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国務大臣(河本敏夫君) まず最初の
アメリカの高金利の問題でありますが、
アメリカ政府は、
アメリカの高金利は
アメリカのインフレが原因なんだと、インフレを鎮静化させる間はどうしても高金利政策が必要だ、もうしばらく待ってもらいたい、こういうことを言っておったのであります。特に昨年末まではインフレも大分鎮静化する気配ができたので、五十七年度中には長期プライムが一けたになるであろう、こういうことをリーガン財務長官あたりは言っておったのでございますが、幸いに
アメリカのインフレは目に見えて鎮静化してまいりました。一月の水準はもう八%台におさまっておりますし、
アメリカ政府の発表によりますと、ことしじゅうの平均の水準は七・三%ぐらいになるであろう、こう言っておりますから、後半は六%そこそこになるのではなかろうかと、こう思っております。最近のいろんな動きから見まして、それも私はあるいは可能であろうと、こう思うのです。しかりといたしますならば、つい先ごろまで
アメリカ政府当局が言っておりました
アメリカ高金利の
背景はなくなるわけでありますから、だんだん下がらなければならぬはずなのですけれ
ども、一向に下がる気配がない。それはやはり最近は、財政赤字が早くなくなると思っておったけれ
ども、財政の赤字がなかなかなくならぬ。特にこの一九八二年も相当大幅な赤字でありますが、一九八三年、新年度は九百十五億ドルの赤字になるであろう、こういうことを言っております。九百億ドルとか一千億ドルとかいう財政の赤字がありましても、
アメリカ政府が
期待しておりますように、大減税による貯蓄の増加ということが計画どおり実現をいたしますならば、私はクラウディングアウトのようなことは起こりませんから、これは財政の赤字があっても心配はないと、こう思いますが、しかしなかなかその貯蓄が
アメリカ政府の計画どおりふえてまいりません。去年は史上最低の水準である四%そこそこになっておりましたが、最近は五%になり、約六%台にいまなっておるようでおります。したがって、現状ではクラウディングアウトというようなことが起こる危険性がございますので、そこで企業が借り急ぎをして、不況でありますからいますぐに膨大な資金
需要があるというわけではありませんが、赤字財政がたまってまいりますとだんだん金が借りられなくなるのではないかということで借り急ぎをいたしましてそれを一時貯金に置いておくという、こういう
傾向が非常に強くなってまいりまして、そのためになかなか物価は下がっても金利が下がらない、こういうことになっておると思うのであります。でありますから、この問題を
解決するためには赤字をもう少し減らすか、赤字を減らすということがむずかしいということであれば
アメリカ政府の
期待、計画どおり貯蓄がもう少し伸びるような政策をやるか、どちらかやれば私はこの金利は下がるであろうと、このように思っております。しかし、いまのどころまだそこらあたりに対しては
アメリカ政府も確たる見通しは立っておらぬようでございます。
しかし、いずれにいたしましても
アメリカの高金利が世界全体の経済に非常に大きな圧力になっておりまして、ヨーロッパも大変困っておる、
日本ももちろん大変困っておるわけでございます。
日本の現状、物価水準がいまの三%台という水準から考えますと、もっともっと低い水準に金利は下げてもいいわけでありますが、それはなかなかできない。こういうことでありまして、世界じゅうが対応に困っておるということでありますから、世界経済の活力を回復するということのためには
アメリカが現在の高金利を改めてもらうということが私はやっぱりすべての前提条件ではないか、このように考えております。
アメリカはもっと工夫と努力をすべきである、
相手に対していろんなことを言う前に自分のところもやはりやるべきことはやってもらわなければ困る、私
どもはそのように痛感をいたしてわります。
それからさて、もう
一つの
お話は
貿易摩擦を本格的に解消するためにはどうすればよいかということでありますが、私は何と申しましてもまず
日本としては市場の開放体制を急いでつくるということが先決でないかと思います。
日本は他の国よりもより多く貿易に依存しておる国でありますから、その
日本の置かれておる
立場というものを私は真剣に考えなければならぬ、こう思っております。でありますから、もうできるだけ言いわけなどはやめて、そして
日本としては貿易立国なんだ、貿易が拡大均衡の
方向に行かないことには
日本は発展はないのだ、私はこういう認識に立って市場の開放体制を急いでつくるということが先決だ、こう思っております。
ただしかし、市場の開放体制を
アメリカあたりが言っておるように全部つくりましても、現在のような円安であって、
アメリカの商品が非常に高くなっておる、あるいは
日本の
国内の購買力が非常に低い、そしてまた世界経済全体の状態が非常に悪くて、普通ならば何でもないことが神経質に議論される、こういう状態ではなかなか問題の本格的な
解決にはならない。以上申し上げましたようなことを並行して
解決をしていって、初めて本当の意味の
貿易摩擦は解消するのではないかと、こう思っておるんです。
ただしかし、幾つかのことをやらないと
貿易摩擦の本格的な
解決はないということと、
日本が急いで
市場開放体制をとらなければならぬということとはおのずから別問題だと思います。と申しますのは、いま世界的に保護貿易的
傾向が非常に強くなっておりまして、これをやはり避けるということのためには、
日本の
市場開放体制を急いでつくるということが一番の決め手でなかろうか、このように思っておりますので、私は
日本としてはそういう
方向で考えていかなければならぬのではないかと、こう思っております。
外務大臣も近くお帰りになると思いますし、それから
江崎ミッションも近く帰ってまいりますので、この報告を聞きまして
政府部内でどのような対応をしたらいいのか、改めて相談をしたいと思っておりますが、現在までのところはお二人のお帰りを待っておるというのが現状でございます。