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1982-05-11 第96回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十一日(火曜日)    午前十時七分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月三十日     辞任         補欠選任      田  英夫君     宇都宮徳馬君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         稲嶺 一郎君     理 事                 大石 武一君                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 秦野  章君                 町村 金五君                 宮澤  弘君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 山田  勇君    国務大臣        外務大臣臨時代        理        宮澤 喜一君    政府委員        外務政務次官   辻  英雄君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省経済局長  深田  宏君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省国際連合        局外務参事官   遠藤 哲也君        農林水産大臣官        房参事官     芝田  博君        通商産業省貿易        局輸出保険課長  竹澤 正格君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件投資促進及び保護に関する日本国とスリ・ラ  ンカ民主社会主義共和国との間の協定締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国インドネシア共和  国との間の協定締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○南極地域動物相及び植物相保存に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  投資促進及び保護に関する日本国スリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国インドネシア共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、南極地域動物相及び植物相保存に関する法律案、以上三案件を便宜一括して議題といたします。  三案件についてはすでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 松前達郎

    松前達郎君 ただいまの協定二本、法律一本、これについていまから質問させていただくわけですが、きょうの委員会そのもののあれがちょっとごちゃごちゃしていますんで、順序を変えまして、南極動植物保存法に関連した問題を、まず最初に質問をさせていただきたいと思うんです。  まず、これは法律そのものとの関連の問題なんですが、南極というのがどうも最近はいろんな問題でクローズアップされてきている。特に南極そのものへ対する観光的な問題とか、あるいは資源開発が恐らく裏にあるんじゃないかと思われるような南極観測、また同時に南極そのもの分割といいますか、領有主張するとか、これは国連では凍結されているということですが、いろんな問題で南極がクローズアップされてきているんだと思うんです。  まず最初に、これは観光の問題なんですが、ときどき南極観光というので飛行機が落ちたり、いろいろテレビでも報道されておりますけれども、これは将来増加する傾向にあるのかどうかですね。いま現在どうなっているか、私よくわからないんですが、その辺わかりますか。南極に行く人、要するに日本人として行く人に対する法律ですからね、これは恐らく。
  4. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 一般の方々の南極渡航につきましては、アメリカ二つ観光会社がこれを扱っておりまして、年間約九百人ぐらいが行っているというふうに聞いております。そのうち日本人渡航しているのは約二十名ぐらいと聞いておりますので、この数は今後ふえる傾向にあるのだろうとは思いますけれども、それほど大幅にはふえないんではないかということではないかと考えております。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、南極に関しては特別に渡航などをするときのやり方があるんじゃないかと思うんです、これも私またよくわかりませんけれども南極主権というのは一体どこが持っているのかということですね。それによっては渡航に対する許可等、これをどういうところが与えていくのかという問題が出てくるわけなんですが、それはどうですか。
  6. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 南極につきましては、御承知のように南極条約の四条によりまして主権凍結がなされておるわけでございますので、主権主張している国はいたわけでございますけれども、現在のところ南極条約加盟国の相互の間で主権凍結するという合意ができておりますので、主権をどこかが持っているという状態にはございません。そういう意味で、関係国合意により主権凍結ということが行われておりますので、南極における活動もいかなる主権主張根拠にもならないということが合意されております。  南極に対する渡航につきましては、わが国の場合には、一回の渡航につきましては旅券南極地域を含めるということで処理しているようでございますし、数次旅券の場合には、そこで除外されているのは北朝鮮だけでございますので、南極地域を特にそれに明示するということにはなっていないわけでございます。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 それから、南極条約第七条に監視員を置くというのがあるんですね。この監視員というのは一体どういうふうにして任命し、どういう役割りを持っているのか、これについてちょっと説明していただけますか。
  8. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 監視員につきましては、南極条約に定められております各基地における活動につきまして、これがその条約に従った遵守が行われているかどうかということを監視するために任命されているわけでございまして、各地域への立ち入りの自由とかその他の権利をこの協定で与えられているわけでございます。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 それで、罰則などが今度の中に入っていますね。罰則を入れるからには違反事実がなければいけないですね。その違反事実というのはどうやって確認するのかという問題、監視員が通報して、それを信頼して違反だとしてその罰則を適用するのか、その辺がどうもはっきりしないんですが、裁判は一体どこがするのかといった問題とか、何か南極というのは漠としたものですから、そういう点がどうもはっきりしないような気がするんですけれども、その辺はある程度はっきりしているんですか。
  10. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 基地におきます活動は主として各国国家機関によって行われていると思います。日本の場合には、たとえば昭和基地でございますと文部省の主管で南極における探検基地研究活動が行われているわけでございまして、そういう意味国家公務員法によってこの措置を担保するということになるだろうと思うのでございます。ですから、この措置法が主として適用されますのは、わが国から、アメリカ二つ会社で組織された観光団に参加して南極に行く場合の一般的な日本人観光活動について適用される場合がほとんどではないかと考えるわけでございます。その他南極への上陸というのは非常にむずかしいようでございますので、その他の場合というのは余り考えられないというのが現状であると思われますので、そのようなときに、直接にこの監視員南極渡航する観光客について監視をするという状況ではなく、むしろこの旅行会社のツアーに参加した観光客として現地に赴かれた方の違反につきまして、客観的な事実であるとか、あるいは動植物を持ち帰ってまいりました場合には、日本の税関であるとかそのようなところで、いわば間接的にその違反事実を確認するということが実際的な違反事実の確認の態様ではないかと考えております。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 まあ普通の一般社会で通例として行われているやり方と多少違うんですね、それは。ですから、どうもこれを見てみると、やはり保存法というやつが何かちょっと漠としたところがあるんで、やはりこれは今後問題が出てくれば、またそれなりに改良していく必要があるんじゃないかと思うんですね。  そこで、この動植物保存法についていろいろ読んだりなんかしているうちに、南極というのが非常に重大な、今後の世界の戦略の中でも重要な問題を提起するんじゃないかという私は気がしてならないわけなんですね。  これは宮澤さんにお伺いしたいんですが、南極というのはいま南極分割の問題があって、各国南極に対する領土権というものを一時主張したときがある。それに対して国連で、そういうことをやってもしようがないからというので一応凍結をしてある。凍結というのはそのまま解決をしてないわけですね、そのままの状態で置いてある。領土権主張する国が非常に多かったわけですから、その主張原因というのが非常に近接国近隣国であるという国の主張と、それからかつて探検をしたとかそういうことで、最初自分の国民がそこに足を運んだということからの主張とかいろんなことで主張しているんだと私は思うんですが、現在は凍結されているからこの問題自身はそう噴き上がってきてないわけなんですが、この凍結が解けて、あるいはだれかがどこの国かがそれを主張してこの問題が必ず近いうちに蒸し返されてくるような気がしてならないわけなんですね。動植物保存というのは、そういうものとは直接関係ないかもしれませんけれども地下資源について言えば非常に南極はまだあるだろうと、まだはっきりしないけれどもある程度確認されておるわけですね。ですから、恐らくそういう点で南極に対する食指各国から出てくるんじゃないかということを私は感じておるわけなんですが、まあそういうことから見ますと、今度のフォークランド紛争というのがどうもイギリスアルゼンチンそれぞれ思惑があって、その紛争の裏といいますか、根底に流れている部分があるような気がしてしようがないんですが、これもまた日本の場合、フォークランドに関してアルゼンチンに味方するのかあるいはイギリスに味方するのか大分御苦労されているようでありますけれども、どうですか、この点について恐らく今後ある程度明確な態度をあらわさなきゃならなくなった場合に一体どういうふうな日本として立場をとるのか、その辺についてお考えありましたらお聞かせいただきたいと思うんですけれども
  12. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 南極につきましては、確かにアルゼンチンも領域の接近を理由主権主張しておりますし、それからイギリスも過去の探検活動等根拠主権主張しているわけでございます。  ただ、両国とも現在南極条約加盟国でございますし、南極条約枠組みというのは、この条約にも書かれておりますように、三十年という長い協定期間を持っておりますし、現在、この四条に規定されておりますように主権凍結が行われており、そしてこの主権の問題については、あるいはこの条約枠組みそのものの問題については現在のところ特にこれを終了させようとかいうような動きはないわけでございます。わが国としましては、もちろん南極条約についてはいかなる国の主権も認められるべきではないということを考えておりますし、それから各国ともそのような点については異論がないと思われますし、このような長い期間を想定した枠組みを今後とも続けていくということが予想されますので、現在の紛争が直ちに南極領有権の問題にはね返ってくるということはないのではないかと考えております。  それから、先生御指摘鉱物資源開発の問題につきましては、最近関心が高まっておることは事実でございまして、そしてこの条約上も鉱物資源開発については特に触れてないわけでございますので、関係国が集まってことしの夏に協議をすることになっているわけでございます。その場を通じて、今後これをどういうふうに処理していくかということが関係国の間で話し合われるということになろうかと存じます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 今度のフォークランド紛争が、領有権についていま凍結されているものを再び蒸し返してまた噴き出してくるということはないだろうということをおっしゃったわけですけれども、私はそれはそうだろうと思うんです。当然そうだろうと思いますが、そのフォークランド紛争が起こった理由ですね、起こった一つの原因というものにこの南極の問題があるんじゃないかと私は思っておるんです。イギリスは当然近傍国じゃないわけですからね、南極にとってみると。ですからフォークランド領有してない限り、そういう意味からの主張が将来できなくなる可能性がある。アルゼンチンはすぐ隣ですから、領有権がもしか出た場合にはこれを主張できる根拠がある。そういうふうなことからイギリスは絶対にこのフォークランドを捨てられない、そういう理由があると私は思うんです。表面には出てこないですけれどもね。あんな島――あんな島と言っちゃ悪いんですけれども、ああいう島を何もイギリスがわざわざ持っている必要もないと思うんですね。何かそこの裏に目的があるわけですから、その目的は、僕は南極でありあの近くの資源であろう、あるいは領有権の問題であろうというふうに思っておるわけなんですが、アルゼンチンにしてみると、今度は歴史的過程から言って、ちょうど日本の北方領土じゃありませんけれども、あるいは竹島じゃないけれども、そういった問題があるんですね。ですからお互いに各国ともすれ違いがあるんじゃないか、その基本的な主張の中に、基礎が違っているわけですから。そこへ持ってきて、アメリカが間に入って仲裁しようと言って、仲裁する人が片っ方の国を支援するというんじゃ仲裁にならないですね。  こういうふうな状態のままで、ここ二、三日を見ておりますとさらにエスカレートしそうになってくる。まあ砲撃したとかいろんなニュースが入っていますけれども、こういった状況の中で一体日本がどういう立場をとるか、態度をとるか、これは大変なことなんですが、真ん中にいてわれ関せずと言っていてもいいかもしれませんけれども、外交的ないろんな行事が今後積み重なってくるわけですから、その点ある程度はっきりしておかなきゃいけない面があるんじゃないか。宮澤さん、その点いかがですか。
  14. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) ただいまの委員の御指摘でございますけれども、私ども、このフォークランド(マルビナス)諸島に関する紛争の根っこに英国南極領有権に対する主張、そういうものがあるとは必ずしも考えておりません。英国自身もあの地域植民地独立宣言対象になる地域として観念いたしまして、国連でも十七年間にわたっていろいろ審議の対象になってきたわけでございますし、アルゼンチンともそれなりの交渉をしてきたわけでございまして、やはり将来は何かここの統治の状況について変更があり得るということは考えておったと思うのでございます。ただ、そこに島民の意思というようなことも絡んでなかなか英国として踏み切れなかったということでございますし、確かにアルゼンチン領有権承認ということを非常に強い主張にいたしておりますけれども、御指摘のような鉱物資源であろうとか漁業資源であろうとかそういうものの開発、経済的な側面については、これは英国とも話し合う用意があるという感じをすでにかなり濃厚に出しております。そういう点で、私はそれが今度の紛争の非常な解決の障害になろうというふうには必ずしも思っておりません。  次に日本政府立場でございますけれども、これは私どもは、ただいま御指摘英国寄りであるとかアルゼンチン寄りであるとか、必ずしもそういった角度からこの紛争に対処すると申しますよりも、国連安全保障理事会五百二号の決議に示されましたような、国際紛争武力行使による解決というものは容認できない、やはり平和的な解決によるべきである、これを基本的な態度にいたしておるわけでございまして、その後の対応も、国際連合憲章精神及び原則、これにのっとり、かつ日本が負っております各種の国際義務国際規範、あるいは長期的な自由主義陣営の利益というようなことも勘案して対応していくということで、必ずしも、英国との関係アルゼンチンとの関係それぞれ重要でございますけれども、私どもは私どもなりの立場を確立して、それから公正に対処するということを旨としておるつもりでございます。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、どっちがいいとか悪いとかいうことなしに、要するに武力による問題解決というのはわれわれとしては承認できないという基本的精神に立ってそれぞれの問題に対処していく、こういうことになりますね。恐らく両国は何とかかんとかいろいろ日本に対して求めてくると思う。それに対する対応というのが、やはり一つ一つやっているとどっちかに色がはっきりしてくる可能性もありますから、この辺ちょっと気をつけていかなきゃいけないんじゃないか、かように思っておるんです。  いま領有権の問題を最初申し上げたんですけれども領有権関係ないということをおっしゃっているんですが、イギリスのロンドンにあるフィリップという会社が出している世界地図を見てみますと、これはおもしろいんですね。いまのアルゼンチンのそばのイギリス領有権主張していたところ、ここはアルゼンチンと全く重なっているわけですね、イギリス主張をしている中にアルゼンチン主張が重なっているわけですから。それでそのイギリス主張している範囲のことをテリトリーという表現で書いているんですね、これは。それからそのほかの国、たとえば隣はノルウェーが主張している、あるいはオーストラリアが主張している、そういうところはテリトリーという表現じゃなくてデペンデンシーと書いてあるんですね。イギリスというのはどうも昔から海賊精神があるのかどうか知りませんけれども、とにかく自分のところの地図にははっきりとイギリステリトリーである、ですから地理的区域としては領土であるとこう解釈してもいいような内容の表現がとられている。これはテリトリーデペンデンシーとどう違うのか、いろいろ字引を引いてみましたけれども、大して変わらないんですがテリトリーの方が強烈なんですね、表現は。領土という感覚がある。その他の国のところにはそういうふうに使ってないので、まあ勝手気ままだと言えばそれきりなんですが、そういうことがあったものですから、どうも何か領有権に関して領土の問題が絡み込んでくるんじゃなかろうかという気がしてしようがない。  そういうわけなんですが、そうなりますと、チリという国がありますね、アルゼンチンの隣、ちょうど裏側になりますか。このチリは今度の紛争に関して何らかの声明なりあるいは何らかの動きをしているのかどうか、その点わかりますか。
  16. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) チリ政府関係者発言とか外務省声明というようなものから判断いたしますと、あくまで本件紛争については平和的解決を支持する、そうして具体的には国連において採択された安保理決議五百二号に沿って解決すべきである、こういう立場をとっているように思われます。これは四月二日のチリ外務省声明、あるいは、先般四月二十六日から開かれました米州外相協議会におきましてペルー、ブラジルが共同提案をしました決議案チリは棄権をいたしておりますが、そのときの声明などを総合していまのように御説明申し上げました。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、チリ日本と同じような、さっきおっしゃったようなことで対応していくという声明をしているということ、まあちょっと違うかもしれませんが、ニュアンスは違っても大体そういう方向チリの方は進んでいる。ということは、それならばそれでチリとしての態度は私は決して悪くないと思うんですね。ただ、やはりいまの領有権の問題でいくと、チリのところは重なっているわけですね、イギリスと。アルゼンチンとも重なっている。ですから、ちょっと勘ぐったようですけれども、あるいはチリが間に入って動き出すという可能性も出てくるというふうな気がしたものですからいま伺ったわけなんです。  いずれにしましても、このフォークランド紛争についてはどうもいまのところ調停がうまくいかない。ですから、本格的な戦いが始まったわけではないんでしょうけれども、多少何といいますか、自分たちの条件を有利にする程度のちょっかい的な戦いがローカルに行われている。こういう状況で、イギリスというのは紳士の国だからその辺は話し合えばいいんだけれども、私は海賊の国とわざわざ言ったのは、どうも見ているとそんな感じがし出したですね、最近。そういうことで紛争そのものがどうも武力解決するという方向に進みつつあるんじゃなかろうか。体裁のいいことを言っていてもこれはどうしようもない、最後は上陸作戦やって取ってしまう。アルゼンチンが上陸したからそれを追い払うだけだと言えばそれっきりになってしまうのですね。ですから、そういう意味での武力戦というものが背景にあって、そしてこの解決というものが強引に進められていくという感じがしてならないのですけれども、一日も早くこういう問題は解決すべきだと思っておりますが、さっきわが国対応の仕方というのを伺いましたから、ここで再びお伺いする必要はないと思います。  そこでまた南極なんですが、これは日本の場合には昭和基地という基地研究調査活動をやっているわけです。ずっと見ますと相当多くの国が参加をしている。しかもソビエトなんかは何カ所ですか、これは相当の、十カ所ぐらい基地を各ばらばらに持っているわけです。こういう活動というのが、これは文部省が管轄でしょうけれども、こういったものについてわが国としては今後もちろん続けて、さらにこういう活動は拡張をしていこうということだろうと思いますけれども、これもやはり何となく資源調査というものが今後始められてくる。恐らくもうすでに始められていると思いますね。そうすると、また戦略的な意味が少しずつ含まれてくるんじゃないかということで、どうもさっき冒頭に申し上げたように南極が生臭い対象になりつつあるというような気がしてしようがない。そういうことなんですが、全般的に見てどうですか、その点私が最初に申し上げたように、ほうっておけばいいのにこれから南極というものに対する食指が伸びてきて、問題の対象になってくるという感じがすると思うんですけれども、その点について御意見などありますか。
  18. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) その点につきましては先ほどちょっと触れましたけれども、特に鉱物資源開発につきまして各国関心が高まっており、その鉱物資源開発についてどのような問題があり得るかということについて、協議国の間でこれを話し合うことになっているわけでございますので、当面、鉱物資源というものに焦点を当てて南極地域の今後の活動をどうしていくかということが話し合われ、それの枠組みをつくるための各国協議が行われていくのではないかと思っております。  御承知のように、海洋生物資源につきましてはもうすでに条約ができておりますので、それに従って各国南極周辺の海洋資源につきましてはその利用方法につきましての一定の枠組みをすでに作成しておりますので、今後は、新たに関心が高まっております鉱物資源開発という問題についての協議が行われていくことだと考えております。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 日本からも非常に遠いところですから、と言っても地球はそう遠くなくなりました、最近狭くなったと言われております。イギリスにとっても同じように遠いのです。しかし、イギリスは大問題にしているわけですが、これは植民地があったということに起因すると思いますけれども。そういうことでこれに関連してやはりアメリカがそれに介入してくる。ソビエトは介入しないけれどもどうも裏じゃいろいろとやっている。四月二十一日にコスモスを打ち上げて、そのコスモスがちょうどここを飛んでいるわけですね。その結果をアルゼンチン側に通告して、それが駆逐艦の撃破につながるという情報も入ってきているんですけれども、それはそれとして、とにかくどうも最近米ソの二つ世界じゅうがかき回されちゃっている、われわれはそんな感じがしてならないわけなんですが。  その一つの大きな原因というのはやはり戦略的に見て核戦略ですね、これのエスカレーションにあると。経済までひどく圧迫するぐらいエスカレートがどんどん行われてきたのが今日までの核戦略であったということになりますね。そこへもってきてヨーロッパはヨーロッパで新しい中距離ミサイルの配備があるというなれば、ヨーロッパの大衆はそれを承知しないとか、いろいろな運動が出てくる。そういうことももちろん契機となったわけですが、やはり核の問題というのが非常に最近それぞれの国で大きく取り上げられつつある。そうなってくると幾ら米ソでもこれに対して何も知らない顔して、ただエスカレーションを続けていいのかどうか、その辺の問題まで出てくるし、世界のすべての世論というものがそれを減少する方向動き出すとすれば、やはり幾ら米ソでも対応せざるを得なくなってくるんじゃないか。そういうことでかつては突っ張り合いやっていたのが最近どうも打診というか、ボクシングで言えばジャブをちょっとこう打ち出したという感じですね。たとえばアメリカがソビエトに対して提案をする、いわゆるSTARTといいますか、戦略兵器の削減交渉をやろうじゃないか。ソビエトはソビエトでいろいろな方法でもってそういうことを世界に言明をしていくということで、どうやら流れが、突っ張り合いの流れの中から少しずつ変わってきたような気がするのですがね。その辺アプローチが少し始まったような気がするのですが、その点いかがでしょうか。
  20. 門田省三

