比べても大変な層の厚さだと思っております。
  173. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこでいま申し上げたような二つのタイプがずっと、特に近年ふえてきている。昔なら災害とか水利問題とか、それから疫病対策とかいうような種類が大体自治体行政の中心になってきたけれども、もう近年はそういう意味ではうんと変わってきている。  その経過を見ますと、そういういま申し上げた消費者行政からいろいろ老人対策に至るまでの行政サービスをどんどんどんどんどうやって拡大をしてきたのか。これはやっぱり実態に即して見ると、政治的民主主義の活用といいますかね、いわゆる団体、住民が集まって要求をし、交渉をし、あるいは選挙によって反映をする、あるいは議会審議を通じて実現を目指していく、あるいは直接請求をやる、まあそういう憲法なり自治法に認められているいろんなそういう制度、政治的民主主義の諸制度を活用して、そして住民自身の合意の中で広がってきた仕事である、行政サービスであるというように思うんです。だから私は、それによって市役所とか県庁というのがよそ者ではなしに、自分たちの暮らしに直接身近なものなんだという自治意識というのも芽生えてくるし、そして広がってきておるという特徴を、歴史的に経過を見ると見ることができるというように思うんですよ。  ところが、私がいま問題だと思うのは、いま臨調なり何なりが簡素合理化をしよう、あるいは自治省自身の行政事務簡素化の目標になっているのもここじゃないかというふうに——私はひがんで見ておるのかもわかりませんが、見ておるんだが、そういう守備範囲の見直しという方向で、かつての水利とか土木、防災、防疫、相互扶助、こういう程度に大体行政というものの範囲を縮小していく、こういうねらいといいますか、そういうものを感じざるを得ない。その方法として冒頭申し上げた民間委託とか受益者負担の原則とかいうのが使われているというように思うんですが、この辺についての見解はいかがですか。大臣見解をひとつ。
  174. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) おっしゃる意味はよくわかるんですが、私はやはり、行政の数が非常に項目がふえてきた、それから福祉をとっても何をとっても非常に項目が大幅にふえてきております。私なんかは、ただ漫然と間口だけ広げるよりも内容も非常に問題ではないか。今後また新しい項目が行政の中でふえていく可能性も十分あるわけでございますが、そのときに、私は一つの、国でも地方でもそうだと思うんですが、ある一定の画一化された中で行政をやっていくと、ある時期にはマンネリズムのような傾向、つまり遅滞していく傾向があらわれないとは予言できないと思うんです。そのときに、これは臨調ではどういうふうに解釈されるか知りませんが、民間というのは御存じのようにいろんな活力を持っていますわね。政府のやる仕事よりも民間の方がどんどん進んでいってしまう場合もある。特に経済現象なんかは民間の方から起こってきてそれを政府の方が取り入れていくという形になりがちなんですが、そういった意味で、地方の中にもそれから国の中にも民間のいい意味での活力というものをある程度取り入れていくということは、いままでの国とか地方の行政もかなりそれに刺激を受けて新しい局面が展開されるのではないか、こういうふうなことを考えておりまして、御趣旨はよくわかるんですが、私自身はまた、そういう面の新しい切り開かれた局面を期待しているものであります。
  175. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま大臣がおっしゃったその民間の活力というものの概念がもう一つはっきりしないんですけれどもね。私が先ほど言ったような、民間といいますか、住民なり国民なりの要求に基づく自主的、自発的なそういう運動というものがいろんな活力をまた生み出す、新しいものをつくっていくという意味なら私と一致しますがね。民間の活力というのを、いわゆる財界なり企業活動の活力という意味で言うと、私はちょっと違うと見ているんです。  これは理屈になって恐縮ですけれども、簡単に言うと、かつての大恐慌の危機を乗り越える理論として、大臣も学者だからよく御存じのように、ケインズ理論がもてはやされて、国家権力の介入によって拡大再生産を保障していくという方向でずっと来ているわけですね。ただ、これが行き詰まってきている。去年国会でヨーロッパを回りましたけれども、やっぱりあちこちで、オランダやフランスの議会人ももうケインズ理論はだめだということを盛んに言っていました。  それにかわって、いまレーガンやサッチャーなんかの小さい政府論、小さな政府、こういう理論が今度逆に出てきていますわね。いわゆるフリードマンらの新古典学派と言われるものですか。私はまあ素人なんだけれども、そう言われておるでしょう。その一つの流れとして、公共経済学ということで、ただ乗りはけしからぬという議論が盛んになされてきています。ただ、それは結局市場取引の民間財対象の近代経済学から見たところの理論、これを環境問題とか公共事業とか公共サービスとか、こういう非市場財にそのまま持ち込んでくるという議論としていま盛んに喧伝をされているし、前にごみの清掃の問題で「都市経営論」の批判をしたというのも、「都市経営論」の基盤というのはそこから出発しているというように私は見ておるんですけれどもね。ですから、そういう意味では、先ほど経済社会七カ年計画の一部を引用いたしましたけれども、いわゆる公共財の私的財化といいますか、民間委託、こういう方向、それから受益者負担、公共料金、手数料等々の引き上げ、それから、盛んに福祉の上乗せについてはそこのところの住民が負担をしたらどうだという、臨調でも出たというように言われているそういう考え方。それからもう一つは、これは思想問題といいますか、国民の考え方としてただ乗りを自制させるといいますかそういう問題。こういう方向が大体具体的なあらわれとして出てきているというように思うんですよ。そうしますと、先ほどから言いましたが、これは実際に、何といいますか、いろんな行政活動、自治体がやる仕事、これをどういう物差しで見るかということをはっきりさせないと損か得かということになってしまう、いわゆる財政的といいますか、経済的な効果が物差しの中心になってしまう、そういう危険を私は多分に持っているというように思うんですよ。  だから、そういう意味では私は、自治体がやる仕事というのは、憲法に言う「地方自治の本旨」にのっとり、しかも、大臣もおっしゃるように、地方自治の発展こそ民主主義の土台なんだ、基礎なんだという見地を発展をさせるとすれば、自治体が果たすべき役割りというのは、一つは社会的効果といいますか、いわゆる暮らしを守っていく、安定をさせる、いわゆる弱者に対する援助というもの、そしてやっぱりそこの地域住民がみんなが助け合って自治体という組織に結集をしながら自分たちで自分たちの町をつくっていく、そういう方向ですね。それからもう一つ、政治的効果といいますか、そういう点では民主主義、自治意識を高めていく、そういう意味ではそういういろんな要求に基づく運動の成果を発展をさせていく、そういう見地で自治体のやっている仕事を評価する必要があると思う。この二つが自治体のやる仕事の物差しの基本的なものである。  同時に、第三番目に、だから経済はいいということではなくて、もちろん経済的、財政的効果というものを当然やらなきゃいかぬ。むだは許されないんだし、むだを省かにゃいかぬ。しかし、むだを省くということが目的ではなしに、いま言った二つの点を発展をさせていく上で、しかもむだをなくし効率的にやっていく、こういう基準で自治体の仕事というものを見ないと、私は、この損か得かとか目先の問題だけでやっていったのでは、いつまでたっても地方自治が根づかないし、いわゆる民主主義の土台である地方自治ということにはならない、こういうように一番初めの大臣の主張から考えると思うんですが、この点は見解いかがですか。
  176. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 大変これは地方自治体の行政のあり方の一番基幹になるところを御指摘になったわけでございますが、私は、地方自治体のいろいろな行き方を決めるのにはやはり住民の意思というものがどうしても一番根幹になってくるだろうと思います。  それから、地方自治体については常に住民が負担しているわけでございますから、それに対する地方自治体がいかにしてその住民の要望にこたえてサービスをするか、この住民の意思とサービスというところが非常に大きくあり方に影響してくると思うのでございます。その中にはさっき局長が言われたその地方の議会というものの存在、これが、まありっぱな議会ばかりあるだろうと思うのですが、中にはそうでもないのもあるかもしれませんですが、やはり住民の意思を決定するにはその地域の議会というものがどうしても働かざるを得ない、こういうことを考えております。  そこで、民間をどんどん入れてくる、地方自治体の負担をなくすために民間を入れて、コマーシャルベースでどんどんやっていくということは、必ずしもわれわれは好ましいとは思っておりません。そこがやはり、民間の活力の導入ということをどういうふうに扱っていくか、それはやはり住民の意思であり、自治体のいろんな熟慮、反省に基づいてなされるべきものではないかと思います。
  177. 神谷信之助

