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1982-02-18 第96回国会 参議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月十八日(木曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————    委員異動  二月十七日     辞任         補欠選任     大河原太一郎君     福田 宏一君  二月十八日     辞任         補欠選任      江藤  智君     宮澤  弘君      亀長 友義君     高木 正明君      小林 国司君    大河原太一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上條 勝久君     理 事                 名尾 良孝君                 志苫  裕君                 伊藤 郁男君     委 員                 岩上 二郎君                大河原太一郎君                 加藤 武徳君                 金井 元彦君                 後藤 正夫君                 斎藤 十朗君                 高木 正明君                 福田 宏一君                 宮澤  弘君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 山田  譲君                 和泉 照雄君                 大川 清幸君                 神谷信之助君                 美濃部亮吉君    国務大臣        自 治 大 臣  世耕 政隆君    政府委員        自治政務次官   谷  洋一君        自治大臣官房審        議官       小林 悦夫君        自治大臣官房審        議官       矢野浩一郎君        自治省行政局長  砂子田 隆君        自治省行政局公        務員部長     大嶋  孝君        自治省財政局長  土屋 佳照君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁長官    石見 隆三君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        大蔵省主計局主        計官       八木橋惇夫君        大蔵省銀行局税        制第三課長    真鍋 光広君        大蔵省銀行局保        険部保険第二課        長        松田 篤之君        厚生省環境衛生        局指導課長    田中 治彦君        通商産業省立地        公害局工業再配        置課長      小林  惇君        運輸大臣官房観        光部整備課長   高橋 克彦君        労働省労政局労        働法規課長    齋藤 邦彦君        労働省労働基準        局監督課長    岡部 晃三君        建設省住宅局建        築物防災対策室        長        梅野捷一郎君        消防庁技術監理        官        渡辺 彰夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十七日、大河原太一郎君が委員辞任され、その補欠として福田宏一君が選任されました。  また、本日、江藤智君が委員辞任され、その補欠として宮澤弘君が選任されました。     —————————————
  3. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明につきましては、先回の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 山田譲

    山田譲君 最初に、この法案そのものについてお尋ねをしたいと思います。  まず、この法律案によりますと、地方交付税総額を確保するために特別会計借入金を四百三十九億六千八百万円増額するということになっておりまして、そして、その借入金償還額のうちの百五十四億八千八百万円は十分の十に相当する額、残余の額についてはその二分の一に相当する額を後年度において負担するというふうなことになっておりますけれども、どうして二分の一しか国がめんどうを見ないのか、こういうことについてまずお尋ねしてみたいと思います。
  5. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) ただいまお尋ねのございましたような状況になっておるわけでございますが、いわゆる政策減税分につきましては国の政策に基づく特別の措置であるということにかんがみまして、五十二、五十三年度の戻し減税の場合と同じように、全額国負担をするということにしたわけでございます。しかしながら、自然減収分に対応する交付税特別会計借入分につきましては、その負担関係諸般状況を考慮して決定さるべきものであると考えておりまして、今回は、御承知のように昭和五十三年度制度改正によりまして、財源不足に係る借入金についての国の二分の一負担ルールというものがすでにできておるという事情もございますし、また、現下の国の財政が御承知のようにきわめて厳しい状況にあるということもございまして、そういったことを勘案してその二分の一を地方負担するということにしたものでございまして、全般的に見てやむを得ない措置であるというふうに考えておるわけでございます。
  6. 山田譲

    山田譲君 従来からやっていることのようでありますから、それなりに意味はあると思うんですけれども、とりわけことしのような場合は、国の財政見通しといいますか、そういう問題でかなり食い違っている。いわば国の失政といいますか、そういう問題もかなり原因しているんじゃないかというふうに思います。  そう思いますと、これをむしろ全額国負担においてやるべきじゃないか、国の責任じゃないかというふうに考えられるわけでありますけれども自治省としては、その辺について国に相当——国といいますか、自治省の立場からそういった意味での主張をなさっているかどうかということについてお伺いしたいと思うんです。
  7. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 申し上げるまでもないことでございますが、国税三税のいわゆる自然減収というのは、経済情勢変化等によって生じたものでございまして、これに伴う地方交付税減額分をどのように措置するかということにつきましては、諸般状況を総合的に勘案して判断をすべきものだと考えております。  当初決定されました総額は私どもとしてはどうしても確保する必要があるということで、交付税特別会計借り入れによりまして措置するということにしたわけでございますが、その最終的な負担関係につきましては、繰り返しになるわけでございますけれども、五十三年度制度改正によって国の二分の一負担ルールというものがすでに設けられて、そういう適用も今日まであるということと、国の財政が大変厳しい状況にある、そういったことを勘案して、二分の一は地方負担をするということにしたわけでございまして、たとえて申しますならば、当初からそういった財源不足、三税が少なかったという前提に立つなら、それだけ財源不足の額も多かったわけでありましょうし、そのときに補てんをどうするかということが議論されたとすれば、結果的には借り入れでやったと思いますし、そういった場合でも当初から二分の一負担というルールで来ております。  そういったこと等もありまして、いろいろ私どもとしても検討はしたわけでございますけれども経済情勢変化によって税収見込みはある程度ずれのあることもこれは予想されるわけでございまして、今回、いろいろな状況を見て二分の一負担ということはやむを得ないだろうというふうに判断をしたわけでございます。
  8. 山田譲

    山田譲君 従来からのルールもあるようでありますから、これについてこれ以上申し上げませんけれども、特に今年度のような場合はかなり政府責任が重いというふうに私は考えるわけで、そうなった場合には、いつもルールだからというので簡単に二分の一ということで満足されずに、やはりそこら辺を十分主張していただいて地方財政のためになるようにひとつがんばっていただきたい、こういうふうに思います。  その次にお伺いしたいのは、五十六年度地方税収入見通しはいまどうなっているか、その点をお伺いしたいと思います。
  9. 関根則之

    政府委員関根則之君) 地方税収入状況でございますが、十二月末の都道府県収入状況実績が報告が集計されておりますので、それによって眺めてみますと、法人関係税におきまして伸び悩みが見られております、私ども大変心配をしているところでございますが、反面、自動車関係税等におきまして計画期待伸び率を上回った収入実績が上がっておるというようなこともございますので、地方税全体といたしましては当初計画額をほぼ達成できるのではないかというふうに期待をしながら推移を慎重に見守っておるというのが現状でございます。
  10. 山田譲

    山田譲君 法人関係税伸び悩んでいるというお話でしたけれども、大体数字にしてどのくらいの見当になっているんですか。
  11. 関根則之

    政府委員関根則之君) 都道府県の十二月末の実績でございますと、計画どおり達成をいたしますためには、たとえば法人事業税におきましては対前年度比一七・八%の伸びが必要なわけでございますが、十二月末ではそれが四・六%という伸びしか示しておりませんので、一三ポイントほどの伸び率での計画を下回るという状況になっておるわけです。ただ、これを金額にすぐに換算をして云々というのは非常に手続的にもめんどうでございますし、必ずしも一律的な正確な数字を出すということができませんので、私どもそういうことを公式的に幾ら幾らという数字で申し上げることは御遠慮さしていただいておる状況でございます。
  12. 山田譲

    山田譲君 この一七・八%に対して四・六%しかいっていないということは、もうこれはかなり落ち込みがひどいと思うんですけれども、この理由はどこにあるというふうに考えておられますか。
  13. 関根則之

    政府委員関根則之君) これは、国税地方税を通しての全般的な問題だと思いますけれども、やはり基本的には景気回復が当初期待をいたしていたほど順調な回復過程をたどっていないということだと思います。それからもう一つ、一方において名目経済成長率が落ち込んでおる、これは先ほど景気回復のおくれというものを別な意味で申し上げていることになるのかもしれませんが、名目経済成長率が七ポイントに下方修正されておるというような状況があると思います。それはまたどうしてそうなったのかということになりますと、経済活動が停滞をしておったということとともに、物価上昇率期待よりもさらに下がっておった、物価予想以上に安定したということがその原因となっておるというふうに考えております。
  14. 山田譲

    山田譲君 いろんな考え方ができると思うけれども物価の安定のために法人関係税が下がっているという考え方はちょっと私どもはとれないんですね。だから、何か税が取れないのは物価のせいのような考え方されたんじゃ困る。やっぱり一般的に経済活動が非常に衰えている、思うように進んでいない、こういうことの結果だと思うんですが、これが今後の見通しとしてはどうなりますか。見通しはありますか。
  15. 関根則之

    政府委員関根則之君) 国税の場合と違いまして地方税の場合には、特に法人関係税につきましては、一月末の決算法人だけが五十六年度税収として入ってくる。国税の場合には、二月、三月決算期法人につきましても今年度分の税収として入るわけです。その部分のウエートが非常に国税の場合にはまだ相当高いものですから、三月期決算法人相当大きな上向きを示す場合にはそこで回復の余力が相当あるということが言えると思いますが、地方税の場合には、先ほど申し上げましたような事情でございますので、私どもとしては法人関係税については大変心配をしているわけです。ただ、幸いなことに、ほかの税目におきまして比較的順調な伸びを示しているもの、そういう税目もございますので、そういうものに期待をしておる、こういう状況でございます。
  16. 山田譲

    山田譲君 大蔵省の方、来ていますね。——大蔵省の方にお伺いしたいんですが、法人税収入、これの見通しはどんなふうになっているかお聞かせいただきたいと思います。
  17. 真鍋光広

    説明員真鍋光広君) 法人税収の動向につきましては、これまで判明しております十二月末税収段階で見ますと、累計の前年比はほぼ前年並みということにとどまっております。したがいまして、進捗割合も前年に比べまして六・六ポイント下回っておるというふうな状況になっております。これはどういうことが起こったかといいますと、先ほど税務局長から御説明のございました事情、このようなことであろうかと思っております。しかしながら、国税につきましては、先ほどお話がありましたように、二月、三月に納税義務が確定するというふうなもの、納税義務が成立するといったものも、五月末までに入るものは税収として当年度に入ってまいりますので、そういった事情がございます。  経済情勢は、日銀短観等を見ましても、下期にはかなり法人企業経常利益も上がってくるというふうな見通しもございます。それから、法人税決算期によりまして特定業種に偏るというふうな面もございます。さらにまた、当年度特殊要因でございますけれども、五十五年度三月期決算法人延納割合が通例に比べて非常に低かったというふうなこともございまして、これが当年度税収を減少さしておる、したがいましてこのように実際の伸びを低めておるというふうな特殊な要因もございます。一概にこれまでの実績だけをもって当年度法人税収を断ずるというわけにはいかないと思っております。  そこで、今後の見通してございますけれども鉱工業生産の最近の推移を見てみますと、四−六は非常に低かったのでございますけれども、七−九以降次第に回復上昇傾向にあるということが指摘できますし、先ほど申し上げましたように、日銀短観等を見ましても、下期の経常利益は非常に強く回復するというふうな見通しもございます。また、九月、十月決算の大法人——九月だと十一月、十月決算だと十二月の税収になっておるわけでございますが、この大法人決算状況が非常によろしゅうございまして、九月決算法人については二三%の増であり、十月期については二八・四%の増というふうなことで、まあ企業収益全体も回復の兆しが見られるというふうに私ども考えておるわけでございます。  そういったことでございまして、全体としての法人税収につきましてはおおむね期待できるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  18. 山田譲

    山田譲君 かなり楽観的な見方をされているようでありますけれども、それはそれとしまして、先ほど税務局長お話にもありましたが、昨年の暮れに当初経済見通し政府の方がつくったものを自分から下方修正をされている、これが昨年の十二月に閣議了解になっているというふうなことでありますけれども、当然経済見通し下方修正した場合は、それに伴って鉱工業生産なんかの活動も低下していくということが考えられるし、それが普通だと思うんですけれども、それにもかかわらず税の方は見通しどおりにいくというふうに考えられるとすると、これは何か政府がみずから経済見通し下方修正されたのと整合性がそこにないのじゃないかというふうに考えざるを得ないんですけれども、その辺はどうでしょうかね、
  19. 真鍋光広

    説明員真鍋光広君) 御指摘のとおり、五十六年度経済見通し改定見通しては、鉱工業生産は五・三%から四・三%の伸びということで下方に修正されておるわけでございます。それで、私ども法人税収見積もりは、鉱工業生産伸び物価の相乗で大きなところは決まってくるというふうに考えて、年度当初の見通しといったものは主としてそういうところに重点を置いて見ておる。まあ資料の制約等があるので、そういうふうになるわけです。そこで、年度が進みまして実績が次第に出てくる、それから企業の業況も次第にわかってくるということになりますと、私どもとしましては、それぞれ聞き取り調査であるとか、あるいはいろんな民間経済調査等々にもよくよく留意しまして、肌身で、収益が一体どうなる、税収がどうなるだろうかということを勘案しながら、個々に積み上げてやっていくというようなこともやっておるわけでございます。  したがいまして、鉱工業生産見通しが変わる、下方に修正されるということが直に当年度法人税収数字に直結するというものではございません。先ほども申しましたように、鉱工業生産伸びも、各月ごとの足取りを見てみますと、四−六を底といたしましてその後次第に上昇傾向にあるということでございまして、私どもの聞き取り調査等を積み上げていきますと、大体当初見通し法人税収期待できるのじゃないかというふうに考えております。
  20. 山田譲

    山田譲君 まあ見通しの問題でありますから、いまここでそうであるとかそうでないとか言っても水かけ論みたいになってしまうわけですけれども、一般的に、常識的に考えてみて、生産活動が下がれば当然それに伴って法人税——それはそのとおりに一%下がるかどうかは別としまして、下がるであろうということが予想される。これはもう普通の常識の考えじゃないかと思うんですけれども、いろいろおっしゃったのを聞いていると、必ずしもそうではないんだと、どちらかというと非常に楽観的なお見通しのようであります。それはそれで、これからもいろいろ問題が出てくると思いますからこの辺でやめますけれども。  次に、自治省にお伺いしたいのは、もし法人税予想より下回ったというふうな場合に、当然これは特別会計への繰入金も足りなくなってくるというふうに考えられるわけですけれども、この辺はどんなものでしょうか、
  21. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 今回の補正予算におきます税収見込み額は、大蔵省において、もろもろの要素を前提にして、できる限り適切な税収見積もりを行われた結果のものであると承知をしておるわけでございまして、ただいまも説明がございました、私どもとしてもいろいろ関心はございますけれども見込みどおり税収が確保されることを期待しておるわけでございます。  なお、仮にという御質問でございますが、一応予算ではその見込まれた額に対応する交付税額というのは組んであるわけでございますから、本年度についてはその異動によって交付税がどうなるということはない。特別補正でも組まれない限りはその点は関係ないわけでございます。  なお、将来の問題としてのお尋ねも含んでおったと存じますが、これは仮にの話でございますが、若干異動があって減収が生ずることがあるかどうかわかりませんけれども、そういう場合でも私どもとしては、過去の実例でもごらんいただきますように、地方財政に支障のないような適切な対処をしてまいりたいと考えております。
  22. 山田譲

    山田譲君 それでは別の話で、減収補てん債というのがあるわけですが、これの発行状況、あるいは希望状況といいますか、これはいまどうなっておりますか。  それからもう一つ、三月末までの見通しはどうか、これについての考え方、これについてお伺いしたいと思います。
  23. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 法人関係税が当初見込まれた額よりも減収となる団体が出てくると存じますが、そういう場合には減収補てん債発行希望しておる団体もございます。ただ、最終的な税収見込みが明らかでない段階でございますので、具体的な数字をここでお示しするに至っていないわけでございます。  この点につきまして、私どもとしても近く調査を行うということになっておりまして、調査の結果を踏まえてそれぞれの団体財政状況等を勘案の上、必要と認められる団体につきましては、例年どおり三月末をめどにいたしまして適切に対処をするということを考えております。
  24. 山田譲

    山田譲君 もうすでにそういう希望といいますか、そういうものが出ている都道府県あるいは自治体があると思うんですけれども、もちろん現段階で正確な数字をお聞きするわけにはいかないと思いますけれども、大体傾向としてはどんなことになっていますか。
  25. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 率直に申し上げまして、財政局財政担当調査官がおりますが、財務調査官のところへはいろんな団体が見えておるようでございまして、いろんなところで減収補てん債発行希望するということが言われておるようでございます。私どもも、まだいま申し上げたような段階でございますから最終的には申せませんけれども、いろいろ希望を聞くと、都道府県だけでも千億は超えておるような感じでございます、  ただいま申しましたように三月ぎりぎりまでに税収がどうなるかということとの兼ね合いがございますから、まことに非公式の話でございますから、それを私がいまここで公式に申し上げるわけにはちょっとまいりませんが、いま申し上げたような感じは受けております。
  26. 山田譲

    山田譲君 そういうことかと思いますが、私は、先ほど傾向と申し上げたのは、去年のちょうどいまごろに比べて、都道府県からの希望、要望というふうなものが多くなっているか少なくなっているか、それくらいのことはわかるでしょう。
  27. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) もう去年とは全然事情が異なりまして、ことしは大変多いというふうに感じておるわけでございます。
  28. 山田譲

    山田譲君 その次に移りますが、地方単独事業といいますか、これを推進させていく 保持に公共事業がなかなか思うようにいかない、従来と同じだというふうになりますと、景気浮揚策一つとしても地方単独事業を推進していかなければならないと、こういうふうなお考え自治省は持っておられると思うんですけれども、その内容をちょっとお伺いしたいと思います。
  29. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 五十七年度地方財政につきましては、私どもとしては、国と同様に歳出全般にわたって極力抑制基調に立って運営すべきものだと考えておりますが、そういった状況のもとにおきましても、地方単独事業費につきましては社会資本計画的な整備地域経済の安定的な発展に資するということで、財源の重点的な配分を行い、その増額を図る必要があるというふうに考えておるわけでございまして、このために五十七年度地方財政計画におきましては、地方単独事業費を前年度に比べて八・五%増額するということにしておるわけでございまして、この地方財政計画に即しまして地方団体に対して所要の財源措置を講じていく考えでございます。  同時に、私どもとしては、地方団体に対して一般行政経費等の節減による財源捻出等にも努めながら、地方単独事業について財源の重点的な配分を行いますとともに、財政状況等に応じた地方債の適切な活用も図っていただきたいと思っております、そういったことで積極的な単独事業の実施に努められますように指導をしてまいる考えでございます。
  30. 山田譲

    山田譲君 そういう積極的に指導していかれるということのようですけれども、現実に各地方公共団体単独事業をやりましょうというふうな気持ちになっているかどうか、そういう意欲を自治体が現在持っているかどうかということについては、私どもはそうでないんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
  31. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 御承知のような国の財政状況のもとで、公共事業あたりも引き続いてずっと横ばいにきておるといった状況でございまして、特に私ども地域経済というものに大変懸念を持っておるわけでございます。そういうこともございましたので、大変抑制的な基調のもとではございますが、単独事業だけは何とか伸ばしたいということで、五十六年度も八%伸ばすということで財政計画では組んだわけでございます。  ただ、従来から見ておっても、なかなか財源難の中でいろいろな仕事もやりたいということになりますと、まあつい単独事業の方が薄くなっておるのじゃないかという感じも持っておりました。しかし、五十六年度状況を見ますと、最終的なものはまだつかんではおりませんけれども、大体公共事業が横ばいできたこともございまして、五十六年度予算ではかなり地方団体予算に組んでおる額そのものを伸ばしております。だから、かなり力を入れてきておるなと思っておりました。そういったことで、先ほど申し上げましたような理由によって五十七年度も引き続き八・五%伸ばすということにしております。  これをどのようにして推進をしていくかということになりますと、いろいろ問題あろうかと思います。しかし、全般的には一般財源のシェアも高まっておりますし、地方債の活用、それから行政経費の節減合理化による財源捻出等々を含めまして、私どもとしては強く地方団体単独事業への熱意というものをかき立てておるわけでございますが、全般的に地方団体に対してもできるだけ所要の財源措置を講じて実効あらしめたいというふうに考えております。
  32. 山田譲

    山田譲君 単独事業を一生懸命やろうとする地方自治体に対して交付税を傾斜配分をするというふうなこともちょっと聞いているわけですけれども、そういうことはあるのかないのか、それをお伺いしたいと思うんです。
  33. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 私どもとしては、住民生活に直結する公共施設等の計画的な整備、そのことによってまた地域経済の安定的な発展に資するということから、地方単独事業につきましては、普通交付税の算定におきましても重点的傾斜的な配分を行う必要があるのじゃないかということで、その是非あるいは算定方法等について目下検討しておることは事実でございます。具体的な算定方法についてはまだ成案は得ておりませんが、平均的な水準をある程度超えて地方単独事業を実施した団体に対しては、その実施状況等を勘案して包括的な割り増し算入を行うことができないかどうか、そういった点について検討をしておるところでございまして、まだ結論は出しておりません。
  34. 山田譲

    山田譲君 では、まだ結論は出ていないようですけれども、そのために新しい測定単位を検討していくというふうなこともそのいまおっしゃった話の中に当然含まれるというふうに考えていいですか。
  35. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 具体的にまだどのようなかっこうにするか、結論を出しているわけじゃございませんが、いまの制度の基本的な枠組みの中でいまのようなことを考えておりますから、新しい項目を起こすかどうか、そこらも含めて検討をいたしたいと思っております、
  36. 山田譲

    山田譲君 確かに、地方単独事業を推進させるためにいろんな手だてを講ずるということは非常に必要なことであるし、結構なことだと思うんですけれども、方法として非常にむずかしさがある。地方交付税ということになりますと、交付税の趣旨からいって、やったところだけに配ってやるというふうなことはなかなかむずかしいと思うんですけれども、ひとつそのためにいろいろ知恵を出していただきたい、こういうふうに考えます。  それからその次に、最近地方交付税の率を引き下げる、地方交付税引き下げ論というふうなものが臨調なんかを通じて出ているというふうに聞いているわけでありますけれども、それに対する自治省考え方、それと、現在のこの三二%というものは妥当と考えているかどうかということについてお伺いしたいと思います。
  37. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) お答えいたしたいと思います。  ただいまの御質問に対しまして、大蔵当局の方からは三二%の配分を下げるというふうなことは毛頭聞いておりません。しかしながら、新聞報道等で私どももそういうことは知っておるわけでございますけれども、現在、五十年度以来八年ぶりの財政均衡ということは、そういう地方財政になっておることはわかるわけでございますけれども、一方、地方債三十四兆円、それから交付税特別会計が八兆円というふうな、四十二兆円に余る巨額の借財をしておることも事実でございますし、そういう点を考えてみますと、自治省といたしましては三二%のものを引き下げるということは毛頭考えておりません。
  38. 山田譲

    山田譲君 では、引き下げは考えていないけれども、現在の三二%を上げるということも考えていないということですか。
  39. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) いまのところその問題につきましては、国の財政も非常に厳しい段階でございますので、上げることにつきましても考えていないというのが現状でございます。
  40. 山田譲

    山田譲君 現在の三二%は一応当分の間妥当な線としてこれを守っていく、下げさせることもしないし、上げることも実際問題としてむずかしいし、そういうことは考えていない、こういうことでございますね。
  41. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) この係数年来の財源不足の中で、交付税法の第六条の三第二項の規定の趣旨もございまして、私どもとしては、交付税率の引き上げ等についてもいういろ大蔵当局とも相談をしてまいったわけでございますが、ただ、国の財政も大変厳しい状況でございまして、そういった中で、国と地方との財源配分の基本的な方式である交付税率をすぐ動かすということについてはいろいろ問題もございましたので、借入方式等を導入し、その二分の一は国が負担をするといった方式などを入れまして、今日までやってまいりました。  五十七年度は収支の均衡というものが一応単年度としては図られたかっこうになっておりまして、財源不足というものも出ませんでしたので、交付税率について引き上げるということを特別に申し入れなかったわけでございますが、ただ、この収支の均衡も、実はいわゆる三二%の法定分だけでは不足であったために、約千億というものを積み上げてそして収支均衡をとったということで、いわば三二%では足りなかったということも言えるわけでございますので、三二%を引き下げるとかどうかといった議論にはとうてい私どもとしては耳を傾けるわけにはまいらないのでありますけれども、さりとて、いま申し上げたような状況の中で、ここでまた三二%を上げるかどうかという議論は、現段階においてはまだ出すような状況でもないということも御理解願いたいと思うのでございます。
  42. 山田譲

    山田譲君 それでは、次の問題に移りたいと思います。  これは新聞なんかで報道されているので皆さん御承知だと思いますけれども、東京都が人事委員会の勧告どおりにベースアップを実施したと、こういう問題でございます。これに対して、これも新聞の報道しか知りませんが、一月の二十七日に東京都の野村副知事を呼んで、自治省指導に従った給与改定を行えと、こういうふうに言ったという話が報道をされておりますけれども、これは本当ですか。
  43. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 野村副知事に自治省においでを願いまして、東京都の給与改定に当たってのいろいろな問題点、その点について聴取をしたことは事実であります。
  44. 山田譲

    山田譲君 それは、どういう内容を話をされたんですか。
  45. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 今回の国の給与改定に当たりましては、御案内のとおり大変国の財政が厳しい、そういう中で、国としても第二臨調からの答申もございましたし、公務員全体の給与の抑制基調というのが示されておるということ、あるいは国民的な世論、そういうものを考えまして、公務員の給与というのをある程度やはり抑制をしなきゃならぬということに閣議でも決まったわけであります。地方公務員につきましても、国の公務員と同様の立場をとるというのが従来からの立場でございますし、そういう形で指導をしておりますので、各県ともそれに応じた措置をとっていただいておりますので、東京都につきまして、どういう事情がそれに従えなかったということについての事実をお聞きをしたわけでございます。
  46. 山田譲

