○
政府委員(小山昭蔵君) お答え申し上げます。
税の執行が公平に行われているかどうか、いわゆるクロヨン
論議というものがございまして、昨年の通常国会におきましてこのクロヨン
論議にこたえるための実態調査を
国税庁において行ってはどうかという御
論議があり、これを踏まえまして
国税庁において実施いたしましたのがただいま先生御指摘の税の執行に関する実態調査でございますが、その間の
考え方について若干御
説明さしていただきます。
いわゆるクロヨン
論議というものはその内容がさまざまなものからなっていると思われますし、またしたがいまして、これに対する調査というのもいろいろなやり方があろうかと思うわけでございます。
一つは、全国民を対象といたしまして、これを一定の割合で無作為抽出で対象者を選定して、その実際の
所得と税務当局の把握している類とを対比してみるというやり方もあるいはあろうかと思いますが、その場合にはいろいろとむずかしい問題がございます。
一つは、当然母集団が大きくなり、全国数百の市町村にまたがると私どもの能力だけではなかなか手が及ばなくて市町村等の御協力も仰がなければならないというようなこともございますが、もっと大きな問題といたしましては、やはりその調査対象者の中に相当数の給与
所得者が当然入ってくるわけでございますが、わが国の場合、
一般の給与
所得の方たちはその種の税務調査になれておられないわけでございますので、たとえば給与
所得のほかに不動産
所得とか雑
所得はお持ちじゃありませんかとか、金融資産をどういうふうに運用しておられますかとか、そういった税務調査のようなことをそういった
一般の給与
所得者に対して行うということは実際問題としてこれは非常にむずかしい、こういうふうに考えられるわけでございます。
そこで、それではそういった方たちは別にして、税務当局の方で把握している農家とかあるいは営業
所得者だけを対象にその種の調査を行ってみてはどうかということが次に出てくるわけでございますが、実は私ども税の執行の過程を通じまして、その種の事業
所得者についての申告水準につきましては相当の手がかりを実は持っておるというのが実情でございます。
まず、農家についてでございますが、これは先生も御
承知のように、ごく一部の特殊
経営農家と言われる人たちを別といたしますと、
一般の農家につきましては税務当局が作成いたします農業
所得標準によって
課税をいたしておるわけでございますので、
一般的にいいますと
所得水準の漏れといったような問題にはなじみにくいわけでございます。また、営庶業者につきましては、これは私ども四%台程度の実調率でございますが、毎年実地調査をいたしております結果が出ておりまして、それによりますと
所得の申告漏れの割合はおおむね二〇%台、二五%程度というのが実情でございまして、これは対象を非常にしぼりまして、特別な資料があるとか申告水準が同業者に比べて著しく低いとか、そういった方を特に選んで調査いたしておるわけでございますので、
一般の申告漏れの水準はそれよりは相当低いということが考えられるわけでございます。何かほかに、もっと客観的な資料はないかと申しますと、実は営業者について業種別の
経営の実態調査というのをこれは私どもの内部でいたしております。これは同業者の調査に際してその資料を活用するという目的で、特定の業種につきましてほぼ毎年無作為抽出の
方法で対象者を選定いたしまして、そうして熟達した調査官でもってその
経営内容を、実態を十分調査するわけでございますので、本来の目的とは別でございますが、その結果を集計いたしますと、営業
所得者の申告水準がどの程度であるかということについて相当これは信頼のおける
数字が把握できるわけでございまして、いま申し上げましたような全体としてはかなり高い申告水準にあるということを裏づけられております。
さはさりながら、農家とか営業者等につきましては、暮らし向きは非常にいい割りに申告される
所得の額がどうもそれにそぐわないのではないかというような疑問を持たれる向きとか、あるいはそもそも相当の
所得がありながら全く税務当局に把握されていないものがかなりあるのではないかといった疑問を持たれる向きがあり、この種の疑問がいわゆるクロヨン
論議を生む大きな原因になっておるということも事実でございます。
そこで、私どもといたしましては、この二つの点に焦点を当てて今回の税の執行に関する実態調査というものを実施してみたということが経緯でございます。