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国務大臣(
安倍晋太郎君)
わが国の経済は御承知のように、この十月−十二月の経済指標を見ますとマイナス成長ということになりまして、これはまさに予想を裏切ったような状況でございますが、これは五十六
年度が内需がずっと不振できておりまして、さらに十月−十二月にかけて外需までが、それまでは外需によって支えられておったのが外需までが停滞をしたと、こういうことからマイナス成長になったと思うわけでございまして、この状況で五十六
年度はもうすでに終わったわけでございます。一−三月が六月ごろに出るわけでありますが、もうすでに終わったわけでありますが、私は、全体的に五十六
年度の
情勢を見ると、四・七%から下方修正をして、四・一%は何とか実質成長ができるだろうと、こういうふうに
政府として見通しを
立て直したんですが、十−十二月の状況、そして引き続いての一−三月の
情勢から見ますと、とうてい四・一%は不可能であろう、いまの状態でいけばこれは経企庁も言っておりますが、三%前後というところ、むしろ三%を切るんじゃないか、こういう心配をいたしておるわけでございます。これはいろいろなところに深刻な影響が出てくる。そして特に五十七
年度五・二%という見通しを
立てたその見通しの土台がこの五十六
年度になるわけですから、五・二%の実質成長を確保するという上においても大変深刻な問題が出てくるのじゃないかと思うわけでございます。このままの姿でいけば、五・二%というものはこれもまた非常にむずかしい状態になってくるんじゃないか、こういうふうに危惧をしておるわけでございますが、五・二%の成長を打ち出したときは、これは
経済企画庁を中心にしてはじき出した見通しなんですが、五十六
年度が要するに四・一%は間違いなしにあるであろうと、こういう一つの前提のもとに、世界
情勢、経済
情勢も好転をする、アメリカのいまの
経済政策が功を奏して、後半には景気もよくなってくる、そしてまた内需の振興に相当力を入れれば五・二%は間違いない、こういうことで見通しを
立てたわけですが、五十六
年度がそういう状況ですから、よほどのことをやらないと五・二%はむずかしくなってきておるわけでございます。
そこで、いま
政府としては、
予算の
成立を契機として、これから景気対策にやはり力を注いでいかなきゃならぬ。その一つの
方法は公共事業の前倒してございます。これは、八〇%ということは閣議で決めたわけじゃなくて、自民党が八〇%以上ということで、実は閣議の方では七五%以上ということを決めたわけでございます。七五%にするのか七七%にするのか、これから決めていくわけでございますが、かつて
昭和五十一年、二年にも七六%というふうな前倒しを実行した例もありますから、私は七五%以上はやれるんじゃないかと、こういうふうに思っておるわけでございます。しかし、七五%以上を実行したときに、後半がどうなるかというまた問題にぶつかるわけで、そういうものがこれからの
議論の大きな対象になる、こういうふうに考えるわけですが、いずれにしても七五%以上の前倒しは行う。
それから機動的な金融政策を行う、こういうことも決めております。最近多少は長期プライムは下げたわけでございますが、さらに景気を刺激するために金利を下げることができるかどうかということは、これはアメリカの高金利政策が続いておりますし、そういう中でそういうことができるかどうか、大変むずかしい
段階ではありますけれ
ども、できれば、金利が下がればそれだけ景気が出てくることは間違いない。その辺の金融政策をどういうふうに運営していくかということであります。
それから住宅につきましては、五十七
年度予算に
政府としても力を入れまして、土地減税対策であるとか、あるいはまた住宅資金の確保であるとか、いろいろ現在の
予算の中で、できる限りのことを、住宅対策を目玉にしてやっておるわけですから、この住宅政策をこれから前倒しで実行して、そうして百三十万戸という新規住宅の建設が実現できるかどうかということであります。これもわれわれとしては、
政府として全体の
方向で取り組んでいかなきゃならぬ、こういうふうに思うわけです。
そういう中にあって通産省で何ができるかというお話ですが、これは
政府全体がやはり景気対策をやるわけで、公共事業の前倒しをやり、金融の機動的運営、住宅政策を進めていくということで内需が振興してくれば、おのずから日本全体の内需に力が出てくることは間違いないのですが、われわれとしてもそうしたことをやりながら、やはり通産省は通産省なりの努力もしていかなきゃならぬ。私は、民間の
活力を活用していくということが大きな
課題であろうと思うのですが、実はいまは
中小企業の設備投資も非常に悪いわけです。大企業は、まあまあ堅実な設備投資でありますけれ
ども、基礎素材
産業は非常に悪いわけでありますが、そういう中にあって、まず民間の設備投資を引っ張る柱としては、たとえば電力設備投資なんかがあるわけですね。これは三兆数千億あるわけですから、これなんかも、いま
石油の需給関係、エネルギーの需給関係は緩んでおるわけですから、そうしてこういう景気の状況ですから、電力業界としてはどうも余り乗り気になっておらないわけですが、私は、電力業界にも強く要請をして、五十七
年度はひとつ民間設備投資の旗頭になって景気を引っ張ってもらいたい、そして将来的に電力の投資を充実していくということが大事なことであるから、この際やっぱり電力の設備投資を将来的に確保するとともに、景気対策としてもひとつやってもらいたいということで要請をいたしまして、これは五十六
年度に比べては五十七
年度は大体一〇%ぐらい全体では伸びることになっておるわけでございます。その他ガス協会なんかにも、ガス事業の設備投資に対してもこの前も要請はしましたが、そうした民間の設備投資等をやはり大きく伸ばしていくことができればいい。しかし、これは民間の設備投資というのは、どうしても国の方の公共事業等で、少し前向きに景気がいいなと、秋には出てくるなということでなければ民間の投資は、電力なんかは別として、なかなか出てこない。
中小企業なんかも相当老朽施設でありまして、もう設備の更新をしなきゃならぬ時期に来てはおるんですが、しかし
中小企業は資力が弱いですから、先を見て、先に景気がよくなるということになれば一斉に設備投資に走っていくわけですが、やっぱりその機運がどうしても来ないわけですから、まず
政府が主導的になって景気対策というものをやらなきゃならぬのじゃないか、こういうふうに思っております。
実は四月にも、通産省では通産
局長の全国の会合をやりまして、住宅の状況がどうなっておるか、あるいはまた地方の景気の動向がどうなっておるのか、あるいは
中小企業の状況はどうかということを全部指標を集めまして、われわれとして
方向を打ち出して、そうして
政府全体としてのこれからの経済対策にわれわれの意見を述べて、これをひとつ取り入れさせなければならないと、こういうふうに思います。
とにかく、むずかしい状況になってきまして、貿易摩擦で、貿易の方もそうなかなか伸ばすわけにはいかない、そして内需の方もいま申し上げましたように、五十六
年度がそういう状況である、したがって、五十七
年度にもいろいろ問題を持ち越されておる。こういうことでなかなかむずかしい
情勢になってきておるわけでございます。世界から見ればまだまだいい方でございますけれ
ども、われわれとしてはそういう中で、少なくとも
物価だけは安定しておりますから、景気の方にも力を入れて、いまの
物価なら大丈夫ですから、景気に少し力を入れて、五・二%というせっかくの見通しを持っておりますから、これに向かってひとつ努力をしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけです。