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渡部通子君 去る二月一日から三日までの三日間、
粕谷照美委員長、
佐々木満理事、
安恒良一理事、
関口恵造委員、水脱
タケ子委員、
藤井恒男委員と私、
渡部通子の七名は、
老人保健事業及び
産業用ロボットの
導入の
実態等の実情を
調査するため、愛知、
静岡の両県に行ってまいりました。
調査では、両県における
老人の実態と
保健医療対策、
産業用ロボットの
導入が
雇用に及ぼす
影響等を中心に
現況説明を聴取するとともに、
市町村保健センター及び
ロボット関連工場を視察いたしました。
まず、両県における
老人保健関係の概要について御報告申し上げます。
愛知県の六十五歳以上
人口は現在四十六万二千人、総
人口比の七・四%で、
全国水準の九・一%を下回っておりますが、将来は
高齢人口の
増加テンポがきわめて速まることが予測されています。
保健医療対策としては、
高齢者の
有病率が高い事実に着目し、四十六年十月より県としての
老人医療費公費負担制度を設け、以来、
対象年齢の六十八歳までの引き下げや
所得制限の緩和を行っているほか、
老人医療費受給者を
対象に
付添看護料の
補助事業を
県単独で
実施しております。
また、
老人健康診査における
一般診査の
受診率は、二五・七%と
全国平均をやや上回る
状況にあり、
市町村の
実施単価の
超過負担分についても、その三分の二を
県単独事業として
補助を行っているところであります。
在宅対策としては、五十六年の十月より
介護人の
派遣対象を中
所得階層にまで拡大し、必要に応じて
訪問サービスを
実施しているほか、在宅の
寝たきり老人には年額六万六千円の手当を支給しております。
次に、
地域住民の
健康づくりの拠点である
市町村保健センターは、現在九カ所設置されているほか、二市において建設中であり、その
整備に当たっては県としても国と同額の
補助を行っております。
保健所については、名古屋市の十六を含め、四十一の
保健所が設置され、特に
遠隔地を
対象に
移動保健所事業が
実施され、本
年度では八
保健所で十九の町村を
対象に
保健所活動の浸透に努めています。
また、
成人病予防対策としては、各古屋と豊橋の二カ所に
総合保健センターが設置され、特に人間ドックでは自動化健診システムにより、
成人病に関すも五十余の
検診を二時間
程度で
実施することが可能であります、一
県内の
就業保健婦数は六百六十八名でありますが、
人口十万対では十・七人で
全国平均の十三・二人を下回る
状況で、未
設置市町村も二十一に上っています。
活動状況を見ると、
検診に関しては、
受診率の面からは、乳幼児については七〇%以上となっているのに対し、
一般住民検診、成人、
老人検診はいずれも二〇%
程度という
状況にあります。また、
家庭訪問等による
保健指導でも、結核新
登録患者や未
熟児等時に
指導を必要とする者については八七%以上
実施している反面、成人や
老人の
保健指導については、
対象者の一六%
程度にとどまっているのが現状であります。
なお、今後予測される
対人保健サービスの拡充に伴い、
保健婦需要の
増加が見込まれるため、本
年度より
養成定員を倍増するなどその充足に努力しております。保次に、
医師数は、
人口十万対百二十・八人で、
全国平身をやや下回っておりますが、
医大開学による
養成定員の
大幅増による伸びが見込まれる
状況にあります。
また、PT、OTの
免許取得者数も
全国平均をかなり下回っておりますが、五十四年に国立の
養成施設が開校したほか、本年の四月にはPTの
民間養成所が開所する予定であり、事態の好転が期待されております。
次に、
静岡県について申し上げます。
静岡県における六十五歳以上
人口は三十一万九千人、総
人口比ではほぼ
全国平均並みの九・二%で、今後ともこの傾向での推移が見込まれています。
老人医療は、国の
基準どおりで
実施されており、
県単独の
上乗せ制度は
実施されておりません。
また、
老人健康診査の
受診率は三二・六%と
全国平均をかなり上回り、そのためか
老人医療の
受診率は
全国平均より低く、特に一人当たりの
老人医療費では、温暖な気候、
医師不足等の
影響で、
全国平均より年間で十万円
程度低く、
全国四十六位にランクされております。
なお、
医療費対策としては、
保健子防活動が徹底している岩手県の沢内村や、
県平均のさらに二分の一の
老人医療費を実現している天城湯ケ島町等の優良事例の紹介を積極的に行っております。
県内の宅宅
老人の現況は、寝たきり一・八%、ひとり暮らし三%で、それぞれ
全国平均の三%、九%をかなり下回り、