    政府委員(門田省三君) ただいま松前委員指摘になられましたように、昨年未来核兵器の削減の方向に向かっての米ソ間の話し合い、これが進展しているように観測されます。いわゆる欧州におきます中距離核の削減交渉、INF、これが昨年の十一月三十日からジュネーブで開催されているわけでございますが、去る九日にはレーガン大統領が母校でございますユーレカ大学における卒業記念講演におきまして、御指摘のございましたSTARTに関するアメリカの考え方、ソ連に対する提案、これを明らかにしているのでございます。わが国はすでに御承知いただいておりますように、従来とも核の廃絶を目指しまして、核の軍縮を中心とする軍縮外交、これを国連の場、あるいはジュネーブの軍縮委員会の場等におきまして積極的に推進してまいっておるところでございますが、このような立場国連の場等におきましても米ソに向かって核の削減、これを強力に推進するように従来とも訴えているところでございます。このような観点からいたしますと、最近の現象は歓迎すべきものであると思いますし、米ソ両国がこの方向で建設的に、また積極的に取り組んでいくこと、これを心から期待しているというところでございます。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 いまお話のあったように、核戦略に関する問題としてこの削減、将来は廃絶になればなおいいかもしれませんが、現時点としてはまずエスカレーションをとめること、それからさらにバランスをとりながら落としていくことですね、こういう段取りが要るんじゃないかと思うんですけれども、それに対して日本がある程度積極的に意見を言いながらこれを推進させる、そういう必要があるんじゃないかと思うんですね。ただし、それを国連とかあるいは軍縮の場において言っていく、これもできるかもしれませんけれども、そのときの日本の意見というものが一体各国にどれだけ大きな影響を与えるかというその潜在的な力ですね、これがどうも日本の場合独自の外交をやってないものだから、なかなかそういう点で余りにも弱い声としか聞こえないんじゃないかと私は思うのです。独自の外交をやってないと言うと外務省の方に怒られるかもしれませんが。やっぱり米ソがいるところで、そこの真ん中にぽおんとその問題点をぶつけていって提案をするのか、あるいはかつて西ドイツの政治家がやったように、たとえばソビエトに対して直接申し入れるのか、あるいはアメリカに対して直接意見を言ったりあるいは申し入れたりするのか、いろいろなやり方があると思うんですけれども。ただ、一つの集まりの中で演説としてぽかっと言っているだけじゃこれはもう何も意味ないんじゃないかと思うんです。もうちょっと積極的に何か方法があるんじゃないか。その点どうでしょうか、何か考えられておりますか。
  22. 門田省三

    政府委員(門田省三君) 松前委員指摘になられましたように、いわゆる国際会議の場以外におきましても、つまりバイラテラルなレベルにおきましても核兵器の削減について積極的な努力をしてほしいという要望は伝えられているのでございます。具体的には、私が承知いたしておりますところにおきましても、昨年の国連総会の際にわが外務大臣が米国の国務長官及びソビエトの外務大臣と話をされた中にこの問題が取り上げられておりまして、わが外務大臣から、積極的にこの問題を推進するようにということを強く訴えられているのでございます。つまり、バイラテラルを通じあるいはまたマルチの場を通じまして、わが国は核の軍縮について積極的に動いているわけでございます。  ちなみに、最近軍縮委員会、つまりジュネーブの四十カ国委員会におきまして核の全面禁止に関する作業部会の設置という問題について新しい展望が開けたということがございますが、これは長年来わが国主張してまいったいわゆるCTB、完全実験禁止ということへの前進につながる一つの事象でございまして、それほどいわばスペクタキュラーでないという御意見もあろうかと思いますけれども、このように静かな形ではございますが、一歩一歩前進しているという点も御評価いただきたい、かように思うのでございます。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことで努力をする、その何といいますかアクティビティーは評価していいと思うんですけれども、これはもう当然やるべきだと思うんです。やはり努力そのものが実るような、何かバックというか常日ごろの行動も含めて相当強力に意見が通っていくようなそういう雰囲気をつくっていきませんと、これは防衛庁の人に聞けば、軍艦がいない外交はないというかもしれませんし、そういうバックにさっきのフォークランドと同じように軍事力で外交をやるという、こういう問題ですね。ところが、日本の場合はそうはいかないから、とにかく話し合いの場を通じてやっていこう、ただしそのときには今度外交そのものの姿勢が、やはりふだんの姿勢というものがそのバックになってくるんじゃないかと思うんですね。そういうことでいま申し上げたわけなんで、たとえば前にちょっとこの委員会でも申し上げましたソビエトとのパイプをつなぐ問題でも、やはりある程度つないでおかないと直接の交渉といいますか、これは何も表立ってはでにやる必要はないと思いますけれども、そういう問題もあるし、アメリカとはいつでもできますから恐らくそれは問題ないと思いますが、そういったようなことである程度の解決といいますか、ある程度問題をそこで処理をしておく、処理というか、パイプそのものを保有しておくということも必要なんじゃなかろうか。こういうふうに思うんで、その辺の今後の展開というものを総合的に判断してやっていただいた方がいいような私気がしているものですから、いまそういう点を申し上げたわけであります。  今後国連の軍縮特別総会もありますし、いろいろと国際活動をしなきゃならない、ちょうどいま外務大臣も国外で努力されているようですね。サミットだとかいろいろありますから、その中でひとつばらばらじゃなくて一貫した考え方を持って進めていく必要があるんじゃないか。ことしの後半といいますと非常に重要な時期じゃないかと私思うんです。さっきのいわゆる核戦略の縮小の問題も含めて、いろんな問題が新しい動きが出てきつつある。これに一体政府としてどういうふうに対応していくのか、これは非常に大きな問題ですから簡単にというわけにいかないかもしれませんが、一言でも結構ですから宮澤さんの方からひとつお願いいたします。
  24. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど松前委員から、米ソの軍備競争あるいは軍縮への可能性というようなことについてお話がございましたが、米ソとも現状がすでにオーバーキルになっているということは、知っておることはもう間違いないと思います。他方で、それでもやはり相手を考えると優位を維持したいあるいはバランスを回復したい、しかしそれが非常な財政的な負担になるということは、アメリカにとってもそうでございますが、ソ連にとってはなおさらそうではないかというふうに思われます。したがいまして、そういう意味では軍縮への自分の利益から判断して誘因がないわけではない、ないわけではないというのが私は一つの事実だろうと思います。したがってわが国が、両方のバランスが外れるということは困るけれども、しかしそのバランスというものはなるべく低位のところで打ち出されるべきだと言っておるのは、両国にそういう本来的に自分立場から見てもそう考えたい要因があると思うからでございます。  しかし、わが国のそういう努力がどういう説得力を持つかということでございますけれども、この点私は一番説得力になっておると思いますのは、戦後わが国がこういう道を歩いてきたという、その事実の中に一番大きな説得力があるのではないかと思っています。われわれはこういう選択をしてきまして、今日のそういうわが国のあり方について国の内外でいろんな議論があることは事実でございます。いろいろ考えなければならない問題もあると思いますけれども、しかしこうして歩いてきた道がわれわれとしては決して失敗ではなかったと思っておりますし、また世界各国から見て少なくともこれは一つの行き方だという評価は受けておるんだと私は思います。そしてそのことが、わが国がこういう憲法を持ち核不拡散条約に加盟をし非核三原則を堅持している、このこと自身がいわば多くの国に対して一つの説得力になっているのではないかと私は考えておりますが、しかしさてそうは申しましても、現実にはどうやって米ソの軍備拡張を逆の方向に向けていくかということ、やはりそういうわが国のいわば実績といいますかあり方を背景にしながら、軍縮特別総会等々で考え方を述べる、こういうことが大事なのではないか。先ほどこれとの関係松前委員が、いろいろ体制の異なる国との関係も閉ざさないでおくべきだということをちょっと言われましたことは、私はきわめて示唆に富む大事な点であると思っておりまして、確かに今年これから後半にかけまして軍縮の問題は大事な展開をいたすわけでございますから、わが国はそういう自分たちの歩いてきた道、きょうある日本というものを背景にしながら軍縮への説得を続けていくべきだと考えております。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 終わります。
  26. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 協定の二本とそれから法律案、これは午後の方にやらしてもらうようにいたしまして、いま核の問題、軍縮等の問題が同僚議員の方からいろいろの角度からお話がありました。私は、これに引き続くみたいな形ではございますが、外務大臣の臨時代理として宮澤さんがおいでになったこと、大変御苦労さまでございます。  鈴木首相が第二回の国連軍縮特別総会で行う演説、いまもう若干その内容が詰められているように聞こえるようなものがあったと思うんでありますが、この内容についての着想は、悪い言葉で大変失礼なんですが、大番頭役だと言われておられます内閣官房長官は、この着想についてはもうほぼ御存じじゃなかろうかと、こう私は思うわけなんですが、どういう内容を考えられておられるのかお伺いをいたしたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 来るべき国連の軍縮特別総会でわが国がどのような呼びかけをすべきかということにつきましては、ただいまのところまだ着想がきちんとまとまっておりません。やがて総理大臣のところで第一読会とでも申すべきものをいたそうと思っておりますけれども、まだそれに至っておりません。ただ、この軍縮特別総会にぜひ出席したいということは、鈴木総理大臣がすでにかなり早く以前から言っておられまして、ある意味でそれが誘因になりまして、各国の首脳が思ったよりもたくさん参加されるようなことにもなったように見ております。したがいまして、わが国がそれだけの熱意を表明しているということは大変に意味のあることだと思っておりますが、具体的にどういう構想ということを申し上げるに至っておりませんけれども、もちろん背景になりますのは、先ほど松前委員にも申し上げましたようなわが国の第二次大戦における経験であり、その経験に立った現在の憲法を初めとする体制、諸政策、これがわれわれの主張の背景であると考えておるわけでございます。  そして、呼びかけの具体的な方向といたしましては、やはり核軍縮というものが軍縮の分野において最も優先すべきものではないだろうか。とりあえずそれが一番大事なことではなかろうか。そういう意味では、いろいろな実験というものは核兵器の開発に直接関係がございますから、その実験を禁止する核不拡散体制の強化をするといったようなこと、実験につきましては、わが国自身がまた地震探知能力等々から貢献できることも多いわけでございますから、この実験の禁止の問題がまずあるであろう。次に、核以外の非核につきましても、これもなおざりにできないことでございますけれども、さしずめ化学兵器等々についての問題があるわけでございますから、その禁止をやはり考えていかなければならない。こういうことが軍縮の面では具体的に考えられなければならない方向だと思いますが、他方でわが国の哲学といたしましては、いかにも世界全体、しかも南北問題で悩んでいる世界の中で、軍備拡張のために使われている資源、財力等々が全くいわば有用に使われていないではないかという感じを常に正直を申して持っておるわけでございますから、そういう賢明な軍縮の努力が行われて、それによって浮いてまいります利用できるような重要な資源なり何なりは世界平和のために、発展途上国の発展のために使われるべきではないか。この最後の点はなかなか表現にも注意を要すると思いますけれども、全体といたしまして、ただいま申しましたような哲学と方向わが国立場を表明すべきではないか。  ただ、それをどの程度にどういう方法で言っていいか、どういう言い方が適当であるか等々は、先ほど申しましたようにまだ第一読会もいたしておりませんので、十分に具体的に申し上げることができない段階でございます。
  28. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 確かにおっしゃるとおりだと思います。内容につきましても、私の考えておりましたこと、大体世論の言われていることが述べられたようでありますが、米国の核の傘に依存をしている西側の一員としての立場から、総理も国会答弁では、いまおっしゃられた核軍縮、核実験の全面禁止だとかあるいは核拡散防止、こういったようなものの答弁もはっきりなさっておられますし、お話もありましたようにいろいろなそういうようなものが織り込まれていくんだと思いますが、非常に微妙な立場にあるわが国が、過去、七七年に福田元首相が東南アジア外交三原則の演説をされたとか、あるいは先ほどお話ありました七八年の園田外相の軍縮の席の演説の問題だとか、それから大平首相は「平和とは」という一つの打ち出し方をなさって、大きく世界にクローズアップされていかれた歴史的なことを考えていって、それらに劣らないような、言論だけじゃなくてあらゆる面で日本の国是のあり方というものを明確にされる内容でなければならないんじゃないかと、こういうふうに私は思うわけでありますが、ともかくも深刻な経済の不振にあえぐ先進国、発展途上国、各国にどんなプログラムを立てていこうとされるのか、こういったような問題も一つの大きなテーマじゃなかろうか、こう私は思うわけであります。  いずれにいたしましても、これに対するお答えを要請しましてもちょっと無理だと思いますので、私はこの辺なんかも含められてのお考えがあるだろうと思いますので、一応蛇足的ながら申し上げてこの問題は終わりたいと思います。  次に、趙紫陽首相が来日をされるスケジュールについて御説明を願いたいのでありますが、大体五月三十一日に予定されているということ。また、日中首脳会談のテーマはどんなことを考えておられるのか、まずこの二つの点についてお答えを願いたいと思います。
  29. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 趙紫陽総理の来日のスケジュールにつきましては、宮崎委員指摘のとおり、五月三十一日に来日されまして数日東京に滞在の上、公式行事を終わられましてから、日本の国内事情を視察ということで関西の方へ回る日程を目下中国側と相談しつつ詰めておる段階でございます。この間に総理との会談、それから日本の政財界の指導層との会談、それから宮中行事というようなものが当然予定されておるわけでございます。  そこで、日中会談のテーマでございますが、これは大きく分けまするならば、一つは国際情勢につきまして、それから二つ目は、日中の双務的な関係についてのやりとりに相なるかと思います。  国際情勢につきましては、当然ながらソ連との関連での国際情勢あるいは最近話題になっております米中の関係の問題、それからインドシナ半島の問題、アフガニスタン、ポーランドあるいは南大西洋の問題等々万般にわたるものと存じております。核軍縮の問題、ベルサイユ・サミットの問題についても恐らく鈴木総理から言及があるものと考えられます。  二国間の問題につきましては、たまたま本年は日中正常化十周年記念の年に当たるわけでございまして、趙紫陽氏の来日もその一環でありますし、九月上旬に鈴木総理の訪中が予定されておりますのもその一環でございます。この事実が示しますとおり日中の関係は、昨年は確かにプラントの問題でかげりがございましたが、それを克服いたしまして、また中国御自身の国内経済、内政等もきわめて安定的に推移しておるという背景とあわせましてきわめて順調にいっておるわけでございます。  経済の問題につきましては経済協力、貿易の伸長というような問題、それから中国に残留されております孤児の方々の問題、それから最も重要な一つであります日中の文化協力の促進の問題、留学生等々の問題が議題に相なるものと考えております。
  30. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大変なテーマだと思いますが、いずれにしましても、いま御答弁の中にありましたように米中の問題、この武器問題についてブッシュ米副大統領と鄧副主席との会談等、これらのことをずっと考え合わせてみまして、わが国としては、日中関係の安定ということが米中関係の安定に密接に結びついておるというふうなことは申し上げるまでもないわけでありますと同時に、アジアの平和と安定にこれらが大きく寄与しているということも言えると思うんですが、いずれにしましても、この米中の武器問題に絡む問題点が一つの大きな世界じゅうが見ている点じゃなかろうかと思うわけで、日本立場もその辺で明確にしなければならないというふうに思うわけですが、この辺のことについてのお考えはどうでしょうか。
  31. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) この問題につきましては、基本的には米中両国で御相談いただき、解決していただく問題であるわけでございます。しかし、ただいま委員指摘のとおり、米中関係の帰趨というものが東アジアの国際情勢安定の推移に微妙に影響するわけでございまして、その限りにおきましても、わが国としても多大の関心を持たざるを得ないわけでございます。直接この問題に容喙するということではございませんが、一方ではアメリカの当局者、他方では中国の当局者にそれぞれこの問題について私どもの考えを伝えておる次第でございます。また、このアメリカの考えを中国側にもお伝えし、中国側の考えもアメリカ側にお伝えするというような一こまもあったわけでございます。  昨年の秋口以来、かなりけんのんな情勢になってまいりまして、一ころは米中関係の後退もやむを得ないというかなり強硬な御発言が中国側からもあったわけでございますが、その後両国関係者の努力が相重なりまして、円満に解決というところまではとうてい至っておりませんけれども、一ころの落ちていく姿から見ますとかなりいい方向へ推移しておるように思われます。それを象徴いたしましたのが先般の五月五日から九日までのブッシュ副大統領の訪中でございまして、レーガン大統領から中国側の指導者に対しまして、アメリカとしては中国が一つであるという考えに、米中正常化のときの上海コミュニケに即して基本的に立っておる姿は微動だもしていないということも伝えられまして、一ころの状況からいい方向へ推移しつつあるものと考えられるわけでございます。
  32. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 きょうは限られた時間なものですから、またほかの点につきましてもいろいろお伺いをしたいわけですが、次に移ってまいりたいと思います。  日韓経済協力問題につきまして、御案内のように柳谷審議官が一日に帰国されました。その内容について、交渉の結果どういうふうなことが報告されておられたのか、また交渉はどんなふうであったのか、また、不調に終わったというようなことも言われておりますが、こういった点についてもお伺いをしておきたいと思います。  それからもう一つ、今後の妥結への見通しというものはどんなふうにお考えになっておられるのか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  33. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 四月二十九日から五月一日まで柳谷外務審議官の一行が訪韓いたしまして、韓国側と経済協力の問題について意見を交換し、日本側の考え方を披瀝したわけでございます。  これはことし前半から、すなわち三月十九日に日本側の考え方を提示しましたその延長線上のわが方の考え方、ぎりぎり詰めた考え方を先方に伝えたわけでございます。しかしながら韓国側としましては、わが方の考え方に同調をするところまでには至っておりません。その意味では交渉は妥結をいたしたわけではございません。さりとて、不調に終わったかという御指摘でございますが、その点は決裂というかっこうで相別れてきたわけでございませんで、私どもとしましては鈴木総理以下関係閣僚が非常に御苦心されてまとめられた一つの考え方、これをるる先方に説明をしておるわけでございまして、その後も何とか韓国側としてもこの日本側のぎりぎりの考え方で納得してほしいと、くれぐれも熟慮してほしいということをお願いして引き下がってきておるわけでございます。  今後の見通しでございますが、したがいまして決裂ということではなく、継続協議ということでございますので、引き続き誠意を持って外交ルートで先方との話し合いを続けてまいりたい考えでございます。妥結の見通しについては、これは私どもとしては必ずしも楽観していないということを率直に申し上げておいた方が適当じゃないかと思われます。
  34. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 具体的にと言ったらちょっと無理かもわかりませんけれども、事務レベルの立場。あるいはまた再度柳谷審議官を送られるといったような考え。大体いつごろの時点に目標を置き、いつごろの時点で円満妥結をしていけるような方向になるのか。その辺のスケジュールといいますか、そういったお考えをできたらお示し願いたいと思います。
  35. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 今次私どもが韓国側に御説明申し上げた考え方は、三月十九日のわが方の事務的な提案の延長線上に乗っておるということは先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。すなわち、日本側としてはほかの国との関係もあり、財政事情もあるので、条件のいい円借款と申しましても限られておるわけでございます。したがいまして、いろいろ苦心をいたしまして、輸銀の金融であるとかあるいは市中銀行の金融を容易化するというような道を先方にお伝えしておるわけでございます。韓国側は御案内のとおり、昨今のきわめて厳しい経済情勢、それから国際的な債務の負担増、高金利による返済に当たっての重圧というものから、やはり市中銀行とか輸銀というよりも、あくまでも条件のいい円借款あるいはこれに準ずる金額というものをできるだけ考慮してほしいというのが先方の一貫した立場でございまして、そこで反りが合っていないという意味合いにおきまして、先ほど妥結に到達していないというふうに申し上げたわけでございます。  今後のタイミングでございますが、先ほど申し上げましたとおり、なかなか双方にとって困難な問題でございますので、いつごろの時点かということについてはお答えいたしかねるのじゃないかと思います。なるべく早い方がお互いにとっていいということは事実でございましょうが、せいて事をし損ずるということもございますので、いつごろというめどにつきましては御答弁申し上げるのを控えさしていただかざるを得ないと思っております。
  36. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大変お骨折りでしょうけれども。  そこで大臣、この問題につきまして鈴木首相とどんなふうないつもお話し合いをなさって処理をしていこうかというようなお考え、この辺たびたびおありになったと思うんですが、その間の事情をお聞かせ願いたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 韓国はわが国にとりましては最も近いところにあります一番関係の深い国でございます。したがって、その韓国と友好関係になければならないということは、韓国にとってもさようでございましょうが、わが国にとりましても最も大切なことだというふうに総理大臣としては考えておられると承知をいたしております。  そこで、このたび新しい政権が誕生いたしましたとともにわが国に対する経済協力の求めがあったわけでございますが、本来申せば、過去のある段階において韓国経済はすでにいわゆる離陸の段階を迎えましたので、経済協力関係は民間にウエートを置く、それでよかろうという両国合意がございましたけれども、しかしその後、最近における石油危機等々いろいろな情勢の変化もあって、新しい政権が改めてわが国からの経済協力を必要とすると言われたことについては、過去のそういう経緯はございましたけれども積極的に理解を示すべきだということを政府としては考えておるわけでございます。その場合、しかし政府としての経済協力についての基本的な考え方、あるいはこれから中期にわたりましてのわが国の経済協力に割き得るところの財源、資源の制約等々これを無視して考えるわけにはまいりませんので、その範囲、その考え方の中で最大限の誠意を尽くすべきである、こういうふうに総理大臣としては考えまして、先般わが国としての考え方を柳谷審議官を通じまして先方に伝えた、こういうことでございます。  繰り返して申し上げますと、いろいろ過去のそういう事情はございますけれども、韓国の民生がさらに繁栄をしていくということは、韓国のみならず、わが国にとりましても大切なことでございますから、できるだけのことをこの際日本としてもするべきであろう、こういう立場でございます。
  38. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間が参りましたので終わりますけれども、朝鮮半島というのは全体のことを取り上げて考えなきゃならないという点からいろいろ御質問申してお聞きしたかったのですが、時間が参りましたので、きょうはこれで私の質問を終わります。
  39. 立木洋

