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政府委員(小山昭蔵君) お答え申し上げます。
税の執行が公平に行われているかどうか、いわゆるクロヨンの論議でございますが、こういう論議が現に行われており、また昨年の通常国会における本
委員会において御論議いただいたところであることはいま先生御指摘のとおりでございます。
国税庁におきましては、そのときもお答えいたしたかと思うんでございますが、その
調査の方法等につきまして鋭意検討いたしたわけでございますが、その結果といたしまして実施いたしましたのが先月公表いたしました税の執行に関する実態
調査でございます。
その間の経緯につきまして、若干御説明さしていただきます。
いわゆるクロヨンの論議という場合に、いろいろな内容があろうかと思うのでございますが、その実態を解明するための
調査といたしまして、
一つはいま先生御指摘になられましたように、たとえばすべての国民を対象といたしまして
一定の抽出率で、無作為抽出に対象者を選びましてその所得を洗ってみるというやり方がもちろん
一つあるわけでございます。
ただ、この方法の問題点が実は大きく分けて二つございまして、
一つはこれが非常にむずかしいということでございまして、いろいろ検討してみたんでございますが、やはり職のない方を区別して外すということが非常にむずかしゅうございますので、どうしても母集団が大きなものにならざるを得ませんし、そういたしますと、これが全国の数百あるいはそれ以上の市町村にまたがることになりますが、現在の私
どもの事務処理能力からいたしますと、当然どうしても地元の市町村のお力をおかりする面が非常に多うございます。現に今回実施いたしました実態
調査におきましても、非常に地元の市町村のお力をおかりしたわけでございますが、これがそういった形の場合、全国津々浦々で御協力が得られるかどうかという問題がございます。
それから、もう
一つむずかしい問題は、当然に対象者の中に給与所得者、いわゆるサラリーマンが非常にたくさん入ってくるようになるわけでございますが、こういう方たちに対しまして日ごろそういった税務の
調査というようなものを受けつけていらっしゃらないわけでございますから、こういう方たちに対する税務
調査というのは実際問題として非常になじまないんじゃな
いかと、こういうようなことがむずかしいという点の一点でございます。
それから、もう
一つの理由といたしましては、実はそれじゃ給与所得者は外して農業なり営庶業者だけを対象に
調査してみてはどうかということになるわけでございますが、実は私
ども税の執行を通じまして、この営庶業者あるいは農業につきましては申告
水準につきましてかなりの資料を持っております。まず、農業について申しますと、これはもう先生御承知のとおり、大部分の農家につきましては、稲作なりさまざまな畑作につきまして課税
当局の作成いたします農業標準によって課税いたしておるわけでございますので、一部の特殊経営農家といったようなものを別にいたしますと、一般的には所得の把握漏れの率といったような問題にはなじみにくいのではな
いかと、このように理解しております。また、営庶業につきましては、これは私
ども実地
調査の結果、これは所得の漏れが十分
予想されるような対象にしぼって
調査しておりますが、おおむね二五%程度の申告漏れの
水準であるというような事実を知っております。
したがいまして、全部の
数字でいきましたらこれよりは相当高い申告
水準になるであろうということが
考えられるわけでございますが、実は私
ども統計学の専門の先生方にもお力をおかりいたしまして、これは別の目的で、私
どもの内部の税務
調査の資料を得る目的で、
一定の業種の営業者につきましてほとんど毎年のように対象者を無作為抽出で選定いたしまして
調査をいたしております。その結果出てまいります申告漏れの
水準というのが、やはりいま申し上げましたようなことを裏づける相当低い
水準になっておると、こういうような状況がございます。
しかしながら、世間一般から申しまして、そうは言っても農家とか営庶業者、営業者等について見れば、暮らし向きが非常にいいのに所得がそれに見合って少ないではな
いかとか、あるいはそもそもかなりの所得がありながら全く税務
当局が把握してないものが相当いるんではな
いか、こういつた御論議がございまして、この種の御論議がいわゆるクロヨン論議を生じる大きな
原因になっているというふうに私
ども思われたわけでございまして、しかも、この種の論議に対しては私
ども手元に全く資料がなかったというのが実情でございます。
そこで、以上の二点につきまして、その実態を解明するために、このたびの無申告の実態
調査と、それから世帯単位の所得の実態
調査。後者はサラリーマン家庭、それから営業の家庭、それから農家のそれぞれにつきまして、世帯ごとの所得の特徴はどんなものがあるかということを見てみたわけでございまして、その結果は先生も御承知のとおり、農家とか営業者等におきましては世帯主のほかに所得のある家族の数が……