    山田譲君 東京都はどういう返事をされたわけですか、それに対して。
  47. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 東京都が申しますのは、要するに人事委員会の勧告どおりの給与改定をするんだということでございまして、そのほかのことについては余り申さなかったというふうに記憶しております。
  48. 山田譲

    山田譲君 それで、これも新聞報道でありますけれども、この二十九日に自治大臣が記者会見をされて、都のやり方はけしからぬというふうな非難をしたというふうに伝えられておりますけれども、それは本当かどうか。そして、その内容は新聞報道どおりのものであるかどうかということをお聞かせ願いたいと思うんです。
  49. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 大臣が新聞記者とどういうお話をなさったのか、私そばにおりませんのでつまびらかにはしておりません。新聞の報道によりますとそういうことが書かれておりますし、この点は大臣にお聞きをしないと私もよくわかりませんが、雑談の中でそういうお話があったとは聞いております。
  50. 山田譲

    山田譲君 そうすると、局長はそこにいなかったから内容はわからないという話でございます。しかし、雑談の中にしろそれに近いようなお話が恐らくあったと思うんです。  私は思うに、この地方公務員の給与を決めるということは、恐らくその団体の固有事務じゃないかというふうに思うんですよね、これは条例で決めることだし。そうすると、東京都の住民が条例で決めて、しかもこれはただでたらめに決めたんじゃなくて、人事委員会が勧告をしてそのとおりに議会で議決して条例ができた、こういうことに対して、それに対して国の立場からとやかくこれに言うということは、そもそも地方自治に対する重大な干渉じゃないかというふうに思わざるを得ないんですが、この点どうでしょうか。
  51. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) おっしゃられますように、人事委員会の勧告を尊重するということは、私もそれは当然であろうと思っております。ただ、先ほど申し上げましたように、国の財政事情も大変厳しい、東京都の財政も御案内のように大変厳しい、そのために国もいろいろな措置をしながら東京都の財政再建が一日も早くかなうように努力をいたしている中でもあります。そういう中におきまして、公務員全体に対する、給与に対する批判と申しますか、特に地方公務員に対する、給与に対する批判といつのは非常に厳しいものが私はあると思っております。そういうことを総合的に考えますと、やはり地方におきましてもそれなりに自律的な機能による自粛行為というものがあってしかるべきではないか、そう考えております。  そういう点に立ちまして今回の問題につきまして自治省が技術的な助言をするということがあながち法律に違反したことではないと思っておりますし、技術的助言と申しましても、昔のように権力的にわたる干渉をしているわけでもありませんし、それなりに人事行政がうまくいくようにこちらでもやはり指導をしていくのは自治省の立場としても当然であろうか、こう思っております。
  52. 山田譲

    山田譲君 いや、私は何も自治省がいろいろ言ったことを違法だなんて言いませんけれども、むしろ逆に、東京都のやったことが違法だというふうな言い方をされているのじゃないかというふうに感ずるんですね。  そうすると、東京都のやったことは少なくとも違法ではないということははっきりしているわけですか。
  53. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いずれ給与の問題につきましては、御案内のとおり給与条例主義でございますから、議会で最終的にこれは決定をされる、それ自身がそういうふうになっていればそれは別に違法なことでも何でもありませんし、当然に法手続によってやられることでございますから、それなりのことであろうと思っております。
  54. 山田譲

    山田譲君 だから、人事委員会の勧告どおりに東京都は判断をして、しかも議会にかけて条例をつくって決めたそのベースアップ、これに対して、国が一体どういう理由でいろいろ干渉をするのか。それこそ地方自治の侵害じゃないかと、まあ何回も繰り返して申しわけないけれども、思わざるを得ないんです。  それで、自治省が言っておられる国の指導ということで文書になっているのが、恐らくこの「地方公務員の給与に関する個別の助言指導について」という、五十六年十一月二十八日に事務次官の通達が出ておりますけれども、この中でいまおっしゃったようなことを言っていますが、特に、「もとより、各地方公共団体の給与のあり方は当該団体が自主的に決定すべきものであり、地方公共団体の自律機能により是正措置計画的かつ速やかに進めることが必要である。」と、こう言っていますね。いま局長も「自律」という言葉を使いましたけれども、自律というのはまさしく自分でやるということであって、よそから自律しろというふうな言い方をするのは本来的におかしいんじゃないかと思うんです。ですからこの通達を見ても、この「地方公共団体の自律機能」ということは、恐らく地方公共団体独自でもって、これは高過ぎるから下げようじゃないかとか、これは低過ぎるから少し上げてやろうじゃないかと、こういうことを地方公共団体が独自の住民の意思に基づいておのずから自律的にそうなっていくのであって、それに対してよそからいろいろ言うのは、まさしく自律機能を認めていないことになるのじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
  55. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお示しになりましたように、昨年の十一月に事務次官の通達で、給与に関する助言ということで通達を出しております。このことは臨調の中でもいろいろ指摘されておることでありますけれども、やはり全体的に見まして地方公務員の給与というのが世間一般から考えて大変高いではないかという批判があることも片っ方においては事実でございます。そういう中にあって、一体自治省というのはどういうことをやるのが一番いいのかということについてわれわれも大変悩むわけでもあります。  基本的には、地方公務員法の言うとおり、人事委員会の勧告があってそれを議会にかけられてそれを可決をしていってそれで給与が支払われていくというのが法律上の順序でもありますし、そういうことをなされるのが普通であろうと思います。しかし、先ほど申し上げましたような国全体の財政事情、あるいは地方公務員に対する給与に対する批判、そういうものを受け取りながら、やはり自治省といたしましても地方公務員の給与が余り高いということは、翻って考えてみますと、かえって今度は地方自治というものに対する不信感をあおるという部分も潜在的にあるわけでもあります。そういうことをなくしていくことがこれからの地方自治を確立していく上に大変大事なことだと思っております。  そういう点から実は個別指導なりあるいは技術的な助言なりをしているわけでありまして、これが地方自治に対するいたずらな侵害であるというふうに私たちは考えていないわけであります。
  56. 山田譲

    山田譲君 この地方公務員の給与が高いとかという話ですね、いろいろ新聞なんかで書き立てる面もないでもないです。しかし、これが高いか低いかということは、東京都の場合は東京都の住民が決めることなんですよね。住民が決めるのは何で決めるかというと、これは議会へかけて決めるよりほか決め方はないのであって、議会でもってこれでよろしいと言ったことは、東京都全体がその東京都の職員の給与としてはこれが妥当であるということで決まったものなんです。それを高いとか低いとかということをただ何となく一般の新聞が書き立てているとかなんとかそういうことで、せっかく合法的に、しかも人事委員会がこれが妥当であるといって勧告したとおりにやったことに対して、これは高いか低いかということを東京都以外の人が言うということは、これは東京都の自治に対する侵害としかとれないと私は思うんですが、どうでしょうか。
  57. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 先ほどお答えをしたことの繰り返しになりますが、やはり全体的に見まして地方公務員の給与というのが批判をされていることは事実でもあります。そういう見方に立って、地方自治というものを住民の信頼の中に確立をしていくということから申し上げますと、なかなか住民が、個人個人が都庁に行って給与についてどうだこうだと言うのは大変言いづらいことでもありましょうし、言わないからだから正しいんだという理屈にもなかなかなりませんでしょうし、やはり国全体の立場から考えまして、地方公務員の給与というのがどういうふうなことであるべきかということを考えることもこれまた私たちの任務でもありますから、そういう点に立って技術的な助言をしたわけでありますから、そのこと自身があながち全体的に見て非常に地方自治に対する侵害だというふうには考えていないわけであります。
  58. 山田譲

    山田譲君 それは水かけ論みたいになってつまらないのですけれども、何回も言いますように、東京都の住民の意思はどこで反映されるかといったら、これは議会でもって反映されるというふうに考えざるを得ませんわね。議会がこれでいいじゃないかと言ったことは、それはやっぱりそれなりに尊重すべきであるというふうに私は思うんですよ。それは、東京都の住民が、今度決まった条例の中身はおかしいということがあれば、それはまた新しく議会を通じて改正すべきであって、一たん合法的に決まった内容というものは、これはやっぱりそれが妥当なものなんだというふうに思わざるを得ないと私は思います。  しかも、地方公務員法のたてまえからいっても、それはある程度国の公務員に準じなければならないようなことになっているけれども、これはあくまでも国家公務員どおりにやれという意味じゃないと思うんですね。そんなことを言ったら国家公務員と全く同じに線をそろえるという話かということになっちゃう。恐らくそういうことは考えておられないと思うんですけれども、そうすると局長のおっしゃるのは国家公務員どおりにしろという話なんですか。
  59. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 私が申し上げておりますのは、御案内のとおり地公法の中では、給与というのは、要するに民間の給与なり国の給与なりあるいはその他の公共団体の給与なり、そういうものと比較、考慮して定めるべきものだというふうに法律に書いてあるわけであります。ですから、地域的に自分のところの給与を算定をしていくというのは、私はそれはそれなりに正しいことだと思っております。  ただ、そういう正しいということの中にいろいろな問題が起きてまいりまして、現実に人事委員会の勧告の中にも、単に国に準じて引き上げをするということしか言わない団体もありますし、いろんなものが現実に人事委員会の勧告の中にも示されているわけであります。しかも、そういうことを普通に考えてみますと、どう考えてみましても、国の給与よりも二割も三割も高い給与が支給されているというのは本当だろうかということはやはりわれわれは考えてみなきゃいかぬ部分も私はあると思っております。  まあ東京都が二割高いと申し上げているわけではありませんで、やはり全体的に見てそういうことが行われている団体があるというときに、国は黙ってそれを見ていていいという議論にはなかなかならないだろう、やはりそういうものが先ほど申し上げましたように人事行政を通じて住民の信頼をだんだんだんだん失わせていくという行為にもし至るとすれば、私たちが地方自治をいままで育ててまいり、あるいはこれからも民主主義の基調である地方自治というものを育てていくことに対する一つの大きな問題が提起されてくるのではないかという感じさえいたすわけであります。  そういうことから考えますと、こういう給与というものを通じて適正な運営がなされるように、あるいはそういうことを公共団体みずからが自律的に直していけるようにやはり指導をすることが自治省にとっても必要なことだと思っております。
  60. 山田譲

    山田譲君 いま局長の言われたことで、まあ言葉じりをつかまえるようで非常に悪いけれども、大変重要なことをおっしゃったというふうに思うんですね。つまり、都道府県の人事委員会が国と同じようにそのまま勧告するようなところがあると、こういうことになりますと、これはベースアップがどうとかこうとかという問題じゃなくて、都道府県ごとに人事委員会があることそのものの問題になってくるのじゃないですか。そうすると、それはあなたの論法からいくと、現在の人事委員会制度がおかしいという論法になりますよ。そう思っているのですか、
  61. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 前にもこの委員会で御質問を受けたことがございますが、私は人事委員会というのは、やはり自分のところの地域における給与というものをよく調査をされて勧告されているんだとは思います。しかし、現実にその調査をしている内容を見ていますと、さっきのことが若干言葉足らずかもしれませんが、国の給与よりも高い、民間の給与よりも高いと言いながら、なおかつ国と同じに上げろと、こういう勧告をするわけであります。これは本当に正しいことであろうか。むしろそれは人事委員会自身が自分で自滅行為に陥っていることではないのだろうかという懸念を私は表明をしたことがございます。そういうことから考えますと、そういうことがやはり地方自治への不信感を買っていくのではないか。その点に対して私たちが警告を発するということは、地方自治を育てる上にむしろ大変大事なことだとさえ思っております。
  62. 山田譲

    山田譲君 そういうことであるならば、少なくとも地方公務員法上人事委員会というものはちゃんと決まっている。そして、そういう制度があるからには、その制度が正しく運用されるように指導をすべきであろう。ですから、人事委員会不信の——局長のおっしゃるように、現在の人事委員会そのものがちゃんとしていないのだという話であれば、それは人事委員会にきちんとするようにそれこそ指導すべきであるでしょうし、あるいはまた、人事委員会制度がおかしいというならば、法律を改正して、都道府県ごとに人事委員会を置くことをやめるべきである。しかし、地方公務員法上はっきりと人事委員会というものがつくられている。そして、人事委員会は当該都道府県内の民間の給与だとかそういうものを調べて、そして、民間の給与より低ければそれを勧告するという、それは国と同じようなたてまえでやっているわけですけれども、その調査そのものがおかしいという話になりますと、これは人事委員会を信頼しないというかっこうになってくる。そうすると、人事委員会にきちっとやれということを言うのか、それとも、制度そのものがおかしいから人事委員会なんてやめてしまえという話になるのか。局長のおっしゃるのはどっちなんですか。
  63. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 私は、人事委員会がきわめて適正に運営されることを望んでいるわけであります。ですから、少なくともそういう調査というのは批判をされないようなものであってほしいと、こう思っているわけであります。  山田先生も御案内のとおり、いま日本の民間の賃金の給与水準というのは、私の記憶に間違いかなければ一一五ぐらいだと思います、しかも、これは調整手当を含んでいる額であります。とすれば、いま日本の全体のラスパイレスを見ましても、それより高くなるというのはどうしても考えられない。要するに調整手当八%を引いたとしても一〇七ぐらいのところが民間の賃金の最高になっているわけですから、全国がそれより高いということはとても私たちには想像もできないということはあると思います。そういう意味で、私は調査というものをもっとしっかりやってほしいんだということを人事委員会の会議の席上でも申し上げておりますし、いま申し上げましたのも、そういうことをちゃんと調査をしないでやっていると必ずそういうことに陥るからみんなで注意しようじゃないかということで、警告を発しながら物を申し上げているわけでございます。
  64. 山田譲

    山田譲君 余りこんなことをくどく言いたくないんですけれども、何か都道府県の人事委員会を全然信用できないような局長のお話は、私はこれはどうも納得できない、それは実際いろいろ見ていますと、確かに問題があるところがないとは言えないと思いますけれども、何か一律に、べたに、人事委員会そのもののやっていることが、調査が正確でないとかそういうことになると、これはやはり、まあ人事委員会で集まったときに局長の方からそういう指導をなさることは結構だけれども、やっぱり独立の行政委員会をそう簡単に横からいろんなことをとやかく言うことはできないはずだと思うんですよ。やっぱり都道府県が人事委員会委員をちゃんと任命して、しかるべき人を何人か任命して、その人のもとで人事委員会の機能で民間のやつを調べたということ、これはこれとして一応妥当なものだというふうに考えるのがあたりまえであって、その人事委員会が出したものをおかしいという話になりますと、これはやはりその制度そのものを否定するようなかっこうになっていくんじゃないかと、こういうふうに私は思われてなりません。しかも、全部の都道府県の人事委員会がみんなおかしいという話じゃないんでしょう、局長のおっしゃるのは。
  65. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 人事委員会の問題について、私は人事委員会という組織が要らないということを申し上げているわけでは全然ございませんで、私は、人事委員会の存在価値というのは十分に認めているつもりであります。それですから、なおかつそういうものが適正に運営されることが望ましいという意味から申し上げているわけであります。やはりこの人事委員会の中でいろいろ私たち問題になりますのは、よく新聞紙上に出ておりますけれども、結果的に、勧告というものについて国に準じるということをやっているのが大部分の人事委員会なわけであります、本当に地域的に調査をしたら、国のベースアップに準ずるというのは、ほとんど大部分がそうだというようなことが承知できるのだろうかというのは私たちもよくわかりません。そういう点、やはり人事委員会として、もう少し自分の地域における問題というのを調査してほしいものだ。やはりいま人事委員会の法律上にあります地位というのはきわめて高い地位にあるわけでありますから、自分たちのそういうものをよく考えながら、やはり十分に調査をした上で勧告してほしいものだと私たちは思っておるわけであります。
  66. 山田譲

    山田譲君 人事委員会があるから、人事委員会が勧告しなきゃならない、その勧告に当たってはいろんな調査をして出す、それはもう正確でなきゃいけないことは当然の話ですよ。  じゃ、局長、正確でないということを言うからには、自治省としてその都道府県のあれを全部調べられたんですか、その上でもってその人事委員会のあれがおかしいとかと言うならわかるけれども、そうでなくて、何となくおまえさんのところの調査はおかしいぞというような言い方だと、これは相手を侮辱するということになる。
  67. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) およそ大部分の県の人事委員会の勧告は、全部私たちの担当のところで目を通しているわけであります。その内容をいろいろ見てみますと、きわめて正確にしかもきちんと出ているのもありますし、それから、その数字がどこからきたかわからないという勧告の内容のもの、これもあります。ですが、結果的にどういうことになるかといいますと、結果的に、国に準じて引き上げをしろと、こう書いてあるわけであります。その点に飛躍がないのであろうか。もう少しやはり慎重な引き上げ額というのが本当は出てくるのじゃないだろうかという疑念を持っていることは事実でありまして、そういうところをもう少し考えてほしいものだということを申し上げているわけであります。
  68. 山田譲

    山田譲君 局長のおっしゃるとおりだと思うのですよ。それはやっぱり都道府県ごとに人事委員会の勧告は、みんなそれぞれ違うのはあたりまえであろう。ですから、そういうふうに考えていくと、給与だって、単純に見た名目的なものじゃなくて、それぞれの県の実態に応じて差があるのは当然だと思うのですよ。それを自治省が一律に、ベースアップについては国と同じにやれと、その方がむしろおかしい。だから、それは高いところもあるし低いところもある。それぞれの財政事情だってみんな違うはずだし、それぞれの民間の賃金状況だって違うはずでしょう。そうするとその結果は、当然人事委員会の勧告も変わってこなきゃならない。そうだとすると、その勧告どおりに実施するということも当然の話であって、それに対して国の立場から、国家公務員どおりにやれと言う方が私はむしろどうもおかしいのじゃないか。  現実に、東京都の場合は、国のとおりの数字にはなっていませんわね。東京都の委員会は東京都の委員会として、東京都の中の民間の賃金を調べたりなんかした結果として出てきている数字で、これは国家公務員の場合とちょっと違った数字なんですよ。そうなりますと、それは局長の言うように変なところもあるかもしれないけれども、東京都の場合は、いまおっしゃったようにきちっとやった結果ですから、国家公務員のアップ率と必ずしも合っていないわけで、これはむしろ当然だと思うのです。  そして、しかも東京都の場合は九千二百人ですか、九千二百五十五人という数字になっているようですが、これだけを人員整理しましょうと言っているわけです。それは簡単にそう言うけれどももう大変なことだと思いますよ。これだけを組合と話し合いをつけるだけでも大変な騒ぎだったと私は思うのですけれども、そういうことをやってまで人件費を節約しながら、そしてベースアップについては人事委員会が勧告してくれたものを妥当と認めて、都議会でもそれを可決したということになりますと、これは文句を言う筋はないと思うのですよ。それをわざわざ副知事を呼んで文句を言うのはどういうわけか、どうしてもここが納得できないわけですよ。
  69. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお話しがございましたように、地方の給与というものに高低がありますことは私も当然だと思っております。ですから、そういう意味での指導を実は申し上げている点でもあるわけであります。  東京都につきましては、人員整理をやっておられるということについては、わが省といたしましてもこれは高く評価をいたしているわけであります。  ただ、この人員整理の問題と給与の問題というのは、その中で一緒に考えられていった問題ではございませんで、給与に関しましては、先ほど申し上げましたように、国家公務員の給与というのは、厳しい財政状況の中で、一般職員はベースアップはしました、しかし、期末手当その他については旧号俸でやるようにというような指導を国自身もしてきた。この辺で国自身、公務員全体の姿を考えますと、先憂後楽的な立場から言えばその程度のことはやはり考えてもいいのではないかという考え方は私はあると思います。そういう意味で、地方公共団体財政状態もきわめて厳しい、苦しい中にあるわけでありますから、そういう点ではやはり国と同一歩調をとってほしいものだということで申し上げているわけでありまして、ベースアップがいま東京都に高いとか低いとかいうことを申し上げたわけでは毛頭ございません。
  70. 山田譲

    山田譲君 いや、ベースアップが高いということを言っているわけでしょう。ベースアップ率はともかくとして、国と同じにボーナスの方にはね返していけなんということは、同じことじゃないですか。高過ぎるというふうな言い方と同じでしょう、それは。
  71. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) ベースアップの率が、東京都で算定しましたものを私たちの方でそれがいいとか悪いとかいうことを言ったつもりは毛頭ありません。ただ、国の給与の支給の方法について、期末勤勉手当について、その算定の額を六月なり十二月は旧号俸でやれ、ベースアップ前の額でやるようにという指導をずっとしてまいったわけであります。それは国と同様の立場に立ってほしいという願望があるからでもあります。そういう意味で、その部分について東京都もほかの府県と同様の措置をとってほしいということを申し上げただけでありまして、ベースアップが高いとか低いとかそういうことを申し上げたわけではないのであります。
  72. 山田譲

    山田譲君 それは、アップ率の問題は別として、これだってボーナスをはね返らせなかったら、たとえば東京都の場合幾らでしたか、四・九なら四・九というやつをやっても、それがボーナスを全部平均したら結局四・九にならなくなりますよね。だからそれは結果的にはやはりアップ率が高過ぎますよという私は文句だというふうにとるよりほかないと思うんですよ。  しかも、いまあなたが九千何百人を人員整理をすることにしたのは評価するとおっしゃったけれども、どういう意味で評価するのか知りませんが、評価するのは、やっぱり人件費がそれだけ節約されるということだと思うんですね。そうして、人件費全体の膨張するのを膨張させないで、その中でもってこの配分をどうしようかという問題は、これはまさしく地方公共団体に任していいことだと私は思うんですが、これはこれ以上言いません。  しかし、私も実はもう二十年前の話だけれども、ある県で人事課長をやっていたことがありましたけれども、そのときに、やっぱりどうも自治省指導が非常に干渉的だということをその時代から感じたわけです、つまり、等級という制度がありますね。あれだって、私は当時その県の実態に合わせるように等級をちゃんとやった。そうしたら自治省の方から、おかしいと、やっぱり国の決まったとおりの等級でやらなきゃいかぬというふうなことを言ってくる。こういう等級をどうするかとか配分をどうするかというような問題については、地方公共団体にこのくらいのことをやらせなかったら、これは地方自治を尊重しているということにならないと私は思うんですよ、  それともう一つついでにお聞きしたいんだけれども、そうすると、東京都に対しては、何らかの制裁をするというようなことを一切考えてはいませんね。
  73. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 財政上の問題であろうかと存じますので、私からお答えいたしますが、先ほどからいろいろ行政局長の方から話がございましたように、国家公務員につきましても、人事院勧告があったわけでありますけれども厳しい財政事情とか行政改革の推進を期待する国民世論の動向等を総合的に勘案して給与改定が決定されたというわけでございます。地方財政についても、私どもは大変これは厳しいと思っておるわけでございますので、地方公務員の給与改定についても国に準じた取り扱いとするということで指導、連絡をしておるわけでございます。したがいまして、厳しい財政事情のもとで行われた国家公務員の給与改定の水準を超えた給与改定を行った団体というものは、財政運営上それだけ余裕があると言わざるを得ないわけでございます。  そういったことで私どもとしては制裁措置ということはいまだ使ったことも全然ございませんが、そういうことではなくて、財政運営上それだけ余裕があるという判断に立って全体的に対処していく、そういう考え方を持っておるということでございます。
  74. 山田譲

    山田譲君 何か東京都から起債の計画が出ているというふうに聞いておりますけれども、それは本当ですか。
  75. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) まだ私のところで公式には受け取っておりませんけれども、今後の税収の動向等を見きわめて、決算でどのような締めをされるのか、その過程においていろんな要請があるだろうと思っておりますし、先ほどお尋ねがございましたが、減収補てん情的なことも言っておられるということは承知しております。
  76. 山田譲

    山田譲君 何回も言っていますように、国の財政状況あるいは職員の年齢構成、学歴構成、そういうものは全部違うわけですよね。そこをみんなべたにしてとにかく国とおりにやりなさいというふうなことは本当にぜひ今後も注意してほしいと思います。まして、そのとおりやらなかったから制裁措置でもってこっちの起債を認めてやらないというふうなことは、これは絶対にしないでいただきたいと思うんですが、これは約束していただけますか。
  77. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 私どもは、過去からたとえば期末手当等で国家公務員の水準を超えて支給しておるもの等については、たとえば交付団体でございますと、それだけ財政的な余裕があるということで特別交付税で減額をするといったようなことはいたしております。ただ、これはそういう財政上の余裕論に立っての取り扱いの問題であって、法的な制裁とかどうとかというものでないことは繰り返し申し上げておるわけでありまして、東京都の場合においてもそういった意味での制裁措置ということはないわけでございますが、ただ財政運営上それだけ余裕があるという判断には立たざるを得ないので、いろいろな財政措置についての要請があった場合にそういうことを頭に置いて対処をするということになるだろうと思っております。
  78. 山田譲

    山田譲君 大体この辺でこの話はやめたいと思いますけれども、いまおっしゃった中で気になりますのは、財政上の余裕があるとかないとかという話ですけれども、これは私は、人事委員会の勧告に従ったからといって、直ちにこれを財政上に余裕があるというふうな、そういうきめつけ方は本当はおかしいと思うんですよ。財政全体の余裕があるかないかということはもっと別な観点、全体から考えるべきであって、何か、国の言ったとおりにベースアップをしなかったから直ちに余裕があるんだなという考え方はそれはおかしい。ですから、それをもとにしてこっちの起債を認めないとかという話になりますと、これはどう考えたって一つの制裁措置としてしか考えられなくなってくるわけですよ。そこのところどうですか、
  79. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 先ほども申し上げましたが、期末・勤勉手当を国の水準を超えて支給しておるというような場合は、私どもとしては、地方団体共有の財源を使うわけでございますから、やはり非常に超えてやっておるところも同じように扱うということにはやはり全体の財政運営上問題があるということでそれぞれの対応をしておるわけでございます。  いま地方債の問題が出たわけでございますが、地方債の許可といのは、事業の緊急性とか団体財政運営の状況あるいは将来の公債費負担というようなものを総合的に勘案して行うということでございますから、この点について何か給与に関連した制裁とかどうとかということは、これは私どもとしても考えていないわけでありますが、総合的にこういう状況のもとでこういう地方債を起こしたいというような全体の説明の中で私どもとしては運営していくわけでございますから、その場合に他の団体が非常に厳しい財政状況の中でそれぞれの給与改定に当たってもそれぞれの状況を見て対応しておられる、ところが国の水準を超えてやっておるというようなことになりますと、私どもとしては、財政的に余裕があったからされたんだというふうに考えざるを得ないわけでありまして、そういったこと等も全般的に勘案しながら対応していくということにならざるを得ないということを申し上げておるわけでございます。
  80. 山田譲