    ○立木洋君 私もいまの問題に関連してお尋ねしたいんですが、先般の柳谷外務審議官がおいでになってぎりぎり精いっぱいのところを説明をされた、それに対して韓国側としては非常に厳しかったと外務省からいただいた資料の中には書いてあるんですが、いままで日韓問題でいろいろおやりになってこられた宮澤さんとして、韓国側のこういう厳しい態度ということについてどういうふうな御所見をお持ちでしょうか。
  40. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それはこの二、三年来の世界経済の不調、その影響を韓国としても当然受けておりますから、したがいまして、何とかそれから脱却をして五カ年計画を完成していくということになりますと、まあ私どもができると思いますよりはより多くのものをやはり日本に求めたい、そういう国と国の立場なり相手に対する理解というのはおのずからしばしば一緒ではございませんから、まあそういう考え方の反映ではないかと思っております。
  41. 立木洋

    ○立木洋君 今回の日本側の提示がぎりぎり精いっぱいの線だということですが、これは今後も妥協できない日本側としては当面考えられるぎりぎり精いっぱいの線というふうに文字どおり解釈してもよろしいんでしょうか。
  42. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 私どもはそのような考え方に立っております。
  43. 立木洋

    ○立木洋君 つまりぎりぎり精いっぱいの線だということで向こう側に提示したのが厳しい態度に遭った。それで話し合いはそのまま継続に持ち込まれていると。これは日本側としていま新たに何か行動を起こすということではなくて、つまり韓国側から何らかの対応があるのをただ待つだけである、日本側としてはぎりぎり精いっぱいの線を出したんだからあとは相手から何かの反応があるのを待つだけであるという意味でしょうか。
  44. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 先般の柳谷審議官の訪韓の際には合意には達しなかったことは先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、結局別れ際に、韓国側としましては御納得いただけないかもしれないけれども、私どもとしては精いっぱいの努力の帰結であるので何とかその辺十分検討をされ、熟慮の上韓国側の新たな考え方というものをお願いしたいということで別れてきておるわけでございます。
  45. 立木洋

    ○立木洋君 宮澤さんが外務大臣のときからこの日韓問題では私も再々お尋ねしたことが記憶にあるんですが、やはり対韓関係の問題になるとどうも日本側が弱腰ではないか。金大中事件のときも私は何回か政治決着の問題でお尋ねしたことがあったと思うんですが、今度の経済援助の問題でも、いま言われましたように民間を中心とするという形に移行をすることが両方で合意がされて、そしてそれも積み上げ方式で過去の実績をやっぱり十分に考慮に入れなければならない。しかし、今回の場合には必ずしも実績にこだわらないという状態で突出した形での援助の額になった。それが提示されて、それでもまだ向こうが厳しい態度をとっても、なおかつこれがぎりぎりの線ですから何とかというような、そういう何と言いますか外交姿勢というのが、結局は金大中事件の政治決着などにも見られましたように、やはり日本側が、極端な言い方をすればなめられると言いますか、今回の援助の問題についてのいわゆる韓国で出されている新聞なんかでも、日本側の言っている精いっぱいの努力ということは何にもしないことだということまで向こうの新聞では書いているわけですね。だから、こういう外交姿勢というのは私はよく考えてみる必要があるんではないかというふうに思うんですが、いままでのことも振り返って、宮澤さん、どのようにその点お考えでしょうか。
  46. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 韓国はわが国にとりまして一番近い隣の国でございます。長い歴史的な関係もございますし、しかも最近においては不幸な何十年かを持った、そういう関係を持った国でございますだけに、人一倍私どもはやはり大切に考えなければならない国であるというふうに思っております。そういう物の考え方を何かなめられたというふうにごらんになるということ、それは私ども不本意でございまして、やはり一番大切に考える、話を曲げるわけにはいきませんけれども、相手の立場になってできるだけ考えようと努めることは私は大事なことだというふうに思っております。  そのようなわが国態度を韓国がどういうふうにとっておるかということでございますけれども、ちょっとただいま韓国の新聞等にあらわれた表現を御紹介になりましたが、韓国政府は決して私はそう考えていないと思います。わが国の置かれておりますいろいろな状況、ことさらに財政の状況などを知るにつけては、日本としてもできるだけ誠意を尽くしてくれているということは、これはわかっておるということ、このこと自身は今回も柳谷審議官に対して先方がわざわざ言っておられますので、その点についての私は誤解はあるまいと思っております。
  47. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がないのでこの問題はまた新たな動きが出た時点でお尋ねすることにいたしたいと思います。  宮澤さんがおいでになったせっかくの機会ですから、もう一つ別の問題でお尋ねしておきたいんですが、武器輸出三原則の問題ですが、アメリカに対する武器技術の協力の問題で何回か国会でも議論になってまいったわけですが、最近の新聞の報道を見ますと、対米提供踏み切るというふうな新聞の報道がなされておりますが、これが政府部内としてはまだ統一見解が出るに至っていないのか、ある程度煮詰まってきているのか、またそういう問題に対してたとえば煮詰まっていないとしても宮澤さん御自身がどのようにお考えになっておられるか、そういう点でもしお聞かせいただけるのでしたら御説明いただきたいと思います。
  48. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては現在関係各省庁で検討を続けておりまして、いつまでに結論を申し上げられるかということが確たる日程としてただいまお答えができない段階でございます。と申しますのは、大変に重要な問題だと思いますけれども、従来われわれがとってまいりました武器輸出三原則、それから昭和五十一年の二月にそれに関する政府方針というものを申し上げたことがございますが、そういうこととアメリカとの関連での日米安保条約等々の条約、取り決め、協定等々その関連をどういうふうに考えていいかということが非常に実はむつかしい問題でございまして、もうすでにかなり長い時間をかけて各省庁が検討しておりますけれども、きょう現在結論を見るに至っておりません。じんぜん日を過ごしてはならないと考えておりながら、いまのところまだ議がまとまっていないということでございますので、なお督励をして結論を急ぎたいと存じますが、現在のところはそのような状況でございます。
  49. 立木洋

    ○立木洋君 その点御要望申し上げておきたいんですが、これは先ほど来同僚議員の方からも指摘されておりますように、いま軍縮か軍拡かという重要な状況にある国際情勢の中で、日本の歩んで来た道、あの原爆の被害を受けた唯一の国民として、何としても再びそういう事態が起こらないで平和に世の中が推移できるようなことを願っておるということは、これは言うまでもないことだと思うんですね。ですから、日本でも軍事予算が厳しく突出したという点についての批判も出ておることですし、また国連軍縮特別総会を目前に控えて、日本の政府がどういう態度を発表するかということも、日本の国内はもちろんですが、国際的にも非常に大きな注目を受けていると私は思うんです。そういう時期にやっぱり一つ一つなし崩し的に、つまり軍拡といいますか、アメリカの戦略的な要求にこたえていくような方向に進むということはこれはきわめて遺憾なことであるので、こうした武器輸出三原則の問題についても、アメリカに対しても当然これはやっぱり厳格に守るべきだ。いままでの政府の答弁の中でも「慎む」ということは、これは原則的にはしないということだということさえなされているわけですから、同時にこの武器輸出ということは武器の技術の問題についても同様であるということも政府としては述べられていた立場ですから、こうした立場をやはりきちっと貫いていただきたいということをこの際要望しておきたいと思いますが、それについて何か大臣の方で御所見があれば伺って、私の質問を終わります。
  50. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) なお十分に検討いたしたいと存じます。
  51. 木島則夫

    ○木島則夫君 条約の細かい内容については午後の審議にゆだねるといたしまして、せっかく宮澤さんおいでになっておりますので、一、二点まず御質問を申し上げたいと考えております。  その第一点は、米ソ戦略兵器の削減交渉に関するアメリカのレーガン大統領の提案について、官房長官としてこれを評価されるという談話を発表をされております。いかなる点を評価をされるのか、その辺をもう一度確認をしたいということで伺いたいんであります。
  52. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この問題はきわめて内容が複雑でございますが、昨日外務大臣として評価をすると申しましたゆえんは、アメリカ側が戦略核兵器の大幅削減を内容とする具体的な提案を行った、その点は軍縮を促進する上で建設的なものであろうと、こういう意味で評価をいたしたわけでございます。
  53. 木島則夫

    ○木島則夫君 戦略兵器削減交渉については、日本人はもちろんあたりまえでありますけれど、世界人類のこれは悲願であろうと思うわけでありますけれど、必ずしもその願いどおりに進んでいないという、やっぱりつっかえもっかえもたもたしている。いろいろ立場はあるでしょう。複雑な問題は確かにあることは私も理解をしているわけでありますけれど、この時期にレーガン大統領が提案をしたというその意味、そしてこれを機会に、やっぱり日本外交はあらゆる場、その場がどこであれアプローチをしていく必要があると思うのであります。早くもタス通信あたりを通じて何かソ連が否定的な態度に出ているような記事も散見をしているわけでありますけれど、その辺についてはどんなふうに日本政府としてこれから働きかけをなさっていくか、お伺いをしたいわけであります。
  54. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この時期にという第一のお尋ねでございますが、もともとカーター政権時代にある程度話が進んでおりましたSALTIIというものについて、御承知のようにいろいろな批評、批判がアメリカ側にございました。したがって、今回決して遅きに過ぎたとは申しませんけれども、実はアメリカ側としてはやはりそれならばどう考えるのかということを言うべき段階にあったと私考えます。それからさらに、しかしこの時期ということでございますれば、たとえば国連の軍縮総会も近くございますし、また他方で中距離の核兵器との関係で多少NATOの国々の一部の国民の間にややいろいろな疑念を生じ始めておって、アメリカの軍縮に対する姿勢というものを明確にしておくことが必要であろうと、そういう判断も働いたのではないかと思います。
  55. 木島則夫

    ○木島則夫君 もう一つお尋ねをしたわけでありますけれど、日本政府としてはいろんな場でアプローチを私はされるべきだと思うんでありますけれど、具体的にどんなふうにお考えでございましょうか。
  56. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、かねて政府としましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、やはり軍縮の第一着手は核兵器をめぐるものであるべきである一そして現実的には米ソ間のバランスというものは無視できないものであると思うが、しかしそれはなるべくその水準を下げていくべきである、こう考えておりますから、そういう意味で今回のレーガン大統領の具体的な提案は、方向としてその方向に沿ったものであると思っておるわけでございますけれども、なお先ほどもお話のございました軍縮総会等々の機会を通じて、わが国のそういう主張を鮮明にしてまいりたいと思っております。
  57. 木島則夫

    ○木島則夫君 次は、四月の八日の外務委員会で、まあ長官はここにもちろんいらっしゃらなかったわけでございますけれど、私は日米、日欧の経済摩擦ばかりに日本関心が集まっていて、一番近くて一番大事なASEANとの関係がどうも希薄になっているんじゃないかと、このことの危惧を申し上げたわけでございます。わが国とASEAN諸国との貿易額はこれは申し上げるまでもないんでありますけれど、わが国の貿易総額の約八分の一を占めている、大変緊密な関係にあるわけでありますけれど、八一年の場合にフィリピンが約二億ドル、シンガポールが約二十六億ドル、それからタイが約十二億ドル、わが国の大幅な輸出超過という状況であります。また資源国であるインドネシアとマレーシアに対してはわが国の輸入超過ということでありますけれど、マレーシアとの間の入超幅は縮小の傾向にあるというふうにも聞いております。こういったわが国の大幅な輸出超過を背景に、インドネシアのサイディマン駐日大使が、これは自民党のAA研でおっしゃったそうでありますけれど、日本は欧米のことしか頭にない、こう発言をするなどASEAN諸国を初めとしたアジア諸国から、日本は大幅な貿易不均衡を放置しているという非難が高まっていると、こういうふうに聞いているわけであります。これに対して政府は、近くまとめる市場開放措置の第二段の中で、開発途上国への貿易経済上の配慮の基本方針を盛り込むということでありますけれど、具体的にどういう配慮をしようとするのか、この辺はどんなものでありましょうか。これは私質問通告をしてございますんで、宮澤大臣でなくてももちろん結構でございますのでお答えをいただきたい。
  58. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 最近の世界経済の低迷から、インドネシアにおきましても油の減産を図るとか、ノンオイルの一次産品の輸出がきわめて停滞するというようなことで、フラストレーションが随所に起こっておることは事実でございます。しかしながら、私どもとしましてはASEAN軽視ということでは毛頭ございませんで、昨年の一月に鈴木総理が最初の海外訪問の地としましてASEANを選ばれたことはその証左であるかと思います。ただいま御指摘の貿易上のインバランスにつきまして、シンガポールにつきましてはこれはシンガポールが日本から材料機械等を輸入しまして再輸出をするということから、当然構造的に対日入超になることは避けられないわけでございます。フィリピンにつきましては年によって変わり、おおむね均衡がとれておる。マレーシア、インドネシアは先ほど申し上げました経済の停滞から輸出が伸び悩んでいるということでございますけれども、依然として彼らの黒字基調で推移いたしております。したがいまして、残る問題はタイでございます。これは二十年この方私どもの頭を悩ましてきておるわけでございまして、なかなかタイの産品買い付けにも限界があるわけでございます。しかしながら、私どもとしましてはタイに対する経済協力を通じまして、すなわちタイの貿易輸出促進センターを建設する、そこでタイの輸出振興を図るというようないろいろ細かい配慮も行いまして、インバランス解消というわけにはまいりませんけれども、じみちな努力、これはタイの関係も評価いたしておるところでございます。
  59. 木島則夫

    ○木島則夫君 大まかに私流にまとめさせていただきますと、援助額の増大、それから民間投資の拡大、熱帯産品等アジア産品の関税貿易上の優遇措置など、こういったことを軸に貿易摩擦の回避に全力を挙げるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  60. 深田宏

    政府委員(深田宏君) 大筋の方向といたしましては先生御指摘のようなことでございます。具体的には、現在市場開放措置につきまして関係省間で具体策を策定中でございますので、申し上げることは適切でないと存じますが、アジア諸国を含む開発途上国に対する配慮を盛り込むという方向でせっかく努力をいたしている次第でございます。
  61. 木島則夫

    ○木島則夫君 また、ASEAN諸国との協議の場としましては、六月八日からの対インドネシア政府間援助協議であるとかあるいは六月の十七、十八日にはASEAN拡大外相会議というのがございますね、こういう場があるのでありますけれど、どのように対応する所存か伺いたい。  さらに六月の四日からのベルサイユ・サミットに先立って、こういったアジア諸国の要望を聴取をしてサミットに反映させる考えがおありなのかどうか、この辺もあわせて伺って、もう私の時間がございませんので、ひとつお答えをまとめていただきたいと思います。
  62. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 六月八日の対インドネシア援助国会議につきましては、これは経済協力の問題に集約される場でございまして、五十七年度の援助につきまして協議することになっております。六月十七、十八日のASEAN拡大外相会議がシンガポールで行われまして、櫻内大臣はこれに御出席の御予定でございますが、そこでの最大の問題点は、インドシナ半島の情勢すなわちカンボジアの問題でございます。しかしながら、その機会を利用しまして日本とASEAN五カ国との問題あるいは個々の国との問題も議せられるわけでございます。昨年のASEAN拡大外相会議におきましては、たとえば難航いたしておりますすず協定促進実現について対日要請がありまして、日本側としても最大限の協力を示したことがございますが、それと同様の角度におきまして、二国間の経済貿易上の問題も取り上げられてしかるべき場であるわけでございます。  それからサミットに向けてのASEANとの関係でございますが、これは目下サミットの議題等についての準備が進行いたしておりますので、その進行状況を勘案しましてASEANと連絡をとるということは考えられるわけでございます。たとえばASEAN在京大使五カ国の結束連絡は非常によろしいわけでございまして、いつでもこの在京の大使方と相談することは可能でございますし、また出先駐在大使を通じてASEAN政府の意向を即刻聴取することも可能になっておるわけでございます。
  63. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間でございますから結構でございます。
  64. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時四十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十二分開会
  65. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  66. 松前達郎

    松前達郎君 午前中、南極関連の問題で質問さしていただいたんですが、日本・インドネシア租税協定についてまず二、三お伺いしておきたいと思うんですが、大まかに言って、この租税協定によって非常にいろいろな問題がある中で解決をされていく問題、両国にとって利益になる問題というのを強いて大きな面で挙げていくとどういうものがあるか、それについてちょっと説明してください。
  67. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) この協定は、両国の経済活動その他の活動を通じまして生じます二重課税回避し、あるいはそれが生じました場合にそれを排除するということでございまして、具体的にはいま先生の御質問のどういう点にそれが特にあらわれるかということにつきまして申し上げますれば、一つは、事業者につきましては、その恒久的施設というものの定義を明確にしておりまして、その恒久的な施設が存在する場所において課税するという原則を立てておることでございます。  それからさらに特定の事業、たとえば国際運輸事業でございますけれども、飛行機あるいは船舶というものでございますけれども、これにつきましてはそれぞれの企業の源泉地国においてのみ課税するということで二重課税の排除をしております。  それからさらに一般人、これは個人になりますけれども、出張者等の短期滞在者、たとえば学生とか教授あるいは訓練生というような人々につきましては、その滞在期間等を定めまして、一定の条件のもとにおいて相手国において免税されるという措置をとっております。さらに、インドネシアが行っております特定の外資導入のための優遇措置に関連いたしまして、その優遇措置の効果が無に帰さないように、いわゆるみなし所得課税というものが導入されておりまして、その結果、その優遇措置の分につきましては投資を行った企業が租税上優遇されるということを規定しております。この最後の点はインドネシアにとって特に利益になる点だと存じます。  以上申しました点がそれぞれ明確化され、租税の二重課税回避あるいは排除されるということによりまして、経済上あるいは人的、文化的交流が活発になり得る、その基盤をつくるという意味で本件が両国にとって裨益するものと存じます。
  68. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、いまここでは日本とインドネシアの租税協定という二国間の協定なんですが、これと全く同等のものですね、各国との間にやはり経済交流なりいろいろなものが活発になればなるほどこういう措置をしておくという必要があるんじゃないかと思うんですが、これと全く同じような内容でその他の国で一体どのぐらい結ばれているかですね、現在。
  69. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 現在わが国締結しております二重課税防止のための租税協定は三十二ございます。それから、ポーランドとの協定につきまして国会の御承認をいただいておりますけれども、まだ批准手続が終わっておりませんので、それを加えますと三十三でございます。
  70. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと三十三、うち未批准が一ということですね。これは今後日本の将来の問題を考えたとき、たとえば貿易立国だとかいろいろな問題もあるかもしれませんけれども、そういったものを含めて、こういった租税協定というのは今後まだ結ばれていない各国との間にふえていく傾向にあるのか、あるいはふやそうという意図があるのか、その辺ひとつお願いします。
  71. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) このような租税協定締結いたしますときには、やはり相手国との経済交流の実態あるいは人的交流の実態等を勘案しつつ、その必要性があるかどうかということを判断した上で交渉の機運が生じてくるわけでございますけれども、今後ともそういう意味で、経済交流がかなりありあるいは人事交流があって、このような二重課税防止することによって経済交流ないし人事交流を盛んにするという必要がある国とは、随時協定の交渉を行い、協定締結していくというのが政府の方針でございますけれども、現在交渉中でございますのがソ連及び中国でございます。それからフィンランドとの協定の交渉も予定に上っております。ちなみにスウェーデンとの間では、従来ございました協定を改正するための議定書につきましてイニシアルを行いましたので、このスウェーデンとの改正議定書につきましては来国会で御承認をいただく予定にいたしております。このように、必要に応じ協定がふえていくものと存じております。
  72. 松前達郎