全国順位では四十二位、四十二位という恵まれた
状況にあります。
次に、
市町村保健センターは、現在県内十カ所に
整備されているほか、六十
年度までに二十四
市町村が設置を予定しており、その
整備に当たっては国庫
補助額の二分の一を県費で
補助しております。
県内の
保健所は、三つの政令市
保健所を含め二十設置され、
各種の
対人保健サービスを積極的に進めており、中高年の
成人病予防と
婦人の健康管理
対策では、健康増進車の巡回により、栄養、運動、休養の調和の保たれる総合
指導を行い、
健康づくりの地域活動の
促進を図っています一、
県内の
保健所及び
市町村における保健婦数は、それぞれ百五十三人、二百三十三人、
人口十万対では十一・三で、
全国平均を下回りますが、現在保健婦が配置されていない四町村も、五十七
年度ですべて解消される予定であります。
活動状況では、保健婦の全稼働量の五六・三%が
対人保健サービスに向けられ、健康相談、衛生教育、家庭訪問による
保健指導等が行われています。
医師数は
人口十万対百六・三と
全国でも低位にあり、六十
年度までに百二十八に目標を設定していますが、温暖な気候が
影響して、医師の需要も少ないという特殊性があります、
また、大幅に不足しているPT、OTについては県内に
養成施設もなく、これらリハビリ要員の
養成確保についしは国において
実施されたいとの要望がありました。
次に、関連して視察した二つの保健センターについて簡単に触れたいと思います。
刈谷市保健センターは、五十五年の四月同市の中心部にオープンし、職員は所長以下保健婦四名を含み十八名で構成されています。市民の保健予防活動の拠点として
各種の事業に利用され、
母子保健対策としては、妊婦
保健指導を初めとして、心身
障害の発生予防、早期発見、早期療育を重点に、健康診査及び育児教室等の事後
指導を
保健所と共同して行い、母子健康台帳とカルテの一本化を図り、健診データをコンピューターに入力し
指導を行っております。
また、
成人病予防対策では、がん、循環器系などの巡回
検診に加え、特に四十歳以上の者に対してはミニドック方式による総合
検診を
実施しているほか、市民の
健康づくり推進事業関係や予防接種等の事業が行われております。
なお、保健婦については、
検診業務の増大や
寝たきり老人等の訪問
指導などに対処するため、未
年度において二名の増員が見込まれるものの、絶対数は不足しており、そのため
老人保健法案が期待する
保健事業の
実施については、現場として何からできるか、大変であるという実感であり、やりやすいような指示がほしいという要望がありました。
また、センターの利点は、住民が気安く直接的に接触できる場という点であり、
保健所との関係では両者の一体的運営が要求されています。
次に、
静岡市の東部保健センターは、郊外の東部公民館に併設されたもので、五十四年六月の開設であります。
当市は
保健所政令市でもあり、センターは中央
保健所保健予防課の一係として明確に位置づけられているため、両者の連絡調整は非常に緊密で、スタッフは
保健所技監たる医師、所長各一名のほか、保健婦六名で構成されており、また公民館との関係では建物を共同利用できるため、衛生教育関係では共催事業等も積極的に行っております。
活動状況では、特に衛生教育を重点に事業を
実施しており、刈谷市と同様な事業のほか、電話相談も行っております。
センター側の説明では、保健センターの設置により
地域住民に密着した
保健所サービスが濃厚に細かく行えるようになったとのことで、
老人保健法案が要求するマンパワー
対策としては、努力目標として五十二
年度から
実施されている
老人保健医療総合
対策開発事業等を踏まえ、公的病院を十分活用する中で
実施したいとの意向でありました。
また、特に保健婦の
確保に関連しては、視察した愛知、
静岡の両県及び刈谷、
静岡の両市より、
市町村保健婦の国庫
補助対象人員の拡大について強い要望が出されたところであり、法案が目指す
保健事業の
実施に当たっては、
実施拠点の
整備、
保健所機能の
強化はもとより、特にそのため要員の
確保についてなお特段の努力を要するということを痛感いたしました。
次に、
産業用ロボットの関係について申し上げます。
愛知県は、
マイクロエレクトロニクスを使用した機械を製作する分野では、視察した山崎鉄工所等があり、
全国的にも相当のウエートを占め、一方利用面においても、自動車製造工場が多数立地している等の特徴が見られ、
雇用面のみならず
労働関係全般に何がしかの
影響が考えられるわけですが、これらについては五十七
年度において
調査を行う予定で、現在のところ特に
産業用ロボットによる
雇用への
