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政府委員(
吉原健二君)
老人の
診療報酬につきまして、どのような
診療報酬あるいは
支払い方式をとるか、この
法案を提出さしていただきましてから、
厚生省としてもいろんな角度から実は研究をいたしているわけでございますけれ
ども、率直にいまの時点での
考え方を申し上げさしていただきますと、外国の
制度、いま例に挙げられました登録人頭払いの方式でありますとか、あるいは西ドイツがとっておりますような請負方式、これを
老人医療、
わが国に
導入することは実際問題として大変むずかしい、率直に言って、いまの時点では無理な点が多いのではないかと思っております。
その
理由でございますけれ
ども、イギリスなどは先生御案内のように登録人頭払いという方式をとっておりまして、日本で言う開業医に限りまして登録医
制度をとり、その医師について患者からの登録を前提にして人頭払い的な
診療報酬
支払い方式をとっているわけでございますけれ
ども、病院についてはそういった方式でございませんで、イギリスの場合の病院は全部公費で賄われているわけでございまして、登録人頭払いという方式をとっておりません。
それからそういった方式がとれる大前提といたしまして、日本の場合と
医療制度が全く異なりまして、登録医、つまり開業医と病院との間に機能上の分化がございます。高度の
医療はすべて病院で行う、登録医なり開業医が行うのはプライマリーケアと申しますか、初歩的な初期
診療だけを開業医、登録医が担当すると、そういうふうに機能がはっきり分化をしておりますので、ある
意味では人頭払い的な
診療報酬
支払い方式がとれるわけでございますけれ
ども、仮に日本の場合にそういったことをすぐ
導入いたそうとしますと、日本の場合には病院と
診療所の間にそういった機能分化というものがございません。ございませんで、同時にまた患者が自由に
医者を選べる、あるいは
医療機関、病院を選べる、こういう自由が保障されているわけでございますけれ
ども、それをある面で制限するような結果になるわけでございます。日本の場合の自由開業医
制度、それから患者の側からの
医療機関を自由に選択できる
制度、そういったものを
基本的に変えない限り、なかなか登録医
制度というのは
導入しにくいという面がございます。同時に、プライマリーケアを担当する医師というのはどういう医師であるべきかというようなこともあわせて考えませんと、いまの開業医そのものをすぐ登録医というようなことにするわけにまいりません。
そういったことをいろいろ考えますと、現在の日本の
医療制度のもとにおきまして、たとえ
老人医療に限定をするにいたしましても、すぐ登録医
制度を
導入するということは実際問題として非常にむずかしいのではないかと思っておるわけでございます。
それから請負方式、西ドイツでとっているような請負方式にいたしましても、これは実は開業医についてだけとられている方式でございまして、病院については全く出来高払いで支払われているわけでございます。この場合にも、西ドイツの場合にそういった請負方式がとれるということの背景にはいろんな沿革的な
理由もございますし、
保険者と
医療機関の契約によって報酬を決めるという長い歴史もあったわけでございます。そういったことが背景になって請負方式というものがとられているわけでございますけれ
ども、日本の場合には実際問題として請負方式というものをとり得る余地が少ない。御案内のように、
昭和十八年までは医師会との請負という方式はとられておりましたけれ
ども、それにはいろんな問題がございまして、それ以来ずっと出来高でやってきているというようなこともございます。そういったことを考えますと、請負方式もなかなか日本の場合にすぐ
導入するということはむずかしいのではないかというふうに思っておるわけでございます。
いずれにいたしましても、外国の
制度をいろいろ研究しておりますけれ
ども、なかなかそのままの形で日本の
制度に
導入することはむずかしい。したがいまして、やはり現在の出来高というものを
基本的に前提にして、その出来高が持っております欠点なり短所というものをできるだけ少なくしていく方向で
老人の場合の
診療報酬も考えていかざるを得ないのではないかというふうに思っているわけでございます。