    松前達郎君 それでは次に、日本とスリランカの投資保護協定に関連して質問をいたしますけれども、これは日本が結んでいる協定としては二つ目だというお話を伺ったわけなんで、さっきの租税協定と違って比較的新しい範疇に入るんじゃないかと思うんですが、これで一応安定した事業が遂行できるという意味では保護をするということが非常に重要であることはもちろんなんですが、最近はどうもうっかりすると国有化というのをばさっとやってくるところがときどきあるものですから、そういう事実がいろいろあちこちで起こってくると、やはり投資等についても非常に警戒をする向きが出てくるわけですね。で、この協定が事業の国有化などの動きに対して保護的な効力を持つものかどうか、その点いかがですか。
  73. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先生御指摘の点がまさにこの投資保護協定の中心的な役割りであると思うわけでございます。投資保護協定の主な目的といたしましては、相手国におきましての投資環境を整備することにより、特にその投資についていろいろな面から保護が与えられることにより、民間企業家の投資促進するという効果を持つわけでございますけれども、その中心となる点は、やはり相手国におきまして収用、国有化等の場合にこれに対して適切な補償が行われるということを確保すること、あるいは利潤の送金等の自由を認める制度を設けること等にあるわけでございますけれども、今回の投資保護協定におきましてもその点を明記しているわけでございます。
  74. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、国有化等についてもこれは二国間でお互いに合意してつくるわけですから、当然そういうことをやるということを前提にしてこの協定が結ばれるわけはないんですね。恐らく国有化の場合は、何か特別な状態になってくるという状態のときに行われるのだと思いますが、この保護協定はその二国間の紳士的なお互いの取り決めであって、第三者がどこか担保するとか、たとえば国連が担保するとか、国がたくさん入っていれば別ですけれども、二国間の場合はこれは協定の基本的問題かもしれませんが、何か適当な担保するあれがあるんですか、第三者としてですね。
  75. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 従来ともこのような民間投資と相手投資国との間の紛争につきましては、ワシントンで作成された国家と他の国家の国民との間の投資紛争解決に関する条約というのがございまして、この条約に基づきまして世界銀行の中に投資紛争解決国際センターというのができておりまして、そこに訴えをすることができるような仕組みが存在していたわけでございますけれども、今回の協定におきましても第十一条におきまして特にこの条約に言及いたしまして、この条約の規定に従って「調停又は仲裁に付記することができる。」ということで明確に定めてございますので、この協定で定められた保護枠組みにつきまして法律上の紛争がある場合には、個々の投資家が相手の国を相手取ってこの仲裁の手続に付すことができるわけでございます。この際に、この協定の手続によっても相手国は直ちにこれに応じなければならないという義務を負うわけでございますので、そういう意味では第三者的な仲裁の手続がこの条約の中においても確保されていると、こういうことになっているわけでございます。
  76. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、いままで、これは日本にとっては二つ目だということが最初にありましたですが、こういった種類のもので、仲裁みたいなものが発動しなきゃならなくなった事実というのはいままであるんですか。
  77. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 御指摘のように、二国間の協定としては二つ目でございますので、協定に基づく発動の事例は当然ないわけでございますけれども、このワシントン条約につきましては日本は何年か前にこれに加盟しておりますけれども、この条約に基づく仲裁の事例があったということは具体的には承知しておりませんので、特に目立ったものはなかったのではないかと推測いたしております。
  78. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、特に問題はこれに類するものではあったか、実はその辺はどうでもいいんですが、そういうものが実際発動されるという裏づけがあるということですね。それでこの協定そのものがもう一つ別の角度から担保されているんだということで理解していいですね。
  79. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先ほどの点、ちょっと訂正させていただきますけれども、この条約に基づいた係争案件というのが三件ございまして、そのうち二件が解決したということでございますので、この事例はそれほど多くないということでございます。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  80. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、これは二つ目だということになっていますが、今後これと内容が同じようなものをスリランカ以外の国と日本とが結んでいくという、そういう計画はいまありますか。
  81. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) このスリランカとの投資保護協定に類似しましたものをできるだけ多くの国々と、条件が許せば結んでいきたいということでございまして、すでにASEAN五カ国、それから中国との間で話し合いに入っております。
  82. 松前達郎

    松前達郎君 ASEAN五カ国、中国、これは実際にもう相手国との間に何らかの草案をまとめるための話し合いに入っているというわけですね。
  83. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) マレーシア、タイとはそれぞれ二回会合をしております。それから、シンガポール、フィリピン、中国とはそれぞれ一回会合を行っております。インドネシアとはまだ会合を行っておりません。
  84. 松前達郎

    松前達郎君 午前中の質疑の中でもあったんですが、やはりASEANとかそういったわれわれのごくひざ元の国との経済関係というのは非常に今後重要になってくるし、いまわれわれの安全保障というのは大国にみんな寄りかかっているような感じですけれども、将来は恐らくアジアの諸国との間に集団的な安全保障というものが当然考えられるはずだと私は思っておるのですが、そういう意味からやはり経済交流とか、あるいはアジアの諸国そのものがさらに経済的に発展するような段取りというのを日本としても考えてあげなきゃいけないし、そういう具体的な行為を実際にするべきだと私は思っているので、今後このような協定がいまおっしゃったような国々と結ばれて、そういった協定に基づいて投資その他が順調に行われる。ただ日本投資して付加価値で上げたやつを日本が吸収しちゃおうというんじゃこれは話になりませんけれども、やはりその国自身の経済発展のために必要だということもありますので、こういう面で、そういった協定の今後の締結というものが期待されているんじゃなかろうかと私は思うわけであります。  午前中に南極の問題を質問いたしましたが、南極についてはまだ二、三ありますけれども、一応協定二つ、さらに南極動植物保護法についての質問、私の質問はこれで終わらせていただきます。
  85. 戸叶武

    戸叶武君 スリランカとの協定は、いままでスリランカの公使なり何なりは非常に熱心に日本に近づいてきたが、日本人はあそこにおける水力電気の問題でもあるいは水源開発の問題でも、余り耳を傾けるゆとりがなかったようです。  それは、一つはフランスに留学した優秀なインテリがトロツキストで、夫婦ともあそこの政権を握っていた時代がありましたのでその関係かとも思いますが、私は一九二九年、船でコロンボを訪ねたことがあります。そのときに宝石屋の主人に非常に好かれて、どういう関係自分は人相を見るんだが、自分のところに戴冠式に来た東郷さんと乃木さんというのはまことに人格、人相のいい人だった。それで、サインしたサインブックがあるが、あなたもそれにサインしてくれと言う。おれは無名のまだ学生だからそんなものにサインはしないと言ったら、どうしてもしてくれと言うのでしましたが、その後三回ほど訪ねるごとにそのサインブックを見て恐縮しておりますが、東南アジアにおいては何といっても戦後の十カ年ぐらいというものはプリミティブなナショナリズムとコミュニズムあるいはアナルコサンジカリズム、そういうものがごっちゃになって入り、トロツキストの世界革命主義の影響力もずいぶんフランスやアメリカから強いものでした。  コロンボから寝釈迦のキャンデーで有名な湖のほとりに眠るがごとくお釈迦さんが大往生したという場所を訪ね、あそこに国立大学が一つ設けられ、その大学の紋章は十六の菊の紋でしたが、これはペナン、香港で育ったアラブ人が中国の華僑出身の人と結婚してそれをつくったのですが、そこへ案内されたのはいいけれども日本人がペナン島においてどれだけ残虐な仕打ちを華僑やなんかにした、耳に鉛筆を入れたり鼻に鉛筆を入れたり、そういう拷問みたいなことをやって一種のサディズムであろうが、そうやってわれわれの両親は殺されたという話を聞いている間に何かどうも寝釈迦の、アショカ王があそこへ移したというけれども、泊まっていけというので泊まったが、蚊には食われるし、何か薄気味の悪い感じをしたんですが、あそこの唯一の大学は国立大学で、それがライフの編集部みたいに一人一部屋の非常なすぐれたエリート養成機関のようにされているけれども、みんな中へ入っているのはトロツキストがおおむねであって、そうしてマルキシズムよりも過激なトロツキストの世界革命に酔いしびれているようなプリミティブなナショナリズムと民族独立の単純なマルクス・レーニン主義が狂喜乱舞した姿を見ました。その後ビルマの首都ラングーンで催されたアジア社会党大会に出たんですが、インドのブラジャー社会党のアショカメタ書記長だけは民主社会主義のロンドン大学のハロルド・ラスキー教授の影響なんか受けて、民主社会主義というものをわかる人もいないんで、とにかくこれは今後の十年、二十年いろいろな意味において試行錯誤を経なければ近代化の道は開けないんじゃないかというふうに感じましたが、しかしいまだとずいぶんスリランカも落ちつきを戻し、そうして自分の国を他からの若干の技術援助なりいろいろな援助を受けながらもやはり国際的な信義を重んじて、そうして大地に根のついた近代化路線をつくらなければならないというところへきているのは事実です。そういうときに非常に日本がいろいろな経済摩擦という名で何もかも裸にされて、ついでに日本憲法なんていうのは無視して軍事費も増大しろというようなむちゃなことが外圧として出てきていますけれども、そういうときにまだまだセイロンには山が多い、開拓の余地はあるし、イギリスがあれだけにセイロンティーの評価を高くしたのは、山によって気象、土地、それから肥料のぐあい、みんな違うんで、それを選別して今日のセイロンティーをつくり上げて、恐らくは紅茶でセイロンティーの右に出るものはないところまできたと思うんです。そういう点からいって、もう少七私は、あの土地は山だけしか見えないが、海岸通りあるいは盆地も少しありますし、近海漁業ももう少し力を入れると相当な成果が上がるということはわかっていますが、恐らくは石油関係の路線の保護という形で、いろいろな点で軍事的な基地的な、日本がそこへまかり出るような外圧の揺すぶりがいまされているのだと思います。  いろいろな意味において自分の国を守る責任はあっても、それ以上にいま世界を軍拡競争の中にのみ埋没させないで、やはりヤルタ体制的な米英ソのなれ合いで両方は戦争はしない。けれども核兵器をとにかく持って力のバランスをとらなきゃならない。そんなバランスなんかとれるものじゃない。結局幾たびかのワシントン軍縮会議、ロンドン軍縮会議で失敗したのは、軍縮とは名ばかりで裏では相手をけ飛ばす競争ばかりがなされていたのがいままでの軍縮会議です。しかし今度は私は違うと思います。人類の破滅ということを考えたならば、自分の国のことだけでなく、だれか米ソに対してもこの大きな考え方のチェンジをやらして、ヤルタ秘密協定のようなやり方でなくして、やっぱり国連憲章で再び戦争をやらないと世界じゅうが誓った、そうして平和維持機構として国連をつくったあの方向で、あれもいろいろな小さな国々が勝手なことを言うので、とてもこれはここじゃまとまらぬというふうにアメリカも腹を立て、ソ連と組んでまず核兵器の持っている国のバランスというけれども、もうバランスは破れてしまっているんです。バランスといっても結局はアンバランスな形になり、相手を凌駕してすきあらばたたいちゃえという感じでは地獄への道以外にないし、もうソ連やアメリカの考える真の――鶏はよくけんかするとしりだけ出して頭だけを突っ込んで姿を隠していますが、世界じゅうがみんなわかってしまったんです。手品の種はわかってしまったんです。  そういう意味において、わかっているけれども一気にそういうふうにいかないけれども、どうやって世界の人々の納得をかち得るような平和共存体制をつくるかというのが目下の急務だと思うんです。単なる石油路線あるいはアメリカの要請するところのあのソ連の脅威に対して備えなければならないという形だけでなくて、本当にセイロンの人たちが、あのアショカ王の子孫たちが仏教を奉じてあそこに眠るがごとき大往生を遂げたいというような悲願を込めた私は楽天地だと思います。そういう意味において、これがモデルになるような、いつでもいろいろなことをやるときに、日本にとって、アメリカの要請に対してこれが軍事的に重要だということも幾らか考えないわけにはいかないでしょうけれども、それだけではもう国民が納得しない。やっぱりそういう形においてモデル的なものをつくっていかれんことをお願いします。  私は、昭和二十八年の第一回アジア社会党大会に出る前に、スリランカ(セイロン)を経てインド及びパキスタンを訪ね、ビルマのラングーンの大会に出席しましたが、セイロン島ではアメリカのリーダース・ダイジェストが紹介したジャパニーズ・クズについて、荒れ地に種をまくとそれが一番緑化に便利だというので取り寄せてみたら、よく見れば、セイロンにあるクズとジャパニーズ・クズは同じものであった。やっぱり奈良の大仏がサラセンの人やあるいはこのセイロンの人も行って協力したんじゃないかということを回想すると、やはりジャパニーズ・クズは日本にもあったかしれないけれども、セイロンのものと同じだというのでびっくりしたと言いましたが、そういう意味においてやはり相手の人々の立場、相手の人々の願い、そういうものをお互いに満たし合うという形で今後技術経済協力もやっていってもらいたいと思います。宝石なんかいろいろな意味においてセイロンは山のごとくありますし、海の中にもあるでしょう。魚も宝庫です。問題は魚を食う人が少ないことでありましたが、いまでは食わざるを得なくなっております。私はその土地の住民の心をくみ上げて、それへの願いを満たすことを第一にしていく方が物事は成功するんじゃないかというふうに考えております。  それに対してどうでしょうか、農林省やあるいは外務省では、幾らでもあそこは発電ができるんだが、水力発電では金がかかるから、金がかかってもあそこはこのごろは石油も安くなったし、それから石炭もあるし、あるいはサンシャイン計画も可能でありますが、外務省ではそういうようなことはどういうふうに調べておりますか。
  86. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) スリランカの発電でございますけれども、スリランカ政府は二つの大きなナショナルプロジェクトを持っておりまして、一つはマハベリ川開発計画、それからもう一つが大コロンボ都市開発計画でございます。このうちのマハベリ川開発計画といいますのは、スリランカで最大の河川でありますマハベリ川を総合的に開発いたしまして特に電力、水力発電をつくりまして、同時に、ここに灌漑等を通じまして食糧の自給を達成したい、それによってスリランカの大きな問題でございます雇用の確立をしたいという事業でございます。この事業につきましても、日本政府としては種々協力していきたいというふうに考えております。
  87. 戸叶武

    戸叶武君 次に、南極動植物保存に関する法律案と、それから南極における案件が出ておりますが、私は南極の問題に急に触れ出したのも、何かあれを軍事的な形において利用しようという伏線が存在するんじゃないか、先手必勝ということで早く手をつけておいた方がいいんじゃないかというような試みが各国においてもなされているように思えるので、「行きはよいよい帰りはこわい」という童謡がありますが、何かだんだんにやわらかなところから入っていくけれども南極まで軍事基地化するようなことになると、やはり私は非常に不幸な結果を招かないとも限らないと思うんですが、動物愛護、鳥獣愛護まことに結構ですが、そういう御心配は余りないですか。
  88. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先生御指摘南極を軍事的に利用する意図があるのではないかという御懸念でございますけれども、現在締結されております南極条約におきましては、そのところを特に懸念いたしまして、第一条におきまして、「南極地域は、平和的目的のみに利用する。軍事基地及び防備施設の設置、軍事演習の実施並びにあらゆる型の兵器の実験のような軍事的性質の措置は、特に、禁止する。」ということで、明確にこの点は禁止されておるわけでございます。そういうことで、南極地域は平和目的のためにのみ、あるいは科学的研究のためにこれを使うということが各関係国間の明確な合意になっておるわけでございます。ただ、そのような平和目的のための科学的研究のために軍の要員あるいは備品を利用することは妨げられておりませんので、そのような研究活動に参加する要員として軍隊の要員が参加することはございますけれども、その一条の一項において明確に規定されておりますように、この軍事的性質のための利用ということは明確に禁止されておる状態でございます。でございますので、そのような懸念はないものと私どもは考えております。
  89. 戸叶武

    戸叶武君 私が昭和二十八年参議院議員に当選したときに、オックスフォードグループの人たちからアメリカにおける講演を頼まれて、そしてシヨラムホテルの大会で、私はやはり真珠湾攻撃の真相も知っていますが、人に嫌がられることは余り言うのもどうかと思いましたけれども、少なくとも核兵器を広島、長崎に落とすというようなやり方によってソ連を軍事的に強力にせき立てるやり方、その後におけるソ連と結んだ軍事秘密ヤルタ協定、これが私は第二次世界戦争後における最悪な国際関係を生み出した原因になっているのじゃないか。第一次世界大戦後のベルサイユ会議においても、アメリカはモンロー主義を共和党が掲げて、あえてわれわれの子弟を砲門の前に立たしめたる者はだれかというふうなスローガンを掲げてウッドロー・ウィルソンを破り国際連盟から脱退をしていったあの婦人の力、そして若者がニヒリズムになって戦争の絶望感の中に混迷している姿、それから世界から、世界の警察官になったんじゃかなわないと言っているが、その後、実際上世界との関係なしにアメリカも存在できないので、結局ソ連とアメリカが核兵器を持ちお互いにバランスのとれた一つの調整、秘密協定によって核を持った国が世界を支配する、中国もフランスもオミットしてしまった。それがフランスと中国の、核を持たないと連中にばかにされてしまうというので、ドゴールなりあるいは毛沢東なり周恩来たちがやはり核を開発したんだと思います。  辻政信君は、上海時代からの私の親友でしたが、彼は中国で核が開発されたなんということはあり得ないことだ、ぼくは想像できないと、しかし核が開発されたとなるといままでの大陸戦略というものが根本的に改められなくちゃならないから、どうしても新疆なりなんなり核が開発された地点に行ってみたいと言って、そんなことやめなさい、今度は殺されますよと言ったらそのとおり殺されましたが、戦争というのは人間をけだものにしちゃうんです。  ジャンヌ・ダルクだって、りっぱにセント・ジョンになっていますが、バーナード・ショウとジャンヌ・ダルクのいろいろな話を彼がして、「セント・ジョン」を書いた時分に承りましたが、やはりバーナード・ショウの説によると、この気違い女が一人夢中になってオルレアン城を守ったばかりに、神がかりのキツネつきのようなのにどれだけひどい目に遭ったかしれないというので、イギリスのあの戦場へ行った連中は彼女を輪姦したそうです。けだものです。セント・ジョンはけだものの獣欲の犠牲になっても、その志というものはやっぱり大衆の中に芽生えて、フランスの独立を守ってくれた人だという信仰を生み、やはりそこにセント・ジョンとあがめられるような一つの聖女の誕生となったんですが。  私は戦争を見ていて、戦争の中を刀もピストルも持たずに、この戦争には負けるということで和平工作のために一貫して中国と日本の間を六年間往来しましたが、本当にけだものです。満州でも太湖の湖畔でもいまだにこのけだものの獣欲に対しては恨みをみんな持っています、消えません。消えているように言うのは、戦争であるからまあ仕方がないと言ってそれをがまんして、長髪賊の乱以後幾たびかアヘン戦争をやりましたが、破れてしまったが、日本だけはとにかく近代化に成功したんだから、日本の悪いところはマージャン賭博やゴルフ賭博なんかに憂き身をやつしている道徳的退廃は許しがたいけれども、それには目をつぶって、そのいいところだけを学ぼうとしているのがいまの中国の姿勢です、わからない方もありますが。文天祥以来の、事の成敗でなくて、烈々として三千年の文化、道統を維持して中国のモラルを、生命力を維持していこうという近代化路線というものは、新聞やいわゆる中国通というやつが皆、香港情報のようなとんちんかんなことばっかり書いているけれども、私は、幾多の試行錯誤をやったが、あの日本が李鴻章やあるいは袁世凱や西太后をたぶらかして、賄賂取りの名人、ああいう官僚、軍閥を使って中国を疲弊させたことに対しては戦わざるを得ないと言った孫文一派の一つの民族完全燃焼の辛亥革命の執念、あるいは国共合作――日本人は国共という言葉にとらわれるけれど、国共という、毛沢東がどうだとか周恩来がどうだとか劉少奇がどうだとかいうのよりも、民族が完全燃焼してこの熱気によって枝葉末節なことを揚棄して、そこに新しい一つの道義、生命力を躍動しなけりゃいけないというのがいまの私は中国の人々の決意だと思います。  日本で幾ら言ったって、革新陣営に言ったって自民党に言ったって、よけいなことを言うやつだというぐらいで、いまでは政治は金がかかる。やはりずうずうしい、悪いということを知りながらも、いまのこのとうとうたる時勢にはやはりこの手以外にないじゃないかというふうに考えておる模様もありますけれども、これでは米ソ両国世界から信用されないで孤立化の道へ行くと同じように、日本の前途というものにはもう少し反省がないと新しい歴史を創造できない。軍縮議員連盟の世話役だというのが韓国の軍部、アメリカというんじゃ目立ち過ぎるから、その外圧には弱いからアメリカが言うと露骨だけれども、思い切った金を安保条約あるいは軍事同盟を結ぶかわりに、軍事協力をやるために金を出したらどうだなんてよけいなおせっかいでしょう。  私は、いま簡単に十年や二十年で南北朝鮮というものは片づかないと思います。しかし、民族の悲願は民族の統一以外にないことは西ドイツと東ドイツでもわかっているはずです。いまの私は、一番日本が邪心を持たないでアメリカなりイギリスなりヨーロッパなりを揺すぶることができるのは、悪いことを何にもしないでいて、ヨーロッパの中原に国をつくっていたがゆえにナチスにおいては虐殺され、ソ連においては強制労働によってしいたげられ、民族独立の日を、光を与えないで、――きょうのニュースだと、何かポーランドに起こりそうだと言います。起こるのがあたりまえです。ヤルタ協定の米ソが精算なしに、ポーランドの自由と民族独立と生活の保障なしにポーランドを犠牲に供してよいというような神の言葉がどこにあるか。どこに新しい世界、グローバルな時代の世界新秩序の方向づけがあるか。ポーランドの軍部ですらも、ポーランドがヤルタ協定打破というところまで踏み切ったときには、ソ連の近隣すべてがこれに呼応してくる危険性があるからポーランドには兵を入れないでくれと言うのは、ソ連に追従している軍部の指導者ですらもその危機を悟っているんです。総評でも農協でもポーランドに食糧を送れ、飢えたるポーランドを救えというかけ声で立ち上がったあのヒューマニズムはどこに消えたんですか。外務省あたりで、その辺の診断はどう見ているんですか。
  90. 田中義具