    神谷信之助君 おっしゃるとおりなんですがね、住民の意思が決定するんですけれども、しかし問題は、たとえばいまの税金は、国税は七割も出しているし自治体には三割しか出してないわけでしょう。しかも三割の自治体も、この間地方税の論議で言いましたように、地方議会で十分に議論をできるような条件はないし、また、裁量権も非常に狭い、そういう状況ですからね。だから、住民自身が自治体に文句を言うても財政がひっかかってくる。財政は国の話になってくる。こういう関係がいつも根っこにあって、なかなか住民自身が自分の意識として自分たちが自分の町を支えるということに全然何かなりにくい、阻害している条件というのはたくさんある。そのほかにもありますよ、いろいろ。ですから、問題は、きょう僕が提起している問題だけで十分ではないんで、一側面をとらえて言ったわけですけれども、そういった問題がたくさんあるでしょう。  なお、もう時間ありませんから最後につけ加えておきますが、私は民間委託すべてがだめだと言っているんじゃないんですよ。保育所をつくる運動が起こる。それに対して、先ほどもおっしゃったように、公設民営とかいう運営方式も出てきています。あるいは婦人会館をつくれという運動が起こって婦人会館をつくる。そこまではいいんだけれども、問題は、その運営は結局お役所がやるという形だったり、そのやってきた運動を支えているそういう人たち自身がいろんな意見を聞いたりして運営をしていく。そういう自分たち自身が主人公としての役割りを果たしていくようなそういうものが加えられればさらに発展していくわけでしょう、自治意識は。ところが、ややもすると、もうわかりましたと、つくるのはつくる、つくったけれどもそれはお役所が管理をする。せっかく自分たちがつくった建物なんだけれども、いろんな規則や何かむずかしくなって結局自分たちのものという気がしない。それはお役所のものになってしまうわけですね。ここではせっかく芽生えた自治意識というのが摘み取られてしまうわけです。そういう傾向というのは、特に日本の長い官僚というか官庁機構の中で潜在的に働いていますからね。そういうのはなんだけれども、私は民間委託全部が悪いと言っているんじゃない。  それで、もう一つ大事なのは、同時に今度はそこの自治体で働いている労働者自身の——これはごみのときにも申し上げましたけれども、自主性、創意性をどう生かすか。言うたら職場の民主化といいますか、自由に物が言え、意見をどんどん出し合って、そしてまた住民の意見もみずから聞いていくというような、そういうことが相まって保障されないと、実際にはこの民間委託のみならず実際に住民の期待にこたえるような住民自身の自治体の組織づくりというのは進まないのじゃないかというように私は思っておるのですが、この点も恐らく大臣、その基調については否定はなさらぬのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  178. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお話しございましたように、確かに戦後大変高度成長を迎え、いろんな社会変化がございました。特に、一時は地域社会の崩壊と言われる時代がございまして、地方自治の進め方にもいろんな問題が投げかけられましたことは御案内のとおりであります。そういう中におきまして、やはりいまおっしゃっいましたように地域社会というのがどういうふうにしてうまく根づくかということをずいぶんわれわれも苦労してきたわけであります。一時そういうことでコミュニティー運動ということを提唱しながら地域の連帯感を養おう、その中で地方自治の運営をうまく切り開いていこうというふうに考えておったものでもありますし、いまでもそういうコミュニティー的な活動というものに対して、私たちはそういう運動が地方に芽生えるということは大変大事なことだと思っております。そういう中からやはり地方自治というものを新しく育てていくという芽が出てくることを育てていかなければならぬというのも私たちの務めでありますし、同時に、近代政治が始まって以来民主政治と申しますか、代議政治と申しますか、そういうものが、新しい角度からもう一回見直すかどうかは別といたしましても、根づいているいまのこの選挙制度に基づく民主主義というものにかわるようなものがなかなかこれ出てこないだろう。そういう意味ではやはりいまの選挙を通じての議会というものを大事にしていかなければならぬだろう。そういう中から住民の意思を十分にくみ上げながら地域社会のいろいろな要求にこたえていくというシステムをやはり私たちは守っていく必要があるんじゃないか。そうして、それぞれに合ったような地域社会というものを、団体自治、あるいは住民自治そのものの中からみんなで選択をしていく、そういう時代にやはり入っていくような気もしますし、そういうことをやはり私たちが地方自治というものを心がけるときの一つの心構えとして持っていなければならないものだと思っております。
  179. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう時間が過ぎていますが、これ、ちょっと申し落としたので、もう一問だけひとつ大臣にはっきりしておいてもらいたいと思っていますので……。厚生省にはきょうも来てもらっていたんだけれども、そういうことでもう答弁してもらう時間がありません。申しわけないと思いますが、お許しいただきたいと思います。  先ほどもありましたが、五十七年度予算で一応国保の肩がわり問題は見送りになりました。そこで三大臣の合意ができましたが、その中で特に第二項で、全体の体系の中での国保制度のあり方を検討するという、「国、地方の役割分担を含め、」ということが合意されているんですが、これは率直に言わしてもらいますと、安孫子前自治大臣当時の答弁から後退をしているんじゃないか。よこしまなやり方だ、けしからぬということを再々——詳しくは言いませんよ、いろいろ表現をされていますが、そういう答弁に対して、まず実施への布石を認めてしまっているのではないかという一つの危惧を持ちます。それで実は厚生省に来てもらって、その問題で国保問題懇談会が発足をして、その後の状況を聞こうと思っておったんですが、きのう聞きますと、国保問題ですから国保の問題にテーマをしぼっているんですね。期限は概算要求までにといいますから七月ないし八月の初めぐらいまでをめどにしていると、こうなっている。  問題は、私はこれで厚生省待ちにしておったんではぐあいが悪い。しかも、これ待ちということになりますと、この懇談会はいわゆる八条審議会とは違うのですね、厚生大臣の諮問機関でしょう。だから、これがどんな意見を出すか知りませんが、それで厚生大臣が拘束されるべきものではないし、それをもと厚生大臣が物を言うということになれば、これはいままでにも国会で問題になっていますように、ちょっと性格が違う。わざわざ政令で定めるというのを法律で定めるというように八条を変えたわけですからね。これは国家行政組織法の第八条ですね。ですからそれから言うと、これは前から厚生大臣の単なる諮問機関にすぎないんだと。  それから、合意の文書をもっとよく見ると、これは「全体の体系の中に」となっているでしょう、「医療保険制度等の全体の体系の中における」と。これは先ほど大臣もそう言われた。国保だけを議論しますと、どう負担をするのかということに、その土俵の中に入れられるわけですよ。だから私はそういう意味では国保問題懇談会の結論がどうであろうとこうであろうと、安孫子大臣当時から後退をしていないとおっしゃるならば、少なくとも次の三つの点は確認ができるかどうか。  一つは、肩がわりさせんがための国保は地域保険だということを安易に受け入れてしまうということ、いわゆる全体の医療保険制度の改革なしに部分だけで結論を出すということはしない。第二番目には、財源保障もなしに地方の分担だけが押しつけられるということは、これはもう当然だめなんだ。それから同時に、国保加入者はもうすでに自治体ごとに保険料あるいは保険税を出しているわけですね。これ、相当高くなってきているでしょう。これに一層負担を転嫁をするということはこれはだめなんだ。この三つの点は堅持をしてこの問題の処理に当たるということは確認してもらえますかどうか。これを最後にお聞きしたい。
  180. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) まず、合意事項でございますが、これは、私ども国民健康保険は別に地域保険でも何でもないんで、国民皆保険を旗印としてやっていく日本の全体の保険医療の一環である、つまり、健康保険と国民健康保険は何ら変わるところがない、そういう考えに立脚しております。これは諸般のいろんな当初のあれから見ても当然のことであります。  もう一つ、国が困っているから、つまり、国の財政上の都合によって便宜上単に地方へ負担を転嫁する、これは絶対行われてはならないというふうに私どもはかたく考えておるものでございます。  もう一つは、国民健康保険の個人の負担がどうなるか、ふえるのはちょっといかぬではないか、こういうことでございますが、負担はなるたけ重ならない方がいいですが、これは健康保険全体のこれからの内容をどういうふうにしていくか、日本の保険医療全体をどういうふうにしていくかということと共同歩調になりますので、私は、その負担額がふえるかふえないか、それからもう一つはいまの健康保険のありようですね、これも問題があるし、さらには医療の内容そのものといろんなふうに関係してきますので、できるだけ国民の負担はこれ以上ふやさない、しかも、さらによりよい医療が行えるような方向検討していくべきであろうと考えております。
  181. 神谷信之助

    神谷信之助君 以上で終わります。
  182. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 先ほども出ておりましたけれども、例の機関委任事務に関する情報公開の問題からお伺いをしたいと思います。この問題については、自治省が、条例で機関委任事務ができるか、こういう問題についてはイエスという答えを出したということになっているんですが、これは大いに評価されると、私どもはそういうふうに思っているんです。  そこで、二、三確認をしておきたいんですが、一つは、機関委任事務に係る情報の管理、公開ですね、この事務そのものは機関委任事務なのかどうか、その点、まず確認をしたいと思います。
