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1982-04-01 第96回国会 参議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月一日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————   出席者の左のとおり。     委員長         上條 勝久君     理 事                 亀長 友義君                 名尾 良孝君                 山田  譲君                 伊藤 郁男君     委 員                 岩上 二郎君                 金井 元彦君                 小林 国司君                 後藤 正夫君                 斎藤 十朗君                 福田 宏一君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 和泉 照雄君                 大川 清幸君                 美濃部亮吉君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    世耕 政隆君    政府委員        警察庁長官官房        長        金澤 昭雄君        警察庁長官官房        会計課長     森田 雄二君        警察庁刑事局長  中平 和水君        警察庁刑事局保        安部長      谷口 守正君        警察庁警備局長  山田 英雄君        自治大臣官房長  石原 信雄君        自治大臣官房審        議官       矢野浩一郎君        自治省行政局長  砂子田 隆君        自治省行政局公        務員部長     大嶋  孝君        自治省行政局選        挙部長      大林 勝臣君        自治省財政局長  土屋 佳照君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁長官    石見 隆三君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        行政管理庁行政        管理局監理官   増島 俊之君        厚生省児童家庭        局企画課長    末次  彬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十七年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十七年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管警察庁)、自治省所管及び公営  企業金融公庫)     —————————————
  2. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  昭和五十七年度総予算中、警察庁所管自治省所管及び公営企業金融公庫を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 名尾良孝

    名尾良孝君 私は、きょうは公職選挙法第十五条、特にその七項のただし書きについて自治省の見解をお伺いしたい、こういうことであります。  と申しますのは、明年統一地方選挙が行われるわけであります。その中で特に道府県会議員選挙が行われるわけでありますが、人口が特にふえておる県、あるいは人口異動がある県——もうこれからはめんどうくさいから県と呼ぶことにしますが、そうしますと、結局定数を、まず自治法の九十条によって枠を決めて、そうして今度は十五条の前段規定に従って各選挙区に議員の数を割り当てていくという作業、新しい条例をつくらなければならない、こういう作業をいまほとんどどこの県でも、恐らく議員の間でやっておるだろうと思うんです。ところが、知事部局執行部の方は、これはもう機械的に、自治法規定とそれから公選法前段規定に従って機械的に配分をしている、そういう条例案をまず出すわけであります。ところが、それに対して議員の方は必ず対案あるいは修正案を出す、そうして今日まで議員定数を実は決めてきた。  埼玉県では、県会議員定数を、昭和五十四年の選挙では百になるべきところを九十四に減数している。なぜこういうことが起こるかというと、結局、いま中央行革行革と叫ばれておりますが、むしろ地方の方で、住民の意思に沿って行政経費をなるべくふやさないようにしよう、だから議員定数もなるべくふやさないようにしよう、そういう考え方に立って減数条例でやってきたわけなんです。そこで必ず問題になるのは、先ほど申し上げた、いわゆる各郡市選挙区、これの定数の割り当て、これが一番問題になる。  ちなみに、東京都につきましては公職選挙法二百六十六条で手当てがしてあります。その後昭和四十四年に、いま私が申し上げた公選法第十五条について七項にただし書きを設けて、「特別の事情があるときは、おおむね人口基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる。」、こういう規定をつくったわけです。そこで、これに対して、参議院の方でこれが提案されたときの提案者説明によると、これは決して東京都だけを目的としたものじゃない。ただ、たとえば都心部等において常住人口は減ったと申しましても、都市的な行政需要はますます増大していく、つまり流入人口が非常に多いわけでございまして、したがって、そういう意味での都市的な行政需要が高くなる。したがって、人口に比例した議員定数でいくと定数が減っていく。都市的な需要が多いから定数を減らさないようにするために、これは東京都だけでなくほかの道府県にもこういうことが起こってくるであろうということで、この「特別の事情」というのを、これだけを一つの例示的なものにしてあと説明してないわけです。  そこでお伺いしたいのは、まず第一点は、昭和四十四年から今日まですでに十三年たっております。その間に三回統一地方選挙が行われておりますが、東京都以外でこの規定、いま私が申し上げた都市的な行政需要増加というものを特別事情として定数を定めた県、あるいは北海道、府、そういうものがあるかどうか、まずその点をお聞きしておきます。
  4. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) 公職選挙法十五条七項は、御指摘のように昭和四十年前後の人口移動が非常に厳しゅうございましたことを背景といたしまして、ある場合には、先ほど提案理由を援用しておっしゃいました、都市周辺部人口が非常に増大する。したがって、都心部夜間人口常住人口と申しますか、常住人口というのは減っておるわけでありますけれども、学校でございますとか、官庁でございますとか、要するに昼間人口通勤者が流れ込む昼間人口というのはだんだんふえておる。したがいまして、常住人口だけで定数考えるということは円滑な都道府県行政ができなくなるという意味からそういった特別な事情——常住人口は少なくても流入人口が多い、つまり昼間人口が多いからやはりいろんな行政需要というのはあるわけでありますので、そういう行政施設の整備、その他需要を満たすためには、やはり定数が減るということになりますと非常に行政が停滞をするであろうということが心配をされましてそういう特例が行われたわけでありまして、これは現在まで私どもも、具体的な県名はちょっと差し控えたいと思いますけれども、そういう特例を適用した県もございます。
  5. 名尾良孝

    名尾良孝君 そこで、さらにお伺いしたいのは、実は、東京都のようにドーナツ的に中央人口が減っていって外側の方が人口がふえていくというようなところはあんまりないんですよ。  たとえば埼玉県のように、県南地帯年間に十万から十五万ずつ人口がふえていく。逆に県の中部から北部にかけては人口は減っていく。ですから、もしそれを人口に比例してやるとすると、だんだんだんだん県北県会議員が減っていって県南県会議員のみがふえていく。最後には恐らく県の南側の地域県会議員が四分の三ぐらいになって、半分から北の方は四分の一になってしまうだろう。ですから都市的需要が云々ということは、これは実は当てはまらない。当てはめたいと考えるのならば、むしろ、過疎地帯県会議員を、ただ人口が減ったというだけで減らしていっていいんだろうかということがいまの県会議員人たちの脳裏にこれはいつでもあることなんです。  だから、都市的な需要だけじゃなくて——都市的な需要というのは、いまあなたが言われるように行政需要がこれからも増大していくと、こういう説明をしているんです。そうしますと今度は、いま過疎対策として叫ばれているのが田園都市構想であり、広域市町村圏構想であり、定住圏構想であるわけである。つまり過疎地帯人口をさらに減らないように、ふやしていこうという政策がいまこれからだんだんと立てられている。御承知のように定住圏構想というのは、埼玉県でもこれからやるわけですが、職住接近、勤めているところと住んでいるところをなるべく近くにし、そうしてそこに居住圏とそれから勤める、そういう一つのかたまりをつくっていこうということでありますが、それなどは私は大きな行政需要だと思うんです。  ところが、これからそういう仕事をやっていかなければならないやさきに、昭和五十五年の国勢調査の結果、人口がこれだけしかありませんからこれは減らしてしまう、都市的な行政需要じゃないから——あのときに提案者説明したように、都市的な行政需要ではないからだめなんですということが一体言えるのかどうか。それから行政需要というのは増加をしていきますと答えているんですから、現在の行政需要のみならずこれから行政需要というものが増大をしていくということもこの特別事情の中に当然入るのではないかと思うんですが、その点いかがですか。
  6. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) 十五条七項の趣旨は、先ほど申し上げたように、人口の急激な異動によりまして定数がただ人口だけで決まっていくということでありますと、県行政が果たしております広域行政でありますとか、あるいは市町村行政補完としての補完行政でありますとか、そういった県行政が持つ任務を円滑に遂行することができないであろうという心配から改正が行われたわけでありまして、恐らく、たまたま当時、先ほど援用されました参議院においてその理由説明として都市的行政需要ということを中心に言われたのであると思いますが、当時は恐らく地方自治法改正の、つまり東京都の定数問題の改正の附則で公職選挙法の十五条七項が改正されたという点から、都市中心として説明をされたのであると思います。  要するに、十五条七項自体改正趣旨は、人口の急激な異動に伴う都道府県行政の円滑な遂行が困難になるという趣旨でございますから、必ずしもいわゆるドーナツ現象を呈しておるような都市事情だけに限りませんで、山奥の方で、だんだん人口が減っていく。ところが県全体としての行政を行います場合に、そういった過疎対策というのも当時から非常に重要視されてまいったわけであります。そういった過疎対策行政というものを円滑に遂行できるようにという趣旨も当然これには含まれておったわけであります。したがいまして、もちろん現在の目の前の行政需要というものには必ずしも限りませんで、最近の県行政というのはかなり長期的な視野で行われておりますから、そういうあらゆる総合的な観点から、その県の中で特別の事情があるかどうか、こういうことを判断をしていただくというのが趣旨でございます。
  7. 名尾良孝

    名尾良孝君 とにかく十五条七項のただし書きというのはむずかしいんですよ。「特別の事情」、「おおむね人口基準」、「地域間の均衡」、何が何だか、全然不確定なものが基準として示されているわけです。  そこでさらにお聞きしたいのは、行政需要増加していく、行政需要が多くなるということは、これはだれが判断をするんですか。
  8. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) 結局、県でございますと県自体で御判断を願うということに相なります。
  9. 名尾良孝

    名尾良孝君 そうすると、結局県議会側としては、県の執行部が行おうとする、たとえば過疎対策あるいはその他の対策、そういうものしか行政需要としては認められない。住民を代表する議会側としてこの地区はこういうふうにしてやらなきゃいかぬじゃないかという、そういう考え方から行政需要があるということを決めた場合に、執行部の方と議会側とで意見が対立する場合があると思いますが、その点はいかがですか。
  10. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) 県自体判断ということになりますと、もちろん執行部それから立法部、両方の判断と、こういうことでございます。県内のいろんな行政需要、どの地域にどういう需要が今後起こってまいるかと、こういう判断執行部議会側と双方で判断をされてまいっておるのであろうと思います。
  11. 名尾良孝

    名尾良孝君 少し細かいことをお聞きしますが、流入人口というのはこれは何ですか。流入人口がふえるという、その流入人口
  12. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) 当時流入人口という言葉を使っておりましたのは、一番最初にちょっと申し上げましたように、都心部に対する人口移動の中で、特に都心部の一番の中心というところは、常住人口というのは少ないけれども、いろんな公共施設があるという関係で昼間人口というのは非常に多い。その昼間人口という趣旨流入人口という言葉で表現しておったと思います。
  13. 名尾良孝

    名尾良孝君 そうすると、われわれも流入人口の中に入るわけです。勤務をしているという意味だけに限るのか。あるいは、買物に来るとかデパートに来るとか、そういうものも流入人口として認めでいいのかどうか。
  14. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) それは昼間人口のことでありますから、勤務ということには限りません。
  15. 名尾良孝

    名尾良孝君 いやいや、流入人口ということの中に入れて考えていいのかどうかということです。
  16. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) これは法律用語として流入人口という言葉を使っておるわけではないのでありまして、まあいわゆる常住人口に対する言葉として流入人口という便宜的な言葉を当時使われたと思います。いわゆる常住人口と申しますと、住民台帳に載っておる、あるいは国勢調査の対象となる人口と、こういう趣旨で使っておるわけでありますが、常住人口あるいは国勢調査人口ということではなくて、非常にわかりやすく言えば昼間人口ということになろうかと思います。
  17. 名尾良孝

    名尾良孝君 そうすると、県会議員の中でこういうことを主張する人がいるわけですよ。つまり、観光地から出ている議員ですが、夜間人口は少ないけれども年間何千万人の人が来て旅館に泊まったり見物したりするんだと、そういう人たちのためにやはり県としては道路あるいは河川、上下水道その他いろいろの環境施設を整備しなきゃならない、だからそれも特別の事情の中に当然入れていいんじゃないか、こういうことを盛んに主張するんです。非常に細かいことなんですが、その点いかがですか。
  18. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) まあそれぞれの県のそれぞれの地域で独自の行政需要というのはあるのであろうと思いますが、どういう行政需要があるにいたしましても、その行政需要というものがその県行政全体の遂行の上からどういうウエートを占めておるか、定数配分に当たってどういうウエートでそれを考慮していくかと、こういう問題でありますから、結局総合的な御判断ということになろうかと思います。
  19. 名尾良孝

    名尾良孝君 いつでも、議員提案条例を定めようとするときには、必ず代表が自治省に聞きに来るわけです。あるいは、自治省から県議会の方に来てもらって説明を願う。そうすると、必ずいつでも言われるのが、どうかひとつ議会で決めてください、特別の事情があるということも議会で決めてください、しかし人口はなるべく基準としてください、それから合理的な説明ができるようにしてくださいと、そう言って帰っちゃうんですね。  そこでお聞きしたいのは、「地域間の均衡を考慮」するということなんですが、この均衡というのは、たとえば減るべきところを減らさない、これが一つ特別事情として認められた、そうすると、今度は逆にふやすべきところがふえないという地域ができる。そうすると、減らすべきところを減らさないというのは、これは行政需要がこれからどんどん増加していくから県全体から見ても必要なんだというのでここを減らさない。片一方、今度はふえるべきところをふやさない、あるいは減らす、そういうところは、おまえさんのところは行政需要がこっちほどないんだということを決めつけてなきゃならぬ。だから、均衡というのは、いま私が申し上げたような、一つの市だけじゃなくてそれによって影響をこうむる片一方の方の市に対してもやはり合理的な事情がなけりゃならぬ、こういうことになると思うんですが、その点どうですか。
  20. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) こういう特例をお使いになるところでは、当然に、たとえば先ほど言われましたように、減るべきところを減らさない——定数はもう決まった後の話でありますから、当然ふえるべきところがどこかの選挙区でふえなくなるというのは、これはまあ当然であります。しかし、「特別の事情」があって、「地域間の均衡を考慮して定める」という問題は、まず最初は当然、先ほど来お話が出ておりますような都市部の問題とかあるいは過疎問題であるとか、その他いろいろ県行政を行う上でどうしてもここを減らすと県の行政が円滑に行えないというところを何とか始末するためにほかの選挙区が多少犠牲になると、こういう順序になるわけでありますが、したがいましてどの選挙区がふえるべきところがふえなくなるかという御判断も、やはりこれ県全体でそれぞれの地域の今後の事情をお考えになりながら御相談を賜るということでございます。
  21. 名尾良孝

    名尾良孝君 最後に申し上げたいのは、法律というものは、立法理由というものを説明をして、そうして法律ができるわけですけれども、できてしまえば法律というものはこれはもうひとり歩きをしていくわけであります。これはもう有権的な解釈ではありませんから立法理由にはとらわれない、法律はひとり歩きしていって、それを最後判断をするのは裁判所だということになるわけなんですけれども、したがって、いまあなたがいみじくも言われた、四十四年にこのただし書きがつけられたときには、東京都の、つまりドーナツ型の現象が非常に東京都で顕著であったので、これが一つの典型的な例示になったのだ。しかし、その後の状況判断によって、必ずしもこれだけではなくて、いま言われたようにいろいろな意味でのもろもろの行政需要がふえてくるであろうところの増加はさせなければならぬし、増加していくであろうところの地域については、やはりそれも特別の事情として当然見なければいけないんだと。そういうふうに常に解釈は当然変わっていくんだというふうに私も判断しているんですが、最後にその点いかがですか。
  22. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) それは御指摘のとおりでありまして、当時、提案をいたしましたときに、参議院において御説明申し上げた都市部ドーナツ現象その他の理由というのは一つの例として申し上げたということでありまして、当然に、「特別の事情」ということでございますので、都市部においてはこういう特別の事情一つの例としてありますよという意味にすぎません。それぞれの県にはそれぞれの地域によりましていろんな事情があるわけでございまして、要は、いかような事情が「特別の事情」になるか、またそれぞれの県によって異なろうと思いますけれども、大都市を抱えておる県、そうでない県、当然に具体的に事情が違ってまいります。その事情はそれぞれの県の独自の事情として十五条七項を判断される場合に考慮さるべきものと思います。
  23. 名尾良孝

