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柄谷道一君 具体的にそれじゃお伺いしましょう。
総理の指示の中には
防衛費を伸ばしたのは国際情勢の緊張に対応したものではない、私は脅威対応の
防衛論はとらないと新聞に明らかに文字として報道されているわけでございます。私は、現在の大綱を支える
考え方の中に、没脅威論に立つ基盤的
防衛力構想が存在したときがございました。しかし、民社党は一貫して脅威に対応しない
防衛論というものが一体あり得るのか、そのような指摘に対しまして、時間の
関係で詳しくは省略しますけれども、五十五年十月十一日、衆議院予算
委員会における大内啓伍
委員の
質問に対し、当時の大村
防衛庁長官、「私どもは潜在的脅威を念頭に置いて対応することを考えている次第でございます。」五十五年十月二十八日、神田厚
委員の
質問に対する同じく大村
防衛庁長官の答弁、大綱は脅威を無視した平和時の
防衛体制をとるということではなく、
わが国に侵略し得る軍事能力、潜在的脅威を念頭に置いております。五十六年八月に発表された
防衛白書、「
防衛力が外部からの脅威に対し備えるものであるとの
考え方に変わりはない」と述べていらっしゃるわけですね。したがって、脅威を無視した平和時の
防衛論から、一連の国会答弁及び
防衛白書は、明らかに潜在的脅威を念頭に置いた
防衛力整備ということに変わってきておることは明らかでございます。総理の指示は、没脅威論はとらないという、そうしたいままでの国会答弁や、
防衛白書を百八十度転換する長官に対する指示ではないか。私は総理の指示の中でそのことが正しいとすれば、いままでの国会答弁は一体何であったのか、
防衛白書は一体何であるのか。しかも、総理はその没脅威対応、没脅威論は私が内閣をつくって以来変わらない方針である、とするならば、従来の国会答弁というものは、総理の意思と全く相異なった、ただ
委員会の場を逃れるための発言であったのかともとれるわけでございます。私は、
防衛庁長官というものは、むしろ総理の指示に対して、過去の経過、そして現実というものを直言して、総理の姿勢に誤りがある、誤断があるとすれば、それを正すということこそ
防衛庁長官としての責務ではないか、こう思うんでございますが、仰せごもっともと総理の指示を受けとめられた真意は一体どこにあるのか。
さらに、長官はその後二月二十四日の衆議院の安保特別
委員会で所信を明らかにしておられますが、これは脅威対応論を前面に打ち出した情勢の分析であろうと思います。総理の指示とは明らかに異なると理解するわけでございますが、これについていかがでございますか。
さらに、最後に、総理は地政学的に海洋国家であるので、それにふさわしい
防衛体制を考えてみるべき時期であると、こういま言われたということでございますが、私はこの海洋国家ハリネズミ論ですね、これは
外国でハツカネズミと誤訳されたこともあるんでございますが、一本や二本の針ではハリネズミではないわけですね、いわゆるハリネズミのごとく防空ミサイル網を張りめぐらす、これは大変な経費のかかる問題でございます。私は総理の発言というものは、第一に予算的裏づけが全くない、第二に
わが国の
防衛方針の根幹を変更するという内容を含むと思われるんでございますが、国防
会議にも付議してない。新聞報道によると、官房長官も総理がそういう指示をされることを知らなかった、こう言っておられる。私は、総理というものは
日本防衛に当たっての最高責任者である、総合安全保障の実践者である、
防衛の総指揮者である、こういう立場から考えますと、何らの裏づけのないこのような指示は、かえって国民の総理に対する信頼を失墜せしめ、
わが国の国民の平和と安全保障に対する国民合意というものを混乱させるだけではないかということを憂うるのでございます。これに対しても、当然
防衛庁長官は、職を賭しても直言をされるべきが立場ではないか、こう思うのでございます。この二点に対する長官の明確な御答弁をいただきたい。私は、その答弁いかんによりましては、引き続き内閣
委員会において細部の点を追及し続けたいと思います。
以上です。