  183. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 現在地方公共団体で、機関委任事務の処理に関連をいたしまして、文書の作成なりあるいは収集、これを情報と申しますなら、それを管理しているわけでありますが、この管理につきましては従来から固有事務というふうに考えられておったと思います。したがいまして、機関委任事務に係る文書の作成なりあるいは収集というものは、少なくともそういうものを情報公開の情報というふうに理解をするならば、やはりこれは機関委任事務ではなくて一般的には固有事務だというふうに理解をいたしております。
  184. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 固有の事務であるということなんですけれども、固有の事務だということになると首長の権限で一切やれる、こういうことですね。だから、国の機関委任事務については国の関与一切なしに公開できるんだ、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  185. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) これは先ほども申し上げましたように、どういうふうに文書、情報というのを理解をするかという点にかかっているわけでありますが、いま申し上げましたように、一般的にいろんな事務——機関委任事務を含みますが、そういうものに関連をして収集したりあるいは作成したりするような文書というのは、一般的にそういうものを管理するのは固有事務に属するものだというふうにお話しを申し上げております。  ただ、これは前から申し上げておりますように、機関委任事務実施につきましては国が指揮監督をすることになっておりますのは法律上明確なわけであります。そこで、そういう文書に関しまして、国が何らかの指揮監督をするということはあり得るわけでありまして、そういう場合にはやはり主務大臣の指導監督に服すべきものだと思っております。
  186. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ちょっと、その辺が何かあいまいなんですが、先ほどは固有の事務であるという御答弁だったのですが、いまの御答弁を聞くと、国の指揮監督が及ぶ面もあると、こういうことですから、その辺のところがあいまいのままでこれは地方自治体が受け取った場合問題が生じてくるとこう思いますので、もう一度その辺のところを明確にお答えをいただきたい。
  187. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) これは前々から申し上げておりますように、機関委任事務に関しましては、主務大臣の指揮監督のもとに公共団体の長の責任と判断においてやるべきものだということは毎回申し上げているとおりであります。  そこで、そういうものがどういうときに主務大臣の指揮監督を受けるかということになるわけでありますが、それはやはり機関委任事務であります以上、情報を公開をしてはならぬという部分も中にはあり得ることは当然でありまして、主務大臣がそういうものを公開してはならぬという指揮監督をすることは当然に法律上考えられることでありますから、そういうときには公開をすることができないだろうと、こう申し上げておるわけでありまして、文書の管理でありますとか作成というものがどういう事務かといえば、それは固有事務ですから、公共団体の長においてそれを判断をすることは一向差し支えないけれども、機関委任事務である以上はそういう指揮監督を受けるものであるということを申し上げているわけであります。
  188. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そこがこの問題のポイントではないかと私は思うのですね。要するに、機関委任事務の情報公開事務そのものも機関委任事務として主務大臣の指揮監督が及ぶ、そういうものがあるんだと、こういうことになりますと、いま言われましたように主務大臣がこの情報は公開してはならぬ、この情報も公開してはならぬ、こういうことで、すべてに及んで指導しあるいは通達を流し、そうやってきたときに、実際上情報の公開は、国の機関委任事務については情報の公開に大変な制約が及ぶ。したがって、機関委任事務の情報公開はできますよ、条例で定めることができますよといっても、実際主務大臣がだめだということになれば、実質的にはこれはもうもとと同じではないか、こういうように思うんですが、その点どうですか。
  189. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 機関委任事務を公開しないようにということでいまのようなお説を立てればそうなると思いますし、それは住民一般から見て公開をさるべきだという観点に立って公共団体の長がいろいろな判断をし、国といろんなお話し合いをして、むしろ公開をする方が望ましいということであれば公開する方になるんだと思います。いずれにいたしましても、戦後の行政というのは、一つの行政の民主化ということに従いまして行政が局開をされている中で、行政の公開ということはきわめて大事な行政の民主化の一つでございます。そういうことが行政をやっている人たちにわかっているわけでありますから、これもだめ、あれもだめなどということを私は言うわけはないと思いますし、その点はやはり政府の各機関で、機関委任事務を持っておられるところで、具体的にどういうものがだめなのか、それをよく指示していただければいいと思っております。  先ほど申し上げておりますように、機関委任事務の文書管理と申しますか、文書の作成と申しますか、そういうことについて、私は国が指導をしてきたことはいまだかつてないんだと思っております。そういう意味で文書の作成でありますとかそういうものは一応固有事務だとして観念をされ、みんなが黙認をしてきたものだと思っておりますので、そういう観点に立ちながら、やはり情報公開というのをどういうふうに前向きにこれをしていくかということをお考えを願うという以外に方法はないと思っております。
  190. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは、防衛庁の方来ていると思うんですが、具体的にこれに関連してお伺いをするんですが、防衛庁の地方自治体に対する機関委任事務というものですね、どんなものがあるんですか。
  191. 長谷川宏

    説明員(長谷川宏君) 御説明いたします。  防衛庁の機関委任事務は、大きく分けまして五つになると思います。  まず第一に、災害派遣等の自衛隊の行動を要請する事務、これは都道府県知事から要請されるわけでございますが、そういう事務がございます。  それから二番目に、自衛官の募集事務の一部、これが第二のジャンルであります。  それから三番目に、これは実施のために必要な手続を定める政令がまだ制定されておりませんために発動はできないわけでございますけれども、有事の際、すなわち防衛出動時におきます物資の収用等の事務、これが知事の事務になっております。  それから第四に、損失補償の事務の一部、すなわち損失補償申請書の受理あるいは補償額の決定の通知というふうなものが第四の種類でございます。  そうして五番目に、駐留軍従業員の労務管理の実施の事務というそういう部類がございます。  以上でございます。
  192. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それらの問題の中で、実際に事務内容、情報を住民に公開をした場合に、そのことによって混乱が生ずる、あるいは自衛隊の自衛上の機密の問題か何かに触れてきて問題が生ずる、こういうことのおそれはこの中にはありませんか。もう全部公開しても構わない、こういうように判断をしておりますか。
  193. 長谷川宏

    説明員(長谷川宏君) 順番に申し上げますと、たとえば災害派遣の要請の事務でございますが、これは文書をもってすることとされております。政令の定めのとおりでございますが、知事がみずからの責任と判断に基づき作成される、そして提出をするという文書でございます。  この際、いま御質問の、自衛隊の行動に係るものがあるのではないかということでございますが、一般論といたしましては、部隊行動など自衛隊による任務遂行に支障を及ぼすような情報はこれは公開になじまないだろうと思いますが、災害派遣の場合にはそういう問題は余りなかろうかとも思っております。また、知事がいまの文書を作成されます過程におきまして作業中の文書というものが出てくるわけでありますが、こういうものは、国の場合と同様都道府県におかれましても、意思形成過程におけるものといたしまして、一般に公開に適さないものとして取り扱われるものと考えております。  それから二番目に、自衛官の募集事務でございますが、これに関連しましては、たとえば試験期日、場所等の告示、こういうものが問題外であることは当然でありますが、志願票の受理というふうな市町村長の事務がございます。これはいわゆる人事秘密、プライバシーに係りますので、その方面からの制約というのはあり得ると思います。  それから三番目に、有事の際の物資等の収用等の事務でございますが、これはまだ実際に発動ができない状態でございますので、公開の可否を論ずることはいささか適当でないと思うのでございますけれども一般論としましては、先ほど申し上げた部隊行動との関連において公開になじまないものもあり得るかと思います。  それから四番目に、損失補償の関連の事務でございますが、これは個人または法人の所得といいますか財産に係る問題でありますから、プライバシー保護の観点から、関係者の同意がない限り、公開を求められましてもこれは応ずるわけにいかないという種類のものでございます。  最後に、駐留軍従業員の労務管理の実施の事務でございますが、これに関連しましては、従業員の経歴あるいは給与等、さきのプライバシーに属するものがございますほか、米軍から不公表を条件として得ている資料、たとえば将来におきます雇用なり整理なりの計画のようなもの、こういうふうなものはぐあいが悪い。それからまた、現に部内で検討中の事柄に関するものは、公務の円滑な遂行の観点からぐあいが悪いと思っております。当庁としては、公開を求められてもお断りすることとしておりまして、都道府県におかれましても当庁と同じ扱いをされることが望ましいと考えております。