    名尾良孝君 終わります。
  24. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 きょうは時間があれば大臣に、きのう志苫委員質問の冒頭に言っておりました地方自治の問題、地方分権の問題、あなたは文人の大臣とか詩人の大臣とか言われておりますから、そういった問題と地方自治の問題で議論をしたいと思ったんですが、これは、きょうは時間がございませんから交付税のときにやらしていただきたいと思うんですが、しかし、あなたの姿勢というか、「新閣僚に聞く」という新聞等に見るあなたのイメージと、最近自治省のやっておる中身というのは非常に食い違いがはなはだしいような感じがするんです。そこら辺の問題について、今後の質疑関係等もございますから、一つだけお伺いしておきたいと思うんです。  きょうの新聞によりますと、何か地方公務員定員モデルをつくって、そして、中身はまだ新聞だけですからよくわかりませんが、七千人多いとか何千人多いとか、こういう発表をしておりますね。また、ラスパイレスというのを出して、したがってこれより高過ぎるのは百五十何団体とか、あなたの自治大臣になったときに就任のあいさつで、地方公務員給与国家公務員より三割近くも高いところがあるそうですかという質問に対して、地方には借金が四十兆もある、そして豊かじゃない、給与や、職員組合が強いとか、いろいろな事情があるから、そういうことはよく調べた上で、飛び抜けて高いところにはどんどん警告を発し、是正するよう指導しますと、こういうようなことを、ここら辺は非常に勇ましく勢いよく言っておるんです。  ラスパイレスの問題を議論しますとこれだけで二時間ぐらい私はかかると思うんですが、三十二年に十五級制の給料表から八等級制給料表になったときの経緯、その後の今度はここに並んでおる局長審議官等のいわゆる指定職給料表経緯、そういうものから論じていかないと地方賃金が高いか低いかというのは出てこない。ところがラスパイレスは、この指定職は抜いてしまってそして高い低いの議論を出しておる。こういうふうに得手勝手な部分がかなりあるわけです。  モデル賃金の問題にしましても、そんなにあるなら自治省から派遣している天下りの皆さん、各県の総務部長からいろいろたくさん出ていますね、そういう人たちを全部引き揚げてそして議論をしなきゃならぬ問題もある。こういったところは全然当たらぬで、一方的に出していく。一方的に地方相談なしに出していく。こういうやり方があなたの言う地方面治とどういうかかわりがあるんだろうか。私はむしろたとえば汚職腐敗地方で起こっていることについて汚職腐敗をなくすモデル案とか、たとえばいま談合が国会で問題になっておりますが、あれは建設省で約六兆五千億ぐらい、あと公社公団から地方自治体が一番大きいこういったところについては積極的に談合をなくすような案を出して、そしていわゆる自治分権の立場に立ってそして弱点を指導する、こういうモデル案をつくるのは結構だと思うんですけれども、逆の方のモデル案は熱心だけれども、こっちの方はさっぱりと、こういう感がしてならぬのですね。最後には賃金抑制に対して制裁措置とか、新聞によりますとこういう制裁まで出してきている。一体、自治省というのは何のためにつくっておるんですか。地方自治体制裁したり画一化したりするためにできているのか、こういう疑問さえ生まれるんですね、最近の一連のあれを見ていると。  こういったことに対して、これは後でまた交付税のときにいろいろ議論を聞きたいと思うんですが、時間がございませんから、きょうはそこら辺の問題についてあなたの本当の本音をちょっと聞かしてくれませんか、たてまえじゃなくて。あなたらしい、自律とか、言っていますね。この自律とそういう関係というのはどう関係があるのか、そこら辺をひとつあなたらしい意見だけ聞いて次に移りたいと思います。
  25. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 御指摘の点でございますが、私は、地方自治のたてまえから言って、できるだけ地方団体が主体になっていろんな行政を進めていただきたい。つまり自律的にやっていただきたい、こういう考えが主になっております。できるだけこちら側としては余りよけいな干渉を、不必要な干渉はしない、こういう方針でまいっております。  ただ、御指摘給与の点に関しましては、これはやはり地方団体といえども給与を支払うからには、これはほとんど大半が国民の税金によって賄われるものでございますから、このいまのような行財政改革の声の厳しい折から、これはやはり十分慎重に考えていかなければならない、これも事実であると思います。それに即してわれわれの方も余りかけ離れて異常に、給与とか退職金、あるいはそれにまつわるボーナスとか、そういった関連したことは勢い地方団体の財政状況にもかなり大きく響いてくるものでございますから、こういった現代の社会情勢とか経済情勢の中から国、地方のそういった財政的な面も見直さなきゃならないといういろんな立場から指導助言を行わなければならない、これは自治省としての当然の義務であろうかと思っておる次第でございます。  そこで、それにはいままではっきりした、つまり明確なる科学的な統計数字から出すいろんな分析表、基準表というものが、実際は余りこれといったものが、指摘されますと確かに薄い点がございまして、これを何か今後の指標、指針として、給与その他定員に関するいろんな基準、こういったものをひとつこちら側で用意するべき義務が当然あるのではないか、こういうことで長い間練り上げまして、やっと発表の段階にこぎつけましたのが先ほど御指摘基準表でございます。
  26. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、こういう議論をし始めると、またこれに誘惑されて議論をしたくなるのですけれども、きょうは時間がございませんからということで前にお断りしたのですが、たとえば給与一つとってみても、今度は大分県で二十八歳の人が課長になった、天下りで。この人たちは県の課長になると二等級になる。課長というのは県では二等級になる。そうすると、二等級の給料表にないんですよ。賃金が追いつかない。二十八歳、若いから。本来なら、県の段階では係長にもならぬところですよね。二十八歳といったら平ですよ。平も一番入り口の方です。それを、同じ大学を卒業して、一方は自治省から天下りということで二十八歳で課長になる。それでどういう制度をつくるかというと、特をつくる。普通は給料が上がっていって、給料表がなくなってからそこに特、時とつくのだけれども、下につくる。こんなのを不特と言うのです。不特というのは何かというと、二等級の最低の号俸にも追いつかぬわけです。だからその下に一、二、三、四、五ぐらい特別に下に特をつくって不特と言うのだ。そこに課長をしなきゃならない。こんな無理なことをいま自治省はさっさっとやっているわけでしょう、自治体に押しつけて。こういうようなことをやっておって、よく平均年齢、平均賃金何ぼだというような議論をあなたたちは厚かましく出すものだと私は思うんだね。給料一つとってもやっぱりそういうことが言える。  定員の問題にしても、天下りの皆さんを全部都道府県、市町村から引き揚げて、そしていかがですかと言うならいいですよ。それをどんどんどんどん出しっ放しであなたがそういう発言をすると、またいろいろ言いたくなるのだが、きょうは言いません。まあひとつこれは交付税のときにじっくりやりましょう。  きょうはそのほかの問題がございますから次に移らせていただきますが、山田さんが久しぶりに顔を出してくれたから、警察の方を先にやりましょうかね。  まず、警察庁予算を見ますと、これには出ていないんですが、ゼロベースで予算を組んだ際に、いわゆる一律一割の補助金の削減という、これを警察の方も適用されておると思うんですが、どういうところの補助金を中心に削られたのか、それをまず聞かしていただきたいんです。
  27. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。  警察庁予算におきます補助金でございますが、一つは都道府県警察におきます犯罪捜査等の経費のための補助金、それからパトカー等の燃料費の補助金、それから警察電話の専用料の補助金であるとか、警察署などの施設費の補助金、そういったものがございます。いずれもこういった第一線の警察活動上に必要なものでございまして、非常に厳しい財政上の中でありますけれども、なかなかこれは削減できないと、こういったものばかりでございます。  しかし、臨時行政調査会の答申の点もございますので、いろいろと内容を検討いたしまして、整備計画を若干調整すると、こういった手直しが、若干の手直しといいますか、対応が可能なもの、特に施設関係につきまして今回やむを得ず、削減をするということにしたわけでございまして、中身としましては、一番大きいのは施設関係で、交通安全施設が約十八億でございます。そのほか一般の施設等がございまして、削減をしました補助金の総額は二十二億ちょっとでございますが、ふえている部分もありますので、補助金全体としましては約二十億削減された、こういう内容でございます。
  28. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 交通安全というのはガードレールとかいろいろつくったり、住民の交通被害を防ぐ施設ですね、そういうところが結果的に犠牲になった。それから駐在所も犠牲になったんじゃないですか、増改築。いかがですか。
  29. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 交通安全施設の方は、いま申しましたように十八億ばかり減っておりますが、駐在所、派出所はこれは若干ふやしております。一般施設全体は減っておりますけれども、減りましたのは警察署の建てかえ、これを若干計画を調整をいたしました。しかし、国民と一番接点の多い派出所、駐在所、これは両方で五十二カ所ばかり前年よりもふやしております。そういう状況でございます。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、これは大臣に聞いておってもらいたいと思うんですけれども、補助金一割削減というのは、まあ各省庁の自主性に任せるということになってやったらしいんですがね。結果的に、これは各省とも共通しておるのは、警察庁もそうですが、やっぱりその分住民の方に犠牲が集中しておると言うと語弊がありますが、そういう削り方が非常に多いんですね。そこら辺が警察の場合でも、二十二億落とした中で十八億というのはもうほとんどです。そのために住民の皆さんが大変私は迷惑すると思うんですよね。こういう削り方というのはいかがなものか。やっぱり補助金の削減については、住民と自治体負担というものに、できるだけそこら辺に焦点を置かずに、もっと本質的なところにメスを加えていくというやり方がいいんじゃないかと思うので、これは大臣の見解をお伺いしておきたいと思うんです。
  31. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 交通安全施設についてでございますが、ちょっと申し上げますと、五十六年から現在の交通安全施設の第三次の五カ年計面が始まっております。これは総額が千九百億でございまして、非常に長期的なものであると同時に、金額も非常に額が大きいということで、この際若干の計画の後倒しといいますか、調整というものは可能だと。余り直接国民生活の方にそう大きな急激な影響は少ないものと、こういうことを考えまして、この辺の分野について調整をした、こういうことでございます。
  32. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 若干私の見解を。  いま官房長が言われたように、現在のいろんな行財政改革に沿って警察の方も何かそれに応じなければならないということでいろいろ鳩首協議しました結果、影響力のできるだけ少ない範囲ということでその需要に応じたわけでございます。
  33. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、もうこれは答弁要りませんが、やっぱりその考え方はちょっと間違っておるのじゃないかと思うんです。  一時交通戦争という言葉がございましたね。交通戦争ということで、非常事態でいろいろ交通対策をやって事故防止に全力を挙げてきた。しかし、やっぱりいま一番事故が多いのは依然として交通ですよ。そういうところの安全を言っているのに、後倒しという論議はぼくはどうしても納得できないですね。そこに予算が多いのはそういう実態が緊急非常的にまだ続いておるということなんで、そこら辺を犠牲にするあり方というのはぼくはやっぱり納得できない。  いまの補助金削減というのはそういうところにねらいがあるんじゃなくて、むだな補助金をなくそうじゃないかむしろこういうところに臨調の焦点もあるわけでしょう。一番緊急に必要な問題というものにむだという論理はあるはずがない。だからここら辺、私は大臣にも見解を求めたのは、一律に一割とかそういう発想じゃなくて、総体的に見て、全体の補助金の十五兆円の中でやっぱりむだな部分にメスを加えていく、こういうあり方はやっぱり閣議の中でも議論をしていってもらわないと、こういう事象が起こってくるわけですよ。そこら辺で大臣の発言を求めたわけですからね。ちょっとピンボケにならぬように焦点を定めて、閣議のときにはひとつきちっとしていただきたいということをつけ加えておきたいと思うんです。  そこで、むだの中で警察関係で一番大きいのが成田の問題のように私は思うんですがね。山田さんお見えになっておりますが、今度の五十四億一千六百万円、成田空港警備費が計上されていますね。これはいままでに成田の警備に、成田空港ができるころから今日まで含めてどのくらい、この警備費関係を含んで金がつぎ込まれておりますか。
  34. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 成田空港警備隊の経費でございますが、いまお話しございましたように、年間の経常経費と申しますのは、千五百人の隊員でございますので、それの人件費、それから待機宿舎の借り上げ料でありますとか、光熱水科費でありますとか、そういった経常経費は、補助金、国費を含めまして年間五十四億一千六百余万円、こういうことになっております。したがいまして、できまして以来毎年人数が変わっておりませんので、大体この程度の経費はかかっておりますが、それに加えていろいろ警備がありますと、それに要して体制を組みますので、それの経費がてれに上積みになっておる、こういう状況でございます。
  35. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 世界の民間航空飛行場で、恒常的にこれだけの警備費を必要としておる空港はどこかございますか。
  36. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 成田空港警備の問題は、私は、まず初めに極左暴力集団ありきということだろうと思います。  いまお尋ねの、世界の空港でどの程度の警備をしておるかというお尋ねでございますが、これは詳細は私ども把握しておりませんが、国境警備隊で警備しておるドイツの国際空港の例もございますし、各国とも最近のテロ、ゲリラの動向については厳重な警戒をしておると聞き及んでおります。  それで、初めに極左ありきと申し上げましたが、昭和四十三年以降でも成田関連のゲリラというのは三百六十二件起きております。つい先日も三月十三日に国鉄の通信ケーブルを九カ所で切断、溶断するという事件も起きておりますし、国際空港の廃止——彼らの用語で廃絶と申しますか、廃止を実現するまで徹底的に闘おうということをスローガンに掲げ、現実にゲリラ活動で実行しておるわけです。  具体的にその点を申し上げますと、たとえば中核派は、二期工事阻止に向けて三里塚空港を粉砕し、空港の諸機能、諸施設のことごとくを破壊し尽くし、空港を廃港に追い込むということを主張しております。もう一つのセクトで申し上げますと、革労協の狭間派といいますのは、いまこそ二期廃港決戦に総決起し、飛行阻止、空港機能停止を実現する決定的打撃を連続的に炸裂させ、空港そのものの破壊、ジェット輸送関連事業、通信体系、政府、公団、警察施設等、二期廃港決戦のターゲットのすべてを破壊し尽くすという主張をしておるわけでございます。  こうした極左の動向に対処するために千五百人の空港警備隊が現地の日常的な警備に当たっておるわけですが、空港の外周が十八キロに及んでおります。十八キロに及ぶ外周のどこからゲリラが侵入し破壊が行われるかもしれない、そうしたことに備えて常時の警戒をするだけで、私ども千五百人の空港警備隊で十分であるかどうかという問題すら抱えておるわけであります。  国際空港の安全と円滑、これを確保することの重要性は疑いないところだと思います。そういうための警備の努力というものは大変重要な課題だと思いまして、極左の行動を鎮圧、検挙する、そのための努力を毎日尽くしておるというのが現状でございます。
  37. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いまの警備の実態については山田さんがおっしゃったとおりだと私は思いますけれどもね。問題は、なぜこうなったのか。羽田空港にこれだけの警備員がおるわけじゃない。日本国内では成田だけですね。そして、この千五百人というのは鳥取県警よりも大きいんじゃないですか。こういったものを駐屯させて、これからずっといかなきゃならない。これは私はやっぱり政治の犠牲だと思うんですよ。大臣、そう思いませんか。  僕はやっぱり土地を持っておる農民の皆さん、いろいろな極左の問題がありますけれども、その人たちが依拠しておるのはやっぱり農民ですよ、土地を取り上げられる。この農民の皆さんというのはほとんど、いわゆる国策のために満州に行って、国のためということで満州に行って、そして敗戦で無一文で帰ってきて、今度はこの土地をやるからここで開墾しなと、いわゆる戦後の食糧不足を補うために国策だということで入った。それを今度はまた国策であるということで追い出される、こういうやり方に対する、もうだまされないぞという、そこがスタートになっておる、根源をたどってみると。そこを強引に無理やりに押さえつけて、警察権力でもって押さえつけてそして飛行場を開場していく。このことをもう一遍洗い直して正していかない限り、私はこの問題は、こんな警備をしなきゃならぬ状態というのは依然として続くと思うんです。いかがですか。これは大臣にお聞きします。
  38. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 左翼の集団が成田空港に関して集結したり行動を起こすのは、御指摘のようないろんな理由からである、国家権力に基づくものである、そういう御指摘と御質問でございましたが、やはりこれは成田空港に関しては、いままでいろいろいきさつのあるところでございますが、ここで即断できるようなことではないように思っております。  外国と日本との一番具体的な接触点としての重要性、それが羽田ではもう賄い切れなくて、どうしても国内の情勢、国際情勢に応じて拡大しなければならないという、この面でもある意味での絶対的に近い必要性から成田空港も生まれてきたわけだろうと私は推察しているわけでございまして、その間におきまして、いろいろな話し合いの結果、その地を去らねばならないという農民の方々の事情もございましたでしょうし、これもあらゆる点から考えてまあ一つの歴史の過程の中でとらえていかなければならない面もあるかと思いますが、大きな立場で考えていきますと、いろんな解答もまた考え方も出てくるわけでございます。そういうことをいろいろとらえてまいりますと、ここで私がその警備に対する原因としての一番根源的なものを追求していくとなりますと、かなり時間といろんな過程を踏まえてただしていかなければならないので、この点で御理解をいただきたいと思います。
  39. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 何も答えていない。答えてなくてこの点でと言ったって話にならぬ。  私は、大臣、これからこの問題を深追いして議論をする時間もございませんが、これはまた後に譲りますが、国家公安委員長として警備の最高責任者としてあなたいま就任なさっておる。まさにこれは、警備庁には申しわけないけれども、言うなら政治の生んだ犠牲的なむだですよ、これは。本来こういう空港にこれだけの警備をしていかなきゃならぬというような政治のあり方に問題がある。これはやっぱり早く開放して、そして羽田のようにそれ相応の警備というか普通の空港に戻していかなきゃならぬ。その努力を私はやっぱり閣僚の一員としてあなたもすべきだと思うんです。これからずっとこんな状態を続けていかなきゃならぬということ自体が異常なんですよ。  ですから、やっぱりそういう観点に立って、ネックはそこにあることも——あなたいま絶対的にここしかなかったという言い方をしますけれども、そんなことはありませんよ。当時の記録を読んでみなさい。幾つかあったんですよ。しかし、その中にはいろんな政治的なからくりもあった。利権も絡んだでしょう。そうしてまた国権で押さえつけようとしたわけですね。押さえつけ方にも問題があったんですよ。もっと農民の皆さんと大臣が直接入って、そしてそこで議論をし合うという、また後の対応を考えるとか、そういう血の通った対応をしていけばもっと違った部分が出てきた。こういった点を考えてみますと、やっぱり所管大臣としてこれは閣議の中で問題を出して早急に原点に戻す、こういった方向に、もっと言いますとこういう警備を置かないでいいような状態にどうしたらできるのかということにあなた自身が努力をしていかなければならぬのじゃないか。そういうことを私は申し上げておるわけですから、この点はひとつ肝に銘じてやっていただきたい。そうしないと、いつまでもこういう状態を繰り返すようなことでは国民にとっても不幸です。同時に警察にとっても、これは本来ならしなくていい——しなくていいと言ったら首をあれしていますがね、成田空港がなかったらこんなことしなくていいわけです。そういうようなことを考えて、これはもう答弁要りませんが、ひとつ注文をしておきます。  そこで、次に移ります。  退職手当債について二、三お伺いしておきたいと思うんですが、退職手当債の許可方針というのは毎年出されていますね。五十六年度の許可条件、取り扱い状況についてまずお聞きしておきたいと思います。
  40. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) おっしゃいますように、毎年許可条件を見直して実際に合うように措置しております。御承知のように非常に膨大なものでございますので、どうなっておるかという、その御質問の重点的な意味がよくわからないのでございますが……。
  41. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは、五十一年からいまの許可条件というのが決められておりますね。その前は再建団体のみに適用していましたね、二年間。退職債については。その前は、三十何年ごろからですか、いわゆる勧奨退職にも適用されていましたね。こういういろいろな変遷があるんですが、問題は、そのときどきの実態なりに応じてやっておるんだと思うんですが、こういう点についてどういうふうにお考えになっておるのかお聞きしたいと思うのは、いまの退職債の許可条件の一番最たるものは、いわゆる予算定数減じゃなくて条例定数減を伴わないと許可しない、こういう方針になっておるわけですね。ちょっといま数字を覚えておりませんが、恐らく私は、五十一年からの許可を受けた団体数を見ると、ずっと減少してきたと思うんです。昨年の場合には大体十団体ぐらいまで落ち込んできたんじゃないかと思う。都道府県が十、市町村が十一ぐらいですね。それが今年はぐっとまた上がってきておるというふうに思うんですが、そうですか。
  42. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) おっしゃるように、退職手当債の許可の条件を最近ではしぼっておりまして、その結果、許可状況を五十一年度から見てまいりますと、昭和五十一年度におきましては団体数で七十三、金額で百八十七億程度でございます。五十二年度が二百四十四億、五十三年度が六百八十三億、それから五十五年度が四百十三億でございます。ただこの中には、都道府県で五十四年、五十五年には東京都がきわめて大きな額で含まれておりまして、市町村分だけから見ますと五十一年度が団体数で約七十ぐらいございました。これは五十四年度では十一団体。金額にいたしましても、五十一年度は百二十四億ぐらいございましたが五十四年度は十二億、五十五年度は十団体十三億五千、市町村ということでございます。  昭和五十六年度の許可額は総額で四十八億でございます。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 件数を聞いておるんですよ。件数が、都道府県が何団体で市町村が何団体で、そして額は何ぼかとこう聞いておるわけなんです。
  44. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 全都市町村でございまして、十九団体でございます。このうち町村は四団体でございます。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 だから私がさっき言ったように、五十一年から見ると、ずっと申請団体が下がってきた。十まで。五十六年度になってぐっと上がってきた。その現象は一体どこに求めておるのか。  私は、これは何と言っても一番大きいのは、昨年の国会で通りました退職手当の減額、定年制、こういったものが退職者を促進をする一つの要素になっておる、そう思うのですよ。ですから、そういう面から見ますと、恐らく今年度が、退職手当の減額は国の場合はことしの一月ですけれども、自治体の場合には五十七年度が最重点になってきましたね、この問題は。条例化の問題で。定年制の問題も恐らく五十七年度が議会条例化の問題で一つの焦点になってくるんじゃないかと思う。そういうものを見越してまいりますと、五十六年度の動きというのは一つのはしりみたいな感じがして、五十七年度以降にこれがずっと出てくる公算が強いんじゃないか。  これはやっぱり自治体にとってみますと、大体コンスタントに退職者というのはいろいろ勧奨基準その他決めておりますからね、来年は大体何人ぐらいとわかるわけですから、ですからそれに基づいて退職手当を予算化していくわけですね。ところがそれを飛び越えていくという現象が出てきておるわけですね。その結果、退職債の申請をしなければ赤字になるということで申請がぐっとふえてくる。ところがそこには定数減という落とし穴じゃないけれども、枠がついておる。そこで足踏みをしておるというような、新陳代謝をしたいけれどもそこでできないと。  きょうの自治省の発表のモデル定員か、これはまたいろいろ議論ありますけれども、それを見ても、自治体の場合に定数の現状というのはかなりそれぞれ努力をして、ぎりぎりのところまで来ておる。いまふえておるのは、あなたたちも主張しているように、国の法律改正その他に基づく部分がかなり大きい。たとえば教員であるとか福祉関係であるとか。こういった実態にありますから、定員減まではなかなかできがたいという自治体は、まあ自治体にいろいろでこぼこはございますけれども、欠員のあるところもあればいろいろあるでしょうが、しかし、ここら辺の緩和というのはこれは当然国がしかけた、言うなら退職手当減額にしても定年制にしても、国がしかけた経緯というものを考えれば、五十一年当時の情勢とは若手違ってきているんじゃないか、こういう自治体の当局の側の意見が非常に強いわけですね。そこら辺は私はこれは緩和していく必要がある、そしてやっぱり実態にこたえていく必要がある、そういうふうに思っておるのですが、そこら辺はいかがですか。
  46. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 退職手当債については、御承知のように、地方財政再建促進特別措置法の二十四条一項の規定におきまして、「職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により職員を退職させる場合」に「地方債を起すことができる。」、こういうふうに制度としてされておるわけでございます。これは、定数の改廃等が財政構造の健全化に資しますと同時に、それによって節減した経費によって起債の償還財源が担保されると、こういった趣旨からだと思うのでございまして、現実にはおっしゃいますように職員の定数削減を行った地方団体においてその範囲で起債ができるように許可方針としても扱っておるわけでございます。  お尋ねのございましたように、定年制の実施あるいは退職手当の支給率の引き下げが行われるということになりますと、それに起因して一時的に退職手当が増加するということがございましょうし、また、今後いろいろな情勢の変化というのもあるかもしれませんし、そこらは私どもわかるわけでございますが、いま申しましたような法の趣旨から見まして、定数削減等が行われない場合は、財政構造の改善といったようなこと、あるいは償還財源の確保ということが期待されない、こういうことになるわけでございますので、なかなか起債によって退職手当の財源を確保するということは財政運営上いかがなものかというふうにやっぱり考えておるわけでございます。  私どもとしては、定年制の実施そのものは六十年三月三十一日とされておりますし、退職手当支給率の引き下げが国家公務員に準じて行うということになりますと、五十九年一月一日までに段階的に引き下げを行うということになりますので、地方団体においてはそれまでの間において適切な退職管理を行っていろいろと準備を進めるということになりましょうし、それでもなお一時的に退職手当支給額が増加することが予想されるような団体にありましては、あらかじめ計画的に所要の財源の留保をしておくということが基本的に私は制度の趣旨から見ても適切じゃなかろうか。おっしゃる意味はわかるのでございますが、基本的な考えはそういうことではなかろうかという感じを持っております。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 基本的な点は、あなたがおっしゃることを否定するわけじゃない。しかし、これは永劫不変の許可条件でもない。いま言うように、現実にその実態において、年度年度の実態に見合って毎年毎年許可基準を定めて出しておる。基本は財政再建法二十四条を基本に置いていますよ。しかし、そういう実態というものを無視するわけにいかないから、たとえば四十八年、四十九年は再建団体のみに適用とか、その前は退職勧奨の中で定数減を伴う予算減の場合でも認めてきた。ところが、今度は、五十一年からは定数減というだけで縛ってきた。いろいろの実態あると思いますよ。あると思いますが、今回のこういう事態の場合には、私は二、三年の問題だと思いますがね、やっぱり実態に見合ってそこら辺はひとつ五十七年度から緩和すべきでないか。もっと工夫すべきじゃないか。こういうふうに思うので、そこら辺の見解を聞いておるわけです。
  48. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 先ほども申し上げましたように、退職手当債の償還を担保するため定数減少の措置を講ずる必要があると、こういうのが法の趣旨だと思います。  しかし、いまおっしゃいましたように、制度が変わったことに起因して退職者が一時的に増加をして、支給すべき退職手当が一遍にふえてくるというようなことになりまして、財政運営に著しく支障を生ずるような事態が起こりました場合は、先ほど申し上げましたように、法の趣旨からすれば問題があるとは思いますけれども、当面の取り扱いとして何らかの措置がとり得るかどうか、私どもとしても検討してみたいと存じます。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつ検討していただきたいと思います。  そこで、財政局長にちょっとお聞きしておきたいと思いますが、毎年予算編成の中で自治省がずっと焦点として取り上げてきた中の一つに、超過負担という問題がございますね。ところがこの一、二年何かその声が全然——これは私がこう感じておるわけですけれども、聞こえなくなってきた、国の財政再建だけが大声でまかり通って。しかし私は、行政改革の重要な一つの焦点は、やっぱりこの超過負担の問題だと思う。いわゆる国と地方の事務の再配分、資金の再配分という問題とあわせて、ここら辺がきちっと、いまのような形になっておるから問題が起こるわけで、ここら辺はやっぱり私はいまこそ自治省としては声を大にして、行政改革の一環として超過負担をなくさしていく、こういった姿勢があっていいと思うんですが、この問題について基本的に今日にどう対処しておるのか。まず、それを聞いておきたいと思います。
  50. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 国庫補助負担金等に係りますいわゆる超過負担は、国と地方間の財政秩序を乱すものでございますので、是正さるべき問題だと思い、また、そういった意識で私どもは今日まで常に対処してまいっておるわけでございます。昭和四十三年度以降かなりな額のものが是正されておると思っております。  ただ、率直に申し上げまして、いろいろとどこが超過負担かということを論争いたしましても、なかなか関係各省庁間で意見が一致しないということもございまして、最近ではずっと大蔵省と自治省関係省庁による実態調査を行いまして、それに基づいて超過負担の解消措置を講ずるということにしておりました。  いろいろ行革等の声がございまして、何か声が小さくなったんじゃないかということでございますが、私どもとしては基本的な姿勢として決して変えておるわけではございません。五十七年度の予算におきましても、事業費ベースで百二十三億円の改善措置を講じておるわけでございまして、今後とも社会経済情勢の変化なり、施設水準の推移等に配意しながら超過負担の生じないように対処してまいりたいと考えております。
  51. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、きょうは保育料の問題にしぼってちょっと質問をしたいと思うんですが、厚生省は、五十七年度の保育所の徴収基準ですね、これはA、Bはゼロですからいいんですが、C1、Dの6、7、8、一番ここら辺が、サラリーマンの中堅どころに一番きついところだと思うんですが、たとえばDの6の場合は三百四十万から三百八十万の年収の層ですわね。そういう意味でそこら辺の数字があるなら出してみてくれませんか。
  52. 末次彬

