○沓脱タケ子君 いや、そのとおりやったらそのとおりと認めてもらったらいいんですよ。この
法律、このままではぐあいが悪いから廃案にして出し直せという御
意見も国民各層の中にあるわけですからね。財界や
健保連の方でもそういう御
意見もあることだから、私が言うことがそのとおりや思ったら、そうや言うてもらったらいいと思うんですよ。そして英知を集めていいものをつくればいいと思うんですよ。私も、
医療費がやたらに増高すること、何ぼ増高してもよろしいかといったら、それは何ぼでも増高するのがよいと思ってないです。本当に
医療費を減らす方途というのは何なのか。国民が、特に高齢者の方々が健康になって、病気がなくて、
医者にかかる必要のない状態で
医療費が少なくなるという事態をどうしたらつくっていけるのか。そのためにどうしなきゃならないかというので、これはいま御提案になっております
老人保健法だって、そういう角度から私
どもも
検討してきているわけでございまして、何ぼでもふえたらよろしいんだということを言ってないんですよ。だから、現実の姿というものを直視していただくということをもとにして、本当に国民がみんな健康で、
医者にかかる必要がなくて、
医療費の増高が抑えられたと、結果としてね。そういう状態をどうしたらつくれるんだということであって、頭から
医療費を抑える、そのためにどうせないかぬかというまともでもないような理屈つけて理由にしてみたところで、国民が納得しない。そうなると結果として国民の健康が果たして守れるんだろうか。
その証拠に、おもしろいですよ。いま私、御
指摘申し上げた四十二年の特例法の一日一剤十五円ずつというやつね、それやったときどないなったかというたら、おもしろいんですね。家族の方々の受診率の傾向というのは変わってない。健康保険
本人だけが、十五円新たに一部
負担が導入をされたんで、すとんと下がった。その結果どうなったかというと、
患者さんの一件
当たりの診療日数が少しずつそれまでは減っていたんですね。ところが、受診率が落ちた途端に、一件
当たりの日数が、統計によりますと、ふえてきています。それは何を意味するか。これは病人というのは早期受診、早期に
医療を受けるということが一番大事で、一部
負担金かなわぬから、ついつい足が遠のいて、ちょっと売薬でというふうなことをやっていくと、病気が重くなってから病院へ行くということになって、結果としては受診日数が長引くという結果にならざるを得ない。そうしたら
医療費が減るかいうたらそうじゃないですよ。受診日数がふえたらそれだけ
医療費というのは増高してくると思うので、そういう点はやっぱり大事だと思うんですね。国民の健康を守っていくという上からもきわめてこれは
医者の立場でも大事です。
もう一部
負担金かなわぬからいうて、その当時あったこれは具体例ですけれ
ども、高血圧の
患者さんね、一日一剤十五円ずつ払うのもうかなわぬ、一部
負担金かなわぬいうので途中でやめたわけですよ。で、二、三カ月来なかった。そうしたら、突然どんなことが起こったかというたら、ある寒い日に道路上で心筋梗塞を起こされてすとんと亡くなった。そういう事態さえ起こった。これは具体例ですよ。
そういうふうに本当に国民が
医者に容易にかかり得るという
状況を保障しておくということが、本当に早期診療をやって、軽いうちに病院で診てもらって、たくさん費用がかからなくて済むようになるわけですね。重い病気にかからない。そういう点できわめて大事だと思うので、この一部
負担金の導入というのは、私は、ほんのわずかだわずかだとおっしゃるけれ
ども、これはやめるべきものだと。これをやったらまた、すでに経験のあるような結果が、一番大事にしなきゃならないお年寄りのところに無残なかっこうで出てきそうだというふうに思うんですが、そういう点ではこれは
考えていただきたいと思うんです。
で、時間の都合がありますので、そういうわずかだわずかだという一部
負担金の話が、
吉原審議官からも盛んに出るからちょっと言うておきたいんです。外来で一カ月四百円、入院で二カ月間毎日三百円、大したことないがなと言う方々もずいぶんおられます。しかしすでに
論議にも出ておりますように、差額ベッドの問題、付添料の問題というふうな保険外
負担のことは、もう当然のこと、これはもうお年寄りには大変ですからね。その上に、たとえば一カ月一科四百円、何がそない大層なんやとおっしゃるかもしれませんけれ
ども、内科で四百円、目が悪くなって眼科で四百円、腰が痛くなってどうしても整形へ行かなきゃならぬというて四百円といったら、これはもう千二百円や千六百円すぐですよ。それから入院の一日三百円の二カ月ぐらい何やというふうに言われますけれ
ども、老齢福祉年金を
考えてみなさい、二万数千円でしょうがな。その中で月に九千円というのがどのくらいお年寄りに対して過酷な
負担になるかということですよ。きょう午前中にも
指摘されていたように、おむつ代から空調代までというふうな病院もあるわけでしょう。
そういう点で見ますと、お年寄りの生活実態
調査を見ましても、大体七十歳以上の方々の所得というのは平均十六万ですね、あの
調査の統計によりますと。十万以下の方々が四割方です。そういう中でこういう問題がどのようにお年寄りの暮らしに影響してくるかということです。そんな言うたってわずかやないかと厚生省は思っておられると思いますが、私
ども医療の中でお年寄りの生活実態を知っていますけれ
ども、お年寄りは収入が少ないんです。その少ない収入をできるだけ始末をして、亡くなった後にそれでも、おばあちゃんこれだけお金を残しておったわと言うてもらえるようにしたいというのが念願ですよ。自分のために四百円使うお金があるんだったら、孫のために使ってやりたいというのがお年寄りの
状況なんです。だからこそ、一部
負担金というのが一番所得の少ないお年寄りに対して過酷だというのはそこなんですね。
だから、これは私そういうふうに申し上げていきますと、一部
負担金は医学的な立場から見てもよろしくないと思うし、お年寄りの生活実態から言ってもまさに過酷だし、また今日の
制度ができました
経過、いきさつから見ても、これは導入をやめるべきだと思うのですが、いかがですか。