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戸叶武君
日本と中国なりソ連なりはやはり文化等々なり生活
態度の中に非常な違いがあるけれ
ども、比較的
日本と中国との間においては相通ずるものがあると思います。しかし、中国のあの西太后なんかを見ても、あの女は目は碧眼であったという話もありますから、要するに芸人の血の流れた崑崙のかなたからでも、少なくとも邯鄲の向こうあたりから来た人でしょうが、結局西太后にしても、
自分の栄耀栄華のためならばとにかく死んでも竜宮があるようにという迷信に駆られて、明の十三陵を見せなかったからまだよかったけれどと言うけれ
ども、地下宮殿をつくって中で
自分が死んでいったんですが、そういう偏執的な人間の飽くなき栄耀栄華、地獄にまでそれを持っていこうとしたやつに迎合して国を売り、ソ連に対してでもウィッテもひやかしていますが、この李鴻章が物々しく片っ端から賄賂を取ってシベリアにおける帝政ロシアの道を開き、袁世凱がその下請を受けながらいつの間にやら今度は
自分が皇帝になろうと、全く腐敗した勢力というものを利用して、
日本も加藤高明の対支二十一カ条要求以後においては、
イギリス帝国主義、ドイツ帝国主義、ロシア帝国主義と同じような形で中国
分割を企てたことに目覚めたヤングチャイナの私は抵抗が生まれたんだと思うんです。
いずれにしても中国は七十年前に完全燃焼して、人民を搾取する、国に憂えを持たないものを倒さなきゃいかぬという民族の辛亥革命なりあるいは国共合作というのは、共産党とか国民党とか、今度もあれでしょうが、そんなイデオロギーや何かじゃない、試行錯誤がいっぱいあるんだ、国のためと思っても間違いはあるんだ、それを克服して民族が一致団結して完全燃焼しなければ、ソ連やあるいは
アメリカのヤルタ
協定のような少なくとも次の平和
条約の前提条件たるものは、他国の
主権を無視しないで、他国の
領土を奪ったりしないで平和
条約の前提条件をつくり上げなければ本当の平和
条約にはならないという、ベルサイユ
協定以来曲がりなりにでも国際法の理念というものは私は前進してきたと思います。いまのざまは何です。全く国際法の理念を裏切って、そうして私は吉田さんでも岸さんでも頭のいい人だけれ
ども、結局ダレスの前に恫喝されて黒船外交に腰を抜かした井伊掃部頭直弼と同じく国を滅ぼす気概が私は内在していると思うんです。岸さんだって一番
最初に行ったときは実に堂々たるあいさつであったが、行きはよいよい帰りはこわい、ダレスにどうやってひねられたのかわからないけれど、行ったときの堂々たるところの
主張というものは、帰りには雲散霧消してしまったのであります。
どうぞそういう
意味において、
日本は過去のことよりも未来をわれわれはかち取るんだというだけの、外交に対しても国の方針に対しても気魄がないと、私はこれは苦労人だから鈴木さんや櫻内さんには何とも言えないし、
宮澤さんなんかも、前から見るとずいぶん骨ができてきて腰が座ってきたと思うし、
外務省や通産省の人たち、本当に外交や貿易をつかさどっている専門家というのは前と違って、この辺でしっかりしなけりゃ大変だ、なめられたら骨までしゃぶられちゃうぞという気魄が、私は、あの蘭学をやった高杉と吉田松陰が、王陽明学だとかなんとか変なあれじゃなくって純粋な形で海外を見て、死を賭して海外を学んで
日本みずからの運命を築かなきゃならない、この百八十度的な発想の転換が、アヘン戦争以来、犠牲は払っても依然として近代国家をつくれなかった中国と
日本の違う面はそこにあったと思うんです。今後においては、やはり政務次官の人もりっぱな人であるに相違ないけれ
ども、なれてない、年輪が加わってない、ただ政務次官として外務大臣を補佐するというだけでは議会政治におけるステーツマンというものは生まれてきません。
本来ならばきょうはやっぱり政務次官に質問をし、そうしてそれを通じて細かいところはそれぞれのエキスパートから聞きたいと思いましたが、急を要しております。今後五月から六月へ
世界はどう変わっていくか、核に対する不信感、核兵器をなくさせろ、座して圧殺されるよりも、われわれみずからとにかく死を賭しても戦っていくというような空気が中南米にも横溢しております。それを憂えているのが前のメキシコの大統領であり、また二十年間もスウェーデンにおいて平和を保つためにあらゆる努力をしてきた、私は
世界の各所から、おっかながっているんじゃどうしようもない、本当のことを言って
アメリカやソ連にも反省を促さないと大変なことになっちゃうぞという機運が
世界に充満してきていると思います。そのときに
日本がこんな調子で行ったんでは中国でもばかにされちゃいます。中国で浅沼稲次郎君とそれからスメドレーあたりの外人以外に余り人を並べては物を言っていません。大衆がうるさくなって許さなくなったんです。