    政府委員田中義具君) ポーランドの情勢につきましては、たとえば今月初めにもいまの軍政に対する国民の不満のあらわれというような形で示威運動が起こったりしておりまして、ポーランドの事態が改善されるためには国内の諸勢力の間に国民的な合意が達成されることが必要であるというふうに考えております。ただわが国としましては、国際政治の最も基本的な枠組みが今日においても米ソを中心とする東西関係であることは否定できない冷厳な事実でございますので、こうした現実の中で自由と民主主義という共通の理念を有する西側諸国と協調しながら、ポーランド問題の解決のために引き続きソ連に対して自制を求めるとともに、ポーランド当局に対しても国内諸勢力間の民主的な話し合いを通じて問題を自主的に解決していくように求めていく考えでございます。
  91. 戸叶武

    戸叶武君 農林省はいま日本の食糧をヨーロッパ並みの自給率、少なくとも最低四割以上は維持しなければならないという、これを無視してはやはりいまの、政府もなかなか工業製品を輸出するそのアンバランスを――中間選挙において南部の大規模農業をやっている農民の票というものがレーガンさんも欲しいので、結局それに従わざるを得ないような、従ってしまえば政府も吹っ飛んでしまうような、非常にやはり食べ物のたたりというのはこわいですからね。あらゆる暴発は革命から起きるんじゃないんです。やはり食糧暴動がきっかけです。ポーランドにおいても私は麦秋のころというのが非常に危ないと思うんですが、日本では一体いま食糧はどれぐらい余っているんですか。いつまでとっておいても食べられなくなってしまうんだから、えさ米に使おうが何にしようがそれこそ本当の古米であっても、やはり最も有意義に、人間の愛情、自由、民族独立の悲願というものに対して逆らっては世界に対する平和共存の姿勢というものは崩れていくし、これにはソ連も妨害できない。アメリカも若干文句を言うかしれないけれども従ってしまう。  いままでアメリカはサイロがいっぱいになっていて、何用にでもしなけりゃとても小麦がはけないというような状態のときに、サイロを必要としない、冷蔵庫を必要としないから南極へ持っていくよりしようがないだろうというような話まであったが、いまはアメリカにおいて林立したサイロはほとんどない。ほとんどがみんな完全にソ連に送り込まれている。今度のアルゼンチンもそうでしょうが、いろいろなところから小麦なり何なり食糧を買って、そうしていろんなところに、ピンはねというかそれぞれのおこぼしをやっていくのを、逆に今度はそれを使ってソ連が、食糧というものは完全に等しいほどソ連に入ってくる。その路線の中に私は、アフリカなりいろいろなところにおいてソ連のおこぼれによってやはり非常な利益を得てきたものもあると思うんですが、その辺の調べは、海外のことは外務省に聞きますが、米はどうなっているんです、米は余って困っているんじゃありませんか。
  92. 芝田博

    説明員(芝田博君) 御質問の趣旨は、米を初めわが国の農産物で過剰なものを海外援助に使えないかというような御趣旨かと思うわけでございますが、その点につきましては、要請等のありました場合には外務省の無償援助予算等を活用いたしまして、海外援助に使用している例はあるわけでございます。
  93. 戸叶武

    戸叶武君 外務省にお願いします。どのくらい海外援助には使っておりますか。
  94. 田中義具

    政府委員田中義具君) いま全体の資料を持ち合わせておりませんけれども、たとえばポーランドの場合には人道的な援助ということでわが国からお米を二万トン援助をいたしました。
  95. 戸叶武

    戸叶武君 その程度ですか。農協なんかの動きも一時は活発にあり、総評ですらも見ちゃいられぬという一つの動きがあったんですが、あれが途中でかけ声だけに終わっているのは、国際情勢が複雑、微妙で、外務省あたりでもう少し慎重にというお声がかりでもあってああいう結末になっているのか、何か物事が歯切れが悪くって困るんですが、どうですか、それは。
  96. 田中義具

    政府委員田中義具君) ポーランド等の関係では、政府は人道的な見地からお米の二万トン、それから赤十字を通じて援助を行いましたけれども、そのほかそれぞれ民間は民間のイニシアチブでいろいろ募金運動をやって、募金運動をしたものについてはたとえば法王庁を通じてポーランドの教会に渡すとか、いろいろな形で活動しておりまして、それはもう民間のイニシアチブに応じて自由に行われているというのが現実でございます。
  97. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 食糧援助全体のお尋ねでございましたら、国際小麦貿易規約の中におきます食糧援助規約に基づいて、わが国は年間小麦三十万トン分の食糧援助を最小限行うことにいたしておりますので、その分といたしましてことしは百五十一億円の予算が計上されており、運賃を含めて約二百億円の食糧援助が予算に計上されておるというふうに承知いたしております。
  98. 戸叶武

    戸叶武君 世界で米が豊富に取れたのは、昔の米も麦もですが、メソポタミアの平原と、あれも地殻の変動や気候の変動によって塩水が入り、特に羊が芝生の根まで食べちゃうんで塩が吹き出てしようがない結果になって砂漠化したんでありますが、昔は日本でも南京米というのが主にビルマから来たりあるいはメコン川流域からとれた米なんかが多かったのですが、結局ああいう地帯が騒乱で明け暮れて、フランスなり中国もそれに介入し、あるいはいろんな形においてアメリカもむちゃくちゃをやり、失敗に失敗を重ねていま米のとれた地域というものが、米どころか難民を続出しているという状態があるんで、問題はああいう戦争さえなくさせれば自給のできるところであります。  それから、日本の農林省、満拓、それらの人たちは依然として鴨緑江の河川路における平原で昔のように大規模農業をやったらどうかということになっていますけれども、あの地域日本の軍部があそこに定住した中国人を追っ払って賠償も何もしないで略奪したので、その恨みを買って戦争のときにおける復讐というのが非常に強くて、いろんな悲劇や惨殺があってことしの一月の一日か二日、三日あたりにあの時分の真相というものがされておるし、また江南の太湖の湖畔のデルタ地帯もそうで、太湖なんかはもういまだに日本人が余り行かないのは浙江、あの辺の地帯は、江南の地帯の中でも戦乱になれたところは蘇州のように必ず土地の長老が賄賂を使ってこの土地は由緒のあるところだからここだけは戦火に見舞われないようにしてくれというのでしているからいまだにあるんですが、今度の向こうから日本に帰りたいという人の一人一人の言葉を聞いても、やっぱり子供が気の毒だから私は現地に帰ります。両親さえわかってくれればいいのですという非常に母親の責任感の強い点では日本人世界に比類ないと言われていますが、私は自分の運命というものはあきらめていても自分たちの子供の未来に幸あれという祈る気持ちというものをやはりわれわれはもっと酌み取って、その人たちに技術なり教育なりをしていく設備をするのが大切で、思いつきで八達嶺から燕京から天津、北京の飛行場あたりに外交官だけでもやれるようなゴルフ場をつくりたいなんというのは大衆が許さないんですよ。ああよろしゅうございますと愛想よく嫌みなく言うけれども、いまの中国は大衆がどう受けとめるかということをやはり非常に注意深く見て、そうして政治的安定をつくり上げようとしているんです。  およそいまの新聞あるいは中国通、そういうような人たちが「地下三千尺の水の心たれか知る」という側隠の情を忘れて、昔の香港情報のようにああだこうだ、鄧小平がこうだ、あるいは楚図南がこうだ、あるいは葉剣英がこうだと言っているけれども、ほとんど急所を外れた支那通によって、中国通というより、新しい中国の目覚めに対してやはり教育に全力を注ごうという、未来に対して子供たちに希望を持たせようという大事なことを見逃しているんではないかと思いますが、外務省はいろいろな形において非常に優秀な人々がこのごろは中国関係のエキスパートとして育っておりますが、文化交流というものは生活の中に、心の安らぎの中に宿らなけりゃ本物にはならないと思うんですが、どうですか。
  99. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま先生御指摘になりました国民に根差した協力と申しますか、という点でございますけれども、まず一般論を言わしていただきますと、先生御存じのとおりアジア、なかんずくASEAN、アジア一般についても同じでございますが、に対するわれわれの日本の経済協力は一つは人づくり、もう一つは農業及び農村の開発、それから中小企業とエネルギーという分野に力点を置くということを宣明しておるわけでございます。これはエネルギーはちょっと別にいたしまして、基本的に国民に根差した本当に国民大衆が進歩していくような経済協力をやっていきたいという願望に基づくものでございまして、これは中国につきましても、中国は御存じのとおり七九年ごろ、若干石油の産出量の過大評価等によりまして巨大プロジェクトに走った弊があったわけでございますが、七九年以降はいわゆる調整政策ということで、農業とかあるいは中小企業とか、そういう面によりウエートを置いている政策をとってきているわけでございまして、日本といたしましてもそういう面での協力、たとえば農業につきましては東北の三江平原の開発、調査とか、そういう面での協力を大いにやっているわけでございます。  それから文化交流につきましても、先ほど先生御指摘になりました文化交流というものが非常に大事であるということは言うまでもございませんし、特に中国と日本の間歴史、文化等かなり共通のものを持っておりますので、その面でも近年非常に活発になっております。たとえば日本語につきますと、中国において現在日本語を習得しておる人々が百万から二百万、一説によると一千万近いということでございまして、日本と中国の大衆の間での交流というものが徐々に進んでおるというふうに考えております。
  100. 戸叶武

    戸叶武君 日本と中国なりソ連なりはやはり文化等々なり生活態度の中に非常な違いがあるけれども、比較的日本と中国との間においては相通ずるものがあると思います。しかし、中国のあの西太后なんかを見ても、あの女は目は碧眼であったという話もありますから、要するに芸人の血の流れた崑崙のかなたからでも、少なくとも邯鄲の向こうあたりから来た人でしょうが、結局西太后にしても、自分の栄耀栄華のためならばとにかく死んでも竜宮があるようにという迷信に駆られて、明の十三陵を見せなかったからまだよかったけれどと言うけれども、地下宮殿をつくって中で自分が死んでいったんですが、そういう偏執的な人間の飽くなき栄耀栄華、地獄にまでそれを持っていこうとしたやつに迎合して国を売り、ソ連に対してでもウィッテもひやかしていますが、この李鴻章が物々しく片っ端から賄賂を取ってシベリアにおける帝政ロシアの道を開き、袁世凱がその下請を受けながらいつの間にやら今度は自分が皇帝になろうと、全く腐敗した勢力というものを利用して、日本も加藤高明の対支二十一カ条要求以後においては、イギリス帝国主義、ドイツ帝国主義、ロシア帝国主義と同じような形で中国分割を企てたことに目覚めたヤングチャイナの私は抵抗が生まれたんだと思うんです。  いずれにしても中国は七十年前に完全燃焼して、人民を搾取する、国に憂えを持たないものを倒さなきゃいかぬという民族の辛亥革命なりあるいは国共合作というのは、共産党とか国民党とか、今度もあれでしょうが、そんなイデオロギーや何かじゃない、試行錯誤がいっぱいあるんだ、国のためと思っても間違いはあるんだ、それを克服して民族が一致団結して完全燃焼しなければ、ソ連やあるいはアメリカのヤルタ協定のような少なくとも次の平和条約の前提条件たるものは、他国の主権を無視しないで、他国の領土を奪ったりしないで平和条約の前提条件をつくり上げなければ本当の平和条約にはならないという、ベルサイユ協定以来曲がりなりにでも国際法の理念というものは私は前進してきたと思います。いまのざまは何です。全く国際法の理念を裏切って、そうして私は吉田さんでも岸さんでも頭のいい人だけれども、結局ダレスの前に恫喝されて黒船外交に腰を抜かした井伊掃部頭直弼と同じく国を滅ぼす気概が私は内在していると思うんです。岸さんだって一番最初に行ったときは実に堂々たるあいさつであったが、行きはよいよい帰りはこわい、ダレスにどうやってひねられたのかわからないけれど、行ったときの堂々たるところの主張というものは、帰りには雲散霧消してしまったのであります。  どうぞそういう意味において、日本は過去のことよりも未来をわれわれはかち取るんだというだけの、外交に対しても国の方針に対しても気魄がないと、私はこれは苦労人だから鈴木さんや櫻内さんには何とも言えないし、宮澤さんなんかも、前から見るとずいぶん骨ができてきて腰が座ってきたと思うし、外務省や通産省の人たち、本当に外交や貿易をつかさどっている専門家というのは前と違って、この辺でしっかりしなけりゃ大変だ、なめられたら骨までしゃぶられちゃうぞという気魄が、私は、あの蘭学をやった高杉と吉田松陰が、王陽明学だとかなんとか変なあれじゃなくって純粋な形で海外を見て、死を賭して海外を学んで日本みずからの運命を築かなきゃならない、この百八十度的な発想の転換が、アヘン戦争以来、犠牲は払っても依然として近代国家をつくれなかった中国と日本の違う面はそこにあったと思うんです。今後においては、やはり政務次官の人もりっぱな人であるに相違ないけれども、なれてない、年輪が加わってない、ただ政務次官として外務大臣を補佐するというだけでは議会政治におけるステーツマンというものは生まれてきません。  本来ならばきょうはやっぱり政務次官に質問をし、そうしてそれを通じて細かいところはそれぞれのエキスパートから聞きたいと思いましたが、急を要しております。今後五月から六月へ世界はどう変わっていくか、核に対する不信感、核兵器をなくさせろ、座して圧殺されるよりも、われわれみずからとにかく死を賭しても戦っていくというような空気が中南米にも横溢しております。それを憂えているのが前のメキシコの大統領であり、また二十年間もスウェーデンにおいて平和を保つためにあらゆる努力をしてきた、私は世界の各所から、おっかながっているんじゃどうしようもない、本当のことを言ってアメリカやソ連にも反省を促さないと大変なことになっちゃうぞという機運が世界に充満してきていると思います。そのときに日本がこんな調子で行ったんでは中国でもばかにされちゃいます。中国で浅沼稲次郎君とそれからスメドレーあたりの外人以外に余り人を並べては物を言っていません。大衆がうるさくなって許さなくなったんです。日本の通念で依然として、大衆に公開して事を運ぼうとするような時代に、金と権力に依存すればこわいものはない、ついでに裁判官あたりもひねってしまえば差し支えない、大蔵官僚も。が、大蔵官僚もそうはいかなくなっている。財界だって私は不気味なものを感じていると思うんです。まさに五・一五事件の起きる、血盟団事件、二・二六事件、あの時分に軍部、官僚、財界、すべて国を滅ぼすものであるといって田舎の青年が少壮軍部とともに立ち上がったときのようなこわい気流がいま底辺に流れていると思います、こわい。話せばわかるといったって、ピストルぶち込まれてから雄弁な、説得力の上手な犬養も多数党をまくらにして死んでいってしまったじゃありませんか。原敬だってそうだ。井上準之助だってそうだ。デフレをやりながら片方はインフレをやらなければという、三井と組んでそうしてドル買いをやるというようなあの小泉又次郎なり安達謙蔵あたりの構想で日本が救えたか。私はこわい、本当に不気味なほどこわい。起きてから警告したんでは、火事が済んでから二、三人死亡者が出ましたというのは、プレハブの今日の住宅の火災と死を関連するだけでもって不気味なものを感じないが、それ以上に私はこの危機に対してもっと真剣に謙虚に取り組む姿勢が日本の政治の世界において、外交、防衛の世界において、貿易の世界において起きなけりや、とんでもない、取り返しのつかないことが起きるんじゃないかと思うんで、それだけを、これはしかと国連局長にお願いします。  なまはんかに大臣に言うと、泥をかぶるつもりで一生懸命やっている宮澤さんなんか前とは違ってきた。前には、私が予算委員会で質問したときに、プリベントかあるいはコンテイソメントかとただしたときに、いや、ダレスの言った封じ込め政策ではなく、これはプリベントです。コンテインメントポリシーじゃありません。私が現に経済閣僚として立ち会ったんだから私の記憶には間違いなしという話でしたが、よく見ると、中川ソ連大使なんか条約局長の時代、あの人は正直な人で、中川君あんたその控えを持っているはずだが、メモをおれいま持ってこないけれども、物事は具体的なデータを通じて話し合わなけりゃならないと思うが、ちょっと君持っていたら見せてくれと言ったら、やはりプリベントじゃなくコンテインメントポリシーでした。しかし、私はその時代において、やたらに宮澤さんのような聡明な人に意地悪な揚げ足取りやっても悪いと思っていましたが、今日の宮澤君もやはり総理大臣や外務大臣の苦悩の姿を見て、見ちゃいられぬという形で今後の日本の外交に対して泥をかぶる決意を持ってみずからも進んで積極的な姿勢でやれた人だと思うんです。泥をかぶるというのは金づくりだけじゃないです。責任を持って、どうやって時々刻々に動いてくる世界の動向に対応するかということだと思いますが、どうぞこれは国連局長、一官僚としてでなく憂国の志士として、日本の政治家が本当に体を張って日本の危機と世界の危機を救うような、少なくとも一歩前進し、光を与えるような自主外交を展開するだけの土性骨を持つために腰砕けにならないようにやっていただかれんことを切にお願いします。  私は、いま模索中の櫻内さんやあるいは鈴木さんに物を言うことはできない。やっぱり最後まで苦悩し、刻々に動く世界動きにどう対応しようかということで体を張っていると思いますから、宮澤さんもその点で、私はもとの英知あふるる宮澤さんじゃなくて、やっぱりなめられない、日本人の魂ここにありという井伊掃部頭直弼のような、相手を弾圧することによって内に備えなく腰抜けの外交をやった日には徳川幕府がぶっつぶれるのはあたりまえです。いまの自民党内閣を早くつぶすのには配慮は要らぬ。そのまま自由勝手に行くところまで行かしめよですが、やはり私はこの日本民族の中になめられないだけの、人の不幸を見ちゃいられないだけのれんびんの情が宿っていなけりゃ、世界はだれも日本に期待するところはないと思いますから、しかと憂国の志士になったつもりでひとつ、いまの内閣の中ではまあまあ私は相当な人だと思います。  だれがやっても嫌な世の中だけれども自分の安穏だけを考えずに、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」です。どうぞそういう意味において、一人ぐらいは国のために殉じたというだけの性根あるそれぞれのエキスパートが活発に日本を守っていただかれんことを切にお願いし、彼らを補佐していかれんことをお願いする次第であります。危なくてこのごろはもう目を明いちゃ歩けないような状態ですが、大きな日本の維新です。日本が変わることによって中国も変わります。お互いにけちな考えを持たないで、戦争をやらないでまともに技術協力、文化交流をやりながらじみちにいくならば、日本と中国というのはもっともっと私は伸びる。そういうつもりで日中の問題に対しては、特に西欧の腐れ切った……
  101. 鳩山威一郎