  194. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 防衛庁の関係のお話を聞いたんですが、公開に適さない、なじまない問題がかなりありますね。  そこで、自治省にもう一度お伺いをしておくんですが、そういう主務官庁から、その問題は公開してはならぬ、非公開にしてほしいと、こういう指示があった場合に、地方自治体の方としては、固有の事務なんだから、それは国の単なる要請だと、こういうように受けとめて、それには従う必要はないんだとそれを拒否する、それで自分たちの裁量で情報公開はできる、こういう解釈もあるんですが、その辺はどうでしょう。
  195. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) あるいはこういうことを言うと大変失礼に当たるかと思いますが、余りどうも機関委任事務についてみんなが騒ぎ過ぎるんじゃないかという感じがいたしているわけであります。これを余り言うとかえってみんな各省が抑えてしまうということになりますから、本当は機関委任事務についてはそっとしておく方が公開しやすいという部面がずいぶんあるんじゃないかという気がいたしております。  では、どういう場合にそういうやり方ができるかということになりますが、恐らく情報公開に関する条例ができるわけでありますが、もともと条例というのは、御案内のとおり、法令に反して制定ができないことになっております。もし本当に情報公開をしてはいかぬということでありますれば、国はやはりその法令の範囲内で条例を抑えざるを得ない。単にだめだと言うだけではこれはだめなので、訓令であるとか通達であるとか、そういうものではとても情報公開を抑えられるような制定にはならないだろう。やはり条例というものが法令に違反をしないということが前提である限り、そういうものに違反しないような形での国の指示がない限り、それは情報公開されてしまうと、そういうふうに思っております。
  196. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 この機関委任事務については、地方自治体としては、この事務については予算も組織も人間も地方自治体が出してやっている。それで、全体の地方の県当たりの事務の七、八割が国の委任事務だと。国の委任事務と固有の事務と別に日常判断して仕事をやっているという状況でもない。あるいは住民に至っては、どこが国の委任事務でどこが地方事務だとわかっていないですね。別にわからなくても支障がない、こういうわけですから、だから、情報公開については私どもは積極的な立場を持っているわけですが、しかし、自治省がこの間衆議院内閣委員会かなんかで答弁をされた内容、いまずっとお聞きをしてみまして、必ずしも全面的に手放しで喜ぶような方針の新しい展開でもない。むしろ一昨年あたりから答弁されているように、主務大臣の指揮監督のもとにあるんだ、したがって、地方自治体の首長と国との両方の責任で判断してやりなさい、こういうことで、全然前進していないんじゃないか、こういうように私も思うんですが、もう一度この問題について御答弁をいただいて、次の問題へ移りたいと思います。
  197. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 先ほど申し上げましたように、主務大臣の指揮監督のもとで、長の判断、責任においてやるということについては全く変わっていないわけであります。ただ、その内容につきまして、少なくともそういう情報と申しますか、文書、公共団体で持っているいろんな公文書あるいはそれを作成をしていく文書、そういうものを管理をするというのは固有事務であることは疑いのない事実であろう、そういう点で、一般的には長の方に責任と判断がゆだねられているというのがいまの情報公開に対する文書管理の姿であろうと思います。  もともと私たちは、この情報公開というものを文書管理の一つの態様だと思っておりますから、当然それは長の権限に属するものだと思っておる、これは先ほど何回も申し上げているとおりであります。ただ機関委任事務である以上は国の事務であることもこれは間違いないことでありますから、国の一般的な事務の指揮の中においてそのものが公開されては困りますということで国から指示を受けているときにはそれはできなくなるだろうということでございます。
  198. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 実際は、条例がそういうようにできても、公開してはならぬぞならぬぞというのが多く乱発をされて、結果的には何の意味の条例だったかわからない、こういうことにならぬようにやってほしいものだと思います。  次に、選挙制度の改革の問題について、先ほども話が出ておりましたけれども自民党の中で、例の地方選をある時期に統一してやろう、こういう問題を提起されて、いま検討自民党内で進んでおる、こういうことを聞いておるんです。自治省並びに大臣のところへはまだその問題は行っていないようではありますけれども。そこで私は、基本的な問題として確認を、自治省見解をお聞きをしておきたいんですが、たとえば統一地方選を毎年毎年統一地方選挙の日として設定をしてやること、この問題ですが、そのことによって、たとえばいま自民党が出している、来年の統一地方選挙を参議院選挙後の十一月ごろに持っていこうと、こういうことで、そうなると、任期が四月までの者は十一月まで任期を延ばすことになるわけですね。  こういうように国の判断で勝手に地方議員や首長の任期を延ばしたり、縮めたりすること自体は私は地方自治法を改正しなければできない問題であると思いますし、これはもちろん憲法に定められた「地方自治の本旨」に反するものではないかと、こう私は思っておるんですが、その点についての御見解をお伺いをしておきたいと思います。
  199. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 地方選挙統一問題について、現在自民党検討をされておることにつきましては、御指摘のあったとおりであります。その問題点といたしまして、いま申されました年一回に統一することが地方自治の観点からどう考えるべきかという問題は、当然にこの問題を論議する場合に前提となるべき問題であろうと思います。従来から選挙統一自体について、戦後長い間論議をされながら今日の形になってきたわけでありまして、再び今後の統一のあり方について論議されること自体、私ども一つ意味があると考えておりますけれども、確かに事柄は地方の自治行政つまり地方の問題ということになりますので、地方の当事者については非常に影響が大きい問題でもあろうかと思います。したがいまして、この問題を論議する際には、各方面の意見、特に地方団体あるいは当事者、そのあたりの御意見は十分に伺った上で検討していただきたいという気持ちを非常に強く持っております。  この統一の問題は、選挙制度、選挙仕組みをどうするかというテクニック的な問題というよりも、地方自治そのものの問題ということにも非常に大きな関連を持っておりますので、現在のところ、私ども具体的な検討にはまだ入ってはおりませんけれども、御指摘の点は十分踏まえて今後対処してまいりたいと考えております。
  200. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 憲法の第九十二条にはこう書いてありますね。「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」、それから憲法第九十五条は、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、」——これは地方選挙なんかの場合だと思うんですが、「法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」、こう書いてありますね。本来、地方自治の本旨からいけば、その地方選挙をいつに行うとか、それは住民自身の考えることであって、国がとやかく関与すべき問題ではないし、それが地方自治の本旨であるし、憲法に定められた基本的な精神だと思うのですが、それを無視してこういうことを考えること自体地方自治の本旨をゆがめるものである、こういうように私は考えますが、それは意見だけ申し上げておきます。  それから、同時に自民党は、首長の多選の禁止の問題も取り上げておりますね。これも私は、住民自身がそのことを決めればいいことであって、それを国の判断で五選以上はだめだとか四選以上はだめなんということを法律で禁止する問題ではないと思うんです。むしろこれも憲法違反の疑いがある、こういうように思いますけれども、この点についてはどうですか。