日本の通念で依然として、大衆に公開して事を運ぼうとするような時代に、金と権力に依存すればこわいものはない、ついでに裁判官あたりもひねってしまえば差し支えない、大蔵官僚も。が、大蔵官僚もそうはいかなくなっている。財界だって私は不気味なものを
感じていると思うんです。まさに五・一五事件の起きる、血盟団事件、二・二六事件、あの時分に軍部、官僚、財界、すべて国を滅ぼすものであるといって田舎の青年が少壮軍部とともに立ち上がったときのようなこわい気流がいま底辺に流れていると思います、こわい。話せばわかるといったって、ピストルぶち込まれてから雄弁な、説得力の上手な犬養も多数党をまくらにして死んでいってしまったじゃありませんか。原敬だってそうだ。井上準之助だってそうだ。デフレをやりながら片方はインフレをやらなければという、三井と組んでそうしてドル買いをやるというようなあの小泉又次郎なり安達謙蔵あたりの構想で
日本が救えたか。私はこわい、本当に不気味なほどこわい。起きてから警告したんでは、火事が済んでから二、三人死亡者が出ましたというのは、プレハブの今日の住宅の火災と死を関連するだけでもって不気味なものを
感じないが、それ以上に私はこの危機に対してもっと真剣に謙虚に取り組む姿勢が
日本の政治の
世界において、外交、防衛の
世界において、貿易の
世界において起きなけりや、とんでもない、取り返しのつかないことが起きるんじゃないかと思うんで、それだけを、これはしかと
国連局長にお願いします。
なまはんかに大臣に言うと、泥をかぶるつもりで一生懸命やっている
宮澤さんなんか前とは違ってきた。前には、私が予算
委員会で質問したときに、プリベントかあるいはコンテイソメントかとただしたときに、いや、ダレスの言った封じ込め政策ではなく、これはプリベントです。コンテインメントポリシーじゃありません。私が現に経済閣僚として立ち会ったんだから私の記憶には間違いなしという話でしたが、よく見ると、中川ソ連大使なんか
条約局長の時代、あの人は正直な人で、中川君あんたその控えを持っているはずだが、メモをおれいま持ってこないけれ
ども、物事は具体的なデータを通じて話し合わなけりゃならないと思うが、ちょっと君持っていたら見せてくれと言ったら、やはりプリベントじゃなくコンテインメントポリシーでした。しかし、私はその時代において、やたらに
宮澤さんのような聡明な人に意地悪な揚げ足取りやっても悪いと思っていましたが、今日の
宮澤君もやはり総理大臣や外務大臣の苦悩の姿を見て、見ちゃいられぬという形で今後の
日本の外交に対して泥をかぶる決意を持ってみずからも進んで積極的な姿勢でやれた人だと思うんです。泥をかぶるというのは金づくりだけじゃないです。責任を持って、どうやって時々刻々に動いてくる
世界の動向に
対応するかということだと思いますが、どうぞこれは
国連局長、一官僚としてでなく憂国の志士として、
日本の政治家が本当に体を張って
日本の危機と
世界の危機を救うような、少なくとも一歩前進し、光を与えるような自主外交を展開するだけの土性骨を持つために腰砕けにならないようにやっていただかれんことを切にお願いします。
私は、いま模索中の櫻内さんやあるいは鈴木さんに物を言うことはできない。やっぱり最後まで苦悩し、刻々に動く
世界の
動きにどう
対応しようかということで体を張っていると思いますから、
宮澤さんもその点で、私はもとの英知あふるる
宮澤さんじゃなくて、やっぱりなめられない、
日本人の魂ここにありという井伊掃部頭直弼のような、相手を弾圧することによって内に備えなく腰抜けの外交をやった日には徳川幕府がぶっつぶれるのはあたりまえです。いまの自民党内閣を早くつぶすのには配慮は要らぬ。そのまま自由勝手に行くところまで行かしめよですが、やはり私はこの
日本民族の中になめられないだけの、人の不幸を見ちゃいられないだけのれんびんの情が宿っていなけりゃ、
世界はだれも
日本に期待するところはないと思いますから、しかと憂国の志士になったつもりでひとつ、いまの内閣の中ではまあまあ私は相当な人だと思います。
だれがやっても嫌な世の中だけれ
ども、
自分の安穏だけを考えずに、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」です。どうぞそういう
意味において、一人ぐらいは国のために殉じたというだけの性根あるそれぞれのエキスパートが活発に
日本を守っていただかれんことを切にお願いし、彼らを補佐していかれんことをお願いする次第であります。危なくてこのごろはもう目を明いちゃ歩けないような
状態ですが、大きな
日本の維新です。
日本が変わることによって中国も変わります。お互いにけちな考えを持たないで、戦争をやらないでまともに技術協力、文化交流をやりながらじみちにいくならば、
日本と中国というのはもっともっと私は伸びる。そういうつもりで日中の問題に対しては、特に西欧の腐れ切った……