    ○理事(鳩山威一郎君) 時間です。
  102. 戸叶武

    戸叶武君 はい、じゃ終わります。
  103. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) ただいまは戸叶先生から世界の歴史あるいは現在の国際情勢についての貴重な御意見を承りまして、私どもおっしゃった趣旨のように、日本の外交が本当に日本の平和と安定のためになるばかりでなくて、世界の平和と繁栄に寄与できるように重々心がけて努力をしてまいりたいと、かように存ずる次第でございます。  ありがとうございました。
  104. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 午前中にも同僚議員からいろいろ質問をされましたフォークランド紛争につきまして少しお伺いをしたいと思うんです。いまも同僚議員から戦争の悲劇の歴史をるると述べられておりましたが、確かに戦争ほど悲惨なものはございません。戦争ほど残酷なものはございません。経済制裁をやるよりも人命を尊重する平和解決が、このフォークランド紛争についても先決ではないか、こういうふうに考えると同時に、不振な経済状態の間柄であるだけに今回の紛争は本当に痛ましいような思いがします。人命が先としても、また紛争から今日までのお互いの国のその紛争消費額といいますか、その額も相当な被害額になっていると思うんですが、こういうことを考えてまいりますと、これ以上拡大されたらどうなるんだろうかというふうなことが、われわれ敗戦の憂き目を見た国民にはひとしおそれが感じられてなりません。いま戸叶委員のいろんな話から私も何となくこの問題につられたわけでありますが、それが本当だと思うんです。  年前中も私の質問で宮澤外務大臣臨時代理の御答弁の中に、戦後一番説得力があり、世界各国から見ても一つの道を押し通してきたというこの非核三原則のことを指してのお話だと私は思うわけですが、いずれにしましても何とか仲裁ができないものなのかということをまず考えていかなきゃならないのが最初じゃないか、このように思うわけですが、この点はどんなふうにお考えになっておられますか。
  105. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 最近におけるアルゼンチンイギリスとの武力紛争は非常に私どもも残念に考えております。これにつきまして、ヘイグ長官あるいはペルー大統領等もいろいろな努力をしておりますが、当初国連の安保理事会で言われましたように、武力紛争を速やかに取りやめて国連による平和的な解決というものを私どもも期待をし、そういう角度で努力をしておる次第でございます。
  106. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 対アルゼンチン経済対策をどう考えて対処しようとしていくのか、伝えられているとおりのものであるのかどうなのか、この辺のことについてもお伺いをしたいし、また貿易関係やあるいは継続して行われている経済協力事業、民間の信用供与などはわりあいに影響を受けていない現況だと思うんですが、こうした中で、先ほど申し上げました対アルゼンチン経済対策というものに対する政府としての考えはどうしていこうとしているのか、この辺のことをお伺いしておきたいと思います。
  107. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 政府としましては、基本的にアルゼンチンに対してもイギリスに対するのと同様に、直ちに武力行使をやめるようにということを基本的な方針として要請をしているわけでございます。一部西欧諸国等ではアルゼンチンからの輸入禁止措置をとっておりますけれども日本は従来のアルゼンチンとの関係等も考慮しまして、輸入禁止措置というふうなことは現在のところはとっておらない状況でございます。
  108. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 ある面においてはECのアルゼンチンに対する輸入制限を支持していくとか、あるいはその効果を阻害してはいけないとか、公的輸出信用供与の新規申請は事実上受けないというような経済措置を政府はとっていることから考えまして、いまの御答弁はどちらがどうなのか、その辺のことをちょっと念を押したいと思う。
  109. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) お話し申し上げましたように、現在におきましては日本は輸入禁止措置をとっておりませんが、EC諸国がやっておる措置日本が妨害するような結果になることはまた行き過ぎでありますので、日本態度としては輸入禁止措置をとらないけれども、それに便乗して日本がうまいことをやるというようなことは、国際社会の通念から適当でないということを申し上げているだけだと考えております。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕
  110. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それでは、経済制裁には加担しないでわが国独自の行き方をやっていくんだと、こう理解してよろしいんですか。
  111. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) そのとおりでございます。
  112. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうしますと、第二十三回海外日系人大会に出席するため来日している在アルゼンチン日本人会会長の宇野文平氏が首相官邸で開かれたレセプションで総理に対して、「日本政府アルゼンチンに対する経済制裁などに加担することなく、不偏不党の立場を貫く独自の立場紛争仲裁に乗り出してほしい」と要請したというふうに伝えられておるんでありますが、また、大会では同じような趣旨の動議が承認されたということになっているんですが、このことについてどのようにこれをとらえておられるのかお伺いをしたいと思います。
  113. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 私どももただいまお話がありましたように、第二十三回海外日系人大会に来会されましたアルゼンチンの在留邦人代表がそのようなことを述べられまして、政府に対してもそういう要望をされたということは承知をしております。  いま申し上げましたように、要望はアルゼンチンに対して経済制裁を加えないでほしいということが中心であったと理解をしておりますが、私どもも先ほど申し上げましたように、現在日本アルゼンチンに対して経済措置をやっておらない、やる考えがないということをお答えをしておると考えております。
  114. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 確かに、この大会で議長を務められた田中龍夫自民党総務会長の当時の談にもあるように、「戦後の日本を支えてくれた中南米諸国と日系人社会には、日本政府も慎重に配慮しなければいけない」、こう述べられておる。こうであるべきだと私も思います。  それから、いま御答弁がありましたように、経済制裁をしない、三万六千人の在アルゼンチンの方々は不偏不党の立場を貫く独自の立場紛争仲裁に乗り出してほしい、こういうふうに要請されておりますが、これをどのように受けとめてやられようとするのか、この辺も伺っておきたいと思うんですがね。
  115. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 先ほど来お答え申し上げますとおり、日本アルゼンチンイギリス武力紛争が一日も早く終えんをすること、両方ともが武力行使を取りやめることを強く要望しておる現状でございます。  この紛争の処理につきましては先ほど来申し上げますとおり、国連を中心にしてこれが速やかに収拾されるよう、日本も努力もし期待をしておるところでございます。
  116. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私は、いまOECDに行かれている外務大臣もこの紛争について当然諸外国の方々とお話し合いをされていなきゃならないと思うんです。仲裁をしていこうというような話が出てもいいんじゃないかというぐらいにも思うわけです。それから今度はサミットもございます。こういうときにおける日本立場から、はっきりと言うべきことは言って、そして一日も早く紛争解決ができるような考え方を堂々と話し、締結をされていくような働きをしなきゃならない、それが大事じゃなかろうかと思うんですがね。この点を一言伺って、この問題については終わりたいと思いますが。
  117. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 先生のお話しになりました御趣旨はまことに同感でございますが、外交関係のことでございますので、どういうタイミングにどういう方法で外務大臣が発言をいたしますかにつきましては具体的になお検討しながら対処していきたいと考えております。
  118. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これからサミットもあるわけです。ですからそういう場においても、この日本の経験した戦争の悲惨というものを、核の恐ろしさというものをわからしていくためにも、はっきりと諸外国の首相らに話をすべきだと私は要請をしているわけです。これはそういうことを要請してやめます。
  119. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 私から一言国連での動きを補足説明いたしたいと存じます。  五月六日に事務総長から一つの調停案をアルゼンチンイギリスに提示いたしまして、目下国連事務総長が両側と精力的にいま協議を行っているところでございますけれども、わが方の国連代表部の案を西堀大使からも五月一日に、これは五月六日の前でございますけれども、一日に、国連としてぜひ動いてくれ、日本はいま現在理事国でございますから理事国としてできる限りの支援はするということで西堀大使から事務総長に申し入れを行っておりますし、今後とも国連事務総長との協議あるいは関係国との協議を通じまして国連の側面から全力を挙げてまいりたい、こういうふうに考えております。
  120. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまの答弁を聞いておりましても何かもう少し押しが足りないみたいな感じがしてならないわけです。より積極的に主張すべきは主張していくべきだと私は思うわけです。この点を申し添えておきたいと思います。  次は、インドネシア共和国との間の協定の件でございますが、先ほど同僚委員の方からいろいろ質問がありました中で、中断をされているソ連と中国とのその中断をされている理由というものも、私は前回の当委員会で取り上げてお伺いしましたんですが大分日がたっておりますが、この見通しはどんなふうに考えられておりますか。
  121. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま先生の御質問は中国との間の租税協定締結についてと存じますけれども、中国との間の租税協定につきましては、昨年の一月と六月の二回にわたって両国政府間で協議を行いました。さらに本年の四月の二十日から二十二日まで北京で第三回目の交渉を行っております。今後の見通しにつきましてはいまだはっきりいたしませんけれども、中国側としては第四回はことしの秋ごろ開催したいという希望のようでございまして、できるだけその線でまいりたいと思います。すなわち中国との間の租税交渉につきましては交渉はおおむね順調に取り進んでいるというふうに考えております。
  122. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 趙紫陽首相も見えることでありますし、その辺のこともお話し合いができるんだろうと思います。  それからまたソ連の方はどうですか。
  123. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 日ソ間の租税条約締結交渉につきましては、昭和五十五年の十月に第一回目の交渉が行われております。その後、ソ連という社会主義体制の特異性もございますので、先方の租税体系が必ずしも明確でない面もございますので、そういう実務的な先方の租税をめぐる法体制等についても実証的な詰めが必要だということで、若干時間がかかっておりますけれども、目下外交チャンネルを通じまして意見交換をなお継続している段階でござ、います。そして第二回交渉をいつ行うかということにつきましては、またこれは外交チャンネルで同意をすることになっておりますけれども、目下のところまだ第二回交渉をいつ行うかということについて明確なめどが立っているわけではございません。いずれにしても、交渉はそういう形で外交チャンネルを通じての実務的な面について意見交換がなお行われているという段階にございます。
  124. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 七月ごろと言われたこともあるんですが、その辺どうなんですか。
  125. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 具体的な日にちにつきましては外交チャンネルを通じてなお協議することになっておりますけれども、目下のところまだ具体的に七月というような日程が合意されているという段階にはございません。
  126. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 ちょっと問題をかえて、櫻内外相がシンガポールで開かれるアジア諸国連合拡大外相会議に六月の十七日、十八日ですか出席されて、帰途マレーシアとかインドネシアを訪れられるというふうなことが報道されております。それからまた、八月中旬にはインド、パキスタンへ行かれるというふうにも言われております。こういうスケジュールについては確定をいたしておりますか。
  127. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 櫻内外務大臣は、いま先生御指摘のように、シンガポールで開催されますASEAN拡大外相会議の後マレーシアとインドネシアを訪問なさいます。これはほぼ確定しております。ただその後、御指摘になりましたインド、パキスタン八月訪問ということにつきましては、その線でいま考えておりますけれども、まだ確定しておりません。
  128. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 櫻内外相が目印協会の会長であるということですね。それで協会を設立して今度八十周年になるんだということで、こういった面からも八月ということが言われているんですが、その辺のことはどうなんですか。
  129. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 目印協会はその八十周年記念を八月十五日に祝う予定でございます。御指摘のように櫻内外務大臣は目印協会の会長をなさっておりまして、その関連からもインドを訪問したいという御希望はございますけれども、インドを御訪問なさいますのはあくまで外務大臣としてインドの重要性ということに着目しての御訪問でございます。いずれにしましても、いまだインド訪問につきましては、その案がありまして内部で検討中でございますけれども、いまだ確定した日程ではございません。
  130. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そのインド、パキスタンは別としても、拡大外相会議のあとの帰途に寄られるところの目的というのはどういうことが大きな目的になっていますか。
  131. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) インドネシアとマレーシアにつきましては、インドネシアはいまさら申すまでもなくわが国にとりまして第二番目の投資国でございますし、それから輸入国といたしましても三番目というふうに経済関係はきわめて密接でございます。と同時に、いろいろ問題もございますし、この際インドネシアの首脳と話し合うということは有意義であるという考えでございます。  マレーシアにつきましては、とりたてた案件というものはございませんけれども、マレーシアのマハティール首相はいわゆるルックイーストという政策によりまして、日本に学ぶと申しますか日本に接近するという政策をとっておりまして、きわめていろいろな面で活発に日本との関係緊密化を図っておるわけでございます。したがいまして、この関係をさらに一層緊密化させるという目的をもちまして外務大臣がマレーシアを訪問される予定でございます。
  132. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 インドネシアは御存じのように総選挙で与党のゴルカールが勝利をおさめたということで、スハルト現大統領が四選の道を開いたというふうにも言われております。いまのお話を踏まえながら考えますと、ある面においては経済のお互いの交流ができていると言われている反面、わが国への原木の輸出禁止というものが打ち出されてきているんじゃないか、もう一つはエビのトロール漁ですね、これらも禁止してきたなんという問題も起きておりますし、申し上げるまでもなくわが国の木材の輸入のほとんど半数近いものをインドネシアから輸入しているような現況でございますし、インドネシアばかりじゃなくて今度はマレーシアの方もそういう動きがあるというふうに聞いているわけですが、この点についてはどんなようなお考えですか。
  133. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) インドネシアについては先生御指摘のとおり丸太の輸出禁止の問題がございます。マレーシアにつきましても、すでに一九七二年以来マレーシアは半島マレーシアからの丸太の輸出を事実上禁止しております。東マレーシアのうちのサバ州からの輸出については輸出割り当て制度がとられております。それ以外のところには特に割り当てがございませんので、わが国はマレーシアから丸太の輸入を行っておる次第でございます。
  134. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 インドネシアの原木の輸出禁止、それからエビのトロール漁も禁止されるというそのことから考えてみて、またそのほかにもあるわけです、経済問題としては。そういう何となくぎくしゃくし始めているというような感覚を受けてならないんですが、こういう点について外務大臣が行かれるときには十二分に話し合いなされるんだと思いますが、この点のことをひとつ大臣によくお話をしていただきたいということを申し上げておきたいと思いますが、政務次官いかがですか。
  135. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) インドネシアのエビのトロール漁業に対する制限がだんだん強くなってきておるということは承っております。また、原木の件につきましてはただいま先生から承りましたので、どういう事情か私も詳しく承知しませんけれども、先生のお話の御趣旨を、外務大臣がインドネシアを訪問します場合にできるだけ話し合いができるように大臣にも報告をいたすつもりでございます。
  136. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 次は、投資促進及び保護に関する日本国スリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定についてちょっとお伺いしますが、昭和五十二年に署名されたエジプトとの投資保護協定締結されましたね、その協定の意義がわが国との友好関係にどんな形であらわれてきたのか、具体的な例があればお示し願いたいと思います。
  137. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) エジプトとの協定昭和五十一年末に署名されたわけでございますが、この時点におきますわが国の対エジプト直接投資の累計は六件でございます。金額にいたしますと十九万一千米ドルであったわけでございますが、その協定が発行いたしました昭和五十二年度から昭和五十五年度の四年間においてこの間に七件、さらに新規の投資、金額にいたしまして一千五百三十八万ドルの対エジプト投資が行われておるわけでございます。これが日本とエジプトの投資保護協定によってもたらされたものであるのかどうか、この点はつまびらかにいたしませんけれども、この投資保護協定促進剤になったということは言えるかと存じます。
  138. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 内容の御説明を願えませんか。
  139. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) エジプトに対するわが国投資事業は、石油開発公団に対する投資、それから製薬関係、東京海上火災保険、日本鋼管、これは鉄筋用の棒鋼をつくる会社でございますが、等でございます。
  140. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうすると、総合計では何件、額にしてどれくらいになるんですか、五十一年からのあれは。
  141. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 先ほど申し述べましたように、昭和五十一年度時点までの累計が六件、十九万一千ドルでございます。その後の昭和五十二年度から五十五年度の四年間において七件、金額にして一千五百三十八万ドルでございます。
  142. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 この種の協定としては今回が二番目のものであるということでありますが、この種の協定がほかのどのような国との締結が予定されておりますか。
  143. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) このような投資保護協定が結ばれるようになったのは、わが国開発途上国に対する投資案件がかなりふえてきて、実質的に額も大きくなってきたということ、そういう意味投資保護の見地からカントリーリスクという観点もありまして、非常に関心が高まってきたということが背景にあるわけでございますけれども、今後このような投資保護協定締結することによって投資の環境を整備してほしいという要望はかなりございますので、向後順次各国とこのような協定締結していくということになると思います。現在、投資保護協定について話が行われておりますのはASEAN諸国、それから中国でございます。
  144. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 この見通しはどうなんですか。
  145. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 現在いずれも交渉中でございまして、この締結時期等について見通しを申し述べる段階にないわけでございますけれども、いずれもすでにいろいろ話し合いを始めております。マレーシアとタイのいずれの国にも日本の素案を提示いたしまして、すでにそれぞれ二回の交渉をしておりますし、シンガポール、フィリピン、中国につきましてはそれぞれ一回交渉を持っております。
  146. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 この種の協定が行われますと、相当わが国にも比重がかなり大きくなってくるようにも思えますし、またそれなりの責任が生ずるんじゃないかとも思うわけですが、その辺のこと等の考え方もこの際明らかにしておかなければならないと思いますが、その辺のお考えのほどを聞かしていただきたいと思います。
  147. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) わが国の直接投資は他の先進国に比べまして若干出おくれという面がございますけれども、一九七〇年代に入りまして直接投資が東南アジア等を中心にかなりふえてまいったわけでございます。直接投資は、単に資本の移転のみならず、直接投資でございますので、人の移動、それから技術あるいは経営のやり方等々、多方面での移転を行うことが可能だということで、現地におきましても一般的にこれを歓迎するという風潮にございます。もちろん直接投資が進んでいくに従いまして現地との摩擦というようなものも生じ得るわけでございますけれども、これを克服いたしまして現地に溶け込んで、真に現地の役にも立ち、またわが国の経済の役にも立つというような直接投資をこれからいよいよ推進していく、そのために投資保護協定投資環境の整備という見地から重要であるというふうに考えております。
  148. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 間々摩擦のようなことも伺っているものですから、いま念を押して聞いてみたんですが、ともあれこの協定については、いまASEAN諸国の名前を挙げられましたけれども、そのほかのあれはございませんですね。
  149. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 当面具体的に予定に上っているのは、先ほど申し上げましたように、中国、ASEAN諸国でございます。今後順次また必要に応じて各国協定締結交渉を行っていくことになると思いますけれども、現在のところ、具体的な日程には上っておらないわけでございます。
  150. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 次は、南極地域動物相及び植物相保存に関する法律案につきましてお伺いをいたします。  この件につきましては同僚議員の方から先ほどいろんな角度で質問がありました。私も同じような考え方を持ち、危惧をしていた一人なんですが、結局南極大陸というものに対して諸国がどういうふうなとらえ方をしているのかなということが、何よりも腹の中、胸のうちといいますか、どういうふうなとらえ方をしているのかなということが一番心配なわけです。で、わが国の場合はどういうふうなことで、終始三十年間の条約の間、それからまたさらにその先も同様な考え方で臨んでいくのかどうなのか。
  151. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 宮崎先生の御指摘の点、私は三点に分けて御説明できるかと思います。  一つはやはりこの南極地域というものを国際紛争の起こらないような平和な地域にしておかなくちゃいけないという点が第一点だろうと思います。  それから第二点は、これはやはり人類にとりまして恐らく最後に残されたいわゆる汚染されてない地域なんで、この南極というものの環境をできる限りいまのままの姿で残していきたいという、つまりその環境保全的な観点、これが二つ目であるかと思います。  それからもう一つは、やはりこの南極におきます科学的な調査等を国際協力のもとで進めていきたい。  こういうふうな三点に、南極に対する姿勢と申しますか態度というのは集約されるんではないかと、私はこういうふうに考えております。
  152. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そこで、各国が上陸して根を張って、それぞれの地域でそれぞれの立場で今日まで研究なり作業を続けてきておられると思いますが、諸外国、特にソ連はどういうふうなことを主体にやっておられるのか、その辺のことを伺いたいですね。
  153. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 現在ソ連が、現在と申しましてもこれは実は一年前でございますけれども、ソ連は南極大陸の合計七カ所に基地を設けておりまして、二百八十八名の越冬隊員がその七カ所のソ連の基地にいるわけでございますが、そのソ連観測隊のやっておりますことは、これは大体各国とも比較的似たり寄ったりでございますが、気象の調査、超高層物理の調査あるいは地球物理の調査、こういったことを重点に置きまして、それと同時に、海洋生物の調査というものも行っていると、こういうふうに承知しております。
  154. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 英国もかなりあるようですね、それからアメリカ、これらのところも同様なものですか、それとも大陸の地帯によってはそれぞれ私は中身も違ってきているんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうか。
  155. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御指摘イギリスにつきましても、四カ所、五十五人の調査隊員で、調査項目というのは、先ほどソ連について申しましたこととほぼ同じ気象であるとか地球物理であるとか、あるいは海洋生物等々で、調査内容自身はほぼ概略的には同じじゃないかと、こういうふうに考えております。
  156. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 具体的にはなかなかわからないんだろうと思いますね。それは無理ないと思うんですけれども昭和基地のことから通じての判断が一つあるんだろうと思うんですけれども、鉱石類なんかどうなんですか。
  157. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御指摘のような昭和基地はわれわれの観測でございますから、それから類推しますと、恐らくそういうことも言えるんではないかと思われます。
  158. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 四月二十日に第二十三次の南極観測夏隊、前晋爾隊長らが帰国されました。その主なる作業内容といいますか、それらのことをちょっと御説明願いたいと思います。
  159. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 私専門家じゃないので、ひとつ項目だけで御説明申し上げたいと思うのでございますけれども、現在、昭和基地とみずほ基地、二カ所に観測地を設けておりますけれども昭和基地につきましては、たまたまこの昭和基地は先生御承知のとおり、南極オーロラの真下にある地点でございまして、その意味で超高層物理学、その関連で気象、地球物理学、地質調査、それから昭和基地は海の近くでございますから海洋生物学、こういうふうなことを、他方みずほ基地では、これは陸地にあるものでございますから、雪氷学、それから超高層物理学といったようなことが調査項目に挙がっていたというふうに承知しております。
  160. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 今度は二十三次の越冬隊ですね、越冬隊が星合孝男隊長さんが行っておられるわけですね。きょう本当は文部省の方に来ていただきたかったんですが、外務省の方で答弁十分間に合うという話を伺ったものですから結構ですと言ったのですが、これから太陽のない冬を迎えるわけでありますが、最近の何か情報といいますか、そういうふうなことの連絡がございますか。  それからもう一つ、前のときに南極育ちの魚を九匹生け捕りをしてきた。名前は昭和ギスとハゲギス、五匹と四匹、二十五年ぶりに持ち帰ったということなんですが、これの生態はいまどんなふうになっているのですか。
  161. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) まことに申しわけございませんけれども、私その方面の知識を持ち合わせておりませんので、追って先生に直接御説明さしていただきたいと思いますが。
  162. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 では、先ほど言いました越冬する方々は、いまちょうど日照時間が午前九時から午後三時まで約六時間。六月から太陽のない冬に入るということなんですが、三月には悪天候でブリザードが来襲して雪の降った日がずいぶんあったということなんですが、四月に入っても同じようにブリザードに襲われたということで相当の苦労をされているようでありますが、特にことしの越冬隊というのはもうその時分から苦労をしているわけです。ですから、雪氷研究グループなんかには相当な困難な道だろうと思うんですけれども、そういうことを考えますと、御苦労している方々が、私は北海道に住んでおるものですから、湖が凍って流氷なんか来ますと、砕氷船で割って出ていった覚えが何回かあるわけですが、それは大変なことです。北海道でさえ氷を割っていく砕氷船に乗っていきましても、割っていくけれども後ろにまたすぐ流氷がかたまっていくというふうなことから考え合わせまして、進むについても退くについても容易じゃないということをあんな小さなことで体験してみてもわかるわけなんですけれども、ともあれこうしたところで活躍をされているということ、これは大きく私は称賛をしたいと思います。  いずれにしましても、先ほどお話がありましたように環境保存といいますか、平和でしかもこれから大きな世界資源にもなり、それぞれの国ではそれぞれの立場開発されてくるということになりますと相当な物資といいますか、科学技術の発達によっていろんなものが生まれてくると思うんです。そういうようなことを考えていきますと、ここしか残っていない大陸に各国が力を入れるというのは、御答弁にありましたように、各国が本当に何のてらいもなく自然の開発をしていくんだということでお互いの技術交換をしていくという場がどのように今後行われていくんだろうか。この南極大陸でやっていることを学者グループが国際会議といいますか、学者会議を開いてお互いのやっていることを話し合いをするようなそういう場を呼びかけて、そしてつくり上げていって新しい意味南極大陸の開発というものを考えていかれたらどうなのかということを私は思うわけですが、こういう点については私は存じませんが、何回かそういう技術的なこと、科学的なことの話し合いをなさったかどうか、その辺のことをお伺いをしたいと思います。
  163. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 宮崎先生御指摘の点全くそのとおりだと思います。これまでにも専門家同士の会合は行われていると存じておりますけれども、今後ともこういった会議で情報交換をし、よりよい観測結果、科学調査のためにやっていくべきだと、私も全くそのとおりだと思っております。
  164. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 米国の旅行業者の使用船が二隻通っているということなんですが、この辺の事情と、そして何人ぐらいこの大陸に渡っていられるか、その辺の事情も伺っておきたいと思います。
  165. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) アメリカ旅行会社は二社ございまして、それぞれ一隻ずつ船を持っておるわけでございます。一つの会社の方は乗員が九十二人で、一年間に大体五回南極への観光旅行を行っているわけでございます。それから、他方のもう一つの会社の方は百九十三人の収容能力がある船で、年に四回ほど南極ツアーを行っておるわけでございます。一つの方はニュージーランドから出て南極へ行ってまた帰ってくる、こういうようなことでございます。他方もう一つの方は、南米大陸から出て南極へ行ってまた帰ってくる、こういうふうなことでございまして、仮に船が満席になりますと大体一年間に観光旅行客は千人ぐらいいま南極へ行っているのではないかと推算されております。
  166. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 日本人の方もずいぶん行かれているということを聞いているわけですが、だんだんふえているということも聞いているのですが、大体年間何人ぐらい行かれて、費用がかなりな費用だというふうにも聞いておりますが。
  167. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 実は、日本で先ほど申し上げました二社の旅行会社のエージェントが一社ございまして、そこの調べによりますと一年間に大体二十人ぐらい両社のツアーに乗って行っているというふうに承知しておりますが、費用の方は大体百五十万から二百万円ぐらいだというふうに承知しております。
  168. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そこまで行ってまた行くんですから相当な費用になると思うのですがね。出発点から渡って行ってそれだけですから、相当な費用がかかっている。行く方々は大体お医者さんが多いというふうに聞いているんですが、生態学の問題なんかもあるんじゃないかと思って、そういうふうな方々が行っているというのは聞いているんですが。
  169. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) そのとおりのようでございます。大体お医者さんが非常に多いということのようでございます。
  170. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間が参りましたので、まだもう少しお伺いしたい点がありましたのですがこれぐらいでやめたいと思いますが、いずれにしても、政務次官、いま質問答弁やりとりをやりまして、南極大陸というものは世界各国が相当な見方をしているわけです。したがいまして、これがあくまでも平和なフェアな状態でいくべきだと、こう思うわけですが、あくまでも先ほど局長から答弁のありましたような形のままで推し進めていけるように、ひとつ呼びかけていただきたいことを申し上げたいと思います。
  171. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) ただいま先生のお話がありましたように、南極大陸が平和であって汚染されないで、また、科学的な調査ができますような方向に今後とも努力をしてまいりたいと思います。
  172. 立木洋