  201. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 首長の多選問題につきましても、戦後数回にわたりまして、その都度国会で論議の対象となってまいったのでありますけれども、そのたびごとに、禁止する実益とそれから禁止すべきでないという御議論と、いろいろ御意見が錯綜いたしまして、御意見のまとまらないまま今日にまいりながら、再び三たび多選禁止の問題が現在論議されておるという状況になっておるわけでありまして、もちろん御指摘のような御意見も片一方にありましょうし、また同時に、地方の多選の実態というものにかんがみて何とかせぬといかぬという御意見もあるわけでありまして、こういった問題も非常に多分に政治的な側面を有する問題でありますので、現在私どもとして事務的にこうすべきだとかああすべきだという考えは持っておるわけではございませんが、いろいろこの問題についても関係の御意見を拝聴してまいりたいと存じております。
  202. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 政治的側面なんというのは、これは党利党略なんですよ。それははっきりしているんですね。だから、基本的な問題として構えて、国の方向を誤らないようにやっていかなければならぬと思うのです。  そういう自民党の最近の動きの中で、私は一つだけこれはいいなと思ったのがあるわけですよ。それは、いまこういう国際化時代になって、海外にかなりの人が出ていっているわけですが、その海外に出ていっている人、約四十五万から五十万とも言われているんですが、ますますこれは多くなると思うんです。そういう海外にいる日本人にも投票ができるようにやろうではないか。新聞の見出しによると「在外投票制」、こういう制度を考えよう。私はこれは非常に前進だと思うんです。国民の基本的な権利、国民が政治に参加する道は投票以外にないのですから、投票して議員を選べば、後は議員が政治をやっていくわけですから、国民の直接の政治への参加はこれしかないので、これは非常に結構なことだと思うのですが、これはどの程度検討をされておりますか。
  203. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 海外在住者の選挙権の行使の確保の問題についても、自民党選挙制度調査会で検討課題の中に掲げられ、近い日に検討が始められるというふうに伺っておりますが、同時に、この問題そのものがかなり前から御要望事項として上がっていることは私どもしっかりと受けとめて検討を続けてまいっておる過程でございます。特に、問題自体が、選挙の不在者投票の範囲を拡大する場合に海外在留者の問題をどう扱うかという問題といたしまして、外務省当局とも事務的な問題点の煮詰めを続けております。  ただ、問題自体、まず入り口の問題として、海外在留者の選挙人としての範囲というものをどうつかまえていくかという問題がございます。たとえば二重国籍の方もおられましょうし、あるいは永住者をどう扱うべきかとか、あるいは長期滞在、ある程度の長期滞在ということが要件となってまいろうかと思いますけれども、その長期の範囲をどう考え、それが在外公館において認定可能であろうかどうであろうか。これはすべて事務的な問題でありますが、その他選挙人名簿の登録の仕方、あるいは選挙人をどの選挙区に所属させるのが適当であるか。あるいは前住所地がいいんじゃないかという考え方もございましょうし、前住所地というのは必ずしも判明しないから、本籍地というような考え方も、いろいろ出てまいるわけであります。さらには、投票の方法をどうするか、ここら辺が一番大きな問題でありまして、現在の不在者投票は、原則として不在者投票管理者という一つ選挙管理機関のもとで投票するシステムになっておるわけでありますが、そういった不在者投票管理者のもと選挙をしてもらうということになりますと、あるいは在外公館投票というようなことが考えられるわけでありますが、こういったことについての外務省当局の考え方、そういうものを現在いろいろ御相談を申し上げておるわけであります。  この制度を考えます場合には、そういった選挙手続的な問題のほかに、限られました選挙運動期間で候補者の確認なり、あるいは候補者の政見を在外選挙人に周知することにつきましては、外国における政治活動の規制の問題もありまして、なかなかむずかしい問題もあろうかと思いますし、あるいは選挙の公正というものの確保が果たして在外においてどのように保障されるかというような問題も基本的な問題として考えられ得るわけであります。そういった問題について、諸外国の例をも考えながら、今後とも検討を続けてまいる所存でございます。
  204. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 この問題にはさまざまな問題点は確かにあると思うんです。あると思うんですが、しかし、西欧先進国の例なども考えますと、この機会に大いに積極的に検討を続けていただきたい、こういうように希望しております。  それから、海外の在留邦人の場合は、租税特別措置法によって税金をどこへ納めるかは自分自身の判断でやっていくのですが、しかしこの問題と少し関連をするのですが、日本国民として税金も住んでいるところへ納める、一〇〇%そういう義務を負っている例の船員、漁民の問題なんですが、船員並びに漁民が選挙の際は、たとえば長期に出漁しているような場合には選挙のときに投票ができない。こういう問題は前から問題になっているところなんですね。だから、在外投票制の問題と関連をしまして、こっちの方が前から、もう戦後ずっと問題になっているわけなんで、この問題を同時に真剣に検討をしていただきたいと思うのですが、その点の考え方はいかがでしょう。
  205. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 長期間にわたりまして船舶あるいは漁船に乗船しますために選挙権の行使ができないという問題も、一つの重要な懸案事項でございまして、現在指定船舶制度というような制度でこの問題を処理をいたしておるわけでありますけれども、現行の指定船舶制度自体におきましても、なおかつそのときそのときの事情によりましては適当な寄港地がなかったとか、いろんな事情によりまして選挙権の行使ができなかったというような事例が間々あることは承知をいたしております。同じような問題が先ほど来の御指摘になっております在外邦人の選挙権の行使という点と問題としての関連を持っておりますので、お互いを関連をつけて検討をしてまいるつもりでございます。
  206. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 これはもう長い間要求をし、かつ、地方の議会においても要望書ないし意見書として採択をされてきているわけですね。しかも船員、漁民合わせると約二十三万くらいおるわけですか、本当は五十五年の選挙のときの数字を出していただきたかったんですが、時間がありませんので数字はいいんですが、その二十三万程度の人々の中で、実際に国政の選挙の際投票は棄権——自主的に棄権じゃないのですよ、実際には海上にいて投票ができない、こういう人員が相当に上るわけですね。これは海員組合などの調査によると二十三万程度のうちの一万八千名程度が投票できた、あとはほとんど投票できないままでいる。戦前からもそうですが、戦後も、投票権をいただいてから、いま四十、五十、六十歳くらいになった人が、戦後まだ一回も投票に行けなかったという人がごろごろおるわけすね、漁民の多いところへ行けば。こういう現状は、やはり国民の権利としての投票権を奪っているにも等しい、こう思いますので、検討するだけじゃだめなんです。もういよいよ来年度の選挙くらいから実施してほしいし、しかも、いま国政だけに特殊の投票のやり方というものを適用されておりますけれども、そうじゃなくて、地方選挙にも適用できるように急いで検討してもらいたいと思うのですが、その点どうでしょう。
  207. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 船員の方々あるいは漁船の乗員の方々、二十万人を超えるというふうに私ども承知をしておりますが、船員の方々につきましては、漁船乗務員についても同じでありますけれども一般選挙人と同じような不在者投票の方法も認められておりますし、さらには船員独特の船長のもとにおける不在者投票でありますとか、あるいは特定の港を指定した個所で不在者投票を行う方法と三通りの方法が現在講じられておるわけでありまして、実際問題として、選挙の結果におきまして船員の方々の投票が具体的にどれだけの数字になっておるかということは、実は正確な見きわめはついておりません。と申しますのは、船長のもとにおける投票でございますとか、あるいは指定船舶における投票でありますとかというふうに区分けのできるものにつきましては、選挙権行使者の数はこれはわかるわけでありますが、一般選挙人と同じような方法で不在者投票をしていただいておる方々については区分けができませんので、相当数不在者投票については御協力をいただいておるとは存じます。  ただ、物理的な関係でどうしても選挙権の行使ができないというようなことは、船員の方々のお仕事の関係上これはあり得るわけでありまして、そういった問題を一挙に解決いたしますとすれば、外国でやっておりますような代理投票と申しますか、あるいは委任投票と申しますか、他人に委任をして投票するというような方法がこれは一番簡単なわけでありますけれども、こういった代理投票という問題にもう一つ踏み切れなかった問題は、憲法で言う「投票の秘密」の問題についてどう考えるかという大きな壁があるからでありまして、諸外国におきましては、その点が余り厳格に考えられずに実施をされておる。特に諸外国におきましては、そういった在外選挙民あるいは船員の方々に代理投票を認めるというのが、もともと国内の不在者投票においてすでに代理投票なり委任投票というものを実施をしておるわけでありまして、特に国内の選挙とのそごがないという歴史的な事情もあろうかと思います。日本の場合に非常に厳格なシステムで参っておりまして、国内で代理投票あるいは委任投票を認めておらない現在において、海外在留者あるいは船舶で長期航行をされておる方々についてのみ代理投票という特別な制度を導入することについて、一体違和感があるかないかというような非常に対応がむずかしい問題が出てまいりますので、何とかそういうことでない便法がないかというふうな模索をするために非常に努力をしてまいっておるわけであります。
