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政府委員(真野温君) 現在アルコールが専売制度のもとに置かれておりますのは、御
指摘のように飲用アルコール、これに対しまして高額の酒税が課されておる一方、同じアルコールでありますが工業用のアルコールにつきましては、これは工業用の原料といたしまして低廉安価な
供給が必要とされる、こういう同じアルコールに対して
二つの違った機能と申しますか、要請があるわけでございます。そういう
意味におきまして、現在専売制度のもとにおきましてこの
二つの用途に応じた流通の規制、これをいたしておるわけでございます。その場合に、専売制という形で流通規制を行っておる
わが国のような場合のほかに、御
指摘のように税制によりましてこの
二つの分離された機能を遂行しておる国がございます。
ただ後者の場合におきましても単に税収を上げるというだけではなくて、その
二つの用途に応じたアルコールの流通規制という規制
業務が不可欠でございまして、現在税制をとっております国、たとえば
アメリカにしましてもイギリスにしましても、そういう
意味での流通規制が税制のもとにおいて同じように行われておる。かたがた
日本の場合には、専売制度が
昭和十二年以来ずっと定着いたしまして、それに応じた流通なり製造の形態ができておるわけでございますが、これを仮に税制に改めました場合には、かえって制度的に複雑になる要因を含んでおりまして、具体的に申し上げますと、税制の場合にはいわゆる戻し税制度でありますとか、事前にある
程度供託するという
意味でのボンド制度というような新しい規制なり制度というものを必要とする。それにまた加うるにいろいろな流通面におきまして流通がかなり複雑化し変更を生ずるということから、移行に伴ういろいろな混乱も生ずるわけでございます。そういう
意味におきまして、諸外国においても税制をとっておる国と専売制を維持しておる国、
二つございまして、大方を申し上げますと、ヨーロッパの大陸諸国は大体イタリアを除きまして専売制をとっておるわけでございます。他方、
アメリカの場合にはこれはまた州の権限がございまして、税制をとっておる州とそうでない州と
二つある。イギリスは税制と、こういうふうに区々分かれておりまして、そういう
意味におきまして同じ目的のために
二つの制度があるときに、現在効率的に運用されておる制度、これを基本的に維持する方がかえって全体の混乱を招かないという問題さらに税制になりますと、先ほど申しました新しい制度措置が必要になるという問題がございます。
また、それに応じて必要な規制が税制、つまり税務署でありますか、税当局によって行われる。その間現在の専売制度との間の調整なりスタッフの養成等もございまして、そういう
意味において、新たないろいろな行政負担がかえって生ずる形になってまいります。そういう
意味におきまして、基本的には現在の専売制度を維持する方が効率的であるというのが検討の結果での私
どもの判断でございまして、そういう
意味におきまして、専売制のもとにおいて製造事業により効率的に運用する、こういう
方向で
考えたのが今回の
法案でございます。
もう一点、工業用アルコールについてはいわゆる競争面でこういう専売制度がどうかという点でございますが、従来発酵アルコールにつきましては、
民間の製造事業において製造されております合成アルコールとの
価格競争というものは、現に存在しておるわけでございまして、そういう
意味におきまして、合成アルコールとの比較で常に
合理化なり
コストダウンを図ってまいりました経緯がございます。そういう
意味におきまして、全くそういう
意味での競争はないわけではなくて、合成アルコールによる競争というものは現に存在しておるわけでございます。したがって、ある時期第二次大戦後におきましては、
石油価格が非常に低廉でございました時期には合成アルコールの方が
コストは安いという
状況がございまして、発酵アルコールの方はどうしても原料などの
制約から
コストが高い
状況がございましたが、しかしその後、
石油価格の
上昇によりまして現在はほとんどこの
コスト差はなくなっておるわけでございます。
他方、こういうような合成アルコールの競争によりまして、
民間の発酵アルコールの事業というのは途中で休止いたしたわけであります。しかしながら、国営の工場におきまして、現在まで発酵アルコールの製造及びその技術的発展が図られまして、
価格は維持されてまいったわけでありますが、それが今後新しい
石油危機以後の
エネルギー情勢のもとで、新しいバイオマスでありますとか、
燃料アルコールの
開発の
基礎的な技術として再び活用される時期に参ったわけでありまして、長期的に見まして、こういう技術的な面での国営工場による技術ポテンシャルの保持ということが、将来に向かって再び活用される時期に参ったわけでございまして、こういうアルコールの制度そのものにつきまして、専売制度というものを基本に置いて、そういうような発展を遂げてまいりました経緯を
考えますと、やはり安定的な発酵アルコールの製造事業の継続というものを図るために、現在の専売制のもとにおいてこれを継続するということが妥当ではないかというふうに
考えて、この
法案ができ上がってきた次第でございます。