    説明員(末次彬君) 五十七年度の保育科の徴収基準につきましては、現在ブロック会議説明をやっている段階でございます。  いま御指摘の、A、B階層につきましてはこれはゼロでございますが、C1につきましては、五十七年度六千八百五十円ということになっております。  それから、お話のございましたDの6でございますが、これは大体三百七十万から四百万ちょっとの階層かと思いますが、この階層で二万九千五百五十円という数字になっております。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 その階層に横浜市の例を当てはめてみますと、今度は五十七年度です、C一で国の保育料の基準が六千八百五十円、間違いないでしょう。
  54. 末次彬

    説明員(末次彬君) はい。
  55. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これが横浜市が五十七年度で二千九百円ですね。それで二人以上の場合には一人千五百円。三歳未満ですよ。それからDの6の、いま一番多い年収三百四十万から四百万の層、これが、国の場合には二万九千五百五十円、横浜市の場合が一万六千三百円。二人の場合が一万一千四百円、三歳未満が。7の場合、国が三万六千九百五十円、これが二万二百円。二人の場合が一万四千百円。8の場合が、国の場合が四万一千七百円。横浜市の保育料が五十七年度が二万二千四百円。二人の場合が一万五千七百円。こういう実態にあるわけですね。  これが全体で見ますと、市の負担が、保育料の中の配分を見ると、保育料を一〇〇とした場合に市の負担が五九%、国の措置費の負担が一八%、保護者が二三%になっております、保育所の運営費の内訳を見ると。これは、本来保育科は国は十分の八を国庫で負担する、措置費は。十分の一が県、十分の一が市町村、こういうことが措置費の負担区分として決められているところから見ますと、実態は大変相違しておる。いかがですか。
  56. 末次彬

    説明員(末次彬君) 保育料につきましては、これは御承知のとおり、保育所の運営費の一般生活費でございます。これにつきましては、全額保護者負担というのが原則になっておりまして、ただ、保護者の負担能力もございますので、先ほど申し上げましたように、A、B階層についてはゼロ、C1につきましては、保育所で実際にその児童が使います保育材料あるいは給食代の実費これにとどめるということで、以下、順次所得に応じて段階的に負担をお願いするというふうに原則を定めております。したがいまして、私どもといたしましては、こういう保護者負担の面も十分考慮いたしまして保育料の基準は決めておるつもりでございます。  ただ、御指摘のように、国の基準とは別に、自治体で独自の保育料の軽減措置を講じておられるところもあるということは十分承知いたしておりますが、これにつきましては当該地方公共団体の方の自主的な御判断に基づく措置というふうに考えております。
  57. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治省はこういう実態、どういうふうに考えておりますか。
  58. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 保育所の使用料などのように、国において、たとえば保護者負担の面等もいろいろ考慮して徴収基準が定められておりますものにつきましては、やはりその基準に従って徴収すべきものであるというふうに考えております。
  59. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ところが、実態はこれだけ超過負担になっているんですね。これは、行管庁が昨年の九月に保育所の調査をやっていますね。公立が七百二十六、私立が八百二十五ですか、これをモデルにつかんで調査をやっておりますが、それを見ると、五十二年を一〇〇として、五十五年では収容定員が一〇九・一になっておるわけですね。ところが、定員は一〇九・一になっておるんですが、措置児童数は一〇六・一にしぼんできておる。そのために、保育所の入所申請児童数が、公立て五七・六%、私立て二九・六%、両方で四三・二%が定員を下回っておる。収容定員を下回っておる保育所がそういう実態にございます。それから充足状況は、公立の場合が八三・七%、私立が三三・三%、公立と私立合わせて五八・一%が定員を下回っておって、上回っておるのが四一・九%と、こういう実態が報告されていますね。  そうして、なぜ入所を辞退しておるのかと、こういうことで辞退理由を調べておりますが、それを見ると、保育料が高いためというのが圧倒的に多くて二〇・九%、したがって家で見ることにしたというのが一三・九%、もうこの際幼稚園に入れるというのが一〇・五%、こういうのが行管庁から発表になっておりますね。  それにもかかわらず、臨調や厚生省の保育料の適正化というのを見ますと、さらにこれは値上げの方向になっておりますが、しかしいま言ったような実態から見ると、私は保育料というのは、先ほども申し上げたように、実際問題として、保育科は国の金というんじゃなくて、自治体のこういう金、横浜市の場合には五九%を自治体資金を出してぐっと下げている。それでなおかつこういう要求が出ておる。こういう実態をどう厚生省はとらえているのか私は不思議でならぬのですが、いかがですか、この点は。
  60. 末次彬

    説明員(末次彬君) まず、定員割れの問題でございます。これは、基本的には児童数の減少というのが最大の要素かというふうに考えております。昭和四十九年二百九万人の出生数が、五十五年で百五十七万程度になっております。四十九年のおおむね七割程度というふうに出生数が非常に減少いたしております。そのあおりを受けまして地域的に相当空きのある保育所が出ておるということは御指摘のとおりでございます。  その原因の一つとして保育料の問題があるのではないかという御指摘でございますが、私ども先ほど申し上げましたように、保育科そのものにつきましては、保育所でいたしますサービス、つまり保育所の運営費、これをもとに計算をいたしております。したがいまして、それが安いか高いかということにつきましては保護者それぞれの価値判断と申しますか、そういうものも加わってくるかと思いますが、私どもといたしましては、保育所でやっておりますサービスの内容から見て、また、負担能力を十分勘案しているという面から見まして、現在の保育料そのものが原因であるというふうにはなかなか考えにくいわけでございます。  また、措置を要するかどうかという点でございますが、そういう面からいきますと、私どもは朝から夕方まで母親がめんどうを見られないという児童を対象にして保育所というものを運営しております。したがいまして選択的に幼稚園に行くかどうかというような問題につきましては、私どもはその点若干違和感を感ずるわけでございます。
  61. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 しかし現実に、渋谷ですか、小平ですか、ここでいま保育料の所得格差は違法だという訴訟が起こっているんじゃないですか。あなたがおっしゃるように適正だということにはならぬのじゃないですか、いかがですか。
  62. 末次彬

    説明員(末次彬君) 詳細については私ども十分把握いたしておりませんが、訴訟が提起されているということは聞いております。ただ、提起された段階でございまして、これから審理があってその過程でいろいろ双方の主張が出てくるものというふうに考えております。その結果を見て私どもとしては対応したいというふうに考えております。
  63. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 しかし、こういう高い保育料というのは、いわゆるあなたがおっしゃったように運営費とか必要経費、その中にたとえば教育環境の問題であるとか、それから人件費の問題、こういう保育所の所長以下先生のやつを計算してそれを料金にリンクさしておる。これは何というんですか、応能応益負担というんですか、応益応能負担ですか、こういうことでやられておるところに原因があるんじゃないですか。幼稚園の場合とそこら辺が若干違うんじゃないですか。
  64. 末次彬

    説明員(末次彬君) 幼稚園につきましては私の方からお答えしにくいわけですが、保育所につきましては、御承知のとおり児童福祉法におきまして、かかった経費、これの全額を保護者が負担するということが原則になっておりまして、事実保育所につきましては生活費と申しますか、その部分は比較的少のうございまして、主として保母等の人件費がその経費の大半でございます。これは、そのこと自身、サービスからいきまして、保育斜から人件費を除くということにつきましては、そのサービス内容から見ましてむしろいささか実態に即さないんじゃないかというふうに私どもは考えております。
  65. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは自治省にも聞いておきたいと思うんですが、地方財政法の二十七条四、同施行令十六条三、たしか人件費部分の住民負担転嫁を禁止するという条項だったと思うんですが、これはそういうふうに理解していいですか。
  66. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 御指摘のような規定、ございます。市町村の職員費等を転嫁してはいけないという規定はございます。ただ、他の法律等で根拠がそれぞれ決められておりますもの、先ほどのような、これは間接的かもしれませんけれども、保護者負担の原則があるというようなことで、他の制度で決められておるもの、これについてはやはりその制度によらなければならない、その適用外だとこのように考えます。
  67. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それは児童福祉法の方が先にできたからね、そういう論理をあるかもしれませんし、他の法律との関連はそう言っているかもしれませんが、精神としてはやっぱり人件費部分を住民に負担をさせてはならないということが私はこの条文の流れだと思うんです。  今度の小平、渋谷の訴訟を見ますと、やっぱり所得格差をつけることは違法だという前提に立ったのは、地方自治法二百四十四条の「公の施設」、いわゆる「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」の一環である、その使用属である、そういう観点と、いま申し上げた地財法の人件費部分の住民負担への転嫁の禁止、これを積極的に援用して訴訟に踏み切っておるわけですね。  私は、そこまで保護者を追い詰めていったというのは、やっぱり保育料というのが非常に実態から見ても高くなってきておる。しかも減税の方は——いまは減税の方で国民の世論が非常に強くなっていますが、一兆円減税の問題について非常に国民の関心も高まっておりますけれども、そういうふうにここら辺は抑えられている。賃金は上がらない、保育料は賃金が上がろうが上がるまいがそういうことは関係なしに、いわゆる所得割によって段階をつくっていっているわけですから、しかもその運営費には人件費を上げている。そういうことになりますと、保護者から見ると、一方的にその負担に応じかねるんです。こういう状況がせっぱ詰まって私は訴訟に立ったというふうに思うんですね。  だからそういったありようというものがいま厚生省の言うような立場で見過ごしていいのかどうか、その点がいま問われておるんじゃないかと思うんですが、むしろ私は、たとえばこの保育料の決め方を、住民の、保護者の側と協議する場で決めるとかいう制度ならいいと思いますよ。しかし、保護者にはそういう発言権は全然ない。一方的に決めていく。しかもその決め方が、いま言うように所得に応じて決めていく。この所得は所得税を基礎に置いているわけです。こういうかっこうでやっていくと、これはたまらなくなるんじゃないか、こういう追い詰められた心境でこういう事件が起こってきているんじゃないかというふうに考えるんですけれども、この点については厚生省どういうふうに思いますか。
  68. 末次彬

    説明員(末次彬君) 保育料につきましては、先ほど来申し上げておりますように、保育所の運営費でございます。その運営費の内容の改善、五十七年度で申しますと約六・二%、この六・二%分だけを先ほど申し上げましたような保護者の段階に応じた負担、これにおおむね六・二%相当を上積みするということで負担をお願いしておるわけでございまして、この六・二%といいますものの内容につきましては、それだけのサービスの改善をするわけでございますから、それにつきまして所得に応じて応分の負担をお願いするということは、それほど過重な負担ではないのではないかというふうに私どもの方は考えております。
  69. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 過重の負担でないと言うけれども、いまあなたがおっしゃったようにD6の場合は二万九千五百五十円。幼稚園は何ぼと思いますか。幼稚園はいま三千六百円ですよ、均一で。そうすれば、三歳以上になればもう幼稚園の方に行った方がいいじゃないかという議論が当然起こってくるでしょう。なぜこれが均一にできないんですか。
  70. 末次彬

    説明員(末次彬君) 保育所と幼稚園そのものを比較いたしますと、保育所の方は保育に欠けている児童というものを対象にいたしておりますし、幼稚園の方は三歳から六歳の一般児童ということで、その児童の持っている問題といいますか、何を必要としているかという点がまず違うわけでございまして、さらに、開設時間につきましては、保育所の方は原則として一日八時間でございます。したがいまして、年間三千時間ないし三千三百時間というものを開設いたしておりますし、幼稚園の方は原則として四時間で、夏休み等もございますし、年間通しますと九百時間前後ということになるわけでございまして、さらに保育内容につきましても、保育所につきましては必要な給食をするというようなたてまえに立っておりますし、幼稚園の方はそういうことはなさらないということでございます。  したがいまして、その保護者負担につきまして、これを一律に幾らと幾らを比較するということは非常にむずかしいわけでございますが、五十六年度の例で申しますと、平均年収四百万円以上の世帯の場合、保育所の場合で全国平均で約二万円前後です。二万九十二円という形になっております。それで幼稚園につきましては、公立の場合は、ただいま御指摘のありましたように三千六百十六円ということでございまして、私立の場合は一万五千百六十五円というふうになっております。ただし、就園奨励費がございますので、私立の幼稚園の場合に一万一千四百十五円という額になるというふうに承知いたしております。  ただ、この額は、先ほど来申し上げましたように、保育所、幼稚園のそれぞれ持っております機能あるいはそのサービスと申しますか、保育内容が異なりますので、この金額をストレートに比較するということはむずかしいのではないかというふうに考えております。
  71. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は額を同一にせいとか言っておるわけじゃない。ただ問題は、訴訟まで起こってきておるという、保護者の切迫した情勢というものもやっぱり全国的に起こってきておるわけです、現実に。だから、そういったものを考えたときに、やはり所得による格差という方式がいかがなものかと。もっとやはり、きのう東京都の児童福祉審議会が保育行政のあり方について答申をしております。また、武蔵野市の保育行政の研究会報告とかが出されておりますけれども、そこらでも指摘しておるのは、やっぱりこの際ひとつ均一料金にすべきじゃないか、これが非常に強い。均一定額方式にすべきじゃないか。さらに、人件費は含むべきじゃない。武蔵野市の例を見ると、定額保育料は、勤労者世帯の標準的家計支出の五%以内にとどめるべきじゃないか。そして、具体的には子供の処遇上消費される事業費部分、管理運営費の一部、こういうところを基礎にして経費を算出すべきじゃないか。人件費は含むべきじゃない。そのほか生活保護世帯、第二子など特定世帯の減免、それから年齢別保育料制の不採用、消費者物価一〇%以上上昇したときの改定。こういったいろいろな条件をつけて、各地でそういう動きが出ておりますけれども、そういう中にかかわらずなおかつ応益応能主義に基づいて、そして人件費を含めた経費を入れて、それを保育料にリンクさせるという現行制度のあり方について、私は見直す時期に来ておるのじゃないかと、こう言っておるわけです。そから辺いかがですか。
  72. 末次彬

    説明員(末次彬君) 定額保育料の点でございますが、定額保育料というのも一つのお考えかもしれませんのですが、逆に申しますと、非常に逆進的になるということもございます。私どもの方としては、現在の所得のランクに応じた負担というものの方が、むしろ保護者の負担能力から見て実態に合っているのじゃないかというふうに考えております。  さらに、人件費を含めるべきか含めるべきでないかという点でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、保育所の原則といたしまして、かけました保育内容といいますか、保育に要する経費そのものにつきましては保護者負担を原則にいたしております。これはいろんな議論があるかと思いますが、これに投入しております予算そのものから見まして、保護者につきましても相当の受益があるということは事実でございますので、それを一般財源でどこまで負担をすべきかどうかという点につきましては、現行の、保護者負担分を除きました部分につきまして十分の八の国庫負担をするということはそれ相応の国としての措置をしているというふうに考えておりまして、この点につきましてその負担を行政で見るという点は非常にむずかしいのではないかというふうに考えております。
  73. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたの方は十分の八を負担すると言うけれども、横浜市の例じゃございませんが、実際問題五割以上市が負担しておる。国は一八%、保護者が二三%、こういう負担割合になっておるんですね。ですから、それすらいま言ったように裁判ざたになるような問題になってきておるんです。もし国がこの基準どおりぼんとやったら、これはえらいことになる。また、自治体はお金が余ってやっておるわけじゃない。それしかできないわけです、住民要求の中で。こんな高額の問題ではできない、保育料が。こういうせっぱ詰まった中で恐らく私は条例化し、決められておると思うんですよね。そのための超過負担というのがさっき財政局長の言ういびつな形でやられてきておる。そういう実態にどうして目をつぶるのかということですよ。そういう実態に目をつぶって、どうして国が責任を果たしておるということになるんですか。私はそういうような実態というものを直視をして、そしてこの際保育料の基準のあり方についても含めて見直す時期にきておるのじゃないかと、こう言っておるわけですから、謙虚にひとつ受けとめてこの問題に対処してくださいよ。いかがですか。
  74. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  75. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記を起こして。
  76. 末次彬

    説明員(末次彬君) 保育料につきまして、地方公共団体で相当軽減しておる、その分が超過負担であるというようなお話でございますが、私どもの方といたしましては、ここで考えております保育料と申しますのは、国と地方との間の国庫負担の一種の決裁基準でございまして、この基準に基づいて市町村が保護者から保育料を徴収される、それを前提といたしまして、残りの部分につきまして国と地方公共団体がそれぞれの定められた割合に応じまして負担をするという基準でございます。したがいまして、その定められましたと申しますか、私どもの方で考えております基準、これをどういうふうに当該地方公共団体で消化されますかということの点につきましては、それぞれの地方公共団体が独自の立場で自主的な判断に基づいてそれぞれ数字をとらえておるわけでございまして、私どもといたしましては現在の保育料そのもの、保育料の基準そのもの、それにつきましてそう無理なものではないというふうに考えております。  ただ、当該地方公共団体におきましても、長い歴史的な経過もございますので、それぞれ当該地方公共団体の御判断に基づいてしかるべき措置がとられるというふうに私どもとしては考えております。
  77. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ここに日本の福祉をリードした美濃部先生もいらっしゃいますが、自治体が保育料について超過負担をせざるを得ない事情というものには、僕はやっぱりかなり切実な問題があると思うんですね。そういう実態の中で裁判ざたにもなっておるわけですから、こういったことをまずやっぱり念頭に置いてほしいと思う。  そして同時に、保育料の決定については保護者の発言権が全然認められていない、国の場合。確かに行政不服審査請求の道はあるけれども、これは児童福祉法の五十六条で却下と、こういう仕組みになっておる。だから、そういうふうに一方的にやられていっておるのがいまの保育料の国の基準の決定の仕組みだと思うんです。  しかし、それにしても私はやっぱり限度が出てきておると思う。行管庁も指摘しておるように、二〇%を超える層が、料金が高いので保育所にもう預けないという結果が出ておるように、そういうことを全然無視をしてわが道を行くという姿勢ではいけないんじゃないか。僕はやっぱりここら辺は自治省としても厚生省に、見直しを含めて検討宣言っていくべきじゃないか、これだけの負担状況を見ると。そういう感じがしてならぬのですよ。これはもう厚生省のやることで私どもは存じませんというかっこうでは済まされない、そういうふうな感じがするんです。  あなたとやりとりしておっても何からの地蔵さんと同じで紋切り型答弁しか戻ってこないけれどもね。全くそういう意味議論しておったのではこれはらちが明かないが、ことしの官庁速報その他を見ると次々に保育料の値上げが出ていますね。こういうような実態の中でますますこれはひどくなると思うんです。  どうですか、自治省はこれ、傍観しておりますか。
  78. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 児童福祉法によりまして保護者負担を求めることができるようになっておるわけでございますが、その保護者負担がどの程度が適切かということになりますと、私どもも直接所管しておりませんので、実態を詳細に承知しておるわけではございませんので、明確にはお答えできないわけでございます。この点については所得状況等も勘案して厚生大臣が責任をもって定められておるわけでございますので、それなりに私は適正な運営がされておると思っておりますが、いろいろと事情の変化とかいまお示しのあったようなことなどもあるのかもしれません。私どもも勉強はいたしますけれども、そういったものを踏まえて厚生省としてもいろいろと適時適切に制度は見直しておられるものだと思っております。  その際は、実態に合ったような形で運営されるように私どもとしてもお願いをいたしたいと存じます。
  79. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたは優等生みたいな答弁をするけれどもね。毎年毎年超過負担で、自治省は各省庁に申し入れてこういうふうないびつな関係はなくしていく努力をしておるわけでしょう、さっきの答弁では。そうすれば当然保育料というものを洗い直しておるはずですよ、毎年。実態を見ておるはずですよね。そしてこれがこんな状態にあることも知っておるはずですよ。  だからそういう面から見て、私はやっぱりそれは厚生省の所管でございますがということだけでは済まされぬのじゃないですか。やっぱりこういう問題こそ大臣が閣議の席で物を申さなきゃいかぬ問題でしょう。そのために閣議というのはあるんじゃないですか。あそこはもう自分の所管以外は物を言えないんですか。ながながしかし新聞を見ると所管以外だっていろいろ言っておる大臣たくさんおりますがね。ここら辺はひとつ大臣、この問題は私は追及したいんだが時間がございませんのでここら辺できょうの段階はやめますが、大臣としてもこの点についてはきちっとして、厚生省のような——まあきょうは厚生大臣ならもっと違った答弁が出てくると私は思うんだけれども、この人の場合そこが一つの限度で石の地蔵さんみたいなかっこうになっておりますが、これは大臣捨ておけませんよ。あなたとしても閣議の中でこの問題をぜひひとつ超過負担の観点からも出していただいて、同時にまた、この保育料のあり方についても見直しをしてもらう、こういった姿勢があってしかるべきだと思うんですが、いかがですか。
  80. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) このことが、先ほどからの御議論がいきなり超過負担につながるかどうかはまだ私もはっきり自信がないのでございますが、超過負担全体につきましては、できるだけ解消していく方向にわれわれの方も努力しなければならないと思います。その線に沿いまして、私も善処してまいりたいと思います。
  81. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まあ余り満足のいく答弁は出ないけれどもね。  しかし、大臣、さっき言ったように、実態を申しますと、行管庁も指摘しているように、保育料が高いということは行管庁自体が認めておる数字です。それから横浜市の例のように、保育料を約半分にまけて、その分自治体が負担してやらざるを得ない事情にある。いま横浜市といえば自治省出身の市長でしょう、こういう実態にある。だからここら辺は私はやっぱりもっと真剣になって、保育行政は厚生省がやるだけでなしに自治体の福祉行政の重要な環ですから、そういう面でひとつ閣議の席でも取り上げていただきたいということを注文をつけておきたいと思います。  最後になりましたが、一つだけ消防庁にお聞きしておきたいと思うんですが、これも一昨日ですか判決が出ましたですね。宮崎市の北消防署のレンジャー訓練中に事故が起こりましてそして死亡した事件ですが、亡くなった松山さんですか、この人のいわゆる訓練中の安全の管理責任とそれから損害賠償の訴訟が続いておったんですが、三月三十日に勝訴判決が出されました。争点は、当局の安全配慮がやられておったか、本人の過失があったかということで争われておったんですが、判決の内容を見ますと、訓練設備、装備に欠陥があり、適切な訓練指導者の配置もしていなかった、したがって安全面に問題があったと。それから本人過失については、敏速な競技を争う内容であって、命綱を本人がつける義務づけも指導がなかった、したがって本人に過失はない、こういう判決の内容なんです。  これは私は五十三年の六月と十月にこの委員会で二回にわたって取り上げて、そして、いまやめられましたが林長官、それからいま自治省の事務次官をやっている近藤さんの二人と議論をやったわけですが、その際にも長官は安全の不備があったということを認めておりましたね。それでこういう判決が出されたわけですから、したがってこれについては私は控訴すべきじゃない、むしろこの判決を消防職員の安全を保障していく一つの重大な教訓として生かしていくべきだ、こういうふうに思うんですが、消防庁長官、いかがですか。
  82. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいまお示しにございました一昨日の宮崎市消防本部に係ります地裁の判決は、消防職員の訓練中の死亡事故につきまして、任命権者でございます宮崎市に対しまして、安全管理の不備に基づきます債務不履行を原因として約二千六百万円の損害賠償を命じた内容になっておるわけであります。  いま申しましたように、一昨日出されました判決でございまして、申し上げるまでもなく、もとより司法機関の判断でございますので、判決内容そのものにつきまして私どもがここでとかくの論評をいたします立場にはないわけでございますが、今後の救助訓練の安全管理のあり方につきましての一つの大きな反省材料を提供されたというふうに受けとめておりまして、今後このような訓練中の事故の絶滅につきましてさらに消防機関に対しまして指導を重ねてまいりたいというふうに存じておるところでございます。
  83. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、だからそういう意味で控訴すべきでない、これはやっぱりこの判決が出たのを率直に受けとめて教訓に生かすべきである、こういうふうに思うんですが、いかがですか。
  84. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) この判決が出まして以後、宮崎市として控訴するかどうかということにつきましては、申し上げるまでもなくこれは宮崎市で御判断なさることだと思うわけでありますが、宮崎市におきましては現在判決文をよく読んだ上で今後どう対処していくか、市長さんを中心にして検討をしておるというように承っております。私どもといたしましては、控訴期間御案内のとおり二週間ございますので、宮崎市としては、いずれ二週間以内にはどちらにするかの態度を明確にされると思うわけでありますが、私どもそのような市の意見も踏まえまして、御相談がございますれば私どもとして十分適切に対応してまいりたいというふうに存じておるところでございます。
  85. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  86. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十七年度総予算中、警察庁所管自治省所管及び公営企業金融公庫を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  87. 岩上二郎