  208. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 もうそういう答えは五、六年前から聞いているわけですよね。投票の秘密と言いますけれども、代理投票、体の弱い方とかあるいは目の見えない方は、実際投票所へ行って十五万人くらいの人が代理人に書いてもらって投票しているわけですよ。だからもう船員の場合も事情がはっきりしておりますし、実際選挙のあった場合に漁民の投票率を見ればわかりますよ。そのときに出漁していまして、女性の投票率は物すごく高いけれども男性は五〇%を切っているとか、いろいろ事例があるわけですよね。これだけの権利が狭められているという事情を十分に参酌をしながら、いま言われたような代理投票、委任投票あるいは洋上からの電報による投票、こういうことも認めるように前向きに積極的に対処をしてほしい。それでなければ、先ほどの、例の在外投票制の関連において、この問題もつぶれていってしまう、こういうように思いますので、その点はひとつ積極的に御要望を申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので次に移りますけれども、消防庁に御見解をお伺いをしておくわけですが、四月十六日、衆議院地方行政委員会で例の横井社長を参考人として喚問をして各党の議員がこれについてかなり追及をしておるわけですが、むしろ横井さん自身は、自分には責任がないというような答弁の繰り返し、こういうことで、遺族の方も大変憤慨をされていることを新聞紙上で私は拝見をしておるわけですが、その横井社長の言葉の中に、私は消防署の指導どおりに設備を改善をしてきたんだ、火災の起こった二日後、二月十日からはスプリンクラーの設置を初めとして大工事をやる予定だった、その直前にこういうことになったんだと、いかにも自分自身は責任はなくて、消防署の言われるとおりに実行してきた、その過程の中で起こってしまったんだと、こういうことを言っておるんですが、衆議院地方行政委員会における横井社長の発言について、いまの段階で消防庁としてはどのように感じられておりますか、それをお伺いします。
  209. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 去る四月十六日の衆議院地方行政委員会におきます参考人の喚問におきまして、ただいまお話しがありましたような発言があったというぐあいに私ども聞いております。  東京消防庁からの連絡によりますと、このホテル・ニュージャパンにつきましては、消防法の遡及適用につきましては、横井社長が就任いたしました五十四年五月以降だけでも二回にわたりまして文書による指導を行い、なおかつ、査察を通じまして、消防用の設備の設置でございますとか、あるいは防火管理の適正化と防炎物品の使用等につきまして、再三指導を行ってきた、かように私ども聞いております。しかしながら、結果としまして、指導項目のほとんどにつきましてこれが履行されていなかったことは事実でございまして、ホテル側の適切な対応がこのような事実に基づいて得られませんでしたために、昭和五十六年の九月十一日に、法律に基づく、消防法第十七条の四に基づきます措置命令を発するに至っているわけでございます。  このような経過を踏まえますと、横井社長が消防署の指示どおりに適切な改善を行ったというぐあいには私どもは考えておりません。
  210. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは、具体的にお伺いするんですが、これは将来もし横井さんが消防庁を訴えたり、そういう裁判になった場合に大変問題になると思うんですが、行政上の責任の問題が絡んでくると思うんですが、だからちょっとお伺いをしておきますが、この横井さんの言うのには、スプリンクラー設置の指示は地下一階と地上三階までだったと、こういうように言っているんですね。これは事実ですか。
  211. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 東京消防庁が五十四年の五月の二十二日あるいは五十六年の八月二十八日にそれぞれ指示をいたしました事項は、一部ではございませんで、全部についての設置ということでございます。
  212. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そうすると、これは地下一階と地上三階までではなくて全部やれと、こういう指示を出していたわけですね。それはもう間違いありませんね。
  213. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 着手をいたしましたのは一部でございますが、指示は全部についてでございます。
  214. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それから、横井社長がこのホテルを買収したのは五十四年の六月ですね。実は消防法の改正があって、こういうスプリンクラーやなんか設置するために、五十四年三月末日までを猶予期間としてこの期間に設置しろと、こうやっていたわけですね。横井さんが社長になったのは五十四年三月末日、要するに猶予期間の切れた三カ月後に社長になっているわけですね。そうすると、その前のこの建物の所有者に対して消防庁はどのような改善勧告ないし指導を行ってきたのか、これをお伺いしたい。
  215. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) ただいまお話しがございました、スプリンクラーあるいは屋内消火栓等の遡及適用につきましては、四十九年に法律が改正になったわけでございますが、猶予期間がございまして、五十四年の三月末日までにこれを整備しろと、こういうことに、ホテルにつきましてはなっていたわけでございます。したがって、その猶予期間中につきましては、設置の促進を図りますために金融上の特別措置も行われたわけでございますが、猶予期間が経過しました後におきましては、設置が行われていないということはまさに違法状態になったわけでございまして、この違法状態を前提といたしまして、東京消防庁におきましてはそれぞれ設置の指導を行っていたということでございます。
  216. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 だから私の言うのは、横井さんは五十四年六月ですね。この消防法の改正によって設けられた猶予期間が五十四年三月末日、これまでにやれと。こういう猶予期間があって、その間、この所有者の藤山さんにはどのような改善勧告ないし指導を東京消防庁がやったのか。そして、それに当時の経営者である藤山さんはどのように対応したのか。この点をお伺いしたい。
  217. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 横井社長が前社長よりこの建物を引き継ぎます前に、東京消防庁におきましては二回にわたりまして文書指導を行っております。その結果、当時のホテル・ニュージャパン側といたしましては五回にわたりまして改善計画書の提出というものが行われております。この計画書に基づきまして、四階及び七階の一部につきましてはスプリンクラー設備の代替施設であります防火区画を設置いたしておりましたけれども、全体につきましては設置が行われなかったという状態でございました。
  218. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そこで、これは将来どういうことになりますか。私は、あの横井さんのようなしたたか者に結局乗ぜられるような事実なり理屈を与えてしまったら大変だと思うんですよ。そういう意味で私は質問をしておるわけです。  そして、十七条の四の措置命令というのが五十六年の九月十一日ですね。しかも、これには一年間の改善のための猶予期間というのですか、これを付して五十七年の九月十日までにやればいいと、こういうわけですね。この十七条の四の措置命令、これは設備の改善とかそのほかでしょう。こういう緩やかな措置命令ですね。しかも、もう何年も前から改善勧告をやってきたけれどもちっともやらない。そして最後に、五十六年の九月十一日に、去年ですね、やっと十七条の四の措置命令を出して、そしてそれにさらに改善期間一年を付した。ここなんですよね。これが実は、遺族の会がいまあるでしょう、その遺族の会が、こういうなまぬるいことをやってわれわれの家族を死なした、したがって国、東京都あるいは東京消防庁を相手にして損害賠償請求の訴訟を起こす準備をしているというわけですよ。  その内容を見ると、結局、その十七条の四では余りにもなまぬるい、なぜ五条の強い措置をとらなかったか。五条でたとえば使用停止とかそういうものをとっておったらわれわれの家族は殺されなくて済んだと、こういうわけですね。その行政の責任を追及して消防庁、東京都、そして国を相手取って損害賠償をやるんだと、こういうこともあるわけです。一方においては。  私はこの間も集中審議のときに、消防法の五条にも欠陥があると、五条そのものにも欠陥があるんですね。五条そのものは、措置命令を出す出さないは結局現場の消防署長の自由裁量に任せられているわけですから、どの辺まで問題点があればこれは行政側の義務として命令を出さなければならぬと、そこまでは言っていないんですから。その点については検討をすると、こう言ってるわけですから、それは将来の検討としてお任せをしますけれども、そういう今日の現状について、やっぱり行政側としてのかなりの反省も必要ではないかと、こう思うんですよね。その点についてはどうですか。