    ○立木洋君 南極地域の動物と植物との保存に関する法律ですが、これは一九六四年のブリュッセルで開催された第三回会議の勧告によるものだというふうに記憶しておりますが、そうすると、それから十八年たっているわけですね。それで承認国の状態を見てみますと、日本承認するのがほとんど最後で、また、そのために結局十幾つに上る関連の勧告についても未承認のままだというふうな状態というのは、これはどうしてそういうふうになっているのか、その点の説明をまずお尋ねしておきたいと思います。
  173. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御指摘のとおり、まさに勧告が採択されましてから十八年たっておりまして、全く恥ずかしい話でございますけれども協議国会議と申しますか、その入っております十二カ国のうち、たしか一昨年にオーストラリアが承認いたしましたから、日本が十二番目になっておるわけでございます。この点、こういうふうな事態になりましたこと、非常に申しわけないというふうに思っております。ただ、なぜこういうふうになったかということをいまから言ってもせんないことかもわかりませんけれども、事情は二つばかりあったことを御説明させていただきたいと思います。  一つは、南極の勧告措置を実施というか承認しますのには国内法が要るということでございまして、その国内法につきまして、南極というきわめて遠いかつ主権の及ばないところでの日本国民の行動というのを規制する、どうやってその行動というかこの法律を担保していくかという法技術的な問題があった、それに非常に苦労したという点が一つございます。  それからもう一つは、実は南極地域というものを包括的に管轄しておる役所というのが日本にはないわけでございまして、たとえば、南極動植物でございますと農林水産省、それから、ものを殺したりあるいはつかまえたりしたものを持ち込んできたときの税関では大蔵省、罰則をかけるときは法務省、環境保全につきましては環境庁と、こういうふうに部分的部分的に分かれておりまして、そういうふうな点から、以上申し上げた二点が非常にひっかかりまして結局時間がかかったわけでございますけれども南極条約を実施する、それから主権の及ばないところでの日本国民の行動を規制するという観点から、最終的に外務省がこの法律を所管することになったのでございますけれども、いわば普通の外務省の職務からいきますと非常に異例なことでございまして、そういうふうなことに非常に時間がかかってしまったわけで、この点は繰り返しになりますけれども、申しわけないと思っておりますが、幸いにして今回何とか法案がまとまりまして御審議いただいているのでございまして、ひとつ、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
  174. 立木洋

    ○立木洋君 これだけのあれですから十八年間もかかるというはずはないわけで、結局やはり外務省でやることになったわけですからね、いろいろとこういう条約が提起されて承認するまでの間、非常におくれてやはり国際的ないろいろ批判を浴びるということもいままでもあったわけですから、このこともひとつ、今後の注意していく一つのあれとしていただければいいと思いますが。  それから、この第四条のいわゆる適用除外の条項のところに「科学的調査のために行う行為」については、先に挙げた第三条の第一項の一、二、三号の点についての禁止行為を除外する、というふうになっていますが、これはどういうお考えなんでしょうか。
  175. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 第三条でいわゆる南極動植物とかを殺したりあるいは採取したりしてはいけない、あるいは動植物南極に持ち込んではいけないと、こういう禁止規定になっているわけでございます。しかしそうは言いましても、特殊なケースだけはこれは許していこうということで、特殊なケースがこの第四条に列記してあるわけでございますが、この中で、まず国が行います南極観測事業、これは先ほどの宮崎委員からの御指摘の観測隊員のいわゆる科学調査に従事する者、したがいましてこれは実は観測隊の観測隊員のみに縛っておるわけでございます。したがいまして、船の乗組員等は除外されておるわけでございますが、観測隊員の科学調査だけはこれは除外しよう。  それからもう一つ、これは監視員の点は若干割愛いたしまして、いわゆる学術研究とか博物館資料等々の本当にそういった必要な観点から採取したりあるいは殺したりする者につきましては外務大臣の許可を受けて適用除外すると、こういう二つの適用除外があるわけでございます。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 その言われる意味はわからぬわけではないんだけれども、たとえば南極でこういう動物や植物等の保存の問題が問題になってきたのは、やはり南極における調査活動が非常に広範に行われるようになってきて、そのために環境を破壊していく、それを守らなければならないという趣旨からやはり問題になってきたことだと思うんですね。  そうすると、外国のいろいろな内容を見たり話を聞いたりしてみますと、やはり科学的な調査を行う場合でもいわゆる綿密にこういう場合にはしてはいけないとか、こういう場合にはもっと注意しなくちゃいかぬだとか、いろいろな細かい規定が外国の場合にはあると思うんですよ。だからこの点については、余り大ざっぱ過ぎると、結局は当初そういう環境破壊を阻止するということのためにやられる精神からこの勧告を受けることになるわけですから、そういう点をもう少し綿密にやっていただいた方がいいのではないかというふうに考えるのですが、いかがですか。
  177. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 国が行います観測隊員の科学調査につきましては、これは現在までのところ全員が国家公務員であるわけでございますが、その推進本部の中で部内規律を実はつくりまして、すでにこういうものがあるわけでございますが、この中に実は勧告措置の内容をほとんど盛り込んでありまして、これを遵守するようにすでに措置はとっておるわけでございます。
  178. 立木洋

    ○立木洋君 その部内規律もちょっとお話を聞いたんですが、やはりそれは外国でこの条約に基づいて、こういう場合には禁止するという具体的な措置ではなくて、いわゆるそのときそのときの話し合いによって問題が処理される範囲というのが非常に大きいんじゃないかという感じがするので、それは答弁要りませんが、よくもう少し研究していただきたい。これは国内でも開発の問題と環境保全の問題とはいつも衝突するわけですね。この場合にどうするかというやはり詳しく具体的に決めておかないといろいろトラブルが起こるわけで、そういうことが結局勧告を受けておきながらも、引き続いてやはり国際的な批判を受けるようなことになればこれは何にもなりませんから、そういう点はやはり注意していただいた方がいいんじゃないかということだけ申し述べておきたいと思うのです。  それから次に、スリランカの投資保護協定の問題ですが、これは企業が外国に投資する場合、やはりその投資先の経済的な主権は尊重されなければならないということは、これは当然のことだろうと思いますがいかがでしょうか。
  179. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先生御指摘の点は当然でございまして、この協定におきましても「各締約国は、関係法令に従ってその権限を行使する権利を留保の上」ということを第二条でうたっておりまして、もちろん投資につきましては最恵国待遇、内国民待遇等の保護を与えるわけでございますけれども、それが関係法令に従って行われるということを明確に規定している次第でございます。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 これは海外にいろいろ投資していく場合に当然その国の主権が尊重されなければならない。この点に関して言いますと、これは二十九回国連総会の中で問題になりましたように、「諸国家の経済権利義務憲章」が採択されたわけですね。日本は残念ながらこれは棄権しておる。この第二章の中で取り上げている「天然資源の恒久主権、民間投資、多国籍企業」、この第二条の一項、それから二項の(a)、(b)、(c)、これは全部日本政府は反対したのです、各項目ごとに。これを見てみますと、投資の問題に関してはやはりその国の主権を尊重する観点から、外国投資に対する規制の問題だとか、または特権的待遇を与えることを強制されてはならないだとか、あるいは多国籍企業の活動の規制の問題、それからその主権の十分な尊重、多国籍企業は受け入れ国の内政に干渉してはならないだとか、あるいは国有化し、収用し、またはその所有権を移転すること、その場合に妥当な補償を支払わなければならないなどというようなことが決められているわけですが、この精神からいくと、このスリランカとの投資協定というのはどういう関係になるんですか。これに反対した日本政府立場からいけばどうなるんですか。
  181. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先生御指摘の経済権利憲章の中で、具体的にいろいろな先生御指摘の点が盛り込まれておりますけれども、これは開発途上国側からの一つの主張として当然それなりの評価を受けてこれができたわけでございますけれども、これを具体的にそれでは二国間の投資関係に当てはめるとどういうことになるかということだろうと思うんでございますが、そうなりますと、やはりこの権利憲章に盛り込まれたそのことをそのまま適用されるとすると、それは投資をする側に立ってみますと非常にその権利が不安定になるという側面があるわけでございます。そういうことがございますので、ここに書かれていることそのままが実行されることは、むしろ投資促進に役立たないという見地がございましたので、日本政府としてはこれは行き過ぎではないかという面がございましたので各項には反対したということでございます。  それで、これが具体的にスリランカ側と交渉されました場合には、やはりスリランカ側といたしましても、安定的な基礎の上に日本の直接投資が行われるということが雇用創出効果等の観点から望ましいということで、スリランカ側が他国と結んでいる条約等をも考慮に入れて現在のような規定に落ちついている、そういう意味では相互の利益の均衡ということがこの協定の形で図られている、こういう関係に立っているというふうに考えられます。
  182. 立木洋

    ○立木洋君 何も私は投資そのものに反対しているんじゃないんですよね。平等互恵の経済開発日本にも当然利益がないと投資する意味がありませんから、それはもちろん何もそれを否定しているわけじゃないけれども、いろいろと見ていきますと、エジプトの場合の投資協定と比べてみるとこちらの方が、日本側がより多く主張しているような点があるんではないかという懸念もあるんですね。  それでちょっとお伺いしたいんですが、第五条の三項のところに言う、つまりここで言う補償の場合ですね、「収用、国有化若しくは制限又は収用若しくは国有化と同等の効果を有するその他の措置」ということが言われていますが、この点ちょっと説明していただきたい。
  183. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) ここにございますような「収用、国有化」というのは、わりと明確な概念だろうと思うわけでございます。収用というのは、当然により広い概念で、強制的に公共利益のために財産だとか権利等を国、公共団体あるいは事業者等に取得させたり、あるいはそういう権利を消滅させたりということでございますし、国有化というのは、特定の目的のために国家にそれを帰属せしめるという行為を一般的に指すものだと思うのでございますが、「制限」というのが入りましたのは、一般的に国有化、収用とはいかないまでも、一時的にあるいは部分的にそのような財政権等を使用を不可能にするということで、外国の投資家が事実上その企業を継続することができないようになるような制限をいろいろ加えられることがあり得る、そういうことを念頭に置いてこのような規定も入れられたわけでございます。  たとえばここで書いてございますように収用、国有化等と同等の効果を有するような措置あるいは制限というのがどういうことになるかということにつきましては、たとえば現地化を非常に極端に進めるとか、外資政策によって特定の事業活動を非常に困難にするというようなことであるとか、そういうようなことでその現地での企業活動が結局できなくなって撤退を余儀なくさせると、これは直接収用、国有化にはあたらないにしてもそのようなことがあり得るので、そういうような場合にはやはり投資家の利益というものは保護されなきゃならないという見地からこのような態様の規定が設けられたわけでございます。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 たとえばその企業が、環境汚染なんかの面で非常に環境を破壊するというふうな状態が出てきて、それで一定の間生産停止して調査をしたり、そのための損失を受けるだとかいうふうな場合も制限の中には入るんですか、そういうような場合も。
  185. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 具体的にこの「制限」の内容がどの程度までいったらこの規定の適用の対象になるかという点は、やはり個々のケースに従って判断されなければならない問題だろうと思います。ですから、環境基準の見地からいろいろな調査が行われるという場合に、それが合理的な範囲内であって、通常の企業活動の一時的停止的なもので、これは一般的に適用されるわけだろうと思いますけれども、合理的な範囲のものであれば適用されないという場合もございますでしょうし、あるいはかなり長期にわたって企業活動が阻害されるというような場合には、この規定に従って処理されなければならない事態があるということもあると思いますので、個々の事例に従わざるを得ないということだろうと思います。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 これは運用によってはやっぱり相手の主権にかかわるようなことも出てくるんじゃないかというどうも憂慮があるんですね。  それから、この同じ項目の中で、「支払の時までの期間を考慮した妥当な利子を付したものでなければならない。」とあります。これはエジプトに対する投資協定の場合にはなかった条項だと私は思うんですが、たとえばこの「利子」が、正当な交渉がやられて期間が長くなったという場合なんかの利子までまた請求するのかどうなのか、そこらあたりはどうなっているんですか。
  187. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) この五条三項の規定には、そのような国有化等の場合があったときに補償が行われるという原則を定め、そしてその補償は遅滞なく行われなければならないということが決められているわけでございますけれども、当然のことながらこのような補償については、最終的な結論を得るまでにはある程度の時間を経過するということはやむを得ないことだろうと思いますが、このように遅滞した場合には利子を払うという制度を決めることにより、不当な遅延が起こるということを防ぐことができるという観点から入っているわけでございますが、このような遅滞利子という概念は国際的にも一般的に採用されている概念でございまして、それをここに規定しているわけでございます。  それで、先ほど先生がエジプトの場合に遅滞利子というものが規定されてないではないかという御指摘がございましたけれども、エジプトの場合にも同様の概念のものは規定されているわけでございます。これはエジプト投資協定におきましては、その議事録の第一項におきまして、補償の額には「遅滞支払金」を含むことが了解されているわけでございます。これは、特にエジプトが回教のもとにあって、利子というような概念が宗教上あるいは慣行上、社会通念に反するという主張がございまして、ですから、明確にこのスリランカの協定のように「利子」という形では入っておりませんけれども「遅滞支払金」という形で、同様の内容のものがエジプトの場合にも盛り込まれているわけでございます。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 エジプトの場合には、いまおっしゃったように確かに「延滞支払金」と入っていますけれども、これはたとえば国際法に基づいて適当とみなされる「延滞支払金」ですね。だから不法なものに対する代償を求めるという趣旨ではないわけであって、ここで言われる「利子」の場合とは私はやっぱり違うんではないかという感じがどうしてもあるわけですがね。  それから第八条のところですがね、「資金の移転の自由を保証される。」ということが第一項で述べられて、第二項の方には「自国の法律に従い、」ということになっていますけれども、この一項と二項の関係はどういうふうな関係になっていますか。
  189. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 送金の自由は直接投資の場合にきわめて重要でございまして、清算手段の購入とかあるいは利潤の取得等におきまして送金の自由があることが特に投資側にとっては大切でございます。したがいまして、第一項では送金の原則自由をうたっておるわけでございます。第二項はそれの例外といたしまして、「自国の法律に従い、かつ国際通貨基金協定の締約国である限り同協定に従って、為替制限を課することができる」。ということで、IMF規定上の権利義務に基づく為替制限につきましては、これは第一項の例外であるという規定をしております。ちなみに日本はIMFの八条国でございますけれども、スリランカはIMFの十四条国としてより広範なる為替制限の権利をIMF上持っておるというふうに承知しております。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 通産省の方お見えになっていると思うんですが、企業の海外投資保護を図る、たとえば輸出保険法だとか海外投資保険だとかというのがありますですね。この場合、たとえばいまのスリランカの投資保護協定のように受け入れ国が国有化などで企業を収用した場合、それについてこの海外投資保険でも補償がされるわけでしょう。それから、今度の投資協定でも補償されるということになっていますが、この関係はどうなりますか。国内制度としてある保険制度と、こういうスリランカとの間で結ばれる補償措置とはどういうふうな関係ですか。
  191. 竹澤正格

    説明員竹澤正格君) お答え申し上げます。  海外投資保険におきましては、いわば担保危険といたしまして、戦争危険あるいは収用危険あるいは送金危険というようなものがあるわけでございますが、決められた保険事故が発生をいたしまして保険金を国が支払うということになりますと、被保険者、つまり保険金を受け取った者は、自己元本あるいは自己株式の回収の義務を負うということになってございまして、当然被保険者は、仮に相手国政府から補償を受け取るということになりますと、その受け取った額をいわば保険者である政府に保険金の割合に応じて納付をする義務を負うと、こういうことになってございます。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 スリランカにいま進出している企業、これは三井だとか東芝、丸紅など、直接投資しているのは三十八件あるというふうに承知しておりますが、この中で海外投資保険を確保している企業はどれぐらいあるんでしょうか。
  193. 竹澤正格

