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政府委員(福田幸弘君) この「論壇」読んでみたんですが、感ずるところを申し上げますと、課税最低限というのは税負担を求めるときの最低限という適正な基準がどうかということであろうと思います。一方生活保護基準というのは厚生行政の観点から定まるものですから、おのずからその二つの性格が異なっていまして、両者を単純に比較することは適当でないというのが
基本的なまず
考え方です。
もう少し詳しく申し上げますと、夫婦子二人とこうやるわけですが、生活保護の場合も夫婦子二人とこうやるにしましても、生活保護を受けている世帯の類型というのはいろいろあるわけでございまして、またそれは当然生活保護を受けるような状態にある世帯ですから、一方夫婦子二人という課税最低限はこれは一般的な標準として
考えられるもの、そういうことで見ますと生活保護を受けている方の世帯は高齢者世帯とか母子世帯、それから傷病者、障害者世帯というんで、その他世帯というのは一一%程度にすぎないわけです。その辺が比較するベースというか
考え方が違うというのが
基本にまずあろうと思うんです。
課税最低限の方をもう一回
考え直しますと、資産の保有
状況というのには関係がなくて、フローの年間
所得をとらえまして、全国一律に課税しない
水準を
考えるというふうなものでございます。これに対して申しましたように、生活保護基準というのは態様がいろいろそれに要する原因を持っておりますが、資産、能力それから扶養義務者等があるかどうかというあらゆる生活手段を活用してもなお最低生活を営めないときの保護
水準、これを定めるもので、その性格がそういうものでございますので、年齢とか地域とかいうことでそれぞれにいろんな要素が加味されて定められているということであります。したがって、生活保護基準と課税最低限とを直接に比較すること、単純に比較することは困難であるというのが
基本的なまず
考え方です。
「論壇」の中に約二百五万円という生活保護基準が書いてございますが、どういう計算か承知しておりません。課税最低限との比較の上で用いられることのある四扶助、これは生活、期末一時、教育、それから
住宅の各扶助ですが、この合計額についてみますと、五十六暦年では約百七十五万三千円、五十七年が約百八十六万五千円ということで、
所得税の課税最低限二百一万五千円、これは最低限が高いということでございます。生活保護の方が上回っているということは、この四扶助の
考えを計算に入れるとならないんですが、この方の計算よくわからないわけですけれ
ども、どうもこれは仙台の方ですけれ
ども、仙台ですから当然冬季加算は入っておると思います。
これはそれでいいんですが、
住宅のところがどうも計算のところの違いじゃないかという気がいたします。これは主計局の方でまた間違っておれば後で訂正すると思いますが、われわれが承知しています
数字の一応の感触から言えば、この二百四万五千九百円と、こう言っていますのはどうも
住宅扶助について一般基準は月九千円、こうなっていますが、特別基準というのがあって、三万円までが限度になっておるということでございます。
そういうことで、じゃ
住宅扶助の実態はどうかということを見ますと、特別基準を引き合いに生活保護の
水準を説明するのが適当でないと
考えますのは、持ち家が約四五、それから公営
住宅が一三、民営が四一ですが、一般基準という
範囲内で約四割がおさまっていますので、この特別基準の高いところの
数字を一般的なものとして入れることはどうかと、これは非常に技術的ですが、
考えられるわけです。
せっかくの時間ですからもう少し御説明しますと、公的扶助は諸外国でもいろいろあるわけで、単純に比較することは不適当ですが、その
考え方を見るのに、これは外国調査をわが方でやったことがあるんですが、英国では課税最低限の
水準が公的扶助の基準額を下回っております。西ドイツも過去これは同じように下回っておったわけですが、現在はそうじゃございません。しかし、これに対しまして両国の当局の説明は、両者それぞれ独自の観点から決定されているものであると、特にそこにどうこう食い違いがあるということについての関心はないし、比較する論議も行われてないと。また、そういうふうに逆転いたしていましても、税金をもしかけましても税金控除後の
収入を基準として公的扶助が行われるということであれば、それ自体問題とならないんじゃないかというふうなことを向こうでも言っております。
それから、アメリカの場合は
日本の生活保護のような公的扶助ではなくて、老人、母子家庭等に対するものが中心です。これに対して、アメリカの当局の説明は両者の比較は行わない、行っていないと。公的扶助
水準より課税最低限が下回れば課税されることになるが、それは現実的にはリアケースであると。その辺何もそこで直接の関係があるものとしてはチェックしてないということを言っております。問題は、そういうふうに逆転するような
状況でも、イギリスが課税最低限を低くしておることの
理由はやはり社会保障が拡充してきますので、その財源を社会保険料的に広く
所得税で徴収しようとする、一方においてそれが生活保護費を含む社会保障費として下の方まで
歳出の方から賄われる、
歳出の方から広く支出されるというようなことの現在の社会保障国家の
考え方から来ておるというふうな説明もございます。したがって、財源と
歳出が絡んでおるということでございましょう。
それからもう
一つは、これは主計局の問題でございましょうが、
日本の生活保護基準が高いかどうかの問題がやはりあろうかと思うんです。
日本の場合の
数字は先ほどのようなことですが、英国あたりで見ましても、これは主計局の方の
数字がいいと思うんですが、英国にしましても西ドイツにしましても
日本よりはわれわれの理解するところではむしろ低いという
状況。ですから、生活保護基準の
水準がどうであるかということと、また課税最低限の
水準がどうであるかということとのやはり関連があると思うんです。
日本の場合は課税最低限が高い、また一方において生活保護
水準も比較的高いという問題ございますが、しかしこれは別個の問題という前提がございます。
いずれにしましても、この問題は今後基礎的な検討を要する問題ですが、逆転を生じちゃいけないとか、必ずここには密接な関係があるというふうに理解すべきものではないというふうに私は
考えます。