  219. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 今回のホテル・ニュージャパンの火災に関連いたしまして、消防機関なりあるいは消防当局に対しましていろいろと御批判がございますことにつきましては、私どもといたしましては謙虚にこれを受けとめまして、今後の消防行政の推進の上に役立ててまいりたい、かように基本的には考えております。  先ほども申し上げましたとおり、また当院の予算委員会におきましても東京の消防総監から御説明がございましたとおり、今回の件につきましては従来いろいろといきさつがございまして、スプリンクラーの設置につきましては、横井社長に交代しましてからだけでも二回にわたって文書指導あるいは査察によっての指導と。その結果、一部の改善は行われましたけれども、全体としてこれが遅々として進まない、こういう経緯を踏まえまして、昨年の九月の十一日に法律上の措置でありますいわゆる措置命令ということに踏み切ったわけでございます。そういうことで踏み切った措置命令につきましても、事柄がスプリンクラーの設置というようなことでございますので一年間の猶予期間を見た、その中にこういう火災が起きた、大変遺憾な事態でございますが、東京消防庁といたしましてはそれなりにやはり努力をしてまいったということを私ども考えておりますし、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、こういった事件につきましては謙虚に反省をいたしまして、行政上の指導につきましてはより徹底を期してまいりたいというぐあいに考えております。  お話の中にございましたいわゆる行政当局の責任問題、民事のものでありますか、国家賠償のものでありますか、それは明らかではございませんが、私どもといたしましては、そこで言われておりますような故意がないことはもちろんでございますし、過失につきましても私どもはそういう法律的な責任はないものというぐあいに一応考えております。
  220. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 行政が後追い後追いにならないように、ひとつこれからこの事件を契機にして強力な対処方をお願いしたいと思います。  時間がございませんので、最後に、警察庁にお伺いをするんですが、横井社長の刑事事件の立証ですね、これは現段階で可能であるかどうか、その点の見解をお伺いして終わります。
  221. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 御案内のように、刑事責任というのはあくまでもこれは証拠に基づいて結果を明らかにするべき問題でございます。したがいまして、この問題につきましては現に捜査中の問題でございますので、ただいまの御質問に端的にお答え申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、私どもは、この事柄の性格、本質、そういうものから考えて、当然横井氏を含めて刑事責任の有無を明らかにする、そういう姿勢で臨んでおります。  現在までの捜査をごくかいつまんで申し上げますと、具体的に現在まで九百名に上る関係者から詳細な事情の聴取と前後十六回にわたる捜査によって経理関係を含む各般の資料等を押収をいたしております。そして現在、現場検証の結果とこれらとを突き合わせながら捜査を続けてまいっております。  問題点は、管理の最高の責任者である横井氏が、防火管理者以下の人たちに対して、欠陥の指摘されているいろんな防火の設備なり、あるいは消火の設備なり、あるいは防災の計画なり、あるいはそれに基づく訓練なり、あるいは具体的な行政官庁である消防庁の指導なり、そういうものをいかような形で受けとめ、いかように認識をしておったか、こういう問題を、これは供述と資料を中心にした詳細な事実関係の把握、これをやることがまず第一でございます。  それから第二の問題は、事柄は火が出ているわけでございますから、どの場所からどういう形で火が立ち上がり、どの程度のスピードで炎が広がっていき、あるいは煙がどう流れ、煙の毒性がどうであったか、そのときに避難誘導がどのように行われたか、そういうことをまず科学的に明らかにする必要がございます。  それから、幾つか指摘されておる防災設備の欠陥、なかんずく、先ほど話がありましたスプリンクラー等の問題、つまり具体的に消防庁がどういう立場でどの程度の強さのどういう指導をしておったか、こういう事実を十分に踏まえまして、それに対する横井氏の認識、そういうものを踏まえまして、横井氏がこうした大きなことが起こるであろうということの予見可能性があり、しかも結果回避の義務を尽くさなかった、こういうことを証拠上明らかにし、しかもそのためには消防庁等の指導に従って設備を整えておったであればこのような結果は起こらなかったはずであるという、これは科学的な観点、そういうものが必要でございます。  したがいまして、警視庁といたしましてはそのような方針に基づいて、現在鋭意証拠並びに資料の収集あるいは鑑定を逐次行っておる、こういう段階でございます。したがいまして、結論がどう出るかはそのような関係の証拠を十分に集めた上で判断をすべき問題である、このように考えておりまして、基本的な姿勢としては、繰り返しになりますが、横井氏の刑事責任の有無も含めて捜査当局は取り組んでいる、このように御理解いただきたいと思います。
  222. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  223. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 昭和五十七年度の地方財政計画について政府から説明を聴取いたします。世耕自治大臣
  224. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 昭和五十七年度の地方財政計画の概要について御説明申し上げます。  昭和五十七年度の地方財政につきましては、引き続き厳しい状況にあることにかんがみ、おおむね国と同一の基調により、財政の健全化を促進することを目途として、歳入面におきましては、地方税源の充実と地方税負担の適正化を図るとともに、地方交付税の所要額を確保することとし、歳出面におきましては、経費全般について徹底した節減合理化を行うという抑制的基調のもとで、住民生活に直結した社会資本の整備を計画的に推進し、あわせて地域経済の安定的な発展に資するため必要な地方単独事業費の規模の確保に配意する等、限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹し、節度ある財政運営を行うことを基本としております。  昭和五十七年度の地方財政計画は、このような考え方を基本として策定しておりますが、以下その策定方針について申し上げます。  第一に、地方財政の実情と地方税負担の現状とを勘案し、法人の住民税及び事業税について徴収猶予割合を縮減するとともに、市街化区域農地に係る固定資産税及び都市計画税の課税の適正化措置等について所要の措置を講ずる一方、個人住民税所得割について、低所得者層の税負担に配慮するため、その非課税限度額を引き上げること等により、地方税源の充実と地方税負担の適正化を図ることとしております。  第二に、地方交付税について、昭和五十七年度の地方財政の円滑な運営のために必要な額を確保し、あわせて中長期的な財政の健全化に資するための措置を講ずることとしているほか、地方債について、施設整備等に必要な額の確保を図りつつ、全体としてはその発行規模を縮減するとともに、資金の質の改善を図ることとしております。  第三に、抑制的基調のもとにおいても、地域住民の福祉の充実、住民生活に直結した社会資本の計画的整備及び地域経済の振興等を図るための諸施策を実施することとしております。このため、投資的経費に係る地方単独事業費の所要額を確保するとともに、福祉施策の充実、教育振興対策等の推進を図ることとし、また、過疎地域等に対する財政措置を充実することとしております。  第四に、地方行財政運営合理化と財政秩序の確立を図るため、定員管理の合理化一般行政経費の抑制及び国庫補助負担基準の改善を図るほか、年度途中における事情の変化に弾力的に対応できるよう必要な措置を講じることとしております。  以上の方針のもと昭和五十七年度の地方財政計画を策定しました結果、歳入歳出の規模は、四十七兆五百四十二億円となり、前年度に対し二兆五千三十三億円、五・六%の増加となっております。  以上が昭和五十七年度の地方財政計画の概要であります。
  225. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、補足説明を聴取いたします。土屋財政局長