    ○岩上二郎君 地方自治をどう守り育てるかということについて、与党も野党もそれぞれ角度の相違こそあれ、大体同じようなことではないだろうか、こんな印象を持っております。私は、どちらかというと性格的に減点主義者なものですから、これでいいんだろうかと、こんなふうな感じを平素抱いておるんです。そんな感じからいろいろと御質問申し上げたいと思うんです。  せっかく憲法や法律議会選挙あるいは首長の直接選挙、そしてさらには法律と同じような効果を持っている条例の制定あるいは改廃権、それから課税自主権等々が決められているわけですけれども、それだけに地方自治の機能というものは相当独立性が明らかになっているはずであります。しかし、それにもかかわらず、いまでは地方自治法なりあるいは地方分権というものについても、口先だけではそういうことを言うけれども何か実体が伴わない、特に国と地方の一体行政、こういうふうな形になりつつあるのではないだろうか。そういうやさき、臨調の答申を前にして自治省はどう受け答えしようとしているんだろうか。地方自治団体は一体どういう態度でこれに臨もうとしているのか、私なりに一つの期待と不安が同居していると、このようないまの感覚であります。  従来、私は地方自治関係に携わり、昭和二十二年の初代公選町長に出馬をし、町長の洗礼を受けて二回、そしてその間アメリカなんかへ行って、各市町村の実態を視察をしたり、そしてまた、知事を四回もやってしまった。こういうふうな経験の中から、地方自治の時代の流れの変化というものをいろんな角度で体験をしてきたわけでありますが、いまの憲法第八章の地方自治に関する規定の条章を受けてつくられております地方自治法なり地方財政法も幾たびか改正され、ときには改悪ではないだろうかとこんなふうな感じを持ってみたり、あるいはまた行政組織の面でも地方委員会、それから自治庁そして自治省というふうに変質をしていったわけですね。そして、シャウプ勧告というのは非常にあの当時は期待と希望を持った一つの勧告案であったわけです。  そのシャウプ勧告によると、市町村優先の原則というものがはっきりと明記されているわけですね。しかし、だんだんと時代が過ぎるに従って、中二階的であったはずの都道府県、これがやたらに権力集中の傾向になってきている。したがって、知事四選反対とかいろんな問題が起きるのも、一つのそういう流れからきているものであろうかと、こういうふうに思うんです。そういう状態になってくると、国、県、市町村、こういうふうに、やはり戦前にあったようなそういうところに市町村がランキングされてしまっている、これが実態ではなかろうかと、こんなふうに思うのです。  それから、一方、今度は教育委員の問題一つとらえてみても、かつては教育委員は公選制だった。それがいつの間にかさたやみ。そして、行政委員会の中でも、教育長なんかはこれは事前に文部大臣の承認を得なきゃならない。あるいは行政委員会の中でいろいろな変化はありましたけれども、警察本部長なんかはやはり中央の公安委員会の承認を受けて出てくると、そういうふうな情勢にあるわけでございます。  今度は、国の許認可事務、あるいはその規制、さらに国の機関委任事務なりあるいは人事の支配介入といったようなものも、その方が地方団体から見ても得だといったようなそういう意識も働いて、だんだんと地方自治体の独自性というものが失われてきつつある、こういうふうに思わざるを得ないわけであります。  特に中央集権の妻とも言うべき補助金政策、これは負担金なり分担金なりあるいは奨励金、いろいろありますけれども、こういうものも、交付税それから起債絡みで国家財政の基本的な枠組みの中に封じ込められてしまう、これが実態ですね。一、二の例を申し上げましても。これまた非常に問題なんですけれども、しばしば知事会等でこの地方事務官制度の廃止を要求したこともありますし、あるいはまた、最近になっても地方監査制度の改善というようなものを図るべきだと、こういうふうな意向等を申し上げたり、あるいは超過負担の解消の問題等々、自治省はもうほとんど理解を示し、それに向かって法案を準備をしても、なおかつ、政府の二十三省庁ですか、いわゆる縦社会行政組織の壁にぶつかってにっちもさっちもいかないということで、申し訳ないがしばらく関係各省と相談をして態度を決めますというような答えだけしか言えないところに問題がある、このように思うのですね。  そういうようになってきているのは一体どういうことなんだろうか。なぜそうなってきてしまったんだろうか。一つは、私は、お上にこれ従うといった日本民族性にもその原因もあるのではなかろうかと思いますが、もう一つは、やはりアメリカなりあるいは欧州諸国のような、血みどろな戦いをしながら獲得した自由なり民主主義制度というようなものでつくられた国々と違いまして、そういう一つの体験もないまま上から与えられている、これがなかなか民族の中になじまない。形だけは民主主義的な体制ができた、しかしそれがなじみにくい、肉づけもできない、そういうふうな状態にある中で、今日なかなか市民意識というものが向上しない。ここらあたりにも一つやはり問題があると、このように思いますし、また、国も地方自治団体も市民の意識改造というかこういうものがないまま民主制度だけが先走り過ぎてしまって、その中身の問題が実は空洞化されているところに、今日のような中央集権のメカニズムが物すごく伸びてきてしまっているというところに原因の一つがあるのではなかろうかと、こういうふうに思うのです。  しかし、元来地方自治というのは行き過ぎもありますし行き足らないところもある、そして、悩みながらともに歩んでいくと、こういうふうなところに地方自治のうまみというか地方自治の本質的なものがあるだろうと思います。ところがちょっと行き過ぎるとすぐ自治省がちょっかいをかける。たとえば東京都のああいう、まあラスパイレス方式から見るとちょっとおかしいとか、いろいろなことでちょっかいをかけるのですけれども、あのかけ方はちょっと官僚体制の権化みたいな感じがしないわけじゃないですね。むしろそういうことよりもやはりこれでいいのかということを東京都に知らせるという努力をもっとすべきではないか。その努力の結果、やはり住民の側からこれはとんでもないと、こういう声がかかって自粛する。そういうふうなことになっていくのが本来の地方自治の育て方ではないだろうか、こんなふうに思うんです、  それからもう一つ、やはりこれは自治省にも指摘しておきたいのですが、これは各省ともどもなんですけれども、これはもうたびたび行政局長にも申し上げておりまするように、田園都市構想に基づくリージョンプラザというものを大変表に掲げて、われわれも事前に何回か説明を聞きましたが、しかし住民主体あるいは住民参加の上でそういう政策が実行されるような事前の手当てというものがないまま、補助金を裏づけにしてこれがいいよということで、まず各都道府県一つのモデルケースとしてこれをどうですかと呼びかけるということが先行されますと、市町村の段階でも金が出るならばやってみようか、こんなふうになっていくわけですね。そうなると地方自治というものが育たないわけです。いわゆる地方行政あれど地方自治なしというのは実はそこにあるのです。  私は元来、田園都市をずっとやってきて、もう約二十年になります。その二十年の歳月の中で、やはりこういうものをどうでしょうかと、こういうことで何回か呼びかけ、それじゃ知事さんは何かおみやげを持ってきたか、いやみやげも何もありません、一つの思想を持ってきただけですよと、こういうことで何回となく住民の意識を改造させながら、それじゃ自分もやってみようか、しかしそれにはある程度の負担金が伴いますよ、いやそれくらいのことは大したことはありませんと、こういう中で、決しろ住民の側からのいわゆる要求として、これだけの負担はするけれどもそれ以上のものは出せないから市町村なりあるいは県にお手伝いをいただきたいと。それに対してその器に県が何がしかのお金を出していく、これが本当の補助金の姿ではないだろうか。補助金の先行する中では、地方行政はある程度うまくいくかもしれないけれども、住民自治というものが育たない。逆に言えばそういう結果になるだろうと思うのです。  そこらあたり、これは自治省としても二年目に入っているわけですから、やはりそこらあたり十分に踏まえて住民の意識改造がどこまで進んでおりますか、住民参加の体制はどうなっておりますかと、こういうことを十分に聞きながらこの裏づけになる補助政策の実現に当たっていただきたいものと、これは要請をいたしておきたいと思います。  そんなことをずっと二十年からの経過を考えてみて、しからば地方自治というのはどのように育てたらいいだろうか。このように考えてみると、何となくまあもはや病膏肓に入ってどうすることもできないんじゃなかろうか、しかし言わなきゃならないだろう、言ってもどうにもならないだろうというような、とつおいつ疑惑を感じながら、私なりの意見を二、三申し上げますので、これに対して今度はお答えを、大臣でも結構ですし、局長でも結構でありますけれども、それぞれお答えを願いたいと思うんです。  一つは、臨調答申というのが一体どんなふうになるんだろうか。これを非常に心配している一人ですけれども、恐らく昨年からずっとやってきた経過を考えてみると、財政難からまず補助金はどうなのか、交付税はどうなのか、起債は一体どうなのか、こういうようなところに手をつけようとするんじゃなかろうかと思うんですけれども、これは私はそれなりの対応をしていいと思うんです。ただ、この対応されないものがたった一つあるんですね。それはやはり地方自治体の主体制というものをはっきり確立させるとそういうような姿勢の上に立って自治省がどう作業を進めていくかということが一つ大きな問題であろうと思うんです。いわゆる国と地方というのは対等、並列の関係にあるという明確な位置づけというようなものをどこまでやれるか。あとは、事務の再配分の問題とか超過負担をどうするかとか、いろいろと出入りのある関係の整理というようなものは当然でしょうけれども、まず一番基本的な問題は、地方自治の存在、地方自治の重みをはっきりとどう打ち立てるか。この打ち立て方いかんによって臨調にあるときには抵抗しあるときにはいろんな政策上やむを得ないということもあるでしょうが、その一番基本の問題だけはこれはもうどうしても自治省としては市町村あるいは県の立場に立って強く体を張っても抵抗する、こういうふうな姿勢がますます大事なことであろうと思うんです。それに対する認識を改めていただいたものと思います。これは大臣には予算委員会で申し上げましてお答えいただきましたので、行政局長からもう一回はっきりとお答えをいただければと思います。  それから、私国会に出てから不思議に思うのは、ここにも入口のところに「地方行政委員会」というのがあるんですけれども、これは名前を変えた方がいいんじゃないか。地方自治委員会というふうに名前を変えられないものだろうか。確かに国と地方との関係行政の絡みがあって、ある面においては論議をしなければならない問題でありますが、こういう地方行政のサイドだけから問題を詰めていきますと、だんだんといまのような社会、特に成長から福祉へというそういうふうな方向に向かいつつあるときに、ますます各省とも地方自治団体にどうすべきかこうすべきか、いろんな問題を提起をされ、その絡みの中に物すごく入り込んでいくわけですね。それはそれなりに一つ理由はないわけじゃない。しかし、地方自治を育てるというそういう角度がどうも足りないように思われるんで、アメリカなんかで各市町村をめぐった中で、やはり執行部抜きにして議員がそれぞれ討論をし、採決をしていくケースが非常に多いわけですね、そうでないところもありますけれども。ところが、日本の場合は常に執行部議会という関係が対立関係みたいな形になって論議されているわけですが、もう少しフリーな立場でトーキングできるようなそういうものもあっていいという意味もくるめて、名称が、地方行政委員会という何か上から下へという体制が温存されているという感じから、自治委員会みたいなものを考えてみてはどうだろうか。これは一つの検討課題の問題としてちょっと申し上げておきたいと思うんです。これは私なりの一つ考えです。  それからもう一つ、いまでも総理大臣の諮問機関として地方制度調査会というのがあります。私もそのメンバーの一人になっていますけれども、従来から地方制度調査会の答申を何回か私も読んだこともありますが、どうもまたかといったような答申が非常に多いんですね。どちらかというと形式的というか中身がない。しかし、片方から見れば、答申したって余り実現してくれないんだから仕方がないわ、しかしまあ委員会がある以上審議をしなきゃなるまいと、こういうことで審議をしているのが実態かしらと。若干は幾らか地方制度調査会の答申の線に沿って実現したのもあったでしょう。よくその中身はわかりません。しかし、地方制度調査会はやはり地方団体それぞれ出て参加しておりますので、これはそのまま残すとして、その実効性をどう担保したらいいのかという、その担保するための一つの組織としてかつて設けられた地方財政委員会というのがありましたですね、あれの機構と同じような、もう一回シャウプ勧告時代を振り返ってみて、やはり地方団体代表を参加をさせて、そして実効性が担保できるような一つの機関をつくってはどうか。また、新しくつくるということは行革絡みでむずかしいとするならば、現在地方財政審議会というのがありますね。これは地方団体が参加しておりません。したがって、こういうものの組織を拡大する、そしてもう少し権威のあるものに位置づける、そういうふうな政策が生まれないものであろうかというふうな感じを持っています。  しかし、自治省の中でいかにそういうものを設けてみたところで、二十三省庁の縦割り組織というものは厳然としてある。この壁をどう破ったらいいのかということがやはり臨調の大きな課題であろうと思うんです。さて、どうしたらいいか。たとえば地方事務官制度の問題でもまあ自治省が鋭意努力をし、そして行管で一生懸命この問題を取り上げて閣議まで押し上げていったにもかかわらず、それが途中各省の抵抗に遭ってさたやみというふうになってきた経過を思いあわせて、これはなかなか大変なことだ。しかし、大変でもその壁を破らない限りは地方自治確立、いわゆる地方分権というこの旗印を掲げることはできないんではなかろうか。旗印を掲げることだけはできたとしてもその実行がなかなかむずかしいと思うんですね。これは与党からも野党からもそれぞれ、大臣の御所見をいただきたいと言っても、それに対する答えは、まことに同感であります、しかし、ということになると、いつの間にか大臣がかわっちゃう。こういう皮肉な一つ現象が起きているのがこの委員会の姿であろうと思うんですね。それでまた同じことを繰り返す、まあそういう中で時は過ぎていく。しかし、地方自治というのは一体どうなるんだろうか。何か地方自治が置き忘れられた形で、地方である県も市町村も全部抱き込んじゃって、そしてその一体的な運営、これをするのが地方行政のあり方であるかのような印象さえも持たないわけにはいかない、こういうふうに思いますので、それをどう具体化するかということが非常に問題だと思うんです。  その意味で、地方行政住民のためにある、何らかの具体的処方せんというようなものが、やはり恐らく臨調が出てきて、これが思うようにならないとすればまた十年先か二十年先にまたぞろ出てくるかもしれないけれども、このまま時代が過ぎ去っていくと、地方自治というのは一体何だろうか、憲法の中で第八章だけがかすかに残っているみたいな、そういうふうなことになっていってしまったのでは、これはもうどうにもならないことになるだろうということを恐れておりますので、そこらあたりの感触を踏まえてひとつ自治省はしっかりやっていただきたいものと思いますので、いま申し上げました意見にどうお答えいただけるか、行政局長大臣、もしお答えいただければ結構でございますが……。  あわせて、行管がこれに対してどう対応するんだろうか、これもまた一つの見ものなんですけれども、行管もまた調整権限を持ってはいても力が弱い。そういうことで省と庁ではえらい違いがあると、こういうふうに言われているだけに、中曽根さんには物すごく期待はしていますけれども、どうなんだろうかという心配と、また、大変やる気を持っている鈴木総理でもありますし、鈴木総理の前に中曽根さんは御馬前で死ぬというようなかたい決意であるかのようなことを新聞でも拝見しましたし、本当かしら、本当にそこまでやってくれるならば幸いだと、こんなふうな気持ちを抱きながら実は御質問申し上げるわけでございます。  簡単で結構ですけれどもお答えいただきまして、私の質問は終わります。
  88. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 岩上委員の地方におきますいろいろな豊富な御経験に基づいていろいろとお聞かせをいただきまして、大変感謝を申し上げます。  私たちは、基本的には国と地方関係というのは、国民福祉の向上という共通の目的に向かいまして相協力していくべきものであるし、今後とも国と地方というのは協力、協同の関係を助長促進をしていくという関係に立ってこれをながめていかなければならぬものだと思っております。  いま、いろいろお話がございましたが、戦後の日本の地方自治というのを考えてみますと、敗戦後、日本の国がどうやって立ち上がるかということのために欧米に追いつき追い越せということをずいぶんやってまいりました。そういう過程の中で、高度経済成長というのもございました。勢い、国自身が追いつき追い越せという議論をしますと、その形態のあり方というのはどちらかといいますと、地方分権を推進するというよりは、むしろ中央集権の方で仕事をしやすいという傾向に私は陥りがちなものだと思っております。そのことが戦後二十年間続いてまいりました。政治、経済、すべてが集中の方向に向かっておりますし、最近出されました参議院の宮澤委員の本ではありませんが、何でも東京病というような形の中で、東京一点主義、そういう方向への道を私たちはたどってきたように思うのであります。  その中で、地方自治体もそれなりに、財政の問題、地方自治を確立する問題、いろいろなものに向かいながらこれを克服してまいりましたが、なおかつ全体的に見ますと地方自治のよって立つ基盤であります財政というものがきわめて弱い。そういうものをどうして力強くするかということについても、戦後、シャウプ勧告以来みんなが苦労してまいったわけでもありました。その過程でやはり地方団体が、ともかく財政再建ということがありましてもこれが倒れないようにどうするかということをやってまいりました。そういう意味では、国自身が大変公共団体に親切にし過ぎたということがあったのかもしれません、あるいはそれが過保護だという議論があるのかもしれません。そういうこともあったにしましても、現実にはそういう全体的な自治の基盤というのがきわめて脆弱であるというのは疑う余地のないところだと思っております。  そういう中で、いろんなことのしがらみをどう排除するかというのが大変問題でございますが、基本的にはやはりそういう自治財政権と申しますか、そういうものが確立されていないところに国からの多くの干渉を受けるゆえんがあるのだろうと思っております。そういうことが次第に高度経済成長の中でなれてまいりました。そういうことが、やはり自治への脱皮というのが三十年間過ぎても一般的になかなか根づかない一つの問題であろうと思っております。  団体自治でありますとかあるいは住民自治でありますとか、そういうことの定義はともかくといたしまして、そういうことがまた一般の住民の間にもなかなか地方自治というのが自分の身についたという形での定着の仕方ができない。先ほどお話がございましたが、欧米における都市国家の形成、そういうものから見ましても日本の自治体というのは歴史的にもそういう形を経ていない。そういういろんなことがございまして、ともかくいままでやってまいりましたが、ようやくそういう高度経済成長の中からいろいろな画一的な、あるいは集権的な物の考え方から多様と分散の方向への価値観というのに転換をし始めてきた、そこに私は実はこれからようやく地方自治の夜明けを見たという感じを持っているわけでもあります。  いろいろと地方自治について御心配になっている方々に私はいつも敬意を表しているわけでありますが、やはりこれからの地方自治の育成というのは、どういたしましても一つの財政の基盤と申しますか、自治の基盤というのがまず確実にできていくこと、その中に自分たちが物を考えてどう進めるかということをやはりお互いが注意をしながらこれにどう合わせていくかということも考えなきゃいかぬことだと思っております。  先ほど田園都市の補助金のお話がございましたが、実はこれをつくりますときにも岩上先生に大変いろいろ御心配をおかけいたしまして、いろいろな御忠言を受けておりました。そういうこともございましたから、実は一般的にはこういう補助金というもの、特に複合的な補助金というものについて政府の中でもいろんな議論がございますが、ともかく公共団体が望む方向へのものをつくるのが一番いい。余り国が口出しをしない、金は出すけれども口出しはしまいというのを一つの問題意識として持ちながらこの田園都市のようなものをつくって、複合施設をつくりながら住民の参加を得たいと私たちは願ったわけであります。そのために実は設計費と申しますか、この計画策定費というのを一年前につくり上げまして、実はその計画にみんなが、設計でも何でも構いませんから住民の参加を得ながら、みんなでどういうものをつくっていくかということを一年間考えてくれと。考えた結果、そのものがいいというなら補助金は出してあげますという形に実は形としてはつくり上げたわけであります。  しかし、では、それが現実にどうなっているかということになりますと、なかなか私たちが当初期待した方向への問題は出てこないようでもあります。これはやはりいまお話がございましたが、今後二年なり三年なり続けていきます間に、そういう住民の参加を得ながら物事ができていくという方向にだんだん私はいくのではないか、そういう期待も持っております。  そういうことをまず前に申し上げまして、三つの点の御質問がございました。  第一番目の、臨調答申に対する自治省の態度というものにつきましては、私はお話のとおり全く同感でございます。まさに私は補助金でありますとか、いろんなそういう問題というものにメスを入れないまま、いまの行政改革で事業の見直しなどというのはできるわけがありません。現実に十一兆を超える補助金を地方に流すということになるわけですが、そういうものに国が常に関与をしているというあり方が本当に地方自治を育てるかどうかという点については常々私は疑問を持っている一人でもあります。そういう意味で言いますと、やはりこの補助金に手をつけて、むしろ地方が自分で使える、自由にお使いになれるという、そういう形のものに振りかえていくということの方がむしろ望ましいと思いますし、地方自治の存在というものを意味づける上からもそういうあり方で臨むのが私はよろしいのではないかと、こう思っております。  第二点の地方行政委員会の名称の変更の話は、これは国会自身の話でございますから私から申し上げることではないと思っております。ただ、イギリスでもそうでありましょうが、国会のように与野党の間で大いに議論をして、それが成立していけば法案になるというような形のものもないわけではありませんから、これは国会の中の御議論として私は解決していただければ大変ありがたいことだと思っております。  第三点の地方制度調査会の問題でございますが、おっしゃられますように、大変答申が多いのになかなか実効性が乏しいということがございました。これは全くそのとおりでありまして、私たちもそういう点ではきわめてじくじたるものがございます。  個人的な見解といって、こういうところで申し上げるのは恐縮でございますが、やはり調査会というものが連続的に開かれている、そういう中で地方制度の改正をするということがそんなに多く出てくるのだろうかという問題は私はあると思います。そういう意味では、もう少し私はその調査会の中で多面的ないろんな議論をしていって、そういうものが答申に至らなくてもよろしいと、大いに議論をしてもらって、その中で結実するものがあればそれは結実させていこうというやり方があるいは望ましいのではないかと思いますが、これはまた調査会の問題でもございますから、個人的見解としてこれはまた委員の方々にもお伝えをいたしたいと思いますが、ともかくそういうやり方が一つあるだろう。  それからもう一つは、調査会で出ておりますいろいろな答申の中で、基本的にやはり問題になっておりますのは、事務配分の問題であります。この事務配分の問題というのは、総じて機関委任事務に関する問題であります。これはやはりいまお話がございましたが、憲法の中で地方自治というのが定められているのに、いろんな機関委任事務というのは国が法律をつくったときにすでにもう市町村や府県が国の出先のようになってしまってその事務をしていかなければならないというところに本当は問題があるのじゃなかろうか。要するに、一般的に普通地方公共団体の中で、たとえば公害条例のように、公共団体が発意をして全国的に公害条例ができた。それが全国的にあまねく行き渡ったところで国が何となく公害立法を自分でしてしまって、それで従えと、こういうふうになってしまう。そういうやり方が本当に地方自治を育てるやり方かどうかについては、私ども大変疑問に思っております。そういうやり方が結局現在まで来ておるところに事務配分というものがなかなかできない。一番先に申し上げましたように、中央集権の方向へ走ってきた一つの流れというのがこの機関委任事務にも象徴されているわけであります。それなるがゆえに、実は非常に残念ではありましたが、前の国会にそういうことがあるたびに、地方の六団体意見というものが常に国の立場から聞かれるべきであるという意味で、実は意見提出権というものを実は提案考えたわけであります。そういうことを少しずつでもいいから国と地方の間でほぐし合いながら、やはり地方自治というのを確立していかない限りはなかなかうまくいかないだろう。要するに、法律をつくった、公共団体はそれに従えばいいんだという物の言い方自身がやはり非常に問題があるのじゃないか。そこを克服しないと、現実にこの地方自治というものがなかなかみんなの中に、国はいろいろやってくれているからそれでいいと、そういうものをただ下請的に仕事をすればいいのが地方自治だというふうに思われがちだろう。その点はやはり国も地方もお互いに考え直さなきゃいかぬのじゃないか。そういうような精神的な、あるいはいろいろないままであったことの繰り返してはありますけれども、みんなでそういうことを是正をしていくという努力をこれからも私は続けていかなきゃならぬかと思いますし、そうしない限り、日本に本当に民主的な地方自治が根づくということはなかなか遠い話になるのではないかというふうに思っております。  いろいろとお話がございましたが、私は岩上委員のどれも全くそのとおりだと思っておりますし、あえて反駁をするつもりも何もございません。ただ、地方自治について自治省はどう考えておるかということでございますので、私の考えておりますことをいささか申し上げておきたいと存じます。
  89. 増島俊之