影響について調べられてはおりません。
しかし、県の
労働部が把握している業務統計等によっても、全体的には
雇用は景気回復に伴って伸びつつあり、現在までの段階においてマクロ的には
産業用ロボットの
導入時に伴うマイナスの
影響は認められないとのことであります。
次に、
静岡県の
状況について申し上げますと、
産業用ロボットは、自動車関連
産業等大企業を中心に
導入され、ロボットと直接競合すると思われる関連
産業における機械工、溶接工、塗装工、金属プレス工等の職種においても、むしろロボットの
導入によって技能者不足がカバーされている実態にあり、
雇用に及ぼす
影響についても、愛知県と同様に現在のところ特に問題はなく、
労働組合及び従業員もいわゆるダーティビジネスからの解放、
労働環境の
改善として歓迎している
状況であります。
なお、両県当局より
産業用ロボットの利用が
雇用や
労働関係全般に及ぼす量的質的
影響についての
調査を国においても早急に
実施してもらいたい旨の要望がなされております。
次に、
産業用ロボットに関連して視察した個所について簡単に御報告いたします。
愛知県大口町にある山崎鉄工所は、世界最大のNC工作機械メーカーであり、特に昨年の十月末、新たに無人化工場を完成させ話題となっています。
このFMS、フレキシブル生産システムの新鋭工場は、総額四十億円で、ここでは
産業用ロボット、複合工作機械のMC、モニターなどが多数組み合わされたものが、中央のコンピューターで集中制御されており、従業員は昼夜各六人ずつで、特に午前零時から八時までの間は全くの無人状態で機械部品が生産されております、
会社側の説明では、多品種少量品生産の自動化ということで、工作機械についてもFMSを
導入したとのことで、こうした背景は、
労働者の
労働時間短縮や賃金の上昇が急速に
進展する中で、国際競争力を維持する手段として
労働生産性の
向上が不可欠とのことでありました。
なお、FMSの人的省力効果は、NC機械との比較では三分の一くらいになるが、ソフトウェア、保守メンテナンス関係で十人
程度の裏方が必要なため、全くの無人化になるとは考えられず、余剰人員は配転で吸収しているものの、同社の従業員全体では増大しており、それには売り上げの
向上が前提になるとの説明でありました。
次に、トヨタ自動車工業においては、大衆車の生産部門である高岡工場において、プレス、ボデー、組み立てのラインを視察した後トヨタ会館において説明を聴取しました。
同社が四十七年に
産業用ロボットを
導入したのは、従来の自動化の手段では達成が困難と考えられていた工程における
労働環境改善の手段として
導入、実用化し、あわせて生産性の
向上にも役立ててきたとのことで、その目的は必ずしも
労働力の節減だけではないと言われています。
トヨタでは、
産業用ロボットの定義を日本
産業用ロボット工業会より狭義に解釈しており、プレイバック、数値制御、知能ロボットだけでも六百三十台が稼働しており、そのうちの九割近くがスポット溶接作業に使用されていますが、現在のところは
産業用ロボットの
導入による企業内失業等の摩擦は発生していないのであります。
最後にヤマハ発動機について申し上げますと、同社においては五十一年より
導入が図られ、現在では百台の組み立てロボットが、ボルト、ナットの取りつけや締めつけのほか、シール剤の塗布、部品の圧入作業などを行っております。
その
導入の動機は、生産性の
向上、作業条件の
改善の二点に要約されますが、その中では将来予測される
高齢化対策、単純作業や時間外、交代勤務からの解放という説もありました。
これが
雇用に及ぼす
影響としては、現在のロボット
導入についての思想や、技能
労働者の絶対的不足といった
労働力の需給関係、同社の人事管理方針等からして、従業員の失業等に発展することはありえず、ロボット
導入に起因する配転もいまのところは皆無とのことでありました。
なお、ヤマハでは女子技術職の配置を積極的に行い、全従業員八千二百人中の千六百人が女子で占められ、特に視察したソフトバイクの組み立て部門は全員女子であるため、作業の工程編成にも特別な配慮がなされておりました。
また、
身体障害者雇用にも積極的で、職場に指文字五十音写真集が掲示されていたのが印象的でありました。
今回のわれわれの
調査では、
産業用ロボットが
雇用に及ぼす特段のマイナス面は認められなかったものの、これが将来及ぼすであろう
社会変動については、今後政府としても十分対応を考えていく必要があろうかと思います。
以上でありますが、
静岡県及び
静岡市当局から提出されました要望事項の会議録末尾掲載方を
委員長においてお取り計らいくださるようお願いいたしまして、報告を終わります。