    山田譲君 この問題はこれで最後にしたいと思いますけれども、これから申し上げることについて、お返事は要りませんが、われわれとしては、国がやった措置そのものが間違っておるというふうに私たちは理解しておるわけです。人事院がせっかく勧告した、そのとおり実施しなかったという、そっちの方がよっぽどおかしいのであって、そのおかしい方に右へならえしろと言う方がよっぽどおかしい指導ということに私たちとしては考えていかざるを得ません。まあこの辺は、あなた方は考えが違うということになると思いますけれども。言うまでもなく、そもそも団体交渉は、団体交渉というか賃金というのは、労使が対等で決めていくというのがこれは近代労働法の大原則ですね。しかもその中の労働者というのは公務員も含まれるということはこれはもうはっきりしているわけです。ただしかし、公共の福祉とか全体の奉仕者という観点からスト権について制約を加えている、これ問題がありますけれども、そのかわりに人事院なり人事委員会ができているわけですから、これを尊重しないということになると、これはもう憲法二十八条の労働者の基本的な権利を剥奪している、それを尊重していないと言ったってこれは過言じゃなくなるわけでしてね、やっぱりそういう点から十分にひとつ考えてこの問題に対処していただきたいと思うんです。  それから、自治省のこの次官通達を見て気がついたのは、公務員の給与を抑制しろということは一体だれに言っているかという感じなんですよね。給与を抑制しろといったって、制度としてルールができていて、人事委員会が勧告をすればそれを尊重するというのがルールなんです。それに対して抑制しろと言うのは、一体人事委員会に対して言っているのか、都道府県に対して、知事に対して言っているのかわかりませんけれども、いずれにしても、何か地方自治体が幾つかあるやつに対して十把一からげみたいに考えて、全く国と同じに一切合財扱えというふうなそういう自治省のやり方については、私どもとしてはどうも納得できない面があるんです。  これについては返事は要りませんから、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  次は、実はおとといわれわれ地方行政の委員がホテル・ニュージャパンに見に行ってきたわけでございます。そこでいろいろ感じたこともあるんですが、いずれにしましてもいまのところ刑事責任については取り調べ中でございますから、そこまでははっきりここでお答えできないと思いますけれども、見た限りでは私もいろいろな感想を受けたわけでございます。  消防署の改善命令とか措置命令にさっぱり従わない、ちゃんと聞いてなかったというふうなこと、あるいはまた、従業員の訓練がさっぱり行われていなかったとか、あるいは建物上にも非常に欠陥があった、あるいは肝心の防火扉がそのときになってさっぱり作動しなかった、当然自動的に閉まるべきものが閉まらなかったというふうなこと、あるいは建物全体が三差路方式で、火災の場合に非常に逃げ場がわからなくなってしまう、あるいはまた、外国人に対しての言葉がよく通じなかったとか、いろいろあったわけで、もう過ぎたことでありますけれども、そういう点は今後の一つの消防上のいろいろな指針として考えていかなきゃいけない問題ではないかというふうに思います。  しかし私は、やっぱり基本的には経営者の経営モラルといいますか、人命尊重といった意識が全く欠除していたということがその原因であるというふうに考えざるを得ないんです。そういうことについて消防庁長官のまず御意見を伺いたいと思うんです。
  81. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 去る二月八日未明でございますが、ホテル・ニュージャパンにおきましてあのような大きな火災が発生いたしまして、多数の死傷者が出ましたことは、私ども消防行政を預かっておる者といたしまして、まことに遺憾に存じておるところでございます。  ただいま御質問がございましたように、今回の火災の原因と申しますか、いろいろと物的証拠あるいは人的証拠につきましては、現在警視庁あるいはまた東京消防庁の方で調査をいたしておるわけでございますけれども、私ども、現時点においてあの火災を振り返って、なぜあのような大火になったのかということをいろいろと現時点で検討を加えておる段階でございます。  一つは、やはりただいま御指摘にございましたように、経営者のホテル経営者としてのモラルの問題というものは当然あろうかと存じております。具体的には、ホテルの側におきまするいわゆる各種の消火、防火設備が不備であったという点が一つ指摘されようかと存じております、  それから二つ目は、日ごろの訓練を含めまして、いわゆるホテル側の防火管理体制というものがこれまた不備であったということは言えると存ずるのであります。  と同時に、三番目といたしましては、火災が発生いたしました場合の宿泊客に対しまする避難誘導、あるいはまた初期消火、さらには消防機関に対しまする連絡、通報も適切でなかったということも私ども非常に強く感ずるわけであります、  と同時に、一方、消防機関におきまして、これまでホテルに対する対応に手抜かりがなかったかということも率直に反省しなければならない部門もあるのではないかというように私ども率直に感じております。すでにあのホテルに対する消防機関のそのような対応が、簡単に申せば、手ぬるかったのではないかというような御批判もあるわけでありまして、このような御批判に対しましては消防といたしましては厳しく受けとめ、今後このような火炎が二度と起こることのないように今後一層せっかくの努力を重ねてまいらなければならないというふうに存じておるところでございます。
  82. 山田譲

    山田譲君 いまのモラルの問題に関連するんですけれども、ちょっと労働省にお伺いしたいんです。  この社長横井英樹が基準法違反をやっているということを新聞なんかでも報道されております。ちょっと調べたところによりますと、横井英樹になってから、従来三百十五名いた従業員を百四十名に首切った。そして、首切った人たちに対して、協定が結ばれている退職手当が払われていない。それで、まあ、いろいろごたごたした結果、やっと月に九万九千円ずつ約束手形で分割払いをするということに決まった。九万九千円というのは、何か十万円にすると印紙代がかかるから九万九千円でとめたんだという話でありますけれども、こういうことをやって、しかも中には、絶対にそれはいやだと言った、十七年勤めた皿洗いのおばさんがいまして、この人については、頑として聞かなかったということで、退職金がいまだに払われていない、  その他、聞いてみますと、女子の時間外労働は平気でやっている、あるいは、職員の健康診断も全然行われていない。これは基準法上の義務になっているわけです。それから、当然置くべき産業医ですね、お医者さん、これも安全衛生法ですか、法律上の義務になっているはずだけれども、これも全然置いていない。その他、いわゆるヘルプですね、ヘルプ労働者、この賃金が、延べで千八十四名で八百七十五万二千九百円あるわけですけれども、これも全然払われていない。こういうふうな状況でございます。それに、ボーナスなんかも協定上決まっているやつを全然そのとおり払っていない。  こういうふうな状態があるというふうに新聞なんかでも言われているんですけれども、監督課長、その辺どうでしょうか。
  83. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) ホテル・ニュージャパンにつきましては、所轄中央労働基準監督署に対しまして、退職労働者から退職金の支払いに関する申告がなされておるところでございます。同署におきましては、これに基づきまして、過去再三にわたりましてホテル・ニュージャパンに対し、支払いを行うように是正勧告を行ったところでございます。しかしながら、同社におきましてはこの是正勧告に従わずに、労働基準監督署におきましては、本年の二月五日、法人及び代表取締役横井英樹を労働基準法違反被疑事件といたしまして、東京地方検察庁に書類送検をしたところでございます。  なお、今回の被疑事件と申しますのは、先生ただいま御指摘になりました、同社を退職いたしました女子労働者一名に係る退職金の支払いにつきましての送致でございますが、さらに同社におきましては、本年二月十五日現在におきまして、退職労働者二十三名に対する退職金合計二千七百二万七千円、それから昭和五十五年年末及び昭和五十六年夏の賞与の一部二千十七万二千二百八十五円が未払いとなっているわけでございます。これにつきましては、その大部分が九万九千円のいわゆる九九手形と言われる手形による支払いを行うことにしているわけでございます。労働省といたしましては、今後この支払いが確実に履行されますように、十分監視に努めなければならないというふうに考えているわけでございます。  また、この退職金の支払い問題以外につきましても、同社に対するこれまでの監督指導結果を見ますというと、労働基準法に定める労働時間の違反、女子労働者の労働時間の違反、労働安全衛生法に定めます健康診断の実施違反、産業医の選任の違反等々が認められたわけでございまして、これにつきましてはその都度是正勧告を行って今日に至っているわけでございます。
  84. 山田譲

    山田譲君 ああいうように焼けたりなんかしましたから、いまの賃金債権、これをぜひしっかりと監督署においても基準行政の中で押さえていただきたい。そして、労働者がまた一層ひどい目に遭うというふうなことのないように注意をしていただきたいと思うんです。しかも、これ、非常にけしからぬ話だと思うんですけれども、聞いた話では、調べに行った監督官たちに対してはり雑言を浴びせかけた、社長が。けしからぬ話だと思うんです。まことに盗人だけだけしいというか、経営者にあるまじき行為だったというふうに私は言わざるを得ませんけれども。  もう一つ、東京都の都労委の方から不当労働行為の救済命令が出されている。それに対して横井氏は、さらに中労委の方に再審査の申し立てをしているという話ですけれども、どんな不当労働行為事例があったんですか、
  85. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) いまの御質問に係ります事件は、五十四年から五十五年にかけまして東京都の地労委に救済申し立てが出まして、五十五年の六月に東京都労委から救済命令が発せられた事件でございます。それにつきまして使用者側から再審査の申し立てがございまして、現在、中労委において再審査中でございます。  事件の内容と申しますか、救済申し立ての内容でございますけれども、非常に多岐にわたっておりまして……
  86. 山田譲

    山田譲君 簡単でいいですから。
  87. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 簡単に申し上げますと、一つは、団体交渉の拒否に関する事項が一つでございます。それから、使用者側、特に横井社長の発言で、組合に対する支配介入がいろいろあったのではないかという点が第二番目でございます。それから、第三番目としまして、組合委員長ら七名の懲戒解雇でございます。大体主なところを申し上げるとそのようなことになるだろうと思います。
  88. 山田譲

    山田譲君 とにかく基準法違反をやって大いばりしているとか、そして不当労働行為も平気でやって団体交渉にも応じないし、支配介入はじゃんじゃんやる、それから、去年の十一月の「経済春秋」という雑誌、まだ火事の前の雑誌ですけれども、これで横井氏が対談をしておりますけれども、その中でも、組合なんかなってないということを言って、だから私がやり始めてから社員を減らして百五十人にして、しかも第二組合をつくってやったと、こういうことを言っているんですね。いまじゃその第二組合の方がどんどんふえているんだ、大体いい傾向にあるというようなことを平気でぬけぬけと言っているわけです。いまの経営者で第二組合をおれがつくったなんと言うやつは、私はどうかしていると思うんだけれども、その程度の感覚の人である、私が言いたいのは、そういう人命尊重というか、そういうことの意識の全然ないような経営者、こういう人だからこそあのような惨事を引き出すような、消防法上の問題をいろいろ起こしたのじゃないかというふうに思うわけです。  そこで、もう時間になりましたから、私はもっと各省に、建設省は建築基準法の関係がある、厚生省は旅館業法の関係がある、それから運輸省は国際観光ホテル整備法という関係がある、消防庁はもちろん消防の関係がある。こういうふうに、非常に防災関係については、特にホテルの防災についてはいろいろな各省にまたがっていることがあるわけです。それを考えて、去年、例の川治温泉以降だと思いますけれども関係七省庁が集まって了解事項をつくった、そして、それに基づいてそれぞれの省ごとにこういうことをやろうじゃないかというふうに決まったということは聞いているけれども、それが果たして本当にうまくそのとおりにやられているのかどうか、これは消防庁長官、どうですか。
  89. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいまお示しがございましたように、一昨年の川治プリンスホテル火災以後、七省庁連絡会議を設けまして、七省庁で旅館、ホテルに対しまする各般の問題について連絡協議をし、そして七省庁申し合せ事項を策定をいたしたわけであります。  このうち、消防庁関係につきましては、昨年の申し合せ以後、二月十日に消防庁所管の分に係ります問題点につきまして、それぞれその内容を具体的にコメントいたしまして各消防機関に通知をし、その徹底を図ってまいってきたところでございます。  なお、七省庁のいわば共通事項とも申すべき「表示、公表制度」につきましては、消防庁の方でその制度を去年の五月から発足させまして現在進行中でございます。  なお、他省庁分については、それぞれ省庁所管の分について御努力をいただいているというように私ども理解をしているところでございます。
  90. 山田譲

    山田譲君 非常にりっぱなことを七省庁ですかが集まって決められたようですけれども、なかなかかえって、あちこちの省にまたがっていることだけに、それぞれが何か責任を回避してしまってほかの省がやるだろうというふうなことで、あの七省庁の了解事項どおりにきちんと守られていたかどうか、この辺は私は非常に疑問があると思うのです。  私は、消防庁長官にこの際特にお願いしておきたいのですが、最近大きなホテルがいっぱいできておりますね、ああいうホテルで同じような災害がもし起こったらどうなるだろうということで、想像しただけでも慄然とするわけでありますけれども、さきの七省庁の了解というかその集まりというのは、どうも聞いた限りでは何か非常にあいまいな集まりでしかない。座長、議長がだれであるか、事務当局がどこであるかもはっきりわかっていないような、そういう何となくあいまいな形で七省庁が集まっている。こういうことでは私はやっぱりいけないんじゃないかと思うんです。先ほど言いましたとおり、いろいろな法律に関係のあるホテルでありますから、防災の完璧を期するためには、ホテルの防災行政についての一元的な、もう少し強力な機構といいますか、行政体制ができなければいけないんじゃないかと思うんです。七省庁がそれぞれ何となく集まっている程度ではやっぱり不徹底じゃないかというふうに思うんですけれども、この七省庁の集まりをもっと強力なものにしていくようなお考え方がないかどうか。その事務局はたとえば消防庁がやるとか、消防庁の長官がこれを主宰するとか、こういったかっこうにして積極的にやっていく気持ちはあるかないかをお伺いしまして私の質問を終わりたいと思います。
  91. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいま御指摘がございましたように、ホテル、旅館につきましては、各省庁のいわゆる権限分野が非常に入り組んでおりますことはもう事実でございます。と同時に、非常にたくさんな方々の宿泊をされるところでありますから、その防災につきましてはこれはもう申し上げるまでもなく十分な上にも十分な安全性を考えてまいらなければならないものでございます。  七省庁連絡会議につきましては、ただいまお示しにございましたように、七省庁が集まりましていろいろの問題点をお互いに出し合い、そしてお互いの今後の連絡協調を図りながらこの目的を達しようとしておったことは事実でございます。また、そのようにそれぞれ省庁で努力もいたしてまいったわけでございますが、いまお話にございましたように、もう少しこの組織と申しますか、今後のあり方についてさらに活発あるいは強力なものにしてはどうかという御指摘でございます。私ども十分御趣旨を踏まえまして、今後各省庁との連絡を密にし、十分な実績が上がりますように努力してまいりたいというふうに存じております。
  92. 山田譲

    山田譲君 終わります。
  93. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  94. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記を起こして。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  95. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  96. 大川清幸

    ○大川清幸君 税収の動向というのは地方財政にも大変重大な影響がありますので、昨日の予算委員会でもいろいろお聞きをしたんですが、税収見込みについては明確な御答弁がなかったので、重複する部分もありますが、念のため、まず大蔵省からお伺いをいたしたいと思うんです。  五十六年度税収については、四千五百二十四億円の下方修正をしたわけです。補正後の三十一兆八千三百十六億、これを達成するについてはいろいろな試算の仕方や見込みの立て方があるので明確な御答弁をいただくことは無理かもしれませんけれども、十二月までの税収実績ですね、この資料から判断すると大変暗いというか見通しが厳しいわけでございまして、現在までの実績どおりにいくと大変大きな税収のダウンが今後見込まれるようです。仮に一〇%台でいくと二兆二千億ぐらいですか、二〇%で概算で約一兆円前後財源に穴があくというような試算ができるわけですけれども、この税収回復見通し等について、根拠その他考え合わせながら、この税収見通しについて一応まず伺っておきたいと思います。
  97. 真鍋光広

    説明員真鍋光広君) 先生仰せのとおり、補正予算におきまして補正減を四千億強見たわけでございますけれども、それは最近までの課税実績政府見通し等の基礎といたしまして見直しを行いました。それはそれまでの実績等から見ましてなかなか税収減の回復が困難じゃないかというようなものを中心に補正減を立てたわけでございます。しかしながら、その中で法人税あるいは申告所得税——申告所得税は若干源泉分は見ておりますけれども、減を立てましたが、そのあたりについて触れておらないということについての御質問かと存じます。  まず、法人税につきまして見ますと、いろいろ事情がございます。たとえば延納の割合が五十五年度において低かったために五十六年度税収に入ってきていないということであるとか、あるいはこれまで生産動向等が必ずしもふるわなかったということから税収にあらわれてきていないといった面があるわけでございます。しかしながら、最近の状況を見ておりますと、四−六月を底にしまして鉱工業生産も比較的上向き傾向にあるというふうなこともございます。それから、今年度下期に向かっての経済予測等でも、業績の予測でも下期はかなり上がってくるのではないかという話もございます、それからまた、最近の九月期、十月期の決算法人、大法人をとってみますと、かなり収益が上がってきている、二割強の伸びを示しておあというふうなことでございまして、そういうことを判断して、全体としては経済は比較的上向きに向かっておるのじゃないかということであり、また、国税の場合には、三月末までに納税義務の成立したものにつきまして五月末収納分まで当年度に入れるということになっておりますので、そういった意味合いではまだ五カ月分ばかり残っておるというようなこともございますので、そういうことをいろいろ勘案しまして、大体この程度でいけるのじゃないか、当初予算どおりいけるのじゃないかというふうに考えたわけでございます。  それから、申告所得税の方も、いまの税収は昨年度の確定申告を前提にしましての予定納税分が入ってきておるわけです。そういった意味合いで非常に低い水準になっている、確定申告がどのようになるか、必ずしもよくわかりませんが、ただいま言ったように、次第に景気も明るい兆しも見えかけておるということでもございますので、そういった面を期待して、全体としては補正予算数字が達成できるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  98. 大川清幸

    ○大川清幸君 租税収入全体の見通しについてお伺いしたところ、たまたま法人税と申告所得税のことで御説明がありましたから、それではその法人税の方で関連して伺っておきますが、確かにいま御説明のあったとおり、この十一月ないしは十二月の税収実績で言うと、大企業法人ですね、特に証券、建設業その他大手は大体いま御説明のあったとおり状況はいいんですね。十一月までの実績で二二%増、それから十二月で見ても大企業はいいことになっているんです。ただし、全体で見て、この税収実績ですね、十二月前年同月比で六・六%ですね、ようやくです、これは。それから、十二月までの累積実績でいきますとマイナス〇・二でしょう。だから状況としては非常によくない。この先々の見通しで後半いいんじゃないかと言うけれども、これはまだ税収の問題でいろいろありまして、そいつが本当にはね返ってくるかどうかという時間的な問題もこれは考えてみなきゃならぬことです、ですから、この五十六年度の租税収入でいうと、当初予定をしておったような税収まで、要するに補正分を見込んだ後の税収まで挽回するのは状況として不可能じゃないか。  それからもう一つ予算委員会でも説明なかったし、データをとってないらしいのでこれは説明も無理だと思うんですけれども、大企業はいいと御説明なさるんですよ。ところが、法人の中でも中小はよくなくて、負債一千万以上の企業、これでやっぱり実際に千二、三百件あったわけですからね、一月に。こういうことを見ると、中小企業法人というのは今後も厳しいんじゃないか、全体で見て十二月実績でマイナス〇・二%ですから。これはどうですか、決算期までに挽回できると明言できるんですか。
  99. 真鍋光広

    説明員真鍋光広君) 現在の状況が昨年並みマイナス〇・二%、これはもう仰せのとおりでございます。実績でございます。私どもとしましては、実績が出てくるに従いましていろいろ聞き取り調査等もやっております。それから月々によって業種的な偏りもございます。それから先ほど申しましたように、経済の状況も次第によくなりつつあるというふうなことから、さらにまた、要するに三月期の決算法人税収に占める割合が約三分の一まだ残っておる。そういう経済状況のもとで残っておるということであり、そういったこともございまして、現在までの進捗状況が四〇%程度である。もちろん昨年に比べて六・六ポイントばかり落ちていますので、このこと自体は懸念材料ではございますけれども、なお五割強が残っておるという状況であります。私どもとしては、こういったことで全体としてはいけるのじゃないかというふうに強く期待しておるということでございます。
  100. 大川清幸

    ○大川清幸君 そういう状況の中ですけれども、これ、本当に税収見込みからいったら、中小企業のその業界の動向なんかについてはある程度の推測をしておく必要があると思うんですが、税収見込みを聞くと、大企業の方のいいという説明だけ大蔵大臣もなさるんですよ。中小企業の方は、何か調べてないと言ったか、データがないと言ったかな。しかし、そっちの方こそ調べておかないと、これは税収の問題では大事なんですけどね。そっちはまるっきり調査もしないし資料も取り寄せないというか、分析もなさらないんですか、どうなっているんですか、
  101. 真鍋光広

    説明員真鍋光広君) 中小企業関係税収がなお冷えておって、まだ兆しが必ずしも十分でないということは仰せのとおりでございます、それから、私どもの聞き取り調査におきましても、やはり税収の大きな部分が大きな法人から出てくるということもございまして、大勢を見る上では大法人中心になっておるということは否定できません。  ただ、経済はやはり客観的には、大法人がまず明るい兆しが出て、それから次第に経済全般に広がっていくという面もございます。ただ、これが急速に広がっていくか、あるいは緩かに広がっていくか、ここがポイントだと思いますけれども、私どもとしては、大きい頂上の部分に明るさがかなりともってきたということから、とにかく三月までに中小企業まで含めて全体が明るくなってくる、税収にはね返るということを強く期待しておると、こういうことでございます。
  102. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、同じく説明のありました申告所得税について。  これは八十五億の減額補正しかやっていないのですね、これは源泉所得なんかとは違って非常につかまえにくい性格のものですから、予想を立てるのは非常にむずかしいと思うんですが、この申告所得税の対象者、納税者というのは、大体個人経営ですとか中小工場の経営者とか、そういうクラスです。先ほど法人税のところでも触れましたように、中小法人、これは大変見通しとしては厳しいものがあると御説明があったのですが、それ以上に申告所得納税者の方は、状況もっと厳しいと思いますよ。これは申告所得税の方で言うと、十二月までの税収実績、十二月現在、前年同月比で四・五%の増と。これは低いですわな。それから十二月までの累積統計でも六・四%ですから、しかも進捗状況三四・六%ですね、これから総合所得の申告やいろいろあるんでしょうけれども、大変状況としては悪い。むしろ中小法人よりはもっと悪いと予想しておいた方がよろしいんじゃないかと思いますが、この見通しについてはどのように考えておるわけですか。
  103. 真鍋光広

    説明員真鍋光広君) 少しお答えの角度が異なるかとは思いますけれども、申告所得税の内訳を見てみますと、これ五十五年度実績で見てみますと、先生仰せの、事業所得者から出てまいります営業所得につきましては、構成比が約一四%ということになっております。結局一千万超の給与所得者であるとか、そういった、いずれかといいますと、営業所得とか農業所得とか以外の方々からの税収が約六割を占めておるということでございます。  したがいまして、私どもとしては、中小企業者等の営業所得の申告所得税の伸び期待すると同時に、その他という方々の、主として給与所得者、高給所得者と思いますけれども、その他の方々の所得の伸び、これは六割を占めるわけですから、こういったものも注目していかなければならぬということでございます。税収全体を見る上では、むしろそちらの方が大きな比重を占めておるということでございます。
  104. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、国税の方のいま幾つかについてお伺いをしたんですが、もう一つ地方交付税に直接影響ありますが、酒税ですね。これ補正見込みを達成するには、対前年比でかなり高いパーセンテージを見込まないと追っつかないんじゃないですか。四月から十二月までの累計で対前年同期比で二一%増、かなりの増額にはなっていますね。しかし、それにしても七・五ポイントぐらい低い、実績で言うと。そういうことで国民生活はなかなか厳しくて、街の声では、高級なところでは余り飲まないで、サラリーマンは縄のれんとかそういうところで大分がまんしているようですよ。そういう点から考えると、酒税の伸びも余り期待できないんじゃないですか。どうですか。
  105. 真鍋光広

    説明員真鍋光広君) 酒税の方につきましても、大体その予算額に達成すると見ておるわけでございますけれども、その理由と申しますのは、とにかく五十六年度の税制改正で酒税の税率引き上げを行ったわけでございます。その効果を期待しておるわけでございますけれども、その効果が税収面にはね返ってまいりますのは七月から後であったということでございます。それから、五十六年の四月に駆け込み需要が出てきたというふうなこともございまして、増税の効果が割り引かれておるということもございます。とにかく予算は二八・五%伸び期待し、現在までの累計伸び率は二一%ということでございます。  そういったこともございますけれども、今後次第によくなっていくのじゃないかというふうに期待して、全体としては予算で見た数字をほぼ達成できるというふうに考えておるわけでございます。
  106. 大川清幸