    説明員増島俊之君) 別の委員会でございますが、岩上先生の御指摘に対しまして行政管理庁長官が、原則的に先生のお考えに賛成であるということを申し上げたわけでございますが、現在の行政改革のいわばポイントといいますか、物の非常に基本的な考え方が二つあると思いますが、その一つは、現在公共部門でやっております仕事を、できるだけいわば民間の活力にゆだねるということで物を見直していくと、これを徹底的に見直していくということ、これが一つの現在の行政改革の非常に新しい考え方であると思いますが、もう一つは、公共部門の中でやられております仕事を、中央政府及び地方政府といいますか、国と地方といいますか、その中での役割り分担をこれもまた見直していく、その中で、この臨調の第一次答申の中にもまさに検討課題としてありますように、地方地域社会の実情に即したような形の要するに行政サービスの向上ということ、このことがやはりポイントで考えていくべきであるという考え方を一次答申でもはっきり言っておるわけでございますが、そういう物の考え方で国と地方の役割り分担を見直していくということであると思います。  それで、去る三月二十九日でございますが、臨時行政調査会で主要検討課題というのを決めたわけでございますが、その中で、この第三部会の、国と地方との役割り分担ということを徹底的に見直すということを主要検討課題の一つに掲げているわけでございます。私ども、この主要検討課題の検討結果というものを含めまして、その結果を受けましてその実現に努力をしていかなければならないというふうに考えておりますし、当然これは行政管理庁というより内閣の非常に大きな責任でもあると思いますし、私ども事務当局といいますか、行政管理庁長官の指示のもとに一生懸命そういう方向の実現に努力いたしたいというふうに考えております。
  90. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) いま申し上げました行政局長の方からの御答弁でほとんど尽きているわけでございますが、私は、岩上先生のおっしゃること、全部もっともでございます。それから、行管とか臨調を通じて出てくる国と地方行政とか、財政配分の見直しとか、地方分権の確立というのは、これもまた一々われわれもそうあらねばならないと思うし、強い責任と自覚を持っているわけでございますが、実はけさ、この地方自治をどうするかという、閣僚、それから諸官庁集まりまして、中曽根長官が中心になって、いろいろ論議をして、今度出てくる臨調の答申の大体予測のようなものを相談し合って、これにどう対応するかという申し合わせをやったわけでございますが、けさの会合で。そこで私は、臨調の答申がどういう形で具体的に出るかはまだ決定的ではございませんが、大体出てきたところでこれを行うことになりますと、遠慮なく行っていくことになる、これは、自治省地方行政に関することで横の関係で各省庁と重ならないものはほとんど一つもないので、恐らく大変なあつれきを出してくるときももちろんある、そこまで覚悟もあるわけだけれども、皆さんのお覚悟はどうであるかというふうな問いかけをやりました。それは、いろいろ困難な実情はあると思うけれども、この機を逸しては本来の行政改革というものはできなくなるのではないか、こういう危機感は全般に持っているところでございます。とは言いながら、どういうふうな取り組み方をするか、それに対してどう対応していくか、それから地方制度調査会でいままで出されてきたいろいろな答申、これももちろん踏まえまして、これから国と地方とのいろいろな関係の分担をどういうふうに推進して行政改革の上に乗せていくか、それとともに財源の裏づけをどういうふうに行っていくか。これは大変な決意で臨まないと、私はなかなか文字と言葉で言って済むような事柄ではないと思うのでございます。  こういうことで、けさ改めて官房長官、それから中曽根長官、いろいろな方々に私は自分の感ずるところを披瀝いたしまして決断を、これは自治省だけが孤軍奮闘してもなかなかうまくいく問題ではないと思います。大変な大きな問題でございますので、そういうことで決断をうながしながら今後協議を重ねていく、こういうことを申し入れた次第でございます。  私の感ずるところは全く先生のさっきからずっと御指摘になったところと同じでございまして、そういう点で非常に御意見を聞かせていただいてありがとうございました。
  91. 岩上二郎

    ○岩上二郎君 今度の行政機構改革の問題、財政絡みではありますが、この機をおいてほかに行政機構改革はできないんじゃないかという背水の陣をしいて、これはやっぱり職を賭しても闘う、いわゆる民主主義の抵抗路線というか、それを踏まえてやはり徹底した一つの闘いを求めていかないと、これはどうすることもできないような状態になるかしら、こんなふうな感じさえも私は持っているわけです。やっぱり自民党ですから、それぞれの部会がありますし、私らもそれぞれの部に属しているわけでございますので、私はもうその執行部の姿勢、これはやっぱり政治的に左右されないで進めていただきたいし、われわれもどちらがいいかというときに、やっぱり地方自治を守るという立場に立って大いに協力をしていきたい、このように思いますので、ひとつ特段な御努力を心から御祈念申し上げまして、質問をこの辺でやめます。  どうもありがとうございました。
  92. 大川清幸

    ○大川清幸君 五十六年度の税収実績の落ち込みが地方財政にどうなるかということはこの間質問いたしましたので、別の問題で二、三伺っておきたいんですが、ちょっと内容が多過ぎますので取り急ぎお伺いをいたします。  まず第一番目に、今回参議院の改革が一応実現いたしまして、総予算は委嘱審査をすることになって、各常任委員会あるいは特別委員会でいま審査をしている最中でございます。  そこで、地方議会予算審議に対する自治省行政実例、昭和二十九年の九月、これが出ております。この中では、「予算は不可分であって、委員会としての最終的審査は一つの委員会において行なう」と、「最終的」という断り書きがついておりますから意味はわかります。そこで、二つ以上の委員会で分割審査を行うべきものではない、こうなっています。今回国会でこのような形で総予算を分割審議と言ってもいいと思うんですが、やる形になりました。地方議会の方は、市町村のように小規模の議会では全員協議会等で予算を審議したり、それから東京議会みたいな大きいところはいまの参議院方式とよく似たやり方をやっております。それから、一部の議会では総務委員会に付託をして、これは各関連常任委員会で歳出部分だけ調査をするというようなやり方をやって、この行政実例がかなりやはり形の上でも拘束力を持っていまでも生きていますから、この点は今回の参議院の改革にのっとって手直しを積極的な意味でしておいた方がよろしいんじゃないかと思いますが、これはどう考えておりますか。
  93. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 実は、御案内のとおり、予算というのは歳入歳出一体として存在をしているものであります。それで、いまお話がございましたように、各公共団体におきましては予算委員会をつくりましたり、おっしゃいますように総務委員会で歳入歳出の最終的な決をとって各委員会に歳出だけを審議していただくと、そういうことになっていると思います。国会でどのような御審議をこれからなさるのか、私もよく存じませんけれども、各常任委員会に予算の委嘱をしたんだと聞いておりまして、恐らくその委嘱をやはりもう一度持ち帰って全体的に採決なさるのだと私は思っておりますが、もしそれに間違いかなければ、そのときの行政実例はそのまま使えるのではないかと思っております。
  94. 大川清幸

    ○大川清幸君 ただいまの岩上委員との間でも、自治省の基本的な立場についての御論議があったように思うんですが、この間の委員会でも私申し上げたんですが、事業の性格上から言えば、自治省そのものがタッチしないというか、関知しなくてもよい問題であったと思うんですが、例の建設省の依頼通達ですね、「都道府県宅地需給長期見通しの策定について」、これが出て、あのときの答弁では、将来自治省にもいろいろ関係が出てくるような問題については連絡をするようにするという御答弁があったからそれはそれでいいんです。ところで、目下の政府の政策というと、景気を浮揚しなきゃならないということで住宅建設に一生懸命です。これで建設省では、宅地需給の見通しを出せと、こう都道府県に言っておる。この間の地方税法の改正でも、宅地供給のために長期譲渡所得の課税の特例措置などいろいろありました。こういう点を考えると、いまの政府の政策に協力をする、これは自治省もほかの省庁も同じ立場でよくわかるんですが、一方こうした建設省の通達の中身については、この間も申し上げたとおり、東京都では宅地供給がもう限界に来ておって、緑地が欲しいとか防災用の用地が欲しいということがある。千葉県の方では、宅地の供給の余力はあるけれども、公共事業工の他のことで市町村が対応できない、こういう悩みがある。実情が違うわけです。こうした実情を考えますと、縦割り行政の悪いところがやっぱり出ておりまして、ミクロ的に見てもマクロ的に見ても、自治省はやはり一面では政府の政策を推進する立場で協力をせざるを得ないが、地方公共団体の実情というのを踏まえて地方自治を指導育成をする、擁護すると、こういう立場で言うならば、こうした地方の状況をわきまえた上での対応が必要であるというふうに考えますと、全体的に考えて、先ほど自治大臣の強い御決意のほどがあったので私も幾らか安心していいかなと思いますが、各省庁の縦割り行政の中でどうしても地方自治体を守る立場でがんばってもらわにゃならない問題があるわけなので、もう一回御決意を改めて伺っておきたいと思います。
  95. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 建設省の宅地需給見通しについての調査依頼等に関連して、国の各種の施策について総合調整といいましょうか、地方団体全体の立場から自治省がどのような役割りを果たすべきであるかについてのお尋ねと思います。  従来から、各省庁それぞれ所管の行政に関連いたしまして調査とかあるいは指導とかを行います場合に、その多くの部分がやはりその省の持っている権限だけでは決して十分な成果を上げ得ない、各省にまたがる面が多いわけであります。そして、何よりもこれらの施策が現実に行われますのは地方公共団体の手を経てでありまして、私どもは各省庁の施策について地方行政との関連において注意を喚起すべき点は喚起し、また、協力すべき点は協力していかなきゃならないと、こういう基本的な考え方で臨んでおります。特に、住宅建設の促進というような問題は、大変広範多岐にわたる施策の総合として成果が上げ得るものであり、これが現実に総合できるのは地方団体の場でありますので、私どもはこの面については国の立場からも積極的に協力しなきゃならないと考えておりますし、また、地方団体の側に立って言うべき意見は言ってきているつもりであります。  なお、この住宅建設にとって最大のネックは、言うまでもなく土地の供給確保であります。この点につきましては、現在国土庁が中心になりまして九省庁の土地対策連絡会議というものが組織されております。これには私どもの役所も当然参加しておりまして、この場で積極的な意見の表明も行ってきているところであります。
  96. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、性格的には同じような問題になるんですが、具体的な問題からひとつ入ってみたいと思います。  新広域市町村圏計画事業に関連をしてですが、政府は昭和五十四年から三年間の計画で既存の広域市町村圏計画の見直しというのをやりました。全国の広域市町村圏とそれから大都市地域広域行政圏、これについて新しい計画を策定するということで仕事を進めてきたわけですが、この三年間にそれぞれ予算の張りつけを行いまして、それがほぼ終わりまして、新年度からは、自治省予算の中で言うと新広域市町村圏計画策定費補助金がこれはなくなりまして、従来存在をしていた中の田園都市中核施設整備計画策定費補助、これが独立をいたしまして目になっておりますが、一億八千万計上されているわけで、この形からいいますと、田園都市中核施設整備計画推進、これと新広域市町村圏計面との関係ですね、これはどういうことになるのかということと、それから各圏域の策定の状況はどうなっているか。これの御報告を簡単にお願いいたします。
  97. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 五十四年度から五十六年度にかけまして新広域市町村圏計画の策定補助金というのを出しておりまして、これは御案内のとおり昭和四十四年以来広域市町村圏の設定をやってきたわけでありますが、それがおおむね達成をいたしましたときに第三次の全国総合開発計画ができてまいりました。そこで、この定住構想に従って、もう一度広域市町村圏というものについて見直しをしよう、特に地域全体といいますか地域経済の振興を図るということであれば府県にも関与してもらった方がいいじゃないかということがございまして、新しくそこで県も入った広域市町村圏の計画策定費補助金というのを実は五十四年度からつくったわけであります。広域市町村圏は全体で三百三十六ございます。大都市の方は二十一ございまして、全部で三百五十七できているわけであります。御案内のとおり、東京都の周辺でありますとか、若干の大都市周辺でできていないところがありますが、おおむねこれで計画策定が終わったわけでございますが、そういう意味でここで一応新広域市町村圏計画の策定費補助金というのをやめまして、新しく田園都市構想というのにどういうふうに取り組んでいくかについて各省の間でいろいろな定住構想推進のための施策というのが打ち出されておりまして、そこで自治省の広域市町村圏の位置づけというものも大変問題になっておりました。それはほかの各省との間のいろいろな問題がございました。そこで、むしろ大平さんの御発想による田園都市の構想に置きかえる方がいいのではないかということを考えまして、今回田園都市の中核施設整備のための策定費というのに切りかえたわけであります。  先ほどちょっと申し上げましたが、いままで公共団体の方から見ますと、施設をどうもあちこちに似たようなものをつくる。むしろそれは非常に非効率的だということがございますし、複合的な施設をつくるということになると、各省それぞれのいろいろな補助金の出し方で補助条件が違っておったりいろいろしましてつくりづらいということがありますものですから、むしろこの際公共団体がそのいろんな複合的な施設というものをつくることに非常に関心があるならそれに沿ってやる方がいいだろう、しかも余り補助条件というものをきつくしないで、むしろもう公共団体が自分で設計できるようにして、それに従って補助金を出すという仕組みの方が望ましいのじゃないかということで、実は計画策定費一億八千万というのは十カ所の策定費でございます。これは五十五年度からもうやっておりまして、昨年度もこの計画の策定費をつけたわけであります。これが一億八千万ずつあるわけであります。それに五十六年度——きょうから五十七年度でありますので、前年度に、これに対する箱物といいますか、そういう補助金を一カ所当たり二億ないし二億五千万つけるということで、昨年度はその第一期として五千万ずつつける。それも去年は十カ所やるということでございます。
  98. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、この計画の推進は、自治省としてもかなり熱意を持っておるように推測できるんですが、ところで広域市町村圏整備推進協議会の研究会というのがありまして、これが昭和五十四年の三月に研究報告を出しておりますが、時間がないので細かいことには触れませんが、その中で、たとえば一つの圏域ですね、これについて各省庁が協力をし合って計画を推進するという形でやってもらわないと、効果は上がらぬだろうという意味のことを言っております。また、最近市長会の方でも同じような性格の要望をしています。事業を実施する側の市長の要望ですからかなり真剣に聞いてもらわなければならないのですが、あらかじめ国の方で十分な調整——縦割りじゃ困るという意味だと思うのですが、こういうふうに言っておりますが、政府の取り組みとしては、先ほど縦割りの話が出たので、態勢というか、それは不十分だと思うのだけれども、大丈夫ですか。
  99. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 実は、定住構想ができましたときに、この問題が大変問題になってまいりました。そこで、公共団体に大変御迷惑をおかけしたことだと思っております。政府としてもそれをそのまま放置するというのはいかがかということで、実は十七省庁の局長クラスによる連絡会議を開きまして、そこでどうするかというのを相矛盾しないように決めていこうということにいたしております。  ただ、御案内のとおり全国的に広域行政ができる、あるいはそういうことをやっておるのは、この広域市町村圏以外にないわけであります。たまたまほかのところにいろいろなモデル的なものがございますが、そのモデルも、広域市町村圏と区域をおおむね一致させるという前提でやっておりまして、建設省のものも広域市町村圏が二つないし三つ集まってやるとか、区域的にはみんな広域市町村圏の区域に大体合わせてやるという形になっておりますから、それほど大きい違いはないと思いますが、ただ市町村でどういうものを選ぶかというときに、いろいろ各省がそれぞれの形で物を申し上げるというために混乱を起こしていることは大変申しわけないと思っております。そういうことで、この十七省庁の局長クラスの間でそういう問題が起きたときにはよく事前に連絡をとって、そういうことが公共団体に迷惑がかからぬようにということをやっておりますので、最近はそういうことはもうないのかと思っております。
  100. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、官房長はこの広域市町村圏の事業ですね、行革に匹敵するような価値があるというようなことをどこかで御発言なすっていますが、そういう意味でいうと、いままでのしがらみから抜け出て、かなりリーダーシップを持ってこの仕事を進めるだけの決意と対策をしないといかぬと思いますが、どうですか。
  101. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 広域市町村圏のことでございますので私の方から申し上げたいと思います。  おっしゃられるとおり、私は広域市町村圏という、この新しいシステムというのに自治省としても大変力を入れていることは事実であります。もともと、先ほど申し上げましたように、四十四年につくりましたときには、過疎過密の問題が非常に起きまして、町村における行政からの享受が大変少ない、そういうことがございまして、全体的に中核都市をつくりながら、みんなが、そこへ住んでいる住民の方々が平等の利益を受けるようなシステムづくりをしようじゃないか。そのためのネットワークを組むとか、そういうことをいろいろやったわけであります。それが一つの仕掛けになっておりまして、その後の一般的な広域行政に対応する姿としましては、一応私は完成したものだと思っておりますが、今後やはり市町村を超えるいろいろな仕事が出てまいります。そういうものの受け皿としてやるにはやはりこの広域市町村圏というのは非常に重要な役割りを果たしますし、ある意味では市町村では補い切れないような能力をここでやることもできる。そういう意味ではこれからの新しい一つ行政機構と申しますか、そういうものとしての存在価値がきわめて大きいものだというふうに理解をいたしております。
  102. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこまで自信を持っておられればうまくいくのかなと私も思いたいんですけれども、しかし、関係市町村では、やはり受ける方でいろいろ困ることもあるわけですよ、御承知のとおり。関係省庁の調整がどうもうまくいかない、従来のいろいろなかかわり合いもあったり、省庁の立場の力の強弱があるのかどうか、私全然知りませんよ、そんなことは。しかし、この広域市町村圏行政を進めるのに、これは自治省の要綱行政の形でやっておられるところにやっぱり弱点があるのじゃないか。何か法制化をするなり、別途強い姿勢で臨めるような体制をとらないといかぬのじゃないかと思いますが、その必要はないと思っているのですか。
  103. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 実は、この広域市町村圏自身を制度化をすべきだという御議論が前にもございました。ただ、私はこの広域市町村圏をつくるに当たりまして、勝手に町村長が自分で合意をしてつくっているわけでございませんで、議会の議決を経て実はつくっているわけであります。ただ、こういうものをつくりますときに、そういう広域行政機構をつくるということが、何か国が、そういうものをつくることによって合併を促進をするんじゃないかという危惧を抱かれることがしばしばございます。私は、やはりこういう広域行政機構というのは自主的な運営をさせるというのが一番望ましい方向だと思っておりますので、これに対して制度化ということのためのいろいろなことの仕組みをつくるということをあえていままでしてこなかったわけであります。ただ、実は広域行政機構の中でもいろんな仕事の仕方が各関係町村の間で違いますので、通称複合事務組合と、こう称しておりますが、それによって対処をしようということで、実は昭和四十九年から五十年にかけまして地方自治法改正をいたしたことはございます。
  104. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは伺いますが、複合的一部事務組合制度、この制度が発足をしてその後の運用状況、これはどうなっていますか。
  105. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 複合事務組合というのが、従来の地方自治法ができてからの行政機構でありました一部事務組合とどう違うかということがございます。また、複合事務組合も一部事務組合の変形でございますから、法のたてまえとしては一部事務組合でございます。現在のところ、この一部事務組合を運用しているのは八十五ほどでございます。全体的な広域市町村圏全部には及んでいないとは思いますが、複合事務組合の運用の仕方がどこかに、あるいは制度的に欠陥があるのかもしれません。実は私の方も複合事務組合について今後少し調査をしなきゃいかぬと思っておりまして、いまできておるところの組合についてこれから調査をしながら制度的な運用で何か問題があるとか、あるいは運営上非常にやりづらいところがあるというなら、それは少し直していかなきゃいかぬかなといま思っておりまして、八十五の問題につきましても非常に注意をしているところではあります。  ただ、これは一部事務組合と違いましていろんな違った仕事を中でやっておるものですから、議会の議決というのも大変問題がございますし、そういう点がうまく慣れないという点も私あるんだと思っておりますので、そういう点も逐次調査をしながら解明をしていきたいというふうに思っております。
  106. 大川清幸