    説明員竹澤正格君) 出保険の具体的な引受実績あるいは責任残高の公表につきましては、当該相手国の対外債務の返済能力等に関して、日本政府としての評価を示すものという受け取り方をされるおそれが対外的にございますので、従来から国会においてもお答えを差し控えさしていただいております。したがいまして御容赦をいただきたいと存じます。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 発表しないというんならそれは仕方ありませんけれども、たとえばこれは「東洋経済」のこの海外進出企業総覧によると半数近くがやっぱり投資保険を受けてない、してないというふうな数字が出ているので、これは大なり小なり大体それに近いんではないだろうかというふうに思います。  それで今回の協定を見てみますと、投資財産及び収益を補償の対象とし、その収益には「投資財産から生ずる価値、特に、利益、利子、資本利得、配当、使用料及び手数料」これは第一条できわめて広い範囲に決められているわけですね。このような投資保険制度の優遇措置をさらに上回る保護協定がこうしてできれば、やはりこういう保険料なしで補償措置を受けるということになるようになり、やっぱり海外に進出する企業についての二重、三重の優遇措置になるんではないだろうかというふうに感じるわけです。  それで、最近のいろいろな新聞を見てみますと、これはASEANともいろいろ話し合いがやられているということですが、ジェトロなんかの調査によりますと、日本企業の経済支配に対してインドネシアやその他タイなどでも伝統産業の破壊、所得の不均衡の拡大、華美な消費の増大をもたらしているというふうな批判が出されているというふうなことが述べられておりますし、それから、確かに投資家についての保護はきちっと決められておりますが、投資の環境を整備するといいましても、実際にはシンガポールなどでは「低賃金にも文句いわず 体むしばむゴミや騒音長びく残業夜はザコ寝 不景気ならすぐ首切り」「外資系企業厳しい労働」という、苦しむアジアの女性の訴えというのが新聞に載ったりするんですね。これは一番最初申し上げましたように、何も投資そのものに私は反対しているんではなくて、やはり過重な保護、そしてどんどんどんどんいくと、国内でやるよりも外国に行って安い労働者を使って、そして日本に逆輸入してきてそれでもうける。中小企業はそのためにまた倒産をする。日本では失業者はふえる。結局この投資保護協定が本当の意味日本の経済のいまの危機を打開していく上でどういう意味を持っているのか。だから過重な保護というのは、ある意味で言えば私は日本の失業者を国内でよけいつくり出して、国際的な批判をより受けて、また逆輸入してくる商品によっては日本の中小企業に影響を与えるというふうなことになるんではないか。そこらあたりやっぱりよく考えないと――私はその投資をなさっている企業家の方々に、一定の環境を整備して保護をするということ自身が問題だというふうな意味ではないんですよ。そういう問題点がたくさんあるわけだから、よく考えてみないとこういうふうな形ではやっぱり問題をどうしても残すのではないかというふうに私は思うんです。この点よろしかったら政務次官の御所見を承って、私の質問を終わります。
  195. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) ただいま先生の言われましたようなことが絶対にあり得ないとは考えておりません。しかし基本は、海外における投資というものが当該の国にとって経済の発展なり雇用の増大に有効に機能しておる、また日本の企業にとっても必要なものであるという考え方に立ちながら、先生の御指摘のような弊害が起こらないようにということは重々考えて対処していくべきものだ。  私の私見になりますが、私長く労働関係の仕事をしておりまして、海外進出企業の労務管理等につきましては労働省を初め関係の専門家等がいろいろ指導もし、努力もしておりますことも一例であると思いますけれども、その他の面につきましても海外投資について今後各国の非難を招かないように、本当に有効に機能するように、その国の経済なり雇用の発展に役立つように十分留意してまいりたいと、かように考えております。
  196. 木島則夫

    ○木島則夫君 私は、南極というところをやはり平和な地域として永遠に維持したいし、また人類の最後に残された汚染をされていない地域としてこれを永遠に守っていきたい。それから科学的な調査を行う場合には国際協力でこれを進める。先ほど外務政務次官もまた遠藤参事官も口をそろえておっしゃった。私もまさに大賛成でございます。  そこで、まず伺いたいことなんだけれど、南極大陸の面積というのはおよそ千四百万平方キロもあって、日本の面積の三十七倍にも当たっているというふうに私は理解をしております。こんなに広い南極地域においてこの法律の実効性を確保するために、たとえば渡航者の監視であるとか違反者の取り締まりというのは実際どういうふうにやるのか。これは遠藤参事官の先ほどの主権の及ばないところでの日本人の規制の問題、非常にむずかしい問題があっておくれたのだというふうなお話にもたしか通じる問題だろうと思うんだけれど、この辺を具体的にどういうふうにするのか、ひとつ教えていただきたい。
  197. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 木島先生御指摘のとおり、確かにむずかしい点でございまして、これをどうやっていわゆる法律の実効性を担保していこうかという点につきまして、私ども南極に行かれる人々を幾つかのカテゴリーに分けられると思うのでございます。  まず一つは、いわゆる南極観測隊員でございます。この南極観測関係者につきましては、現在のところ文部大臣が本部長になっております南極観測統合推進本部がございますが、ここの隊員につきましては、先ほど立木先生の御質問に対してお答え申しましたように、部内でもって部内規律をつくってその実施を図っていく。もしこれに背くようなことがありますと、これは場合によっては国家公務員法の職務命令違反ということになろうかと思います。それがまず第一のカテゴリーの南極観測隊員でございます。  次に南極地域に行かれます人々としましては、漁業関係者があろうかと思います。いまのところ日本の捕鯨船等は必ずしも耐氷構造になっていないので、南極の陸地までは必ずしも行けないことになっておりますけれども、しかしながら、それも絶対行けないということでなくて、何かの方法で行くことも考えられますので、したがいまして必要に応じ、捕鯨船等々にはたしか農林水産省の監視員が乗っておりますが、そういったような監視員を通じて、違反行為がないように監督をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。  それから三番目が観光客でございます。観光客につきましては、これはいま申し上げました二つのカテゴリー以上にむずかしい点があるわけでございます。観光客につきましては、幾つかの方法が考えられるのでございますけれども、一つは旅券発給の段階で、勧告措置及び法律案承認されましたら、法律を窓口でもってこれを南極に行く旅行者に対して周知徹底せしめるということがひとつ考えられますが、しかし旅券数次旅券でありますと、南極には別に何ら関係なく、いわゆる南極ということを明記されずとも数次旅券の場合は行けるわけでございまして、したがいまして、これにつきましてはいまのような窓口指導といいますか、窓口でこれを周知徹底せしめることはなかなかむずかしい。したがいまして次の方法としまして、いわゆる旅行エージェント、いまのところ先ほど申したように一社でございますから、一社の窓口を通じて、こういった規制措置があるのだ、勧告措置があるのだということを周知せしめる、こういうことが考えられるかと思います。  それから最後にといいますか、もう一つは、これは全体に適用されることでございますけれども、もし殺したものを、あるいは植物を持って帰ったときに、税関でこれをつかまえるということが可能かと思います。大体以上申しましたようなことでこの法律の実効性を何とか担保していきたいと、こういうふうに考えております。
  198. 木島則夫

    ○木島則夫君 非常にむずかしい問題でありますけれど、これからやはり世界が狭くなるという意味で私は南極に行く人もふえてくると思うんです。もちろん科学調査で行く人はこれは問題ないと思います。漁業関係が行く、監視員を乗せる、これも結構だと思います。一番問題なのはやはり観光客です。映画の撮影なんかもこれから行われるだろうし、心ない取材者が向こうに行って汚染をするかもしれない、こういう点について私は非常に心配しているわけです。  そこで、第七条において、外務大臣は「南極地域渡航する者その他の関係者にこの法律の要旨の周知を図るため、適当な措置をとるものとする。」と定めているけれど、この適当な措置というのはまたずいぶんあいまいなんですね。これはどういうことをやるんですか。
  199. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先ほどの先生の御質問でお答え申し上げましたように、観測隊員、漁業者はいいとして、旅行者が一番問題になると思うわけでございますけれども、旅行者には先ほど申したように、旅券の窓口での、何というのですか周知徹底、それからそれのためにはこの法律あるいはそのもとになっております勧告措置をわかりやすく書きましたパンフレットを窓口に置くということが一つでございます。それからもう一つは運輸省を通じまして旅行エージェントに流すということが次の手段というか、同時に考えられる、これも勧告措置がまだ発効してないのでございますけれども、実はすでにこれ自身、実態的にはいまでもやっておるわけでございます。これを今度は法律として強制力あるものとして、そういった観点から周知徹底せしめていきたいということ。この二点がいわゆる防止措置ということでございます。確かになまぬるいと言われる点がまさにあると思うのでございますけれども、それじゃどういうふうにして規制をするかといいますと、これはやはりああいうふうなだれもいない、日本から遠いところでございまして、いま考えられますのは以上のようなことかなというふうに理解しておるわけでございます。
  200. 木島則夫

    ○木島則夫君 冗談で言うわけじゃないけれど、衛星を飛ばして監視するわけにもいきませんから、これはとてもむずかしいことだと思いますので、その辺の周知徹底というものは、ひとつ外務省が中心になって徹底してやっていただきたいというふうに考えるのです。せっかく先ほど平和な地域として永遠に残したい、人類最後に残された汚染されない場所として残すというようなことを三項目おっしゃったわけでありますから、これはやっぱり外務政務次官にも一言その辺の確信を伺っておきたいのです。
  201. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 先ほど来お話がありましたように、この条約ができまして長い間日本が批准ができなかったために、日本が非常に不熱心であるというような批判が外国から出ておるところでもあり、日本の前に、一昨年九月にオーストラリアが批准をしたということで最後に一つ残されたわけでございますので、先ほど来事務当局から御説明しましたような苦労をしながら、何とかやりたいということに踏み切ったというのが事情でございますので、木島先生からもお話がありましたとおり、若干不十分な点があるということは私どもも反省しながら、それを承知で踏み切りましたので、御指摘のようにこの法律の御承認を得ました上では、外務省が主管省でありますので、関係各省の協力を得まして十分その趣旨が徹底するように、なお不足な点がありましたらさらに必要な措置をとってでも厳守をしてまいりたい、かように考えております。
  202. 木島則夫

    ○木島則夫君 遠藤参事官に伺いたいんですが、現在までにそういった不祥事、トラブルというのは摘発されておりますか。
  203. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) いままでのところは承知しておりません。ただ、一言補足さしていただきたいのでございますけれども、確かにいま私どもが考えております周知徹底というのは、あるいは現時点での考えられる最善かなということで、時点時点によりまして、もうちょっといい方法があるということであれば、これはつけ加え、あるいは改善さしていただきたいと、こういうふうに思っております。
  204. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間がございませんので、次にスリランカとの投資保護協定について同僚議員からも御質問があって、あるいは重複するかもしれませんけれど、ちょっとお伺いさしていただきたい。  一般的に投資保護協定締結するという意味は、投資環境の整備、つまり収用とか国有化等の要件と手続とをはっきりさせて、みだりにそのような措置がとられないようにして、万一収用あるいは国有化等が行われた場合には正当な補償が支払われることを明確にして、安心して投資が行われるようにすることにある、これは間違いないと思います。今回の協定について言えば、将来スリランカに再び社会主義的な政権が登場して国有化等が行われる場合、わが国企業の投資財産の補償を担保しているこの協定の実効性は、果たして十分期待できると思うのかどうか。多少仮定の問題が入って答えにくいかと思うけれど、どんな御見解ですか。
  205. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 本協定日本国とスリランカ国との国家間の権利義務を規定しているわけでございまして、これは政権のいかんにかかわらず、両国に対して国際法上の権利義務を設定したというわけでございますので、スリランカにおきまして政権の交代があって別な社会体制になったときでも、この協定はなお効力を有するものでございます。そういうことで政権を超えて権利義務関係を設定されたこの協定によりまして、国有化等の場合の補償について、これを当然に要求する権利が日本側の投資家にございます。スリランカ側としてはそれを尊重する義務があるわけでございます。
  206. 木島則夫

    ○木島則夫君 西ドイツであるとかあるいはフランスなどの場合には、この種の協定について長い実績を持っているというふうに私は考えております。この場合投資受け入れ国での収用とかあるいは国有化等に際して、適切な補償が行われた実例があるのかどうか、この辺はどんなものでしょうか。
  207. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 御指摘のとおり、西ドイツは四十八、フランスは十九、スイスが十六というように多くの投資保護協定を結んでおります。  で、実例でございますけれども、西ドイツにつきましては、そもそも西ドイツの企業に関連しまして、収用というような事態が起きたことはないというふうに了解しておりまして、したがって、西ドイツの企業に関連しての収用に対する補償ということが、投資保護協定上行われたことはないというふうに了解しています。ただスイスにつきましてわれわれの承知している範囲では、ザイール、タンザニアにおいて国有化が行われた際に、スイスとの間の投資保護協定に従いまして補償が行われたという例があるというふうに承知しております。
  208. 木島則夫

    ○木島則夫君 すでに西欧諸国は西ドイツが四十八カ国ですか、それからフランスが十九カ国、イギリスが十五カ国というように多数の国とこの種の投資保護協定締結をしているのですけれど、先ほどからの御説明を聞いていると、わが国としてもASEAN五カ国及び中国との間で締結交渉が行われているということでありますから、これは重複を避けます。  さて、日本とスリランカ、この両国間の貿易の不均衡問題は四月の初旬ですか、京都で行われた日本・スリランカ経済合同委員会、これは民間レベルのものでありましたけれども、ここでも指摘をされたところであるんだけれど、依然として日本側の大幅出超傾向は変わっておりません。つまり一九八〇年のわが国の出超は、わが国の輸入額の四倍、一九八一年には多少改善はされた傾向はありますけれど、それでも三・四倍に達している。しかし、スリランカはもともとわが国に対しましてきわめて友好的な国であって、貿易の不均衡という問題をめぐって、かつてのタイあるいはインドネシアで見られたような形での対日不満が噴き出していることもなく今日まで経過をしている。私はそういうふうに承知をしているんですが、それだけに政府としてはこの友好関係促進をされている現在、両国間の貿易の不均衡是正のために積極的な手だてをとるべきじゃないだろうか、これはやはりひとつ外務政務次官から基本問題でございますから伺って、なお補足があればほかの方からもお聞きをしたい、どんなものですか。
  209. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) お指摘のように、日本とスリランカの貿易が相当大きな不均衡になっておるということは事実でございます。  そこで、たとえばスリランカ最大の輸出産品である紅茶の輸入関税を昭和五十二年に引き下げる等の処置もとっておりますけれども、必ずしも十分な改善にはなっていない。まあ貿易全体について一カ国同士の均衡を絶対的に考えることもむずかしいとは思いますけれども、スリランカとの不均衡がときに大きいわけでありますから、スリランカ自体が自国の産業を発展させて能力を伸ばして不均衡が少なくなるということができれば一番望ましいわけでございまして、そういうことについて直ちに名案はないわけでございますけれども、この協定ができますことによってスリランカヘの投資促進されるということは、貿易不均衡という角度から見ましても有益なことではないか、このように考えております。
  210. 木島則夫

    ○木島則夫君 何か補足をする点があれば補足をしていただきたい。よろしゅうございますか。  それじゃ租税条約について伺いたいんだけれど、現在わが国は三十数カ国と租税条約締結していて、インドネシアとの租税協定がこれは三十三番目ですか、三十四番目、ちょっとその辺伺いたい。
  211. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 現在効力発生しておりますわが国締結しておる租税協定が三十二ございまして、それに昨年国会で御承認をいただいてまだ批准書交換をしておらないポーランドとの協定がございますので、それを加えますと今回が三十四番目になるわけでございます。
  212. 木島則夫

    ○木島則夫君 このほか現在、中国、ソ連との間で租税条約締結の交渉が進められていると聞いているのだけれど、その進捗状況を報告していただきたいんです。
  213. 田中義具

    政府委員田中義具君) 日ソ間の租税条約締結交渉につきましては、昭和五十五年十月にモスクワにおいて第一回交渉を行っておりまして、そこで相手国の租税制度等について意見交換を行うとともに、条約の基本的枠組みについての話し合いを行いました。第二回交渉の時期等については、双方の都合を勘案しつつ、外交チャンネルを通じて協議することとなっておりまして、現在調整を進めているところであり、外務省としましてはこれに前向きに取り組んでいく所存でございます。
  214. 木島則夫

    ○木島則夫君 さらに今後、どんな諸国と租税条約締結する予定があるのか伺いたいんですが。
  215. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 租税協定につきましては、経済交流の実態であるとか人事交流の実態に見合って、それが必要とされたときに交渉の機運が生じてくるわけでございますので、現在中国とソ連と交渉を行っておるわけでございますが、さらにユーゴスラビアとの間で交渉を行っております。  私は先ほど松前委員にフィンランドと申し上げたかと思うのでございますが、これはユーゴスラビアの間違いでございますので、訂正いただきたいと思いますけれども、ユーゴスラビアと交渉の予定をしております。その他の国とは現在日程に上がっている交渉相手はないと承知しております。
  216. 木島則夫

    ○木島則夫君 さらに今後、発展途上国との間で租税条約締結するケースがふえてくるんじゃないだろうかというふうに考えるんですね。わが国は、現在まで先進国間の租税条約のモデルであるOECD条約に従ってきたわけですけれど、国連の経済社会理事会で、これは一九七九年ですかに発展途上国からの要請を受け入れて、先進国と発展途上国とで租税条約締結する場合のモデルとして国連モデル条約をつくった。今回のインドネシアとの協定は従来どおりのOECDモデルに沿ったものとなっているんだけれど、今後途上国と租税条約を結ぶ場合には、先方は国連モデルを主張してくる場合が多くなってくるということも予想されるわけですね。これに対してわが国はどんな対応をしていかれるのか、将来の見通しですけれど、伺いたい。
  217. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先生御指摘のように、OECDのモデル条約に対比いたしまして一九七九年にECOSOC、国連経済社会理事会で、開発途上国の立場に一層の配慮を加えた国連モデル条約素案ができているわけでございますけれどもわが国といたしましては、この素案を開発途上国との租税条約交渉を行うに際しての一つの指針としてこれは有益であると考えております。したがいまして、今後開発途上国と交渉していく場合におきましては、そのOECDモデル条約を基本としつつそれらの国連モデル条約に盛り込まれた考えの中で取り込めるものはこれを取り込んでいくという形で交渉をまとめていくという方向に行くのではないかと考えております。
  218. 木島則夫

    ○木島則夫君 残余の時間、日本とインドネシアの経済関係について一問伺いたいんですが、インドネシアにとってわが国は総輸出の約半分、また総輸入の三割を占める第一の貿易相手国であるということです。他方、わが国にとってもインドネシアはサウジアラビアに次いで原油供給国であり、またアメリカに次ぐ投資先でもあるという認識を持っております。このようにわが国とインドネシアとの経済関係は大変緊密であるんですが、最近インドネシア側から、インドネシア近海でのエビのトロール漁を来年の一月から全面禁止にするとか、またインドネシア産の原木を、先の話ですけれど、八五年の一月から全面輸出禁止にするなどというような規制措置が発表されたように伺っております。このほか、インドネシア政府及び関係企業の物品調達契約に際し見返り買い付け条件をつける制度が本年から導入をされたために、プラント輸出の商談が中止をされるというような影響が出始めているとも聞いている。これらは事実なのかどうか伺いたい。もし事実であるならば、こういったインドネシア側の措置によって漁業あるいは木材、プラント輸出などの関係業界への影響が心配されると思うが、どうなのか。インドネシア側の措置が、緊密な日本・インドネシア間の経済関係を損なうことにならないよう政府はどういう対応をされるのか。一括して伺って私のまとめにしたいと思いますが、どんなものでしょうか。
  219. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) まず、エビトロール漁業の禁止でございますが、これにつきましては、すでにインドネシア政府は一九八〇年に大統領布告でトロール漁業の段階的な禁止を定めておりまして、すでにジャワ、スマトラ等におきましては禁止されておったわけでございますが、ことしの二月の経済閣僚会議で来年の一月からインドシナ全域にこれを及ぼすと、全域においてトロール漁業を禁止するという方針を決定いたしました。この決定が実施に移された場合には、現在インドネシア海域でトロール漁業に従事している日系の合弁企業、これは八社ございますけれども、は事実上撤退を余儀なくされるものと考えております。したがいまして、政府としてはこれをきわめて重視いたしまして、本件措置の再考についていろいろのレベルでインドネシア側と話をしております。先般渡辺大蔵大臣がインドネシアを訪問されましたときにもこの問題を取り上げていらっしゃいます。今後とも、粘り強く本件について話し合いをしていきたいというふうに考えております。  次に丸太でございますけれども、丸太輸出の規制につきましては、インドネシア政府は八〇年以来丸太の輸出規制を進めてきておりまして、本年の二月にさらにこれを強化し、輸出量を段階的に削減して八六年以降全面的に禁止するという方針を決定いたしました。この措置が実施されますとインドネシアからの丸太輸入に大幅に依存している日本の南洋材の丸太関連製材工場、これは約八千ありますが、と合板工場約六百七十ぐらいが影響を受けることになります。またさらに、現地におきましても日系の合弁企業のインドネシア林業への投資が約二億ドルございますので、これについても大きな影響を与えると懸念されるわけでございます。政府といたしましては、輸出規制の弾力的な運用を図るようにインドネシア側に随時申し入れておりまして、これもいろんなレベルでいろんな際に申し入れておりまして、今後ともこの話し合いを粘り強く話していきたいというふうに思っております。  最後に、カウンターパーチェスでございますが、これはことしからインドネシア政府が出しました新方針でございまして、インドネシア政府の、政府の調達を受注した外国企業は調達額と同額の特定の非石油産品の輸入を義務づけられるということでございまして、この義務を怠った場合には不履行額の約五〇%のペナルティーを課すということでございます。これはどのように実施されるかという実施の態様が必ずしもまだ明確でないところもございますけれども両国間でどういうふうにこれを実施していくのだろうということで話し合いを進めておるところでございます。  以上でございます。
  220. 木島則夫

    ○木島則夫君 最後に、インドネシア側のこういった措置が緊密な日本とインドネシア間の経済関係を損なうことのないように、ひとつ政府としては一生懸命やっていただきたいと最後に私は要望申し上げたのですが、この点についてどうですか。
  221. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) ただいま藤井審議官から申し上げたような経緯でございますので、先生の御指摘のように日本とインドネシアの関係を損なうことのないように、木材の問題、漁業の問題、引き続き交渉して努力してまいりたい、かように考えております。
  222. 木島則夫

    ○木島則夫君 結構です。
  223. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 以上で三案件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  投資促進及び保護に関する日本国スリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  224. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国インドネシア共和国との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  225. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  南極地域動物相及び植物相保存に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  226. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、三案件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会