    ○大川清幸君 それともう一つ、これを聞いておきましょう。  自治省が十三日にまとめて、五十六年度都道府県税の十二月末徴収実績、これを発表されておりますが、この中での法人事業税ですね、年間税収の七、八割が十二月末までに入ってくる状況ですが、今後は税収の大幅な伸びは余り期待できない、先ほどのいろいろな状況からいって。大体推測だろうと思うんですが、二千億ないし三千億程度の計画割れが生じるのではないかという心配があるように聞いておりますけれども、この法人事業税見込みについてはいかがですか、
  107. 関根則之

    政府委員関根則之君) 御指摘の、十二月末の徴収実績におきましては、進捗率で昨年が八二・一%入っておりましたものが、昨年といいますか五十五年では入っておりましたものが、五十六年度では七三・四%しか入ってない、進捗率において八・七ポイント下回っておると、こういう状況でございます。国税の場合と違いまして、二月、三月決算法人分が今年度分に入ってまいりませんので、言ってみれば私どもの方は後がないといいますか、そういう状況に追い込まれているわけでございます。しかし、大蔵からのいろいろなデータをいただいておりますけれども、ここへ来て非常に法人関係の入り方がよろしいという徴候も出てきておりますので、私どもも、このままの単純な数字で今年度終始するというふうには考えておりません。まだ三月ほど残っておるわけでございますので、そういった状況を今後踏まえながら推移を見守り、かつ計画にできるだけ近い額で入ってくることを期待しておるという状況でございます。  いまの時点で単純にどうなるのかという数字でございますが、年度途中のことでもございますし、余り端的な計算をするのもいかがかと思いますので、答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  108. 大川清幸

    ○大川清幸君 国税三税の減額千三百七十四億円を見込んだわけで、これに関連して地方税の方もその三二%の四百三十九億六千百万円余ですか、減額修正されたわけですわね。まあ措置としては特別会計からの借り入れ補てんする、こういうことになったわけで、これは肩がわりをしてありますから、特に地方財政には直接響かないですけれども、いままでずっと論議をしてきて、今後の税収見込みはどっちにしても厳しいわけですよ。国税三税も厳しいですわね。見通しとしては決して楽観できる材料はありませんから。予算委員会のやりとりでも、再補正はしなくていいんですねとぼくは何遍も念を押したんですが、総理大臣も大蔵大臣も、大丈夫——大丈夫ですと言ったのか、ほぼ何とかいくでしょうと言ったのか、余りはっきりした答えはなかったんですよ。  けれども仮に、まあ仮の話じゃ答弁できないかもしれませんが、この税収見通しについていまお伺いしたところによると、どっちにしても厳しいことは間違いない。これは補正後、蔵入欠陥が生じたような場合、金額が幾らになるかというのはさっきの推測で二兆二千億とか一兆円とか、いろいろ言われておるんですけれども、そうした欠陥が生じた場合に、再び国の方でその減額分については十分見るような措置でやってもらわないと地方財政には響くわけですね。たとえば経済基盤の強い神奈川とか埼玉県あたりでも減収補てん債みたいなものを幾らか頼まなきゃならないかなんて心配している県もあるぐらいですから、もし、そういうような歳入欠陥が補正後にも起こって地方財政へも響いてくるようなことになればこれは重大問題なので、一応の見解を聞いておきたいんですが、不足財源補てんについては交付税の中でまたいろいろこれは試算をして調整しなければならぬと思うんですが、そのときにどのような対応をなさるおつもりですか。
  109. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 国税三税の動向については私どもも大きな関心を持っておるわけでございますが、今回の補正予算における税収見込み額は、できる限り適切な税収見積もりを行った結果のものであると承知しておりますし、ただいまもるる話がございましたが、大体見込みどおり税収が確保できるという大蔵当局の考え方でございます、私どもとしてもそのようになることを心から期待をしておるわけでございます。  仮にの話でございますが、減収が生ずるということ、それはよくわからないのでございますが、そうなった場合でも、補正が行われない限りは本年度交付税額はそのまま予算に組んであるわけでございますから、これはそのまま執行できるわけで、支障はない。ただ、率直に申し上げまして翌々年度において精算という問題を生じてまいるわけでございますから、その際はその分だけ減れば減ってくるということになります。そういう見込みのもとで私どもとしては財政対策、地方財政対策というのを講ずるわけでございます。そういう中で地方財政の運営に支障のないようにいろいろな方法を、そのときの最適な方法で講ずるということにしたいと思っております、率直に申しまして過去もそういうことのないようにいろいろ私ども努力もしてまいりましたので、それはぜひともその段階においても、仮にそうなっても最大の努力をしたいと思っております、
  110. 大川清幸

    ○大川清幸君 次に、地方の行っている単独事業関係でちょっとお伺いしておきたいんですが、五十七年度のことについては本予算が回ってきたときにお伺いをしたいと思っておりますが、これはいただいた資料で五十年から五十三年まで単独事業地方公共団体の行っている事業の実績を見ますと、歴年ずっとこれは決算額で見ると計画に対してダウンしていますね、毎年、しかも、そのダウンの仕方がだんだん大きくなっています。これは地方の執行の段階でのいろいろな原因があると思うのですけれども、歴年ダウンしてきて差が大きくなっていることについての状況説明をしていただけますか。推移ですね。——ちょっと申し上げましょうか。五十年度ですと単独事業、投資的経費、これはいろいろ地方の何というか、景気刺激策や何かでも大事な役割りを占めていると思うんですが、五十年度でこれは三千五百三十億マイナスですね。五十一年が七千八百二億ですか。それから五十二年が九千九百五十一億。それから五十三年になると一兆三千八百四十五億ですか、三角が、この状況ちょっと深刻なんで、五十七年度についてもこれは影響出てくると思いますので、一応この状況についての御説明を伺っておきたいと思います。
  111. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) ただいまお示しのございましたように、地方財政計画で見込んだ単独事業の額と決算との間では乖離がございます。まあいろいろと過去においては事情が違いますが、最近ではいまお話しのございましたように、その乖離が広がっておるということは事実でございまして、五十四年度単独事業における計画決算との差は一兆八千億余りということになっておるわけでございますが、これはいろいろ事情もございまして、この単独事業決算の姿そのものが直ちに乖離の実体であるとは私ども考えておりません。一つ決算上、いわゆる継ぎ足し単独事業というものが補助事業の方へ入って決算をされておるということもございまして、たとえばいまの五十四年度で申しますと、補助事業においてはむしろ計画決算との乖離という点では、決算の方が六千億以上よけいになっておるということもございまして、そういったことで統計処理上の問題も一つにはございます。  それから、基本的な問題としては、景気が落ち込んだころに公共事業が、最近こそは横ばいになっておりますが、かなり公共事業伸びを確保することによって景気の浮揚を図ったという状況が続きました。そういったことから、どうしても公共事業負担の方へ財源が回されたということで、いわば公共事業が優先消化されたといったようなこともございまして、単独が減ったということもございます。また、これは大きな要素でもございませんけれども、一般の地方団体ではほぼ計画に見合う事業量が確保されたわけでありますが、財政規模の大きい東京、大阪等の一部の団体財政事情が厳しいということもございまして、五十四年度あたりでは単独事業伸びを抑制したということもございます。これが全体的には影響しておる。まあいろいろな要素があるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても結果として見れば計画よりも決算が下回っておるということでございまして、乖離が指摘されておるわけでございます。  ついでで恐縮でございますけれども、ここ二年引き続いて公共事業が横ばい、五十七年度も大変厳しい状況にあるということもございまして、地域経済にもいろいろ影響があるということで、私ども地方財政計画でも単独事業を伸ばしておりますが、地方団体でもかなり力を入れてまいりました。五十六年度状況をちょっと申し上げますと、地方財政計画で八%の増額ということにしておるわけでございますが、五十六年度の九月補正後の都道府県の数でございますが、予算額で見ますと、前年同期比一〇・六%ということでございます、そういうことでありますので、市町村の方は必ずしもはっきりしたものはございませんけれども、市町村でも都道府県と同様に従来よりは伸長が予想されておりますので、全体としては八%を上回る伸びになるんだろうと——これは予算額でございますから、と考えておるわけでございまして、若干状況が違ってまいりましたので、そこらの実情は五十五年度、六年度と、特に六年度になってくると少し変わってくるものだというふうに考えております。
  112. 大川清幸

    ○大川清幸君 念のために伺っておきますが、この地方財政計画決算との対比ですか、これは歴年出していただいているんですか。毎年出てますか、
  113. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 毎年この計画との差は出しております。
  114. 大川清幸

    ○大川清幸君 わかりました。  次に、念のためにお伺いしておきますが、大蔵省の方針がどうかわかりませんけれども地方財政が好転しているということで、これは五十六年度補正のかっこうだけ全体で見ると確かに地方財政はいいかっこうにはなってきているんです、中身はまた角度を変えると違うわけですがね。それはそれとして、地方財政が好転しているという見方の上に立って、五十八年度あたりから交付税率の引き下げについて示唆をしているような話を聞いているんですが、そういうことはないということであれば結構ですが、これはどうなんですかね。
  115. 八木橋惇夫

    説明員八木橋惇夫君) お答え申し上げます。  ある新聞にそのような報道がなされていたかのように記憶しておりますが、御指摘のような、五十八年度における交付税率の変更について、大蔵省が現在検討しているということはございません。
  116. 大川清幸

    ○大川清幸君 なければ結構です、  ところで、第二臨調あたりにもかねて地方交付税のことでうわさが出たことがあって、この委員会でも論議になったことがあるんですけれども、そういう動きというか、背景があることはどうも事実のようですよ。ですから、予防的な措置というわけじゃありませんが、この点はダウンなんかしないように、むしろ引き上げ論議の方が学者さんの意見なんかだと従来から大勢を占めているわけだから、これは地方を抱えている自治省としては、断然この点がんばってもらわなきゃならないので、論議が出たときにはせっかくひとつがんばって、こんな交付税率の引き下げなどが実現しないように頼みたいんですが、これは大臣いないけれども、お伺いしておきましょうか。
  117. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) お答えいたしたいと思います。  ただいま御指摘のとおり、地方交付税の引き下げというふうな論議があるやの話もお聞きするわけでございますが、私どもとしましては大蔵当局からは、ただいま大蔵当局からのお話しのありましたとおり、全くそういう話があることは聞いてはおりません。しかしながら、万が一そういう話があることになってはわれわれとしては大変でございます、単年度といたしましてはなるほど収支均衡は保っておるとはいいながら、何分巨額の借財を抱えておることでもございますので、その点につきましては、自治省といたしましてはこれからも引き下げというふうな論議につきましては、もう徹底的にわれわれの立場を主張し、都道府県地方自治団体とともどもにその考えを貫きたいと思っております。
  118. 大川清幸

    ○大川清幸君 ぜひともがんばっていただきたいと思います。  先ほどもちょっとお話出ましたが、ホテル・ニュージャパンの火災について、先般この委員会で簡単な報告をいただきました。その後、いろいろな報道などがなされて建物自体に欠陥があったり、きょうの報道なんかによると、東京都が立入調査をやったところが、建物そのものが違法であったなんというような報道もされています。先般予算委員会でも東京消防庁の曾根消防総監が見えて、社会党の寺田先生の御質問のときですが、まさに人災だということを大変明確に御答弁をなさっておったので、これはまた重要な問題です、人命尊重の上から言っても。  この間の報告は、あのころですから大体概略の報告をいただいたんだと思うんですが、その後、やはりホテルそのものの欠陥としては幾つか挙げられると思うんですけれども、細かくは必要ありませんが、人災として実証できるような条件、どんなものが挙げられますか、一応できたら御報告をしてください。
  119. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) お答え申し上げます。  去る二月八日の未明発生いたしましたホテル・ニュージャパンの火災の概況につきましては、二月十六日の当地方行政委員会に御報告をさしていただいたわけでございますが、あの時点におきましては若干まだ火災直後でございまして、混乱もしており情報も十分ではなかったわけでありまして、とりあえずあの時点で確認をいたしましたものについて実は御報告をさしていただいたような次第であります。したがいまして、あの内容は主として設備があったかなかったかというような点を中心にして御報告をしたと存ずるのでございます。  その後、東京消防庁における火災の発生原因調査あるいはまた警視庁におきます犯罪捜査の結果、だんだんいろんな実態がつまびらかになってきておるわけでありますけれども、ただいま先生御指摘にございましたように、私どもまだ東京消防庁から最終的な確認された情報は受け取っていないわけでございますけれども、新聞報道あるいはまた関係者の話の中で出てまいってきておりますのは、一つは、設備はあったけれどもそれが、たとえば非常火災警報装置の電源が切られておった、オフになっておった。その他もろもろの、いわば防火管理上の問題が一つ指摘されております。それからもう一つは、あの事故があのように大きくなりましたことにつきましてのホテル側の初期消火、あるいは避難誘導、あるいはまた消防機関に対しまする連絡通報というのがきわめて不適切であったということが一つ指摘されておるわけでございます。  まだ、いま申しましたように最終的な確認をいたしておりませんが、私どもできるだけ早く、東京消防庁なり警視庁の捜査が終わりますればその辺の情報は収集して全貌を明らかにしたいというふうに存じておる次第でございます。
  120. 大川清幸

    ○大川清幸君 過ぎたことの結果を調べてきちんとしてもらいたいと思うんですけれども責任者は責任ある措置をしてもらわなきゃならぬと思うんですが、要するに、いろんな欠陥があることを指摘しても何にもならないので、それをひとつ基本にした上で今後の改善を図ってもらう方向で努力をしていただく必要があると私ども考えております、  御承知のとおり、四十七年の大阪の千日デパートのあの悲惨な火災がございました。それから四十八年の熊本の大洋デパート、これは私も現場を当時見に行きました。ひどいものです。これを教訓にして四十九年に消防法が改正されまして、五年の猶予期間をもって五十四年の四月からスプリンクラーその他の設置、これを法律を手直ししてそういうことに義務づけを行ったわけですね。その後、いろいろ指導をなさってきた御努力は認めます。なお、その間に五十五年十二月、当委員会でも現地視察しましたが、川治のプリンスホテルのお年寄りが大ぜい亡くなった悲惨な事故がございました。このとき現地でいろいろ報告を聞いたところ、防火管理体制とかあるいは防火施設の問題、あるいは建築基準法に係る問題、それから避難誘導等の問題、また、地元の町あるいは消防署から数々の指導を受けておったんですが、この対応をプリンスホテルの方ではずっとしていなかったいきさつが明らかになっておりまして、今回ニュージャパンで起こったことを見てみますと、これは、問題として指摘されている地方の一ホテルで起こった問題とほぼ同系統の不備な点が列挙できると思います。ですから、こうした四十七年以来いろいろなことがあって、法改正までやって災害防止のための対策をとってこられたんですが、再びこういう事故が起こったことについては大変残念だと思うんですよ。  そこで、何といいますか、規制ばかり厳重にすること自体がいいとも私は決して思いませんけれども、ホテル経営などの状況考えますと、商業ベースの問題があったりして、余り厳格にやり過ぎると今度は損害賠償か何かで逆告訴されたりという深刻な問題があるので行政上なかなか対応の仕方がむずかしいと思うんですけれども、午前中の論議にもありましたように、建設省所管だとかあるいは厚生省だとか消防庁関係の法律がいろいろありますね。これらの法律のいろいろな運用の仕方、対応の仕方、先ほど論議がありましたから触れませんけれども、もう少し強制力を持つというか、その辺の法的な検討とか、そういうことについてもこの際してみる必要があるんじゃないかと思いますけれども、どうですか、現状の中で一応ずっと対応しようということなんですか、どうでしょう。
  121. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいま御指摘のございました点は、私どもごもっともと存じております。御案内のとおり、現在消防法規におきましては、旅館、ホテルその他防火対象物につきましては、防火対象物の中で消防法違反の状態がございますれば措置命令をかけ得るという規定がございます。実は、ホテル・ニュージャパンにつきましても、昨年九月、いわば最後の切り札的措置命令もかけたところであります。と同時に、もう一点、差しかかった火災の危険性があると認知いたしました場合には、一部分の部分的な使用停止命令というような措置命令もかけ得る根拠もあるわけであります。と同時に、このような措置命令に違反をいたしました場合には、最高利懲役六ヵ月を含むいわばかなり厳しい刑罰規定も設けられておるわけであります。私どもは、現時点におきましては、何としても、各消防機関におきまして今回のような悪質ないわばホテル、旅館に対しましては、ただいま申し上げましたような法律をちゅうちょすることなく適用すべきじゃないかというふうに考えております。そのことを先般も強く各消防機関に指示をいたしたところでありまして、いま申しましたようなこのような大きな災害が起こる危険性があると認知すればちっとも遠慮する必要がないというふうに私は存じておる次第でございます、同時に、そのようなことでございますので、直ちにいま消防法を改正して規制を強めるということにつきましては、どこに手を入れていいのかということも若干の検討問題であろうと思っております。  なおしかし、今後再びこういう事故が起こってはならないわけでありまして、先生御指摘ございましたような点につきましても、私ども現在の法律が万全であるとも思っておりません。したがいまして、現時点におきましては現行制度はまだまだ活用できる部分も十分あるわけでありますから、それを強く指導しながら、片方抜けたところはないのかという検討も引き続き重ねてまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  122. 大川清幸

    ○大川清幸君 消防庁では、防災上のいろいろな装備その他設備、器具等の完備したホテルに「適」マークを交付しておるようでございますが、「適」マークの、何というんでしょうか、効力というのか、「適」マークの性格というか、これどういうことになっているんですか。
  123. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 御案内のとおり、「適」マーク、正式には「表示、公表制度」という名前で実は昨年五月から発足いたしまして、全国の消防機関にお願いをしていまその作業を鋭意進めておるところであります。  御質問にございますこの「適」マークのその趣旨と申しますか、私どもは、旅館、ホテルは当然必要な社会施設であろうと思っておりまして、しかし、そのホテル、旅館が安全に快適な形で宿泊できなければやはり意味がないわけであります。したがいまして、端的に申しますれば、言葉は非常に荒っぽいのでございますが、旅館、ホテルを、言葉は悪うございますが、いわばやっつけるというような趣旨ではないのでありまして、安全なホテルになってもらいたいという気持ちを込めてこういう制度をつくったわけであります。この「適」マークにつきましては、御案内のとおり、消防用設備、その維持管理、あるいは日ごろの防火訓練等々ソフト面とハード面を合わせまして二十四項目、六十五カ所につきまして総点検を行いまして、そのすべてに合格したものにつきましては「適」マークを交付するということをやっておるわけであります。  したがいまして、私ども希望といたしましては——もちろんこの「適」マークというのはいま申しましたように大変厳しい基準を設けて消防機関が調査をいたしておりますので、そういう意味での安全性というのは高いというふうに私どもは認めていいと思うのであります。したがいまして、一般の国民の方々が旅館、ホテルにお泊りになるときには、交通の便でございますとか料金とかお考えになる際に、あわせて「適」マークがあるかどうかということをぜひひとつ見ていただいてお泊り願うということも大変強く希望するのでございます。と同時に、一般に、お泊りになるときには必ず予約をなさるわけでありますから、予約なさるときには「適」マークがあるかどうかということを一言電話で聞いていただければ、旅館、ホテルはあるかないかを返事をするはずでございますので。その辺、今後、「適」マークの趣旨なり普及についてどうしていくかということを大変苦心をいたしておるわけでございますけれども、そのような御理解を賜りたいというふうに存じておるところでございます。
  124. 大川清幸

    ○大川清幸君 「適」マークを頼りにするなら、これはお客さんの方から見れば一つのけじめができるので結構なんですが、ホテル・ニュージャパンその他のように、何遍も指導を受けたり文書で注意を受けながらなお改善に踏み切らない。なるほど、経済的な事情もあってすぐできないというようなことはあるにしても、これは、大事なお客様を預かるのに対応はきちんとしなきゃならぬわけで、何遍も行政指導をしたり通告をしても怠けているようなところについては、まあいろいろ問題があると思うけれども地方の条例なり何なり、これは地方公共団体なり地方の消防長あたり、市町村長あたりの所管、権限に属する問題ではありましょうけれども、何かその地域で不届きな——不届きなところというかな、そういう怠慢なところは公表するなり、お客さんの警戒する材料を提供するようなことは考えられませんか。
  125. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 「適」マークにつきましては、ただいま先生御質問にございましたように、「適」の逆の不適のところを公表したらどうかという御質問の御趣旨だったと存じます、この点につきましては、逆に申しますれば、「適」をごらんいただければ残りは不適でありまして、これはそこはやはり適応してないということかと思うのであります。  ただ、これを公表すもにつきましては、内容的に十分精査をしなきゃならない。と申しますのは、一つは、不適になっております理由が消防法上違反でありますものと、もう一つは建築構造上違反であるかという問題、とりわけ後段の建築基準法の問題につきましては御案内のとおり遡及適用がなされておりませんので、いわゆる既存不適格、たてまえ上適法ではありますが不適格という建物があるわけであります。そういうものにつきましての扱いというのは大変むずかしいという点が第一点であります、  それからもう一点は、消防法違反でありましても非常に軽微な違反もございます。ちょっと消火器の数が足らないとかということでもってもらえていないところと、かなりの改造をやらなきゃとてももらえないというところもございます。したがいまして、これを一律に公表ということになりますと、その辺大変むずかしい問題があるわけでありまして、私どもその辺非常に苦慮しておるところであります。と同時に、一つはまた御案内のとおり、「適」マークの制度が発足いたしまして、全国的にまだ全部やっておりません。東京都は終わっておりますけれども、全国的に終わっておりません。そこで、私どもといたしましては、現在公表制度の中で、消防法違反によりまして措置命令をかける、措置命令をかけてもなお期間中に従わないというところは公表しろという指導をしておるわけであります。これは明らかな法律違反ということではっきりいたすわけでありますから、その分については公表する。これはマスコミ等を通じて公表するということは、やれということは指示をいたしておるわけでありまして、そういう方法の中で、今後できるだけ国民の方々にわかっていただくというようなことを努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  126. 大川清幸

    ○大川清幸君 もう時間が迫まりましたから一、二まとめて伺って質問を終わりたいと思いますが、一つは建設省関係で、五十四年三月建築物防災対策要綱、これを作成なさいまして、五十一年以前の建物でも、特に人が多く集まる旅館、ホテル、地下街等に対してこの要綱に基づいて防災対策の指導強化を図られるという努力をなさっておるようでございますが、その後の状況についてどのようになっているかということの状況の報告、あるいは問題点があれば問題点も指摘してもらいたいと思いますが、それが第一点の質問です、  それから、先ほどホテルの従業員の方々に対する何かひどい話が指摘されておったので、あれは指摘があったから触れませんけれども、これは労働基準法その他からいっても問題があると思うんですが、夜たくさんのお客さんが泊まっているし、空き室があるにしてもかなりな客室に客が入っておる。そういう状況の中で、何か夜中のホテルの従業員が交換手さんを入れて七人とか九人とか言っていましたね。これは旅館業法その他の中でもちょっと考えてみる必要があるんじゃないかと思いますが、この辺に対しての対応はどうされますかということ。  それからもう一点、これは新聞報道だから余り明確に私もわからないんですけれども、日本交通公社協定旅館連盟、いわゆる公旅連の賠償責任保険、これにニュージャパンの場合は一億五千八百万円程度しか入っていないということで、たくさんの被害者を出しておりますが、補償の問題も自力ではなかなかできないんじゃないかという問題もありますし、台湾、韓国の方々の被災者からはこれは国際問題として発展する心配もあるのではないかと思われますけれども、この辺についての配慮はなさっておりますか。  以上。
  127. 梅野捷一郎

    説明員梅野捷一郎君) お答えいたします。  先ほどの最初の御質問でございますが、建築物防災対策要綱で実施をいたしております過去の建物に対する状況でございますが、ホテルにつきましては二百六十五棟の対象があるわけでございます。これにつきましては、五十四年度から五十八年度までという五年間の期間で改修を進めていきたいという対象物でございます。昨年の九月末現在では、改修が終わっておるものが百三十二棟、いまだ終わっていないものが百三十三棟、約半数が終わっているという状況でございます。その段階でのまだ完了していないもの、その内訳は、工事中のものが十七棟、改修計画を作成しているものが六十二棟、いまだ計画をつくるにも至っていないというものが五十四棟でございます。私どもは、いま申し上げましたように五十八年度までということではございますけれども、個別の指導に入って、なるべく早く進めていきたいというふうに考えております。
  128. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 先ほども申し上げたわけでございますが、労働基準法違反につきましては私ども厳正にこれを監視をしていくという立場でございます。  なお、先生お尋ねの点は、夜の従業員数につきまして業法上どうであるかというお尋ねであるようでございますとすれば、専門の省庁に譲りたいと思います。
  129. 田中治彦

    説明員(田中治彦君) お答えいたします。  旅館業法上の営業許可のときに、従業員の数の最低数を決めたらどうかというふうな御指摘でございます。旅館業法は、主として公衆衛生の保持増進を目的として制定されたものでございます。そういうような観点から、旅館業法では営業の施設について採光、防湿というような衛生上の措置がいろいろ決められておるわけでございまして、ただこれらの施設を衛生上問題のない状態で保持するというためには従業員の充実が望ましいということは、もうこれは申し上げるまでもないことで当然なことでございます。しかし、ホテル、旅館等の施設も管理法もそれぞれ異なるというような状況におきまして、一律にその従業員の数の基準を定めるというふうなことは適当でないというふうに私ども考えておるわけでございます、
  130. 松田篤之