    ○大川清幸君 それではこの問題で最後大臣に伺いますが、広域市町村圏ですね、この事業が一応定着した形の御報告がいまあったんですよ。この施策自体を政府の政策全体の中でどういう考え方、どういう位置づけをして推進するかということがかぎでして、それでないと閣僚会議なんかやったってばらばらですよ、やっぱり。したがって、そういう意味では国の縦割り行政の中でいろいろなやりにくいことがあるでしょうけれども、それらを何というか、壁を破るというか、乗り越えてやっていただかないといかぬ問題もあるし、こういうことをやるについては出先機関の統合だとか管轄区域の再編など、これは市町村そのものを合併することは私たち反対ですけれどもね。そういうような機構的なことについても触れなきゃならない。そうすると関係省庁もそれなりの理解を示してもらわないとできないわけですから、むしろ市町村にいろいろ頼むことよりも政府なり国の方でやっておかなきゃならぬことがたくさんあるわけですから、その辺の整理をきちっとやって、仕事の推進を図ってもらいたいと思います。御意見を伺います。
  107. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) おっしゃられるとおりだと思っております。  広域市町村圏の問題について、実はどういう位置づけがあるのかというお話がございました。実はこれは昭和四十四年の第二全総のときに広域生活圏というのがございまして——第二というか新全総と申しますか、そのとき広域生活圏ということがございました。そのこと自身を実現したのが実は広域市町村圏でありまして、まさに政府の新全総に沿った一つ広域行政推進体制であったわけであります。  そのほかに各省が自分でそれぞれやるというのが実は建設省にございまして、これは建設省が自分の所管に属する建設事業だけをやる。道路をつくるとか河川をやるとかという形でおつくりになったものが建設省の地方生活圏でありまして、そういうことで一般的な行政需要を賄うというシステムとしては、当時の広域生活圏に対応するものはこれしかなかったわけであります。ただ、第三次の全総になりましたときに、定住構想を二百なり三百つくるということが出てまいりまして、その中で私たちの方はむしろそういう定住構想の、当時の文書の中では「定住圏」という言葉がいろいろ入っておりましたけれども、それを具現するのも私はこれ以外にないと思っておったわけであります。実は、全国的にこれだけ、二、三百のものをつくっているというのはほかの省にはどこもありませんでしたし、自治省だけが持っておったわけでありますから当然——その名前を実は変えた方があるいはよかったのかどうかわかりませんが、そういうことになると、またいろんな問題が各地の間で起きてくるものですから、実はこのままにしておりますが、私はそういう意味で一般的な行政というものを行っていく問題については、この広域市町村圏がやはり唯一のものだと思っております。  そういう意味では、いまお話がございましたいろいろな行政を行うについての不便というのが住民の中にありますれば、そういうことを広域市町村圏の協議会なりあるいは事務局の会議をときどきやっておりますので、よくお聞きしながら対処してまいりたいと思っております。
  108. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 御指摘のことはただいまの行政局長のお答えで大体尽きていると思うのでございますが、この新広域市町村圏計画、これはやっぱり、私の郷里なんかに行きましてもほとんど山ばかりで、行けども行けども山で、人間よりも猿の方が多いんですが、そういったところで各町村で共通のことを、仮に火葬場とか屎尿処理もそうですが、いろんな共通のことをやるとすると、とても一つの町村では負担ができないというんで、いま何カ町村か集まってこういったいろんな機能的な面での新広域計画をやっておりまして、これは将来ともに、大都市では余り必要性はないかもしれないのでございますが、ああいった過疎とか、地方では非常な比重をもって必要性が出てきておりますので、できるだけこれを助長して、助けていくことができるように配慮をしてまいりたいと存じておるものでございます。
  109. 大川清幸

    ○大川清幸君 では次に、公務員部門の予算に関連して一、二お伺いをいたします。  定年制の法制化が進められて、これについて予算の張りつけが行われて、従来の目が変更になったり、ふえたり減ったりというようなことがありますが、時間がないので細かい数字は省略をいたしますが、この定年制関係ですね、定年制の導入準備のための指導ということで、前年度の十四万七千円、金額は小さいですが、これが五十六万円に増額されておりまして、そこで定年制導入について法律の制定後、自治省としては各地方公共団体にどのような措置、指導をなさってきたかということですね。  それから、五十七年度以降実施までにどのような計画で臨まれるか、これを御報告願います。
  110. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 先国会において地方公務員法の一部を改正する法律を制定していただきまして、それが公布されましてから、自治省といたしましては、まず一つ地方公共団体に対しましてこの法律の施行通知を出しました。これによりましてこの法律の施行に遺漏ないよう格段の配慮を求めたわけでございます。と同時に、また会議等を通じまして、この法律の内容等につきまして地方公共団体に周知徹底を図ってきたわけでございます。  今後といたしましては、引き続きこの法律の内容等につきましてさらに周知徹底を図りますほか、地方公共団体に対しまして定年制度に関する条例の準則を示さなければなりませんし、また、現在勧奨年齢が六十歳よりも低い地方公共団体が相当ございます。こういうところに対しましては、六十年までにこれを計画的に引き上げるように指導をするというような、定年制度の円滑な実施に向けて具体的な指導を行ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  111. 大川清幸

    ○大川清幸君 いまの報告で問題点もほぼ幾つか出てきたんですが、勧奨年齢が低いところが実情は多いわけなんです。そうすると、これは六十年ということになると、その間、人間がちょっとたまるぐあいになりますね。そこで給与体系の改善とか退職金のあり方とか、いろいろ地方公共団体側の方は問題をいま抱えているわけです。現時点で自治省として把握しているそれらの問題点、それから解決の見込み、こういうようなことについては心配はないんでしょうね。
  112. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 心配がないかとお聞きになりますと、全くないわけではございません。一つは、いま御指摘になりましたように、現在五十七、八歳というところで勧奨年齢がとられております。これをスムーズに六十年までに原則六十歳の定年に持っていかなきゃならぬということがございまして、その間、職員の採用をとめるわけにはまいらないわけでございます。適切な新陳代謝を図りながらうまく合うようにしなきゃならぬということで、大変努力をしなきゃならぬ部門がかなりございます。
  113. 大川清幸

    ○大川清幸君 具体的なことで一つ伺っておきますが、これは消防庁でも警察庁でも同じだと思うんですけれども、警察庁から御答弁いただけば結構ですが、警察官なんかの場合は、現場で肉体的にも大変厳しい仕事についておられるわけで、体力的な問題もあろうかと思うし、それから階級制度の中でどうなるかということも私ちょっとよくわかりませんが、この六十歳定年を迎えるについていろいろ問題を抱えておられると思うんですね。これはどんな手法で今後これ対応していくのか、具体的に御報告を願いたいと思います。
  114. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 現在、警察官の勧奨退職年齢は都道府県によりまして若干差がございます。おおむねのところを申し上げますと、警視クラスで五十五歳から五十六歳、警部クラスが五十六歳から五十七歳、警部補以下の警察官は大体五十七歳から八歳というのが大体の県の状況でございます。  したがいまして、今後六十歳定年にいかになだらかに移行していくかということで非常に苦労が多いわけでございますが、現在、具体的な結論というのはまだ出ておりません。いま各県の方で県の実情に合わせての方策を検討中でございますが、その際考えておりますのは、いかにスムーズに移行できるかということでございます。それともう一つ、肉体的、精神的にいまお話のありましたような厳しい条件のもとでございますので、やはり高齢者の職務に適するようなポストの問題であるとか、それからあと勤務環境、勤務条件の改善の問題であるとか、そういった解決すべき問題が多いものでございますから、それを鋭意現在検討中という状況でございます。
  115. 大川清幸

    ○大川清幸君 警察庁結構です。  それでは次に、公務員給与関係について何点かお伺いをいたしますが、五十六年度の地方公務員給与改定、これの状況というと、これ全国的で大変かもしれませんが、主な特色はどういうことですか。
  116. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 五十六年度の給与改定の状況につきましては、現在調査中でございますけれども、全部の団体の約八割程度が年内に給与改定をしたと思っております。  また、その給与の改定の内容につきましては、おおむね国並みの抑制措置がとられたというふうに考えております。ただ、一部の団体におきまして、期末・勤勉手当の支給に当たりまして、いわゆる新ベースでの支給というような団体が見受けられたのがございます。  ただ、今回はかなり抑制的な給与改定が行われておるものと考えております。
  117. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、ただいま言われたような、抑えぎみで国の基準にほぼ合ったような方向でなされているということなんですが、都道府県とか政令指定都市等、これらの人事委員会の勧告の中で、不適切だと思うようなものがあったんですか、なかったんですか。
  118. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 人事委員会の勧告は、御案内のように大体国の人事院の勧告がなされました後、たしか十月ごろにおおむね勧告がなされるわけでございます。その中では、おおむね国に準じた改定というような勧告がなされたのが多かったと思っております。  その後、人事院勧告につきまして国の取り扱いが決まったわけでございまして、勧告の段階ではそこまではまだ読み込めていなかったということでございますので、先ほど申し上げましたように新ベース、旧ベースの問題が後で出てきたというふうに私どもは理解をいたしております。
  119. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、地方公務員法の第二十六条の規定によって人事委員会の勧告というのが決まっておるわけですが、この勧告なるものが知事なり市町村長、いわゆる首長及び議会にどのような拘束力を持つのですかね、これは。
  120. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 人事委員会の勧告は、給与決定原則に基づきまして、専門的、かつまた公正な判断によって勧告を行うというようなことになっておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、地方公務員給与決定に当たりまして大変重要な意義を持っております。  拘束力いかんということでございますが、法的拘束力は私はないと思いますけれども、勧告を受けた方といたしましては、これはやはり原則として最大限に尊重されなければならないものだと、このように考えております。
  121. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうしますと、その当該団体給与ベースが同地域の民間よりも上回っていながら、国と同じに上げるのはけしからぬというようなことが言われておりますけれども、しかし、それは考えてみると、人事委員会のそのような勧告を実施した市町村長なり知事がいいとか悪いとかの問題じゃないので、人事委員会制度そのものがこれはそういうことからいうと問題になる、そういう解釈が成り立つんじゃないかと思いますが、この辺はどう考えていますか。
  122. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 人事委員会の勧告というのは、それなりに資料に基づいて勧告がなされておると思っております。ただ、地方公務員給与水準が高いとかいうような話になってまいりますと、それは運用に当たりまして、たとえば運用昇短をやりますとか、あるいはわたりをやりますとかいったようなことから水準が一部の団体で高くなってきておるという実態でございますので、それらをあわせ考えますと、一概にどちらがいいとか悪いとかいうことではないんじゃないかと思っておりますが、人事委員会としては、やはりその地方公共団体給与水準というものを的確にとらえ、また、それをどう持っていくのかという目標をはっきり定めた勧告がなされなければならないものだと、このようにいま考えております。
  123. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、特別交付税の三月分、これ三月十二日に決定して十三日に配分していますよ。今回の配分に当たって、地方交付税に関する省令を改正しまして、五十六年度の期末・勤勉手当等の分について給与改定し支給した団体に対して、その支給分を減額する措置をおとりになったでしょう。これは、理由がどういうことかというのはちょっと問題があると思うんですよ。ラスパイレス指数が高いとか給与費の構成比が高いとか、ただいまお話がありましたようにわたりや期末手当や勤勉手当、その他いろいろの事情があるのは私もわかりますけれども、そうしたいま問題になった団体について、こちら側からそれを材料にしてカットしてしまうということになるとこれは問題があって、カットされた方が給与を国の思うとおりにやらなかったからといったって、あれはわずか一%の違いですが、それを新旧でそれをやったからといったって、どうも財政的にそこの団体は十分なんだなんという解釈にはならぬと思うんですが、そういう解釈だけで切ったんじゃないんですね。
  124. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 現在、特別交付税の算定上、国の基準を上回って支給されました期末・勤勉手当、いわゆるプラスアルファについて、これは減額の対象としておるわけでございまして、ラスパイレス指数等を基準とした減額といったようなことはやっていないわけでございます。これは、プラスアルファ支給団体が財政的にそれだけ支給できるということは余裕があるのだというふうに考えられますところから、全地方団体のいわば共通の財源でございます特別交付税配分に当たって、地方団体相互間で実質的な公平を図るという見地から行っておるものでございまして、御承知のように、地方交付税法第十五条の規定がございますが、従来からそれに基づいて省令を定めましてこのプラスアルファ分というものは措置をしておるわけでございまして、今回特にいわゆる新ベースによって支給したところは、国の場合は旧ベースによったということで、その分を余裕として考えるということで減額をしておるわけでございます。  考え方としては、私ども制裁的な意味じゃなくて、全地方団体の財政事情を算定する上で余裕があるかないかということで実質的な公平を図ると、そういう見地から行っておるわけでございます。
  125. 大川清幸

    ○大川清幸君 制裁的な気持ちはなかったと思うんです。しかし、結果から、第三者から見るとやっぱり制裁の感じがするんですよ。  期末・勤勉手当の差額の支給の問題でいま論議しているんですが、これにしてもどうするかということは、議会でそれぞれ議決をしていますよ、扱いとしてはね、恐らく。ですから、そういう経緯、手続を考えると、いまカットをしたりして、労使間で話し合ったり、いろんなこともあるでしょう、その他の人員整理やいろんなことが絡んでいるから、そういう前提なり実情を考えてみると、やっぱりこれは制裁であるし、ある意味では議会の議決権に横やりを入れた感じにもなるんじゃないかという気持ちでいるんですが、その辺はどうですか。
  126. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 交付税上は、普通交付税というもので一応全体的な標準的な需要について計算をして交付をするわけでございますが、特別交付税というのは、交付税法十五条にもございますように、普通交付税では算定し得ないようないろいろな需要が起こった場合、災害が起こったとかあるいはそのほかもろもろの財政上の総合的な事情というものを勘案して需要を計算して配分するわけでございます。そのいろいろ考える際に、いま申し上げましたように、通常の団体国家公務員並み、国に準じたやり方をしておる。しかし、それが特定の団体が国の支給基準を超えて支給しておるということは、私どもが総合的に財政状況を見る際に、それはやはり財政的な余裕があると、こう見ざるを得ないわけでございます。これはその判断をいたします際にいろいろな基準をつくって需要を見ていくわけでございますが、その際にそういったことを考慮するということは、これは特別交付税の性格から見ても私どもは実質的な公平を図る上から当然であろうというふうに考えて、法の十五条の第二項の規定に基づく特交に関する省令によって減額をするということでございます。
  127. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、五十六年四月一日の地方公務員給与の実態調査の結果、これが発表されておりますが、この結果についてどう考えておるかということ。  それから、ラスパイレス指数ですね、これが〇・二の減ですか、こういう状況になっておりますが、指数の圧縮、これはラスパイレス指数にはぼくは別に意見を持っているので、きょうは論争する時間がないので別の機会に譲りたいのですが、この圧縮の限度ですね、この辺が妥当なところといいますかいっぱいなところというか、どう考えていらっしゃるか、その辺のお考えを聞いておきます。
  128. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) この前公表しました給与実態調査でございますけれども、高過ぎる団体が非常に減ってきておるということ、これは実態でございます。  それから全体平均で見ますと〇・二%ラスが下がってきたということでございます。これは国家公務員との対比の話でございますので、一ころのように国家公務員給与ベースが非常に高いときには下げるのはわりと楽だったわけです。だから最近のように非常に国家公務員の方が低くなってまいりますとなかなかその中で下げていくのは大変困難を伴うという実態であろうと思います。そういう意味合いにおきましては、その高過ぎる団体が減ったということもあわせ考えますと、それなりにやっぱり地方公共団体も努力をしておるというふうに私どもは考えております。
  129. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは、時間が迫ってきましたので、次の問題に移ります。  五十七年度の固定資産税ですね、これは土地と家屋の評価がえがちょうど五十七年に当たるわけですから、これは中央固定資産評価審議会、ここですでに土地について指定市あるいは町村の基準地価格、これ決めておりますね。これは宅地が二四%、田畑が一一%、山林が一〇%、これは間違いないですか。
  130. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 間違いございません。
  131. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、そうすると家屋の方、この基準となる建築費の動向が建設工業経営研究会の調査では五十二年一月から五十五年一月までの三年間でおおむね二五%上昇となっている。このデータから言うと、やはり木造とか非木造家屋いずれも二五%程度の上昇が見込まれるんじゃないかというふうに思うんですよ。推測ですからどの程度に落ちつくか私もちょっと正確な判断はつきませんが、この上昇率二五%、五十七年の二五%というのは前回の五十四年の一九%よりかなり高いですからね。そうすると、平均ですから、これは三大都市圏などではもう少し上へいくかもしれませんし、家屋の評価額の大幅なアップもあるんじゃないか。そうするとマイホーム所有者にとってちょっと負担が大きくなる心配はないのかということですが、その辺はどう見ていますか。
  132. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 先生御指摘のとおり、土地については基準地価格で二四・一%のアップで基準地価格を示したわけでございますし、建物の方の再建築費の価格の上昇、これはいろいろな部材によってそれぞれ違うんですけれども、全体を総平均いたしまして大体二五%程度のアップで評価がえがなされつつあるものというふうに私どもは考えております。  もとになる地価そのものが、本日発表されました国土庁の資料によりましても、全国の全用途平均で五十四年から五十七年までの上昇率が二九・五%ということになっておりますので、私どもの基準地価格の指示価格というのはまあまあ妥当な線であった、むしろ土地の公示地価のアップ率に比べればやや抑え目と。格別意図をしたわけではございませんが、いろいろな判断要素である程度判断できるような問題についてはできるだけ抑えぎみというような運用もやりました結果そういうことになっているんじゃないかと思います。  いずれにしろ、地価が上昇し物価が上昇した結果として固定資産の評価額が上がってしまうということでございますから、結果的には相当な、二〇%ないしところによっては三〇%近いような評価の結果の上昇になるところもあると思います。したがって、これが単年度で一挙に二割ないし三割上がるというのは困るものですから、従来からとってまいりました負担調整措置を講じまして、しかも今回はきめ細かく段階を分けて負担調整措置を講ずるというようにした、そういう配慮をしているわけです。それにしても各年度、通常のところでは一〇%近く税負担が上がってくるということでございます。  しかし、これに対しましては、私ども、税そのものの性格が、固定資産税というのはできるだけ広く薄くといいますか、固定資産を持っている人たちに対してその固定資産の価格に応じて税負担をしていただく、こういう性格のものですから、目的によって負担に差を設けるということは、秋本来の性格からすると余りよくなじまないという問題はあるわけです。  しかし、それにいたしましても、生活に直接必要な生活用の固定資産については、例の、用地につきまして原則として二分の一、小規模住宅については四分の一というような制度をとっております。評価水準が実際問題として大体四割ぐらいでございますから、住宅用土地の実効税率というのは表面では一・四%でございますけれども、実際には〇・一四%ぐらいになっているということもございますので、また、確かに税を負担されるサイドから言えば、たとえ低いものでありましてもなかなか大変であるということはよくわかりますけれども、現在程度のものであればひとつぜひまあ御負担をいただきたい。私どもの方としては、固定資産税というものの許す範囲内において生活用の固定資産に対する精いっぱいの配慮はしておるつもりでございます。
  133. 大川清幸

    ○大川清幸君 まあ固定資産税というのは、これはほかの税と比べると大変性格が厳しくなっていまして、所得の移転がなくて果実が生まれないのに三年に一遍評価されるんで、これは税金の性格から言うとこれはもう大変問題があるんだろうと、これは将来考え直さなきゃいかぬ税金じゃないかと思っていますが、地方公共団体にとってはこれは安定した財源ですから、余り抑えることについても私は慎重にしなきゃならぬだろうという考え方は持っています。  しかし、御承知のとおり、いまの、特に大都市圏なんかに明確にあらわれていることは、マンションとか一戸建ての住宅を買うんでも、勤労者の一年間の所得と、それからこうした一月建て、マンションの価格との乖離というのがもう限界を超していますしね。それから、国土庁が発表した土地の公示価格、けさ発表になっていましたけれども、あれも少し横ばいで、ダウンはしていますが、金額そのものを言えばすでにもう限界に来ていますし、いまいろいろ緩和措置やあれをとってそう大きな負担にならぬだろうというお話があって、そうしたいろいろな措置がとられていることも私は承知をしておるんですが、いまお話のありました一定規模以下の宅地用地と住宅ですね、これはおっしゃるとおり生活用財産だという解釈ができるだろうと思うんです。いまのところ耐えられそうだということもありますが、近い将来も含めて考えますと、三年に一遍自動的に評価されて上がっていっちゃうんですから、本人の所得能力に関係なく。そういう点から考えますと、これは一つの例ですが、アメリカの幾つかの州で行っているようなサーキットブレーカー制度ですね。一定の所得を超えた分について払い戻しをするといいますか、戻し税みたいな制度をとっていますが、こうした制度も先々は考えておかないと、これは追い出し税というか、庶民の生活を脅かす危険性をはらんでいるんじゃなかろうかと思いますが、その辺に対する考えはどうでしょう。
  134. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 御指摘をいただきましたように、アメリカの特定の州におきましてサーキットブレーカー制度というものが採用されて機能をしているということは私どもも勉強もし、現に現在も固定資産税課の課長補佐をアメリカに派遣いたしまして、そういった制度の勉強なども実はしてきております。  ただいままで私どもが集めました資料等によりますと、先生もおっしゃいましたように、恩給生活者でありますとか退職者の方々がいままで持っていた土地についての固定資産税を払い切れなくなるという場合に、それを何とか救っていこうと、こういう趣旨のようでございます。しかし、アメリカの固定資産税制度というのはちょっとベースがわりあい高いわけでございまして、例のカリフォルニアにおきます提案十三号のときの固定資産税の実効税率というのは二・七ポイントぐらいまで行っていたわけです。  そういうものに比べますと、現在の私どもの方の固定資産税の実効税率が先ほど申し上げましたように比較的低い水準であるものですから、確かに私ども税金をいただくサイドが軽いじゃないかということはなかなな言えないわけでございますけれども、いろいろな諸外国の制度なり、あるいは実際に都市の生活者の平均的なところがどの程度の税額を納めているのかということをわれわれも常に検証をいたしております。たとえば全国平均の二百平米程度の住宅地に百平米ちょっと足らずでございますけれども建物を建てておると、こういった方々が大都市におきます平均的な評価額で算定いたしますと、年間三万八千円程度の固定資産税額である、月に直しますと三千円ちょっとという程度であるわけでもございます。  そういう実際の負担率からいきまして、日本で直ちにサーキットブレーカーのような制度を設ける必要が本当にあるのかどうかということについてはなお私どもとしては検討を要することだと考えております。
  135. 大川清幸

