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国務大臣(河本敏夫君)
わが国の経済は昨年の五、六月ごろから回復に向かいました。そして、秋には在庫
調整もほぼ終わりまして、非常にいい方向に進んでおったのでありますが、十一月ごろから貿易がだんだんと減り始めまして、その傾向は現在までずっと続いております。
〔
委員長退席、理事粕谷照美君着席〕
そこで、貿易が減り始めましてから再び経済は足踏みが始まったと思うんです。生産、出荷も停滞ぎみでありますし、在庫も再びふえ始めまして、昨年の五、六月ごろの
水準にまた戻っております。
そこで、現在の
日本経済の特徴を簡単に申し上げますと、
一つは、このように輸出がずっと減っておるということでありますが、ことし初め
政府がつくりました輸出貿易の見通しは大体千六百五十億ドルぐらいと想定をしておりましたが、残念ながらいまの情勢ですと、二百億ドル以上も減るのではなかろうかと、こういう感じがいたします。
そこで、輸出がこんなに落ち込んでまいりますと、やはり企業家心理にも相当厳しい影響が出てまいりまして、設備投資を見直す機運が相当強くなったと思います。しかし、大企業につきましては、力もございますし、設備の近代化投資をおくらせますと、競争力がなくなりますので、無理してもできるだけやろうと、こういうことで、そんな大きな落ち込みはないと思います。
〔理事粕谷照美君退席、
委員長着席〕
しかし、中小企業につきましては、力がありませんし、貿易がこんなに落ち込んでくるということになりますと、投資計画を延ばすとか、あるいは縮小するとか、そういう変更が相当顕著になってまいりました。御案内のように、民間の設備投資はGNPの大体一六%ぐらいと想定をしておりまして、中小企業の投資は約その半分強ということでありますから、八%強を
考えておるのであります。したがって、全公共事業、これはGNPの九%弱でありますから、ほとんどそれと変わらないぐらいの投資量でございます。それが相当大幅に落ち込むということになりますと、非常に大きく経済に影響が出てまいります。
それから、それだけではありませんで、中小企業に元気がなくなってまいりますと、やはりボーナスとか、給与等にも当然影響が出てまいります。つまり、貿易の落ち込み、その背景は深刻な世界不況ということでありますが、以上申し上げましたような幾つかの影響、これが
一つの流れだと思います。
ただ、しかし一方で、ことしになりましてから物価が低い
水準で安定をしておりますので、実質可処分所得が二年ぶりでプラスになっております。昨年と一昨年は実質可処分所得はずっとマイナスが続いておりましたが、ことしになりましてから大体月々、若干違いますが、平均いたしますとおおむね三%前後のプラスになっております。これは私は経済の流れとして非常に大きな変化だと思うんです。マイナスの実質可処分所得がとにかくプラスになってきた、これは大きな変化だと思います。
それを背景といたしまして、消費の方は強含みだと思うんです。特に五月、六月は夏が早く来たということもありまして、夏物の消費が一時急上昇をいたしました。そういうことが主たる原因になりまして、先般発表いたしました四−六のQEは年率に直しまして五・一%成長と、こういう
水準でありますが、この成長のほとんど全部が、これは消費の一時的な急上昇、これが原因になっております。ただ、この間の消費の急上昇というのは、年率で約一〇%ぐらいの増加でありますから、これだけの消費がふえる力は、私はいまの
日本にはないと、こう思っております。やはり一時的な現象だと、こう思うんです。その証拠に、七月、八月は再び長雨とか、それから冷夏、こういうことで、消費がある
程度落ち込んでおります。したがいまして、四−六のQEでもって現在の
日本経済を楽観をするということは、これは将来の判断を間違うのではないかと、こういう感じがいたします。
いずれにいたしましても、以上申し上げましたように、相当警戒すべき流れ、それから、やや楽観すべき流れ、二つの流れがございますけれ
ども、輸出貿易の落ち込みと、それの
先ほど申し上げました投資その他に対する影響、この方がやはり相当大きいのではないかと、こういう感じがいたしますので、経済の情勢は楽観を許さないと、こういう感じであります。
ただ、最近のいろんな国際機関の発表、あるいは一カ月ばかり前の
アメリカ政府の経済見通し、あるいは
アメリカ議会の見通し、こういう見通しにつきましては、私
どもは、過去に何回か間違いがございましたので、そのまま信用するわけにはまいらないと、こう思っておりますけれ
ども、ただ大きな流れといたしまして、世界経済が最悪の状態をようやく抜け出して、回復の方向にこの年末ぐらいから進むのではないだろうか。もっともその時期等にちついては若干のずれがあるかもわかりません、あるいは回復のスケール等につきましては若干の変化があるかもわかりませんが、大きな流れとしては、最悪の事態はようやく世界経済は通り過ぎつつあるのではないかと、こういう感じがいたします。本来の春になりますか、あるいは夏になりますか、そこはわかりませんが、世界経済が回復いたしますと、
日本の商品は世界最強の競争力を持っておりますし、条件がいいわけでありますから、現在のように減り続ける、こういうことはないと、こう思っております。これだけ円安でありますから、普通の状態ですと、常に輸出が拡大をいたしまして、それが契機になって景気が回復するというパターンでございますが、今回はこんなに大幅な円安であっても、ごく一部の雑貨なんかはふえておるものも少しありますけれ
ども、大勢としてはずっと減り続けておると、こういうことでございまして、私
どもはこういう幾つかの複雑な要素を
分析をいたしながら、これからの経済政策を決めていきたいと、このように
考えております。