    説明員(松田篤之君) 旅館の関係の賠償責任保険の関係の御質問でございますけれども、確かに旅館の場合には、火災保険でございますと大体八万五千件ぐらいある旅館がほとんど火災保険に入っておりますけれども、賠償責任保険の加入状況は必ずしも思わしくなくて、先生御指摘の日本交通公社協定旅館連盟の団体扱いの保険というのを保険会社が引き受けておりますけれども、この加入会社数が大体四千六百件ぐらいございますが、その中でも、いわゆる一事故当たりの保険金額が十五億円を超すような保険に入っている旅館というのはわずか六百程度でございまして、その約半数が今回事故に遭いましたホテル・ニュージャパンのように一億円程度、一億五千万といった、大事故の場合には十分被害者に報いられないような金額になっているのが事実でございます。  したがいまして、私どもは保険会社の方を監督している立場でございますので、商売をしっかりやれと言うのも妙な話でございますが、できれば旅館、ホテルを監督している方生から、被害者が万一の場合には十分救済を受けられるように、こういう保険もあるのだから加入してくれと指導いただければ大変ありがたいと思っております。
  131. 神谷信之助

    神谷信之助君 先に、いまのホテル・ニュージャパンの火災問題でお尋ねをしたいと思います。  最初に建設省に一問だけお伺いしますが、けさの報道によりますと、昨日、東京都が建築基準法に係る立入検査をやったと、そういう報道があります。    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕そして、これは私ども現場を見てまいりまして、建築構造上の欠陥が非常に多いということを当委員会は現場視察をしてお互いに確認をしたわけですけれども、それに対して東京都の担当の方の話では、竣工検査は、そのときに疑わしいことがなかったら破壊検査までやらなくてもいいんだという御趣旨の発言があるんですね。ところが、一昨日、消防庁の案内で見ているときに、消防庁の話では、あの建物は初めからホテルにするために建てたんじゃなしに計画はぐるぐる変わって最終的にホテルになってきておる、だから構造上も非常に複雑といいますか、いろいろ問題はあるんだという説明があったんですがね。そういう点から言うと、そういういわゆる工事計画から工事中、竣工に至る間にいろんなそういう用途の変更に伴う問題というのが当然私はあったんではないかというように思うんですよ、だから、この破壊検査というのは、しかも多数の方々が泊まり、その人命、安全を保障しなきゃならぬ建築物でありますから、そういう点ではやっぱり破壊検査をやってはっきりしなければ、外観だけではわからないようなそういうことが火事になって初めてわかったというようなことでは安心できないだろうというように直観したんですがね。ですから、これは建設省の方でも東京都の立入検査の報告を受けた上で検討されると思いますけれども、現行法でもそういう破壊検査までやる必要がこういう特定の建造物に対しては必要なんではないか。この点の指導は一体どうだったのか。もし、それができないとするならば、やっぱりその点についての法的な措置考えなきゃならないのではないか。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕 とりあえずこういった点についての建設省の見解だけお聞きしておきます。
  132. 梅野捷一郎

    説明員梅野捷一郎君) お答えします。  ただいまの御指摘でございますが、ホテル・ニュージャパンの火災におきまして、基準法との関係につきましては、それまで警察の現場検証等がございまして、東京都の実地の調査というのはおくれていたわけでございますが、私どももいろんな方面からの御指摘もございまして、早く実態を把握するようにということで、われわれの方からも東京都に指示をしていたわけでございますが、昨日現地に入りまして最初の調査をいたしております。その結果、千五百平米で防火区画をやれというような規定とか、防火ダンパーというようなところにどうも一部違反事実が認められるようだというとりあえずの連絡はいただいております。昨日現地に最初に入った段階でございますので、その後の詳細についてはこれからはっきりしてくるというように考えておりますが、いま御指摘の検査の過程、それもその違反事実等の関係でどういう段階でそういうものが出てきたのかということも詳しく検討をさせたいというふうに考えておるわけでございます。  先ほど御指摘のありました。途変更等に伴います問題につきましては、一般に増改築等をいたします場合には従前の建物をそのまま使えるということではなくて、新しい増築後の使い方に合わせて適法な状態にしなきゃいかぬというのがたてまえでございますし、当然そうなければいかぬわけでございますので、そういうことの影響のあるところは御指摘のあるように十分な配慮がされるべきだというふうに考えております。
  133. 神谷信之助

    神谷信之助君 これはいずれまた建設委員会ででもいろいろ追及されると思いますから、きょうはとりあえずその点だけひとつ検討方をお願いしておきたいということで、建設省の方は結構でございます、私の方は。  あと、いろんな問題があるんですが、きょうは一つだけ何したいと思いますが、それは感知器と自動火災報知機ですか、この問題ですね。報道によりますと、非常ベルのスイッチがオフになっていたという報道がありました。一昨日現場も行きまして見ましたら事実オフになっておった。九階の方の煙感知器が感知をして九階のところの明かりがついてベルが鳴ると。だから、自動ではなくて、ふたをあけて手動でやるというわけですから、自動はオフになっていたというのは私どもも現場で確認ができたわけですけれども、なぜそれがオフになっていたのか、その理由について消防庁の方ではどう聞いておられますか。
  134. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 非常火災ベルのスイッチがオフになっておったというのは事実のようでございます。この点につきましては防災上大変な大きな問題でございますと同時に、警察とされましても犯罪捜査の観点からもこの問題を非常に重視しておられるようであります。  なぜオフにしておったのかということにつきまして、私どもといたしましては、東京消防庁を通じていろいろ聞き合わしておるところでございますけれども、東京消防庁といたしましては、ホテル側から、なぜオフにしておったかということについての最終的な明確な回答はまだ得ていないという報告を私どもにしてまいってきておるわけであります。なぜオフにしたかということにつきましてはいろいろ憶測されるわけでございますけれども、東京消防庁としては責任を持って、まだホテルの方からの回答を得ておりませんので、もうしばらくお待ち願いたいという次第でございます。
  135. 神谷信之助

    神谷信之助君 ホテル・ニュージャパンで使っていた自動火災報知機ですね、これのメーカーの名前及び型式名、これはつかんでおられると思いますが、いかがでしょうか。そして、それは全国及び都内でどのくらい使われておりますか。
  136. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ちょっと専門技術的な御質問でございますので、私の方の技術監理官からのお答えを御了承いただきたいと思います。
  137. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) ホテル・ニュージャパンで使用されておりました自動火災報知設備の受信機、感知器の製造メーカーは現在のホーチキ株式会社でございます。型式は、受信機にありましてはPH1−二〇〇AZでありまして、そのほか煙感知器はイオン化式のもの、熱式の感知器は差動式分布型のものがそれぞれ使用されておりますけれども、各感知器の型式については現在わかっておりません。  また、先ほどの受信機の全国及び都内での設置台数については把握しておりませんけれども、メーカーの話によりますと、この型の受信機の出荷台数は約一万三千台と、このように聞いております。
  138. 神谷信之助

    神谷信之助君 それで、この機械は日本消防検定協会の型式認定を受けている、認定されているというように聞いておりますが、この型式の製品は何に基づいてその規格が決められておるのかという点はいかがですか。
  139. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) この受信機は昭和四十四年十二月に型式承認を受けておりまして、昭和五十二年の十月の火災報知設備に係る技術上の規格を定める省令の一部改正に伴う型式承認の失効告示、昭和五十三年に出ておりますけれども、これによりまして型式が失効となっておりまして、法第二十一条の五第一項ただし書きの規定によりましていわゆる今後利用できる期限が定められております、また、この製品は、そのただし書きの規定により期限が定められておりまして、昭和五十五年五月一日までの間販売されておりました。
  140. 神谷信之助

    神谷信之助君 ですから、四十四年の十二月には認定はされておりますが、五十三年には失効している。そして、猶予期間があって、その製品自身は五十五年五月一日以降は出しておらない、こうなっておりますね、だから、ニュージャパンで使われた機械そのものが現行の規格にはもう適合しなくなっておるわけです。そういう機械ですよね。そういう状況になっている。ですから、さっきのホーチキ株式会社ですか、これにも聞きましたら、現在はもう製造も販売も中止をしているというものになっているんですね。それがいまもなおニュージャパンで使われているという、これはどうしてですか。
  141. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) 消防法施行令第三十条第二項及び危険物の規制に関する政令第二十二条第二項の技術上の基準に関する特例を定める省令というのが昭和五十二年に出ておりまして、これによりますと受信機の場合に利用できる期限が十九年となっておりまして……
  142. 神谷信之助

    神谷信之助君 十九年ですか。
  143. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) はい。おおむね昭和七十年ぐらいまで使えることとなっております。
  144. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま十九年と言われたのは中継器の方でしょう。
  145. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) 受信機でございます。
  146. 神谷信之助

    神谷信之助君 煙感知器の方は十五年、熱感知器は二十年ということですね。受信機は十九年。
  147. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) はい。
  148. 神谷信之助

    神谷信之助君 なぜこの猶予期間が認められているわけですか。
  149. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) これらの機械は、維持管理を十分に行われていた場合に、先ほどの猶予期間の間は火災時に所要の機能を発揮するものであるということが技術的検討の結果明らかになっておる関係でございます。
  150. 神谷信之助

    神谷信之助君 特に煙感知器の問題で言いますと、煙感知器が基準が変わってくる、そうして、それにまず連動するのが受信機、こういった全体としては失効だという状況になってきておりますね。しかし、この旧式の場合なぜそうなったのか、その旧式の場合の特性ですね、それは何だったのかという点はいかがですか。
  151. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) 昭和四十四年の基準によりますと、非火災報を防止するために不作動試験というのをやっております。それからまた、老化試験と称しまして、長年月の使用に耐えるかどうかの試験をやっております。それからもう一つ防水試験というのをやっておる、このようなものが旧型感知器の非火災報に関する性能ということができると思います。
  152. 神谷信之助

    神谷信之助君 むずかしいことはようわかりませんが、問題は、要するに煙が発生をした、ところが、その感度が非常に鋭いために火事にまだ至らない状態でも報知をしてしまう、いわゆる火災にあらざる報知、非火災報がある、そういうものが起こってくる。そうすると、ホテル、旅館のようにたくさん人がおるところでしょっちゅう夜中に起こされたらたまったものじゃないと、こうなってきますね。だから、そういう点ではそういう旧式のやつでは非火災報のそういう事故というのがどうしても多い、信頼度が非常に少ないという状況があって、そういうことの多発による弊害といいますか、これが起こっているというように思うんですが、この実態はどのくらいつかんでおられますか。
  153. 渡辺彰夫

    説明員(渡辺彰夫君) 煙感知器の非火災報につきましては、庁内等におきまして非火災報の検討委員会を設けましていろいろ調査したところであります。その調査に基づきまして、現在の基準におきましては非火災報減少のために約三つほどの試験が追加され、基準が改正された次第でございます。
  154. 神谷信之助

    神谷信之助君 どうもちょっとわからぬのですが、私もいろいろ調べてみますと、「火災」という雑誌ですか、それでは、自動火災報知設備の非火災報の原因という調査もあります。そういう非火災報の多発が居住者の不信を招いて逆に火災の被害を大きくするという例が、札幌市の消防局とか自治省の消防研究所の資料とかというのがありますわね。私も、消防研究所も現場一遍見せてもらったことがありますが、市販の感知器を、熱感知器や煙感知器を集めていろいろ試験をやられていましたがね。だから、そういう点でいろいろ工夫され、検討されながら来ているのですよ。ところがニュージャパンはその旧式の状態のままであると。そうすると、連動していますともうしょっちゅう鳴るわけでしょう。しょっちゅう鳴ったんではこれは客商売ですからぐあいが悪い。営業上ぐあいが悪いし、それから、またかということで今度は信用されなくなるということでオフにしているという状況が生まれていたんではないかというように思うんですがね。この点は、先ほどはもう一つはっきりわからなかったようですが、その点はどういうように考えておられますか。
  155. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいま技術監理官から御答弁を申し上げましたように、四十四年型のいまホテル・ニュージャパンでつけておりますいわゆる旧式と申しますか、以前の感知器につきましては、非火災報を防止いたしますために、監理官がお答えしましたように、不作動試験と老化試験と防水試験とこの三つをやってまいったわけであります。しかし、どうも非火災報が多いということもございまして、先ほど説明申し上げましたように、規則を改正いたしまして、その後さらに非火災報を少なくしようということで、粉塵試験と衝撃電圧試験それから湿度試験と三つを加えまして、いま新しい型の認定をやっておるという状況になっておるわけであります。  そこで、いま先生も御指摘ございましたように、非火災報をできるだけ減らそうとすると、感知器自身が非常に鈍感になっていざのときによほど煙が立たなければ報知をしない。敏感に働かせると絶えず鳴っておりまして非常にお客も迷惑だということがございます。そこで、率直に申しましてこのかね合いをどの辺に置くか、と同時に、有効に作動させるためにはどうするのかという問題だと思うのであります。  いま先生もお話ございましたように、私の方の消防研究所ではかなりこの辺の研究を長い間やってきておるわけでございます、と同時に、もう一つはこのような煙感知器とあわせまして他のシステムも組み合わせまして、何らがもっとシステム的に火災の報知、感知ができないかということも並行しながら、いまいろいろ専門家の方々にお集まり願いまして研究会をやっておるわけであります。確かにこの辺は、火災報知器の感度の問題というのは、お示しのように問題だと思っております。ただ、その結果が今回のホテル・ニュージャパンのあのスイッチを切ったのにどう結びついたのかという点につきましては、前段御答弁申し上げましたように、まだ十分解明はできておりませんので、いずれにいたしましても東京消防庁あるいは警視庁の捜査なり調査を待ちまして私ども確認をいたしたいというふうに存じておるところでございます。
  156. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれにしましても、会社の方で一万数千台販売をしておるわけですね。それが新式にどれだけかわっておるかわかりませんが、旧式のやつも相当使われておることは事実でしょう。私どもニュージャパンに立入検査をしたり聞いたりする権限はありませんからね。だから、いまニュージャパンと同じ機械を使っているホテルを調べてみたんです。  ヒルトンホテルですね。これは消防庁の「適」マークをもらっているホテルです、ここのチーフエンジニアの伊藤寛さんという人に聞きました。そうしたら、非火災報の実態は、五十年当時は月五、六十回もあって、そしてパニックに近いようなことが起こっている。ですから、煙感知器の位置をあちこち変えてみたりいろんなことをやって、最近では月十四、五回、今月の二月に入ってからの記録を見せてもらいましても五回非火災報が起こっているんですね。ですからこのヒルトンの場合は、消防署の御指導で自火報と連動する非常ヘルスイッチをオフにしているんです。手動に変えているわけです。だからこれはニュージャパンの状態と同じ状態にしているのです。ですから、ニュージャパンの場合も、オフにしておるということは消防署自身もよく御存じのはずだろうと思う。あるいは指導があったんではないだろうか。というのは、査察というのは消防署は非常に厳密に細部にわたって行っておられるので、見逃すはずはない、ヒルトンホテルの場合も年二回公式の査察があって、そのときは十名からの消防署員が来てまる一日徹底的に調べる。そしてその結果は、立入検査の結果通知書、このくらいの厚い文書でカーテンがどう、じゅうたんがどうと非常に細かい点についてまで指示される。それがあるからまた経営者の方も改善をしていくということもある。と思うんですが、そういうことで改善が求められておる。こういう公式のやつが年二回はあって、それ以外に年に四回。だから、合計すると年に六回はヒルトンホテルの場合はありますと、こういう話です。  問題は、スイッチをオフにしているでしょう。それで、たとえば九階なり十階なりで感知して、その部屋のベルが鳴ります。そうすると、オフですからこれすぐスイッチを入れるんだけれども、入れる前に本当かどうかというのを見に行かなきゃいかぬわけです。現場を確認しなきゃいかぬわけです。そうすると、感知器が知らせてから、確認をして、そして実際にその火災現場、九階なら九階にベルを鳴らすと、そういう動作を起こすのに最低四分はかかるというんです。場所によるともっとかかる。消火活動をやる場合、一番重要なのは初期消火でしょう。そうすると、最低四分はかかるということを消防署も認めるということになっていると、これはちょっと私は問題だと思うんですよ。  だから、もうヒルトンホテルの場合は、ニュージャパンの火災以降は消防署に言われぬとも、とにかくもうすぐオンにしています、現在は、もしものことがあったらえらいこっちゃということでオンにしているというんですよね。そこで、オンの場合当然非火災報がどんどんふえてくるので、そういうことになると非常ベルが自動的に鳴ってくる、客商売なんで困っておるという話をなさっているんです、そうして、新式にかえる計画はいまのところあるようです。もうこうなってはいかぬなということになって、機械を新しくかえるという計画をいまなさりつつあるようですよ。これは「適」マークなんですよね。そうすると、先ほどの、非常に厳重ななにで「適」マークをやっているんだけれども、「適」マークのところでもそういう古い形式の自動報知機があり、しかも消防署もやむを得ぬなあということでオフにすることを指導されている。そうすれば、実際に出火してそれを感知しても、少なくとも四分以上はかかると、こうなりますからね、これは大変な問題だというように思うんです、  そこで私は、こういうことを聞きますとやっぱり、当該の麹町消防署の方も、とりわけニュージャパンに対しては問題ホテルですから、年に数十回にわたってやいやい言っておったというように東京消防庁の方もおっしゃっておるわけで、ですからそういう状態。しかもあれは、防災センターはホテルの外にありますからね。ああいう場所に置いておいて、さてといって走ったって、これはヒルトンホテルよりもよけい時間かかる。そういう場所にセンターが設けてあるという状況ですからね。そのことは当然御存じだったはずだと思うし、また、オフにしているという状態も承認をされる。あるいはそういう指導をされていたか、そういうことがヒルトンホテルでやられているんだから、同じようなことになっていたんじゃないか、こういうように思うんですけれども、もしそれを知らなかったとしたら、一体何の査察していたんだということになりますね。ヒルトンホテルは細かくやってこっちは見逃したのかと、こうなります。この辺はどうも理解に苦しむんですが、消防庁どういうふうに聞いておられますか。
  157. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 私どもも、なぜオフになっておったのかということについて、ただいま申し上げましたように、まだホテル側からの明確な答えをもらっていないということでありますけれども、オフになっておったことはもう事実だということは東京消防庁は申しております。そこのオフになっておった状況を詳細まだ東京消防庁からいろいろ、これ非常に重要な問題でございますので聞いておるわけでございますけれども、現時点におきまして東京消防庁からの報告では、受信機の主音響スイッチ、主のところでございますが、そこは入っておったと、地区のベルはオフになっておったということは承知しておったと東京消防庁は申しております。したがいまして、主なところは入っておりますから、地区のところで切れておるわけでありますから、地区のベルが火災信号を受けましたらベルが鳴らせるように絶えずその使い方なりを十分身につけておいてほしいということは、査察あるいは視察の都度、指導してまいってきておったという報告を受けているところでございます。
  158. 神谷信之助

    神谷信之助君 それはおかしいですよ。一昨日現場に行きましてそこで説明を聞いたら、そこのセンターにおるのは警備会社の警備員、ガードマンが五人おって、そうして出火当時は仮眠三人、起きていたのは二人だと。そして、その警備員はその機械の操作の仕方は知らなかったようだそうです。そして、その警備会社とニュージャパンとの契約は一体どうなっていたんだろう、こういう疑問がわくわけですね。  そこで、そこいらの話では、いや、警備会社は駐車場中心の警備をやられておって、ホテルの中に余り入らぬようにと言われておったらしいですよと、東京消防庁ですかの、おととい行ったときの話に出ていますね。そうすると、ホテルの火災発生に対して責任を持たない者がセンターにおったということになるんですよ。それを消防署は何遍も査察しながら知らなかったといったら、一体何を査察しているんだということになる。知っていたら、直ちにそこで指導をしなきゃならない問題である。だから私は、そこのところは非常に大事な問題、機械の問題、そしてオフにしているのとオンにしているの——オフならオフで、二人や三人ではもうこれだったら間に合わぬですよ。現場へ走る者と、そして確認をしてすぐやる者と、それでも最低四分かかるというような事態がそのまま許されていいのかどうかと、こうなります。  それで、現在の新型でも、十分開発された新型でも確かに非火災報はあります。しかし、非火災報の数はうんと減りますわね、それは消防研究所でいろいろ試験をやって大体うんと減るという状態。だから現行になっているんですね。まだまだそれは開発されていくでしょう。だけれども現状はそうなったままであって、しかもそれは「適」マークのホテルでそうなっているんですよ、ヒルトンホテルは。いまはもうオンにしたからその心配はなくなった。しかし、そのかわり非火災報がたび重なってくれば、これは不信を招くことになってきますね。だから、新型の機械にかえるにはいろいろな手当てをしなきゃならぬという問題もあるでしょう。問題は十五年とか十九年とかべらぼうに長い猶予期間ですよ。機械古いままで、まあ一定程度それは猶予期間というのは必要でしょうけれども、十五年や十九年というような、あるいは二十年というような、そういう猶予期間を置いてそのまま見逃しているという、そしてそれに対する指導というものが実際の現場に当たって、現場の人の意見を聞いてやっていない、私はそこが問題だというように思うんです。だから、これは重大な問題ですから、いずれまた当委員会でこの問題取り上げることになろうと思うんですが、ひとつこの点についてははっきり実態について報告をしてもらいたい、こういうようにお願いしたいと思うんです。  ほかの問題もたくさんあるんですけれども、きょうは法案審査がありますから、消防問題で一つ、消防庁あるいは消防署自身の指導の面で私は非常に重大だというように思いましたので、きょうはとりあえずその点を指摘をして、事実調査はひとつ抜かりなくしてもらいたいということをお願いして、この問題は終わりたいと思います。  それから次に交付税問題に移りますが、先ほどからお話がありまして、五十六年度地方税税収不足見込み、この問題いろいろ同僚議員からも質問をされています。先般も衆議院の予算委員会でわが党の岩佐議員がこの問題を取り上げて、そうして個々の自治体によって税収不足が相当出るであろう、したがって、その場合には減収補てん債発行その他しかるべき措置はとりますということは御答弁になっています。なっているんですが、この見通しですが、先ほどからも言って、とりあえずの措置交付税関係の方の措置だけはしたけれども地方税の実際の税収不足がかなりの部分出てくるとすれば。とりあえずこの減収補てん債をなさるという、そのほかの手当てをするということなんだけれども、大体どの程度に結論的に言いますと、もう一度確認の意味でどの程度と見ておられるかお伺いしたいと思います。地方税ですね。
  159. 関根則之

    政府委員関根則之君) 先ほどからの御質問に対しまして、どうも私の方で明確な数字をもってお答えをするというような状況にないものですから答えられなかったわけでございます。現在の状況は、先ほどからお答えを申し上げているようなことでございまして、都道府県税全体で進捗率が約三ポイント落ちておるわけでございます。したがって、これを単純に伸ばせばやはり一千億単位での、一千億オーダーでの減収が起こるという計算も成り立ち得るわけでございます。しかし、先ほどから大蔵省の方からの説明もございましたように、十二月での法人関係税が特に大企業を中心として入りぐあいがよくなっておると、そういった問題もありますので、私どももこのままで推移をするというふうには考えていない。希望を持って、また上向いてくるであろうということを希望を持って期待をしておるわけです。しかし、それじゃ、その期待がどの程度まで期待できるんだということになりますと、またそれ必ずしも明確にお答えできない、こういう状況であるわけでございます。
  160. 神谷信之助

    神谷信之助君 国税の方は特に三月決算期待して相当伸びてくるだろうという大体見通し予算委員会でも言っておられますけれども、しかし地方税の場合は、地方税法人二税は三月決算入らぬでしょう。そうしますと、結局十二月のやつが大体マイナス一三%ですか、そうするとあと一月、二月分の範囲ぐらいなんですよね。そうなると、私はそう大きな伸びを見るということは、国税の方はまたそういう言いわけというか希望を託すことが仮に可能であったとしても、地方税法人二税についてはそうはいかぬのじゃないかと思うんですが、どうですか。
  161. 関根則之

    政府委員関根則之君) 確かにおっしゃるとおり国とのそこのところが違いがあるわけでございまして、私どもの方は、十二月以降は三カ月分の決算法人収入が入ってくる可能性があるわけです、国の場合にはそれが五カ月という形になるわけでございまして、これからに回復期待をする余地というのがそれだけ少なくなっているということは間違いない事実でございます。しかし、いずれにいたしましても、法人税につきましては私ども正直なところ大変心配をしております。完全にこれが回復できるのかどうかということについては、必ずしも明確に完全に回復できますということまで言い切れないというのが実情としてあるわけでございます。ただ、幸いなことに自動車関係税でありますとか、あるいは個人関係税収が比較的順調に伸びておる、計画を上回って伸びておりますので、地方税全体といたしましては何とか計画額をカバーできるのではなかろうか、こういう期待をしながら推移を見守っておるというのが実情でございます。
  162. 神谷信之助