    ○大川清幸君 それではもう一点だけ伺っておきますが、市街化区域内の土地と家屋、これについては固定資産税とはまた別に都市計画税、これが徴収されておるわけですが、先ほど言ったように、マイホームの所有者とか、いわゆるサラリーマンですが、こういう方々の立場を考えますと、固定資産税の、何というんですか、付加税と造言えるような税ですね、こっちの方は固定資産税のような特例措置が行われておりませんから、負担の点ではやっぱり案外ばかにならないんじゃないかという感じがするんですけれども、都市計画税の方について、固定資産税で行っているような住宅用地に準じたような特例措置、緩和措置みたいなものを考える余地はありませんか。
  136. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 確かに、表面税率だけでの比較よりも、都市計画税の負担率というものが固定資産税に比べて重くなっていることは間違いございません。そこで、いろいろなところでいろんな問題を起こしておるということもわれわれ承知をいたしておるわけでございますが、何せ都市計画税につきましては目的税でございまして、同じ地域都市計画事業が行われますと、その事業実施に伴う受益というのは、住宅であろうが商店街の土地であろうが、用途に関係なく同じようにやっぱり受益が発生をしてくるわけでございます。用途によりましてその目的税である都市計画税について大きな差を、固定資産税と同じようなものを設けるということがうまく説明できるのかどうか、その辺に問題があるものですからなかなか簡単に踏み切れないでいるところでございます。
  137. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、地方単独事業について質問をいたしますが、昭和五十七年度地方財政計画に盛り込まれた地方単独事業費は、総額は八兆五千五百億円になるようでありますが、対前年比は八・五%増ということになっております。この地方単独事業というのは地域の経済の振興、雇用の安定、生活関連施設の整備等国民生活に直結する施策のために、また、国の公共事業が抑制をされている今日、景気浮揚策、特に内需拡大のためにも積極的な推進が期待されているところでございます。従来、大蔵省は、自治体の放漫経営を助長するもの上して単独事業の伸展には根強い不信感を持っていたようでございますが、七年ぶりのマイナス成長となった景気のてこ入れのためにも、一つには地方単独事業によるしかないという判断で地財計画が閣議決定されたと、このように言われております。  そこで、昭和五十七年度地方財政計画は五十七年二月九日に閣議決定をされ一般に公表をされておりますけれども、この地財計画のうちの地方単独事業が前年度比八・五%増の高い伸び率を確保できだということは結構なことと評価するわけでございますが、八・五%増といっても、昭和五十一年度から昭和五十四年度の二〇%以上の伸び率から見れば低いと言わざるを得ません。投資的経費において、国はゼロシーリング予算編成を導入をして、公共事業が前年度並みに抑制をされているものに比べれば、八・五%の伸び率は高い方だと思いますが、昭和五十六年度における対前年比の八・〇%に比べると〇・五ポイント伸びておるわけでございます。果たしてこの八・五%増は計画どおりにいくかが問題であろうかと思いますが、この点、自治省の御所見を伺いたいと思います。
  138. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) いま御指摘がございましたように、住民生活に密着した社会資本の整備、また、ひいては地域経済の発展に資するということで、大変厳しい財政状況のもとで抑制基調に立って地方財政計画を組んだわけでございますが、その中で八・五%の伸びを見たわけでございます。計画に組み込んだわけでございます。  問題は、おっしゃいますように、これをどう実効あらしめるかということでございます。私どもとしては、地方財政計画を組みます際に、全体としては財源措置として当然それだけの仕事ができるものを措置してあるというふうに考えておるわけでございますが、具体的にも地方交付税なりあるいはまた地方債についてもかなりな一般単独の伸びを見るなどいたしまして、所要の財源措置を講じておるわけでございます。また、地方団体に対しましても、例年よりも大変強く財源の重点的な配分を行って積極的な単独事業の実施に努めるように指導をしてきたつもりでございます。たとえば昨年、五十六年度の実績を見ましても、地方財政計画は八%でございました。それまでは地方財政計画並みになかなか伸びなかったわけでございますけれども、昨年の九月の状況を見ましても一〇・六%の伸びを確保しておりますので、公共事業が横ばいになるにつれて単独事業へだんだん熱が入っておるというような様子も見られるわけでございます。今後厳しい状況の中でどの程度やっていくかということはまだまだペンディングでございますけれども、私どもとしてはぜひおっしゃいましたような趣旨からもこれを強力に推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  139. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 地財計画においては対前年度比が八・五%の増で伸び率を見込んでおるわけでございますけれども、昭和五十七年度の都道府県の当初予算の合計も見てみますと、単独事業の伸び率は五・三%しか計上されておりませんが、この三・二ポイントの格差を見ますと、自治省の思惑が先行しておるようでありまして実際には自治省の計画どおり消化ができないのではないかと、こういうような疑いを持つわけでございますが、いかがですか。
  140. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 五十七年度の当初予算におきましては、投資的経費に係ります地方単独事業費は前年度に比べて都道府県一般会計予算の単純集計という形で見ますと五・三%の伸びにとどまっております。しかし、骨格予算団体が四府県ございますが、それを除いて、決算統計の基準等によって精査した結果では、対前年度当初比の伸び率は五・九%ということになっております。  なお、団体別にこれを調べてみますと。地方財政計画の八・五%を上回る伸びを確保しておる団体が二十六に上っております。一〇%を超えておる団体も十七になっておるわけでございます。しかし、いずれにしても都道府県全体としては地方単独事業費の伸び率は計画の伸びを下回っておるというのは御指摘のとおりでございます。ただ、私どもとしては、これは通例でございますが、いつも当初予算の段階ではある程度抑えておいて九月補正でかなり肉づけを行うという団体もございますので、全体としては今後の補正に期待しておるところでございます。しかし、当初の段階においてはおっしゃるように見込みよりは低い状況になっております。
  141. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 御答弁がありましたけれども、地財計画によりますと、昭和五十七年度の地方税収は十九兆九百四十二億円を見込んでおるようでございますが、対前年度比を出してみますと一一・七%の増、それだけの伸び率になっていますけれども、都道府県の税収見込みは対前年度比が六・七%しか見込んでおりません。ここに五・三%と八・五%の格差が出てくるんじゃないかと思うんですが、地財計画と都道府県地方単独事業の予算のギャップが生ずる原因があるんじゃないかと、このように思うんですが、自治省の所見はどうですか。
  142. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) いま御指摘のございましたように、当初予算の段階では地方税収につきまして骨格予算を編成している団体を除きますと六・七%という見込みを立てておるようでございます。これは計画で見ております一〇・二%よりも確かい低いわけでございます。いろいろな経済情勢を踏まえて地方団体としてはそれぞれの地域の実態に即して税収の見積もりを立てておられるわけでございます。その意味では非常に慎重な態度であるように思うのでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、九月補正でかなりの肉づけを行う団体が多いわけでございまして、そういったことも影響しておるだろうと思っております。私どももいつも九月補正が済んだ段階でいろいろな数値を拾っていろいろ指導をいたしておるわけでございますけれども、そういうこともございますので、全体として慎重な態度があることはおっしゃるとおりでございます。そういう税収の見込みを抑えておるから、全体として単独事業等についてもやや控え目に考えておることも事実だと思っております。私どもとしては、いま申し上げました今後の補正等にも期待しておりますし、先ほど申し上げましたが、かなりの団体がかなり熱意を持って地方単独事業の伸びを見込んでおりますので、今後の推移を見守りたいと思っておるところでございます。
  143. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 国においても、補正予算後においてもなおかつかなりの税収不足が生ずるのではないかと最近言われておるわけでございますが、地方単独事業は地方税収の伸び率によって相当左右されるわけでございますが、地方税収の対前年度比一一・七%増は果たして可能なのかどうか。
  144. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 来年度の税収見通しを御指摘のように地方税全体といたしましては十九兆九百四十二億円、対前年度計画一一・七%で組んでおります。この数字が出てまいりましたのは、国の税収見通しと同じでございまして、来年度のわが国の経済見通しを名目で八・四%、実質で五・二%の成長があるものということを前提といたしまして見込んだ数字であるわけでございます。  最近の経済の情勢はなかなか厳しいものがあるようでございまして、来年度の経済成長を政府の見通しどおり実現をいたしますためにはなお相当の努力を必要とするということが言われているわけでございますけれども、そのために政府は各部面にわたりまして努力を続けていくわけでございますので、私どもとしては、現時点においては政府見通しが達成されるものという前提に立って推計をし物を考えてまいりますので、そういう前提に立つ限り、この税収見通しというのは確保できるものと考えておる次第でございます。
  145. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 あわせてこの際お尋ねをいたしておきますが、五十六年度の地方財政での歳入欠陥、国の歳入欠陥が言われておるわけでございますが、地方の財政での歳入欠陥はどのように予測しておられるのか。この歳入欠陥への対策はどうするのか。  第二点目は、五十七年度で予定している税収見込みの狂いをどう考えておられるのか。国の補正とあわせて対策をどういうふうにとるつもりであるのか。  三番目は、地方債の増発をしなければやっていけない状態になるのではないかと、こういうことはもう明らかであると思うのでありますが、五十七年度での地方債の計画の見直しについてはどのように考えておられるのか。この三点をお伺いをいたします。
  146. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 五十六年度の税収について歳入欠陥が生ずるのではないかという御趣旨の御質問でございますが、私どもとしては、確かに現時点での一月末の都道府県の税収の入りぐあいというのは非常にやはり厳しいものがございまして、特に法人関係税では県によりましては明らかに目標達成がむずかしいというようなところが出てきているわけでございます。都道府県全体といたしましても、法人関係税に関する限りは地財計画で見込みました額を確保するということは非常にむずかしいものと現時点で私どもは考えております。  しかし、幸いなことにほかに、たとえば自動車関係税でありますとか、市町村の個人の住民税所得割等におきまして計画を上回っている税目もございますので、全体といたしましては五十六年度地方税収は何とか地方財政計画で当初見込みました額を確保できるものではないかと期待しながら推移を見守っているところでございます。  なお、五十七年度の見込みにつきましては、先ほども申し上げましたように、今後の経済運営というもののための努力がなされまして、見込みどおりの経済成長というものが達成されます場合には、何とか計画額を達成できるものと考えておる次第でございます。
  147. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 五十六年度の税収については、ただいま税務局長からお答えしたとおりでございます。全体としては何とか総量を確保できるのではないかということでございますが、特に法人関係税についてはかなり減収の見込まれる団体も多いわけでございまして、そのために私どもとしては、要請に応じまして、いろいろと財政事情等を総合的に勘案した上で、減収補てん債措置を講ずることとすでにいたしたところでございます。それによってそういう団体については何とか財政運営に支障はないものと考えておるわけでございます。  それから、五十七年度についてでございますが、現段階では私どもとしては地方税を初め各種の歳入についてできるだけ適切と思われる方法によって見積もりを行いましたので、見込みどおり確保できると思っておるわけでございます。先行きどうなるか、これは不明な点もございます。仮にの話でございますけれども、減収となりました場合には、私どもとしては地方財政の円滑な運営に支障を生じないように適切な措置を講じていかなければならないと考えておりますが、では具体的にどうするかということにつきましては、その段階におきます措置額がどの程度になるのかということなどを含めて全般的な状況に応じて検討をすることになろうかと思っておりますが、いずれにしても私どもとしては地方財政計画で一応の指針を出しておるわけでございます。そういった形で財政運営ができますように適切な措置を講ずるというつもりでございます。
  148. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 三問目の、地方債の見直しということについて、歳入欠陥が起こらないように努力をするということは話はわかるんですが、やはり当局としては、そういうような不測の事態が起こったときに地方団体地方債に頼らなけりゃならない、そういうときの見直しをどのように考えておられるか。そういうことはありませんから考えておりませんということではならないと思うんですが。
  149. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 具体的に申し上げなかったので説明不十分だったと存じますが、五十六年度においても減収補てん債措置を講じたわけでございまして、五十七年度はどういう形になるのか。措置すべき額が小さければ過去の基金等を崩して使うということもございますしいろんな方法がございますが、そういった中で、たとえばおっしゃいました地方債という面では、法人関係税が落ちれば、たとえば五十六年度の場合は減収補てん債措置をとったというような意味で、何らかの必要な措置を講ずる必要があると思います。具体的に現段階でちょっと申し上げにくいので省略をしたわけでございますが、おっしゃったようなこともいろいろ含めて総合的に判断せざるを得ないと思っております。
  150. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 ところで、自治省は三月の十五日に、地方自治体が自前の財源で実施をする地方単独事業を奨励するために、単独事業を多く実施する自治体には地方交付税を重点的に配分する方針を固めておるというような報道がなされておりますが、その真相はどのようなことなんですか。
  151. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 先ほどもお話がございましたように、住民生活に直結する公共施設等の計画的な整備を一層進めるということで、地方単独事業につきましては普通交付税の算定におきましても重点的、傾斜的な配分を行うことについて、そのような方法を取り入れるのがいいのか悪いのかという問題も含めて、さらにはやるとしたらどういった算定方法があるかということを目下検討しておるところでございます。    〔委員長退席、理事亀長友義君着席〕 いろいろと議論すればいろんな問題がございます。また、何が一番適確かということについていろいろまだ検討をすべき点もございますので、現段階においては具体的な算定方法についての成案は得ていないわけでございます。  ただ、私どもとして考えておりますのは、平均的な水準を相当程度超えて単独事業を実施した地方団体に対しては、その実施状況を勘案して、何らかの形で包括的な割り増し算入を行うことができないだろうかという考え方で整理を進めておる。どういう指標をとり、どういう形でやるかということは、非常に議論すべき問題が多いのでいま目下検討中だということでございます。
  152. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 従来、自治省は特別交付税の一部を地域経済振興対策として自治体に配分をしていたのでありますが、地方交付税の本体である普通交付税を景気対策に重点配分するというのは、昭和二十九年から発足しておるこの制度の中で従来も行われておったのかどうか。初めてなのかどうか。
  153. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 地方単独建設事業費に関連いたしまして、普通交付税の傾斜的配分措置をいままでに講じたことはございません。
  154. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 それから、新聞の報道によりますと、具体的な配分方法については、過去の実績によって配分率を決めていく、このように報じておるわけでございますが、自治省はどのような配分にしていくつもりであるのか。
  155. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) ただいまも申し上げたとおりでございまして、平均的な水準をある程度超えて単独事業を実施した団体について、何とか包括的な割り増し算入の方法がないかどうかということを検討をしておるわけでございますが、いまおっしゃいましたように、一体どのような数値をどの時点でつかまえてやるかといったような、非常に技術的には議論をしなきゃならぬ問題があるものでございますから、それでまだ結論を得ていない、こういうことでございます。
  156. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 配分については、昭和五十七年度の普通交付税に反映をさせるのか、あるいはまた、昭和五十八年度を目標に検討するのか。どちらなのか。
  157. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 目下、普通交付税についてその傾斜的配分を行うかどうかの是非を含めて、また、算定方法等についても検討をしておる段階でございますので、私どもとしては早急に成案を得たいとは思っております。また、成案が得られれば五十七年度から実施をしたいという気持ちは持っておるわけでございますが、まだ結論を得ていない段階でございますので、必ず五十七年度からやるというところまで明確にお答えできないわけでございます。
  158. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 最後に、大臣にお尋ねをいたしますが、景気対策について伺っておきたいと思います。  各方面によっては不況の度合いがいろいろ違うわけでございますが、公共事業の前倒しについては各地方別にはどうするおつもりなのか。きめの細かい対策が必要であると思うのでございますけれども、どのようにお考えなのか。
  159. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 大臣からお答えがあると存じますが、私どもとしても、いまの景気対策の面からも国の公共事業を積極的に進める、また、地方単独事業も積極的に前倒しで進めるということについて努力をしたいと思っておりますが、そのためには、たとえば地方債についての許可等についてもできるだけ早く急いでやるといったようなこと等含めて、事務的にできるだけの協力をしていきたいと思っておるところでございます。地方団体にもその旨十分指導していきたいと思っております。    〔理事亀長友義君退席、委員長着席〕
  160. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) ただいま財政局長から答弁がありましたとおりでございますが、地方財政の方も国の財政と歩調を合わせまして、前倒しといいますかどうですか、できるだけ積極的に事業を地方でも進めていただく。そのための単独債を使っていただくように勧告していくわけでございます。そのほか、いろいろな補助金とかその他地方に出していくお金、それから地方債、こういうものを積極的に早目に早目に出すなど地方に対していろいろな対策を手当てをしていきたいと思っております。
  161. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 終わります。
  162. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 質問に入る前に、委員長に苦言を呈しておきたいんですが、今回のこの委嘱審査、まさに参議院改革の一つの大きな目玉としてこういう方式がとられたわけでありますが、見ておりますと、申しわけないですけれども、特に与党の方々、私も便所へ行ったときなど見てくるんですが、各委員会がなり積極的に出ておられるんですよ。ところが、この地方行政委員会は与党の方々ほとんどいない。こういうことではこの参議院始まって以来の改革の意図が生かされていないのではないかとまことに残念で仕方がありません。私どもは、民社党ですから、小さい政党ですからたった一人でありますが、しかし、この重要性にかんがみましてじっと参加をして、いま最後質問になったわけでありますけれども、その点苦言を呈しておきたいと思うわけであります。こういう委嘱審査方式というのはこれからも引き続き行われるでありましょうから十分にその点は配慮をしていただきたい、このように思います。  それでは最初に、きょうの東京新聞で大きく報道をされておりますけれども、厚生省の大臣官房審議官舘山不二夫さんという方が、次の選挙に立候補する予定で、仕事そっちのけで事前運動に狂奔している、こういうことが書かれているわけですね。きょうも社労委員会あたりで問題になりまして、本人は辞表を提出したようでありますけれども、しかし、辞表を提出したからといって私は問題は解決しているとは思わないわけであります。現職の高級官僚でありますから、政治活動はもちろん禁止をされておりますし、そういう立場で、しかももうぬけぬけと新聞記者のインタビューに答えて、おれは田中派だとかすごいことを言っておる。けしからぬ話だと思うんです。  そこで質問をしておきたいんですが、舘山さんという方はことしの初め、身体障害者あるいは戦傷者、マッサージ関係者に多量の年賀状を配布した、こういうように現地では言われているわけです。しかも、現地の福井の新聞を見ましても、選挙展望と称して、舘山不二夫さんの写真まで載せて報道されている。本人もしばしば福井の地元に帰って、二月はもう月の半分は選挙運動に専念をしている、こういう報道であります。  そこで、このことは公選法百三十六条の二の「公務員等の地位利用による選挙運動の禁止」、このことに違反している疑いがあると思いますけれども、どうでしょうか。それのみならず、これはもうまさしく国家公務員法九十六条、あるいは国家公務員法の百一条、すべてにこれは違反の疑いを私は感ずるわけでありますが、その点の御見解をお伺いします。
  163. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) 選挙が近づきます時期、あるいは近づくであろうと思われる時期に、事前に選挙運動をすることは、これは禁止されていることは御承知のとおりであります。  同時に、公務員は、その公務員の職務との関連から非常に疑惑を受けやすいという意味で、御指摘の地位利用の禁止という、またもう一つかぶった禁止規定があるわけであります。また、並行いたしまして、公務員のいわゆる地盤培養行為の禁止という表現で呼んでおりますけれども、二百三十九条の二に、いわゆる地盤培養という行為を禁止しておる規定がございます。そのほかにも国家公務員法なりあるいは人事院規則なり、あちこちで公務員のおよそ事前運動あるいは地位利用による選挙運動を厳重に規制をいたしておるわけでありまして、そういうことが新聞の記事に出るということがままあることを非常に私どもは残念に思っておりますが、具体の行為が百三十六条の二に当たるかあるいは二百二十九条の二に当たるかという認定問題ということに事実関係としてはどうしてもなるものでありますから、個々具体の件につきまして、これがこの規制に違反するか違反しないかという御質問についてはなかなかお答えしにくい立場であることを御了解いただきたいと思います。ただ、そういうことが新聞記事になることは大変残念に存じております。
  164. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 実際選挙が来て、本人が立候補して届け出をしない限りにおいては、こういうことが事前運動の罪にならないかもしれません。しかし、もうはっきりしているわけですね、新聞報道を見る限りにおいては。しかも、この方は、福井市手寄の城東ビルというところに日本海時代研究会という政治団体まで——これは五十五年の四月一日に設立されているわけでありますけれども、設立しているわけですね。だから、もう疑いはまさに明らかだと私は思うんです。  そこで、もう一点お伺いをしておきますが、これはさきの衆議院の予算委員会でわが党の塚本書記長が、これはもう厚生省だけじゃない、あらゆるところでそういうことがあるのではないかと、こういう天下り立候補問題について政府の姿勢をただしたわけで、それについては総理大臣も、やめてやるのは構わぬけれども、けしからぬことだということで、総理大臣もそういう意見を表明されたわけであります。  そこで、この天下り立候補の下地になりがちな地位利用と事前運動ですね、このことは現行法の運用で十分規制できると考えておられますかどうか。その点の御見解をお伺いいたします。
  165. 大林勝臣