  226. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 昭和五十七年度の地方財政計画の概要につきましては、ただいま自治大臣から御説明申し上げましたとおりでございますが、なお、若干の点につきまして補足して御説明を申し上げます。  まず、規模でございますが、明年度の地方財政計画の規模は、四十七兆五百四十二億円で、前年度に比較しまして二兆五千三十三億円、五・六%の増加となっております。  次に、歳入について御説明いたします。  まず、地方税の収入見込み額でございますが、道府県税八兆八千七十億円、市町村税十兆二千八百七十三億円、合わせて十九兆九百四十三億円でございます。前年度に比べて道府県税は八千百四十五億円、一〇・二%の増加、市町村税は一兆一千九百二十二億円、一三・一%の増加で、合わせて二兆六十七億円、一一・七%の増加となっております。  なお、地方税につきましては、地方財政の実情と地方税負担の現状とを勘案し、法人の住民税及び事業税について徴収猶予割合を縮減するとともに、市街化区域農地に係る固定資産税及び都市計画税の課税の適正化措置等について所要の措置を講ずる一方、個人住民税所得割について、低所得者層の税負担に配慮するため、その非課税限度額を引き上げること等により地方税源の充実と地方税負担の適正化を図るための措置を講ずることとしており、これらによりまして三百十億円の増収を見込むことといたしております。  また、地方譲与税の収入見込み額は、四千七百七十三億円となっております。  次に、地方交付税につきましては、国税三税の三二%分九兆二千三百九億円に返還金二十八億円並びに交付税及び譲与税配付金特別会計における資金運用部からの借入金二千九十八億円を加算した額から、国の厳しい財政状況を勘案するとともに、中長期的な地方財政の健全化のため、昭和五十七年度において減額し、後年度に加算することとしている千百三十五億円を控除した額とすることとし、総額九兆三千三百億円を確保いたしました結果、前年度に対し六千百三十四億円、七%の増加となっております。  国庫支出金につきましては、総額十兆八千八百七十一億円で、前年度に対し二千六億円、一・九%の増加となっております。これは社会福祉関係国庫補助負担金及び義務教育費国庫負担金などが増加した反面、公共事業費補助負担金などが前年度より減少したことによるものであります。  次に、地方債でございますが、普通会計分の地方債発行予定額は、三兆八千百億円でございまして、前年度に対しまして、四千六百億円、一〇・八%の減となっております。減少することとなりましたのは、地方財源の不足に対処するための建設地方債、いわゆる財源対策債については昭和五十七年度においては措置する必要がなくなったことによるものであります。  なお、地方債計画全体の規模は六兆五千四百三億円で、前年度に対しまして三千九百億円、五・六%の減となっておりますが財源対策債を除いて比較しますと前年度に対して三千億円、四・八%の増となっております。  以上のほか使用料及び手数料並びに雑収入につきましては、最近における実績等を勘案して計上いたしております。その結果、歳入構成におきましては、地方税が前年度の三八・三%に対し、二・三ポイント増の四〇・六%となり、これに地方交付税及び地方譲与税を加えた一般財源は前年度の五八・九%から六一・四%へと上昇し、反面、地方債は前年度の九・六%から八・一%へ、国庫支出金は前年度の二四%から二三・一%へとそれぞれそのウエートが低下しております。  次に、歳出について御説明いたします。  まず、給与関係経費についてでございますが、総額は十三兆四千五十四億円で、前年度に対しまして八千三百五十九億円、六・七%の増加となっております。これに関連いたしまして、職員数につきましては、教育、警察、消防関係職員について増員を抑制すると同時に、それ以外の一般職員については、老人保健法の施行に伴い必要となると見込まれる職員を措置する一方で、国家公務員定員削減の方針に準じ、定員合理化を行うこととし、一般職員全体としては、職員数の純減を図ることといたしております。  次に、一般行政経費につきましては、総額十兆一千六百三十一億円、前年度に対しまして、四千六百六十六億円、四・八%の増加となっておりますが、このうち国庫補助負担金等を伴うものは五兆四億円で、前年度に対しまして二千九百四十八億円、六・三%の増加となっており、この中には、老人保健法の施行に伴う経費、生活扶助基準の引き上げ等を図っている生活保護費、児童福祉費、老人福祉費などが含まれております。国庫補助負担金を伴わないものは五兆一千六百二十七億円で、前年度に対しまして千七百十八億円、三・四%の増加となっております。この中では、社会福祉関係経費を充実するほか、高等学校以下の私立学校に対する助成経費として二千百八十二億円、年度内及び年度越回収貸付金として一兆五千百三十八億円、災害等年度途中における追加財政需要に対する財源として四千五百億円等を計上いたしております。  なお、内部管理的な一般行政経費は、極力抑制することといたしております。  公債費は、総額四兆二千六百十五億円で、前年度に対しまして五千六百二十九億円、一五・二%の増加となっております。  次に、維持補修費につきましては、計画的補修の必要性等の事情を考慮し、前年度に対しまして二百七十六億円、四・七%の増額を見込み、六千百五十八億円を計上いたしております。  投資的経費につきましては、総額十六兆九千七百八十九億円で、前年度に対しまして四千四百三十億円、二・七%の増加となっております。このうち、直轄、補助事業につきましては、国の厳しい財政事情を反映し、二・六%の減少となっております。  一方、地方単独事業費につきましては、地方団体が身近な生活関連施設等について計画的な整備を推進し、あわせて地域経済の安定的な発展に資することができるよう所要の事業量を確保することとし、前年度に対しまして六千七百一億円、八・五%増の八兆五千五百三十六億円を計上いたしております。  また、公営企業繰出金につきましては、地下鉄、上下水道、病院等国民生活に不可欠なサービスを供給している事業について総額一兆百九十五億円を計上いたしております。  以上のほか、地方交付税の不交付団体における平均水準を超える必要経費については、税収入の増加等の事情を勘案して所要額を計上いたしております。  その結果、歳出構成におきましては、一般行政経費は二一・六%で、前年度に対し、〇・二ポイント、投資的経費は三六・一%で、前年度に対し一・〇ポイント低下している反面、給与関係経費は二八・五%で前年度に対し〇・三ポイント、公債費は九・〇%で、前年度に対し〇・七ポイント上昇いたしております。  以上をもちまして、地方財政計画の補足説明を終わらせていただきます。
  227. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 以上で説明の聴取を終わります。     —————————————
  228. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。世耕自治大臣
  229. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。  昭和五十七年度分の地方交付税について、各種の制度改正等に伴って増加する財政需要に対処するため、その算定の基礎となる単位費用を改定するとともに、地方財政の現状にかんがみ、地方交付税の総額について特例を設けるほか、激甚災害に係る小災害債の元利補給制度を廃止し、当該地方債の元利償還に要する経費を基準財政需要額に算入する等の必要があります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。  次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、地方交付税法及び交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部改正に関する事項であります。  まず、昭和五十七年度の普通交付税の算定については、下水道、公園、都市計画施設、清掃施設等住民の生活に直結する公共施設の整備及び維持管理に要する経費、教職員定数の改善、私学助成等教育水準の向上に要する経費、老人保健制度の創設、児童福祉等福祉施策の充実に要する経費並びに過密・過疎対策、消防救急対策、公害対策等に要する経費の財源を措置するため単位費用を改定することとしております。  さらに、昭和五十七年度において、財源対策債による措置を廃止することに伴い、これに対応する投資的経費に係る所要の地方負担額を基準財政需要額に算入するほか、昭和五十六年度において発行を許可された財源対策債等の元利償還金を基準財政需要額に算入する等所要の措置を講ずることとしております。  次に、昭和五十七年度分の地方交付税の総額については、現行の法定額と交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金二千九十八億円との合算額から千百三十五億円を減額することとしております。  さらに、当該減額した額については、これに相当する額を昭和五十九年度から昭和六十一年度までの各年度の地方交付税の総額に加算するとともに、借入金二千九十八億円については昭和六十三年度から昭和七十二年度までの各年度に分割して償還することとし、当該償還額の十分の十に相当する額を昭和六十三年度から昭和七十二年度までの各年度において臨時地方特別交付金として一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れ、当該各年度の地方交付税の総額に加算することとしております。  第二は、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部改正に関する事項であります。  国の行政改革の一環としての補助金の整理合理化に資するため、激甚災害に係る小災害債の元利補給制度を廃止し、当該地方債の元利償還に要する経費を基準財政需要額に算入するための所要の改正を行うものであります。  以上が地方交付税法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  230. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 本案に対する質疑は後日に譲りたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十七分散会      —————・—————