    神谷信之助君 ですから、個別の自治体の経済的条件によってアンバランスができますから、したがって、従来やってこられたような減収補てん債その他の措置をとりあえずはとらなきゃならない、こういうように思うんです。  問題は、もう一つ今度は交付税の方ですが、今度交付税は、補正措置されておるのはまだこれも一部であって、あと実際に国税法人税収入が減になってきますと、この辺の精算が五十八年度にやらないかぬということになりますわね。現在の段階の補正の部分については、臨時の部分と、それから片一方の借入金で一応処理したことになる。だから、これから予想されるのは、私ども予想で言えば相当大きなものになるというような見方をしておるんですね。だから、交付税で恐らく七千億前後でしたか、ぐらいの影響が出てくるのではないかという心配もしておるんです。そうしますと、これ五十八年度に精算をするということになることは、五十八年度交付税会計がそれだけ頭から削られるということですわね。しかし、そういう状態になっても地方自治体財政運営に支障のないように、従来のいろんな手法を駆使をして解決をいたしますということになるんだろうと思うんですよ。  しかし、五十八年度という年はそういうことができるような条件があるんだろうか、いまの国の財政推移考えると。五十七年度予算の編成でゼロシーリングであって、そして防衛費それから海外協力でも特別のところは突出したけれども、ほかのところはもう大なたをふるってきている。それから、五十八年度は、いま国会の予算審議でも出ていますように、防衛費がさらに後年度負担がばっと出てくるという年度になるでしょう。だから、五十八年度予算というのはゼロシーリングじゃなしにマイナスシーリングになるんじゃないかとさえ言われる、そういうときに、交付税財源といいますか、自治体財源をちゃんと確保するというのは、ことしよりもより一層厳しい。このままで行けばですよ。いまの政府の方針が貫かれる——僕らは変えると言っていますけれども、いまの政府の方針が貫かれるとすれば、五十八年度地方財政財源措置というのはもっともっと厳しくなると思う。  われわれから見ていますと、そういう五十七年度予算を組むときに、去年までは財源不足が多かったのに、うまいぐあいに今度はとんとんになりましたとうまいこと計算をして、それでもいろんな手当てをしてやらないかぬと、こうなってきていますね。これ、五十八年度になったら、そういう精算分を含めて、しかも国の財政状況、このままの状態で推移すれば大変厳しくなると思うんだけれども、この辺についての見通し、口約束にならないで、必要な財源というものが確保できるというように言い切れるかどうか、この辺いかがですか。
  163. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 最初の、五十六年度地方税減収分につきましては、私の方からお答えすべきところをお答えしなかったわけでございますが、たびたび申し上げておりますように、その団体財政運営の状況を踏まえて、必要があると認めた場合は減収補てん債による財源措置等を含めて支障のないように私どもとしてやっていきたいと思っております。  そこで、問題は国税三税の動向でございますが、今回の補正予算における所得税に対応する部分はいま御措置をお願いをしておるわけでございますが、今後一体どういうことになるだろうかということについては私どもも重大な関心を持っておるわけでございます。しかし、直接に担当しておられます大蔵当局においては、今回の補正予算における税収見込み、最終的に見込んでおるものについてはいろいろな要素を前提にして、できる限り適切な税収見積もりを行ったということを聞いておりますし、またたびたび大蔵当局の方からもその点については必要な額は確保できるという見通しを持っておられるわけでございます。私どもとしては、直接担当しております大蔵当局においてそういう考え方を持っておられる限り、そのとおりに税収が確保されるということを期待しておるわけでございまして、そういった前提考えざるを得ないわけでございます。  したがって、それ以外のことについては、まことにこれ仮定の話になりますので、私どもとしても国のそういったものを含めて全般的にどうこうと申し上げる立場にないわけでございますけれども先ほども申し上げましたように、仮に見込みが違ったと——大蔵当局は違わないと言っておるわけでございますが、仮に違だとした場合はどうなるかということを申し上げますと、本年度はこれは補正が組まれない限り予定どおりの交付税は確保できるわけでありますが、その分翌々年度において精算をするということになりますから、その分減れば精算減ということになってくるわけであります。したがいまして、五十八年度地方財政がどうだということは五十七年の末にいろいろ検討するわけでございますけれども、その際に全体の税収の動向なり、また、地方税の動向のみならず国税三税の動向等を十分踏まえて、私どもとしてはその精算分も含めた場合どうなるかということを歳入面ではいろいろ試算をいたします。一方、歳出面では引き続き抑制基調に立っていくことだと思いますけれども、いろいろな標準的な仕事ができるような歳出を確保するということで、その間で収支がどうなるかという見通しを立てて、その場合に必要な歳出が執行できるような、そのための財源措置というのは十分考えてまいりたいと思っておるわけでございまして、その際に具体的にどうなるかということにつきましては、私どもとしてもいま答え得るような状況ではございません。  政府経済見通し等についてはもう御承知のとおりでございまして、もろもろの努力をしながら閣議決定された線を、名目成長率八・四%、実質五・三%というものはこれは実現していく努力をしていかなければなりませんが、そういったものが実現されていく過程においておいおいに税収見込み等も出てくると思います。それを見ながら対応をしていかなければなりません、いまどうなるかということを前提としながら、私どもとして具体的にこうするということは申し上げられませんが、われわれとしては、これはもう過去のことを見ていただきましても、全体として地方財政が適切に運営できるような手段はいろいろな方法がありますけれども、そのときにおいてこれが一番適切だろうというものを見出して措置をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  164. 神谷信之助

    神谷信之助君 これはもう一遍、きわめて政治的な問題になりますからね、大臣が来ておられたら大臣に聞かないかぬ問題なんで、ですからかわって政務次官にひとつ決意といいますか考えを聞かせておいてもらいたいと思うんです。  ただ、われわれが思うのは、たとえば今度の補正でもそうですが、減収になった分は特別会計から借り入れて、そちらへ返すときには、本来国が全額持つべきものを、五十三年以降ルール化されているからといって、二分の一は地方負担をさせるという手法がとられてきているわけですね。これが五十九年度からでしたかいよいよ償還期に入っていくわけでしょう。そういう問題も出てくるわけですね。そこへもってきて今度は、先ほども同僚委員からありましたように、そういう税収見込みの食い違い、しかもその原因になるのは、可処分所得をふやさない、この五、六年間にわたって所得税の減税もやらない、国民のふところをますます寒い状態に置いてきている、消費不況と言われるいろんな状態をつくってきている経済政策の失態も少なくとも一つの原因だ。だからそれは、この二分の一は地方団体が見てよという、そういうルールに従ってやってきているというそのこと自身は、いままでもわれわれは一貫して反対してきているんですね。だから、こういう手法をさらにまたより一層厳しくやってくる、地方負担がふえるというようなことはとうてい許されるものじゃない、それ以上に許されるものじゃないというように思うんですが、その問題の解消を含めて政務次官のお考えを聞いておきたいと思うんです。
  165. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) お答えいたしたいと思います。  五十六年度国税三税の今後の問題並びに地方税の問題等につきましては、先ほど来御指摘いただいておりますように、いろいろと不安要件もあるわけでございます。しかしながら、また反面大蔵当局の方もこの場で申し上げておりますように、確保するというふうな立場でがんばっておるわけでございまして、われわれは何とかひとつ現時点における予定どおりの確保をすることに努力をしたいと考えております。しかし、万が一のことがあった場合には、先ほど財政局長が申し上げましたように、適切な措置をして地方財政の運営のよろしきを得るようにしたいと、こう思っておるわけでございます。
  166. 神谷信之助

    神谷信之助君 五十八年にもう一つかかってくるのは、第二臨調の基本答申が出ることになっていますね。これには国と地方との事務の再配分問題と、それから当然それに伴う国と地方財政のあり方の問題なんかについても検討をされているというふうに聞いているんです。したがって、この事務の再配分問題はまたいずれいつか機会を見て議論をしたいと思いますのでそっちの部分は別にして、財政問題ですね、これについて今日まで臨調の方から自治省に対して資料の提出あるいは聞き取りというのですか、調査ですか、そういったことがあったのかどうか、この点はいかがでしょうか。あればちょっと中身をお答えいただきたいと思います。
  167. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 昨年の第一次答申に先立っていろいろと事情聴取をされ、また、私どももるる説明をしたことはございますが、今回については、まだそういった機会はございません。これから多分、来年度地方財政計画等を踏まえながら今後のあり方についていろいろ意見を聞かれることになるのではないかと思っております。
  168. 神谷信之助

    神谷信之助君 先ほどもちょっと出ておりましたが、臨調の委員の中には、交付税率を引き下げるという話も出ているということも報道されています。それに対しては、自治省としては、三二%を下げることには反対だ、しかし、いまの国の財政状況を勘案すれば、引き上げることも考えていないという答弁があったと思うんですが、交付税率の引き上げは考えてもいないというように聞いたんですが、その点はいかがですか。
  169. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 先ほど私が申し上げたことは、若干前提が違いましたので、ちょっといまの臨調に関連しての私ども考えを申し述べさしていただきます。  御承知のように、臨時行政調査会では行政の簡素合理化を図るという見地から、歳出全般にわたる見直しが進められておるわけでございまして、その中で地方交付税の問題も議論されているとは聞いておりますけれども、いま申し上げましたように、具体的にどういう中身でやっておられるかということは承知しておりませんし、私どもが詳しい説明をしたこともないわけでございます。ただ、地方交付税は国庫補助金や各種の経費等の一般歳出とは根本的に異なっておると私ども考えております。国、地方間の事務配分と経費負担区分に見合って国と地方の間の税源配分の一環として設けられておるものでありますから、地方公共団体共有の国有財源考えるべきものだと、私どもはこう考えております。そこで、国の財政事情を理由として、いま申し上げましたような国、地方間の基本的な財源配分の方式であります地方交付税率のあり方を問題として取り上げるということは適切でないと私どもとしては考えておるわけでございます。また、地方財政の現状から見ても、非常に累積した赤字を抱えておるわけでございまして、適当ではないし、問題であると思っておるわけでございます。  今後臨調においても、国と地方との機能分担のあり方とあわせて、国と地方間の財源配分のあり方について検討されるのであろうと私ども予想しておりますが、その場合におきましては、かねがね私ども主張しておりますように、地方の自主性、自律性を高めるという方向で行政事務の配分ということが検討をされるべきものだと考えておるわけでございます。したがいまして、そこで検討される財源配分についても、地方税地方交付税等の一般財源の充実が図られるべきものだと考えておるわけでございまして、先ほど申し上げましたのは、五十七年度の地財対策の際に一応収支の均衡の見通しがついたのでそれは言わなかったという意味でございまして、今後のあり方は、いまの国と地方との機能分担のあり方で、それはむしろ地方の自主性を高める方向だとなれば、一般財源のあり方も当然そこで検討をされるべきものだと思っておるわけでございます。
  170. 神谷信之助

    神谷信之助君 これ、報道を見ていますと、たとえばある新聞の社説なんかは、「交付税への疑問残す地方財政計画」と題していろいろおっしゃっている。その中で交付税率を引き下げろと言われているのですね。その論拠は、交付税の基準財政収入額のとり方についてよく実態を御存じなく論じられているようにわれわれから言うなれば思うんですよ。すなわち、標準税収を府県は八〇%、市町村は七五%にしていますわね。それがけしからぬ、こういうことをしているから自治体が勝手なことをする、だからそこは削れるんじゃないかとか、あるいは、財政需要についても、義務的行政以外の任意的なものはもう全部やめると、こういう論議で、それを根拠にして交付税率の引き下げ、あるいは交付税制度そのものに批判をするという見解も出てきているんですね。  こういった問題はどうお考えですか。
  171. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 全般的に、昭和五十四年度に四兆一千億も見られた財源不足がだんだん縮まってきて、五十七年度においては収支が均衡するといったようなことで、何となく地方財政全般としては楽になったような印象が外へ出ておるのではないかと思いますが、こういった形になりましたのは、私どもとしては、歳出面においてきわめて抑制的な基調に立って節減合理化を進めるという前提に立ってやっておるわけでございます。節減合理化をしながら財政再建に向かっていきたいということでございます。その結果がこういうことになったのでありますが、それでも私どもは、これで収支が均衡されて地方財政が完全に健全性を取り戻したとはちっとも考えていないのでありまして、今回の収支の均衡についても、いずれ御審議はいただくわけでございますけれども、三二%の法定分では足りなくて、約千億近い金を借り入れて、それでやっておるということと、先ほども御指摘がございましたが、五十六、七、八とこの三年度間は交付税特別会計における借入金を返還をいたしませんで、五十九年度以降に送り込んでおる。本当は、従来どおりの条件であるならば、本年度も五十七年度もかなりなものを返還すべき状況にあるわけでございますから、そこを含めて考えなければならないという点がある。そこらの詳細な点はなかなか世間にはわかりにくいという点もあるだろうと思っております。  それと同時に、私どもは、地方財政の仕組みについてはなかなか複雑でございまして、三千三百の団体についてマクロ的に一応とらえておるものですから、そこの点がなかなか理解しにくい点があろうかと思っておりますが、われわれとしては、地方財政計画の中で標準的な事業ができるように、そしてまたそういった意味において、交付税のみならず地方税収入もみんな含めての収支の均衡というものを考えてやっておるわけでございますから、一部の地方税が標準税収としては七五%とか八〇%とかいうような物の見方だけで律してもらうのは非常に困るわけでございます、ただ、率直に申しまして、複雑でありますだけになかなか理解しにくい点があろうかと思っておりますし、私どももその点については十分各方面にこれを理解してもらう努力をしなければならぬと思っております。  ただ、御承知のように非常に流動的で不透明な経済動向でございますので、今後どうなっていくかという見通しを立てるのにわれわれもいろいろ議論はしておるわけでございますが、なかなか見通しがむずかしい。そういったことで、的確にこうなるであろうという前提のもとでの議論がしにくいという点も一つ支障にはなっておりますけれども、いろいろな材料をもとに私どもはいろいろな機会に地方財政の仕組みなり今後の問題点というものについては各方面にPRもし、御理解をいただく努力をしなければいかぬと思っております、
  172. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう一つ、たとえば臨調の中の意見として、これは報道でわれわれ知り得る範囲ですが、それでは、いわゆる地方の上乗せ福祉についての財源地方で持てというような、特別地方税というのですか、そういうものでひとつやれという意見も出てきたり、それから、地方財政計画を超えて支給されている人件費をカットすれば毎年一兆円ぐらいは浮くであろうとか、ちょっと理屈に合わない面もあるんだけれども、そういう議論も出ていると思うんですよ。  しかしこれは、私は国会に当委員会にずっと所属して数年余りになりますが、一貫して言っているのは、そういう意味では早く国と地方との事務の再配分、本来この仕事は実際直接利害関係を持つ地域、地方団体でやる、そしてそれに必要な財源というものを保障する、国から逆に補助金をもらったりなんかして、頭を下げて一々もらうんじゃなしに、そういう国の仕事に対して地方の仕事というものをもっとはっきりさして、そして、その地方の仕事に対する国の援助というものをどうするかというこの角度での事務の再配分、それに伴う財源問題というのを自治省自身も早く計画をすべきだ、そして、そのことは、やっぱり全体で議論を、地方団体を含め、国民的に議論をしていくということをやるべきだ。われわれはそういう角度からわれわれ自身の意見も申し上げてきておるんだけれども、それがなかなかできないうちに今度は財政難に陥ってくる。結局財政難では、国も財政難だからそんなことを言っても始まらぬじゃないかということで、当座しのぎのこう薬張りの仕事で来ているわけですね。  そういう中で臨調が国の財政の観点からいまそこへメスを入れようとしてきているので、私はそうなるとこの辺、地方自治、行財政責任を持つ自治省も努力をされたんだろうけれども、それなりの問題提起がいまだにできていないという点については、やっぱり重大な責任を免れないのじゃないかと思う。いろいろな研究会つくってやられていることも知っていますし、また、その一部分について当委員会でも私は批判をしたり問題の提起をしたりしたこともありますけれども、しかし、全体像というのはなかなか明らかになっていない。そういう中でいま臨調が進める地方事務の再配分及びそれに伴ういま局長言われるような財源問題、これに今度対応して議論をやれるかという危惧を持つんですが、この点はいかがですか。
  173. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 行政全般にわたることでございますから、必ずしも私から申し上げるのが適当かどうか別といたしまして、地方財政全般と絡む問題でございますので、率直に申し上げますと、国全体の行政事務の七〇%というのは地方負担しておる、これはもう事実でございます。しかしながら、国と地方との行政事務というのが非常に入り組んでおって、私どもに言わせればもう少し地方に直接仕事をやらしてもらっていいのではないかと思う分野が多いし、たびたびそういうことは指摘もし、また、行政局の方からは臨調の方にもそういう話はしてあるわけでございます。そこらが見直されてくれば、国庫補助金等の整理合理化というのももう少し具体的に進むのではないかと思っておりますが、いまのところまだそこまでは至っていない。ただ、第一次答申は、御承知のとおり五十七年度予算編成を前に、とりあえず財政再建に資するような面についての緊急答申であったということで、これからがいわば本式の臨調の検討もあるわけでございますので、先ほどもたびたび申し上げましたように、この見直しの際に、私どもとしてはまさに地方の自主性、自律性を高めるという方向でやってもらいたいし、それに対応するいろいろな資料等も必要があればお出しもして、議論をしてもらいたいと思っておるわけでごございます。  ただ、その中で、おっしゃいますように、本来なら地方の自主性を高めるという点からは、もっと地方税そのものの強化というのがあっていいのではないかと思っております。しかしながら、そういった税源配分をやるには余りにも地方の、地域ごと地方団体ごとの税源の格差が大き過ぎる点がございます。したがいまして、交付税制度といったものを持ち込まざるを得ないというのが現状でございます。  しかし、それでありましても、先ほども申し上げましたように、事務の見直しの過程で地方が分担する機能というものを強化し、あわせて一般財源はそれでパラレルにうまくいけるような方向へ持っていくべきだと思っております。今後も、いまからが煮詰めた話になるようでございますので、私どもとしてはいろいろな機会ごとに、これは私どもだけでなくて、国の他のいろんな各省とも関連がございます。そういったところの意見を聞きながら、そういった方向へ持っていく努力をしたい、これが私どもの率直な気持ちでございます。
  174. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ歴史的に見ますと、戦前の地方自治体と戦後の地方自治体というのは、性格自身は百八十度転換をする、それで、地域住民主体の、憲法に言ういわゆる「地方自治の本旨」に基づく地方自治を目指す、そういう制度にはなったけれども、だから、革袋は新しくなったけれども、入っている酒はそのまま古い酒が残っておる。シャウプ勧告にしろ神戸勧告にしろ、実際上はほとんど実行されないままで来ていますからね。それがいま大きく見直されなきゃならない。新しい革袋に合うところの新しい酒を蓄えなきゃならぬという段階だというように思うんです。  それで、これはいずれまたやりたいと思うんですが、もう時間がありませんが、ただ、次の機会に質問せざるを得ぬので、ちょっとだけ質問しておきますが、一つは、先ほども話がありました自治体の人件費が高いということで百五十何団体ですか、特別に指導をするという方向を出しておられますが、この基準はどういうことで百何十団体ということを選ばれたんですか。
  175. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 基準はどうかという御質問でございますが、単純に高い方から百五十団体を選んだ、それで百五十団体目に二つ三つほど同じラスの指数があったものですから百五十三団体だと、こういうことでございまして、ラスの高い方から選んだということでございます。
  176. 神谷信之助

    神谷信之助君 これで、ラスでいくとどこまでいっているんですか、
  177. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) たしか一一五・幾つだったと思います。
  178. 神谷信之助

    神谷信之助君 このラスの問題でいろいろ別の見解を持っていますけれども、いままで政府にいろいろ聞いておった過程では、ラスが必ず一〇〇でなきゃならぬということではなしに、一定のばらつきがあるのはあたりまえだろうと。自治省として許容される、許される上限というのはどの辺だということになっていますか。
  179. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) ラスの指数につきましては、一定の幅があるということは、これは私は当然だろうと思います。ただいま申し上げましたように、百五十三団体を選んだということは、単純に上から百五十三を選んだわけでございまして、そのラスの一番下が一一五・幾つというのは、それ以下は差し支えないということでは決してございませんので、それ以下についてもなお努力をしてもらう余地は十分あるよというふうに考えております。したがいまして、どこまで許容するかということにつきましては、これはなかなかむずかしい問題がございますので、いままで公式に申し上げたこともございませんし、また、具体的にどこまでだということは大変むずかしい問題だろうと思います。
  180. 神谷信之助

    神谷信之助君 どこまでにせいという目標なしに上から百五十選んできた、二百選んだらもっと下になる、こうなっちゃうだけの話なんでしょう、百五十というのは。余り科学的な意味がないということになるじゃないですか。
  181. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 百五十そのものに非常に科学的な意味があるかということでございますれば、それは確かに御指摘のとおり、大変科学的な意味を持っておるわけではございません。ただ、各団体によりまして、ラスが同じように高いといいましても、その中身はいろいろあると思うんです。たとえば給料表自体がいろんな問題を持っておるとか、あるいは初任給からしてずっと高くなっているとか、あるいは一部の中高年のところで高いためにラスが高くあらわれておるというように、団体によりましてそれぞれ事情は異なります。したがいまして、私どもとしては団体ごとにどういう問題点があるのかということをやはり一度調べてみなきゃいかぬということで現在調査をお願いをしておるわけでございます。そういたしますと、私どもの事務的な職員数にも限りがございますし、大変たくさんの団体を選んでみましてもなかなか精査が行き届かないというようなこともございまして、とりあえず百五十団体ということにしたわけでございます。
  182. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれこの問題はまた改めてやるつもりですけれども、もう時間ですからなんですが、基本的な問題は、午前中にもちょっと出ておりましたけれども自治体の労働者の賃金を決定するのは、そこの自治体の長と、それからそこで働く労働者の組織、労働組合との団体交渉によって決められる、本来はそういうものである。それは当然社会的な条件の制約も受けながら、あるいは地域的な条件も受けながら決定する、合意される。しかも、その合意されたものは議会の承認も要る。その合意の一つの基準として出てくるのが、人事委員会を持っているところは人事委員会の勧告である。こういう仕組みになっているわけでしょう、基本的には。それがどうして国と一緒でなきゃならぬという、そのことを強制しなければならないのか。この点はいかがですか。
  183. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 仕組みとしては確かにいまの御指摘のとおりだと思います。ただ、地方公共団体の職員の給与というのは、国ないしは他の地方公共団体ないしは民間の給与といったものと均衡のとれたものでなくちゃならぬ、こういうふうなのが原則だと思います。そこで、いま一般的に言われておりますように、大変高過ぎるというようなところが、世論の批判を受けておるわけでございます。そういたしますと、結局それを、昨年の臨調の答申にもございますけれども、本来なら自律的な機能によってその改善が図られるということ、これは私もそのとおりだと思います。また、そうでなくちゃならぬと思います。そういった意味で、世論の批判を受けないというような形の方へ持っていくという努力を各地方公共団体はしなきゃならないし、また、地方公共団体といいましても、それは地方公共団体の議会もありますし、長もありますし、それから組合員諸君の問題もございます。その点のところを十分御理解をいただきたい、こういうふうに私どもは言っておるところでございます。
  184. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかし、高い方は百五十三団体挙げられたんですけれども、一〇〇を切っている低いところはどれだけあるんですか。また、それに対する指導はどうされるんですか。
  185. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) いま一〇〇を切っておる団体の数というのは、ちょっとここに持ってまいっておりませんが、まあかなりの数はあると思います。それにつきまして格別引き上げろとかあるいはもっと下げろとか、そういうような指導をしてはおりません。
  186. 神谷信之助

    神谷信之助君 それはおかしいじゃないですか。高い方だけわいわい言って、低い方は知らぬ顔しているというのは、そんなあなた、むちゃくちゃやがな。先ほどおっしゃった国の基準、それから地域の近隣の条件、それから民間との均衡、こうおっしゃっているわけだかも、そんなあなた、低いところはほったらかしやと、これは片手落ちもええところで、とにかくどこかからうるさい声がするので、強引にやっておるということになると私は思うんですがね。  きょうは、時間がとうとう参りましたから私はこの点だけ指摘をして、いずれ時期を見てまたこの問題はひとつ十分議論したいというふうに思います。  終わります。
  187. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 先ほど来の論議の中で、自治省考え方を私どもはよく理解できるわけですが、しかし、依然として政府部内には地方財政というのは余裕があるのではないかと、こういう見解が事実あると思うんです、臨調の中でも、先ほど来の話のように、交付税の三二%を見直そうと、これも私は事実だと思うんですよね。たとえば、やっぱり厚生省が昨年国保の一部地方肩がわりを強引に主張をし、自治省が反対をしてこれは見送りになりましたけれども、そういうような動き。あるいはガス税、料飲税の免税点が引き上げられてきた、こういうことを考えますと、もう政府部内にも臨調の中にも、地方財政というのは国と比べて十分に余裕があるんだと、こういうような見解は私は事実存在をしておると思うんですが、そういう見解の根拠というものはどこにあるとお考えですか。
  188. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) 地方財政全体についていろいろな意見があることは事実でございまして、たとえば一昨年末における一部財界における交付税率引き下げ問題から端を発しまして、昨年の臨調におけるいろいろな動き等は、全般として見れば地方財政が楽といいますか、もう少し引き締める必要があるといったような考え方前提にあると思います。それはいろいろ原因があるだろうと思っておりますが、そういった場合によく例に引かれますことが、地方団体の職員数というものが国に比べて比較的ふえておるというようなこととか、給与水準が国家公務員よりも地方公務員の給与水準が非常に高いといったようなこと等からみて、かなり財源的に余裕があるのじゃないかといったようなことが言われたりしておりまして、ほかにもいろいろございますが、そういったことなどもそういった方々の一つの論拠になっておることは事実だと思っております。
  189. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 おっしゃるとおり、まあ結局ラスパイレスがいま一〇六・九ですか、国家公務員より給与が事実全体として高い、これは明らかだと思うんです。それ以上にさらに高い給料を払っているところが先ほども御説明ありましたようにかなりの数に上る。こういうように給与が高いというところから地方財政には余裕があるんだと、こういうのが最大の理由ではないか、私はそのように考えておりますけれども、もう一度御見解をお伺いしたい。
  190. 土屋佳照