    政府委員大林勝臣君) 天下り立候補の問題について、直接お答えする立場にはないわけでありますけれども、ともかく公務員の地位利用につきまして、公職選挙法では、地位利用ないし関連する地盤培養行為まで含めまして厳重な規定が設けられておるわけであります。そういった犯罪の疑いがございました場合には、取り締まり当局において適切な御処置をされてまいったわけでありますし、また、その都度裁判になったケースもかなりあると私ども聞いております。  いずれにいたしましても、この法律解釈、運用いたします立場からいたしまして、先ほどのようなお話が出ること自体非常に遺憾に存じております。
  166. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 結構です。  そこで、次に警察庁にお伺いをしておきますが、これは予算案との関連で質問を二、三点しておきたいんですが、わが国の治安ですね、世界でも模範的な治安状況で、私もまさにそのとおりだと思うんです。警察官も、先進諸国と比べて人口の割合には少ないということで大変苦労されて今日の治安を保っておられる。非常に敬意を表するわけでありますが、御苦労も多いと思うわけであります。  そこで、五十七年度予算編成に当たりまして、治安確保の観点からどのようなところに重点を置いてこの五十七年度予算案を作成されましたか。その点、まずお伺いをしておきます。
  167. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 最近の社会情勢でございますとかまた犯罪情勢、こういったものを見まするときに、現在の治安の水準を保っていくということにつきましては、財政状況が非常に悪いという中ではございますけれども、相当に努力をしてまいらなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、五十七年度の警察庁予算案をつくります際に、重点としましたのは三つございまして、その一つは、まず人口増加対策と少年非行等の社会情勢、犯罪情勢の変化、これに対応いたしまして地方警察官の増員でございます。それと、犯罪検挙の向上を図るための指紋業務のコンピューター化、コンピューター分類ということの推進、これが二つ目でございます。それから三つ目としましては、大規模地震対策の推進。こういった三つの柱を立てまして、今回の予算編成を行ったと、こういう状況でございます。
  168. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、いまお話がありました指紋自動識別システムですね、これはどういうもので、果たしてどの程度の効果があるのか。その点、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  169. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 現在警察庁では約六百万人分の指紋を保管をしているわけでございます。従来からそれを手作業で犯人の身元の確認の作業を現在いたしております。なお、その六百万人のうち四十万人につきましては、これをコンピュターに入れまして——この四十万人というのは、大体広域あるいは常習的な犯罪者、そういうものでございます。そういう人たちを入れて各府県の要請にこたえてまいっているわけでございますが、最近の犯罪の情勢といたしましては、犯罪の件数自体がまずふえてまいってきているということと、犯罪者自体が活動の範囲が広域化してきているということ、あるいは、一部ではございますが、常習者の犯罪が非常にふえておるということ、こういうことがやっぱり治安にいろんな意味での影響を及ぼしているわけでございまして、したがいまして、今回六百万人分の指紋をコンピューターのいわゆるパターン認識の技術を応用いたしまして、全部コンピューターに入れてしまいまして、府県の警察で犯罪捜査活動をするときに、犯罪の現場等から指紋が出てまいりましたときにはそれを即時に警察庁の方に照合する、そうすると直ちに、すでに前歴のある者でありましたらその結果が判明いたしまして犯人が特定してまいる、こういうふうな非常に効果を発揮するわけでございます。  私どもの試算によりますと、大体このことによって犯罪の検挙率は約七%ないし九%は向上する、特に侵入盗犯、要するに人の家に忍び込んで物をとる、これは非常に凶悪犯に移行しやすい犯罪でございますが、その程度は必ず挙がる。それからもう一つは、凶悪犯罪、最近の犯罪は非常に巧妙になっておりまして、先ほどの保険金目的の殺人事件とかいろんな犯罪がございますが、なかなか犯人は現場に指紋を残さないという傾向は出てまいってはおりますが、しかし犯行の現場をしさいに検分いたしますと、たとえばいわゆる部分指紋等が出てまいるわけでございます。現在のシステムでは指紋の真ん中の一番いいところ、こうしたところがとれていないといまの技術では照合ができないわけであります。指紋は大体一つの指に百ぐらい特徴点がありまして、その中で、確率的に計算いたしますと、十二ぐらい合致点がありますと、これは現在百億人ぐらいでないと同じ指紋が出ないという、要するに統計上はなるわけでございまして、世界の人口は四十億人でございますから、十一か十二の合致点が出れば必ずこれは同じ人間だということになります。それが大体一つの指に百ぐらいあるわけでございます。それが、いまは真ん中の一番いいところがきちっととれないとできないのが、今度は、犯人が犯罪の現場の近くにこんな端っぽの指紋でも残しておって、そこに特徴点が幾つか出てまいりますと、それはもう犯人がすぐ割り出せる、そういうふうなことで、非常に凶悪な、しかも犯行の手口の巧妙な事件等につきましても、これはまた相当な威力を発揮する。  そういう意味で、世界的に見ても非常に画期的なシステムでございまして、すでにアメリカを初め各国からも、日本でそういうふうな新しい技術が開発されたということで世界的にも非常に関心を呼んでいるケースでございます。それだけに、非常に犯罪捜査の面では威力を発揮する方法でありまして、これからますます複雑化し、多様化し、かつ困難化する犯罪に対処する科学的な捜査のシステムとして今回の予算にお願いをしておる、こういう次第でございます。
  170. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 いまの御説明でよくわかりました。  第二点、先ほどの予算編成上の重点とされましたもう一つですが、校内暴力事件、ますます頻発をしておりまして、最近は特に教師に対する暴力事件、これがほとんど倍に近くなっている、しかもそれが非常に凶悪になってきている、こういうことですね。少年の非行がだんだんと年齢が低くなってきているというこういう事態、きわめて社会的にも重要だと思うんですが、このような校内暴力あるいは家庭内暴力、こういう少年非行の実態ですね、簡単で結構ですがお伺いをしたいということと、その対策をどのように考えられておりますか。お伺いします。
  171. 谷口守正

    政府委員(谷口守正君) 先生御指摘のとおりでございまして、少年非行はここ数年急激な増加を見ております。昨年一年間に刑法犯少年として補導をいたしました数が十八万四千九百二人でございました。全刑法犯検挙人員中に占める割合も四四・二%というような状況になって、いずれも戦後最高というか、最悪を記録しておるわけでございます。しかも、低年齢化がいよいよ進んできておりますし、また、校内暴力あるいは暴走族など、集団によります粗暴事件、それから少年によります通り魔殺人事件など、凶悪事件が多発しております。さらに、家庭内暴力事犯も増加するなど、現在少年非行というのが量、質ともにまことに憂慮される状況にあるということだと思います。  こういうような厳しい情勢に対処するために、警察といたしましては街頭補導活動の強化によります非行少年の早期発見、それから補導ということなど、いろいろな活動を積極的に推進しておるところでございますけれども、最近の増加いたします少年非行の実態にかんがみまして、まず第一には、学校とかあるいは地域社会と一体となりまして、校内暴力を初め暴力非行の未然防止、それから検挙、補導ということ。それから第二には、大部分が万引きだとか自転車盗などのいわゆる遊び型非行でございますので、その発生を抑制する、未然に防止するというような観点から関係団体等に呼びかけまして、そういった非行を誘発しないような環境、条件を整備してまいりたいと思っております。それから第三には、少年を取り巻く環境がきわめて悪いわけでございます。こういった有害環境の浄化活動をこれまた地域社会あるいは関係団体とよく連携を保ちながら積極的に推進してまいりたい、こう思っておる次第でございます。  考えてみますと、やはり少年非行問題というのは国民の方々一人一人が共通の理解といいますか、認識を持って、そしてお互いに連携をとりながら対処していかなければならないということでございまして、換言しますと、やはり非行防止のための幅広い国民運動が展開されなければならない、こう思うわけでございます。警察の立場というのは限られておるわけでございますけれども、現在の少年非行の実態は非常に深刻であるといった点を訴えながら、その問題点を指摘しながら関係団体と手を取り合って対処してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  172. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 戦後最大のピークに達しておるわけでありますから、一層の御努力をお願い申し上げたいと思います。  警察の関係は結構でございます。  それでは、これはもっぱら大臣にお伺いをしておきたいんですが、基本的なことでございますが、先ほど私も岩上先生と砂子田行政局長の討論を聞いておりまして、大変本音を言い合いながら、将来を憂えたりっぱな御討論であったと思って聞いておったわけであります。  この地方行政委員会は、知事経験者から市長経験者から地方議員の経験者から、大変なベテランばかりでありますが、私は全くの素人であります。しかしまた、素人なるがゆえによく見えることもあるわけでありまして、そういう意味大臣にお伺いをしていきたいと思うんです。  先ほどもお話がありましたように、地方自治の確立なんというのは将来に向かってもうどうにもできそうもないのではないか。砂子田さんも、いまの現状をとにかく改革しなければなかなか思うようにはいかないのではないか、こういうようなお話が双方でありました。まさにこの地方自治の問題については、私はいま曲がり角に立っていると思うわけです。そういうときの大臣でございまして、やっぱりかなりの勇断を持ってこの行政に携わっていかなければならぬ時代に選任をされたと思うんです。そういう意味で、文人世耕大臣の役割りは私はきわめて大きいと、こう思っておるわけです。  そこで、第一点。最近よく地方の時代と、これ流行語のようになっておるわけですが、しかし、地方の時代といっても地方自体の受けとめ方は、いよいよ地方の時代が来たぞなどといって受けとめているところは一つもないと思うんですよね、いまの段階では。しかし、地方の時代という言葉が流行語のごとく広がっている。そこで大臣は、こういう現象につきまして、これが言われ出した背景をどのようにとらえておられますか、その点からお伺いをしておきます。
  173. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 御指摘の点でございますが、私は、最近地方の時代ということがずいぶん言われているんですが、これはいままでの地方への行政のしき方の一つの反動としてあらわれた言葉のように思っております。それは、いままでどちらかというと地方の方は大都市にあこがれを持っている、その方向に向かって、つまり東京を小さくしたような、スモール東京のようなものを地方の方へしきたいという意識が必ずどこかにあったように思っております。これは経済の面でも産業の面でも、それから道路とか建物とか教育機関の面でも、大体私はそういうふうな意識が一番基礎の中にあって、それを目標にしていろんな地方づくりをやってきたように思う。  そこで、まあ地方へ行くと高速道路とかなんとか、いろいろずっと通っておりますが、大都会と結びつく高速道路とか鉄道とか、人間の体で言えばいろんな動脈とか静脈に、大きな動脈に相当するようなものが幾つかつなぎ合わさってでき上がっているわけでございますが、形の上でも、いろんな都市づくりの上でも財政的な面でも地方としての個性とか特徴が、都会には似てきたけれども、だんだん乏しくなってきた、これが実際の実情であろうというふうに私は推察しております。  そこでいままでの、ただ模倣とかそういった画一性に従っていくような地方のあり方ではなくて、地方地方の独自の個性を持つとか、その地方の風土とか家屋とか、それから生活習慣とか、いろんな地方に伝わっていたり残ったり、また、その地方の文化として残されているあらゆるもの、その上に立って今度は新しい産業とか文明とか、あるいはいろんな文化施設とか、新しいいろんなものを都会に近いものを取り入れていく。つまり、一番基底にあるのは、自分の地方の郷土性とか地方性とか個性とか、そういうものを基盤にして、その上に新しい行政のあり方を、それからまた予算を取り入れていく、そういうことにだんだん地方が目覚めてきたのではないか。これが私は新しい地方という言葉の裏づけになる基本的な考え方ではないかというふうに思っております。  私どもは、これはやはり大変貴重なことでございまして、これをできるだけ強く補助したり助長していく方向にわれわれも協力していかなければならないというふうに考えております。
  174. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 大臣のおっしゃること、当たらずとも遠からずだと思うんですね。しかし、地方の時代というのは、スタートは憲法ができたとき、憲法の第八章に地方自治が取り入れられた、それに基づいて地方自治法ができたですね、もうそのときからすでに私はスタートしていると思うんですよ、基本的な考え方、理念というものは。ところが、それが戦後のああいう荒廃した時代で、とにかく物も何もないというときに中央が財政てこ入れしなきゃならぬということ、それから高度経済成長時代に入って、今度はもう住民の要求に何でも応ずることができるということで、この高度経済成長時代に戦後の荒廃時代の中央の力の強かったものがさらに延長されまして、そして画一的な方針がどんどんどんどんと中央から地方に押しつけられていった。そういうところから、やはり画一的な都市ができてしまった。たとえば地方の駅へ行けば駅前に同じような噴水ができているというような、一例を言えば。そういうような状況ができ上がってきてしまった。そして、この高度経済成長時代の公害とか環境破壊ということも起こった反省として、いよいよこれからは本来の地方自治の本旨に戻っていかなきゃならぬと、こういうことになってきたのではないかと私は思うわけでありまして、こういう風潮というんですか、これはやっぱり——地方の時代なんていう言葉は私は恐らく砂子田行政局長あたりが考えたことだと思うんですよ。地方からそんな地方の時代なんていう言葉はこれはもう出ないわけですね。中央からやっぱりこれ自体も与えられていくと、こういうように私は思っているわけであります。大臣から、この風潮を大いに助長をして積極的にやっていきたいと、こういうお話がありましたので、その程度にこの問題はとどめておきたいと思います。  そこで第二番目、具体的にお伺いをするんですが、大臣も御承知のように、毎年予算の編成期になりますと、地方団体の代表がわんさと中央に押しかけてくる、そして陳情合戦が繰り広げられる、こういうことですね。この現状をどのように大臣は思っておられますか。これはいいことだと思うのか、悪いことだと思うのか。端的にお答えをいただきたいんです。
  175. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) いいか悪いかと申し上げますと、地方の人に怒られてしまうんですが、私は、これはまあ常日ごろ余りありがたく思っていない方でございまして、できるだけこういう風潮が少なくなっていくことを望むものでございます。そのためには、補助金その他政府に働きかけるいろんな運動で、同じ件で一人の人が何回も出てくる、一カ月、二カ月以内にもう数えても大変な回数出てくるんですが、こういう点は、時間ももったいないし、経費の点でも大変地方は負担になるだろうと思いますし、それから一方、補助金その他のいろんな予算獲得に関するあれも、もっと補助金なんかを束ねて、分割、分類しまして、地方の方で扱えるものは地方で扱う、どうしても国の方で扱わなきゃならないものは国で扱う、こういう区分けを積極的にしていく方が望ましい。その他いろんなことに関しましても、陳情合戦を繰り広げていくのは、受ける側でもやる方の側でも大変だろうと、もっと簡素合理化を私は主張するものでございます。
  176. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 その考え方で、本当にそういうことが考えるような方向で実現をすればいいんですが、なかなかそういう方向に行かないという、障害がたくさんあるというところが問題だと思うんです。  昨年秋の行革国会のときにわが党が要求をいたしまして行革国会に提出された資料によりますと、五十五年度だけを見ても、各省庁を訪ねた陳情の件数、合計五万六千百二十九件あるんですね。これは各省庁の受付を通した数でありまして、受付を通さないで直接議員のところに行ったり各省庁に飛び込んでいったりする者の数を合わせると、私はこの十倍くらいあるというように指摘をしたことがあるんですが、これは実に異常だと思うんですね。予算編成期にそれだけの、五十万近くの人間が来るわけですから。そして各政党にも陳情に行きますからね、大変な実態だと思うんです。この風潮を少なくしていきたい、そのためには補助金や何かをできるだけそういうことのないように整理をしたいと、こういうわけです。  もう一つ事例を挙げますと、これはある県の事例の一つなんですが、たとえば公共事業をやる場合には国の承認がどうしても必要ですね。そして膨大な資料を添えて要求をしなきゃならぬ、それから事業を実施した場合に実施の計画と報告もしなきゃならぬ、事業を変更しようとすればまた変更計画も出さなきゃならぬ。こういうことで、国との協議回数が物すごく多いわけですね。これはある県の土木部関係だけですけれども、事業費決算額五百八十億七千百万円ということなんですが、予算要求、協議、実施認可、変更認可、この上京回数二百二十四回、上京延べ人員二千三十二人と、こうなっているんです。土木部だけでこれですね。だから、各県にとってはそのほかいろいろな部があるわけですから、それが同じように上京して国と協議をやっているわけですね。まさに大変なことだと思うんですよ。膨大な書類をつくって、そして膨大な人員をかけて、そして上京をして協議をしているということですね。これが国と県との関係。県と市町村との関係はまた同じようだと思うんですよ。まさに大変なむだが行われていると、こういうことなんです。  いま大臣は、これらの実態についてもう少しやっぱり改善したいものだと、こう言うんですが、では、この実態を改善する手だてというんですかね、それが一体どこにあるのかどうか、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  177. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) これは、陳情に来る人の方は喜んで来る人も中にはいるわけなんで、これをまるっきりばっさりやるというのはなかなかむずかしいかもしれないんですが、これは国の出先機関とか、それから地方だけじゃとてもできないようなこととか、いろんな種類の仕事をやる機関が入り組んでしまっているんでこういうことになるんだろうと思います。それから、同じ役所の中でも行く場所が違うと、全部あれの書類とかいろいろなもの、認可の様式とか、そういうものが違ってくるんで、こういう点でも、きょう行ったりまたあさって同じ役所の中に行かなきゃいけないとか、役所の中でも何カ所か回らなければならないとか、そういうなかなかややこしいことがいろいろ入り組んでおりますので、それが実はいまの言う行政の改革の大きなポイントになっているわけでございます。これは先ほども申し上げたように、行政改革といって、どこそこを合理化しろ、簡素化しろと、まあ臨調あたりからもいろいろ出てくるのでございますが、さて、ひとつ自治省がこれを受けて仮にやったといたしますと、それに関連するいろんな役所が無数にあるわけでございまして、ほかのいろんな関係官庁とのあつれきというのも大変これははなはだしいものがあります。表面は穏やかだけれども、底を流れているものはなかなか各官庁とも目を光らせていまして厳しいものがあるので、さあこれをどう受けてやっていくか。自治省がひとりで孤軍奮闘でやっていってもなかなか効果は上がってこない。これは全体的な協力と話し合い、それから根回し、夜討ち朝駆けのようないろんな苦労があると思います。これを私はけさの行政改革推進本部の会合の中で発言いたしまして、ほかの各閣僚その他の人たちに決意を問いただしたようなわけでございます。そういうことで、口でべらべら私が答弁しているよりも、実際の実情というものは大変、非常に困難なむずかしい実情があるということを御理解いただきたいと思います。
  178. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、時間がありませんので飛ばしますけれども、国庫支出金というのがあるわけですね。この中には国庫負担金、国庫補助金、国庫委託金と、先ほど岩上先生も御指摘があったんですが、この国庫支出金というものの存在理由ですね。これは大臣じゃなくてもいいんですが、お答えをいただきたいんです。この国庫支出金というものが何ゆえに存在をしているのか、その存在理由をお伺いいたします。
  179. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) いまもお話のございましたように、国庫支出金には負担金と補助金と委託費というのがあるわけでございます。負担金については、これは端的に申しまして国の責務がある、国と地方が責務を分から合う形で負担し合うものでございますからそれなりで意義がございますし、補助金としては、これは国の必要性から奨励的に出していたり、あるいはまた地方の財政援助的な形で出すわけでございまして、それぞれに意味があるわけでございますが、一番代表的なものとして見ればやはり国庫負担金だと思うのでございますが、これが義務教育費なり生活保護費、あるいは児童手当等の社会保障関係費、あるいはまた公共事業ということで非常に大きな額を占めておるわけでございます。これは国、地方の相互の利害に関係のある事務に関して円滑な実施を図り、あるいは全国的に一定の行政水準を維持するということ、あるいは道路、港湾、河川等主要な公共施設について国民経済に適合するように総合的に樹立された計画に従って全国的にその整備を促進するというところに意味があり、それがまた役割りであるというふうに考えておるわけでございます。
  180. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 地方財政法第九条というものでは、地方団体が何かをやる場合にはその金額を全額負担をしてやりなさいと、こう書いてあるんですが、第十条の二項に列挙されている国庫負担金の問題は、この地方団体の全額負担の原則から例外として設けられていると思うのですね。言うならば、どういうことを言いたいかというと、この第十条二項に列挙されている国庫負担金というものは、本来地方団体の主体性が尊重されるべき性格を持ったものではないかと、こういうように理解をしておるんですが、その点はどうでしょうか。
  181. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 十条にございますように、地方公共団体または地方公共団体の機関が法令に基づいて実施すべく義務づけられておるという仕事でございますから、地方団体も当然責任を持つわけでございますけれども、しかし、事柄が国と地方団体の相互の利害に関係がある事務でございますから、その円滑な運営を期するために、国が進んで経費を負担する必要があるというものでございます。国も責務がございますが、地方団体としても当然責務があるものでございます。
  182. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 私は、例外として設けられたもの自体はやはり地方団体の主体性が尊重さるべき性格だと思うんですよ。  そこで大臣にお伺いをするんですが、これらの本来地方が自主性を持って主体的に使われるという性質のものにもかかわらず、いまこの国庫負担金については国の関与が一々行われて細かいところまでチェックされる、こういう形になっておるわけですね。やはり地方の自主性というものはここから阻害をされているわけですよ。先ほどからもずっと議論がありましたけれども、そういう実態になっているわけですね。本来地方団体の主体性が尊重されるということになれば、そんな細かいところまで一々チェックされる必要はないと思うんですよね。むしろこれらの金についてはやはり一括地方に交付して、もちろん使い方は全国的な総合的な見地に立って、それに外れるようなことは困りますけれども、そういう制約はもちろんありますが、そういうものを一括して交付して、後は地方自治体の裁量によってこの金を使っていくということで相当整理されてくると思うんですよ。言うならば、材料は国が与えますよ、しかし料理は地方でやりなさいと、こういうことでいいと思うんですね。もうすでに戦後荒廃した時代から高度経済成長時代を経て、やはり地方の力もかなり私はできてきたと思うんですよ。したがって、曲がり角だと、こういうことですから、そのできてきたこのような基盤を背景にしていまこそそういうところに踏み切る、このことによっていまのような陳情合戦、それで交付の申請に膨大な人員をかけて膨大な資料をつくらなきゃならぬという手間も省ける、こういうことで、私が最初に申し上げました弊害というもの——大臣もその弊害を認められて何とかしなきゃならぬと、こう言われておるわけですが、そのことが解決されるのではないか、こういうように思いますし、このこと自体はもう地方団体が何回も要望を出しているんですよ。ほとんどの地方団体がそうしてほしいという、これは地方団体の世論ですね。やはり世論に政治がこたえていく、それが大臣の、それこそそれを推進するというのが大臣の最大の任務ではないかと、こう思うんですが、その点の御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  183. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) おっしゃる御趣旨よくわかるので、私は俗な言い方をすると、分担金は国と地方の割り勘金である、それから補助金というのは、国が呼び水、誘い水を出して、これはいい仕事だからおやりなさいというふうな性格の呼び水、誘い水に相当するお金であると、そういうふうに思って、それはまあ出発点は当然そうなんですが、こういうふうに補助金なんかが、われわれ種類を見ていましても、とてもなかなか全部覚え切れるわけではないし、名称と内容がいろいろ千差万別で異なっておりまして、これはよほどこっちも頭が悪くなったのかなと思うくらい補助金の種類というのは多いのでございますが、これはおっしゃるように、何とかもっと統一してまとめて、国の分と地方でやれるようなもの、これを区分できないものか、そして地方には一括してというような考え方もあるわけでございます。  それで、御指摘のように、公共事業関係の負担金を廃止して第二交付税として一括交付してはどうかという御趣旨、よくわかるのでございますが、現実面になりますと、これは国と地方の役割り分担の問題、それから道路とか河川の整備とか、国の政策を実現するという国庫負担金制度の意義を大きくいろいろ変革していくようなことにもなるので、これは別に私どもは反対というのじゃないんですが、国のいまある制度の改革と大きく関係してきますので、よほど慎重に対処する必要があると思います。  私どもの方は、やはり負担金も補助金の弊害も、おっしゃられるようないろいろなめんどうくさい弊害がありますのでこれを除去するのでございますが、この手続をどういうふうに進めるか、簡素化、統合メニュー化、総合補助金の導入などを考えながら、これらを積極的に進めていくようにしていく所存でございますが、御指摘の御意見も大変参考にさせていただいて極力積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  184. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 初めてのことでもあり、この際委員長として特に発言いたします。  両日にわたる審議の過程における各委員の質疑に対し検討を約束された事項につきましては、政府側において十分な対応をされるよう特に要望いたします。  これをもって昭和五十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算警察庁所管自治省所管及び公営企業金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査の報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十七分散会