    政府委員土屋佳照君) いろいろなそういった議論が行われるところで、私は、たとえば地方財政計画において必要な標準的な行政をするに必要な財源の確保をわれわれはやっておるわけでございますけれども、その場合における給与費、地方財政計画の給与費というものは国家公務員並みの財源手当てしかしていないわけでありまして、マクロ的に見れば別に高い給料に応じた財源措置をしておるということはないんだということなどもよく説明をするわけでございます。  しかし、そういう場合でも、しからばなぜその給与費がそれだけの財源措置以上にあるのかという質問を受けるわけでございまして、これは一般財源の中でそれぞれの自治体がそれぞれの立場に立ってその判断をしてやっておられることでありますから、乖離が出ることは事実であるわけであるということを申し上げますと、結果的にはほかの仕事をやめてそっちの方へ、給料の方へ金が回っておるんじゃないかというようなことがよく指摘されている。そういった動向などを見ておりますと、いろいろな議論の中で、端的にどうもやっぱり地方は楽じゃないかという疑問を抱かしておるという点を挙げますと、やはり給与の点にあるのではないかと私としては感じておるわけでございます。
  191. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、これに関連して具体的にお伺いをしておきますが、昨年の行革委員会で私も質問をしたんですが、例の給与勧告に関連をいたしまして、鳥取県のような場合、非常にその地域の民間と比べても県の職員の給与というのは五万幾らも高い、異常に高いじゃないかにもかかわらず、国の勧告に準じてまた昨年度給与の引き上げを行おうとしている——まだ行わない前ですが。そういうことについて、安孫子前自治大臣にこれをどう指導するんだと、こういうように私質問をしたんですが、安孫子前自治大臣は、これはもう鳥取県の当局とよく相談をしてできるだけ是正するように相談をしてみますと、こういうように明言をされたんですが、それはその後自治体としてそういうことを行ったのかどうか御説明をいただきたい。
  192. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) ただいまの行革委員会、私も出ておりまして、その席で当時の安孫子自治大臣から指示を受けました。それに基づきまして、鳥取県の知事、これ実は私自治省で同期でございますけれども、知事にも特に、行革委員会でこういう話が出たと、それで、自治大臣としてはちゃんと地元の方へ伝えるようにということがありましたということを知事及び総務部長にお伝えをしたわけでございます。  給与改定につきましては、国家公務員につきます人事院勧告の一部の抑制措置といいますか、というのがとられたことに準じまして、鳥取県においても国とほぼ同様の措置をとって給与改定をしたというふうに私記憶をしております。
  193. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 結局、これは自治体が独自で決めることだということは、原則はわかるんですが、これだけさまざまな批判を浴びている。しかもそれに対して自治省として強力な指導をしていくんだという方向でずっときておるわけですけれども、いまお話聞きますように、実際は相談をしてもなかなか是正されていかないと、こういう実態だと私は思うんですね。  そこで、さらにこの問題に関連をしてお伺いをしておくんですが、地方公務員の給与の適正化の一環として、第二臨調の答申を踏まえて、自治省としては昨年事務次官通達なども発しまして、そして給与や期末手当、あるいは退職手当、そういうものの実態について十二月いっぱいまでにそれぞれの公共団体はそれを住民に公表するようにしなさいと、具体的な、こういう内容でこういう公表をしろということまで文書をつけて指導をしておられるわけですが、その結果、公表の実施状況というものはどういう状況になっておるか御説明いただきます。
  194. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) この公表された結果につきまして、一月の下旬に実は調査票を各地方団体に出しておりまして、その中で公表の実施された時期それから手段、そういったものにつきまして現在調査を進めておるところでございます。したがいまして、全団体状況はまだ把握をできておりませんけれども都道府県それから指定都市にありましては、現在までのところ、すでにほとんどの団体が公表を行っておるというふうに理解をいたしております。一部実施されていないところもあるかと思います。
  195. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それで、一部実施されていないところがあるというんですが、その実施されていないところに対しまして、自治省としては今後どのような指導をしていくつもりなのかお伺いをします。
  196. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 先生御案内のとおり、この職員給与の公表といったものは、これは職員の給与が地域住民の租税の負担によって賄われておるわけでございまして、したがいまして、その実態というものを住民が身近に知り得る状態にする。そういうことによりまして、地域住民のその団体の職員の給与に対するより一層の納得と支持が得られるようにするための一助として行うものでございます。  いま申し上げましたように、公表の状況等につきましては現在調査中でございますけれども、公表を実施していない団体、これにつきましては、いま申し上げました給与公表の趣旨にかんがみまして早急に公表を行うように指導をしてまいりたいと、このように考えております。
  197. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、まだ集計はされていないようですけれども、これはある通信社がその実施の状況を調べて全国的な調査の結果を載せているわけでありますけれども、問題は公表の中身だと思うんですよね。公表の中身をこの実態調査によってうかがい知るところによると、公表の仕方が自治体によってさまざまばらばらだと、ばらばらでありかつきわめて発行部数の少ない公報ですね、こういうもので発表しているところが多い。したがって、それは特定の掲示板だとかそういうところに張っておく程度のものだと思うんですよ。したがって、これが住民の目に触れるということは非常に少ないのではないか、こういうことが実態が明らかになっておるのですが、これについてどう思いますか。
  198. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) まずその公表の中身でございますけれども、私どもとしては、基準となります公表の様式ないしその記載要領といったものを示しまして、住民が理解し比較しやすいように、国家公務員なりあるいは他の類似団体等と比較しながら行うように指導してきたわけでございますが、現在のところ、いま申し上げましたように十分にその実態を把握しておりませんが、確かに住民の方にとってはわかりにくいというような声も私聞いております。したがいまして、この中身にさらに工夫を加えるかどうかということは、調査をした段階でもう一度考えてみたいと思っております。  それから広報の手段でございますが、これは確かに御指摘のとおり、あるいは公の方であったりあるいは広く知らせる方であったりいろんな手段をとっております。私どもとしては、できれば広く知らせる方でやってもらいたいというのが内心本当の気持ちでございますけれども、ただ、通知を出しました時期、それから広く知らせる広報紙の原稿の締め切りの時期等もございまして、中にはやむを得ず公の方で出したというようなところもあるやに私聞いております。次第に今後は住民に広く知らせるという意味合いが浸透していくということを私ども期待をしておるところでございます。
  199. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 私は、自治省が給与の公表の問題で一定の方向を出した直後ですか、昨年の十月十五日のこの委員会で、いま住民が注目しているところは、わたりだとか昇短だとか退職金にさらに何かわけわからない上積みをする、こういうことに批判が集中しているのであって、そういうところが住民にわかるように公表をしていかなければ意味がないではないか、こういうことを指摘をしてきたわけですが、実態を見ますと、自治省が当初考えられたようなところまで効果は上がっていない、こういうことが実態として明らかだと思うんですね。  しかも、その公表の方法でとてもいいところもあるわけですね。たとえば千葉なんというところは全世帯に、広報紙にその実態を載せて全戸に配った、こういうところもあるわけですね。それから石川のような場合では、地元の新聞とかあるいは全国紙の地方版を利用してそれに公表した、こういうのもある。自治省が示した指導の内容にさらに味つけをして実態を加えてやっているところもあるわけですね。これは島根県のような場合ですけれども、さらに、そのわたりとかあるいは昇短とか、こういうのもこうなっておりますよと、こう言って発表しているところもあるんです。これは佐賀市の例ですけれども、佐賀市の場合には、わたりなどについて、たとえば部長や次長の実際の数は十二人だけれども、わたりの部、次長は四十七人おります、あるいは課長の実数というのは三十八人だけれどもわたり課長というのが、これが実に三百十七人おりますと、こういうように具体的に例示して、実態を本当に正直に発表していますね。  こういうことをやらなければ、住民は自分たちの納めた税金で働いている職員の給与がこうなっているということは明確にはっきりわからないんですよ、ここまでやらなければ。やったところもあるけれどもやらなかったところもある。中身はしかもばらばらだ。いいところもある、悪いところもある。悪いところなんというのは、ただ数字を羅列しただけで何が何だかわからないという方向でやっている。こういう実態についてどう思いますか。そして、この実態を自治省としては正確に把握をして、これからこういう問題についてどうやっていこうとしているのか明らかにしてもらいたいんです。こういう、親切に内容を明らかにしたところは、住民もよくわかった、それで電話もたくさんいって、ああ、こういうことだったかということで、大変反響があった。こういうわけですから、せっかく一歩前進のところへきたわけですから、さらにこれをもう一歩前進さしてこの問題に取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  200. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 給与の公表というのは、住民にわかっていただく、そこで理解と納得を得ていただく。あるいは、理解と納得が得られない場合には議会の審議に反映する場合もこれはいろいろとありましょう。そういう趣旨でございますので、私どもとしては、公表に当たりましてはできるだけ親切に、わかりやすく公表してもらいたいというふうに思っております。まさに御指摘のとおり、今後ともそういった努力を続けてまいりたいと、このように考えております、
  201. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 これはやっぱり、単に努力をするとかなんというのじゃなくて、本当に真剣に考えてやっていただかなければならぬと思うわけです。  そこで、また別の観点から御質問をしておきたいんですが、都道府県や指定都市は人事委員会を設けておりますが、この人事委員会なるものが、先ほども議論がありましたけれども、実態として人事委員会の機能を発揮しておるのかどうか。国の人事院の勧告が出る、まあ国と整合性をとらにゃいかぬという、これは一項目としてあるわけですから、それを見ながら地方が後で出すということですが、実態をいろいろ調べてみると、国の勧告どおりにそのまま勧告する。先ほどの鳥取の例じゃありませんけれども、その地域の民間の動向なんというものは余り考えないんですね。ストレートにそのまま人事委員会の勧告として提示をする。これでは私は何も人事委員会がなくたって、国の人事院に委託して勧告を出してもらえばそれでいいわけですね。そういう実態にある。機能というものが十分に働いていないではないか、こういうように思うんですが、その辺はどうですか。
  202. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 申し上げるまでもなく、人事委員会といいますのは、地方公務員法に定めます給与決定原則、それに基づきまして、専門的であり、またかつ公正な判断によります給与の報告あるいは勧告、そういったものを行うべく設置された機関でございまして、そういった意味から人事委員会の存在というものは私どもは重要なものであろうと思っております。  そこで、人事委員会が給与の勧告をするに当たりましては、私どもとしては、国に準ずるような勧告を漫然と出すことのないように、一つには公民の格差率、それを国家公務員の方式に準じまして正確に算定してください、それから国家公務員と対比した給与水準というのを正確に算定をしてください、それから、目標とすべきその団体の給与水準というのをまず一つ明確にしてくださいといったようなことを人事委員会の事務局長会議等を通じましてお願いをしておるところでございます。今後とも、人事委員会がその本来の機能を十分に発揮しましてその団体の給与制度、それから運用におきまして問題とすべき事項があればそれは的確に指摘するといったような姿勢をとるようにいろいろと申し上げていきたいと、このように考えておるところでございます。
  203. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 では、人事委員会と公平委員会とあるんですが、この機能はどういうことなのか、その比較ですね。わかりましたら簡単で結構ですが教えてください。
  204. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) きわめて簡単に申し上げますと、人事委員会は給与の勧告とそれから職員の公平の問題を担当いたしておりますし、公平委員会につきましては、職員の利益の保護ないしは公平の問題、そういったものを担当しておるというところでございます。
  205. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、十五万人以上の市については人事委員会か公平委員会、どちらでもいいから選択して設けろと、こういうふうになっているんですが、十五万人以上の市で人事委員会を設けておるところはどこですか。幾つあるんですか。
  206. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 御案内のように、都道府県と指定都市は人事委員会を設置しなきゃならぬということになっておりまして、それから、十五万人以上はどちらかということでございますが、仙台市が人事委員会を設けておるというふうに理解をいたしております。
  207. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そうすると、仙台以外の市は公平委員会でやっている。給与の勧告は実際はそれは公平委員会だからないですね。人事委員会というものが仙台市しか設けられていない、あとは全部公平委員会だと。これはどういうところに原因があるんですか。ほかの市は設けないという理由は。
  208. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 一般的に申し上げますと、都道府県と指定都市で人事委員会を必置という形にしておりますのは、そういった団体は規模も大きいし、職員数も多いということでございます。人口十五万人以上の市につきましては、その規模なり職員数といったのが、いま申し上げましたように、都道府県や指定都市には及ばない。そこで、専門的な人事委員会を一律に必ず置けということにいたしませんで、職員の利益保護のための制度としての公平委員会のいずれかというものを、それぞれの団体の実情に即して適切に選択をするという趣旨からそのようになっておると思います。
  209. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 よくわからないのですが、たとえば二十万以上の市は四十二ありますね、三十万以上は二十、四十万以上は十六、五十万以上は八つあるわけですね。しかも、五十万でもう指定都市規模近くになったところもある。そういうようにどんどん大きくなっているわけですね。それが八十万だ何だということになれば、市自体が一つの県並みくらいに大都市圏ではふくれ上がってきている。こういう実態に合わせて、公平委員会、人事委員会どちらを選択してもいいんだということではなくて、規模がある一定より大きくなったら人事委員会を設けろというような方向は検討できないのでしょうか。
  210. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 基準をどのような形に求めるかという問題であろうと思います。その基準が、先ほど申し上げましたように、現在は都道府県と指定都市、それからその他の市というような形で基準が分けられておるということでございます。これを人口段階で、都道府県と指定都市じゃなくて、人口何十万以上をどうするかといった問題は確かにあるとは思いますけれども、現在のところ、直ちにそれを変更いたしまして、たとえば人口五十万でありますとかあるいは三十万でありますとか、そういったところには人事委員会の設置を義務づけるというようなことは、いまの段階ではまだ考えてはいないところでございます。
  211. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それでは私は主張だけしておきますけれども、やっぱりそれだけ大きくふくれ上がって、職員数も多くなる、まあ指定市並み、県並みになってくる、そういうことを踏まえまして、私どもの主張としては、十五万人以上については人事委員会をすべて設けるようにしたらどうだろうか、こういう見解を持っているんですが、御検討いただきたいと思います。  それでは、次の問題に移らしていただきます。  これは通産の関係ですが、例のテクノポリス構想ですね、これが発表されまして、大変期待感を持たれておるわけでありますが、テクノポリス構想とは一体どういうものなのか、御説明いただきます。
  212. 小林惇

    説明員小林惇君) テクノポリス構想というのは、一言で申し上げますと、産業、学術、それから住まいの機能、そういう三機能を有機的に結合いたしまして、かつ地域の伝統を生かしながら新しいコミュニティーづくりを行おうという構想でございます。その場合に産業とは技術先端的な産業というものを目指しておりまして、電子でございますとか機械でございますとか、そういった先端技術を生かしました産業群を誘致をしようという考え方でございます。  全体の実現の時期といたしましては一九九〇年を目標にしておりまして、これから十年がかりということでございますけれども、さらに具体的に申せば、そのテクノポリスの位置づけでございますけれども、人口二十万以上の都市を母都市といたしまして、これと一体的な生活圏を形成し得る地域に設置いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  テクノポリスの広がりといたしましては、考え方はいろいろございますけれども、八百ヘクタールあるいは千ヘクタールというような広がりを考えておるわけでございます。
  213. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それで、そのテクノポリス構想の基本的な発想なんですけれども、IC産業だとかコンピューターだとかロボットとか、いまきわめて急成長に発展しつつある産業であって、しかも技術がもう日進月歩、きょう開発したものがもう古くなるという、しかもこれは国の経済から考えてもこういう産業を発展さしていくという、これはもう頭脳的なものですから日本人に特に合っているんですね。こういうものを発展させるために、そういう集約的な都市というのですか、そういうものをつくって、そこを基盤にして技術開発をやる、生産もやる。そしてそれを日本産業全体に波及効果を及ぼすという考え方のもとでこのテクノポリス構想というものが出てきたのか、それとも、そういう産業を地方に誘致して地方を発展させる、地域開発の一つの、まあたとえばそこに人が定住するようにする、そういうためにやったのか。大体通産の発想ですから恐らく私は前者だと思うんですが、その基本的な発想をまずお伺いしたい。
  214. 小林惇

    説明員小林惇君) 先生御指摘の点、どちらかということでございますけれども、これは基本的には三全総の人口の地方定住のための施策の各論の一つであるというふうにわれわれは位置づけて考えておる次第でございます。  地方定住の方式にはいろいろな方式が考えられるわけでございますけれども、基本的には雇用機会というものが地元になければなりませんので、雇用機会を地元に創造するということを通じて人口の地方定住を図るという考え方でございます。それを通じまして地域経済の自立化をいたしたいという考え方でございます。  先生御指摘になりましたけれども、当然産業界がこれから技術開発を行い、それから国際競争に打ちかつために種々の努力をしていかなければいけないわけでございますけれども、そういった技術立国の地方の拠点づくりという考え方は当然背景にはあるわけでございますけれども、私どもは、あくまでも地域開発、あるいは人口の地方定住というものを第一義に考えたいというふうに認識しておる次第でございます。
  215. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そういう考え方のもとで出発をされているようですけれども、そういうことになると、結局、通産の構想が一つ出て、そういう新しい都市をつくっていくということになると、もうこれは建設省や国土庁やあるいは自治省もかむんですよね。いろいろものがみんなかんでそういうものをつくっていかなきゃそんなものは実現できないと思うんですよね。いまは通産だけで五十六年度は二千万円、来年度は四千万円の調査費がついて要求をしておるようですが、新しい都市をつくるわけですからね、大変なことなんですよね。一つ都市をつくるには、もうこれは兆を超える金もかかってくるわけですよ。そういう各省との連携をとりながら一体やっていこうとしているのかどうなのか、その点も重ねて聞いておきます、
  216. 小林惇

    説明員小林惇君) 先生いま御指摘いただきましたように、こういう構想実現のためには、通産省の政策手段といいますか、在来の発想だけでは処理し切れない面が多々出てまいるということはわれわれよく認識しておる次第でございまして、そういう点で基本構想を今年度にまとめまして、そういう過程で各省にもそういった案をお示しをして協力を願うということを考えておる次第でございます。
  217. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、このような都市をつくりたいと希望してきた地域というか、県や市はどのくらいあったんですか。
  218. 小林惇

    説明員小林惇君) 約四十カ所でございます。
  219. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 四十が希望してきたその中から二十地域を選んで調査地域とした。この二十地域にしたをれには何かやっぱり基準があると思うんですね。私も昨年の委員会で質問したことがあるんですが、その当時は、基準づくりはこれからですというような、そういう発言しか私は聞いておりません。どういう基準でその二十候補地というのですか、調査地点というのですか、それを選んだのか。その基準をお伺いしたいと思います。
  220. 小林惇

    説明員小林惇君) 基準につきましては、三つの基準がございます。  第一は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、母都市の都市機能ということでございます。母都市といいますのは、テクノポリス地域がよって立つ都市のことでございまして、母都市の都市機能がすぐれていれば、そこにすでに技術の集積あるいは都市機能というものが整備されておることが期待されるわけでございますので、どういう母都市を抱えておるかということを第一のポイントにしております。  それから、第二のポイントは、母都市とそれからテクノポリス——新都市でございますけれども、の間の交通条件というふうに考えておりまして、母都市と新都市とが一体的にその一日のうちに生活できるといいますか、行き来がしやすい地点を考えたいということで、新都市と母都市の間の交通条件を考えておるわけでございます。  それから第三に、当然のことでございますけれども、新しい都市を開発するための可能性のある地点が現実にあるかどうかということを考えたわけでございます。  これらの三つの点を総合判断いたしまして、現実可能性のある地点ということで調査対象地域を二十にしぼった次第でございます。
  221. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 その二十の地域ですね、これは三つの条件がそれぞれそろっているところを選んだのか、それとも、三つのうち二つ条件があればいいと考えて選んだのか、この辺どうなんですかね。
  222. 小林惇

    説明員小林惇君) その三つの点のそれぞれすべてがそろっておるという地点ばかりではなくて、総合的に判断いたしまして、ある点において、たとえば土地のアベイラビリティーといいますか、そういったものが少ない地点であればテクノポリス全体をミニテクノポリスといいますか、そういった考え方も出しておりますし、その三つのポイントを総合して判断した次第でございます。
  223. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 その総合的な判断というのがどういうことなのか私には理解ができないんですよ。  実は、総合的な判断の中には、政治家が介入して、おれの方には今度はこういういいあめ玉があるからこっちに持ってくるようなことで、きわめてそういう力の背景をもって調査地域に入れた、こういうのも総合的判断の中に入っているんじゃないですか、これは答えられないでしょうけれども。  それから、最初通産省の考え方としては、これだけの大きな実験的な都市をつくるんだから調査地域というのは五つくらいにしぼっていきたい、こう考えておったんじゃないですか。それが二十にも広がっていったというところ、その辺のところが通産の最初考えた構想と大幅に狂ったんじゃないかと私は思っておるんですが、どうですか。
  224. 小林惇

    説明員小林惇君) いま先生が御指摘いただきましたように、当初、テクノポリスの構想というものを、一つの何というかモデルということで考えていたいきさつがありまして、そういう意味では日本全土に一カ地点を選びまして、そしてテクノポリスのモデルをつくり、それを他の地域に及ぼすという考え方であったかと理解しておりますけれども、こういった構想を部内で検討している段階で、テクノポリスというものの考え方につきまして幾つかのタイプというものの可能性というものがあるのではないかというふうに考えてまいったという次第でございます。  たとえば、よく言われることでございますけれども、IC産業の立地ということにつきましては空港というものを非常に重視する向きがございますけれども、この空港利用型でないような一つのIC産業というものも当然存在し得るわけでございますし、その他、それに類似した考え方で、テクノポリス構想というのはこういう考え方でなければいけないという、そのタイプは必ずしも一つに限らないのではないかというふうに考えた次第でございます。したがいまして、調査対象地域としては特にこの段階一つにしぼる必要はないのではないかというふうに考えた次第でございます。
  225. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 最初やっぱり一カ所にモデル地域をつくるという考えだったんだから、私は、五カ所くらい選んで、その中から一つを選ぶというのが常識的な判断だと思うんですが、これが二十に広がってしまった。これは自治省にも御見解をお伺いしたいんですが、これが、後でも申し上げますけれども、大変な問題を起こしているんですね。  もう一つ、当初の基本的な考え方をお聞きしたいんですが、通産省の当初の構想としては、五十六年度から三年間、国と地方自治体が連携をとりながら開発構想づくりを進める、そして、五十九年度に全国の候補地点の中から一、二地域、先ほどのモデル地域一か二を選んで、そしてそれをテクノポリス都市建設の地域として指定をして、そして指定を受けた地域については、地域振興整備公団が土地造成などの都市の基盤を整備をしていく。そういうことをやりながら、一方で企業や研究所の誘致を進めて、先ほど言いました一九九〇年ですか、六十五年度にはテクノポリス第一号か二号を完成さしたい、こういう考え方ではなかったかと思うんですが、それは考え方が途中で変わったんでしょうか。
  226. 小林惇

    説明員小林惇君) いま御指摘がありました基本構想もしくは開発構想、国と地方の共同作業といいますか、練り上げていくという気持ちには現在も変わるところは全くございません。したがいまして、私どもといたしましては、五十六年度に基本構想を二十の地点から出していただきまして、そのうちのすぐれたものを次年度、五十七年度に開発構想に移行していただくという考え方を堅持しておる次第でございます。
  227. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 テクノポリス構想というのは、きわめて構想としては魅力があるんですよ。  一つは、ここにもありますように、「伝統と自然に支えられた人間中心の潤いのある「まち」づくり」、それから第二点は、「人類の英知の結晶である技術進歩の恩恵を最大限享受できる「まち」である。」、大変な構想ですよ、これは。それから第三点は、「自由で、のびやかな肉体的、精神的活動のできる文化の香り高い「まち」である。」、四番目は、「人が誇りを持って働き、生命の羽ばたきの聞こえる活力に溢れる「まち」である、」、第五番目は、「世界に開かれ、異文明が交錯し、調和する「まち」である。」、こういう町をつくろう。これは非常に魅力があるんですよ。  だから地方は、こういう構想が出たから、それはもう地域開発のためにおれの方にこれをつくりたいと、本当に過熱状態で希望がわんさと来た、こういうことではないかと思うんですがね。そして、こういう過熱した状況の中で、指定をされた二十地域では、自分たちの方に本格的な指定を受けたいために独自で予算を組んで、今年度は千五百億とか、来年度は三千億とか、地方自治体自身が予算を組んで構想をさらに前進させようと考えているわけですね。このことが私は問題になると思うんですよ。  事実指定を受けた二十候補地、その全部が本格的なものになればいいんですよ。最終的には、非常に国の財政が厳しい折——地方の受けとめ方は、候補地になって指定を受けた以上は国からどっさりとそのための補助金や何かが入ってくると、いままでの地域開発のやり方と同じようなものが来ると、こう考えているわけです。ここが問題なんですが、そういう方向にいくんですか、これは。指定をした場合に、国からあらゆる補助が付って、道路づくりから、学校づくりから、さまざまなことをやっていく。しかも構想によれば、そういうような五万都市の真ん中に一万一千名くらいの先端企業を誘致する、その周りには工科大学を設置する、そうして高等専門学校も設ける、そうして潤いのあるまちづくり、国際人もたくさん来るし、しかも国際人は頭脳的に非常に神経を使う仕事だからそういうものがゆったりとそこで歓談ができるようなそういうものもつくる、あるいは頭を使った労働者がふらっと入っていく一杯飲み屋、赤ちょうちんのような店もつくらなければならぬ、いろいろさまざまな構想が出ているんですよ、構想が。それを地方はそのまま受け取って、そうして、その都市づくりのためには国から相当のものが来るぞ、この期待感が将来大変な罪づくりになる。そういうところが地方自治体地方自治、地域の破滅にも通ずる可能性もあるんですよ。この辺のところを自治省はどう考えておられるか、この構想に対して。いままでは調査段階だから知らぬ顔しているかもしれませんが、そんなものじゃないですよ。いまの二十の地域というのは。だから、それをどのように考えておられるのか、自治省の見解をお伺いします。
  228. 小林悦夫

    政府委員小林悦夫君) 通産省のテクノポリス構想というものは、定住構想に基づく総合的な居住環境の整備、こういう構想から出ておるということでございまして、御指摘のように現在二十ヵ所が指定をされておるわけでございます。これは通産省が非常に熱心にやっておられます独自の作業でございますけれども、それと同時に地方団体も非常に希望が多いわけでございますが、現在基礎調査段階でございまして、まだ基本構想もできておらない段階でございますので、自治省として現在まだ非常に流動的な状況でございますので、自治省としての考え方を明らかにする段階ではございませんけれども、非常に重要な問題でございますので、今後通産省と、情報を得ながら対応をしてまいりたいと考えております。
  229. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それと、これは函館市の場合ですけれども、私が言いましたように、そういう指定候補地になった、そのためにもう基本構想を地元で固めなければならぬということで予算千五百万から二千万計上、さらに五十七年度から五十八年度にかけては開発構想、そのための予算三千万から四千万、こういうことで市の段階で提起をされて、それがもし実行されていって独自に土地を先買いして、さあ来てくださいと待っているというような状況になったときに、それが実際は企業もきやしない、途中で計画がつぶれてしまった、さあこれは夢だけ与えて最終荊には国の財政負担もとてもじゃないができないから、これはもうこの構想は終わりだ、こうなったときに、一体だれが責任をとるか、重大な問題だと私は思うんですよ。  これ、政務次官ちょうどおられるから、どうですかね。
  230. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) ただいまいろいろとお話がございましたけれども、いまお話しになりましたような問題につきましても、私も各地でそういうお話も聞いておるわけでございます、しかし、通産省なりどの省でも同じでございますが、国の方が構想を立て、その構想を地方とタイアップいたしまして成功させるためには、やはり地方の盛り上がる力ということも十分われわれは勘案しなきゃならぬと思っております。しかし、それがいま御指摘のようにどうも地方ばかり燃え上がっているような感じもいたしまして、そういう点ではやはり通産省の方も今後のあり方について再度御検討をいただきたいと思っておりますけれども自治省といたしましては、現時点では審議官先ほど説明しましたようなことでございまして、きょう自治省の立場をこれ以上申し上げることはちょっとむずかしいかと思っております。
  231. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それで、これは政府自身、通産の考え方は変わってきているんですよね、実際は。こういう財政事情ですからね。従来の開発のような計画で国がごっそり持ってくるというようなことはできない。したがって、できれば地方団体企業とが相談をして、構想ができたらそれを都市づくりのためにおまえたち責任を持ってやるようにしてくれよ、国はそんなに金も出せないし、関与できませんよ、こういう方向に変わってきているんですよ。ところが、地方自治体はそう受けとめていないんですよ、地方自治体は。  それと、問題はこの二十の指定地域、候補地に指定されたところはもう土地投機が行われて、土地がべらぼうに上がっているんですよ。これは新聞の報道するところによるのですけれども、これも皮肉まじりで書いておるのですが、たとえば浜松市の中に三万原というところがあるんですが、「「風林火山」ならぬ「売り出し中」の赤旗が林立した。」というわけです。そして、この三万原というのが建設予定地になっているようですね、市の計画によれば。したがって、それを見越して東京であるとか、こういうところから不動産業者がどっと行って土地を買いあさっている。だから、候補地の指定前に比べて三〇%から四〇%土地が高くなったというんですね。それはもう、これは全部そうですよ。これは魅力ある都市づくりですからね。しかも、地方の受けとめ方は、それによって金が入ってくる。もしそこに企業が来れば住民も定着して、しかも先端企業ですから、急成長の企業ですから、これはもう金も入ってくる、こういうことですから非常に魅力がある。こういうような派生的な問題が起こっている。  これは自治省としてよほど考えて、通産とよく相談をしてもらって、自治省考え方として、やっぱり地方の候補地になったところに対してよく説明をしてあげないと、土地の値段は上がる、そして将来どうなるかわからぬ不安定の中で金はつぎ込む、こういうことですから、非常に地方自治団体にとっては問題が多いと思うんです、そして、どうなるのだろうかと、不安もあると思うんですよ。しかし先行投資をしなければ本格的な指定を受けられない、こうなりますから、無理してもやる、こういうことになるんですよ。だから、よほど慎重によく説明をして、そして、地方自治団体がこのことによって破産状態に陥らないように私は指導をしてほしいと思うんですよ。  こういうものは全国各地につくってほしいですよ、私は。つくってほしいけれども、それがなかなかいまのところではいけないということになれば、そんな過熱の状態にあるものを何とか説明をし、実情をよく説明をしながら、そういうものを慎重に進めるように指導してほしいんですが、どうです。見解を承りたいと思います。
  232. 小林悦夫

    政府委員小林悦夫君) 先ほど申し上げましたように、現在は調査段階ということでございまして、まだ具体的な誘導策というものがはっきりしない、こういう情勢でございます。今後、段階に応じまして十分通産省と協議いたしまして、指導をいたしたいと存じております。
  233. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 本当によろしく頼みますね。これは本当に将来大変な問題に私は発展をしてくる可能性がある。夢は夢として非常にりっぱで、これはもう全国各地にこういうものができればいいですよ。日本の産業の発展のためにも、これはもう私はどこかで実現をさしてほしいんですが、なかなかそういうような状況にいきそうもない気もしますし、ひとつよろしく頼みます。  あと、時間がありませんので、ホテル・ニュージャパンの問題について、若干建設省と消防庁の関係に御質問をしておきます。  ホテル・ニュージャパンは麹町消防署の所管ですね。
  234. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) あのホテルは東京消防庁麹町消防署の管轄でございます。
  235. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、これ私視察に行ったときにお聞きをしたんですが、消防署からさまざまな問題点を指摘して改善命令を出している。その改善命令の具体的にどういうところをどのように改善をしたらいいかということを、どういう改善命令を出したのか、中身を具体的にお知らせいただきたい。
  236. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 所轄の署といたしましては、当該ホテルに対しまして年二回査察の都度不備事項を指摘し、あるいは四回にわたりまして文書で指導警告書を発しております、  その内容の主なものは、スプリンクラーが未設置であるということ、それかも防煙のための措置がとられていないということ、ないしは日ごろの防火管理体制に不備があるというようなことをいろいろとその時期時期に指摘をし、その改善方を要請しておりますが、一番最終的に去年の九月十一日に出しました法十七条の四の規定に基づきます措置命令では、スプリンクラーの設置ということを主な中身にいたしております。
  237. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 先ほどは、いろいろなところにさまざまな欠陥があったということですが、いまおっしゃるスプリンクラーと防煙設備ですか、それだけを直せと言っただけということになりますと、私は、あれだけの欠陥だらけのところですからね、問題があると思うんですが、本当にそれだけですか、
  238. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 文書によって改善指示を、措置命令をかけましたのは以上でございますが、前段申し上げましたように査察の時期あるいはその他機会を通じまして消防署として確知をいたしました不備事項については、その都度指摘をいたしております。
  239. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 その点については深く追及はいたしませんが、消防法第五条及び第十七条に言う措置命令ですね、これは五十六年度はどの程度全国的に見て発しておるのか、実態をお伺いします。
  240. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 五十六年中の資料がちょっとまだ未整備でございますが、五十五年中の資料について御説明申し上げますと、五条あるいは十七条の四の規定によりまして全国消防機関が発しました措置命令は合計四百七件でございます。
  241. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そうすると、悪質なホテル、旅館というのは全国的に見て四百七件程度だと、こう理解していいんですか。
  242. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) この悪質ということの中身でございますが、四百七件がすべてこれいわゆる悪質ということはちょっと言いにくいかと存じます。本当に悪質と申しますか、なかなか指導警告に従わないところと、よくわかっているけれどもなかなかちょっと資金がなくて待ってほしいというようなことで、非常に誠意を持ってやっておりますけれどもどうしてもできない。しかし、消防機関としてはやはり消防法違反というようなことを確認いたしますれば措置命令を発したというようなものも含まれておりまして、これの中身がすべて悪質がどうかというのはちょっと一概には申し上げかねると存じます、し
  243. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それでは、悪質なものとして、措置命令に違反する、いわゆる罰則適用ですね、そういうものを適用したのは何件あるんでしょう、
  244. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) ただいま申し上げました四百七件というのはホテルばかりではございません、その他の防火対象物ももちろん含まれておる。いわゆる法に基づきます防火対象物に対しましては措置命令を発し得ますので、すべてホテルではございませんが、ホテルも含めて四百七件ということであります。  この措置命令を発しますと、それにつきましてはやはり改修工事をやらなければならぬものでありますから、改修工事のためには一定の猶予期間を置いてやる、それで、その際、猶予期間を置いてもなおこれに従わないというものにつきましては公表する、あるいはまた、状況に応じましては告発をするというような段階に相なるわけでございます。
  245. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 だから、私の聞いているのは、そういうように命令に従わないで猶予期間も経て後にさらに従っていない、それに対する罰則適用ですね、要するに違反者として。それが何件あるかと、こういうことです。
  246. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 告発したものはいまのところはございません。
  247. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 だから結局消防署は、火事の場合でもそうですが、もう措置命令を出した、猶予期間も置く、猶予期間が過ぎても一向に改善されない、改善しようとしたやさきに火事であれだけの犠牲者が出ると、こういう繰り返しをやっているわけですよ。川治温泉の教訓というものが結局生かされていない。法律があって、措置命令を出して、先ほど長官がおっしゃったが、従わなければどしどしこれを適用するように指導していくんだといって命令を出したようですけれども、それはもうゼロなんですよね、これは。違反者がゼロで火災が出るわけでしょう。それで犠牲者があれだけ出るでしょう。これはやっぱり強力な指導を本格的にやってもらわぬと過ちを二度三度繰り返すんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  248. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 私は、先生のただいまの御指摘ごもっともだと存じます。実は、一昨年の川治プリンスホテルの火災以後、私ども昨年の一月にその後一斉調査をいたしまして、その結果も踏まえまして全国の消防機関に対しましては、そのような悪質な対象物であって措置命令に応じないものに対しましてはもう告発も辞さないという強い態度で臨むことを強く指導してまいったところであります。  これは若干言いわけがましくなる向きもあるかと存じますが、いろいろと実態を聞いてまいりますと、今度のホテル・ニュージャパンの場合もそのような傾向があったわけでございますけれども、改善命令を出す、あるいは措置命令を出しますと、改修計画を出してある程度やり出す。やり出したものですから待っておりますと、ちょっとやってまたやめる。また警告を出す。そうするとまたしばらくやり出す。最後はしびれを切らして措置命令をかける。そうするとまたかなり進むというふうなことで、現に改修計画を出して工事をやっておりますと、なかなかこれ告発という段階に持っていきにくいというようなことで、言いわけがましくなりますが、やはりその辺の甘さがあったのではないかということは、私ども厳しく反省しなきゃならぬだろう。あるいはまた、そういう御批判は受けとめなきゃならぬだろうと存じております。  前段申し上げましたように、今後はこのようないわゆる悪質な対象物に対しましてはちゅうちょすることなく措置命令をかけ、しかも措置命令に従わない場合には告発あるいはまたは公表ということも手をゆるめることはならないということで重ねて強く指導しておりまして、今後ともそういう方向での努力を重ねてまいりたいというふうに存じておるところでございます。
  249. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それから、措置命令違反というのはかなり重いとおっしゃるけれども、私はこれまだ軽いんじゃないかと思うんですよね。これはもう命を預かる商売ですからね。それが違反をして幾ら改善命令出してもさっぱりそれをやらない。本当に告発をしてもらいたいんですよね。われわれだってあらゆるところで旅館にも泊まるんですが、あなた、命をなくすかわからぬというようなこんな状態じゃ大変だと思うんですね。  だから、この命令違反者の罰則強化ですね。年以下、二十万じゃなくて、もっと量刑を高くして、そして告発をして、これは本当に告発をされれば大変なことになるぞと、そういう気持ちを営業者に植えつけなきゃいかぬと思うんですが、どうなんでしょうね、その罰則強化の点は。これはどこの所管ですか。
  250. 石見隆三

    政府委員(石見隆三君) 措置命令違反に対しましては、現在最高利懲役大力月を含めましての罰則が付されておるわけでございます。私どもといたしましては、この消防法の措置命令違反に対しまする罰則をさらに強化するという点につきまして、このような罰則強化が直ちに事故の減少につながるかどうかという点も一つの私は研究課題だろうというふうに存じております、ただその場合、やはり消防法体系の中での罰則全体ということのバランスもあるかと存じております。と同時に、他の消防法以外の行政法規の中におきましていろんな措置命令をかけ得る規定が設けられております。その場合の他の行政法規の措置命令違反の罰則とのバランスという問題もあろうかと存じております。このような観点から、いまお示しの罰則強化ということにつきましては一つの研究課題であろうというふうに存じておりますが、いま申し上げましたような問題もあることもまた事実でございます。  いずれにいたしましても、今後私どもといたしましては、前段申し上げましたように、このような悪質な措置命令違反に対しましてはちゅうちょなく消防機関としては行動を起こすということを重ねて強く指導してまいりたいというふうに存じておるところでございます。
  251. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 もう時間が来ましたから、最後に、せっかく運輸省来ておられますので、一点だけお伺いをしておきます。  例のホテル・ニュージャパンも国際観光ホテルの登録ホテルです。だから、日本のような経済力の強くなったところは外国人がたくさん来ますわ。それで、外国人は国際観光ホテル登録ホテルというところを見て信用して来るわけですよ。ところが、信用して来たはいいけれども、今度のような事件に巻き込まれちゃって大ぜいの人が亡くなってしまった、こういうことになっておるわけですが、しかも、外国人が助けてくれ助けてくれと逃げ惑う、従業員は外国語がわからないからそれに対応できない、そこでみすみす外国の方々が命を落としていく、こういう大変なことを起こしたわけですが、せっかく七省庁連絡会議もできておることですから、検討をしていただきたいと思うんです。  たとえば、宿泊者の数とか部屋の数とか経営規模とかあるいはお客さんの質ですね、外国人が多く泊まるとか、そういう質等に応じて一定の従業員を段階的に、これだけの規模でこれだけのところはこれだけの従業員を置かなければならぬとか、そういう規模別に従業員を一定の者を確保する、こういうことは検討できないでしょうかね。これ、ひとつぜひやってもらいたいと思うんですよ。今度のホテル・ニュージャパンの場合でも、夜間泊まっていたのが二十一名あったけれども、正式な従業員はその中で十八名とか言っておられますけれども、そんなこともありますので、その点だけお伺いして終わります。
  252. 高橋克彦

    説明員(高橋克彦君) 御説明申し上げます。  ホテルの従業員の数が施設に応じまして適切かどうかということは一概に決めがたい問題でございます。たとえば、当該ホテルが宴会場、店舗あるいはその他の施設を多く構えているか、あるいは客室だけであるかというふうないろいろな条件がございまして、あるいはホテルの管理運営をすべて自社職員で行うか、あるいは清掃、洗濯、メークベッド、警備等を外注するかというふうなことで、非常に従業員の数が決めづらいのでございますけれども、外客の接遇上必要なサービスを提供するという観点から、今後検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  253. 上條勝久

    委員長上條勝久君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、亀長友義君及び小林国司君が委員辞任され、その補欠として高木正明君及び大河原太一郎君が選任されました。
  254. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 自治大臣の先日の所信表明で、非常にりっぱなお言葉がございました。ちょっと申し上げますと、「私はかねてから民主政治の基盤は地方自治にあると確信しております。」というお言葉がございます。さらに、「今後行政改革を進めるに当たっては、」「自主的、自律的な地方行政を実現し、地方分権を推進することを基本的な方向とする必要があり、」と申されております。これらは非常にごりっぱなお言葉であると思いますけれども、こういうお言葉といいますか方針は、単に自治大臣個人の方針ではなくして、政府の方針または自治省の方針あるいは臨時行政調査会の方針と、そういうふうに見ていいものでございましょうか。
  255. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) ただいまお話しがございました自治大臣の説明自治省の気持ちでございまして、自治大臣のおっしゃるとおりに自治省考えております。
  256. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 そういたしますと、結局地方自治、地方分権というものは民主主義の柱である、そうしてそれは憲法もそう言っている、したがって、また、臨調も自治省も、それを目標として運営せられるべきであるということになると思うのです。そうしますと、日本という国が民主主義的に発展をしていくために、国とあるいは政府地方自治体とは役割りがおのおの違うんじゃないのか。その違うという点に地方自治というのがあるのではないかというふうに考えます。  というのは、国の政府というのは外交であるとか国防であるとかあるいは貿易であるとか、そういう国全体の民主主義的な運営ということに主眼点を置いているものであって、地方自治体はその支配下の住民の幸せとか、幸せな文化的にして健全なる生活を維持するということを目標にしているのではないかと思うのです。そういたしますと、国と地方自治体のすべき仕事、それは異質なものであって、その二つが上下の関係にはない。つまり国が上であって地方自治体が下であるという関係にはない。それは戦前の日本の政府の政治の中においては、そのように国が上で、そうしてその命令系統のもとに地方があるということでありましたけれども、戦後の憲法のもとにおいては、上下の関係はないというふうに考えられるのではないかというふうに思います。それでありますから、そこで国全体のことを考えるということと、それから地方住民の幸せのことを考えるというこの二つのことは、いつでも何といいますか、整合するものではないので、多くの場合において衝突をするものである、対立をするものであると思います。  一つの例を言うならば、自衛隊を、国防を、福祉及び教育の支出を削ってやるということ、これは国のためには必要でございましょう。しかしながら、地方自治体にとっては大変に迷惑なことであり、地方の住民の幸せのためには、むしろ自衛隊といいますか、国防の費用を削ってでも十分な社会福祉をやってほしいというふうに考えるのは普通でありまして、私が知事を十二年間やっております場合にも、私のやろうと思うことは多くの場合において政府の方と対立をして、そうして対立の関係を生じたということがたびたびございます。それでありますから、そういう関係を互いにチェック・アンド・バランス——国のインタレストとそれから地方自治体のインタレストは多くの場合において整合をしない、対立をする。そこで互いにチェックし合って、そうしてバランスを得て、そうして民主主義的な政治の運営がなされる。それをチェック・アンド・バランスと言っているのではないであろうか。  それでありますから、つまり地方自治体と国とは上下の関係にあるのではなくて、両者は互いに異質の面を分担をし合って、そうしてお互いにチェック・アンド・バランスを得て、そうして民主主義的な社会を進展させていこうというのがつまり地方自治を尊重をする、地方分権を尊重するという自治大臣のお言葉であり、そうしてまた、民主主義の政治の本質であると思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  257. 小林悦夫

    政府委員小林悦夫君) 国と地方とは車の両輪でございまして、国民福祉の向上という共通の目標に向かいましてそれぞれの機能と責任を分からつつ相協力すべきものだと考えます。ただ、地方分権ということにつきましては、これは住民に身近なものの行政につきましては身近なところで行うのが当然でございまして、こういう点からも地方分権というものは図られるべきであると考えるわけでございます。
  258. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 政務次官いかがでございますか。
  259. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) 多年の御経験に基づかれましていろいろとお話がございましたけれども、国と地方が上下の関係でないということはもっともなことでございまして——もっともなことというよりも当然なことだと思っております。  しかし、地方と国が対立というふうなお話もございましたけれども、私は、単純に対立というふうには考えておりませんので、きょうのこの委員会におきましてもいろいろな御指摘を受けましたけれども地方公務員の給与の問題でそれぞれ自治省が強硬な態度にあるとか、あるいは制裁がどうだとか、こういうお話でございますけれども、私どもは健全な自治体運営をしていただくためにはそれぞれ自治体においても考えていただきたいということを率直に申し上げておるわけでございまして、いま御質問のような単純な意味におきます対立というふうには考えておりません。
  260. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私も、あらゆる場合に対立するというわけではないのでございまして、対立することもあり得ると、また、あることがある場合においては当然であると、そういうふうに申し上げたわけでございます。そうして、地方自治体と中央政府は異質の、何といいますか、民主主義的な発展のためのそれぞれの面を分担をして、それは質の違うものであるという点は、地方自治体及び国のいろいろな組織の中にあらわれていると思うんです。  たとえば、政府指導者である首相は間接選挙、つまり、議員を選挙をして、そうして多数を占めた政党から任命するという間接的なものである。しかし、自治体の長はそうではないので、人民が直接選挙をする。それはつまり、国の首相は国全体のことを考えるし、地方自治体の長は地域住民のことを孝える、そういう役割りを担っていることが選挙の方法、一方は間接選挙であり、他方においては直接選挙であるということにあらわれているのであると思うのです。  そこで、つまり地方自治体においてはそういう地域住民の幸せ、地域住民の利益を直接首長は代表をしている。そのために直接民主主義もある。つまり、議会があって間接民主主義も地方自治体にも取り入れられている。しかしながら、地方自治体においては、直接民主主義の分野もあると言わなければならないと思うんです。それは、たとえば直接請求によりまして条例を制定をする、条例を改廃をする、あるいは条例以外のいろいろなことの改廃も直接請求をすることができる。そう、して、条例も変えることを請求することができる。それでありますから、そういう直接民主主義的な色彩も加わっていると思います。そういうことが結局は地方自治体と国との役割り分担があるということの、何といいますか、証明にもなっているのではないであろうか、そう思うのでありますが、いかがでございましょう。政務次官、お願いします。
  261. 谷洋一

    政府委員(谷洋一君) ただいまいろいろとお話がございましたけれども、おっしゃるとおり、自治体の権限あるいるいは自治体の志向するところというところにつきましては、御指摘のとお小だと思いますけれども、その方法手段につきましてはいろいろとそれぞれの地域によってそれぞれの立場があろうかと思うわけであります。  わが国は、日本列島という、北海道から沖縄まで、気候、風土、地形それぞれ非常に違います。それぞれ違うということは、第一次産業である農業、水産業、林業等につきましてもずいぶんその地域地域によっての差があるわけであります。ましてや二次産業、三次産業となりますと、そこに人口集中や格差という問題ができて、その地域の各地方自治団体が苦しんでおるという実情もあるわけでございます。都市へ集中して苦しんでおるところがあれば、過疎で苦しんでおるところもあるわけでございまして、その方法、手段につきましてはそれぞれの立場がございますから、それを生かすことが最もその地方自治体の先決な問題だろうと、こう思うわけでございます。
  262. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私は、原則を申し述べまして、それが最近においては非常に、何といいますか、曲げられそうになっているということが言いたいために原則を申し上げたわけなのでございます。  きょうもたびたび問題になっておりましたように、自治省が、東京都の給与、それを人事委員会の決めましたとおりに実行することに対して異議を唱えた。そして新聞によりますと、それに従わなければ地方交付税を減らすぞということを言ったということでございます。それは新聞のことでございますから、うそであるかもしれません。しかしながら、私が自身で経験したことを申し上げますと、ある次官が、おれは革新が嫌いだ、したがって美濃部も大嫌いだ、大いにいじめてやるというので、当然発行を許可すべき地方債発行を許可しないで、非常に困ったことがございます。それも一つの実例でございまして、つまり、私は、自治省は命令したりあるいは勧告したりする権利はないんだ。そうして、給与がもし高過ぎたらばそれは住民が訴えるべきであって、住民があるいは直接請求という形でもって訴えるとか、あるいは選挙において次にはそういう知事はやめさせるとか、あるいは議員さんはかえるとか、つまり、住民がその政策の変更を、何といいますか、この方に行動をする。それは地方自治体においては幾らでも方法があるわけなんです。  それですから、さっきから聞いておりますと、世論がどうかこうかとおっしゃいますけれども、その世論というのは一体何なのか。私は、地方自治体における世論は地方自治体の住民の票である。選挙を通じてやられることである。それを自治省がなされるというのは少し行き過ぎではないであろうか。そういうふうに考えるので、それについて御意見を伺わせていただきます。
  263. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 確かにお説の点はもっともな点があることを私も認めます。  ただ、地方自治体、それはもちろん地方自治体自身が判断をし、決断を下し、実行していく、これが地方自治の本旨であろうと思います。ただ、それはいかに世の中の批判がありましょうとも、だからそれでいいんだということではないと思います。批判のあるところはみずから正すべきものは正す、みずから律するべきものは律する、これが私は地方自治の本旨でなかろうかと思います。そういう意味合いにおきまして、現在高過ぎる給与が非常に批判を受けておりますが、そういう現在置かれておる実態というものを地方団体によく理解をしていただくということが私たちの仕事であろうと、このように考えておるところでございます。
  264. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私は、本当に地方自治が確立されるためには、財政の独立性、地方財政の独立性ということがどうしても必要である。それが完全に不完全な状況にあって、たびたび申し上げますけれども地方税というのは固有の財源としてあるけれども、これは全体の三割前後でございます。それから交付税、これは三税の三二%ということが決められておりますけれども、これは一遍自治省のふところに入りまして、それが配分されるわけでございます。その配分にも一定の法則があるとはいいながら、自治省の意思によってどうにでも変わるものであり、それだからこそ交付税を減らすぞと言っておどかすということも起こってくるわけでございます。それからもう一つ大きいのは補助金、補助金が大きいので、この補助金はどうしても行革でやめていただくということが必要で、それ以外に地方債発行というのがあって、地方債発行自治省の許可が要ります。  こういうふうに、財政的な操作によって地方自治体はがんじがらめになっているというのが実情でございまして、それを利用して自治省が、あるいは政府が、中央集権的に地方自治体を自分の意思に従わせようというのが現実の姿であって、そうしてそれがだんだんと厳しくなりつつあるというのが現状であろうと思います。  私の質問を終わります。
  265. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  266. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記を起こして。  他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  267. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  地方交付税法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  268. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  269. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会